JP2017152121A - リチウムイオン二次電池用負極およびこれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極およびこれを用いたリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】充放電に伴う膨張収縮を抑制し、且つ放電レート特性の向上も可能なリチウムイオン二次電池用負極及びこれを用いたリチウムイオン二次電池の提供。【解決手段】負極集電体22上に、負極活物質とポリアクリル酸とを含有する負極活物質層24を備え、ポリアクリル酸は一部にカルボキシ基及び酸無水物基を含有するリチウムイオン二次電池用負極20及びこれを用いたリチウムイオン二次電池100。又、負極20は、IR吸収スペクトルにおいて、カルボキシ基を示す1235cm−1付近のピーク強度と、酸無水物を示す1800cm−1付近のピーク強度の比率が90:10〜60:40であり、ポリアクリル酸が架橋型である。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極およびこれを用いたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、ニッケル水素二次電池などと比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く使われている。また、ハイブリッド自動車や電機自動車用の電源としての需要や、情報家電の小型化への要望に伴い、更なる高容量化が求められている。
現在、リチウムイオン二次電池の負極活物質材料として黒鉛などの炭素材料が主に使われているが、近年では更なる高容量化のため、Si等の合金系負極活物質が多く研究されている。しかし、特にこのような合金系化合物を負極活物質として使用した場合、充放電によるリチウムイオンの挿入脱離に伴う負極活物質の膨張収縮が顕著になり、そのため負極活物層内における導電経路の分断による集電不良が生じ、特性の優れたリチウムイオン二次電池が得られない。
上述した課題に対して特許文献1では非架橋型ポリアクリル酸を使うことで負極合材強度を高めて、劣化率を抑えることが提案されている。
特許第4672985号
しかし、非架橋型ポリアクリル酸に含まれるカルボキシ基は、電池反応に寄与するLiイオンを捕縛し、容量低下を引き起こし、放電レート特性が低下する可能性があることがわかった。
そこで、本発明は、リチウムイオン二次電池用負極の充放電に伴う膨張収縮を抑制しつつ、且つ放電レート特性の向上も可能なリチウムイオン二次電池用負極およびこれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池用負極において、負極集電体上に、負極活物質とポリアクリル酸とを含有する負極活物質層を備え、前記ポリアクリル酸は一部にカルボキシ基および酸無水物基を含有することを特徴とする。
本発明によれば、ポリアクリル酸の酸無水物はカルボキシ基の一部が脱水縮合して、酸無水物が生成されていることから、Liイオンを捕縛するカルボキシ基が減少し、充放電に利用できるLiイオンが増えるので、放電レート特性の向上が可能となる。
また、ポリアクリル酸中のカルボキシ基により3次元的な結合ネットワークが強化されることで、負極活物質層内の導電パスの分断抑制効果があると考えられる。
ポリアクリル酸にカルボキシ基と酸無水物が同時に存在することで、負極活物質の膨張抑制効果と、負極活物質と集電体との接着性向上、カルボキシ基によるLiイオンの捕縛の抑制が同時に実現され、導電パスの分断を防ぐと同時にLiイオンの利用率も向上でき、電池特性の改善、特に放電レート特性の改善が可能となる。
本発明にかかる負極は、前期負極を測定したIR吸収スペクトルにおいて、カルボキシ基を示す1235cm−1付近のピーク強度と、酸無水物を示す1800cm−1付近のピーク強度の比率が90:10〜60:40であることが好ましい。
かかる構成によれば、上記範囲にカルボキシ機と酸無水物基のピーク強度比があると、カルボキシ基により集電体と活物質との密着性が十分確保され、負極活物質層内の導電パスの分断が抑制される効果が向上する。また、酸無水物基によりLiイオンがよりトラップされ難くなり、Liイオンのモビリティが向上する。これにより、放電レート特性が、より向上すると考えられる。
本発明にかかる負極は、ポリアクリル酸が架橋型であることが好ましい。
これによれば、ポリアクリル酸が架橋型であることで、負極活物質層内の導電パスの分断抑制、負極活物質の膨張抑制、活物質と集電体との接着性の保持、カルボキシ基によるLiイオンの捕縛抑制の効果がより顕著にかつ簡便に得られることができる。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池用負極の充放電に伴う膨張収縮によるサイクル劣化を抑制しつつ、且つ放電レート特性の向上も可能なリチウム二次電池用負極およびこれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
リチウムイオン二次電池の模式断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
(リチウムイオン二次電池)
図1は、本実施形態とするリチウムイオン二次電池を示す模式断面図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体30に接続された一対のリード60、62を備えている。
積層体30は、一対の正極10、負極20が、セパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものである。負極20は、板状(膜状)の負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。正極活物質層14の主面及び負極活物質層24の主面が、セパレータ18の主面にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60、62が接続されており、リード60、62の端部はケース50の外部にまで延びている。
以下、正極10及び負極20を総称して、電極10、20といい、正極集電体12及び負極集電体22を総称して集電体12、22といい、正極活物質層14及び負極活物質層24を総称して活物質層14、24ということがある。まず、電極10、20について具体的に説明する。
(正極集電体)
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム又はそれらの合金、ステンレス等の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(正極活物質層)
正極活物質層14は、正極活物質、正極バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMnMaO(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV、LiVOPO)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<x+y+z<1.1)、LiMnO−LiMO(ただしMはMn、Co,Niより選ばれる1種類以上の元素)で表されるLi過剰系固溶体等の複合金属酸化物が挙げられる。
(正極バインダー)
バインダーは、正極活物質同士を結合すると共に、正極活物質と集電体12とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が挙げられる。更に、上記の他に、バインダーとして、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電助剤粒子の機能も発揮するので導電助剤を添加しなくてもよい。イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等のイオンの伝導性を有するものを使用することができ、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリフォスファゼン等)のモノマーと、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
正極活物質層14中のバインダーの含有量は特に限定されないが、正極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましい。正極活物質とバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、得られた正極活物質層14において、バインダーの量が少なすぎて強固な正極活物質層を形成できなくなる傾向を抑制できる。また、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
(正極導電助剤)
導電助剤も、正極活物質層14の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
正極活物質層14中の導電助剤の含有量も特に限定されないが、添加する場合には正極活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
(負極集電体)
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、銅、ニッケル、ステンレス又はそれらの合金の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質、負極バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
(負極活物質)
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート・デインターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、SiO、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、TiO、SnO、Fe等の酸化物を主体とする結晶質・非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)等を含む粒子が挙げられる。
(負極バインダー)
負極バインダーは、負極活物質層24中の構成する部材同士または、負極活物質層24と負極集電体22とを密着させて電極構造を維持する目的で添加される。強度、伸張率、弾性率、耐電解液性のほかに、水系溶媒への溶解性や加工性、材料および製造コストなどの点から特にポリアクリル酸が好適である。
本実施形態の負極バインダーはカルボキシ基と酸無水物基を含有するポリアクリル酸であることを特徴としている。
ポリアクリル酸のカルボキシ基は活物質表面や集電体に対する接着性が強いことが特徴である。これにより、充放電時の負極活物質の滑落を抑えられるため、良いとされている。一方でカルボキシ基は水素の放出により酸性になり、電池反応に寄与するLiイオンを容易に捕縛して、容量の低下を引き起こすと予想される。
著者らが鋭意検討した結果、ポリアクリル酸中のカルボキシ基の一部を脱水縮合させ、酸無水物にすることで、Liイオンを捕縛するカルボキシ基が減少し、充放電に利用できるLiイオンが増え、容量の低下を抑制する効果が向上することがわかり、放電レート特性が大きく向上することが明らかとなった。
また、ポリアクリル酸中のカルボキシ基の一部が重合して酸無水物が形成されているので、それにより3次元的な結合ネットワークが強化され、負極活物質の膨張による負極活物質層内における導電パスの分断抑制の効果も期待できる。
また、ポリアクリル酸中カルボキシ基は負極集電体と負極活物質の接着性を向上させると考えられる。そのため電池においては負極活物質の膨張収縮による、負極集電体と負極活物質の剥離を抑止するために、全てのカルボキシ基が酸無水物になるのではなく、カルボキシ基と酸無水物が同時に存在する必要がある。
ポリアクリル酸にカルボキシ基と酸無水物が同時に存在することで、負極活物質の膨張抑制効果と、負極活物質と集電体との接着性向上、カルボキシ基によるLiイオンの捕縛の抑制が同時に実現され、導電パスの分断を防ぐと同時にLiイオンの利用率も向上でき、電池特性の改善、特に放電レート特性の改善が可能となる。
また、ポリアクリル酸中のカルボキシ基の一部に酸無水物基を導入する方法として、熱処理することが挙げられる。それにより、ポリアクリル酸の側鎖のカルボキシ基が脱水縮合し酸無水物基が生成されると考えられる。熱処理の方法としては、バッチ式乾燥炉や赤外線乾燥炉などを使うことができる。特に赤外線乾燥炉は高分子に対して効率的に、かつ短時間で熱処理することができるので、有用である。酸無水物基の量は熱処理温度及び時間によってコントロールすることができる。熱処理温度は180℃〜300℃、より好ましくは200℃〜250℃であるとさらに良い。熱処理時間は1時間〜24時間、より好ましくは2時間〜12時間であるとさらに良い。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、前期負極を測定したIR吸収スペクトルにおいて、カルボキシ基を示す1235cm−1付近のピーク強度と、酸無水物を示す1800cm−1付近のピーク強度の比率が90:10〜60:40であることが好ましい。上記範囲にカルボキシ基と酸無水物基のピーク強度比を制御することにより、カルボキシ基により集電体と活物質との密着性が十分確保され、負極活物質層内の導電パスの分断が抑制される効果が向上する。また、酸無水物基によりLiイオンがよりトラップされ難くなり、Liイオンのモビリティが向上し放電レート特性の向上に効果がある。また、酸無水物基による3次元的なネットワークが強化され、活物質の膨張抑制の効果も期待できる。
また、ポリアクリル酸のIR吸収スペクトルを測定する方法は特に限定されず、通常の固体試料表面分析に用いられるFT−IR測定機を用いることができる。IR吸収スペクトルの強度比は、測定したIR吸収スペクトルのバックグラウンドを差し引き、カルボキシ基を示す1235cm−1付近のピーク強度と、酸無水物を示す1800cm−1付近のピーク強度を比率で表すことで得られる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、ポリアクリル酸が架橋型であることが好ましい。なお架橋型のポリアクリル酸とは、側鎖のカルボキシ基の一部がアクリル酸以外の無機金属、あるいは架橋剤よって架橋されたポリアクリル酸のことである。ここで架橋を形成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属を選択することができる。より好ましくはアルカリ土類金属による架橋であるとさらに良い。
上記架橋剤としては、多価アリル類、多価ビニル類、多価エポキシ類、ハロエポキシ類、多価アルコール類、多価アミン類、ヒドロキシビニル類、カルボン酸エステル類等の各種のものを利用することができる。
これによれば、架橋型であることで、熱処理や架橋剤添加などの重合処理を行うことなく、負極活物質の膨張による負極活物質層内における導電パスの分断抑制、活物質と集電体との接着性の保持、カルボキシ基によるLiイオンの捕縛抑制の効果がより顕著に得られることができる。
また、本発明のポリアクリル酸の分子量は5,000〜1,500,000Mwであれば良く、より好ましくは10,000〜1,000,000Mwであるとさらに良い。
ポリアクリル酸の分子量が上記範囲内であれば、負極バインダーとしての強度を保持することができ、且つ電極塗料として容易に扱うことができる塗料粘度を保つことができる。
なお、架橋されたポリアクリル酸の機械的強度および負極活物質層と負極集電体との調整された密着性を損なわない範囲で、架橋されたポリアクリル酸と異種のバインダーと混合して用いてもよい。異種のバインダーとして、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアルギン酸などが挙げられる。
(負極導電助剤)
導電助剤も、負極活物質層24の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
また、バインダー及び導電助剤の含有量も、負極活物質の体積変化の大きさや箔との密着性を加味しなければならない場合は適宜調整し、上述した正極10における含有量と同様の含有量を採用すればよい。添加する場合にはバインダーの添加量は、負極活物質の質量に対して2〜20質量%であることが好ましい。導電助剤の添加量は、負極活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
上述した構成要素により、電極10、20は、通常用いられる方法により作製できる。例えば、活物質(正極活物質または負極活物質)、バインダー(正極バインダーまたは負極バインダー)、溶媒、及び、導電助剤(正極導電助剤または負極導電助剤)を含む塗料を集電体上に塗布し、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、水等を用いることができる。
塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
集電体12、22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する方法は特に制限はなく、例えば熱風乾燥炉を用いて60℃〜150℃の範囲で熱処理すればよい。
そして、このようにして活物質層14、24が形成された電極を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、10〜50kgf/cmとすることができる。
次に、リチウムイオン二次電池100の他の構成要素を説明する。
(セパレータ)
セパレータは、電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば特に制限はないが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの多孔質シート、又は不織布が挙げられる。
(電解質)
電解質は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては特に限定されず、リチウムイオン二次電池の電解質として用いられるリチウム塩を用いることができる。例えば、リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiBETI、LiFSI、LiBOB等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、(CFSONLi等の有機酸陰イオン塩等を用いることができる。
また、有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、等の非プロトン性高誘電率溶媒や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、等の酢酸エステル類あるいはプロピオン酸エステル類等の非プロトン性低粘度溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性高誘電率溶媒と非プロトン性低粘度溶媒を適当な混合比で併用することが望ましい。更には、イミダゾリウム、アンモニウム、及びピリジニウム型のカチオンを用いたイオン性液体を使用することができる。対アニオンは特に限定されるものではないが、BF 、PF 、(CFSO等が挙げられる。イオン性液体は前述の有機溶媒と混合して使用することが可能である。
電解液のリチウム塩の濃度は、電気伝導性の点から、0.5〜2.0Mが好ましい。なお、この電解質の温度25℃における導電率は0.01S/m以上であることが好ましく、電解質塩の種類あるいはその濃度により調整される。
電解質を固体電解質やゲル電解質とする場合には、ポリ(ビニリデンフルオライド)等を高分子材料として含有することが可能である。
更に、本実施形態の電解液中には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、サイクル寿命向上を目的としたビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート等や、過充電防止を目的としたビフェニル、アルキルビフェニル等や、脱酸や脱水を目的とした各種カーボネート化合物、各種カルボン酸無水物、各種含窒素及び含硫黄化合物が挙げられる。
(ケース)
ケース50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
(リード)
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接し、正極10の正極活物質層14と負極20の負極活物質層24との間にセパレータ18を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールすればよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、リチウムイオン二次電池は図1に示した形状のものに限定されず、コイン形状に打ち抜いた電極とセパレータとを積層したコインタイプや、電極シートとセパレータとをスパイラル状に巻回したシリンダータイプ等であってもよい。
(実施例1)
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
負極活物質として減圧下において1000℃の熱処理で不均化反応させたSiOを60重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを20重量%と、バインダーとして架橋型ポリアクリル酸(東亞合成製、ジュンロンPW−121)を20重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この負極スラリーを厚さ10μmの銅箔の両面に所定の厚みとなるように、均一に負極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて100℃の大気雰囲気下で上記負極活物質を乾燥させた。なお、上記銅箔の両面に塗布された負極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。上記負極活物質が形成された負極をロールプレス機によって、負極活物質層を負極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する負極シートを得た。
上記負極シートは、電極金型を用いて21×31mmの電極サイズに打ち抜き、そして赤外線乾燥炉にて180℃、2時間で熱処理し、実施例1に係るリチウムイオン二次電池用負極を作製した。また、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は92:8であった。
<リチウムイオン二次電池用正極の作製>
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を96重量%と、導電助剤としてケッチェンブラックを2重量%と、バインダーとしてPVDFを2重量%と、N−メチル−2−ピロリドンの溶媒とを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に所定の厚みとなるように、均一に正極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて、110℃の大気雰囲気下で上記正極活物質中のN−メチル−2−ピロリドン溶媒を乾燥させた。なお、上記アルミニウム箔の両面に塗布された正極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。上記正極活物質が形成された正極をロールプレス機によって、正極活物質層を正極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する正極シートを得た。
上記正極シートは、電極金型を用いて20×30mmの電極サイズに打ち抜き、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記作製した負極と正極とを、厚さ16μmの22×33mmサイズのポリプロピレン製のセパレーターを介して積層し、電極体を作製した。負極3枚と正極2枚とを負極と正極が交互に積層されるようセパレーター4枚を介して積層した。さらに、上記電極体の負極において、負極活物質層を設けていない銅箔の突起端部にニッケル製の負極リードを取り付け、一方、電極体の正極においては、正極活物質層を設けていないアルミニウム箔の突起端部にアルミニウム製の正極リードを超音波溶接機によって取り付けた。そしてこの電極体を、アルミニウムのラミネートフィルムの外装体内に挿入して周囲の1箇所を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成し、上記外装体内にFEC/DECが3:7の割合で配合された溶媒中に、リチウム塩として1M(mol/L)のLiPF6が添加された非水電解液を注入した後に、残りの1箇所を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封し、実施例1に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例2)
実施例2に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて200℃、2時間で熱処理した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は90:10であった。
(実施例3)
実施例3に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて215℃、2時間で熱処理した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は84:16であった。
(実施例4)
実施例4に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて225℃、2時間で熱処理した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は72:28であった。
(実施例5)
実施例5に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて250℃、2時間で熱処理した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は60:40であった。
(実施例6)
実施例6に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて275℃、2時間で熱処理した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は55:45であった。
(実施例7)
実施例7に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて300℃、2時間で熱処理した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は48:52であった。
(実施例8)
実施例8に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて325℃、2時間で熱処理した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は31:69であった。
(実施例9)
実施例9に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極バインダーとして非架橋型ポリアクリル酸(東亞合成製、ジュリマーAC−10H)を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物のIR吸収スペクトルの強度比は91:9であった。
(実施例10)
実施例10に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて325℃、2時間で熱処理した以外は、実施例10と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物のIR吸収スペクトルの強度比は29:71であった。
(比較例1)
比較例1に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて150℃、2時間で熱処理した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は100:0であった。
(比較例2)
比較例2に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートを赤外線乾燥炉にて350℃、2時間で熱処理した以外は、比較例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理した負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基および酸無水物のIR吸収スペクトルは確認できなかった。
(比較例3)
比較例3に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極シートの熱処理を実施しなかった以外は、比較例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、負極シートをFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基のIR吸収スペクトルの強度比は100:0であった。
<放電レート特性の評価方法>
実施例及び比較例で作製した評価用リチウムイオン二次電池について、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用い、放電レート特性の測定を行った。0.5Cで4.2Vまで定電流定電圧充電し、0.5C、1C、2C、3C、5Cの順で、2.5Vまで定電流放電し、各レートにおける放電容量を測定し、3Cにおける容量維持率で放電レート特性を評価した。
但し、1Cは電池セルを定電流放電した際、1時間で放電終了となる電流値のこととする。
なお放電レート特性の評価における容量維持率とは、0.5Cの放電容量と各レートの放電容量の比のことを指す。
<サイクル特性の評価方法>
実施例及び比較例で作製した評価用リチウムイオン二次電池について、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用い、サイクル特性の測定を行った。0.5Cで4.2Vまで定電流定電圧充電し、1Cで2.5Vまで定電流放電する充放電サイクルを300サイクル繰り返し、300サイクル後の容量維持率を測定し、サイクル特性を評価した。
なおサイクル特性評価における容量維持率とは、1サイクル目の放電容量と各サイクルの放電容量の比のことを指す。
表1に実施例1〜10及び比較例1〜3のポリアクリル酸のカルボキシ基と酸無水物の存在比、架橋/非架橋、3Cにおける容量維持率、及び300サイクルにおける維持率について示す。
ただし、表1中の実施例、比較例に示す放電レート測定の結果(3Cにおける容量維持率)、サイクル特性の結果(300サイクルにおける容量維持率)は、全て25℃の温度下で測定した。
Figure 2017152121
上記表1より明らかなように、カルボキシ基と酸無水物基を含有するポリアクリル酸バインダーを用いることにより放電レート特性、およびサイクル特性が向上することがわかった。さらに、ポリアクリル酸中のカルボキシ基と酸無水物のIR吸収スペクトルの強度比が90:10〜60:40の範囲であることで放電レート特性、およびサイクル特性が向上に好適な状態であることが明らかになった。
実施例1から8において、比較例1から3と比較して、放電レート特性およびサイクル特性における容量維持率の向上が見られた。これはカルボキシ基の減少によりのLiイオンの捕縛が抑制され、かつ残ったカルボキシ基により活物質層と集電体との接着性が確保され、かつ酸無水物による3次元的ネットワークの強化による、膨張抑制効果によるものと考える。
さらに、実施例2から5において、放電レート特性およびサイクル特性における容量維持率のさらなる向上が見られた。これは、ポリアクリル酸中のカルボキシ基と酸無水物のIR吸収スペクトルの強度比が90:10〜60:40にあることで、Liイオンの捕縛の抑制効果、活物質と集電体との接着性向上効果、3次元的ネットワークの強化による膨張抑制効果が好適なバランスになることで実現されたと考える。
さらに、実施例1および実施例8において、実施例9および実施例10を比較すると、ポリアクリル酸が架橋型であることで放電レート特性およびサイクル特性における容量維持率が向上することが示された。これは架橋型のポリアクリル酸を使うことでLiイオンの捕縛抑制効果、架橋による強固な3次元ネットワークによる膨張抑制効果によるものと考える。

Claims (4)

  1. 負極活物質とバインダーと負極集電体からなるリチウムイオン二次電池用負極において、負極集電体上に、負極活物質とポリアクリル酸とを含有する負極活物質層を備え、前記ポリアクリル酸は一部にカルボキシ基および酸無水物基を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  2. 前記負極は、前記負極を測定したIR吸収スペクトルにおいて、カルボキシ基を示す1235cm−1付近のピーク強度と、酸無水物を示す1800cm−1付近のピーク強度の比率が90:10〜60:40であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  3. 前記負極は、ポリアクリル酸が架橋型であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、電解質とを備えたリチウムイオン二次電池。
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