以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るクリーニング装置を備えたインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の斜視図である。図2は、プリンタ1の内部構成を示す平面図である。なお、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を示している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、プリンタ1の設置態様を何ら限定するものではない。また、符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは、左右方向に対応する。符号Xは、主走査方向Yと平面視において直交する副走査方向を示している。副走査方向Xは、前後方向に対応する。ただし、主走査方向Yおよび副走査方向Xは特に限定される訳ではなく、プリンタ1の形態などに応じて適宜に設定可能である。
図1に示すように、プリンタ1は、記録紙5に印刷を行うものである。記録紙5はロール状の媒体であり、所謂ロール紙である。ここでは、記録紙5が本発明の「記録媒体」に対応する。しかし、本発明の記録媒体は、記録紙5に限定されない。例えば、記録媒体は、樹脂製のシートであってもよい。また、記録媒体は、可撓性を有するシートに限らず、ガラス基板などの材質が硬い媒体であってもよい。
プリンタ1は、本体10と、脚11と、操作パネル12と、カバー15とを備えている。本体10は、主走査方向Yに延びたケーシング10Aを有する。脚11は、本体10を支持するものである。脚11は、本体10の下面に設けられている。操作パネル12は、本体10の右側の前面に設けられている。操作パネル12は、使用者が印刷に関する操作を行うものである。図示は省略するが、操作パネル12には、モノクロ印刷またはカラー印刷、解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報が表示される表示部、および、印刷に関する情報を入力するための入力部などが備えられている。
カバー15は、本体10に設けられている。ここでは、カバー15は、本体10の上部に開閉自在に取り付けられている。カバー15の下方であって、本体10の下側には、記録紙5を排出する排出口13が形成されている。排出口13の前方かつ下方の位置には、排出口13から排出される記録紙5を案内するガイド14が設けられている。ガイド14は、排出口13から前方斜め下向きに延びている。
次に、プリンタ1の内部構成について説明する。図2に示すように、プリンタ1は、ガイドレール20と、プラテン25と、ヘッド駆動機構28と、インクヘッド40(図3参照)と、クリーニング装置100と、備えている。ガイドレール20は、カバー15の下方に配置されている。ガイドレール20は主走査方向Yに延びている。
プラテン25は、記録紙5への印刷の際、記録紙5を支持するものである。プラテン25には、記録紙5が載置される。記録紙5への印刷は、プラテン25上において行われる。プラテン25は、主走査方向Yに延びている。プラテン25は、ガイドレール20の中央部分の下方かつ前方に配置されている。プラテン25は、ガイド14と連なっている。
本実施形態では、プラテン25の左端部および右端部には、記録紙5を副走査方向Xに搬送させる上下一対のローラ26(なお、図2では上側のローラ26のみ図示されており、下側のローラ26は省略している)がそれぞれ配置されている。ただし、上下一対のローラ26の数および設置位置は特に限定されない。上下一対のローラ26のうち、いずれか一方のローラ26は自ら回転する駆動ローラ(グリッドローラともいう。)である。他方のローラ26は、上記駆動ローラと共に記録紙5を挟み込むためのピンチローラである。ピンチローラは、上下方向に移動可能に構成されている。
ヘッド駆動機構28は、インクヘッド40を主走査方向Yに移動させる機構である。ここでは、ヘッド駆動機構28は、プーリ21と、プーリ22と、無端状のベルト23と、サーボモータ24と、キャリッジ30とを有している。プーリ21は、ガイドレール20の右端部分に設けられている。プーリ22は、ガイドレール20の左端部分に設けられている。ベルト23は、プーリ21とプーリ22とに巻き掛けられている。ここでは、サーボモータ24は、プーリ21に接続されているが、プーリ22に接続されていてもよい。サーボモータ24がプーリ21を駆動すると、プーリ21とプーリ22との間においてベルト23が走行する。
キャリッジ30は、ベルト23に取り付けられている。図示は省略するが、キャリッジ30は、ガイドレール20に係合している。キャリッジ30は、ベルト23の走行に従って、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。
複数のインクヘッド40は、記録紙5にインクを吐出するものである。インクヘッド40は、プラテン25よりも上方に配置されている。インクヘッド40は、プラテン25に向かって下方にインクを吐出する。図3は、インクヘッド40の底面図である。本実施形態では、図3に示すように、複数のインクヘッド40は、ヘッドホルダ40aに搭載されている。複数のインクヘッド40は、主走査方向Xに並んでいる。各インクヘッド40は、底面(ノズル面)41aに形成され、副走査方向Xに並ぶ複数のノズル41を有している。なお、ノズル41は微小であるため、図3では複数のノズル41を直線で表している。インクヘッド40は、ノズル41からインクを下方に向かって吐出する。ここでは、インクヘッド40には、チューブ46を介してインクカートリッジ45が接続している。インクカートリッジ45には、インクが収容されている。インクヘッド40内のインクは、チューブ46を通じてインクカートリッジ45から供給される。複数のノズル41からは、それぞれ異なる色のインクが吐出される。図2に示すように、インクヘッド40は、ガイドレール20にスライド自在に係合している。本実施形態では、インクヘッド40は、ヘッドホルダ40aを介してキャリッジ30に取り付けられており、ヘッドホルダ40aおよびキャリッジ30を介してガイドレール20にスライド自在に係合している。インクヘッド40は、ヘッド駆動機構28によって、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。
なお、ここでは、インクヘッド40は、記録紙5に印刷をしていないとき、または、クリーニングが開始される前には、ガイドレール20の右端側に位置するホームポジションHPに待機するように構成されている。ヘッド駆動機構28は、インクヘッド40をホームポジションHPに移動させるように構成されている。なお、ホームポジションHPの位置は特に限定されないが、平面視において、プラテン25を除く位置であることが好ましい。例えば、ホームポジションHPは、ガイドレール20の左端側に位置していてもよい。
本実施形態では、本体10内の右端部分の下側であって、ホームポジションHPには、キャップ53が配置されている。図4に示すように、インクヘッド40は、ホームポジションHPにおいて待機しているときに、キャップ53の上方に位置する。このとき、少なくともノズル41は、キャップ53によって下方から覆われている。このことによって、ノズル41の乾燥が抑制される。また、詳しくは後述するが、キャップ53には、インクヘッド40内のインクを吸引する吸引機能を有する。
次に、本実施形態に係るクリーニング装置100について説明する。プリンタ1による印刷が行われると、インクヘッド40のノズル面41aには、インク、または、異物などの付着物が付着することがある。この付着物によって、印刷中、記録紙5が汚れてしまうことがあり、印刷品質が低下することがある。そこで、クリーニング装置100は、インクヘッド40のノズル面41aに付着したインクなどの付着物を取り除く。図2に示すように、クリーニング装置100は、プリンタ1の内部に設けられている。ここでは、クリーニング装置100は、プラテン25とホームポジションHPとの間に設けられている。図5は、クリーニング装置100の平面図である。図6は、クリーニング装置100の正面図である。図5に示すように、クリーニング装置100は、ワイパー50と、回転軸81と、洗浄液槽60と、パッド70と、駆動機構80と、制御装置90(図15参照)を備えている。
図7Aは、ワイピング位置P1において、ワイパー50がノズル面41aをワイピングする状態を示す模式図である。図7Aに示すように、ワイパー50は、インクヘッド40のノズル面41aをワイピングするものである。ここでは、ワイパー50は、ノズル面41aと接触する接触部50a1を有する。接触部50a1は、例えば、ワイパー50の先端部である。ワイパー50がノズル面41aをワイピングすることで、ノズル面41aに付着した付着物が取り除かれる。ここでは、ワイパー50がノズル面41aをワイピングするときの接触部50a1の位置P1を「ワイピング位置P1」と称する。ワイピング位置P1とは、ワイパー50の接触部50a1がノズル面41aに接触したときのワイパー50の接触部50a1の位置のことである。ワイピング位置P1は、本発明の「第1の位置」に対応する。そして、ワイパー50の接触部50a1がノズル面41aに接触した状態で、インクヘッド40が主走査方向Yにおける右から左への一方向Y1に移動することで、ノズル面41aに付着した付着物は、ワイパー50の接触部50a1によって取り除かれる。ノズル面41aから取り除かれた付着物は、典型的には、ワイパー50の接触部50a1に付着する。
本実施形態では、図5に示すように、ワイパー50は、回転軸81によって支持されている。ここでは、ワイパー50の一端には、回転軸81が設けられている。回転軸81には、ワイパー50が取り換え可能に設けられている。回転軸81は、前後方向に延びた部材である。回転軸81が回転することで、ワイパー50は、回転軸81を中心に回転する。図6に示すように、回転軸81は、クリーニング装置100を本体10に配置したときにおける洗浄液槽60の上方に設けられている。
ワイパー50は、前後方向に延びた板状の部材である。ここでは、ワイパー50は、図7Aに示すように、第1側面50aと、第2側面50bと、先端面50cとを備えている。第1側面50aおよび第2側面50bは、回転軸81から先端に向かって延びた面である。ここでは、ワイパー50がワイピング位置P1に位置しているとき、第1側面50aは、第2側面50bの後方に位置している。ここでは、第1側面50aと第2側面50bとは互いが平行になるように配置されているが、第1側面50aと第2側面50bとの間の距離は、先端に向かうに従って広がってもよいし、先端に向かうに従って狭くなってもよい。
先端面50cは、第1側面50aの先端と第2側面50bの先端とをつなぐ面である。ここでは、第1側面50aと先端面50cとが成す角度、および、第2側面50bと先端面50cとが成す角度は、それぞれ直角である。しかしながら、第1側面50aと先端面50cとが成す角度、および、第2側面50bと先端面50cとが成す角度は、それぞれ鋭角であってもよいし、鈍角であってもよい。ワイパー50の材質は特に限定されないが、可撓性を有する材質であることが好ましい。例えば、ワイパー50は、ゴム製である。
洗浄液槽60は、洗浄液55を貯留するものである。ここで、「洗浄液」は、ワイパー50を洗浄するための液である。洗浄液55の種類は特に限定されない。洗浄液55としては、例えば、水、または、有機溶剤などを適宜に用いることができる。
図7Bは、洗浄位置P2におけるワイパー50の位置を示す模式図である。図7Bに示すように、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55には、ワイパー50の接触部50a1が浸される。ここでは、ワイパー50のうち、ワイピングの際にノズル面41aと接触した部位が洗浄液55に少なくとも浸される。ワイパー50が洗浄液55に浸されることによって、ワイパー50に洗浄液55が付けられる。ここでは、ワイパー50の接触部50a1に洗浄液55が浸されたときのワイパー50の接触部50a1の位置P2を「洗浄位置P2」という。洗浄位置P2は、ワイパー50の少なくとも一部(ここでは、ノズル面41aをワイピングした部位)が洗浄液槽60内の洗浄液55に浸された位置である。ここでは、洗浄位置P2は、ワイパー50の先端が下方に向いたときの接触部50a1の位置である。本実施形態では、洗浄位置P2は、本発明の「第2の位置」に対応する。
図8は、洗浄液槽60の平面図である。図9は、図8のIX−IX断面における断面図である。図10は、図8のX−X断面における断面図である。図8に示すように、洗浄液槽60の形状は、矩形状である。具体的には、洗浄液槽60は、底板61と、前板62と、後板63と、左板64と、右板65とを備えている。図9に示すように、底板61は、正面視において、左下に向かって傾斜するように配置されている。前板62、後板63、左板64および右板65は、それぞれ底板61から上方に向かって延びている。前板62は、底板61の前端と連続している。後板63は、底板61の後端と連続している。図8に示すように、前板62と後板63とは、互いが平行となるように位置している。左板64の下端は、底板61の左端と連続している。また、左板64の前端は、前板62の左端と連続し、左板64の後端は、後板63の左端と連続している。右板65の下端は、底板61の右端と連続している。また、右板65の前端は、前板62の右端と連続し、右板65の後端は、後板63の右端と連続している。左板64と右板65とは、互いが平行となるように位置している。
本実施形態では、洗浄液槽60には、パッド70が配置される領域が設けられている。ここでは、洗浄液槽60は、第1区画板66aと第2区画板66bとを備えている。第1区画板66aおよび第2区画板66bは、底板61から上方に向かって延びている。第1区画板66aは、左板64および右板65と平行になるように配置されている。第2区画板66bは、前板62および後板63と平行になるように配置されている。第1区画板66aの後端は、後板63と連続している。第1区画板66aの前端は、第2区画板66bの左端と連続している。そして、第2区画板66bの右端は、右板65と連続している。ここでは、底板61、前板62、後板63の一部、左板64、右板65の一部、第1区画板66aおよび第2区画板66bによって囲まれる空間68に、洗浄液55が貯留されている。空間68は、平面視において、L字状の空間である。
洗浄液槽60では、オーバーフロー式の構成を採用している。ここでは、洗浄液槽60は、隔壁67を備えている。隔壁67は、空間68を二つの空間に分けるものである。隔壁67は、底板61から上方に向かって延びたものである。ここでは、隔壁67の前端は前板62と連続し、隔壁67の後端は第2区画板66bと連続している。図9に示すように、隔壁67の上端は、洗浄液槽60の上端(すなわち、前板62、後板63、左板64、右板65、第1区画板66aおよび第2区画板66bのそれぞれの上端)よりも下方に位置している。
ここでは、隔壁67によって、洗浄液槽60内の空間68は、二つの空間、すなわち、洗浄空間68aと、排出空間68bとに分けられている。洗浄空間68aは、洗浄液55が貯留された空間であり、ワイパー50が浸される空間である。排出空間68bは、洗浄空間68a内の洗浄液55が溢れた場合、溢れた洗浄液55が流れる先の空間である。ここでは、隔壁67上には、洗浄液55が通る通路68cが設けられている。通路68cによって、洗浄空間68aと排出空間68bとは連通している。洗浄空間68aには、所定のタイミングで洗浄液55が追加される。洗浄液55が洗浄空間68aから溢れたとき、溢れた洗浄液55は、通路68cを通って、排出空間68bへ流れる。
図6に示すように、洗浄液槽60を構成する部位のうち、排出空間68bを形成する部位には、第1排出孔75が形成されている。ここでは、第1排出孔75は、前板62のうち排出空間68bを囲う部位の下部(上下方向の中心よりも下の部位)に形成されている。第1排出孔75には、第1排出チューブ76が接続されている。ここでは、第1排出チューブ76の一端は、第1排出孔75に挿入され、他端は、排液タンク77が接続されている。排出空間68bに流れた洗浄液55は、第1排出孔75から第1排出チューブ76内を通り、排液タンク77に流れる。
本実施形態では、洗浄液槽60を構成する部位のうち、洗浄空間68aを形成する部位には、第2排出孔78が形成されている。ここでは、第2排出孔78は、前板62のうち洗浄空間68aを囲う部位の下部に形成されている。第2排出孔78は、第1排出孔75よりも小さいが、同じであってもよいし、大きくてもよい。第2排出孔78には、第2排出チューブ79が接続されている。図11は、洗浄液槽60と、ポンプ71と、キャップ53との接続関係を示した模式図である。ここでは、第2排出チューブ79の一端は、第2排出孔78に挿入され、他端は、ポンプ71に接続されている。ポンプ71は、例えば、トロコイドポンプである。第2排出チューブ79の途中部分には、第2排出チューブ79を開閉自在に操作する弁79aが設けられている。ここでは、弁79aによって、第2排出チューブ79が開放されているとき、ポンプ71が駆動することによって、洗浄空間68a内の洗浄液55は、第2排出孔78から第2排出チューブ79を通って外部に排出される。
なお、本実施形態では、インクヘッド40とインクカートリッジ45とを接続するチューブ46には、チューブ46を開閉自在に操作する弁47が設けられている。上述したキャップ53には、吸引チューブ54が接続している。吸引チューブ54の一端は、キャップ53に接続され、他端は、第2排出チューブ79の途中部分に接続している。すなわち、吸引チューブ54は、第2排出チューブ79を介してポンプ71に接続している。弁47によってチューブ46が開放されているとき、ポンプ71が駆動することによって、キャップ53によって覆われたインクヘッド40のノズル41からインクは、吸引チューブ54を通って吸引される。本実施形態では、1つのポンプ71を使用して、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55の排出と、インクヘッド40内のインクの吸引とを行うことができる。
本実施形態では、図6に示すように、洗浄液槽60は、プリンタ1の本体10の所定の空間に収容される。この所定の空間とは、例えば、回転軸81の下方に位置する空間である。ここでは、洗浄液槽60の前板62には、持ち手62aが設けられている。使用者は、持ち手62aを持って、洗浄液槽60を前後方向にスライドすることで、本体10の上記所定の空間に収容したり、上記所定の空間から取り出したりすることができる。
本実施形態では、図9に示すように、洗浄液槽60の底面(ここでは、底板61)のうち、洗浄空間68aを囲む底面の少なくとも一部には、フィルタ69が配置されている。フィルタ69は、洗浄液槽60の洗浄空間68a内でワイパー50を洗浄した際に、ワイパー50から取り除かれた付着物を付着させるものである。ここでは、洗浄液槽60内で取り除かれた付着物は、下方に移動し、洗浄液槽60に沈殿する。そして、沈殿した付着物は、フィルタ69に付着される。フィルタ69の材質は特に限定されない。例えば、フィルタ69は、多孔質状のポリエチレン系の繊維フィルタであることが好ましい。
図8に示すように、パッド70は、ワイパー50の接触部50a1が接触すると、ワイパー50に付着した洗浄液を取り除く。ここで、「洗浄液を取り除く」には、ワイパー50に付着した洗浄液の全てを取り除くことの他に、ワイパー50に付着した洗浄液の一部のみを取り除くことが含まれる。ここでは、パッド70は、ワイパー50に付けられた洗浄液55を所定の量取り除くものである。ここで、「所定の量」とは、ワイパー50から洗浄液55が完全に取り除かれた量ではなく、ワイパー50に多少の洗浄液55が残っている状態(例えば、ノズル41に洗浄液55が入り込まない程度の量が残っている状態)となる量のことである。ここでは、パッド70は、洗浄液槽60に設けられている。具体的には、パッド70は、平面視において、洗浄液槽60の内部のうち、洗浄空間68aおよび排出空間68bを除いた空間に配置されている。図10に示すように、パッド70は、回転軸81よりも下方に配置されている。回転軸81の軸方向から見たとき、パッド70は、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55と並ぶように配置されている。言い換えると、回転軸81の軸方向から見たとき、パッド70は、洗浄液55が貯留される空間である洗浄空間68aと並ぶように配置されている。ここでは、洗浄空間68aの右方にパッド70が配置されている。なお、本実施形態において、「回転軸81の軸方向」とは、クリーニング装置100を正面から見た方向のことである。
ここでは、図8に示すように、洗浄液槽60の第1区画板66a、第2区画板66b、後板63および右板65によって囲まれた上記空間には台72が設けられており、図10に示すように、その台72にパッド70が配置されている。本実施形態では、台72は、傾斜している。詳しくは、台72は、左方に向かうに従って、すなわち、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55に向かうに従って下方に傾斜したものである。そのため、台72に配置されたパッド70の上面70aは、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55に向かうに従って下方に傾斜している。ここでは、パッド70の上面70aは、正面視において左斜め下に傾斜している。パッド70の上面70aは、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55の液面55aに対して、傾いた状態で配置されている。パッド70の上面70aは、平らな面である。ただし、パッド70の上面70aは、水平に配置、すなわち、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55の液面55aに対して平行に配置されていてもよい。また、パッド70の上面70aは、平らな面に限定されない。
本実施形態では、パッド70の少なくとも一部は、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55の液面55aよりも上方に位置している。本実施形態では、パッド70のうち、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55から離れた部位は、貯留された洗浄液55の液面よりも上方に位置している。なお、パッド70の全てが、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55の液面55aよりも上方に配置されていてもよいし、下方に配置されていてもよい。
パッド70は、吸収性を有する材料によって形成されている。詳しくは、パッド70は、多孔質材料によって形成されている。本実施形態では、パッド70は、ポリオレフィンシートによって形成されている。ポリオレフィンシートは、吸収性が高く、かつ、耐溶剤性が高い。そのため、洗浄液55が吸収されるパッド70として、ポリオレフィンシートを使用することは有用であるといえる。なお、本実施形態では、パッド70は、本発明の「取り除き部材」に対応する。
図12は、取り除き位置P3において、ワイパー50とパッド70との位置関係を示した模式図である。ここでは、図12に示すように、取り除き位置P3において、パッド70にワイパー50が押し当てられることによって、ワイパー50に付着した洗浄液55が取り除かれる。取り除かれた洗浄液55は、パッド70に吸収される。ここでは、ワイパー50に付けられた洗浄液55がパッド70によって所定の量取り除かれたときのワイパー50の位置P3を「取り除き位置P3」という。取り除き位置P3は、本発明の「第3の位置」に対応する。取り除き位置P3において、パッド70には、ワイパー50の少なくとも一部が接触する。言い換えると、取り除き位置P3において、パッド70には、ワイパー50が押し当てられる。ワイパー50は、パッド70の上面70aに対して斜めに接触する。本実施形態では、回転軸81の軸方向から見たとき、すなわち、正面視において、ワイパー50は、パッド70と点接触している。詳しくは、正面視において、ワイパー50は、パッド70と点50dで接触している。ここでは、点50dは、回転軸81の軸方向から見たとき、第1側面50aの端点であって、第1側面50aと先端面50cとの境目となる位置の点である。点50dは、接触部50a1の一部である。ここでは、図示は省略するが、平面視において、取り除き位置P3では、ワイパー50は、パッド70と線接触している。
図12に示すように、回転軸81の軸方向から見たとき、取り除き位置P3において、ワイパー50における点50dから回転軸81に向かって延びた面である第1側面50aと、パッド70の上面70aとが成す角度R11は、30度以上であることが好ましい。本実施形態では、取り除き位置P3において、第1側面50aと、パッド70の上面70aとが成す角度R11は、例えば、45度である。同様に、回転軸81の軸方向から見たとき、取り除き位置P3において、ワイパー50の先端面50cとパッド70の上面70aとが成す角度R12は、30度以上であることが好ましい。本実施形態では、取り除き位置P3において、先端面50cとパッド70の上面70aとが成す角度R12は、例えば、45度である。
図5に示すように、駆動機構80は、ワイパー50を移動させる機構である。ここでは、駆動機構80によって、ワイパー50を回転させることで、ワイパー50の先端の位置を移動させる。ここでは、駆動機構80は、回転軸81に接続している。駆動機構80は、ワイパー50を、ワイピング位置P1(図7A参照)と、洗浄位置P2(図7B参照)と、取り除き位置P3(図12参照)とに移動させる機構である。図13は、駆動機構80を示す図であり、クリーニング装置100の背面図である。ここでは、図13に示すように、駆動機構80は、従動プーリ82と、駆動プーリ83と、無端状のベルト84と、駆動モータ85とを備えている。図5に示すように、従動プーリ82は、回転軸81の後端に設けられている。図13に示すように、従動プーリ82から所定の距離離れた位置には、駆動プーリ83が本体10に対して回転可能に設けられている。従動プーリ82と、駆動プーリ83とには、無端状のベルト84が巻き掛けられている。また、駆動プーリ83には、駆動モータ85が接続されている。ここでは、駆動モータ85が駆動することで、駆動プーリ83が回転する。駆動プーリ83の回転に伴って、ベルト84が走行する。ベルト84の走行することによって、従動プーリ82が回転する。従動プーリ82の回転に伴って、回転軸81が回転することで、ワイパー50が回転軸81を中心に回転する。ワイパー50が回転することで、ワイパー50の接触部50a1は、ワイピング位置P1と、洗浄位置P2と、取り除き位置P3とに移動する。
本実施形態では、洗浄位置P2において、駆動機構80は、ワイパー50を以下のように回転させるように構成されている。図14は、一次攪拌を行う状態を示す模式図である。図14に示すように、ここでは、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55の液面よりも上方の位置を第1の洗浄位置P21とし、第1の洗浄位置P21よりも下方であって、洗浄液55内の位置を第2の洗浄位置P22とする。このとき、洗浄位置P2において、駆動機構80は、ワイパー50を第1の洗浄位置P21と第2の洗浄位置P22との間を所定の第1の回数往復するように構成されている。すなわち、洗浄液55の液面を複数回通過するようにワイパー50が移動する。このように、第1の洗浄位置P21と第2の洗浄位置P22との間を往復するワイパー50の動作のことを、「一次攪拌」という。
また、図7Bに示すように、洗浄位置P2において、駆動機構80は、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55に浸された状態において、ワイパー50が所定の距離の間を所定の第2の回数往復するような動作を行わせるように構成されている。すなわち、ワイパー50は、洗浄液55内に入れられている状態で、所定の間隔を往復する動作を行う。言い換えると、駆動機構80によって、洗浄位置P2において、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55にワイパー50の接触部50a1が浸された状態で、ワイパー50の接触部50a1を振動させる。このように、洗浄液55内でワイパー50が往復運動する動作のことを「二次攪拌」という。なお、上述した一次攪拌の第1の回数と、二次攪拌の第2の回数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
次に、制御装置90について説明する。図15は、プリンタ1のブロック図である。図15に示すように、制御装置90は、マイクロコンピュータからなっており、本体10の内部に設けられている。制御装置90は、CPUと、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。ここでは、マイクロコンピュータ内に保存されたプログラムを使用して、印刷に関する制御、および、クリーニングに関する制御を行う。
制御装置90は、プーリ21に接続されたサーボモータ24と、インクヘッド40と、ワイパー50に接続された駆動機構80の駆動モータ85と、キャップ53および洗浄液槽60に接続されたポンプ71と接続しており、サーボモータ24、インクヘッド40、駆動モータ85、およびポンプ71を制御する。
制御装置90は、サーボモータ24を制御することで、プーリ21の回転、および、ベルト23(図2参照)の走行を制御する。制御装置90は、インクヘッド40がインクを吐出するタイミングなどを制御する。また、制御装置90は、駆動モータ85を制御することで、駆動プーリ83の回転、ベルト84の走行を制御する。すなわち、制御装置90は、駆動モータ85を制御することで、ワイパー50がワイピング位置P1と、洗浄位置P2と、取り除き位置P3とに移動することを制御する。また、制御装置90は、駆動機構80の駆動モータ85を制御することで、上述した一次攪拌および二次攪拌に関する制御を行う。制御装置90は、ポンプ71を制御することで、インクヘッド40内のインクを吸引するタイミング、および、洗浄液槽60内の洗浄液55を排出するタイミングなどを制御する。
以上、クリーニング装置100を備えたプリンタ1の構成について説明した。次に、クリーニング装置100におけるクリーニングを行う手順について説明する。まず、制御装置90がヘッド駆動機構28を制御することで、インクヘッド40をホームポジションHP(図2参照)へ移動させる。図4に示すように、ホームポジションHPに移動したインクヘッド40において、キャップ53が装着される。本実施形態では、インクヘッド40にキャップ53が装着された状態で、クリーニングが開始される。
クリーニングが開始されると、まず、駆動機構80によって、図7Bに示すように、ワイパー50が洗浄位置P2に移動する。その後、洗浄位置P2において、洗浄液槽60(典型的には、洗浄空間68a)に貯留された洗浄液55にワイパー50が浸される。このことによって、ワイパー50に洗浄液55が付けられる。洗浄液55がワイパー50に付けられた状態において、駆動機構80によって、ワイパー50は、正面視において回転軸81を中心に時計回りR1に回転することで、洗浄位置P2から取り除き位置P3(図12参照)に移動する。図12に示すように、洗浄位置P2から取り除き位置P3に移動するとき、向きR3に回転することで、ワイパー50の接触部50a1は、洗浄位置P2および取り除き位置P3よりも上方であって、かつ、回転軸81の上方を通過する。取り除き位置P3において、回転軸81の軸方向から見たとき、ワイパー50の点50dがパッド70と接触する。上述のように、取り除き位置P3において、第1側面50aとパッド70の上面70aとが成す角度R11は30度以上であり、ワイパー50の先端面50cとパッド70の上面70aとが成す角度R2は30度以上である。このとき、制御装置90は、取り除き位置P3において、ワイパー50の接触部50a1をパッド70に接触させた状態でワイパー50を停止させる。ここでは、制御装置90は、取り除き位置P3において、ワイパー50の接触部50a1をパッド70に所定の時間の間接触させるように駆動機構80を制御する。この所定の時間は、制御装置90に予め記憶されている。取り除き位置P3において、第1側面50a、第2側面50bおよび先端面50cに付いた洗浄液55の一部は、下方に向かって流れパッド70に吸収される。
取り除き位置P3において、ワイパー50に付けられた洗浄液55の一部を取り除いた後、駆動機構80によって、ワイパー50は、正面視において回転軸81を中心に反時計回りR2に回転することで、取り除き位置P3からワイピング位置P1(図7A参照)に移動する。そして、図7Aに示すように、ワイピング位置P1において、ワイパー50は、先端が上方を向くようにして固定される。ワイパー50がワイピング位置P1に移動した後、インクヘッド40がホームポジションHPから移動する。ここでは、まず、インクヘッド40に装着されていたキャップ53が取り外される。その後、ヘッド駆動機構28によって、インクヘッド40は、主走査方向Yに沿って、右から左への一方向Y1、すなわち、クリーニング装置100に向かって移動する。
そして、インクヘッド40がワイピング位置P1に達すると、インクヘッド40のノズル41のうち、最も左に位置するノズル41、および、最も左に位置するノズル41近傍に位置するノズル面41aの部位がワイパー50によってワイピングされる。このとき、インクヘッド40のワイピングされた部位に付着した付着物は、ワイパー50によって取り除かれる。取り除かれた付着物は、例えば、ワイパー50に付着する。なお、ワイピングが終了した後、インクヘッド40は、ホームポジションHPに移動する。
その後、駆動機構80によって、ワイパー50は、正面視において回転軸81を中心にして反時計回りR2に回転することで、ワイピング位置P1から洗浄位置P2(図14参照)に移動する。洗浄位置P2に移動した後、上述した一次攪拌が行われた後に、二次攪拌が行われる。具体的には、図14に示すように、洗浄位置P2において、第1の洗浄位置P21と第2の洗浄位置P22との間をワイパー50が往復するようにして一次攪拌を行う。次に、図7Bに示すように、ワイパー50の一部が洗浄液槽60に貯留された洗浄液55に浸かるような位置まで、ワイパー50を移動させる。そして、洗浄液55内でワイパー50が所定の間隔を所定の第2の回数往復するような動作を行うようにして、二次攪拌を行う。一次攪拌および二次攪拌によって、ワイパー50に付着した付着物は、ワイパー50から取り除かれる。取り除かれた付着物は、洗浄液槽60で沈殿する。その後、付着物は、洗浄液槽60の底板61に設けられたフィルタ69(図9参照)に付着する。なお、一次攪拌が行われる回数、および、二次攪拌が行われる回数は特に限定されない。例えば、一次攪拌が行われた後に、二次攪拌が行われ、その後、もう一度、一次攪拌と二次攪拌とが順に行われてもよい。
そして、一次攪拌および二次攪拌が終了した後、図12に示すように、ワイパー50を取り除き位置P3まで移動させて、ワイパー50の接触部50a1に付けられた洗浄液55を取り除く。その後、図7Aに示すように、ワイパー50をワイピング位置P1に移動させ、インクヘッド40のノズル41のうち左から2番目に位置するノズル41をワイピングする。以上のような手順で、他のノズル41に関するワイピングを行うことで、ノズル面41aのワイピングが終了する。なお、全てのノズル41においてワイパー50によるワイピングが終了した後、ヘッド駆動機構28によって、インクヘッド40は、ホームポジションHPに移動する。
以上のように、本実施形態では、洗浄液槽60内の洗浄液55にワイパー50を浸すことによって、ワイパー50には、洗浄液55が付けられる。洗浄液55が付けられたワイパー50は、取り除き位置P3において、パッド70によって、所定の量の洗浄液55が取り除かれる。よって、所定の量の洗浄液55が取り除かれた状態で、ワイパー50はインクヘッド40のノズル面41aをワイピングすることができる。したがって、ノズル面41aに付着した付着物を取り除くことができることができると共に、ノズル面41aをワイピングする際に、ノズル41に洗浄液55が入り込むことを抑制することができる。その結果、ノズル41の吐出不良が生じることを抑制することができる。
本実施形態では、図12に示すように、回転軸81の軸方向から見たとき、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55とパッド70とは、並ぶように配置されている。回転軸81は洗浄液槽60よりも上方に配置されている。制御装置90は、駆動機構80を制御して回転軸81を回転させることで、ワイパー50をワイピング位置P1(図7A参照)、洗浄位置P2(図7B参照)および取り除き位置P3(図12参照)に移動させている。洗浄位置P2と取り除き位置P3との間にワイパー50の接触部50a1が移動するとき、ワイパー50の接触部50a1は、回転軸81、洗浄位置P2および取り除き位置P3よりも上方を通過する。このことによって、回転軸81を中心にワイパー50を回転させるという簡単な構成で、ワイパー50をワイピング位置P1、洗浄位置P2および取り除き位置P3に移動させることができるため、例えば、ワイパー50が左右方向にスライド移動するようなクリーニング装置に比べて、ワイパー50が左右方向に移動する距離を短くすることができる。よって、クリーニング装置100を小型化することができる。
本実施形態では、制御装置90は、取り除き位置P3において、ワイパー50の接触部50a1をパッド70に接触させた状態でワイパー50を停止させるように駆動機構80を制御する。回転軸81の軸方向から見たとき、取り除き位置P3において、ワイパー50は、パッド70に対して点50dで接触している。また、回転軸81の軸方向から見たとき、取り除き位置P3において、点50dから回転軸81へ延びた第1側面50aとパッド70の上面70aとが成す角度R11は、30度以上である。このことによって、ワイパー50の第1側面50aおよび先端面50cに付いた洗浄液55は、取り除き位置P3において、パッド70に向かって流れ易くなる。そのため、第1側面50aおよび先端面50cに付いた洗浄液55を取り除き易い。
本実施形態では、パッド70の上面70aは、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55に向かうに従って下方に傾斜している。パッド70の上面70aは、平らな面である。パッド70の上面70aの少なくとも一部は、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55の液面55aよりも上方に位置している。このことによって、回転軸81を中心にワイパー50を回転させながら、ワイパー50の接触部50a1をパッド70に接触させ易い。
パッド70は、吸収性を有している素材によって形成されている。本実施形態では、パッド70は、多孔質材料によって形成されている。具体的に、パッド70は、ポリオレフィンシートによって形成されている。このことによって、ワイパー50に付いた洗浄液55を取り除き易くなる。
本実施形態では、図14に示すように、制御装置90は、駆動機構80によって、ワイパー50の少なくとも一部を、第1の洗浄位置P21と第2の洗浄位置P22との間を、所定の第1の回数往復移動させる一次攪拌を行う。一次攪拌によって、洗浄液55の液面上に、多くの泡が発生する。そのため、その泡によって、ワイパー50が洗浄液55に浸される際に、洗浄液55の液面上に浮遊するゴミなどがワイパー50に付着しにくくすることができる。また、一次攪拌のように、ワイパー50が洗浄液55の液面上を行き来することで、水飛沫があがる。よって、水飛沫がワイパー50に当たることで、ワイパー50を洗浄し易くなる。
本実施形態では、一次攪拌が行われた後、制御装置90は、駆動機構80によって、ワイパーが洗浄液槽60に貯留された洗浄液55に浸された状態で、ワイパー50の接触部50a1を振動させる、すなわち、所定の距離の間を所定の第2の回数往復移動させる二次攪拌を行う。このことによって、仮に、一次攪拌によってワイパー50に付着した付着物が取り除けなかった場合であっても、二次攪拌によって、ワイパー50に付着した付着物を取り除くことができる場合がある。したがって、ワイパー50に付着物が残留することを抑制することができる。一次攪拌によって、洗浄液槽60の洗浄液55内の表面近傍には、洗浄液槽60の底面近傍に比べてワイパー50に付着したインク成分が多く残留する。そのため、一次攪拌の後に二次攪拌を行うことによって、洗浄液55内のインク成分を均一にすることができる。
本実施形態では、図7Bに示すように、ワイパー50に洗浄液55が付けられる位置である洗浄位置P2は、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55にワイパー50の少なくとも一部(ここでは、ワイピング位置P1において、ノズル面41aと接触する部位)が浸された位置である。このことによって、洗浄液槽60内の洗浄液55にワイパー50を浸すという簡単な手順で、ワイパー50を洗浄することができる。
本実施形態では、図9に示すように、洗浄液槽60の底面(ここでは、底板61)には、フィルタ69が配置されている。洗浄位置P2において、図7Bに示すように、ワイパー50に付着した付着物は、洗浄液槽60内の洗浄液55によって、取り除かれる。取り除かれた付着物は、洗浄液55内で沈殿し、フィルタ69に付着される。よって、付着物が付着したフィルタ69を洗浄液槽60から取り出すという簡単な方法で、洗浄液槽60内を綺麗にすることができる。
本実施形態では、インクヘッド40は、図7Aに示すように、ワイパー50に向かって移動し、ワイパー50がワイピング位置P1に位置しているとき、ノズル面41aとワイパー50とが接触する。図12に示すように、取り除き位置P3において、パッド70は、インクヘッド40が侵入する側のワイパー50の第1側面50aおよび先端面50cに付けられた洗浄液55を所定の量取り除く。ワイパー50の第1側面50aは、ワイピングの際、インクヘッド40のノズル面41aに対して最初に接触するワイパー50の部位である。そのため、ノズル面41aに最初に接触するワイパー50の部位である第1側面50aに付いた洗浄液55を少なくとも取り除くことで、ワイピングの際に、インクヘッド40のノズル41に洗浄液55が入り込みにくくすることができる。よって、ノズル41の吐出不良が発生することを抑制することができる。
本実施形態では、図9に示すように、洗浄液槽60は、内部の空間68を、洗浄液55が貯留される洗浄空間68aと、洗浄液55が排出される排出空間68bとに分ける隔壁67を備えている。隔壁67の上端は、洗浄液槽60の側面である前板62、後板63、左板64および右板65の上端よりも下方に位置している。図6に示すように、洗浄液槽60のうち、排出空間68bを囲む部位には、洗浄液55が排出される第1排出孔75が形成されている。ここでは、第1排出孔75は、前板62のうち排出空間68bを囲う部位の下部に形成されている。このことによって、洗浄液槽60内の洗浄空間68aにおいて、隔壁67の上端よりも上方にまで洗浄液55が溜まることを抑制することができる。仮に、洗浄空間68aから洗浄液55が溢れた場合、その洗浄液55は、隔壁67上の通路68cを通って排出空間68bへ流れる。そして、排出空間68b内の洗浄液55は、第1排出孔75から外部へ流れる。
本実施形態では、図6に示すように、洗浄液槽60のうち、洗浄空間68aを囲む部位には、洗浄液55が排出される第2排出孔78が形成されている。ここでは、第2排出孔78は、前板62のうち洗浄空間68aを囲う部位の下部に形成されている。クリーニング装置100は、図11に示すように、一端が第2排出孔78に挿入された排出チューブ79と、排出チューブ79の他端に接続されたポンプ71とを備えている。ポンプ71は、洗浄液槽60内の洗浄液55を吸引する。このことによって、仮に、洗浄液槽60内の洗浄液55を新しい洗浄液55に交換する際、第2排出孔78から洗浄液槽60内の洗浄液55を外部に事前に流すことができる。したがって、洗浄液槽60内の洗浄液55を新しい洗浄液55に交換する作業を容易に行うことができる。
<他の実施形態>
次に、本発明に係るクリーニング装置を備えたプリンタの他の実施形態について簡単に説明する。図16は、他の実施形態に係るクリーニング装置100Aの正面視における断面図である。図16に示すように、クリーニング装置100Aは、板状のベース板91と、蓋体92を備えている。洗浄液槽60は、ベース板91上に配置されている。蓋体92は、着脱自在に本体10に設けられている。蓋体92は、ベース板91の上方および洗浄液槽60の上方に配置されている。蓋体92には、開口93が形成されている。回転軸81が回転して、ワイパー50の接触部50a1が洗浄位置P1(図7A参照)に移動する際に、この開口93には、ワイパー50が通過する。開口93の大きさは、ワイパー50が回転軸81を中心に回転した際、ワイパー50と干渉しない程度の大きさである。
本実施形態では、蓋体92のうち開口93の後方に位置する部位である後部には、下方に延びた支持部94が設けられている。なお、図示は省略するが、蓋体92のうち開口93の前方に位置する部位である前部には、上記支持部94と同様の支持部が設けられている。ここでは、支持部94と、蓋体92の前部に設けられた支持部は、回転軸81を支持する。回転軸81は、上記支持部を介して蓋体92に支持されている。回転軸81は、支持部94と、蓋体92の前部の支持部によって支持された状態で、回転する。回転軸81は、開口93の下方に配置されている。
なお、本実施形態では、パッド70の上面71aの全体は、洗浄液槽60に貯留された洗浄液55の液面55aよりも上方に位置している。なお、本実施形態において、パッド70の上面71aの一部が洗浄液槽60に貯留された洗浄液55の液面55aよりも下方に位置していてもよい。
次に、他の実施形態にかかるインクヘッド40のクリーニングを行う手順について説明する。クリーニング装置100におけるインクヘッド40のクリーニングを行う手順は、上記実施形態に限定されない。例えば、以下のように、インクヘッド40のクリーニングが行われてもよい。他の実施形態であっても、上記実施形態と同様に、ホームポジションHPにおいて、インクヘッド40にキャップ53が装着された状態(図4参照)で、クリーニングが開始される。クリーニングが開始されるとき、ワイパー50は、図7Bに示すように、洗浄位置P2に位置している。
クリーニングが開始されると、ヘッド駆動機構28によって、インクヘッド40が正面視においてクリーニング装置100よりも左側へ移動する。その後、駆動機構80によって、ワイパー50は、図7Aに示すように、洗浄位置P2からワイピング位置P1へ移動する。ワイピング位置P1において、ワイパー50は固定される。なお、このとき、ワイパー50に付けられた洗浄液55はパッド70によって取り除かれていない。ワイピング位置P1にワイパー50が固定されている状態で、ヘッド駆動機構28によって、インクヘッド40は、クリーニング装置100の左側から、ホームポジションHPに向かって移動する。このとき、インクヘッド40のノズル面41aがワイパー50にワイピングされることで、ノズル面41aの付着物は取り除かれる。インクヘッド40がホームポジションHPに移動した後、駆動機構80によって、ワイパー50は、図14に示すように、洗浄位置P2に移動し、上述したような一次攪拌および二次攪拌(図7B参照)が行われる。その後、駆動機構80によって、ワイパー50は、図12に示すように、洗浄位置P2から取り除き位置P3に移動する。そして、取り除き位置P3において、ワイパー50の第1側面50aおよび先端面50cに付けられた洗浄液55は、パッド70によって取り除かれる。その後、ワイパー50は、図7Aに示すように、ワイピング位置P1に移動する。そして、ヘッド駆動機構28によって、インクヘッド40を主走査方向Yの一方向Y1に移動させることで、インクヘッド40のノズル面41aをワイパー50がワイピングする。以上のような手順であっても、インクヘッド40のノズル面41aに付着した付着物を取り除くことができる。
以上、本発明に係るプリンタの実施形態および他の実施形態について説明した。ただし、上記各実施形態は一例に過ぎず、本発明は他に種々の形態にて実施することができる。以下、本発明のプリンタの変形例について説明する。以下の説明において、上記各実施形態などの各部位と同じ構成を有する部位には、同じ名称を使用し、符号は適宜変更している。また、同じ構成を有する部位の説明は適宜省略している。
<第1変形例>
次に、第1変形例に係るプリンタ200について説明する。図17は、インクヘッドキャリッジ101の斜視図である。本発明に係るプリンタは、本変形例に係るプリンタ200が備えるインクヘッドキャリッジ101を備えていてもよい。図示は省略するが、インクヘッドキャリッジ101は、プラテン25(図2参照)の上方に配置されている。図17に示すように、インクヘッドキャリッジ101は、ヘッドホルダ110と、ヘッドプレート120と、複数のインクヘッド130A〜130Dとを備えている。図示は省略するが、ヘッドホルダ110は、上記実施形態のキャリッジ30(図2参照)と同様に、ガイドレール20(図2参照)に摺動自在に係合している。なお、図17では、ヘッドホルダ110のうちガイドレール20(図2参照)と係合している部分の図示は省略している。インクヘッドキャリッジ101は、ヘッドホルダ110がガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する間に、インクヘッド130A〜130Dから記録紙5にインクを吐出するように構成されている。
図17に示すようにヘッドホルダ110は、鉛直方向に延びる後板111と、後板111の左端部に固定された左板112と、後板111の右端部に固定された右板113とを備えている。左板112および右板113は、後板111から前方に延びている。また、ヘッドホルダ110は、左板112に固定された左のベースプレート114Lと、右板113に固定された右のベースプレート114Rとを備えている。ベースプレート114Lおよび114Rは、前後方向に延びており、横断面がL型に形成されている。ベースプレート114Lは、鉛直方向に延びる鉛直部114Laと、水平方向に延びる水平部114Lbとを有している。ベースプレート114Rは、鉛直方向に延びる鉛直部114Raと、水平方向に延びる水平部114Rbとを有している。ここでは、ベースプレート114Lおよび114Rは、板金により形成されている。ただし、ベースプレート114Lおよび114Rの形状および材料は、特に限定される訳ではない。また、本変形例では、後板111、左板112、右板113、左のベースプレート114L、および右のベースプレート114Rは別体に形成され、組み立てられているが、それらの一部または全部は一体的に形成されていてもよい。ヘッドホルダ110は複数の部材を組み立てることにより構成されていてもよく、単一の部材により構成されていてもよい。
図18は、インクヘッド130A〜130Dを省略したインクヘッドキャリッジ101の平面図である。図18に示すように、ヘッドプレート120は、ベースプレート114L,114Rに支持されている。ヘッドプレート120には、主走査方向Yに並ぶ複数の開口121A、121B、121C、121Dが形成されている。開口121A〜121Dには、それぞれインクヘッド130A〜130Dが取り付けられる。なお、ここで「インクヘッド130A〜130Dが開口121A〜121Dに取り付けられる」には、インクヘッド130A〜130Dが開口121A〜121Dに嵌め込まれる場合と、インクヘッド130A〜130Dが開口121A〜121Dよりも上方に位置するように設置される場合との両方が含まれる。
図19は、インクヘッドキャリッジ101の裏面図である。図19に示すように、インクヘッド130A〜130Dは、副走査方向Xに並ぶ複数のノズル131を有している。なお、ノズル131は微小であるため、図19では複数のノズル131を直線で表している。インクヘッド130A〜130Dのノズル131は、下方から見たときにそれぞれ開口121A〜121Dの内側に位置している。
図18に示すように、ヘッドプレート120の各開口121A〜121Dの後方には、インクヘッド130A〜130Dの後部が押し当てられる第1当接部122aが設けられている。各開口121A〜121Dの右方には、インクヘッド130A〜130Dの右部が押し当てられる第2当接部122bおよび第3当接部122cが設けられている。第3当接部122cは第2当接部122bの前方に配置されている。第2当接部122bはインクヘッド130A〜130Dの右面の後部に押し当てられ、第3当接部122cはインクヘッド130A〜130Dの右面の前部に押し当てられる。これら第1〜第3当接部122a〜122cは、ヘッドプレート120に対してインクヘッド130A〜130Dを位置決めするための部分である。インクヘッド130A〜130Dを開口121A〜121Dに取り付けると共に、第1〜第3当接部122a〜122cに押し当てることにより、インクヘッド130A〜130Dはヘッドプレート120の所定の位置に正確に配置されることになる。なお、本変形例では、当接部の数は3つであるが、その数は特に限定されない。また、当接部の位置も何ら限定されない。また、当接部は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
開口121A〜121Dは、前後方向の長さが左右方向の長さよりも長い形状に形成されている。本変形例では、開口121A〜121Dは同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。ただし、開口121A〜121Dの形状は互いに異なっていてもよい。また、開口121A〜121Dの大きさは特に限定されず、開口121A〜121Dのいずれか一つが他のいずれか一つよりも大きくてもよい。開口121A〜121Dの位置は特に限定されないが、本変形例では開口121A〜121Dは副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。開口121A〜121Dの前端は、副走査方向Xに関して互いに同じ位置にあり、開口121A〜121Dの後端は、副走査方向Xに関して互いに同じ位置にある。ただし、開口121A〜121Dは、副走査方向Xに関して互いにずれた位置に形成されていてもよい。例えば、開口121A〜121Dのいずれか一つの前端は、他のいずれか一つの前端よりも後方にあってもよい。開口121A〜121Dのいずれか一つの後端は、他のいずれか一つの後端よりも前方にあってもよい。
なお、インクヘッド130A〜130Dの位置関係についても、上述の開口121A〜121Dの位置関係と同様である。本変形例では、インクヘッド130A〜130Dは同じ形状かつ同じ大きさに形成されているが、それらの形状または大きさは異なっていてもよい。インクヘッド130A〜130Dは副走査方向Xに関して互いに揃った位置に配置されているが、それらは副走査方向Xに関して互いにずれた位置に配置されていてもよい。
図18に示すように、右のベースプレート114Rには、ヘッドプレート120を回転自在に支持する回転軸155が設けられている。回転軸155はベースプレート114Rの水平部114Rbから上方に延びており、ベースプレート114Rとヘッドプレート120との間に介在している。回転軸155を中心にヘッドプレート120を回転させることにより、ヘッドプレート120とベースプレート114Rとの相対的な位置を変更することができる。すなわち、ヘッドプレート120の開口121A〜121Dの配列方向(図18の一点鎖線121L参照。なお、開口121A〜121Dの配列方向はインクヘッド130A〜130Dの配列方向でもある。)と主走査方向Yとの角度を変更することができる。回転軸155はベースプレート114Rおよびヘッドプレート120のいずれか一方と一体化されていてもよく、それらの両方と別体であってもよい。本変形例では、回転軸155はベースプレート114Rに一体的に形成されている。
回転軸155は、開口121A〜121Dのうち最も前方に位置する部分よりも後方に配置され、かつ、開口121A〜121Dのうち最も後方に位置する部分よりも前方に配置されている。前述したように、本変形例では開口121A〜121Dは副走査方向Xに関して揃った位置に配置されているので、回転軸155は各開口121A〜121Dの前端よりも後方に配置され、かつ、各開口121A〜121Dの後端よりも前方に配置されている。また、回転軸155は、各インクヘッド130A〜130Dの前端よりも後方、かつ、各インクヘッド130A〜130Dの後端よりも前方に配置されている。
また、回転軸155は、複数の開口121A〜121Dのうち主走査方向Yの最も一端側に位置する開口121Dよりも前記一端側に配置されている。本変形例では、回転軸155は、開口121A〜121Dのうち最も右方に位置する開口121Dよりも右方に配置されている。言い換えると、回転軸155は、全ての開口121A〜121Dよりも右方に配置されている。ただし、回転軸155の位置は上述の位置に限定される訳ではない。
ヘッドプレート120の左端部には、右方に凹んだ凹部123が形成されている。凹部123の前方には、前後方向に延びるねじ孔134が形成されている。ねじ孔134には、調整ねじ125が挿入されている。ねじ孔134の内周面には螺旋溝が形成され、調整ねじ125の外周面には、ねじ孔134の上記螺旋溝に係合する螺旋溝が形成されている。調整ねじ125の先端部(言い換えると後端部)はねじ孔134から突出している。調整ねじ125の根元部(言い換えると前端部)には、図示しないドライバーが係合する+または−の溝(図示せず)が形成されている。なお、この溝は、調整ねじ125を回転させる工具と係合する係合部の一例であるが、工具はドライバーに限定されない。係合部は工具と係合するものであればよく、上記溝に限定されない。
左のベースプレート114Lには、当接部材115が固定されている。なお、当接部材115はベースプレート114Lの水平部114Lbおよび鉛直部114Laのいずれかに固定されていてもよい。当接部材115はベースプレート114Lと別体であってもよく、一体であってもよい。当接部材115の少なくとも一部は、上方から見てヘッドプレート120の凹部123の内側に配置されている。当接部材115は、調整ねじ125の後方に位置する当接板116を備えている。調整ねじ125はねじ孔134から当接板116に向けて突出しており、当接板116の前面は調整ねじ125が当接する当接面116aとなっている。当接面116aの裏面、すなわち当接板116の後面からは、第1の軸117が突出している。
ヘッドプレート120のうち第1の軸117と対向する部分には、第1の軸117に向けて延びる第2の軸118が設けられている。第2の軸118は第1の軸117の後方に配置されている。第1の軸117および第2の軸118は、前後方向に延びている。
第1の軸117と第2の軸118とには、コイルばね119が取り付けられている。コイルばね119は第1の軸117と第2の軸118との間に介在している。コイルばね119は、自然長よりも圧縮された状態になっており、いわゆる圧縮ばねとして機能する。コイルばね119は、第1の軸117と第2の軸118とを互いに離れる方向に付勢している。ヘッドプレート120は回転軸155を中心として回転可能であるので、コイルばね119はヘッドプレート120を上方から見て時計回りの方向に付勢している。時計回りの方向は、調整ねじ125が当接板116に近づく方向である。よって、コイルばね119は、ねじ孔134に挿入された調整ねじ125が当接部材115に当接するようにヘッドプレート120を付勢している。コイルばね119により、調整ねじ125は当接部材115に常時当接するようになっている。なお、コイルばね119は、調整ねじ125が当接部材115に当接するようにヘッドプレート120を付勢するばねの一例であるが、当該ばねはコイルばね119に限定されない。トーションばねなどの他の種類のばねを用いることも勿論可能である。また、第1の軸117および第2の軸118は必ずしも必要ではなく、コイルばね119をベースプレート114Lの他の部分およびヘッドプレート120の他の部分に取り付けることにより、省略することが可能である。
調整ねじ125は、開口121A〜121Dおよびインクヘッド130A〜130Dの左方に配置されている。開口121A〜121Dおよびインクヘッド130A〜130Dは、主走査方向Yに関して、回転軸155と調整ねじ125との間に配置されている。主走査方向Yから見て、回転軸155および調整ねじ125は、開口121A〜121Dの一部およびインクヘッド130A〜130Dの一部と重なる位置に配置されている。また、本変形例では、調整ねじ125の一部は、回転軸155と副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。すなわち、調整ねじ125の一部は、回転軸155の前端よりも後方かつ後端よりも前方に配置されている。ただし、これに限られない。調整ねじ125の全体が回転軸155の前端よりも前方に配置されていてもよく、回転軸155の後端よりも後方に配置されていてもよい。
調整ねじ125の少なくとも一部は、開口121A〜121Dのうち最も副走査方向Xの一端側に位置する部分よりも他端側に配置され、かつ、開口121A〜121Dのうち最も副走査方向Xの他端側に位置する部分よりも一端側に配置されている。前述の通り、本変形例では開口121A〜121Dは、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。そのため、調整ねじ125の少なくとも一部は、各開口121A〜121Dの前端よりも後方、かつ、各開口121A〜121Dの後端よりも前方に配置されている。同様に、調整ねじ125の少なくとも一部は、複数のインクヘッド130A〜130Dのうち最も副走査方向Xの一端側に位置する部分よりも他端側に配置され、かつ、複数のインクヘッド130A〜130Dのうち最も副走査方向Xの他端側に位置する部分よりも一端側に配置されている。調整ねじ125の少なくとも一部は、各インクヘッド130A〜130Dの前端よりも後方、かつ、後端よりも前方に配置されている。
ヘッドプレート120には、第1〜第4の孔141〜144が形成されている。これら第1〜第4の孔141〜144は、ヘッドプレート120の四隅部に形成されている。詳しくは、第1の孔141は、開口121A〜121Dのうち主走査方向Yの最も一端側の端部よりも一端側、かつ、開口121A〜121Dのうち副走査方向Xの最も一端側の端部よりも一端側に位置している。第2の孔142は、開口121A〜121Dのうち主走査方向Yの最も他端側の端部よりも他端側、かつ、開口121A〜121Dのうち副走査方向Xの最も一端側の端部よりも一端側に位置している。第3の孔143は、開口121A〜121Dのうち主走査方向Yの最も一端側の端部よりも一端側、かつ、開口121A〜121Dのうち副走査方向Xの最も他端側の端部よりも他端側に位置している。第4の孔144は、開口121A〜121Dのうち主走査方向Yの最も他端側の端部よりも他端側、かつ、開口121A〜121Dのうち副走査方向Xの最も他端側の端部よりも他端側に位置している。前述の通り、本変形例では開口121A〜121Dは、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。そのため、第1の孔141は、最も左方に位置する開口121Aよりも左方、かつ、開口121A〜121Dの前端よりも前方に位置している。第2の孔142は、最も右方に位置する開口121Dよりも右方、かつ、開口121A〜121Dの前端よりも前方に位置している。第3の孔143は、最も左方に位置する開口121Aよりも左方、かつ、開口121A〜121Dの後端よりも後方に位置している。第4の孔144は、最も右方に位置する開口121Dよりも右方、かつ、開口121A〜121Dの後端よりも後方に位置している。第1の孔141および第3の孔143は、前後に細長い長孔となっている。第2の孔142および第4の孔144は円孔となっている。ただし、これに限らず、第1〜第4の孔141〜144のうち任意の2つを長孔とし、他の2つを円孔としてもよい。
ベースプレート114Lおよび114Rには、ヘッドプレート120の第1〜第4の孔141〜144に対応する第5〜第8の孔145〜148が形成されている。第5の孔145、第7の孔147は、左のベースプレート114Lの前端部、後端部にそれぞれ形成されている。第6の孔146、第8の孔148は、右のベースプレート114Rの前端部、後端部にそれぞれ形成されている。第5〜第8の孔145〜148は円孔からなっている。なお、本変形例では第1〜第8の孔141〜148のうち、第1の孔141および第3の孔143を長孔としたが、それに限らず、互いに重ね合わされない任意の2つを長孔としてもよい。
次に、インクヘッド130A〜130Dの位置の調整方法について説明する。インクヘッド130A〜130Dの位置調整は、調整ねじ125を回転させることによって行う。本変形例では、調整ねじ125を時計回りの方向に回転させると、調整ねじ125のねじ孔134からの突出量が増え、ヘッドプレート120は上方から見て回転軸155を中心として時計回りの方向に回転する。逆に、調整ねじ125を反時計回りの方向に回転させると、調整ねじ125のねじ孔134からの突出量が減り、ヘッドプレート120は上方から見て回転軸155を中心として反時計回りの方向に回転する。これにより、主走査方向Yに対するインクヘッド130A〜130Dの配列方向121Lの傾きが調整される。なお、調整ねじ125を回転させている間、ヘッドプレート120はコイルばね119に付勢され、調整ねじ125は当接部材115に常に当接しているので、ヘッドプレート120の位置が不安定に変動することはない。そのため、インクヘッド130A〜130Dの位置を安定して調整することができる。
ヘッドプレート120をベースプレート114Rに対して位置決めした後、第1の孔141と第5の孔145、第2の孔142と第6の孔146、第3の孔143と第7の孔147、および第4の孔144と第8の孔148に、それぞれビス150を締結する。これにより、ヘッドプレート120がベースプレート114L,114Rに固定される。その結果、ヘッドプレート120に固定されたインクヘッド130A〜130Dが、ヘッドホルダ110に対して固定される。
図20は、ヘッドプレート120の回転の様子を示す概念図である。図20に示すように、ヘッドプレート120は回転軸155の軸心155cを中心とする円弧161に沿って回転するが、調整ねじ125の軸線125cはその円弧161に対する接線となる。本変形例によれば、回転軸155および調整ねじ125は、各開口121A〜121Dの前端よりも後方かつ後端よりも前方に配置されている。そのため、調整ねじ125の操作量に対するインクヘッド130A〜130Dの位置の変化量は、インクヘッド130A〜130Dの回転位置によって大きく異ならない。図21は、調整ねじ125の操作量とインクヘッド130A〜130Dの位置の変化量との関係を説明するための説明図である。図21に示すように、例えば、調整ねじ125を操作量A11だけ操作した場合のインクヘッド130の中心位置130cの変化量をB11、操作量A12だけ操作した場合の中心位置130cの変化量をB12とした場合、それらの比率、すなわちB11/A11とB12/A12とは大きく異ならない。したがって、本変形例によれば、調整ねじ125の操作に対するインクヘッド130A〜130Dの位置変化の追従性が良好となる。よって、位置調整の作業を従来よりも容易化することができる。
また、本変形例によれば、図18に示すように、開口121A〜121Dは副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。このことにより、開口121A〜121Dが副走査方向Xに関して不揃いの位置に配置されている場合に比べて、調整ねじ125の操作に対するインクヘッド130A〜130Dの位置変化を均一化することができる。よって、調整ねじ125の操作に対するインクヘッド130A〜130Dの位置変化の追従性を更に高めることができ、位置調整の作業を容易化することができる。
回転軸155は開口121A〜121Dのうち隣り合う2つの開口の間に設けられていてもよいが、本変形例では、最も右方に位置する開口121Dの右方に配置されている。そのため、2つの開口の間に回転軸155を設けるスペースを確保する必要がなく、隣り合う2つの開口の距離を短くすることができる。よって、インクヘッド130A〜130Dを互いに近接した位置に配置することができ、インクヘッドキャリッジ101を小型化することができる。
また、調整ねじ125は開口121A〜121Dのうち隣り合う2つの開口の間に設けられていてもよいが、本変形例では、最も左方に位置する開口121Aよりも左方に配置されている。開口121A〜121Dは、主走査方向Yに関して、回転軸155と調整ねじ125との間に配置されている。そのため、2つの開口の間に調整ねじ125を設けるスペースを確保する必要がなく、隣り合う2つの開口の距離を短くすることができる。よって、インクヘッド130A〜130Dを互いに近接した位置に配置することができ、インクヘッドキャリッジ101を小型化することができる。
また、本変形例によれば、調整ねじ125が当接部材115に常に当接するようにヘッドプレート120を付勢するばね(コイルばね119)を備えている。調整ねじ125は当接部材115に常に当接しているので、調整ねじ125を操作する際にヘッドプレート120の位置が変動してしまうことを防止することができる。よって、インクヘッド130A〜130Dの位置の調整作業を安定して行うことができる。
本変形例によれば、当接部材115に備えられた第1の軸117と、ヘッドプレート120に設けられた第2の軸118とを備え、前記ばねは第1の軸117および第2の軸118に取り付けられたコイルばね119からなっている。このような構成により、コイルばね119を所定の位置に安定して配置することができる。よって、調整ねじ125を当接部材115に安定して当接させることができる。
また、本変形例によれば、ヘッドプレート120とベースプレート114L,114Rとは、第1〜第4の孔141〜144に挿入されたビス150によって固定される。第1〜第4の孔141〜144はヘッドプレート120の四隅部に形成されている。すなわち、第1の孔141、第2の孔142、第3の孔143、第4の孔144は、それぞれ開口121A〜121Dの左斜め前方、右斜め前方、左斜め後方、右斜め後方に形成されている。これにより、ヘッドプレート120をベースプレート114L,114Rに安定して固定することができる。また、ヘッドプレート120の経年的な位置ずれをより確実に防止することができる。
なお、本変形例では、回転軸155、調整ねじ125は、それぞれ開口121A〜121Dの右方、左方に配置されていたが、それらは逆であってもよい。すなわち、回転軸155、調整ねじ125は、それぞれ開口121A〜121Dの左方、右方に配置されていてもよい。
本変形例では、回転軸155の全部および調整ねじ125の全部が、開口121A〜121Dの前端よりも後方かつ後端よりも前方に配置されている。しかし、回転軸155の一部が開口121A〜121Dの前端よりも後方かつ後端よりも前方に配置されていてもよく、調整ねじ125の一部が開口121A〜121Dの前端よりも後方かつ後端よりも前方に配置されていてもよい。
本変形例では、第1〜第4の孔141〜144にビス150が挿入され、ヘッドプレート120とベースプレート114L,114Rとはビス150によって固定されている。しかし、ヘッドプレート120とベースプレート114L,114Rとを固定する固定具はビス150に限られない。第1〜第4の孔141〜144には、ねじ、ボルト、ピン等の他の固定具が挿入され、ヘッドプレート120とベースプレート114L,114Rとは他の固定具によって固定されていてもよい。
本変形例では、調整ねじ125およびねじ孔134は、調整ねじ125が進行方向(後方)に向かって時計回りに回転することにより調整ねじ125の突出量が増え、反時計回りに回転することにより調整ねじ125の突出量が減るように構成されていたが、それらは逆であってもよい。すなわち、調整ねじ125が進行方向(後方)に向かって反時計回りに回転することにより調整ねじ125の突出量が増え、時計回りに回転することにより調整ねじ125の突出量が減るように構成されていてもよい。
本変形例では、調整ねじ125はヘッドプレート120に取り付けられ、当接部材115はベースプレート114Lに固定されていたが、それらは逆であってもよい。すなわち、調整ねじ125がベースプレート114Lに取り付けられ、当接部材115がヘッドプレート120に固定されていてもよい。なお、当接部材115はベースプレート114Lまたはヘッドプレート120と別体であってもよいが、一体であってもよい。
インクヘッド130A〜130Dは、同一の色のインクを吐出するものであってもよく、互いに異なる色のインクを吐出するものであってもよい。
本変形例ではヘッドプレート120の開口の数は4つであったが、開口の数は特に限定されない。開口の数は2または3であってもよく、5以上であってもよい。また、開口の数に応じて、インクヘッドの数を変更することができる。インクヘッドの数は4つに限られない。
<第2変形例>
次に、第2変形例に係るプリンタ300について説明する。図22は、本変形例に係るプリンタ300の正面図である。図23は、カバー部材を開放した状態のプリンタ300の斜視図である。本発明に係るプリンタは、本変形例に係るプリンタ300のようなプリンタであって、複数のインクカートリッジ201をそれぞれ収容するカートリッジ収容部308、309を備えたプリンタであってもよい。
図22に示すように、プリンタ300は、本体部301と、側方部302、303と、プラテン304と、脚部305、306と、複数のインクヘッドが搭載されたインクヘッドユニット307と、後述の複数のインクカートリッジ201(図23参照)をそれぞれ収容するカートリッジ収容部308,309と、を備えている。本体部301は、左右方向に延びた筐体である。本体部301の内方には、記録紙5を支持するプラテン304が設けられている。本体部301の前部の左方には筐体からなる側方部302が接続されている。本体部301の前部の右方には筐体からなる側方部303が接続されている。本体部301の下部には、当該本体部301を支持する脚部305、306が取り付けられている。脚部306は、脚部305の右方に位置している。インクヘッドユニット307は、本体部301の内方に配置されている。カートリッジ収容部308,309は、本体部301の上部の左方に設けられている。カートリッジ収容部309は、カートリッジ収容部308の右方に当該カートリッジ収容部308と並んで配置されている。なお、本変形例では、2つのカートリッジ収容部308,309を設けるようにしたが、一つ、あるいは、三つ以上のカートリッジ収容部を設けるようにしてもよい。
図22において、記録紙5が配置される領域(つまり、印刷領域)のうち主走査方向Yの領域をR21とし、カートリッジ収容部308の主走査方向Yの領域をR22とし、カートリッジ収容部309の主走査方向Yの領域をR23とする。領域R22の一部は、プリンタ300の主走査方向Yにおいて領域R21と重複している。領域R23の全部は、プリンタ300の主走査方向Yにおいて領域R21と重複している。言い換えれば、領域R21の上方に領域R22の一部が位置しており、領域R21の上方に領域R23の全部が位置している。
図23に示すように、カートリッジ収容部308は、主走査方向Y、つまり左右方向に延びている。カートリッジ収容部308は、傾斜部202と、左壁部203と、右壁部204と、天面部205と、カバー部材206と、を備えている。なお、カートリッジ収容部309の構成はカートリッジ収容部308の構成と同じであるため、以下では、カートリッジ収容部308の説明のみ行う。傾斜部202は、インクが充填されたインクパック310を保持したインクカートリッジ201を支持する。インクパック310には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)またはその他のインクが充填されている。傾斜部202は、後方に向かうにつれ下方に傾斜している。図29に示すように、傾斜部202の水平面HSに対する傾斜角θ20は、例えば5度である。これにより、傾斜部202に支持されたインクカートリッジ201は、後方に向かうにつれて下方に傾斜して配置されている。図23に示すように、左壁部203は、傾斜部202の左端に接続されている。右壁部204は、傾斜部202の右端に接続されている。天面部205は、左壁部203の上端と右壁部204の上端とに接続されている。これらの傾斜部202と、左壁部203と、右壁部204と、天面部205とによって、インクカートリッジ201を前方から後方に向けて挿入するための開口207が形成されている。なお、図23においては、カートリッジ収容部308には4つのインクカートリッジ201が収容されており、カートリッジ収容部309と併せて、本変形例のプリンタ300では合計8つのインクカートリッジ201が収容されるが、収容されるインクカートリッジ201の数は特に限定されるものではない。
カバー部材206は、当該カバー部材206の下部に接続されたヒンジ208によって前方に開くようになっている。これにより、カバー部材206は、前記の開口207を閉じる第1位置P21と、当該開口207を開放する第2位置P22との間で回動可能に構成されている。カバー部材206は、第2位置P22にあるときに、側方部302の上部に接触する。それにより、カバー部材206は、第2位置P22においてそれ以上開かないように規制されている。ここで、図31に示すように、インクカートリッジ201がカートリッジ収容部308(図23参照)の後述するカートリッジ受け部211に適切に配置されているときの位置をP23とする。また、インクカートリッジ201が上記カートリッジ受け部211に適切に配置されていないときの位置をP24とする。インクカートリッジ201が位置P24にあるときには、当該インクカートリッジ201の前端201bは、カバー部材206が第1位置P21(図23参照)にあるとするときの当該カバー部材206の後面206aよりも前方に配置されるようになっている。そのため、インクカートリッジ201が適切な位置P23に配置されていないときには、カバー部材206を閉じる際に、当該カバー部材206の後面206aがインクカートリッジ201の前端201bに接触してしまう。このため、カバー部材206は閉じないようになっている。
図24(b)に示すように、カートリッジ収容部308(図23参照)には、収容するインクカートリッジ201に対応したカートリッジ受け部211が設けられている。インクカートリッジ201は、カートリッジ受け部211の所定の位置に配置されることによって、カートリッジ収容部308に収容されるようになっている。このように、インクカートリッジ201は、カートリッジ受け部211を介してカートリッジ収容部308に配置される。カートリッジ受け部211は、下面部211aと、下面部211aの左端に接続された左壁部211bと、下面部211aの右端に接続された右壁部211cと、下面部211aの後端、左壁部211bの後端および右壁部211cの後端に接続された後面部211dと、を備えている。このような構成により、カートリッジ受け部211の前方には開口211eが形成されており、当該カートリッジ収容部211の上方には開口211fが形成されている。左壁部211bおよび右壁部211cには、インクカートリッジ201に対するアダプタ212の位置決めを行う際に、それぞれアダプタ212の後述のリブ212a1を嵌め込むための溝211hが形成されている。カートリッジ受け部211の開口211eからインクカートリッジ201がカートリッジ受け部211内に挿入される。この挿入の際には、インクカートリッジ201の下面部201aがカートリッジ受け部211の下面部211a上をスライドするようになっている。これにより、インクカートリッジ201をカートリッジ受け部211に挿入し易くなっている。カートリッジ受け部211の後面部211dの中央には、前方に向けて延び、内部に流路を有する針材211gが設けられている。
ここで、本変形例において、インクパック310(図23参照)に装着されるアダプタについて説明する。インクパック310がインクカートリッジ201に配置される前に、当該インクパック310には、図24(a)に示すようなアダプタ212が装着される。そして、アダプタ212が装着された状態のインクパック310がインクカートリッジ201の所定位置に配置されるようになっている。アダプタ212は、インクパック310に対して着脱可能な構成となっている。具体的には、アダプタ212は、インクパック310のうちインクパックキャップ311(図27参照)の方の部分に対して着脱可能となっている。
図25に示すように、アダプタ212は、後面部212aと、後面部212aの上端に接続された上面部212bと、後面部212aの下端に接続され、上面部212bの前端よりも前方に延びる下面部212cと、上面部212bの左端に接続された左壁部212dと、上面部212bの右端に接続された右壁部212eと、を備えている。後面部212aの左部および右部には、それぞれリブ212a1が形成されている。左壁部212dは、下面部212cの左部に対して上方に間隔を空けつつ前方に突出した左突起部212d1を備えている。これにより、左突起部212d1の下端と下面部212cの左部との間に隙間213が形成されている。同様に、右壁部212eは、下面部212cの右部に対して上方に間隔を空けつつ前方に突出した右突起部212e1を備えている。これにより、右突起部212e1の下端と下面部212cの右部との間に隙間214が形成されている。上面部212bの下面には、薄板状に形成された複数のリブ212gが左右方向に略等間隔に並んでそれぞれ設けられている。図26に示すように、各リブ212gの上下方向における長さは、それぞれ左突起部212d1および右突起部212e1の長さと略同じとなっている。図25に示すように、各リブ212gの前後方向における長さは、それぞれ左突起部212d1および右突起部212e1の長さよりも短くなっている。インクパックキャップ311(図27参照)がアダプタ212の後面部212aの所定位置に設置された状態で、後述のパック本体312(図24(a)参照)の後部が隙間213および隙間214に配置される。詳細には、図26に示すように、パック本体312の後述の上面部312bの後部における左部が左突起部212d1に接触しない状態で隙間213に挿通されている。また、上記上面部312bの後部における右部が右突起部212e1に接触しない状態で隙間214に挿通されている。また、パック本体312の上面部312bは、各リブ212gに接触していない状態にある。このような構成によって、パック本体312の後部は、アダプタ212から押圧力を受けることなくフリーな状態で当該アダプタ212に対して位置決めされている。なお、図26においては、パック本体312の上面部312bの上面の配置状態を二点鎖線により示している。
アダプタ212の後面部212aの左部には円形の孔部215が設けられており、後面部212aの右部には長孔216が設けられている。また、カートリッジ受け部211(図24(b)参照)の後面部211dの左部および右部には、それぞれ前方に向けて延びる図示しない位置決めピンが設けられている。インクパック310付きのアダプタ212が配置されたインクカートリッジ201(図24(b)参照)を、カートリッジ収容部308(図23参照)に設けられたカートリッジ受け部211(図24(b)参照)に配置する際に、一方の上記位置決めピンが孔部215に挿入され、他方の上記位置決めピンが長孔216に挿入される。このような構成により、インクカートリッジ201がカートリッジ受け部211に対して位置決めされるようになっている。また、アダプタ212の後面部212aの中央には円形の孔部217が設けられている。インクパック310(図27参照)にアダプタ212を装着する際に、インクパックキャップ311(図27参照)が上記の孔部217に挿入される。このような構成において、アダプタ212の孔部217からインクパックキャップ311の一部が突出した状態のインクパック310をインクカートリッジ201に配置し、当該インクカートリッジ201をカートリッジ受け部211に設置する際に、インクパックキャップ311に上述の針材211gが突き刺さる。これにより、パック本体312内のインクが針材211g内の流路に流れ込み、流出するようになっている。
図25に示すように、アダプタ212の下面部212cの中央には、前後方向にスライド可能な固定部212fが設けられている。固定部212fは平板状に形成されている。固定部212fは矩形状に形成されている。固定部212fは、アダプタ212がインクパック310(図27参照)に取り付けられた状態のときに、インクパック310の長手方向D21(図27参照)の中央とインクパックキャップ311(図27参照)が設けられた方の端部312a(図27参照)との間に位置するように設定されている。また、固定部212fには、接着部218が設けられている。本変形例では、接着部218として、例えば両面テープを用いることができる。ただし、両面テープに限られるものではなく、他の接着材料を用いることも可能である。インクパック310(図27参照)にアダプタ212を装着する際に、固定部212fは、インクパック310の下面部の下方に位置する。これにより、インクパック310にアダプタ212を装着する際に、当該インクパック310の下面部が接着部218により固定部212fに固定される。これによって、インクパック310がアダプタ212に対して位置決めされるようになっている。また、図24(b)に示すように、インクカートリッジ201の後述の支持部210の後部には、アダプタ212の固定部212fの外形に沿った形状、すなわち矩形状の切り欠き部210aが形成されている。インクパック310に対して位置決めされたアダプタ212をインクカートリッジ201の所定位置に配置する際には、固定部212fは切り欠き部210aに配置される。
続いて、インクカートリッジ201について説明する。図24(b)に示すように、インクカートリッジ201は、パック本体312のうち当該パック本体312の厚み方向と垂直な方向の部分を保持する。インクカートリッジ201は、パック本体312の長手方向D21(図27参照)が副走査方向X(図23参照)に沿って、かつ、インクパックキャップ311(図27参照)が後方に向くようにインクパック310を保持する。インクカートリッジ201には、パック本体312を横置きの状態で配置する支持部210が形成されている。支持部210の前後方向の長さは、当該支持部210の左右方向の長さ(つまり、幅)よりも長くなっている。このような支持部210は、主走査方向Y(図23参照)における中央部210Cは、当該支持部210の左部210Lおよび右部210Rよりも高さが低くなるように形成されている。図26に示すように、支持部210の左部210Lはインクカートリッジ201の左側に配置された左板材201cに接続され、支持部210の右部210Rは右側に配置された右板材201dに接続されている。支持部210は、円弧状に形成されている。図24(b)および図26に示すように、支持部210は、左部210Lと中央部210Cとの間に、中央部210Cに向かうにつれ高さが低くなるように湾曲して形成された湾曲部210BLを備えている。支持部210は、右部210Rと中央部210Cとの間に、中央部210Cに向かうにつれ高さが低くなるように湾曲して形成された湾曲部210BRを備えている。このような形状の支持部210にインクパック310が配置されると、当該インクパック310の後述の溶着領域WR21(図27参照)は湾曲部210BRに支持され、後述の溶着領域WR22(図27参照)は湾曲部210BLに支持されるようになっている。パック本体312内のインクは、残量が少なくなってくるにつれ当該パック本体312の左右方向における中央に集まり易くなっている。インクパック310の溶着領域WR21,WR22については後で詳述する。なお、図26では、理解を容易にするため、インクパック310を二点鎖線により図示すると共に、インクカートリッジ201を断面図および二点鎖線により図示している。
次に、本変形例のインクパック310について説明する。図27に示すように、インクパック310は、インクパックキャップ311と、インクが充填されたパック本体312と、を備えている。インクパックキャップ311は、パック本体312の長手方向D21の一方の端部312aの中央に接続されている。インクパックキャップ311の一部はパック本体312内に挿入されている。パック本体312は、矩形状に形成されている。パック本体312は、それぞれ矩形状に形成された上面部312bおよび下面部312cを備えている。
パック本体312内には、インク充填部313と、インク充填部313に連結したインク流出部314と、インク流出部314に連結したインク供給部315と、が形成されている。インク充填部313は、一定幅を有している。インク流出部314は、インク充填部313から離間するにつれて幅が小さくなるよう設定されている。インク流出部314は、パック本体312の長手方向D21の中央よりもインクパックキャップ311側に位置している。インク供給部315は、インクパックキャップ311の一部が挿入され、インク充填部313の幅よりも小さい一定幅を有している。このようなインク流出部314およびインク供給部315は、パック本体312の上面部312bと下面部312cとを溶着することによって形成されている。図27に示すように、パック本体312には、斜線で示す2つの溶着領域WR21,WR22が設けられる。溶着領域WR21,WR22は、それぞれ平面視で台形状に形成されている。
続いて、パック本体312(図27参照)内のインクの残量の検出方法について説明する。図24(b)に示すように、カートリッジ受け部211の左壁部211bには、右方に突出する板部材211b1が接続されている。この板部材211b1には、パック本体312内のインクの残量を検出するセンサレバー機構220が設けられている。以下、センサレバー機構220について説明する。
センサレバー機構220は、板部材211b1上において互いに間隔を空けて上方に延びる板状の軸支持部221,222と、軸支持部221と軸支持部222とに接続され、軸回りに回動可能な回動軸223と、回動軸223に固定され、当該回動軸223の軸回りに回動可能なセンサレバー224と、を備えている。また、センサレバー機構220は、上記の回動軸223の後端部に固定され、センサレバー224の回動に伴って回動軸223の軸回りに回動可能な検出レバー225と、この検出レバー225の先端に接触し、検出レバー225から力を受けて弾性変形する金属片228(図29参照)と、を備えている。さらに、センサレバー機構220は、図30に示すように、ひずみゲージ229と、例えばマイクロコンピュータよりなるインク残量検出部230と、を備えている。
図24(b)に示すように、センサレバー224は、右斜め下の方向に延びている。このセンサレバー224の先端224aは、パック本体312の上面部312bに接触して配置されている。センサレバー224の先端224aは、図28に示す接触領域SRに接触している。接触領域SRは、パック本体312の上面部312bのうち当該パック本体312に挿入されたインクパックキャップ311の前端311aよりも前方の部分である。より詳細には、接触領域SRは、インク流出部314の後方に位置するインク供給部315においてインクパックキャップ311の前端311aよりも前方の部分である。パック本体312内においてインクパックキャップ311の前端311aの近傍は、パック本体312内のインクがなくなる直前まで残留する領域である。上記のように、センサレバー224の先端224aをインクパックキャップ311の前端311aに近い部分に接触させることによって、この前端311aによるパック本体312の膨らみの影響を受けることなく、パック本体312内に残留しているインクの量を適切に検出することが可能となる。なお、センサレバー224の先端224aは、上面部312bのうちインク流出部314とインク供給部315との境界線L21よりも後方であって、インクパックキャップ311の前端311aよりも前方の部分に接触していればよい。
図29に示すように、検出レバー225は、センサレバー224と同様に、右斜め下の方向に延びている。ここで、カートリッジ受け部211の後面部211dに板状の支持部材231が固定されている。この支持部材231上に、ブロック状の一対の保持部材226,227が互いに間隔を空けて設けられている。保持部材226と保持部材227とに金属片228が挟持されている。金属片228の厚さは、外力を受けることにより弾性変形し得る程の厚さに設定されている。検出レバー225の先端225aは、金属片228の上面に接触している。ひずみゲージ229(図30参照)は、金属片228の下面に設けられている。ひずみゲージ229は、金属片228が検出レバー225の先端225aから力を受けて変形した際に、当該金属片228に生じたひずみに応じて電圧を出力する。インク残量検出部230は、ひずみゲージ229により出力された電圧に基づいてパック本体312(図28参照)内のインクの残量を検出するようになっている。
このような構成において、初期状態では、センサレバー224の先端224a(図24(b)参照)は接触領域SR(図28参照)に接触しており、検出レバー225の先端は金属片228が撓まない程度に当該金属片228の上面に接触している。そして、パック本体312内のインクの残量が減少すると、センサレバー224はパック本体312に対する接触状態を維持しつつ回動する。このため、検出レバー225もセンサレバー224の上記回動に伴って回動する。その結果、検出レバー225の先端225aは、金属片228を下方に撓ませる。ひずみゲージ229(図30参照)は、下方に撓んだ状態の金属片228のひずみ量に応じた電圧を出力する。これにより、インク残量検出部230は、上記電圧に基づいてインク残量を検出することができる。
続いて、カートリッジ収容部308(図23参照)には、図29に示すように、インクチューブ継手240が設けられている。詳細には、インクチューブ継手240は、カートリッジ収容部308に配置されたカートリッジ受け部211の後面部211dに設けられている。インクチューブ継手240の後部には、インクヘッドユニット107(図22参照)に繋がったインクチューブ241が接続されている。なお、図29では、インクチューブ241の一部のみ図示している。インクチューブ継手240の前部には、上述の針材211g(図24(b)参照)が設けられている。上述したように、針材211gの内部には、インクチューブ241に連通された流路が形成されている。インクパック310(図27参照)を保持したインクカートリッジ201(図24(b)参照)をカートリッジ受け部211内に挿入する際に、上記針材211gが、インクパックキャップ311(図27参照)を介してパック本体312に突き刺さる。これによって、パック本体312内のインクが針材211gの前記流路を介してインクチューブ241内に流れ込むようになっている。
図29に示すように、インクチューブ継手240の下方にインク桶242が設けられている。インク桶242は、カートリッジ受け部211よりも後方に配置されている。なお、前後方向においてインク桶242の一部とカートリッジ受け部211の一部とが重なっていてもよい。インク桶242の上方は開口されている。インク桶242は、インクチューブ継手240とインクチューブ241との接続部分などから下方に漏れたインクを受けて貯留する。インク桶242は、左右方向に延びている。インク桶242は、本体部301(図23参照)の左右方向の長さと略同じ長さを有している。
インク桶242内には、インクを吸収するインク吸収体243が設けられている。インク吸収体243は、例えばスポンジである。インク吸収体243は、インク桶242内の底部に配置されている。インク吸収体243は、左右方向に延びている。インク吸収体243は、インク桶242の左右方向の内寸と略同じ長さを有している。なお、長さを短くしたインク吸収体243を複数用意し、これらのインク吸収体243をインク桶242内に互いに間隔を空けてそれぞれ設けるようにしてもよい。インク吸収体243によりインク桶242内に溜まったインクが十分吸収されれば、当該インク吸収体243を交換してもよいし、吸収されたインクを除去したインク吸収体243を繰り返し使用してもよい。
以上のように、本変形例によれば、インクパック310を支持する支持部210の中央部210Cが左部210Lおよび右部210Rよりも低くなっているので、インクがパック本体312内の左方および右方から中央に集まり易くなっている。すなわち、パック本体312内において一点集中的にインクを集めることができる。これにより、多量のインクがパック本体312内に残留することなく、インクがインクパックキャップ311から十分に流出される。したがって、パック本体312内のインクを十分に使い切ることが可能となる。よって、インクのコストを抑えることができる。
また、本変形例によれば、インクがパック本体312内の左方および右方から中央により集まり易くなる。これによって、パック本体312内に多量のインクが残留することが抑制される。
また、本変形例によれば、パック本体312の下面部312cを接着部218によってアダプタ212の固定部212fに固定することができる。これによって、インクパック310に取り付けられた状態のアダプタ212をインクカートリッジ201に設置した後に、例えば当該インクカートリッジ201を動かしたり、落としたりしたときでも、インクカートリッジ201に対するインクパック310の位置がずれてしまうことを防ぐことができる。したがって、上記位置ずれに起因してインクがパック本体312内で分散されてしまうことを防ぐことができる。
また、本変形例によれば、パック本体312の下面部312cのうちインクパック310の長手方向D21の中央とインクパックキャップ311が設けられた方の端部312aとの間における部分、例えばパック本体312の出口付近の部分を接着部218によりアダプタ212の固定部212fに固定することができる。これにより、パック本体312の出口付近の部分の高さ位置を低くすることができる。したがって、パック本体312内においてインク溜まりが生じることを防ぐことができる。
また、本変形例によれば、アダプタ212の固定部212fは切り欠き部210aに配置される。これによって、固定部212fの移動が切り欠き部210aの周壁によって遮られるので、当該固定部212fの位置ずれを抑制することができる。
また、本変形例によれば、インクカートリッジ201が傾斜部202に支持されることにより、インクカートリッジ201をインクチューブ継手240に向かうにつれて下方に傾斜させることができる。これによって、パック本体312内のインクをインクパックキャップ311付近に集め易くなる。
また、本変形例によれば、図29に示すように、インクチューブ継手240の針材211gがインクパックキャップ311に刺さった状態を解除する際、すなわち、インクパック310と共にインクカートリッジ201を抜く際に、インクパック310から垂れてカートリッジ収容部308の傾斜部202に沿って流れ落ちるインクをインク桶242により受けることができる。これにより、インクがインクジェットプリンタ300の本体の方へ流れ落ちることを防止することができる。
また、本変形例によれば、インク桶242内にインクを吸収するインク吸収体243が設けられている。これによって、インク桶242内のインクをインク吸収体243に吸収させることができる。これにより、インク桶242のインク貯留容量を増やすことができる。
また、本変形例によれば、図24(b)に示すように、パック本体312内のインクが減少すると、当該パック本体312に接触したセンサレバー224が回動する。センサレバー224が回動すると、これに伴って、検出レバー225が回動し、金属片228を変形させ、当該金属片228にひずみを発生させる。このような構成により、金属片228のひずみに応じてパック本体312内に残留するインクの量を容易に検出することができる。
また、本変形例によれば、インクカートリッジ201がカートリッジ収容部308のカートリッジ受け部211の所定位置に配置されていないときには、カバー部材206の後面206aがインクカートリッジ201の前端201bに接触することにより当該カバー部材206を閉じることができないようになっている。これにより、作業者は、インクカートリッジ201の位置ずれを容易に認識することができる。
また、本変形例によれば、パック本体312のうちインクパックキャップ311近傍の部分を窄ませた形状にすることができる。これによって、パック本体312内の隅にインク溜まりが生じ難くなり、インク充填部313のインクをインク流出部314に集め易くなる。すなわち、パック本体312内において一点集中的にインクを集めることができる。これにより、多量のインクがパック本体312内に残留することなく、インクがインクパックキャップ311から十分に流出される。したがって、パック本体312内のインクを十分に使うことが可能となる。
また、本変形例によれば、パック本体312の上面部212bと下面部212cとを溶着することにより、パック本体312のうちインクパックキャップ311近傍の部分を窄ませた形状を容易に形成することができる。
なお、本変形例では、パック本体312の上面部312bと下面部312cとを溶着した溶着領域WR21,WR22を形成することによって、インク充填部313から離間するにつれて幅が小さく設定されたインク流出部314を形成するようにしたが、これに限定されるものではない。図32に示すように、平面視で台形状のインク流出部314を予め形成したインクパック310aを採用するようにしてもよい。
また、本変形例では、インクカートリッジ201の支持部210を円弧状に形成するようにしたが、これに限定されるものではない。図33に示すように、横断面において左部から中央部に向かうにつれ下方に傾斜した板状の第1支持部材251と、右部から中央部に向かうにつれ下方に傾斜した板状の第2支持部材252とを備えた支持部250を採用するようにしてもよい。このような支持部250を採用すれば、インクがパック本体312内の左方および右方から中央により集まり易くなる。これによって、パック本体312内に多量のインクが残留することが抑制される。
また、本変形例では、ひずみゲージ229を用いて、パック本体312内に残留するインクの量を検出するようにしたが、これに限定されるものではない。検出レバー225の先端に向けて投光し、当該検出レバー225の先端から反射される光を受けることにより、検出レバー225の先端の位置を検出するフォトセンサ229a(図34参照)を用いてもよい。フォトセンサ229aは、上述の保持部材226と保持部材227とに挟持されるように配置すればよい。このような場合、例えばマイクロコンピュータよりなるインク残量検出部230a(同図参照)によって、フォトセンサ229aにより出力された電圧に応じてパック本体312内のインクの残量を検出する。これにより、検出レバー225の先端の位置に応じてパック本体312内に残留するインクの量を容易に検出することができる。
また、上記の第1支持部材251を階段状に形成し、第2支持部材252を階段状に形成するように構成してもよい。
また、インクカートリッジ201がカートリッジ受け部211の所定の位置P23に配置されていないときに、例えば表示灯を点灯させることによって、カートリッジ受け部211に対するインクカートリッジ201の位置決めが適切でないことを作業者に報知するように構成してもよい。
また、本変形例では、カートリッジ収容部308の傾斜部202を所定角度に傾斜させて固定する固定式としたが、これに限定されるものではない。パック本体312内に残留するインクの量に応じて、上記傾斜部202の傾斜角度を変更し得る可動式の構成としてもよい。
また、本変形例では、センサレバー224および検出レバー225によってパック本体312内のインクの残量を検出するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、光学式の位置センサなどによってインク残量を検出するようにしてもよい。
また、本変形例では、支持部210と、インクカートリッジ201の左板材201cと、右板材201dと、下面部201aとをそれぞれ別体で形成するようにしたが、例えばプラスチック等によりこれらを一体に形成してもよい。また、本変形例では、アダプタ212と固定部212fとをそれぞれ別体で形成するようにしたが、例えばプラスチック等によりこれらを一体に形成してもよい。
<第3変形例>
次に、第3変形例に係るプリンタ400について説明する。なお、以下の説明で「上」「下」「高さ」の用語は、後述する自重式圧力制御弁が所定の位置に所定の姿勢で正規に配置されたときの重力方向を基準とするものである。
図35は、本変形例に係るプリンタ400の部分斜視図である。図36は、インクカートリッジ421からインクヘッド425へインクを供給する構造を示す概略図である。ここでは印刷時のインクの流れ方向を矢印で示している。本発明に係るプリンタは、図35に示すようなプリンタ400であって、インク供給システム450を備えたプリンタであってもよい。プリンタ400は、主走査方向Yに延びたガイドレール418と、ガイドレール418に係合したキャリッジ413と、記録紙5を支持するプラテン414とを備えている。プリンタ400は、複数の色のインクを吐出することが可能なプリンタである。プリンタ400は、各色のインクごとにインク供給システム450を有している。図35では、1つのインク供給システム450のみが示されており、他のインク供給システム450は省略されている。実際には、プリンタ400は、インクの種類の数のインク供給システム450を有している。インク供給システム450は、インクカートリッジ421と、自重式圧力制御弁411と、インクヘッド425と、インク供給路426と、供給ポンプ423と、ダンパー424と、制御装置428とを備えている。
インクヘッド425およびダンパー424はキャリッジ413に搭載され、主走査方向Yに往復移動する。一方、インクカートリッジ421は、キャリッジ413に搭載されておらず、主走査方向Yに往復移動しない。そのため、キャリッジ413が主走査方向Yに移動しても、インク供給路426が破損しないように、インク供給路426の大部分(少なくとも全長の半分以上)は、主走査方向Yに延びた状態で配置されている。例えば、5種類のインクを利用している場合、合計5本のインク供給路426が設けられている。それらインク供給路426は、ケーブル類保護案内装置(図示せず)で覆われている。このケーブル類保護案内装置とは、例えばケーブルベア(登録商標)である。
インクヘッド425は、インクを吐出するものである。インクヘッド425の下面には、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)が形成されている。インクヘッド425の内部には、圧電素子などからなるアクチュエータ(図示せず)が設けられている。このアクチュエータが駆動することにより、上記ノズルからインクが吐出される。
インクカートリッジ421とインクヘッド425とは、インク供給路426で連通している。インク供給路426は、インクカートリッジ421からインクヘッド425にインクを導く流路を形成している。インク供給路426は、柔軟性や可撓性を有している。インク供給路426の構成は特に限定されないが、例えば樹脂製の変形容易なチューブである。
ダンパー424は、インク供給路426に設けられている。ダンパー424は、インクヘッド425に連通し、インクヘッド425へインクを補給する。ダンパー424は、インクの圧力変動を緩和して、インクヘッド425のインク吐出動作を安定化する。
供給ポンプ423は、インク供給路426に設けられている。供給ポンプ423は、インクカートリッジ421からインクヘッド425に向かってインクを供給する送液装置である。供給ポンプ423は、例えばトロコイドポンプ式の、いわゆるチューブポンプである。
制御装置428は、供給ポンプ423の作動と停止を制御する。これにより、制御装置428は、インクカートリッジ421からインクヘッド425へのインクの供給を制御する。
自重式圧力制御弁411は、印刷時(例えばインク吐出時)にはインクの圧力変動を緩和するように機能する。また、自重式圧力制御弁411は、非印刷時(例えばインクの非吐出時)にはインク供給路426を閉じた状態に維持するように機能する。図37は、本変形例に係る自重式圧力制御弁411の斜視図である。図38は、図37に示す自重式圧力制御弁411のXXXVIII−XXXVIII線縦断面図である。図39は、図38の連通口が開いている状態を示す図である。
本変形例の自重式圧力制御弁411は、開口が形成された中空のケース本体401と、上記ケース本体の上記開口を覆うようにケース本体401に取り付けられた感圧膜402bとを備えている。ケース本体401は、典型的には樹脂製である。ここでは、ケース本体401は円筒状に形成されている。感圧膜402bは、圧力の負荷によって膜厚方向に撓み変形可能なように構成されている。詳細には、感圧膜402bは、下方の圧力が上方の圧力よりも大きくなると上方に撓み変形するように構成されている。つまり、本変形例の自重式圧力制御弁411は、いわゆるダイヤフラム式である。図38に示すように、ケース本体401の内部には、高さ方向を2つの空間領域に区切る隔壁407aが配置されている。換言すれば、ケース本体401は、上下方向に2つの空間領域に仕切られている。
本変形例では、ケース本体401の上面が開口しており、その開口部を覆うように薄膜部材402aが取り付けられている。薄膜部材402aは、ケース本体401の上面の縁部に取り付けられている。薄膜部材402aは、例えば樹脂製のフィルムである。薄膜部材402aは、可撓性を有していてもよく、可撓性を有してなくてもよい。ここでは、薄膜部材402aは略円盤形状をなしている。薄膜部材402aは、重力方向に対して略垂直に配置されている。ケース本体401と薄膜部材402aとに囲まれた空間領域が第1圧力室403である。第1圧力室403の左壁には、インクが流入するインク流入口404が形成されている。インク流入口404は、インク供給路426を介してインクカートリッジ421(図35参照)と連通している。
第1圧力室403には、フィルタ410が配置されている。第1圧力室403にフィルタ410を備えることで、例えばインクに異物が混入した場合や、インク中の固形分が凝集した場合等に、それらを好適に除去することができる。フィルタ410は、例えば樹脂や金属の繊維を絡ませた不織布や、樹脂や金属の繊維を編んだメッシュである。本変形例では、フィルタ410は、薄膜部材402aと同等の大きさの略円盤形状をなしている。フィルタ410の厚さ方向の表面は、薄膜部材402aに対して略平行になるよう配置されている。換言すれば、フィルタ410は、重力方向に対して略垂直に配置されている。これにより、フィルタ410のインク流入側の面を広くとることができ、フィルタに異物等が捕集された場合にもインクの流通を妨げることが防止されている。第1圧力室403は、フィルタ410によって上下方向に2つの空間領域403a、403cに仕切られている。
ケース本体401の下面は開口しており、その開口部を覆うように感圧膜402bが取り付けられている。感圧膜402bは、可撓性を有し、かつガス透過性や水蒸気透過性が低い材質で構成されている。感圧膜402bのインクと接する側の面は、耐インク腐食性に優れた材質からなるとよい。感圧膜402bは、例えば樹脂製のフィルムである。ここでは、感圧膜402bは略円盤形状をなしている。感圧膜402bは、重力方向に対して略垂直に配置されている。ケース本体401と感圧膜402bとに囲まれた空間領域が第2圧力室405である。感圧膜402bは、第2圧力室405の内側(ロッド部408aの側)に撓むことができる程度の張力で、ケース本体401の下面の縁部に取り付けられている。第2圧力室405の左壁には、インクが流出するインク流出口406が形成されている。インク流出口406は、インク供給路426を介してインクヘッド425(図35参照)と連通している。
隔壁407aの一部には、第1圧力室403と第2圧力室405とを連通する連通口407bが設けられている。連通口407bには、バルブロッド(弁部材)408が配置されている。バルブロッド408は、感圧膜402bの変位(撓み具合)に連動して、重力方向の上下に可動する。これにより、連通口407bが開閉される。バルブロッド408は、感圧膜402bに連結されている。バルブロッド408は、バルブロッド本体408abとシール部材408cとを備える。バルブロッド本体408abは、縦断面がT字状をなす。つまり、バルブロッド本体408abは、I字状(長軸状)のロッド部408aと、横棒状のバルブ部408bとを備える。
ロッド部408aは、連通口407bの内径よりも小さな外径を有する。ロッド部408aは、隔壁407aを貫くように連通口407bに挿入されている。ロッド部408aは、第1圧力室403から連通口407bを通って第2圧力室405に(図35の下方に)延びている。ロッド部408aの先端は、感圧膜402bに連結されている。ロッド部408aは、重力方向と略平行になるよう配置されている。これにより、ロッド部408aと感圧膜402bとが略垂直に配置され、感圧膜402bの変位をバルブロッド408に効率的に伝達できるようになっている。また、バルブロッド408の安定的な動作が確保されている。バルブ部408bは、連通口407bの内径よりも大きな外径を有する。バルブ部408bは、第1圧力室403の内部に配置される。バルブ部408bは、いわゆる錘(おもり)としての役割を担う。
シール部材408cは、バルブロッド本体408abと隔壁407aとの間に介在する。本変形例では、シール部材408cは、ロッド部408aの周縁に円環状(Oリング状)に配置されている。シール部材408cは、バルブロッド本体408abと隔壁407aとにそれぞれ密着し、シール部材408cおよびバルブロッド本体408abによって連通口407bを閉鎖する。シール部材408cは、弾性を有する材質で構成されるとよい。シール部材408cは、耐インク腐食性に優れた材質からなるとよい。シール部材408cは、ここではゴム製である。
バルブロッド408は、耐インク腐食性に優れた材質で構成される。バルブロッド本体408abは、典型的には金属製、例えば真鍮製、銅製、銀製、白金製、金製、ステンレス製等である。なかでも、比重が凡そ8g/cm3、好ましくは8.4g/cm3以上と大きな材質からなるとよい。これにより、バルブロッド408自身の重量(自重)が重くなる。そのため、感圧膜402bが撓み変形しないときには、バルブロッド408の浮力が抑えられ、自重によってバルブロッド408が重力方向に押圧される。これにより、連通口407bの閉鎖状態が好適に維持される。本変形例では、自重を確保する点とコストを低減する点から、バルブロッド本体408abが真鍮製である。なお、真鍮は銅と亜鉛の合金である。真鍮の比重は、組成比によっても異なり得るが、概ね8.4〜8.6g/cm3程度である。
本変形例では、バルブロッド408の自重を重くするために、バルブロッド408(特にはバルブ部408b)が従来に比べて大きい。そして、バルブロッド408が第1圧力室403の空間領域403cの容積の多くを占有している。これにより、バルブロッド408の浮力が抑えられ、当該バルブロッド408の自重によって連通口407bの閉鎖状態がより良く維持される。バルブロッド408の浮力を抑えて自重を好適に確保する観点からは、バルブ部408bの体積が、第1圧力室403の全容積の概ね30%以上、例えば40%以上であるとよい。また、自重式圧力制御弁411の内部でインクを円滑に流通させる観点からは、バルブ部408bの体積が、第1圧力室403の全容積の概ね80%以下、典型的には70%以下、例えば60%以下であるとよい。本変形例では、「第1圧力室403の全容積」、すなわちフィルタ410によって仕切られた2つの空間403a、403cの容積の和を100%としたときに、バルブ部408bの体積が凡そ41%を占め、バルブ部408bとシール部材408cとを合わせた体積が凡そ48%を占めている。
図40は、図37に示す自重式圧力制御弁411のXL−XL線横断面図である。図40は、ケース本体401の第1圧力室403の空間領域403c部分の断面を示している。本変形例では、ケース本体401は、略円形の断面形状をなしている。第1圧力室403の空間領域403cは、ケース本体401の内径よりも一回り小さな直径の略円形の断面形状をなしている。第1圧力室403の断面中央部には、バルブロッド本体408abのロッド部408aが配置されている。ロッド部408aは、インクを円滑に流通させる観点から、第1圧力室403の空間領域403cよりも一回り小さな直径の略円形の断面形状をなしている。
本変形例では、図38に示すように、バルブロッド408が第1圧力室403の容積の多くを占めている。このため、第1圧力室403では、バルブロッド408が小さい場合と比較して、インク流入口404から連通口407bに向かうインクの流れが遅くなりがちである。そこで、本変形例では、図40に示すように、第1圧力室403の内側の側面に4本の線状凸部403bが形成されている。図38に示すように、線状凸部403bは、バルブロッド408が可動する方向、すなわちロッド部408aの軸方向と平行の方向に沿って略直線状に略等間隔で形成されている。線状凸部403bは、ロッド部408aと当接している。これによって、例えば図40のように第1圧力室403内のインク流路が狭い態様でも、線状凸部403bの形成されていない部分とバルブロッド408との間の隙間を伝って、連通口407bまで滞りなくインクが到達する。したがって、連通口407bが開放されたときには、第1圧力室403から第2圧力室405へとインクを円滑に移動させることができる。また、線状凸部403bはバルブロッド408の位置を安定化する機能を有する。つまり、線状凸部403bを備えることで、例えば図40の左右あるいは前後にバルブロッド408が偏ることが予防される。これにより、バルブロッド408を上下方向に安定して可動させることができ、インクの流れを安定化することができる。
なお、一般的な圧力制御弁(例えば、国際公開2003/041964号パンフレット参照)では、バルブロッドを閉鎖位置に付勢するための付勢部材(例えばシールバネ)が必要となる。しかしながら、ここに開示される構成によれば、例えばバルブロッド408の材質や大きさを調整することにより、従来必須であった付勢部材を用いることなく、連通口407bの閉鎖状態(自己封止状態)を好適に維持することができる。
図38に示すように、バルブロッド本体408abのロッド部408aは、感圧膜402bの側に端面を有している。感圧膜402bとロッド部408aの端面との間には、受圧板409aが配置されている。受圧板409aは感圧膜402bの表面に載せ置かれている。受圧板409aとバルブロッド本体408abのロッド部408aとは、略垂直に配置されている。換言すれば、受圧板409aは重力方向と略垂直に配置されている。受圧板409aを備えることで、感圧膜402bの撓み変形に基づく変位をバルブロッド408に安定して伝えることができる。本変形例では、受圧板409aの受圧面積(つまり、感圧膜402bの変位が作用する面積)が、ロッド部408aの感圧膜402bの側の端面に比べて、相対的に大きい。また、感圧膜402bの撓み変形を阻害しないように、受圧板409aの受圧面積が感圧膜402bの表面積より小さい。これにより、感圧膜402bの撓みをバルブロッド408に効率的かつ安定的に伝達することができる。
受圧板409aは、感圧膜402bよりも硬質で、かつ感圧膜402bの変位を阻害しないように、軽量な材質で構成される。受圧板409aは、耐インク腐食性に優れた材質からなるとよい。受圧板409aは、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂製である。受圧板409aの形状は特に限定されないが、ここでは感圧膜402bよりも一回り小さな略円板状体である。図41は、受圧板409aの変形例である。図41(a)、(b)の受圧板409aは蓮根形状であり、幅が略一定の円環状の外周部491と、その内側に架け渡された幅が略一定の交差部492とを有している。図41(c)の受圧板409aは、円環状の外周部491の内側がメッシュ形状である。図41(d)の受圧板409aは、円環状の外周部491の内側がハニカム形状である。図41に例示する受圧板409aは、いずれも感圧膜402bの側の面からバルブロッド408の側の面に向かう板厚方向に貫通する貫通口493を有する。表面に貫通口493を有する受圧板409aを用いることで、受圧面積を大きく維持しつつ、受圧板409aの軽量化を図ることができる。その結果、感圧膜402bが第2圧力室405の内部の圧力変化に追従して、より俊敏に撓み変形するようになる。
図38に示すように、受圧板409aとバルブロッド408のロッド部408aとの間には、コイルバネ409bが配置されている。具体的には、受圧板409aのバルブロッド408側の表面に、リング状の突起部409cが形成されている。この突起部409cによって、受圧板409aのロッド部408a側の表面に円柱状のコイルバネ409bの一端が固定されている。より詳しくは、突起部409cの外側にコイルバネ409bが巻き付けられている。受圧板409aとコイルバネ409bとを一体化することで、これら部材が安定に当接している。また、受圧板409aとバルブロッド408との間にコイルバネ409bを配置することで、感圧膜402bが第2圧力室405の外側(図35の下方)に撓むことが防止されている。これにより、自重式圧力制御弁411の内部が負圧に維持される。つまり、コイルバネ409bは、感圧膜402bを上方に引っ張り上げる負圧保持部材として機能するものである。非印刷時には、第2圧力室405の圧力がインクヘッド425のノズル(図示せず)の圧力と略同等となる。ノズルは大気解放されているため、第2圧力室405の圧力を負圧とすることで、ノズルからのインク漏れを防止することができる。
コイルバネ409bは、ロッド部408aの感圧膜402bの側の端面よりも一回り大きい巻き経を有している。コイルバネ409bは、ロッド部408aの感圧膜402bの側の端面を挿入可能なように形成されている。バルブロッド本体408abの端部をコイルバネ409bに挿入することで、バルブロッド408と受圧板409aとが安定的に当接するようになる。また、バルブロッド408を上下方向にスムーズに可動させることができる。これにより、インクの圧力変動(脈動)を小さく抑えることができる。つまり、コイルバネ409bは緩衝部材としても機能するものである。
非印刷時、つまりインクヘッド425からインクが吐出されないときには、第2圧力室405に所定量以上のインクが貯留されている。そのため、バルブロッド408のシール部材408cは、図38に示すように自重によって隔壁407aに押し付けられた状態となっている。これにより、連通口407bが閉鎖された自己封止の状態が保たれる。換言すれば、連通口407bは、第2圧力室405内のインクが所定量まで減少して第2圧力室405が負圧にならない限り、開放されない。ここに開示される構成では、バルブロッド408の自重を利用することで、いわゆる自己封止の状態を実現している。したがって、シールバネ等の付勢部材を使用する必要がなく、長期間に亘って自己封止機能を適切に維持することができる。
一方、プリンタ400の印刷が開始されると、制御装置428によって供給ポンプ423が駆動される。同時に、インクヘッド425のノズルから記録紙5に向かってインクが吐出される。インクが吐出されると、ダンパー424に貯留されているインクがインクヘッド425に供給される。インク貯留量検出装置により、ダンパー424のインク貯留量が少なくなったことが検知されると、制御装置428は供給ポンプ423を駆動する。これにより、自重式圧力制御弁411の第2圧力室405内のインクがインクヘッド425側に吸い出され、ダンパー424に送られる。このとき、第2圧力室405のインク貯留量が減少して、第2圧力室405の内部が負圧になる。その結果、図39に示すように、感圧膜402bが大気圧に押されて第2圧力室405の内側に(図39の上方に)撓む。この感圧膜402bの動きにより、バルブロッド408は、自身の重量(自重)に抗して上方に押し上げられる。そして、バルブロッド408のシール部材408cが隔壁407aから離れて、連通口407bが開放されると、第1圧力室403から第2圧力室405へインクが流入する。なお、図39では印刷時のインクの流れ方向を矢印で示している。
第1圧力室403から第2圧力室405にインクが流入するにしたがって、第2圧力室405の負圧が解消される。これに伴い、感圧膜402bの上方への撓みが緩和される。その結果、バルブロッド408が自重によって下方に戻される。そして、バルブロッド408のシール部材408cと隔壁407aとが接触すると、連通口407bが閉鎖される。バルブロッド408は、自重を利用することで比較的緩やかに上下方向に移動する。このため、連通口407bの開閉に伴うインクの圧力変動を小さく抑えることができる。また、上記構成によれば、感圧膜402bの撓み変形に連動して連通口407bが開閉する。このため、自重式圧力制御弁411を電気的に制御する必要がなく、簡便である。
自重式圧力制御弁411の第1圧力室403はインクカートリッジ421と連通している。このため、第1圧力室403で減少した分のインクは、インクカートリッジ421から補充される。以上により、印刷時には、インクカートリッジ421からインクヘッド425へインクが安定して供給され、高い印刷品質を安定的に発揮することができる。
本変形例では、自重式圧力制御弁411は、上述の通りバルブロッド408の自重を利用して連通口407bを閉鎖するものである。したがって、バルブロッド408の安定的な動作を確保する観点からは、自重式圧力制御弁411が動かないように固定されていることが好ましい。換言すれば、バルブロッド408のロッド部408aの軸方向が鉛直方向となるように、自重式圧力制御弁411を支持する支持部を備えるとよい。例えば、固定具によって自重式圧力制御弁411が水平な載置台の上に取り付けられているとよい。このことによって、バルブロッド408の安定的な動作をより良く確保することができる。
感圧膜402bのロッド部408a側と反対側の面(外側の面)は、大気と接しているとよい。これにより、大気圧が変わると感圧膜402bの外側の面の圧力もそれに応じて自動的に変わる。そのため、複雑な制御を行うことなく、大気圧の変化に適切に対処することができる。そのため、ノズルからインクが漏れることを的確に防止することができる。また、印刷時には、ノズルからインクを円滑に吐出することができる。その点で、上記載置台には、感圧膜402bの配置される部分に、感圧膜402bと同等かそれよりも大きな貫通口が形成されているとよい。例えば、固定部401a(図37参照)によって、上記載置台に形成された貫通口の縁部に自重式圧力制御弁411を取り付けるとよい。
以上、本変形例において、図39に示すように、自重式圧力制御弁411では、感圧膜402bの撓み変形(膜厚方向の変位)と連動して連通口407bが開閉する。このため、電気的に制御する必要がないため、簡便である。また、上記構成によれば、図38に示すように、感圧膜402bが撓み変形しないときには、バルブロッド408の自重によって連通口407bが閉じた状態(自己封止の状態)に維持される。そのため、従来必須であったシールバネ等の付勢部材が不要となる。したがって、上述したような付勢部材の腐食劣化に伴う問題を未然防止することができる。つまり、上記構成によれば、長期間に亘って自己封止機能を適切に維持することができ、高い印刷品質を安定的に発揮することができる。
また、本変形例では、バルブロッド408のロッド部408aは端面を有する。そして、自重式圧力制御弁411は、感圧膜402bとロッド部408aの上記端面との間に介在し、ロッド部408aの上記端面の面積よりも大きな面積を有する受圧板409aを備える。このことによって、感圧膜402bの撓み変形が、バルブロッド408に安定的かつ効率的に伝達される。そのため、より機敏かつ的確にバルブロッド408を可動させることができる。
本変形例では、自重式圧力制御弁411は、受圧板409aとバルブロッド408のロッド部408aとの間に配置された緩衝部材としてのコイルバネ409bを備える。このことによって、バルブロッド408を上下方向に円滑に可動させることができる。このため、連通口407bの開閉に伴う液体の圧力変動(脈動)を、より小さく抑えることができる。
本変形例では、コイルバネ409bは、受圧板409aのバルブロッド408側の面に取り付けられている。このことによって、コイルバネ409bと受圧板409aとを一体化することで、これら部材が安定して当接する。その結果、感圧膜402bの変位をバルブロッド408に対して、より的確に伝達することができる。したがって、上記構成によれば、バルブロッド408を一層安定的に可動させることができる。
本変形例では、バルブロッド408は真鍮製である。このことによって、インクによる腐食を高度に防止することができる。また、バルブロッド408の自重を適切に確保することができる。
本変形例では、バルブロッド408のバルブ部408bの体積が、第1圧力室403の全容積の30%以上を占める。このことによって、バルブロッド408の自重を適切に確保することができる。そして、感圧膜402bが弾性変形しないときには、バルブロッド408の浮力を抑えて自己封止の状態を好適に維持することができる。
本変形例では、第1圧力室403にフィルタ410を備える。このことによって、インクに異物が混入した場合や、インク中の固形分が凝集した場合等に、それらを好適に除去することができる。したがって、より優れた印刷品質を実現することができる。
本変形例では、ケース本体401における第1圧力室403の内側の側面には、バルブロッド408のロッド部408aの軸方向と平行の方向に沿った線状凸部403bが形成されている。このことによって、バルブロッド408を上下方向に安定して可動させることができる。また、連通口407bが開放されたときには、第1圧力室403の液体が、線状凸部403bの形成されていない部分とバルブロッド408との間の隙間を伝って、連通口407bまで滞りなく到達する。このため、第1圧力室403から第2圧力室405へとインクを円滑に移動させることができる。
本変形例では、受圧板409aは、感圧膜402b側の面からバルブロッド408側の面に向かう方向に貫通する貫通口493(図41(a)参照)を有する。このことによって、受圧面積を大きく維持しつつ、受圧板409aの軽量化を図ることができる。これにより、感圧膜402bが第2圧力室405の内部の圧力変化に追従して、より俊敏に弾性変形するようになる。したがって、バルブロッド408を、より効率的かつ安定的に可動させることができる。
なお、本変形例に係る自重式圧力制御弁411はインクジェット式記録装置に搭載されていたが、これには限定されない。本変形例に係る自重式圧力制御弁411は、例えばインクジェット方式を採用する種々の製造装置や、マイクロピペット等の計測器具等、液体供給システムを備える各種用途で使用可能である。
<第4変形例>
次に、第4変形例に係るプリンタ500について説明する。図42は、本変形例に係るプリンタ500の部分斜視図である。図43は、インクカートリッジ511からインクヘッド515へインクを供給する構造を示す概略図である。本発明に係るプリンタは、図42に示すようなプリンタ500であって、インク供給システム550を備えたプリンタであってもよい。プリンタ500は、主走査方向Yに延びたガイドレール503と、ガイドレール503に係合したキャリッジ501と、記録紙5を支持するプラテン504とを備えている。プリンタ500は、上述した各プリンタと同様に、複数の色のインクを吐出することが可能なプリンタである。プリンタ500は、第3変形例のプリンタ400と同様に、各色のインクごとにインク供給システム550を有している。図42では、1つのインク供給システム550のみが示されており、他のインク供給システム550は省略されている。実際には、プリンタ500は、インクの種類の数のインク供給システム550を有している。インク供給システム550は、インクカートリッジ511と、インク供給路512と、供給ポンプ513と、ダンパー装置514と、インクヘッド515と、インク循環路516と、制御装置518とを備えている。
インク供給路512は、インクカートリッジ511からインクヘッド515へインクを導くインク流路である。インク供給路512は、インク供給路512は、第3変形例のインク供給路426と同様の材料で形成されている。
図43に示すように、インク供給路512は、チューブ512a、512bおよび512cで構成されている。チューブ512aは、インクカートリッジ511と供給ポンプ513とを連通する。チューブ512bは、供給ポンプ513とダンパー装置514とを連通する。チューブ512cは、ダンパー装置514とインクヘッド515とを連通する。このような経路で、インクカートリッジ511からインクヘッド515にインクが供給される。
図43に示す態様では、インクヘッド515の下面515aは、インクカートリッジ511よりも低い位置に設けられている。ただし、インクヘッド515の下面515aは、インクカートリッジ511と略同じ高さに設けられていてもよい。インクヘッド515は、インクカートリッジ511よりも高い位置に設けられていてもよい。
インク循環路516は、ダンパー装置514からチューブ512a側にインクを戻すインク流路である。インク循環路516の一端は、ダンパー装置514に接続されている。インク循環路516の他端は、インク供給路512のインクカートリッジ511と供給ポンプ513との間、すなわちチューブ512aに接続されている。インク循環路516とチューブ512aとが連通する部分には、三方弁517が配置されている。インク循環路516は、例えばインク供給路512と同様の材質からなる。
三方弁517は、チューブ512aに接続され、インクカートリッジ511に連通する第1接続口517aと、チューブ512aに接続され、供給ポンプ513に連通する第2接続口517bと、インク循環路516に接続され、ダンパー装置514とチューブ512aとを連通する第3接続口517cとを備える。三方弁517は特に限定されないが、例えば電磁弁である。図示は省略するが、三方弁517は制御装置518に接続されている。3つの接続口517a、517b、517cの連通状態の切換は、制御装置518によって制御される。
制御装置518は、インクカートリッジ511からインクヘッド515へのインクの供給を制御する。制御装置518は、供給ポンプ513とダンパー装置514と三方弁517とに接続されている。制御装置518は、供給ポンプ513の駆動と停止を制御する。制御装置518は、例えばダンパー装置514のインク貯留量が所定の下限値に達したときに、供給ポンプ513を駆動させる。制御装置518は、例えばダンパー装置514のインク貯留量が所定の上限値(満タン)に達したときに、供給ポンプ513を停止させる。また、制御装置518は、三方弁517の開閉を切り換える。これにより、システム内でインクを循環することができる。
ダンパー装置514は、インクヘッド515に連通し、インクヘッド515へインクを補給する役割を担う。また、ダンパー装置514は、インクの圧力変動を緩和して、インクヘッド515のインク吐出動作を安定化する役割を担う。ダンパー装置514は、インク供給路512に設けられている。本変形例では、インクヘッド515に近接してダンパー装置514が配置されている。これにより、インク吐出の直前でインクの動圧変動を吸収することができ、インクの吐出安定性を一層高めることができる。
図44は、本変形例に係るダンパー装置514の側面図である。図45は、図44に示すダンパー装置514のXLV−XLV線縦断面図である。図45に示すように、ダンパー装置514は、一面(図45の右側の面)が開口した中空構造のケース本体521と、当該開口部分を覆うようにケース本体521の外壁面に取り付けられたダンパー膜522とを備えている。ケース本体521は、典型的には樹脂製である。ケース本体521とダンパー膜522とに囲まれた領域が、インク貯留室523である。ダンパー膜522のインク貯留室523と反対側の面には、検知レバー527が配置されている。なお、本変形例のダンパー装置514は、いわゆる弁構造を有していない。
図44に示すように、ケース本体521の壁面(図44の上面)には、インクが流入するインク流入口520が形成されている。インク流入口520は、チューブ512bに接続され、インクカートリッジ511と連通している。ケース本体521の他の壁面(図44の下面)には、インクが流出する吐出用インク流出口529aが形成されている。吐出用インク流出口529aは、チューブ512cに接続され、インクヘッド515と連通している。ケース本体521の壁面(図44の上面)には、循環用インク流出口529bが形成されている。循環用インク流出口529bは、インク循環路516に接続され、三方弁517を介してチューブ512aと連通している。インク流入口520、吐出用インク流出口529a、および循環用インク流出口529bは、それぞれインク貯留室523と連通している。本変形例では、インク貯留室523は直方体形状に形成されている。インク貯留室523には所定量のインクが一時的に貯留される。
本変形例では、循環用インク流出口529bの先端(下端)が、インク流入口520の先端(下端)よりも重力方向の下方に配置されている。本変形例では、インク流入口520の先端(下端)が、インク貯留室523の下面から凡そ1/2程度の高さに配置されている。また、循環用インク流出口529bの先端(下端)が、インク貯留室523の下面から凡そ1/4程度の高さに配置されている。また、循環用インク流出口529bの内径d5は、インク流入口520の内径D5よりも小さい。つまり、d5<D5である。
ダンパー膜522は、インク貯留室523の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、例えば熱溶着によりケース本体521の縁部に貼り付けられている。ダンパー膜522は、感圧膜の一例であり、インク貯留室523内の圧力に応じて撓み変形可能なように構成されている。ダンパー膜522は、典型的には可撓性を有する樹脂製のフィルムである。ダンパー膜522は、単層構造であってもよいし、異なる材質のフィルムが積層され一体化された多層構造であってもよい。ダンパー膜522のインク貯留室523側の面には、例えば耐インク腐食性の向上を目的として、コーティングが施されていてもよい。
図45に示すように、インク貯留室523の内部において、ケース本体521のダンパー膜522と対向する面521aにはテーパーバネ524の一端が取り付けられている。テーパーバネ524の他端は受圧板525に接続されている。テーパーバネ524はダンパー膜522と連結されている。テーパーバネ524は、ダンパー膜522をインク貯留室523の外側に押圧する弾性部材の一例である。テーパーバネ524は、圧縮された状態に維持されている。これによって、ダンパー膜522はインク貯留室523の外側(図45の右側)に向けて押圧され、撓んだ状態となっている。インク貯留室523に貯留されたインクが所定量まで減少して、インク貯留室523内がある程度減圧されると、ダンパー膜522はテーパーバネ524のばね力(弾性力)に抗してインク貯留室523の内側に撓む。
テーパーバネ524は、圧縮されていないときには円錐台形状であり、当該円錐台形状の高さ方向に徐々に内径が変化するように構成されている。テーパーバネ524は圧縮されるにつれて上記高さ方向に縮んでいき、全圧縮されたときに略平坦の板状となる。本変形例では、テーパーバネ524は、ケース本体521の壁面521aからダンパー膜522の方に近づくにつれて内径が小さくなるように配置されている。テーパーバネ524の材質は特に限定されない。テーパーバネ524には、例えば耐インク腐食性の向上を目的として、コーティングが施されていてもよい。
インク貯留室523の内部において、ダンパー膜522とテーパーバネ524との間には、受圧板525が配置されている。受圧板525は、インク貯留室523の外側に向かってダンパー膜522を均質的に押圧するように、ダンパー膜522の略中央に配置されている。本変形例では、受圧板525は円板形状をなしている。受圧板525は、ダンパー膜522との接合容易性を考慮して選択するとよい。受圧板525は、ダンパー膜522よりも硬質な材料で構成されるとよい。受圧板525は、ダンパー膜522の撓み変形を阻害しないように、比較的軽量であるとよい。本変形例では、受圧板525はポリアセタール系樹脂製である。
本変形例では、受圧板525のダンパー膜522と対向する側の面が、受圧板525の全表面の概ね10%以上、典型的には10〜30%、例えば15〜20%程度の表面積を有している。ダンパー膜522と対向する面の面積を広くとることで、ダンパー膜522をインク貯留室523の外側に向かって均質的に押圧することができる。また、ダンパー膜522の撓み変形が受圧板525に精度よく伝達されるようになる。一方で、ダンパー膜522に面積の大きな受圧板525を張り付けると、ダンパー膜522の可動域が極端に制限される虞がある。そこで、ここに開示される技術では、受圧板525とダンパー膜522とを全面接合せずに、間欠的に接合するようにしている。これにより、ダンパー膜522の可動域を維持したままに、受圧板525の受圧面積を広くとることができる。その結果、インク容量の変化に伴ってダンパー膜522がスムーズに撓み変形する。なお、ここでいう「間欠的な接合」とは、受圧板525とダンパー膜522とを全面接合せずに、受圧板525にダンパー膜522と接合されない部分を敢えて(積極的に)残すことをいう。
間欠接合部526は、ダンパー膜522に接合された接合部5261と、ダンパー膜522に接合されていない非接合部5269とを有する。非接合部5269の少なくとも一部は、接合部5261の最も縁部に近い部分に比べて、受圧板525の中央側に位置している。非接合部5269は、接合部5261によって閉鎖されていない。つまり、間欠接合部526に気泡が溜まり難いように、非接合部5269が開放されている。接合部5261は、受圧板525のダンパー膜522と対向する側の面全体の概ね90%以下、典型的には80%以下、例えば70%以下の面積を占める。非接合部5269は、受圧板525のダンパー膜522と対向する側の面全体の概ね10%以上、典型的には20%以上、例えば30%以上の面積を占める。
図46は、図44に示すダンパー装置514の受圧板525である。受圧板525のダンパー膜522と対向する側の面には、間欠接合部526が設けられている。間欠接合部526は、4つの接合部5261を備えている。4つの接合部5261はいずれも点状をなしている。これら4つの点状接合部5261は、受圧板525の中央525cを中心点として、受圧板525よりも一回り小さな同一円周上(図46の2点鎖線上)に配置されている。ケース本体521の開口部分およびダンパー膜522は、四角形(具体的には長方形)である。ダンパー膜522およびインク貯留室523の各頂点から、当該各頂点と最も近接する点状接合部5261までの距離は、それぞれ略等しくなっている。
なお、本変形例の間欠接合部526は4つの点状接合部5261を有しているが、これには限定されない。接合部5261は1つであってもよいし、例えば2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上の複数であってもよい。また、接合部5261は、受圧板525の表面に所定のピッチで規則的に配置されていてもよく、不規則的に配置されていてもよい。また、接合部5261は、点状(ドット状)のみならず、例えば、直線状、弓状、波状などの線状、円状、多角形状、アルファベット形状、歯車形状などのパターン状であってもよい。
間欠接合部526では、例えばダンパー膜522やインク貯留室523の形状などを考慮して、接合部5261と非接合部5269との配置を決定するとよい。一例では、ダンパー膜522および/またはインク貯留室523の縁部から、受圧板525の中央(中心)までの距離が略等しくなるように、接合部5261を配置する。例えば図44に示すように、ダンパー膜522および/またはインク貯留室523が多角形状の場合は、多角形の頂点から受圧板525の中央(中心)までの距離が略等しくなるように、接合部5261を配置するとよい。
ダンパー膜522および/またはインク貯留室523の形状が回転対称性を有している場合、例えば図44に示すように、ダンパー膜522および/またはインク貯留室523が多角形状である場合には、接合部5261もまた、受圧板525の中央525cを中心点とした回転対称性を有しているとよい。例えば、接合部5261が受圧板525の中央525cを中心点とした同一円周上に等間隔で配置されているとよい。あるいは、接合部5261が受圧板525の中央525cを中心点として放射状に配置されているとよい。これにより、ダンパー膜522の撓み変形が受圧板525に均質的に伝達されるようになり、受圧板525が安定的に変位する。したがって、インク貯留量の検知精度を高めることができる。
一例として、ケース本体521の開口部分やダンパー膜522が、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状などの多角形状である場合は、接合部5261の数nが、頂点の数の約数(ただしn≧3)であるとよい。図44に示すように、ケース本体521の開口部分やダンパー膜522が四角形状の場合は、接合部の数nが4つであるとよい。また、ケース本体521の開口部分が六角形状の場合は、接合部の数nが3つあるいは6つであるとよい。なかでも、多角形状の頂点の数と等しい数の接合部5261を有していることが好ましい。上記を満たす数の接合部5261が回転対称性を有するように配置され、その他の部分が非接合部5269となって間欠接合部526が構成されると、ダンパー膜522の撓み変形を受圧板525の変位に安定的に反映することができる。
図47は、受圧板525の他の一例である。この変形例では、受圧板525のダンパー膜522と対向する側の面に、線状あるいはパターン状の接合部が設けられている。図47(a)では、受圧板525の中央525cを中心点として、6つの線状接合部5262が放射状に配置されている。図47(b)では、放射状に配置された6つの線状接合部と、受圧板525の中央部分に配置された円形状接合部とが組み合わされ、1つの歯車状接合部5263をなしている。図47(c)では、受圧板525の中央525cを中心点とした同一円周上に、等間隔で4つの弓状接合部5264が配置されている。図47(d)では、同一円周上に等間隔に配置された4つの弓状接合部5264と、受圧板525の中央部分に配置された1つの円形状接合部5265とが配置されている。図47(e)では、放射状に配置された4つの線状接合部と、同一円周上に等間隔に配置された4つの弓状接合部とがそれぞれ重なり合い、4つのT字状接合部5266をなしている。図47(a)〜(e)では、接合部5262、5263、5264、5265,5266以外の部分が非接合部5269となり、それぞれ間欠接合部526が構成されている。
図44に示すように、インク貯留室523の外側には、検知レバー527が配置されている。検知レバー527は、ダンパー膜522の撓み変形の度合い(位置変化)からインク貯留量を検知するインク貯留量検知装置である。検知レバー527は、2つの固定部527bによってケース本体521の壁面に固定されている。検知レバー527は、ダンパー膜522を介して、受圧板525の中央525cと連結されている。検知レバー527は、バネ部材527cによってダンパー膜522に対して進退自在に配置されており、常にダンパー膜522と当接している。検知レバー527は、ダンパー膜522の撓み変形に基づいて変位する。
例えば、インク貯留室523に貯留されているインクが少なくなると、ダンパー膜522がインク貯留室523の内側に所定量撓む。このダンパー膜522の撓み変形に伴って、検知レバー527もインク貯留室523の側に所定量変位する。逆に、インク貯留室523にインクが供給されてインク貯留量が増えると、ダンパー膜522がインク貯留室523の外側に所定量撓む。ダンパー膜522の撓み変形に伴って、検知レバー527もインク貯留室523から離れる方に所定量変位する。したがって、検知レバー527の変位の情報に基づいて、インク貯留室523内のインク貯留量が所定の範囲内であるか否かを判断することができる。例えばインク貯留室523内のインク貯留量が所定の下限値に到達したか否か、および/または、インク貯留量が所定の上限値(満タン)に到達したか否かを判断することができる。
検知レバー527の変位に基づいて、制御装置518に信号が送られる。制御装置518はこの信号を受信したときに供給ポンプ513を駆動または停止する。上記構成によれば、ダンパー装置514内のインク貯留量に応じて供給ポンプ513を作動させることができる。これにより、インク貯留室523内に所定量のインクを維持することができ、インクヘッド515に安定的にインクを供給することができる。
図45に示すように、本変形例では、検知レバー527が受圧板525の中央525cと連結されている。検知レバー527の受圧板525と連結する位置には、凸部527aが設けられている。一方、凸部527aと連結される受圧板525の中央525cには、凹部525aが形成されている。凹部525aは、検知レバー527のインク貯留室523の側の先端(凸部527a)を挿入可能なように、インク貯留室523の内側に突き出している。これにより、検知レバー527と受圧板525とが安定的に連結されるようになる。したがって、ダンパー膜522の撓み変形の度合いが精度よく検知レバー527に伝達され、安定的に検知レバー527が可動する。
印刷時以外のとき、つまりインクヘッド515からインクが吐出されないとき、ダンパー装置514のインク貯留室523には所定量以上のインクが貯留されている。このとき、ダンパー膜522は、テーパーバネ524のばね力によって、インク貯留室523の外側に撓んでいる。これによって、インク貯留室523内が負圧に保たれ、インク貯留室523と連通するインクヘッド515の下面515aも負圧に維持される。したがって、インクヘッド515のノズルからのインク漏れが防止される。
システム内でインクを循環する際には、図43に示すように、まずインクヘッド515の下面515aにキャップ519を装着する。次に、制御装置518によって、三方弁517の第2接続口517bおよび第3接続口517cが開かれ、第1接続口517aを閉じられる。すなわち、三方弁517は、第2接続口517bと第3接続口517cとがつながった状態に切り換えられる。この状態でモータを駆動させ、供給ポンプ513を駆動させる。このとき、インク循環路516には、ダンパー装置514から三方弁517に向かってインクが流れる。インク循環路516を通ったインクは、インク供給路512を通って、再びダンパー装置514に向かって流れる。図43の矢印は、インク循環時のインクの流れを示している。このようにシステム内でインクを循環することで、インクを均質に維持することができる。その結果、インク中の固形分(例えば色材)が分離したり沈殿したりすることを高度に防止することができる。また、インクの無駄遣いを減らすこともできる。
一方、プリンタ500の印刷時には、インクヘッド515のノズルから記録紙5に向かってインクが吐出される。印刷時には、制御装置518によって、三方弁517の第1接続口517aおよび第2接続口517bが開かれ、第3接続口517cが閉じられる。三方弁517は、第1接続口517aと第2接続口517bとがつながった状態に切り換えられる。ノズルからインクが吐出されると、ダンパー装置514のインク貯留室523に貯留されているインクが吸い出され、インクヘッド515に供給される。これにより、インク貯留室523のインク貯留量が減少して、インク貯留室523内が負圧になる。インク貯留室523内が負圧になるにつれ、ダンパー膜522はインク貯留室523の内側に撓み変形する。ダンパー膜522の撓み変形に応じて、ダンパー膜522と間欠的に接合されている受圧板525も変位する。この変位は、受圧板525と連結された検知レバー527に高い精度で伝達される。検知レバー527の変位の情報は、制御装置518に送られる。制御装置518は、検知レバー527の変位量が所定値に到達したときに、インク貯留量が所定の下限値であると判断して、供給ポンプ513を駆動する。これにより、インクカートリッジ511からダンパー装置514に向かってインクが送られる。
ダンパー装置514のインク貯留室523にインクが流入するにしたがい、インク貯留室523内の負圧が解消される。同時に、ダンパー膜522の撓みが緩和されて、ダンパー膜522と間欠的に接合されている受圧板525も変位する。この変位は、受圧板525と連結された検知レバー527に高い精度で伝達される。制御装置518は、検知レバー527の変位量が所定値に到達すると、インク貯留量が所定の上限値(満タン)であると判断して、供給ポンプ513を停止する。このように、検知レバー527の変位に基づいて供給ポンプ513を駆動することで、インク貯留室523内には所定量のインクが維持される。これにより、インク貯留室523内が負圧になり過ぎることが防止され、インクカートリッジ511からインクヘッド515へインクが安定して供給される。したがって、印刷時には、インクヘッド515から安定的にインクを吐出することができる。
以上、本変形例のダンパー装置514では、図44,46に示すように、受圧板525とダンパー膜522とを全面接合せずに、間欠的に接合するようにしている。これにより、ダンパー膜522の可動域を維持したままに、受圧板525の受圧面積(ダンパー膜522との接触面積)を広くとることができる。また、間欠的な接合により、ダンパー膜522と受圧板525との接合面に空気の閉じ込めが発生し難くなる。したがって、インク貯留室523内の圧力変化をダンパー膜522の撓み変形に精度よく反映することができる。また、このダンパー膜522の弾性変形は、受圧板525に伝達される。このため、検知レバー527を安定的に変位させることができ、インク貯留室523内のインク貯留量をより高精度に検知することができる。したがって、ダンパー装置514を備えたインク供給システムならびにプリンタ500では、インクの吐出安定性が向上し、インクヘッド515から安定的にインクを吐出することができる。
本変形例では、間欠接合部526が、ダンパー膜522に接合された接合部5261と、ダンパー膜522に接合されていない非接合部5269とを有している。非接合部5269の少なくとも一部は、接合部5261よりも受圧板の中央側に位置している。また、非接合部5269は接合部5261で閉鎖されていない。これにより、間欠接合部526から気泡がより良く排出されるようになる。
本変形例では、間欠接合部526が、ダンパー膜522の多角形状の頂点の数と等しい数の接合部5261を有している。これにより、ダンパー膜522の各頂点から最も近接する接合部5261までの距離を、それぞれ略等しくすることができる。間欠接合部526を構成する接合部5261は、受圧板525の中央を中心点とした回転対称性を有するように配置されている。詳細には、受圧板525の中央を中心点とした同一円周上に、等間隔で、接合部5261が配置されている。他の変形例では、図47(a),(b)に示すように、間欠接合部526を構成する接合部5262,5263は、受圧板525の中央を中心点として放射状に配置されている。これらの各他の変形例によれば、ダンパー膜522の撓み変形が、受圧板525、ひいては検知レバー527に、より安定的に伝達される。したがって、インク貯留室523内のインク貯留量を一層高精度に検知することができる。
本変形例では、ダンパー膜522をインク貯留室523の外側に押圧する弾性部材として、テーパーバネ524を用いている。テーパーバネ524は、例えば一般的なコイルバネと比較して、圧縮時の伸縮方向の長さが大幅に小さい。このため、テーパーバネ524を用いることで、ダンパー膜522と、ケース本体521の壁面521aとの間の距離を短くすることが可能となる。したがって、ダンパー装置514の外形の自由度を高めることができる。また、受圧板525との接合を容易かつ精度良く行うことができる。したがって、製造容易性や生産効率の点からも好ましい。
本変形例では、検知レバー527が、受圧板525の中央525cに連結するように配置されている。これにより、例えば受圧板525の略全体あるいは中央525c以外の部分で連結する場合と比べて、ダンパー膜522の撓み変形を、検知レバー527に高精度に伝達することができる。また、検知レバー527は、受圧板525と連結される位置に凸部527aを有している。受圧板525は、中央525cに、検知レバー527の上記凸部527aを挿入可能なように形成された凹部525aを有している。これにより、受圧板525と検知レバー527とが、より安定的に連結されるようになる。このため、インク貯留室523内のインク貯留量を、より高い精度で検知することができる。
本変形例では、図43に示すように、インク供給システム550が、インク供給路512とダンパー装置514とを連通するインク循環路516を備えている。インクは、溶媒と固形分(例えば色材)との混合物である。インクを循環させることで、均質な状態に維持することができる。したがって、固形分が分離したり沈殿したりすることを高度に抑制することができる。
本変形例では、図44に示すように、ダンパー装置514の循環用インク流出口529bの内径d5が、インク流入口520の内径D5よりも小さい。一般にはインク流路の内径が太いほど、動圧変動が大きくなる傾向がある。そこで、インク供給に直接的には寄与しない循環用インク流出口529bの内径d5を小さくすることで、循環側のインクに由来する動圧変動を小さく抑えることができる。したがって、インクの安定供給と動圧変動の抑制とを高いレベルでバランスすることができる。
本変形例では、図44に示すように、ダンパー装置514の循環用インク流出口529bの下端が、インク流入口520の下端よりも重力方向の下方に配置されている。これにより、インク貯留室523に所定量のインクが貯留されているときには、循環用インク流出口529bの先端がインク中により良く配置されるようになる。このため、インク循環路516への気泡の流入が生じ難くなり、印刷不良などの不具合を高度に予防することができる。
なお、本変形例では、液体供給部(インクカートリッジ511)に貯留された液体がインクであったが、これには限定されない。液体は、例えばプリンタ500のメンテナンスに使用する洗浄液などであってもよい。
また、本変形例では、ダンパー膜522をインク貯留室523の外側に撓ませる弾性部材がテーパーバネ524であったが、これには限定されない。弾性部材は、例えば板バネやコイルバネ、ゴム製の部材(例えば板ゴム)などであってもよい。
また、本変形例では、ダンパー装置514がインクジェット式記録装置に搭載されていたが、これには限定されない。ダンパー装置514は、例えばインクジェット方式を採用する種々の製造装置や、マイクロピペットなどの計測器具など、液体供給システムを備える各種用途で使用可能である。
上記実施形態および上記各変形例は、適宜に組み合わせてもよい。