JP2017146623A - 超解像顕微鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】検出感度の低下を招くことなく、所望の空間分解能を容易に得ることができる超解像顕微鏡を提供する。
【解決手段】分子を安定状態から第1量子状態に励起するための第1照明光、及び、分子を更に他の量子状態に遷移させるための第2照明光を、一部空間的に重ね合わせて試料に集光して照射する照明光学系と、第1照明光及び第2照明光と試料とを相対的に変位させて試料を走査する走査部と、第1照明光及び第2照明光の照射により試料から発生する光応答信号を検出する検出部と、照明光学系の第1照明光及び第2照明光が通る光路中に配置され、第2照明光の少なくとも一部を位相変調する複数M個の表面領域を有する位相板と、を備え、位相板は、複数M個の表面領域が所定の条件式を満たす厚さで光学基板上に形成された単層の光学薄膜からなる。
【選択図】図8

Description

本発明は、超解像顕微鏡に関するものである。
近年、2色のレーザ光で蛍光抑制効果を誘導する分光過程をベースにした超解像顕微鏡が開発されている(例えば、特許文献1参照)。かかる超解像顕微鏡においては、ポンプ光(第1照明光)を位相変調せずイレース光(第2照明光)のみ位相変調できるような2色性の位相板が不可欠である。この位相板は、市販のレーザ顕微鏡の光学系に1枚挿入するだけで、ポンプ光とイレース光とを位置づれすることなく試料に集光させることができるので、複雑な光学調整を要することなく設計値通りの超解像の空間分解能を得ることができる。
特開2011−123314号公報
特許文献1に開示の超解像顕微鏡においては、多層膜で形成された2色性の位相板を用いている。そのため、特に、瞳面を複数領域に分割して領域毎に異なる設計の多層膜をコートする場合は、各領域の膜厚管理が難しくなる。その結果、ポンプ光とイレース光との分光透過率が領域毎に異なって集光ビーム形状が歪み、設計値通りの空間分解能が得られない場合が想定される。また、位相板を共焦点顕微鏡に適用して超解像を得る場合は、位相板を通過した蛍光を検出することになるが、一般に多層膜をコートすると蛍光帯域で透過率が低下するため、検出感度の低下を招くことが想定される。
したがって、かかる観点に鑑みてなされた本発明の目的は、検出感度の低下を招くことなく、所望の空間分解能を容易に得ることができる超解像顕微鏡を提供することにある。
上記目的を達成する超解像顕微鏡の発明は、少なくとも2以上の励起量子状態をもつ分子を含む試料を観察する超解像顕微鏡であって、
前記分子を安定状態から第1量子状態に励起するための第1照明光、及び、前記分子を更に他の量子状態に遷移させるための第2照明光を、一部空間的に重ね合わせて前記試料に集光して照射する照明光学系と、
前記第1照明光及び前記第2照明光と前記試料とを相対的に変位させて前記試料を走査する走査部と、
前記第1照明光及び前記第2照明光の照射により前記試料から発生する光応答信号を検出する検出部と、
前記照明光学系の前記第1照明光及び前記第2照明光が通る光路中に配置され、前記第2照明光の少なくとも一部を位相変調する複数M個の表面領域を有する位相板と、を備え、
前記位相板は、前記複数M個の表面領域が下記の条件式を満たす厚さで光学基板上に形成された単層の光学薄膜からなる、
ことを特徴とするものである。
ただし、diはi番目の表面領域に形成される光学薄膜の膜厚である。λは第1照明光の波長であり、λは第2照明光の波長である。nは光学薄膜における第1照明光の屈折率であり、nは光学薄膜における第2照明光の屈折率である。m及びlはi番目の表面領域に形成される光学薄膜の膜厚を特徴付ける整数である。Ψは定位相シフトを表す。
さらに、上記目的を達成する超解像顕微鏡の発明は、少なくとも2以上の励起量子状態をもつ分子を含む試料を観察する超解像顕微鏡であって、
前記分子を安定状態から第1量子状態に励起するための第1照明光、及び、前記分子を更に他の量子状態に遷移させるための第2照明光を、一部空間的に重ね合わせて前記試料に集光して照射する照明光学系と、
前記第1照明光及び前記第2照明光と前記試料とを相対的に変位させて前記試料を走査する走査部と、
前記第1照明光及び前記第2照明光の照射により前記試料から発生する光応答信号を検出する検出部と、
前記照明光学系の前記第1照明光及び前記第2照明光が通る光路中に配置され、前記第2照明光の少なくとも一部を位相変調する複数M個の表面領域を有する位相板と、を備え、
前記位相板は、前記複数M個の表面領域が下記の条件式を満たす厚さに光学基板をエッチングして形成されている、
ことを特徴とするものである。
ただし、dは、エッチングにより最も深く削られた表面領域を基準面としたとき、i番目の表面領域のエッチング後に残る基板の厚さである。λは第1照明光の波長であり、λは第2照明光の波長である。nは光学基板における第1照明光の屈折率であり、nは光学基板における第2照明光の屈折率である。m及びlはi番目の表面領域のエッチング後に残る基板の厚さを特徴付ける整数である。Ψは定位相シフトを表す。
本発明によれば、検出感度の低下を招くことなく、所望の空間分解能を容易に得ることが可能となる。
一実施の形態に係る超解像顕微鏡に用いられる単層2色性スパイラル位相板の構成を説明するための図である。 表1に示した特性を有する単層2色性スパイラル位相板によるイレース光及びポンプ光の集束スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 表2に示した特性を有する単層2色性スパイラル位相板によるイレース光及びポンプ光の集束スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 表3に示した特性を有する単層2色性スパイラル位相板によるイレース光及びポンプ光の集束スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図1の単層2色性スパイラル位相板が製造誤差を有する場合の図2に相当するイレース光及びポンプ光の集束スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図1の単層2色性スパイラル位相板が製造誤差を有する場合の図3に相当するイレース光及びポンプ光の集束スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図1の単層2色性スパイラル位相板が製造誤差を有する場合の図4に相当するイレース光及びポンプ光の集束スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 一実施の形態に係る超解像顕微鏡の概略構成図である。 図8の超解像顕微鏡によるポンプ光スポット及びイレース光スポットの強度分布の測定結果を示す画像写真である。 図8の超解像顕微鏡によるポンプ光スポット及びイレース光スポットの強度プロファイルを示す図である。 図8の超解像顕微鏡による蛍光ポリスチレンビーズの通常画像及び超解像画像をそれぞれ示す写真である。 図11の強度プロファイルを示す図である。 表4の特性を有する単層2色性スパイラル位相板によるイレース光スポット及びポンプ光スポットの幾何学的焦点面での強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 表4の特性を有する単層2色性スパイラル位相板を用いる超解像顕微鏡の超解像性能のシミュレーション結果を示す図である。 他の実施の形態に係る超解像顕微鏡に用いられる環状単層2色性位相板の構成を説明するための図である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の光学薄膜の厚さとポンプ光に与える位相シフトとを示す図である。 図15の環状単層2色性位相板がイレース光波長で完全なπ位相板として機能する場合のイレース光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが0.708μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが2.125μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが3.542μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが4.959μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが6.376μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが7.793μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが9.209μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが10.626μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが12.043μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが13.460μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。 図15の環状単層2色性位相板の変調領域の単層光学薄膜の厚さが14.877μmの場合のポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。
以下、蛍光抑制効果を利用した超解像顕微鏡を例にとって本発明を説明する。
蛍光抑制超解像顕微鏡法は、回折限界を克服できる空間分解能を有する強力な解析法である。その基本概念は、高開口数(NA)の対物レンズにより蛍光試料上に暗点を有するドーナツ形状にイレース光(第2照明光)を集束させると共に、ガウシアンポンプ光(第1照明光)を集束させ、2つの光が重なる領域で蛍光を抑制するというものである。蛍光抑制超解像顕微鏡法は、非線形性の強いプロセスであるので、ポンプ光のみが照射される蛍光スポットは、非線形光学系により課される回折限界よりも大幅に小さくなる。
蛍光抑制超解像顕微鏡システムの性能は、主として以下の(1)及び(2)の要因に応じて決定される。
(1)幾何学的焦点におけるイレース光の暗点の強度は、できる限りゼロに近くなければならない。これは、焦点における残存イレース光強度が蛍光信号のSN比を大幅に減らし得るからである。理論的に且つ実験的に証明されているように、+1次のトポロジカルチャージの左円偏光ラゲール・ガウシアン螺旋ビームは、任意の高いNAで、幾何学的焦点において完全に強度ゼロの円筒対称の鮮明なリングを焦点面にもたらす。したがって、このようなビームは、蛍光抑制超解像顕微鏡におけるイレース光として理想的に適しており、円偏光ガウシアンビームをスパイラル位相板に通すことによって容易に発生させることができる。この螺旋及び偏光を、以下の数値シミュレーション及び実験においてイレース光に対して選択した。
(2)ポンプ光及びイレース光は、干渉精度内で対物レンズの光軸と位置合わせすべきである。これは、空間構造の異なるポンプ光及びイレース光が装置の別個の場所で生成されて異なる光路を辿り、対物レンズの手前でビームスプリッタにより結合されるような顕微鏡システムにおいて大きな技術的困難につながり得る。
この問題を解決する1つの方法は、イレース光及びポンプ光に異なる影響を及ぼす単一の光学素子を設計することである。この光学素子は、イレース光波長ではスパイラル位相板として働いて螺旋ビームを生成するが、ポンプ光波長では、ガウシアンビームプロファイルに影響を及ぼさない。このような光学素子を対物レンズの前に配置すれば、同じ光ファイバから得られるガウシアンのポンプ光及びイレース光によって光学素子を照明することで、ポンプ光及びイレース光の別個の位置合わせの必要をなくすことができる。さらに、この方法は、非常に小型のシステムをもたらし、市販の蛍光顕微鏡で超解像を容易に実施することができる。
単一の小型の光学素子については、2つの解決手段が提案されている。第1解決手段の基本概念は、同じ光ファイバから得られるガウシアンポンプ光及びイレース光が、環状のカラーフィルタ及び環状のスパイラル位相板から成る複合光学素子を照明するというものである。環状の幾何学的形状は、有効なポンプ光及びイレース光を空間的に半径方向に分離する。そして、このような異なる光学的動作は、イレース光を環状のラゲール・ガウシアン螺旋ビームとし、ポンプ光はガウシアンプロファイルを保持する。この方法の主な欠点は、イレース光もポンプ光も入射瞳領域全体を利用しないため、両方の光の実効強度を低下させることである。さらに、ポンプ光は入射瞳の中心部のみを照明するので、その実効NAは対物レンズのものよりも小さい。これは、回折限界におけるポンプ光のスポットサイズの増加につながる。しかし、このポンプ光のスポットサイズの増加は、イレース光スポットの中心の暗点サイズによって主に決まる顕微鏡の空間分解能にほとんど影響しないことに留意されたい。
第2解決手段は、第1解決手段における欠点を多層2色性スパイラル位相板により解決するものである。この場合も、イレース光及びポンプ光は、同じ光ファイバから得られるが、この場合は半径方向に分離されず、両方が対物レンズの前の入射瞳を占める多層2色性スパイラル位相板全体を照明する。多層2色性スパイラル位相板は、連続スパイラル厚さプロファイルに近似するように、方位角方向にいくつかの表面領域に分割される。わずか4つの表面領域で、蛍光抑制超解像顕微鏡法の目的に十分な正確度で所望のスパイラル位相プロファイルに近似できる。各表面領域で、光学多層膜を基板に堆積させる。層の厚さ及び屈折率は、イレース光の波長で4つの表面領域がイレース光にそれぞれ0、π/2、π、3π/2の位相遅れを与える一方で、ポンプ光の波長で4つの表面領域全てがポンプ光に実効位相遅れゼロを与えるように設計される。したがって、多層2色性スパイラル位相板を通過するイレース光は、ドーナツ形の準ラゲール・ガウシアン螺旋ビームに変換されるが、ポンプ光はガウシアンプロファイルを保持する。
なお、多層2色性スパイラル位相板の波長選択性は、多層膜構造によって達成される。例えば、多層2色性スパイラル位相板の各表面領域は、TiO及びSiOの4つの交互層から成る。そのため、製造の困難性及コストアップを招くことが懸念される。
本発明の一実施の形態においては、超解像顕微鏡の位相板として、単層2色性スパイラル位相板を用いる技術を提案する。単層2色性スパイラル位相板は、多層2色性スパイラル位相板を用いる場合と同様に、イレース光及びポンプ光の両方が入射瞳全体を照明することで、両方の光の有効強度を効率的に用いることができる。さらに、単層2色性スパイラル位相板は、波長選択性が単層膜で構成されるので、多層膜構造からなる多層2色性スパイラル位相板よりも製造容易で且つコストダウンが図れる。
(単層2色性スパイラル位相板の設計事項)
図1は、本発明の一実施の形態に係る超解像顕微鏡に用いられる単層2色性スパイラル位相板の構成を説明するための図である。図1に示す単層2色性スパイラル位相板1は、4つに分割された表面領域S1〜S4を有する。4つの表面領域S1〜S4は、トポロジカルチャージ1の螺旋イレース光を生成するために、厚さd、d、d、及びdが以下の要件を満たさなければならない。
ただし、λはイレース光の波長、nはイレース光の波長での単層膜の屈折率、m、m、m、及びmは整数である。Φは定位相シフトを表す。
同時に、同じ4つの表面領域S1〜S4を通過するポンプ光は、トポロジカルチャージ0で、ガウシアンプロファイルを保持しなければならない。したがって、単層2色性スパイラル位相板の4つの表面領域S1〜S4の厚さd、d、d、及びdは、以下の要件も満たさなければならない。
ただし、λはポンプ光の波長、nはポンプ光の波長での単層膜の屈折率、l、l、l、及びlは整数である。Ψi=1,2,3,4は各領域における定位相シフトを表す。
2つの定位相シフトのうちの一方、Φ又はΨは、一般性を失わずゼロに設定することができるので、Φ=0に設定する。式(1)及び(2)を組み合わせると、以下の1組のディオファントス方程式が得られる。
ここで、C≡λ(n−1)/λ(n−1)は物理パラメータによって決まる定数である。式(3)の未知数は、p=Ψ/2π(実数)及び8個の整数m〜m及びl〜lである。
(数値結果及び実験結果)
本発明者らは、図1に示した単層2色性スパイラル位相板1を、ガラス基板上にSiOを単層堆積させて作製する場合を想定して種々のシミュレーションを行った。なお、以下のシミュレーションでは、物理パラメータを、λ=0.647μm、λ=0.532μm、n=1.475、及びn=1.479とした。
上式(3)は、常に正確に解くことができるとは限らない。しかしながら、以下に示すように、満足な近似解を通常は見付けることができる。イレース光のスポットの品質は、ポンプ光のスポットの品質よりもはるかに大きな影響を蛍光抑制超解像顕微鏡の超解像性能に及ぼすので、式(3)の近似解において、m〜mには厳しい要件を指定し、l〜lの要件は幾分緩和した。すなわち、m〜mは、厳密に整数である。したがって、単層2色性スパイラル位相板1は、イレース光に対して完全な螺旋位相を与える。一方、l〜lは、整数値にできる限り近い値となる解を求めた。したがって、単層2色性スパイラル位相板1は、ガウシアンポンプ光に対して小さな収差のみを与える。
表1〜表3は、単層2色性スパイラル位相板1の3つのシミュレーション結果を示すもので、式(3)の近似解と、単層2色性スパイラル位相板1の4つの表面領域S1〜S4によりイレース光波長及びポンプ光波長のそれぞれに与える位相遅れ(モジュロ360°)と、を表す。
このように、イレース光波長の位相遅れは、常に設計値に正確に対応する。したがって、イレース光のヘリシティ条件は、完璧に満たされる。他方、ポンプ光波長の位相遅れ(表1〜表3の右欄に平均からのずれも表す)は、ガウシアンビームに収差を与える。
表3のパラメータを有する単層2色性スパイラル位相板は、極めて小さな収差のみをガウシアンポンプ光に与える。しかしながら、この単層2色性スパイラル位相板は4つの表面領域間に急峻な段差を有することから、作製が困難になる。他方、表1のパラメータを有する単層2色性スパイラル位相板は、4つの表面領域の段差が小さいことから作製し易いが、ポンプ光の収差が大きくなる。
表1〜表3の3つの単層2色性スパイラル位相板の性能を比較するために、入射瞳に単層2色性スパイラル位相板を配置したNA=1.4の油浸アプラナティック顕微鏡対物レンズ(屈折率1.5)から成る集束系を想定して、ベクトル回折理論の一般化Debye−Wolf積分を用いて焦点面におけるイレース光及びポンプ光の集束スポットの強度分布を計算した。そのシミュレーション結果の画像写真を、図2〜図4にそれぞれ示す。なお、図2は表1に対応し、図3は表2に対応し、図4は表3に対応する。また、図2〜図4において、(a)はイレース光の強度分布を示し、(b)はポンプ光の強度分布を示す。
図2〜図4から明らかなように、いずれの場合もほぼ同一のイレース光スポットが得られる。図3(b)及び図4(b)で見られるように、ポンプ光スポットにおける収差の主な影響は、幾何学的焦点からの最大強度点のわずかな変位である。
次に、単層2色性スパイラル位相板の製造誤差による性能への影響を調査した。具体的には、4つの表面領域S1〜S4にSiO層を単純に堆積させると、λ/10程度の厚さのランダムな誤差が予想され得る。したがって、本シミュレーションでは、各表面領域の厚さが設計厚さからランダム偏差を有すると想定し、ランダム偏差の最大値をλ/10に設定した。図2〜図4に対応する通常の計算によるイレース光及びポンプ光の集光スポットの強度分布の画像写真を、図5〜図7に示す。
図5〜図7から明らかなように、ポンプ光スポットの位置及び略ガウシアンの形状は、製造誤差による影響をほとんど受けない。他方、イレース光スポットは、以下の2つの影響を受ける。(1)中心暗点を囲む明るいリングに非対称歪みが生じる。(2)中心暗点自体の強度がゼロではなくなる。これらの影響はいずれも、顕微鏡の超解像性能を低下させるものと予想される。
図8は、本発明の一実施の形態に係る超解像顕微鏡の概略構成図である。本実施の形態において、ポンプ光は、例えばNd:YVO固体レーザの発振波長(1064nm)の2倍波(λ=532nm)を用いる。また、イレース光は、例えばKrレーザの発振波長(λ=647nm)を用いる。ポンプ光及びイレース光は、5MHzの繰り返し周波数で20nsの時間幅を有するパルスに変調されて、同一のシングルモードファイバ11に導入される。
シングルモードファイバ11から射出される直線偏光のポンプ光及びイレース光は、コリメータレンズ12で平行光束にされ、1/4波長板13及び偏光ビームスプリッタ14を経て単層2色性スパイラル位相板15に入射される。1/4波長板13は、単層2色性スパイラル位相板15と独立してまたは一体で、光軸を中心に回転可能に構成され、幾何学的焦点において強度ゼロの準ラゲール・ガウシアンイレース光を生成するために、直線偏光のイレース光を円偏光に変換することができる。単層2色性スパイラル位相板15は、BK7からなるガラス基板表面の4つ表面領域(図1参照)に、表1の数値パラメータに基づいてSiO層を堆積して作製されたものを用いている。
単層2色性スパイラル位相板15を透過したポンプ光及びイレース光は、走査部を構成するガルバノミラー16及び17により2次元方向に揺動走査されて、瞳投影レンズ系18を経て対物レンズ19により試料ステージ20上に設置された試料21に集光される。したがって、シングルモードファイバ11、コリメータレンズ12、1/4波長板13、単層2色性スパイラル位相板15、瞳投影レンズ系18及び対物レンズ19は、照明光学系を構成している。対物レンズ19は、例えば、NA=1.4の油浸アプラナティック顕微鏡対物レンズ(屈折率1.5)が用いられる。なお、図8では、図面を簡略化するため、ガルバノミラー16、17を同一平面内で揺動可能に示している。
一方、試料21からの光は、対物レンズ19でコリメートされ、瞳投影レンズ系18、ガルバノミラー17及び16、単層2色性スパイラル位相板15を経て偏光ビームスプリッタ14に入射される。そして、偏光ビームスプリッタ14で所要の偏光成分が分離された後、蛍光分離フィルタ22により蛍光が取出(透過)され、その透過した蛍光が集光レンズ23及び共焦点ピンホール24を経て、例えば光電子増倍管からなる光検出部25で受光されて、ガルバノミラー16及び17の走査による蛍光画像が取得される。
本発明者らは、図8に示す構成において、単層2色性スパイラル位相板15の光学特性を確認するために、試料21の蛍光分子としてλ及びλの両方で蛍光が誘起される200nm径の蛍光マイクロビーズ(Molecular Probes Inc. F8806)を用いて、焦点面及び焦点面と直交する2つの子午面におけるポンプ光スポット及びイレース光スポットの強度分布を測定した。
図9及び図10は、測定結果を示す図である。図9(a)はポンプ光の強度分布を示す画像写真であり、左上に焦点面における強度分布を示し、焦点面の強度分布の右側及び下側に、ポンプ光の光軸を含む直交する2つの子午面(x方向及びy方向)における強度分布を示す。図9(b)はイレース光の強度分布を示す画像写真であり、同様に左上に焦点面における強度分布を示し、焦点面の強度分布の右側及び下側に、ポンプ光の光軸を含む直交する2つの子午面(x方向及びy方向)における強度分布を示す。図10(a)は、焦点面におけるポンプ光の直交するx方向及びy方向に沿った強度プロファイルを示す。図10(b)は、同様に、焦点面におけるイレース光の直交するx方向及びy方向に沿った強度プロファイルを示す。なお、図10において、破線はx方向の強度プロファイルを示し、実線はy方向の強度プロファイルを示す。
図9及び図10から明らかなように、実測焦点強度分布は、図2の計算強度分布と良好に一致する。具体的には、略ガウシアン強度を有するポンプ光スポットと、中心暗点を有するドーナツ形のイレース光スポットとが生成された。これら2つのスポットの重複画像(図示せず)は、ポンプ光がイレース光の中心暗点に集束したことを示す。
さらに、本発明者らは、図8の超解像顕微鏡の超解像性能を測定するために、試料21の蛍光分子として60nm径の蛍光ポリスチレンビーズを用いて測定した。ビーズは、蛍光強度ピークが570nmにあるナイルレッドを含む。ポンプ光のみの照射によって蛍光は誘起されるが、ポンプ光及びイレース光の同時照射は効率的な蛍光抑制につながる。蛍光ビーズのサイズは回折限界よりも小さいので、これらのビーズは蛍光抑制超解像顕微鏡法の証明に適した試料を提供する。
本発明者らは、最初に、ポンプ光のみを試料21に照射して蛍光点像分布関数(PSF)を測定した(通常測定)。次に、ポンプ光とドーナツ形のイレース光とを用いて画像を取得した(超解像測定)。超解像測定では、イレース光を射出するKrレーザのピークパワーが45mWであり、焦点面におけるドーナツ形のイレース光スポットのピーク強度が8MW/cmと推定された。1画素のサイズは10nmであり、1つの画像を取得するためのイレース光の総エネルギー線量は270nJ/画素である。
図11(a)及び図11(b)は、60nm径の蛍光ポリスチレンビーズの通常画像及び超解像画像をそれぞれ示す写真である。また、図12(a)及び図12(b)に、x軸及びy軸に沿った断面の強度プロファイルをそれぞれ示す。破線で示す通常測定(Normal)では、蛍光画像のPSFは、半値全幅(FWHM)が約240nmのガウシアンプロファイルを有する。他方、実線で示す超解像測定(Super)のPSFは、理論上予測されるようにローレンツプロファイルを有し、そのFWHMは、x軸及びy軸に沿ってそれぞれ約80nm及び約100nmである。この測定結果から、単純な単層2色性スパイラル位相板15は、走査型蛍光顕微鏡に適用して超解像を得るのに適していることが分かる。
さらに、本発明者らは、図8の超解像顕微鏡で用いた単層2色性スパイラル位相板15の作製精度を調査するために、単層2色性スパイラル位相板15上の4つの表面領域S1〜S4(図1参照)の実際の厚さを推定した。これは、各表面領域の透過率の波長依存性を測定し、得られたデータを理論曲線にフィッティングすることにより行った。4つの表面領域の実測平均厚さを表4に示す。表4には、実測平均厚さから計算したイレース光波長及びポンプ光波長のそれぞれにおける実際の位相遅れも示す。
表1と表4との比較から、作製された単層2色性スパイラル位相板15の厚さには、設計値からのかなり大きな偏差があり(表面領域S2及びS3では、偏差がλ/10よりもかなり大きい)、イレース光及びポンプ光の両方で深刻な収差につながることが分かる。図13(a)及び(b)は、表4の実験データに基づいて計算したイレース光スポット及びポンプ光スポットの幾何学的焦点面での強度分布の画像写真を示す。
図13から明らかなように、単層2色性スパイラル位相板15の製造誤差によって、イレース光スポットの中心暗点が幾何学的焦点からx軸に沿って変位している。しかし、ポンプ光スポットの最大強度位置も、イレース光スポットと同じ方向に略同じ量だけ変位している。したがって、超解像顕微鏡としては、単層2色性スパイラル位相板15にかなり大きな製造誤差があるにも関わらず、良好な超解像性能を得ることが可能となる。
さらに、本発明者らは、表4の単層2色性スパイラル位相板15を用いる図8の超解像顕微鏡の超解像性能を数値シミュレートした。計算のために、試料21として、ランダム配向のナイルレッド分子の均一な配列から成る試料を想定した。蛍光スポットを、蛍光抑制プロセス用のベクトルモデルを用い、且つローレンツ抑制率関数(Lorentziandepletion ratio function)をとって計算した。イレース光スポットの最大強度は、上記実験値に従って8MW/cmとなるよう選択した。
図14(a)及び(b)は、イレース光スポットの中心暗点(x方向に約(−50)nm及びy方向に約10nmにある)を含む子午面における、x方向及びy方向のそれぞれに沿ったイレース光スポット(E)、ポンプ光スポット(P)、及び超解像蛍光スポット(F)の計算断面プロファイルを示す。なお、図14(a)及び(b)において、横軸は光軸をゼロとする距離(μm)を示し、縦軸は正規化した強度を示す。
図14(a)から明らかなように、イレース光スポットの強度プロファイルの非対称性が高くても、超解像蛍光スポットはローレンツ形を有し、ガウシアンポンプ光スポットに対して対称に位置付けられる。この結果から、イレース光スポットが中心に強く集束した暗点を有し且つ全方向を光で囲まれている限り、イレース光強度に対する蛍光抑制の強い非線形依存性に起因して、顕微鏡システムの超解像性能はイレース光スポットの実際のプロファイルの影響をほとんど受けないことが分かる。
図14において、蛍光スポットの計算FWHMサイズは、図12の実験結果と良好に一致しており、x方向及びy方向のそれぞれに沿って約82nm及び約96nmである。また、図14から明らかなように、本実験に供した単層2色性スパイラル位相板15がかなり大きな製造誤差を有しているにもかかわらず、イレーススポットの中心暗点は略ゼロの強度である。この中心暗点(x方向に約(−50)nm及びy方向に約10nm)の計算強度は、ドーナツ形のイレース光スポットの明部の最大強度のわずか0.8%である。なお、図10(b)に示したイレース光スポットの実測強度プロファイルにおいては、中心暗部に最大強度の約15%の強度が残存する。これは、図10(b)が、実際のイレース光スポットの強度分布と200nm径の球状ビーズの蛍光分布との畳み込みであることに起因する。
図15は、本発明の他の実施の形態に係る超解像顕微鏡に用いられる環状単層2色性位相板の構成を説明するための図である。この環状単層2色性位相板31は3次元超解像用のπ位相板で、図8に示した超解像顕微鏡において、単層2色性スパイラル位相板15に代えて配置される。環状単層2色性位相板31は、円形のガラス基板等の光学基板31aの中央部に形成された円形の変調領域31bを有する。変調領域31bは、光学基板31a上に堆積された単層の光学薄膜からなる。光学薄膜の厚さdcは、変調領域31bを透過する波長λのイレース光に対しては180°(モジュロ360°)の位相シフトを与えるが、波長λのポンプ光に対しては0°(モジュロ360°)の位相シフトを与えるように最適化される。
超解像性能は、主にイレース光スポットの強度パターンに応じて決まるので、ポンプ光スポットに生じる収差が大きすぎない限り、λにおける0°からのわずかなずれは許容される。変調領域31bの半径r及び光学基板31aの半径rは、λで焦点に完全な強度ゼロをもたらすように数値的に最適化される。なお、r/rは、以下の2つの理由から1/(21/2)に正確には等しくない
(1)照明が、均一な強度ではなく通常はガウシアン強度を有する。
(2)高NA集束でのベクトル効果(Bokor, Davidson: “Tight parabolic dark spot with high NA focusing with a circular Pi phase plate”, Opt. Comm. 270 (2007), 145-150参照)
本発明者らは、変調領域31bに形成する単層の光学薄膜の厚さdcについてシミュレーションを行った。計算で用いたパラメータは、λ=0.647μm、λ=0.532μmとした。また、光学基板31aはBK7からなるガラス基板とし、光学薄膜はSiOとして、n=1.45665、n=1.4608とした。
ここで、dcが満たさなければならない条件は、
(360/n)×(n−1)×dc=(2×k+1)×180 (4)
である。式中、kは整数である。この条件は、λでの180°(モジュロ360°)の位相シフトに対応する。式(4)のk=0、1、2、・・・、10を満たす厚さdcで可能な値は表5の通りである。
所要の厚さdcの単層光学薄膜によりポンプ光に与えられる位相シフトΦは、以下の通りである。
Φ=(360/l)×(n−1)×dc (5)
上記式(5)は、どの厚さdcで式(2)が0°(モジュロ360°)に近いΦを与えるかについてのものである。図16は、式(5)に従ったΦ対dcの関係を示す図であり、横軸は光学薄膜の厚さdc(μm)、縦軸は位相シフトΦ(°)を示す。
以上のことから、低収差ポンプ光スポットの要件に基づく最善の光学薄膜の厚さdcとしては、以下の2つが挙げられる。
ケース1 dc=3.542μm:Φ=24.5°
ケース2 dc=9.209μm:Φ==351.7°(=−8.3°)
ケース1の場合、ポンプ光スポットに導入される収差をある程度小さくでき、光学薄膜の厚さdcも小さくできて比較的作製し易い利点がある。ケース2の場合、ポンプ光スポットに導入される収差は遥かに小さくできるが、光学薄膜の厚さdcは若干大きくなる。
本発明者らは、ポンプ光スポットの収差をより詳細に検討するために、ポンプ光及びイレース光の両方を円偏光させて、NA=1.4の油浸アプラナティック顕微鏡対物レンズ(屈折率1.5)により集光させる場合についてシミュレーションした。なお、ポンプ光及びイレース光は、簡単のため均一な平面波強度(すなわちガウシアン強度ではない)を想定した。
最初に、焦点におけるイレース光スポットについて、完全な相殺的干渉をもたらすようにr/rを数値的に最適化した。最適値は、r/r=0.715である(スカラー回折から得られる値である1/(21/2)に近いが正確に等しくはない)。図17は、表5に示した全ての厚さdcについて、すなわち環状単層2色性位相板31がλeで完全なπ位相板として機能する場合のイレース光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。
表6は、表5に示した全ての厚さdcについて、ポンプ光に与えられる位相シフトΦのシミュレーション結果を示すものである。また、図18〜図28は、対応するポンプ光スポットの強度分布のシミュレーション結果を示す画像写真である。
結論として、上記結果は非常に有望である。比較的薄い単層(例えば、dc=2.125μm又は3.542μm)でも、低収差のポンプ光スポット(同じく、完全な暗イレース光スポット)が得られる。環状単層2色性位相板31は、π位相板として3次元超解像顕微鏡に有効に用いることができる。これにより、蛍光抑制超解像顕微鏡に必要な強度プロファイルを有するポンプ光スポット及びイレース光スポットを生成することができる。
上述した設計原理は、市販の走査型顕微鏡システムに基づく単純な構成で実験的に検証された。なお、上述した単層2色性スパイラル位相板の各表面領域の光学薄膜の厚さや、環状単層2色性位相板の変調領域の光学薄膜の厚さは、本発明の本質的な制限ではないことに留意されたい。上述した単層2色性スパイラル位相板や環状単層2色性位相板は、市販の顕微鏡に適用することで、検出感度の低下を招くことなく、所望の空間分解能が容易に得られる超解像顕微鏡を構成することが可能となる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変形又は変更が可能である。例えば、位相板は、図1に示した4分割された表面領域を有する環状単層2色性位相板に限らず、2以上の任意の数に分割された表面領域を有して構成されてもよい。また、位相板は、ガラス等の光学基板の表面を分割する表面領域に応じてエッチングして、図1の単層2色性スパイラル位相板と同様の機能を有するように構成することもできる。この場合、各表面領域は、下記の条件式を満たす厚さにエッチングされる。
ただし、dは、エッチングにより最も深く削られた表面領域を基準面としたとき、i番目の表面領域のエッチング後に残る基板の厚さである。λはポンプ光の波長であり、λはイレース光の波長である。nは光学基板におけるポンプ光の屈折率であり、nは光学基板におけるイレース光の屈折率である。m及びlはi番目の表面領域のエッチング後に残る基板の厚さを特徴付ける整数である。Ψは定位相シフトを表す。
また、図15に示した環状単層2色性位相板31は、変調領域31bの単層の光学薄膜の厚さdcを、波長λのイレース光に対しては180°(モジュロ360°)の位相シフトを与えるが、波長λのポンプ光は反射させるように構成することもできる。また、試料21を走査する走査部は、試料ステージ21を移動させて試料21を走査するように構成してもよいし、ポンプ光及びイレース光と試料ステージ21とを相対的に変位させて試料21を走査するように構成してもよい。
1 単層2色性スパイラル位相板
S1〜S4 表面領域
11 シングルモードファイバ
12 コリメータレンズ
13 1/4波長板
14 偏光ビームスプリッタ
15 単層2色性スパイラル位相板
16、17 ガルバノミラー
18 瞳投影レンズ系
19 対物レンズ
20 試料ステージ
21 試料
22 蛍光分離フィルタ
23 集光レンズ
24 共焦点ピンホール
25 光検出部
31 環状単層2色性位相板
31a 光学基板
31b 変調領域

Claims (7)

  1. 少なくとも2以上の励起量子状態をもつ分子を含む試料を観察する超解像顕微鏡であって、
    前記分子を安定状態から第1量子状態に励起するための第1照明光、及び、前記分子を更に他の量子状態に遷移させるための第2照明光を、一部空間的に重ね合わせて前記試料に集光して照射する照明光学系と、
    前記第1照明光及び前記第2照明光と前記試料とを相対的に変位させて前記試料を走査する走査部と、
    前記第1照明光及び前記第2照明光の照射により前記試料から発生する光応答信号を検出する検出部と、
    前記照明光学系の前記第1照明光及び前記第2照明光が通る光路中に配置され、前記第2照明光の少なくとも一部を位相変調する複数M個の表面領域を有する位相板と、を備え、
    前記位相板は、前記複数M個の表面領域が下記の条件式を満たす厚さで光学基板上に形成された単層の光学薄膜からなる、
    ことを特徴とする超解像顕微鏡。
    ただし、dはi番目の表面領域に形成される光学薄膜の膜厚である。λは第1照明光の波長であり、λは第2照明光の波長である。nは光学薄膜における第1照明光の屈折率であり、nは光学薄膜における第2照明光の屈折率である。m及びlはi番目の表面領域に形成される光学薄膜の膜厚を特徴付ける整数である。Ψは定位相シフトを表す。
  2. 前記位相板と独立して、または、前記位相板と一体で、光軸を中心に回転可能な波長板を有することを特徴とする請求項1に記載の超解像顕微鏡。
  3. 前記波長板は1/4波長板であり、前記第2照明光は直線偏光であることを特徴とする請求項2に記載の超解像顕微鏡。
  4. 少なくとも2以上の励起量子状態をもつ分子を含む試料を観察する超解像顕微鏡であって、
    前記分子を安定状態から第1量子状態に励起するための第1照明光、及び、前記分子を更に他の量子状態に遷移させるための第2照明光を、一部空間的に重ね合わせて前記試料に集光して照射する照明光学系と、
    前記第1照明光及び前記第2照明光と前記試料とを相対的に変位させて前記試料を走査する走査部と、
    前記第1照明光及び前記第2照明光の照射により前記試料から発生する光応答信号を検出する検出部と、
    前記照明光学系の前記第1照明光及び前記第2照明光が通る光路中に配置され、前記第2照明光の少なくとも一部を位相変調する複数M個の表面領域を有する位相板と、を備え、
    前記位相板は、前記複数M個の表面領域が下記の条件式を満たす厚さに光学基板をエッチングして形成されている、
    ことを特徴とする超解像顕微鏡。
    ただし、dは、エッチングにより最も深く削られた表面領域を基準面としたとき、i番目の表面領域のエッチング後に残る基板の厚さである。λは第1照明光の波長であり、λは第2照明光の波長である。nは光学基板における第1照明光の屈折率であり、nは光学基板における第2照明光の屈折率である。m及びlはi番目の表面領域のエッチング後に残る基板の厚さを特徴付ける整数である。Ψは定位相シフトを表す。
  5. 前記位相板と独立して、または、前記位相板と一体で、光軸を中心に回転可能な波長板を有することを特徴とする請求項4に記載の超解像顕微鏡。
  6. 前記波長板は1/4波長板であり、前記第2照明光は直線偏光であることを特徴とする請求項5に記載の超解像顕微鏡。
  7. 前記光学薄膜は、前記第1照明光に対しては反射作用又は透過作用を有し、前記第2照明光に対しては透過型の位相変調作用を有する、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超解像顕微鏡。
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