JP2017145433A - 銅の表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
Description
蟻の巣状腐食が発生した銅管は、耐久性等に問題が生じる可能性がある。
[1]リン含有銅である銅の表面に、リン酸および炭素数1〜3のカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を接触させる表面処理工程aと、上記酸を接触させた上記リン含有銅の表面に、腐食抑制剤を接触させる表面処理工程bと、を備える銅の表面処理方法。
[2]上記表面処理工程aが、上記酸を含有する酸水溶液中に、上記リン含有銅を浸漬して、放置する工程である、上記[1]に記載の銅の表面処理方法。
[3]上記表面処理工程aが、上記酸を含有する酸水溶液中に、上記リン含有銅を浸漬して、定電位または定電流を印加する工程である、上記[1]に記載の銅の表面処理方法。
[4]上記酸がリン酸である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の銅の表面処理方法。
[5]上記表面処理工程aにおいて−0.04V(vs.SSE)以下の定電位を印加する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の銅の表面処理方法。
[6]上記腐食抑制剤を接触させた上記リン含有銅を乾燥する乾燥工程bを、上記表面処理工程bの後に備え、上記乾燥工程bにおける乾燥温度が、上記腐食抑制剤の融点以上であって沸点未満の温度である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の表面処理方法。
本発明の銅の表面処理方法(以下、単に「本発明の表面処理方法」ともいう。)は、リン含有銅である銅の表面に、リン酸および炭素数1〜3のカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を接触させる表面処理工程aと、上記酸を接触させた上記リン含有銅の表面に、腐食抑制剤を接触させる表面処理工程bと、を備える銅の表面処理方法である。
このような本明細の表面処理銅は、例えば、エアコン等の熱交換器に多用される銅管として、好適に用いられる。
表面処理工程aは、リン含有銅である銅の表面に、リン酸および炭素数1〜3のカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を接触させる工程である。
処理対象となる銅は、リン含有銅である。リン含有銅の具体例としては、リン脱酸銅が挙げられる。リン脱酸銅とは、溶解させた銅にリンを添加して、酸素をP2O5などの酸化物として取り除いた銅であり、この銅には、添加したリンが僅かに残留して固溶している。リン含有銅(リン脱酸銅)におけるリンの含有量は特に限定されない。
表面処理工程aで使用される酸は、リン酸および炭素数1〜3のカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸である。
リン酸は、化学式H3PO4で表されるリン酸(オルトリン酸)のほか、化学式H4P2O7で表される二リン酸(ピロリン酸))などのリン酸類も含む。ただし、本明細書において、単に「リン酸」と称する場合は、特に断りのない限り、化学式H3PO4で表されるリン酸(オルトリン酸)を意味するものとする。
炭素数1〜3のカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの炭素数1〜3のモノカルボン酸が挙げられ、なかでも、ギ酸および酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらの酸は、例えば、水溶媒に溶かした水溶液(酸水溶液)の態様で、使用される。
酸水溶液がリン酸水溶液である場合、リン酸の含有量は、例えば、1〜20質量%であり、5〜15質量%が好ましい。なお、リン酸水溶液において、リン酸の含有量が5質量%の場合にpHが約1.1を示す。
また、酸水溶液がカルボン酸水溶液である場合、カルボン酸の含有量は、例えば、10〜500質量ppmであり、50〜200質量ppmが好ましい。
なお、酸水溶液を使用する際の温度は、特に限定されず、例えば、10〜80℃であり、20〜60℃が好ましい。
表面処理工程aでは、リン含有銅の表面に酸を接触させる。これにより、蟻の巣状腐食の発生起点である、リン含有銅の表面付近に存在するリンを、銅よりも優先的に溶解させて、リン含有銅の表面に凹部(以下、「溶解凹部」ともいう。)を形成する。
リン含有銅の表面に酸を接触させる態様(方法)は、特に限定されず、例えば、以下に説明する態様(方法)が挙げられる。
浸漬法では、酸を含有する酸水溶液中に、リン含有銅を浸漬して、放置する。
浸漬時間(放置時間)は、例えば、6〜48時間であり、12〜32時間が好ましい。
定電位法または定電流法では、酸を含有する酸水溶液中に、リン含有銅を浸漬して、定電位または定電流を印加する。より具体的には例えば、作用電極としてのリン含有銅と、これとは別の白金電極などの対極(補助電極)とを、酸水溶液中に浸漬して、電極反応を行なわせる。この際、参照電極(基準電極)を用いて3電極式の電解セルとしてもよい。
また、定電流の場合、電極に印加する電流は、例えば、0.1〜10mA/cm2であり、0.5〜4mA/cm2が好ましい。
なお、定電位または定電流を印加する時間は、例えば、6〜48時間であり、12〜32時間が好ましい。
本発明の表面処理方法は、表面処理工程aにおいて酸を接触させたリン含有銅を乾燥する乾燥工程aを、表面処理工程aと後述する表面処理工程bとの間に備えていてもよい。
乾燥温度は、特に限定されない。もっとも、酸としてカルボン酸を使用した場合において、リン含有銅に接触させたカルボン酸が残留することを回避する観点からは、カルボン酸の沸点(例えば、ギ酸:100.8℃、酢酸:117.8℃)よりも高い温度で乾燥することが好ましい。具体的には、乾燥温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。乾燥温度の上限は特に限定されないが、例えば、250℃以下である。
乾燥時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜2時間である。
表面処理工程bは、表面処理工程aにおいて酸を接触させたリン含有銅(すなわち、溶解凹部が形成されたリン含有銅)の表面に、腐食抑制剤を接触させる工程である。
腐食抑制剤としては、特に限定されず、銅系材料の腐食抑制剤として従来公知の化合物を使用でき、具体的には、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール(BTA)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、6−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール(PTD)、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール(TBZ)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジゾール(DMTDA)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、BTAが好適に用いられる。
溶液における腐食抑制剤の含有量は、例えば、0.01〜15質量%であり、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
溶解凹部が形成されたリン含有銅の表面に、腐食抑制剤を接触させることで、溶解凹部の内部に、腐食抑制剤が侵入して充填される。
このとき、例えば、腐食抑制剤を含有する溶液中に、リン含有銅を浸漬して放置する。
浸漬時間(放置時間)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜5分間であり、0.5〜2分間が好ましい。
本発明の表面処理方法は、表面処理工程bにおいて腐食抑制剤を接触させたリン含有銅を乾燥する乾燥工程bを、表面処理工程bの後に備えていてもよい。
乾燥温度は、腐食抑制剤の融点以上の温度であることが好ましい。これにより、溶解凹部の内部への腐食抑制剤の侵入および充填が促進される。乾燥温度の上限については、腐食抑制剤の沸点未満の温度で乾燥することが好ましい。
具体的には、例えば、腐食抑制剤としてBTA(融点:96〜99℃、沸点:201〜204℃)を使用する場合、乾燥温度は、100〜200℃が好ましい。
なお、乾燥時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜2時間である。
以下の実施例1〜6および比較例1〜2では、銅管(リン含有銅)として市販のリン脱酸銅管(JIS C1220、長さ15mm×厚さ0.5mm、直径15.5mm、Cu:≧99.90質量%、P:0.015〜0.040質量%)を長手方向に2分割したものを用いた。前処理としてエタノールで脱脂し、脂分を除去しておいた。
また、ギ酸として特級ギ酸(98質量%、HCOOH、和光純薬工業社製)を、リン酸としてオルトリン酸(85質量%、H3PO4、和光純薬工業社製)を、水としてイオン交換水を用いた。
更に、腐食抑制剤として、1,2,3−ベンゾトリアゾール(98質量%、C6H5N3、和光純薬工業社製、以下「BTA」と表記)を用いた。なお、BTAは、少量のメタノール(99.5質量%、和光純薬工業社製)で溶かした後、水を添加してBTA水溶液として用いた。このとき、溶媒の質量比(メタノール/水)は、10/90とした。
大気開放下の100質量ppmのギ酸水溶液(25℃)中に、銅管を浸漬し、そのまま24時間放置した(表面処理工程a)。その後、銅管をギ酸水溶液から取り出して、120℃で1時間の乾燥を行なった(乾燥工程a)。
次いで、銅管を、1質量%のBTA水溶液に浸漬し、1分間放置した(表面処理工程b)。その後、銅管をBTA水溶液から取り出して、100℃で1時間の乾燥を行なった(乾燥工程b)。
このような工程を経て得た銅管を、以下、「BTA処理銅管」と呼ぶ(以下、同様)。
大気開放下の100質量ppmのギ酸水溶液(25℃)中に、銅管を浸漬し、−0.04V(vs.SSE)の定電位を印加して、24時間放置した(表面処理工程a)。このとき、電気化学測定システムHZ−7000(北斗電工社製)を用い、対極として白金電極を用い、参照電極として飽和塩化カリウム水溶液中のAg/AgCl電極を用いた。その後、銅管をギ酸水溶液から取り出して、120℃で1時間の乾燥を行なった(乾燥工程a)。
次いで、銅管を、1質量%のBTA水溶液に浸漬し、1分間放置した(表面処理工程b)。その後、銅管をBTA水溶液から取り出して、100℃で1時間の乾燥を行なった(乾燥工程b)。
このような工程を経て、BTA処理銅管を得た。
大気開放下の100質量ppmのギ酸水溶液(25℃)中に、銅管を浸漬し、1mA/cm2の定電流を印加して、24時間放置した(表面処理工程a)。このとき、電気化学測定システムHZ−7000(北斗電工社製)を用い、対極として白金電極を用い、参照電極として飽和塩化カリウム水溶液中のAg/AgCl電極を用いた。その後、銅管をギ酸水溶液から取り出して、120℃で1時間の乾燥を行なった(乾燥工程a)。
次いで、銅管を、1質量%のBTA水溶液に浸漬し、1分間放置した(表面処理工程b)。その後、銅管をBTA水溶液から取り出して、100℃で1時間の乾燥を行なった(乾燥工程b)。
このような工程を経て、BTA処理銅管を得た。
表面処理工程aにおいて、100質量ppmのギ酸水溶液(25℃)に代えて、5質量%のリン酸水溶液(25℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして、BTA処理銅管を得た。
表面処理工程aにおいて、100質量ppmのギ酸水溶液(25℃)に代えて、5質量%のリン酸水溶液(25℃)を使用した以外は、実施例2と同様にして、BTA処理銅管を得た。
表面処理工程aにおいて、100質量ppmのギ酸水溶液(25℃)に代えて、5質量%のリン酸水溶液(25℃)を使用した以外は、実施例3と同様にして、BTA処理銅管を得た。
銅管を、1質量%のBTA水溶液に浸漬し、1分間放置した(表面処理工程b)。その後、銅管をBTA水溶液から取り出して、100℃で1時間の乾燥を行ない(乾燥工程b)、BTA処理銅管を得た。すなわち、比較例1では、表面処理工程aを経ないで、BTA処理銅管を得た。
そのままの銅管を、比較例2の銅管とした。
(耐食性)
実施例1〜6および比較例1のBTA処理銅管、ならびに、比較例2の銅管を、1000質量ppmのギ酸水溶液を約100mL含む密封容器内に、1ヶ月間放置する試験(耐食性試験)を行ない、その試験後、表面観察を行なって蟻の巣状腐食の発生の有無を確認し、下記基準で評価を行なった。「◎」または「○」であれば、蟻の巣状腐食が抑制されたものとして評価できる。なお、表面観察には、光学顕微鏡およびSEM(日本電子社製、JSM−6060)を用いた。
「◎」:銅管の全表面にわたって、蟻の巣状腐食の発生が観察されなかった。
「○」:銅管の表面のごく一部に、蟻の巣状腐食が観察された。
「△」:銅管の表面に、部分的に、蟻の巣状腐食が観察された。
「×」:銅管の全表面に蟻の巣状腐食が観察された。
実施例1〜6および比較例1〜2について、BTA処理銅管(銅管)を得る際の生産性を下記基準で評価した。生産性の観点からは「◎」または「○」であることが好ましい。
「◎」:表面処理工程aおよび表面処理工程bをどちらも経なかった。
「○」:表面処理工程aが浸漬法であった、または、表面処理工程aを経なかった。
「△」:表面処理工程aが定電位法または定電流法であった。
Claims (6)
- リン含有銅である銅の表面に、リン酸および炭素数1〜3のカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を接触させる表面処理工程aと、
前記酸を接触させた前記リン含有銅の表面に、腐食抑制剤を接触させる表面処理工程bと、を備える銅の表面処理方法。 - 前記表面処理工程aが、前記酸を含有する酸水溶液中に、前記リン含有銅を浸漬して、放置する工程である、請求項1に記載の銅の表面処理方法。
- 前記表面処理工程aが、前記酸を含有する酸水溶液中に、前記リン含有銅を浸漬して、定電位または定電流を印加する工程である、請求項1に記載の銅の表面処理方法。
- 前記酸がリン酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅の表面処理方法。
- 前記表面処理工程aにおいて−0.04V(vs.SSE)以下の定電位を印加する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅の表面処理方法。
- 前記腐食抑制剤を接触させた前記リン含有銅を乾燥する乾燥工程bを、前記表面処理工程bの後に備え、
前記乾燥工程bにおける乾燥温度が、前記腐食抑制剤の融点以上であって沸点未満の温度である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理方法。
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