JP2017145412A - 紫外発光蛍光体と紫外発光デバイス及び紫外発光蛍光体の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】希土類アルミニウムガーネット結晶(LuxY1−x)3(AlyZ1−y)5O12(但し、0≦x≦1、0<y≦1、ZはB,Ga,In,Tl)をベースとして、発光中心を形成する2種以上のLu,Y以外の希土類イオンが少なくとも共添加された紫外発光蛍光体を用いる。添加する希土類イオンの各添加量は、240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長になるように添加比率が調製される。また、xとyの少なくとも一方をパラメータとして発光中心波長および輝度が調製される。上記の紫外発光蛍光体と、紫外発光蛍光体に対して励起光を照射させる手段を備える。
【選択図】図1
Description
また、ルテチウムアルミニウムガーネット結晶(Lu3Al5O12;以下、LuAGと表記)に代表されるこれまでの紫外発光蛍光体は、光源応用するには発光輝度が低く、様々なアプリケーションで求められる波長での発光を実現することは困難であった。
上記状況に鑑みて、本発明は、希土類アルミニウムガーネット結晶をベースとした紫外発光蛍光体を用いて、高輝度と発光中心波長の制御性を同時に実現できる紫外発光デバイスを提供することを目的とする。
共添加する遷移元素イオンの各添加量は、240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長になるように添加比率が調製され、xとyの少なくとも一方をパラメータとして発光中心波長および輝度が調製されることが好ましい。
240〜400nmの範囲の紫外域を発光中心とすることで、滅菌・殺菌能力に優れた紫外発光蛍光体を得ることが可能となる。毒性の強いテトラクロロダイオキシン類の光分解、DNA分解を利用した殺菌応用や,光触媒応用など様々なアプリケーションで求められる波長での発光を実現できる。
ここで、xやyをパラメータとして変化させると、発光中心波長および輝度が変化する。これは、ホスト結晶であるガーネット結晶のバンドギャップが変化することに起因する。例えば、プラズマ励起を用いる場合、励起波長は147nmと172nmであるが、励起波長172nmは、ホスト結晶であるガーネット結晶のバンドギャップに近いことから励起効率が低い。そのため、xやyのパラメータを制御してバンドギャップを小さくすると、励起効率が上がり、輝度が向上するのである。
なお、3価の希土類金属イオンのGd3+イオンの内核電子遷移(4f軌道電子遷移)が効率よく約310nmのナローバンド紫外発光をする。
希土類アルミニウムガーネット結晶をベースにして、LaとScイオンの添加比率で、発光中心波長を制御すると共に、LaとScイオンのそれぞれ単独イオンの場合の濃度限界の添加量を超えて、両イオンの合計添加量を増やして輝度を制御する。
LaとScイオンは発光中心を形成するが、これらの原子に加わるひずみなどが変化すると発光中心波長がシフトする。特に、Scイオンの場合、最外殻軌道が3d軌道であり、Laイオンの5d軌道に比べてイオン中心に近く、周辺原子の入れ替えによる発光中心波長シフトの効果が大きい。
また、Yの添加量を増大することによって、(LuxY1−x)3(AlyZ1−y)5O12結晶をベースとし、励起エネルギーの高効率吸収を制御することができる。
本発明の紫外発光蛍光体によれば、紫外域における発光スペクトルの広帯域化と、ホスト結晶のバンドギャップ制御による高効率励起を実現し、高輝度化を図ることができる。また、広帯域発光中心の特性を生かして、発光中心を形成する2種以上のLu,Y以外の遷移元素イオンの置換サイトを制御することにより、発光中心波長を制御できると共に、濃度消光による限界濃度を超えて、高含有量の遷移元素イオンをドープさせ、高輝度化を実現できる。
ここで、添加する遷移元素イオンは、Laイオン又はScイオンであり、各々の添加量は、280〜340nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長になる添加比率で、かつ、濃度消光が生じる限界近傍の添加量である。
LaとScイオンは発光中心を形成するが、これらの原子に加わるひずみなどが変化すると発光中心波長がシフトする。特に、Scイオンの場合、最外殻軌道が3d軌道であり、Laイオンの5d軌道に比べてイオン中心に近く、周辺原子の入れ替えによる発光中心波長シフトの効果が大きい。
本発明の紫外発光デバイスは、本発明の紫外発光蛍光体と、紫外発光蛍光体に対して励起光を照射させる励起光照射手段を備えるものである。
カソード電極を構成する熱フィラメントや冷陰極材料などの電子放出材料に電圧が印加されると、電界放出により電子が発生し真空中に放たれる。この電子がアノード電極に引き寄せられて進み、アノード電極を構成する紫外発光蛍光体の薄膜に衝突する。電子が衝突することにより紫外発光蛍光体の薄膜は電子エネルギーを光エネルギーに変換して発光することとなる。
本発明の紫外発光蛍光体の作製方法は、上述の本発明の紫外発光蛍光体の作製方法であって、以下の(S1)〜(S6)のステップを備える。
(S1)240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長を決定するステップ
(S2)発光中心を形成する2種以上の遷移元素イオンの添加比率を調製して発光中心波長を制御するステップ
(S3)発光中心を形成する2種以上の遷移元素イオンの各添加量の合計添加量が、各イオンの濃度消光による限界濃度以上になるように調製して輝度を制御するステップ
(S4)パラメータxとyの少なくとも一方を調製して発光中心波長および輝度を制御するステップ
(S5)希土類アルミニウムガーネット結晶に対して、添加比率と合計添加量が調製された2種以上の遷移元素イオンを共添加するステップ
(S6)焼成し、アニール処理するステップ
(S1a)240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長を決定するステップ
(S2a)発光中心を形成するランタン(La)イオンとスカンジウム(Sc)イオンの添加比率を調製して発光中心波長を制御するステップ
(S3a)ランタン(La)イオンとスカンジウム(Sc)イオンの各添加量の合計添加量が、各イオンの濃度消光による限界濃度以上になるように調製して輝度を制御するステップ
(S4a)パラメータxを調製し、イットリウム(Y)イオンの添加量を調製して発光中心波長および輝度を制御するステップ
(S5a)希土類アルミニウムガーネット結晶に対して、添加比率と合計添加量が調製されたランタン(La)イオンとスカンジウム(Sc)イオンを共添加するステップ
(S6a)焼成し、アニール処理するステップ
(S1b)240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長を決定するステップ
(S2b)発光中心を形成する1種以上の遷移元素イオンの添加量が、イオンの濃度消光による限界濃度以上になるように調製して発光中心波長を制御するステップ
(S3b)添加された遷移元素イオンが、Lu又はYの希土類サイトと、Al又はZの第13族元素サイトの少なくとも何れかのサイトに置換するように、Lu又はYの希土類イオンの含有量と、Al又はZの含有量を制御するステップ
(S4b)パラメータxとyの少なくとも一方を調製して発光中心波長および輝度を制御するステップ
(S5b)希土類アルミニウムガーネット結晶に対して、添加量が調製された1種以上の遷移元素イオンを添加するステップ
(S6b)焼成し、アニール処理するステップ
(S1c)240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長を決定するステップ
(S2c)発光中心を形成するLaイオン又はScイオンの添加量が、イオンの濃度消光による限界濃度以上になるように調製して発光中心波長を制御するステップ
(S3c)添加されたLaイオン又はScイオンが、Lu又はYの希土類サイトと、Al又はZの第13族元素サイトの少なくとも何れかのサイトに置換するように、Lu又はYの希土類イオンの含有量と、Al又はZの含有量を制御するステップ
(S4c)パラメータxを調製して発光中心波長および輝度を制御するステップ
(S5c)希土類アルミニウムガーネット結晶に対して、添加量が調製されたLaイオン又はScイオンを添加するステップ
(S6c)焼成し、アニール処理するステップ
本発明の紫外発光デバイスにおける紫外発光蛍光体の作製方法について説明する。図1は、希土類アルミニウムガーネット結晶(LuxY1−x)3(AlyZ1−y)5O12(但し、0≦x≦1、0<y≦1、ZはB,Ga,In,Tl)をベースとして、発光中心を形成する2種以上のLu,Y以外の希土類イオンが少なくとも共添加された紫外発光蛍光体の作製方法の処理フローを示している。
これにより、希土類アルミニウムガーネット結晶をベースとして、少なくとも2種の希土類イオンが共添加された紫外発光蛍光体結晶が得られることになる。
図2は、紫外発光デバイスにおける紫外発光蛍光体の作製方法の処理フローを示している。図1のフローと同様に、紫外域で目標とする発光中心波長を決定し(ステップS11)、LaとScイオンの添加比率を調製して発光中心波長を制御する(ステップS12)。また、LaとScイオンの各添加量の合計添加量が、濃度消光が生じる限界近傍の添加量となるように調製して輝度を制御する(ステップS13)。そして、パラメータxを調製し、Yイオンの添加量を調製して輝度を制御する(ステップS14)。調整された添加量のYイオンとLuイオンを含有する希土類アルミニウムガーネット結晶に対して、添加比率と合計添加量に調製されたLaとScイオンを共添加する(ステップS15)。その後、焼成し、1400〜1700℃で約10時間、アニール処理を行い、紫外発光蛍光体結晶を得る(ステップS16)。
図3は、紫外発光蛍光体の試料作製フローを示している。紫外発光蛍光体の試料の作製は、Lu2O3、Al2O3、La2O3、Sc2O3の各原料粉末を化学量論比に基づいて秤量し(ステップS31)、アルミナ乳鉢を用いて粉末を混合し(ステップS32)、その後、アニール処理を行った(ステップS33)。アニール処理は、電気炉を用いて大気中で行い、アニール温度は1600℃で、アニール時間は10時間であった。なお、La2O3は潮解性があるため、電気炉でアルミナるつぼを用いて1時間アニール処理を行ってから測り取った。
パラメータxを調製し、添加するYイオンの添加量を、0,2,5,8,11,13.8(原子%)となるように調製し、比較例3の紫外発光蛍光体(LuxY1−x)3−aLaaAl5O12(但し、0<a<3)が10gになるように、Lu2O3、Al2O3、La2O3、Y2O3の各原料粉末を化学量論比に基づいて秤量した。
パラメータxを調製し、添加するYイオンの添加量を、0,2,5,8,11,13.5(原子%)となるように調製し、比較例4の紫外発光蛍光体(LuxY1−x)3−bScbAl5O12(但し、0<b<3)が10gになるように、Lu2O3、Al2O3、La2O3、Y2O3の各原料粉末を化学量論比に基づいて秤量した。
また、PLスペクトルから、Yの添加濃度が変化しても、ピーク波長は280nmでありシフトは確認できなかった(図13参照)。
また、PLスペクトルから、Yの添加濃度が増加とともに、ピークは290nmから300nmにシフトし、スペクトル幅も増大していることがわかる(図15参照)。
なお、Lu、Y、Scのイオン半径は、Y(0.102 nm) > Lu(0.097 nm) > Sc(0.087 nm)の順になっており(参照データベース:NIMS物質・材料データベース http://mits.nims.go.jp/)、3種のイオンの内、Yはイオン半径が最も大きい。Yの添加によって、イオン半径の大きなYの濃度が大きくなると、イオン半径の小さなScは影響を受けやすくなり、ScイオンはYイオンに引っ張られて遷移エネルギーが小さくなる。すなわち発光中心波長が低エネルギー側(長波長側)にシフトするのである。
これから、Yの添加量を調製することで、紫外発光蛍光体の発光中心波長を制御できることがわかる。また、実施例1と同様、LaとScを共添加することにより、比較例3や比較例4のようにLa又はScをそれぞれ単独で添加するよりも、合計添加量を増大させることができ、発光強度を大きくできる。実施例2の紫外発光蛍光体は、実施例1と同様、高輝度化と同時に発光中心波長の制御性を実現できるのである。
一例として、YAG結晶をベースとして、LaイオンとScイオンがそれぞれ1.0(原子%)共添加された紫外発光蛍光体のPL測定結果を図11、図12に示す。上述した通り、図11はPLスペクトル、図12はその積分強度を示している。
実施例1,2,3の紫外発光蛍光体の試料のXRD測定結果を図17および図18に示す。図17はXRDスペクトル、図18はLuAG(実施例1)に対する回折ピークのシフトを示している。また、比較例1,2の紫外発光蛍光体の試料のXRD測定結果を図19および図20に示す。また、比較例1,3,5の紫外発光蛍光体の試料のXRD測定結果を図21および図22に示す。また、比較例2,4,6の紫外発光蛍光体の試料のXRD測定結果を図23および図24に示す。ここで、比較例5は、YAG結晶をベースとしてLaイオンのみ1.2(原子%)添加した試料であり、比較例6は、YAG結晶をベースとしてScイオンのみ1.5(原子%)添加した試料である。図19,21,23はXRDスペクトル、図20,22,24はLuAGに対する回折ピークのシフトを示している。なお、図18,20,22,24は、JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)データとの角度シフトを比較したものである。
実施例1(LuAGをベース)、実施例2(LuYAGをベース)、実施例3(YAGをベース)を対比すると、Yの添加が大きくなる実施例2,3では、Yの添加とともに格子面間隔が広がり、回折ピークが低角度側にシフトしていることが、図18のグラフから確認できる。これは、十二面体サイトの歪が生じているものと推察する。イオン半径差や不純物により回折ピークのシフトが生じているといえるであろう。
また、実施例2(LuYAGをベース)のXRD測定結果から、Yの添加量が増えるとLuAGからYAGにホスト結晶が変化していくような特性を示すことがわかる。
さらに、希土類アルミニウムガーネット結晶(LuxY1−x)3Al5O12のアルミニウム(Al)の組成を、B、Ga、In、或は、Tlに一部置換させて、発光中心波長および輝度を調製できる。すなわち、(LuxY1−x)3(AlyZ1−y)5O12(但し、0≦x≦1、0<y≦1、ZはB,Ga,In,Tl)において、さらに置換組成Zの選定およびパラメータyを制御として発光中心波長および輝度を調製し、目的とする発光中心波長および輝度を実現するのである。
図25において、出力光4は、励起光源2が放出する励起光3によって、紫外発光蛍光体1が励起されて放つ蛍光である。
なお、図25では、紫外発光蛍光体1の出力光4の照射方向は、励起光3が紫外発光蛍光体1を照射する方向と同じ方向である構造の紫外発光デバイスであるが、それ以外にも、励起光3が紫外発光蛍光体1を照射する方向とは逆方向に紫外発光蛍光体1の出力光4が放射される構造でも構わない。
アノード電極13とカソード電極19の間の空隙を真空チャネル領域として、電極間に電界を印加することにより電子放出材料であるSiドープAlN薄膜17からの電子を紫外発光蛍光体薄膜11に注入させて発光させる。
なお、カソード電極19とアノード電極13の間にグリッドを挿入して、放出電流を制御することも可能である。カソード電極19とアノード電極13の間にグリッドを挿入する3極方式を採用することでもよい。
また、比較例として、Lu3Al5O12をベースとしてScイオンが添加された蛍光体であって、添加されたScイオンは、Luの希土類サイトのみに置換された紫外発光蛍光体(比較例8a)の発光特性と、Lu3Al5O12をベースとしてScイオンが添加された蛍光体であって、添加されたScイオンは、Alの第13族元素サイトのみに置換された紫外発光蛍光体(比較例8b)の発光特性について説明する。
実施例8の紫外発光蛍光体の試料は、添加するScイオンの添加量が2.6、2.8、3.0、3.2、3.4(原子%)となるように調製し、またLu側サイトとAl側サイトの両サイトに置換されるように、Lu2O3、Al2O3、Sc2O3の各原料粉末を化学量論比に基づいて秤量した。ここで、置換されるAl側サイトにScが1.5(原子%)置換されるようにし、Lu側サイトに1.1、1.3、1.5、1.7、1.9(原子%)置換されるようにした。すなわち、Alを1.5(原子%)だけ少なくし、Luを1.1、1.3、1.5、1.7、1.9(原子%)だけ少なくし、そして、Scが2.6、2.8、3.0、3.2、3.4(原子%)増加するように、各原料粉末を秤量することによって、ScイオンをLu側サイトとAl側サイトの両サイトに置換させた。
8−1)実施例8の紫外発光蛍光体の試料・・・(LuSc)(AlSc)Gと表記
添加したSc(Lu側サイトとAl側サイトの両方に置換)は、
2.6、2.8、3.0、3.2、3.4(原子%)の5種類
但し、Al側サイトに、Scが1.5(原子%)置換されるように計量。
8−2)比較例8aの紫外発光蛍光体の試料・・・(LuSc)AlGと表記
添加したSc(Lu側サイトにのみ置換)は、
1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)の4種類
8−3)比較例8bの紫外発光蛍光体の試料・・・Lu(AlSc)と表記
添加したSc(Al側サイトにのみ置換)は、
1.1、1.3、1.5、1.7、1.9(原子%)の5種類
実施例8の紫外発光蛍光体のPL測定結果を図27に、比較例8aの紫外発光蛍光体のPL測定結果を図28に、比較例8bの紫外発光蛍光体のPL測定結果を図29に示す。それぞれのPL測定結果において、(1)はPLスペクトル、(2)はPLピーク波長、(3)は(420)面X線回折ピークシフト、(4)は積分強度を示している。
なお、XRD測定は、θ−2θ測定とし、CuKα線(0.1541nm)を用いた。フォトルミネッセンス(PL)測定は、励起光源としてキセノンエキシマランプを用い、励起波長を172nm(7.2eV)、測定温度を室温として測定した。
また、比較例として、Y3Al5O12をベースとしてScイオンが添加された蛍光体であって、添加されたScイオンは、Yの希土類サイトのみに置換された紫外発光蛍光体(比較例9a)の発光特性と、Y3Al5O12をベースとしてScイオンが添加された蛍光体であって、添加されたScイオンは、Alの第13族元素サイトのみに置換された紫外発光蛍光体(比較例9b)の発光特性について説明する。
実施例9の紫外発光蛍光体の試料は、添加するScイオンの添加量が2.6、2.8、3.0、3.2(原子%)となるように調製し、またY側サイトとAl側サイトの両サイトに置換されるように、Y2O3、Al2O3、Sc2O3の各原料粉末を化学量論比に基づいて秤量した。ここで、置換されるAl側サイトにScが1.5(原子%)置換されるようにし、Y側サイトに1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)置換されるようにした。すなわち、Alを1.5(原子%)だけ少なくし、Yを1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)だけ少なくし、そして、Scが2.6、2.8、3.0、3.2(原子%)増加するように、各原料粉末を秤量することによって、ScイオンをY側サイトとAl側サイトの両サイトに置換させた。
9−1)実施例9の紫外発光蛍光体の試料・・・(YSc)(AlSc)Gと表記
添加したSc(Y側サイトとAl側サイトの両方に置換)は、
2.6、2.8、3.0、3.2(原子%)の4種類
但し、Al側サイトに、Scが1.5(原子%)置換されるように計量。
9−2)比較例9aの紫外発光蛍光体の試料・・・(YSc)AlGと表記
添加したSc(Y側サイトにのみ置換)は、
1.3、1.5、1.7(原子%)の3種類
9−3)比較例9bの紫外発光蛍光体の試料・・・Y(AlSc)と表記
添加したSc(Al側サイトにのみ置換)は、
1.3、1.5、1.7、1.9(原子%)の4種類
実施例9の紫外発光蛍光体のPL測定結果を図30に、比較例9aの紫外発光蛍光体のPL測定結果を図31に、比較例9bの紫外発光蛍光体のPL測定結果を図32に示す。それぞれのPL測定結果において、(1)はPLスペクトル、(2)はPLピーク波長、(3)は(420)面X線回折ピークシフト、(4)は積分強度を示している。測定方法は、実施例8と同じである。
また、比較例として、Lu3Al5O12をベースとしてLaイオンが添加された蛍光体であって、添加されたLaイオンは、Luの希土類サイトのみに置換された紫外発光蛍光体(比較例10a)の発光特性と、Lu3Al5O12をベースとしてLaイオンが添加された蛍光体であって、添加されLaイオンは、Alの第13族元素サイトのみに置換された紫外発光蛍光体(比較例10b)の発光特性について説明する。
実施例10の紫外発光蛍光体の試料は、添加するLaイオンの添加量が2.4、2.6、2.8、3.0(原子%)となるように調製し、またLu側サイトとAl側サイトの両サイトに置換されるように、Lu2O3、Al2O3、La2O3の各原料粉末を化学量論比に基づいて秤量した。ここで、置換されるAl側サイトにLaが1.3(原子%)置換されるようにし、Lu側サイトに1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)置換されるようにした。すなわち、Alを1.3(原子%)だけ少なくし、Luを1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)だけ少なくし、そして、Laが2.4、2.6、2.8、3.0(原子%)増加するように、各原料粉末を秤量することによって、LaイオンをLu側サイトとAl側サイトの両サイトに置換させた。
10−1)実施例10の紫外発光蛍光体の試料・・・(LuSc)(AlLa)Gと表記
添加したLa(Lu側サイトとAl側サイトの両方に置換)は、
2.4、2.6、2.8、3.0(原子%)の4種類
但し、Al側サイトに、Laが1.3(原子%)置換されるように計量。
10−2)比較例10aの紫外発光蛍光体の試料・・・(LuLa)AlGと表記
添加したLa(Lu側サイトにのみ置換)は、
1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)の4種類
10−3)比較例10bの紫外発光蛍光体の試料・・・Lu(AlLa)と表記
添加したLa(Al側サイトにのみ置換)は、
1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)の4種類
実施例10の紫外発光蛍光体のPL測定結果を図33に、比較例10aの紫外発光蛍光体のPL測定結果を図34に、比較例10bの紫外発光蛍光体のPL測定結果を図35に示す。それぞれのPL測定結果において、(1)はPLスペクトル、(2)は積分強度を示している。測定方法は、実施例8と同じである。なお、実施例8と異なり、PLピーク波長および(420)面X線回折ピークシフトは差が僅かであったことから割愛した。
また、比較例として、Y3Al5O12をベースとしてLaイオンが添加された蛍光体であって、添加されたLaイオンは、Yの希土類サイトのみに置換された紫外発光蛍光体(比較例11a)の発光特性と、Y3Al5O12をベースとしてLaイオンが添加された蛍光体であって、添加されたLaイオンは、Alの第13族元素サイトのみに置換された紫外発光蛍光体(比較例10b)の発光特性について説明する。
実施例11の紫外発光蛍光体の試料は、添加するLaイオンの添加量が2.4、2.6、2.8、3.0(原子%)となるように調製し、またY側サイトとAl側サイトの両サイトに置換されるように、Y2O3、Al2O3、La2O3の各原料粉末を化学量論比に基づいて秤量した。ここで、置換されるAl側サイトにLaが1.3(原子%)置換されるようにし、Y側サイトに1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)置換されるようにした。すなわち、Alを1.3(原子%)だけ少なくし、Yを1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)だけ少なくし、そして、Laが2.4、2.6、2.8、3.0(原子%)増加するように、各原料粉末を秤量することによって、LaイオンをY側サイトとAl側サイトの両サイトに置換させた。
11−1)実施例11の紫外発光蛍光体の試料・・・(YSc)(AlLa)Gと表記
添加したLa(Y側サイトとAl側サイトの両方に置換)は、
2.4、2.6、2.8、3.0(原子%)の4種類
但し、Al側サイトに、Laが1.3(原子%)置換されるように計量。
11−2)比較例11aの紫外発光蛍光体の試料・・・(YLa)AlGと表記
添加したLa(Y側サイトにのみ置換)は、
1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)の4種類
11−3)比較例11bの紫外発光蛍光体の試料・・・Y(AlLa)と表記
添加したLa(Al側サイトにのみ置換)は、
1.1、1.3、1.5、1.7(原子%)の4種類
図39(1)のグラフは、ベースとなる希土類アルミニウムガーネット結晶として、実施例1のLuAG,実施例2のLuYAG、実施例3のYAGを用いて、発光中心を形成する遷移元素イオンのScイオン1.5(原子%)が添加された蛍光体を作製して、それらをPLE測定した結果を示している。図39(1)のグラフでは、LuAGにScイオン1.5(原子%)を添加したもの“(LuSc)AlG,Sc=1.5at%”の吸収端が短波長側にあり、YAGにScイオン1.5(原子%)を添加したもの“(YSc)AlG,Sc=1.5at%”の吸収端が長波長側にあり、LuYAGにScイオン1.5(原子%)を添加したもの“(LuYSc)AlG,Sc=1.5at%”の吸収端が短波長側と長波長側にそれぞれに存在していることがわかる。このことは、LuAGにYを添加するにつれて、吸収端が長波長化し、Luを完全にYで置き換えたものが最も長波長側に吸収端を持ち、長波長励起効率が向上することが確認できたことになる。
図39(2)のグラフから、イオン半径の小さなScがイオン半径の大きなLuサイトに入ると、LuAGホスト結晶は圧縮応力を受けて吸収端が短波長化する。LuAGホスト結晶が圧縮応力を受けていることは、図28(3)のX線回折ピークシフトより明らかである。一方、Scよりイオン半径の小さなAlサイトに入った場合、図29(3)のX線回折ピークシフトから平均格子定数が膨張していることを示すが、吸収端は長波長化せず、逆に短波長化している。LuAGはガーネット結晶で、Luを含む酸素のカゴとAlを含む酸素のカゴの集合体であり、発光しているのはScを含む酸素のカゴである。Scがより小さなAlサイトに入ると、Scを含むカゴは膨張し、そのためその隣にあるLuを含むカゴは圧迫され圧縮されると推察する(人が小さな部屋に閉じ込められて隙間で風船が膨らむ感じと似ている)。ScがAlを置き換えるとバンド端がより短波長化したことから、Luを含むカゴが吸収端エネルギーを決めていると結論できる。すなわち、吸収端の制御には希土類サイトの置換が重要と結論付けることができる。したがって、LuをYで置き換えると図39(1)のグラフに示すように、効果的にバンド端が動くのであろう。
図39(3)のグラフから、同じ希土類サイトを置換する場合は、イオン半径の小さなScがイオン半径の大きなLuサイトに入ると、LuAGホスト結晶は圧縮応力を受けて(図28(3)のX線回折ピークシフトより明らか)吸収端が短波長化するのに対して、Luよりイオン半径の大きなLaがLuサイトに入ると、逆にLuAGホスト結晶は引っ張り応力を受けて吸収端が長波長化することが確認できた。
2 励起光源
3 励起光
4 出力光
11 紫外発光蛍光体薄膜
12 石英ガラス基板
13 アノード電極
15 スペーサ
16 電圧回路
17 SiドープAlN薄膜
18 Si基板
19 カソード電極
Claims (16)
- 希土類アルミニウムガーネット結晶(LuxY1−x)3(AlyZ1−y)5O12(但し、0≦x≦1、0<y≦1、ZはB,Ga,In,Tl)をベースとして、発光中心を形成する2種以上のLu,Y以外の遷移元素イオンが少なくとも共添加された蛍光体であって、
励起光を照射し、該励起光の照射により励起されて紫外光を発光することを特徴とする紫外発光蛍光体。 - 上記の希土類アルミニウムガーネット結晶が、(LuxY1−x)3(AlyZ1−y)5O12(但し、0<x<1、0<y≦1、ZはB,Ga,In,Tl)であることを特徴とする請求項1に記載の紫外発光蛍光体。
- 共添加する遷移元素イオンは希土類イオンであり、Gd、Eu、Dy、La、Ce、Sm、Nd、Tb、Pr、Er、Tm、Yb、Sc、Pm、およびHoからなる群より選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外発光蛍光体。
- 共添加する遷移元素イオンの各添加量は、240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長になるように添加比率が調製され、
xとyの少なくとも一方をパラメータとして発光中心波長および輝度が調製されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の紫外発光蛍光体。 - 共添加する遷移元素イオンは、LaイオンとScイオンであり、各々の添加量は、280〜320nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長になる添加比率で、かつ、濃度消光が生じる限界近傍の添加量である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外発光蛍光体。 - 上記の希土類アルミニウムガーネット結晶が、(LuxY1−x)3Al5O12(但し、0<x<1)であり、
共添加する遷移元素イオンは、LaイオンとScイオンであり、各々の添加量は、280〜320nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長になる添加比率で、かつ、濃度消光が生じる限界近傍の添加量である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外発光蛍光体。 - 希土類アルミニウムガーネット結晶(LuxY1−x)3(AlyZ1−y)5O12(但し、0≦x≦1、0<y≦1、ZはB,Ga,In,Tl)をベースとして、発光中心を形成する1種以上のLu,Y以外の遷移元素イオンが少なくとも添加された蛍光体であって、
添加された遷移元素イオンは、Lu又はYの希土類サイトと、Al又はZの第13族元素サイトの両サイトに置換されており、
励起光を照射し、該励起光の照射により励起されて紫外光を発光することを特徴とする紫外発光蛍光体。 - 上記の希土類アルミニウムガーネット結晶が、(LuxY1−x)3Al5O12(但し、x=0又は1)であり、
添加された遷移元素イオンは、Lu又はYの希土類サイトとAlサイトの両サイトに置換されたことを特徴とする請求項7に記載の紫外発光蛍光体。 - 添加する遷移元素イオンは、Laイオン又はScイオンであり、各々の添加量は、280〜340nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長になる添加比率で、かつ、濃度消光が生じる限界近傍の添加量である、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の紫外発光蛍光体。 - 請求項1〜9の何れかの紫外発光蛍光体と、
前記紫外発光蛍光体に対して励起光を照射させる励起光照射手段、
を備えた紫外発光デバイス。 - 前記励起光照射手段は、プラズマ放電による紫外光が励起光となって前記紫外発光蛍光体に対して照射されるものであることを特徴とする請求項10に記載の紫外発光デバイス。
- 請求項1〜9の何れかの紫外発光蛍光体が薄膜であり、
上記薄膜を有するアノード基板と、
電界電子放出材料を有するカソード基板と、
前記アノード基板と前記カソード基板とを対向して配設させ、基板間の空隙を真空雰囲気に保持させるスペーサと、
前記アノード基板と前記カソード基板の間に電界を印加させる電圧回路とを少なくとも有し、
前記アノード基板と前記カソード基板の間の空隙を真空チャネル領域とし、基板間に電界を印加することにより前記電界電子放出材料からの電子を前記紫外発光蛍光体の薄膜に注入させて、前記紫外発光蛍光体から紫外光を発光させることを特徴とする紫外発光デバイス。 - 請求項1〜5の何れかの紫外発光蛍光体の作製方法であって、
1)240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長を決定するステップと、
2)発光中心を形成する2種以上の遷移元素イオンの添加比率を調製して前記発光中心波長を制御するステップと、
3)発光中心を形成する2種以上の遷移元素イオンの各添加量の合計添加量が、各イオンの濃度消光による限界濃度以上になるように調製して輝度を制御するステップと、
4)パラメータxとyの少なくとも一方を調製して前記発光中心波長および輝度を制御するステップと、
5)希土類アルミニウムガーネット結晶に対して、上記添加比率と合計添加量が調製された2種以上の遷移元素イオンを共添加するステップと、
6)焼成し、アニール処理するステップ、
を備えることを特徴とする紫外発光蛍光体の作製方法。 - 請求項6の紫外発光蛍光体の作製方法であって、
1)240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長を決定するステップと、
2)発光中心を形成するLaイオンとScイオンの添加比率を調製して前記発光中心波長を制御するステップと、
3)LaイオンとScイオンの各添加量の合計添加量が、各イオンの濃度消光による限界濃度以上になるように調製して輝度を制御するステップと、
4)パラメータxを調製して前記発光中心波長および輝度を制御するステップと、
5)希土類アルミニウムガーネット結晶に対して、上記添加比率と合計添加量が調製されたLaイオンとScイオンを共添加するステップと、
6)焼成し、アニール処理するステップ、
を備えることを特徴とする紫外発光蛍光体の作製方法。 - 請求項7の紫外発光蛍光体の作製方法であって、
1)240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長を決定するステップと、
2)発光中心を形成する1種以上の遷移元素イオンの添加量が、イオンの濃度消光による限界濃度以上になるように調製して前記発光中心波長を制御するステップと、
3)添加された遷移元素イオンが、Lu又はYの希土類サイトと、Al又はZの第13族元素サイトの少なくとも何れかのサイトに置換するように、Lu又はYの希土類イオンの含有量と、Al又はZの含有量を制御するステップと、
4)パラメータxとyの少なくとも一方を調製して前記発光中心波長および輝度を制御するステップと、
5)希土類アルミニウムガーネット結晶に対して、上記添加量が調製された1種以上の遷移元素イオンを添加するステップと、
6)焼成し、アニール処理するステップ、
を備えることを特徴とする紫外発光蛍光体の作製方法。 - 請求項8の紫外発光蛍光体の作製方法であって、
1)240〜400nmの範囲の紫外域で目標とする発光中心波長を決定するステップと、
2)発光中心を形成するLaイオン又はScイオンの添加量が、イオンの濃度消光による限界濃度以上になるように調製して前記発光中心波長を制御するステップと、
3)添加されたLaイオン又はScイオンが、Lu又はYの希土類サイトと、Al又はZの第13族元素サイトの少なくとも何れかのサイトに置換するように、Lu又はYの希土類イオンの含有量と、Al又はZの含有量を制御するステップと、
4)パラメータxを調製して前記発光中心波長および輝度を制御するステップと、
5)希土類アルミニウムガーネット結晶に対して、上記添加量が調製されたLaイオン又はScイオンを添加するステップと、
6)焼成し、アニール処理するステップ、
を備えることを特徴とする紫外発光蛍光体の作製方法。
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