以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[ホウ化物粒子]
本実施形態ではまず、ホウ化物粒子の一構成例について説明する。
本実施形態のホウ化物粒子は、一般式X1−yAyBmで表すことができる。
そして、上記一般式中、Xは、アルカリ土類金属元素、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)を含む希土類元素から選択された1種類以上の金属元素を含むことができる。
また、Aは、In、GaおよびTlから選択された1種類以上の金属元素を含むことができる。
そして、y、およびmは、0.0001≦y≦0.2、かつ5.2≦m≦6.5を満たすことが好ましい。
本発明の発明者らは、可視領域の光の透過性が高く、かつ熱線遮蔽特性に優れたホウ化物粒子について、鋭意検討を行った。
既述のように、ホウ化物粒子のうち、赤外線吸収能を有する粒子として従来から特に用いられていた六ホウ化物粒子等は、近赤外領域の光にピークを有する吸光曲線の裾が、一部可視光の長波長側にかかっている。このため、可視領域の光の一部を吸収してしまっていた。
そこで、可視領域の光の透過性が高く、かつ熱線遮蔽特性に優れたホウ化物粒子とするため、ホウ化物粒子の発揮する強力な近赤外光吸収特性は維持しつつ、近赤外領域の光の吸収をより長波長側、すなわち低エネルギー側にシフトさせる技術の検討を行った。具体的には、ホウ化物粒子XBmの結晶構造において、元素Xの一部を置換元素Aで置換することで、近赤外光吸収特性は維持したまま、近赤外領域の光の吸収をより長波長側、すなわち低エネルギー側にシフトさせたホウ化物粒子とすることについて検討を行った。
(ホウ化物粒子の置換元素の選択方法)
検討に当たって、置換する前のホウ化物粒子としては近赤外光吸収特性に優れた材料であることが好ましい。そこで、本発明の発明者らが検討したところ、一般式XBmで表されるホウ化物粒子において、元素Xはアルカリ土類金属元素、ジルコニウム(Zr)、希土類元素から選択された1種類以上を含むことが好ましい。なお、ここでの希土類元素はイットリウム(Y)を含む。
また、上記ホウ化物粒子の一般式中のmは5.2≦m≦6.5を満たすことが好ましい。
そして、係るホウ化物粒子において、元素Xの一部を置換することで近赤外領域の光の吸収をより長波長側にシフトできる置換元素Aについて検討を行った。
そこでまず、ホウ化物粒子において、元素Xの一部を置換することで、近赤外領域の光の吸収をより長波長側にシフトさせることができる、置換元素の選択方法の一構成例について以下に説明する。
本実施形態のホウ化物粒子の置換元素の選択方法は、ホウ化物粒子XBmにおいて、元素Xの一部を置換し、一般式X1−yAyBmで表される置換したホウ化物粒子とする際の、置換元素Aの選択方法に関し、以下の工程を有することができる。
なお、上記一般式中の元素Xは既述のとおりであり、Bはホウ素を示す。また、置換したホウ化物粒子についての上記一般式中のmは既述のとおりであり、yは0.0001≦y≦0.2を満たすことが好ましい。
screened exchange法、hybrid functional法、およびGW法より選択された1種類以上の手法を用いた平面波基底第一原理計算により置換したホウ化物粒子X1−yAyBmのエネルギーバンド構造を算出するエネルギーバンド構造算出工程。
算出したエネルギーバンド構造により、置換したホウ化物粒子の誘電関数を算出する誘電関数算出工程。
算出した誘電関数から、ミー散乱、およびレイリー散乱より選択される1種類以上の散乱理論により置換したホウ化物粒子X1−yAyBmの吸収波長λ2aを算出する吸収波長算出工程。
置換したホウ化物粒子X1−yAyBmの吸収波長λ2aから、ホウ化物粒子XBmの吸収波長λ1aを引いた差分Δλaを算出する差分算出工程。
置換元素Aを変え、エネルギーバンド構造算出工程から、差分算出工程までを繰り返し実施し、上記差分Δλaが、60nm≦Δλa≦150nmとなる置換元素Aを選択する繰り返し・選択工程。
以下、バンドギャップを高精度に評価し、さらに自由電子の寄与であるドルーデ項を考慮する本実施形態のホウ化物粒子の置換元素Aの選択方法について、各工程について詳細に説明する。
エネルギーバンド構造算出工程では、任意に選択した置換元素Aにより置換したホウ化物粒子のエネルギーバンド構造を算出できる。エネルギーバンド構造の算出方法は特に限定されるものではないが、バンドギャップを高精度に評価、再現するために、上述のように、screened exchange法、hybrid functional法、およびGW法より選択される1種類以上の平面波基底第一原理計算を用いることが好ましい。これは、screened exchange法、hybrid functional法、およびGW法より選択される1種類以上の平面波基底第一原理計算によれば実測値を十分再現する程度に高精度なバンド構造が得られるためである。
誘電関数算出工程では、置換したホウ化物粒子の誘電関数を算出することができる。置換したホウ化物粒子の誘電関数はローレンツ項とドルーデ項を含む誘電関数を算出することが好ましい。
なお、第一原理計算で算出されたエネルギーバンド構造から誘電関数を算出する方法は、Lihua xiao et al. Applied Physics Letters 101, 041913 (2012)に記載された方法を参考とすることができる。具体的には得られたエネルギーバンド構造におけるフェルミエネルギーよりも低エネルギーの価電子帯からフェルミエネルギーよりも高エネルギーの伝導帯への直接遷移を以下の(A)式より求めることで、誘電関数nの虚部ε2を算出できる。また、得られたエネルギーバンド構造におけるフェルミエネルギーよりも低エネルギーの価電子帯からフェルミエネルギーよりも高エネルギーの伝導帯への直接遷移を以下の(B)式に示すようにKramers-Kronig変換することで誘電関数の実部ε1を算出できる。
吸収波長算出工程では、誘電関数から、置換したホウ化物粒子の吸収波長を算出することができる。置換したホウ化物粒子の吸収波長は、ミー散乱及びレイリー散乱より選択される一種類以上の散乱理論により算出することができる。
なお、誘電関数から吸収波長を算出する方法は、K. Adachi, M. Miratsu, T. Asahi, J. Mater. Res., 25, 510(2010)に記載された方法を参考とすることができる。
差分算出工程では、吸収波長算出工程より算出された、置換したホウ化物粒子X1−yAyBmの吸収波長λ2aから、ホウ化物粒子XBmの吸収波長λ1aを引いた差分Δλaを算出することができる。
なお、ホウ化物粒子XBmの吸収波長λ1aについては、置換したホウ化物粒子X1−yAyBmの吸収波長λ2aの場合と同様にして算出することができる。
すなわち、ホウ化物粒子XBmについて、置換したホウ化物粒子X1−yAyBmの場合と同様にエネルギーバンド構造算出工程、誘電関数算出工程、吸収波長算出工程を実施することで算出することができる。
繰り返し・選択工程では、置換元素Aを変え、エネルギーバンド構造算出工程から、差分算出工程までを繰り返し実施し、上記差分Δλaが、60nm≦Δλa≦150nmとなる置換元素Aを選択することができる。
ここでの差分Δλaは、ホウ化物粒子を置換する前後での、近赤外領域の光の吸収ピークの長波長側へのシフト幅の計算値を示している。
そして、差分Δλaが、60nm以上の場合、近赤外領域の光の吸収ピークを、置換前と比較して十分に長波長側にシフトできていることを示している。このため、可視領域の光の透過性を十分に高めることができるので好ましい。
ただし、差分Δλaが、150nmを超える場合、近赤外領域の吸収ピークが長波長側にシフトしすぎていることを示しており、置換前のホウ化物粒子よりも熱線遮蔽特性が低下する恐れがあることから、Δλaは150nm以下であることが好ましい。
上述の各工程を実施する際、置換元素Aによる元素Xの置換割合であるyは、上述のように0.0001≦y≦0.2を満たすことが好ましい。
これは、置換元素Aによる元素Xの置換割合であるyを0.0001以上とすることで、置換による、近赤外領域の光の吸収をより長波長側、すなわち低エネルギー側にシフトさせる効果を十分に発揮し、可視光透過率を向上させることができるからである。ただし、置換元素Aによる元素Xの置換割合yが0.2を超えても可視光透過率の向上効果には大きな変化がなく、かえって粒子合成時の収率が悪化する場合があるため、0.2以下であることが好ましい。
繰り返し・選択工程を行う際は、例えばyを上述の範囲のうち、任意の数値で固定して計算を行い、置換元素Aを選択することが好ましい。また、置換元素Aを選択した後、置換割合yの最適化用繰り返し・選択工程を実施することもできる。置換割合yの最適化用繰り返し・選択工程では、選択した置換元素Aについて、置換割合yを上記範囲内で変化させ、差分Δλaが各材料について適切な値となるように選択することができる。
以上に説明したホウ化物粒子の置換元素の選択方法によれば、ホウ化物粒子の発揮する強力な近赤外光吸収特性は維持しつつ、近赤外領域の光の吸収をより長波長側、すなわち低エネルギー側にシフトさせる置換元素Aを選択できる。このため、より効率よく可視領域の光の透過性が高く、かつ熱線遮蔽特性に優れたホウ化物粒子の材料を選択することが可能になる。
(ホウ化物粒子)
本発明の発明者らは従来からホウ化物粒子について検討を行ってきた。係る検討によると、一般式XBmで表されるホウ化物粒子において、熱線遮蔽特性に優れたホウ化物粒子とするため、元素Xはアルカリ土類金属元素、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)を含む希土類元素から選択された1種類以上の金属元素を含むことが好ましい。
また、mは5.2≦m≦6.5を満たすことが好ましい。
そして、係るホウ化物粒子について、可視領域の光の透過性が高く、かつ熱線遮蔽特性に優れたホウ化物粒子とすることができる、元素Xの一部を置換する置換元素Aについて、既述のホウ化物粒子の置換元素の選択方法により、本発明の発明者らが検討を行った。
その結果、置換元素Aが、周期律表の第13族元素であるIn(インジウム)、Ga(ガリウム)およびTl(タリウム)から選択された1種類以上の金属元素を含む場合、近赤外領域の光の吸収ピークが長波長側にシフトすることが予測された。
以上の結果から、一般式X1−yAyBmで表される本実施形態のホウ化物粒子において、元素Xは、アルカリ土類金属元素、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)を含む希土類元素から選択された1種類以上の金属元素を含むことができる。なお、元素Xは、上述の金属元素の中でも、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Sr、Ba、Caから選択された1種類以上を含むことがより好ましい。
また、元素Xは、アルカリ土類金属元素、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)を含む希土類元素から選択された1種類以上の金属元素とすることもできる。
そして、置換元素Aは、In、GaおよびTlから選択された1種類以上の金属元素を含むことが好ましく、置換元素Aは、In、GaおよびTlから選択された1種類以上の金属元素であることがより好ましい。
mは置換前のホウ化物粒子の場合と同様に、5.2≦m≦6.5を満たすことが好ましい。
これは、mが5.2未満の場合やmが6.5を超える場合には、目的とする一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物のもつ結晶構造と異なる構造をもつ異相が出現し、日射遮蔽体とした場合の日射遮蔽特性を損なうことがあるためである。特に上述のホウ化物粒子に含まれるホウ化物の一般式中、mは5.5≦m≦6.5を満たすことがより好ましい。
置換元素Aによる置換の割合は特に限定されるものではないが、本発明の発明者らの検討によれば、yは、0.0001≦y≦0.2であることが好ましい。
これは、既述のようにyを0.0001以上とすることで、置換による、近赤外領域の光の吸収をより長波長側、すなわち低エネルギー側にシフトさせる効果を十分に発揮し、可視光透過率を向上させることができるからである。ただし、置換元素Aによる元素Xの置換割合yが0.2を超えても可視光透過率の向上効果には大きな変化がなく、かえって粒子合成時の収率が悪化する場合があるため、0.2以下であることが好ましい。
以上に説明した本実施形態のホウ化物粒子によれば、可視領域の光の透過性が高く、かつ熱線遮蔽特性に優れたホウ化物粒子とすることができる。
なお、本実施形態で説明した置換元素Aにより置換したホウ化物粒子は、単独でも用いることはできるが、必要に応じて置換元素Aによる置換をしていないホウ化物粒子、例えばLaB6等と混合して用いることもできる。
本実施形態の、置換したホウ化物粒子とLaB6とを混合し、例えばナノメートルオーダーの粒子とし、透明樹脂に分散させた材料を用いて、合わせガラスを形成することができる。係る合わせガラスによれば、従来のLaB6粒子のみを用いた合わせガラスよりも近赤外領域の光の吸収が長波長側にシフトするため、透明性が高く、かつ優れた熱線遮蔽特性を有するガラスを提供することが可能になる。
[ホウ化物粒子の製造方法]
次に、本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の一構成例について、説明する。
本実施形態のホウ化物粒子の製造方法によれば、既述のホウ化物粒子を製造することができる。このため、既に説明した事項については一部説明を省略する。
本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の一構成例は、既述の一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物粒子の製造方法であって、例えば以下の工程を有することができる。
Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液と、アルカリ溶液とを、反応させて沈殿物を得る工程。
沈殿物を乾燥して、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物を得る乾燥工程。
XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物と、ホウ素(B)を含有する化合物および/またはホウ素(B)とを混合し、混合物を得る混合物形成工程。
混合物を、真空または不活性ガス雰囲気下において1700℃未満で熱処理し、ホウ化物粒子を形成する混合物熱処理工程。
また、本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の他の構成例は、既述の一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物粒子の製造方法であって、以下の工程を有することができる。
Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液と、アルカリ溶液とを、反応させて沈殿物を得る工程。
沈殿物を乾燥して、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物を得る乾燥工程。
XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物を熱処理して、XおよびAを含有する酸化物を得る酸化物形成工程。
XおよびAを含有する酸化物と、ホウ素(B)を含有する化合物および/またはホウ素(B)とを混合し、酸化物含有混合物を得る酸化物含有混合物形成工程。
酸化物含有混合物を、真空または不活性ガス雰囲気下において1700℃未満で熱処理し、ホウ化物粒子を形成する酸化物含有混合物熱処理工程。
以下に、図1に示したフロー図を用いながら、本実施形態のホウ化物粒子の製造方法について工程ごとに説明する。
図1は、本実施形態に係る一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物粒子、及び当該粒子を用いた日射遮蔽体形成用分散液の製造フロー図である。
ここではまず、一の構成例によるホウ化物粒子の製造方法について説明する。
沈殿物生成工程S11では、Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11と、アルカリ溶液12とを混合、撹拌して沈殿物13を得ることができる。
ここで、Xを含有する化合物の元素Xとしては特に限定されるものではないが、ホウ化物粒子についてで既述のように、アルカリ土類金属元素、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)を含む希土類元素から選択された1種類以上の金属元素を含むことが好ましい。元素Xは、上述の金属元素の中でも、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Sr、Ba、Caから選択された1種類以上を含むことがより好ましい。
なお、元素Xは、ホウ化物粒子についての記載で既述のように、アルカリ土類金属元素、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)を含む希土類元素から選択された1種類以上の金属元素とすることもできる。
そして、Xを含有する化合物の形態も特に限定されるものではないが、例えば、Xの酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物等から選択された1種類以上であることが好ましい。なお、Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液は、Xを含有する化合物として、1種類の化合物のみを含有することもできるが、複数の種類の化合物を含有することもできる。
そして、一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物粒子において、元素Xの一部置換を行う置換元素Aは、周期律表第13族元素であるIn、GaおよびTlから選択された1種類以上の金属元素を含むことが好ましく、置換元素Aは、In、GaおよびTlから選択された1種類以上の金属元素であることがより好ましい。
Aを含有する化合物の形態も特に限定されるものではないが、例えばAの酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物等から選択された1種類以上であることが好ましい。なお、Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液は、Aを含有する化合物として、1種類の化合物のみを含有することもできるが、複数の種類の化合物を含有することもできる。
ここで、既述の様に一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物粒子において、元素Xの物質量を1−y、置換元素Aの物質量をyとしたとき、0.0001≦y≦0.2であることが好ましい。
これは、AによるXの置換割合であるyを0.0001以上とすることで、XをAで置換することによる、近赤外領域の光の吸収をより長波長側、すなわち低エネルギー側にシフトさせる効果を十分に発揮し、可視光透過率を向上させることができるからである。ただし、AによるXの置換割合yが0.2を超えても可視光透過率の向上効果には大きな変化がなく、かえって粒子合成時の収率が悪化する場合があるため、0.2以下であることが好ましい。
このため、Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液は、Xを含有する化合物と、Aを含有する化合物とを、所望の置換割合となるように、すなわち上述のyの置換割合の範囲内となるように選択し、含有することが好ましい。
Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11は、例えばここまで説明したXを含有する化合物とAを含有する化合物とを、上述の置換割合に対応した含有割合となるように溶媒中に溶解した溶液とすることができ、例えば水溶液とすることができる。
Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11と混合するアルカリ溶液12は、特に限定されないが、例えば、炭酸水素アンモニウム、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択された1種類以上の水溶液であることが好ましい。
また、アルカリ溶液12の添加量は、Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液中のXを含有する化合物とAを含有する化合物とが水酸化物となるのに必要な化学当量以上であることが好ましい。また、アルカリ溶液12の添加量の上限値は特に限定されないが、例えば当該化学当量の1.5倍以下であることが好ましい。
アルカリ溶液12の添加量が化学当量の1倍以上1.5倍以下の範囲の場合、Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11とアルカリ溶液12とが十分に反応すると共に、乾燥工程S12を行う前の洗浄に必要な時間が短時間で済むことから好ましい。
沈殿物生成工程S11では、ここまで説明したようにXを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11と、アルカリ溶液12とを反応させて、具体的には例えば両溶液を混合し、継続的に撹拌を行うことで、中和反応により沈殿物13を生成できる。
Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11と、アルカリ溶液12とを混合する際の、混合溶液の溶液温度の上限は特に限定されないが、100℃以下であることが好ましい。
混合溶液の温度の下限も特に限定されないが、あまり低く設定すると新たに冷却装置などが必要になり、生産コストの上昇要因となるため、冷却装置を要しない程度の温度とすることが好ましい。
沈殿物生成工程S11において、Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11と、アルカリ溶液12とを混合、反応させる時間、例えば中和反応の時間は特に限定されないが、生産性や、得られるXおよびAを含有する水酸化物および/または水和物の平均粒子径等を考慮して選択することが好ましい。
なお、ここでのXを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11と、アルカリ溶液12とを混合、反応させる時間とは、例えば、Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11に、アルカリ溶液12を滴下する時間を指す。また、両溶液を混合、反応させる際、混合溶液について継続的に撹拌を行うことができる。
沈殿物生成工程S11においては、Xを含有する化合物とAを含有する化合物とを含む溶液11と、アルカリ溶液12との反応、例えば中和反応の終了後も系内の均一化を図るために、撹拌を継続しながら沈殿の熟成を行うことが好ましい。係る撹拌を継続している時間においても、混合溶液は上述の混合溶液の温度範囲内に保たれていることが好ましい。
また、両溶液の反応終了後の撹拌の継続時間は特に限定されないが、生産性の観点から30分間以下であることが好ましく、15分間以下であることがより好ましい。
ただし、十分に系内の均一化を図るため、撹拌の継続時間は5分間以上であることが好ましい。
沈殿物生成工程S11により得られた沈殿物は、乾燥工程S12で乾燥することにより、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14の粒子を得ることができる。
なお、沈殿物生成工程S11で得られた沈殿物13を乾燥工程S12に供する前に、沈殿物に含まれる残余のアルカリ成分等を除去するため、十分に洗浄を行うことが好ましい。洗浄を行う方法は特に限定されるものではないが、例えば純水によるデカンテーションを好適に用いることができる。
乾燥工程S12における条件、すなわち乾燥温度や、乾燥時間は特に限定されるものではなく、洗浄した沈殿物中の水分を十分に除去できるように選択することができる。
次に、混合物形成工程S13では、乾燥工程S12により得られたXおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14の粒子と、ホウ素(B)を含有する化合物および/またはホウ素15とを混合し、混合物17を形成できる。なお、得られる混合物17は、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物と、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素とを含む混合物となる。
混合物形成工程S13に供するXおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14の粒子の平均粒子径は特に限定されないが、例えば100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることがさらに好ましい。
これは、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14の粒子の平均粒子径が100nm以下の場合、混合物熱処理工程(S14)を実施した場合に、所望の平均粒子径を有し、優れた日射遮蔽能を有するホウ化物粒子を得ることができるからである。また所望により平均粒子径の小さい粒子を得る場合に、その後の解砕工程(S15)や混合・分散工程(S16)にかかる時間が短縮されるためである。
混合物形成工程S13に供するXおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14の粒子の平均粒子径の下限値は特に限定されるものではないが、例えば取扱い性等の観点から、5nm以上であることが好ましい。
混合物形成工程S13に供するXおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14の粒子の平均粒子径については、例えば沈殿物生成工程S11における撹拌条件や、乾燥工程S12における乾燥条件等を選択することにより制御できる。このため、例えば予め予備試験等を実施して、所望の平均粒子径のXおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14が得られるよう、各工程の条件を選択することができる。
なお、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味しており、本明細書中において平均粒子径は同様の意味で用いている。
ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15としては、例えばB2O3、H3BO4、B4C、あるいはB(ホウ素の単体)等を好適に用いることができる。
また、混合物形成工程S13では、上述のXおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14の粒子と、ホウ素(B)を含有する化合物および/またはホウ素15と以外に炭素(C)16を添加することもできる。
炭素16としては特に限定されないが、結晶性炭素、非晶質炭素のいずれも用いることができ、例えばカーボンブラックやグラファイト等を用いることができる。
混合物形成工程S13で形成する混合物に炭素を添加することで、混合物熱処理工程で熱処理を行う際に還元反応を行い、所望のホウ化物粒子を得られるため好ましい。なお、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15として、炭素を含有する化合物、例えばB4Cを用いた場合以外には、混合物形成工程S13において、炭素を添加することが好ましい。
混合物形成工程S13において、上述の各成分を混合する割合は特に限定されるものではない。ただし混合物中のホウ素を含有する化合物および/またはホウ素と、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物とについて、(ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素中のホウ素の物質量)/(XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物中のXの物質量とAの物質量との合計)が4以上7以下となるように、混合することが好ましい。
特に、混合物について、上述の(ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素中のホウ素の物質量)/(XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物中のXの物質量とAの物質量との合計)は4.8以上6.3以下であることがより好ましく、6であることがさらに好ましい。
これは、得られる混合物中のAの物質量とXの物質量との和に対する、ホウ素の物質量の比が4以上7以下の場合、得られる置換したホウ化物粒子X1−yAyBmのmをより確実に5.2≦m≦6.5とすることができるからである。
ここで、例えば、X2O3、B2O3およびCを原料としたXB6生成の反応式は以下の式(1)で表される。
0.5X2O3+3B2O3+10.5C→XB6+10.5CO ・・・(1)
このように、混合物形成工程で炭素16を添加した場合、該炭素16は、後述する混合物熱処理工程S14において、還元剤として働く。
このため、炭素16を添加する場合、炭素16の混合物17への添加量は一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物粒子を生成するのに必要な化学当量に対して、1倍以上1.4倍以下とすることが好ましく、1倍以上1.2倍以下とすることがより好ましい。
これは、混合物17への炭素16の添加量が上述の化学当量に対して1.4倍を超える場合、炭素が、得られるホウ化物粒子中に残留する恐れがあるからである。また、上述の化学当量に対して1倍未満の場合、未反応のXおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14や、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15が、得られるホウ化物粒子中に残留する恐れがあるからである。そして、ホウ化物粒子中に炭素等の未反応物質が多く残留すると所望の光学特性が得られない場合があるためである。
なお、一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物粒子を生成するのに必要な化学当量とは、混合物中の、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14の粒子と、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15とを還元するのに必要な化学当量を意味する。
混合物17を形成する際に用いるホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15や炭素16の平均粒子径は特に限定されるものではない。ただし、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15や炭素16についてもできるだけ粒径の小さい微粒子であることが好ましい。これは、各原料粉体の粒子径を微粒子化することで、製造されるホウ化物粒子についても平均粒子径を小さくし、可視光透過率を高く維持しながら日射遮蔽能に優れたホウ化物粒子を低コストで、容易に製造できるからである。また、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15や炭素16の粒径が小さいことで、混合物熱処理工程S14において、式(1)で示したホウ化物粒子の生成反応が進行しやすくなるためである。
ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15としては、原料入手のし易さ、原料コスト等の観点も合わせて考えると、平均粒子径は25μm以下であることが好ましく、平均粒子径は20μm以下であることがより好ましい。
ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15の平均粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば取り扱い性等を考慮して1μm以上であることが好ましい。
一方、炭素16としては、原料入手のし易さ、原料コスト等の観点も合わせて考えると、平均粒子径は100nm以下であることが好ましく、平均粒子径は80nm以下であることがより好ましい。
炭素16の平均粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば取り扱い性等を考慮して10nm以上であることが好ましい。
混合物形成工程S13で得られた混合物は混合物熱処理工程S14において熱処理を行うことでホウ化物粒子18とすることができる。
混合物熱処理工程S14における熱処理条件は特に限定されるものではない。ただし、生成したホウ化物粒子18が酸化されることを抑制するため、真空雰囲気、または不活性雰囲気において混合物熱処理工程S14を実施することが好ましい。
なお、不活性雰囲気とする場合、各種不活性ガスを用いることができるが、ホウ素の窒化物の生成を抑制するため、窒素以外の不活性ガスを用いることが好ましい。不活性ガスとしては、例えばアルゴン、ヘリウムから選択された1種類以上を用いることが好ましい。
また、真空雰囲気とする場合には、ホウ化物粒子の安定性の観点から、真空度が高い方が好ましく、例えば0.1Pa以下とすることが好ましく、0.05Pa以下とすることがより好ましい。
混合物熱処理工程S14における、熱処理温度は特に限定されるものではないが、生成したホウ化物粒子が粗大化することを抑制するため、1700℃未満であることが好ましく、1500℃未満であることがより好ましい。
熱処理温度の下限値は特に限定されるものではないが、ホウ化物粒子の生成反応が十分に進行するように、1300℃以上であることが好ましい。
熱処理時間については特に限定されないが、所望の平均粒子径を有するホウ化物粒子が得られるよう、1時間以上4時間以下であることが好ましい。
以上の工程により、既述の本実施形態のホウ化物粒子18を得ることができる。
次に、本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の他の構成例について、同様に図1に示したフロー図を用いて説明する。
本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の他の構成例においても、沈殿物生成工程S11、および乾燥工程S12により、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14を生成するまでは、既述のホウ化物粒子の製造方法の一の構成例と同様にして実施できる。このため、係る工程については説明を省略する。
本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の他の構成例においては、乾燥工程S12の後、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14を熱処理して、XおよびAを含有する酸化物19を得る酸化物形成工程S21を実施できる。
酸化物形成工程S21における、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14の熱処理条件は特に限定されるものではないが、得られるXおよびAを含有する酸化物19の粗大化を抑制する観点から熱処理温度が1000℃以下であることが好ましい。
ただし、XおよびAを含有する酸化物19の生成反応を十分に進行させる観点から熱処理温度は400℃以上であることが好ましい。また、熱処理時間については30分間以上であることが好ましい。
熱処理時間の上限値は特に限定されるものではないが、生産性の観点から4時間以下であることが好ましい。
また、酸化物形成工程S21における雰囲気は特に限定されるものではなく、例えば酸素含有雰囲気で実施できる。酸素含有雰囲気としては、例えば大気雰囲気が挙げられる。
酸化物形成工程S21における熱処理により、XおよびAを含有する水酸化物および/または水和物14から、XおよびAを含有する酸化物19の粒子と、当該粒子が凝集した凝集体との混合物を生成することができる。
次に、酸化物含有混合物形成工程S22では、酸化物形成工程S21により得られたXおよびAを含有する酸化物19の粒子と、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15とを混合し、酸化物含有混合物20を形成することができる。なお、得られる酸化物含有混合物20は、XおよびAを含有する酸化物19と、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15とを含む混合物とすることができる。
また、酸化物含有混合物形成工程S22では、上述のXおよびAを含有する酸化物19の粒子と、ホウ素(B)を含有する化合物および/またはホウ素15と以外に炭素(C)16を添加することもできる。
酸化物含有混合物形成工程S22で形成する混合物に炭素を添加することで、酸化物含有混合物熱処理工程で熱処理を行う際に還元反応を行い、所望のホウ化物粒子を得られるため好ましい。なお、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15として、炭素を含有する化合物、例えばB4Cを用いた場合以外には、酸化物含有混合物形成工程S22において、炭素を添加することが好ましい。
酸化物含有混合物形成工程S22に供するXおよびAを含有する酸化物19の粒子の平均粒子径は特に限定されないが、例えば1500nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることがさらに好ましい。
これは、XおよびAを含有する酸化物19の粒子の平均粒子径が1500nm以下の場合、該粒子を含む酸化物含有混合物を酸化物含有混合物熱処理工程S23に供した場合に、所望の平均粒子径を有し、優れた日射遮蔽能を有するホウ化物粒子を得られるからである。
なお、酸化物含有混合物形成工程S22に供するXおよびAを含有する酸化物19の粒子の平均粒子径の下限値は特に限定されるものではないが、例えば取扱い性等の観点から、10nm以上であることが好ましい。
酸化物含有混合物形成工程S22に供するXおよびAを含有する酸化物19の粒子の平均粒子径については、例えば沈殿物生成工程S11における撹拌条件や、乾燥工程S12における乾燥条件、酸化物形成工程における熱処理条件等を選択することで制御できる。このため、例えば予め予備試験等を実施して、所望の平均粒子径のXおよびAを含有する酸化物19の粒子が得られるよう、各工程の条件を選択することができる。
なお、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15、炭素16については、本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の一の構成例で説明した場合と同様の材料を好適に用いることができ、その好適な平均粒子径も同様にすることができる。このため、ここでは説明を省略する。
酸化物含有混合物形成工程S22において、上述の各成分を混合する割合は特に限定されるものではない。ただし例えば、酸化物含有混合物中のホウ素を含有する化合物および/またはホウ素と、XおよびAを含有する酸化物とについて、(ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素中のホウ素の物質量)/(XおよびAを含有する酸化物中のXの物質量とAの物質量との合計)が4以上7以下となるように混合することが好ましい。
特に、混合物について、上述の(ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素中のホウ素の物質量)/(XおよびAを含有する酸化物中のXの物質量とAの物質量との合計)は4.8以上6.3以下であることがより好ましく、6であることがさらに好ましい。
これは、得られる混合物中のXの物質量とAの物質量との和に対する、ホウ素の物質量の比が4以上7以下の場合、得られる置換したホウ化物粒子X1−yAyBmのmをより確実に5.2≦m≦6.5とすることができるからである。
一方、酸化物含有混合物形成工程S22で炭素16を添加する場合、該炭素16は、後述する酸化物含有混合物熱処理工程S23において、既述の混合物熱処理工程S14の場合と同様に還元剤として働く。
従って、酸化物含有混合物形成工程S22で炭素16を添加する場合、炭素16の酸化物含有混合物20への添加量は一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物粒子を生成するのに必要な化学当量に対して、1倍以上1.5倍以下とすることが好ましく、1倍以上1.3倍以下とすることがより好ましい。
これは、酸化物含有混合物20への炭素16の添加量が上述の化学当量に対して1.5倍を超える場合、炭素が、得られるホウ化物粒子中に残留する恐れがあるからである。また、上述の化学当量に対して1倍未満の場合、未反応のXおよびAを含有する酸化物19や、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15が、得られるホウ化物粒子中に残留する恐れがあるからである。そして、ホウ化物粒子中に炭素等の未反応物質が多く残留すると所望の光学特性が得られない場合があるためである。
なお、一般式X1−yAyBmで表されるホウ化物粒子を生成するのに必要な化学当量とは、酸化物含有混合物中の、XおよびAを含有する酸化物19の粒子と、ホウ素を含有する化合物および/またはホウ素15とを還元するのに必要な化学当量を意味する。
酸化物含有混合物形成工程S22で得られた酸化物含有混合物20は酸化物含有混合物熱処理工程S23において熱処理を行うことでホウ化物粒子18とすることができる。
酸化物含有混合物熱処理工程S23における熱処理条件は特に限定されるものではない。ただし、生成したホウ化物粒子18が酸化されることを抑制するため、真空雰囲気、または不活性雰囲気において酸化物含有混合物熱処理工程S23を実施することが好ましい。
なお、不活性雰囲気とする場合、各種不活性ガスを用いることができるが、ホウ素の窒化物の生成を抑制するため、窒素以外の不活性ガスを用いることが好ましい。不活性ガスとしては、例えばアルゴン、ヘリウムから選択された1種類以上を用いることが好ましい。
また、真空雰囲気とする場合には、ホウ化物粒子の安定性の観点から、真空度が高い方が好ましく、例えば0.1Pa以下とすることが好ましく、0.05Pa以下とすることがより好ましい。
酸化物含有混合物熱処理工程S23における、熱処理温度としては特に限定されるものではないが、生成したホウ化物粒子が粗大化することを抑制するため、1700℃未満であることが好ましく、1500℃未満であることがより好ましい。
熱処理温度の下限値は特に限定されるものではないが、ホウ化物粒子の生成反応が十分に進行するように、1300℃以上であることが好ましい。
熱処理時間については特に限定されないが、所望の平均粒子径を有するホウ化物粒子が得られるよう、1時間以上4時間以下であることが好ましい。
以上の工程により、既述の本実施形態のホウ化物粒子18を得ることができる。
以上に本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の構成例について、2つの構成例を示して説明したが、いずれのホウ化物粒子の製造方法の構成例においても、得られたホウ化物粒子18については所望の粒径とするため、解砕工程S15を実施することができる。
すなわち、本実施形態のホウ化物粒子の製造方法は、得られたホウ化物粒子について、メカニカル法により解砕処理を行う解砕工程をさらに有することができる。
解砕工程において、ホウ化物粒子を解砕する手段は、例えばホウ化物粒子の一次粒子の凝集体を壊し、一部粒成長した粒子を粉砕して微粒子化できる方法であれば、特に限定されない。例えば、解砕効率を考慮するとジェットミルのような自粉衝突型粉砕機や、ビーズミルのようなメディア媒介型の解砕装置を好ましく用いることができる。
ここで、ビーズミルやジェットミルといったメカニカル法によりホウ化物粒子18の解砕を行うことで、ホウ化物粒子による粉砕機内壁材料の摩耗による不純物混入の可能性が考えられる。しかし、解砕工程S15は、既に微粒子の状態となっているホウ化物粒子18に対し、補完的に解砕を行うだけのため、粉砕機内壁材料からの不純物混入はほとんど見られず、実質的に問題とならない。
なお、解砕工程S15の具体的条件は、解砕に用いる装置等に応じて任意に選択することができるため、特に限定されるものではないが、解砕工程S15後に得られるホウ化物粒子の平均粒子径が1nm以上800nm以下となるように実施することが好ましい。特に解砕工程S15後に得られるホウ化物粒子の平均粒子径が1nm以上150nm以下となるように実施することがより好ましい。
以上のように解砕工程S15を実施することで、例えば日射遮蔽体に適したホウ化物粒子21(以下、ホウ化物粒子21と記載する)が得られる。
なお、既述のホウ化物粒子の製造方法により、所望の平均粒子径のホウ化物粒子が得られている場合には、解砕工程S15は実施しないこともできる。
また、液中でのビーズミル処理のように、一次粒子の解砕と液状媒体への分散を同時に行うことができる処理によっては、解砕工程S15と、後述する混合・分散工程S16を兼ねることもできる。すなわち、解砕手段としてビーズミルを用い、後述する溶媒22を含む液体を用いた、液中でのビーズミル処理を実施する場合には、解砕工程S15と、後述する混合・分散工程S16とを同時に実施できる。
このホウ化物粒子21はその表面が酸化していないことが好ましいが、通常得られるものは僅かに酸化していることが多く、また粒子の解砕工程で表面の酸化が起こることは、ある程度避けられない。
また、ホウ化物粒子21は、結晶性が高い程大きい日射遮蔽効果を発揮するが、結晶性が低くX線回折で極めてブロードな回折ピークを生じる場合でも、粒子内部の基本的な結合が、XやAと、ホウ素との結合から成り立っていれば所望の日射遮蔽効果を発現できる。
以上に説明した本実施形態のホウ化物粒子の製造方法によれば、既述のホウ化物粒子を製造することができる。すなわち、可視領域の光の透過性が高く、かつ熱線遮蔽特性に優れたホウ化物粒子を得ることができる。
[ホウ化物粒子分散体]
次に、本実施形態のホウ化物粒子分散体の一構成例について説明する。
本実施形態のホウ化物粒子分散体は、既述のホウ化物粒子が液体状または固体状の媒体中に分散され、ホウ化物粒子の媒体中における分散粒子径を1nm以上800nm以下とすることができる。
なお、液体状の媒体に分散されている場合は、日射遮蔽体形成用分散液ともいうことができ、固体状の媒体中に分散されている場合には、日射遮蔽体ともいうことができる。すなわち、本実施形態のホウ化物粒子分散体は、日射遮蔽体形成用分散液、および日射遮蔽体を含むことができる。このため、ホウ化物粒子分散体について、日射遮蔽体形成用分散液、および日射遮蔽体を例に説明する。
本実施形態の日射遮蔽体形成用分散液は、図1に示したフロー図に従って形成することができる。
具体的には、既述のホウ化物粒子の製造方法により得られたホウ化物粒子18について、必要により解砕工程S15を実施し、所望の平均粒子径を有するホウ化物粒子21を溶媒中に混合・分散する混合・分散工程S16を実施することで形成することができる。
この際に用いる溶媒22は、特に限定されるものではなく、日射遮蔽体形成用分散液23を用いて日射遮蔽体を形成する際の、塗布条件、塗布環境、および適宜、添加される無機バインダーや樹脂バインダー等に合わせて選択すればよい。
例えば、溶媒22として、水;トルエン;エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテルなどのエーテル類;エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトンなどのケトン類から選択された1種類以上の水、または有機溶媒を好ましく用いることができる。
このように、溶媒22として水、または有機溶媒を用いることで、例えば基材上に日射遮蔽体形成用分散液23を塗布し乾燥するだけで、高温での焼成等を要せずに日射遮蔽体を形成できる。このように本実施形態の日射遮蔽体形成用分散液23によれば、焼成や、化学反応を利用せずに日射遮蔽体を形成できるため、特性の安定した日射遮蔽体を形成することができる。
溶媒22には必要に応じて酸やアルカリを添加してpH調整を行ってもよい。
また、日射遮蔽体形成用分散液23には、上述したホウ化物粒子21、溶媒22以外にも、例えば日射遮蔽体形成用分散液23中におけるホウ化物粒子の分散安定性を一層向上させるため、各種の界面活性剤、カップリング剤などを添加することも可能である。
本実施形態に係るホウ化物粒子を溶媒中に分散させた日射遮蔽体形成用分散液23から形成される日射遮蔽体はさらに各種添加材料を含有することができる。これらの添加材料は例えば日射遮蔽体形成用分散液に添加しておくこともできる。
添加材料としては、例えばさらに紫外線遮蔽機能を付与させるため、無機系の酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウム等の粒子や、有機系のベンゾフェノンやベンゾトリアゾール等から選択された1種類以上の無機系、有機系の紫外線吸収剤が挙げられる。
また、添加材料としては、日射遮蔽体の光の透過率を向上させるために、更に、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ITO(酸化インジウム−スズ)、アルミニウム添加酸化亜鉛から選択される1種類以上の透明粒子も挙げられる。
これらの透明粒子は、日射遮蔽体形成用分散液23への添加量を増すと、波長750nm付近の透過率が増加し、近赤外線を遮蔽するため、可視光透過率が高く、かつ日射遮蔽特性のより高い日射遮蔽体とすることができる。
その他の添加材料としてはバインダー成分が挙げられる。バインダー成分としては具体的には例えば、UV硬化樹脂(紫外線硬化樹脂)、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が目的に応じて選定可能である。バインダー成分としては具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独使用であっても混合使用であっても良い。また、バインダー成分として金属アルコキシドの利用も可能である。金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが挙げられる。これら金属アルコキシドを用いたバインダーは、加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜を形成することが可能である。
本実施形態に係る日射遮蔽体形成用分散液23のホウ化物粒子21の分散粒子径は、ホウ化物粒子21を溶媒22中に分散した時の、ホウ化物粒子21の分散状態を測定することで特定できる。
すなわち、ホウ化物粒子21が、溶媒22中において、粒子および粒子の凝集体として存在する状態でサンプリングを行い、動的光散乱法を原理として測定した粒子径を日射遮蔽体形成用分散液23のホウ化物粒子21の分散粒子径とすることができる。なお、分散粒子径は、例えば、動的光散乱光度計等を用いて測定することができる。
測定された分散粒子径は、800nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。
これは、日射遮蔽体形成用分散液中のホウ化物粒子の分散粒子径が800nm以下の場合、高い日射遮蔽能を発揮し、また凝集した粗大粒子が光散乱源となって膜に曇り(ヘイズ)を生じたり、可視光透過率の低下が生じたりすることが起きないからである。
ただし、日射遮蔽体形成用分散液中のホウ化物粒子が過度に凝集することを抑制するため、日射遮蔽体形成用分散液中のホウ化物粒子の分散粒子径は1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。
ホウ化物粒子の分散粒子径が1nm以上800nm以下の日射遮蔽体形成用分散液を用いることで、ホウ化物粒子の分散粒子径が1nm以上800nm以下で十分細かく、かつ均一に分散した日射遮蔽体を得ることができる。
なお、本実施形態の日射遮蔽体は、既述の日射遮蔽体形成用分散液を基材上に塗布、乾燥することで製造することができる。また、日射遮蔽体形成用分散液にバインダー成分を添加した場合には、バインダー成分の特性に応じて、例えば紫外線照射等を行い硬化させることもできる。
既述の一般式X1−yAyBmで表される本実施形態のホウ化物粒子は、ホウ化物粒子の置換元素の選択方法により適切な置換元素Aを選択し、該置換元素Aにより元素Xの一部が置換されている。このため、近赤外領域の光の吸収をより長波長側、すなわち低エネルギー側にシフトさせ、可視領域の光の透過性が高く、かつ熱線遮蔽特性に優れたホウ化物粒子となっている。その結果、本実施形態のホウ化物粒子は、その光の透過プロファイルにおいて波長400nm以上700nm以下の範囲に極大値を、波長700nm以上1800nm以下の範囲に極小値を有することができる。
そして、本実施形態のホウ化物粒子を含む日射遮蔽体においても、本実施形態のホウ化物粒子と同様の光の透過プロファイルを示すことができる。
すなわち、本実施形態の日射遮蔽体は、光の透過プロファイルにおいて、波長400nm以上700nm以下の範囲に極大値を、波長700nm以上1800nm以下の範囲に極小値を有することができる。
また、本実施形態の日射遮蔽体は、可視光透過率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
本実施形態のホウ化物粒子は上述のように、可視領域の光を有効に透過し、それ以外の熱線を有効に反射・吸収することができる。そして、該ホウ化物粒子を含む本実施形態の日射遮蔽体においても同様の光の透過プロファイルを有し、同様に可視光を有効に透過しそれ以外の熱線を有効に反射・吸収することができる。
そして、本実施形態の日射遮蔽体に含まれるホウ化物粒子は、無機材料であるので、有機材料と比べて耐候性に優れており、例えば太陽光線(紫外線)の当たる部位に使用しても、色や諸機能の劣化はほとんど生じない。
このため、本実施形態の日射遮蔽体は車両、ビル、事務所、一般住宅等の窓、電話ボックス、ショーウィンドー、照明用ランプ、透明ケース等、単板ガラス、合わせガラス、プラスチックス、その他の日射遮蔽能を必要とする透明基材等の広汎な分野に用いることができる。
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[ホウ化物粒子の置換元素Aの選択]
ホウ化物粒子の発揮する強力な近赤外光吸収特性は維持したまま、近赤外光の吸収をより長波長側、すなわち低エネルギー側にシフトさせることができる置換元素Aを以下の手順により計算し、選択した。
(計算例1〜計算例14)
以下の工程の順に密度汎関数理論(DFT)に基づく平面波基底第一原理計算を行い、計算結果から、ホウ化物粒子XBmにおいて、元素Xの一部を置換し、一般式X1−yAyBmで表される置換したホウ化物粒子とする際の、置換元素Aの選択を行った。
なお、上記一般式中のXはLa(ランタン)として、またy=0.12、m=6として計算を行った。上記一般式中のBはホウ素を示す。
screened exchange法を用いた平面波基底第一原理計算によりホウ化物粒子LaB6、または置換したホウ化物粒子La0.88A0.12B6のエネルギーバンド構造を算出した(エネルギーバンド構造算出工程)。
算出したエネルギーバンド構造により、ホウ化物粒子LaB6、または置換したホウ化物粒子La0.88A0.12B6の誘電関数を算出した(誘電関数算出工程)。
算出した誘電関数から、レイリー散乱によりホウ化物粒子、または置換したホウ化物粒子の吸収波長を算出した(吸収波長算出工程)。
吸収波長算出工程より算出された、置換したホウ化物粒子La0.88A0.12B6の吸収波長λ2aから、ホウ化物粒子LaB6の吸収波長λ1aを引いた差分Δλaを算出した(差分算出工程)。
なお、計算例1ではホウ化物粒子LaB6の吸収波長λ1aを算出し、計算例2〜計算例14では置換したホウ化物粒子La0.88A0.12B6の吸収波長λ2aの算出と、差分Δλaの算出を行った。このため、計算例1では、上記工程のうち、差分算出工程は実施せず、吸収波長算出工程までを実施している。
各計算例で用いた置換元素と、各計算例で算出した差分Δλaを表1に示す。
また、図2に置換元素なし、すなわちホウ化物粒子LaB6での計算例1と、置換元素AがTlの場合の計算例4での分光透過率曲線の計算結果を示す。
さらに、図3に置換元素なし、すなわちホウ化物粒子LaB6での計算例1と、置換元素AがYの場合の計算例6での分光透過率曲線の計算結果を示す。
上述のように置換元素Aを変えて繰り返し計算を実施し、上述の差分算出工程で算出した差分Δλaが、60nm≦Δλa≦150nmとなる置換元素Aを選択したところ、In、Ga、Tlが該当した(繰り返し・選択工程)。
すなわち、置換元素Aとして、In、Ga、Tlのいずれかを用いた場合、ホウ化物粒子は吸収波長が長波長側にシフトすることが予測される。このため、置換元素AとしてIn、Ga、Tlのいずれかを用い、該置換元素AによりLaを置換することが好ましいことを確認できた。
上述の計算結果を参照し、以下の手順によりホウ化物粒子を合成、評価を行った。
[実施例1]
Xを含有する化合物であるLa(NO3)3・6H2Oと、Aを含有する化合物であるIn(NO3)2・3H2Oとを含有する水溶液500gを、室温で撹拌しながら、15%NH4OH溶液を化学当量に対して1.05倍となるように、20分間かけて滴下して沈殿を生成させた。なお、La(NO3)3・6H2Oと、In(NO3)2・3H2Oとは、物質量比でX:A=9:1となるように上記溶液中に添加した。また、上述のように本実施例の場合、元素XはLa、置換元素AはInとなる。そして、滴下後さらに10分間撹拌を継続して沈澱を熟成した(沈殿物生成工程S11)。
次に、純水を用い、デカンテーションにて生成した沈殿の洗浄を行い、上澄み液の電導度が1mS/cm以下になるまで、これを繰り返した。洗浄後の沈殿を105℃で乾燥したところ、平均粒子径20nmのLaとInを含む水酸化物粒子の粉体を得ることができた(乾燥工程S12)。
得られた水酸化物粒子の粉体と、平均粒子径16μmのB2O3と、平均粒子径13nmのカーボンブラックを含む粉体とを、[La元素とIn元素の合計]とB(ホウ素)とC(炭素)との物質量比が1:6:10.5となるよう混合して均一混合物とした(混合物形成工程S13)。
なお、混合物を形成する際、炭素は、LaとInを含む水酸化物と、B2O3を還元するのに必要な化学当量と同量を添加した。
得られた均一混合物を約0.02Paの真空雰囲気下、1400℃で3時間、熱処理してLa0.9In0.1B6粒子を主として含む粉体であるホウ化物粒子を得た(混合物熱処理工程S14)。
なお、得られたホウ化物粒子の一部をICP(島津製作所製社製 型式:ICPE9000)にかけ、ホウ化物粒子が含有する各成分を化学分析した。化学分析結果より算出される試料の組成式を表2に示す。
得られたLa0.9In0.1B6粒子を2重量%と、高分子系分散剤を2重量%と、トルエンを96重量%と含有する混合物と、0.3mmφのZrO2ビーズとを、ペイントシェーカーへ充填し、24時間分散処理することによって、日射遮蔽体形成用分散液であるLa0.9In0.1B6分散液を調製した(混合・分散工程S16)。
ここで、得られたLa0.9In0.1B6分散液の分散粒子径を、動的光散乱法を原理とした粒度分布計(大塚電子株式会社製 型番:ELS−800)を用いて測定したところ、85nmであることが確認できた。
調製したLa0.9In0.1B6分散液へ、さらにトルエンとUV硬化樹脂とを加え、La0.9In0.1B6を0.62重量%と、UV硬化樹脂を33.3重量%と、残部にトルエンとを含有するように秤量、混合して、十分混合・撹拌し日射遮蔽体形成用分散液を調製した。
次に、バーNo.8のワイヤーバーを用いて、日射遮蔽体形成用分散液を、50μm厚のPETフィルム上へ塗布した。その後、70℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを照射し、日射遮蔽体aを得た。
得られた日射遮蔽体aについて、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用い、測定した波長380nm以上780nm以下の範囲の光の分光透過率をもとに、JIS R 3106:1998に基づいて可視光透過率を算出したところ、80%であった。
以上の結果を表2に示した。
[実施例2]
実施例1の乾燥工程S12で得られたLaとInを含む水酸化物粒子の粉体と、平均粒子径4μmのB4Cとを、[La元素とIn元素の合計]とB(ホウ素)とC(炭素)との物質量比が1:6:1.5となるよう混合して均一混合物とした(混合物形成工程S13)。
得られた均一混合物を約0.02Paの真空雰囲気下、1400℃で3時間、熱処理してLa0.9In0.1B6粒子を主として含む粉体であるホウ化物粒子を得た(混合物熱処理工程S14)。
なお、得られたホウ化物粒子の一部をICPにかけ、ホウ化物粒子が含有する各成分を化学分析した。化学分析結果より算出される試料の組成式を表2に示す。
La0.9In0.1B6粒子として実施例2で得られたものを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2にかかるLa0.9In0.1B6分散液、および日射遮蔽体を得た。この過程で得られた分散液の分散粒子径は79nm、日射遮蔽体の可視光透過率は81%であった。
以上の結果を表2に示した。
[実施例3]
実施例1の乾燥工程S12で得られたLaとInを含む水酸化物粒子の粉体を、大気雰囲気下、600℃で3時間、熱処理して平均粒子径20nmのLaとInを含む酸化物を得た(酸化物形成工程S21)。
得られたLaとInを含む酸化物と、平均粒子径16μmのB2O3と、平均粒子径13nmのカーボンブラックを含む粉体とを、[La元素とIn元素の合計]とB(ホウ素)とC(炭素)との物質量比が1:6:10.5となるよう混合して均一混合物とした(酸化物含有混合物形成工程S22)。
得られた均一混合物を約0.02Paの真空雰囲気下、1400℃で3時間、熱処理してLa0.9In0.1B6粒子を主として含む粉体であるホウ化物粒子を得た(酸化物含有混合物熱処理工程S23)。
なお、得られたホウ化物粒子の一部をICPにかけ、ホウ化物粒子が含有する各成分を化学分析した。化学分析結果より算出される試料の組成式を表2に示す。
La0.9In0.1B6粒子として実施例3で得られたものを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3にかかるLa0.9In0.1B6分散液、および日射遮蔽体を得た。この過程で得られた分散液の分散粒子径は77nm、日射遮蔽体の可視光透過率は81%であった。
以上の結果を表2に示した。
[実施例4]
置換元素AとしてGaを選択し、Aを含有する化合物としてGa(NO3)2・nH2Oを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4にかかるLa0.9Ga0.1B6粒子を主として含む粉体であるホウ化物粒子、La0.9Ga0.1B6分散液、および日射遮蔽体を得た。
ホウ化物粒子を製造する過程の乾燥工程(S12)で得られたXおよびAを含有する水酸化物の平均粒子径は24nmであった。また、分散液の分散粒子径は83nm、日射遮蔽体の可視光透過率は76%であった。
以上の結果を表2に示した。
[実施例5]
置換元素AとしてTlを選択し、Aを含有する化合物としてTl(NO3)2・3H2Oを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5にかかるLa0.9Tl0.1B6粒子を主として含む粉体であるホウ化物粒子、La0.9Tl0.1B6分散液、および日射遮蔽体を得た。
ホウ化物粒子を製造する過程の乾燥工程(S12)で得られたXおよびAを含有する水酸化物の平均粒子径は23nmであった。また、分散液の分散粒子径は78nm、日射遮蔽体の可視光透過率は79%であった。
以上の結果を表2に示した。
[比較例1]
Xを含有する化合物であるLa(NO3)3・6H2Oを含有する水溶液500gを、室温で撹拌しながら、15%NH4OH溶液を化学当量に対して1.05倍となるように、20分間かけて滴下して沈殿を生成させた。本比較例の場合、元素XはLa、置換元素は無しとなる。
そして、滴下後さらに10分間撹拌を継続して沈澱を熟成した(沈殿物生成工程S11)。
乾燥工程S12以降は実施例1と同様にして、比較例1にかかるLaB6粒子を主として含む粉体であるホウ化物粒子、LaB6分散液、および日射遮蔽体を得た。
ホウ化物粒子を製造する過程の乾燥工程(S12)で得られたXを含有する水酸化物の平均粒子径は23nmであった。また、分散液の分散粒子径は82nm、日射遮蔽体の可視光透過率は73%であった。
以上の結果を表2に示した。
[比較例2]
置換元素AとしてYを選択し、Aを含有する化合物としてY(NO3)2・6H2Oを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2にかかるLa0.9Y0.1B6粒子を主として含む粉体であるホウ化物粒子、La0.9Y0.1B6分散液、および日射遮蔽体を得た。
ホウ化物粒子を製造する過程の乾燥工程(S12)で得られたXおよびAを含有する水酸化物の平均粒子径は26nmであった。また、分散液の分散粒子径は80nm、日射遮蔽体の可視光透過率は69%であった。
以上の結果を表2に示した。
[比較例3]
置換元素AとしてScを選択し、Aを含有する化合物としてSc(NO3)2・6H2Oを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3にかかるLa0.9Sc0.1B6粒子を主として含む粉体であるホウ化物粒子、La0.9Sc0.1B6分散液、および日射遮蔽体を得た。
ホウ化物粒子を製造する過程の乾燥工程(S12)で得られたXおよびAを含有する水酸化物の平均粒子径は25nmであった。また、分散液の分散粒子径は80nm、日射遮蔽体の可視光透過率は73%であった。
以上の結果を表2に示した。
表2に示すように、実施例1〜実施例5のホウ化物粒子を含む日射遮蔽体が、比較例1の置換元素Aによる置換を行っていないLaB
6であるホウ化物粒子を含む日射遮蔽体と比較して可視光透過率が高くなっていることを確認できた。
つまり、実施例1〜実施例5では、ホウ化物粒子の有する近赤外光吸収特性は維持しつつ、近赤外領域の光の吸収を長波長側にシフトさせ、可視領域の光の透過性が高く、かつ熱線遮蔽特性に優れたホウ化物粒子が得られていることを確認できた。
一方、比較例2、3の置換元素Aによる置換を実施したホウ化物粒子については、可視光透過率について、比較例1の置換元素Aによる置換を行っていないLaB6であるホウ化物粒子を含む日射遮蔽体と比較して同等以下であることが確認できた。
以上の結果は、計算例1〜計算例14の結果ともほぼ合致しており、計算例1〜計算例14によるホウ化物粒子の置換元素の選択方法のために適切な計算方法であることも確認できた。