JP2017137398A - 地盤改良材およびそれを用いた地盤改良工法 - Google Patents

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巧 串橋
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裕太 渡辺
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Abstract

【課題】スライムの流動化によって施工性が改善するだけでなく、六価クロム溶出量が低減する地盤改良材料、及びその製造方法並びに地盤改良工法を提供する。【解決手段】pH10以上、酸化還元電位(ORP)が−450mv以下、MgO含有量が0.3質量%以上の溶液である石灰硫黄合剤とセメントの混合物である地盤改良材であり、さらに石膏を含有してなる地盤改良材であり、セメント100質量部に対して石灰硫黄合剤を0.01〜10質量部使用してなる前記の地盤改良材であり、前記の地盤改良材を土と混合して、粘性を低下させる地盤改良工法である。【選択図】 なし

Description

本発明は、地中にセメントミルクを注入又は混合する方法、あるいは、土とセメントを直接混合し、地盤を硬化、安定化させる地盤改良材およびその製造方法と地盤改良工法に関する。
軟弱地盤のような不安定な地盤を改良するためには、軟弱な地盤を硬化、安定化させなければならない。その方法として、地盤改良材に水を混合したセメントスラリーを地盤に混合して固化させる方法、あるいは、地盤改良材を粉体のまま直接地盤に混合して固化させる方法がある。これらは、地盤改良工法、山留め工法、基礎杭工法、埋め戻し工法などと呼ばれている。
地盤改良工法には深層混合処理工法または浅層混合処理工法などがあり、山留め工法にはソイルセメント柱列壁工法やソイルセメント地中壁工法などがあり、基礎杭工法には鋼管ソイルセメント杭工法や鋼管の代わりにPH C杭などの既製杭を使用する合成杭工法などがある。
これらの工法は、地盤改良材を地盤に注入または混合撹拌すると、セメント粒子と土の粒子とが電気的作用により互いに凝集するために、粘性が上昇し、施工し難い課題がある。また、粘性が高いと、注入した地盤改良材と同体積の地盤と混入したスライムを排泥できず、地盤中で圧力がかかり地盤が隆起し地表面が盤膨れしてしまうという課題があった(非特許文献1参照)。
混合土の粘性を低下させるものとして、液状のものとしては、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び/又はポリカルボン酸系化合物等を含有する超高圧噴流注入工法用セメント添加剤が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、これらの超高圧噴流注入工法用セメント添加剤は、砂質土や砂分の多いシルト地盤では、その効果がある程度認められるものの、粘性土地盤においては、粘性低下の効果が小さいために多量に添加する必要があり、強度発現性が向上しにくいという課題があった。
一方、混合土の粘性を低下させるものとして、粉体のものとしては、リン酸塩、アルカリ金属含有物(硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機酸、およびアンモニウム塩等を含有する物質を組み合わせたものが知られている(特許文献2〜7参照)。
近年、セメント産業が各方面の産業副産物を原料に受け入れており、産業副産物に由来する微量成分が、セメントの品質に大きな影響を及ぼし、六価クロムの溶出量などにも大きな違いが出てくる。
特許文献8は、CaとSを含む化合物である多硫化カルシウムを生石灰などの固定化材に担持させて、改良処理土の強度の低下をもたらすことなく、有害重金属溶出を著しく抑制する機能を付加した地盤改良材を提供することを目的としている。固定化材である生石灰に担持させた後、セメントやセッコウと混合する技術が開示されている。
特許文献9は、Ca(S)(OH)12・20HO及び水酸化カルシウムを主成分とする重金属固定化剤であり、多硫化カルシウムとして市販の石灰硫黄合剤を用いることが記載されている。
しかしながら、これら文献には、石灰硫黄合剤が混合土の粘性を低下させることについて記載はない。
坪井 直道、薬液注入工法の実際、第5〜9頁、昭和56年3月25日、鹿島出版会、改訂版第2刷発行
特開平06−127993号公報 特開平05−254903号公報 特開平06−206747号公報 特開平07−206495号公報 特開平07−069695号公報 特開2004−143041号公報 特開平09−194835号公報 特開2001−342461号公報 特開2004−33839号公報
本発明者らは、石灰硫黄合剤とセメントとを事前混合・粉砕することにより、高い粘性低減効果の付与と六価クロムの溶出量を抑えることが可能となるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
本発明は、スライム(混合土)の流動化によって施工性が改善するだけでなく、六価クロム溶出量が低減する地盤改良材料およびその製造方法並びに地盤改良工法を提供する。
すなわち、本発明は、(1)pH10以上、酸化還元電位(ORP)が−450mv以下、MgO含有量が0.3質量%以上の溶液である石灰硫黄合剤とセメントの混合粉砕物である地盤改良材、(2)さらに、石膏を含有してなる(1)の地盤改良材、(3)セメント100質量部に対し、石灰硫黄合剤を0.01〜10質量部使用してなる(1)または(2)の地盤改良材。(4)(1)〜(3)の地盤改良材を、土と混合して粘性を低下させる地盤改良工法である。
本発明の地盤改良材および地盤改良工法により、スライムの流動化によって施工性が改善するだけでなく、六価クロム溶出量が低減するなどの効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
本発明の石灰硫黄合剤とは、主に果樹の農薬として知られ、生石灰と硫黄と水を原料とし、オートクレーブで反応させて得られる固液分離した黄褐色の液体である。CaとSと水を主成分とし、多硫化カルシウム(CaS)が主であり、T‐Ca換算で5〜10%、T−S換算で15〜30%、MgO換算で0.3%以上、0.3〜2.0%の範囲でMgを含み、pHは10.0以上である。また、石灰硫黄合剤の酸化還元電位(ORP)は特異的で−450mv以下である。
本発明の石灰硫黄合剤のpHがアルカリ性領域であることは、極めて重要である。pHが10.0未満では、本発明の効果、すなわち、流動性の向上や六価クロムの還元効果、さらには強度発現性が十分に得られない場合がある。
本発明の石灰硫黄合剤の酸化還元電位(ORP)が、−450mv以下の範囲にないと、本発明の効果、すなわち、スライムの流動性の向上や六価クロムの還元効果、さらには強度発現性が十分に得られない場合がある。
本発明の石灰硫黄合剤には、MgO換算で0.3%以上、0.3〜2.0%の範囲でMgが含まれる。Mgの含有量がMgO換算で0.3%未満であると、本発明の効果、すなわち、流動性の向上や六価クロムの還元効果、さらには強度発現性が十分に得られない場合がある。
本発明のセメントと事前混合・粉砕する石灰硫黄合剤の量は、特に限定されるものではないが、通常、セメント100部に対して0.01〜10部が好ましく、0.1〜5部がより好ましい。石灰硫黄合剤の使用量が0.01部より少ないと、本発明の効果、すなわち、スライムの流動性の向上や六価クロムの還元効果が十分に得られない場合がある。また、石灰硫黄合剤の使用量が10部を越えると、液体である石灰硫黄合剤がセメントと反応を起こし、強度発現が十分に得られない場合がある。
本発明は、石灰硫黄合剤とセメントを混合・粉砕して地盤改良材を調製する。石灰硫黄合剤とセメントの混合・粉砕する方法は、特に限定されるものではないが、ボールミル、ジェットミル、振動ミル、遊星ミル、ローラーミルを使用することが可能である。
例えば、ボールミルを用いて15分以上混合・粉砕することが望ましい。15分よりも短い時間の場合、石灰硫黄合剤の液滴とセメントとがダマになりやすい為、セメントへの石灰硫黄合剤の混合・分散が不均一になり、本発明の効果、すなわち還元効果が十分に得られなくなる場合がある。
尚、石灰硫黄合剤のセメントへの添加方法については特に限定されるものではないが、石灰硫黄合剤をセメントに噴霧して、一箇所に液滴がまとまらない様に添加した方がより好ましい。
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、および中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュまたはシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、ならびに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)などのポルトランドセメント、ならびに、市販されている微粒子セメントなどが挙げられ、これらのうちの一種または二種以上が使用可能である。また、通常セメントに使用されている成分量を増減して調整されたものも使用可能である。
本発明で使用する石膏としては、無水石膏、半水石膏及び二水石膏が上げられ、また、天然石膏やリン酸副生石膏、排脱石膏及びフッ酸副生石膏等の化学石膏、又はこれらを熱処理して得られる石膏等が挙げられる。これらの中では、強度発現性が大きい点で、無水石膏が好ましい。
本発明に使用する石膏のブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)は、3,000cm/g以上が好ましく、4,000〜7,000cm/g がより好ましい。石膏のブレーン値が3,000cm/gより小さいと、強度発現が十分に得られない場合がある。
本発明に使用する石灰硫黄合剤とセメントの混合粉砕物である地盤改良材に対し、石膏の使用量は、セメント100部に対し、1〜35部が好ましい。この範囲外の添加量では、強度発現が十分に得られない場合がある。
本発明で使用する水の使用量は、土の含水比等で異なり、特に限定されるものではないが、通常、セメント100部に対して、30〜500部が好ましく、50〜300部がより好ましい。30部未満ではスライムの流動性が小さく、500部を超えると強度発現性を阻害する場合がある。
さらに、スライムの粘性を低下させるものとしてリン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、オキシカルボン酸類があり、これらを併用することも可能である。ナフタレン類、メラミン類、アミノスルホン酸類、ポリカルボン酸類またはポリエーテル類からなる1種または2種の液体減水剤を併用することでさらなる流動性の向上を図ることができる。ナフタレン類、メラミン類、アミノスルホン酸類、ポリカルボン酸類またはポリエーテル類としては、分子量や重合度など特に限定されるものではない。
軟弱地盤のような不安定な地盤を改良するためには、軟弱な地盤を硬化、安定化させなければならない。この地盤を安定化させる方法として、例えば、地盤改良材に水を混合したセメントミルクを高圧で地中深くに噴射し、土と混合して固化させる工法、或いは地盤改良材を粉体のまま直接土と混合して固化させる工法がある。これら方法について以下に記す。
例えば、セメントミルクを高圧で噴射する工法は、地中にセメントミルクを噴射する管を挿入し、管を回転させながら管先端付近からセメントミルクを高圧噴射し、地中の土を切削すると同時に、切削された土とセメントミルクとが混合された混合土を別の管内を通して地上へ排出しながら、一定速度で管を上昇させ、地中を、セメントミルクと土との混合物で置換して硬化させ、地盤を安定化させる工法、またセメントミルクを噴射する管に撹拌翼が付属したものを地中に回転・貫入させ、回転翼付近からセメントミルクを噴射させ、土とセメントミルクを機械撹拌・混合しセメントミルクと土との混合物で置換して硬化させ、地盤を安定化させる工法である。
本発明の混合や攪拌の条件は、地中に高圧噴射する前に本地盤改良材と水とが混合されていれば特に限定するものではないが、本地盤改良材と水とを、回転数10〜1000rpm 程度で回転するグラウトミキサーにより混合するバッチ混合方式や、管内に羽根を設置しているラインミキサーにより混合する連続混合方式等により混合や攪拌が可能である。
地盤改良材を粉体のまま直接土と混合する工法は、地盤改良材を所望の添加量になるように地表表面に敷きならし、バックホウやスタビライザーに代表される混合施工機械を用い、土と地盤改良材の混合物で置換し、転圧・締め固めをする事で硬化させ、地盤を安定化させる工法である。
以下、実験例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
「実験例1」
セメント100部に対して、石膏15部、AからFの石灰硫黄合剤2部を噴霧し、内容量5リットルの磁性ボールミルに投入して20分間事前混合・粉砕した地盤改良材に、水100部を混合してスラリーを作製する。
そのセメントスラリー0.5リットルに対して以下に示す土1リットルをモルタルミキサで低速1分間混合して得られたスライムの粘度、六価クロム溶出量、圧縮強度を測定した。さらに、石灰硫黄合剤を添加しないもの、石灰硫黄合剤の替わりにGの液体減水剤を2部添加したもの、Aの石灰硫黄合剤を事前混合・粉砕していないものを比較例とした。
「使用材料」
土:新潟県長岡市産粘性土、密度1.7g/ cm3、含水比46%
セメント:普通ポルトランドセメント、デンカ社製
石膏:二水石膏、神岡鉱業社製、ブレーン値 4220cm/g
石灰硫黄合剤として以下の溶液を使用した。
石灰硫黄合剤A:pHが11.0、酸化還元電位−540mv、MgO含有量が1.0%。
石灰硫黄合剤B:pHが10.5、酸化還元電位−500mv、MgO含有量が1.0%。
石灰硫黄合剤C:pHが10.0、酸化還元電位−450mv、MgO含有量が1.0%。
石灰硫黄合剤D:pHが10.5、酸化還元電位−500mv、MgO含有量が0.5%。
石灰硫黄合剤E:pHが10.5、酸化還元電位−500mv、MgO含有量が2.0%。
石灰硫黄合剤F:pHが10.0、酸化還元電位−300mv、MgO含有量が1.0%。
液体減水剤G:ナフタレンスルホン酸塩系減水剤、デンカ社製、商品名「FT−500V」、ナフタレンスルホン酸含有率40%
「試験方法」
粘度:混合したスライムの直後の粘度をB型粘度計で測定
六価クロム溶出量:混合したスライムをφ5×10cmの型枠に詰めて、水が飛ばないようにビニール袋で封緘にして20℃で材齢7日まで養生する。その後、環境庁第46号法に従って測定した。
圧縮強度:混合したスライムをφ5×10cmの型枠に詰めて、水が飛ばないようにビニール袋で封緘にして20℃で材齢28日まで養生後、JIS A 1216の方法に準拠して圧縮強度試験機にて測定した。
Figure 2017137398
表1より、本発明の地盤安定化材を使用することで、スライムの粘性を低減させ、六価クロム溶出量を減らしながら、さらに強度性状が良好であることが分かる。
「実験例2」
本発明の地盤改良材Aを使用し、石灰硫黄合剤の使用量を表2に示すように変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
Figure 2017137398
表2より、本発明の地盤改良材を使用することにより、スライムの粘度が低減し、六価クロム溶出量を減らしながら、さらに強度性状が良好であることが分かる。
「実験例3」
セメント100部に対して、石灰硫黄合剤2部、石膏量を表3に示すように変化させ、事前混合・粉砕したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
Figure 2017137398
表3より、本発明の地盤改良材を使用することにより、強度性状が良好であることが分かる。
本発明の地盤改良材、および地盤安定化工法により、スライムの流動化によって施工性が改善するだけでなく、六価クロム溶出量が低減するので、環境に配慮した材料を提供することが可能となり、土木、建築分野に好適である。

Claims (4)

  1. pH10以上、酸化還元電位(ORP)が−450mv以下、MgO含有量が0.3質量%以上の溶液である石灰硫黄合剤とセメントの混合粉砕物である地盤改良材。
  2. さらに、石膏を含有してなる請求項1に記載の地盤改良材。
  3. セメント100質量部に対して石灰硫黄合剤を0.01〜10質量部使用してなる請求項1または2に記載の地盤改良材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤改良材を、土と混合して粘性を低下させる地盤改良工法。
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