以下、本発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものではない。これらの方向を示す用語は、特に明示しない限り、誘導加熱調理器を前面側(正面側)から見た場合の方向を意味している。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の本体筐体1がキッチンキャビネット200に据え付けられた状態を示す斜視図である。
実施の形態1の誘導加熱調理器は、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み込まれて使用されるビルトイン型のものである。本体筐体1は、下筐体2と、下筐体2の上部に組み付けられる上筐体3とを備え、下筐体2と上筐体3とが組み合わされて形成される本体筐体1の内部空間に、後述する各部品が収容される。上筐体3の上面の開口には、被加熱物が載置されるトッププレート7が嵌め込まれている。図1に示すように本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み込まれると、キッチンキャビネット200の天面を構成するキッチン天板201の上に、上筐体3が載置され、キッチンキャビネット200の内部に、下筐体2が収容される。本体筐体1内には、グリル加熱を行う調理室37が形成されており、キッチンキャビネット200の前面に形成された前面開口部204からは、下筐体2の前面に設けられた調理室37の扉及び操作部5が露出している。
上筐体3の上面の開口に設けられたトッププレート7は、例えば耐熱性ガラスやセラミック等の非金属材料で構成される。トッププレート7には、被加熱物(図示せず)が載置される3つの加熱口6a、加熱口6b、加熱口6cが、本体筐体1の幅方向に沿って左から順に配置されている。なお以降の説明において、加熱口6a、加熱口6b、加熱口6cに共通する事項を説明する場合には、加熱口6と総称する場合がある。トッププレート7の表面又は裏面には、各加熱口6に被加熱物を載置する際の目印となる表示が施されている。
左右の中間に配置された加熱口6bの前端は、左右に配置された加熱口6a及び加熱口6cの前端よりも後寄りに配置されている。また、加熱口6a及び加熱口6cは、それぞれトッププレート7の左右の端部に近づけて配置されている。このため、中間の加熱口6bの手前から左右の加熱口6aと加熱口6cの手前までの領域は、例えば盛り付け等の加熱調理以外の調理作業を使用者が行うのに十分なスペースが確保され、調理の作業性を高める効果がある。
各加熱口6の手前には、それぞれ表示部4が設けられている。表示部4には、各加熱口6の火力状態、安全に調理作業を行うための情報、自動調理等の操作メニューの内容、及び調理の進行状況等が表示される。表示部4は、例えば液晶画面やLEDなど、視覚的に情報を報知するための任意の装置で構成される。
下筐体2の前面及び表示部4の手前には、操作部5が設けられている。操作部5は、各加熱口6及び調理室37での加熱調理に関する操作入力を受け付ける入力装置である。使用者は、操作部5を用いて、火力の調整、調理メニューの選択及び指示の操作を行うことができる。
トッププレート7の背面側には、通気口カバー8が設けられている。通気口カバー8には、通風可能な開口が形成されており、吸気及び排気の気流がスムースに通過することができる。通気口カバー8を設けることで、通気口カバー8の下方に設けられた筐体吸気口9及び筐体排気口10(図3参照)への異物の侵入を抑制している。
下筐体2の前面の左側には、調理室37の前面開口を開閉する引き出し式の扉が配置されている。調理室37内で加熱調理される食材等の出し入れは、この調理室37の扉が開閉されて行われる。
なお、調理室37、操作部5及び表示部4の配置並びに数は一例であり、図示のものに限定されない。
図2は、キッチンキャビネット200の一例を示す斜視図である。図2を参照して、本実施の形態の誘導加熱調理器が組み込まれうるキッチンキャビネット200の一例を説明する。
キッチンキャビネット200には、誘導加熱調理器の下筐体2が格納される空間である格納部202が形成されている。キッチン天板201には、格納部202に通じる開口が形成されており、この開口部を天板開口部203という。また、キッチンキャビネット200の前面には、格納部202に通じる開口が形成されており、この開口部を前面開口部204という。天板開口部203から前面開口部204に至る空間である格納部202内に、本体筐体1の下筐体2が収容され、キッチン天板201の上に、本体筐体1の上筐体3が載置される。
格納部202の下方には、調理用具等の収納スペースを有する引き出しが設けられている。なお、このような収納スペースの代わりにオーブンレンジ等の加熱調理器の収納スペースを設けたキッチンキャビネット200もあり、格納部202の下方の用途は限定されない。
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の本体筐体1から通気口カバー8を外し、トッププレート7を透視した斜視図である。図4は、実施の形態1に係る本体筐体1の上筐体3と下筐体2の分解斜視図である。
本体筐体1は、上面を開口した概ね箱状の下筐体2と、下筐体2の上に設けられた下筐体2よりも幅広の上筐体3とを有する。上から見たときの上筐体3の外周の投影面積は、下筐体2の外周の投影面積よりも大きく、上筐体3は、左右方向において下筐体2よりも外側に張り出している。
上筐体3は、全体としてみると上面及び底面の中央部分を開口した箱状の部材であり、概ね角枠状の上筐体枠50と、上筐体枠50の左側に設けられた上筐体支持面部材60と、上筐体枠50の右側に設けられた上筐体支持面部材70とを備える。上筐体枠50が、上筐体3の周壁に相当する部分を構成し、上筐体支持面部材60及び上筐体支持面部材70が、上筐体3の支持面に相当する部分を構成している。上筐体支持面部材60は、上筐体3の上筐体枠50の左端に寄せて配置され、上筐体枠50の対向する前後の二辺間に掛け渡されている。上筐体支持面部材70は、上筐体3の上筐体枠50の右端に寄せて配置され、上筐体枠50の対向する前後の二辺間に掛け渡されている。図3に示すように上筐体3が下筐体2に組み合わされた状態では、上筐体支持面部材60は下筐体2の左端から左外方向に向かって概ね水平に張り出し、また、上筐体支持面部材70は、下筐体2の右端から右外方向に向かって概ね水平に張り出している。上筐体支持面部材60及び上筐体支持面部材70は、上筐体枠50及びトッププレート7と隙間少なく概ね気密に取り付けられ、後述する冷却風の出入り口となる開口部を除いては、一定の気密性を有する空間を自身の上方に形成している。
上筐体3の上筐体枠50の上面後部には、右側に筐体吸気口9が形成され、左側に筐体排気口10が形成されている。なお、本実施の形態においては、筐体吸気口9は上筐体3の上面後部の右側に設けられているが、上筐体3及び下筐体2の外部から冷却に用いる空気を吸引できる位置であれば、筐体吸気口9は上筐体3と下筐体2のいずれに設けられていてもよい。例えば、下筐体2の背面、底面、及び操作部5が設けられる前面のいずれかに筐体吸気口9を設けてもよく、筐体吸気口9の配置及び数によらず本実施の形態の作用効果を得ることができる。
左側の加熱口6a(図1参照)の下方には、中心が異なる位置に配置された5つの誘導加熱コイル11a、11b、11c、11d、11e(これらを誘導加熱コイル11と総称する場合がある)が設けられている。巻線31を二重環状に巻き回して構成された誘導加熱コイル11eの周囲に、巻線31を扁平な楕円形状に巻き回して構成された誘導加熱コイル11a〜11dが配置されており、これらで一つの加熱口6aの加熱手段を構成する。なお、誘導加熱コイル11及びこれ以降で説明する誘導加熱コイル12、13の説明において、コイルを構成する巻線に着目して説明するときは、「巻線31」と表現するが、図示の関係上、各図では巻線31が示されていない場合もある。
5つの誘導加熱コイル11はそれぞれ独立して駆動され、被加熱物である調理容器の大きさ及び配置に応じて、5つの誘導加熱コイル11のうち1つから5つが、適宜組み合わせて駆動されて加熱調理が行われる。したがって、小型の鍋、大型のフライパン、縦型の卵焼き用フライパン、横型のオーバル鍋など、調理容器の大きさ、形状及び配置が異なる場合でも、それぞれ調理容器の適切な範囲が加熱される。被加熱物が載置されない範囲の誘導加熱コイル11では加熱を行わないので、無駄な電力消費を抑制して環境負荷を低減することができる。誘導加熱コイル11の上に載置される被加熱物の範囲全体を加熱することができるので、より均一な加熱が行え、良好な調理効果及び仕上がりを得る効果がある。
誘導加熱コイル11は、例えば合成樹脂等で構成されたコイルベースに支持されており、誘導加熱コイル11の一部は上筐体支持面部材60の上に配設され、残りの一部は下筐体2の上に配設されている。
より詳しくは、本実施の形態では、左端に配置された誘導加熱コイル11aと、他の4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eとは、別のコイルベースに支持されており、前者のコイルベースをコイルベース14、後者のコイルベースをコイルベース15と称する。左端の誘導加熱コイル11aは、コイルベース14に支持されて上筐体支持面部材60のコイル載置面61の上に配置され、他の4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eは、コイルベース15に支持されて下筐体2に配置されている。
下筐体2に配置される4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの、上筐体支持面部材60に隣接しない側の側面(本実施の形態では右側の側面)の外周を囲うようにして、アルミ板等の非磁性金属板で形成された防磁板21が配置されている。防磁板21は、誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの外形に沿うようにして、上から見て円弧状に形成されている。このような防磁板21を設けることで、誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの側面方向への高周波磁束を防磁板21が吸収し、磁束の漏洩を抑制することができる。
また、上筐体支持面部材60は、アルミ板等の非磁性金属板で形成されており、上筐体支持面部材60の外側の側壁62が防磁板として機能し、上筐体3の左側側方への漏れ磁束を抑制している。このため、左端の誘導加熱コイル11aには、誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの周囲に設けられた防磁板21に相当する構成を別途配置する必要がなく、部品コスト及び組立コストを安価にする効果がある。
左端の誘導加熱コイル11aの最大火力は、中央の誘導加熱コイル11eよりも低く抑えられている。上筐体支持面部材60の上に載置される誘導加熱コイル11aの自己発熱を軽減することで、誘導加熱コイル11aの冷却の負荷を低減している。
また、左端の誘導加熱コイル11aの巻線31には、温度検知手段(図示せず)が取り付けられており、制御手段は巻線31の温度が閾値以上となった場合、左端の誘導加熱コイル11aの火力を低下させる、又は加熱を停止させる制御を行う。
このとき、左端の誘導加熱コイル11aの火力は低下するが、制御手段は、他の4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eのうちいずれか一つ以上の火力を高め、左側の加熱口6aの合計の火力が維持されるように制御する。このとき、火力を高める誘導加熱コイル11b〜11eの数は、一つであってもよいし、複数であってもよく、また、いずれの誘導加熱コイル11b〜11eの火力を高めるかは、そのときの調理メニューや設定火力に応じて制御手段が選択することができる。
中間の加熱口6b(図1参照)の下方には、巻線31が円板状に巻かれて構成された一つの誘導加熱コイル12が配置されている。加熱口6bに載置される被加熱物は、この一つの誘導加熱コイル12で加熱される。誘導加熱コイル12の側面外周には、誘導加熱コイル12を囲む防磁板22が配置されており、防磁板が誘導加熱コイル12の側面方向への高周波磁束を吸収して、磁束の漏洩を抑制している。
中間の誘導加熱コイル12は、合成樹脂等で構成されたコイルベース16に収容されている。コイルベース16の下面には、コイルバネ等からなる弾性体29が取り付けられており、コイルベース16の上面には、誘導加熱コイル12の上面よりも上に突出する間隔保持部材30が取り付けられている。弾性体29の弾性力によってコイルベース16が上方に付勢され、トッププレート7の下面に間隔保持部材30が押し当てられ、これによって誘導加熱コイル12は上下方向に位置決めされる。
なお、図3では図示しないが、左側の加熱口6aに設けられた誘導加熱コイル11のうち左端の誘導加熱コイル11aを除く4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eも、中間の誘導加熱コイル12と同様に、コイルベース15を介して弾性体29により支持されるとともに上方に付勢され、トッププレート7の下面に間隔保持部材30が押し当てられる。このような構成により、誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eも上下方向に位置決めされている。
右側の加熱口6c(図1参照)の下方には、巻線31が二重環状に巻かれて構成された一つの誘導加熱コイル13が配置されている。この誘導加熱コイル13は、コイルベース17に収容されている。加熱口6cに載置される被加熱物は、この一つの誘導加熱コイル13で加熱される。誘導加熱コイル13は、上筐体支持面部材70の上に載置されている。誘導加熱コイル13の一部(右側部分)は、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられた状態においてキッチン天板201と重なる位置に配置され、誘導加熱コイル13の残りの一部(左側部分)は、天板開口部203と重なる位置に配置される。
上筐体支持面部材70は、アルミ板等の非磁性金属板で形成されており、上筐体支持面部材70の外側の側壁72が防磁板として機能し、上筐体3の右側側方への漏れ磁束を抑制している。このように上筐体支持面部材70が防磁板として機能することで、防磁板21、22に相当する構成を別途配置する必要がなく、部品コスト及び組立コストを安価にする効果がある。
右側の誘導加熱コイル13の巻線31のうち、上面視でキッチン天板201と重なる部分、すなわち、下筐体2よりも右側方へはみ出して配置された部分には、巻線31の温度を検知する温度検知手段(図示せず)が配置されている。制御手段は、誘導加熱コイル13の巻線31のうち、上面視でキッチン天板201と重なる部分の温度が閾値以上となった場合、右側の誘導加熱コイル13の火力を低下させる、又は加熱を停止する制御を行う。
誘導加熱コイル11、12、13の手前側には、左側の誘導加熱コイル11と右側の誘導加熱コイル13の手前側とを結ぶようにして、上筐体3の幅方向に延びる冷却風路80が配置されている。冷却風路80の左右の両端は開口しており、左側の開口を左吹出口82、右側の開口を右吹出口83と称する。また、冷却風路80の一部は、左側の誘導加熱コイル11の下側にも配置されている。
左側の上筐体支持面部材60には、複数の通風口が設けられており、その通風口の一つが、誘導加熱コイル11aの手前側に設けられた流入口63、他の通風口の一つが、流入口63の後方に設けられた流出口64である。上筐体支持面部材60への冷却風の流入口である流入口63には、冷却風路80の左吹出口82が概ね気密に接続される。流入口63から上筐体支持面部材60の上方に流入した冷却風は、誘導加熱コイル11aを冷却し、流出口64に向かう。上筐体支持面部材60の左側の側壁62(外側の側壁)は、誘導加熱コイル11aの左側端部において誘導加熱コイル11aと最も近接しており、冷却風は上筐体支持面部材60の左側の側壁62に沿って流れ、迂回することなく誘導加熱コイル11aに接触しつつこれを冷却する。
右側の上筐体支持面部材70には、誘導加熱コイル13の手前側に流入口73、その後方に流出口74が設けられている。冷却風路80の右吹出口83は、上筐体支持面部材70への冷却風の流入口である流入口73に概ね気密に接続されており、流入口73から上筐体支持面部材70内に流入した冷却風は、誘導加熱コイル13を冷却し、流出口74に向かう。上筐体支持面部材70の右側の側壁72は、誘導加熱コイル13から離れて配置されているが、上筐体支持面部材70の右側の側壁72と誘導加熱コイル13との間には、導風部材27が設けられている。導風部材27は、上筐体支持面部材70の上に載置される誘導加熱コイル13の側面と対向配置され、冷却風を誘導加熱コイル13の方向へ導く。導風部材27は、本実施の形態では、誘導加熱コイル13の側面に対向する面は、誘導加熱コイル13に向かって膨らんだ弓なり形状であり、流入口73からの冷却風を誘導加熱コイル13に導く。
左吹出口82と流入口63との隙間、及び右吹出口83と流入口73との隙間には、気密性のあるクッション材等を挟むことで、両者の気密性をより高めることができ、冷却風路80から送られる冷却風による誘導加熱コイル11、13の冷却効率を高めることができる。
右側の上筐体支持面部材70の下には、上筐体支持面部材70に送られる冷却風が流れる右冷却風路90が設けられている。本実施の形態の右冷却風路90は枠状の部材であり、下面には、冷却風の流入口となる右冷却風路流入口91が形成され、上面には、冷却風の吹出口となる右冷却風路吹出口92が形成されている。本体筐体1が組み立てられた状態では、右冷却風路90の上端部に形成された右冷却風路吹出口92は、右側の上筐体支持面部材70の下部と概ね気密に接続され、上筐体支持面部材70と右冷却風路90とでチャンバを形成する。
上筐体支持面部材70のコイル載置面71には、複数の支持面流入口75a、75bが設けられている。上から見たときに誘導加熱コイル13の巻線31と重なるようにして巻線31の下方に配置されたものを支持面流入口75a、上から見たときに誘導加熱コイル13の巻線31と重ならないようにして巻線31の外側に配置されたものを支持面流入口75bと区別して称する場合がある。なお、支持面流入口75a、75bに共通する事項について説明する場合には、支持面流入口75と称する場合がある。
誘導加熱コイル13の巻線31の真下に位置する支持面流入口75aは、右冷却風路90から送られる冷却風を誘導加熱コイル13に吹き付ける噴流ノズルとして機能する。支持面流入口75aから送られた冷却風の噴流を巻線31の下方に接触させることで、巻線31は衝突噴流熱伝達により冷却効率高く冷却される。
誘導加熱コイル13の巻線31とは上から見て重ならない位置に配置された支持面流入口75bから吹き出された冷却風は、巻線31の側面及び上面を流出口74に向かって流れ、その過程において強制対流熱伝達により巻線31を冷却する。
下筐体2内には、右冷却風路90の下側に、内部に冷却ファン25を収納した基板ケースユニット24(図6にて後述する)が配置されており、右冷却風路90の下面に形成された右冷却風路流入口91は、基板ケースユニット24の後側排気口24c(図6参照)に接続されている。
下筐体2の内部であって左側の誘導加熱コイル11の後方には、下筐体2内と筐体排気口10とを連通させる風路を形成する排気風路26が設けられている。排気風路26は、本体筐体1内を流れた冷却風を、本体筐体1の外部へ排出する風路となっている。
図4に示すように、下筐体2の前部上端部には、下筐体2の上端から手前側に向かって略水平に突出した下筐体係止部33が設けられている。下筐体係止部33は、角枠状の上筐体3の上筐体枠50の手前側の部分に係止される。ここで、図5を参照して、下筐体係止部33を上筐体3に取り付ける構造について説明する。
図5は、実施の形態1に係る上筐体3の上筐体枠50と下筐体2の前部の組み立てに係る構成を説明する図である。図5(A)は、上筐体3の上筐体枠50と下筐体2とが分離した状態を示し、図5(B)は、上筐体3の上筐体枠50と下筐体2とが組み合わされた状態を示している。上筐体3の上筐体枠50の下端部の縁には、この下端部の縁から内側に向かって略水平に延在する上筐体フランジ部51が設けられており(図16参照)、図5では上筐体枠50の前部に設けられた上筐体フランジ部51の近傍を中心に示している。
図5に示すように、上筐体3の上筐体枠50の下端に形成された上筐体フランジ部51の前部は、後方(図5の紙面右側)に向かって延びている。この前側の上筐体フランジ部51の上側には、後方に向かって開口した凹状の空間が形成されており、この部分を凹部52と称する。図5(A)に示すように、下筐体2の下筐体係止部33を、上筐体フランジ部51の上側に形成された凹部52に挿入することで、図5(B)に示すように、下筐体2の前部と上筐体3の上筐体枠50の前部とが組み合わせられる。
なお、本実施の形態においては、下筐体2に一体に形成されたフランジ状の部位を下筐体係止部33として用いているが、断面L字型の係止用の部品を下筐体2に上下逆に取り付けることで下筐体係止部33を形成してもよい。また、本実施の形態においては、上筐体枠50に一体に設けられた上筐体フランジ部51の上に形成される凹部52に、下筐体係止部33を挿入しているが、このような凹部52の代わりに、上筐体3に係止用の部品を別途取り付けるなどして、下筐体係止部33を係止する係止部を形成してもよい。
次に、下筐体2と上筐体3との後部の組み立てに係る構成を説明する。図4に示すように、上筐体3の上筐体枠50の後部には、複数の上筐体取付穴55が形成されている。また、下筐体2の後部には、上筐体取付穴55と同数の下筐体締結部34が設けられている。締結部材40を上筐体取付穴55に上から挿入し、締結部材40の先端部分を下筐体締結部34に締結することで、図3に示すように下筐体2と上筐体3とが固定される。
締結部材40としては例えばネジが用いられ、この場合、下筐体締結部34は、下筐体2を形成する板金部品にバーリングした後にネジを切って構成され、あるいはナットを溶接したものを組み合わせることで構成される。また、締結部材40としては例えばタッピングネジを用いることもでき、この場合、下筐体締結部34は、板金部品の穴をバーリングすることで構成できる。
下筐体2の上面開口の近くであって、下筐体締結部34(後側)よりも下筐体係止部33(前側)に近い位置には、左右の誘導加熱コイル11、13の巻線31を接続するための端子台28が設けられている。誘導加熱コイル11、13を構成する巻線31は、それぞれ、端子台28に接続され、端子台28を介して基板ケースユニット24内の駆動回路及び制御回路と接続される。
図6は、実施の形態1に係る基板ケースユニット24の斜視図である。
基板ケースユニット24は、図4に示したように、下筐体2内の調理室37の右側かつ上筐体支持面部材70の下側に収納されている。
基板ケースユニット24内には、電子部品23及び冷却ファン25が収容されている。電子部品23は、誘導加熱コイル11、12、13に高周波電力を供給する駆動手段であるインバータ回路、インバータ回路の冷却効率を高めるヒートシンク、及び駆動手段を制御する制御手段であるマイコンや制御回路等の電子部品が実装された回路基板を含んでいる。本実施の形態では、本体筐体1の動作を制御する機能部品の集合体を、制御手段と称する。
基板ケースユニット24の外殻において、冷却ファン25の吸引側には吸気口24aが開口し、冷却ファン25の送出側の上面には、前側排気口24b、後側排気口24cという2つの排気口が開口している。吸気口24aは、筐体吸気口9の下方に配置され(図4参照)、筐体吸気口9と連通する。基板ケースユニット24の内部は、吸気口24aから前側排気口24b、後側排気口24cに至る一体的な風路として機能する。
図7は、実施の形態1に係る基板ケースユニット24の側面断面図である。図7では、冷却風の流れを矢印で概念的に示している。冷却ファン25が動作すると、外部の空気は、筐体吸気口9に接続される吸気口24aから基板ケースユニット24内に流入する。基板ケースユニット24に流入した空気は、冷却ファン25により吸引及び送出され、一部は奥側(図7の紙面左側)の後側排気口24cから吹き出され、他の一部は電子回路基板に実装されたインバータ回路や放熱フィン等の電子部品23を冷却した後、手前側(図7の紙面右側)の前側排気口24bから吹き出される。
なお、基板ケースユニット24の風路構成は一例であり、冷却ファン25を備え、前側排気口24b、後側排気口24cから冷却風を送風できる構成であれば、形状及び冷却風の経路はこれに限定するものではなく、同様の作用及び効果が得られる。また、冷却ファン25は、吸い込んだ空気を前側排気口24b、後側排気口24cから送出することのできる送風機であれば、任意の構成のものを採用することができ、また、その配置についても図示のものに限定されない。
図8は、実施の形態1に係る左側の上筐体支持面部材60及び上筐体支持面部材60に保持される部品の斜視図である。図9は、実施の形態1に係る左側の上筐体支持面部材60及び上筐体支持面部材60に保持される部品の分解斜視図である。
上筐体支持面部材60のコイル載置面61の上には、コイルベース14の上面に支持された誘導加熱コイル11aと、コイルベース14の下面に保持された高透磁率磁性体18とが配置される。コイルベース14の上面及び下面には、シリコン等の耐熱性を有する接着剤が充填され、この接着剤を介して、誘導加熱コイル11aを構成する巻線31及び高透磁率磁性体18が、コイルベース14に保持される。
コイルベース14の上面に載置される誘導加熱コイル11aの巻線31は、素線径がφ0.2mm以下の細い銅又はアルミ等の素線を撚り線としたもので構成することができ、そのようにすることで、φ0.3mm以上の線材を用いる場合に3.5mm以上の高さ寸法になるのに比べて誘導加熱コイル11aの高さ方向寸法を2.4〜2.8mmに小さくすることができる。また、素線に幅0.05〜0.2mmで高さ0.5〜3mmの平角線を用いて5〜30枚を幅方向に重ねて束ねた線(撚り線相当)で巻線を形成することで高さ寸法を0.5〜3mmに小さくすることができる。誘導加熱コイル11aの高さ方向の寸法を小さくすることで、キッチン天板201の上に載置される上筐体3の高さ寸法を低くすることができるので、調理の作業性を高める効果がある。
コイルベース14の上面には、上方に突出する突条体で構成された巻線支持部14dが設けられており、この巻線支持部14dの上に誘導加熱コイル11aの巻線31が載置される。巻線支持部14dの上に巻線31を配置することで、コイルベース14の上面と巻線31の底面との間に冷却風が通過する風路を形成し、巻線31の底面の冷却効率を高めている。
上筐体支持面部材60は、アルミ板などの高導電率で低透磁率の非磁性体の金属板などで構成される。上筐体支持面部材60及び上筐体支持面部材60の外側の側壁62は、誘導加熱コイル11aの巻線31からの高周波磁束の漏れを防止する防磁手段として機能する。このようにすることで、加熱口6aに載置される被加熱物以外(キッチン天板201等)の高周波加熱が抑制され、本体筐体1の外への不要な磁束の漏洩を抑制するとともに、誘導加熱コイル11aの底部に配置されるフェライト等の高透磁率磁性体18の発熱を拡散して冷却風との接触を高めるヒートシンクとしての効果を奏することもできる。
上筐体支持面部材60の外周に形成された側壁の一部には、通風可能な開口である流入口63及び流出口64が形成されている。誘導加熱コイル11aを挟んで前面側に設けられているのが流入口63、背面側に設けられているのが流出口64である。
流入口63の手前の側壁62には、巻線31を端子台28に配線するための開口が設けられており、巻線31の端部に接続された接続線31aが通される。接続線31aは、上筐体3と下筐体2とを分解して、上筐体3の端子台28側(前面側)の辺で回転させて裏返してメンテナンス作業ができる程度の長さとするのがよく、そのようにすることで組立性及びメンテナンス性を高める効果がある。
高透磁率磁性体18は、フェライト等が用いられ、誘導加熱コイル11aの巻線31から発生する高周波磁束を集束するとともに偏向させて上方に載置される被加熱物に向ける。また、誘導加熱コイル11aの下方に磁束が向かうのを抑え、上筐体支持面部材70やキッチン天板201へ高周波磁束が通過するのを抑制している。
図9に示すように、コイルベース14の下には高透磁率磁性体18が設けられている。本実施の形態では、一つの高透磁率磁性体を複数に分割して形成されたような形状の複数の高透磁率磁性体18が設けられており、これら複数の高透磁率磁性体18の全体としての外形は、誘導加熱コイル11aの外形よりも大きく、誘導加熱コイル11aの概ね下方全体に配置される。図8に示すように、誘導加熱コイル11aの外周よりも外側に高透磁率磁性体18の一部がはみ出す。
ここで、高透磁率磁性体18が磁束を集める性能(防磁性能)は、誘導加熱コイル11aの周方向の断面積を大きくすることや、誘導加熱コイル11aの下方を覆う範囲を広くすることで、向上する。
したがって、誘導加熱コイル11aの巻線31の下方全体を覆うようにして高透磁率磁性体18の平面積を大きくすることで、高透磁率磁性体18の高さを大きくすることなく、防磁性能を確保することができる。言い替えると、誘導加熱コイル11aの下側に配置される高透磁率磁性体18の高さ寸法を、下筐体2に設けられた他の4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの下側に配置される高透磁率磁性体18の高さ寸法よりも小さくした場合でも、誘導加熱コイル11aの下側に配置される高透磁率磁性体18の平面積を相対的に大きくすることで、他の4つの誘導加熱コイル11b〜11eと同等の防磁性能を確保することができる。上筐体支持面部材60の上に載置される誘導加熱コイル11aの下に配置される高透磁率磁性体18の高さを抑えることができるので、上筐体3の高さ寸法を低く抑えることができる。このため、上筐体3がキッチン天板201から突出する高さが抑えられ、使用者が被加熱物を加熱口6aの載置する際の上下動作を減らして調理の作業性を高める効果がある。
また、誘導加熱コイル11aの巻線31の下方を高透磁率磁性体18が覆う範囲を広くすることで、誘導加熱コイル11aの下方への漏れ磁束を減少させることができるので、誘導加熱コイル11aの下に配置されている上筐体支持面部材60の不要な発熱が低減する。
それぞれの高透磁率磁性体18を平面視したときの外形線の少なくとも一つ以上は、誘導加熱コイル11aを構成する巻線31の径方向外側から内側へと横切っている。すなわち、高透磁率磁性体18の外形線の少なくとも一つと、巻線31とが、平面視したときに交差している。このようにすることで、高周波磁束を巻線31の内側と外側の上方に向け、被加熱物の加熱効率を高めるとともに、下方への磁束の到達の抑制効果を高めている。
また、隣り合う高透磁率磁性体18同士の間には、隙間が設けられており、この隙間は、高透磁率磁性体18の高さ寸法よりも小さい。高透磁率磁性体18同士の間に隙間を設けることで、空気にさらされる高透磁率磁性体18の表面積を増やし、各高透磁率磁性体18の熱伝達を高めている。これにより、高透磁率磁性体18の冷却効率を高め、上筐体支持面部材60のコイル載置面61の温度上昇及びキッチン天板201の加熱を抑制して、安全性を高めている。
また、コイルベース14の下面には、高透磁率磁性体18を保持する保持部である保持壁14gが設けられている。この保持壁14gは、例えば、コイルベース14の下面から下方に向かって延びる壁面を有しており、対向する壁面間に形成される下方に向かって開放された溝の中に、高透磁率磁性体18が嵌め込まれる。保持壁14gには、隣り合う高透磁率磁性体18の隙間と対向する位置に、隙間部側面開口14aが形成されている。この隙間部側面開口14aを介して、高透磁率磁性体18間の隙間は、上筐体3内の空間と連通する。このため、流入口63側の比較的圧力の高い高透磁率磁性体18間の隙間から、流出口64側の比較的圧力の低い隙間に向けて冷却風が流れ、さらに高透磁率磁性体18の冷却効率を高めることができる。
また、コイルベース14の保持壁14gを構成する壁には、高透磁率磁性体18の外側の側面と対向する位置にも、複数の側面開口14bが設けられている。このため、上筐体3内を流入口63から流出口64に向かって流れる冷却風により、高透磁率磁性体18の外側面が冷却される。
コイルベース14の外周部に設けられた脚部には取付穴が形成され、上筐体支持面部材60のコイル載置面61にはコイルベース締結部65が設けられている。コイルベース締結部65は、下筐体2に設けられた下筐体締結部34と同様の構成である。締結部材40を、コイルベース14の脚部の取付穴の上から挿入し、締結部材40の先端部分をコイルベース締結部65に締結することで、コイルベース14と上筐体支持面部材60とが固定される。
上筐体支持面部材60の背面側の側壁62の上端には、この上端から背面側に向かって略水平に延びる取り付けフランジが形成されており、取り付けフランジには上筐体支持面締結部66が形成されている。上筐体支持面締結部66は、下筐体2に設けられた下筐体締結部34と同様の構成である。図4に示したように、上筐体3の上筐体枠50の後部には左支持面取付穴56が形成されており、締結部材40を左支持面取付穴56に上から挿入し、締結部材40の先端部分を上筐体支持面締結部66に締結することで、上筐体支持面部材60の後部と上筐体3とが固定される。
なお、上筐体支持面部材60の前部は、上筐体フランジ部51の上に形成される隙間に挿入され(図16、図18参照)、これによって上筐体支持面部材60の前部と下筐体2の前部とが組み合わされる。
図10は、実施の形態1に係る右側の上筐体支持面部材70及び上筐体支持面部材70に保持された部品の斜視図である。
上筐体支持面部材70のコイル載置面71の上には、コイルベース17の上に取り付けられた誘導加熱コイル13が載置される。誘導加熱コイル13の巻線31は、素線径がφ0.2mm以下の細い銅又はアルミ等の素線を撚り線としたもので構成することができる。上筐体支持面部材70は、前述の上筐体支持面部材60と同様に、アルミ板などの高導電率で低透磁率の非磁性体の金属板などで形成され、誘導加熱コイル13から漏洩する磁束を抑制する防磁効果、及び冷却効果が得られる。
図4に示したように前述の左側の上筐体支持面部材60のコイル載置面61は、下筐体2と上筐体3とが組み合わされた状態では、上面視において下筐体2と重ならないように配置される部分のみで構成されていた。一方、右側の上筐体支持面部材70のコイル載置面71は、下筐体2と上筐体3とが組み合わされたときに、上面視において下筐体2と重なる部分と重ならない部分とがある。上筐体支持面部材70のコイル載置面71のうち、上面視において下筐体2と重なる部分を、コイル載置面中央部71a、下筐体2と重ならない部分を、コイル載置面側部71bと称する。コイル載置面中央部71aとコイル載置面側部71bは、同一平面上にはなく、両者の間には段差があり、コイル載置面中央部71aの方がコイル載置面側部71bよりも低い。図3、図4に示されるように、上筐体3が下筐体2と組み合わさると、コイル載置面中央部71aの下方には、下筐体2の内部空間が位置する。
コイル載置面中央部71aに形成された複数の支持面流入口75a、75bは、右冷却風路90の右冷却風路吹出口92(図4参照)に接続され、冷却風を上筐体支持面部材70の上側の空間に流入させる流入口として機能する。支持面流入口75a、75bから上筐体支持面部材70の上方に流入する冷却風は、誘導加熱コイル13よりも手前側に形成された流入口73からの冷却風と併せて、誘導加熱コイル13及びその付帯部品を冷却し、背面側の流出口74から排気される。
上筐体支持面部材70には、上筐体支持面部材70を上筐体枠50に取り付けるための上筐体支持面締結部77が設けられている。なお、図10には一つの上筐体支持面締結部77のみが示されているが、上筐体支持面部材70の概ね外周に沿って複数(本実施の形態では4つ、図17参照)の上筐体支持面締結部77が設けられており、複数箇所で上筐体支持面部材70が上筐体枠50に固定される。上筐体支持面締結部77は、本実施の形態ではコイル載置面側部71bから上方に向かって突出する筒形状を有し、この筒形状の内周部に、締結部材40の先端が止め付けられる。
図11は、実施の形態1に係る右側の上筐体支持面部材70及び上筐体支持面部材70に取り付けられた導風部材27の斜視図である。
コイル載置面中央部71aには、コイル載置面中央部71aに配置される高透磁率磁性体19(図12参照)の底面に冷却風を当てるための磁性体冷却穴76が設けられている。右冷却風路90から送られる冷却風は、磁性体冷却穴76から上筐体支持面部材70の上に吹き出され、流出口74に向かって流れる過程で高透磁率磁性体19の底面に接触し、高透磁率磁性体19の冷却効率を高めることができる。また、本実施の形態では、磁性体冷却穴76は、自身の上側に配置される高透磁率磁性体19と概ね同じ平面形状を有しており、高透磁率磁性体19の表面のより多くの領域に冷却風を送ることができる。
図12は、実施の形態1に係る右側の上筐体支持面部材70並びに上筐体支持面部材70に保持される導風部材27及び高透磁率磁性体19の斜視図である。
右側の上筐体支持面部材70の上にも、複数の高透磁率磁性体19が設置される。ここで、図12では、高透磁率磁性体19の符号を、19aと19bとに区別して示している。本体筐体1がキッチンキャビネット200に設置された状態において、上面視したときに天板開口部203と重なる部分に配置されるもの、つまりコイル載置面中央部71aの上に配置されるものを「19a」で示し、キッチン天板201と重なる部分に大部分が配置されるもの、つまりコイル載置面側部71bに大部分が配置されるものを「19b」で示している。
高透磁率磁性体19a、19bの上には、誘導加熱コイル13を構成する巻線31が配置されるが、高透磁率磁性体19aの方が高透磁率磁性体19bよりも一つ当たりの平面積が小さく、また、隣り合う高透磁率磁性体19aの隙間が大きい。このため、巻線31の下方のカバー率(上面視において巻線31に対して高透磁率磁性体が重なる面積の割合)は、高透磁率磁性体19aが配置される領域の方が、高透磁率磁性体19bが配置される領域よりも小さい。このようにすることで、誘導加熱コイル13を構成する巻線31の下面及び高透磁率磁性体19aの表面が、空気に露出する面積を増やし、巻線31及び高透磁率磁性体19aの冷却効率を高めている。
また、高透磁率磁性体19a、19bの高さ方向の寸法は、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられたときにキッチン天板201と重なる部分に配置される高透磁率磁性体19bの方が、高透磁率磁性体19aよりも小さい。このようにすることで、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられたときに上筐体3がキッチン天板201の上に突出する高さを抑制し、使用者の調理の作業性を高めている。
また、すべての高透磁率磁性体19bを合わせた外形は、その上に載置される巻線31の外形よりも大きく、概ね巻線31の下方全体に高透磁率磁性体19bが配置される。また、各高透磁率磁性体19bの外形線の少なくとも一つ以上は、誘導加熱コイル13を形成する巻線31の径方向外側から径方向内側へと横切っている。また、隣り合う高透磁率磁性体19bの隙間は、高透磁率磁性体19bの高さ寸法よりも小さい。
このようにすることで、隣り合う高透磁率磁性体19bの隙間からの上筐体支持面部材70への高周波磁束の到達を抑制して、上筐体支持面部材70の温度上昇を抑えることができる。また、隣り合う高透磁率磁性体19bの隙間の空気と高透磁率磁性体19bとが接触することで、高透磁率磁性体19bの冷却効果を高めることができる。
図13は、実施の形態1に係る右側の上筐体支持面部材70並びに上筐体支持面部材70に保持される導風部材27及びコイルベース17の斜視図である。
コイルベース17の下面には、図12で示したように配置される高透磁率磁性体19a、19bを保持する溝が形成されており、その溝の中に高透磁率磁性体19a、19bが嵌め込まれる。コイルベース17の下面に嵌め込まれた高透磁率磁性体19a、19bの上面のほぼすべては、コイルベース17で覆われる。
より詳しくは、コイル載置面中央部71aに配置される複数の高透磁率磁性体19a(図12参照)は、それぞれが個別に、コイルベース17の下面に設けられた保持部(図示せず)に保持される。このコイルベース17に設けられた高透磁率磁性体19aを保持する保持部(図示せず)は、例えば、円板状のコイルベース17の中心から放射状に延びる一対の壁面を有しており、一対の壁面間に形成される下方に向かって開放された溝の中に、高透磁率磁性体19aが嵌め込まれる。また、コイルベース17の下面には、放射状に配置される高透磁率磁性体19aの保持部の外周端同士を結ぶようにして、弧状の壁面が下方に向かって立設されている。このような壁面を設けることで、流入口73から上筐体支持面部材70の上に流入した冷却風が、コイルベース17の上面に配置される巻線31に効率よく接触するように導くことができる。
また、コイル載置面側部71bの上に配置される複数の高透磁率磁性体19bは、コイルベース17の下面に、まとめて保持される。また、隣り合う高透磁率磁性体19bの隙間の上方に位置するコイルベース17の上面には、隙間部上面開口17aが形成されている。隙間部上面開口17aは、コイルベース17の上下を連通させる開口部である。コイル載置面中央部71aに形成された支持面流入口75a、75bから、コイルベース17の下方の空隙に冷却風が流入し、コイルベース17に保持された隣り合う高透磁率磁性体19bの隙間を冷却風が流れる。この冷却風が流れる過程で、高透磁率磁性体19bが冷却され、その後冷却風は、コイルベース17に形成された隙間部上面開口17aから上方に噴出して、巻線31の底面を冷却する。
コイルベース17の上面には、誘導加熱コイル13の巻線31を保持する巻線支持部17bが設けられている。巻線支持部17bは、コイルベース17の上面から突出する高さを有しており、本実施の形態では、コイルベース17の中心から放射状に延びる突条部で構成されている。コイルベース17の上面から突出した巻線支持部17bの上に巻線31が保持されることで、コイルベース17の上面と巻線31の下面との間に、通風可能な空間が形成される。これにより、コイルベース17に形成された隙間部上面開口17aから噴出した冷却風が、巻線31の底面と接触してこれを冷却しながら、上筐体支持面部材70に形成された流出口74に向かう流れを形成することができる。
図14は、実施の形態1に係る誘導加熱調理機器の誘導加熱コイル13を通る要部断面図である。この図14は、誘導加熱コイル13を通る前後方向の断面であって、誘導加熱調理器の後部を中心に示している。また、図14には、冷却風の流れを矢印で概念的に示している。図14を参照して、右側の誘導加熱コイル13の近傍を流れる冷却風の経路を説明する。
冷却ファン25から送出され基板ケースユニット24の後側排気口24cから吹き出された冷却風は、右冷却風路流入口91から右冷却風路90内に入り、コイル載置面中央部71aに形成された支持面流入口75aから上へと吹き出て、高透磁率磁性体19aの底面を冷却する。高透磁率磁性体19aを冷却した冷却風の一部は、高透磁率磁性体19aの上方に配置された中央寄りの巻線31を冷却する。冷却風の他の一部は、右側に流れてコイルベース17内の空隙を通りつつ高透磁率磁性体19b(図示せず)を冷却し、コイルベース17の上面に形成された隙間部上面開口17aから上方に吹き出て、巻線支持部17bの上の巻線31の底面を冷却する。
上筐体支持面部材70の誘導加熱コイル13下方はキッチン天板201と隙間をあけて配置されており、上筐体支持面部材70がキッチン天板201に接触しないことで、誘導加熱コイル13、高透磁率磁性体19b、上筐体支持面部材70の発熱が直にキッチン天板201に熱伝導せず伝熱を抑制することでキッチン天板201の温度上昇を抑制して安全性とキッチン天板201の熱による劣化を抑制している。誘導加熱コイル13下方以外の領域においても上筐体支持面部材70とキッチン天板201との間に隙間があいている、又は、上筐体フランジ部51及びシール材32が間に挿入されており、直接キッチン天板201と接触しないことで更に伝熱を抑制して安全性とキッチン天板201の劣化を高めている。また、図18に示すように上筐体支持面部材60においても上筐体支持面部材70同様に直接キッチン天板201と接触しない構造であり同様の効果が得られる。
図15は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の本体筐体1から通気口カバー8を外してトッププレート7を透視した上面図である。図15に示す矢印は、冷却風の流れを概念的に示したものである。
図15に示すように、冷却風路80の一部は、誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの下側を覆っている。誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの下側に配置された冷却風路80の上面には、複数のコイル下吹出口84が開口している。
基板ケースユニット24の前側排気口24b(図示せず)から出て冷却風路流入口81から冷却風路80底面に流入した冷却風は、一部が右側に流れ、残りの一部が左側に流れる。
冷却風路80内を右側に流れた冷却風は、右吹出口83及び右側の上筐体支持面部材70の流入口73を介して、上筐体3の上方の空間に流入する。上筐体3の右側の上方の空間(上筐体支持面部材70の上方の空間)に流入した冷却風は、誘導加熱コイル13を冷却し、その後、流出口74から上筐体支持面部材70の外へ流出する。上筐体支持面部材70の外へ出た冷却風は、本体筐体1の左寄りに配置された排気風路26に向かって流れ、その過程で誘導加熱コイル12の近傍を通ってこれを冷却し、排気風路26を経て筐体排気口10より本体筐体1の外へ排気される。
冷却風路80内を左側に流れた冷却風は、下筐体2に保持される4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの下方に至る風路と、左側の上筐体支持面部材60の流入口63に接続される左吹出口82に至る風路とに分岐する。
冷却風路80内において、下筐体2に保持される4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの下方に至る風路に流れた冷却風は、冷却風路80の上面に形成された複数のコイル下吹出口84から上方に噴き出され、4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの巻線31や高透磁率磁性体18を冷却し、その後、排気風路26を経て筐体排気口10より本体筐体1の外へ排気される。
冷却風路80内において、左側の上筐体支持面部材60の流入口63に接続される左吹出口82に至る風路に流れた冷却風は、左側の左吹出口82及び流入口63を経て、上筐体3の上方の左側の空間(上筐体支持面部材60の上方の空間)に流入して後方に向かって流れる。この冷却風は、左端の誘導加熱コイル11aに接触してこれを冷却した後、流出口64から上筐体支持面部材60の外へ出る。上筐体支持面部材60の外へ出た冷却風は、下筐体2に支持される4つの誘導加熱コイル11b、11c、11d、11eの中央及び上端付近の巻線31に接触してこれらを冷却した後、排気風路26を経て筐体排気口10より本体筐体1の外へ排気される。このように、上筐体3には、上筐体支持面部材60に載置された誘導加熱コイル11aを冷却した冷却風が、下筐体2に配置された誘導加熱コイル11b〜11dに向かって流れる風路が形成されている。
また、後側排気口24cからの冷却風は、上筐体支持面部材のコイル載置面中央部71aに形成された支持面流入口75bや、支持面流入口75a(図15には図示せず)を通って上方に吹き出される。上方に吹き出された冷却風は、誘導加熱コイル13のうち下筐体2の上方に配置された部分に接触してこれらを冷却した後、相対的に圧力の低い上筐体支持面部材70の流出口74に向かって流れ、この過程において誘導加熱コイル13のうちコイル載置面側部71bの上に配置された部分に接触してこれらを冷却する。その後冷却風は、流出口74を通って、上筐体支持面部材70の上方空間から下筐体2へ流出する。このように、上筐体3の上筐体支持面部材70の上方の空間には、下筐体2の上方に配置された誘導加熱コイル13の一部を冷却した冷却風が、上筐体支持面部材70の上に載置された誘導加熱コイル13の一部に向かって流れる風路が形成されている。
図16は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の本体筐体1の冷却風路80部分の断面を下から見た図である。この図16では、誘導加熱調理器の冷却風路80における断面を下から見た図を示している。
角枠状の上筐体枠50の外周の下端部には、この下端部から内側に向かって略水平に延びる上筐体フランジ部51が設けられている。上筐体フランジ部51の下面には、上筐体フランジ部51の形状に沿ってシール材32が貼り付けられている。シール材32は、ゴム素材や発泡体などの弾性とシール性を備えたものが用いられる。誘導加熱調理器の本体筐体1をキッチンキャビネット200に組み付けると、キッチン天板201の上面にシール材32が当接し、キッチン天板201との間の水密性及び気密性を高めている(図14参照)。このようにすることで、上筐体3とキッチン天板201の間への異物の侵入を抑制することができる。
また、中央の誘導加熱コイル12を支持するコイルベース16の下面には、フェライト等の高透磁率磁性体20が放射状に配置されている。
次に、右側の上筐体支持面部材70と上筐体枠50との組み立てに係る構成を説明する。図17は、実施の形態1に係る上筐体3の下面の斜視図である。図17(A)は、上筐体枠50と上筐体支持面部材70とが分解された状態を示している。図17(A)に示すように、上筐体フランジ部51の対向する前後の辺には、それぞれ、上筐体フランジ切欠部54が形成されている。この上筐体フランジ切欠部54の左右方向の幅を、切欠幅Aと称する。上筐体フランジ切欠部54は、上筐体フランジ部51の前後方向に対向する端部同士の距離を広げるようにして、上筐体フランジ部51の縁の一部を切り欠いて形成されており、前後方向に対向する上筐体フランジ切欠部54の端部同士の距離を、切欠間距離Bと称する。上筐体支持面部材70の左右方向の幅を底面幅C、前後方向の長さを底面長さDとすると、切欠幅Aは底面幅Cよりも大きく、かつ、切欠間距離Bは底面長さDよりも大きい。したがって、上筐体フランジ切欠部54に、上筐体支持面部材70の前後の端部が挿入される。
上筐体支持面部材70を上筐体枠50に組み付ける際には、図17(B)に示すように上筐体支持面部材70の前後方向の端部を、上筐体フランジ切欠部54に下から上(図17の紙面上から下)へ挿入する。続けて、図17(C)に示すように、上筐体支持面部材70を、上筐体枠50の右側に向かって移動させる。このとき、上筐体支持面部材70の前後方向の端部は、上筐体フランジ部51の上側に形成されている凹部52(図5及び後述する図18参照)に嵌り込み、この凹部52内を移動する。上筐体支持面部材70を上筐体枠50の左端まで移動させると、上筐体フランジ部51の左側の辺(図17では右側の辺)及びこれに連なる前後の辺の上に載置される。このように、上筐体支持面部材70は、上筐体枠50の上筐体フランジ部51の上に、着脱自在に係合される。
続けて、上筐体枠50の上筐体フランジ部51の上に上筐体支持面部材70の外周部が乗せられた状態で、上筐体支持面部材70の上筐体支持面締結部77と、上筐体フランジ部51の縁に形成された右支持面取付穴57との位置を合わせ、下側(図17の紙面上側)から締結部材40をこれらに挿入し、締結部材40の先端部分を上筐体支持面締結部77に締結する。そうすると、締結部材40と上筐体支持面締結部77との間に、上筐体フランジ部51の右支持面取付穴57が挟み込まれ、上筐体支持面部材70が上筐体枠50に固定される。なお、本実施の形態においては、前及び奥においてはそれぞれ1カ所、左側(図17の紙面右側)は二カ所で上筐体フランジ部51に対して上筐体支持面部材70が固定されているが、適切な取り付け強度を得ることができれば締結位置及び数はこれに限定されない。
次に、右側の上筐体支持面部材60と上筐体枠50との組み立てに係る構成を説明する。図18は、図15のA−A断面矢視図である。図18(A)は、図15のA−A断面全体を示し、図18(B)、(C)は、それぞれ(A)のX1部、X2部の拡大図である。
図18(B)に示すように、上筐体枠50の上筐体フランジ部51の上側には、凹部52が形成されている。上筐体支持面部材60を上筐体枠50に取り付ける際には、まず、この凹部52内に、右側の上筐体支持面部材60の前部を嵌め込む。
続けて、図18(C)に示すように、上筐体支持面部材60の後部を上筐体枠50の下に重ね、上筐体支持面締結部66と左支持面取付穴56との位置を合わせる。そして、上筐体枠50の上側から、左支持面取付穴56及び上筐体支持面締結部66に締結部材40を挿入し、締結部材40の先端を上筐体支持面締結部66に締結する。このようにすることで、上筐体枠50の後部に上筐体支持面部材60の後部が固定される。締結部材40を上筐体枠50の上面から着脱することができるので、右側の上筐体支持面部材70の取り付け方式に比べ、組立性及びメンテナンス性が向上している。なお、図18では通気口カバー8が図示されているが、上筐体支持面部材60を上筐体枠50に組み付ける際には、この通気口カバー8は取り外された状態である。
次に誘導加熱調理器の動作について説明する。
使用者が操作部5に対して加熱動作の指示の操作を行うと、基板ケースユニット24内の電子回路基板に実装される制御手段により駆動手段が制御される。誘導加熱コイル11、12、13が駆動されて高周波電流が流れると、誘導加熱コイル11、12、13から高周波磁界が発生し、誘導加熱コイル11、12、13の概ね上方のトッププレート7上に載置された被加熱物(図示せず)に渦電流が生じ、被加熱物自体が発熱して加熱調理が行われる。このとき、コイルベース14、15、16、17に保持される高透磁率磁性体18、19、20の作用により、磁力線は上方の被加熱物へ集中し、これによって加熱効率を高めている。
誘導加熱コイル11、12、13を駆動することにより、電子回路基板に実装される電子部品は自己発熱して温度上昇する。また、誘導加熱コイル11、12、13の巻線31も自己発熱して温度が上昇する。電子回路基板及び誘導加熱コイル11、12、13の機能を維持するには、これらの温度上昇を所定の温度範囲内に抑える必要がある。このため、制御手段は、各所に設けられた温度検知手段(図示せず)から出力される情報に基づいて、冷却ファン25を駆動制御する。冷却ファン25が動作することで、冷却風の送風が行われる。
冷却風は、本体筐体1の外部より、通気口カバー8及び筐体吸気口9を通過して本体筐体1内へ吸い込まれる。筐体吸気口9には基板ケースユニット24の吸気口24aが接続されており、筐体吸気口9から吸い込まれた冷却風は、吸気口24aから基板ケースユニット24へ流入する。基板ケースユニット24内に流入した冷却風は、冷却ファン25に吸引、送出され、基板ケースユニット24内の電子回路基板の部品を冷却した後、前側排気口24b、後側排気口24cを通って基板ケースユニット24の外へと流出する。後側排気口24cには右冷却風路90が接続されるとともに前側排気口24bには冷却風路80が接続されており、これまでに説明したとおり冷却風は各誘導加熱コイル11、13の巻線31と高透磁率磁性体18、19とを冷却した後、排気風路26を経て筐体排気口10より本体筐体1外へ排気される。
以上のように本実施の形態の誘導加熱調理器は、キッチンキャビネット200の上面に配置されたキッチン天板201の天板開口部203からキッチンキャビネット200の格納部202に落とし込んで組み付けられるビルトイン型の誘導加熱調理器である。そしてこの誘導加熱調理器の本体筐体1は、上面を開口しキッチンキャビネット200の格納部202内に挿入される下筐体2と、下筐体2よりも大きな幅を有するとともに下筐体2の上に取り付けられ、キッチン天板201の上に載置される上筐体3とを備える。そして、上筐体3の支持面を構成する上筐体支持面部材60、70の上に、誘導加熱コイル11、13の少なくとも一部が載置され、誘導加熱調理器がキッチンキャビネット200に組み付けられた状態において、誘導加熱コイル11、13の少なくとも一部が、上面視においてキッチン天板201と重なる。
このように、キッチンキャビネット200の天板開口部203に収容される下筐体2よりも幅の広い上筐体3内に、誘導加熱コイル11、13の一部を配置したので、加熱口6同士の間隔を確保することができる。
したがって、加熱口6の上に載置される被加熱物(調理容器)の載置や移動を容易に行うことができるとともに、例えばフライパンなどの被加熱物を振りながら加熱を行う鍋振りなどの調理動作を、他の加熱口6に載置される調理容器への接触を配慮せずとも容易に行うことができる。
また、トッププレート7に、加熱口6が配置されない領域を多く設けることができ、使用者はその領域を、加熱調理以外の調理作業(例えば、調理容器から皿やお椀等の食器への盛り付け作業等)の場所として使用することもできる。したがって、調理の作業性及び作業環境を良好にする効果が得られる。
また、隣接する加熱口6に配置された誘導加熱コイル11、12、13を同時に駆動した場合、電力の波長の差分の周波数で被加熱物である鍋等から干渉音が発生するが、加熱口6同士の間の距離を離すことができるので、そのような干渉音を低減できる効果がある。
また、キッチンキャビネット200の天板開口部203に収容される下筐体2よりも面積の広い上筐体3を下筐体2の上に設け、この上筐体3で誘導加熱コイル11、13の収容部の一部を構成したので、天板開口部203の大きさの制約を受けることなく、誘導加熱コイル11、12、13を配置することができる。このように誘導加熱コイル11、12、13の配置の制約が軽減されるので、各加熱口6に設けられる誘導加熱コイルそれぞれの配置及び構成の自由度も高まる。
例えば本実施の形態では、左側の加熱口6aの加熱手段を、中心を異ならせて配置された複数の誘導加熱コイル11で構成した。複数の誘導加熱コイル11を、中心位置を異ならせて複数配置した場合、加熱口6aは比較的大きくなるが、上述のように誘導加熱コイル11の配置スペースを確保できるとともに、鍋の形状及び大きさに応じて各誘導加熱コイル11を適切に組み合わせて加熱調理を行うことができるので、高機能な誘導加熱調理器を得る効果がある。
また、本実施の形態では、上筐体3の支持面の一部を構成する上筐体支持面部材60、70の上に、誘導加熱コイル11、13の一部を配置し、上筐体3全体で誘導加熱コイル11、13を保持するようにした。このため、例えば下筐体の上部周縁に形成したフランジの上に誘導加熱コイルを載置するような構成よりも、高い強度が得られ、誘導加熱調理器の製造、輸送、及び据付工事の過程における損傷のリスクが軽減され、品質及び信頼性の高い誘導加熱調理器を得ることができる。
また、下筐体2から取り外すことのできる上筐体3の上筐体支持面部材60、70に、誘導加熱コイル11、13を配置したことにより、誘導加熱コイル11、13の組立性及びメンテナンス性が向上し、組立コスト及び保守サービスコストの低い誘導加熱調理器を得る効果がある。
また、上筐体3の上筐体支持面部材60、70に誘導加熱コイル11、13を配置したことにより、上筐体3内の誘導加熱コイル11、13が配置される空間の気密が高まるとともに、この空間には冷却ファン25から送られる冷却風の冷却風路が形成され、自己発熱部品である誘導加熱コイル11、13の巻線31や高透磁率磁性体18、19の冷却が効率的に行える。このため、キッチン天板201の加熱による劣化を抑制できる。また、巻線31の温度を低くできるので、巻線31の絶縁の劣化による損傷を抑制でき、品質及び信頼性の高い誘導加熱調理器を得る効果がある。
上筐体支持面部材60、70はキッチン天板201に載置されないことから、誘導加熱コイル11a、13の動作による発熱が直接キッチン天板に伝熱しないことから、キッチン天板201の温度上昇が抑制され、安全性が高くキッチンキャビネットに不用なダメージを与えない加熱調理器とすることができる。
上筐体枠50と上筐体支持面部材60、70で構成される誘導加熱コイル11、13の配置空間に、冷却風を流入させる複数の流入口(実施の形態1では流入口63、流入口73、支持面流入口75、磁性体冷却穴76)を設けるとともに、冷却風の流出口(実施の形態1では流出口64、流出口74)を設けた。そして、送風手段である冷却ファン25により、基板ケースユニット24の前側排気口24b、後側排気口24cと、排気風路26との間に圧力差を発生させた。これにより、前記流入口と流出口との間に圧力差が生じ、誘導加熱コイル11、12、13の配置空間に圧力の高い側から低い側へ流れる気流が形成され、誘導加熱コイル11、12、13の巻線31や高透磁率磁性体18、19、20の冷却効率を高める効果が得られる。したがって、キッチン天板201や巻線31の温度を低くでき、品質に優れた安全性の高い加熱調理器を得る効果がある。
送風機である冷却ファン25からの冷却風を誘導加熱コイル11、12、13に導く風路である冷却風路80を備え、上筐体3の上筐体支持面部材60、70の上に形成される誘導加熱コイル11、13の配置空間の流入口(流入口63、流入口73)に、冷却風路80の吹出口(左吹出口82、右吹出口83)を接続した。すなわち冷却ファン25の送出側と、上筐体3に形成された通風口の一部である流入口63、73とが、冷却風路80で接続されている。このため、誘導加熱コイル11、13が配置された空間に冷却風を直接送ることができ、巻線31や高透磁率磁性体18、19の冷却効率を高める効果が得られる。したがって、冷却ファン25のファンの回転数を低下させるなどして、送風機の出力を低減することができるとともに、冷却ファン25の騒音を低減して低騒音の誘導加熱調理器を得ることができる。
右側の上筐体支持面部材70は外周部の少なくとも一部に側壁72を備えるとともに、この側壁72と、側壁72に対向する誘導加熱コイル13の側面との間に、導風部材27を設けた。そして、この導風部材27の誘導加熱コイル13と対向する面の一部は、上筐体支持面部材70の流入側から流出側に向かって、誘導加熱コイル13の側面に近づいており、流入口73の近傍から流入した冷却風を誘導加熱コイル13の外周近傍に導く。このため、流入口73から流入した冷却風は、流出口74に向かう過程で、導風部材27に導かれ、誘導加熱コイル13の左端側の外周部を迂回することなく誘導加熱コイル13上を通過する。したがって、誘導加熱コイル13の冷却効率を高める効果が得られ、無駄な冷却ファン25の送風を減らすことができるので、冷却ファン25の騒音を低減でき、低騒音の誘導加熱調理器を得ることができる。
左側の上筐体支持面部材60は、この上筐体支持面部材60の上に載置される誘導加熱コイル11aの側面と対向する左側の側壁62を備える。そして、この左側の側壁62と誘導加熱コイル11aとは、両者が対向する方向における誘導加熱コイル11aの端部、すなわち左側の端部において、最も近づいている。このように左側の側壁62は、誘導加熱コイル11aの左端近傍に位置しているので、流入口63から流入した冷却風は、流出口64に向かう過程で、左端側の側壁62に導かれ、誘導加熱コイル11a上を通過する。したがって、誘導加熱コイル11aの冷却効率を高める効果が得られ、無駄な冷却ファン25の送風を減らすことができるので、冷却ファン25の騒音を低減でき、低騒音の誘導加熱調理器を得ることができる。
本体筐体1が格納部202に格納された状態において上面視で天板開口部203と重なる部分である、右側の上筐体支持面部材70のコイル載置面中央部71aに、通風可能な複数の支持面流入口75(本発明の第三支持面開口)を設け、この複数の支持面流入口75を内包する大きさの右冷却風路吹出口92を有する右冷却風路90を支持面流入口75の下方に設けた。そして、上筐体支持面部材70と右冷却風路90とを接続した。このため、上筐体支持面部材70と右冷却風路90とでチャンバが形成され、支持面流入口75から噴流が噴出され、上方に配置された誘導加熱コイル13を衝突噴流熱伝達で冷却することができる。したがって、誘導加熱コイル13の冷却効率が高まり、上筐体枠50と上筐体支持面部材70とで形成される上筐体3の空間に、上面視で一部がキッチン天板201と重なるように誘導加熱コイル13を配置しても、誘導加熱コイル13の巻線31は十分に冷却され、巻線31の温度を低くすることができて品質に優れた安全性の高い加熱調理器を得る効果がある。また、上筐体支持面部材70と右冷却風路90とを接続したことから、上筐体支持面部材70は右冷却風路90で支持され、上筐体支持面部材70の強度が構造的に増す。このため、誘導加熱調理器の輸送及び据付作業の際に、上筐体支持面部材70の変形及び損傷が抑制され、品質を高める効果がある。
誘導加熱コイル13の巻線31の下方に配置され、巻線31から発生する高周波磁界を集束させる複数の高透磁率磁性体19と、巻線31及び高透磁率磁性体19を保持するコイルベース17とを備えた。そして、上面視において高透磁率磁性体19が巻線31をカバーする割合を示す下方カバー率は、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み込まれたときに天板開口部203と重なる領域(高透磁率磁性体19a)では、キッチン天板201と重なる領域(高透磁率磁性体19b)に比べて低い。このように天板開口部203と重なる領域に配置される巻線31の下面の一部が空気に露出するようするとともに、高透磁率磁性体19同士の間隔を広くすることで、冷却風への巻線31及び高透磁率磁性体19の接触が増える。このため、巻線31及び高透磁率磁性体19の冷却効率が高まるとともに、通風の障害が軽減されて圧力損失を少なくできる。したがって、冷却ファン25の送風を減らすことができるので、冷却ファン25の騒音を低減でき、低騒音化できる。また、上筐体枠50と上筐体支持面部材70とで形成される上筐体3に、上面視でキッチン天板201と重なるようにして誘導加熱コイル13を配置しても、十分に冷却され誘導加熱コイル13の巻線31の温度を低くすることができ品質に優れた安全性の高い加熱調理器を得る効果がある。
高透磁率磁性体19の高さ方向寸法は、上面視においてキッチン天板201と重なる部分に配置されるもの(高透磁率磁性体19b)は、天板開口部203と重なる部分に配置されるもの(高透磁率磁性体19a)に比べて小さくした。このため、上筐体3の高さ寸法を小さくでき、キッチン天板201からの上筐体3の突出寸法が小さくなる。したがって、被加熱物のトッププレート7の上への載置に伴う上下方向の移動距離を小さくでき、調理の作業性が良好な加熱調理器を得る効果がある。
上面視においてキッチン天板201と重なる部分に配置される高透磁率磁性体18、19bの外形は、巻線31の外形よりも大きく、巻線31の概ね下方全体に配置される。また、複数の高透磁率磁性体18、19が巻線31の下方に並べて配置されており、各高透磁率磁性体18、19の外形線の少なくとも一つは、巻線31の径方向外側から径方向内側へ横切っている。また、隣り合う高透磁率磁性体18、19の隙間は、高透磁率磁性体18、19の高さ寸法よりも小さくした。このため、高周波磁束を巻線31の内側と外側の上方に向け、被加熱物の加熱効率を高めるとともに、下方への磁束の到達の抑制効果を高め、上筐体支持面部材60、70やキッチン天板201の加熱を抑制して安全性を高める効果がある。また、高透磁率磁性体18、19同士の間に隙間を設けることで、高透磁率磁性体18、19の表面積を増やし、空気との接触を増やして熱伝達を高め冷却効率を高めることができる。隣り合う高透磁率磁性体18、19の隙間を適切に調整することで、高周波磁束の上筐体支持面部材60、70への到達を抑制して、上筐体支持面部材60、70の温度上昇及びキッチン天板201の加熱を抑制し、安全性を高める効果がある。
コイルベース14の高透磁率磁性体18を保持する保持壁14gに、隙間部側面開口14a、側面開口14bを設けた。高透磁率磁性体18間の隙間と対向する位置に隙間部側面開口14aを設けることで、この隙間部側面開口14aを介して高透磁率磁性体18間の隙間と上筐体3の上方空間との通風が行え、上筐体支持面部材60の流入口63側の圧力の高い隙間から、流出口64側の圧力の低い隙間に向けて冷却風が流れるので、高透磁率磁性体18の隙間構成面の冷却効率を高めることができる。また、高透磁率磁性体18の側面に対向する位置に側面開口14bを設けたことで、側面開口14bから高透磁率磁性体18の外周側面が上筐体3の上方空間に露出するので、上筐体3内を流入口63から流出口64へ流れる冷却風で、高透磁率磁性体18の外周側面を冷却して冷却効率を高める効果がある。
コイルベース17の上面に巻線支持部17bを設け、コイルベース17の上面には、高透磁率磁性体19間の隙間の直上に、開口部である隙間部上面開口17aを設けた。これにより、隣り合う高透磁率磁性体19の隙間に露出する面及び巻線31の下面の冷却効率を高める効果がある。
本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられた状態において、上面視にて天板開口部203と重なる上筐体支持面部材60、70の領域に配置される高透磁率磁性体18、19の下方の、上筐体支持面部材60、70に、それぞれ磁性体冷却穴67d、磁性体冷却穴76を設けた。このため、高透磁率磁性体18、19の底面を、冷却風で直接的に冷却できるので、冷却効率を向上させる効果がある。
上筐体支持面部材60、70を非磁性体の金属板で形成したことにより、上筐体支持面部材60、70と誘導加熱コイル11、13との間に防磁手段として非磁性体の金属板を挿入する必要がなくなった。このため、上筐体3の高さ寸法を低くできるとともに、部品点数が減り部品コスト及び組立コストを低減できる。また、上筐体支持面部材60、70を構成するアルミ等の非磁性体の金属板は、熱伝導率が高いので、それらの上に載置される高透磁率磁性体18、19の熱を拡散して冷却することができ、冷却効率を高める効果が得られる。
上筐体支持面部材60、70を非磁性体の金属板で構成し、コイル載置面61、71の外周に側壁62、72を設けたことにより、巻線31から側面方向へ高周波磁束の漏れを防いで安全性の高い誘導加熱調理器とする効果がある。
本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられたときに上面視においてキッチン天板201と重なる上筐体支持面部材60、70の上に、少なくとも一部が配置される誘導加熱コイル11a、13の巻線31は、素線径がφ0.2mm以下の素線で形成した。これにより、上筐体3の高さ寸法を小さくできて上筐体3が天板開口部203の上から突出する高さを低くすることができるので、調理の作業性を高めることができる。また、巻線31の材料使用量を減らせることから、誘導加熱調理器の製造コストを低減する効果がある。
上筐体3の上筐体枠50の対向する辺には、上筐体支持面部材70の縁を係止する上筐体フランジ部51を設け、この上筐体フランジ部51に隣接して上筐体支持面部材70の縁が挿入される上筐体フランジ切欠部54を設けた。そして、上筐体フランジ切欠部54に挿入された上筐体支持面部材70を上筐体フランジ部51の方へスライドさせると、上筐体枠50の上筐体フランジ部51に上筐体支持面部材70が係合されるようにした。上筐体支持面部材70を移動させることで容易に上筐体枠50に対して着脱できるので、誘導加熱調理器の組立性及びメンテナンス性を高める効果がある。本実施の形態では、上筐体枠50の対向する二辺とそれらに連なる一辺に上筐体フランジ部51を設け、三辺の上筐体フランジ部51で上筐体支持面部材70を支持するようにしたので、上筐体支持面部材70の取り付け強度を高めることができ、組立、輸送、及び据付における誘導加熱調理器の損傷が軽減され、品質の高い誘導加熱調理器とすることができる効果がある。
左側の上筐体支持面部材60は、その前側の端部(第一の端部)については上筐体フランジ部51の上に形成される凹部52に挿入される。また、上筐体支持面部材60の後側の端部(第二の端部)には、ネジ等の締結部材40の先端を係止する上筐体支持面締結部66を設けるとともに、上筐体3の上筐体枠50に左支持面取付穴56を形成し、左支持面取付穴56及び上筐体支持面締結部66に上から挿入された締結部材40の先端を、上筐体支持面締結部66にて係止するようにした。このようにして、上筐体支持面部材60の前側の端部と後側の端部が、それぞれ上筐体枠50に取り付けられる。上筐体3の上側から締結部材40を着脱できるので、誘導加熱調理器の組立性を高めて製造コストを低減できるとともに、メンテナンス性を高めて品質コストを低減する効果がある。
上筐体3の上筐体枠50に上筐体フランジ部51を設けて上筐体フランジ部51の上に凹部52を形成するとともに、凹部52に挿入される下筐体係止部33を下筐体2に設け、下筐体係止部33を凹部52に挿入することで、下筐体2の前部と上筐体3の前部とが係合されるようにした。また、上筐体3の上筐体枠50の後部に上筐体取付穴55を設けるとともに、下筐体2に下筐体締結部34を設け、上筐体枠50の上側から上筐体取付穴55及び下筐体締結部34に挿入される締結部材40の先端を、下筐体締結部34に係止させるようにした。また、上筐体3に配置される誘導加熱コイル11、13の巻線31の接続線31aを接続する端子台28を、下筐体2の下筐体締結部34よりも下筐体係止部33に近い位置に設けた。
このため、誘導加熱調理器の組立及びメンテナンス作業の際には、前端(下筐体係止部33が挿入された凹部52)を軸として上筐体3を回転させることで、下筐体係止部33が上筐体3の凹部52に着脱される。したがって、端子台28を下筐体係止部33寄りに配置したため、その着脱動作に伴う巻線31の配線部分の長さを短くでき、駆動電力のロスを低減できるとともに配線の線材コストを低減できる。また、配線がたるんで他の部品に干渉することや組立の際に不必要な場所が挟まるなどの不具合を軽減でき、組立性及びメンテナンス性を高める効果がある。
上筐体3の上筐体支持面部材60、70の上に載置される誘導加熱コイル11a、13の巻線31の温度を検知する温度検知手段を設け、巻線31の温度が閾値以上となった場合、制御手段は上筐体3に配置された誘導加熱コイル11a、13の火力を低下させる制御を行うようにした。このため、巻線31の過度な昇温を抑制して巻線31の被覆が溶融する等の損傷を防止できる。また、上筐体支持面部材60、70の温度やその下方のキッチン天板201の温度上昇による劣化、及び使用者が接触した場合のリスクを軽減できる。また、上筐体3の誘導加熱コイル11a、13が配置される空間の冷却負荷が軽減され、冷却風の風量が少なくなることから風路断面を小さくすることができ、上筐体3の高さ寸法を小さくできることから、調理の作業性を高める効果がある。
一つの加熱口6に対応して設けられた誘導加熱コイルの一部を上筐体3に配置するとともに、残りの一部を下筐体2に配置するようにした。すなわち、上筐体3に配置された巻線31(誘導加熱コイル11a、誘導加熱コイル13の一部)と、下筐体2に配置された巻線31(誘導加熱コイル11b〜11e、誘導加熱コイル13の一部)とで、一つの加熱口6の加熱手段を構成した。
例えば下筐体2のみに誘導加熱コイルを配置した場合は、天板開口部203の寸法の制約を受けて下筐体2の寸法も制約され、加熱口6の大きさを下筐体2の寸法よりも大きくすることはできない。しかし本実施の形態によれば、上筐体3は天板開口部203の寸法の制約を受けずに大きくすることができるので、より大きな加熱口6を配置でき、これによって大きな調理容器を載置することができるので、高機能な誘導加熱調理器を得る効果がある。
また、複数の加熱口6を設ける場合にも、各加熱口6を大きくすることができるとともに加熱口6間の間隔を大きくできるので、調理の作業性を向上する効果がある。また、実施の形態1で示したように複数の誘導加熱コイル11で一つの加熱口6aの加熱手段を構成する場合には、加熱口6aが大きい方が、誘導加熱コイル11の実装及び冷却を容易にすることができるので、製造コストを低減できるとともに品質を高める効果がある。
上筐体3に配置された誘導加熱コイル11aと、下筐体2に配置された誘導加熱コイル11b〜11eで構成された加熱手段を有する左側の加熱口6aにおいて、上筐体3に配置された誘導加熱コイル11aは、下筐体2に配置された中央の誘導加熱コイル11eよりも最大火力を小さくした。このため、誘導加熱コイル11aの巻線31の被覆が溶融する等の損傷を抑制することができるとともに、上筐体支持面部材60やその下方に配置されるキッチン天板201の、温度上昇による劣化及び使用者が接触した場合のリスクを軽減できる。また、上筐体3の誘導加熱コイル11が配置される空間の冷却負荷を軽減できるので、冷却風の風量を少なくすることができる。したがって、風路断面を小さくすることができ、上筐体3の高さ寸法を小さくできることから、調理の作業性を高める効果がある。
一つの加熱口6aに載置される被加熱物を複数の誘導加熱コイル11a〜11eで加熱する際に、上筐体3に配置された誘導加熱コイル11aの巻線31の温度が閾値以上となった場合には、上筐体3に配置された誘導加熱コイル11aの火力を低下させるが、一緒に加熱を行う他の誘導加熱コイル11b〜11eのいずれか一つ以上の火力を高め、加熱口6aのトータルの火力は維持されるように制御を行う。このため、誘導加熱コイル11aの巻線31の被覆が溶融する等の損傷を防止できるとともに、上筐体支持面部材60やその下方のキッチン天板201の温度上昇による劣化及び使用者が接触した場合のリスクを軽減できる。また、上筐体3の誘導加熱コイル11aが配置される空間の冷却負荷を軽減することができるので、冷却風の風量を少なくすることができる。したがって、風路断面を小さくすることができ、上筐体3の高さ寸法を小さくできることから、調理の作業性を高める効果があるとともに、調理時間を延長することなく時短調理が行え、調理作業性を高める効果がある。
左側の上筐体支持面部材60に配置された誘導加熱コイル11aと、下筐体2に配置された複数(4つ)の誘導加熱コイル11b〜11eで一つの加熱口6aの加熱手段を構成するとともに、上筐体3に配置された左端の誘導加熱コイル11aを冷却した冷却風を、下筐体2に配置された誘導加熱コイル11b〜11eに導いてこれらを冷却するようにしたので、少ない冷却風で誘導加熱コイル11a〜11eの冷却が行える。このため、冷却ファン25の送風能力を低くすることができ、低騒音の誘導加熱調理器を得る効果がある。
実施の形態2.
図2、図6、図7、図19〜図30を用いて、実施の形態2を説明する。実施の形態1とは誘導加熱コイルの数と配置、及び冷却構造など一部の構造が異なり、以下では実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
図2は、実施の形態2の誘導加熱調理器の本体筐体1が据え付けられるキッチンキャビネット200の斜視図である。本実施の形態2の誘導加熱調理器の本体筐体1が据え付けられるキッチンキャビネット200は、実施の形態1と同様であり、また、据え付け状態の態様も実施の形態1で示した図1と同様である。
図6、図7に示す基板ケースユニット24は、実施の形態1と同様である。
図19は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の本体筐体1の斜視図である。本実施の形態2では、加熱口6a及び加熱口6cの大きさ、配置、及び形状が実施の形態1と異なるが、外観上のその他の構成は、実施の形態1と同様である。
図20は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の本体筐体1から通気口カバー8を外し、トッププレート7を透視した斜視図である。
筐体吸気口9及び筐体排気口10が設けられているのは、実施の形態1と同様である。
左側の加熱口6a(図19参照)の下方には、中心が略同一となるように配置された2つの誘導加熱コイル11a、11b(本実施の形態において誘導加熱コイル11と総称する場合がある)が配置され、これら2つの誘導加熱コイル11a、11bで一つの加熱口6aの加熱手段を構成している。本実施の形態では、外側の誘導加熱コイル11aは環状に形成され、内側の誘導加熱コイル11bは二重環状に形成されている。詳細は後述するが、外側の誘導加熱コイル11aは、左側の上筐体支持面部材60の上に配置され、内側の誘導加熱コイル11bは、下筐体2に配置されている。
2個の誘導加熱コイル11a、11bは、被加熱物である調理容器の大きさに応じて、いずれか又は両方が制御手段によって駆動される。調理容器が誘導加熱コイル11aの外形よりも概ね大きい場合には、外側に配置された誘導加熱コイル11aと内側に配置された誘導加熱コイル11bの両方で加熱を行い、調理容器が小さい場合には内側に配置された誘導加熱コイル11bのみで加熱を行う。また、外側と内側側の両方の誘導加熱コイル11で加熱を行う場合は、制御手段により内側と外側の火力を連続的に切り替えることで、調理容器内に対流を形成することができ、これにより、煮込み状態を均一に近づけて良好な調理効果を得ることができる。最大火力は、内側の誘導加熱コイル11bよりも外側の誘導加熱コイル11aの方が小さく、これによって外側の誘導加熱コイル11aの自己発熱を少なくし、誘導加熱コイル11aが配置される上筐体3の空間の冷却負荷を軽減している。内側と外側の誘導加熱コイル11の駆動周波数(巻線に流れる高周波電流の周波数)は、両者の差分が4kHz以上離れた周波数とすることで、干渉音を使用者が感知しにくい音域とすることができ、使用者の作業環境を良好にしている。
また、外側の誘導加熱コイル11aの巻線31には、温度検知手段(図示せず)が取り付けられており、制御手段は巻線31の温度が閾値以上となった場合、外側の誘導加熱コイル11aの火力を低下させる、又は加熱を停止させる。
このとき、外側の誘導加熱コイル11aの火力は低下するが、制御手段は、内側の誘導加熱コイル11bの火力を高め、外側の誘導加熱コイル11aと内側の誘導加熱コイル11bの合計の火力が維持されるように制御される。
中間の加熱口6b(図19参照)の下方の誘導加熱コイル12については、実施の形態1と同様である。
右側の加熱口6c(図19参照)の下方には、4つの誘導加熱コイル13a、13b、13c、13d(本実施の形態において誘導加熱コイル13と総称する場合がある)が設けられている。誘導加熱コイル13a〜13dは、巻線31を楕円形状に巻き回して構成され、自身の長手方向と本体筐体1の前後方向とが一致する向きで、互いに中心位置を異ならせて配置されている。これら複数の誘導加熱コイル13で、一つの加熱口6cに載置される被加熱物の加熱手段を構成している。右端の誘導加熱コイル13aは、上筐体支持面部材70の上に配置され、他の3つの誘導加熱コイル13b、13c、13dは下筐体2に配置されている。
4つの誘導加熱コイル13a〜13dは、被加熱物である調理容器の大きさ及び配置に応じて、いずれか一つ以上が制御手段によって駆動される。具体的には、上方に載置された調理容器と上面視で概ね重なる位置に配置された誘導加熱コイル13が駆動され、上方に調理容器が載置されていない誘導加熱コイル13は駆動されない。このように被加熱物の加熱に寄与する誘導加熱コイル13を選択的に駆動することで、不要な電力消費を抑制している。また、加熱口6cの範囲に載置された調理容器の下にある誘導加熱コイル13が駆動されるので、加熱口6cの範囲内に載置された調理容器であれば誘導加熱コイル13で加熱されない領域も生じず、加熱ムラが抑制されて良好な調理効果を得ることができる。
右端の誘導加熱コイル13aと他の3つの誘導加熱コイル13b〜13dの駆動周波数は、同一の駆動周波数となるように制御手段が制御する。このようにすることで、干渉音を生じることなく複数の誘導加熱コイル13を駆動することができる。
右端の誘導加熱コイル13aの巻線31には、上面視でキッチン天板201と重なる部分に、温度検知手段(図示せず)が取り付けられており、制御手段は、巻線31の温度が閾値以上となった場合、右端の誘導加熱コイル13aの火力を低下させる、又は、加熱を停止するように駆動手段を制御する。このとき、右端の誘導加熱コイル13aの火力は低下するが、制御手段は、同時に加熱する他の誘導加熱コイル13b、13c、13dのうちいずれか一つ以上の火力を増やし、加熱口6cの合計の火力は誘導加熱コイル13aの火力低下前と同一となるように制御する。このようにすることで、調理時間が延長されることを抑制している。
誘導加熱コイル11、12、13の手前側には、左側の誘導加熱コイル11と右側の誘導加熱コイル13の手前側とを結ぶようにして、上筐体3の幅方向に延びる冷却風路80が配置されている。冷却風路80の形状は実施の形態1とは異なるが、冷却風路80の左端に左吹出口82が設けられるとともに右端に右吹出口83が設けられ、また、後述する図21に示すように、冷却風路80の一部は左側の誘導加熱コイル11の下側にも配置される点は、実施の形態1と同様である。
左側の上筐体支持面部材60及び右側の上筐体支持面部材70は、実施の形態1とは具体的な形状は異なるが、誘導加熱コイル11と誘導加熱コイル13の少なくとも一部が載置されるという点は、実施の形態1と同様である。また、左側の上筐体支持面部材60には、誘導加熱コイル11の手前側に流入口63が形成され、右側の上筐体支持面部材70には、誘導加熱コイル13aの手前側に流入口73が形成されている。冷却風路80の左吹出口82は流入口63に概ね気密に接続され、右吹出口83は流入口73に概ね気密に接続される。左吹出口82と流入口63、及び右吹出口83と流入口73との隙間には、気密性のあるクッション材等を挟むことで、両者の気密性をより高めることができ、冷却風路80から送られる冷却風による誘導加熱コイル11、13の冷却効率を高めることができる。
下筐体2の内部でかつ左側の誘導加熱コイル11の後方には、排気風路26が設けられている。排気風路26は、筐体排気口10に連通する風路を形成しており、本体筐体1内の空気を本体筐体1の外へ排出する風路となっている。
図21は、実施の形態2に係る本体筐体1の上筐体3と下筐体2の分解斜視図である。
上筐体3の上筐体枠50と下筐体2との組立に係る構成は、実施の形態1と同様である。すなわち、上筐体3の上筐体枠50の前側の辺に上筐体フランジ部51が形成されており(図29参照)、図5に示したように下筐体2の前側に設けられた下筐体係止部33を上筐体フランジ部51の上の凹部52に挿入して係止するとともに、上筐体枠50の後部の上筐体取付穴55に上方から挿入された締結部材40の先端を、下筐体締結部34に締結することで、下筐体2と上筐体3とが組み立てられる。
上筐体支持面部材60、70は、上筐体3及びトッププレート7と隙間少なく概ね気密に取り付けられ、冷却風の出入り口となる開口部を除いては、一定の気密性を有する空間を自身の上方に形成しているという点は、実施の形態1と同様である。
右側の上筐体支持面部材70には、右側の加熱口6cの右端の誘導加熱コイル13aが載置されており、誘導加熱コイル13aの手間側に流入口73、誘導加熱コイル13aの後方に流出口74が設けられている。
右側の上筐体支持面部材70の右側の側壁72(誘導加熱コイル13aと対向する側壁72)は、流入口73側に対して流出口74側の方が誘導加熱コイル13aに近づくようにして奥行き方向に傾いており、上筐体支持面部材70の左右方向の幅は、流入口73から流出口74に向かうにしたがって狭くなっている。このため、流入口63から上筐体支持面部材70に流入した冷却風は、右側の側壁72に導かれて、誘導加熱コイル13aの奥側の左端近傍を通過し、冷却風は迂回することなく誘導加熱コイル13aのより広い範囲に接触して冷却することができる。
また、冷却風による冷却効果は、冷却風が最初に当たる端部の熱伝達係数は高く、冷却風が最初に当たる端部以降における熱伝達係数は前記端部と比べて低くなる。本実施の形態では、上筐体支持面部材70の右側の側壁72を、冷却風が誘導加熱コイル13aの奥側の左端近傍を通過するように傾斜させたので、左奥に向かう冷却風の流れを形成することができる。このため、巻線31の右側の前側端から後側端までを、冷却風が最初に当たる端部とすることができ、巻線31の冷却効率を高めている。
前述の実施の形態1の上筐体支持面部材60のコイル載置面61は、下筐体2と上筐体3とが組み合わされた状態では、上面視において下筐体2と重ならないように配置される部分のみで構成されていた。一方、本実施の形態の左側の上筐体支持面部材60は、実施の形態1とほぼ同様の位置に配置されるコイル載置面61と、コイル載置面61の右側に設けられ上面視で下筐体2と重なる位置に配置される中央側底面67とを有する。コイル載置面61には、コイルベース14によって下方を支持された外側の誘導加熱コイル11aの一部が載置され、中央側底面67には、外側の誘導加熱コイル11aの残りの部分が載置される。中央側底面67の右側には、上筐体3の上筐体枠50に前後に掛け渡される架設部68が設けられている。上筐体支持面部材60は、コイル載置面61及び架設部68によって、角枠状の上筐体枠50に対して前後に掛け渡されて係合されている。このようにコイル載置面61と架設部68の左右二カ所で上筐体支持面部材60を上筐体3の上筐体枠50に係合させることで、上筐体3の構造強度を高めている。
上筐体支持面部材60の左側のコイル載置面61は、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられた状態において、上面視でキッチン天板201と重なる位置に配置され、このコイル載置面61の上に誘導加熱コイル11aの一部が載置される。上筐体支持面部材60のコイル載置面61の前側に流入口63が形成され、奥側に流出口64が形成されている。流入口63には、図20で示した冷却風路80の左側の左吹出口82が接続される。
中央側底面67は、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられた状態において、上面視で天板開口部203と重なる位置に配置される。中央側底面67の底面は、コイル載置面61の底面と比べて低く、中央側底面67の上方に形成される誘導加熱コイル11の配置空間の高さ寸法は、コイル載置面61の上方に形成される空間の高さ寸法よりも大きくなっている。中央側底面67の概ね中央には、内側の誘導加熱コイル11b及びこれを支持するコイルベース15が挿入されるコイル挿入口67aが開口している。
上筐体支持面部材60のコイル載置面61の側壁62は、誘導加熱コイル11aの左端において誘導加熱コイル11aに最も近接し、誘導加熱コイル11aの左端よりも手前側及び奥側においては誘導加熱コイル11aから離れるように湾曲している。すなわち、上筐体支持面部材60のコイル載置面61の側壁62は、手前側から中央側に向かって誘導加熱コイル11aに近づき、中央側から奥側に向かって誘導加熱コイル11aから離れる形状である。このように、コイル載置面61の側壁62を誘導加熱コイル11aの端部に近接させる形状とすることで、冷却風を迂回させることなく誘導加熱コイル11aに接触させ、誘導加熱コイル11aの冷却効率を高めている。
上筐体支持面部材60は、アルミ板等の非磁性金属板で形成されており、上筐体支持面部材60の外側壁面が防磁板として機能して漏れ磁束を抑制している。本実施の形態では、誘導加熱コイル11aの一部が配置される中央側底面67の左側と右側にそれぞれ、コイル載置面61と架設部68とが設けられているため、誘導加熱コイル11の右側と左側ともに、防磁板を配置する必要がなく、部品コスト及び組立コストを安価にする効果がある。
下筐体2の前側に取り付けられた冷却風路80の左奥には、左側の加熱口6aの加熱手段を構成する内側の誘導加熱コイル11bが配置されている。誘導加熱コイル11bは、コイルベース15によって下方を支持されている。コイルベース15の外周部の数カ所には、外方に突出する支持部15aが形成されており、この支持部15aの下面に弾性体29が取り付けられている。コイルベース15は、支持部15aを介して弾性体29によって下方を支持されるとともに、上方に向かって付勢されている。
支持部15aの上面は、上筐体支持面部材60を支持する支持面として機能する。上筐体3と下筐体2とが組み立てられた状態において、コイルベース15に設けられた支持部15aで上筐体支持面部材60を支持することで、上筐体支持面部材60に上下方向に加えられる外力に対する強度を高め、上筐体支持面部材60の輸送及び据付の際の衝撃による変形及び破損を抑制している。
冷却風路80の一部は、誘導加熱コイル11aの一部及び誘導加熱コイル11bの下側を覆っている。冷却風路80には、外側の誘導加熱コイル11aが載置される位置の下方に、複数のコイル下吹出口84、85が設けられている。コイル下吹出口84、85は、いずれも、冷却風路80から送られる冷却風が通過する開口であるが、コイル下吹出口84は冷却風路80の上面に形成された開口であり、コイル下吹出口85の周囲には冷却風路80の上面に延設された筒状のダクト部が設けられている。
下筐体2の上面開口の下筐体締結部34よりも下筐体係止部33に近い位置に、左右の誘導加熱コイル11、13の巻線31を接続するための端子台28が設けられている。誘導加熱コイル11、13を構成する巻線31は、それぞれ、端子台28に接続され、端子台28を介して基板ケースユニット24内の駆動回路及び制御回路と接続される。
また、前述の実施の形態1では、右側の加熱口6cの誘導加熱コイル13の下には防磁板を特には設けていなかったが、本実施の形態では、誘導加熱コイル13aの下に防磁板38を設けるとともに、誘導加熱コイル13b〜13dの下側に防磁板39を設けている。
図22は、実施の形態2に係る下筐体2の分解斜視図である。
下筐体2の調理室37の左側空間に基板ケースユニット24が配置されているのは実施の形態1と同様である。
基板ケースユニット24の上面には、実施の形態1と同様に、前側と奥側の二カ所に前側排気口24b、後側排気口24cが形成されており、前側排気口24bは冷却風路80の底面に形成された冷却風路流入口81に接続され、後側排気口24cは、右冷却風路90の底面に形成された右冷却風路流入口91に接続される。
また、調理室37の奥に排気風路26が配置されている。
冷却風路80の底面に形成された冷却風路流入口81から冷却風路80内に冷却風が流入し、冷却風路80に流入した冷却風は、右吹出口83が設けられた右側と左側とに分流する。左側に流れた冷却風はさらに、左吹出口82の方向と、誘導加熱コイル11の下方に設けられたコイル下吹出口84、85の方向とに分流する。
冷却風路80に設けられたコイル下吹出口84の一部は、上面視において外側の誘導加熱コイル11a(図22には図示せず)と重なる位置に設けられており、コイル下吹出口84の一部は内側の誘導加熱コイル11bと重なる位置に設けられている。また、ダクトを有するコイル下吹出口85の一部は、外側の誘導加熱コイル11a(図22には図示せず)の下方に設けられており、誘導加熱コイル11aを冷却する冷却風を吹き出す。また、コイル下吹出口85の一部は、上面視において誘導加熱コイル11aと重ならない位置にも設けられている。
内側の誘導加熱コイル11bに向けて吹き出された冷却風は、内側の誘導加熱コイル11bの巻線31の底面を衝突噴流熱伝達で冷却するとともに、コイルベース15に底面を露出して保持される高透磁率磁性体18(図23、図24参照)の底面を冷却しながらコイルベース15の高透磁率磁性体18の保持部(図示せず)の隙間を通って、下方から上方へ流れる。その後冷却風は、巻線31の上面とトッププレート7の下面との間の空間を通って巻線31の上面を冷却した後、左側の上筐体支持面部材60の上方の誘導加熱コイル11aの一部が配置された空間に流入して、外側の誘導加熱コイル11aを冷却する。その後冷却風は、左側の上筐体支持面部材60の流出口64から上筐体支持面部材60の外へ流出し、排気風路26に向かって流れる。
右冷却風路90は、基板ケースユニット24の奥側の後側排気口24cから送られる冷却風を、自身の上方に配置される誘導加熱コイル13b、13c、13d等の部材に供給する。右冷却風路90の底面には、基板ケースユニット24の奥側の後側排気口24cに接続される右冷却風路流入口91が形成されており、右冷却風路90の上面には、右冷却風路吹出口92が形成されている。前述の実施の形態1では、右冷却風路吹出口92は一つであったが、本実施の形態では複数の右冷却風路吹出口92が形成されている。
右冷却風路流入口91から右冷却風路90内に流入した冷却風は、複数の右冷却風路吹出口92から噴流として吹き出され、下筐体2に配置される右側の誘導加熱コイル13b、13c、13dの巻線31の底面を衝突噴流熱伝達で冷却するとともに、コイルベース17に底面を露出して保持される高透磁率磁性体19の底面を冷却しながらコイルベース17の高透磁率磁性体19の保持部の隙間を通って下方から上方へ流れる。その後冷却風は、巻線31の上面とトッププレート7の下面の空間を通って巻線31の上面を冷却した後、右側の上筐体支持面部材70の誘導加熱コイル13a(図21参照)が配置された空間に流入して、右端の誘導加熱コイル13aを冷却し、右側の上筐体支持面部材70の流出口74から上筐体支持面部材70の外へ流出して、排気風路26に向かって流れる。
上筐体支持面部材70の外へ出た冷却風は、本体筐体1の左寄りに配置された排気風路26に向かって流れ、その過程で誘導加熱コイル12及び高透磁率磁性体20の近傍を通ってこれらを冷却し、排気風路26を経て筐体排気口10より本体筐体1の外へ排気される。
各誘導加熱コイル11、12、13は、弾性体29を介して下筐体2に支持されており、弾性体29により上方に付勢されて、トッププレート7の下面に間隔保持部材30が押し当てられる。これによって誘導加熱コイル11、12、13を構成する巻線31の上面とトッププレート7との間に所定の間隔を保ち、巻線31の上方を冷却風が滞りなく流れるようにして冷却効率を高めている。
図23は、実施の形態2に係る左側の上筐体支持面部材60と上筐体支持面部材60に配置された部品の斜視図である。
上筐体支持面部材60の前端部は、上筐体フランジ部51の上に形成される凹部52(図5参照)に挿入されて係止される。上筐体支持面部材60のコイル載置面61及び架設部68の背面側の周壁の上端には、取り付けフランジが形成されており、この取り付けフランジには、実施の形態1と同様の上筐体支持面締結部66が形成されている。上筐体支持面締結部66は締結部材40を介して左支持面取付穴56に係合され(図21参照)、これによって上筐体支持面部材60の後部が上筐体枠50に固定される。
中央側底面67の底面とコイル載置面61の底面とは同一平面上にはなく、両者の間には段差があり、中央側底面67は、コイル載置面61よりも低い位置に配置されている。これは、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられたときに上面視で下筐体2と重なる位置に配置される中央側底面67の底面を下げることで、中央側底面67の上方の空間の高さを拡大して、誘導加熱コイル11aの下側に配置される高透磁率磁性体18の高さ寸法を大きくすることができるようにしたものである。高透磁率磁性体18の高さ寸法を大きくすることで、幅寸法を小さくしてもその機能を維持することができる。また、中央側底面67の底面の上に形成される空間の高さを確保して、中央側底面67の上に載置されるコイルベース14の上に通風可能な空間を形成し、巻線31の冷却効率を高めている。
中央側底面67の中央部分には、外側の誘導加熱コイル11aが配置される位置の内側に、コイル挿入口67aが形成されている。上筐体3が下筐体2に組み合わせられると、この中央側底面67のコイル挿入口67aの中に、内側の誘導加熱コイル11bが挿入される。
中央側底面67には、上面視において誘導加熱コイル11と重ならない位置(本実施の形態では誘導加熱コイル11aの外側)に、通風口が開口しており、この通風口を連通口67bと称する。この連通口67bには、冷却風路80に設けられたコイル下吹出口85のうちの一つ(図22参照)が接続される。これにより、冷却風路80から送られる冷却風は、コイル下吹出口85及び連通口67bを介して、誘導加熱コイル11aが載置された空間に直接的に流入し、巻線31とトッププレート7の下面との間を流れる。このように冷却風路80からの冷却風を直接的に巻線31に供給することで、巻線31の上面の冷却効率を高めている。
図24は、実施の形態2に係る左側の上筐体支持面部材60と上筐体支持面部材60に配置された部品の分解斜視図である。
中央側底面67には、外側の誘導加熱コイル11aが載置される下方に、上筐体支持面部材60の内外を連通させる通風口であるコイル下流入口67cと磁性体冷却穴67dが開口している。本実施の形態では、複数のコイル下流入口67cと磁性体冷却穴67dが、誘導加熱コイル11aの形状に沿って交互に設けられている。コイル下流入口67cの一部には、冷却風路80に設けられたコイル下吹出口85が接続され(図22参照)、コイル下吹出口85及びコイル下流入口67cを介して、誘導加熱コイル11aの下面に冷却風が吹き付けられる。また、コイル下流入口67cの他の一部の直下には、冷却風路80に形成されたコイル下吹出口84(図22参照)が配置される。
磁性体冷却穴67d上には、高透磁率磁性体18がコイルベース14の下面に保持されて配置される。磁性体冷却穴67dの外形と高透磁率磁性体18の外形は概ね同じであり、磁性体冷却穴67dから高透磁率磁性体18の底面が露出する。このため、冷却風路80から送られる冷却風は、高透磁率磁性体18に直接接触し、高透磁率磁性体18は効率よく冷却される。
コイルベース14は、環状の内周壁14eと、内周壁14eの外周側に同心上に設けられた環状の外周壁14fと、内周壁14eと外周壁14fとを径方向に接続するように設けられ、2つで一対となって高透磁率磁性体18を保持する保持壁14gとを備える。2つで一対の保持壁14gは、コイルベース14の周方向に沿って複数組設けられている。一対の保持壁14g同士の間には、上下方向に貫通した風路14hが形成されている。内周壁14eの一部、外周壁14fの一部、及び対向する保持壁14gで囲まれた風路14hは、中央側底面67に形成されたコイル下流入口67cの上に配置され、風路14hの上には巻線31が配置される。このため、中央側底面67のコイル下流入口67cからの冷却風は、風路14hを通って巻線31に供給されるので、冷却風は外乱により拡散することなく巻線31の底面に到達し、効率よく巻線31を冷却することができる。
高透磁率磁性体18は、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられたときに上面視で天板開口部203に重なる場所に配置されるもの(中央側底面67の上に配置されるもの)と、キッチン天板201に重なる場所に大部分が配置されるもの(コイル載置面61の上に配置されるもの)とで形状が異なり、前者を高透磁率磁性体18a、後者を高透磁率磁性体18bと呼び分ける。
高透磁率磁性体18bの全体としての面積は、その上方に配置される巻線31の外形よりも大きく、巻線31の概ね下方全体が、高透磁率磁性体18bで覆われる。また、本実施の形態では、4つの高透磁率磁性体18bが設けられており、各高透磁率磁性体18bの外形線の少なくとも一つ以上は、巻線31を外側から内側へ横切っている。また、隣り合う高透磁率磁性体18bの隙間は、高透磁率磁性体18bの高さ寸法よりも小さい。
隣り合う高透磁率磁性体18b同士に隙間を設けることで通風性を確保し、高透磁率磁性体18bの冷却効果を高めることができる。また、高透磁率磁性体18b全体の面積を、その上方に配置される巻線31の外形よりも大きくすることで、上筐体支持面部材60やキッチン天板201へ巻線31からの高周波磁界が到達することを抑制し、上筐体支持面部材60やキッチン天板201の高温化を抑制して安全性を高めている。また、高透磁率磁性体18a全体の面積を上記のように巻線31の外形よりも大きくしたので、高透磁率磁性体18aの高さ寸法を小さめにしてもその機能が損なわれにくい。そして、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられたときにキッチン天板201の上に配置される高透磁率磁性体18aの高さ寸法を小さくすることで、上筐体3の高さを小さくすることができ、キッチン天板201の上面から上筐体3の上面までの吐出高さが小さくなることから、使用者の作業性を良好にすることができる。
コイルベース14の外周壁14f及び上壁には、それぞれ、隣り合う高透磁率磁性体18aの隙間と対向する位置に、隙間部側面開口14aと隙間部上面開口14cが形成されている。相対的に圧力の高い隙間部側面開口14aからコイルベース14内に冷却風が流入し、その冷却風は上壁の隙間部上面開口14cから上方へと吹き出される。このため、隣り合う高透磁率磁性体18aの対向面と、巻線31の底面の冷却効率を高めることができる。
また、コイルベース14の外周壁14fには、高透磁率磁性体18aと対向する位置にも、複数の側面開口14bが設けられている。このように高透磁率磁性体18aの外側面の一部を側面開口14bから露出させ、冷却風を高透磁率磁性体18aに接触させて冷却効率を高めている。
また、コイルベース14の上面には、上方に突出する巻線支持部14dが設けられており、この巻線支持部14dの上に誘導加熱コイル11aの巻線31が載置される。本実施の形態では、巻線支持部14dはコイルベース14の径方向に沿って複数設けられている。巻線支持部14dの上に巻線31を配置することで、コイルベース14の上面と巻線31の底面との間に冷却風が通過する風路を形成し、巻線31の底面の冷却効率を高めている。
コイルベース14の内周壁14e及び外周壁14fには、数カ所の脚部が設けられており、この脚部の取付穴を締結部材40で中央側底面67のコイルベース締結部65に締結することで、コイルベース14が上筐体支持面部材60に着脱自在に取り付けられている。
図25は、実施の形態2に係る右側の上筐体支持面部材70と上筐体支持面部材70に配置された部品の斜視図である。
右側の上筐体支持面部材70は、鉄等の磁性の金属板で形成されており、その上にアルミ等の非磁性の金属板で形成された防磁板38が配置されている。防磁板38の上には、誘導加熱コイル13aの巻線31及び高透磁率磁性体19を保持するコイルベース17が配置されている。
前述のとおり左側の上筐体支持面部材60はアルミ等の非磁性の金属板を用いて構成されているが、図25に示す右側の上筐体支持面部材70は、鉄系の金属板を用いて構成されており、これによって強度を高めつつ薄肉化し、また低コスト化している。鉄系の金属板は、巻線31から生じる高周波磁束により発熱しやすいことから、誘導加熱コイル13aと上筐体支持面部材70との間に防磁板38を配置している。
防磁板38の外周のうち、上筐体枠50に組み付けられたときに誘導加熱コイル13bと対向する部分を除く外周には、側壁38aが設けられており、巻線31からの高周波磁束が横方向に漏洩して不要な加熱がなされることを抑制して冷却負荷を軽減している。
防磁板38の側壁38aの一部には開口38bが設けられ、側壁38a内への冷却風の通風を促進して誘導加熱コイル13a及び高透磁率磁性体19の冷却効率を高めている。開口38bからは一部の磁束が漏洩するが、磁束が漏洩しても支障がない程度となるように開口38bの開口面積が設定されている。
上筐体支持面部材70の手前側の側壁72には、支持面係止穴78が設けられている。この支持面係止穴78には、上筐体枠50の手前側の辺の下部に設けられた上筐体係止部58(図30参照)が挿入され、これによって上筐体支持面部材70が上筐体枠50に係止される。上筐体支持面部材70の背面側の側壁72の上端には、この上端から背面側に向かって略水平に延びる取り付けフランジが形成されており、取り付けフランジには上筐体支持面締結部77が形成されている。上筐体支持面締結部77は、ネジ等の締結部材40の先端を係止する。
図26は、実施の形態2に係る右側の上筐体支持面部材70と上筐体支持面部材70に配置された部品の分解斜視図を示す。
図26に示すように、一つの高透磁率磁性体を複数に分割して形成されたような複数の高透磁率磁性体19が設けられている。これら複数の高透磁率磁性体19の全体としての外形は、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み付けられたときにキッチン天板201の上に載置される誘導加熱コイル13aの巻線31の外形よりも大きく、高透磁率磁性体19はこの巻線31の概ね下方全体を覆うようにして配置される。本実施の形態では、複数(8つ)の高透磁率磁性体19が設けられており、各高透磁率磁性体19を平面視したときの外形線の少なくとも一つ以上は、誘導加熱コイル13aを構成する巻線31の径方向外側から内側へと横切っている。このようにすることで、巻線31からの高周波磁界が上筐体支持面部材70やキッチン天板201へ到達するのを抑制して、冷却負荷を低減するとともに安全性を高めている。
隣り合う高透磁率磁性体19同士の間には、隙間が設けられており、この隙間は、高透磁率磁性体19の高さ寸法よりも小さい。隣り合う高透磁率磁性体19の間に隙間を設けることで、通風性を確保するとともに高透磁率磁性体19の表面積を増やし、空気との接触を増やして高透磁率磁性体19の冷却効率を高めている。
コイルベース17の下面には、高透磁率磁性体19を保持する保持部である保持壁17eが設けられている。この保持壁17eは、例えば、コイルベース17の下面から下方に向かって延びる壁面を有しており、対向する壁面間に形成される下方に向かって開放された溝の中に、高透磁率磁性体19が嵌め込まれる。保持壁17e及びコイルベース17の上壁には、それぞれ、隣り合う高透磁率磁性体19の隙間と対向する位置に、隙間部側面開口17cと隙間部上面開口17aが形成されている。相対的に圧力の高い隙間部側面開口17cからコイルベース17内に冷却風が流入し、その冷却風はコイルベース17の上壁の隙間部上面開口17aから上方へと吹き出される。このため、隣り合う高透磁率磁性体19の対向面と、巻線31の底面の冷却効率を高めることができる。
また、コイルベース17の外周壁には、高透磁率磁性体19と対向する位置にも、側面開口17dが設けられている。このように高透磁率磁性体19の外側面の一部を側面開口17dから露出させ、冷却風を高透磁率磁性体19に直接接触させて冷却効率を高めている。
また、コイルベース17の上面には、上方に突出する巻線支持部17bが設けられており、この巻線支持部17bの上に誘導加熱コイル13aの巻線31が載置される。巻線支持部17bの上に巻線31を配置することで、コイルベース17の上面と巻線31の底面との間に冷却風が通過する風路を形成し、巻線31の底面の冷却効率を高めている。
高透磁率磁性体19の自己発熱は、高透磁率磁性体19の底面から防磁板38へ伝熱及び拡散される。防磁板38の外周に設けられた側壁38aは、放熱フィンとして機能し、高透磁率磁性体19の冷却効果を高めている。
コイルベース17に設けられた脚部には締結部材40が挿入される取付穴が形成されており、また、防磁板38の底面にも締結部材40が挿入される取付穴が形成されている。コイルベース17及び防磁板38を上筐体支持面部材70に取り付ける際には、コイルベース17の脚部の取付穴と防磁板38の取付穴とを重ねた状態で、これら取付穴に上から締結部材40を挿入し、締結部材40の先端を上筐体支持面部材70の底面に形成されたコイルベース締結部79に締結する。このようにすることで、締結部材40と上筐体支持面部材70との間にコイルベース17及び防磁板38が挟まれ、これらを上筐体支持面部材70に着脱自在に取り付けることができる。
図27は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の本体筐体1から通気口カバー8を外し、トッププレート7を透視した上面図である。図27では、冷却風の流れを矢印で概念的に示している。図28は、図27のA−A断面における上筐体3及び下筐体2の上部の矢視図である。
冷却風路80の上面のコイル下吹出口84の一部が、左側の上筐体支持面部材60に設けられたコイル下流入口67cの下に配置される。また、筒状のダクトを有するコイル下吹出口85の一部が、コイル下流入口67cに接続される。また、コイル下吹出口85の一つは、巻線31よりも外周側に設けられた連通口67bに接続される。
図29は、図27のB−B断面矢視図である。
基板ケースユニット24の上面の手前側(図29の紙面右側)に配置された前側排気口24bは、冷却風路80の下面に形成された冷却風路流入口81に接続され、基板ケースユニット24の後側に配置された後側排気口24cは、右冷却風路90の底面に形成された右冷却風路流入口91に接続されている。後側排気口24cから吹き出されて右冷却風路流入口91から右冷却風路90内に流入した冷却風は、複数の右冷却風路吹出口92から噴流として上方に吹き出される。
図30は、図27のC−C断面矢視図である。図30(A)は、図27のC−C断面全体を示し、図30(B)、(C)、(D)は、それぞれ(A)のY1部、Y2部、Y3部の拡大図である。
図30(A)、(B)に示すように、上筐体3に形成された上筐体取付穴55の下側に、上筐体支持面部材70の上筐体支持面締結部77が重ねられ、上から挿入された締結部材40の先端部が上筐体支持面締結部77に締結され、これによって上筐体支持面部材70が上筐体枠50に固定される。
図30(A)、(C)に示すように、上筐体フランジ部51の前部には、上筐体係止部58が設けられている。本実施の形態では、上筐体係止部58は、後方に向かって延びる薄板状の突片であり、この上筐体係止部58は上筐体支持面部材70に形成された支持面係止穴78(図25、図26参照)に挿入される。上筐体係止部58が支持面係止穴78に挿入されることで、上筐体枠50と上筐体支持面部材70とが、前部において結合される。
図30(A)、(D)に示すように、コイルベース17の上に配置された巻線31の上面と、トッププレート7の下面との間に、冷却風が流れる通風路となる空間が確保され、また、コイルベース17の下面に配置された隣り合う高透磁率磁性体19の隙間にも、冷却風が流れる通風路が確保されている。
次に、図27〜図30を適宜参照して、冷却風の流れを説明する。
図27、図29に示すように、基板ケースユニット24内に設けられた冷却ファン25からの送風は、手前側の前側排気口24bと奥側の後側排気口24cの2つに分流し、それぞれ、冷却風路80と右冷却風路90に流入する。
右冷却風路90内に流入した冷却風は、右冷却風路90の上面に形成された複数の右冷却風路吹出口92から上方へ吹き出される。右冷却風路吹出口92から吹き出された冷却風は、これまでに説明したとおり上方に配置された誘導加熱コイル13b、13c、13dの底面及び側面並びに高透磁率磁性体19に接触してこれらを冷却しつつ、相対的に圧力の低い誘導加熱コイル13aに向かって流れ、上筐体支持面部材70の上を流れて流出口74から上筐体支持面部材70の外へと流出する。
冷却風路80内に流入した冷却風は、一部が右側に流れ、残りの一部が左側に流れる。
冷却風路80内を右側に流れた冷却風は、図27、図30に示すように、右吹出口83及び右側の上筐体支持面部材70の流入口73を介して、上筐体3の右側の上方の空間(上筐体支持面部材70の上方の空間)に流入する。上筐体支持面部材70の上方の空間に流入した冷却風は、誘導加熱コイル13a及びその下に配置された高透磁率磁性体19を冷却し、その後、流出口74から上筐体支持面部材70の外へ流出する。上筐体支持面部材70の外へ出た冷却風は、本体筐体1の左寄りに配置された排気風路26に向かって流れ、その過程で誘導加熱コイル12の近傍を通ってこれを冷却し、排気風路26を経て筐体排気口10より本体筐体1の外へ排気される。
冷却風路80内を左側に流れた冷却風は、図27に示すように、コイル下吹出口84及びコイル下吹出口85に至る風路と、左側の上筐体支持面部材60の流入口63に接続される左吹出口82に至る風路とに分岐する。
図27、図28に示すように、冷却風路80内からコイル下吹出口84及びコイル下吹出口85に至る風路に流れた冷却風は、複数のコイル下吹出口84又はコイル下吹出口85から上方に吹き出され、これまでに説明したとおり誘導加熱コイル11a、11bの巻線31や高透磁率磁性体18を冷却し、その後、排気風路26を経て筐体排気口10より本体筐体1の外へ排気される。
図27に示すように、冷却風路80内から左吹出口82に至る風路に流れた冷却風は、この左吹出口82及び上筐体支持面部材60の流入口63を経て、上筐体3の上方の右側の空間(上筐体支持面部材60の上方の空間)に流入して後方に向かって流れる。上筐体支持面部材60の上方を後方に向かって流れる冷却風は、側壁62に導かれて誘導加熱コイル11aの左端部に近づき、これに接触して冷却した後、流出口64から上筐体支持面部材60の外へ出る。上筐体支持面部材60の外へ出た冷却風は、下筐体2に支持される誘導加熱コイル11bの巻線31に接触してこれを冷却した後、排気風路26を経て筐体排気口10より本体筐体1の外へ排気される。
以上のように本実施の形態の誘導加熱調理器は、左側の上筐体支持面部材60は外周部に側壁62を備え、この側壁62の内面の一部は、流入口63から流出口64に向かって、誘導加熱コイル11aの左端に近づいている。そして、誘導加熱コイル11aの左端部において、誘導加熱コイル11aと側壁62とが最も近接している。このため、流入口63から流出口64に流れる冷却風は、風路断面が狭く圧力損失が高い上筐体3の誘導加熱コイル11の配置空間においても、側壁62に導かれて誘導加熱コイル11aの左端部の近くを流れることができる。したがって、冷却風が誘導加熱コイル11aの左端の冷却に寄与しないで誘導加熱コイル11aの近傍を通過することを軽減できるので、誘導加熱コイル11aの冷却効率を高め、巻線31が高温となり損傷することを抑制する効果がある。
右側の上筐体支持面部材70は外周部に側壁72を備え、側壁72と側壁72に対向する誘導加熱コイル13aとの間の流路幅は、流入口73が配置される流入側よりも流出口74が配置される流出側の方が狭くなるように構成されている。また、側壁72は、流入側よりも流出側に近い位置において誘導加熱コイル13aに最も近づく。このため、風路断面が狭く冷却風量に制約のある上筐体3の誘導加熱コイル13の配置空間においても、側壁72と対向する誘導加熱コイル13aの側面の広い範囲に、冷却風を衝突させることができ、冷却効率が高まり、巻線31が高温となり損傷することを抑制する効果がある。
なお、本実施の形態における側壁72と同様の流路を形成する別部材からなる導風部材を設けてもよく、そのようにしても同様の作用効果を得ることができる。
左側の上筐体支持面部材60は、上面視において、キッチン天板201の天板開口部203と重なる部分に中央側底面67を設け、この中央側底面67に通風可能な開口であるコイル下流入口67cを設け、コイル下流入口67c(本発明の第一底面開口)の下方の冷却風路80の上面にコイル下吹出口84を設けた。そして、コイル下流入口67cとコイル下吹出口84とは、直線上の配置となる。このため、コイル下吹出口84の冷却風は、コイル下流入口67cを通って上筐体3の誘導加熱コイル11の配置空間に流入しやすくなるとともに、その上方に配置される巻線31の底面に冷却風が直線的に到達して衝突することで冷却効率が高まり、巻線31が高温となって損傷することを抑制する効果がある。
左側の上筐体支持面部材60は、上面視において、キッチン天板201の天板開口部203と重なる部分に中央側底面67を設け、この中央側底面67に通風可能な開口である連通口67b及びコイル下流入口67cを設け、その下方の冷却風路80の上面にダクト部を有するコイル下吹出口85を設けた。そして、コイル下吹出口85のダクト部を、連通口67b及びコイル下流入口67c(本発明の第二支持面開口)に接続した。このため、排気風路26の手前であって周囲に排気風路26に向かう外乱となる流れがある場所においても、コイル下吹出口85のダクト部により風路が形成されているので、上筐体3の誘導加熱コイル11の配置空間に連通口67b及びコイル下流入口67cから確実に冷却風が流入することができる。また、コイル下吹出口85のダクト部の直管部分がノズルとして機能することにより、冷却風は巻線31の底面に噴流として衝突するので冷却効率が高まり、巻線31が高温となって損傷することを抑制する効果がある。
また、上から見て巻線31から外れた場所に連通口67bを設けることで、巻線31の側面と上面を冷却する冷却風の流れを形成でき、巻線31上面が高温となり損傷することを抑制する効果がある。
左側の外周側の誘導加熱コイル11aを構成する巻線31の下方に配置され、巻線31から発生する高周波磁界を集束させる複数の高透磁率磁性体18と、巻線31及び高透磁率磁性体18を保持するコイルベース14とを備えた。そして、上面視において高透磁率磁性体18が巻線31の下方をカバーする程度を示す下方カバー率は、本体筐体1がキッチンキャビネット200に組み込まれたときに天板開口部203と重なる領域では、キッチン天板201に重なる領域に比べて低い。天板開口部203と重なる領域に配置される巻線31の底面の一部は、高透磁率磁性体18に覆われておらず、巻線31の下方に通風可能な空間が形成されることから、巻線31の底面に冷却風が接触しやすくなり、冷却効率が高まり、巻線31が高温となり損傷することを抑制する効果がある。
左側の外周側の誘導加熱コイル11aの下に配置される、高透磁率磁性体18の高さ方向寸法は、上面視においてキッチン天板201と重なる部分に配置されるものは、天板開口部203と重なる部分に配置されるものに比べて小さい。このため、上筐体3の高さ寸法を小さくでき、調理容器の載置や移動時の上下方向の動作範囲が小さくなり調理の作業性を高める効果がある。
右側の上筐体支持面部材70のコイル載置面71と誘導加熱コイル13との間に非磁性体の金属板で形成した防磁板38を備え、防磁板38の外周には誘導加熱コイル13の側面に対向する側壁38aを形成した。このため、防磁板38の底面が高周波磁束を吸収するので、巻線31からの高周波磁束が下方向に漏洩して上筐体支持面部材70やキッチン天板201に到達することを抑制でき、これらの発熱を軽減することができる。また、誘導加熱コイル13aから横方向への高周波磁束は、防磁板38の側壁38aで吸収され、本体筐体1からの磁束の漏洩を低減することができるので、冷却負荷が低減されるとともに安全性が高まる効果がある。また、防磁板38はヒートシンクとして機能し、高透磁率磁性体19の発熱を拡散して冷却風による冷却効率が高まることから、上筐体支持面部材70やキッチン天板201の温度を低くでき、安全性が高まる。
非磁性体の金属板で形成された防磁板38の側壁38aの一部に通風可能な開口38bを設けたことから、防磁板38内への冷却風の流入が容易となり、冷却効率が高まり、巻線31が高温となり損傷することを抑制する効果がある。
右側の上筐体支持面部材70の支持面係止穴78は、上筐体フランジ部51の上筐体係止部58に係止される。また、上筐体支持面部材60の後部には、ネジ等の締結部材40の先端を係止する上筐体支持面締結部77を設けるとともに、上筐体3の上筐体枠50に左支持面取付穴56を形成し、上から左支持面取付穴56及び上筐体支持面締結部77に挿入された締結部材40の先端を、上筐体支持面締結部77にて係止するようにした。
上筐体3の上側から締結部材40を着脱できるので、誘導加熱調理器の組立性を高めて製造コストを低減できるとともに、メンテナンス性を高めて品質コストを低減する効果がある。
また、本実施の形態では、支持面係止穴78と上筐体係止部58とで上筐体支持面部材70と上筐体枠50とを係止するので、構造的な強度が上がるとともに、組立時のガタつきが少なくなって組立状態での寸法のバラツキが減少し、品質を安定かつ向上させる効果がある。
なお、本実施の形態では、上筐体支持面部材70の前部は、支持面係止穴78と上筐体係止部58との係止構造によって上筐体枠50に固定され、上筐体支持面部材70の後部は、締結部材40を介して上筐体枠50に固定される例を説明したが、これらの前後が逆であってもよい。
複数の誘導加熱コイルを一つの加熱口の加熱手段として設けており、その複数の誘導加熱コイルの内の一部のみを、上筐体3の上に載置し、残りを下筐体2の上方に配置した。すなわち本実施の形態では、加熱口6aにおいては2つの誘導加熱コイル11a、11bのうち、一つの誘導加熱コイル11aのみを上筐体3に配置した。また、加熱口6cにおいては4つの誘導加熱コイル13a、13b、13c、13dのうち、一つの誘導加熱コイル13aのみを上筐体3に配置した。このように上筐体3に保持される誘導加熱コイルの数を減らしたことで、上筐体3に係る荷重が低くなり、上筐体3に必要な構造強度も低くなる。このため、上筐体3を形成する金属板の板厚を薄くしても必要な強度は確保できるので、低コストで誘導加熱調理器を製造できる。また、上筐体3全体の重量を軽くできることから、製造時の組立性及び保守時のメンテナンス性を高める効果がある。
上筐体3に一部が配置された誘導加熱コイル11aと、下筐体2に配置された誘導加熱コイル11bで構成された加熱手段を有する左側の加熱口6aにおいて、上筐体3に配置された外周側の誘導加熱コイル11aは、下筐体2に配置された内周側の誘導加熱コイル11bよりも最大火力が小さい。また、上筐体3に配置された誘導加熱コイル13aと、下筐体2に配置された誘導加熱コイル13b〜13dで構成された加熱手段を有する右側の加熱口6cにおいて、上筐体3に配置された誘導加熱コイル13aは、下筐体2に配置された他の誘導加熱コイル13b〜13dよりも最大火力が低い。
このため、誘導加熱コイル11a、13aの巻線31の被覆が溶融する等の損傷を抑制することができるとともに、上筐体支持面部材60、70やその下方に配置されるキッチン天板201の、温度上昇による劣化及び使用者が接触した場合のリスクを軽減できる。また、上筐体3の誘導加熱コイル11が配置される空間の冷却負荷を軽減することができるので、冷却風の風量を少なくすることができる。したがって、風路断面を小さくすることができ、上筐体3の高さ寸法を小さくできることから、調理の作業性を高める効果がある。また、巻線31及びその下に配置される高透磁率磁性体18、19の自己発熱を少なくすることができるので、冷却風を流す風路断面を狭くしても、巻線31の絶縁被膜を劣化させない温度まで冷却しやすくなる。このため、上筐体3の高さ寸法を小さくしてキッチン天板201からの突出高さが低くなり、調理の作業性を向上する効果がある。
左側の加熱口6a及び右側の加熱口6cは一つの加熱口6を複数の誘導加熱コイルで構成して加熱を行い、上筐体3に配置された誘導加熱コイル11a、13aの巻線31の温度が閾値以上となった場合、上筐体3に配置された誘導加熱コイル11a、13の火力は低下させるが、一緒に加熱を行う他の誘導加熱コイルのうちのいずれかの火力を高め、加熱口6のトータルの火力は維持されるように制御を行う。このため、調理作業性を損なうことなく、巻線31が高温となり損傷することを抑制する効果がある。
左側の加熱口6aは、上筐体3に配置された外側の誘導加熱コイル11aと、下筐体2に配置された内側の誘導加熱コイル11bとで一つの加熱口6aの加熱手段を構成するとともに、下筐体2に配置された誘導加熱コイル11bのコイルベース15の支持部15aで外側の誘導加熱コイル11aを保持する上筐体支持面部材60を支持する。このため、上筐体3及び上筐体支持面部材60への外側の誘導加熱コイル13の重量による応力が軽減され、輸送や据付時の衝撃による損傷・変形を抑制して品質を高める効果がある。なお、コイルベース15の支持部15aで上筐体支持面部材60を支持することに代えて、コイルベース15の支持部15aで、上筐体支持面部材60の上に載置される誘導加熱コイル11aのコイルベース14を支持してもよく、このようにしても同様の作用効果を得ることができる。
上筐体3に配置された誘導加熱コイルと、下筐体2に配置された誘導加熱コイルとで、一つの加熱口6の加熱手段を構成した。
そして、左側の加熱口6aにおいては、上筐体3に配置された外周側の誘導加熱コイル11aの駆動周波数と、下筐体2に配置された内側の誘導加熱コイル11bの駆動周波数とを4kHz以上離したので、両方の誘導加熱コイル11a、13bで加熱を行った場合に被加熱物から発生する干渉音は4kHz以上となり、使用者に聞こえにくくなることから、調理作業環境を向上する効果がある。
また、右側の加熱口6cにおいては、上筐体3に配置された右端の誘導加熱コイル13aの駆動周波数と下筐体2に配置された他の3つの誘導加熱コイル13b〜13dの駆動周波数を同一としたことから、誘導加熱コイル13a〜13dの複数で同時に加熱を行っても、被加熱物から干渉音が発生しないことから、調理作業環境を向上する効果がある。
左側の上筐体支持面部材60に配置された外周側の誘導加熱コイル11aと、下筐体2に配置された内側の誘導加熱コイル11bで一つの加熱口6aの加熱手段を構成するとともに、下筐体2の上方に配置された内側の誘導加熱コイル11bを冷却した冷却風はその後、上筐体3の上に載置された外周側の誘導加熱コイル11aを冷却する。
また、右側の上筐体支持面部材70に配置された右端の誘導加熱コイル13aと、下筐体2に配置された3つの誘導加熱コイル13b〜13dで一つの加熱口6cの加熱手段を構成するとともに、下筐体2の上方に配置された3つの誘導加熱コイル13b〜13dを冷却した冷却風はその後、上筐体3の上に載置された右端の誘導加熱コイル13aを冷却する。
このため、少ない冷却風で効率よく複数の誘導加熱コイル11、13の冷却が行え、冷却ファン25の送風能力を低くすることができるため、低騒音の誘導加熱調理器を得る効果がある。