JP2017134350A - 木管楽器用リード及び木管楽器用リードの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反りが比較的小さい木管楽器用リードを提供する。【解決手段】木管楽器用リード1は、長手方向一端側にヴァンプ8を有する帯板状の木管楽器用リード1であって、合成樹脂をマトリックスとし、一方の面の一部に凹部9を有するリード本体10と、このリード本体10の凹部9に充填され、熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部11とを備える。木管楽器用リード1の製造方法は、合成樹脂をマトリックスとし、一方の面の一部に凹部9を有するリード本体10を形成する工程と、このリード本体10の凹部9に熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部形成材料を充填する工程と、前記充填工程後のリード本体10を、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつ前記リード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度未満の温度に加熱して反りを矯正する工程とを備える。【選択図】図3
Description
本発明は、木管楽器用リード及び木管楽器用リードの製造方法に関する。
例えばサクソフォン、クラリネット等の木管楽器は、奏者が息を吹き込む唄口に取り付けられる帯板状のリードを振動させることによって音を発生させる。木管楽器用リードは、一般に葦や竹などの天然素材から形成され、奏者が口に咥える側の長手方向端部(先端部)に向かって厚さを徐々に減少させるよう表面を削り落としたヴァンプ(Vamp)が設けられている。
このような天然素材から形成される木管楽器用リードは、個々のばらつきが大きいという難点がある。このため、ユーザーが熟練者ではない比較的低練度の奏者であっても、複数のリードの中から満足な音色が得られるリードを選択し、満足な音色が得られないリードを使用せずに廃棄しているのが実情である。具体的には、木管楽器用リードは、10本を一組として販売されることが多いが、一般ユーザーであっても、実際には10本中で2本乃至3本程度しか使用できないと判断する場合が少なくない。
また、木管楽器用リードには、奏者の唾液や息に含まれる水分が付着することが避けられない。葦や竹から形成される木管楽器用リードは、このような水分に晒されることによって劣化が促進されるため、寿命が比較的短いという不都合がある。このため、合成樹脂から形成された耐久性に優れるリードが市販されている。
合成樹脂製リードの製造方法としては、射出成型による方法が提案されている(例えば特開2008−197450号公報参照)。この公報に記載の合成樹脂製リードは、熱可塑性樹脂を主成分とし、セルロース繊維を配合した樹脂組材料を射出成型することにより形成される。
しかしながら、板状の合成樹脂製リードを射出成型によって形成すると、リード内に残留応力が生じて、金型から取り出したときに反りが発生する場合がある。また、このような反りは、冷却の具合等によってばらつきがあるため、金型の形状変更によって補償することは難しい。
そこで、射出成型後のリードを加熱して、曲げ応力を加えることによって反りを矯正することが考えられる。しかしながら、リードを加熱すると、特に厚さが小さいヴァンプの先端部に大きな変形を生じ、むしろ望ましくない形状となってしまうおそれがある。
前記不都合に鑑みて、本発明は、反りが比較的小さい木管楽器用リード及び反りが小さい木管楽器用リードの製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するためになされた発明は、長手方向一端側にヴァンプを有する帯板状の木管楽器用リードであって、合成樹脂をマトリックスとし、一方の面の一部に凹部を有するリード本体と、このリード本体の凹部に充填され、熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部とを備えることを特徴とする木管楽器用リードである。
当該木管楽器用リードは、凹部を有するリード本体と、この凹部に充填され、熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部とを備えることによって、矯正部のみを軟化させた状態で当該木管楽器用リードに曲げ応力を加えて反りを矯正することで、リード本体に形成されるヴァンプの先端部等に変形を生じさせることなく、当該木管楽器用リードの反りを矯正することができる。このため、当該木管楽器用リードは、比較的安価でありながら反りが比較的小さい状態で提供することができる。なお、「主成分」とは、最も質量含有量が大きい成分を意味し、好ましくは80質量%以上含有する成分を意味する。
前記矯正部の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が前記リード本体のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度より小さいとよい。このように、前記矯正部の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が前記リード本体のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度より小さいことによって、前記矯正部の熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつリード本体のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度未満の温度に加熱することで矯正部のみを比較的容易に選択して軟化させられるので、反りの矯正がより容易である。なお、「ガラス転移温度」とは、JIS−K7121(1987)に準拠して測定される値である。
前記矯正部がリード本体の短手方向に沿って存在するとよい。このように、前記矯正部がリード本体の短手方向に沿って存在することによって、当該木管楽器用リードを短手方向の軸を中心とする曲がりを矯正できるので、当該木管楽器用リードをマウスピースに装着したときに形成されるリードの先端とマウスピースとの隙間を最適化して、当該木管楽器用リードの演奏性を向上できる。
前記リード本体のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度と前記矯正部の熱可塑性樹脂のガラス転移温度との差としては、10℃以上が好ましい。このように、前記リード本体のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度と前記矯正部の熱可塑性樹脂のガラス転移温度との差が前記下限以上であることによって、当該木管楽器用リードの反りを矯正する際にリード本体を軟化させずに矯正部だけを軟化させることが容易となり、リード本体の変形をより確実に防止できる。
前記矯正部が、平面視でリード本体のヴァンプ根元領域に存在するとよい。このように、前記矯正部が、平面視でリード本体のヴァンプ根元領域に存在することによって、当該木管楽器用リードの演奏時の振動特性に対する当該木管楽器用リードの影響を抑制しつつ、当該木管楽器用リードの反りを比較的効率よく矯正できる。なお、「ヴァンプ根元領域」とは、ヴァンプのヒール側端部からの距離が当該木管楽器用リードの長手方向の長さの20%以内、好ましくは15%である領域を意味し、矯正部の重心位置を基準として判断される。
また、前記課題を解決するためになされた別の発明は、長手方向一端側にヴァンプを有する帯板状の木管楽器用リードの製造方法であって、合成樹脂をマトリックスとし、一方の面の一部に凹部を有するリード本体を形成する工程と、このリード本体の凹部に熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部形成材料を充填する工程と、前記充填工程後のリード本体を、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつ前記リード本体のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度未満の温度に加熱して反りを矯正する工程とを備えることを特徴とする木管楽器用リードの製造方法である。
当該木管楽器用リードの製造方法は、前記リード本体形成工程と、矯正部形成材料充填工程と、反り矯正工程とを備えることによって、反り矯正工程において、矯正部のみを軟化させてリード本体の反りを矯正することができる。このため、リード本体に形成されるヴァンプの先端部等に変形を生じさせることなく反りを矯正して、反りが比較的小さい木管楽器用リードを比較的容易に提供することができる。
本発明の木管楽器用リード及び本発明の木管楽器用リードの製造方法によって製造される木管楽器用リードは、反りが比較的小さいものとされ得る。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
[第一実施形態]
<サクソフォン>
図1に、本発明の一実施形態に係る木管楽器用リード1を用いる木管楽器の一種であるサクソフォンを示す。
<サクソフォン>
図1に、本発明の一実施形態に係る木管楽器用リード1を用いる木管楽器の一種であるサクソフォンを示す。
図1のサクソフォンは、サクソフォン本体2の一端に当該木管楽器用リード1を取り付けたマウスピース3が装着されている。
サクソフォン本体2は、一端にマウスピース3が装着され、他端が径を拡大するようにして開放する屈曲した管体部4を備え、この管体部4に形成される複数の音孔をそれぞれ封止可能に設置される複数のキイ5と、これらのキイ5を操作するためのレバー6等を有する。このサクソフォン本体2の構成は、従来のサクソフォン本体の構成と同様とすることができる。
マウスピース3は、サクソフォン本体2の一端に装着され、奏者がサクソフォン本体2に息を吹き込み、当該木管楽器用リード1を振動させるために使用される。
マウスピース3は、図2に示すように、概略筒状に形成され、奏者が口に咥える一端側が平たく押し潰されたような形状を有し、奏者の下唇に接触する側が大きく開口し、この開口を封止するよう当該木管楽器用リード1が取り付けられる。当該木管楽器用リード1は、マウスピース3の外周に装着されるリガチャ7によってマウスピース3に固定される。これらのマウスピース3及びリガチャ7としては、従来の構成のものを使用することができる。
なお、当該木管楽器用リード1は、図1のようなサクソフォンに限らず、例えばクラリネット等の他の木管楽器にも使用することができ、例えばオーボエ、ファゴット等の2枚のリードを使用する木管楽器にも使用することができる。2枚のリードを使用する木管楽器の場合、2枚のリードのうち一方にのみ当該木管楽器用リード1を用い、他方に天然素材から形成される従来のリード又は保湿材料を含有しない従来の樹脂製リードを用いてもよい。
<木管楽器用リード>
図3及び図4に、当該木管楽器用リード1を詳細に示す。当該木管楽器用リード1は、合成樹脂をマトリックスとして帯板状に形成され、長手方向先端側に厚さを減じるヴァンプ8を有する。
図3及び図4に、当該木管楽器用リード1を詳細に示す。当該木管楽器用リード1は、合成樹脂をマトリックスとして帯板状に形成され、長手方向先端側に厚さを減じるヴァンプ8を有する。
また、当該木管楽器用リード1は、合成樹脂をマトリックスとし、一方の面、具体的には裏面(マウスピース3に取り付けられる側の面)の一部に凹部9を有するリード本体10と、このリード本体10の凹部9に充填され、熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部11とを備える。
当該木管楽器用リード1は、ヴァンプ8が形成されていない部分の表面(マウスピース3に取り付けられる側と反対側の面)が円筒面の一部をなすように湾曲している。この湾曲面は、裏面と平行な長手方向の軸を有し、表面側に膨出するものとされる。これにより、当該木管楽器用リード1は、図1及び図2に示すように、ヴァンプ8が形成されていない部分がリガチャ7で緊締されることによってマウスピース3の外面に当該木管楽器用リード1の表面が連続するようマウスピース3と一体に保持される。
ヴァンプ8は、奏者が口に咥える側の先端部に向かって当該木管楽器用リード1の厚さを徐々に減少させるよう形成されている。より詳しくは、ヴァンプ8は、一般にヒール(後端)側程傾斜角度が大きくなるよう湾曲し、先端側は略平面状に伸びるよう形成される。このヴァンプ8の湾曲形状としては、従来のリードに形成されるヴァンプ8の湾曲形状と同様とされる。
つまり、当該木管楽器用リード1の概略形状としては、葦等から形成される従来のリードと同様の形状とされる。当該木管楽器用リード1の概略形状の具体的な寸法としては、当該木管楽器用リード1がアルトサックス用のリードである場合、幅を約15mm、長さを約70mm、ヴァンプ8が形成されていない部分の最大厚さを約3mm、ヴァンプ8の先端における厚さを約0.15mmとすることができる。
(リード本体)
リード本体10を形成する材料のマトリックスとなる合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、液晶ポリマー等を用いることができる。中でも、比較的安価で強度が大きいポリプロピレン又は液晶ポリマーが好適に用いられる。
リード本体10を形成する材料のマトリックスとなる合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、液晶ポリマー等を用いることができる。中でも、比較的安価で強度が大きいポリプロピレン又は液晶ポリマーが好適に用いられる。
当該木管楽器用リード1の大半を占めるリード本体10を合成樹脂をマトリックスとする材料によって形成することで、リード本体10の材質の物性を一定にすることができる。このため、当該木管楽器用リード1は、一定の振動特性を有するものとなるので、発生する音色のばらつきが小さい。
また、リード本体10を形成する材料は、マトリックス中に例えば木繊維、竹繊維等の天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維などを含んでもよい。中でも、リード本体10を形成する材料のマトリックス中に含まれる繊維としては、ガラス繊維等の透明であるものが好ましい。このようなマトリックス中の繊維は、リード本体10ひいては当該木管楽器用リード1の剛性を向上する。
リード本体10を形成する材料における繊維の含有率の下限としては、特に限定されないが、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。一方、リード本体10を形成する材料における繊維の含有率の上限としては、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましい。前記繊維の含有率が前記下限に満たない場合、リード本体10ひいては当該木管楽器用リード1の剛性を十分に向上できないおそれがある。逆に、前記繊維の含有率が前記上限を超える場合、リード本体10の射出成型による成形が困難となるおそれがある。
リード本体10を形成する材料に含有される繊維の平均長さの下限としては、3μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、リード本体10を形成する材料に含有される繊維の平均長さの上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。前記繊維の平均長さが前記下限に満たない場合、リード本体10の剛性を十分に向上できないおそれがある。逆に、前記繊維の平均長さが前記上限を超える場合、リード本体10の射出成型による成形が困難となるおそれがある。
また、リード本体10を形成する材料は、上述の繊維の他、例えば着色のための顔料、改質剤等の添加剤を含んでもよい。
リード本体10を形成する材料の弾性率の下限としては、3000MPaが好ましく、4000MPaが好ましい。一方、リード本体10を形成する材料の弾性率の上限としては、10000MPaが好ましく、8000MPaが好ましい。リード本体10を形成する材料の弾性率が前記下限に満たない場合、音速が小さく、音響効果が不十分となるおそれがある。逆に、リード本体10を形成する材料の弾性率が前記上限を超える場合、当該木管楽器用リード1が硬くなり過ぎるために十分な振動が得られないおそれがある。なお、前記弾性率は、JIS−K7171(2008)に準拠して測定される値である。
(凹部)
リード本体10に形成される凹部9(矯正部11)の平面形状としては、特に限定されないが、リード本体10を短手方向の軸を中心に屈曲させやすいよう、リード本体10の短手方向に沿って連続的又は断続的に存在することが好ましく、リード本体10を横断する一定幅の線状であることがより好ましい。
リード本体10に形成される凹部9(矯正部11)の平面形状としては、特に限定されないが、リード本体10を短手方向の軸を中心に屈曲させやすいよう、リード本体10の短手方向に沿って連続的又は断続的に存在することが好ましく、リード本体10を横断する一定幅の線状であることがより好ましい。
また、凹部9(矯正部11)は、平面視でリード本体10のヴァンプ8の根元領域に存在することが好ましい。具体的には、凹部9の重心位置のヴァンプ8の最もヒール側の端部からのリード本体10の長手方向の距離(先端側か後端側かを問わない絶対値)の上限としては、リード本体10の長手方向の長さの20%が好ましく、15%がより好ましい。凹部9の重心が、前記上限を超えてヒール側に位置する場合、当該木管楽器用リード1がリガチャ7によって緊締されてマウスピース3に押圧されることで、当該木管楽器用リード1の反りの矯正がキャンセルされるおそれがある。逆に、凹部9の重心が、前記上限を超えてヴァンプ8先端側に位置する場合、凹部9が当該木管楽器用リード1の振動特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
凹部9(矯正部11)は、深さ(厚さ)が一定であってもよいが、矯正部11の充填性を向上するために、その延在方向に垂直な断面形状において角を有しない形状とすることが好ましく、前記断面形状が半円形又は半楕円形であることがより好ましい。
凹部9の平均深さ(断面積を幅で除した値)の当該木管楽器用リード1の平均厚さ(断面積を幅で除した値)に対する比の下限としては、0.02が好ましく、0.05がより好ましい。一方、凹部9の平均深さの当該木管楽器用リード1の平均厚さに対する比の上限としては、0.2が好ましく、0.1がより好ましい。凹部9の平均深さの当該木管楽器用リード1の平均厚さに対する比が前記下限に満たない場合、リード本体10の弾性に抗して反りを矯正した状態を保持することが困難となるおそれがある。逆に、凹部9の平均深さの当該木管楽器用リード1の平均厚さに対する比が前記条件を超える場合、当該木管楽器用リード1の強度が不十分となるおそれがある。
平面視での凹部9の合計面積の下限としては、リード本体10の面積の0.1%が好ましく、0.2%がより好ましい。一方、平面視での凹部9の合計面積の上限としては、リード本体10の面積の5%が好ましく、1%がより好ましい。平面視での凹部9の合計面積が前記下限に満たない場合、当該木管楽器用リード1の反りを十分に矯正できないおそれがある。逆に、平面視での凹部9の合計面積が前記上限を超える場合、当該木管楽器用リード1の振動特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
(矯正部)
矯正部11は、前記凹部9に充填され、熱可塑性樹脂を主成分とする。この矯正部11の主成分である熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、リード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度より小さいことが好ましい。
矯正部11は、前記凹部9に充填され、熱可塑性樹脂を主成分とする。この矯正部11の主成分である熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、リード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度より小さいことが好ましい。
これにより、当該木管楽器用リード1は、矯正部11の熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつリード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度未満の温度に加熱することで、リード本体10を塑性変形させることなく弾性変形させて、矯正部11だけを塑性変形させることができる。この状態で当該木管楽器用リード1を冷却すれば、リード本体10の弾性力に抗して当該木管楽器用リード1を矯正部11においてわずかに屈曲させることができる。これにより、当該木管楽器用リード1は、特に音の発生に影響を及ぼすヴァンプ8の先端部の形状を損なうことなく、反りを矯正して、ヴァンプ8の先端部とマウスピースとの隙間を最適化することができる。
矯正部11の熱可塑性樹脂のガラス転移温度とリード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度との差の下限としては10℃が好ましく、15℃がより好ましい。一方、矯正部11の熱可塑性樹脂のガラス転移温度とリード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度との差の上限としては80℃が好ましく、50℃がより好ましい。前記ガラス転移温度の差が前記下限に満たない場合、反りの矯正時の温度管理が容易でなくなるおそれがある。逆に、前記ガラス転移温度の差が前記上限を超える場合、リード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度が高くなり過ぎることでリード本体10の成形が容易でなくなるおそれや、矯正部11の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が低くなり過ぎることで、意図せず矯正部11が軟化して反りが再発生するおそれがある。
矯正部11の主成分とされる熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、液晶ポリマー等を用いることができ、中でも、比較的安価で矯正部11を形成しやすいアクリル樹脂が好適に用いられる。
<木管楽器用リードの製造方法>
当該木管楽器用リード1は、合成樹脂をマトリックスとし、一方の面の一部に凹部9を有するリード本体10を形成する工程(形成工程)と、このリード本体10の凹部9に熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部形成材料を充填する工程(充填工程)と、前記充填工程後のリード本体10を、前記矯正部形成材料の熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつ前記リード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度未満の温度に加熱して反りを矯正する工程(矯正工程)とを備える方法によって製造することができる。
当該木管楽器用リード1は、合成樹脂をマトリックスとし、一方の面の一部に凹部9を有するリード本体10を形成する工程(形成工程)と、このリード本体10の凹部9に熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部形成材料を充填する工程(充填工程)と、前記充填工程後のリード本体10を、前記矯正部形成材料の熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつ前記リード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度未満の温度に加熱して反りを矯正する工程(矯正工程)とを備える方法によって製造することができる。
(形成工程)
形成工程におけるリード本体10の形成方法としては、例えば樹脂材料の射出成型、母材からの削り出し等、任意の方法を用いることができるが、生産性の観点から射出成型が好ましい。
形成工程におけるリード本体10の形成方法としては、例えば樹脂材料の射出成型、母材からの削り出し等、任意の方法を用いることができるが、生産性の観点から射出成型が好ましい。
(充填工程)
充填工程では、リード本体10の凹部9への矯正部形成材料の充填により、矯正部11を形成する。
充填工程では、リード本体10の凹部9への矯正部形成材料の充填により、矯正部11を形成する。
この充填工程における凹部9への矯正部形成材料の充填方法としては、リード本体10の凹部9に十分な量の矯正部形成材料を流し込み、過剰な矯正部形成材料をスクレーパーで掻き落とす方法とすることができる。
凹部9に流し込む矯正部形成材料としては、重合により矯正部の主成分となる熱可塑性樹脂を生成するモノマー又はプレポリマーを含み、好ましくは重合開始剤をさらに含む樹脂組成物を用いることができる。
(矯正工程)
矯正工程では、矯正部11の熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつリード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度未満の設定温度まで加熱することで、リード本体10を塑性変形させることなく弾性変形させて、矯正部11だけを塑性変形させる。
矯正工程では、矯正部11の熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつリード本体10のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度未満の設定温度まで加熱することで、リード本体10を塑性変形させることなく弾性変形させて、矯正部11だけを塑性変形させる。
この矯正工程では、当該木管楽器用リード1のあるべき形状に対応する表面形状を有する一対の型の間に配置し、加圧しつつ上述の設定温度まで加熱し、冷却後に除圧する方法を採用することができる。このように、型を用いて矯正することで、当該木管楽器用リード1を一定の形状に矯正することができる。
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
当該木管楽器用リードは、上述の形成工程、充填工程及び矯正工程を備える製造方法によって製造されたものに限られない。例として、上述の形成工程及び充填工程に替えて、予め矯正部を構成する部材を形成し、この矯正部を構成する部材を金型の中に配置してリード本体を構成する材料を射出成型することによって、当該木管楽器用リードを得ることができる。また、反りが確認された個体のみに矯正工程を適用してもよいことや、ユーザーに矯正を委ねることもできる。
また、当該木管楽器用リードにおける矯正部の平面形状は、特に限定されず、当該木管楽器用リードの長手方向に延在して形成されてもよく、散点状に形成されてもよい。また、当該木管楽器用リードは、複数の線状の矯正部が形成されてもよく、これら複数の線状の矯正部が互いに平行に配設されてもよく、互いに交差して配設されてもよい。
また、当該木管楽器用リードは、リード本体の表面(ヴァンプが形成される側の面)に凹部が形成され、この凹部に熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部が充填され他状態で形成されているものとしてもよい。
本発明の木管楽器用リードは、サクソフォンだけでなく、リードを使用する他の木管楽器に広く利用することができる。
1 木管楽器用リード
2 サクソフォン本体
3 マウスピース
4 管体部
5 キイ
6 レバー
7 リガチャ
8 ヴァンプ
9 凹部
10 リード本体
11 矯正部
2 サクソフォン本体
3 マウスピース
4 管体部
5 キイ
6 レバー
7 リガチャ
8 ヴァンプ
9 凹部
10 リード本体
11 矯正部
Claims (6)
- 長手方向一端側にヴァンプを有する帯板状の木管楽器用リードであって、
合成樹脂をマトリックスとし、一方の面の一部に凹部を有するリード本体と、
このリード本体の凹部に充填され、熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部と
を備えることを特徴とする木管楽器用リード。 - 前記矯正部の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が前記リード本体のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度より小さい請求項1に記載の木管楽器用リード。
- 前記矯正部が、リード本体の短手方向に沿って存在する請求項1又は請求項2に記載の木管楽器用リード。
- 前記リード本体のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度と前記矯正部の熱可塑性樹脂のガラス転移温度との差が10℃以上である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の木管楽器用リード。
- 前記矯正部が、平面視でリード本体のヴァンプ根元領域に存在する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の木管楽器用リード。
- 長手方向一端側にヴァンプを有する帯板状の木管楽器用リードの製造方法であって、
合成樹脂をマトリックスとし、一方の面の一部に凹部を有するリード本体を形成する工程と、
このリード本体の凹部に熱可塑性樹脂を主成分とする矯正部形成材料を充填する工程と、
前記充填工程後のリード本体を、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、かつ前記リード本体のマトリックスを構成する合成樹脂のガラス転移温度未満の温度に加熱して反りを矯正する工程と
を備えることを特徴とする木管楽器用リードの製造方法。
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JP (1) | JP2017134350A (ja) |
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2016
- 2016-01-29 JP JP2016016225A patent/JP2017134350A/ja active Pending
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