JP2017134078A - 分光測定装置、画像形成装置、及び分光測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プリンター10は、測定対象からの光が入射する分光器17と、分光器17と測定対象とを相対移動させるキャリッジ移動ユニット14と、を含み、第一時刻の第一波長の光の測定値である第一測定値と、第二時刻の第一波長の測定値である第二測定値とを比較する。
【選択図】図2
Description
この特許文献1の測色装置では、測定対象に光に照射し、測定対象により反射された光を波長可変干渉フィルターに入射させ、波長可変干渉フィルターにより所定波長の光を透過させてディテクターにて検出する。この際、波長可変干渉フィルターを制御して反射膜間のギャップ寸法を順次変更することで、透過光の波長を順次切り替え、これらの各波長の光の光量をディテクターにて検出する。これにより、測定対象の分光スペクトルを測定(測色)することができる。
しかしながら、測色装置の移動速度変化や、カラーパッチの設置位置のずれ等によって、測定開始から測定終了までの間に測定対象領域がカラーパッチを通り過ぎてしまったり、測定開始のタイミングが早すぎたりして、カラーパッチに対する測定範囲の位置がずれる場合がある。このような場合では、カラーパッチから外れた位置で測色を実施してしまうため、カラーパッチに対する正確な測色ができず、測色精度が悪化する。
すなわち、第一期間において分光測定を実施した位置(測定範囲)がカラーパッチの領域内である場合、第一測定値及び第二測定値が同一、又は略同一となる。一方、測定開始時又は測定終了時における分光測定の位置がカラーパッチの領域から外れている場合では、第一測定値及び第二測定値が異なる値となる。よって、第一測定値及び第二測定値を比較することで、容易かつ迅速に、カラーパッチに対する測定範囲が適切か否かを判定することができる。また、本適用例では、分光器をカラーパッチ上で停止させて分光測定を行う必要がなく、分光測定に係る時間を短縮することができる。
本適用例では、第一測定値と第二測定値との差が小さく、第一閾値以下である場合、測定開始時と測定終了時とにおいて、前記測定位置がカラーパッチ上であったと判断できる。一方、第一測定値と第二測定値との差が第一閾値より大きい場合、測定開始時と測定終了時とのいずれかにおいて、分光器による測定位置がカラーパッチ上になかったと判断できる。
また、分光測定における測定値は、カラーパッチに対して入射する光の光量変動、波長可変干渉フィルターの振動等に影響により、完全に一致することは稀である。したがって、上記のような影響を考慮した値を第一閾値として適宜設定することで、カラーパッチに対して正常に分光測定ができているにも関わらず、測定範囲がずれているとするエラーが出力されることがなく、これによる分光測定の遅延も抑制できる。
本適用例では、波長可変干渉フィルターからの光を受光する受光部を備える。この場合受光部からの出力信号を測定値として、カラーパッチに対する測定範囲が適切であるか否かを判定できる。したがって、例えば、カラーパッチの第一波長に対する反射率等の算出結果を用いる場合に比べて、容易かつ迅速にカラーパッチに対する測定範囲が適切であるか否かを判定できる。
本適用例では、制御部により分光器及び移動機構を制御することができる。
本適用例では、フィルター制御手段により波長可変干渉フィルターが通過させる光の波長を制御することができる。
本適用例では、一方向に並ぶ複数のカラーパッチに対して分光器を相対移動させ、測定値が第二閾値以上であるカラーパッチの第一測定値及び第二測定値を比較する。第一測定値及び第二測定値が小さく、第二閾値未満である場合では、カラーパッチの第一波長に対する反射率が悪く、十分な光量が得られていないため、ノイズ成分等の影響を受けやすい。これに対して、本適用例では、第二閾値以上の第一測定値及び第二測定値を比較するので、上記のようなノイズの影響を受けにくく、カラーパッチに対して測定範囲が適切か否かをより正確に判定できる。
これにより、測定範囲がどの方向にずれているかを判定できるので、カラーパッチに対して測定範囲を適切に設定するために測定範囲をどの方向にずらすか、つまり、第一期間の測定開始時及び測定終了時を遅らせるか、早めるのかを容易に判断することができる。したがって、測定範囲がずれているとするエラーが出力された場合でも、容易にそのエラーから復帰するエラー復帰処理を実施できる。
ここで、第三測定値及び第四測定値が測定される位置は、それぞれ、カラーパッチに対して適切に測定範囲が設定されている場合における、第一測定位置とカラーパッチの一端との間、及び第二測定位置とカラーパッチの他端との間に設定する。この場合、測定範囲がカラーパッチ内に適切に設定されていれば、第一測定値、第二測定値、第三測定値、及び第四測定値は、同一又は略同一(差が第一閾値以下)となる。一方、測定範囲がずれている場合、位置ずれ方向に応じて、第一測定値及び第三測定値の差、又は、第二測定値及び第四測定値の差が、第一閾値より大きくなる。したがって、これらの4つの測定値を比較することで、容易にずれ方向を検出することができる。
カラーパッチの周囲の第一波長に対する反射率が分かっている場合、波長可変干渉フィルターからの出射光の波長を第一波長に固定した状態で、分光器を一方向に走査させた際に、測定値がカラーパッチで山型に変化するか、谷型に変化するかが容易に判別できる。よって、第一測定値及び第二測定値の大小関係を比較することで、測定範囲のずれ方向を容易に検出できる。例えば、分光器を走査した際に、第一波長の反射率がカラーパッチにおいて山型に変化すると分かっている場合、第一測定値が第二測定値よりも大きい場合は、第一期間の測定開始時及び測定終了時が遅い(測定範囲が一方向の後側にずれている)と判定でき、第一測定値が第二測定値よりも小さい場合は、第一期間の測定開始時及び測定終了時が早い(測定範囲が一方向の前側にずれている)と判定できる。また、第一波長の反射率がカラーパッチにおいて谷型に変化すると分かっている場合、第一測定値が第二測定値よりも大きい場合は、第一期間の測定開始時及び測定終了時が早いと判定でき、第一測定値が第二測定値よりも小さい場合は、第一期間の測定開始時及び測定終了時が遅いと判定できる。
本適用例では、測定範囲がカラーパッチからずれている場合に、そのずれ量を算出する。これにより、カラーパッチに対して測定範囲を適切に設定するための測定範囲の移動量、つまり、第一期間の測定開始時及び測定終了時を変更する時間が分かるので、エラー復帰処理を容易に実施できる。
測定範囲のずれ方向が前側である場合、所定のカラーパッチに対する第一測定値、第二測定値、及びそのカラーパッチの次に配置されているカラーパッチの第一測定値が判れば、三角関数によりずれ量を算出することができる。また、測定範囲のずれ方向が後側である場合、所定のカラーパッチの第一測定値、第二測定値、及びそのカラーパッチの前に配置されているカラーパッチの第二出力値に基づいて三角関数によりずれ量を算出することができる。すなわち、少なくとも2つの連続するカラーパッチに対する第一測定値及び第二測定値が判れば、ずれ量を容易に算出することができる。
本適用例では、移動機構は、分光器を等速で相対移動させるので、第一期間に対する測定開始時及び測定終了時に対する分光器の位置を、別途分光器の位置を測定するセンサー等を設けずとも、容易に検出することができる。
本適用例では、上記の通り、第一測定値及び第二測定値を比較することで、容易かつ迅速に、カラーパッチに対する測定範囲が適切か否かを判定することができる。
また、測定対象はカラーパッチに限られることなく、任意の測定対象において測定範囲が適切か否かを判定することができる。
また、分光測定中に分光器と測定対象とが常に相対移動されている状態に限らず、第一時刻の第一波長の光の測定値である第一測定値と、第二時刻の前記第一波長の光の測定値である第二測定値と、を比較することで、任意の測定対象において適切な測定が行われているか否かを判定することができる。
本適用例では、画像形成部により、上述したようなカラーパッチを画像形成対象に形成した上で、分光測定装置により、形成されたカラーパッチに対する分光測定を行うことができる。また、このような画像形成装置では、形成されたカラーパッチの色が、画像形成部に指令した色と同じ色であるか否かを確認することができ、異なる場合には、分光測定結果に応じて画像形成部にフィードバックすることができる。
本適用例では、上記分光測定装置と同様の作用効果を奏することができ、カラーパッチに対して適切な位置に測色範囲を設定することができ、カラーパッチに対する分光測定を精度よく実施することができる。
本適用例では、上記の通り、第一測定値及び第二測定値を比較することで、容易かつ迅速に、カラーパッチに対する測定範囲が適切か否かを判定することができる。
また、測定対象はカラーパッチに限られることなく、任意の測定対象において測定範囲が適切か否かを判定することができる。
また、分光測定中に分光器と測定対象とが常に相対移動されている状態に限らず、第一時刻の第一波長の光の測定値である第一測定値と、第二時刻の前記第一波長の測定値である第二測定値と、を比較することで、任意の測定対象において適切な測定が行われているか否かを判定することができる。
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明の画像形成装置の一例として、分光測定装置を備えたプリンター10(インクジェットプリンター)について、以下説明する。
図1は、第一実施形態のプリンター10の外観の構成例を示す図である。図2は、本実施形態のプリンター10の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プリンター10は、供給ユニット11、搬送ユニット12と、キャリッジ13と、キャリッジ移動ユニット14と、制御ユニット15(図2参照)と、を備えている。このプリンター10は、例えばパーソナルコンピューター等の外部機器20から入力された印刷データに基づいて、各ユニット11,12,14及びキャリッジ13を制御し、媒体A上に画像を印刷する。また、本実施形態のプリンター10は、予め設定された較正用印刷データに基づいて媒体A上の所定位置に測色用のカラーパッチ31(図9等参照)を形成し、かつ当該カラーパッチ31に対する分光測定を行う。これにより、プリンター10は、カラーパッチ31に対する実測値と、較正用印刷データとを比較して、印刷されたカラーに色ずれがあるか否か判定し、色ずれがある場合は、実測値に基づいて色補正を行う。
以下、プリンター10の各構成について具体的に説明する。
なお、本実施形態では、ロール体111に巻装された紙面を供給する例を示すがこれに限定されない。例えば、トレイ等に積載された紙面等の媒体Aをローラー等によって例えば1枚ずつ供給する等、如何なる供給方法によって媒体Aが供給されてもよい。
搬送ローラー121は、図示略の搬送モーターからの駆動力が伝達され、制御ユニット15の制御により搬送モーターが駆動されると、その回転力により回転駆動されて、従動ローラーとの間に媒体Aを挟み込んだ状態でY方向に沿って搬送する。また、搬送ローラー121のY方向の下流側(+Y側)には、キャリッジ13に対向するプラテン122が設けられている。
このキャリッジ13は、キャリッジ移動ユニット14によって、Y方向と交差する主走査方向(本発明における一方向であり、X方向)に沿って移動可能に設けられている。
また、キャリッジ13は、フレキシブル回路131により制御ユニット15に接続され、制御ユニット15からの指令に基づいて、印刷部16による印刷処理(媒体Aに対する画像形成処理)及び、分光器17による分光測定処理を実施する。
なお、キャリッジ13の詳細な構成については後述する。
このキャリッジ移動ユニット14は、例えば、キャリッジガイド軸141と、キャリッジモーター142と、タイミングベルト143と、を含んで構成されている。
キャリッジガイド軸141は、X方向に沿って配置され、両端部がプリンター10の例えば筐体に固定されている。キャリッジモーター142は、タイミングベルト143を駆動させる。タイミングベルト143は、キャリッジガイド軸141と略平行に支持され、キャリッジ13の一部が固定されている。そして、制御ユニット15の指令に基づいてキャリッジモーター142が駆動されると、タイミングベルト143が正逆走行され、タイミングベルト143に固定されたキャリッジ13がキャリッジガイド軸141にガイドされて往復移動する。
[印刷部(画像形成部)の構成]
印刷部16は、本発明の画像形成部であり、媒体Aと対向する部分に、インクを個別に媒体A上に吐出して、媒体A上に画像を形成する。
この印刷部16は、複数色のインクに対応したインクカートリッジ161が着脱自在に装着されており、各インクカートリッジ161からインクタンク(図示略)にチューブ(図示略)を介してインクが供給される。また、印刷部16の下面(媒体Aに対向する位置)には、インク滴を吐出するノズル(図示略)が、各色に対応して設けられている。これらのノズルには、例えばピエゾ素子が配置されており、ピエゾ素子を駆動させることで、インクタンクから供給されたインク滴が吐出されて媒体Aに着弾し、ドットが形成される。
図3は、分光器17の概略構成を示す断面図である。
分光器17は、図3に示すように、光源部171と、光学フィルターデバイス172、受光部173と、導光部174と、を備えている。
この分光器17は、光源部171から媒体A上に照明光を照射し、媒体Aで反射された光成分を、導光部174により光学フィルターデバイス172に入射させる。そして、光学フィルターデバイス172は、この反射光から所定波長の光を出射(透過)させて、受光部173により受光させる。また、光学フィルターデバイス172は、制御ユニット15の制御に基づいて、透過波長を選択可能であり、可視光における各波長の光の光量を測定することで、媒体A上の測定対象領域Rの分光測定が可能となる。
光源部171は、光源171Aと、集光部171Bとを備える。この光源部171は、光源171Aから出射された光を媒体Aの測定対象領域R内に、媒体Aの表面に対する法線方向から照射する。
光源171Aとしては、可視光域における各波長の光を出射可能な光源が好ましい。このような光源171Aとして、例えばハロゲンランプやキセノンランプ、白色LED等を例示でき、特に、キャリッジ13内の限られたスペース内で容易に設置可能な白色LEDが好ましい。集光部171Bは、例えば集光レンズ等により構成され、光源171Aからの光を測定対象領域Rに集光させる。なお、図3においては、集光部171Bでは、1つのレンズ(集光レンズ)のみを表示するが、複数のレンズを組み合わせて構成されていてもよい。
図4は、光学フィルターデバイス172の概略構成を示す断面図である。
光学フィルターデバイス172は、筐体6と、筐体6の内部に収納された波長可変干渉フィルター5(波長可変干渉フィルター)とを備えている。
波長可変干渉フィルター5は、波長可変型のファブリーペローエタロン素子であり、図4に示すように、透光性の固定基板51及び可動基板52を備え、これらの固定基板51及び可動基板52が、接合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
固定基板51は、エッチングにより形成された第一溝部511、及び第一溝部511より溝深さが浅い第二溝部512を備えている。そして、第一溝部511には、固定電極561が設けられ、第二溝部512には、固定反射膜54が設けられている。
固定電極561は、例えば第二溝部512を囲う環状に形成されており、可動基板52に設けられた可動電極562に対向する。
固定反射膜54は、例えばAg等の金属膜、Ag合金等の合金膜、高屈折層及び低屈折層を積層した誘電体多層膜、又は、金属膜(合金膜)と誘電体多層膜を積層した積層体により構成されている。
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。この可動部521は、固定電極561の外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されており、可動部521の固定基板51に対向する面に、可動電極562及び可動反射膜55が設けられている。
可動電極562は、固定電極561に対向する位置に設けられている。
可動反射膜55は、固定反射膜54に対向する位置に、ギャップGを介して配置されている。この可動反射膜55としては、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜を用いることができる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点を中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
また、可動基板52の外周部(固定基板51に対向しない領域)には、固定電極561や可動電極562と個別に接続された複数の電極パッド57が設けられている。
筐体6は、図4に示すように、ベース61と、ガラス基板62と、を備えている。これらのベース61及びガラス基板62は、例えばガラスフリット(低融点ガラス)を用いた低融点ガラス接合、エポキシ樹脂等による接着などを利用でき、これにより、内部に収容空間が形成され、この収容空間内に波長可変干渉フィルター5が収納される。
ベース61の凹部611の底面には、光通過孔612が設けられている。この光通過孔612は、波長可変干渉フィルター5の反射膜54,55と重なる領域を含むように設けられている。また、ベース61のガラス基板62とは反対側の面には、光通過孔612を覆うカバーガラス63が接合されている。
図3に戻り、受光部173は、波長可変干渉フィルター5の光軸上に配置され、当該波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光する。そして、受光部173は、制御ユニット15の制御に基づいて、受光量に応じた検出信号(電流値)を出力する。なお、受光部173により出力された検出信号は、I−V変換器(図示略)、増幅器(図示略)、及びAD変換器(図示略)を介して制御ユニット15に入力される。
導光部174は、反射鏡174Aと、バンドパスフィルター174Bとを備えている。
この導光部174は、測定対象領域Rで、媒体Aの表面に対して45°で反射された光を反射鏡174Aにより、波長可変干渉フィルター5の光軸上に反射させる。バンドパスフィルター174Bは、可視光域(例えば380nm〜720nm)の光を透過させ、紫外光及び赤外光の光をカットする。これにより、波長可変干渉フィルター5には、可視光域の光が入射されることになり、受光部173において、可視光域における波長可変干渉フィルター5により選択された波長の光が受光される。
制御ユニット15は、図2に示すように、I/F151と、ユニット制御回路152と、メモリ153と、CPU(Central Processing Unit)154と、を含んで構成されている。
I/F151は、外部機器20から入力される印刷データをCPU154に入力する。
ユニット制御回路152は、供給ユニット11、搬送ユニット12、印刷部16、光源171A、波長可変干渉フィルター5、受光部173、及びキャリッジ移動ユニット14をそれぞれ制御する制御回路を備えており、CPU154からの指令信号に基づいて、各ユニットの動作を制御する。なお、各ユニットの制御回路が、制御ユニット15とは別体に設けられ、制御ユニット15に接続されていてもよい。
各種データとしては、例えば、波長可変干渉フィルター5を制御する際の、静電アクチュエーター56への印加電圧に対する、波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長を示したV−λデータ、印刷データとして含まれる色データに対する各インクの吐出量を記憶した印刷プロファイルデータ等が挙げられる。また、光源171Aの各波長に対する発光特性(発光スペクトル)や、受光部173の各波長に対する受光特性(受光感度特性)等が記憶されていてもよい。
CPU154は、本発明の制御部に相当し、メモリ153に記憶された各種プログラムを読み出し実行することで、図5に示すように、走査制御手段181、印刷制御手段182、測定範囲設定手段183、フィルター制御手段184、判定手段185、ずれ量算出手段186、ずれ方向検出手段187(方向検出手段)、測色手段188、及びキャリブレーション手段189等として機能する。
カラーパッチ31についての詳細な説明は後述する。
印刷制御手段182からユニット制御回路152に指令信号が出力されると、ユニット制御回路152は、印刷部16に印刷制御信号を出力し、ノズルに設けられたピエゾ素子を駆動させて媒体Aに対してインクを吐出させる。なお、印刷を実施する際は、キャリッジ13がX方向に沿って移動されて、その移動中に印刷部16からインクを吐出させてドットを形成するドット形成動作と、媒体AをY方向に搬送する搬送動作とを交互に繰り返し、複数のドットから構成される画像を媒体Aに印刷する。
カラーパッチ31は、上記のように、較正用印刷データに基づいて媒体A上に形成されるものであり、X方向に対する幅寸法は較正用印刷データに記録された所定寸法となる。本実施形態では、1つのカラーパッチ31に対して、可視光域における所定間隔となる複数波長の光(例えば、400nmから700nmまでにおける20nm間隔毎の16バンド分の光)の分光特性を取得する。したがって、測定対象領域R(図9参照)が1つのカラーパッチ31上を移動する間に、この複数の波長の光を取得できるように、波長可変干渉フィルターを駆動させる必要がある。測定範囲設定手段183は、波長可変干渉フィルター5の透過光を切り替えるために必要なフィルター駆動時間Tn、取得する光の数(バンド数)n、キャリッジ13をX方向に移動させる(等速直線運動)際の速度v、及びカラーパッチの寸法(パッチ幅Wp)に基づいて、カラーパッチ31の領域内における測定範囲Mの開始位置M1(図9参照)、終了位置M2(図9参照)をそれぞれ設定する。また、設定された開始位置M1、終了位置M2に、測定対象領域Rの所定の基準点Rb(図9参照)が移動するまでの時間(測定開始時間、測定終了時間)を算出する。
また、フィルター制御手段184は、測定範囲設定手段183により設定された測定範囲と、走査制御手段181により移動されるキャリッジ13の移動速度及び移動開始からの経過時間と、に基づいて、静電アクチュエーター56に印加する電圧を切り替える。
なお、本実施形態では、測定値として、受光部173からの出力信号(出力値)を用いる。ここで、測定対象領域Rの基準点Rbがi番目のカラーパッチ31における測定範囲Mの開始位置M1に位置した際の受光部173からの出力値を第一出力値V1(i)(本発明の第一測定値)とし、測定対象領域Rの基準点Rbがi番目のカラーパッチ31における測定範囲Mの終了位置M2に位置した際の受光部173からの出力値を第二出力値V2(i)(本発明の第二測定値)として以降説明する。
ずれ方向検出手段187は、測定範囲Mがカラーパッチ31からずれている場合に、そのずれ方向を検出する。
測色手段188は、測定範囲に対して得られた複数波長の光に対する分光測定結果に基づいて、カラーパッチ31における色度を測定する。
キャリブレーション手段189は、測色手段188による測色結果と、較正用印刷データとに基づいて、印刷プロファイルデータを補正(更新)する。
なお、制御ユニット15における各機能構成の詳細な動作については後述する。
次に、本実施形態のプリンター10における分光測定方法について、図面に基づいて説明する。
図6及び図7は、プリンター10における分光測定方法を示すフローチャートである。
なお、本実施形態では、測定対象となる波長域は400nmから700nmの可視光域であり、初期波長を700nmとして、20nm間隔となる16個の波長の光の光量に基づいて分光測定を実施する例を示す。
プリンター10による分光測定方法では、まず、媒体A上にカラーパッチ31を含むカラーチャートを形成する。
これには、走査制御手段181は、媒体Aを所定位置にセットする(ステップS1)。すなわち、走査制御手段181は、供給ユニット11、搬送ユニット12を制御して、媒体Aを副走査方向(+Y方向)に搬送し、媒体Aの所定の印刷開始位置をプラテン122上にセットする。また、走査制御手段181は、キャリッジ13を、初期位置(例えば主走査方向の−X側端部)に移動させる。
すなわち、走査制御手段181により、キャリッジ13を+X側に例えば一定速度で走査させる。印刷制御手段182は、例えば走査開始からの時間に応じてキャリッジ13の印刷部16の位置を特定し、較正用印刷データに基づいた所定位置に所定色のノズルからインクを吐出させてドットを形成する(ドット形成動作)。また、走査制御手段181は、キャリッジ13が+X側端部まで移動されると、供給ユニット11及び搬送ユニット12を制御して媒体Aを+Y方向に搬送する(搬送動作)。そして、走査制御手段181は、キャリッジ13を−X方向に走査させ、印刷制御手段182は、較正用印刷データに基づいて、所定位置にドットを形成する。
以上のようなドット形成動作と搬送動作を繰り返すことで、媒体A上にカラーチャートが形成される。
本実施形態では、図8に示すように、複数色のカラーパッチ31がX方向に沿って隙間なく配置されて構成されたカラーパッチ群30を、Y方向に沿って複数個配置させたカラーチャート3が印刷により形成される。また、カラーチャート3には、カラーパッチ群30の−X側でY方向に平行な直線状のスタートバー32、及びカラーパッチ群30の+X側でY方向に平行な直線状のゴールバー33が設けられている。スタートバー32及びゴールバー33は、初期波長に対する反射率が、媒体Aと異なる色で形成されており、本実施形態では、白色紙面の媒体Aに対して、黒色のスタートバー32及びゴールバー33が形成されている。
P(i)−P(i−1)<0
P(i+1)−P(i)<0
又は
P(i)−P(i−1)>0
P(i+1)−P(i)>0
を満たすカラーパッチ31が、較正用印刷データに基づいて形成される。つまり、本実施形態では、キャリッジ13をX方向に沿って走査させ、波長可変干渉フィルター5の透過波長を初期波長に固定した状態で、受光部173からの出力値を観察すると、カラーパッチ31が切り替わる毎に、出力値が増加及び減少を繰り返し、キャリッジ13の位置(若しくはキャリッジ13が移動してからの時間)に対する出力値は、山型波形と谷型波形とが交互に現れる出力波形となる。
図6に戻り、ステップS2の後、印刷されたカラーチャート3のインクが乾燥されると、走査制御手段181は、搬送ユニット12を制御して、媒体Aを−Y方向に搬送させ、カラーパッチ31における第1行目を、キャリッジ13(測定対象領域R)に対向する走査直線上に位置させる(ステップS3)。
なお、以降の説明にあたり、カラーパッチ31は、Y方向に沿ってJ行配置されており、カラーパッチ31における測定対象の行数を変数j(jは1〜Jの整数)にて示す。ステップS3では、変数j=1がセットされることで、走査制御手段181は、第1行目のカラーパッチ群30がプラテン122上に位置するように、媒体Aを搬送する。また、ステップS3では、走査制御手段181は、キャリッジ13を−X側端部(初期位置X=0)に移動させる。
図9は、カラーパッチに対する測定対象領域の位置と、出力値の変化と、キャリッジの移動時間との関係を示す図である。上記ステップS3の後では、キャリッジ13は、−X側端部の初期位置に位置しているため、測定対象領域Rは、図9に示すように、スタートバー32よりも−X側に位置している。
媒体Aとして白色紙面を用いている場合、制御ユニット15は、この初期位置の白色紙面に対する分光測定を実施する。すなわち、制御ユニット15は、光源171Aを点灯させて、フィルター制御手段184により、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を順次変化させ、初期波長から20nm間隔となるnバンド(例えば16バンド)の受光部173の出力値をそれぞれ取得する。また、制御ユニット15は、受光部173に光が入射していない状態での出力値(暗電圧)を測定する。これには、例えば光源171Aを消灯させた状態で受光部173からの出力値を取得してもよく、例えば分光器17の導光部174に、光路に対して進退可能な遮光板を設け、遮光板により受光部173への光の入射を遮断した上で、受光部173からの出力値を取得してもよい。
なお、本実施形態では、媒体Aが白色紙面の例を示したが、その他の色であってもよい。この場合では、媒体Aの色(各波長に対する反射率)が既知であるため、キャリブレーション時の各波長の出力値から基準出力値を算出できる。また、カラーチャート3の形成時に、スタートバー32の−X側に、基準色となる白色カラーパッチを形成してもよい。この場合、インク顔料として白色を有する場合、媒体Aによらず反射率が既知となる白色カラーパッチを形成することができる。
つまり、光源171Aの発光特性及び受光部173の受光感度特性が既知であるため、光源171Aの発光特性及び受光部173の受光感度特性を掛け合せた分光特性と、ステップS4での出力値の波形とを比較することで、V−λデータに基づく印加電圧に対する透過波長と、実際に印加した電圧に対する透過波長とのずれを検出することが可能となる。この場合、測定結果に基づいて、例えばV−λデータを補正することで、波長可変干渉フィルター5のキャリブレーションを実施できる。
また、媒体Aの初期位置に対して、所定波長(例えば初期波長である700nm)の反射率又は吸収率が他の波長と比べて高い補正用カラーパッチを形成してもよい。例えば、初期波長に対する反射率のみが高い補正用カラーパッチを配置する場合では、各波長に対する分光測定を実施し、反射率のピーク(初期波長)が検出された電圧と、V―λデータに記録された初期波長に対する電圧とが一致するか否かを判定し、ずれている場合は、V−λデータを補正する。
ステップS4の後、制御ユニット15は、カラーチャート3のカラーパッチ群30の各カラーパッチ31を測定するための測定範囲Mを設定する(ステップS5)。
なお、以降の説明に当たり、図9に示すように、1つのカラーパッチ31のX方向に沿う−X側端部(マイナス側端部)を第一パッチ端部311、+X側端部(プラス側端部)を第二パッチ端部312とする。本実施形態では、カラーパッチ群30におけるi番目のカラーパッチ31の第一パッチ端部311は、i−1番目のカラーパッチ31の第二パッチ端部312と一致し、i番目のカラーパッチ31の第二パッチ端部312は、i+1番目のカラーパッチ31の第一パッチ端部311と一致する。また、本実施形態では、測定対象領域Rは、直径r(測定幅寸法r)の円形のスポットであり、その−X側端部を第一測定領域端部R1、+X側端部を第二測定領域端部R2とする。また、本実施形態では、測定対象領域Rにおける円中心点を基準点Rbとする。
また、走査制御手段181は、キャリッジ13をX方向に沿って等速運動(速度v)で走査させる。
さらに、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に駆動電圧を印加した後、駆動電圧に応じた透過波長の光が透過されるまでの時間(フィルター駆動時間)Tnは、例えば波長可変干渉フィルターの検査時において予め測定しておくことで取得できる。従って、nバンド分の光の光量(出力値)を取得するために必要な時間は、n×Tnとなり、その期間において測定対象領域RがX方向に移動する測定距離Wm(図9参照)は、Wm=v×(n×Tn)となる。実際に測色を実施する際には、この測定距離Wmを移動する間、測定対象領域Rがカラーパッチ31の領域内に収まっている必要があるので、測定範囲Mとして、少なくとも下記式(1)を満たす必要がある。
r+Wm<Wp …(1)
したがって、本実施形態では、第一パッチ端部311に第一測定領域端部R1が重なる位置よりも、所定のマージンa1(第一距離)だけ+X側の位置を開始位置M1とし、第二パッチ端部312に第二測定領域端部R2が重なる位置よりも、所定のマージンa2(第二距離)だけ−X側の位置を終了位置M2とした測定範囲Mを設定する。
したがって、測定範囲設定手段183は、下記式(2)を満たすように、マージンa1,a2を設定し、測定範囲Mを設定する。なお、これらのマージンa1,a2としては、同値であることが好ましい。実際に分光測定を実施する際には、測定範囲Mがどちらの方向に移動するか予想がつかないため、+X側及び−X側に同値のマージンa1,a2を設定することで、分光測定時の信頼性を高めることができる。
r+(a1+a2)+Wm=Wp …(2)
よって、測定対象領域Rがスタートバー32を超えたタイミングを基準位置として、キャリッジ13を速度vで等速直線運動させた際の移動時間により、測定対象領域Rの位置を検出することが可能となる。つまり、本実施形態では、測定範囲設定手段183は、測定範囲Mの設定として、測定対象領域Rの基準点Rbが、各カラーパッチ31の開始位置M1に移動する時間(測定開始時間)、基準点Rbが、各カラーパッチ31の終了位置M2に移動する時間(測定終了時間)を算出する。したがって、測定開始時間から測定終了時間までの間が、本発明における第一期間となり、実際にカラーパッチ31の対する分光測定が実施される時間となる。
また、基準位置から最初のカラーパッチ31の開始位置M1までの距離は、図9に示すように、「W0+a1」となる。したがって、基準タイミングT0から、最初のカラーパッチ31における開始位置M1までの(基準点Rbの)移動時間(測定開始時間)Tm1(1)は、下記式(3)となり、終了位置M2までの移動時間(測定終了時間)Tm2(1)は、下記式(4)となる。
Tm1(1)=(W0+a1)/v …(3)
Tm2(1)=Tm1(1)+Wm/v=(W0+a1+Wm)/v …(4)
Tm2(i)=Tm1(i)+Wm/v
(=Tm2(i−1)+Wp/v) …(5)
(ただし、i≧2)
r+(a1(i)+a2(i))+Wm=Wp(i) …(7)
Tm1(i)=Tm1(i−1)+(r+Wm+a2(i−1)+a1(i))/v
(=Tm2(i−1)+(r+a2(i−1)+a1(i))/v)…(8)
Tm2(i)=Tm2(i−1)+(r+a2(i−1)+a1(i)+Wm)/v
(=Tm1(i)+Wm/v) …(9)
(ただし、i≧2)
ステップS5の後、以下に示す走査測定処理を実施する。
図10は、エラーが発生していない状態での出力値の波形例を示す図である。
図11は、エラー発生時の出力値の波形例を示す図である。
図10及び図11において、下段は、カラーパッチ31に対する測定対象領域Rの位置を示している。また、中段の信号波形は、上記測定対象領域Rの位置に対する受光部173からの出力値の波形を示している。また、上段の信号波形は、波長可変干渉フィルター5における反射膜54,55のギャップ寸法に応じた信号であり、例えば、反射膜54,55を容量検出量電極と機能させた際の電気容量の変化を示している。
この後、走査制御手段181は、キャリッジ13をX方向に沿って移動させる(ステップS7)。また、制御ユニット15は、受光部173からの出力値を所定のサンプリング周期で取得し、メモリ153に記憶する。さらに、フィルター制御手段184は、サンプリングされた出力値を監視し、基準タイミングT0を特定して、基準タイミングT0からの経過時間tをカウントする(ステップS8)。
そして、フィルター制御手段184は、基準タイミングT0からの経過時間tがステップS5にて設定された測定開始時間Tm1(i)となったか否かを判定する(ステップS9)。すなわち、測定対象領域Rの基準点Rbが、測定範囲Mにおける開始位置M1に位置したか否か(基準点Rbが初期位置をX=0として、X=Xm1(i)(=v×Tm1(i)に移動したか否か)を判定する。
ステップS9において、「Yes」と判定された場合、制御ユニット15は、測定範囲Mに対する分光測定を実施する(ステップS10)。具体的には、フィルター制御手段184は、V−λデータに基づいて、静電アクチュエーター56に印加する電圧を順次変更する。これにより、所定波長域におけるnバンドの光に対する出力値(例えば400nm〜700nmにおける20nm間隔の波長の光に対する16個の出力値)が制御ユニット15に出力される。制御ユニット15は、これらの出力値を適宜メモリ153に記憶する。
ここで、フィルター制御手段184は、図10及び図11の上段の信号波形に示すように、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を徐々に増加させて、ギャップGの間隔寸法を徐々に小さく(透過波長を徐々に短く)する。これにより、ギャップ寸法の変動間隔が小さくなり、可動部521の変位時の振動を抑えることができる。すなわち、波長可変干渉フィルター5の透過光を切り替えるために必要なフィルター駆動時間Tnを短縮することができるので、測定範囲Mを縮小でき、カラーパッチ31から測定範囲Mが外れるエラーを抑えることができる。
なお、本例では、ギャップ寸法を徐々に減少させる例を示すが、これに限定されない。例えば、初期波長を400nmに設定(初期電圧を最大値に設定)し、分光測定時に静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を徐々に小さく(透過波長を徐々に長く)してもよい。
また、ギャップGを、測定終了時の400nmに対応したギャップ寸法から初期波長700nmに対応したギャップ寸法まで戻す際に、段階的に駆動電圧を切り替える等してもよい。さらには、透過波長を、初期波長である700nmから40nm間隔で400nmまで徐々に短くなるように変化させた後、420nmから40nm間隔で680nmまで徐々に長くなるように変化させてもよい。このような場合、分光測定が終了した後、透過波長を初期波長に戻す際に、可動部521の急激な変位が抑制される。したがって、可動部521の振動をより効果的に抑えることができ、終了位置M2での第二出力値V2(i)の変動を抑えることができる。
ステップS11において、「No」と判定された場合は、経過時間が測定終了時間Tm2(i)となるまで待機する。
ステップS11において、「Yes」と判定された場合は、フィルター制御手段184は、静電アクチュエーター56に印加する電圧を初期電圧に戻し、初期波長の光を波長可変干渉フィルター5から透過させる。
なお、経過時間tが測定終了時間Tm2(i)となる前に、nバンドの光に対する分光測定が終了している場合は、フィルター制御手段184は、分光測定終了時点で、静電アクチュエーター56に印加する電圧を初期電圧に戻してもよい。
ステップS12において、「No」と判定された場合は、ステップS9に戻る。
ステップS12において、「Yes」と判定された場合、図7に示すエラー判定処理に進む。つまり、判定手段185は、メモリ153に記憶された各カラーパッチ31に対する分光測定結果に基づいて、測定範囲Mが対応する1つのカラーパッチ31の領域内に収まっているか否かを判定する。
具体的には、判定手段185は、各カラーパッチ31に対する分光測定結果を参照し、開始位置M1において受光部173から出力された第一出力値V1(i)、及び、終了位置M2において受光部173から出力された第二出力値V2(i)が、所定の第二閾値以上となるカラーパッチ31を選択する(ステップS13)。なお、第二閾値としては、例えば、ノイズ成分と受光部173からの検出信号とを判別できる程度の値が設定されていればよい。
しかしながら、例えば、プリンター10に加わる振動等によって、キャリッジ13の移動速度や位置が変化した場合や、媒体Aの設置位置が変化した場合、図11に示すように、カラーパッチ31に対する測定範囲Mの位置がずれ、測定範囲Mの一部がカラーパッチ31から外れる場合がある。この場合、第一出力値V1(i)及び第二出力値V2(i)が異なる値となり、エラー判定値Cが大きくなる。
したがって、このエラー判定値Cが第一閾値以上となるか否かを判定することで、カラーパッチ31の領域内に測定範囲Mが収まっているか否か(カラーパッチ31に対して測定範囲Mの位置ずれがあるか否か)を判定することができる。
なお、第一閾値としては、光学フィルターデバイス172に加わる振動や静電アクチュエーター56の駆動に起因した可動部521の共振による透過波長の変動幅等に基づいて設定されればよい。例えば、図9に示す波形拡大図のように、出力値をサンプリングした際の信号波形は、微細振幅で振動する波形となる。したがって、第一閾値として、図9に示すように、微細振動の最大振幅及び最小振幅の差αを設定すればよい。
つまり、カラーパッチ31に対して、上述のように、測定範囲Mが位置ずれしている場合、全カラーパッチ31に対する分光測定結果において、第一出力値V1(i)及び第二出力値V2(i)が異なる値となり、全カラーパッチ31に対してエラーが出力されるはずである。
これに対して、一部のカラーパッチ31でのみ、エラー判定値Cが第一閾値以上となる場合(ステップS15で、「No」と判定された場合)は、例えば電気的なノイズや、機械的な振動による外乱ノイズによって、偶発的にエラーが生じたと予測される。
この場合、判定手段185は、例えばメモリ153に記憶されたエラーカウンタの値E(初期値E=0)に「1」を加算し(ステップS16)、エラーカウンタの値Eが所定の最大値Emax(例えば「4」)を越えたか否かを判定する(ステップS17)。
一方、ステップS17において、「Yes」と判定された場合、エラーが発生する他の要因があると判断でき、強制終了処理を実施する(ステップS18)。つまり、ステップS15で「No」と判定された場合でも、偶発的なエラーが何度も発生する場合は、他のエラー要因があると考えられる。
強制終了処理では、走査制御手段181は、供給ユニット11及び搬送ユニット12を制御し、媒体Aを強制排出させる。また、分光測定時においてエラーが発生している旨を報知する。例えば図示略のディスプレイに表示させたり、プリンター10に接続されているパーソナルコンピューター等の外部機器20に表示させたり、音声によりエラー発生を知らせる。
そして、判定手段185は、ステップS17と同様、エラーカウンタの値Eが所定の最大値Emax(例えば「4」)を越えたか否かを判定する(ステップS20)。
ステップS20にて「Yes」と判定された場合は、ステップS18の強制終了処理に移る。
一方、ステップS20において、「No」と判定された場合は、エラー復帰処理に移る。
エラー復帰処理では、まず、ずれ方向検出手段187により、ずれ方向検出処理を実施する(ステップS21)。
図12A、図12B、図13A及び図13Bは、カラーパッチ31に対して測定範囲Mがずれた際の出力値の信号波形の一例を示す図である。
本実施形態では、上述したように、隣り合う3つのカラーパッチ31における初期波長に対する反射率が、交互に増減するカラーパッチ群30が形成される。
したがって、i番目のカラーパッチ31の初期波長に対する反射率が、隣接する、i−1番目及びi+1番目のカラーパッチ31よりも高い場合、図12A及び図12Bのような山型(凸型)の波形の分光測定結果(出力値変化)が得られる。一方、i番目のカラーパッチ31の初期波長に対する反射率が、隣接する、i−1番目及びi+1番目のカラーパッチ31よりも低い場合、図13A及び図13Bのような谷型(凹型)の波形の分光測定結果が得られる。
ステップS21では、ずれ方向検出手段187は、まず、較正用印刷データに基づいて、i番目のカラーパッチ31に対する出力値変化が、山型(凸型)であるか、谷型(凹型)であるかを判定する。つまり、各カラーパッチ31は較正用印刷データに基づいて形成されるので、i番目のカラーパッチ31に対する初期波長に対する反射率が、i−1番目及びi+1番目のカラーパッチ31に対して高いか低いかは、較正用印刷データに基づいて容易に判定することができる。
例えば、図12A及び図13Aに示すように、i−1番目のカラーパッチ31に対する第二出力値V2(i−1)、i番目のカラーパッチ31に対する第一出力値V1(i)、i番目のカラーパッチ31に対する第二出力値V2(i)、i+1番目のカラーパッチ31に対する第一出力値V1(i+1)に基づいて、出力値変化が山型であるか、谷型であるかを判定してもよい。
具体的には、下記式(10)〜(12)の条件を満たす場合、ずれ方向検出手段187は、出力値変化が山型(凸型)であると判定する。
V1(i)>V2(i−1) …(10)
V1(i)>V1(i+1) …(11)
V2(i)>V1(i+1) …(12)
V1(i)<V2(i−1) …(13)
V2(i)<V2(i−1) …(14)
V2(i)<V1(i+1) …(15)
また、図12Bに示すように、出力値変化が山型であり、第一出力値V1(i)と第二出力値V2(i)との関係が、V1(i)<V2(i)となる場合、ずれ方向検出手段187は、位置ずれの方向が−X側である(測定開始時間が早すぎる)と判定する。
また、図13Bに示すように、出力値変化が谷型であり、第一出力値V1(i)と第二出力値V2(i)との関係が、V1(i)>V2(i)となる場合、ずれ方向検出手段187は、位置ずれの方向が−X側である(測定開始時間が早すぎる)と判定する。
ステップS21の後、ずれ量算出手段186は、測定範囲Mのカラーパッチ31に対するずれ量を算出する(ステップS22)。
以下、ずれ量算出手段186によるずれ量の算出方法の一例を説明する。
図14A及び図14Bは、エラーが検出された場合の出力値の波形の一部を拡大した図であり、図14Aは、測定範囲Mが−X側にずれた場合、図14Bは、測定範囲が+X側にずれた場合の信号波形である。
波長可変干渉フィルター5の透過波長を初期波長に設定した状態で、測定対象領域Rが、隣接する他のカラーパッチ31に移る場合、測定対象領域Rの面積が十分に小さく、キャリッジ13の移動速度vが速ければ、受光部173からの出力値は、略線形的に変化する。
この線形部BのX方向に沿った距離は、測定範囲Mがカラーパッチ31の領域内に収まっている場合、測定対象領域Rの幅寸法(直径r)となる。しかしながら、測定範囲Mが位置ずれして、カラーパッチ31の領域内に収まっていない場合は、線形部BのX方向に沿った距離が短くなる。
従って、測定範囲Mが−X側にずれている場合では、図14Aに示すように、線形部BのX方向に沿った距離が直径rとなる点P1から、開始位置M1までの距離Lが、カラーパッチ31の領域内に測定範囲Mを収めるために必要な移動量となる。また、測定範囲Mが+X側にずれている場合では、図14Bに示すように、線形部BのX方向に沿った距離が直径rとなる点P2から、終了位置M2までの距離Lが、カラーパッチ31の領域内に測定範囲Mを収めるために必要な移動量となる。
また、測定範囲Mが+X側に位置ずれしている場合、図14Bに示すように、エラー判定値Cと、i番目の第二出力値V2(i)及びi+1番目の第一出力値V1(i+1)の差の絶対値D2(=|(V2(i)−V1(i+1)|)を用いて、β=(C+D2)/rとして算出できる。
つまり、線形部Bの傾きβは、互いに隣接する2つのカラーパッチ31に対する開始位置M1及び終了位置M2の出力値に基づいて算出することができる。
つまり、ずれ量算出手段186は、測定範囲Mが−X側にずれている場合、出力値V1(i),V2(i),V2(i−1)と、測定対象領域Rの径寸法rと、マージンa1と、に基づいて、ずれ量xC1を算出する。
ステップS21のずれ方向検出処理、及びステップS22のずれ量算出処理の後、測定範囲設定手段183は、ステップS21にて検出されたずれ方向と、ステップS22にて算出されたずれ量に基づいて、測定範囲Mの位置、測定開始時間Tm1(i)、及び測定終了時間Tm2(i)を補正する(ステップS23)。
具体的には、測定範囲設定手段183は、ずれ方向が−X側である場合、測定開始時間が早いことを意味するので、測定開始時間をxC1/vだけ遅らせる。
また、ずれ方向が+X側である場合、測定開始時間が遅いことを意味するので、測定開始時間をxC2/vだけ早める。
つまり、測定範囲設定手段183は、先に設定されていた測定開始時間をTM1(i)、測定終了時間をTM2(i)として、下記式(16)〜(19)のように測定開始時間Tm1(i)、測定終了時間Tm2(i)を補正する。
(ずれ方向が−X側の場合)
Tm1(i)=TM1(i)+xC1/v …(16)
Tm2(i)=TM2(i)+xC1/v …(17)
(ずれ方向が+X側の場合)
Tm1(i)=TM1(i)−xC2/v …(18)
Tm2(i)=TM2(i)−xC2/v …(19)
ステップS14において、「No」と判定され、カラーチャート3のj行目のカラーパッチ群30における全カラーパッチ31に対して、エラー判定値Cが第一閾値以下である(エラー無)と判定された場合、走査制御手段181は、変数jに「1」を加算し(ステップS24)、変数jが、カラーパッチ群30の最終行に対応した最大値J以上となったか否かを判定する(ステップS25)。
ステップS25において、「No」と判定された場合は、走査制御手段181は、第j行目のカラーパッチ群30がプラテン122上に位置するように、媒体Aを搬送する(ステップS26)。この後、ステップS6に戻る。なお、各カラーパッチ31に対するパッチ幅Wpがカラーパッチ群30毎に異なる場合は、ステップS26の後、ステップS5に戻り、測定範囲Mを設定する。
ステップS25において、「Yes」と判定された場合(カラーチャート3における全カラーパッチ31に対してエラー無く分光測定処理が終了した場合)、走査制御手段181は、搬送ユニット12を制御して排紙動作を行い、媒体Aを排出させる(ステップS27)。
この後、キャリブレーション手段189は、較正用印刷データに記録された各カラーパッチの色度と、ステップS28により算出された色度とに基づいて、メモリ153に記憶された印刷プロファイルデータを更新する(ステップS29)。
本実施形態では、キャリッジ移動ユニット14は、波長可変干渉フィルター5を有する分光器17を備えたキャリッジ13をX方向に移動させることで、媒体A上に設けられたカラーパッチ31に対して分光器17の測定対象領域RをX方向に沿って移動させる。
この際、制御ユニット15は、フィルター制御手段184により、設定された測定範囲Mに対する測定対象領域Rの位置に応じて波長可変干渉フィルター5から透過させる光の波長を変更する。つまり、フィルター制御手段184は、キャリッジ13がX方向に走査され、測定対象領域Rの基準点Rbが測定範囲Mの開始位置M1に位置する測定開始時、及び基準点Rbが終了位置M2に位置する測定終了時に、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に初期電圧を印加して、透過波長を初期波長に設定する。さらに、フィルター制御手段184は、測定対象領域Rの基準点Rbが開始位置M1から終了位置M2までの測定範囲M内を移動する間(第一期間)に、静電アクチュエーター56に印加する電圧を順次切り替えて、透過波長を順次変化させる。
そして、判定手段185は、測定対象領域Rが開始位置M1に位置した際の受光部173からの第一出力値V1(i)と、測定対象領域Rが終了位置M2に位置した際の受光部173からの第二出力値V2(i)とを比較する。
このように、第一出力値V1(i)及び第二出力値V2(i)を比較することで、測定範囲Mが、カラーパッチ31に対して適切な位置に設定されているか否かを容易に判別することができる。また、キャリッジ13を移動させた状態で、測定範囲Mに対する分光測定を実施できるので、例えば、カラーパッチ31上でキャリッジ13を停止させて分光測定を実施する場合に比べて、迅速な分光測定を実施できる。
これにより、ノイズの影響を受けやすい低い信号レベルの出力値を省き、ノイズの影響を受けにくい高い信号レベルの出力値に基づいて測定範囲Mの位置ずれ判定を精度よく実施できる。
このようなマージンa1,a2を設けることで、例えば、機械的な振動等によって、カラーパッチ31に対する測定範囲Mの位置が僅かにずれた場合でも、マージンa1,a2内のずれの場合では、エラーが出力されず、カラーパッチ31に対する正常な分光測定を実施でき、測色手段188による各カラーパッチ31に対する測色処理を精度よく実施することができる。
つまり、ずれ方向検出手段187は、カラーパッチ31とその周囲色の初期波長に対する反射率に基づいて、波長可変干渉フィルター5の透過光の波長を初期波長に固定した状態でキャリッジ13をX方向に走査した際の出力値が山型波形となるか谷型波形となるかを判定できる。そして、山型波形で、かつ、V1(i)>V2(i)であれば位置ずれ方向が+X側、V1(i)<V2(i)であれば位置ずれ方向が−X側であると判定でき、谷型波形で、かつ、V1(i)>V2(i)であれば位置ずれ方向が−X側、V1(i)<V2(i)であれば位置ずれ方向が+X側であると判定できる。すなわち、ずれ方向検出手段187は、出力値の信号波形が判別できれば、測定範囲Mの位置ずれを判定するための第一出力値V1(i)及び第二出力値V2(i)を用いて容易に位置ずれ方向を検出することができる。
これにより、測定範囲設定手段183により、測定範囲Mを再設定する際に、測定範囲Mを移動させるべき量が算出されているので、これに基づいて、測定範囲Mを適切な位置に再設定(補正)することができる。
つまり、ずれ量算出手段186は、各カラーパッチ31の測定範囲Mの位置ずれを判定するための第一出力値V1(i)及び第二出力値V2(i)に基づいて容易に、ずれ量を算出することができる。
この場合、制御ユニット15の内部タイマーを用いてキャリッジ13の位置を特定でき、例えば、キャリッジ13の位置を位置センサーや距離センサーにより検出する場合に比べて構成の簡略化、小型化を図れる。
次に、本発明に係る第二実施形態について説明する。なお、以降の説明に当たり、第一実施形態と同様の構成、同様の処理については、同符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
上述した第一実施形態では、X方向に連続して配置された複数のカラーパッチ31において、初期波長に対する反射率が交互に増減する(出力値の波形が山型又は谷型となる)例を示した。これに対して、第二実施形態では、配列されたカラーパッチ31の初期波長に対する反射率変化が不明な場合でも、測定範囲Mの位置ずれの方向を検出できる点で上記第一実施形態と相違する。
これに対して、第二実施形態では、ずれ方向検出手段187は、以下の方法により、測定範囲Mの位置ずれの方向を検出する。
本実施形態では、初期波長の光を用いたステップS21におけるずれ方向検出処理において、i番目のカラーパッチに対する第一出力値V1(i)及び第二出力値V2(i)の他、第三出力値V3(i)(本発明の第三測定値)及び第四出力値V4(i)(本発明の第四測定値)を取得し、これらの出力値に基づいて、ずれ方向を検出する。
第三出力値V3(i)は、測定対象領域Rが、開始位置より前の所定の開始前位置M3に位置した際に、受光部173から出力される出力値である。
この開始前位置M3としては、測定範囲Mが正常な位置に設定されている場合に、測定対象領域Rの全体が、第一パッチ端部311を超えてから、開始位置M1に至るまでの間に設定されている。つまり、開始位置M1よりもマージンa1よりも小さい距離a3(第三距離)だけ−X側の位置を開始前位置M3とする。
また、終了後位置M4としては、測定範囲Mが正常な位置に設定されている場合に、測定対象領域Rの全体が、終了位置M2から第二パッチ端部312に差し掛かる前までの間に設定されている。つまり、終了位置M2よりもマージンa2よりも小さい距離a4(第四距離)だけ+X側の位置を終了後位置M4とする。
本実施形態では、ずれ方向検出手段187は、図16Aに示すように、第一出力値V1(i)と第三出力値V3(i)との差の絶対値が第一閾値より大きく、第二出力値V2(i)と第四出力値V4(i)との差の絶対値が第一閾値以下である場合に、測定範囲Mが−X側に位置ずれしていると判定する。
また、ずれ方向検出手段187は、図16Bに示すように、第一出力値V1(i)と第三出力値V3(i)との差の絶対値が第一閾値以下であり、第二出力値V2(i)と第四出力値V4(i)との差の絶対値が第一閾値より大きい場合に、測定範囲Mが+X側に位置ずれしていると判定する。
次に、本発明に係る第三実施形態について説明する。
上述した第一実施形態及び第二実施形態では、測定対象領域Rが直径rの円形スポットとなる例を示したが、第三実施形態では、測定対象領域Rが矩形スポットである点で上記各実施形態と相違する。
しかしながら、例えば、カラーパッチ31の分光画像を取得して、カラーパッチの色むら等を考慮した色度測定を行う場合等では、比較的大きい(所定の第三閾値以上の)面積の測定対象領域Rの光をCCDセンサー等のイメージセンサーにより構成された受光部173により受光させる。
この場合、出力値の変化は、図17に示すようになる。
図17は、円形スポットとなる測定対象領域Rの径寸法が大きい場合に、分光器17によりカラーパッチ31に対する分光測定処理を実施した際の出力値の変化を示す図である。
この場合、上記第一実施形態と同様に、傾きβ(=(C+D1)/r)を算出して距離LをL=C/βを算出すると、本来算出すべき点P1から開始位置M1までの距離ではなく、点P1よりも手前(−X側)の点P3までの距離を算出してしまうことになり、僅かな誤差が生じる。
本実施形態における測定対象領域Qは、X方向に沿う測定パッチ幅Wpを有し、X方向に沿った平行な2辺、X方向に直交するY方向に対して平行な2辺を有する矩形状となる。
このような形状の測定対象領域Qを用いた場合、当該測定対象領域Qの面積が大きい場合であっても、カラーパッチ31の端部311,312を跨いで隣接するカラーパッチ31に移動した際の出力値の変化波形は、第一実施形態と同様の線形状となる。したがって、上述した第一実施形態と同様の方法により、高精度にずれ量を算出することができる。
設ける。これにより、入射光のうちアパーチャーと通過した矩形状の測定対象領域Qの光のみが受光部173に受光される。また、矩形状の反射鏡174Aを用い、反射鏡174Aの外周に例えば黒色枠を設ける等の構成としてもよい。
上記各実施形態において、本発明の移動機構として、キャリッジ13を+X方向に移動させるキャリッジ移動ユニット14を例示したがこれに限定されない。
例えば、キャリッジ13を固定し、媒体Aをキャリッジ13に対して移動させる構成としてもよい。この場合、キャリッジ13の移動に伴う波長可変干渉フィルター5の振動を抑制でき、波長可変干渉フィルター5の透過波長を安定化させることができる。
また、X方向に沿って複数配置されたカラーパッチ31に対して、測定対象領域RをX方向に沿って走査させる例を示したが、カラーパッチ31に対して測定対象領域RをY方向に沿って走査させてもよい。この場合、搬送ユニット12によって媒体AをY方向に送ることで、測定対象領域Rをカラーパッチ31に対して相対移動させることができる。なお、この場合では、本発明における一方向(走査方向)はY方向となるので、測定範囲設定手段183は、測定範囲Mをカラーパッチ31に対してY方向に沿って設定する。つまり、搬送ユニット12による紙送り速度vに基づいて、各カラーパッチ31に対する測定開始時間及び測定終了時間を設定すればよい。
上記各実施形態において、X方向に複数のカラーパッチ31が隣接配置されたカラーパッチ群30を例示したが、各カラーパッチ31の間に隙間が設けられる構成などとしてもよい。この場合、媒体Aが白色紙面である場合、波長可変干渉フィルター5からの透過光を初期波長に固定してキャリッジ13をX方向に走査した際、カラーパッチ31における出力値の信号波形は山型波形となる。また、媒体Aが黒色紙面である場合や、カラーパッチ31間に黒色のフレームを配置する場合では、カラーパッチ31における出力値の信号波形は谷型波形となる。したがって、各カラーパッチ31の初期波長に対する反射率が不明でも、上記第一実施形態の方法により位置ずれ方向を容易に検出することができる。
さらに、カラーチャート3において、複数のカラーパッチ31が配置される例を示したが、例えば単一のカラーパッチ31のみが配置され、当該カラーパッチ31に対して測色処理を実施してもよい。
上記各実施形態では、キャリッジ13を+X側に移動させる間に、各カラーパッチ31に対する分光測定処理を実施する例を示したが、キャリッジ13を−X側に移動させる間に、各カラーパッチ31に対する分光測定処理を実施してもよい。
また、カラーチャート3に配置される奇数行目のカラーパッチ群30に対してはキャリッジ13を+X側に移動する間に分光測定処理を実施し、偶数行目のカラーパッチ群30に対しては、キャリッジ13を−X側に移動する間に分光測定処理を実施してもよい。
この場合、カラーチャート3が、キャリッジ13の移動範囲の中心を通りY方向と平行な仮想線に対して線対称な形状であり、各カラーパッチのパッチ幅Wpが同一である場合は、キャリッジ13を+X側に移動させる場合の測定開始時間Tm1(i)及び測定終了時間Tm2(i)に対する時間を、キャリッジ13を−X側に移動させる場合の測定開始時間Tm1(i)及び測定終了時間Tm2(i)として適用できる。なお、カラーチャート3における各カラーパッチ群30における各カラーパッチのパッチ幅Wpが異なる場合や、前記仮想線に対して線対称な形状となっていない場合は、ゴールバー33から測定対象領域Rを−X側に移動させた際の測定開始時間Tm1(i)及び測定終了時間Tm2(i)をそれぞれ設定する。
上記各実施形態において、ステップS13において、第一出力値V1(i)及び第二出力値V2(i)が第二閾値以上となるカラーパッチ31を選択し、その選択されたカラーパッチ31の出力値に基づいて測定範囲Mの位置ずれ判定を実施したが、これに限定されない。例えば、全カラーパッチ31における第一出力値V1(i)及び第二出力値V2(i)に基づいて、測定範囲Mの位置ずれ判定を実施してもよい。
上記各実施形態では、測定範囲Mを設定する際に、マージンa1,a2を設定したが、これに限定されない。
例えば、測定範囲設定手段183は、マージンを設けずに測定範囲Mを設定してもよい。この場合、開始位置M1は、第一パッチ端部311と第一測定領域端部R1とが重なる位置(測定対象領域Rがカラーパッチ31の領域内に入った直後)となり、終了位置M2は、第二パッチ端部312と第二測定領域端部R2とが重なる位置(測定対象領域Rがカラーパッチ31外に出る直前)となる。このような測定範囲Mを設定すると、測定距離Wmを広く設定でき、1つの波長の光を検出するための時間を長くでき、波長可変干渉フィルター5を駆動した際の可動部521の振動が確実に静止した状態での、透過光の光量を取得できる。よって、測定範囲Mの位置ずれがない場合では、高精度な分光測定処理を実施でき、これにより、カラーパッチ31に対する分光測定処理の精度も向上できる。
また、測定距離Wmが固定されている(バンド数n及びフィルター駆動時間Tnが固定されている)場合では、カラーパッチ31のパッチ幅Wpを短くすることもでき、1行のカラーパッチ群30により多くのカラーパッチ31を配置することができる。
上記各実施形態では、測定範囲設定手段183は、カラーパッチ31のパッチ幅Wp、測定対象領域Rの径寸法r、測定範囲Mにおける測定バンド数n、及び1回の分光測定に要するフィルター駆動時間Tnに基づいて、マージンa1,a2を設定した後、開始位置M1及び終了位置M2に対する測定開始時間Tm1(i)及び測定終了時間Tm2(i)を設定したが、これに限定されない。
例えば、カラーパッチ31に対して予めマージンa1,a2が設定されていてもよい。
また、波長可変干渉フィルター5の透過光を初期波長に固定した状態でキャリッジ13を走査し、受光部173からの出力値の波形に基づいて、カラーパッチ31のパッチ幅Wpを算出し、算出されたパッチ幅Wpに基づいて、マージンa1,a2を設定してもよい。
さらに、この場合では、算出されたパッチ幅Wpが、所定値以上の十分なマージンa1,a2を設定するために、十分な寸法となっているか否か、また、nバンドの分光測定を実施するための測定範囲Mの測定距離Wmが十分な寸法となっているか否かを判定し、マージンの寸法や測定距離Wmが不十分であると判定した場合に、測定範囲Mにおける測色回数(バンド数n)を減少させる等してもよい。
上記実施形態において、測定範囲設定手段183は、測定対象領域Rがスタートバー32を超える位置を基準位置とし、測定対象領域Rが、基準位置から開始位置M1及び終了位置M2まで移動するのに要する時間を、それぞれ測定開始時間及び測定終了時間として設定したが、これに限定されない。
例えば、キャリッジ13が−X側の最端部に位置する状態(初期位置)を基準位置として、初期位置からの各カラーパッチ31に対する測定範囲Mの測定開始時間及び測定終了時間を設定してもよい。
また、各カラーパッチ31に対する測定開始時間及び測定終了時間として、測定対象領域Rの全域が前段に配置されたカラーパッチ31の第二パッチ端部312を超えるタイミングを基準に、測定開始時間及び測定終了時間を設定してもよい。
すなわち、波長可変干渉フィルター5を透過する光を初期波長に固定した状態で、X方向に沿ってキャリッジ13を走査させると、測定対象領域Rがカラーパッチ31の端部311(312)を跨いで移動している際に、略線形状に出力値の信号波形が変化し、測定対象領域Rがカラーパッチ31の領域内に完全に入ると出力値が略一定となる。したがって、出力値が一定となったタイミングを検出し、このタイミングからの経過時間により開始位置M1及び終了位置M2を判定してもよい。
この場合では、測定範囲設定手段183は、測定対象領域Rがマージンa1だけ進んだ位置が開始位置となるので、測定開始時間Tm1は、Tm1=a1/vとして設定する。また、測定範囲Mの幅寸法をWmとして、測定終了時間Tm2を、Tm2=Tm1+Wm/vとして算出する。
このような測定開始時間及び測定終了時間を設定する場合、複数のカラーパッチ31の全てにおいて測定範囲Mが位置ずれすることがない。したがって、エラーが検出された一部のカラーパッチ31に対して再測定を実施すれば、容易に全カラーパッチ31に対する分光測定結果を得ることができ、測定時間を短くできる。
上記実施形態では、ずれ量算出手段186及びずれ方向検出手段187により、測定範囲Mが位置ずれした際のずれ量やずれ方向を求めたが、これに限定されない。
例えば、測定範囲Mがカラーパッチ31の領域内に収まっていないと判定された場合、測定範囲設定手段183により測定範囲Mを所定方向に微小量ずつ変化させて再設定させ、再度分光測定を実施し、これを繰り返すことで、測定範囲Mを適切な位置に設定してもよい。
上記実施形態では、測定範囲設定手段183は、基準位置からの測定開始時間及び測定終了時間を算出したが、これに限定されない。
例えば、キャリッジ13の位置を位置センサーや、キャリッジ移動ユニット14の駆動モーターの回転角度及び回転数に基づいて、X方向におけるキャリッジ13の位置(測定対象領域Rの位置)を検出してもよい。この場合、測定範囲設定手段183は、各カラーパッチ31に対する開始位置M1及び終了位置M2の位置を設定し、フィルター制御手段184は、検出された位置に基づいて、静電アクチュエーター56に印加する電圧を制御してもよい。
上記各実施形態において、判定手段185は、受光部173からの出力値に基づいて、測定範囲Mが適切であるか否かを判定したが、例えば、分光測定に基づいて算出された反射率(V1(i)/Vref(λ), V2(i)/Vref(λ))に基づいて、測定範囲Mが適切であるか否かを判定してもよい。
上記各実施形態において、フィルター制御手段184は、測定範囲Mに対する測定開始時及び測定終了時において、本発明の第一波長として初期波長に設定する例を示したが、これに限定されない。
例えば、測定開始時及び測定終了時において、測定範囲Mにおける初期波長とは異なる所定の第一波長(例えば400nm等)に設定してもよい。この場合、i番目のカラーパッチ31に対する測定終了時間Tm2(i)から、i+1番目のカラーパッチ31に対する測定開始時間Tm1(i+1)までの時間においても同様に、設定された第一波長に設定する。
また、上記各実施形態では、測定開始時及び測定終了時において、初期駆動電圧を印加して初期波長に設定する例を示したが、例えば、静電アクチュエーター56に電圧を印加しない状態で、波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長を、第一波長として設定してもよい。
制御ユニット15において、ユニット制御回路152が設けられる構成を例示したが、上記のように、各制御ユニットが制御ユニット15とは別体で、各ユニットにそれぞれ設けられていてもよい。例えば、分光器17に波長可変干渉フィルター5を制御するフィルター制御回路、受光部173を制御する受光制御回路が設けられる構成としてもよい。また、分光器17に、マイコンやV−λデータを記憶した記憶メモリが内蔵され、当該マイコンがフィルター制御手段184、判定手段185、測色手段188として機能してもよい。
印刷部16として、インクタンクから供給されたインクを、ピエゾ素子を駆動させて吐出させるインクジェット型の印刷部16を例示したが、これに限定されない。例えば、印刷部16としては、ヒーターによりインク内に気泡を発生させてインクを吐出する構成や、超音波振動子によりインクを吐出させる構成としてもよい。
また、インクジェット方式のものに限定されず、例えば熱転写方式を用いたサーマルプリンターや、レーザープリンター、ドットインパクトプリンター等、如何なる印刷方式のプリンターに対しても適用できる。
分光器17として、媒体Aに対する法線方向から光源部171の光を照射し、媒体Aにより45°で反射された光を導光部174により波長可変干渉フィルター5に入射させる構成例を示したが、これに限定されない。
例えば、媒体Aの表面に対して45°の角度で光を入射させ、媒体Aの法線方向に反射された光を、波長可変干渉フィルター5を介して受光部173で受光させる構成としてもよい。
また、媒体Aを45°で反射する光を、波長可変干渉フィルター5を介して受光部173で受光したが、例えば30°等、45°以外で反射された光を受光してもよい。すなわち、媒体Aにて正反射された光が受光部173に受光されないように、受光部173及び波長可変干渉フィルター5の光軸の角度を設定すればよい。
上記各実施形態では、説明の便宜上、キャリッジ13が等速直線運動を行う区間にカラーパッチ31を設けて、測定開始時間Tm1(i)、測定終了時間Tm2(i)を設定したが、これに限定されない。
例えば、媒体A上の初期位置近傍にカラーパッチ31を設けてもよい。つまり、初期位置から加速度運動を行う区間内にカラーパッチ31が配置されてもよい。この場合、測定範囲設定手段は、キャリッジ13が加速度運動を行う期間、等速運動を行う期間に対して、それぞれカラーパッチ31に対する測定開始時間Tm1(i)、測定終了時間Tm2(i)を設定する。
さらに、キャリッジ13が、スタートバー32を超えた後も、等速直線運動を行わず、所定の速度パターンにてキャリッジ13の速度が変化する場合では、その速度パターンに基づいて、測定範囲Mに対する測定開始時間Tm1(i)、測定終了時間Tm2(i)を求めてもよい。
上記第三実施形態において、測定対象領域Rの面積が大きい場合では、測定対象領域Rを矩形状とするように、分光器17内にアパーチャーを設ける構成や、反射鏡174Aを矩形状とする構成を例示したがこれに限定されない。
例えば、測定対象領域Rがカラーパッチ31の端部311,312を跨ぐ際の、受光部173からの出力値の信号変化(図17における曲線部分B´)に基づいて、当該曲線を多項式に近似し、近似した多項式に基づいてずれ量(点M1から点P1までの距離L+マージンa1)を算出してもよい。
また、波長可変干渉フィルター5として、入射光から反射膜54,55間のギャップGに応じた波長の光を透過させる光透過型の波長可変干渉フィルター5を例示したが、これに限定されない。例えば、反射膜54、55間のギャップGに応じた波長の光を反射させる光反射型の波長可変干渉フィルターを用いてもよい。また、その他の形式の波長可変干渉フィルターを用いてもよい。
また、筐体6に波長可変干渉フィルター5が収納された光学フィルターデバイス172を例示したが、波長可変干渉フィルター5が直接分光器17に設けられる構成などとしてもよい。
さらに、波長可変干渉フィルター5を備えた光学フィルターデバイス172が、導光部174から受光部173の間に設けられる構成(後分光)を例示したがこれに限定されない。
例えば、光源部171内に波長可変干渉フィルター5、若しくは、波長可変干渉フィルター5を備えた光学フィルターデバイス172を配置し、波長可変干渉フィルター5により分光された光を媒体Aに照射する構成(前分光)としてもよい。
上記各実施形態において、分光測定装置を備えたプリンター10を例示したが、これに限定されない。例えば、画像形成部を備えず、媒体Aに対する測色処理のみを実施する分光測定装置であってもよい。また、例えば工場等において製造された印刷物の品質検査を行う品質検査装置に、本発明の分光測定装置を組み込んでもよく、その他、如何なる装置に本発明の分光測定装置を組み込んでもよい。
測定対象としては、カラーパッチに限定されることなく、任意の物質であってよい。
例えば、ベルトコンベアーに載って移動する食品の異物の検出を行う分光器に本発明を適用することができる。異物として有機物を検出する場合は、近赤外光から中赤外光の分光を行う分光器にするのが好ましい。
上記各実施形態において、本発明の移動機構として、キャリッジ13を一方向(X方向)に沿って移動させるキャリッジ移動ユニット14を例示したがこれに限定されない。
例えば、キャリッジ移動ユニット14を、キャリッジ13をX方向及びY方向に沿って移動可能に構成してもよい。また、キャリッジ13を固定し、媒体Aをキャリッジ13に対してX方向及びY方向に沿って移動させる構成としてもよい。
また、上記構成を採用し、測定対象領域RをXY面に沿った任意の方向に移動させてもよい。すなわち、測定対象と測定対象領域Rとを、XY面に沿って任意の方向に相対移動可能に構成してもよい。例えば、測定対象領域RをXY面に沿って曲線状に走査させてもよいし、走査方向を測定中に変更してもよい。これにより、測定対象領域Rを走査させながら、一直線上にない複数の位置で分光測定を実施することができる。
さらに、測定対象領域Rと測定対象とを三次元的に相対移動させる構成としてもよく、これにより、測定対象の表面が曲面である場合でも分光測定を実施することができる。
測定対象と分光器とが相対移動している間に本発明を適用すればよいことは無論であるが、測定対象と分光器とが相対移動していないとき、又は、測定対象と分光器とが断続的に相対移動するときに本発明を適用することができる。
例えば、第一時刻に測定された第一測定値と第二時刻に測定された第二測定値とを測定対象の同じ位置から得たり、前記第一測定値は測定対象と分光器とが相対移動していない状態で得て、前記第二測定値は測定対象と分光器とが相対移動している状態で得ることも本発明の適用範囲である。
具体的には、例えば、移動機構が停止していても、使用者が不意に測定対象に接触する等の何らかの原因で、分光器と測定対象との相対位置が変化する場合がある。このような場合でも、上記各実施形態と同様に、異なる時刻で得られた第一測定値と第二測定値とを比較することにより、容易かつ迅速に、測定対象に対する測定範囲が適切か否かを判定することができ、測定対象に対する測定範囲の位置ずれが発生した場合はこれを検出することができる。
上記各実施形態では、分光器17が、測定対象からの光を分光する際の分光波長を変更可能な分光素子としての波長可変干渉フィルター5を含む構成を例示したがこれに限定されない。例えば、分光器17が、波長可変干渉フィルター5の代りに、AOTF(音響光学チューナブルフィルター)やLCTF(液晶チューナブルフィルター)やグレーティング等の分光波長を変更可能な各種の分光素子を含む構成としてもよい。
また、分光器17が、分光波長を変更可能な分光素子を含む構成を例示したが、例えば、反射膜54,55間のギャップ寸法が固定された干渉フィルター等の、分光波長が所定の一波長である分光素子を含む構成でもよい。このような場合でも、同一の測定対象の波長について、第一時刻に測定された第一測定値と、第二時刻に測定された第二測定値と、を比較することにより、容易かつ迅速に、測定対象に対する測定範囲が適切か否かを判定することができる。
また、本発明の一適用例に係る分光測定方法は、第一時刻に第一波長の光を測定し、第二時刻に第二波長の光を測定し、第三時刻に前記第一波長の光を測定し、前記第一時刻の測定値である第一測定値と、前記第三時刻の測定値である第二測定値と、を比較することを特徴とする。
すなわち、第一時刻における分光測定の測定対象と、第三時刻における分光測定の測定対象が同一の測定対象の領域内である場合、第一測定値及び第二測定値が同一、又は略同一となる。一方、第一時刻又は第三時刻における分光測定の位置が前記測定対象から外れている場合では、第一測定値及び第二測定値が異なる値となる。よって、第一測定値及び第二測定値を比較することで、容易かつ迅速に、測定対象に対する分光測定が実施されたか否かを判定することができる。また、本適用例では、第一測定値と第二測定値とが同一である場合、第一時刻と第三時刻との間の第二時刻において実施される第二波長に対する分光測定は、同じ測定対象に対する分光測定と見なすことができるので、分光器を停止させて分光測定を行う必要がなく、分光測定に係る時間を短縮することができる。
本適用例では、第一時刻の前に分光器のキャリブレーションを行うことで、第一時刻、第二時刻、及び第三時刻において、分光器により精度の高い分光測定を実施することができる。
上記適用例の分光測定装置において、前記第一時刻、前記第二時刻、及び前記第三時刻は、分光測定の開始から終了までの期間に含まれることが好ましい。また、上記適用例の分光測定方法において、前記第一時刻、前記第二時刻、及び前記第三時刻は、分光測定の開始から終了までの期間に含まれることが好ましい。
上記適用例の分光測定装置において、前記第一時刻は、前記開始の時刻であり、前記第三時刻は、前記終了の時刻であることが好ましい。また、上記適用例の分光測定方法において、前記第一時刻は、前記開始の時刻であり、前記第三時刻は、前記終了の時刻であることが好ましい。
本適用例では、分光測定の期間に含まれる第一時刻における第一測定値と、分光測定の期間に含まれる第三時刻における第二測定値と、を比較することで、第二時刻における分光測定が、測定対象に対するものであるか否かを判定することができる。この際、第一時刻を分光測定の開始時とし、第三時刻を分光測定の終了時とすることで、分光測定の開始から終了までの間に、測定対象に対する分光測定が実施されたか否かを判定することができる。
本適用例では、第一時刻から第三時刻までの間に、分光器と測定対象とが相対移動している場合でも、上記適用例と同様第一測定値と第二測定値とを比較することで、測定対象が同一であるか否かを判定することができる。そして、測定対象に対して分光器を相対動させることで、複数の測定対象を連続して測定する場合に、迅速な処理を実施することができる。
本適用例では、画像形成部により形成された測定対象に対して、分光測定装置により分光測定を行うことができる。また、このような画像形成装置では、形成された測定対象の色が、画像形成部に指令した色と同じ色であるか否かを確認することができ、異なる場合には、分光測定結果に応じて画像形成部にフィードバックすることができる。
また、本発明の一関連技術に係る分光測定方法は、測定対象からの光が入射する波長可変干渉フィルターを含む分光器と、前記分光器を前記測定対象に対して一方向に沿って相対移動させる移動機構と、を含む分光測定装置を用い、カラーパッチを前記測定対象として分光測定を実施する分光測定方法であって、前記分光器を前記一方向に相対移動させ、前記分光器が相対移動されている間の第一期間に、前記波長可変干渉フィルターが通過させる光の波長を変えながら分光測定を行い、前記第一期間における測定開始時、及び測定終了時において前記波長可変干渉フィルターから第一波長の光を通過させ、前記測定開始時の前記分光測定の測定値である第一測定値と、前記測定終了時の前記分光測定の測定値である第二測定値とを比較する。
すなわち、第一期間において分光測定を実施した位置(測定範囲)がカラーパッチの領域内である場合、第一測定値及び第二測定値が同一、又は略同一となる。一方、測定開始時又は測定終了時における分光測定の位置がカラーパッチの領域から外れている場合では、第一測定値及び第二測定値が異なる値となる。よって、第一測定値及び第二測定値を比較することで、容易かつ迅速に、カラーパッチに対する測定範囲が適切か否かを判定することができる。また、本適用例では、分光器をカラーパッチ上で停止させて分光測定を行う必要がなく、分光測定に係る時間を短縮することができる。
本関連技術では、第一測定値と第二測定値との差が小さく、第一閾値以下である場合、測定開始時と測定終了時とにおいて、前記測定位置がカラーパッチ上であったと判断できる。一方、第一測定値と第二測定値との差が第一閾値より大きい場合、測定開始時と測定終了時とのいずれかにおいて、分光器による測定位置がカラーパッチ上になかったと判断できる。
また、分光測定における測定値は、カラーパッチに対して入射する光の光量変動、波長可変干渉フィルターの振動等に影響により、完全に一致することは稀である。したがって、上記のような影響を考慮した値を第一閾値として適宜設定することで、カラーパッチに対して正常に分光測定ができているにも関わらず、測定範囲がずれているとするエラーが出力されることがなく、これによる分光測定の遅延も抑制できる。
本関連技術では、波長可変干渉フィルターからの光を受光する受光部を備える。この場合受光部からの出力信号を測定値として、カラーパッチに対する測定範囲が適切であるか否かを判定できる。したがって、例えば、カラーパッチの第一波長に対する反射率等の算出結果を用いる場合に比べて、容易かつ迅速にカラーパッチに対する測定範囲が適切であるか否かを判定できる。
本関連技術では、フィルター制御手段により波長可変干渉フィルターが通過させる光の波長を制御することができる。
本関連技術では、一方向に並ぶ複数のカラーパッチに対して分光器を相対移動させ、測定値が第二閾値以上であるカラーパッチの第一測定値及び第二測定値を比較する。第一測定値及び第二測定値が小さく、第二閾値未満である場合では、カラーパッチの第一波長に対する反射率が悪く、十分な光量が得られていないため、ノイズ成分等の影響を受けやすい。これに対して、本適用例では、第二閾値以上の第一測定値及び第二測定値を比較するので、上記のようなノイズの影響を受けにくく、カラーパッチに対して測定範囲が適切か否かをより正確に判定できる。
本関連技術では、分光測定装置は、第一期間に対して実施された分光測定の測定範囲がカラーパッチからずれていると判定した場合に、そのずれ方向を検出する。
これにより、測定範囲がどの方向にずれているかを判定できるので、カラーパッチに対して測定範囲を適切に設定するために測定範囲をどの方向にずらすか、つまり、第一期間の測定開始時及び測定終了時を遅らせるか、早めるのかを容易に判断することができる。したがって、測定範囲がずれているとするエラーが出力された場合でも、容易にそのエラーから復帰するエラー復帰処理を実施できる。
本関連技術では、波長可変干渉フィルターから出射される光の波長を第一波長に固定した状態で分光器を一方向に相対移動させ、第一期間に対する分光測定の前に得られた測定値を第三測定値、第一期間に対する分光測定の後に得られた測定値を第四測定値として取得する。そして、第一測定値、第二測定値、第三測定値、及び第四測定値に基づいて、測定範囲のずれ方向を検出する。
ここで、第三測定値及び第四測定値が測定される位置は、それぞれ、カラーパッチに対して適切に測定範囲が設定されている場合における、第一測定位置とカラーパッチの一端との間、及び第二測定位置とカラーパッチの他端との間に設定する。この場合、測定範囲がカラーパッチ内に適切に設定されていれば、第一測定値、第二測定値、第三測定値、及び第四測定値は、同一又は略同一(差が第一閾値以下)となる。一方、測定範囲がずれている場合、位置ずれ方向に応じて、第一測定値及び第三測定値の差、又は、第二測定値及び第四測定値の差が、第一閾値より大きくなる。したがって、これらの4つの測定値を比較することで、容易にずれ方向を検出することができる。
カラーパッチの周囲の第一波長に対する反射率が分かっている場合、波長可変干渉フィルターからの出射光の波長を第一波長に固定した状態で、分光器を一方向に走査させた際に、測定値がカラーパッチで山型に変化するか、谷型に変化するかが容易に判別できる。よって、第一測定値及び第二測定値の大小関係を比較することで、測定範囲のずれ方向を容易に検出できる。例えば、分光器を走査した際に、第一波長の反射率がカラーパッチにおいて山型に変化すると分かっている場合、第一測定値が第二測定値よりも大きい場合は、第一期間の測定開始時及び測定終了時が遅い(測定範囲が一方向の後側にずれている)と判定でき、第一測定値が第二測定値よりも小さい場合は、第一期間の測定開始時及び測定終了時が早い(測定範囲が一方向の前側にずれている)と判定できる。また、第一波長の反射率がカラーパッチにおいて谷型に変化すると分かっている場合、第一測定値が第二測定値よりも大きい場合は、第一期間の測定開始時及び測定終了時が早いと判定でき、第一測定値が第二測定値よりも小さい場合は、第一期間の測定開始時及び測定終了時が遅いと判定できる。
本関連技術では、測定範囲がカラーパッチからずれている場合に、そのずれ量を算出する。これにより、カラーパッチに対して測定範囲を適切に設定するための測定範囲の移動量、つまり、第一期間の測定開始時及び測定終了時を変更する時間が分かるので、エラー復帰処理を容易に実施できる。
測定範囲のずれ方向が前側である場合、所定のカラーパッチに対する第一測定値、第二測定値、及びそのカラーパッチの次に配置されているカラーパッチの第一測定値が判れば、三角関数によりずれ量を算出することができる。また、測定範囲のずれ方向が後側である場合、所定のカラーパッチの第一測定値、第二測定値、及びそのカラーパッチの前に配置されているカラーパッチの第二出力値に基づいて三角関数によりずれ量を算出することができる。すなわち、少なくとも2つの連続するカラーパッチに対する第一測定値及び第二測定値が判れば、ずれ量を容易に算出することができる。
本関連技術では、移動機構は、分光器を等速で相対移動させるので、第一期間に対する測定開始時及び測定終了時に対する分光器の位置を、別途分光器の位置を測定するセンサー等を設けずとも、容易に検出することができる。
本関連技術では、上記の通り、第一測定値及び第二測定値を比較することで、容易かつ迅速に、カラーパッチに対する測定範囲が適切か否かを判定することができる。
また、測定対象はカラーパッチに限られることなく、任意の測定対象において測定範囲が適切か否かを判定することができる。
また、分光測定中に分光器と測定対象とが常に相対移動されている状態に限らず、第一時刻の第一波長の光の測定値である第一測定値と、第二時刻の前記第一波長の光の測定値である第二測定値と、を比較することで、任意の測定対象において適切な測定が行われているか否かを判定することができる。
Claims (16)
- 測定対象からの光が入射する分光器と、
前記分光器と前記測定対象とを相対移動させる移動機構と、
を含み、
第一時刻の第一波長の光の測定値である第一測定値と、第二時刻の前記第一波長の光の測定値である第二測定値と、を比較することを特徴とする分光測定装置。 - 測定対象からの光が入射する波長可変干渉フィルターを含む分光器と、
前記分光器を前記測定対象に対して一方向に沿って相対移動させる移動機構と、を含み、
前記測定対象がカラーパッチである場合、前記分光器が前記一方向に相対移動されている間の第一期間に、前記波長可変干渉フィルターが通過させる光の波長を変えながら分光測定を行い、前記第一期間における測定開始時、及び測定終了時において前記波長可変干渉フィルターから第一波長の光を通過させ、前記測定開始時の前記分光測定の測定値である第一測定値と、前記測定終了時の前記分光測定の測定値である第二測定値と、を比較する
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項2に記載の分光測定装置において、
前記第一測定値と前記第二測定値との差が第一閾値以下であるか否かを判定する
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項2又は請求項3に記載の分光測定装置において、
前記分光器は、前記波長可変干渉フィルターから出射された光を受光する受光部を備え、
前記受光部からの出力値を前記測定値として、前記第一測定値及び前記第二測定値を比較する
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の分光測定装置において、
前記分光器及び前記移動機構を制御する制御部をさらに含む
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項5に記載の分光測定装置において、
前記制御部は、前記波長可変干渉フィルターを通過させる光の波長を変えるフィルター制御手段を含む
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の分光測定装置において、
前記一方向に沿った複数の前記カラーパッチに対して前記分光測定を実施し、前記測定値が第二閾値以上である前記カラーパッチを選択して、前記選択された前記カラーパッチの前記第一測定値及び前記第二測定値を比較する
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の分光測定装置において、
前記第一測定値と前記第二測定値との差が第一閾値以下であるか否かを判定し、前記第一測定値及び前記第二測定値の差が前記第一閾値より大きい場合、前記第一測定値を測定した際の前記分光器の位置である第一位置と、前記第二測定値を測定した際の前記分光器の位置である第二位置とが、前記カラーパッチの領域内で前記分光測定を実施した際の前記第一位置及び前記第二位置に比べてずれている方向を検出する
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項8に記載の分光測定装置において、
前記第一期間の前に、前記分光器を前記一方向に相対移動させながら前記第一波長の光で前記分光測定を行った際の測定値である第三測定値と、前記第一期間の後に、前記分光器を前記一方向に相対移動させながら前記第一波長の光で前記分光測定を行った際の測定値である第四測定値と、前記第一測定値と、前記第二測定値とに基づいて、前記方向を検出する
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項8に記載の分光測定装置において、
前記カラーパッチの周囲色の前記第一波長に対する反射率と、前記第一測定値と、前記第二測定値とに基づいて、前記方向を検出する
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項2から請求項10のいずれか1項に記載の分光測定装置において、
前記第一測定値と前記第二測定値との差が第一閾値以下であるか否かを判定し、前記第一測定値及び前記第二測定値の差が前記第一閾値より大きい場合、前記第一測定値を測定した際の前記分光器の位置である第一位置と、前記第二測定値を測定した際の前記分光器の位置である第二位置とが、前記カラーパッチの領域内で前記分光測定を実施した際の前記第一位置及び前記第二位置に比べてずれているずれ量を算出する
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項11に記載の分光測定装置において、
連続して配置された2つ以上の前記カラーパッチに対する前記第一測定値及び前記第二測定値に基づいて、前記ずれ量を算出する
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項2から請求項12のいずれか1項に記載の分光測定装置において、
前記移動機構は、前記分光器を等速で前記一方向に移動させる
ことを特徴とする分光測定装置。 - 請求項2から請求項13のいずれか1項に記載の分光測定装置と、
画像形成対象に画像を形成する画像形成部と、を備えた
ことを特徴とする画像形成装置。 - 分光器が測定対象からの光を分光測定し、
前記分光器と前記測定対象とは相対移動可能であり、
第一時刻の第一波長の光の測定値である第一測定値と、第二時刻の前記第一波長の光の測定値である第二測定値と、を比較することを特徴とする分光測定方法。 - 測定対象からの光が入射する波長可変干渉フィルターを含む分光器と、前記分光器を前記測定対象に対して一方向に沿って相対移動させる移動機構と、を含む分光測定装置を用い、カラーパッチを前記測定対象として分光測定を実施する分光測定方法であって、
前記分光器を前記一方向に相対移動させ、
前記分光器が相対移動されている間の第一期間に、前記波長可変干渉フィルターが通過させる光の波長を変えながら分光測定を行い、
前記第一期間における測定開始時、及び測定終了時において前記波長可変干渉フィルターから第一波長の光を通過させ、
前記測定開始時の前記分光測定の測定値である第一測定値と、前記測定終了時の前記分光測定の測定値である第二測定値とを比較する
ことを特徴とする分光測定方法。
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