JP2017131167A - 種子皮膜用鉄粉、種子用コーティング材及び鉄コーティング種子 - Google Patents

種子皮膜用鉄粉、種子用コーティング材及び鉄コーティング種子 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、容易かつ確実に種子外面全体に付着させることができる量産性に優れる種子皮膜用鉄粉及び種子用コーティング材を提供することにある。【解決手段】本発明に係る種子皮膜用鉄粉は、種子外面に付着される種子皮膜用鉄粉であって、不定形の酸化鉄粉と、目開き106μmの篩を通過する割合が90質量%以上のアトマイズ鉄粉とを含み、見掛け密度が2.51g/cm3以上3.18g/cm3以上である。上記酸化鉄粉の上記アトマイズ鉄粉に対する質量比が1以下であるとよい。上記酸化鉄粉のうち目開き150μmの篩を通過する割合が92質量%以上であるとよい。本発明に係る種子用コーティング材は、上記種子皮膜用鉄粉と、酸化促進剤とを含む。当該種子用コーティング材の見掛け密度は1.99g/cm3以上2.50g/cm3未満であるとよい。【選択図】なし

Description

本発明は、種子皮膜用鉄粉、種子用コーティング材及び鉄コーティング種子に関する。
湛水直播栽培は、水田に直接種を撒く栽培方法であり、育てた苗を水田に植える栽培方法に比べて、省力化を図ることができ、大規模化及び低コスト化が図られる手法である。この湛水直播栽培にあっては、水田における種子の浮遊防止及び鳥害防止のため、種子外面に鉄粉等を付着させた鉄コーティング種子が好適に用いられる。
この鉄コーティング種子は、例えば鉄粉及び焼石膏を混合した種子用コーティング材を種子と共に回転ドラムに投入し、回転ドラムを所定時間回転させ、種子外面に種子用コーティング材が付着することで製造される。この種子外面に付着される鉄粉としては、粒度100μm以下の還元鉄粉を用いることが提案されている(鉄コーティング湛水直播マニュアル2010(独立行政法人農業・食品産業技術研究機構近畿中国四国農業センター出版)参照)。
また、種子表面に鉄粉を強固に付着させるために、鉄粉に硫酸塩等を加え、コーティングに際して鉄粉の酸化反応を行う鉄コーティング種子の製造方法が提案されている(特開2005−192458号公報参照)。この公報には、金属鉄粉として上記還元鉄粉のほかアトマイズ鉄粉を用いること、さらには酸化鉄粉等を用いることが記載され、また酸化鉄粉等を用いる場合に金属鉄粉を多く含有させることが記載されている。
しかし、種子皮膜用鉄粉として還元鉄粉を用いる場合、鉄コーティング種子の量産化に課題がある。
また、特開2005−192458号公報に記載のように、酸化鉄粉と共に金属鉄粉を用い、金属鉄粉の含有量を多くすると、種子外面の平らな部分に鉄粉が付着し難くなり、コーティング時間の長時間化を招くことが判明した。逆に、金属鉄粉の量を少なくすると、コーティングに際して鉄粉全量のうち種子に未付着の量が多くなり、この未付着の鉄粉が固まることで鉄粉のダマが発生することが判明した。このダマの発生は、コーティング時間の長時間化のみならず、鉄コーティング種子の散布時に上記ダマが崩壊することで散布機等の故障を招くおそれがある。
特開2005−192458号公報
鉄コーティング湛水直播マニュアル2010(独立行政法人農業・食品産業技術研究機構近畿中国四国農業センター出版)
本発明は、上記不都合に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、容易かつ確実に種子外面全体に付着させることができる量産性に優れる種子皮膜用鉄粉及び種子用コーティング材を提供すること、並びに容易かつ確実に製造できる鉄コーティング種子を提供することにある。
本発明者らは、不定形の酸化鉄粉と所定粒度以下のアトマイズ鉄粉との双方を用い、その見掛け密度を調整することで、種子外面全体に容易かつ確実に種子皮膜用鉄粉を付着させることができることを見出した。
つまり、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る種子皮膜用鉄粉は、種子外面に付着される種子皮膜用鉄粉であって、不定形の酸化鉄粉と、目開き106μmの篩を通過する割合が90質量%以上のアトマイズ鉄粉とを含み、見掛け密度が2.51g/cm以上3.18g/cm以上である。
当該種子皮膜用鉄粉は、不定形の酸化鉄粉と、粒度100μm以下のアトマイズ鉄粉とを含むので、種子外面全体に亘って的確に付着される。また、還元鉄粉ではなくアトマイズ鉄粉を用いるので、当該種子皮膜用鉄粉は量産性に優れる。特に、当該種子皮膜用鉄粉は、見掛け密度が2.51g/cm以上であることで、種子へのコーティングに際して鉄粉のダマの発生が的確に抑制され、また見掛け密度が3.18g/cm以上であることで、当該種子皮膜用鉄粉が短時間で種子全体に亘って付着し、コーティングを比較的短時間に完了することができる。
なお、「篩を通過する割合」とは、JIS−Z8801(2006)に示される標準篩を用い、ロータップ試験機により、篩を通過する割合を意味する。また、「見掛け密度」とは、JIS−Z2504(2012)に示される方法で、粉末を直径5mmのオリフィスを用い、測定対象物(当該種子皮膜用鉄粉)を落下させて測定したものである。以下で述べる「篩を通過する割合」及び「見掛け密度」に関しても同様である。なお、アトマイズ鉄粉が「篩を通過する割合」とは、当該種子皮膜用鉄粉におけるアトマイズ鉄粉全質量に対する上記篩を通過するアトマイズ鉄粉の質量の割合を意味する。
上記酸化鉄粉の上記アトマイズ鉄粉に対する質量比が1以下であるとよく、これにより当該種子皮膜用鉄粉は種子へのコーティングに際して鉄粉のダマの発生がより的確に抑制される。
上記酸化鉄粉は、目開き150μmの篩を通過する割合が92質量%以上であるとよく、これにより当該種子皮膜用鉄粉は種子外面全体に亘ってより的確に付着できる。なお、酸化鉄粉が「篩を通過する割合」とは、当該種子皮膜用鉄粉における酸化鉄粉全質量に対する篩を通過する酸化鉄粉の質量の割合を意味する。
また、本発明に係る種子用コーティング材は、当該種子皮膜用鉄粉と酸化促進剤とを含む。当該種子用コーティング材は、上記構成からなる当該種子皮膜用鉄粉を含むので、鉄粉のダマの発生が的確に抑制される。また、当該種子用コーティング材は、当該種子皮膜用鉄粉において還元鉄粉ではなくアトマイズ鉄粉を用いるので量産性に優れる。さらに、当該種子コーティング材は、比較的短時間にコーティングを完了することができ、容易かつ確実に種子外面全体に亘って付着される。また、コーティング後に酸化促進剤によってアトマイズ鉄粉が酸化されることで、当該種子用コーティング材は強固に種子に付着される。
当該種子用コーティング材は、見掛け密度が1.99g/cm以上2.50g/cm以上であるとよく、これにより種子外面全体に亘ってより容易かつ確実に付着される。
さらに、本発明に係る鉄コーティング種子は、種子と、この種子外面に付着された当該種子用コーティング材とを含む。当該鉄コーティング種子は上述のように容易かつ確実に種子外面全体に亘って付着されるので、当該鉄コーティング種子は容易かつ確実に製造できる。
以上のように、本発明の種子皮膜用鉄粉及び種子用コーティング材は、容易かつ確実に種子外面全体に付着させることができ、また量産性に優れる。また、本発明の鉄コーティング種子は、容易かつ確実に製造できる。
以下、本発明に係る種子皮膜用鉄粉、種子用コーティング材及び鉄コーティング種子について説明する。
[種子皮膜用鉄粉]
本発明の一実施形態の種子皮膜用鉄粉は、種子外面に付着されるものであり、具体的には、後述する酸化促進剤と共に種子用コーティング材を構成し、この種子用コーティング材と種子とを撹拌しつつ混合することによって当該種子皮膜用鉄粉は種子外面に付着される。
当該種子皮膜用鉄粉は、不定形の酸化鉄粉と、粒度100μm以下のアトマイズ鉄粉とを含み、上記酸化鉄粉及びアトマイズ鉄粉が混合された混合粉体である。なお、本発明の種子皮膜用鉄粉は、酸化鉄粉及びアトマイズ鉄粉以外の他の粉末等を含んでも良いが、本実施形態の種子皮膜用鉄粉は、他の粉末等を含まず、上記酸化鉄粉及びアトマイズ鉄粉のみから構成されている。
当該種子皮膜用鉄粉の見掛け密度は2.51g/cm以上である。見掛け密度がこの下限未満であると、種子へのコーティングに際して鉄粉のダマが生ずるおそれがある。この見掛け密度の下限は、2.82g/cmが好ましく、これによって上記鉄粉のダマの発生をより確実に抑制できる。
一方、当該種子皮膜用鉄粉の見掛け密度は3.18g/cm未満である。見掛け密度がこの上限以上であると、鉄粉が種子全体に亘って付着するまでの時間を要し、コーティング時間の増加を招くおそれがある。この見掛け密度の上限は、3.15g/cmが好ましく、3.08g/cmがより好ましく、これによってコーティング時間をより短縮できる。
(アトマイズ鉄粉)
アトマイズ鉄粉としては、不活性ガスを用いるガスアトマイズ鉄粉を用いることも可能であるが、安価かつ量産性に優れる水アトマイズ鉄粉を用いることが好ましい。アトマイズ鉄粉は、Fe(鉄)を95質量%以上含むことが好ましい。つまり、Fe以外の全成分は、製造上不可避の不純物成分を含めて、5質量%以下であることが好ましい。この製造上不可避の不純物成分としては、例えばガス不純物成分としてのO(酸素)、C(炭素)、及びN(窒素)が挙げられる。
上記アトマイズ鉄粉は、全体形状が比較的球状に近い形状を有している。このアトマイズ鉄粉の見掛け密度(酸化鉄粉と混合される前のアトマイズ鉄粉の見掛け密度)は、3.18g/cmである。
アトマイズ鉄粉は、目開き106μmの篩を通過する割合が90質量%以上である。この下限としては、95質量%が好ましく、99質量%がより好ましい。このアトマイズ鉄粉は、目開き75μmの篩を通過する割合が90質量%以上であることが好ましく、この下限としては、97質量%がより好ましい。このアトマイズ鉄粉は、目開き63μmの篩を通過する割合が80質量%以上であることが好ましく、この下限としては、85質量%がより好ましい。このアトマイズ鉄粉は、目開き45μmの篩を通過する割合が50質量%以上であることが好ましく、この下限としては、58質量%がより好ましい。アトマイズ鉄粉の大きさが上記範囲内であることで、アトマイズ鉄粉によって種子を容易かつ確実にコーティングできる。つまり、種子は外面に大きな凹凸と小さな凹部(幅が数十μmの凹部)を有しており、上記アトマイズ鉄粉は、種子外面の小さな凹部に的確に入り込んで、種子外面を容易かつ確実にコーティングできると考えられる。
(酸化鉄粉)
酸化鉄粉としては、鋼板作製時に発生するスケールを好適に用いることができる。具体的には、鋼板のショットブラスト工程において剥離したスケールを集塵機で回収したものを用いることができる。
酸化鉄粉の組成は、主として酸化鉄を含む。この酸化鉄としては、Fe(マグネタイト)、FeO(ウスタイト)、Fe(ヘマタイト)、FeSiO(ファイヤライト)等が挙げられる。酸化鉄粉中に未酸化のFe成分が残存していても良く、例えば5質量%以上10質量%以下の未酸化のFe成分が酸化鉄粉の組成中に含まれていても良い。
上記酸化鉄粉は、上述のように不定形の形状をなし、扁平した薄板形状を有するものが好適に用いられる。この酸化鉄粉の見掛け密度(アトマイズ鉄粉と混合する前の酸化鉄粉の見掛け密度)は、1.8g/cm以上が好ましく、1.9g/cm以上がより好ましい。また、酸化鉄粉の見掛け密度は、2.1g/cm未満が好ましく、2.0g/cm未満がより好ましい。酸化鉄粉の見掛け密度が上記範囲内であることで、この酸化鉄粉をアトマイズ鉄粉と混合することで、当該種子皮膜用鉄粉の見掛け密度を容易かつ確実に調整することができる。
この酸化鉄粉は、目開き150μmの篩を通過する割合が92質量%以上であることが好ましく、この下限としては99質量%がより好ましい。この酸化鉄粉は、目開き106μmの篩を通過する割合が82質量%以上であることが好ましく、この下限としては、99質量%がより好ましい。この酸化鉄粉は、目開き75μmの篩を通過する割合が60質量%以上であることが好ましく、この下限としては、81質量%がより好ましい。この酸化鉄粉は、目開き63μmの篩を通過する割合が52質量%以上であることが好ましく、この下限としては、71質量%がより好ましい。この酸化鉄粉は、目開き45μmの篩を通過する割合が39質量%以上であることが好ましく、この下限としては、53質量%がより好ましい。酸化鉄粉の大きさが上記範囲内であることで、酸化鉄粉によって種子外面を確実にコーティングすることができる。つまり、酸化鉄粉は、上述した種子の大きな凹凸部分に的確に付着することで、種子を容易かつ確実にコーティングすることができると考えられる。
(配合比)
上記アトマイズ鉄粉及び酸化鉄粉は、当該種子皮膜用鉄粉が上述の見掛け密度の範囲内となるような配合比で配合される。当該種子皮膜用鉄粉における酸化鉄粉のアトマイズ鉄粉に対する質量比としては1以下であることが好ましい。この質量比の上限としては、0.34がより好ましい。この質量比が上記上限を超えると、当該種子皮膜用鉄粉の見掛け密度が小さくなり過ぎ、種子へのコーティング時に鉄粉のダマが発生するおそれがある。
また、当該種子皮膜用鉄粉における酸化鉄粉のアトマイズ鉄粉に対する質量比としては0超である。この質量比の下限としては0.05が好ましく、0.1がより好ましい。上記質量比が上記下限に満たないと、見掛け密度が大きくなり過ぎ、種子へのコーティング時間が長時間化するおそれがある。
[種子コーティング材]
当該種子コーティング材は、上記構成からなる当該種子皮膜用鉄粉と、酸化促進剤とを含んでいる。
酸化促進剤は、コーティング後の種子皮膜用鉄粉の酸化を促進するためのものであり、焼石膏(硫酸カルシウム)が好適に用いられる。なお、酸化促進剤としては、硫酸カリウム、塩化カリウム等を用いることも可能である。
当該種子コーティング材において上記酸化促進剤の当該種子皮膜用鉄粉に対する割合は特に限定されるものではないが、例えば当該種子皮膜用鉄粉100質量部に対して上記酸化促進剤を5質量部以上10質量部以下含有させるとよい。
当該種子コーティング材の見掛け密度は、1.99g/cm以上であることが好ましく、2.16g/cm以上であることがより好ましい。これにより、種子へのコーティング時に当該種子皮膜用鉄粉のダマが発生しにくい。
一方、当該種子コーティング材の見掛け密度は、2.50g/cm未満であることが好ましく、2.49g/cm未満であることがより好ましく、2.45g/cm未満であることがさらに好ましい。これにより、種子へのコーティング時間を短縮することができる。
[鉄コーティング種子]
当該鉄コーティング種子は、種子と、この種子外面に付着された上記構成からなる当該種子用コーティング材とを含んでいる。種子としては、水耕栽培される種子が好適に用いられ、例えばイネ種子が好適に用いられる。
当該鉄コーティング種子において当該種子コーティング材の種子に対する割合は特に限定されるものではないが、例えば種子100質量部に対して当該種子コーティング材を50質量部以上60質量部以下含有させるとよい。
[鉄コーティング種子の製造方法]
次に、当該鉄コーティング種子の製造方法について説明する。
当該鉄コーティング種子の製造方法は、当該種子皮膜用鉄粉を製造する工程と、当該種子コーティング材を製造する工程と、種子へ当該種子コーティング材をコーティングする工程とを有する。
当該種子皮膜用鉄粉の製造工程は、上記酸化鉄粉及び上記アトマイズ鉄粉を所定の配合量で混合する工程である。上記酸化鉄粉及び上記アトマイズ鉄粉は、当該種子皮膜用鉄粉の見掛け密度が上述の所定範囲内となるよう所定の配合量で混合される。
当該種子コーティング材の製造工程は、上記製造工程によって得られた当該種子皮膜用鉄粉と、上記酸化促進剤とを混合する工程である。当該種子皮膜用鉄粉及び上記酸化促進剤は、当該種子コーティング材の見掛け密度が上述の所定範囲内となるよう所定の配合量で混合される。
上記コーティング工程は、上記製造工程によって得られた当該種子コーティング材と、コーティング対象である種子とを撹拌しつつ混合することで、種子外面に当該種子コーティング材を付着させる工程である。種子に対する当該種子コーティング材の配合量は特に限定されるものではないが、種子100質量部に対して当該種子コーティング材を50質量部以上60質量部以下配合するとよい。
また、上記コーティング工程においては、混合している種子及び当該種子コーティング材に水を必要に応じて供給しても良い。つまり、例えば水をスプレー等によって供給することで、種子外面に付着している当該種子コーティング材の酸化反応を進行させ、これにより当該種子コーティング材の種子への付着強度を向上させることができる。さらに、コーティング工程を行なっている際に、混合している種子及び当該種子コーティング材に必要に応じて酸化促進剤を追加して供給しても良い。これにより、種子外面に付着している当該種子コーティング材の酸化反応を進行させることも可能である。
上記コーティング工程は、種子外面全体に亘って種子コーティング材が付着されたことを目視で確認できるまで継続され、このコーティングに要する時間(コーティング時間)は、7分以内であることが好ましく、6分以内であることがより好ましい。なお、このコーティング時間の下限は、種子外面全体に亘って種子コーティング材が付着される限り特に限定されないが、例えば3分以上であると良い。
また、当該鉄コーティング種子の製造方法は、上記コーティング工程後に種子コーティング材が外面に付着された種子に対して水分を供給して皮膜を酸化させる工程、及び酸化後に乾燥する工程を有するとよい。
なお、上記説明においては、当該鉄コーティング種子の製造方法として、当該種子皮膜用鉄粉の製造工程、当該種子コーティング材の製造工程、及びコーティング工程とを有するものについて説明したが、当該種子皮膜用鉄粉、種子及び酸化促進剤の三者を共に撹拌しつつ混合することによって種子外面に種子皮膜用鉄粉を付着させることも可能である。つまり、上述のように製造された種子皮膜用鉄粉と種子とを撹拌しつつ混合し、その後に種子皮膜用鉄粉と種子との混合物に酸化促進剤を供給し、三者を共に撹拌しつつ混合することによって鉄コーティング種子を製造することも可能である。
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[種子皮膜用鉄粉、種子コーティング材及び鉄コーティング種子の製造]
見掛け密度が3.18g/cmのアトマイズ鉄粉と、見掛け密度1.99g/cmの酸化鉄粉Aと、見掛け密度1.91g/cmの酸化鉄粉Bとを用意した。
酸化鉄粉Aは、鋼板のショットブラスト工程で発生したものを集塵機で回収した酸化鉄粉を用いた。酸化鉄粉Bは、酸化鉄粉Aを目開き106μmの篩を振るった篩下粉を用いた。
上記アトマイズ鉄粉並びに酸化鉄粉A及び酸化鉄粉Bの粒度分布は表1に示す通りである。表1において「篩」の欄の数値は目開きを意味し、アトマイズ鉄粉並びに酸化鉄粉A及び酸化鉄粉Bそれぞれについて各目開きにおいて篩上に残留する量の全量に対する質量%を記載している。なお、この酸化鉄粉Bは、酸化鉄粉Aを目開き106μmの篩を振るった篩下粉を用いたため、酸化鉄粉Bが目開き106μmの篩を通過する割合は略100質量%である。ただし、酸化鉄粉が不定形であるため、150μm及び106μmの篩で少量(合計0.6質量%)残留した。
Figure 2017131167
また、集塵機で回収した酸化鉄粉の化合物組成は、酸化鉄粉の表面及び断面においてそれぞれ表2に示す通りである。なお、この化合物組成は、株式会社リガク製「X線回析装置RINT−TTRIII」を用いて測定し、断面については酸化鉄粉を樹脂に埋め込んだ後に研磨した断面を測定した。
Figure 2017131167
上記アトマイズ鉄粉と、酸化鉄粉A又は酸化鉄粉Bとを表3に示す割合で混合することで表3の「密度1」で示す見掛け密度のNo.1〜No.11の種子皮膜用鉄粉を製造した。なお、表3の「配合」は、アトマイズ鉄粉100質量部に対して酸化鉄粉A又は酸化鉄粉Bを配合した質量部を意味する。表3の「質量比」は、酸化鉄粉A又は酸化鉄粉Bのアトマイズ鉄粉に対する質量比を意味する。
No.1〜No.11の種子皮膜用鉄粉それぞれを、焼石膏と撹拌しつつ混合することで、No.1〜No.11の種子コーティング材を製造した。表3の「密度2」は、各種子コーティング材の見掛け密度を意味する。種子皮膜用鉄粉及び焼石膏の混合は、V型混合機を用い、30分行った。焼石膏は、吉野石膏販売株式会社製「クボタ農業用焼石膏KTS」を用いた。焼石膏の配合量は、種子皮膜用鉄粉100質量部に対して10質量部とした。
No.1〜No.11の種子コーティング材それぞれ0.55kgを、種子1kgと撹拌しつつ混合することで、No.1〜No.11の鉄コーティング種子を製造した。種子コーティング材及び種子の混合は、株式会社クボタ製「ドラム回転タイプ種子コーティングマシンKC−152」を用いた。種子は、福井県産こしひかりを用いた。上述のように撹拌混合されたNo.1〜No.11の鉄コーティング種子に対して水分を供給して皮膜を酸化させた後に、自然乾燥した。
Figure 2017131167
[評価]
No.1〜No.11の鉄コーティング種子について、コーティング直後の状態、コーティング時間、及び皮膜強度について、評価した。その結果を表3に示す。
コーティング直後の状態は、種子コーティング材及び種子の混合を終了した直後の状態を目視によって観察した。表3の「コーティング直後」の欄のOKは上記状態が良好であったことを示し、NGは鉄粉のダマが発生したことを意味する。
コーティング時間は、種子コーティング材及び種子の全てを投入後から種子外面全面に亘って種子コーティング材が付着されたことを目視で確認するまでの時間であり、各種子コーティング材のコーティング時間を表3の「時間」の欄に記した。
皮膜強度の試験として、コーティング後に酸化された皮膜についての強度を測定するために、上述のように自然乾燥した各鉄コーティング種子2g±0.1gを目開き1mmの篩に乗せて、10分間振動篩処理した。表3の皮膜強度は、上記振動篩処理前の鉄コーティング種子に対する振動篩処理後の篩上の残留物の質量比率(%)を示す。
表3から明らかなように、No.1〜No.5並びにNo.8及びNo.9の種子皮膜用鉄粉は、コーティング直後の状態が良好であった。一方、No.6、No7、No.10及びNo.11の種子皮膜用鉄粉は、コーティング時に鉄粉のダマが発生しており、良好ではなかった。なお、酸化鉄粉を配合せずに表1に示すアトマイズ鉄粉のみからなる種子皮膜用鉄粉を用いて同様に鉄コーティング種子を製造して、同様にコーティング直後の状態を観察したところ、種子コーティング材が付着していない部分が発生しており、良好ではなかった。
また、No.1〜No.5並びにNo.8及びNo.9の種子皮膜用鉄粉は、コーティング時間が8分以内であり、コーティング時間の面においても良好であった。No.2〜No.5並びにNo.8及びNo.9の種子皮膜用鉄粉は、コーティング時間が7分以内であり、コーティング時間が7分超であるNo.1の種子皮膜用鉄粉に比べて良好であった。特に、No.3〜No.5並びにNo.8及びNo.9の種子皮膜用鉄粉は、コーティング時間が6分以内であり、コーティング時間が6分超であるNo.2の種子皮膜用鉄粉に比べて良好であった。
さらに、No.1〜No.5並びにNo.8及びNo.9の種子皮膜用鉄粉は、皮膜強度が96%以上あり、皮膜強度においても優れている。
このようにNo.1〜No.5並びにNo.8及びNo.9の種子皮膜用鉄粉は、コーティング直後の状態、コーティング時間、及び皮膜強度のいずれにおいても優れていた。この中でも、コーティング時間が短いことから、No.2〜No.5並びにNo.8及びNo.9の種子皮膜用鉄粉がより優れ、No.3〜No.5並びにNo.8及びNo.9の種子皮膜用鉄粉が特に優れている。
本発明の種子皮膜用鉄粉、種子コーティング材及び鉄コーティング種子は、湛水直播栽培において好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 種子外面に付着される種子皮膜用鉄粉であって、
    不定形の酸化鉄粉と、目開き106μmの篩を通過する割合が90質量%以上のアトマイズ鉄粉とを含み、
    見掛け密度が2.51g/cm以上3.18g/cm未満である種子皮膜用鉄粉。
  2. 上記酸化鉄粉の上記アトマイズ鉄粉に対する質量比が1以下である請求項1に記載の種子皮膜用鉄粉。
  3. 上記酸化鉄粉のうち目開き150μmの篩を通過する割合が92質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の種子皮膜用鉄粉。
  4. 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の種子皮膜用鉄粉と、酸化促進剤とを含む種子用コーティング材。
  5. 見掛け密度が1.99g/cm以上2.50g/cm未満である請求項4に記載の種子用コーティング材。
  6. 種子と、この種子外面に付着された請求項4又は請求項5に記載の種子用コーティング材とを含む鉄コーティング種子。
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