JP2012196184A - 種子被覆用鉄粉、鉄粉被覆種子 - Google Patents

種子被覆用鉄粉、鉄粉被覆種子 Download PDF

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Abstract

【課題】播種工程のみならず輸送工程においても鉄粉の脱落が少ない被覆が実現できる種子被覆用鉄粉及び該種子被覆用鉄粉を被覆した鉄粉被覆種子を得ること。
【解決手段】本発明に係る種子被覆用鉄粉は、種子を被覆するのに用いる鉄粉であって、
比表面積が0.1m2/g以上、5m2/g未満であり、かつ粒度分布が以下の条件を満たすことを特徴とするものである。
粒子径が63μm以下の鉄粉の質量比率が0%以上70%以下、かつ、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率が30%以上100%以下、かつ粒子径が150μmを越える鉄粉の質量比率が0%以上50%以下
【選択図】 図1

Description

本発明は、種子被覆に好適な種子被覆用鉄粉、及び該種子被覆用鉄粉で被覆された鉄粉被覆種子に関するものである。
農業従事者の高齢化、農産物流通のグローバル化に伴い、農作業の省力化や農産物生産コストの低減が解決すべき課題となっている。これらの課題を解決するために、例えば、水稲栽培においては、育苗と移植の手間を省くことを目的として、種子を圃場に直接播く直播法が普及しつつある。その中でも、種子の比重を高めるために、鉄粉を被覆した種子を用いる手法は、水田における種子の浮遊や流出を防止し、かつ鳥害を防止するというメリットがあることで注目されている。
このように鉄粉を被覆した種子を用いて直播栽培法を活用するためには、輸送や播種の工程において被覆した鉄粉被膜が剥離しにくいことが求められる。鉄粉被膜が剥離すると、種子の比重が低下して前記のメリットが得られなくなるのみならず、剥離した被膜は輸送や播種の工程において、配管の目詰まりや回転機構部への噛み込みの原因となり、剥離した細かい鉄粉が粉塵を生じる原因にもなるからである。このようなことから、鉄粉被膜の剥離は極力抑制しなくてはならない。
稲種子表面に鉄粉を付着、固化させる技術としては、特許文献1に鉄粉被覆稲種子の製造法として以下のような技術が提案されている。
「稲種子に、鉄粉、並びに鉄粉に対する質量比で0.5〜2%の硫酸塩(但し、硫酸カルシウムは除く)及び/又は塩化物を加え、さらに水を添加して造粒し、水と酸素を供給して金属鉄粉の酸化反応によって生成した錆により、鉄粉を稲種子に付着、固化させた後、乾燥させることを特徴とする鉄粉被覆稲種子の製造法。」(特許文献1の請求項1参照)
特許文献1に記載の発明においては、稲種子が動力散布機や播種機を用いて播種されるため、機械的衝撃によって崩壊しない程度の強度特性が必要であることから、製造されたコーティング稲種子について、コーティングの崩壊程度の測定法(以下、コーティングの崩壊試験という)、すなわち1.3mの高さから厚さ3mmの鋼板に5回落下させ、機械的衝撃を与える方法で測定して、コーティングに実用的な強度が得られていることを確認している。
なお、特許文献1においては、特に鉄粉粒度分布に着目はされていないが、以下の表1に示す粒度分布を有する鉄粉をコーティングに使用した場合には、上記の鉄粉被覆稲種子の崩壊試験において、いずれも実用的な衝撃強度を維持できるとしている。
Figure 2012196184
特許第4441645号公報
鉄粉被膜の付着強度に関し、特許文献1においては、特に播種工程における落下による衝撃に起因した鉄粉被覆の崩壊について検討されている。そのため、強度試験として、1.3mの高さから厚さ3mmの鋼板に5回落下させて機械的衝撃を与えるという崩壊試験が行われている。
しかしながら、稲種子は播種工程のみならず、輸送工程においても機械的な外力を受けることは前述の通りである。そして、輸送工程において稲種子が受ける機械的外力は、落下による衝撃の他、種子間もしくは種子と容器間で生じる滑りや転がりの摩擦力である。
落下による衝撃を受けた場合、鉄粉被覆は割れによって剥離するが、摩擦力を受けた場合には、磨り減りにより徐々に剥離するという形態をとる。
したがって、鉄粉被覆を播種工程のみならず輸送工程での鉄粉被膜の剥離を防止するには、摩擦力に対する強度を有する被覆が必要となる。
しかしながら、種子の滑りや転がり摩擦応力に対して十分な強度で稲種子を被覆できる鉄粉や、鉄粉を被覆した種子を実現する技術はなかった。
また、特許文献1に記載の鉄粉の粒度分布は、表1に示されるように、63μm以下の粒径の割合が多い。
しかし、微細な鉄粉を使用した場合には、鉄粉が空気中の酸素と急激に反応し、発熱によって鉄粉を被覆した種子がダメージを受ける可能性や、大量取扱時には火災を引き起こしたりする懸念もある。加えて、微細な鉄粉は粉塵を生じやすいため、清浄な作業環境を維持しにくいという問題もある。
稲種子を鉄粉で被覆した場合、被覆強度を持たせるためには、鉄粉が錆びて鉄粉同士が錆びによって結合する必要がある。したがって、稲種子を鉄粉で被覆した後、早期に被覆強度を持たせるためには、錆びの進行を速くする必要がある。
特許文献1においては、鉄粉は、石膏とともに、かつ電解質溶液と混ぜて籾に被覆されるとしているが、錆びの進行を速くするための手段については何らの開示もなく、被覆に使用する鉄粉に関しても、鉄粉の粒度分布、粒子の形状や断面組織についても特に制限はないが、粒度が小さいものが稲種子に付着しやすく、造粒機を用いた作業は短時間で完了できる、とされている。
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、錆びの発現には、時間がかかり、最低24hr程度、さらに均一に錆びさせるためには、水を散布した後に、数日間放置する必要がある。
したがって、安定したコーティング強度を得るためには、時間を要するという問題もある。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、播種工程のみならず輸送工程においても鉄粉の脱落が少なく、安定した被覆を早期に実現できる種子被覆用鉄粉及び該種子被覆用鉄粉を被覆した鉄粉被覆種子を得ることを目的としている。
発明者は稲種子の表面を観察して、如何なる鉄粉を用いることが剥離防止に効果的であるかについて検討した。
発明者が着目したのは、稲種子の表面の状態である。稲の種籾1の最外殻である籾殻3の表面には、図1に示すように、毛5が生えており、種籾1に鉄粉をコーティングする際には、毛5の弾性的作用によって毛5と毛5の間に配置された鉄粉が毛5に保持されることを通じて、付着力が高まると推察される。
「お米の微視的構造を見る(目崎孝昌 著)」の21ページにも示されているように、前記の毛5の生え方にも粗密がある。特に、毛5が密集した部位において鉄粉が毛5に保持されることによって付着力が高まると考えられるが、この部位における毛5の間隔は50〜150μmである。
このことから、発明者は、毛5による保持作用によって稲種子に強固に付着できる鉄粉の粒子径には適切な範囲があると考え、この保持作用を有効に発揮させるための鉄粉粒子径について検討したところ、粒子径が63μmを越え150μm以下のものが好ましいことを見出した。
このことから、粒子径が63μmを越え150μm以下のものをある程度含むことで、毛5による保持を期待でき、種子の転がりや滑りに伴う、被覆膜の剥離量を小さくできるとの知見を得た。
また、発明者は、稲種子の毛5の保持力による付着の他、毛5をすり抜けて稲種子表面に直接付着する鉄粉粒径についても検討した。
一般に粉体は、粒径が小さいほど被付着物に対する付着力が高い。したがって、稲種子表面に直接付着させるという意味では鉄粉の粒径は小さいことが好ましい。
稲種子の毛5の間をすり抜けて稲種子表面への直接付着が期待できる鉄粉粒径について検討したところ、45μm以下の鉄粉を所定の量含むことが好ましいとの知見を得た。
そして、毛5によって保持される鉄粉に加えて上記微粒径の鉄粉を含有することで、稲種子の表面には微粒径の鉄粉が付着し、その上方には毛5によって鉄粉が保持され、鉄粉が二重コーティングされることになり、種子の転がりや滑りに伴う、被覆膜の剥離量を小さくできるとの知見を得た。
もっとも、微粒径の鉄粉を多量に含むと前述の問題を生ずることから所定の量以下であることも必要である。
また、鉄粉の粒子径が大きすぎると毛5の間隙に入りにくくなるのみならず、鉄粉粒子に作用する重力が大きく、毛5が鉄粉粒子を保持できなくなるので、付着効果が小さくなると推定される。従って粒子径が150μm以上の鉄粉の割合は所定の量以下にするのが好ましいとの知見も得た。
さらに、稲種子を鉄粉で被覆する際に、鉄粉の錆びの進行を促進し、早期に安定した被覆を実現するための手段についても検討した。その結果、鉄粉の比表面積を規定することで、錆びの形成速度を大きくし、短期に被覆作業ができること、また、鉄粉にイオウ(S)を含有させることにより、さらに錆びの形成速度を促進することができることを知見した。
本発明は上記の知見を基になされたものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
(1)本発明に係る種子被覆用鉄粉は、種子を被覆するのに用いる鉄粉であって、
比表面積が0.1m2/g以上、5m2/g未満であり、かつ粒度分布が以下の条件を満たすことを特徴とするものである。
粒子径が63μm以下の鉄粉の質量比率が0%以上70%以下、かつ、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率が30%以上100%以下、かつ粒子径が150μmを越える鉄粉の質量比率が0%以上50%以下
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、イオウ(S)を0.05質量%以上含有することを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、粒子径が45μm以下の鉄粉の質量比率が、0%以上30%以下であることを特徴とするものである。
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、鉄粉が還元法もしくはアトマイズ法で製造されたことを特徴とするものである。
(5)本発明に係る鉄粉被覆種子は、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の種子被覆用鉄粉を種子に被覆してなることを特徴とするものである。
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、種子が稲種子であることを特徴とするものである。
本発明に係る種子被覆用鉄粉は、比表面積が0.1m2/g以上、5m2/g未満であり、かつ粒度分布が「粒子径が63μm以下の鉄粉の質量比率が0%以上70%以下、かつ、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率が30%以上100%以下、かつ粒子径が150μmを越える鉄粉の質量比率が0%以上50%以下」という条件を満たすことにより、種子の表面への付着性に優れると共に、錆の成長に優れるので、種子の被覆を早期にかつ確実に行うことができる。
稲種子の表面の状態を説明する説明図である。
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態に係る種子被覆用鉄粉は、比表面積が0.1m2/g以上、5m2/g未満であり、かつ粒度分布が、粒子径が63μm以下の鉄粉の質量比率が0%以上70%以下、かつ、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率が30%以上100%以下、かつ粒子径が150μmを越える鉄粉の質量比率が0%以上50%以下である
ことを特徴とするものである。
以下、鉄粉の比表面積と粒度分布を上記のように規定した理由を説明する。
<比表面積>
本実施の形態の種子被覆用鉄粉の比表面積は、0.1m2/g以上である。種子被覆用鉄粉の比表面積を0.1m2/g以上としたのは、0.1m2/g未満では、錆び発生速度が遅く、早期に被覆を確実に安定させることができないからである。
また、本実施の形態の種子被覆用鉄粉の比表面積は、5m2/g未満である。種子被覆用鉄粉の比表面積を5m2/g未満としたのは、5m2/g以上では、鉄粉を放置しておくと、自然発熱・発火の危険性が高くなるので好ましくないからである。
種子被覆用鉄粉の比表面積は、鉄粉粒子径の大きさにも関係するが、むしろ鉄粉粒子の表面の性状、例えばポーラスであるとか、ひげ状の表面であるとかにより影響される。そのため、鉄粉の製造工程において、鉄粉比表面積を本発明の範囲になるように制御するのが好ましい。以下においては、鉄粉の製法と比表面積の関係について、詳細を述べる。
鉄粉の製法には、大きく分けて、アトマイズ法と、還元法がある。
まず、アトマイズ法について説明する。
アトマイズ法は、溶鋼をノズルから流下し、そこに水ジェットもしくは、不活性ガスのジェットをぶつけ、細粒化し、鉄粉とするものである。水ジェットを用いるものを水アトマイズ法、ガスジェットによるものをガスアトマイズ法と呼ぶ。
アトマイズ法によって製造された鉄粉の性状は、ガスジェットを使用するのと、水ジェットを使用するのとで大きく異なる。ガスジェットを用いたガスアトマイズ鉄粉は、冷却速度が遅いため、鉄粉の個々の粒子は、球形化する傾向にある。これに対し、水ジェットを用いた水アトマイズ鉄粉では、通常は、冷却速度が速いため、焼入れ組織となり、その粒子形状は、不規則である。
また、表面性状も異なり、水アトマイズ鉄粉の場合には、水と接触するため、酸化は避けられず、ウスタイトのような酸化被膜で覆われている。
上記、製造工程の違いから、一般に、ガスアトマイズ鉄粉の比表面積は小さく、水アトマイズ鉄粉の比表面積は大きい。一般に、粉末冶金用に粒度調整されたもので、水アトマイズ鉄粉の比表面積は、0.5m2/g程度である。また、水アトマイズ鉄粉は、そのままでは、硬くて、プレスに供せないため、水素中800-900℃で、還元したものを粉末冶金用とする。この際、鉄粉の比表面積は、0.05m2/gにまで低下する。但し、水素還元の条件を変えれば、0.05-0.5m2/gの範囲で、比表面積の異なるものを作り分けることは可能である。
次に還元法について説明する。
還元法は、酸化鉄を炭材と混合、もしくは、層状に接触させて、1000℃以上の温度で長時間熱処理し、COガス還元する方法である。この際、原料となる酸化鉄は、鉄鉱石や圧延工程で発生するミルスケールが使用される。この方法では、高温で、長時間かけて鉄の結晶を成長させるため、ヒゲ状に伸びた結晶が絡まるような形で鉄粉粒子ができる。従って、ここでできる還元鉄粉は、アトマイズ鉄粉と比べ、さらに比表面積が大きいと言われている。実際に鉄粉の断面を見てみると、アトマイズ鉄粉は、中実であるのに対し、還元鉄粉は、空隙が多く、その多くは、開気孔となっている。このため、還元鉄粉は比表面積も大きくなっている。
還元鉄粉の比表面積は、一般的には、0.3-0.8m2/gである。還元鉄粉も、製造工程の最後に炉から取り出す際の温度が高いため、表面が若干酸化されている。従って、還元鉄粉も粉末冶金用にするためには、水素で仕上げ還元を行う。水素還元を行うと、アトマイズ鉄粉と同様、比表面積の低下が見られ、0.05-0.1m2/gとなる。なお、還元法の場合もアトマイズ法と同様に、水素仕上げ還元の条件次第で、比表面積の異なる鉄粉を作り分けることができる。
また、最近、酸化鉄を水素還元する方法も実用化されている。この場合、原料は、廃酸から回収した酸化鉄を利用しており、その粒子は、1μm以下と細かく、それを還元してできた鉄粉は、その還元温度にもよるが、0.1-10m2/gと、広範囲に及ぶ。
一般には、粒子径が小さくなればなるほど、比表面積は大きくなるが、上記のように製造方法、製造条件によって、ある程度、自在に粒度分布と、比表面積の異なる鉄粉を作り分けることが可能である。
なお、種子の表面を鉄粉で被覆した際、最終的にネットワークを形成するのは、鉄粉そのものではなく、錆びであるので、鉄粉の形状は、球形でも、不定形でも構わない。ただし、元の鉄粉の形状が不定形であれば、鉄粉粒子同士が絡み合い、錆びた後のネットワーク強度も強くなると考えられる。その意味からは、不定形、より球形度の低い鉄粉の方が好ましい。
<粒度分布>
粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率を30%以上としたのは、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉は種子表面の毛によって保持される確率が高く、このような粒子径のものを30%以上含むことで、毛による保持が期待でき、播種工程のみならず輸送工程においても鉄粉の脱落が少ない被覆が実現できるからである。
また、粒子径が63μm以下の鉄粉の質量比率を70%以下としたのは、微粒径の鉄粉の含有量が増えると、鉄粉が空気中の酸素と急激に反応し、発熱によって鉄粉を被覆した種子がダメージを受ける可能性や、大量取扱時には火災を引き起こしたりする懸念があり、さらに、微細な鉄粉の含有量が多いと、粉塵を生じやすく清浄な作業環境を維持しにくいからである。
なお、粒子径が63μm以下の鉄粉のより好ましい含有量の態様としては、粒子径が45μm以下の鉄粉の質量比率が0%以上30%以下である。
粒子径が45μm以下の鉄粉は、種子の表面にある毛の間をすり抜け、種子の表面に直接付着する付着力が強いことから、所定の量を含有することで、前述した二重被覆が実現される。
粒子径が150μmを越える鉄粉の質量比率を50%以下としたのは、粒子径が150μmを越える鉄粉は毛による保持及び種子表面への直接の付着共に期待ができないので、この粒子径のものを少なくする趣旨である。
なお、鉄粉の粒度分布は、JIS Z2510−2004に定められた方法を用いてふるい分けすることによって評価できる。
本実施の形態における鉄粉の製造方法としては、還元鉄粉やアトマイズ鉄粉などが例示される。
鉄粉を種子被覆する方法に制限はない。
例えば「鉄コーティング炭水直播マニュアル2010(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター 編)」に示されているように、手作業での被覆(コーティング)をはじめ、従来から公知の混合機を用いる方法等いずれを使用してもよい。
混合機としては、例えば、攪拌翼型ミキサー(たとえばヘンシェルミキサー等)や容器回転型ミキサー(たとえばV型ミキサー,ダブルコーンミキサー、傾斜回転型パン型混合機、回転クワ型混合機等)が使用できる。
また、上記の鉄コーティング炭水直播マニュアル2010に示されているように、鉄粉コーティングに際しては焼石膏などのコーティング強化剤を使用することもできる。
[実施の形態2]
本実施の形態に係る種子被覆用鉄粉は、実施の形態1のものに、イオウ(S)を0.05質量%以上含有することを特徴とするものである。
イオウ(S)を0.05質量%以上含有させるのは、これによって錆びの進行を促進できるからである。
錆びの発生は、水と酸素の存在下、鉄が酸化され、酸化鉄と水酸化鉄の不定比化合物が生成する反応で進行すると考えられる。このとき、鉄粉にSを含有させることにより、鉄粉表面にできたS含有率の高い部分と低い部分とで、局部電池を形成し、上記反応の促進に役立つと考えられる。
なお、S含有率に上限は設けないが、S含有率が多すぎると、H2Sの発生などが懸念されるため、1質量%以下程度含有するのが好ましい。
鉄粉にSを含有させる方法は、水アトマイズ法で鉄粉を製造する場合には、溶鋼に所定量のSを添加する。水アトマイズ鉄粉は、水素による仕上げ還元をしても、しなくてもよい。
また、還元法で鉄粉を製造する場合、還元鉄粉は、通常、ミルスケールや鉄鉱石を炭材として、CaCO3を添加したコークスと層状に重ねたものを1000℃以上のトンネル炉で、還元して製造する。このとき、炭材としてCaCO3を入れないコークスを使用すれば、鉄粉中のS含有率が増えることが知られているので、CaCO3の添加量によってS含有率を制御できる。
上記実施の形態1、2で示した本発明の種子被覆用鉄粉の効果を確認するための実験を行ったので、以下に説明する。
実施例1では、主として錆びの進行による種子被覆の状態に関し、比表面積及びSの含有率と種子被覆の状態との関係を調査する実験を行い、実施例2では粒度分布の種子被覆に対する影響を調査する実験を行った。
製鉄プロセスから発生する各種酸化鉄および、鉱石を炭材や、水素で還元して、後記する表2に示したような各種鉄粉を用意した。また、水アトマイズでSの添加量を変えて鉄粉を作製した。
稲種子(品種名ヒノヒカリ)50gに対して0.5倍重量の上記鉄粉及び鉄粉重量に対して百分比1(1g)の硫酸カリウム(粉末状)を添加して混合し、皿型回転造粒機(商品名:パン型造粒機PZ−01、アズワン(株)製)で、脱イオン水をスプレーしながら造粒した。
次に、造粒したコーティング種子を造粒機から取り出し、バット(縦31cm、横24cm、深さ3.5cm)内に薄く広げ、外気と遮断した蓋つきのプラスチック製の箱(46x31x26cm)に入れ、この箱に加湿空気を毎分6リットル送風しながら、酸化反応を25℃室温で12時間継続した後、40℃で乾燥させ、鉄粉コーティング稲種子を作製した。
次に、得られた鉄粉コーティング稲種子について、1.3mの高さから厚さ3mmの鋼板に5回落下させ、機械的衝撃を与える方法(以下、コーティングの崩壊試験という)で測定した。
試験結果、および鉄粉の仕様を表2に示す。
Figure 2012196184
表2に示されるように、本発明範囲のもの(発明例1〜11)では、コーティング状態、発熱状況、コーティング崩壊率ともに全て実用的な範囲にあることが確認された。
上記の発明例1〜11との比較をするため、粒子径150μm以下の含有率が50質量%未満の鉄粉(比較例1)、比表面積が0.1m2/g未満の鉄粉(比較例2)、S含有率が0.05質量%未満の鉄粉(比較例3)、比表面積が5m2/g以上の鉄粉(比較例4)を用意し、上記の実施例と同様な試験を行った。結果を表3に示す。
Figure 2012196184
粒子径150μm以下の含有率が45質量%の比較例1では、目視によるコーティング状態が悪く、コーティング崩壊率が80%と極めて高い。また、比較例2では目視によるコーティング状態が悪く、コーティング崩壊率が75%と極めて高い。また、比較例3では目視によるコーティング状態は許容範囲であるが、コーティング崩壊率は70%と高い。また、比較例4では目視によるコーティング状態はよく、コーティング崩壊率は10%とかなり低いが、発熱があった。
以上のように、いずれの比較例でも、目視によるコーティング状態、コーティング強度、発熱状況のいずれか又は複数に不具合を生じることがわかる。
次に、本発明に係る種子被覆用鉄粉の粒度分布に関する実験結果及び効果について説明する。
本発明の実施例として種々の粒度分布の鉄粉である発明例12〜19を用いて稲種子の被覆を行った。また、比較例として、本発明の粒度分布の範囲を外れる粒度分布の鉄粉である比較例5〜8を用いて稲種子の被覆を行った。
鉄粉の被覆(コーティング)は、前述した「鉄コーティング炭水直播マニュアル2010」に記載された方法に準じて行った。具体的には以下の通りである。
はじめに種籾と焼石膏と数種の鉄粉を準備した。次に、傾斜回転型パン型混合機を用いて、適量の水を噴霧しながら種子(種籾)10kgに対して鉄粉5kgと0.5kgの焼石膏をコーティングし、さらに0.25kgの焼石膏を仕上げにコーティングした。
鉄粉を被覆(コーティング)された種子の転がり摩擦や滑り摩擦に対するコーティング被膜の強度評価方法は確立されていない。
そこで、JPMA P 11−1992 「金属圧粉体のラトラ値測定方法」に記載された試験方法に準じて被膜強度を調査した。なお、本試験方法をラトラ試験と称することとする。
ラトラ試験においては、鉄粉をコーティングした種子20±0.05gをラトラ試験器のかごに封入し、そのかごを87±10rpmの回転速度で1000回転させた。この方法によれば、かご内で種子が転がりながら流動することによって種子間および種子とかご容器内面との間で、転がりや滑りの摩擦力が負荷される。
したがって、本方法を適用すれば、転がり摩擦力と滑り摩擦力が複合的に負荷された場合の、コーティング被膜の強度を評価することができる。
表4に鉄粉の粒度分布とラトラ試験での重量減少率を示す。なお、重量減少率は以下の計算式から求めた。
重量減少率=(ラトラ試験で剥離した被膜の質量)/(試験前の種子質量)×100(%)
したがって、重量減少率が小さいほど、被膜の強度が高いと判定することができる。
Figure 2012196184
表4に示されるように、発明例12〜19に記載のものは全て、「粒子径が63μm以下の鉄粉の質量比率が0%以上70%以下、かつ、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率が30%以上100%以下、かつ粒子径が150μmを越える鉄粉の質量比率が0%以上50%以下」という本発明の粒度分布の範囲内であり、ラトラ試験での重量減少率が4%未満となっている。
他方、上記の粒度分布の範囲を外れる比較例5〜8では、ラトラ試験での重量減少率が4%以上である。
このことから、鉄粉の粒度分布を本発明の範囲内にすることで重量減少率を大幅に抑制できることが実証された。
なお、表4において比較例5〜8における粒度分布が本発明の範囲を外れる数字には下線を付してある。
また、発明例12,13,14,15,17では、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率が50%以上かつ45μm以下の鉄粉の質量比率が30%以下であり、これらのラトラ試験での重量減少率は、3.5%以下と低くなっていることから、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率を大きくし、かつ粒子径が45μm以下の鉄粉の質量比率を小さくすることで鉄粉の付着力を高めることができることが分かる。
上記のように、鉄粉の比表面積、S含有率を本発明範囲内にすること、また鉄粉粒度分布を本発明範囲内にすることで、それぞれが種子被覆に効果があることが確認された。
最後に鉄粉の粒度分布、比表面積及びS含有率のすべてを本発明範囲内にしたものについて、実施例1と同様の確認実験を行った(発明例20〜25)。
また、粒度分布とS含有率が本発明範囲外のものと(比較例9)、粒度分布、比表面積、及びS含有率の全てが本発明範囲外のもの(比較例10)についての確認実験も行った。
結果を表5に示す。
Figure 2012196184
表5に示すように、本発明の範囲内の発明例20〜発明例25は全てコーティング状態、コーティング崩壊率、発熱状況において問題がなかった。
他方、比較例9においてはコーティング崩壊率が高く、比較例10では発熱の問題があった。
1 種籾
3 籾殻
5 毛

Claims (6)

  1. 種子を被覆するのに用いる鉄粉であって、
    比表面積が0.1m2/g以上、5m2/g未満であり、かつ粒度分布が以下の条件を満たすことを特徴とする種子被覆用鉄粉。
    粒子径が63μm以下の鉄粉の質量比率が0%以上70%以下、かつ、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率が30%以上100%以下、かつ粒子径が150μmを越える鉄粉の質量比率が0%以上50%以下
  2. イオウ(S)を0.05質量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の種子被覆用鉄粉。
  3. 粒子径が45μm以下の鉄粉の質量比率が、0%以上30%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の種子被覆用鉄粉。
  4. 鉄粉が還元法もしくはアトマイズ法で製造されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の種子被覆用鉄粉。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の種子被覆用鉄粉を種子に被覆してなることを特徴とする鉄粉被覆種子。
  6. 種子が稲種子であることを特徴とする請求項5記載の鉄粉被覆種子。
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