JP2020145997A - 種子被覆剤、被覆種子及び種子被覆方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】粉衣時の被膜均一性、種子離れ性を改善した種子被覆剤、被覆種子及び種子被覆方法を提供する。【解決手段】本発明に係る種子被覆材は、(a)酸化鉄と鉄粉の混合物である鉄材料と、(b)ポリビニルアルコール系樹脂を含む結合剤とを備え、酸化鉄は、鉄材料に含まれる割合が20質量%以上70質量%以下であり、45μm未満の粒子の割合が60質量%以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、鉄元素を含む被覆層によって種子を被覆する種子被覆剤、この種子被覆剤を被覆した被覆種子、及びこの種子被覆剤を種子に被覆する種子被覆方法に関する。
農業従事者の高齢化、農産物流通のグローバル化に伴い、農作業の省力化や農産物生産コストの低減が解決すべき課題となっている。これらの課題を解決するために、例えば、水稲栽培においては、育苗と移植の手間を省くことを目的として、種子を圃場に直接播く直播法が普及しつつある。その中でも、種子の比重を高めるために鉄粉を被覆した種子を用いる技術は、水田における種子の浮遊や流出を防止し、かつ鳥害を防止するというメリットがあることで注目されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1に開示されている技術のうち、鉄粉の酸化反応に伴う発熱による発芽率低下といった課題がある。また、粉体を水により種子に付着させる粉衣工程において、通常の鉄粉を使用した場合には鉄粉が種子表面を十分被覆できないことがあった。そこで、これら課題を解消することを目的として、いくつかの技術がこれまでに提案されている。
特許文献2には、鉄粉の酸化反応に伴う発熱による発芽率低下を回避するとともに、水中での被覆層の剥離を改善するために、酸化鉄(ヘマタイト)に加えて、重合度500以上であり、けん化度71.0〜89.0mol%であるポリビニルアルコールおよびベントナイトを含むイネ種子用コーティング資材を用いる技術が開示されている。
特許文献3にはけん化度が90.0mol%以上、重合度が2000以下であるポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解したポリビニルアルコール系樹脂水溶液と、酸化鉄粉及び/又は鉄粉を含む鉄系粉体と、を含むことにより温水耐水性、作業性、被覆強度を改善する技術が開示されている。
一方、特許文献4に不定形の酸化鉄粉と目開き106μmの篩を通過する割合が90質量%以上のアトマイズ鉄粉を混合し、特定見掛け密度としたことにより種子外面全体への付着性及び量産性に優れる技術が開示されている。
特開2005−192458号公報 特開2015−077100号公報 特許第6372638号公報 特開2017−131167号公報
特許文献2、3のように鉄粉、酸化鉄粉とポリビニルアルコール系樹脂の使用により発熱を抑制し発芽性を改善することが可能であるが、被覆均一性に課題があることがわかった。これに対し、ポリビニルアルコール系樹脂を使用しない場合であるが、特許文献4のように不定形の酸化鉄粉と目開き106μmの篩を通過する割合が90質量%以上のアトマイズ鉄粉の混合材により、ダマを発生させず比較的短時間で種子外面全体に種子コーティング材を付着させることが可能であるが、細粒のアトマイズ鉄粉を使うため、その後の乾燥工程での発熱が大きくなり発芽性に課題があることがわかった。特に生産性を高めるために粉衣直後の種子を薄く拡げることができず、バケツなどの容器に保管した場合に顕著に起こる。
本発明者らは細粒鉄粉にポリビニルアルコール系樹脂の適用を試みたが、粉衣時の被膜均一性と種子離れ性に課題があり、単純な組み合わせでは解決できないことがわかった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ポリビニルアルコール系樹脂を使用した鉄系種子被覆技術において、粉衣時の被膜均一性、種子離れ性を改善する種子被覆剤、被覆種子及び種子被覆方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するために以下のような特徴を有している。
[1](a)酸化鉄と鉄粉を有する鉄材料と、(b)ポリビニルアルコール系樹脂を含む結合剤とを備え、
前記酸化鉄は、鉄材料に含まれる割合が20質量%以上70質量%以下であり、45μm未満の粒子の割合が60質量%以上である種子被覆剤。
[2]ポリビニルアルコール系樹脂は、けん化度が90.0mol%以上、重合度が2000以下である[1]に記載の種子被覆剤。
[3][1]または[2]に記載の種子被覆剤が種子表面に被覆された被覆種子。
[4][1]乃至[3]のいずれかに記載の種子被覆剤を使用し、種子を被覆する種子被覆方法。
本発明によれば、粉衣時の被膜均一性および種子離れ性を向上させることができる。
被覆種子の酸化鉄における粒子径45μm未満の重量比率と粉衣時における被膜均一性との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する
本発明の実施の形態に係る種子被覆剤は、種子の一例として乾籾(種籾)の表面を被覆するのに用いる鉄元素を含み、種子表面を被覆するのに用いる種子被覆剤である。
この種子被覆剤は、(a)酸化鉄と鉄粉の混合物である鉄材料と、(b)ポリビニルアルコール系樹脂を含む結合剤とを備える。酸化鉄は、鉄材料に含まれる割合が20質量%以上70質量%以下であり、45μm未満の粒子の割合が60質量%以上である。酸化鉄において、45μm未満である細かい粒子の割合を60質量%以上とすることで、被膜均一性を向上させることができる。ただし、酸化鉄の45μm未満の粒子の割合を60質量%以上としても、酸化鉄が20質量%未満では、酸化鉄の量が十分でないため被覆均一性を向上させることができない。そのため、鉄材料に含まれる酸化鉄の割合は20質量%以上とする。また、細かい酸化鉄は、結合剤であるポリビニルアルコール系樹脂に添加されると粘性が上がり、種子同士が結着しやすくなる。そこで、鉄粉によって種子同士を点接触させ、種子離れ性を向上させる。そのため、鉄材料に含まれる酸化鉄の割合を70質量%以下とする。
本実施の形態に係る種子被覆剤を被覆する種子としては、イネが好ましく適用される。イネの品種としては特に定めなく、ジャポニカ米、インディカ米、ジャバニカ米のいずれでも適用できる。イネは、種子の浮遊や流出が問題となる水田で栽培されることが多いため、本発明の効果が発揮できる。
次に、本実施の形態に係る種子被覆剤の構成について具体的に説明する。種子被覆剤は、(a)鉄粉と酸化鉄の混合物である鉄材料と(b)結合剤を有する。(a)鉄材料と(b)結合剤は混合物であってもよいが、粉衣工程で(a)及び(b)が適度に混ざり合えば、(a)と(b)は別々のものであっても良く、最終的に(a)及び(b)が種子に被覆されれば、本発明の効果が得られる。
(a)鉄材料
<鉄粉>
鉄材料に含まれる鉄粉は、150μm未満の粒子径の鉄粉が全鉄粉質量に対して80質量%以上とすることが好ましい。これにより、種子の表面に均一な被覆層を形成することができる。また、45μm未満の粒子径の鉄粉を49%以下にすることで、粉衣時の種子離れ性が改善するため好ましい。更に好ましくは40%以下とする。
なお、鉄粉の粒度分布は、JIS Z2510―2004に定められた方法を用いて篩分けすることによって評価できる。例えば、45μm未満の粒子径とは、開き45μmの篩いを通過した粒子である。
また、本実施の形態に係る種子被覆剤は、鉄粉の使用量を特に規定するものではないが、種籾(100%)に対する質量比率として、5質量%以上800質量%以下が好ましく、更には、10質量%以上500質量%以下とすることが好ましい。
なお、本実施の形態で用いる鉄粉としては、ミルスケールを還元して製造する還元法や、溶鋼に水またはガスを高速噴射して製造するアトマイズ法により製造されたものが例示される。
さらに、鉄粉として、純鉄、合金鉄の粉体ならびに他の金属粉との混合物を適用できる。金属粉中の金属鉄成分が50質量%以上、更には、70質量%以上とすることが、被覆層の錆を利用する場合には、錆発生の観点から好ましい。
<酸化鉄>
鉄材料に含まれる酸化鉄は、マグネタイト(Fe)、ヘマタイト(Fe)、ウスタイト(FeO)、アモルファスを用いることができる。経済性の観点から、本実施の形態に用いられる酸化鉄としては、ミルスケールが好ましい。
前述のように酸化鉄は、45μm未満の粒子の割合が60質量%以上である。これにより、種子表面に均一な被覆層を形成し、粉衣時の種子離れ性を改善することができる。更に好ましくは68%以上とすることで、このような効果がより顕著となる。なお、酸化鉄粉の粒度分布は、上述の鉄粉と同様、JIS Z2510―2004に定められた方法を用いて篩分けすることによって評価できる。
鉄粉と酸化鉄の混合物における酸化鉄の粒度分布は、例えば磁石により鉄粉を除去したのち、上記の方法により評価することができる。
<鉄材料の組成>
上述のように、酸化鉄の45μm未満の粒子の割合を60質量%以上とすることで、粉衣時の被膜均一性を向上させることができる。この理由は明かではないが、次のように考えられる。細かい鉄粉で種子を被覆した場合は粉衣時における被膜均一性が改善される。しかしながら、細かい鉄粉は水分で酸化する傾向にあり、粉衣時の水分により発熱してしまうとともに、表面に発生する脆弱な水酸化鉄によりポリビニルアルコール系樹脂との密着性が低下する。細かい酸化鉄は水分による酸化発熱のおそれがないものの、ポリビニルアルコール系樹脂に添加されると粘性が上がるため、種子同士が結着しやすくなる。本発明では、鉄粉と細かい酸化鉄を適量比率で使用することで、細かい酸化鉄がポリビニルアルコール系樹脂との密着性に優れるため、被膜均一性に寄与する。なお、鉄粉は、粗い粒子のものを用いると、種子同士を点接触にすることができるため、粉衣時の種子離れ性も改善できるため好ましい。この効果を得るために、鉄粉の粒径は、粒径45μm未満の粒子の割合について、50質量%以下が好ましいであることが好ましい。
(b)結合剤
<結合剤>
結合剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂を用いる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、その共重合体を用いることが好ましい。
更にポリビニルアルコール系樹脂のけん化度および重合度は、以下のようなものであると、温水耐水性が改善され好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度については、90.0mol%以上が好ましい。けん化度の上限については特に定めないが、100mol%まで適用可能である。
けん化度が90.0mol%未満では、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶性が高くなるため好ましくない場合がある。よって、けん化度の好ましい範囲は、91.0〜99.9mol%とする。なお、ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度は、JIS K6726―1994に準じて測定することができる。
一方、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度については、2000以下が好ましく、更に好ましくは950以下、更に好ましくは800以下である。
本発明の効果が得られるものであれば、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度の下限は特に設定されないが、低重合度では接着性が低下する傾向にあるので、重合度50以上が好ましく、更には重合度100以上が好ましい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、JIS K6726―1994に準じて測定することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重合度が2000以下において、本発明に係る種子被覆剤を種子に被覆する際の作業性、被覆層強度が向上する理由は次のように考えられる。
ポリビニルアルコール単体では重合度が低くなると結晶化度が高まり、バインダーとしての効果が向上する。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度が低くなると、その水溶液の粘度が低くなり、鉄系粉体と種子との間にポリビニルアルコールが十分浸透するため、被覆した種子が塊状物になりにくく被覆層強度が向上する。
更に、ポリビニルアルコール系樹脂を共重合体とした場合には、結晶中に共重合基が島状になるため、衝撃に対して更に耐性が向上し、被覆層強度が向上する。また、疎水性基との共重合化により耐水性が向上する効果が見られる。
共重合体の疎水性基としてエチレン、プロピレン、ブチレンなどが好ましく、特に、エチレンが好ましく適用できる。これら疎水性基の含有量は、0.1〜15質量%であることが好ましい。
疎水性基の含有量が0.1質量%未満では、共重合体の使用効果が得られない。一方、疎水性基の含有量が15質量%を超えると、ポリビニルアルコールの水溶性が失われるので、実用上好ましくない。更に好ましい疎水性基の含有量は0.5〜12質量%である。
なお、共重合体の疎水性基の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析、赤外吸収スペクトル、燃焼ガスクロマトグラフィーなどにより測定可能である。
ポリビニルアルコール系樹脂を疎水性基との共重合体としたときの形態は、ブロック、ランダムいずれであっても、本発明に係る結合剤に適用することができる。
ポリビニルアルコール及びその共重合体の分析については、被覆層を機械的に剥離、削るなどしたものを、約95℃の熱水中に1時間ほど浸漬し、樹脂を抽出して行うことができる。操作上問題なければ、被覆種子からの抽出も可能である。
ポリビニルアルコール及びその共重合体の鉄系粉体に対する質量比率は特に定めないが、0.01質量%以上30質量%以下が好ましい。この場合、数種類のポリビニルアルコール及びその共重合体を混合して用いることができるが、これらの混合したときの平均的なけん化度、重合度、疎水性基の含有量が上述した本発明の範囲内であればよい。
ポリビニルアルコール及びその共重合体は、水に溶解させて用いる必要がある。水に加熱溶解してポリビニルアルコール水溶液を得られれば、溶解させる前のポリビニルアルコールの原料形状は限定されない。濃度は水溶液が安定であれば特に規定されないが、0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%が作業性の観点から好ましい。
一方、ポリビニルアルコールを水に溶解させずに、けん化度の高いもので種子に被覆した場合には、一見被覆されたように見えるが、溶解が不十分であるため、バインダーとして必要とされる効果は得られない。
さらに、本発明に係る種子被覆剤は、以下に説明する他の結合剤やその他の成分を含むものであってもよい。
<他の結合剤>
他の結合剤は、硫酸塩及び/又は塩化物とすることが好ましい。硫酸塩とは、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム及びこれらの水和物である。また、塩化物とは、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びこれらの水和物である。なお、本発明に係る種子被覆剤においては、他の結合剤として特に焼石膏(硫酸カルシウム・1/2水和物)を用いることが好ましい。
他の結合剤の使用量については、特に規定されるものではないが、種子に被覆した時に錆の進行を容易にするため、種子被覆剤に含まれる鉄粉及び/又は酸化鉄粉の全質量に対する質量比率を0.1質量%以上35質量%以下とすることが好ましい。
さらに、他の結合剤の平均粒径についても、特に規定されるものではないが、1〜150μmの範囲とすることが好ましい。
他の結合剤の平均粒径を上記範囲とすることが好ましい理由は以下のとおりである。
他の結合剤の平均粒径が1μm未満では、他の結合剤を含む種子被覆剤の被覆作業時に発生する凝集粒子が多くなり、これを除去するために作業性が著しく低下する。一方、他の結合剤の平均粒径が150μmを越えると、鉄粉への付着力が低下し、被覆層(コーティング皮膜)の強度が低下する傾向にある。
<その他の成分>
本発明に係る種子被覆剤は、本発明の効果を損なわない程度にその他の成分を含有するものであっても良く、その他の成分の含有量は、種子被覆剤の30質量%以下であることが好ましい。
なお、その他の成分としては、例えば肥料などの栄養分や農薬、硫酸塩及び/又は塩化物以外のバインダー類などが例示できる。
<被覆種子>
本発明は、上述の種子被覆剤を被覆した被覆種子として実施することができる。種子に対する種子被覆剤の被覆量は、特に定めないが、乾燥種子100質量部に対し、5〜800質量部とすることができる。さらには、十分なアンカー効果を得るために適宜調整でき、10〜500質量部程度が好ましく適用される。
<種子被覆方法>
次に、本実施の形態に係る種子被覆剤を使用した種子被覆方法について説明する。
本実施の形態に係る種子被覆方法は、前述した本発明に係る種子被覆剤を使用するものである。種子被覆剤を種子に被覆する手段については特に制限はない。例えば、「鉄コーティング湛水直播マニュアル2010(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター編)」に示されているように、手作業での被覆(コーティング)をはじめ、従来から公知の混合機を用いるなど、いずれでもよい。
さらに、混合機を用いて種子被覆剤を被覆する場合、混合機としては、攪拌翼型ミキサー(例えばヘンシェルミキサー等)や容器回転型ミキサー(例えばV型ミキサー、ダブルコーンミキサー、傾斜回転型パン型混合機、回転クワ型混合機、ブレードを取り外したコンクリートミキサー等)が使用できる。
本実施の形態に係る種子被覆剤により種子を被覆する具体的な方法としては、種子、酸化鉄粉、鉄粉及びポリビニルアルコール系樹脂などを上記の混合機中に適宜投入して混合する方法が挙げられる。種子に対する種子被覆剤の被覆量は、上述のように、乾燥種子100質量部に対し、5〜800質量部とすることができる。さらには、十分なアンカー効果を得るために適宜調整でき、10〜500質量部程度が好ましく適用される。
以上、本実施の形態に係る種子被覆剤及び種子被覆方法によれば、粉衣時の被覆均一性及び種子離れ性、発芽性、播種に十分な被膜強度、温水耐水性を実現することができる。
本発明の効果を確認するために実験を行った。
実験では、本発明に係る種子被覆剤を用いて稲種子に被覆し、その被覆層の評価試験を行った。
種子被覆剤の被覆(コーティング)は、前述した「鉄コーティング湛水直播マニュアル2010」に記載された方法に準じて行った。具体的には以下の通りである。
はじめに、種子(乾籾)と種子被覆剤を準備した。本実施例では、種子被覆剤として、鉄元素として鉄粉と酸化鉄を含む鉄材料と、ポリビニルアルコール系樹脂(水溶液)のみからなる結合剤の2種類を用いた。
次に、傾斜回転型パン型混合機を用いて、種子100gに対して鉄材料及び結合剤を数回に分けてコーティングした。種子に種子被覆剤が水により付着した状態を粉衣状態という。
粉衣後、各種子被覆剤が被覆された被覆種子をカップに入れ一晩放置した。その後、バットに拡げて乾燥させて被覆種子を作製した。
本実施例では、鉄材料の原料である酸化鉄、鉄粉、及び結合剤の原料であるポリビニルアルコール系樹脂の種類及び使用量を変更して実験を行った。
表1に、実験に用いた種子被覆剤に含まれる各原料の種類及び含有量、表2〜5に、種子被覆剤に用いた各原料の種類(表2:鉄粉、表3:酸化鉄、表4:ポリビニルアルコール系樹脂、表5:他の結合剤)を示す。
なお、表1中の酸化鉄の質量%と酸化鉄の質量部の関係は以下のように示される。
(酸化鉄の質量%)=(酸化鉄の質量部)/{(鉄粉の質量部)+(酸化鉄の質量部)}
Figure 2020145997
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Figure 2020145997
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鉄材料として、鉄粉には、表2に示すA1〜A5の5種類を、酸化鉄には、表3に示すB1〜B9の9種類を用い、鉄材料の薬剤(結合剤)には、表5に示すD1の1種類を用いた。結合剤として、ポリビニルアルコール系樹脂には、表4に示すC1〜4の4種類を用いた。
表1において、発明例1〜24は、(a)鉄材料に含まれる鉄粉、酸化鉄及び結合剤、(b)結合剤に含まれるポリビニルアルコール系樹脂水溶液に添加された樹脂の種類及びその濃度(固形分濃度)、さらに樹脂の使用量を変更したものであり、(a)酸化鉄と鉄粉の混合物である鉄材料と、(b)ポリビニルアルコール系樹脂を含む結合剤とを備え、酸化鉄は、鉄材料に含まれる割合が20質量%以上70質量%以下であり、45μm未満の粒子の割合が60質量%以上である。発明例1〜23は、(a)および(b)を別々に投入し、発明例24は上記(a)と(b)を予め混合したものを投入した。
本実施例では、比較対象として、表1に示す比較例1〜10の種子被覆剤を用いて被覆した被覆種子についても実験を行った。
上記の発明例1〜24及び比較例1〜10に係る種子被覆剤は、粉衣時の被膜均一性、種子離れ性、乾燥後の発芽性、被覆層強度、温水耐水性の評価試験に供した。これらの評価試験は、次のように行った。
<被膜均一性>
粉衣時の種子表面の被覆率を目視判定した。
◎:95%以上、○:80%以上95%未満、△:60%以上80%未満、×:60%未満、と判定した。
<種子離れ性>
粉衣後バットに種子を取り出し、結着した種子の重量割合を測定した。◎:5%以下、○:5%超え10%以下、△:10%超え20%以下、×:20%超え、と判定した。
測定後、種子をすぐにカップに入れ一晩保持した。
<発芽性>
上記の種子をカップに入れ一晩保持後、バットに拡げ乾燥させた。乾燥後、被覆種子50粒をペトリディッシュ内の濡れたろ紙上に置き、ふたをして30℃の恒温槽内で保管し、1週間後の発芽率を観察することにより行った。
発芽率は、◎:95%以上、○:90%以上95%未満、△:80%以上90%未満、×:80%未満と判定した。
<落下強度>
酸化乾燥後の種子を1.3mの高さから厚さ3mmの鋼板に5回落下させ、機械的衝撃を与え、種子の重量減少を測定し、播種に必要な被膜強度を評価した。
評価は、◎:1%以下、○:1%超え5%以下、△:5%超え20%以下、×:20%超え、と判定した。
<温水耐水性>
温水耐水性試験では、被覆種子を35℃の水中に1日保持し、被覆層の剥離程度を観察に基づいて、温水耐水性を、◎:変化なし、○:若干の剥離あるが被覆を保持、△:半分以上剥離溶解、×:ほぼ全体が剥離溶解、と判定した。
図1に、酸化鉄の45μm未満の重量割合が粉衣時の被膜均一性に対する影響の調査結果を示す。
図1より、45μm未満の粒子の割合が60質量%以上で被膜均一性が改善されていることがわかる。
以上、本発明に係る種子被覆剤、被覆種子及び種子被覆方法によれば、粉衣時の被膜均一性及び種子離れ性を改善し、発芽率を保ち、さらに十分な被膜強度、温水耐水性を有することが実証された。これにより、種子被覆における作業性が改善され、稲作の安定化及び向上を実現できる。
発明例1〜24では、被覆均一性および粉衣時の種子離れ性の評点が、いずれも〇または◎となった。これに対し、酸化鉄の「45μm未満の粒子の割合が60質量%以上」を満たさない比較例1、2、3、10および「鉄材料に含まれる割合が20質量%以上70質量%以下」を満たさない比較例4〜9では、被覆均一性および種子離れ性の少なくとも一方が×または△となった。比較例4は、細かい鉄粉のみのため点接触が期待できず種子離れ性が劣化。比較例5および6は、粗い鉄粉と、細かい酸化鉄が無し若しくは少量であるため、粗い鉄粉同志が絡まり、種子離れ性が劣化したと考えられる。比較例3は、細かい鉄粉との組み合わせにより、酸化鉄の粗さが不十分となり点接触が期待できず種子離れが劣化したと考えられる。また、比較例7〜9は、細かい酸化鉄が多いが粗い鉄粉が少ない、若しくは、無いため点接触が期待できず、種子離れが劣化したと考えられる。

Claims (4)

  1. (a)酸化鉄と鉄粉の混合物である鉄材料と、(b)ポリビニルアルコール系樹脂を含む結合剤とを備え、
    前記酸化鉄は、鉄材料に含まれる割合が20質量%以上70質量%以下であり、45μm未満の粒子の割合が60質量%以上である種子被覆剤。
  2. ポリビニルアルコール系樹脂は、けん化度が90.0mol%以上、重合度が2000以下である請求項1に記載の種子被覆剤。
  3. 請求項1または2に記載の種子被覆剤が種子表面に被覆された被覆種子。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の種子被覆剤を使用し、種子を被覆する種子被覆方法。
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