JP2017130302A - 回転陽極型x線管 - Google Patents

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Abstract

【課題】陽極ターゲットへ熱を入力した際にも、回転体が傾かずに、安定して回転する高冷却機能を有した回転陽極型X線管を提供することである。【解決手段】本実施形態に係る回転陽極型X線管は、電子を射出する電子発生源と、前記電子発生源から発生する電子が衝撃してX線を発生する陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットを回転可能に支持する円筒形状の軸受回転体と、前記軸受回転体の一端部に設けられた駆動ロータと、前記軸受回転体を第1付勢部材により内側から支持する第1軸受形成部、前記軸受回転体を第2付勢部材により内側から支持する第2軸受形成部と、冷却液を流すための流路とを備える軸受固定体と、を備える。前記陽極ターゲットは、前記第1軸受形成部と、第2軸受形成部との略中間の位置で前記軸受回転体に接合され、且つ、重心が前記第1付勢部材の第1付勢力と前記第2付勢部材の第2付勢力とが略同一となる位置に配置されている。【選択図】図1

Description

実施形態は、回転陽極型X線管に関する。
一般的に、回転陽極型X線管において、陽極ターゲットが接続された回転体を支持する軸受を2ヶ所に設けた2点支持構造が採用されている。軸受は、回転体の質量荷重を受けること以外に、回転体を軸方向から傾ける作用を発生させるモーメントに対する反力を生成する。軸受により傾きを防止することで、回転体は、安定した回転を確保することができる。
回転陽極型X線管は、回転体重心が軸受を形成する領域の外側にある構造(第1の構造)と、回転体重心が軸受を形成する領域の内部にある構造(第2の構造)との2種類に大別される。第1の構造は、その構造の簡便さから、多くのX線管に採用されている。一方、第2の構造は、熱入力が高く、且つ大きな陽極ターゲットの回転により引き起こされる遠心力に耐えられるように設計されたX線管、例えば、高級機CT装置用に採用されている。
又、以上の構造とは別に、非常に冷却能力の高い回転陽極型X線管が開発されている。特許文献1には、陽極ターゲットに入力した熱エネルギーを軸受、例えば、すべり軸受を介して直接冷却するX線管が記載されている。このX線管は、陽極ターゲットと軸受と間の熱抵抗を出来る限り小さくするために、冷却槽を設けた軸受上に陽極ターゲットが配置される。このX線管には、第2の構造が採用されている。また、このようなX線管は、陽極ターゲットを大型化しなくとも、その高い冷却率から陽極ターゲットに高熱入力が可能である。
一方で、CT装置の性能向上から、極小の電子ビームの焦点を採用した微細画像撮影可能な回転陽極型X線管装置が開発されている。このような、極小の電子ビームの焦点がX線管に要求される場合、X線管は、陽極ターゲットの口径を大きく取ることと、その回転スピードを上げることとにより、陽極ターゲットの焦点面温度を下げる対策が取られる。
近年、前述の高冷却構造と大口径の陽極ターゲットとを有した回転陽極型X線管も開発されている。このX線管では、各軸受の軸受バネで支持された回転体の共振周波数(剛体共振周波数)が重要となる。この剛体共振周波数付近で陽極ターゲットを回転させた場合、回転振動が増加する可能性がある。したがって、X線管は、通常、陽極ターゲットの使用回転数に対し、剛体共振周波数が十分高くなるように設計され得る。
簡易的な計算によれば、2つの軸受バネ係数及び回転体重心から2つの軸受バネまでのそれぞれの距離を同一にした場合、回転体の剛体共振周波数が最も高くなることが知られている。すなわち、2つの軸受を同一形状、且つ回転体の重心を2つの軸受の中間に配置するように設計することで、X線管は、高速回転に適応する。
ここで、第1の構造のX線管101の一例について、図9を参照して説明する。
通常、第1の構造のX線管101では、2つの軸受(第1軸受形成部、第2軸受形成部)6、7に対してオーバーハングとなる陽極ターゲット3が、全回転体23の一端部に設けられているため、全回転体23の重心が、2つの軸受6、7が構成する軸受範囲よりも、陽極ターゲット3側に移動する。このため、2つの軸受6、7は全回転体23の荷重FMに加え、全回転体23の重心Pm0ずれで発生するモーメントを相殺するような機能が要求される。つまり、2つの軸受のうち、陽極ターゲット3に近い側の軸受6は全体の荷重FMを支える機能、もう一方の軸受7は発生するモーメントを相殺する機能となる。図9において、モーメントの釣り合いは、LB×FB=LA×FMで示される。
また、第2の構造のX線管102の一例について、図10を参照して説明する。
一方、図10に示す第2の構造のX線管102では、陽極ターゲット3を二つの軸受6、7が構成する軸受範囲内に配置し、一方、駆動ロータ8を陽極ターゲット3と反対側に配置することにより、全回転体23の重心Pm0が、軸受6、7の間の中心P0と一致するように設計される。このとき、駆動ロータ8のオーバーハング分を相殺するため、陽極ターゲット3を軸受6側に寄せることにより、全回転体23の重心Pm0を軸受中心P0に合わせている。又、陽極ターゲット3に入力した熱を軸受6,7に伝えないような断熱支持部10を設けている。
さらに、第2の構造、且つ高冷却構造を採用したX線管103の一例について、図111を参照して説明する。
第2の構造、且つ高冷却構造を採用したX線管103では、前述の図10に示す断熱支持部10を廃し、直接陽極ターゲット3に入力した熱を軸受6、7に伝え、軸受固定体5内部に設けた冷却流路WPにより、積極的に軸受6、7を介して陽極ターゲット3に入力した熱を排熱している。
しかし、第2の構造、且つ高冷却構造を採用したX線管103では、陽極ターゲット3へ熱が入力された際に、軸受回転体4の各部における伝熱経路に応じて温度差が生じ、軸受回転体4が、温度に応じて膨張等により変形する。その結果、軸受回転体4と軸受6、7と間の隙間が拡大し得る。このように、軸受回転体4と軸受6,7と隙間が拡大した場合、軸受(例えば、すべり軸受)6、7の軸受バネ係数は、低下し、剛体共振周波数も、低下する。
また、図11に示すように、陽極ターゲット3が、一方の軸受6に近づけて設置された場合、陽極ターゲット3が設置された側の軸受6と軸受回転体4との隙間が拡大し得る。このように一方の軸受6と軸受回転体4との隙間が拡大した場合、2つの軸受バネ係数の値が大きくずれるため、剛体共振周波数が低下する。なお、この現象は、CT装置で架台回転している場合よりも、架台回転していない場合の方が、影響が大きい。
ここで、図11に示すように、陽極ターゲット3が一方の軸受6に近づいて設置される理由は、駆動ロータ8によるバランスの偏りが存在するため、全回転体23の重心Pm0を軸受6、7の中心P0付近に合わせようとした場合、陽極ターゲット3の位置を反対側にずらす必要があるためである。これは、陽極ターゲット3から伝達する熱を冷却するための軸受回転体4と陽極ターゲット3との接合部の位置と、全回転体23重心の位置とを最適に配置することを困難にする。
この駆動ロータ8による回転体の重心のずれを解決する方法として、駆動ロータ8と反対側にカウンタバランスとなる重りをつけることが挙げられる。しかし、駆動ロータ8が設置された端部と反対側の端部の近傍には、電子銃等の既存物が設置され得るため、新たに構造物を設置することは困難である。さらに、このように新たな構造物を設置することで、回転体の重量が、増大し、X線管が、不要に大きくなり得る。また、設計上の回転体の部品配置等(たとえば、すべり軸受内の液体金属を軸内にとどめるためのスラストリング・シール機構等)を工夫することにより、この駆動ロータ8による影響を低減することは可能であるが、完全に除去することは困難である。
特許第5422311号公報 特許第3795482号公報
上記したように、駆動ロータによる回転体の重心ずれは、ターゲットを最適な位置に配置し、且つ適切な軸冷却機能を備えることを困難にし得る。
本発明の実施形態は、このような点に鑑みなされたもので、陽極ターゲットへ熱を入力した際にも、回転体が傾かずに、安定して回転する高冷却機能を有した回転陽極型X線管を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る回転陽極型X線管は、電子を射出する電子発生源と、前記電子発生源から発生する電子が衝撃してX線を発生する陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットを回転可能に支持する円筒形状の軸受回転体と、前記軸受回転体の一端部に設けられた駆動ロータと、前記軸受回転体を第1付勢部材により内側から支持する第1軸受形成部、前記軸受回転体を第2付勢部材により内側から支持する第2軸受形成部と、冷却液を流すための流路とを備える軸受固定体と、を備え、前記陽極ターゲットは、前記第1軸受形成部と、第2軸受形成部との略中間の位置で前記軸受回転体に接合され、且つ、重心が前記第1付勢部材の第1付勢力と前記第2付勢部材の第2付勢力とが略同一となる位置に配置されている。
図1は、実施形態の回転陽極型X線管装置の一例の概要を示す断面図である。 図2(a)は、図1に示すX線管における荷重の状態の一例を示す図であり、図2(b)は、図1に示す軸受機構の軸受バネの一例を示す概要図である。 図3は、変形例1の回転陽極型X線管装置の一例の概要を示す図である。 図4(a)は、図3に示すX線管における荷重の状態の一例を示す図であり、図4(b)は、図3に示す軸受機構の軸受バネの一例を示す概要図である。 変形例2の回転陽極型X線管装置の一例の概要を示す図である。 図6(a)は、図5に示すX線管における荷重の状態の一例を示す図であり、図6(b)は、図5に示す軸受機構の軸受バネの一例を示す概要図である。 比較例の回転陽極型X線管装置の一例の概要を示す図である。 図8(a)は、図7に示すX線管における荷重の状態の一例を示す図であり、図8(b)は、図7に示す軸受機構の軸受バネの一例を示す概要図である。 図9は、従来技術の第1の構造のX線管の一例を示す概要図である。 図10は、従来技術の第2の構造のX線管の一例を示す概要図である。 図11は、従来技術の第2の構造、且つ高冷却構造を採用したX線管の一例を示す概要図である。
以下、図面を参照しながら実施形態に係るX線管について詳細に説明する。
(実施形態)
図1は、実施形態の回転陽極型X線管装置300の一例の概要を示す断面図である。
回転陽極型X線管装置300は、回転陽極型X線管100(以下、X線管100と称する)と、ステータコイル200と、X線管100及びステータコイル200を収容した筺体(図示せず)と、によって構成されている。
本実施形態において、X線管100は、真空外囲器1と、陰極(電子発生源)2と、陽極ターゲット3と、軸受固定体5と、第1軸受形成部6と、第2軸受形成部7と、軸受固定体支持部9と、回転機構20とを備えている。また、陽極ターゲット3と回転機構20とを併せて全回転体(以下、単に、回転体と称する)23と称する場合もある。以下で、X線管100の中心軸を管軸TAと称する。管軸TAに従う方向(以下、軸方向と称する)において、陽極ターゲット3の設置側の方向を前方と称し、軸受固定体支持部9の設置側の方向を後方と称する。また、管軸TAに対して垂直な方向を半径方向と称する。半径方向において、管軸TAから離れる方向を外側と称し、管軸TAに向かう方向を内側と称する。
真空外囲器1は、高真空に排気された内部に、陰極2と、陽極ターゲット3と、回転機構20とを収容する。真空外囲器1内で、陰極2と、陽極ターゲット3とは、互いに対向配設されている。陰極(電子発生源)2は、高電圧で生成される電子(電子ビーム)を陽極ターゲット3に向けて射出する。
陽極ターゲット3は、傘状の略円板状に形成されている。陽極ターゲット3は、X線を放射するターゲット層と、ターゲット層を支持するターゲット基体とから構成されている。ターゲット層は、例えば、タングステンで形成されている。また、ターゲット基体は、例えば、モリブデン合金(TZM)で形成されている。陽極ターゲット3は、ターゲット層に陰極2から射出された電子ビームが衝撃することでX線を放射する。X線管装置300が駆動しているとき、陽極ターゲット3は、陰極2から射出された高電圧の電子ビームが衝撃するために、高温となり、熱が入力される。陽極ターゲット3は、回転機構20に接合されているため、回転機構20の回転に従って回転する。
本実施形態において、陽極ターゲット3は、第1構成部3Aと、第2構成部3Bと、第3構成部3Cとを備えている。第1構成部3Aは、軸受回転体4に接合されている。第2構成部3Bは、第1構成部3Aと第3構成部3Cと接続する。第3構成部3Cは、陰極2から射出された電子を受ける。
また、第1構成部3Aは、軸受回転体4の外周表面に対して略垂直方向に延長して形成されている。例えば、第1構成部3Aを可能な限り長く延長して形成することで、陽極ターゲット3で生じた熱が、第1構成部3Aで軸方向に均一化される。そのため、第1構成部3Aは、軸受回転体4との接合部で軸方向に対して一様に熱を伝えることができる。第2構成部3Bは、前方に折れ曲がって段差状に形成されている。第3構成部3は、駆動ロータ8と反対側(前方側)に突き出して形成されている。すなわち、第3構成部3は、オーバーハングとなる駆動ロータ8のカウンタバランスをとなるにように形成されている。
軸受固定体5は、略円柱形状に形成されている。軸受固定体5は、前方部分が大径に形成され、後方部分が小径に形成されている。軸受固定体5は、前方部分に回転機構20を第1軸受形成部6と第2軸受形成部7とを備えている。また、軸受固定体5は、後方の端部で軸受固定体支持部9により支持されている。また、軸受固定体5は、内部に流路WPが設けられている。流路WPは、回転体23等を冷却するための冷却液が導入される。なお、流路WPは、第1軸受形成部6及び第2軸受形成部7の部分では、壁厚を薄肉にすることで、回転体23の冷却効果を向上することもできる。また、流路WPは、軸受固定体5の内部に設けられていなくともよい。
第1軸受形成部6と第2軸受形成部7とは、それぞれ、同一の円筒形状で形成されている。第1軸受形成部6と第2軸受形成部7とは、軸受固定体5の前方部分で軸方向に所定の間隔を空けて設けられている。第1軸受形成部6と第2軸受形成部7とは、すべり軸受機構を形成し、回転可能に回転機構20を支持する。第1軸受形成部6及び第2軸受形成部7は、それぞれ、軸受回転体4との隙間に付勢力を生じさせる。
回転機構20は、軸受回転体4と、駆動ロータ8とを備えている。軸受回転体4は、略円筒形状で形成されている。軸受回転体4は、第1軸受形成部6と第2軸受形成部7とが設けられた軸受固定体5の前方部分を密閉して収納する。例えば、軸受回転体4は、後方端部と軸受固定体5との隙間をシール部材で密閉して塞がれていてもよい。また、例えば、軸受回転体4は、内壁と、軸受固定体5、第1軸受形成部6及び第2軸受形成部7との間に潤滑剤、例えば、液体金属が充填されている。なお、軸受回転体4は、軸受固定体5の端部が密閉されずにシャフトが両端部で突き出していてもよい。駆動ロータ8は、電気抵抗の小さい導体、例えば、銅で形成された円筒部材である。また、駆動ロータ8は、軸受回転体4の後方端部に一部が接合され、軸受回転体4に対してオーバーハングとなる。
ステータコイル200は、X線管100の真空外囲器1の外側に配設されている。ステータコイル200は、電源(図示せず)から電流を供給されることによって、駆動ロータ8に磁界を発生させ、発生した磁界により軸受回転体4を回転させる。
図7は、比較例の回転陽極型X線管装置300の一例の概要を示す図であり、図8(a)は、図7に示すX線管100における荷重の状態の一例を示す図であり、図8(b)は、図7に示す軸受機構の軸受バネの一例を示す概要図である。図8には、第1軸受形成部6の重心(中心)の位置(以下、単に、重心(中心)と称する)Pa0と、第2軸受形成部7の重心(中心)Pb0と、回転体23(陽極ターゲット3及び回転機構20)の重心Pm0と、駆動ロータ8の重心Pc0と、第1軸受形成部6の重心(中心)Pa0及び第2軸受形成部7の重心(中心)Pb0の間の距離の中心P0と、陽極ターゲット3と軸受回転体4との接合部の中心P1と、陽極ターゲット3の重心P2とを示している。また、図8には、回転体23の重心Pm0に作用する荷重FMと、駆動ロータ8の重心Pc0に作用する荷重FCと、第1軸受形成部6の重心Pa0に作用する反力FAと、第2軸受形成部7の重心Pb0に作用する反力FBと、を示す。さらに、図8には、中心P0から回転体23の重心Pm0までの距離Xm0と、中心P0から第1軸受形成部6の重心Pa0までの距離Xa0と、中心P0から第2軸受形成部7の重心Pb0までの距離Xb0と、中心P0から駆動ロータ8の重心Pc0までの距離Xc0と、中心P0と回転体23の重心Pm0とのずれ量を示す距離Xm0と、を示している。距離Xb0は、距離Xa0と同一である。
図7に示すように、比較例のX線管装置300は、管軸TAに対して略垂直は方向に延長する陽極ターゲット3を備えている。したがって、図8に示すように、陽極ターゲット3の重心P2が、軸受回転体4との接合部の中心P1と軸方向でほぼ一致する。このとき、軸受回転体4の重心Pm0は、駆動ロータ8により、軸方向で中心P0から駆動ロータ8側に距離Xm0の位置にずれる。その結果、図8に示すように、回転体23は、後方に傾く。
図8(b)に示すように、第1軸受形成部6は、軸受回転体4との隙間に所定のバネ係数(第1軸受バネ係数K1)の付勢力(第1付勢力)を生じさせる第1付勢部材(第1軸受バネ)S6を構成する。第2軸受形成部7は、軸受回転体4との隙間に所定のバネ係数(第2軸受バネ係数K2)の付勢力(第2付勢力)を生じさせる第2付勢部材(第2軸受バネS7)を構成する。第1付勢部材S6は、第1軸受形成部6の中心に作用し、第2付勢部材S7は、第2軸受形成部7の中心に作用する。
一般的には、回転機構20が、第1軸受バネS6と第2軸受バネS7との2つの軸受で支持される場合、第1軸受バネ係数K1と第2軸受バネ係数K2とが同一、且つ距離Xb0と距離Xa0とが同一であるときに、回転体23の剛体共振周波数が最も高くなる。
また、第1軸受バネ係数K1は、軸受回転体4と第1軸受形成部6との隙間に依存する。第2軸受バネ係数K2は、軸受回転体4と第2軸受形成部7との隙間に依存する。第1軸受バネ係数K1、及び第2軸受バネ係数K2は、それぞれ、軸受回転体4との間の隙間が広がると、低下する。すなわち、第1軸受バネ6S、又は第2軸受バネ7Sと、軸受回転体4との隙間が広がると、回転体23の剛体共振周波数も低下することになる。したがって、図8に示すように、回転機構20が、後方に傾いた場合、第1軸受バネ係数K1と第2軸受バネ係数K2とが大きくずれるため、回転体23の剛体共振周波数が低下する。
なお、陽極ターゲット3は、陰極2から射出される電子が衝撃することで高温となる。陽極ターゲット3で生じた熱は、陽極ターゲット3と軸受回転体4との接合部を介して軸受回転体4に伝わる。第1軸受形成部6と第2軸受形成部7との冷却効果が同等、且つ陽極ターゲット3の接合部の中心P1が、中心P0からずれている場合、軸受回転体4の表面部の軸方向において、第1軸受形成部6側と第2軸受形成部7側とで温度差が生じ得る。この場合、温度に応じて膨張等により軸受回転体4が変形する。そのため、軸受回転体4と第1軸受形成部6との隙間と、軸受回転体4と第2軸受形成部7との隙間とに差が生じ得る。したがって、第1軸受形成部6と第2軸受形成部7との冷却効果が同等である場合、陽極ターゲット3の接合部の中心P1は、第1軸受形成部6と第2軸受形成部7との中心P0と同一、又は近傍に設けられることが望ましい。
図2(a)は、図1に示すX線管100における荷重の状態の一例を示す図であり、図2(b)は、図1に示す軸受機構の軸受バネの一例を示す概要図である。
図2(a)に示すように、本実施形態のX線管100では、陽極ターゲット3と軸受回転体4との接合部の中心P1は、第1軸受形成部6の中心Pa0と第2軸受形成部7の中心Pb0との間の中心P0と軸方向でほぼ一致する。また、第3構成部3Cを前方に突き出すように変形することで、陽極ターゲット3の重心P2が、中心P0から前方に距離Xm0ずらされている。このように、陽極ターゲット3の重心P2を駆動ロータ8の荷重を打ち消すようにずらすことによって、回転体23の重心Pm0は、中心P0にほぼ一致する。そのため、図2(a)及び図2(b)に示すように、第1軸受バネ係数K1と第2軸受バネ係数K2とが同一、且つ距離Xa0と距離Xb0とが同一となる。したがって、回転体23の剛体共振周波数が、最も高くなり得る。
本実施形態によれば、X線管100は、駆動ロータ8による回転体23の重心のずれを陽極ターゲット3の重心をずらすことで打ち消している。また、陽極ターゲット3と軸受回転体4との接合部の中心P1は、第1軸受形成部6の中心Pa0と第2軸受形成部7の中心Pb0との間の中心P0と軸方向でほぼ一致する。陽極ターゲット3が、半径方向に所定の長さで形成されることで、陰極2から射出された電子が陽極ターゲット3に衝撃することで生じる熱が、陽極ターゲット3の内部の軸方向で均一化され得る。そのため、陽極ターゲット3で発生した熱は、陽極ターゲット3と軸受回転体4との接合部で軸方向に一様に熱を伝えることができる。その結果、本実施形態のX線管100は、回転体23の傾きを抑制し、且つ陽極ターゲット3が高温となった場合でも安定して回転することができる。
次に実施形態に係るX線管の変形例について説明する。実施形態の変形例において、前述した実施形態と同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
(変形例1)
図3は、変形例1の回転陽極型X線管装置300の一例の概要を示す図であり、図4(a)は、図3に示すX線管100における荷重の状態の一例を示す図であり、図4(b)は、図3に示す軸受機構の軸受バネの一例を示す概要図である。
変形例1の陽極ターゲット3は、第2構成部3Bが、第1構成部3Aと第3構成部3Cとを連続的に滑らかに接続して形成される。
図4(a)に示すように、変形例1のX線管100では、陽極ターゲット3と軸受回転体4との接合部の中心P1は、第1軸受形成部6の中心Pa0と第2軸受形成部7の中心Pb0との間の中心P0と軸方向でほぼ一致する。また、第3構成部3Cを前方に突き出すように変形することで、陽極ターゲット3の重心P2が、中心P0から前方に距離Xm0ずらされている。このように、陽極ターゲット3の重心P2を駆動ロータ8の荷重を打ち消すようにずらすことによって、回転体23の重心Pm0は、軸方向で中心P0にほぼ一致する。そのため、図4(a)及び図4(b)に示すように、第1軸受バネ係数K1と第2軸受バネ係数K2とが同一、且つ距離Xa0と距離Xb0とが同一となる。したがって、回転体23の剛体共振周波数が、最も高くなり得る。
変形例1によれば、陽極ターゲット3は、第2構成部3Bが、第1構成部3Aと第3構成部3Cとを連続的に滑らかに接続して形成される。その結果、変形例1の陽極ターゲット3は、前述の実施形態の陽極ターゲット3より、陰極2から射出された電子が衝撃することで陽極ターゲット3に生じる熱の均一化を進めることができる。
(変形例2)
図5は、変形例2の回転陽極型X線管装置300の一例の概要を示す図であり、図6(a)は、図5に示すX線管100における荷重の状態の一例を示す図であり、図6(b)は、図5に示す軸受機構の軸受バネの一例を示す概要図である。
変形例2の陽極ターゲット3は、駆動ロータ8と反対方向に延長するテーパ形状の形成されている。
図5(a)に示すように、変形例2のX線管100では、陽極ターゲット3と軸受回転体4との接合部の中心P1は、第1軸受形成部6の中心Pa0と第2軸受形成部7の中心Pb0との間の中心P0と軸方向でほぼ一致する。また、第3構成部3Cを前方に傾斜するテーパ形状で形成することで、陽極ターゲット3の重心P2が、中心P0から前方に距離Xm0ずらされている。このように、陽極ターゲット3の重心P2を駆動ロータ8の荷重を打ち消すようにずらすことによって、回転体23の重心Pm0は、軸方向で中心P0にほぼ一致する。そのため、図5(a)及び図5(b)に示すように、第1軸受バネ係数K1と第2軸受バネ係数K2とが同一、且つ距離Xa0と距離Xb0とが同一となる。したがって、回転体23の剛体共振周波数が、最も高くなる。
変形例2によれば、陽極ターゲット3は、駆動ロータ8と反対方向に延長するテーパ形状の形成されている。陰極2から射出された電子が衝撃したことで陽極ターゲット3に生じる熱が、このテーパ形状を伝わることで、管軸TAに従う方向でほぼ一様な熱分布となり、接合部に到達する。その結果、陽極ターゲット3は、軸受回転体4との接合部において、管軸TAに従う方向でほぼ均一に熱を伝えることができる。また、前述の実施形態と比較して、陽極ターゲット3を容易に形成することができる。
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものでなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
1…真空外囲器、2…陰極、3…陽極ターゲット、4…軸受回転体、5…軸受固定体、6…第1軸受形成部、6S…第1軸受バネ(第1付勢部材)、7…第2軸受形成部、7S…第2軸受バネ(第2付勢部材)、8…駆動ロータ、9…軸受固定体支持部、20…回転機構、23…回転体、200…ステータコイル、300…回転陽極型X線管装置。

Claims (6)

  1. 電子を射出する電子発生源と、
    前記電子発生源から発生する電子が衝撃してX線を発生する陽極ターゲットと、
    前記陽極ターゲットを回転可能に支持する円筒形状の軸受回転体と、
    前記軸受回転体の一端部に設けられた駆動ロータと、
    前記軸受回転体を第1付勢部材により内側から支持する第1軸受形成部、前記軸受回転体を第2付勢部材により内側から支持する第2軸受形成部と、冷却液を流すための流路とを備える軸受固定体と、を備え、
    前記陽極ターゲットは、前記第1軸受形成部と、第2軸受形成部との略中間の位置で前記軸受回転体に接合され、且つ、重心が前記第1付勢部材の第1付勢力と前記第2付勢部材の第2付勢力とが略同一となる位置に配置されている、回転陽極型X線管。
  2. 前記陽極ターゲットは、前記駆動ロータに対して反対側に前記重心が位置する、請求項1に記載の回転陽極型X線管。
  3. 前記陽極ターゲットは、前記駆動ロータに対して反対側に段差を備えた形状で構成されている、請求項1又は2に記載の回転陽極型X線管。
  4. 前記陽極ターゲットは、前記駆動ロータに対して反対側に傾斜した形状で構成されている、請求項1又は2に記載の回転陽極型X線管。
  5. 前記陽極ターゲットは、前記駆動ロータに対して反対側に屈曲した形状で構成されている、請求項1又は2に記載の回転陽極型X線管。
  6. 前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材は、それぞれ、軸受バネである、請求項1乃至5のいずれか1に記載の回転陽極型X線管。
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