JP2017126427A - マイクロポーラス層形成用ペースト組成物及び燃料電池用のガス拡散層の製造方法 - Google Patents

マイクロポーラス層形成用ペースト組成物及び燃料電池用のガス拡散層の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乾燥・焼成処理にかかる負荷を効果的に低減できること。
【解決手段】マイクロポーラス層形成用ペースト組成物は、導電性材料としてのアセチレンブラックと、撥水性樹脂としてのPTFEと、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルと、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤とを含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、カーボンペーパー等の導電性多孔質基材の表面に塗布してガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)のマイクロポーラス層(MPL:Micro Porous Layer)を形成するマイクロポーラス層形成用ペースト組成物、並びに、かかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を採用した燃料電池用のガス拡散層の製造方法に関するものである。
燃料電池、特に、自動車等の動力源として使用が拡大されている固体高分子型燃料電池は、燃料電池セルのセパレータを介して複数個積層して構成されており、1つの単セル(single cell)においては、一般的に、特定イオンを選択的に透過する高分子電解質膜の両面に、白金等の触媒を担持したカーボン等の導電材及びイオン交換樹脂からなる電極触媒層と、電極触媒層の外側に配置する多孔質のガス拡散層(GDL)とによって構成されるカソード(+)側電極及びアノード(−)側電極が配設され、膜/電極接合体(MEGA;Membrane-Electrode-Gas Diffusion Layer Assembly)を形成している。そして、この膜/電極接合体を構成するガス拡散層の外側に、燃料ガス(アノードガス)または酸化ガス(カソードガス)を供給し、かつ、生成ガス及び過剰ガスを排出するガス流路を形成したセパレータが配設され、膜/電極接合体がセパレータで挟持されている。
そして、固体高分子型燃料電池のガス拡散層では、セパレータに形成されたガス流路から供給される燃料ガスまたは酸化ガスをガス拡散層と隣接する触媒層に拡散させる役目(ガス拡散性・透過性)を担うことからガス拡散性(多孔質)が要求されると共に、電気化学反応のための電子を移動させる導電性も要求される。更には、高分子電解質膜と触媒層を常に最適な湿潤状態に保ち、また、フラッディング現象(ガス拡散層の細孔が水で閉塞する現象)を抑制して、安定した発電性能を維持するために、発電時の水素及び酸素の電気化学的反応によって生成した過剰な反応生成水や結露水を排出させる撥水性(水分透過性)も必要とされる。
このようなガス拡散層は、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の導電性多孔質材料からなる基材に、導電性を向上させるためのカーボン粒子等の導電性材料及び撥水性を付与するためのポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」とも略する。)等の撥水性樹脂を主成分として含有するマイクロポーラス層形成用のペースト状混合物を塗工することにより形成できることが知られている(例えば、特許文献1参照。なお、この特許文献1では、繊維状フィラーとして針状酸化チタンが例示されているが、この針状酸化チタンは、撥水層(マイクロポーラス層)の気孔率を大きくする空間を形成するものとして機能する)。
そして、通常、このマイクロポーラス層形成用ペースト状混合物には、カーボン粒子等の導電性材料やPTFE微粒子等の撥水性樹脂を均一に水等の分散媒(溶媒)に分散し安定化させるために、分散剤や増粘剤が配合される。
分散剤や増粘剤を配合しないことで導電性材料や撥水性樹脂の凝集が生じ分散不良となると、ペーストの安定性が低く、塗布時において配管やポンプ等の目詰まりや、ペースト成分の濃度変化が生じることもあり、成膜性に悪影響を及ぼすこととなる。また、成膜後の膜中に凝集物が多く存在するとマイクロポーラス層の均質性に欠けてガス拡散性等の特性に悪影響を及ぼしたり、マイクロポーラス層の表面起伏が大きくなり接触抵抗が増加したりして、燃料電池において安定した出力を得ることが困難となる。
なお、増粘剤は、ペーストの粘性の調整により塗工性や貯蔵性の改善、ペースト成分の裏抜け防止等として配合されることもある。
こうして、導電性材料及び撥水性樹脂及び分散剤・増粘剤を配合したマイクロポーラス層形成用のペースト状混合物は、導電性多孔質基材の表面に塗布した後、乾燥・焼成処理を行うことで、ガス拡散層のマイクロポーラス層を形成する。このとき、乾燥・焼成処理によって、分散剤・増粘剤が熱分解・揮発して除去されることで、基材表面に形成されたマイクロポーラス層の撥水性が発現される。しかし、マイクロポーラス層形成用のペースト状混合物に配合した分散剤・増粘剤が十分に除去されていないと、分散剤・増粘剤の親水性基によって水分が捕捉されるため、基材表面に形成されたマイクロポーラス層において十分な撥水性を確保することができない。
ここで、マイクロポーラス層形成用のペースト状混合物を基材表面に塗布した後の乾燥・焼成処理の時間を長くすることで、分散剤・増粘剤を十分に除去して、撥水性の確保は可能であるが、乾燥・焼成時間が長くなると、連続製造ラインにおけるトンネル炉の炉長も長くなり、また、加熱のための電力量等も増大することから、製造コストに大きく影響する。乾燥・焼成温度を上げることで、乾燥・焼成時間の短縮化を図ることも考えられるが、乾燥・焼成温度の上昇により自然環境に与える負荷が増加する問題が生じる。また、必要以上に高温とすることで、例えば、PTFE等の撥水性樹脂の変質や分解等が生じて塗膜成分が劣化したり、加熱に起因する温度変化によりクラックが発生したり、基材への定着力が低下したりする等の不具合が生じることがある。
そこで、特許文献2には、ガス拡散性の撥水性を発現するために要する乾燥・焼成時間の短縮化を図る技術が開示されている。この特許文献2では、撥水部材および界面活性剤を含む撥水層ペーストが塗工されたガス拡散層基材の前記撥水層ペーストの塗工面にセリウム含有酸化物を接触させた後、加熱することによって、セリウム含有酸化物が界面活性剤の分解を促進するため、加熱による界面活性剤の分解除去工程に要する時間の短縮化を可能としている。
特開2008−117563 特開2012−226844
しかしながら、特許文献2の発明においては、基材に塗工した撥水層ペーストの表面に対して、セリウム含有酸化物を表面に保持した(コーティングした)ステンレス鋼板等の保持部材を接触させたり、或いは、粉末状としたセリウム含有酸化物を散布したりすることにより、セリウム含有酸化物を接触させることから、セリウム含有酸化物と界面活性剤との接触効率は低く、また、撥水層(塗膜)内部までセリウム含有酸化物を到達させることができない可能性もある。特に、粉末状としたセリウム含有酸化物はその取扱いが難しい。そのため、セリウム含有酸化物の使用量に見合った効果を上げることができず、界面活性剤の加熱分解時間の短縮効果には限度がある。
また、特許文献2には撥水層ペーストにセリウム含有酸化物を添加し、形成された撥水層内に残留させることについての記載もあるが、燃料電池内の環境においてセリウム含有酸化物のセリウムが拡散層から触媒層へ溶出し、発電性能の低下を招く恐れがあるため、多量に添加することはできない。また、酸化セリウム自体が非導電性であるため、ガス拡散層の抵抗値が増加して発電性能の低下を招いたり、酸化セリウムが親水性であるため、却って撥水性を妨げる要因となることもある。このため、撥水層ペーストに単体のセリウム含有酸化物を添加する場合であっても、その使用量は少量に限られることから、効果的に乾燥・焼成時間の短縮化を図ることができない。
そこで、本発明は、乾燥・焼成処理にかかる負荷を効果的に低減できるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物及び燃料電池用のガス拡散層の製造方法の提供を課題とするものである。
請求項1のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物は、導電性材料と、撥水性樹脂と、分散剤及び/または増粘剤と、担体に酸化セリウムが担持されてなり前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する除去促進剤とを含有するものであり、導電性多孔質基材に塗布し乾燥・焼成することにより燃料電池用の拡散層のマイクロポーラス層を形成するものである。
ここで、上記除去促進剤は、担体に酸化セリウム(CeO;セリアとも呼ばれる)が担持されてなるものであり、ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布した後の乾燥・焼成時に前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する触媒的機能を有するものである。酸化セリウムが担体の表面に固定されているもののみならず、担体構造中に固定されているものも含まれる。
請求項2のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物は、前記除去促進剤の担体が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのいずれかであるものである。
ここで上記酸化セリウムが担持される担体は、酸化チタン(TiO;チタニアとも呼ばれる)、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのいずれかであるが、燃料電池内の環境下での安定性や、前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する反応性の観点から、好ましくは、酸化チタンである。
請求項3のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物の前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記分散剤及び/または増粘剤100重量部に対して、25重量部〜80重量部の範囲内で配合されたものである。
請求項4のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物の前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記マイクロポーラス層形成用ペースト組成物の全固形分中に、つまり、ペースト組成物の固形分換算で1.5質量%濃度〜5.5質量%濃度の範囲内で配合されたものである。
請求項5のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物の前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記導電性材料と前記撥水性樹脂と前記分散剤及び/または増粘剤の固形分合計100重量部に対して、2重量部〜6重量部の範囲内で配合されたものである。
請求項6の燃料電池用拡散層の製造方法は、導電性材料と、撥水性樹脂と、分散剤及び/または増粘剤と、担体に酸化セリウムが担持されてなり前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する除去促進剤と、分散媒とを所定時間混合分散することによって得られたマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布し、乾燥・焼成するものである。
ここで、上記除去促進剤は、担体に酸化セリウムが担持されてなるものであり、ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布した後の乾燥・焼成時に前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する触媒的機能を有するものである。酸化セリウムが担体の表面に固定されているもののみならず、担体構造中に固定されているものも含まれる。
請求項7の燃料電池用拡散層は、前記除去促進剤の担体は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのいずれかであるものである。
ここで上記酸化セリウムが担持される担体は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのいずれかであるが、燃料電池内の環境下での安定性や、前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する反応性の観点から、好ましくは、酸化チタンである。
請求項8の燃料電池用拡散層の製造方法において、前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記分散剤及び/または増粘剤100重量部に対して、25重量部〜80重量部の範囲内で配合されたものである。
請求項9の燃料電池用拡散層の製造方法において、前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記マイクロポーラス層形成用ペースト組成物中に、つまり、ペースト組成物の固形分換算で1.5質量%濃度〜5.5質量%濃度の範囲内で配合されたものである。
請求項10の燃料電池用拡散層の製造方法において、前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記導電性材料と前記撥水性樹脂と前記分散剤及び/または増粘剤の固形分合計100重量部に対して、2重量部〜6重量部の範囲内で配合されたものである。
請求項1の発明のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物によれば、導電性材料と、撥水性樹脂と、分散剤及び/または増粘剤と、担体に酸化セリウムが担持されてなり前記分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進する除去促進剤とを含有する。このような配合材料からなるペースト組成物は、導電性多孔質基材の表面に塗布した後、乾燥・焼成されることで、導電性多孔質基材上にマイクロポーラス層を形成する。
ここで、ペースト組成物を導電性多孔質基材の表面に塗布した後の乾燥・焼成によって分散剤や増粘剤が熱分解・揮発されることで、形成されたマイクロポーラス層にて撥水性が発現されるが、本発明者らは鋭意実験研究の結果、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤をマイクロポーラス層形成用ペースト組成物に配合することで、酸化セリウム単体や酸化チタン単体を使用したときよりも短時間の乾燥・焼成でマイクロポーラス層において高い撥水性が発現され、しかも、セリウムの溶出も少なくて電池性能を阻害する恐れがないことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によれば、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材の表面に塗布した後の乾燥・焼成時における分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進する反応性が高く、酸化セリウムの少ない使用量でも分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を効果的に促進できて、セリウム溶出による電池性能の低下を招くことなく、分散剤や増粘剤を十分に除去するのに要する乾燥・焼成時間を短縮できる。
よって、乾燥・焼成にかかる電力を低減でき、また、乾燥・焼成炉の炉長を短くできて、乾燥・焼成処理にかかる負荷を効果的に低減できる。
請求項2の発明のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物によれば、前記除去促進剤の担体は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのいずれかであり、これらの担体であれば、酸化セリウムとの相性が良く、また燃料電池の環境内において担体が化学的に安定して電池性能に影響を与えることもなく、酸化セリウムが安定的に担持され、分散剤や増粘剤の熱分解・揮発に対する高い促進性・促進効果が得られる。したがって、請求項1に記載の効果に加えて、担体が電池性能を阻害することなく、乾燥・焼成時間の短縮化が可能である。
請求項3の発明のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物によれば、前記担体酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記分散剤及び/または増粘剤100重量部に対して、25重量部〜80重量部の範囲内で配合されている。
ここで、除去促進剤の配合量が少なすぎると、除去促進剤による所望の撥水性を発現するのに要する乾燥・焼成時間の短縮効果が小さく、所望とする短時間の乾燥・焼成時間では十分な撥水性を確保できない。一方で、除去促進剤の配合量が多すぎると、除去促進剤の配合量の増大に比例した乾燥・焼成時間の短縮がみられず、コストパフォーマンスが低下する。
除去促進剤の配合量が、分散剤及び/または増粘剤100重量部に対して、25重量部〜80重量部の範囲内であれば、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、乾燥・焼成にかかる電力の低減や乾燥・焼成炉の炉長の短縮が実用化に適し、マイクロポーラス層の形成に掛かる製造コストを低減できる。
請求項4の発明のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物によれば、前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記マイクロポーラス層形成用ペースト組成物の全固形分中に1.5質量%濃度〜5.5質量%濃度の範囲内で配合されている。
ここで、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤のペースト組成物中の濃度が低すぎる場合、除去促進剤による所望の撥水性を発現するのに要する乾燥・焼成時間の短縮効果が小さく、所望とする短時間の乾燥・焼成時間では十分な撥水性を確保できない一方で、ペースト組成物中の濃度が高すぎると、塗工性が低下する。
酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤がマイクロポーラス層形成用組成物中に0.25質量%濃度〜5質量%濃度の範囲内であれば、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、塗工性が良好で安定的に分散剤の熱分解・揮発を促進する効果が得られ、確実に撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を大幅に短縮できる。
請求項5の発明のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物によれば、前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記導電性材料と前記撥水性樹脂と前記分散剤及び/または増粘剤の固形分合計100重量部に対して、2重量部〜6重量部の範囲内で配合されている。
酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合濃度が低すぎる場合、除去促進剤による所望の撥水性を発現するのに要する乾燥・焼成時間の短縮効果が小さく、所望とする短時間の乾燥・焼成時間では十分な撥水性を確保できない一方で、配合濃度が高すぎると、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布し乾燥・焼成することにより導電性多孔質基材上に形成されたマイクロポーラス層において、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の濃度が高く、ガス拡散層に必要な特性(ガス拡散性、撥水性等)や強度等の塗膜性能が低下する恐れがある。また、電池環境内においてセリウムが多く溶出して電池性能が低下する可能性もある。
酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の濃度が、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、導電性多孔質材料としてのアセチレンブラック及びPTFE樹脂及び酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の固形分合計中において2質量%濃度〜6質量%濃度の範囲内であれば、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、確実に、セリウムの溶出による電池性能の低下を招くことなく、撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を大幅に短縮できるうえ、安定的な電池性能が得られる。
請求項6の発明のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物の製造方法によれば、導電性材料と、撥水性樹脂と、分散剤及び/または増粘剤と、担体に酸化セリウムが担持されてなり前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する除去促進剤と、分散媒とを所定時間混合分散することによって得られたマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布し、乾燥・焼成することにより、導電性多孔質基材上にマイクロポーラス層を形成する。
ここで、ペースト組成物を導電性多孔質基材の表面に塗布した後の乾燥・焼成によって分散剤や増粘剤が熱分解・揮発されることで、形成されたマイクロポーラス層にて撥水性が発現されるが、本発明者らは鋭意実験研究の結果、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤をマイクロポーラス層形成用ペースト組成物に配合することで、酸化セリウム単体や酸化チタン単体を使用したときよりも短時間の乾燥・焼成で分散剤や増粘剤が十分に除去されてマイクロポーラス層において高い撥水性が発現され、しかも、セリウムの溶出も少なくて電池性能を阻害する恐れがないことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によれば、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材の表面に塗布した後の乾燥・焼成時における分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進する反応性が高く、酸化セリウムの少ない使用量でも分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を効果的に促進できて、電池性能を阻害することなく、短い乾燥・焼成時間で撥水性が発現されることで分散剤や増粘剤を十分に除去するのに要する乾燥・焼成時間を短縮できる。
よって、乾燥・焼成かかる電力を低減でき、また、乾燥・焼成炉の炉長を短くできることから、乾燥・焼成処理にかかる負荷を効果的に低減できて、製造コストを低減することができる。
そして、このように短い乾燥・焼成時間でも分散剤や増粘剤が十分に除去されてマイクロポーラス層(塗膜)中に残存することがないため、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材の表面に塗布し、乾燥・焼成することによって導電性多孔質基材上に形成されたマイクロポーラス層において、燃料電池の発電効率に影響を与える撥水性が十分に発現される。よって、このようにして作製されたマイクロポーラス層を有する燃料電池用拡散層では、電池反応で生成した水の排出がスムーズに行われてフラッディング現象が防止される。これより、ガス拡散性等の特性の低下が抑制され、電池性能の低下を防止できる。また、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によって分散剤や増粘剤の熱分解・揮発が効果的に促進されることで、乾燥・焼成にかかる時間が短縮されることから、形成されるガス拡散層のマイクロポーラス層において、長時間の加熱に起因するクラックの発生が防止されて、安定して均一なガス拡散性等の特性を発揮できる。故に、安定した出力が得られ、固体高分子形燃料電池を長期間安定して作動できる膜電極接合体に好適に用いることができる。
また、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布して乾燥・焼成するという簡単な作業工程によって導電性多孔質基材上にガス拡散性や撥水性等の特性が良好なマイクロポーラス層を形成でき、しかも、導電性多孔質基材の形状により任意の形状に仕上げることができる。
請求項7の発明の燃料電池用ガス拡散層によれば、前記除去促進剤の担体は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのいずれかであり、これらの担体であれば、酸化セリウムとの相性が良く、また燃料電池の環境内において担体が化学的に安定して電池性能に影響を与えることもなく、酸化セリウムが安定的に担持され、分散剤や増粘剤の熱分解・揮発の高い促進性・促進効果が得られる。したがって、請求項6に記載の効果に加えて、電池性能に影響を与えることなく、乾燥・焼成時間の短縮化が可能である。
請求項8の発明の燃料電池用ガス拡散層によれば、前記担体酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記分散剤及び/または増粘剤100重量部に対して、25重量部〜80重量部の範囲内で配合されている。
ここで、除去促進剤の配合量が少なすぎると、除去促進剤による所望の撥水性を発現するのに要する乾燥・焼成時間の短縮効果が小さく、所望とする短時間の乾燥・焼成時間では十分な撥水性を確保できない。一方で、除去促進剤の配合量が多すぎると、除去促進剤の配合量の増大に比例した乾燥・焼成時間の短縮がみられず、コストパフォーマンスが低下する。
除去促進剤の配合量が、分散剤及び/または増粘剤100重量部に対して、25重量部〜80重量部の範囲内であれば、請求項6または請求項7に記載の効果に加えて、乾燥・焼成にかかる電力の低減や乾燥・焼成炉の炉長の短縮が実用化に適し、マイクロポーラス層の形成に掛かる製造コストを低減できる。
請求項9の発明の燃料電池用ガス拡散層によれば、前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記マイクロポーラス層形成用ペースト組成物の全固形分中に1.5質量%濃度〜5.5質量%濃度の範囲内で配合されている。
ここで、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤のペースト組成物中の濃度が低すぎる場合、除去促進剤による所望の撥水性を発現するのに要する乾燥・焼成時間の短縮効果が小さく、所望とする短時間の乾燥・焼成時間では十分な撥水性を確保できない一方で、ペースト組成物中の濃度が高すぎると、塗工性が低下する。
酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤がマイクロポーラス層形成用組成物中に0.25質量%濃度〜5質量%濃度の範囲内であれば、請求項6乃至請求項8の何れか1つに記載の効果に加えて、塗工性が良好で安定的に分散剤の熱分解・揮発を促進する効果が得られ、確実に撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を大幅に短縮できる。
請求項10の発明のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物によれば、前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記導電性材料と前記撥水性樹脂と前記分散剤及び/または増粘剤の固形分合計100重量部に対して、2重量部〜6重量部の範囲内で配合されている。
酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合濃度が低すぎる場合、除去促進剤による所望の撥水性を発現するのに要する乾燥・焼成時間の短縮効果が小さく、所望とする短時間の乾燥・焼成時間では十分な撥水性を確保できない一方で、配合濃度が高すぎると、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布し乾燥・焼成することにより導電性多孔質基材上に形成されたマイクロポーラス層において、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の濃度が高く、ガス拡散層に必要な特性(ガス拡散性、撥水性等)や強度等の塗膜性能が低下する恐れがある。また、電池環境内においてセリウムが多く溶出して電池性能が低下する可能性もある。
酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の濃度が、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、導電性多孔質材料としてのアセチレンブラック及びPTFE樹脂及び酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の固形分合計中において2質量%濃度〜6質量%濃度の範囲内であれば、請求項6乃至請求項9の何れか1つに記載の効果に加えて、確実に、セリウムの溶出による電池性能の低下を招くことなく、撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を大幅に短縮できるうえ、安定的な電池性能が得られる。
図1は本発明の実施の形態のマイクロポーラス層形成用ペーストを導電性多孔質基材に塗布して形成した燃料電池用ガス拡散層を有する固体高分子形燃料電池の概略構成を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本実施の形態にかかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物について説明する。
本実施の形態のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物は、導電性材料と、撥水性樹脂と、分散剤及び/または増粘剤と、担体に酸化セリウムが担持されてなり、導電性多孔質基材に塗布した後の乾燥・焼成時に前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する除去促進剤と、分散媒(溶媒)とを混合してなるものである。
導電性材料としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等)、黒鉛等のカーボン粒子や、チョップドファイバー等の炭素繊維(カーボン繊維)、グラフェン等が挙げられ、これら1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。特に、導電性材料にカーボン粒子等の粉末状のものを使用してマイクロポーラス層を形成した場合には、マイクロポーラス層の表面が均一になりやすく、触媒層との接触抵抗が低減し、また、ガスの拡散が均一になるから、電池の高出力化が可能となる。
ここで、本実施の形態のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物の塗布対象としての導電性多孔質基材には、通常、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等のカーボン基材が用いられ、これらカーボン基材との相性の点からすると、更には、導電性、比表面積、耐食性、電気抵抗、コストの観点から、導電性材料としてはカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられるが、これらは1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。
中でも、アセチレンブラックは純度が高くて使いやすく、また、比表面積が大きく分散性に優れ、触媒の活性を低下させにくく電子伝導性や撥水性も良好で、化学的安定性が高く、更に、良好な揺変性(チキソトロピー)を付与して膜の成形が容易であることから、燃料電池の電極に使用されるマイクロポーラス層の塗膜を形成するのに好適である。
この導電性材料によって、形成するマイクロポーラス層に導電性が付与される。
なお、導電性材料の中位径(平均一次粒子径)は、均一分散性の観点から、20nm〜150nmの範囲内であることが好ましい。
因みに、JIS Z 8901「試験用粉体及び試験用粒子」の本文及び解説の用語の定義によれば、中位径とは、粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数(または質量)が、全粉体のそれの50%を占めるときの粒子径(直径)、即ち、オーバサイズ50%の粒径であり、通常、メディアン径または50%粒子径といいD50と表わされる。定義的には、平均粒子径と中位径で粒子群のサイズを表現されるが、ここでは、商品説明の表示、レーザ回折・散乱法によって測定した値である。
そして、この「レーザ回折・散乱法によって測定した中位径」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いてレーザ回折・散乱法によって得られた粒度分布において積算重量部が50%となる粒子径(D50)をいう。
なお、上記数値は、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。この誤差の観点から見ると、平均粒子径との差も正規分布に近いほど僅少であり、平均粒子径≒中位径であり、平均粒子径=中位径と見做すこともできる。
また、導電性材料は、含有量が少なすぎる場合、導電性が不足し、一方で、含有量が多すぎると、凝集により塗布する際の粘度が増大して塗工性が損なわれたり、形成したマイクロポーラス層の空孔が少なくなり、ガス透過性が低下したりすることから、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物の全固形分中において50〜95重量%の範囲内の含有量とすることが望ましい。特に、本発明においては、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が配合されていることで、この除去促進剤によって、導電性材料を分散させる機能を有する分散剤や増粘剤の熱分解・揮発が効果的に促進されることから、導電性材料の含有量が多く、それを分散させる分散剤や増粘剤の配合量を多くしても、乾燥・焼成処理にかかる負荷を大幅に増大させることもない。
撥水性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂や、シリコーン樹脂等を使用できる。これらは1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。通常、フッ素系樹脂等の撥水性樹脂は、そのままでは水には分散しないため、適当な界面活性剤(分散剤)によって水中に分散させたもの、例えば、フッ素系樹脂等の撥水性樹脂が乳化されたエマルジョンや、フッ素系樹脂等の撥水性樹脂が分散されたディスパージョン等の形態で添加される。
因みに、エマルジョン(emulsion;「エマルション」ともいう。)とは、乳濁液ともいい、液体中に液体粒子がコロイド粒子或いはそれより粗大な粒子として乳状をなすもの(分散系)が本来の意味であるが(長倉三郎他編「岩波理化学辞典(第5版)」152頁,1998年2月20日株式会社岩波書店発行)、本明細書においては、より広い意味で一般的に用いられている「液体中に固体または液体の粒子が分散しているもの」として、ここでは「エマルジョン」という用語を用いるものとする。
中でも、撥水性、電極反応時の耐食性等に優れるフッ素系の高分子材料が好ましく、特に、高い撥水性が得られるPTFEのエマルジョンを用いるのが好ましい。なお、PTFEは、テトラフルオロエチレンの単独重合体であってもよく、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のハロゲン化オレフィン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等の他のフッ素系単量体に由来する単位を含む変性PTFEであってもよい。
この撥水性樹脂によって、形成するマイクロポーラス層に撥水性が付与される。また、撥水性樹脂は、乾燥・焼成時の加熱処理によりその少なくとも一部が軟化・溶融して導電材(マイクロポーラス層の導電性材料や導電性多孔質基材の炭素繊維等の導電性物質)を結着する樹脂バインダーとしての機能も有する。
なお、撥水性樹脂の平均分子量は、5万〜100万の範囲内であることが望ましい。平均分子量が低すぎるものは、上記導電材を結合させるバインダーとしての結着性が小さく、一方で、平均分子量の大きすぎるものは、混合時に繊維化して分散不良になり易くてペーストの安定性が低下したり、塗工等の製造プロセスにおける剪断力により繊維化して固まり、濃度変化が生じたり、配管やポンプ等の目詰まりや塗着不良を起こしたりする原因となる。因みに撥水性樹脂がフッ素系重合体である場合、フッ素系重合体は溶媒に溶解しにくいため、溶融粘度では平均分子量を測定しにくい。このため、比重と数平均分子量との関係から平均分子量を求める比重法が適用される。
また、撥水性樹脂の含有量が少なすぎる場合、撥水性が不足したり、バインダー効果が小さくて高い膜強度や接合強度が得られなくなったりする。一方で、含有量が多すぎると、マイクロポーラス層の空孔が少なくなり、ガス透過性が低下する。よって、撥水性樹脂は、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物の全固形分中において固形分換算で5〜50重量%の範囲内の含有量とすることが望ましい。特に、本発明においては、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が配合されていることで、この除去促進剤によって、撥水性樹脂を分散させる機能を有する分散剤や増粘剤の熱分解・揮発が効果的に促進されることから、撥水性樹脂の含有量が多く、それを分散させる分散剤や増粘剤の配合量を多くしても、乾燥・焼成処理にかかる負荷を大幅に増大させることもない。
そして、本実施の形態のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物においては、導電性材料や撥水性樹脂を分散させ安定化させる分散剤及び/またはペースト組成物の粘度を調整する増粘剤が配合される。分散剤は、界面活性作用等によりや導電性材料や撥水性樹脂を均一に分散させ安定化させるものである。また、増粘剤は、粘度調整により、塗工性や貯蔵性の改善等を図ったり、導電性材料や撥水性樹脂を均一に分散させたりするものである。
ここで、分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(トリトンX−100等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等の非イオン系(ノニオン系)界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジウムクロリド等のカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、酸性基含有構造変性ポリアクリレート等のアニオン系界面活性剤等が使用される。
これらの中でも、非イオン系(ノニオン系)の界面活性剤は、金属イオンの含有量が少ないため、短絡や触媒劣化による電池性能の低下を招く恐れが少なくて好ましく、特に、導電性材料としてカーボンブラック、撥水性樹脂としてPTFEエマルジョンを使用する場合には、これらカーボン粒子やPTFE粒子の濡れ性を良くし分散性を向上させるために、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(トリトンX−100)等が好適に用いられる。なお、上述したように、撥水性樹脂が分散剤を含む状態で混合される場合もある。
この分散剤によって、導電性材料や撥水性樹脂の凝集を防止して溶媒に均一に分散させることができる。これにより、ペーストの安定性が高まり、また、濃度変化が生じたり塗布時において配管やポンプ等に目詰まりが起こったりするのが防止されて、良好な成膜性を得ることができる。更に、均質で表面起伏が少ないマイクロポーラス層となって、触媒層との接触抵抗も小さくなり良好なガス拡散性等の特性を得て、燃料電池において安定した出力を得ることができる。
増粘剤としては、ポリエチレンオキサイド系、メチルセルロース系、ヒドロキシエチルセルロース系、ポリエチレングリコール系(例えば、アルキルフェノールとポリエチレングリコールのエーテル類、高級脂肪族アルコールとポリエチレングリコールのエーテル類等)、ポリビニルアルコール系等が使用される。
この増粘剤によって、粘度調整することで、塗工性や貯蔵性の改善、ペースト成分の裏抜け防止、気孔率の調整等の効果が得られるが、導電性材料や撥水性樹脂の分散性を向上させたり安定させたりする効果が得られることもある。
そして、マイクロポーラス層に要求される特性に応じて、ペースト組成物に分散剤のみが配合されることもあれば、増粘剤のみが配合されることもあり、分散剤及び増粘剤の両者が配合されることもある。更に、分散剤及び増粘剤の二つの機能を持ったペースト材料が配合されることもある。
なお、分散剤や増粘剤の配合は、それらの添加による効果を確保するのに十分な量が配合されるが、添加量が多いと塗工性や電池性能の低下を招くことから、そのような不具合が生じない範囲に調整される。特に、本発明においては、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が配合されていることで、この除去促進剤によって、分散剤や増粘剤の熱分解・揮発が効果的に促進されることから、分散剤や増粘剤の配合量を多くしても、乾燥・焼成処理にかかる負荷の増大が少ない。
ここで、これら分散剤や増粘剤は、ペースト組成物を導電性多孔質基材の表面に塗布した後の乾燥・焼成処理において熱分解・揮発されるが、このとき、分散剤や増粘剤が十分に除去されずにマイクロポーラス層に残存すると、分散剤や増粘剤の親水性基によって水分が捕捉されるため、導電性多孔質基材の表面に形成されたマイクロポーラス層において十分な撥水性を確保することができない。また、場合によっては、撥水性樹脂による導電材の結着が阻害されて不十分となり、それによって、導電性材料の脱落が生じやすかったり、燃料電池に組み込んだとき、マイクロポーラス層において反応生成水の水蒸気の凝縮が発生して発電性能が低下したりする恐れがある。
そこで、本実施の形態においては、ペースト組成物に、分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進する除去促進剤が配合される。そして、本実施の形態の除去促進剤は、担体に酸化セリウムが担持されてなるものである。
ペースト組成物に、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が配合されることで、ペースト組成物を導電性多孔質基材の表面に塗布した後の乾燥・焼成時に分散剤や増粘剤の除去が促進されて、短い乾燥・焼成時間でも分散剤や増粘剤が消失してマイクロポーラス層に十分な撥水性が発現される。
特に、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によって、単体で酸化セリウムを配合したときよりも、短い乾燥・焼成時間でマイクロポーラス層に十分な撥水性の発現が見られた。また、燃料電池内の環境下において、セリウムの溶出も極めて少ないものであった。
これは、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によれば、分散剤や増粘剤が熱分解・揮発するのを促進させる反応性が高くて(触媒的な活性が高くて)、熱分解・揮発の反応速度が速くなり除去促進効果(触媒的作用効果)が高くなったためと推測される。担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤による分散剤や増粘剤の除去促進効果が高くなる理由については、酸化セリウムが担体に担持されていることで、酸化セリウムの凝集も少なくて分散性が高く、また、比表面積の増大によって、反応物質との接触効率が高まった(活性点が増大した)ことが考えられる。また、担体が、単に除去促進剤を保持する(支持する)ものとしての機能のみならず、反応の促進に関与していることも考えられる。更に、担体の吸着性や酸化セリウムの反応物質との反応性による相乗効果も考えられる。
このように担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によれば、分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進させる反応性が高いことで、酸化セリウムの使用量が少量でも高い除去促進効果(触媒的作用効果)が得られる。そして、酸化セリウムの使用量が少量であることで、セリウムの溶出による電池性能の低下を招くことなく、即ち、電池の特性に影響を与えることなく、乾燥・焼成時間の短縮化が可能である。なお、酸化セリウムが担体に担持されていることで、セリウムが溶出し難くなっていることも考えられる。
ここで、酸化セリウムを担持する担体としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ等が挙げられる。中でも、酸化チタンは、安価に入手でき、燃料電池内の環境においても化学的に安定して酸化セリウムとの相性が良く、更に高い比表面積を有することで、分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進する高い効果が得られ、好適である。特に、酸化チタンに酸化セリウムを担持されてなる除去促進剤は、分散剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(トリトンX−100)等の非イオン系界面活性剤に対して、乾燥・焼成時に高い除去促進効果が得られ、所望とする短時間の乾燥・焼成で、界面活性剤が除去されてマイクロポーラス層において十分な撥水性を確保できる。
なお、担体に使用する酸化チタンについては、その製法(例えば、塩素法や硫酸法等がある)、形状、結晶型(例えば、ルチル型、アナタース型、ブルカイト等がある)、粒子径等が特に限定されものではない。
このような担体に酸化セリウムを担持されてなる除去促進剤は、市販のものを購入して使用することができ、その製造方法も特に限定されるものではなく、例えば、酸化チタン等の担体に酸化セリウムの前駆体(セリウム水酸化物等)を被覆し、所定温度で焼成または高温高圧下で加熱(ソルボサーマル法)を行うことによって得ることができる。ここで、酸化セリウムの前駆体としては、例えば、セリウムの塩化物、硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸アンモニウム塩等の水溶液にアンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリや硫酸やシュウ酸等の酸を加えることによって、得られた水酸化物あるいはシュウ酸塩の沈殿物等が挙げられる。
より具体的には、担体を水に添加してなるスラリー中に酸化セリウム前駆体を添加し、次いで、水酸化ナトリウム等のアルカリを用いて中和(pHを6〜8)し、熟成する(例えば、10〜60分間)。これらの処理にて、担体に酸化セリウム前駆体が被覆される。
続いて、洗浄、固液分離、乾燥(例えば、100〜150℃の温度で1〜8時間)を行った後、焼成(例えば、250〜1200℃の温度で0.5〜3時間)することにより、あるいは、高温高圧下で加熱(ソルボサーマル法)することにより、酸化セリウム前駆体が酸化セリウムとなって、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が得られる。なお、焼成あるいは高温高圧下の加熱後に、必要に応じてハンマーミル等を用いて粉砕を行うことによって凝集が防止される。
その他にも、担体と、セリウムの塩化物、硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸アンモニウム塩等、および/または、酸化セリウムとを混合し焼成(例えば、250〜1200℃の焼成温度)する、所謂、固相法によって担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を得ることが可能である。
なお、これらのようにして得られた除去促進剤は、微視的にみると、例えば、担体の表面(海)に酸化セリウムの粒子(島)が分散した海島構造を有する。
担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の形状については、特に限定されるものではない。担体に例えば、球状、板状、針状等の粒子状を採用することで、そのような形状の担体を用いて製造される除去促進剤においても、球状、板状、針状等の粒子状となる。また、担体に担持されている酸化セリウムも、通常、粒子状である。
また、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の中位径(平均一次粒子径)についても、特に限定されないが、好ましくは0.05〜5μmの範囲内である。粒子径が小さすぎると、凝集が生じて、分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進する効果が低下する可能性があり、粒子径が大きすぎると、塗工性や塗膜性能を低下させる恐れがあるからである。
なお、担体に担持された酸化セリウムの中位径(平均一次粒子径)は、例えば、0.02〜0.10μmとされる。
担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤において、酸化セリウム中のセリウムの価数は3価でも4価でもよいが、3価のセリウムを含む酸化セリウムを担持することで、分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進する効果がより高いものとなる。
なお、酸化セリウムは、高い純度であることが好ましいが、酸化ジルコニウム(ZrO2)等がドープ等により固溶されていてもよい。
担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤において、酸化セリウムの担持量は、1〜50質量%、より好ましくは、3〜20質量%の範囲内であるのが好ましい。酸化セリウムの担持量が少なすぎる場合、分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進させる高い反応性が得られず、効果的な除去促進効果を得るためには、除去促進剤の添加量を多くする必要があることから、ペースト組成物の流動特性、塗工性、成膜性を低下させる恐れがある。一方で、酸化セリウムの担持量が多すぎても、酸化セリウムの使用量に見合った効果的な除去促進効果の増大が得られないうえ、除去促進剤の使用量が少量でも燃料電池内の環境下においてセリウムの溶出量が増大して電池性能を低下させる恐れがある。酸化セリウムの担持量が、1〜50質量%、より好ましくは、3〜20質量%の範囲内であれば、電池性能の低下を招くことなく、少量の配合量でも乾燥・焼成時における分散剤や増粘剤の熱分解・揮発に対して効果的な除去促進効果が発揮されて、乾燥・焼成処理における時間の短縮化が可能となって、乾燥・焼成処理にかかる負荷を軽減できる。
このように本実施の形態のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物は、以上説明してきたカーボンブラック等の導電性材料、PTFEエマルジョン等の撥水性樹脂、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(トリトンX−100)等の非イオン系界面活性剤等の分散剤及び/またはポリエチレンオキサイド等の増粘剤、並びに、酸化チタン等の担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を所定の割合で配合するわけであるが、このマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を後述する燃料電池用ガス拡散層に適用する際には、即ち、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材の表面に塗布してマイクロポーラス層とする際には、上記の配合材料をイオン交換水等の分散媒(溶媒)中で混合分散させて、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物としている。
なお、分散媒(溶媒)は、導電性材料、撥水性樹脂、分散剤・増粘剤、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の各配合材料を混合分散して塗工性を良くするためのものであり、乾燥・焼成後においては消失するものである。イオン交換水等の水系の分散媒(溶媒)を使用した場合には、有機系溶剤を使用した場合よりも、PTFEエマルジョン等の撥水性樹脂の分散性が良くて撥水性樹脂が分離することなく、良好な成膜性が得られる。また、塗工や焼成の際の作業性が良く、発火の恐れもない。更に、環境負荷にもならず、低コストで製造できる。
ここで、配合材料の混合分散処理は、一般的なディスパー、プラネタリー等のミキサーや、ビーズミル等を使用した攪拌も可能であるが、攪拌用羽根等による剪断力を用いることなく、材料同士の接触(衝突)や材料の撹拌容器内壁への接触(衝突)によって発生する衝突エネルギー等を利用して分散させるのが望ましく、例えば、公転・自転を特定の値に設定可能な遊星式撹拌・脱泡装置等を用いて混合分散させることが好ましい。これにより、カーボン等の導電性粒子の三次元構造の破壊を招くことなく、導電性粒子の三次元構造を維持したまま、導電性材料を分散できることから、撥水性樹脂と導電性粒子との強固な三次元結合を形成し、膜強度の向上を図ることができる。また、混合分散時に高い剪断応力がかかると導電性材料及び撥水性樹脂エマルジョン中の樹脂分が凝集して凝集物を生じ塗工時のフィルターの目詰まりや塗膜の欠落を発生するが、遊星式撹拌・脱泡装置を用いることで、導電性材料及び撥水性樹脂エマルジョン中の樹脂分が凝集して凝集物が生じるのが防止され、塗工時のフィルターの目詰まりや塗膜の欠落が防止される。更に、遊星式撹拌・脱泡装置を用いることで、かかる装置においては撹拌用の羽根等を有しないため洗浄に手間がかかることがなく、歩留まりも向上することから、低コスト化が可能となる。
なお、通常、導電性材料、撥水性樹脂、分散剤及び/または増粘剤、並びに酸化チタン等の担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤をイオン交換水等の分散媒(溶媒)に添加し、遊星式撹拌・脱泡装置等で所定時間混合分散するが、分散剤及び/または増粘剤の種類によっては、それ以外の配合材料を遊星式撹拌・脱泡装置等で混合分散したのちに、分散剤及び/または増粘剤を添加して攪拌機で混合分散させる場合もある。
また、本発明を実施する場合には、必要に応じてその他添加剤を配合することも可能である。
次に、この本実施の形態のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を用いて形成される燃料電池用のガス拡散層について説明する。
燃料電池用のガス拡散層の製造においては、まず、上述のようにして得られたマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布する。
導電性多孔質基材としては、従来の燃料電池(特に、固体高分子形燃料電池)のガス拡散層で一般的に用いられているガス透過性と導電性を備える多孔質のものを用い、例えば、黒鉛、膨張黒鉛等の炭素材料(ナノカーボン材料を含む)が繊維状、粒子状、織布状、不織布状、メッシュ状、格子状、パンチング体、発泡体等の多孔質体の形態で構成されたものを用いることができる。特に、ガス透過性等の観点から、炭素繊維が好ましく、より具体的には、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト(カーボン不織布)等が好適に使用される。これらは、燃料電池の使用状況、運転条件等を考慮して選択される。
因みに、カーボンクロスやカーボンフェルト(カーボン不織布)は構造上、ガス透過性が高く、高湿度条件での使用に適している。カーボンペーパーは、カーボンファイバーをバインダーで結着させており、孔径分布がカーボンクロスやカーボンフェルト(カーボン不織布)に比べて小さいためガス透過性が低く、低湿度条件での使用に適している。カーボンペーパーは、カーボンクロスやカーボンフェルト(カーボン不織布)に比べて、薄くても面方向や厚さ方向の寸法安定性が高く、成形加工性が優れており、また、曲げ剛性が高いために膜/電極接合体をスタック化する際のハンドリング性に優れている。更に、カーボンペーパーは、カーボンクロスやカーボンフェルト(カーボン不織布)に比べて薄くできて成形しやすいため、スタックサイズの小型化が容易である。加えて、ガス拡散層を所定寸法にカットする工程時のカット後の寸法安定性も良好で、ロボットによる搬送工程における易チャック性・易移動性に優れるため、燃料電池の大量生産化に有利である。
なお、必要に応じてカーボンペーパー、カーボンクロス等の導電性多孔質基材には、ガス拡散層の撥水性を向上さたり、ペースト組成物の染み込みを防止するために、撥水処理が施される。この撥水処理に使用する撥水剤は、上述のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物に用いることができる撥水性樹脂の内容と同様のものを用いて行うことができる。
導電性多孔質基材の厚さは、燃料電池の運転条件等や求められる性能を考慮して設定されるが、導電性多孔質基材が薄すぎると、強度が不足して安定的なガス拡散性、排水性、導電性等のガス拡散層の性能が得られなくなったり、取扱い性が悪くなり触媒層との位置ずれが生じたりして、電池性能の低下を招く。また、導電性多孔質基材が厚すぎても、ガス拡散性が低下したり、内部抵抗値が増大したりし、高い電池性能を得ることができなくなる。このため、2μm〜500μmの範囲内が好ましい。
導電性多孔質基材に対するマイクロポーラス層形成用ペースト組成物の塗布は、刷毛塗り、筆塗り、ロールコータ法、バーコータ法、ダイコータ法、ブレード法、ナイフコータ法、スピンコータ法、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、カーテンコーティング法、ディップコータ法、スプレーコータ法、グラビアコータ法、アプリケータ、スプレー噴霧等の方法で行うことができる。特に、ダイコータ法は、導電性多孔質基材の表面粗さによらず塗工量の定量化を図ることができるため、好適であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本明細書においては、導電性多孔質基材上にマイクロポーラスの塗膜を形成できればよく、その手段としての塗布は含浸を含む広い概念とする。
マイクロポーラス層形成用ペースト組成物の塗布膜厚も、燃料電池の運転条件等や求められる性能を考慮して設定されるが乾燥・焼成後の塗膜の乾燥膜厚(マイクロポーラス層厚み)が、1μm〜300μmの範囲内となるように設定されるのが好ましい。
乾燥膜厚が薄すぎると導電性多孔質基材の凹凸を吸収したり、導電性多孔質基材の繊維が電解質膜に突き刺さるのを阻止したりする効果が得られない。一方で、塗布膜厚が厚すぎると、乾燥・焼成による収縮によって表面平滑性が低下しやすく、触媒層との接触抵抗が増大する。また、乾燥膜厚が厚いと、厚さ方向の電気抵抗が高くなる。
乾燥膜厚が1μm〜300μmの範囲内であれば、表面平滑性の高いマイクロポーラス層が得られ、良好なガス透過性、電気抵抗性の性能を確保できる。また、導電性多孔質基材の厚みに対してマイクロポーラス層の厚みが50%以下であるのが望ましい。厚みの差が適度な範囲内であれば、乾燥・焼成による導電性多孔質基材とマイクロポーラス層間における収縮応力が小さく、高い接合強度が得られる。また、拡散層全体の平滑性が高くなり触媒層との接触抵抗が小さいものとなる。
次に、燃料電池用のガス拡散層の製造においては、このようにして導電性多孔質基材にマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を塗布した後、乾燥・焼成される。
このマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布した後の乾燥・焼成によって、導電性多孔質基材に塗布されたマイクロポーラス層形成用ペースト組成物中の分散剤・増粘剤及び水分が除去されて撥水性樹脂による撥水性が発現されると共に、空隙(細孔)が形成される。また、撥水性樹脂の一部が溶融されて導電材(導電性材料や、導電性多孔質基材の炭素繊維等の導電性物質)を結着して、形成されるマイクロポーラス層を強固なものとする。
ここで、分散剤や増粘剤の除去が不十分であると、分散剤や増粘剤の親水性基によって水分が捕捉されるため、導電性多孔質基材の表面に形成されたマイクロポーラス層において十分な撥水性を確保することができず、燃料電池に適用した場合に実用的な排水性を得ることができない。
このため、乾燥・焼成処理においては、分散剤や増粘剤の除去に十分な時間、温度が必要となってくる。しかし、乾燥・焼成処理の時間を長くしたり乾燥・焼成温度を高くしたりすると、加熱のための電力等も増大することから、製造コストに大きく影響する。
そこで、本実施の形態においては、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物において、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を配合することによって、ペースト組成物を導電性多孔質基材の表面に塗布した後の乾燥・焼成時に分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を効果的に促進して、除去促進剤を配合しないときよりも極めて短い乾燥・焼成時間で、分散剤や増粘剤の十分な除去を可能とした。つまり、分散剤や増粘剤を十分に除去して撥水性を発現するのに要する乾燥・焼成時間の短縮を可能とした。
こうして乾燥・焼成時間が短縮されることによって、乾燥・焼成にかかる電力を低減でき、また、乾燥・焼成炉の炉長を短くできることから、乾燥・焼成処理にかかる負荷が軽減され、製造コストを低減することができる。その結果、燃料電池の低コスト化を図ることも可能となる。また、電気量の削減によって二酸化炭素の排出量の低減が可能となることで、自然環境に与える負荷を軽減できる。加えて、乾燥・焼成時間の短縮により生産効率を上げることができる。
このときの乾燥・焼成の温度は分散剤や増粘剤を熱分解・揮発して除去できる温度に設定され、例えば、分散剤としての非イオン系界面活性剤がポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(トリトンX−100)等であれば、また、ポリエチレンオキサイド等の増粘剤であれば250〜350℃の範囲に設定される。
ここで、乾燥・焼成温度が低すぎると、乾燥・焼成時間を長くしても、分散剤や増粘剤を十分に熱分解・揮発して除去することができず、分散剤や増粘剤が残存してそれらの親水性基によって水分が捕捉されるため、形成するガス拡散層において十分な撥水性を発現できない。そして、燃料電池に適用した場合に実用的な排水性を得ることができない。一方で、乾燥・焼成温度が高すぎる場合、撥水性樹脂が熱分解されてマイクロポーラス層の成分が劣化したり、高い温度変化によりマイクロポーラス層の変形が大きくなって平滑性が低下したり、亀裂が生じたりすることで、所望の要求性能を有するマイクロポーラス層の形成が困難となる。更に、乾燥・焼成工程での負荷や自然環境に与える負荷が増え、製造コストも高くなる。
上記のような分散剤や増粘剤の使用では、乾燥・焼成温度を250℃〜350℃の範囲内とすることで、分散剤や増粘剤及び水分が完全に分解・揮発して消失し残存することなく、発電効率に大きく影響を与える拡散層の重要特性である撥水性を確保でき、かつ、所望特性のマイクロポーラス層の形成と導電性多孔質基材との良好な接合を確保することができる。
特に、本実施の形態においては、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によって分散剤や増粘剤の熱分解・揮発を促進する効果が高まることから、乾燥・焼成温度を低減することも可能である。除去促進剤を使用しないときと比べて乾燥・焼成温度を低くしても、分散剤や増粘剤の除去に要する乾燥・焼成時間が大幅に長くなることはなく短時間の乾燥・焼成で撥水性が発現される。即ち、より低温での乾燥・焼成としても分散剤や増粘剤の除去に要する乾燥・焼成時間が短くて済む。このように乾燥・焼成温度の低減化を図るのが可能となることで乾燥・焼成にかかる電力を抑えることができて、乾燥・焼成にかかる負荷を軽減でき、製造コストの低減化を図ることが可能である。
また、乾燥・焼成温度の低減化が可能であることで、自然環境に与える負荷を軽減することができ、更に、高温加熱に起因する塗膜成分の劣化やクラックの発生、基材への定着力の低下等を防止できる。
このように導電性多孔質基材にマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を塗布して、乾燥・焼成することにより、導電性多孔質基材上にマイクロポーラス層が形成されて、導電性多孔質基材及びマイクロポーラス層からなる燃料電池用のガス拡散層が得られる。
即ち、本実施の形態のガス拡散層は、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布して乾燥・焼成するという簡単な作業工程によって形成され、導電性多孔質基材の形状により任意の形状に仕上げることができる。
なお、乾燥と焼成の順序は特に問われず、乾燥と焼成が同時に行われることもある。また、主に分散剤や増粘剤の分解除去を行うための熱処理と、主に撥水性樹脂の溶融による結着を行うための熱処理とで乾燥・焼成の温度や時間条件を変え、各熱処理を分けて行うことも可能である。
そして、このようにして、導電性材料と、撥水性樹脂と、分散剤及び/または増粘剤と、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤と、分散媒(溶媒)とを混合してなるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布して乾燥・焼成することにより得られた本実施の形態のガス拡散層では、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物によって形成されたマイクロポーラス層中の導電性材料及び導電性多孔質基材を構成する炭素繊維等の導電性物質によって導電性が発揮され、また、PTFE等の撥水性樹脂によって撥水性が発揮される。さらに、マイクロポーラス層には、導電性多孔質基材の空隙(細孔)よりも小さい微細孔が形成され、ガス拡散性や排水性が確保される。
特に、本実施の形態のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布し、乾燥・焼成して導電性多孔質基材上にマイクロポーラス層を形成した燃料電池用のガス拡散層においては、乾燥・焼成時間が短くても、分散剤や増粘剤が十分に除去されてマイクロポーラス層に残存することなく、燃料電池の発電効率に影響を与えるガス拡散層の重要特性である撥水性が長時間良好に維持される。これにより、電池反応で生成した水の排出がスムーズに行われて、フラッディング現象も防止され、ガス拡散性等の特性の低下による電池性能の低下が抑制される。更に、長時間の加熱に起因するクラックの発生も防止でき、均一なガス拡散性等の特性が得られる。また、分散剤や増粘剤が残存しないことで、撥水性樹脂による導電材の結着が阻害されることもなく、導電性材料の脱落が防止される。故に、安定したガス拡散性等の特性が発揮され、燃料電池として発電性能が高く安定した出力が得られる。このため、製造品質を均一化でき、固体高分子形燃料電池を長期間安定して作動できる膜電極接合体に好適に用いることができる。
次に、本実施の形態にかかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を用いて形成されたマイクロポーラス層及び導電性多孔質基材からなる燃料電池用ガス拡散層が組み込まれる固体高分子形燃料電池(単セル)の構造について、図1の概略構成図を参照しながら説明する。なお、図中、アノード側をA、カソード側をKとする。
図示のように、本実施の形態の燃料電池用ガス拡散層14(カソード側拡散層14Kまたはアノード側拡散層14A)は、白金、金、パラジウム等の貴金属触媒をカーボンで担持した触媒担持カーボン及びイオン交換樹脂からなり酸化ガスまたは燃料ガスが反応する触媒層13(カソード側触媒層13Kまたはアノード側触媒層13A)と接合して、一体となって電極12(カソード電極12K及びアノード電極12A)を構成し、特定イオンを選択的に透過する高分子電解質膜11(単セルの芯)の両面に触媒層13と共に配設されて、膜/電極接合体(MEGA)10を構成する。そして、この膜/電極接合体10は、カソード側ガス拡散層14Kの外側において酸化剤となる酸化ガスを供給する酸化ガス流路21Kを設けたカソード側セパレータ20K、また、アノード側ガス拡散層14Aの外側において燃料ガスを供給する燃料ガス流路21Aを設けたアノード側セパレータ20Aに挟持され、燃料電池1の単セル(single cell)を形成している。
即ち、本実施の形態にかかる燃料電池用ガス拡散層14を使用した燃料電池1の単セルは、電解質膜11の一方の表面に酸素ガス等の酸化ガスが反応するカソード側触媒層1313K及びカソード側拡散層14Kにより構成されるカソード電極12Kを配設し、他方の表面に水素ガス等の燃料ガスが反応するアノード側触媒層13A及びアノード側拡散層14Aにより構成されるアノード電極12Aを配設して発電部を構成する膜/電極接合体10と、膜/電極接合体10のカソード電極12Kの表面に配置されるカソード側セパレータ20K及び膜/電極接合体10のアノード電極12Aの表面に配置されるアノード側セパレータ20Aとから構成される。
このとき、上述したように、本実施の形態の燃料電池用拡散層14は、導電性材料と、撥水性樹脂と、分散剤及び/または増粘剤と、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤と、分散媒(溶媒)とを混合してなるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材16表面に塗布して乾燥・焼成することにより、導電性多孔質基材16(カソード側導電性多孔質基材16Kまたはアノード側導電性多孔質基材16A)上にマイクロポーラス層(微多孔質層)15(カソード側マイクロポーラス層15Kまたはアノード側マイクロポーラス層15A)が形成されてなるものであり、導電性多孔質基材16及びマイクロポーラス層15から構成されるが、マイクロポーラス層15側が触媒層13側に配設し、導電性多孔質基材16側がセパレータ20側に配設するように組み込まれ、燃料電池1を構成する。
このような構成によって、外部より酸化ガスがカソード側セパレータ20Kの酸化ガス流路21Kに供給されると、酸化ガス流路21Kに沿って流れる酸化ガスのうち、一部がカソード側の拡散層14Kの導電性多孔質基材16K側表面より内部へ浸入する。なお、その他の未反応の酸化ガスは、酸化ガス流路21Kに沿って流れ、燃料電池1の外部へ排出される。
同様に、外部より燃料ガスがアノード側セパレータ20Aの燃料ガス流路21Aに供給されると、燃料ガス流路21Aに沿って流れる燃料ガスのうち、一部がアノード側の拡散層14Aの導電性多孔質基材16A側表面より内部へ浸入する。その他の未反応の燃料ガスは、そのまま燃料ガス流路21Aに沿って流れ、燃料電池1の外部へ排出される。
そして、酸化ガス及び燃料ガスが反応することにより、カソード側セパレータ20Kとアノード側セパレータ20Aとの間で電力が取り出される。
このように導電性多孔質基材16上にマイクロポーラス層15を形成した燃料電池用拡散層14が組み込まれた燃料電池1では、マイクロポーラス層15によってガス拡散性及び水管理性が向上し発電性能が安定化する。また、マイクロポーラス層15の成分調節により、導電性多孔質基材16のみでは困難である電池の使用環境や運転条件等に応じた性能の制御性を獲得できる。更に、マイクロポーラス層15によって導電性多孔質基材16の起伏を吸収して平滑な表面が得られ、また、導電性多孔質基材16の炭素繊維がほつれや毛羽立ちしても、導電性多孔質基材16の炭素繊維が触媒層13と接触することを回避でき、導電性多孔質基材16の炭素繊維と触媒層13によって起こる短絡(ショート)の発生を予防できる。
なお、本実施の形態のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物及びそれを用いて作製した燃料電池用ガス拡散層14は固体高分子形燃料電池に限らず、例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池等のその他燃料電池にも適用可能である。
次に、本発明の実施の形態にかかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物の各成分の配合内容を具体的に示して、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物及びそのマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を用いて作製した燃料電池用ガス拡散層14の実施例について説明する。
まず、本実施の形態にかかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物の配合組成として表1に示す配合内容で、実施例1乃至実施例6にかかる6種類の配合のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を作製した。また、比較のために、比較例1乃至比較例5にかかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物も合わせて作製した。各実施例及び各比較例の配合内容を表1の上段に示す。
Figure 2017126427
本実施例及び比較例にかかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物では、導電性材料としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製:商品名「デンカブラック」)を75.0g、撥水性樹脂としてPTFEエマルジョン(ダイキン工業(株)製:POLYFLON PTFE D−210C[固形分(樹脂分)61%])を30.7g、分散剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテルを7.5g配合した。なお、PTFEエマルジョンにも、PTFE微粒子を安定化させるための非イオン系界面活性剤(分散剤)が含まれている。
表1に示したように、アセチレンブラック、PTFEエマルジョン、ポリオキシエチレントリデシルエーテルについてはそれぞれ実施例及び比較例の全てで同一の分量で統一した。また、ペースト組成物中における全固形分濃度を21〜22質量%濃度で統一した。
そして、実施例1乃至実施例6では、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルの熱分解・揮発を促進する除去促進剤として酸化チタン(担体)に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を用い、実施例相互で酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤について、その種類や配合量を変えた。また、除去促進剤の配合量の変化に合わせてペースト組成物中における全固形分濃度が21〜22質量%濃度となるように分散媒(溶媒)としてのイオン交換水の配合量を調整した。
これに対し、比較例1では酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を省略し、比較例2では酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を配合するもののその配合量を実施例よりも少なくし、比較例3では酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤に替えて酸化セリウム単体を配合し、比較4では酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤に替えて酸化チタン単体を配合し、比較例5では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤に替えて、酸化セリウム単体及び酸化チタン単体(両者の配合重量比は1:1)を配合した。各比較例においても、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水の配合量を調整してペースト組成物中における全固形分濃度が21〜22質量%濃度となるようにしている。
具体的に、実施例1乃至実施例3では、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルの熱分解・揮発を促進する除去促進剤として、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤(堺化学工業(株)製:商品名『FPT−10』、酸化チタンの結晶形;ルチル、重量比;酸化チタン:酸化セリウム=10:1)を用いた。
実施例1においては、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤(堺化学工業(株)製:商品名『FPT−10』、酸化チタンの結晶形;ルチル、重量比;酸化チタン:酸化セリウム=10:1)を1.9g配合し、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水を363.0gとした。
この実施例1の配合では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤100重量部に対して25重量部配合されていることになる。また、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤のペースト組成物の全固形分中における濃度は1.8質量%濃度となる。更に、導電性材料と撥水性樹脂と除去促進剤の固形分合計100重量部に対して酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量は2重量部となる。
なお、ペースト組成物を導電性多孔質基材16に塗布し、乾燥・焼成することにより形成されるマイクロポーラス層15の塗膜成分は、乾燥・焼成によって分散剤及び水分が除去されることで、理論的には、導電性材料と撥水性樹脂(固形分)と除去促進剤で構成されることになる。よって、表1においては、便宜的に、導電性材料と撥水性樹脂と除去促進剤の固形分合計100重量部に対する除去促進剤の配合量を、導電性材料と撥水性樹脂(固形分)と除去促進剤からなる塗膜成分中における濃度(mass%)として示してある。
実施例2においては、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤(堺化学工業(株)製:商品名『FPT−10』、酸化チタンの結晶形;ルチル、重量比;酸化チタン:酸化セリウム=10:1)の配合量を実施例1の2倍の3.8gとし、ペースト組成物中の固形分濃度が実施例1と同一の濃度となるように、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水は370.0gとした。
この実施例2の配合では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤100重量部に対して51重量部配合されていることになる。また、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤のペースト組成物の全固形分中における濃度は3.6質量%濃度となる。更に、導電性材料と撥水性樹脂と除去促進剤の固形分合計100重量部に対して酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量は4重量部となる。
実施例3においては、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤(堺化学工業(株)製:商品名『FPT−10』、酸化チタンの結晶形;ルチル、重量比;酸化チタン:酸化セリウム=10:1)の配合量を実施例1の3倍の5.7gとし、ペースト組成物中の固形分濃度は実施例1と同一の濃度となるように、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水は383.0gとした。
この実施例3の配合では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤100重量部に対して76重量部配合されていることになる。また、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤のペースト組成物の全固形分中における濃度は5.3質量%濃度となる。更に、導電性材料と撥水性樹脂と除去促進剤の固形分合計100重量部に対して酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量は6重量部となる。
続いて、実施例4乃至実施例6では、実施例1乃至実施例3とは結晶形が異なる酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤(堺化学工業(株)製:商品名『FPT−20』、酸化チタンの結晶形;アナターゼ、重量比;酸化チタン:酸化セリウム=10:1)を用いた。
実施例4においては、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤(堺化学工業(株)製:商品名『FPT−20』、酸化チタンの結晶形;アナターゼ、重量比;酸化チタン:酸化セリウム=10:1)を1.9g配合し、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水を363.0gとし、実施例1と同一の配合量とした。
この実施例4の配合では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤100重量部に対して25重量部配合されていることになる。また、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤のペースト組成物の全固形分中における濃度は1.8質量%濃度となる。更に、導電性材料と撥水性樹脂と除去促進剤の固形分合計100重量部に対して酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量は2重量部となる。
実施例5においては、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤(堺化学工業(株)製:商品名『FPT−20』、酸化チタンの結晶形;アナターゼ、重量比;酸化チタン:酸化セリウム=10:1)は実施例4の2倍の3.8gとし、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水は370.0gとして、実施例2と同一の配合量とした。
この実施例5の配合では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤100重量部に対して51重量部配合されていることになる。また、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤のペースト組成物の全固形分中における濃度は3.6質量%濃度となる。更に、導電性材料と撥水性樹脂と除去促進剤の固形分合計100重量部に対して酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量は4重量部となる。
実施例6においては、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤(堺化学工業(株)製:商品名『FPT−10』、酸化チタンの結晶形;ルチル、重量比;酸化チタン:酸化セリウム=10:1)は実施例1の3倍の5.7gとし、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水は383.0gとして、実施例3と同一の配合量とした。
この実施例6の配合では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤100重量部に対して76重量部配合されていることになる。また、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤のペースト組成物の全固形分中における濃度は5.3質量%濃度となる。更に、導電性材料と撥水性樹脂と除去促進剤の固形分合計100重量部に対して酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量は6重量部となる。
このように酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を配合した実施例に対し、比較例1では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を配合しなかった。なお、比較例1では、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水は355.0g配合した。
また、比較例2では、実施例1乃至実施例3と同様の酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤(堺化学工業(株)製:商品名『FPT−10』、酸化チタンの結晶形;ルチル、重量比;酸化チタン:酸化セリウム=10:1)を配合するが、その配合量は実施例1の半分(1/2)の0.95gとし、また、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水は360.0gとした。
この比較例2の配合では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤100重量部に対して13重量部配合されていることになる。また、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の組成物の全固形分中における濃度は0.9質量%濃度となる。更に、導電性材料と撥水性樹脂と除去促進剤の固形分合計100重量部に対して酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量は1重量部となる。
比較例3では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤に替えて、単体の酸化セリウム(太陽鉱工(株)製:商品名『酸化セリウムS』)を1.9g配合し、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水を363.0g配合して、実施例1と同一の配合量とした。
また、比較例4では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤に替えて、単体で酸化チタン(テイカ(株)製:商品名『JR』、酸化チタンの結晶形;ルチル)を1.9g配合し、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水を363.0g配合して、実施例1と同一の配合量とした。
更に、比較例5では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤に替えて、単体で酸化セリウム(太陽鉱工(株)製:商品名『酸化セリウムS』)を0.95gと、単体で酸化チタン(テイカ(株)製:商品名『JR』、酸化チタンの結晶形;ルチル)を0.95g配合し、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水を363.0g配合して、実施例1と同一の配合量とした。
そして、このように表1に示した配合量で各配合材料を配合し、公転800rpm、自転900rpmに設定した遊星式撹拌・脱泡装置(倉敷紡績(株)製:商品名「マゼルスター KK−1000W」)で4分間混合分散・脱泡することにより実施例1乃至実施例6及び比較例1乃至比較例5にかかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を得た。
ここで、得られた各マイクロポーラス層形成用ペースト組成物について、ペースト成分の分散状態を目視で観察したところ、実施例1乃至実施例6及び比較例1乃至比較例5においては、ペースト成分が均一に分散されていた。
更に、各マイクロポーラス層形成用ペースト組成物をSUS板にアプリケータを用いて縦7.5mm、横6mm、厚み150μmで塗布して、SUS板上に形成された塗膜のブツ(凝集物)の有無を目視で観察したところ、実施例1乃至実施例6及び比較例1乃至比較例5の全てでブツが見られなかった。
これより、実施例1乃至実施例6及び比較例1乃至比較例5においては、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルが配合されていることで、ペースト成分が均一に分散され、良好な成膜性が得られることが確認された。
次に、得られた各マイクロポーラス層形成用ペーストを用いて燃料電池用の拡散層14を作製した。
詳細には、導電性多孔質基材16としてのカーボンペーパーに対し、その片面に、薄膜塗布工具(ダイヘッド)を用いて、移動速度1.0m/min、目付け5.0mg/cmの条件でマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を塗布し、その後、300℃で所定時間(10分、20分、30分、60分の4水準で実施)乾燥・焼成させた。
これによって、カーボンペーパーからなる導電性多孔質基材16の表面にマイクロポーラス層15が形成された実施例1乃至実施例6及び比較例1乃至比較例5にかかる燃料電池用のガス拡散層14を得た。
そして、得られた各燃料電池用のガス拡散層14について、撥水性の評価試験及びセリウムの溶出確認試験を行った。
撥水性については、燃料電池用ガス拡散層14のマイクロポーラス層15に対して霧吹きでイオン交換水を吹き付け、その水滴が転落するか否かによって撥水性の評価を行った。詳細には、得られたガス拡散層14を垂直に立て、垂直に立てたガス拡散層14のマイクロポーラス層15側の表面(塗工面表面)に対して、イオン交換水3gを霧吹きで5回に分けて吹き付け、水滴が転落するか否かの試験を行った。水滴がガス拡散層14のマイクロポーラス層15側表面に残らず転落したものについては撥水性が良好であると判断して○と評価し、水滴がガス拡散層14のマイクロポーラス層15側の表面に付着したままの状態であったものについては撥水性が不足していると判断して×と評価した。
この撥水性の評価試験においては、実施例1乃至実施例6及び比較例1乃至比較例5にかかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材16に塗布したのちの乾燥・焼成処理における乾燥・焼成時間をまずは10分としたものから評価を開始し、10分間の乾燥・焼成では良好な撥水性が確認できなかった場合(撥水性が不足していると判断された場合)、新たな試験品にて乾燥・焼成時間を20分間として乾燥・焼成を行った後、再度、撥水性の評価を実施した。20分間の乾燥・焼成で良好な撥水性が確認できないものについてはさらに新たな試験品にて乾燥・焼成時間を30分間として乾燥・焼成を行った後、再度、撥水性の評価を実施した。30分間の乾燥・焼成で良好な撥水性が確認できないものについてはさらに新たな試験品にて乾燥・焼成時間を60分間として乾燥・焼成を行い、再度、撥水性の評価を実施した。
また、セリウムの溶出確認試験に際しては、pH3に調整した硫酸に、上述のようにして得られたガス拡散層14を浸漬し、80℃の雰囲気温度下で40時間放置した後、硫酸液中のセリウム濃度をICP分析(質量分析)し、検出されたセリウム濃度が5μ/L未満のものは電池性能に影響を及ぼす可能性が低いとして○と評価し、セリウム濃度が5μ/L以上のものは×と評価した。なお、比較例1及び比較例4では、酸化セリウムが使用されていないことでセリウムが溶出されることはないことから、セリウムの溶出確認試験は実施しなかった。
撥水性の評価結果及びセリウムの溶出確認試験の評価結果については、表1の下段に示した通りである。
表1に示した評価結果から分かるように、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が所定量配合された実施例1乃至実施例6では、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物をカーボンペーパーからなる導電性多孔質基材16に塗布した後の乾燥・焼成時間が20分間以下という短時間でも、導電性多孔質基材16の表面に形成されたマイクロポーラス層15において、十分な撥水性の発現が確認された。更に、セリウムの溶出確認試験において溶出したセリウム濃度が5μ/L未満であり、除去促進剤の添加が電池性能の低下を招く可能性も低いことが確認された。
より詳しくは、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテル100重量部に対して25重量部配合された実施例1及び実施例4では、酸化チタンの結晶形が異なるものの、両者とも20分間という短時間の乾燥・焼成でマイクロポーラス層15において十分な撥水性が発現されており、また、セリウムの溶出確認試験において溶出したセリウム濃度が5μ/L未満と極めて少ない値であった。
更に、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテル100重量部に対して、50〜75重量部配合された実施例2及び実施例3、並びに、実施例5及び実施例6では、実施例2、実施例3と実施例5、実施例6とで酸化チタンの結晶形が異なるものの、両者とも10分間という極めて短時間の乾燥・焼成でマイクロポーラス層15において十分な撥水性が発現されており、また、セリウムの溶出確認試験において溶出したセリウム濃度も5μ/L未満と極めて少ない値であった。
これに対して、比較例1は、導電性材料としてのアセチレンブラック、撥水性樹脂としてのPTFEエマルジョン、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテル、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水のみの配合からなり、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤、酸化セリウム、酸化チタンの何れも添加されていないものである。
この比較例1においては、セリウムが溶出されることはないが、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材16に塗布した後の乾燥・焼成処理において60分間という長い時間乾燥・焼成を行っても、所望の撥水性の発現を確認できなかった。これは、60分間という長い時間乾燥・焼成を行っても、親水性基を有する分散剤(ポリオキシエチレントリデシルエーテル)が十分に除去されずにマイクロポーラス層15に残存し、この親水性基を有する分散剤の存在により撥水性が妨げられたためである。
また、比較例2は、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を配合したものの、その配合量を分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテル100重量部に対して13重量部としたものである。
この比較例2においては、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量が少ないことで、セリウムの溶出確認試験において検出されたセリウム濃度は5μ/L未満であったが、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材16に塗布した後の乾燥・焼成処理が30分以下の乾燥・焼成処理時間では撥水性が不十分であり、60分間という長い時間乾燥・焼成を行うことで漸く所望の撥水性が確認された。
即ち、比較例2では、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤、酸化セリウム、酸化チタンの何れも添加されていない比較例1のときよりも短時間の乾燥・焼成処理で撥水性の発現を確認できたものの、実施例1乃至実施例6よりも、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量が少ないことで、除去促進剤の添加による効果、即ち、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルの熱分解・揮発を効果的に促進する効果が小さく、所望とする20分以下の短時間の乾燥・焼成では、親水性基を有する分散剤が十分に除去されずにマイクロポーラス層15に残存して高い撥水性が得られなかった。
更に、比較例3は、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤に替えて、酸化セリウム単体を配合したものである。
この比較例3においては、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材16に塗布した後の乾燥・焼成処理が20分間以下の乾燥・焼成処理時間では撥水性が不十分であり、30分間の乾燥・焼成を行うことで所望の撥水性が確認された。しかし、セリウムの溶出確認試験において検出されたセリウム濃度が5μ/L以上であり、電池性能を低下させる可能性が高いことが確認された。
即ち、比較例3では、酸化セリウム単体が配合されていることで、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤、酸化セリウム、酸化チタンの何れも添加されていない比較例1のときよりも短時間の乾燥・焼成処理時間で撥水性の発現を確認できたものの、比較例3の酸化セリウムと同一の配合量で酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を配合した実施例1よりも、所望の撥水性を発現させるのに要する乾燥・焼成時間が長く、所望とする20分間以下の短時間の乾燥・焼成では、親水性基を有する分散剤が十分に除去されずマイクロポーラス層15に残存して高い撥水性が得られなかった。そのうえ、セリウムの溶出確認試験において検出されたセリウム濃度が5μ/L以上であり、電池性能に影響を及ぼす可能性が高く、実用化に適さないことが確認された。
比較例4は、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤に替えて、酸化チタン単体を配合したものである。
この比較例4においては、セリウムが溶出されることはないが、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材16に塗布した後の乾燥・焼成処理が30分以下の乾燥・焼成処理時間では撥水性が不十分であり、60分間乾燥・焼成を行うことで漸く所望の撥水性が確認された。
即ち、比較例4では、酸化チタン単体が配合されていることで、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤、酸化セリウム、酸化チタンの何れも添加されていない比較例1のときよりも短時間の乾燥・焼成処理時間で撥水性の発現を確認できたものの、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を比較例4の酸化チタンと同一の配合量で配合している実施例1のときよりも、撥水性を発現させるのに要する乾燥・焼成時間が大幅に長く、所望とする20分以下の短時間の乾燥・焼成では親水性基を有する分散剤が十分に除去されずマイクロポーラス層15に残存して所望の撥水性が得られなかった。
更に、比較例5は、酸化チタンに酸化セリウムが担持させた除去促進剤に替えて、酸化セリウム単体及び酸化チタン単体を添加したものである。
この比較例5においては、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材16に塗布した後の乾燥・焼成処理が30分以下の乾燥・焼成処理時間では撥水性が不十分であり、60分間の乾燥・焼成を行うことで漸く所望の撥水性が確認された。しかも、セリウムの溶出確認試験において検出されたセリウム濃度が5μ/L以上であり、電池性能が低下する可能性が高いことが確認された。
即ち、比較例5では、酸化セリウム単体及び酸化チタン単体が配合されていることで、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤、酸化セリウム、酸化チタンの何れも添加されていない比較例1のときよりも短時間の乾燥・焼成処理時間で撥水性の発現を確認できたものの、比較例5の酸化チタン及び酸化セリウムの合計配合量と同一の配合量で酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を配合した実施例1よりも、所望の撥水性を発現させるのに要する乾燥・焼成時間が大幅に長く、所望とする20分以下の短時間の乾燥・焼成では親水性基を有する分散剤が十分に除去されずマイクロポーラス層15に残存して高い撥水性が得られなかった。そのうえ、酸化セリウム単体の使用量が実施例1の除去促進剤(重量比で酸化チタン:酸化セリウム=10:1)に比べて少ないのにもかかわらず、セリウムの溶出確認試験において検出されたセリウム濃度が5μ/L以上であり、電池性能に影響を及ぼす可能性が高く、実用化に適さないことが確認された。
以上の評価結果から、実施例1乃至実施例6においては、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテル100重量部に対して、25〜76重量部配合されていることにより、分散剤の熱分解・揮発を促進する効果が高く、比較例1の比較から明らかなように分散剤の熱分解・揮発に要する乾燥・焼成時間が大幅に短縮されて、20分以下という極めて短時間の乾燥・焼成時間で分散剤が十分に除去されて所望とする撥水性が発現された。
特に、実施例1の除去促進剤と同一の配合量で酸化セリウム単体が配合されている比較例3や、酸化チタン単体が配合されている比較例4との比較から明らかなように、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が配合された実施例では、分散剤が除去されて所望の撥水性が発現されるに要する乾燥・焼成時間が比較例3や比較例4のときよりも短くなるうえ、セリウムの溶出により電池性能が低下する恐れもない。
殊に、実施例の酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤においては、酸化チタンと酸化セリウムの重量比が、酸化チタン:酸化セリウム=10:1であるのにも関わらず、実施例1の除去促進剤と同量の酸化セリウムを単独で配合した比較例3よりも、実施例1において所望の撥水性が発現されるまでの乾燥・焼成時間が短くなっている。つまり、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤では、重量比で酸化セリウム:酸化チタン=10:1であるから、実施例1と比較例3をみると、理論的には、酸化セリウム単体の1/11の少ない酸化セリウムの使用量でも(酸化セリウムの使用量が90%程度低減されていても)、十分な撥水性が発現されるまでに要する乾燥・焼成時間が短くなっている。
これは、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によれば、酸化セリウム単体よりも、分散剤が熱分解・揮発するのを促進させる反応性が高くなるためと推定される。これより、セリウムの溶出による電池性能の低下を招くことなく、分散剤を除去して撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を短縮できる。
また、実施例1の除去促進剤と同一の配合量(合計配合量)で酸化セリウム単体及び酸化チタン単体が配合されている比較例5との比較から明らかなように、酸化セリウム及び酸化チタンをそれぞれ単独で使用しても十分な撥水性を発現させるために60分間の乾燥・焼成時間が必要であったのに対し、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が配合された実施例では、分散剤を除去して撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間が20分以下と大幅に短縮されているうえ、セリウムの溶出により電池性能が低下する恐れもない。即ち、酸化セリウム及び酸化チタンを単純に混合しただけでは、撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間の大幅な短縮が困難であるが、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によれば、分散剤が熱分解・揮発するのを促進させる反応性が高くなり、これにより、セリウムの溶出による電池性能の低下を招くことなく、分散剤を除去して撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を短縮できる。
そして、比較例3と比較例5から分かるように、酸化セリウム単体の使用では、撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間の短縮を図ろうとしても、その使用量が多くなることでセリウムが溶出して電池性能を招く恐れがあるため、乾燥・焼成時間の大幅な短縮を図ることができないが、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によれば、分散剤が熱分解・揮発するのを促進させる反応性が高くなる。このため、酸化セリウムの少ない使用量でも、分散剤の熱分解・揮発を促進する効果が高く、分散剤を除去して撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間の大幅な短縮化が可能であり、このときセリウムの溶出による電池性能の低下の恐れもない。殊に、酸化セリウムと酸化チタンを単独でそれぞれ配合し、酸化セリウムの配合量が実施例1における除去促進剤の配合量の半分である比較例5よりも、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を配合した実施例1では、所望の撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間が大幅に短縮されているうえ、セリウムの溶出量も少ないものとなっている。
このように、実施例1乃至実施例6においては、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が分散剤の熱分解・揮発を促進する高い反応性を有するため、少量の酸化セリウムの使用量で分散剤の熱分解・揮発を促進する高い効果が得られることで、分散剤を除去して撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を大幅に短縮でき、かつ、セリウムの溶出も少ないものとなる。
即ち、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によれば、分散剤を除去して撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間の短縮化と電池性能維持の両立が可能となる。
そして、こうして乾燥・焼成にかかる時間が短縮されることで、乾燥・焼成にかかる電力が低減され、乾燥・焼成炉の炉長も短くて済むことから、製造コストが抑えられ、燃料電池の低コスト化を図ることができる。
ここで、実施例1乃至実施例6の評価結果から、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量が多くなるほど、分散剤を除去して撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間が短縮されるが、本発明者らの実験研究によれば、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテル100重量部に対して、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなり、酸化セリウムの担持量が10質量%である除去促進剤の配合量が100重量部を超えると、かかる除去促進剤の配合量の増大に比例した乾燥・焼成時間の短縮がみられず、コストパフォーマンスが低下する。
また、本実施例と比較例2の評価から、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなり、酸化セリウムの担持量が10質量%である除去促進剤が、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテル100重量部に対して、10重量部未満であると、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量が少なくて、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の添加による分散剤の熱分解・揮発の促進向上効果が小さく、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を配合しないときよりも撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を大幅に短縮して、所望とする20分以下という極めて短い乾燥・焼成時間で分散剤を除去して撥水性を発現させることが困難である。
酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合量が、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテル100重量部に対して、25〜80重量部の範囲内であれば、乾燥・焼成時間を大幅に短縮できて、所望とする短時間の乾燥・焼成で分散剤を除去して撥水性を発現させることが可能であり、乾燥・焼成にかかる電力の低減や乾燥・焼成炉の炉長の短縮が実用化に適し、製造コストを低下できる。
なお、理論的には、本実施例にかかる酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、酸化セリウムの担持量が9〜10質量%であることから、酸化セリウム換算では、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテル100重量部に対して除去促進剤の酸化セリウムが2重量部〜8重量部の範囲内であれば、確実に乾燥・焼成時間を大幅に短縮できて、所望とする短時間の乾燥・焼成で分散剤を除去して撥水性を発現させることが可能であり、このときセリウム溶出による電池性能低下の恐れもない。
また、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、マイクロポーラス層形成用組成物の全固形分中に1.5質量%濃度〜5.5質量%濃度の範囲内であることが好ましい。酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤のペースト組成物中の濃度が低すぎる場合、除去促進剤による所望の撥水性を発現するのに要する乾燥・焼成時間の短縮効果が小さく、所望とする短時間の乾燥・焼成時間では十分な撥水性を確保できない一方で、ペースト組成物中の濃度が高すぎると、塗工性が低下する。酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤がマイクロポーラス層形成用組成物の全固形分中に1.5質量%濃度〜5.5質量%濃度の範囲内であれば、塗工性が良好で安定的に分散剤の熱分解・揮発を促進する効果が得られ、確実に撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を大幅に短縮できる。
更に、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合は、導電性多孔質材料としてのアセチレンブラック及び撥水性樹脂としてのPTFE及び酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の固形分合計100重量部に対して2重量部〜6重量部の範囲内であることが好ましい。酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の配合濃度が低すぎる場合、除去促進剤による所望の撥水性を発現するのに要する乾燥・焼成時間の短縮効果が小さく、所望とする短時間の乾燥・焼成時間では十分な撥水性を確保できない。一方で、配合濃度が高すぎると、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材16に塗布し乾燥・焼成することにより導電性多孔質基材16上に形成させたマイクロポーラス層15(塗膜)において、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の濃度が高く、ガス拡散層14に必要な特性(ガス拡散性、撥水性等)や強度等の塗膜性能が低下する恐れがある。また、電池環境内においてセリウムが多く溶出して電池性能が低下する可能性もある。
酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が、導電性多孔質材料としてのアセチレンブラック及びPTFE樹脂及び酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤の固形分合計100重量部に対して、2重量部〜6重量部の範囲内であれば、確実に、セリウムの溶出による電池性能の低下を招くことなく、撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間を大幅に短縮できるうえ、安定的な電池性能が得られる。
なお、セリウムはレア・アースであるが、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤においては、酸化セリウムの使用量に見合った効果的な反応性が得られ、酸化セリウムの少ない使用量で、分散剤の熱分解・揮発を促進する高い効果が得られるため、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤を使用しても低コストでの供給が可能である。
以上説明してきたように、本実施例にかかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物は、導電性材料としてのアセチレンブラックと、撥水性樹脂としてのPTFEと、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルと、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤とを含有したものである。
なお、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物の製造方法は、導電性材料としてのアセチレンブラックと、撥水性樹脂としてのPTFEと、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルと、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤と、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水とを遊星式攪拌・脱泡装置で所定時間混合分散するものである。
そして、導電性材料としてのアセチレンブラックと、撥水性樹脂としてのPTFEと、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルと、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤と、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水とを遊星式攪拌・脱泡装置で所定時間混合分散するにより得られたマイクロポーラス層形成用ペースト組成物をカーボンペーパー等の導電性多孔質基材16に塗布し、乾燥・焼成することで、導電性多孔質基材16上にマイクロポーラス層15が形成されて、燃料電池用のガス拡散層14とされる。
即ち、本実施例にかかる燃料電池用ガス拡散層14の製造方法は、導電性材料としてのアセチレンブラックと、撥水性樹脂としてのPTFEと、分散剤としてのポリオキシエチレントリデシルエーテルと、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤と、分散媒(溶媒)としてのイオン交換水とを遊星式攪拌・脱泡装置で所定時間混合分散するにより得られたマイクロポーラス層形成用ペースト組成物をカーボンペーパー等の導電性多孔質基材16に塗布し、乾燥・焼成するものである。
このように、マイクロポーラス層形成用ペースト組成物において、担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が配合されたことによって、ペースト組成物を導電性多孔質基材16の表面に塗布した後の乾燥・焼成時に分散剤の熱分解・揮発が効果的に促進され、セリウムの溶出による電池性能の低下を招くことなく、所望の撥水性を発現させるのに必要な乾燥・焼成時間の短縮化が可能であり、短い乾燥・焼成時間でも高い撥水性を発現できる。そして、乾燥・焼成にかかる時間を短くできることで、乾燥・焼成にかかる電力が低減されて省エネとなり、また、乾燥・焼成炉の炉長も短くて済むことから、乾燥・焼成にかかる負荷を低減することができ、製造コストが抑えられる。その結果、燃料電池の低コスト化を図ることが可能となる。加えて、乾燥・焼成時間の短縮により生産効率を上げることができる。
また、かかるマイクロポーラス層形成用ペースト組成物によれば導電性多孔質基材16に塗布し、乾燥・焼成するという簡単な作業工程によって導電性多孔質基材16上にガス拡散性や撥水性等の特性が良好なマイクロポーラス層15を形成でき、しかも、導電性多孔質基材16の形状により任意の形状に仕上げることができる。そして、このようにして導電性多孔質基材16上にマイクロポーラス層15を形成した燃料電池用のガス拡散層14においては、短い乾燥・焼成時間でも分散剤が十分に除去されてマイクロポーラス層(塗膜)中に残存することがないため、燃料電池の発電効率に影響を与える撥水性が十分に発現されて、マイクロポーラス層15に必要な特性が得られる。特に、乾燥・焼成にかかる時間が短縮されることで、長時間の加熱に起因する過熱によるクラックの発生が防止されて、安定して均一なガス拡散性等の特性を発揮できる。故に、安定した出力が得られ、固体高分子形燃料電池1を長期間安定して作動できる膜/電極接合体10に好適に用いることができる。
ここで、上記実施例では、酸化セリウムを担持する担体が酸化チタンであるが、担体としては、その他にも酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらの担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤であっても、同様に、分散剤の熱分解・揮発を促進する高い効果が得られる。但し、安定性、分散剤・増粘剤の促進効果、コスト、取扱い易さ等の観点から、酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤が最も好適である。
また、上記実施例では、ポリオキシエチレントリデシルエーテルからなる分散剤のみの配合であるが、本発明者らの実験研究によれば、増粘剤のみまたは分散剤と増粘剤の両者が配合された場合であっても酸化チタンに酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤によって熱分解・揮発が効果的に促進されて、撥水性の発現に要する乾燥・焼成時間を短縮できる同様の効果が得られることを確認している。
本発明を実施するに際しては、マイクロポーラス層形成用ペースト及びそれを用いて形成する燃料電池用のガス拡散層14のその他の部分の構成、組成、成分、配合量、材質、その他の製造工程について、本実施の形態に限定されるものではない。
なお、本発明の実施の形態及び実施例で上げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な適正値を示すものであるから、上記数値を若干変更しても実施を否定するものではない。
1 燃料電池
10 膜/電極接合体
11 電解質膜
12 電極
13 触媒層
14 ガス拡散層
15 マイクロポーラス層
16 導電性多孔質基材

Claims (10)

  1. 導電性材料と、撥水性樹脂と、分散剤及び/または増粘剤と、担体に酸化セリウムが担持されてなり前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する除去促進剤とを含有してなることを特徴とするマイクロポーラス層形成用ペースト組成物。
  2. 前記除去促進剤の担体は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物。
  3. 前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記分散剤及び/または増粘剤100重量部に対して、25重量部〜80重量部の範囲内で配合されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物。
  4. 前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記マイクロポーラス層形成用ペースト組成物の全固形分中に1.5質量%濃度〜5.5質量%濃度の範囲内で配合されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物。
  5. 前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記導電性材料と前記撥水性樹脂と前記分散剤及び/または増粘剤の固形分合計100重量部に対して、2重量部〜6重量部の範囲内で配合されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載のマイクロポーラス層形成用ペースト組成物。
  6. 導電性材料と、撥水性樹脂と、分散剤及び/または増粘剤と、担体に酸化セリウムが担持されてなり前記分散剤や前記増粘剤の熱分解・揮発を促進する除去促進剤と、分散媒とを所定時間混合分散することによって得られたマイクロポーラス層形成用ペースト組成物を導電性多孔質基材に塗布し、乾燥・焼成することを特徴とする燃料電池用拡散層の製造方法。
  7. 前記除去促進剤の担体は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、合成マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用拡散層の製造方法。
  8. 前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記分散剤及び/または増粘剤100重量部に対して、25重量部〜80重量部の範囲内で配合されたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の燃料電池用拡散層の製造方法。
  9. 前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記マイクロポーラス層形成用ペースト組成物の全固形分中に1.5質量%濃度〜5.5質量%濃度の範囲内で配合されたことを特徴とする請求項6乃至請求項8の何れか1つに記載の燃料電池用拡散層の製造方法。
  10. 前記担体に酸化セリウムが担持されてなる除去促進剤は、前記導電性材料と前記撥水性樹脂と前記分散剤及び/または増粘剤の固形分合計100重量部に対して、2重量部〜6重量部の範囲内で配合されたことを特徴とする請求項6乃至請求項9の何れか1つに記載の燃料電池用拡散層の製造方法。
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