JP2017125791A - 揮発性ケトン類検出用maldi−質量分析用マトリックス - Google Patents

揮発性ケトン類検出用maldi−質量分析用マトリックス Download PDF

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康 茂里
昌儀 安藤
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昌儀 安藤
浩昭 佐藤
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浩昭 佐藤
朋也 絹見
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Abstract

【課題】質量分析用の既存の他のマトリックスを質量分析測定の際に添加する必要がなく、揮発性ケトン類を高感度で検出可能なMALDI-質量分析用マトリックスを提供する。【解決手段】2-ヒドラジノキノリンを含む揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックスであって、さらには酸を含む揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックス。また揮発性ケトン類の気体中の濃度が1ppm以上である揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックス。【選択図】図1

Description

本発明は、揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックスに関する。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)は、質量分析における代表的なソフトイオン化法である。MALDI-MSは、溶液状分子である生体分子(ペプチド、タンパク質等)や合成高分子(ポリマー)の解析に適しており、操作が簡便、多検体の処理可能、純度の低い試料にも測定可能等の特徴を有する。しかし、使用するレーザーの波長領域に吸収帯を持つ化合物がマトリックスとして必要であり、測定の際にはあらかじめ脱塩した試料とマトリックスの混晶が良好に形成されなければならない。現在よく使われているマトリックスは、ケイ皮酸系の化合物であるCHCA(alpha-cyano-4-hydroxycinnamic acid)や、シナピン酸、DHB(2,5-dihydroxybenzoic acid)等である。これまでのマトリックスの多くは、マトリックス自身の分子イオンピーク(m/z値、約100〜250)や、マトリックス由来のピーク(Na付加ピーク、脱水ピーク、多量体ピーク等)がMALDI-MS測定の際に観察され、低分子化合物の測定等には向いていない。またイオン化しにくい試料、例えば高分子量のタンパク質、糖等に最適な高機能性マトリックスの開発も求められている。
本発明者らは、これまでペプチドとステロイドホルモンを測定試料として、東京大学創薬機構の化合物ライブラリー(約1万化合物)を用いて、MALDI-MSマトリックス候補のランダムスクリーニングを行った。その結果、導電性化合物がMALDI-MSによる良好なマトリックスとして働き、導電性という新たな概念がマトリックスの機能発揮に重要であることを見いだした(非特許文献1)。またそのスクリーニング過程で、ヒドラジド及びヒドラジン誘導体が効率的にMALDI-MS用反応マトリックスとして機能し、揮発性のアルデヒドやカルボニル基を有するテストステロン等のステロイドホルモンを検出可能であることを見いだした(非特許文献2〜3、特許文献1〜2)。
反応マトリックスとは、測定サンプルの官能基と、反応マトリックスが反応物(誘導体)を形成し、それら反応物(誘導体)が効率的にそのまま脱離イオン化し、MALDI-MSで検出可能となるものである。つまりMALDI-MS測定の際に、新たなマトリックスを添加する必要が無い。これまでMALDI-MS用反応マトリックスとして報告されているものは、以下の(i)〜(vii)である。
(i)DNPH(2,4-dinitrophenylhydrazine)を用いてcorticosteroidを測定した例(非特許文献4)。
(ii)DMNTH(4-dimethylamino-6-(4-methoxy-1-naphthyl)-1,3,5-triazine-2-hydrazineを用いて、液体分子である4-methoxybenzaldehyde, 4-hydroxyacetophenone, 4-hydroxybenzaldehyde, methylglyoxal, acetaldehyde, trans-cinnamaldehyde, 2-furaldehyde, cyclopentanone, benzophenone等のカルボニル基を有する液体分子を誘導体化して、測定した例(非特許文献5)。
(iii)9-(3,4-diaminophenyl)acridine(DAA)を用いて、alpha-dicarbonylを有する化合物と反応して、dicarbonyl-quinoxaline acridine誘導体を形成し、測定した例(非特許文献6)。
(iv)[E]-4-(2-cyano-2-carboxyvinyl)phenyl]boronic acid(CCPBA)を用いて、vic-diol, alpha-hydroxyacid, aminol等と誘導体を形成し、測定した例(非特許文献7)。
(v)DMNTH(4-dimethylamino-6-(4-methoxy-1-naphthyl)-1,3,5-triazine-2-hydrazineを用いて、ラット肺組織を用いて、glucocorticoid fluticasone propionateを誘導体化して、MALDI-MSイメージング質量分析を実施した例(非特許文献8)。
(vi)2,4-diphenyl-pyranylium塩が、神経伝達物質のカテコールアミンやドーパミン、amphetamine等の薬物や、神経毒のbeta-N-methylamino-L-alanine等のアミノ基と反応し誘導体を形成し、MALDI-MSイメージング質量分析を実施した例(非特許文献9)。
(vii)2,4-dihydroxybenzaldehyde (2,4-DHBA), 2,5-dihydroxyacetophenone (DHAP), 2,3,5-trihydroxy-benzaldehyde and 2,4-dinitrobenzaldehyde等のカルボニル化合物とポリアミン等のアミノ基が反応し、誘導体を形成し、測定した例(非特許文献10)。
さらに、前述した本発明者らによるヒドラジド及びヒドラジン誘導体が効率的にMALDI-MS用反応マトリックスとして機能し、揮発性のアルデヒドやカルボニル基を有するテストステロン等のステロイドホルモンを検出可能であることを見いだした例等が挙げられる(非特許文献2〜3、特許文献1〜2)。
特開2015-197389 特願2015-026796
Yasuda, A., Ishimaru, T., Nishihara, S., Sakai, M., Kawasaki, H., Arakawa, R., and Shigeri, Y. (2013) A thiophene-containing compound as a new matrix for matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry, and the electrical conductivity of matrix crystals. Eur. J. Mass Spectrom.,19, 29-37 Shigeri, Y., Ikeda, S., Yasuda, A., Ando, M., Sato, H., and Kinumi, T. Hydrazide and hydrazine reagents as reactive matrices for MALDI-MS to detect gaseous aldehydes. (2014) J. Mass Spectrom., 49, 742-749 Shigeri, Y., Yasuda, A., Sakai, M., Ikeda, S., Sato, H., and Kinumi, T. Hydrazide and hydrazine reagents as reactive matrices for MALDI-MS to detect steroids. (2015) Eur. J. Mass Spectrom., 21,79-90 Brombacher, S., Owen, S., and Volmer, D. (2003) Automated coupling of capillary-HPLC to matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry for the analysis of small molecules utilizing a reactive matrix. Anal. Bioanal. Chem., 376, 773-779 Mugo, S., and Bottaro, C. (2007) Rapid on-plate and one-pot derivatization of carbonyl compounds for enhanced detection by reactive matrix LDI-TOF MS using the tailor-made reactive matrix, 4-dimethylamino-6-(4-methoxy-1-naphthyl)-1,3,5-triazine-2-hydrazine (DMNTH). J. Mass Spectrom., 42, 206-217 Mugo, S., and Bottaro, C. (2008) Rapid analysis of alpha-dicarbonyl compounds by laser desorption/ionization mass spectrometry using 9-(3,4-diaminophenyl)acridine (DAA) as a reactive matrix. Rapid Commun. Mass Spectrom., 22, 1087-1093 Monopoli, A., Calvano, C., Nacci, A., and Palmisano, F. (2014) Boronic acid chemistry in MALDI MS: a step forward in designing a reactive matrix with molecular recognition capabilities. Chem. Commun., 50, 4322-4324 Flinders, B., Morrell, J., Marshall, P., Ranshaw, L., and Clench, M. (2015) The use of hydrazine-based derivatization reagents for improved sensitivity and detection of carbonyl containing compounds using MALDI-MSI. Anal. Bioanal. Chem., 407, 2085-2094 Shariatgorji, M., Nilsson, A., Kallback, P., Karlsson, O., Zhang, X., Svenningsson, P., and Andren, P. (2015) Pyrylium salts as reactive matrices for MALDI-MS imaging of biologically active primary amines. J. Am. Soc. Mass Spectrom., 26, 934-939 Zaikin, V., Borisov, R., Polovkov, N., and Slyundina, M. (2015) Reactive matrices for matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry of primary amines. Eur. J. Mass Spectrom., 21, 403-411
本発明は、揮発性のケトンを高感度で検出可能なMALDI-MS用のマトリックスを提供することを目的とする。
本発明は、以下のMALDI-MS用マトリックスを提供するものである。
項1. 2-ヒドラジノキノリンを含む揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックス。
項2. さらに酸を含む、項1に記載の揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックス。
項3. 揮発性ケトン類の気体中の濃度が1ppm以上である、項1又は2に記載の揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックス。
本発明によれば、質量分析用の既存の他のマトリックスを質量分析測定の際に添加する必要がなく、揮発性のケトンを高感度で検出することを可能にする。
サンプルとMALDI-MSマトリックスの反応ボックス(50 cm x 50 cm x 50 cm)。 揮発性ケトン類と2-ヒドラジノキノリンの予想される縮合反応。 各種濃度のアセトンと2-ヒドラジノキノリンを用いMALDI-MS測定。アセトンの濃度は、(A) 6 ppm, (B) 30 ppm, (C) 60 ppmである。図3中、(*)未反応の2-ヒドラジノキノリンのプロトン付加ピーク、(**)アセトンと2-ヒドラジノキノリンが反応したプロトン付加ピークである。 各種濃度のメチルエチルケトンと2-ヒドラジノキノリンを用いMALDI-MS測定。メチルエチルケトンの濃度は、(A) 3.8 ppm, (B) 19 ppm, (C) 38 ppmである。図4中、(*)未反応の2-ヒドラジノキノリンのプロトン付加ピーク、(**)メチルエチルケトンと2-ヒドラジノキノリンが反応したプロトン付加ピークである。 各種濃度のメチルイソブチルケトンと2-ヒドラジノキノリンを用いMALDI-MS測定。メチルイソブチルケトンの濃度は、(A) 1 ppm, (B) 5 ppm, (C) 10 ppmである。図5中、(*)未反応の2-ヒドラジノキノリンのプロトン付加ピーク、(**)メチルイソブチルケトンと2-ヒドラジノキノリンが反応したプロトン付加ピークである。 2-ヒドラジノキノリンと、アセトアルデヒド(i)、プロピオンアルデヒド(ii)、メチルエチルケトン(iii)、メチルイソブチルケトン(iv)を反応させた縮合体のプロトン付加ピークに相当するMALDI-MSピーク。 TFA(trifluoroacetic acid)の存在下及び非存在下での2-ヒドラジノキノリンとアセトンの反応。(A)TFAあり、(B)TFAなし。(*)未反応の2-ヒドラジノキノリンのプロトン付加ピーク及び多量体ピーク、(**)アセトンと2-ヒドラジノキノリンが反応したプロトン付加ピークである。 2-ヒドラジノキノリンと各種ケトン類の反応前、反応後のMALDI測定プレート上での形体。(A)アセトン、(B)メチルエチルケトン、(C)メチルイソブチルケトン、(D)酢酸、(E)酢酸エチルは、それぞれ2-ヒドラジノキノリンと反応前(左)・反応後(右)の実体顕微鏡で撮影された写真である。
本発明のマトリックスは、気体中の揮発性ケトン類と反応し、その生成物の質量分析を行うことで、揮発性ケトン類を高感度に分析することができる。
本発明のマトリックスで検出可能な揮発性ケトン類の濃度の下限は、約1ppmであり、それ以上の濃度であればMALDI-質量分析により検出できる。また、揮発性ケトン類の濃度により2-ヒドラジノキノリンとその反応生成物の比率が異なるため、定量分析も可能である。
揮発性ケトン類は、アセトン(沸点56.5℃)、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)、メチルイソブチルケトン(沸点116.2℃)を含む。
本発明でマトリックスとして使用する化合物は、2-ヒドラジノキノリン又はその酸付加塩である。2-ヒドラジノキノリンの遊離塩基を用いる場合、マトリックスの製造時に酸を添加して酸性条件とすることで、ケトン類を検出することができる。
2-ヒドラジノキノリンは、揮発性ケトン類と反応し、かつ、MALDI-MSなどの質量分析のマトリックスとしての機能を有する。
2-ヒドラジノキノリンは、塩の形態が好ましい。塩としては、フッ酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、トリフルオロ酢酸塩などが挙げられ、塩酸塩が好ましい。2-ヒドラジノキノリンが遊離塩基の場合、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロ酢酸などを添加してマトリクスが酸性条件となるようにすればよい。
本発明のマトリックスは、2-ヒドラジノキノリンの酸付加塩又は2-ヒドラジノキノリンと酸を溶媒に溶解した液滴を質量分析用プレート上滴下し、溶媒を蒸発させることで、レーザーが照射されるべき質量分析用スポットが形成される。
溶媒としては、従来より用いられてきた溶媒を用いることができ、特に限定されないが、例えば、水、アセトニトリル、メタノール、エタノールなどが挙げられ、好ましくは水とアセトニトリル、メタノール、エタノール等の有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。
1個の質量分析用スポットを得るために使用する混合溶液の液滴の量は、特に限定されないが、例えば0.1〜10μLが挙げられる。
質量分析用プレートとしては、通常MALDI-MSに使用されるステンレス鋼ターゲットプレートなどや、化学的或いは物理的に表面処理がなされたターゲットプレートなど、様々なものを使用することができる。例えば、研磨処理や鏡面仕上げなど、処理プレート表面の表面粗さを所望の程度にする物理的表面処理がなされたものを用いることができる。
本発明のマトリックスを用いて使用される質量分析装置としては、MALDIイオン源と組み合わされたものであれば特に限定されない。例えば、MALDI-IT(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−イオントラップ)型質量分析装置、MALDI-TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間)型質量分析装置、MALDI-IT-TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−イオントラップ−飛行時間)型質量分析装置、MALDI-QIT-TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化-四重極イオントラップ-飛行時間)型質量分析装置、MALDI-FTICR(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴)型質量分析装置などが挙げられる。
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。
実施例1
2.方法
2.1.試薬
実験に用いた2-ヒドラジノキノリンは東京化成工業株式会社から購入した。また、各種アルデヒド類(アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸)、エステル(酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、サリチル酸メチル)その他の揮発性試薬は和光純薬工業株式会社、ナカライテスク、シグマアルドリッチジャパン社のいずれかから購入した。
2.2.MALDI-MS analysis
MicroflexAI mass spectrometer(Bruker Daltonics)を用い、リニア、ポジティブイオンモードでMALDI-MS測定を行った。精密質量測定を実施する際には、日本電子株式会社JMS-S3000マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計を用いた。
2.3.揮発性分子との反応・検出
揮発性試薬を一定容器内で気化させて均一濃度でヒドラジン誘導体と反応させるため、50 cm x 50 cm x 50 cm(塩ビ透明性3 mm厚、アルミ枠仕様)の反応ボックスを作成した(図1)。反応ボックスにはMALDI測定プレートと揮発性物質の取り出し用窓。MALDI測定プレート置き台。揮発性物質設置用台。反応ボックス内攪拌用ファンが備わっている。揮発性の各種ケトン類等を(すべて液体)適量ガラスシャーレに入れ、反応ボックスにセットし、攪拌用ファンで揮発性液体を気化し、揮発性ガスの濃度を均一にした。さらにヒドラジン誘導体を0.05% trifluoroacetic acid(TFA)+50% acetonitrileに溶かし10 mg/mlの濃度に調製した。この溶液1 μlを、MicroflexAI mass spectrometer用測定プレート(MSP 96 target polished steel microScout Target)に滴下し、室温乾燥した。このMALDI測定プレートを反応ボックスに入れて蓋をすることで、揮発性分子との反応を開始した(図1)。一定の反応時間後(例えば15分間)に測定プレートを取り出し、MALDI-MSの測定を行った。
2.5.反応ボックス中の揮発性分子の、ガス検知管による濃度測定
反応ボックス中の各種ケトン類の濃度については、下記のガス検知管により濃度測定を実施した。
ケトン類
・アセトン測定:ガステック製151L(アセトン用)
・メチルエチルケトン測定:ガステック製151L(アセトン用)
・メチルイソブチルケトン測定:ガステック製153L(メチルイソブチルケトン用)
3.結果・考察
3.1. 結果及び考察
2種類のヒドラジド誘導体(2-hydroxybenzohydrazide, 3-hydroxy-2-naphthoic acid hydrazide)と2種類のヒドラジン誘導体(2-ヒドラジノキノリン, DNPH)が、揮発性のアルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド)と縮合反応を行い、縮合体を形成し、さらにMALDI-MS用のマトリックスとして効率的に機能する(Reactive Matrix)事を以前明らかにした。特にDNPHはこれまでMALDI-MS反応マトリックスとして機能する事が知られている。また2種類のヒドラジン誘導体(2-ヒドラジノキノリン, DNPH)が、揮発性のアルデヒドをMALDI-MSで検出出来ることを報告した際に、2-ヒドラジノキノリンを使用すると、DNPHに比べ、縮合体のピーク以外の、測定に邪魔となるマトリックス由来等の煩雑なピークが少なかった。そこで2-ヒドラジノキノリンを用いて、どの様なガス分子がどの程度の感度まで測定可能か、各種アルデヒド類(アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸)、エステル(酢酸エチル、酢酸ペンチル、イソアミル酢酸、サリチル酸メチル)、を用いて調べた。また検出感度を調べるために、揮発性試薬を一定容器内で気化させて均一濃度でヒドラジン誘導体と反応させるため、50 cm x 50 cm x 50 cm(塩ビ透明性3 mm厚、アルミ枠仕様)の反応ボックスを作成した(図1)。図2に揮発性ケトン類と2-ヒドラジノキノリンの予想される縮合反応を記載する。
アルデヒド類は検出可能である事を既に報告していたので、まずケトン類について実験を実施した。アセトン20 μl, 100 μl, 200 μlを反応ボックス内で気化させた。ガス検知管で濃度を測定したところ、それぞれ6 ppm, 30 ppm, 60 ppmであった。MALDI測定プレートに10 (mg/ml) 2-ヒドラジノキノリン 1 μlを滴下・風乾し、反応ボックスに入れて15分間反応した。反応後、MALDI-MSの測定を行った。図3に示すように、未反応の2-ヒドラジノキノリンのプロトン付加ピーク(*)、アセトンが1分子と2-ヒドラジノキノリンが反応したプロトン付加ピーク(**)が検出され、アセトンの反応濃度を増すにつれ、未反応のピークに比べ、反応物の割合のプロトン付加ピークが増加した。
メチルエチルケトンも同様に、20 μl, 100 μl, 200 μlを反応ボックス内で気化させた。ガス検知管で濃度を測定したところ、それぞれ3.8 ppm, 19 ppm, 38 ppmであった。図4に示すように、アセトンの場合と同様に、反応・MALDI測定を行ったところ、アセトンと同様にメチルエチルケトンの反応濃度を増すにつれ、未反応のピークに比べ、反応物の割合のプロトン付加ピークが増加した。
メチルイソブチルケトンも同様に、20 μl, 100 μl, 200 μlを反応ボックス内で気化させた。ガス検知管で濃度を測定したところ、それぞれ1 ppm, 5 ppm, 10 ppmであった。図5に示すように、アセトンの場合と同様に、反応・MALDI測定を行ったところ、アセトンと同様にメチルイソブチルケトンの反応濃度を増すにつれ、未反応のピークに比べ、反応物の割合のプロトン付加ピークが増加した。
精密質量測定を行うために、日本電子株式会社JMS-S3000マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計を用いた。2-ヒドラジノキノリンと、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを反応させた縮合体のプロトン付加ピークに相当するピークの値(m/z)は以下の通りであった。アセトン(200.1155)、メチルエチルケトン(214.1270)、メチルイソブチルケトン(242.1601)。以上の事から、図2に示した縮合反応が実際起こっていることが確認された。
またカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸)、エステル(酢酸エチル、酢酸ペンチル、イソアミル酢酸、サリチル酸メチル)をエッペンドルフチューブ(1.5 ml用)に入れ、一つずつプラスチック製の容器(タイトボックスNo.3A、700 ml)に入れ、飽和ガスの状態にした。10 mg/ml 2-ヒドラジノキノリン 1μlを、MALDI測定プレートに滴下し風乾した。このプレートを飽和ガスを満たした上記プラスチック製容器に入れて蓋をすることで反応を開始し、15分間反応させ、反応後MALDI-MSの測定を行った。しかし、2-ヒドラジノキノリンに由来するピークしか認められなかった事から、カルボン酸やエステル類はこの系では検出できないことが判明した。
さらにアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのカルボニル化合物250 μlを、それぞれ別のエッペンドルフチューブ(1.5 ml用)に入れ、プラスチック製の容器(タイトボックスNo.3A、700 ml)に全部入れ、飽和ガスの状態にした。10 mg/ml 2-ヒドラジノキノリン 1μlを、MALDI測定プレートに滴下し風乾した。このプレートを上記プラスチック製容器に入れて蓋をすることで、揮発性ケトンとの反応を開始し、15分間反応させ、反応後MALDI-MSの測定を行った。図6に示すように、2-ヒドラジノキノリンと4つのカルボニル化合物が縮合体(ヒドラゾン)を形成したプロトン付加ピークが、MALDI測定で検出できた。
一般にDNPH等のカルボニル化誘導体は、酸性条件下で縮合反応が進行し、アルデヒドやケトン類は補足できる。しかし80℃等の高温下の特殊条件でなければ、カルボン酸、エステル、アミド類は反応性が低いので検出できない((13)Uchiyama, S., Matsushima, E., Aoyagi, S., and Ando, M. Simultaneous determination of C1-C4 carboxylic acids and aldehydes using 2,4-dinitrophenylhydrazine-impregnated silica gel and high-performance liquid chromatography. Anal. Chem., 76, 5849-5854;14)Uchiyama, S., Inaba, Y., and Kunugita, N. Derivatization of carbonyl compounds with 2,4-dinitrophenylhydrazine and their subsequent determination by high-performance liquid chromatography. J. Chromatogr. B, 879, 1282-1289)。そこで2-ヒドラジノキノリンを、0.05% trifluoroacetic acid(TFA)+50% acetonitrileに溶かした場合と、50% acetonitrileにだけ溶かした二種類の溶液(10 mg/ml)を調製した。さらにアセトンをエッペンドルフチューブ(1.5 ml用)に入れ、プラスチック製の容器(タイトボックスNo.3A、700 ml)に入れ、飽和ガスの状態にし、2種類の2-ヒドラジノキノリン 1μlを、MALDI測定プレートに滴下し風乾した。このプレートを飽和ガスを満たした上記プラスチック製容器に入れて蓋をすることで反応を開始し、15分間反応させ、反応後MALDI-MSの測定を行った。図7Aに示すように、TFAを含んだ溶液に溶かした2-ヒドラジノキノリンを使用した場合、アセトンとの縮合体のプロトン付加ピークが検出された。一方、TFAを含まない溶液に溶かした2-ヒドラジノキノリンを使用した場合(図7B)、未反応の2-ヒドラジノキノリンに相当する分子イオンピークしか観察されなかった。以上の事から、2-ヒドラジノキノリンを用いた誘導体化反応も、酸性条件下でしか進行しない事が示唆された。
また実体顕微鏡(SMZ800, Nikon)を用いて、2-ヒドラジノキノリンの反応前、反応後のMALDI測定プレート上での形体を調べた。(A)アセトン、(B)メチルエチルケトン、(C)メチルイソブチルケトン、(D)酢酸、(E)酢酸エチルは、それぞれ上記の化合物と反応前(左)・反応後(右)の写真である(図8)。その結果、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)は、反応後に顕著に黄色を帯びていた。
4.結論
以上の結果から、2-ヒドラジノキノリンがケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)と縮合体を形成し、さらにMALDI-MS用のマトリックスとして効率的に機能する(Reactive Matrix)事が判明した。反応後のMALDI-MSのスペクトルから、バックグラウンドノイズが少なく、ほぼ反応物の分子イオンピークのみが検出される事、またpmolレベルの濃度でも、アルデヒド類、ケトン類を検出可能である事、カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸)、エステル(酢酸エチル、酢酸ペンチル、イソアミル酢酸、サリチル酸メチル)は検出しない事、検出には2-ヒドラジノキノリンが酸性溶媒に溶解する事が必要であることが判明した。
4.結論
以上の結果から、2-ヒドラジノキノリンがケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)と縮合体を形成し、さらにMALDI-MS用のマトリックスとして効率的に機能する(Reactive Matrix)事が判明した。反応後のMALDI-MSのスペクトルから、バックグラウンドノイズが少なく、ほぼ反応物の分子イオンピークのみが検出される事、またppmレベルの濃度でも、アルデヒド類、ケトン類を検出可能である事、カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸)、エステル(酢酸エチル、酢酸ペンチル、イソアミル酢酸、サリチル酸メチル)は検出しない事、検出には2-ヒドラジノキノリンが酸性溶媒に溶解する事が必要であることが判明した。

Claims (3)

  1. 2-ヒドラジノキノリンを含む揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックス。
  2. さらに酸を含む、請求項1に記載の揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックス。
  3. 揮発性ケトン類の気体中の濃度が1ppm以上である、請求項1又は2に記載の揮発性ケトン類検出用MALDI-質量分析用マトリックス。
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CN110243920B (zh) * 2019-05-29 2021-12-14 吉林大学 2-肼喹啉在maldi-tof-ms中作为反应性基质检测小分子糖的方法

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