JP2017124353A - 生物学的セレン処理方法及び生物学的セレン処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被処理水の六価セレン負荷が急激に上昇した場合においても、六価セレンを生物学的に還元処理して、被処理水の六価セレン濃度を十分に低減する。【解決手段】六価セレン及び硝酸態窒素を還元処理する生物処理槽に有機物を供給すると共に被処理水を導入して、被処理水中の六価セレンを還元処理する生物学的セレン処理方法であって、生物処理槽内の被処理水の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの少なくともいずれか一方のタイミングで被処理水の硝酸態窒素負荷を上昇させる工程を含むようにした。【選択図】図1
Description
本発明は、生物学的セレン処理方法及び生物学的セレン処理装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、例えば石炭火力発電所の脱硫排水等に含まれる六価セレンを生物学的に還元処理する際に用いられる生物学的セレン処理方法及び生物学的セレン処理装置に関する。
セレン(Se)は、水質汚濁防止法における有害物質として平成5年に認定され、その排水基準は0.1mg/Lに定められている。この排水基準を満たすべく、各種排水について、セレン濃度を低減するための適切な対策が求められている。
セレンは、水中において主に六価セレン(セレン酸イオン:SeO4 2−)及び四価セレン(亜セレン酸イオン:SeO3 2−)の二つの化学形態で存在する。これらの二つの化学形態のうち、四価セレンについては、鉄と難溶性の塩を形成することから、共沈処理によって排水等から容易に除去することができる(非特許文献1)。また、不溶性の元素状セレン(Se0)に化学的に還元することも比較的容易である(非特許文献2)。
これに対し、六価セレンについては、その化合物の殆どが水への溶解度が高く、金属類を排水から除去するための凝集沈殿法や吸着法等といった物理化学的な処理方法は有効とはいえない。そのため、四価セレンに還元した後に共沈処理を施すことや元素状セレンに還元することが必要となる。なお、六価セレンの還元に有効な還元剤については、例えば、塩化チタン、還元性鉄化合物及び光触媒等が報告されている(非特許文献3〜5)。
しかし、六価セレンの化学的な還元に際しては、使用する還元剤の種類を問わず、工場排水試験方法(JIS K 0102)における「塩酸酸性の強酸性下で煮沸」のような強酸性条件に設定する必要がある。したがって、六価セレンの化学的な還元処理については、高価な金属系還元剤に加えて、pH調整用の多量の酸やアルカリの投入に要する薬剤費が実用上の障害となっている。
ここで、薬剤費を低減できる処理方法として、微生物を利用して六価セレンを還元処理する生物学的な還元処理方法が挙げられる。生物学的な還元処理方法においては、反応条件として中性付近のpHとすることが一般的には適していることから(非特許文献6)、pH調整用の酸やアルカリを多量に必要とすることがなく、薬剤費を大幅に削減することができる。
公害防止の技術と法規編集委員会編、新・公害防止の技術と法規2009水質編、社団法人産業環境管理協会、東京、2009.
電力中央研究所報告V07015
後藤建次郎、TiCl3による水中のSe(VI)の還元・除去、資源と素材、Vol.116、773−777、2000.
林浩志ら、グリーンラスト/フェライト循環処理法によるセレン汚染水処理の連続実証試験、資源と素材、Vol.122、415−422、2006.
川辺能成ら、光触媒によるセレン酸除去反応に及ぼす硫酸イオンの影響、資源と素材、Vol.117、282−287、2001.
Takada T. et al.: Kinetic study on biological reduction of selenium compounds, Process Biochem., Vol.43, 1304−1307, 2008.
ところで、石炭火力発電所の脱硫排水においては、石炭火力発電所で使用される石炭の性状の変化(例えば、使用する炭種の切り替え等)によって、六価セレン負荷(六価セレン濃度)が急激に上昇することがある。しかしながら、六価セレンを生物学的に還元処理する場合、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇に対応できず、排水中の六価セレン濃度を十分に低減できないことがある。
なお、六価セレン負荷の急激な上昇は、石炭火力発電所の脱硫排水のみならず、六価セレンを含有する排水等の被処理水全般において起こり得る問題である。
そこで、本発明は、被処理水の六価セレン負荷が急激に上昇した場合においても、被処理水の六価セレン濃度を十分に低減することができる生物学的セレン処理方法及び生物学的セレン処理装置を提供することを目的とする。
かかる目的を解決するため、本発明の生物学的セレン処理方法は、六価セレン及び硝酸態窒素を還元処理する生物処理槽に有機物を供給すると共に被処理水を導入して、被処理水中の六価セレンを還元処理する生物学的セレン処理方法であって、生物処理槽内の被処理水の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの少なくともいずれか一方のタイミングで被処理水の硝酸態窒素負荷を上昇させる工程を含むようにしている。
また、本発明の生物学的セレン処理装置は、六価セレン及び硝酸態窒素を還元処理すると共に被処理水の導入部を備える生物処理槽と、生物処理槽に有機物を供給する有機物供給装置とを備え、生物処理槽に有機物供給装置から有機物が供給されると共に導入部から被処理水が導入されて、被処理水中の六価セレンが還元処理される生物学的セレン処理装置であって、生物処理槽内の被処理水の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの少なくともいずれか一方のタイミングで生物処理槽内の被処理水の硝酸態窒素負荷を上昇させる硝酸態窒素供給装置をさらに備えるものとしている。
ここで、本発明の生物学的セレン処理方法及び生物学的セレン処理装置において、被処理水は、例えば石炭火力発電所の脱硫排水である。
本発明の生物学的セレン処理方法及び生物学的セレン処理装置によれば、被処理水の六価セレン負荷が急激に上昇した場合においても、六価セレンを生物学的に還元処理して、被処理水の六価セレン濃度を十分に低減することが可能となる。したがって、被処理水の六価セレン負荷の変動に応じた生物学的な還元処理を、長期に亘り安定して実施することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の生物学的セレン処理方法は、六価セレン及び硝酸態窒素を還元処理する生物処理槽に有機物を供給すると共に被処理水を導入して、被処理水中の六価セレンを還元処理する生物学的セレン処理方法であって、生物処理槽内の被処理水の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの少なくともいずれか一方のタイミングで被処理水の硝酸態窒素負荷を上昇させる工程を含むようにしている。
本発明の生物学的セレン処理方法は、例えば本発明の生物学的セレン処理装置を用いて実施される。図1に、本発明の生物学的セレン処理装置の実施形態の一例を示す。
図1に示す生物学的セレン処理装置1は、六価セレン及び硝酸態窒素を還元処理すると共に被処理水3の導入部4aを備える生物処理槽4と、生物処理槽4に有機物を供給する有機物供給装置5とを備え、生物処理槽4に有機物供給装置5から有機物が供給されると共に導入部4aから被処理水3が導入されて、被処理水3中の六価セレンが還元処理される生物学的セレン処理装置であって、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの少なくともいずれか一方のタイミングで生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させる硝酸態窒素供給装置6をさらに備えるものとしている。
本実施形態において、生物処理槽4には、被処理水3の導入部4a及び排出部4bが備えられ、生物汚泥2が収容されている。生物汚泥2は、六価セレン及び硝酸態窒素を還元する能力を有するものであれば特に制限なく使用することができる。このような生物汚泥は、例えば、硝酸態窒素含有水の脱窒処理に用いられている脱窒汚泥を種汚泥とし、これを六価セレンと硝酸態窒素と有機物の存在下で嫌気環境にて馴養することにより取得することができる。馴養に用いる有機物は、生物汚泥の電子供与体として機能するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素数1〜3の低級アルコール、好適にはメタノール又はエタノールが挙げられる。但し、本実施形態において用いることのできる生物汚泥2はこのような方法で取得されるものには限定されない。例えば、脱窒汚泥以外の汚泥、例えば活性汚泥等を種汚泥として用いるようにしてもよい。また、六価セレン及び硝酸態窒素の含有水の還元処理に用いられている生物汚泥は、既に六価セレン及び硝酸態窒素を還元する能力を有していることから、これをそのままあるいは適宜馴養した後に用いても勿論構わない。
生物汚泥2は、例えば担体2’に担持させて生物処理槽4内に収容される。担体2’としては、多孔質セラミック、活性炭、及び繊維状物質等の比表面積の高い材料により構成される粒状物、シート、及び充填材等といった生物処理において一般的に採用されている担体を適宜採用することができる。ここで、担体2’として、特にロックウール(繊維化高炉スラグ)を用いることが好適である。ロックウールは、微細な繊維が集まった粒状綿であり、ケイ酸カルシウムを主成分とする素材で、中性付近では溶解や溶出が殆ど見られない。また、高炉から排出されたスラグであることから、安価であるという利点も有している。即ち、担体2’にかかるコストを抑えて、生物学的セレン処理にかかる総コストを低減することができる。
本実施形態では、生物処理槽4としての密閉構造のカラム容器内に、担体2’を充填し、これに生物汚泥2を付着させ、被処理水3を上向流で流通させて生物汚泥2と被処理水3を接触させるようにしている。但し、生物汚泥2と被処理水3の接触方式は、このような方式には限定されず、生物学的な排水処理において一般的に用いられる方式を適宜採用することができる。例えば、被処理水3の流れは、上向流ではなく下向流等としてもよい。また、固定床方式ではなく流動床方式を採用してもよい。また、生物汚泥2を担体2’に担持させることなく被処理水3と接触させる浮遊法を採用してもよい。なお、生物汚泥2は通常フロック状であることから、浮遊法を採用する場合には、フロック状の生物汚泥2をそのまま用いることができる。あるいは、フロック状の生物汚泥2を適宜凝集させて用いるようにしてもよい。上記のように、生物汚泥2を担体2’に担持させて被処理水3と接触させる非浮遊法(生物膜法)を採用する場合にも、フロック状の生物汚泥2をそのまま担体2’に付着させてもよいし、フロック状の生物汚泥2を適宜凝集させてから担体2’に付着させるようにしてもよい。
被処理水3は、例えば、石炭火力発電所の脱硫排水である。但し、被処理水3はこれに限定されるものではなく、六価セレン負荷の急激な上昇が起こり得る排水等の被処理水全般を対象とすることができる。例えば、原料や製品としてセレンを扱う工場等から排出される排水や排煙にセレンを含む工場等にて発生する洗煙排水等も原料や製品のセレン含有量によって六価セレン負荷の急激な上昇が起こり得ることから、このような排水等も被処理水3とすることもできる。
被処理水3は、例えば、生物処理槽4の前段に設置された送液ポンプ10等により導入部4aから生物処理槽4内に導入される。そして、被処理水3は、生物処理槽4内を上向流で通過する過程で生物汚泥2により生物学的セレン処理がなされ、生物処理槽4としてのカラム容器の上部に設けられた排出部4bから排出される。
ここで、本実施形態において、被処理水3は、有機物供給装置5を介して生物処理槽4内に導入される。有機物供給装置5は、容器5aと、容器5aに収容された有機物封入袋5bとにより構成されており、容器5a内に収容された有機物封入袋5bから自律的に徐放される有機物を被処理水3に混入させることで、被処理水3が生物処理槽4内に導入される際に、有機物も同時に供給されるようにしている。これにより、生物汚泥2に電子供与体としての有機物が供給され、生物汚泥2の六価セレン及び硝酸態窒素の還元処理能力が発揮される。
有機物封入袋5bを利用した有機物の供給技術についての詳細は、例えば国際公開2006/135028に開示されている。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン又はEVA(エチレン・ビニルアルコール共重合体)等の非多孔性膜を少なくとも一部に備える密封構造の容器(袋)内に有機物(例えば、炭素数1〜3の低級アルコール、好適にはメタノール又はエタノール等)を密封することで、ポンプや有機物の供給量を制御する手段を備えることなく、生物汚泥2が必要とする有機物を常時緩やかに供給することができる。
但し、有機物供給装置5は、本実施形態のようなものには限定されず、例えば、有機物封入袋5bを生物処理槽4内に収容して生物処理槽4内に直接有機物を供給するようにしてもよい。また、ポンプや供給量を制御する手段を利用して、被処理水3とともに、あるいは被処理水3とは別に、生物処理槽4内に有機物を直接供給するようにしてもよい。
上記の構成により、六価セレン及び硝酸態窒素を還元する生物汚泥2に有機物を供給しながら、生物汚泥2と被処理水3とを嫌気条件下で接触させて被処理水中の六価セレンを還元処理することができる。なお、ここでいう嫌気条件下とは、酸素が実質的に遮断された状態を意味している。即ち、酸素が完全に遮断された状態のみならず、六価セレンの還元処理を阻害しないレベルで酸素が混入している状態も包含される。
そして、本発明では、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷の急激な上昇に対応するために、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの少なくともいずれか一方のタイミングで生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させる硝酸態窒素供給装置6を備えるようにしている。
なお、ここでいう「六価セレン負荷の急激な上昇」とは、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレン還元処理能力が追いつかず、後に四価セレンの除去処理を行った場合においても被処理水3の総セレン濃度が排水処理基準値を上回ってしまうほどに六価セレンが残留してしまう恐れのあるレベルでの六価セレン負荷の上昇を意味している。具体的には、例えば、被処理水3の六価セレン濃度が通常の六価セレン濃度の5倍以上又は10倍以上となることを意味している。
本実施形態において、硝酸態窒素供給装置6は、硝酸態窒素(硝酸塩)を貯留するタンク6aと、開閉動作によってタンク6aから被処理水3への硝酸態窒素の供給を制御するバルブ6bとを備えている。バルブ6bには、例えば制御装置6cからの命令信号に応答して駆動するソレノイドが組み込まれており、ソレノイドの駆動に伴ってバルブ6bが開閉動作するように構成されている。
生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷の急激な上昇は、例えば被処理水3が石炭火力発電所の脱硫排水である場合には、石炭火力発電所において使用される石炭の性状に基づいて予測することができる。また、被処理水3が原料や製品としてセレンを扱う工場等から排出される排水や排煙にセレンを含む工場等にて発生する洗煙排水等である場合にも原料や製品のセレン含有量に基づいて予測することができる。このように、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷の急激な上昇を予測することができる場合には、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇すると予測される時期よりも前に、生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を予め上昇させておくことで、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレン還元処理能力を予め高めておくことができる。具体的には、予測結果が制御装置6cに送られ、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する前に、制御装置6cからの命令信号に応答してソレノイドが駆動し、バルブ6bが開いて、硝酸態窒素(硝酸塩)が被処理水3に供給される。これにより、生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を予め上昇させて、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレン還元処理能力を予め高めておくことができ、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇した場合においても、被処理水3の六価セレン濃度を十分に低減することが可能となる。
また、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷の急激な上昇は、生物処理槽4内に導入される被処理水3の六価セレン濃度を測定することでも把握することができる。このように、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷の急激な上昇を測定して把握することができる場合には、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇したときに、生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させることで、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレン還元処理能力を即時的に高めることができる。具体的には、硝酸態窒素供給装置6として、六価セレン測定装置6dをさらに備え、六価セレン測定装置6dの測定データが制御装置6cに送られて、被処理水3の六価セレン濃度が所定値を超えたか否かが判断されると共に、バルブ6bのソレノイドに命令信号が送られることで、バルブの開閉動作が制御されるようにしている。これにより、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇したと判断されたときに、制御装置6cからの命令信号に応答してソレノイドが駆動し、バルブ6bが開いて、硝酸態窒素(硝酸塩)が被処理水3に供給され、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレン還元処理能力が即時的に高められて、被処理水3の六価セレン濃度が十分に低減される。六価セレン測定装置6dとしては、例えば誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)等の六価セレンの測定が可能な装置を適宜用いることができる。
なお、本発明によれば、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときのいずれのタイミングで生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させても、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレン還元処理能力を高めることができる。したがって、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇するタイミングを予測し、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇したときに、生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させるようにしてもよい。あるいは、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇するタイミングを予測し、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの双方のタイミングで生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させることで、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレン還元処理能力を予め及び即時的に高めて、被処理水3の六価セレン負荷の急激な上昇にさらに良好に対応し得る。また、生物処理槽4内に導入される被処理水3の六価セレン濃度の測定結果から、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する兆候が見られたタイミングで(即ち、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する前に)生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させるようにしてもよい。あるいは、生物処理槽4内に導入される被処理水3の六価セレン濃度の測定結果から、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する兆候が見られたときと生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇したときの双方のタイミングで生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させることで、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレン還元処理能力を予め及び即時的に高めて、被処理水3の六価セレン負荷の急激に上昇にさらに良好に対応し得る。
このように、本発明では、被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの少なくともいずれか一方のタイミングで被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させるという簡易な手法で、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレン還元処理能力を向上させることができる。このような簡易な手法によって、生物汚泥の六価セレン還元処理能力が向上することを示した事例は今までに報告されておらず、本発明は極めて画期的な発明であるといえる。
なお、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇する前とは、具体的には、例えば10日前、7日前又は4日前であるが、生物処理槽4内の被処理水3の六価セレン負荷が急激に上昇したときに生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷を上昇させても本発明の効果は奏されることから、生物処理槽4内の被処理水3の硝酸態窒素負荷は、六価セレン負荷が急激に上昇する直前に上昇させるようにしてもよい。
ここで、硝酸態窒素供給装置6による被処理水3への硝酸態窒素の供給量については、少なくとも生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレンの還元処理能力が通常よりも向上する範囲で、より好ましくは、後に四価セレンの除去処理を行うことで被処理水3の総セレン濃度が排水処理基準値以下となるレベルで六価セレンが還元処理される範囲で供給される。なお、被処理水3への硝酸態窒素の供給量の好ましい範囲については、生物処理槽4の容積や各種処理条件により変動し得ることから一概には規定できないが、硝酸態窒素の供給量を多くする程、生物処理槽4(生物汚泥2)の六価セレンの還元処理能力が向上しやすくなるものと考えられる。但し、硝酸態窒素の供給量が多すぎると供給した硝酸態窒素を生物処理槽4(生物汚泥2)により十分に低減できなくなることがあるので、生物処理槽4(生物汚泥2)により十分に低減できる範囲、あるいは後段で別途生物学的脱窒処理を行うことで十分に低減できる常識的な範囲で硝酸態窒素を供給することが好ましい。
なお、本実施形態では、硝酸態窒素供給装置6による硝酸態窒素の供給は、生物処理槽4に導入される前の被処理水3に対して直接行うようにしているが、生物処理槽4内の被処理水3に硝酸態窒素を直接供給するようにしてもよい。また、六価セレン濃度の測定についても、生物処理槽4に導入される前の被処理水3ではなく、生物処理槽4内に導入された被処理水3(特に六価セレンの還元処理が行われる前の導入部4a近傍の被処理水3)に対して行うようにしてもよい。
本発明の生物学的セレン処理方法及び生物学的セレン処理装置により、六価セレンが還元処理されて生じた四価セレン、さらには元々含まれている四価セレンを含有する被処理水(処理済水)は、例えば、公知の共沈処理方法(例えば、鉄塩を添加して亜セレン酸を凝集沈殿させて固液分離する方法)等や化学的還元法により処理される。これにより被処理水(処理済水)から四価セレンが除去・回収される。また、担体の表面に亜セレン酸吸着剤を付着させることで、担体自体に四価セレンの吸着能を持たせて四価セレンを除去・回収することもできる。亜セレン酸吸着剤としては、例えば、活性水酸化鉄系(ジャロサイト等)の吸着剤等が挙げられる。また、担体の表面に亜セレン酸吸着剤を付着させたものとしては、例えば、活性水酸化鉄系吸着剤がロックウールの表面に付着しているロックエースSF(日鉄環境エンジニアリング製)等が挙げられる。あるいは、亜セレン酸吸着剤を担体に付着させることなく独立して生物処理槽4内に収容することでも、四価セレンを除去・回収することができる。
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では、生物学的セレン還元処理により六価セレンが還元されて生じた四価セレンを化学的に処理するようにしているが、四価セレンを生物学的に還元処理するようにしてもよい。
例えば、六価セレン及び硝酸態窒素を還元する能力を有する生物汚泥2と、四価セレンを還元する能力を有する汚泥又は微生物若しくは微生物群とを併用することによって、六価セレンだけでなく、四価セレンも生物学的に還元処理することが可能である。また、六価セレン及び硝酸態窒素に加えてさらに四価セレンを還元する能力を有する生物汚泥を用いることによって、六価セレンだけでなく、四価セレンも生物学的に還元処理することが可能である。このような生物汚泥は、例えば、脱窒汚泥を種汚泥とし、六価セレンと硝酸態窒素と有機物と四価セレンの存在下で嫌気環境にて馴養を行うことにより取得し得る。但し、生物汚泥の取得方法は、このような方法には限定されず、例えば種汚泥を活性汚泥として同様に馴養を行うことによっても取得し得る。また、六価セレンと四価セレンと硝酸態窒素の含有水の処理に用いられている生物汚泥は、既に六価セレンと四価セレンと硝酸態窒素を還元する能力を有していることから、これをそのままあるいは適宜馴養した後に用いても勿論構わない。
また、生物汚泥2に代えて又は生物汚泥2と共に、生物汚泥2と同様の能力を有する微生物又は微生物群を用いるようにしてもよい。この場合にも、生物汚泥2を用いる場合と同様、浮遊法又は非浮遊法を採用して六価セレンの還元処理を行うことができる。なお、微生物又は微生物群は、必要に応じて適宜凝集させて用いるようにしてもよい。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
[実施例1]
人工排水を用い、六価セレン負荷の急激な上昇に対して硝酸態窒素負荷を上昇させることの有効性、及び硝酸態窒素負荷の上昇のタイミングについて検討した。
人工排水を用い、六価セレン負荷の急激な上昇に対して硝酸態窒素負荷を上昇させることの有効性、及び硝酸態窒素負荷の上昇のタイミングについて検討した。
1.生物汚泥の取得
硝酸態窒素含有排水処理に利用されていた脱窒汚泥を、六価セレンと硝酸態窒素と有機物の存在下で嫌気環境にて馴養し、六価セレン及び硝酸態窒素の還元能力を有する生物汚泥を取得した。
硝酸態窒素含有排水処理に利用されていた脱窒汚泥を、六価セレンと硝酸態窒素と有機物の存在下で嫌気環境にて馴養し、六価セレン及び硝酸態窒素の還元能力を有する生物汚泥を取得した。
馴養の際に使用した人工排水の組成は、以下の通りとした。なお、以下の人工排水の組成のうち、硝酸態窒素はNaNO3の化学形態で添加されている。また、六価セレンはNa2SeO4の化学形態で添加されている。
・NaCl: 700mg/L
・Na2SO4: 800mg/L
・MgSO4・7H2O: 3500mg/L
・CaCl2: 2000mg/L
・KCl: 60mg/L
・Na2HPO4: 0.9mg/L
・KH2PO4: 0.15mg/L
・NaNO3: 10mg−N/L(N換算)
・Na2SeO4: 1.0mg−Se/L(Se換算)
・pH: 7.0
・NaCl: 700mg/L
・Na2SO4: 800mg/L
・MgSO4・7H2O: 3500mg/L
・CaCl2: 2000mg/L
・KCl: 60mg/L
・Na2HPO4: 0.9mg/L
・KH2PO4: 0.15mg/L
・NaNO3: 10mg−N/L(N換算)
・Na2SeO4: 1.0mg−Se/L(Se換算)
・pH: 7.0
上記組成の模擬排水に、硝酸態窒素含有排水処理に利用されていた脱窒汚泥を初期摂取汚泥濃度2000mg/Lで摂取し、嫌気条件下、温度30℃で1ヶ月間馴養した。また、馴養中は、有機物としてメタノールを60mg−COD/日で供給した。
なお、取得した生物汚泥は、温度30℃の場合、少なくともpH6〜9の範囲内で六価セレンと硝酸態窒素の還元活性を有していることが確認された。最適pHは7であった。
また、取得した生物汚泥は、pH7.0の場合、少なくとも温度20℃〜45℃の範囲内で六価セレンと硝酸態窒素の還元活性を有していることが確認された。最適温度は40℃であった。
2.実験装置
本実施例においては、図1に示す生物学的セレン処理装置1から硝酸態窒素供給装置6を除くと共に、送液ポンプ10の前段に貯留タンクを設けた装置を利用し、貯留タンク内に貯留する人工排水の硝酸態窒素濃度と六価セレン濃度を調整して実験を行った。
本実施例においては、図1に示す生物学的セレン処理装置1から硝酸態窒素供給装置6を除くと共に、送液ポンプ10の前段に貯留タンクを設けた装置を利用し、貯留タンク内に貯留する人工排水の硝酸態窒素濃度と六価セレン濃度を調整して実験を行った。
生物処理槽4は、有効容積150mL(内径4cm、高さ12cm)の円筒形カラムとした。
担体2’として、ロックウールの表面に亜セレン酸(四価セレン)吸着剤として活性水酸化鉄系吸着剤を付着させたロックエースSF(日鉄住金環境株式会社製)を用いた。ロックウールは、微細な繊維が集まった粒状綿であり、ケイ酸カルシウムを主成分とする素材で、中性付近では溶解や溶出がほとんど見られない。また、ロックウール単独では六価セレンや四価セレンの吸着能力がない。また、ロックエースSFは六価セレンの吸着能力はない。なお、ロックエースSFは、1週間ほど通水し、十分に付着していなかった吸着剤成分を洗い流してから使用した。
生物処理槽4としての円筒形カラムに、ロックエースSF65mL相当を充填し、体積充填率を約43%とした。そして、生物汚泥2を懸濁させた上記人工排水を円筒形カラム内に通水して、生物汚泥2を担体2’としてのロックエースSFに付着させた。
有機物封入袋5bは、0.05mm厚のポリエチレンシート(3cm×10cm)2枚の周縁部を溶着させて形成した。内部にはメタノールを封入した。
3.分析方法
六価セレンについては、水素化物発生誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−OES)により測定した。
六価セレンについては、水素化物発生誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−OES)により測定した。
硝酸については、イオンクロマトグラフ分析器で測定した。
試料の濾過には、孔径0.3μmのガラス繊維濾過GF−75(アドバンテック東洋株式会社)を用いた。
4.実験方法
人工排水のNaNO3濃度(N換算濃度)及びNa2SeO4濃度(Se換算濃度)以外の基本組成は、馴養に用いた人工排水の組成と同様とし、NaNO3濃度(N換算濃度)及びNa2SeO4濃度(Se換算濃度)を変化させることで、人工排水中の硝酸態窒素負荷及び六価セレン負荷を変化させて、各種実験を行った。
人工排水のNaNO3濃度(N換算濃度)及びNa2SeO4濃度(Se換算濃度)以外の基本組成は、馴養に用いた人工排水の組成と同様とし、NaNO3濃度(N換算濃度)及びNa2SeO4濃度(Se換算濃度)を変化させることで、人工排水中の硝酸態窒素負荷及び六価セレン負荷を変化させて、各種実験を行った。
なお、水理学的滞留時間は3.5時間とし、嫌気条件下、温度30℃で各種実験を行った。
5.実験結果
(1)実験1
排水中の六価セレン負荷が急激に上昇することが予測された場合を想定し、六価セレン負荷の上昇前に硝酸態窒素負荷を上昇させたときの効果について、以下の条件にて検討を行った。
(a)条件1−1 → 条件2−1 → 条件3−1 → 六価セレンの出口濃度分析
(b)条件1−1 → 条件2−2 → 条件3−1 → 六価セレンの出口濃度分析
(c)条件1−1 → 条件2−3 → 条件3−1 → 六価セレンの出口濃度分析
(1)実験1
排水中の六価セレン負荷が急激に上昇することが予測された場合を想定し、六価セレン負荷の上昇前に硝酸態窒素負荷を上昇させたときの効果について、以下の条件にて検討を行った。
(a)条件1−1 → 条件2−1 → 条件3−1 → 六価セレンの出口濃度分析
(b)条件1−1 → 条件2−2 → 条件3−1 → 六価セレンの出口濃度分析
(c)条件1−1 → 条件2−3 → 条件3−1 → 六価セレンの出口濃度分析
各々の条件の詳細は以下の通りとした。
・条件1−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件2−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件2−2:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、7日間
・条件2−3:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素50mg−N/L、7日間
・条件3−1:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件1−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件2−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件2−2:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、7日間
・条件2−3:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素50mg−N/L、7日間
・条件3−1:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
上記条件(a)〜(c)のうち、(a)は、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇に対して何ら対策を行わないケースを模擬した実験となる。また、(b)及び(c)は、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇する7日前から硝酸態窒素負荷を上昇させたケースを模擬した実験となる。硝酸態窒素負荷の上昇量については、(b)よりも(c)の方が大きい。
六価セレン負荷については、10倍の上昇を想定した。
実験1の結果を表1に示す。
表1に示される結果から、(a)の六価セレン濃度と比較して、(b)及び(c)の六価セレン濃度が大幅に低下することが明らかとなった。この結果から、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇する7日前から硝酸態窒素負荷を上昇させることで、生物汚泥2の六価セレン還元処理能力を予め高めておくことができ、六価セレン負荷が急激に上昇したときにも、六価セレン濃度を十分に低減することが可能であることが明らかとなった。そして、その効果は、六価セレン負荷が10倍上昇した場合にも奏されることが明らかとなった。
また、表1の(b)及び(c)に示される結果から、六価セレン濃度の低減効果は、硝酸態窒素負荷を上昇させるほど大きくなることも明らかとなった。
(2)実験2
排水中の六価セレン濃度が急激に高くなった場合を想定し、以下の条件にて検討を行った。
(d)条件1−1 → 条件4−1 → 六価セレンの出口濃度分析
(e)条件1−1 → 条件4−2 → 六価セレンの出口濃度分析
(f)条件1−1 → 条件4−3 → 六価セレンの出口濃度分析
排水中の六価セレン濃度が急激に高くなった場合を想定し、以下の条件にて検討を行った。
(d)条件1−1 → 条件4−1 → 六価セレンの出口濃度分析
(e)条件1−1 → 条件4−2 → 六価セレンの出口濃度分析
(f)条件1−1 → 条件4−3 → 六価セレンの出口濃度分析
各々の条件の詳細は以下の通りとした。
・条件1−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件4−1:六価セレン0.5mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件4−2:六価セレン0.5mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、7日間
・条件4−3:六価セレン0.5mg−Se/L、硝酸態窒素50mg−N/L、7日間
・条件1−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件4−1:六価セレン0.5mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件4−2:六価セレン0.5mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、7日間
・条件4−3:六価セレン0.5mg−Se/L、硝酸態窒素50mg−N/L、7日間
上記条件(d)〜(f)のうち、(d)は、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇に対して何ら対策を行わないケースを模擬した実験となる。また、(e)及び(f)は、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときに硝酸態窒素負荷を上昇させたケースを模擬した実験となる。硝酸態窒素負荷の上昇量については、(e)よりも(f)の方が大きい。
六価セレン負荷については、5倍の上昇を想定した。
実験2の結果を表2に示す。
表2に示される結果から、(d)の六価セレン濃度と比較して、(e)及び(f)の六価セレン濃度が大幅に低下することが明らかとなった。この結果から、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときに硝酸態窒素負荷を上昇させることでも、生物汚泥2の六価セレン還元処理能力を即時的に高めて、六価セレン濃度を十分に低減することが可能であることが明らかとなった。そして、その効果は、六価セレン負荷が5倍上昇した場合にも奏されることが明らかとなった。
また、表2の(e)及び(f)に示される結果から、六価セレン濃度の低減効果は、硝酸態窒素負荷を上昇させるほど大きくなることも明らかとなった。
(3)実験3
実験2よりも条件4の日数を長くすると共に、六価セレン負荷を高めて、以下の条件にて検討を行った。
(g)条件1−1 → 条件4−4 → 六価セレンの出口濃度分析
(h)条件1−1 → 条件4−5 → 六価セレンの出口濃度分析
(i)条件1−1 → 条件4−6 → 六価セレンの出口濃度分析
実験2よりも条件4の日数を長くすると共に、六価セレン負荷を高めて、以下の条件にて検討を行った。
(g)条件1−1 → 条件4−4 → 六価セレンの出口濃度分析
(h)条件1−1 → 条件4−5 → 六価セレンの出口濃度分析
(i)条件1−1 → 条件4−6 → 六価セレンの出口濃度分析
各々の条件の詳細は以下の通りとした。
・条件1−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件4−4:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、10日間
・条件4−5:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、10日間
・条件4−6:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素50mg−N/L、10日間
・条件1−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件4−4:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、10日間
・条件4−5:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、10日間
・条件4−6:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素50mg−N/L、10日間
上記条件(g)〜(i)のうち、(g)は、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇に対して何ら対策を行わないケースを模擬した実験となる。また、(h)及び(i)は、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときに硝酸態窒素負荷を上昇させたケースを模擬した実験となる。硝酸態窒素負荷の上昇量については、(h)よりも(i)の方が大きい。
六価セレン負荷については、10倍の上昇を想定した。
実験3の結果を表3に示す。
表3に示される結果から、(g)の六価セレン濃度と比較して、(h)及び(i)の六価セレン濃度が大幅に低下することが明らかとなった。この結果からも、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときに硝酸態窒素負荷を上昇させることで、生物汚泥2の六価セレン還元処理能力を即時的に高めて、六価セレン濃度を十分に低減することが可能であることが明らかとなった。そして、その効果は、六価セレン負荷が10倍上昇した場合にも奏されることが明らかとなった。
また、表3の(h)及び(i)に示される結果から、六価セレン濃度の低減効果は、硝酸態窒素負荷を上昇させるほど大きくなることも明らかとなった。
(4)実験4
実験1よりも条件2の日数を短くすると共に、実験1よりも条件3の硝酸態窒素濃度を高めて、以下の条件にて検討を行った。
(j)条件1−1 → 条件2−4 → 条件3−2 → 六価セレンの出口濃度分析
(k)条件1−1 → 条件2−5 → 条件3−2 → 六価セレンの出口濃度分析
(l)条件1−1 → 条件2−6 → 条件3−2 → 六価セレンの出口濃度分析
実験1よりも条件2の日数を短くすると共に、実験1よりも条件3の硝酸態窒素濃度を高めて、以下の条件にて検討を行った。
(j)条件1−1 → 条件2−4 → 条件3−2 → 六価セレンの出口濃度分析
(k)条件1−1 → 条件2−5 → 条件3−2 → 六価セレンの出口濃度分析
(l)条件1−1 → 条件2−6 → 条件3−2 → 六価セレンの出口濃度分析
各々の条件の詳細は以下の通りとした。
・条件1−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件2−4:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、4日間
・条件2−5:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、4日間
・条件2−6:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素50mg−N/L、4日間
・条件3−2:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、7日間
・条件1−1:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、7日間
・条件2−4:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素10mg−N/L、4日間
・条件2−5:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、4日間
・条件2−6:六価セレン0.1mg−Se/L、硝酸態窒素50mg−N/L、4日間
・条件3−2:六価セレン1.0mg−Se/L、硝酸態窒素30mg−N/L、7日間
上記条件(j)〜(l)のうち、(j)は、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときに硝酸態窒素負荷を上昇させたケースを模擬した実験となる。また、(k)及び(l)は、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの双方のタイミングで硝酸態窒素負荷を上昇させたケースを模擬した実験となる。排水中の六価セレン負荷が急激に上昇する前の硝酸態窒素負荷については、(k)よりも(l)の方が高い。
六価セレン負荷については、10倍の上昇を想定した。
実験4の結果を表4に示す。
表4に示される結果から、(j)の六価セレン濃度と比較して、(k)及び(l)の六価セレン濃度が大幅に低下することが明らかとなった。この結果から、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときに硝酸態窒素負荷を上昇させた場合よりも、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの双方のタイミングで硝酸態窒素負荷を上昇させた場合の方が、生物汚泥2の六価セレン還元処理能力を即時的に高める効果に加えて、生物汚泥2の六価セレン還元処理能力を予め高めておく効果も奏されて、六価セレン負荷の急激な上昇時により優れた六価セレン低減効果が奏され得ることが明らかとなった。
また、表4の(k)及び(l)に示される結果から、六価セレン濃度の低減効果は、六価セレン負荷が急激に上昇する前に硝酸態窒素負荷を上昇させるほど大きくなることも明らかとなった。
(5)まとめ
実験1の結果から、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇が予測されたときに、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇前に硝酸態窒素負荷を上昇させることで、生物汚泥2の六価セレン還元処理能力を予め高めることができ、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときにも優れた六価セレン濃度低減効果が奏されることが明らかとなった。そして、六価セレン濃度低減効果は、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇前に硝酸態窒素負荷を高める程大きくなることが明らかとなった。
実験1の結果から、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇が予測されたときに、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇前に硝酸態窒素負荷を上昇させることで、生物汚泥2の六価セレン還元処理能力を予め高めることができ、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときにも優れた六価セレン濃度低減効果が奏されることが明らかとなった。そして、六価セレン濃度低減効果は、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇前に硝酸態窒素負荷を高める程大きくなることが明らかとなった。
また、実験2及び3の結果から、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときに、硝酸態窒素負荷を上昇させることで、生物汚泥2の六価セレン還元処理能力を即時的に高めることができ、優れた六価セレン濃度低減効果が奏されることが明らかとなった。そして、六価セレン濃度低減効果は、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときに硝酸態窒素負荷を高める程大きくなることが明らかとなった。
さらに、実験4の結果から、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの双方のタイミングで硝酸態窒素負荷を上昇させることで、生物汚泥2の六価セレン還元処理能力を予め及び即時的に高めることができ、排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときにも極めて優れた六価セレン濃度低減効果が奏されることが明らかとなった。そして、六価セレン濃度低減効果は、排水中の六価セレン負荷の急激な上昇前に硝酸態窒素負荷を高める程大きくなることが明らかとなった。また、実験4の結果と実験2及び3の結果を総合的に考慮すると、さらに排水中の六価セレン負荷が急激に上昇したときに硝酸態窒素負荷を高めることで、六価セレン濃度低減効果が大きくなるものと推定された。
1 生物学的セレン還元処理装置
2 六価セレン及び硝酸態窒素を還元する生物汚泥
3 被処理水
4 生物処理槽
4a 導入部
5 有機物供給装置
6 硝酸態窒素供給装置
2 六価セレン及び硝酸態窒素を還元する生物汚泥
3 被処理水
4 生物処理槽
4a 導入部
5 有機物供給装置
6 硝酸態窒素供給装置
Claims (4)
- 六価セレン及び硝酸態窒素を還元処理する生物処理槽に有機物を供給すると共に被処理水を導入して、前記被処理水中の六価セレンを還元処理する生物学的セレン処理方法であって、
前記生物処理槽内の前記被処理水の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの少なくともいずれか一方のタイミングで前記被処理水の硝酸態窒素負荷を上昇させる工程を含むことを特徴とする生物学的セレン処理方法。 - 前記被処理水は石炭火力発電所の脱硫排水である、請求項1に記載の生物学的セレン処理方法。
- 六価セレン及び硝酸態窒素を還元処理すると共に被処理水の導入部を備える生物処理槽と、前記生物処理槽に有機物を供給する有機物供給装置とを備え、前記生物処理槽に前記有機物供給装置から前記有機物が供給されると共に前記導入部から被処理水が導入されて、前記被処理水中の六価セレンが還元処理される生物学的セレン処理装置であって、
前記生物処理槽内の前記被処理水の六価セレン負荷が急激に上昇する前及び上昇したときの少なくともいずれか一方のタイミングで前記生物処理槽内の前記被処理水の硝酸態窒素負荷を上昇させる硝酸態窒素供給装置をさらに備えることを特徴とする生物学的セレン処理装置。 - 前記被処理水は石炭火力発電所の脱硫排水である、請求項3に記載の生物学的セレン処理装置。
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Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0938689A (ja) * | 1995-07-25 | 1997-02-10 | Kurita Water Ind Ltd | セレン含有水の処理方法 |
JPH09187790A (ja) * | 1996-01-05 | 1997-07-22 | Kurita Water Ind Ltd | セレン含有水の処理方法 |
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2016
- 2016-01-12 JP JP2016003800A patent/JP2017124353A/ja active Pending
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