JP2017122847A - 静電潜像現像用トナーおよびその製造方法 - Google Patents

静電潜像現像用トナーおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温高湿環境に長期にわたって晒されても、低温定着性を確保することができ、光沢ムラを抑制し、かつ高画質を得ることができる静電潜像現像用トナーを提供する。【解決手段】少なくとも主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む樹脂成分と、離型剤と、を含有するトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子は、前記離型剤とは接触していない糸状結晶構造を有する前記結晶性樹脂と、前記結晶性樹脂と前記離型剤とが接触している構造体と、前記離型剤とは接触していないラメラ状結晶構造を有する前記結晶性樹脂と、を含む、静電潜像現像用トナー。【選択図】図2

Description

本発明は、静電潜像現像用トナーおよびその製造方法に関する。
近年、電子写真方式の画像形成装置は、益々高速化、高画質化、用途拡大の要求が高まり、それに用いる静電潜像現像用トナー(以下、単に「トナー」とも称する)においても、それらの市場からの要求に対応可能なトナーの開発が進められている。地球環境の温暖化防止対策の観点から、電子写真方式の画像形成装置に対しても、省エネルギー化の要請が高まっており、少ないエネルギーで定着できる低温定着トナーの開発が進められている。トナーの定着温度を下げるための代表的な検討として、結晶性材料を用いたものが挙げられる。また、低温定着性を追求すると熱で溶融しやすくなるため耐熱保管性が課題になることがある。よって、低温定着性と耐熱保管性とを高いレベルで両立できる非晶性ポリエステル樹脂をメインの結着樹脂としたトナーの開発も進められている。
たとえば、特許文献1には、結晶性ポリエステル樹脂と離型剤とを含むトナーであって、ルテニウム染色した該トナー断面に該結晶性ポリエステル樹脂が該離型剤と接触した構造体が存在し、該構造体の断面積をA、該離型剤単独の断面積をB、該結晶性ポリエステル樹脂単独の断面積をCとしたとき、40≦100×A/(A+B+C)≦70、10≦100×B/(A+B+C)≦30、20≦100×C/(A+B+C)≦30であることを特徴とする静電荷現像用トナーが開示されている。
また、特許文献2には、トナー粒子が、ビニル樹脂よりなるマトリクス相中に、結晶性ポリエステル樹脂Aによる第1ドメイン相と、結晶性ポリエステル樹脂Bによる第2ドメイン相とが各々分散されてなるドメイン−マトリクス構造を有し、前記第1ドメイン相の平均径が400〜900nmであり、前記第2ドメイン相の平均径が10〜200nmであり、前記結晶性ポリエステル樹脂Aおよび前記結晶性ポリエステル樹脂Bの融点がいずれも95℃以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナーが開示されている。
特開2008−033057号公報 特開2015−011054号公報
上記特許文献1および2は、いずれも、結晶性材料として結晶性ポリエステル樹脂を用い、トナー粒子中の存在状態を制御することで画像折り曲げ耐性と耐熱保存性との両立(特許文献1)、または低温定着性と耐熱保存性との両立(特許文献2)を達成している。しかし、これらのトナーは、高温高湿環境に長期にわたって晒されると、低温定着性の確保が難しくなり、光沢ムラが見られ、画質も低下するという問題があった。
そこで本発明は、高温高湿環境に長期にわたって晒されても、低温定着性を確保することができ、光沢ムラを抑制し、かつ高画質を得ることができる静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、トナー母体粒子の断面に、離型剤とは接触していない糸状結晶構造と、結晶性樹脂と離型剤とが接触している構造体と、離型剤とは接触していないラメラ状結晶構造を有する結晶性樹脂とを含む、静電潜像現像用トナーにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、高温高湿環境に長期にわたって晒されても、低温定着性を確保することができ、光沢ムラを抑制し、かつ高画質を得ることができる静電潜像現像用トナーが提供される。
ラメラ状結晶構造を形成している結晶性ポリエステル樹脂の一例である、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の分子構造を示す模式図である。 本発明の一実施形態によるトナー母体粒子の断面をルテニウム染色した後、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて二次電子像にて観察した際の模式図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
本発明は、少なくとも主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む樹脂成分と、離型剤と、を含有するトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子は、前記離型剤とは接触していない糸状結晶構造(以下、単に「糸状構造」とも称する)を有する前記結晶性樹脂と、前記結晶性樹脂と前記離型剤とが接触している構造体(以下、単に「構造体」とも称する)と、前記離型剤とは接触していないラメラ状結晶構造(以下、単に「ラメラ状構造」とも称する)を有する前記結晶性樹脂とを含む、静電潜像現像用トナーである。このような構成を有する本発明のトナーは、高温高湿環境に長期にわたって晒されても、低温定着性を確保することができ、光沢ムラを抑制し、かつ高画質も得ることができるという優れた効果を有する。
ここで、「糸状結晶構造(糸状構造)」とは、結晶性樹脂が分子鎖の折り畳みにより結晶化することなく形成された構造であって、一本または数本の分子鎖からなる糸状の構造を意味する。また、「ラメラ状結晶構造(ラメラ状構造)」とは、結晶性樹脂の折り畳みによる結晶化で生じた層状構造を意味するものである。当該構造に係る詳細な説明は後述する。
上記した特許文献1および2のように、従来、結晶性材料として結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、トナー粒子中の存在状態を制御することで画像折り曲げ耐性と熱保存性との両立(特許文献1)や、低温定着性と耐熱保存性との両立(特許文献2)を達成している。しかしながら、このような従来技術によるトナーは、製品として輸送する際や実機内で、高温高湿環境に長期にわたって晒されると結晶性材料の結晶成長が発生するという現象が起こることが分かった。そのため、トナー表面に微細な凸凹が発生して流動性が悪化し、トナー熱溶融時に結晶性材料の溶融が不十分となって低温定着性が確保できなくなるという問題があった。また、結晶成長によってトナー表面に微細な凸凹が発生してトナー流動性が悪化することにより、現像機内におけるトナー搬送性が不安定となり、トナー補給が安定せず、現像機内での攪拌混合が不十分となる。その結果、帯電均一性を確保できずに画質が悪化してしまうという問題も発生することが分かった。
これに対し、本発明のトナーは結晶性樹脂が特定の状態で存在することにより、低温定着性が向上する。その理由は以下のようであると考えられる。第一に、本発明に係るトナー母体粒子に含まれるビニル樹脂に結晶性樹脂が相溶して可塑化することで低温定着性が促進される。特に、糸状構造は細長くなることから、その体積と比較して、ビニル樹脂に対する接触面積が広くなるため、ビニル樹脂と結晶性樹脂とが相溶しやすいことで、低温定着性の効果が表れやすいと考えられる。第二に、結晶性樹脂の結晶体が素早く溶融して変形することによりトナー変形が促進され、低温定着性が向上する。この効果は、結晶構造として厚みをもっているラメラ状構造や、結晶性樹脂と離型剤とが接触している構造体によって発揮される。このトナー変形は、糸状構造とビニル樹脂との相溶によってビニル樹脂が柔らかくなっていることで、より顕著に促進される。本発明のトナーは、これらの作用によって低温定着性の大幅な改善が図ることができると考えられる。
さらに、本発明に係るトナー母体粒子においては、結晶性樹脂が、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造の3つの状態で存在している。本発明のトナーが高温高湿環境に長期にわたって晒されても、この3つの状態が同時に結晶成長するので、いずれの状態も急激な結晶成長は抑制される。また、仮に結晶成長が発生しても、ビニル樹脂と相溶しやすい糸状構造の存在により、ビニル樹脂が柔らかくなるため、結晶成長によるトナー表面の凸凹発生を緩和することができる。これにより、高温高湿環境に長期にわたって晒されても、トナー流動性の悪化を防ぐことができ、高画質を確保することができる。
本発明のトナーでは、結晶性樹脂の結晶体が素早く溶融して変形することによりトナー変形が促進され、このトナー変形によって離型剤の浸みだしは促進される。しかしながら、離型剤は結晶性樹脂と構造体を形成しているので、離型剤は全て浸みだすことはなく結着樹脂内部に一部留まる。このようにして、離型剤の浸みだしを適正に制御できるため、本発明のトナーでは、離型剤が過剰に浸みだすことがなく、光沢ムラを抑制することができる。
なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下、本発明の静電潜像現像用トナーを詳細に説明する。なお、本発明に係る「トナー」は、上述したように「トナー母体粒子」を含有する。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
[トナー母体粒子]
本発明に係るトナー母体粒子は、主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む樹脂成分を含有するものである。また、トナー母体粒子は、離型剤を含み、その他必要に応じて、着色剤、磁性粉、荷電制御剤などの他のトナー構成成分を含有してもよい。
<樹脂成分(ビニル樹脂および結晶性樹脂)>
本発明に係るトナー母体粒子は、主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む樹脂成分を含む。
≪ビニル樹脂≫
ビニル樹脂とは、少なくともビニル単量体を用いた重合により得られる樹脂である。ビニル樹脂として、具体的には、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂などが挙げられる。また、ビニル樹脂セグメントとビニル樹脂以外の樹脂セグメント(たとえば非晶性ポリエステル樹脂セグメント)とが化学的に結合したハイブリッドビニル樹脂を含んでもよい。
なかでも、ビニル樹脂としては、スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いて形成されるスチレンアクリル共重合体樹脂が好ましい。なお、ビニル樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明のトナーにおいては、ビニル樹脂がトナーに含まれる樹脂成分の主成分であることを特徴の一つとする。ここで、主成分とは、トナーが含有する樹脂成分の中で最も含有割合が高い樹脂であることを意味する。特にビニル樹脂が主成分であると、糸状構造およびラメラ状構造が存在しやすくなる。これにより、高温高湿環境に長期にわたって晒されても、低温定着性を確保することができ、光沢ムラを抑制し、かつ高画質を得ることができる静電潜像現像用トナーが得られる。ビニル樹脂が主成分であることで、特に結晶性樹脂が結晶性ポリエステル樹脂の場合、結晶性ポリエステル樹脂が結晶構造を保ったまま存在しやすくなる。
ビニル樹脂は、上記のように、トナーが含有する樹脂成分の中で最も含有割合が高い樹脂であるが、その含有量はトナー中の樹脂成分全体を100質量%としたとき、50質量%を超えて99質量%以下であることが好ましく、50質量%を超えて95質量%以下であることがより好ましく、65〜95質量%であることがさらに好ましい。ビニル樹脂の含有量が50質量%を超えると、結晶性樹脂との相溶をある程度抑制するとともに、帯電性向上の効果が大きくなり、65質量%以上であると、さらにその効果が大きくなる傾向がある。また、低温定着性向上の観点から、含有量は99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
なお、上記のビニル樹脂の含有量とは、トナー中に含有される樹脂成分全体に対する全てのビニル樹脂の含有量である。たとえば、樹脂成分が、結晶性樹脂やビニル樹脂以外の樹脂がビニル樹脂とのハイブリッド構造を取ったハイブリッド樹脂を含む場合には、トナー中に含有される主成分としてのビニル樹脂の含有量に加えて、ハイブリッド樹脂中のビニル樹脂セグメントの含有量も、上記のビニル樹脂の含有量に含むものとする。
ビニル樹脂を形成するビニル単量体としては、下記のものから選択される1種または2種以上が用いられうる。
(1)スチレン単量体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンおよびこれらの誘導体など。
(2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの誘導体など。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
(6)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体など。
また、ビニル単量体としては、たとえばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものがある。
カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。また、スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。さらに、リン酸基を有する単量体としてはアシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
さらに、ビニル単量体として、多官能性ビニル類を使用し、ビニル樹脂を、架橋構造を有するものとすることもできる。多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
ビニル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。
ビニル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が25〜60℃である非晶性樹脂であることが好ましく、ガラス転移点(Tg)が35〜55℃である非晶性樹脂であることがより好ましい。なお、本明細書において、樹脂のガラス転移点(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて測定される値である。測定手順としては、測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点とする。
また、ビニル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で10,000〜100,000であることが好ましい。なお、本明細書において、樹脂のGPCによる分子量は、以下のようにして測定される値である。すなわち、装置「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、測定試料(樹脂)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
≪結晶性樹脂≫
結晶性樹脂としては、結晶性を有する樹脂であれば特に制限はなく、本技術分野における従来公知の結晶性樹脂を用いることができる。その具体例としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂等が挙げられる。結晶性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
なかでも結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)およびその誘導体と、2価以上のアルコール(多価アルコール)およびその誘導体との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。多価カルボン酸誘導体としては、多価カルボン酸のアルキルエステル、酸無水物および酸塩化物が例示でき、多価アルコール誘導体としては、多価アルコールのエステル化合物およびヒドロキシカルボン酸が例示できる。
多価カルボン酸とは、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。このうち、2価のカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、たとえば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸等を挙げることができる。また、2価のカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、たとえば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を挙げることができる。また、多価カルボン酸の誘導体として、これらカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価アルコールとは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、2価のポリオール(ジオール)は1分子中にヒドロキシ基を2個含有する化合物であり、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの脂肪族ジオールを挙げることができる。また、2価のポリオール以外のポリオールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記多価カルボン酸の価数、上記多価アルコールの価数の選択などによって一部枝分かれや架橋などを有していてもよい。
さらに、本発明に係る結晶性樹脂は、ラメラ状結晶構造をトナー母体粒子中に有するため、ハイブリッド構造を有する結晶性樹脂を含んでいると好ましい。ハイブリッド構造を有する結晶性樹脂(以下、「ハイブリッド結晶性樹脂」または「ハイブリッド樹脂」とも称し、複数のセグメントを有さない結晶性樹脂を単に「ノンハイブリッド結晶性樹脂」とも称する)とは、結晶性樹脂セグメントと結晶性樹脂以外の樹脂セグメントとが化学的に結合した樹脂である。結晶性樹脂セグメントとは、結晶性樹脂に由来する部分を示し、結晶性樹脂以外の樹脂セグメントとは、結晶性樹脂以外の樹脂に由来する部分を示す。結晶性樹脂以外の樹脂としては、たとえば、スチレンアクリル樹脂などのビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、結晶性を持たないポリエステル樹脂などが挙げられる。結晶性樹脂以外の樹脂セグメントは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
上記の中でも、ハイブリッド結晶性樹脂は、結晶性樹脂セグメントとしての結晶性ポリエステル樹脂セグメントと、結晶性樹脂以外の樹脂セグメントとしてポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントとが化学結合して形成されたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であると好ましい。かような態様であると、結晶性樹脂による低温定着性の向上効果が得られやすくなる。
この際、上記非晶性樹脂セグメントは、ビニル樹脂セグメントであると好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと、ビニル樹脂セグメントとが化学的に結合したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。さらに、これらのセグメントは、両反応性単量体を介して結合されていることが好ましい。さらにまた、ラメラ状結晶構造を形成しやすいという観点から、結晶性樹脂は、ビニル樹脂セグメントを幹(主鎖)、結晶性ポリエステル樹脂を枝(側鎖)としたグラフト共重合体であると好ましい。
このように、結晶性樹脂中にビニル樹脂セグメントを含むハイブリッド結晶性樹脂を含むことで、ラメラ状結晶構造の分子鎖折り畳みによる厚さをある程度厚くすることができ(すなわち結晶性を高くすることができ)、後述するラメラ状結晶構造のドメイン径等を好ましい範囲内に制御しやすくなる。これは、ハイブリッド結晶性樹脂に導入されるビニル樹脂セグメントは結着樹脂に含まれるビニル樹脂との親和性が高いことに起因して、ハイブリッド結晶性樹脂がビニル樹脂となじみやすく(固定化されやすく)なり、その結果、結晶性樹脂の分子鎖が配列しやすくなることによるものと考えられる。
以下、本発明において好ましく用いられる、結晶性ポリエステル樹脂セグメントとビニル樹脂セグメントとが化学結合して形成されたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂について説明する。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂>
・ビニル樹脂セグメント
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を構成するビニル樹脂セグメントは、ビニル単量体を重合して得られた樹脂から構成される。ここで、ビニル単量体としては、ビニル樹脂を構成する単量体として上述したものが同様に用いられうるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中におけるポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント(ビニル樹脂セグメント)の含有量(ハイブリッド化率(後述する実施例に記載の「HB率」;質量比))について特に制限はない。しかしながら、当該ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂のハイブリッド化率は、5〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、5〜20質量%の範囲内であることがさらに好ましく、5〜15質量%の範囲内であることが特に好ましい。ハイブリッド結晶性樹脂におけるハイブリッド化率の値がこの範囲内であると、本発明に係るトナーの特徴的な構成であるラメラ状結晶構造を形成しやすくなるという利点がある。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂はノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に比べて、もともと結晶性樹脂セグメント部分が集まっているため、結晶化時にこの結晶性樹脂セグメント部分が均一に配列しやすく、ラメラ状に結晶構造が出現しやすい。ハイブリッド結晶性樹脂の中でも、後述の図1に示すような櫛形状のハイブリッド構造を有するものは、特に整った結晶配列になりやすく、ラメラ状結晶構造を取りやすい。
・結晶性ポリエステル樹脂セグメント
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂セグメントは、多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒の存在下で、重縮合反応を行うことにより製造された結晶性ポリエステル樹脂から構成される。ここで、多価カルボン酸および多価アルコールの具体的な種類については、上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
・両反応性単量体
「両反応性単量体」とは、結晶性ポリエステル樹脂セグメントとビニル樹脂セグメントとを結合する単量体で、分子内に、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基および第2級アミノ基から選択される基と、ビニル樹脂セグメントを形成するエチレン性不飽和基との双方を有する単量体である。両反応性単量体は、好ましくはヒドロキシ基またはカルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。さらに好ましくは、カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。すなわち、ビニル系カルボン酸であることが好ましい。
両反応性単量体の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素原子数1〜3個)のエステルであってもよいが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸またはフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介して結晶性ポリエステル樹脂セグメントとビニル樹脂セグメントとが結合される。
両反応性単量体の使用量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性および耐久性を向上させる観点から、ビニル樹脂セグメントを構成するビニル単量体の総量100質量部に対して1〜15質量部が好ましく、4〜13質量部がより好ましい。
・ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
(1)結晶性ポリエステル樹脂セグメントを予め重合しておき、当該結晶性ポリエステル樹脂セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ビニル樹脂セグメントを形成するための芳香族ビニル単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成する方法;
(2)ビニル樹脂セグメントを予め重合しておき、当該ビニル樹脂セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールを反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する方法;
(3)結晶性ポリエステル樹脂セグメントおよびビニル樹脂セグメントをそれぞれ予め重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
本発明においては、上記製造方法のうち、いずれも用いることができるが、好ましくは、上記(2)項の方法が好ましい。具体的には、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する多価カルボン酸および多価アルコール、ならびにビニル樹脂セグメントを形成するビニル単量体および両反応性単量体を混合し、重合開始剤を加えてビニル単量体と両反応性単量体を付加重合させてビニル樹脂セグメントを形成した後、エステル化触媒を加えて、重縮合反応を行うことが好ましい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。また、エステル化触媒としては、酸化ジブチルスズ、2−エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。
結晶性樹脂の融点(Tc)は、55〜90℃であることが好ましく、70〜85℃であることがより好ましい。結晶性樹脂の融点が55〜90℃の範囲内であれば、十分な低温定着性および優れた耐ホットオフセット性が得られる。なお、結晶性樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。結晶性樹脂の融点は、示差熱量分析装置(DSC)により測定することができる。
たとえば、DSC−7示差走査カロリメーター(株式会社パーキンエルマージャパン製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて行うことができる。具体的には、試料4.50mgをアルミニウム製パン(KITNo.0219−0041)に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用し、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/分で200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってデータを取得する。この測定によって得られるDSC曲線に基づいて、その第2昇温過程における結晶性樹脂に由来する吸熱ピーク(半値幅が15℃以内である吸熱ピーク)のピークトップの温度を融点とする。
結晶性樹脂として好ましい樹脂である結晶性ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10,000〜50,000の範囲内である。分子量が5,000以上であると、ビニル樹脂と相溶することが抑制され、耐熱性がより向上する。100,000以下であると、低温定着性の悪化を抑制することができる。
結晶性樹脂の含有量は、トナー中の樹脂成分全体を100質量%としたとき、1質量%以上50質量%未満であることが好ましく、5質量%以上50質量%未満であることがより好ましく、5質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましい。結晶性樹脂の含有量が1質量%以上であると、低温定着性の効果をより発揮することができ、5質量%以上であるとさらにその効果が大きくなる傾向がある。また、帯電量の環境依存性やトナーの耐熱保管性向上の観点から、結晶性樹脂の含有量は50質量%未満であることが好ましい。
なお、上記の結晶性樹脂の含有量とは、トナー中に含有される樹脂成分全体に対する全ての結晶性樹脂の含有量である。たとえば、結晶性樹脂として、ハイブリッド結晶性樹脂を含む場合には、トナー中に含有されるハイブリッド構造を有さない結晶性樹脂の含有量に加えて、ハイブリッド結晶性樹脂中の結晶性樹脂セグメントの含有量も、上記の結晶性樹脂の含有量に含むものとする。
結晶性樹脂として好ましい結晶性ポリエステル樹脂の形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸および多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を形成することができる。製造方法の詳細については後述する。
なお、本発明のトナーに含まれる樹脂成分として、ビニル樹脂および結晶性樹脂以外に非晶性ポリエステル樹脂等の他の非晶性樹脂を含んでいてもよい。他の非晶性樹脂の含有量は、トナー中の樹脂成分全体に対して、30質量%以下であることが好ましく、含有量が0質量%であること、すなわち非晶性樹脂が含まれないことがより好ましい。
トナー母体粒子が糸状構造、構造体、およびラメラ状構造を有する本発明のトナーにおいては、結晶性樹脂として、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂とノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂とを併用することが好ましい。
<離型剤>
本発明に係るトナー母体粒子は、離型剤を含む。離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素ワックス類、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジステアリン酸ジグリセリド、ソルビタンモノステアレート、コレステリルステアレート等のエステルワックス類などを挙げることができる。これら離型剤は、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
離型剤としてモノエステルワックス類を用いると、本発明に係る離型剤と接触していない糸状構造を形成しやすくなる傾向がある。一方、離型剤として、炭素鎖の分岐が少なく、分子量分布の小さな炭化水素ワックスを用いると、本発明に係る構造体を形成しやすくなる傾向がある。この理由は定かではないが、結晶性樹脂や周囲の樹脂との親和性のバランスにより、本発明に係る離型剤と接触していない糸状構造を形成したり、本発明に係る構造体を形成したりするものと推測している。このため、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造を共存させるためには、種類の異なる離型剤を二種類併用することが好ましい。たとえば、炭素鎖の分岐が少なく、分子量分布の小さな炭化水素ワックスとエステル結合を一つ有するモノエステルワックス類とを組み合わせて使用することで、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造を共存させやすくなる傾向が見られる。また、離型剤を単独で用いた場合にも、結晶性樹脂や周囲の樹脂との親和性のバランスをとることで、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造を共存させることができると考えられる。具体的には、たとえば、炭素鎖の分岐が多く、比較的分子量分布の大きな炭化水素ワックスやエステル結合を複数有する多価エステルワックス類、変性により二種類以上の官能基を有するなど機能分離された構造を有する離型剤を用いることでも、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造を共存させやすくなる。すなわち、上述したような本発明に特徴的な「トナー母体粒子の断面に、離型剤とは接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂と、結晶性樹脂と離型剤とが接触している構造体と、離型剤とは接触していないラメラ状構造を有する結晶性樹脂とが存在する」という構成を実現するための方法の一つとして、離型剤を適宜選択するという方法が挙げられる。
一例として、離型剤として、分子量分布の小さな炭化水素ワックスとエステル結合を一つ有するモノエステルワックス類とを組み合わせて使用する場合の使用量の比は、炭化水素ワックス:モノエステルワックス=10:90〜90:10(質量比)であることが好ましい。
炭化水素ワックスの炭素鎖の分岐や分子量分布については、たとえば、ガスクロマトグラフ分析により、n−パラフィン率や炭素数の分布の幅を解析することで得ることができる。
ここで、本明細書において、炭素鎖の分岐が少ないとは、具体的には、n−パラフィン率が85%以上であることを意味する。また、炭素数の分岐が多いとは、具体的には、n−パラフィン率が85%未満であることを意味する。
さらに、本明細書において、炭化水素ワックスの分子量分布とは、具体的には、ガスクロマトグラフ分析により、0.1%以上の面積割合で検出された炭化水素のうち、炭素数が最も多い炭化水素の炭素数と炭素数が最も少ない炭化水素の炭素数との差に対して1を加えた数を表す。たとえば、炭素数が最も多い炭化水素の炭素数が30であり、炭素数が最も少ない炭化水素の炭素数が10である場合、分子量分布は21となる。
さらに、本明細書において、「分子量分布が小さい」とは、分子量分布が37以下であることを示し、「分子量分布が大きい」とは、分子量分布が38以上であることを示す。
離型剤としては、トナーの低温定着性および離型性を確実に得る観点から、その融点が50〜95℃であるものを用いることが好ましい。トナー中の離型剤の含有割合は、トナー中の樹脂成分と離型剤との合計を100質量%として、2〜20質量%であることが好ましい。
<結晶性樹脂の存在状態>
本発明においては、トナー母体粒子の断面に、離型剤と接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂と、結晶性樹脂と離型剤とが接触している構造体と、離型剤と接触していないラメラ状構造を有する結晶性樹脂とを含む点に特徴の1つがある。ここで、結晶性樹脂と離型剤とが一点でも接触して存在しているものであれば、本発明に係る「構造体」に包含され、結晶性樹脂と離型剤との複合体を意味する。
図1は、ラメラ状結晶構造を形成している結晶性ポリエステル樹脂の一例である、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂10の模式図を示したものである。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂10は、主鎖となるビニル樹脂セグメント11に、結晶性ポリエステル樹脂セグメント12が、側鎖として、化学的に結合した構造をしている。図1に示すように、結晶性ポリエステル樹脂セグメント12は、ビニル樹脂セグメント11に、櫛形状に結合している。このような櫛型の構造は、結晶性ポリエステル樹脂セグメント12が、ビニル樹脂中で、重なりあって結晶化することにより形成される。その結果、ラメラ状結晶構造が形成される。
なお、上記では、ラメラ状構造を形成する好ましい樹脂としてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を説明したが、ラメラ状構造は上記形態に限定されない。結晶性ポリエステル樹脂のみであっても、重なり合った構造をとることができ、その結果、ラメラ状構造を形成することができる。
糸状構造、構造体およびラメラ状構造の有無を確認する方法としては、たとえば、トナー粒子から外添剤を取り除いて得られたトナー母体粒子をルテニウム染色により染色した後、トナー母体粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察する方法が挙げられる。
図2は、本発明の一実施形態によるトナー母体粒子の断面をルテニウム染色した後、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて二次電子像にて観察した際の模式図である。図2に示すように、本発明の一実施形態によるトナー母体粒子の断面には、マトリックスとしてのビニル樹脂6の中に、離型剤とは接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂3のドメイン(図2の実線で囲った部分)、結晶性樹脂1と離型剤2(図2の1点鎖線で囲った部分)とが接触している構造体4のドメイン(図2の間隔が狭い点線で囲った部分)、および離型剤とは接触していないラメラ状構造を有する結晶性樹脂5のドメイン(図2の間隔が広い点線で囲った部分)、が存在している。
コントラストでは、より白いコントラストの部分を離型剤と判断する。離型剤以外の樹脂成分は、二重結合部分を多く有し四酸化ルテニウムによって染色されるため、離型剤部分と離型剤以外の樹脂部分とを識別できる。すなわち、図2に示すように、ルテニウム染色により、離型剤が一番薄く染色され、次いで糸状構造を有する結晶性樹脂、構造体を形成する結晶性樹脂、およびラメラ状構造を有する結晶性樹脂が濃く染色され、ビニル樹脂が一番濃く染色される。
具体的には、トナー母体粒子の断面は、たとえば、以下のような観察方法で観察できる。
<トナー母体粒子の断面観察方法>
・観察条件
装置:透過型電子顕微鏡「JSM−2000FX」(日本電子株式会社製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO)によって染色したトナー母体粒子の切片(切片の厚さ:60〜100nm)
加速電圧:30kV
倍率:10,000倍、明視野像。
・染色トナー母体粒子の切片の作製方法
作製したトナーを3質量部、ポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2質量%水溶液35質量部に添加して分散させた後、超音波(日本精機株式会社製、US−1200T)により25℃で5分間処理を行い、外添剤をトナー表面から取り除き、TEM観察用のトナー母体粒子を得る。
得られたトナー母体粒子1〜2mgを10mlサンプル瓶に広げるように入れ、下記に示す四酸化ルテニウム(RuO)蒸気染色条件下で処理後、光硬化性樹脂「D−800」(日本電子株式会社製)中に分散させ、UV光硬化させてブロックを形成する。次いで、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、上記のブロックから厚さ60〜100nmの超薄片状のサンプルを切り出す。
・四酸化ルテニウム染色条件
染色は、真空電子染色装置VSC1R1(フィルジェン株式会社製)を用いて行う。装置手順に従い、染色装置本体に四酸化ルテニウムが入った昇華室を設置し、作製した上記超薄切片を染色チャンバー内に導入後、四酸化ルテニウムによる染色条件として、室温(24〜25℃)、濃度3(300Pa)、時間10分の条件下で染色する。
・結晶構造の観察
染色後、24時間以内に透過型電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子株式会社製)にて観察する。
上記の方法で任意のトナー母体粒子100個の断面を観察した際、その断面において、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造が存在するトナー母体粒子が全体の60%(60個)以上存在していればよく、80%(80個)以上存在していることが好ましい。このような範囲であれば、高温高湿環境に長期にわたって晒されても、低温定着性を確保することができ、光沢ムラを抑制し、かつ高画質を得ることができるトナーが得られる。
≪構造体≫
構造体の形状は特に制限はない。しかしながら、構造体の平均ドメイン径は、100nm以上3000nm以下であることが好ましく、150nm以上2700nm以下であることがより好ましく、200nm以上2500nm以下であることがさらに好ましい。構造体の平均ドメイン径が100nm以上であれば、トナーの熱溶融時の変形が十分となり、低温定着性を確保することができる。一方、構造体の平均ドメイン径が3000nm以下であると、離型剤の過剰な浸みだしを抑制することができ、定着部材における画像部と非画像部との離型剤残量に差が生じにくく、次に印刷する面において、光沢ムラを抑制することができる。
≪糸状構造≫
糸状構造のドメインの平均長径は、100nm以上2500nm以下であることが好ましく、150nm以上2200nm以下であることがより好ましく、200nm以上2000nm以下であることがさらに好ましい。糸状構造のドメインの平均長径が100nm以上であれば、糸状構造を有する結晶性樹脂の結着樹脂への相溶が適度に進行し、高温高湿環境に保存した際のドメイン成長によってトナー内部に生じる変形に対する結着樹脂の追随を防いで、トナー表面に凹凸が生じるのを防ぐことができ、高画質を得ることができる。一方、糸状構造のドメインの平均長径が2500nm以下であれば、定着工程においてトナーを加熱することにより、糸状構造が十分に溶融し、低温定着性を確保することができる。
糸状構造のドメインの平均短径は、5nm以上1500nm以下であることが好ましく、10nm以上1000nm以下であることがより好ましく、10nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。
糸状構造のドメインの平均長径および平均短径は、たとえば、結晶性樹脂の添加量や組成で制御することができ、また、結晶性樹脂の分散液を用いてトナーを作製した場合には、結晶性樹脂分散液中の結晶性樹脂の分散径で制御することができる。結晶性樹脂として、ハイブリッド構造を有さない構造のもの(ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)を用いると、より糸状構造を形成しやすくなる傾向が見られる。さらにノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を用いた場合には、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の添加量を増やしたり、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂分散液中のノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の分散径を大きくしたりすると、糸状構造が大きくなる傾向がある。
≪ラメラ状構造≫
ラメラ状構造の平均ドメイン径は、50nm以上2500nm以下であることが好ましく、70nm以上2200nm以下であることがより好ましく、100nm以上2000nm以下であることがさらに好ましい。上記平均ドメイン径を50nm以上とすることにより、トナーの熱溶融時の変形が十分となり、低温定着性を確保することができる。一方、上記平均ドメイン径を2500nm以下とすることにより、トナーを高温高湿環境に保存した際に、トナー表面に生じる凹凸を小さくすることができ、高画質を得ることができる。
ラメラ状構造の平均ドメイン径は、たとえば、結晶性樹脂の添加量や組成で制御することができ、また、結晶性樹脂の分散液を用いてトナーを作製した場合には、結晶性樹脂分散液中の結晶性樹脂の分散径で制御することができる。結晶性樹脂として、ハイブリッド構造を有するもの(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)を用いると、よりラメラ状構造を形成しやすくなる傾向が見られる。さらに、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を用いた場合には、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の添加量を増やしたり、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂分散液中のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の分散径を大きくしたりすると、ラメラ状構造が大きくなる傾向がある。
なお、本明細書中、「ドメイン」とは、連続相であるマトリクス中に、閉じた界面(相と相との境界)を有する島状の相として存在する構造のものを称し、その長さをドメイン径と定義する。
≪糸状構造、構造体およびラメラ状構造の大きさ(ドメイン径、平均長径、平均短径)の測定方法≫
糸状構造、構造体およびラメラ状構造の大きさ(ドメイン径、平均長径、平均短径)は、TEMを用いて観察した画像を市販の画像処理ソフトを利用して算出することができる。
トナー母体粒子の断面における構造体およびラメラ状構造の大きさ(ドメイン径)は、水平方向フェレ径(FERE H)として算出する。具体的には、上記と同様にして作製したトナー母体粒子の断面を、透過型電子顕微鏡JEM−2000FX(日本電子株式会社製)により、加速電圧80kVにて50000倍で撮影し、写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて、構造体およびラメラ状構造の水平方向フェレ径(FERE H)を測定する。また、同様にして、糸状構造の長径(長軸)は水平方向フェレ径(FERE H)の代わりに、最大長(MX LNG)を、短径(短軸)は水平方向フェレ径(FERE H)の代わりに、幅(BR’DTH)をそれぞれ測定する。なお、幅(BR’DTH)は、最大長(MX LNG)に平行な2本の直線で画像を挟んだときの2直線間の最短距離である。上記の平均ドメイン径、平均長径、および平均短径の測定は、トナー母体粒子100個のうち、糸状構造、構造体およびラメラ状構造がすべて観察されたものについての算術平均値として算出する。
≪構造体、糸状構造、および離型剤の断面積比率≫
トナー母体粒子の断面積に対する糸状構造の断面積の比率をA、トナー母体粒子の断面積に対する構造体の断面積の比率をB、トナー母体粒子の断面積に対するラメラ状構造の断面積の比率をC、およびトナー母体粒子の断面積に対する構造体を形成していない離型剤の断面積の比率をDとした際、B/(A+B+C+D)が0.30〜0.70であることが好ましく、0.35〜0.65であることがより好ましい。B/(A+B+C+D)が0.30以上であれば、離型剤の過剰な浸みだしを抑制することができ、定着部材における画像部と非画像部との離型剤残量に差が生じにくく、次に印刷する面において、光沢ムラを抑制することができる。一方、0.70以下であれば、糸状構造やラメラ状構造の断面積比率が好適な範囲となり、トナーを高温高湿環境に保存した際に、トナー表面に生じる凹凸を小さくすることができ、高画質を得ることができる。
上記A、B、C、およびDは、たとえば、上述した糸状構造、構造体およびラメラ状構造の大きさの測定方法と同様の装置および条件により測定することができ、水平方向フェレ径(FERE H)の代わりに、画像処理解析装置 LUZEX AP(株式会社ニレコ製)の「面積AREA」を用いて測定することができる。なお、各断面積は、外側の輪郭で囲まれた領域(たとえば、糸状構造は図2の実線で囲った領域、構造体は図2の間隔が狭い点線で囲った領域、ラメラ状構造は図2の間隔が広い点線で囲った領域)を測定する。この断面積比率についても、トナー母体粒子100個のうち、糸状構造、構造体およびラメラ状構造が共に観察されたものについての算術平均値として算出する。
<着色剤>
本発明に係るトナーにおいて、トナー母体粒子は着色剤を含んでもよい。着色剤の例としては、カーボンブラック、黒色酸化鉄、染料、顔料等が挙げられる。
カーボンブラックとしては、たとえば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられ、黒色酸化鉄としては、たとえばマグネタイト、ヘマタイト、三酸化チタン鉄などが挙げられる。
染料としては、たとえばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などが挙げられる。
顔料としては、たとえばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同150、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60などが挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。トナー母体粒子中の着色剤の含有割合は、1〜10質量%であることが好ましい。
<荷電制御剤>
本発明に係るトナー母体粒子は荷電制御剤を含んでもよい。荷電制御剤の例としては、たとえば、サリチル酸誘導体の亜鉛やアルミニウムによる金属錯体(サリチル酸金属錯体)、カリックスアレーン化合物、有機ホウ素化合物、および含フッ素4級アンモニウム塩化合物などを挙げることができる。
荷電制御剤の含有割合は、トナー中の樹脂成分100質量部に対して通常0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
<外添剤>
本発明に係るトナー母体粒子は、そのままトナー粒子として使用することが可能であるが、トナーとしての帯電性能や流動性、またはクリーニング性を向上させる観点から、その表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑剤等を外添剤として添加することが好ましい。外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。粒子としては、たとえば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子およびチタニア微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、またはチタン酸ストロンチウム微粒子、チタン酸亜鉛微粒子などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。また、滑剤としては、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これら外添剤は、耐熱保管性および環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸またはシリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであってもよい。
これらの外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部である。
<トナーのガラス転移点>
本発明のトナーのガラス転移点(Tg)は、25〜65℃であることが好ましく、より好ましくは35〜55℃である。本発明のトナーのガラス転移点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性および耐熱保管性を有するトナーが得られる。なお、トナーのガラス転移点は、測定試料としてトナーを用いたことの他は、上記と同様にして測定されるものである。
<トナーの粒径>
本発明に係るトナーの平均粒径は、たとえば体積基準のメジアン径で3〜8μmであることが好ましく、5〜8μmであることがより好ましい。この平均粒径は、製造時において使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、樹脂成分の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することなどができる。トナーの体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、たとえば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割して頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
<トナーの平均円形度>
本発明に係るトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.920〜1.000であることが好ましく、0.950〜0.995であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。トナーの平均円形度は、「FPIA−2100」(シスメックス株式会社製)を用いて測定した値である。具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(シスメックス株式会社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
[トナーの製造方法]
本発明のトナーを製造する方法としては、たとえば、粉砕法、ミニエマルション法、乳化凝集法、その他の公知の方法などを挙げることができる。しかしながら、上述したような本発明に特徴的な「トナー母体粒子の断面に、離型剤とは接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂と、結晶性樹脂と離型剤とが接触している構造体と、離型剤とは接触していないラメラ状構造を有する結晶性樹脂と、が存在する」という構成を実現するための製造方法としては、トナー母体粒子の粒径や形状制御を行った後に冷却する工程を有する製造方法であることが好ましい。
この冷却する工程を行うことにより、結晶化物質(たとえば結晶性樹脂や離型剤)の凝集を防ぐことができるため、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造の共存状態を作りやすくなると推測している。なお、冷却する工程においては、急冷を行うことが好ましい。急冷とは、冷却前の温度および冷却後の目標温度にもよるが、目安としては降温速度が8℃/分以上である。この冷却工程(好ましくは急冷)を、トナー母体粒子の粒径や形状制御を行った後に行うことで、離型剤とは接触しておらず独立して存在している糸状構造の結晶性樹脂、結晶性樹脂が離型剤と接触している構造体、および離型剤とは接触しておらず独立して存在しているラメラ状構造の結晶性樹脂の共存状態をより保ちやすくなる。また、乳化凝集法によれば、製造コストおよび製造安定性の観点から、トナー母体粒子の小粒径化を容易に図ることができるのでより好ましい。したがって、乳化凝集法を用いた場合、所望の粒子径となるまで凝集させ、さらに樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行った後に冷却(好ましくは急冷)を行うことがより好ましい。
乳化凝集法とは、乳化によって製造された樹脂の粒子(以下、「樹脂粒子」ともいう)の分散液を、必要に応じて着色剤の粒子(以下、「着色剤粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望の粒子径となるまで凝集させ、さらに樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー母体粒子を製造する方法である。ここで、樹脂粒子は、離型剤や必要に応じて荷電制御剤などを含有していてもよい。
以下、好ましい製造方法である乳化凝集法について説明する。
<乳化凝集法>
上述したように、乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂粒子の分散液を、必要に応じて着色剤粒子などのトナー母体粒子の構成成分の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望の粒径となるまで凝集させ、その後または凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー母体粒子を形成する方法である。
たとえば、結晶性樹脂粒子の水系分散液と、離型剤含有ビニル樹脂粒子の水系分散液と、着色剤粒子の水系分散液とを混合し、それぞれの粒子を凝集し、次いで、融着させることによって、本発明に係るトナー母体粒子とすることができる。また、離型剤含有ビニル樹脂粒子の水系分散液ではなく、離型剤粒子の水系分散液とビニル樹脂粒子の水系分散液とを別々に作製し混合してもよく、結晶性樹脂含有ビニル樹脂粒子の水系分散液や、結晶性樹脂および離型剤含有ビニル樹脂粒子の水系分散液を用いることもできる。
トナー母体粒子を乳化凝集法によって製造する場合、たとえば、以下の各工程を含む製造方法が採用される。ここで、以下の例は、ビニル樹脂粒子が離型剤を含有するものであり、結晶性樹脂粒子が結晶性ポリエステル樹脂粒子であり、さらにトナー母体粒子が着色剤を含有するものである場合について記載したものであり、本発明の技術的範囲がこれらの形態に限定されるわけではない。
(a)水系媒体中で、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程
(b)水系媒体中で、離型剤を含有するビニル樹脂粒子を含む分散液を調製する工程
(c)水系媒体中で、着色剤粒子の分散液を調製する工程
(d)前記結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液と、前記離型剤含有ビニル樹脂粒子の分散液と、前記着色剤粒子の分散液とを混合する工程
(e)前記結晶性ポリエステル樹脂粒子と、前記離型剤含有ビニル樹脂粒子と、前記着色剤粒子とを凝集、融着する工程
(f)熱エネルギーにより熟成させて、トナー母体粒子の形状を調整する熟成工程
(g)トナー母体粒子の分散液を冷却する冷却工程
上記(g)の工程の後、さらに、(h−1)トナー母体粒子の水系分散液からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤などを除去する洗浄し、洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する洗浄、乾燥工程、(h−2)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤処理工程、等を必要に応じて行うことで、トナー粒子を製造することができる。
≪(a)結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程≫
本工程は、下記工程を含んで構成されることが好ましい:
(A−1)結晶性ポリエステル樹脂合成工程
(A−2)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程。
(A−1)結晶性ポリエステル樹脂合成工程
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、多価カルボン酸および多価アルコールとを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、たとえば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、上述の結晶性ポリエステル樹脂セグメントを合成するための触媒と同様のものが用いられるため、ここでは詳細な説明は省略する。
多価アルコールと多価カルボン酸との使用比率は、多価アルコールのヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、1.5/1〜1/1.5であることが好ましく、1.2/1〜1/1.2であることがより好ましい。また、重合温度や重合時間は特に限定されるものではなく、重合中には必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
(A−2)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程は、上記で合成した結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製方法としては、たとえば(i)溶媒を用いることなく、水系媒体中において結晶性ポリエステル樹脂の分散処理を行う方法、あるいは(ii)結晶性ポリエステル樹脂を酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなどの溶剤に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶剤処理を行う(脱溶剤工程)方法などが挙げられる。
上記(i)および(ii)で用いられる「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。より好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
さらに、水系媒体中には、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるために、アミンやアンモニアが溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、結晶性ポリエステル樹脂による油滴の分散安定性に優れ、また、温度変化に対する安定性が得られることから、アニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)などのアルキル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリエトキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム)などのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩、およびその誘導体類などを挙げることができる。以上の界面活性剤は、所望に応じて、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリスチレン−アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
上記(ii)では、合成した結晶性ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解し、結晶性ポリエステル樹脂溶液を調製する。その後、当該結晶性ポリエステル樹脂溶液を、水系媒体中に乳化分散させることにより、結晶性ポリエステル溶液よりなる油滴を形成する。この工程においては、転相乳化法により調製されたものを用いると、ポリエステルのカルボキシル基の安定性を変化させることによって油滴を均一分散させることができ、機械乳化法のように無理矢理せん断力で分散させない点で優れている。「転相乳化法」では、有機溶媒に樹脂を溶解し、樹脂溶解液を得る溶解工程と、樹脂溶解液に中和剤を投入する中和工程と、中和後の樹脂溶解液を水系分散媒中に乳化分散させ、樹脂乳化液を得る乳化工程と、樹脂乳化液から有機溶媒を除去する脱溶媒工程と、を経ることで、樹脂微粒子の分散液が得られる。
上記(i)および(ii)における分散処理(乳化分散)は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、分散機としては、特に限定されるものではなく、湿式乳化分散機、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
なお、分散液中の結晶性ポリエステル樹脂粒子の粒径は、中和剤添加量を調整する、すなわち中和度を調整することによって制御可能である。中和剤添加量が少ない、すなわち、中和度が低いほど、分散液中の樹脂粒子の粒径は大きくなる傾向が見られる。
上記(ii)の方法においては、形成された油滴から、有機溶剤を留去することにより、結晶性ポリエステル樹脂の粒子が生成され、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液が調製される。有機溶剤の留去は、具体的には、真空度が400〜50000Paの範囲内とされた状態において、かつ、30〜50℃の範囲内の温度において行うことが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の粒子の粒径は、たとえば体積基準のメジアン径で30〜500nmの範囲内にあることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の粒子の粒径は、たとえば、「マイクロトラックUPA−150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。なお、この油滴の分散径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさなどによってコントロールすることができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液における結晶性ポリエステル樹脂粒子の含有量は、分散液100質量%に対して10〜50質量%の範囲とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲がより好ましい。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
≪(b)離型剤を含有するビニル樹脂粒子を含む分散液(離型剤含有ビニル樹脂粒子分散液)を調製する工程≫
本工程は、トナー母体粒子を構成するビニル樹脂を合成し、このビニル樹脂を水系媒体中に粒子状に分散させ、さらに離型剤を添加してビニル樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
ビニル樹脂の重合方法の具体例は、上記した通りである。
ビニル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、ビニル樹脂を得るための単量体からビニル樹脂粒子を形成し、当該ビニル樹脂粒子の水系分散液を調製する方法(I)や、ビニル樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解または分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒(溶剤)を除去する方法(II)などが挙げられる。これらの方法(I)および(II)において、ビニル樹脂単量体(またはビニル樹脂)と共に、離型剤を添加すると好ましい。
方法(I)では、まず、ビニル樹脂を得るための単量体を重合開始剤と共に水系媒体中に添加して重合し、基礎粒子を得る。次に、当該基礎粒子が分散している分散液中に、ビニル樹脂を得るためのラジカル重合性単量体および重合開始剤を添加し、上記基礎粒子にラジカル重合性単量体をシード重合する手法を用いることが好ましい。このラジカル重合性単量体および重合開始剤を添加する際に、離型剤も同時に添加することが好ましい。
このとき、重合開始剤としては、水溶性重合開始剤を用いることができる。水溶性重合開始剤としては、たとえば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。
また、ビニル樹脂粒子を得るためのシード重合反応系には、ビニル樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネート、スチレンダイマーなどを用いることができる。
方法(II)において、油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、上記と同様に、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、たとえば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒(溶剤)の使用量(2種類以上使用する場合はその合計使用量)は、ビニル樹脂100質量部に対して、通常10〜500質量部、好ましくは100〜450質量部、さらに好ましくは200〜400質量部である。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2,000質量部であることが好ましく、100〜1,000質量部であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
また、上記と同様に、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。このような油相液の乳化分散は、上記と同様に、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、上記(A−2)において説明したものを用いることができる。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、ビニル樹脂粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に攪拌状態で昇温し、一定の温度域において強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。あるいは、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。
方法(II)においては、得られたビニル樹脂粒子を含む分散液中に、別途作製した離型剤の水系分散液(離型剤粒子分散液)を添加し、離型剤含有ビニル樹脂粒子分散液を調製する。
離型剤の水系分散液において用いられる水系媒体、界面活性剤、樹脂微粒子等は、上記(A−2)で説明したものと同様のものが用いられうる。また、離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記(A−2)で説明したものと同様のものを用いることができる。
離型剤粒子分散液における離型剤粒子の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、ホットオフセット防止および分離性確保の効果が得られる。
上記方法(I)または(II)によって準備されたビニル樹脂粒子分散液におけるビニル樹脂粒子(油滴)の分散径は、体積基準のメジアン径(体積平均粒径)で、60〜1000nmが好ましく、80〜500nmがより好ましい。なお、この油滴の分散径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさなどによりコントロールすることができる。このビニル樹脂粒子分散液中のビニル樹脂粒子の分散径は、たとえば、「マイクロトラックUPA−150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
また、ビニル樹脂粒子分散液におけるビニル樹脂粒子の含有量は、5〜50質量%の範囲とすることが好ましく、10〜30質量%の範囲がより好ましい。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
ここで、ビニル樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。
≪(c)着色剤粒子分散液調製工程≫
着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。
当該水系媒体は上記(A−2)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。また、着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記(A−2)において説明したものを用いることができる。
着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で10〜300nmの範囲内であることが好ましい。この着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の分散径は、たとえば、「マイクロトラックUPA−150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
着色剤粒子分散液における着色剤の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが好ましく、15〜40質量%の範囲とすることがより好ましい。このような範囲であると、色再現性確保の効果がある。
≪(d)混合液調製工程および(e)凝集・融着工程≫
混合液調製工程は、上記(a)および(b)の工程にて調製した各粒子分散液を混合する。このとき、必要に応じて上記(c)の工程にて調製した着色剤分散液をさらに混合してもよい。各分散液の添加順序等は特に制限されず、また、攪拌速度等の条件も特に制限されない。また、この工程では、上述の各分散液に加え、必要に応じて荷電制御剤、その他トナー母体粒子の構成成分を混合してもよい。
上記混合液調製工程の後、または同時に行われる凝集・融着工程は、水系媒体中で前述の結晶性ポリエステル樹脂粒子、離型剤含有ビニル樹脂粒子と、および必要に応じて着色剤粒子、荷電制御剤、その他トナー母体粒子の構成成分を凝集させ、凝集させると同時にこれら粒子を融着させてトナー母体粒子を得る工程である。
結晶性ポリエステル樹脂粒子、離型剤含有ビニル樹脂粒子および必要に応じて用いられる着色剤粒子を凝集、融着する具体的な方法としては、水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加し、次いで、樹脂粒子のガラス転移点以上であって、かつ、これら混合物の融解ピーク温度以下の温度に加熱することによって、結晶性ポリエステル樹脂粒子、離型剤含有ビニル樹脂粒子および着色剤粒子などの粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進める。そして、所望の粒子径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う方法が挙げられる。この方法においては、凝集剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くして速やかに、これらの樹脂粒子のガラス転移点以上であって、かつ、これら混合物の融解ピーク温度以下の温度に加熱することが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によっては粒子の凝集状態が変動して粒径分布が不安定になったり、融着させた粒子の表面性が変動したりする問題が発生することが懸念されるためである。この昇温までの時間としては通常30分以内であることが好ましく、10分以内であることがより好ましい。また、昇温速度としては1℃/分以上であることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定されるものではないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、反応系がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該反応系の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、トナー母体粒子の成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上することができる。本発明においては、凝集・融着工程で、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液および離型剤含有ビニル樹脂粒子の分散液は、一段目と二段目とに分割して投入してもよい。
この凝集・融着工程において使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、たとえばナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属などの1価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガンおよび銅などの2価の金属塩;鉄およびアルミニウムなどの3価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウムおよび硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。この凝集・融着工程において得られるトナー母体粒子の粒径は、たとえば、体積基準のメジアン径(体積平均粒径)が2〜9μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは4〜7μmの範囲内である。トナー母体粒子の体積基準のメジアン径は、たとえば、「粒度分布測定装置 マルチサイザー 3」(ベックマン・コールター株式会社製)によって測定することができる。
なお、コア−シェル構造のトナーを得る場合には、本工程において、シェル部を形成する樹脂の水系分散液をさらに添加し、上記で得られた単層構造の樹脂の粒子(コア粒子)の表面にシェル部を形成する樹脂を凝集、融着させる。これにより、コア−シェル構造を有するトナー母体粒子が得られる(シェル化工程)。この際、シェル化工程に引き続き、コア粒子表面へのシェルの凝集、融着をより強固にし、かつ粒子の形状が所望の形状になるまで、さらに反応系の加熱処理、すなわち後述の(f)熟成工程を行うとよい。この反応系の加熱処理は、コア−シェル構造を有するトナー母体粒子の平均円形度が、上記平均円形度の範囲になるまで行えばよい。
≪(f)熟成工程≫
上記の凝集・融着工程における加熱温度の制御により、ある程度トナーにおけるトナー母体粒子の形状の均一化を図ることができるが、さらなる形状の均一化を図るために、熟成工程を経ることが好ましい。この熟成工程は、加熱温度および加熱時間の制御を行うことにより、粒径が一定で分布が狭く形成したトナー母体粒子の表面が、平滑で均一な形状を有するものとなるよう制御する。具体的には、凝集・融着工程において加熱温度を低めにして樹脂粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、この熟成工程においても加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてトナー母体粒子を所望の平均円形度となる、すなわち表面が均一な形状のものとなるよう制御する。上記したように、該平均円形度は、好ましくは0.920〜1.000である。
≪(g)冷却工程≫
トナー母体粒子が所望の平均円形度となった後、分散液の冷却を行う。この際、冷却条件を制御することで、それぞれのトナー母体粒子を構成する材料のトナー母体粒子中での存在状態(たとえば、各材料のドメイン径や形状等)が変化する。冷却速度を遅くすると、たとえば、結晶化物質の凝集が促進され、結晶成長をすることが起こり得る。一方、冷却速度を速くすると、たとえば、結晶化物質の凝集が抑制され、結晶化が促進せずに熟成工程での構造を保ったままになる傾向がある。上述したように、本発明の特徴である、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造の共存状態を作りやすくなる降温速度の目安としては8℃/分以上が好ましい。
冷却方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
≪(h−1)洗浄、乾燥工程≫
洗浄・乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。すなわち、上記熟成工程にて所望の平均円形度まで熟成し、冷却した後、たとえば遠心分離機などの公知の装置を用いて、固液分離し洗浄を行う。洗浄処理は、濾液の電気伝導度が、たとえば5〜10μS/cmレベルになるまで水洗処理を行うものである。
乾燥工程では、洗浄処理されたトナー母体粒子に乾燥処理が施される。乾燥は、必要に応じて減圧乾燥により有機溶媒が除去された後、さらに、フラッシュジェットドライヤーおよび流動層乾燥装置など公知の乾燥装置にて水分および微量の有機溶媒を除去する。乾燥温度は、トナー母体粒子が融着しない範囲であればよい。乾燥処理されたトナー母体粒子に含有される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下である。
また、乾燥処理されたトナー母体粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、解砕処理を行ってもよい。
≪(h−2)外添剤処理工程≫
この外添剤処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に必要に応じて外添剤を添加、混合することにより、トナー粒子を調製する工程である。外添剤の種類や好ましい添加量は上述したとおりであるため、ここでは説明を省略する。外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置が挙げられる。
[静電潜像現像用現像剤]
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。
キャリアの体積基準のメジアン径としては20〜100μmであることが好ましく、25〜80μmであることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定することができる。
[電子写真画像形成方法]
本発明に係る静電潜像現像用トナーおよび現像剤は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。たとえば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの静電潜像担持体(「電子写真感光体」または単に「感光体」とも称する)とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
電子写真画像形成方法としては、具体的には、本発明に係る静電潜像現像用現像剤を使用して、たとえば静電潜像担持体上に帯電装置にて帯電(帯電工程)し、像露光することにより静電的に形成された静電潜像(露光工程)を、現像装置において本発明に係る静電潜像現像用現像剤中のキャリアでトナーを帯電させて現像することにより顕像化させてトナー画像を得る(現像工程)。そして、このトナー画像を記録媒体に転写(転写工程)し、その後、記録媒体上に転写されたトナー画像を接触加熱方式の定着処理によって記録媒体に定着(定着工程)させることにより、可視画像が得られる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[結晶性樹脂の作製]
<結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)(cn−1)の作製>
エチレングリコール 45質量部、1,4−ブタンジオール 135質量部、およびアジピン酸 330質量部を三つ口フラスコに入れ、触媒としてジブチルスズオキシド 0.7質量部、およびハイドロキノン 0.4質量部を加えて、窒素ガス雰囲気下、160℃で5時間反応させた。さらに、8.3kPaにて所望の融点の樹脂が得られるまで160℃で反応させて結晶性樹脂(cn−1)を得た。この結晶性樹脂(cn−1)をDSCにて昇温速度10℃/分で測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は78℃であり、ピークの半値幅は10℃であった。また、結晶性樹脂(cn−1)の重量平均分子量は、24,800であった。
<結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)(cn−2)〜(cn−3)の作製>
添加した多価カルボン酸および多価アルコールの種類および量を下記表1のように変更したこと以外は、上記<結晶性樹脂(cn−1)の作製>と同様にして結晶性樹脂(cn−2)〜(cn−3)を作製した。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(cm−1)の合成>
両反応性単量体を含む、下記に示す組成の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂:StAc1)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 58質量部
n−ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 3.4質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部。
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs1)セグメントの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
エチレングリコール 45質量部
1,4−ブタンジオール 135質量部
アジピン酸 330質量部。
次いで、フラスコの内容物を攪拌しながら、付加重合系樹脂(StAc1)の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合系樹脂の原料モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、235℃まで昇温し、常圧下(101.3kPa)にて5時間反応させ、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(cm−1)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(cm−1)の全量100質量%に対するCPEs以外の樹脂(StAc)セグメントの含有量(HB率)は13.8質量%であり、また、得られた樹脂は、StAcセグメントが主鎖であり、結晶性ポリエステル樹脂(CPEs)セグメントが側鎖としてグラフト化した形態の樹脂であった。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(cm−1)の重量平均分子量(Mw)は27,800、融点(Tc)は76℃であった。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(cm−2、cm−3)の合成>
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(cm−1)の合成において、多価アルコールおよび多価カルボン酸の種類および量を下記表2のように変更したこと以外は、上記<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(cm−1)の作製>と同様にして、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(cm−2)〜(cm−3)を作製した。
結晶性樹脂cn−1〜cn−3の性状を下記表1に、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂cm−1〜cm−3の性状を下記表2に、それぞれ示す。
<結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)粒子分散液(CA−1)の作製>
結晶性樹脂(cn−1)を300質量部溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性樹脂(cn−1)の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、結晶性樹脂粒子分散液(CA−1)を調製した。なお、希アンモニア水は中和度が45%になるように添加した。結晶性樹脂粒子分散液(CA−1)中の結晶性樹脂粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で203nmであった。
<結晶性樹脂粒子分散液(CA−2)〜(CA−5)、(CB−1)〜(CB−5)の作製>
結晶性樹脂の種類および中和度を下記表3のように変更したこと以外は、上記<結晶性樹脂粒子分散液(CA−1)の作製>と同様にして、結晶性樹脂粒子分散液(CA−2)〜(CA−5)、および(CB−1)〜(CB−5)を作製した。
なお、中和度は、中和に用いたアンモニアの量を、中和に用いるKOH量に換算した上で、下記数式(1)で算出される値を中和度(単位:%)とした。
<ビニル樹脂粒子分散液(VD−1)の作製>
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム 0.65質量部をイオン交換水 95質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム 0.47質量部をイオン交換水 18質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とし、下記モノマー混合液1を1時間かけて滴下後、80℃で2時間加熱後、攪拌することにより重合を行い、樹脂粒子〔1H〕を調製した:
<モノマー混合液1>
スチレン 30質量部
アクリル酸n−ブチル 7質量部
メタクリル酸 2質量部。
下記モノマー混合液2を攪拌しながら90℃に加熱し、この混合液に離型剤として炭化水素ワックスW−1(パラフィンワックス、n−パラフィン率:90%、分子量分布:26、融点:75℃)56質量部と、モノエステルワックスW−2(ベヘン酸ベヘニル、融点:73℃)56質量部とを溶解させ、離型剤を含有したモノマー混合液3を調製した:
<モノマー混合液2>
スチレン 280質量部
アクリル酸n−ブチル 78質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 5.5質量部。
攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム 5質量部をイオン交換水 780質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、上記離型剤を含有したモノマー混合液3を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)により1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。この分散液を、上記樹脂粒子〔1H〕39質量部(固形分換算)とイオン交換水 1000質量部とが添加され、攪拌回転数90rpm、内温82℃にて設定した攪拌装置、温度センサー、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた反応容器に投入した。次いで、この分散液に、過硫酸カリウム 4.55質量部をイオン交換水 87質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて1時間にわたって加熱攪拌することにより重合を行い、樹脂粒子〔1HM〕を得た。さらに、過硫酸カリウム 6.07質量部をイオン交換水 120質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、
スチレン 205質量部
アクリル酸n−ブチル 100質量部
メタクリル酸 18質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 4.4質量部
からなるモノマー混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱攪拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却して、離型剤とビニル樹脂粒子とを含有するビニル樹脂粒子分散液(VD−1)を得た。
得られたビニル樹脂粒子分散液(VD−1)中のビニル樹脂粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で230nmであり、ガラス転移点(Tg)は44℃であり、重量平均分子量(Mw)は34,000であった。
<ビニル樹脂粒子分散液(VD−2)〜(VD−10)の作製>
ビニル樹脂粒子分散液(VD−1)の作製方法において、添加する離型剤の量を下記表4のように変更したこと以外は、上記<ビニル樹脂粒子分散液(VD−1)の作製>と同様にして、ビニル樹脂粒子分散液(VD−2)〜(VD−10)を作製した。
<着色剤粒子分散液の作製>
ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部をイオン交換水 1600質量部に攪拌溶解した。この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック「リーガル(登録商標)330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、攪拌装置「クレアミックス(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子を分散して有する着色剤粒子分散液を調製した。この分散液中の着色剤粒子の分散径を、マイクロトラックUPA−150(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径で117nmであった。
[トナーの作製]
<トナー1の作製>
(凝集・融着工程)
攪拌装置、冷却管、および温度センサーを備えた5リットルのステンレス製反応器に、「結晶性樹脂粒子分散液(CA−2)」を30質量部(固形分換算)、「結晶性樹脂粒子分散液(CB−1)」を30質量部(固形分換算)、「ビニル樹脂粒子分散液(VD−1)」を380質量部(固形分換算)、および「着色剤粒子分散液」を40質量部(固形分換算)投入し、さらにイオン交換水 380質量部を投入して、攪拌しながら5(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。次いで、攪拌下、塩化マグネシウム・六水和物 40質量部をイオン交換水 40質量部に溶解した塩化マグネシウム水溶液を10分間かけて滴下した。内温を80℃まで昇温させ、マルチサイザー 3(ベックマン・コールター株式会社製、アパチャー径;50μm)を用いて粒径を測定し、体積基準のメジアン径で6.0μmに到達した時点で、塩化ナトリウム 160質量部をイオン交換水 640質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加えた。さらに、加熱攪拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス株式会社製)を用い、平均円形度が0.960になった時点で15℃/分の冷却速度で内温を50℃まで冷却し、その後8℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、「トナー母体粒子1」の分散液を得た。
(洗浄・乾燥)
凝集・融着工程にて生成したトナー母体粒子1の分散液を、バスケット型遠心分離機を用いて、固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、上記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)」に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子1」を作製した。
(外添剤処理工程)
上記の「トナー母体粒子1」100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量部および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナー1を作製した。
<トナー2〜トナー20の作製>
添加する結晶性樹脂分散液およびビニル樹脂分散液の種類および添加量を下記表5のように変更したこと以外は、上記<トナー1の作製>と同様にしてトナー2〜トナー20を作製した。なお、トナー18は、樹脂成分として、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有しないトナーである。トナー20は、樹脂成分として、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有しないトナーである。
トナー1〜20は、粒径が5.8〜6.5μmの範囲にあり、平均円形度が0.958〜0.965の範囲にあった。
<現像剤の作製>
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子5質量部とを、攪拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間攪拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成し、体積基準メジアン径40μmのキャリアを得た。
キャリアの体積基準メジアン径は、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「へロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定した。上記キャリアにトナー1〜32をそれぞれトナー濃度が7質量%になるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器械株式会社)に投入し、回転速度45rpmで30分間混合し、現像剤1〜20を作製した。
[評価]
<トナー母体粒子の断面観察>
下記に示す観察方法に従って、作製したトナー1〜トナー20の断面を観察した。比較例であるトナー18には糸状構造が観察されず、トナー19には構造体が観察されず、トナー20にはラメラ状構造が、それぞれ観察されなかった。また、トナー1〜17においては、トナー母体粒子100個のうち60%(60個)以上の粒子の断面に、構造体、糸状構造、およびラメラ状構造の3種類が確認された。さらに、トナー1〜トナー17の断面においては、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造以外の構造を有する結晶性樹脂は観察されなかった。構造体およびラメラ状構造のドメイン径、糸状構造の平均長径、ならびに構造体の断面積比率(B/(A+B+C+D))の測定結果を下記表7に示す。
≪トナー母体粒子断面の観察方法≫
・観察条件
装置:透過型電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子株式会社製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO)によって染色したトナー母体粒子の切片(切片の厚さ:60〜100nm)
加速電圧:30kV
倍率:10,000倍
観察条件:透過電子検出器、明視野像。
・染色トナー母体粒子の切片の作製方法
作製したトナー1を3質量部、ポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2質量%水溶液35質量部に添加して分散させた後、超音波(日本精機株式会社製、US−1200T)により25℃で5分間処理を行い、外添剤をトナー表面から取り除き、TEM観察用のトナー母体粒子を得た。他のトナーについても上記と同様にして外添剤を除去し、TEM観察用のトナー母体粒子を得た。
得られたトナー母体粒子1〜2mgを10mlサンプル瓶に広げるように入れ、下記に示す四酸化ルテニウム(RuO)蒸気染色条件下で処理後、光硬化性樹脂「D−800」(日本電子株式会社製)中に分散させ、UV光硬化させてブロックを形成した。次いで、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、上記のブロックから厚さ60〜100nmの超薄片状のサンプルを切り出した。
その後、切り出したサンプルを再び下記処理条件にて処理し、染色した。
・四酸化ルテニウム染色条件
四酸化ルテニウム処理は、真空電子染色装置VSC1R1(フィルジェン株式会社製)を用いて行った。装置手順に従い、染色装置本体に四酸化ルテニウムが入った昇華室を設置し、トナーまたは上記超薄切片を染色チャンバー内に導入後、四酸化ルテニウムによる染色条件として、室温(24〜25℃)、濃度3(300Pa)、時間10分の条件下で染色を行った。
・結晶構造の観察
染色後、24時間以内に透過型電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子株式会社製)にて観察した。
・糸状構造、構造体、ラメラ状構造の大きさ(ドメイン径、平均長径)の測定方法
トナー母体粒子の断面における構造体およびラメラ状構造の大きさ(ドメイン径)は、水平方向フェレ径(FERE H)として算出した。具体的には、上記と同様にして作製したトナー母体粒子の断面を、透過型電子顕微鏡JEM−2000FX(日本電子株式会社製)により、加速電圧80kVにて50000倍で撮影し、写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて、構造体およびラメラ状構造の水平方向フェレ径(FERE H)を測定した。また、同様にして、糸状構造の長径(長軸)は、水平方向フェレ径(FERE H)の代わりに、最大長(MX LNG)を測定した。構造体およびラメラ状構造の平均ドメイン径、ならびに糸状構造の平均長径の測定は、トナー100個のうち、構造体、糸状構造、およびラメラ状構造がすべて観察されたものについての算術平均値として算出した。
・構造体、糸状構造、ラメラ状構造、および離型剤の断面積比率
上述した構造体、糸状構造、ラメラ状構造の大きさの測定方法と同様の方法により測定した。トナー母体粒子の断面積に対する糸状構造の断面積比率A、トナー母体粒子の断面積に対する構造体の断面積比率B、トナー母体粒子の断面積に対するラメラ状構造の断面積比率C、およびトナー母体粒子の断面積に対する構造体を形成していない離型剤の断面積比率Dを、画像処理解析装置 LUZEX AP(株式会社ニレコ製)の「面積AREA」を用いて測定した。なお、面積は外側の輪郭で囲まれた領域(構造体は図2の間隔が狭い点線で囲った領域、糸状構造は図2の実線で囲った領域、ラメラ状構造は図2の間隔が広い点線で囲った領域)を測定した。この断面積比率についても、トナー母体粒子100個のうち、糸状構造、構造体、およびラメラ状構造が共に観察されたものについての算術平均値として算出した。
・画像形成方法
画像評価は、市販のカラー複合機「bizhub PRESS(登録商標)C6000(コニカミノルタ株式会社製)」において、定着温度、トナー付着量、およびシステム速度を自由に設定できるように改造した改造機Aを作製した。この改造機Aの現像装置に、上記で作製したトナー1〜20と現像剤とを順次装填して評価を行った。
・低温定着性(アンダーオフセット)
評価は、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、トナー付着量8g/mのベタ画像を定着させる定着実験を、定着下ローラの温度は定着上ベルトよりも20℃低く設定し、定着上ベルトの温度を110℃から5℃刻みで増加させるように変更しながら20℃まで繰り返し行った。この実験を、定着速度を300mm/secで実施した。A4サイズのNPI上質127.9g/m(日本製紙株式会社製)を用いて評価を行った。
アンダーオフセットとは、定着機を通過する際に、与えられた熱によるトナー層の溶融が不十分であるために記録紙等の転写材から剥離してしまう画像欠陥をいう。上記の方法で画像を形成した際に、アンダーオフセットが発生しない定着上ベルトの定着下限温度を評価し、低温定着性の指標とした。この定着下限温度が低ければ低い程、定着性が優れており、140℃未満を合格とした。
この低温定着性の評価を、温度50℃、相対湿度80%RHで24時間保管(HH保管)したトナーと、HH保管前のトナーとの両方について行った。
・光沢ムラ
評価は、常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)の環境下において、トナー付着量8g/mに設定して行った。記録媒体1枚の画像前半は半分がベタ画像で半分が印字無しで、記録媒体1枚の画像後半はベタ画像であるチャートを定着させる定着実験を行った。定着下ローラの温度は定着上ベルトよりも20℃低く設定し、定着上ベルトの温度を上記アンダーオフセット発生温度+20℃で行った。この実験を、定着速度を300mm/secで実施した。A3サイズのPODグロスコート128.0g/m(王子製紙株式会社製)を用いて評価を行い、画像前半と画像後半との光沢差について、目視でランク付けを行った。
この光沢ムラの評価を、50℃、相対湿度80%RHで24時間保管(HH保管)したトナーと、HH保管前のトナーとの両方について目視で行い、下記ランクに基づき評価した。n=2で評価を行い、評価の平均値を算出した。ランク2.5〜5が実用可能である。
ランク1:明らかに光沢差があり、使用できない
ランク2:画像を傾けてみると、光沢差が認識される
ランク3:光沢差がごくわずかに認識されるものの、なんとか使用できる
ランク4:光沢差はほとんど認識されない
ランク5:光沢差は全くない。
・画像濃度安定性
トナーをボトルに充填し、高温高湿(温度40℃、相対湿度60%RH)の環境下において該トナーボトルを12時間放置した後、実機に装填し、5cm×5cmのベタ画像を1000枚印字して、100枚おきに濃度を測定して最大と最小との差を比較した。濃度測定は、蛍光分光濃度計FD−7(コニカミノルタ株式会社製)を用い、Bk濃度を測定した。濃度差が3.5以下であれば、実用可能である。
実施例および比較例の各トナーの性状を下記表6に、トナーの評価結果を下記表7に、それぞれ示す。なお、表6における比率は、樹脂成分と離型剤との合計の質量を100質量%としたときの比率を表す。
<考察>
上記表7から明らかなように、トナーが含有する樹脂成分の主成分がビニル樹脂であり、トナー母体粒子の断面観察をした際に、離型剤とは接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂、結晶性樹脂と離型剤とが接触して形成されている構造体、および離型剤とは接触していないラメラ状構造を有する結晶性樹脂が共存しているトナー1〜トナー17は、高温高湿環境で保存した後でも、低温定着性を確保することができ、光沢ムラを抑制し、かつ高画質を得ることができることが分かった。
一方、比較例であるトナー18〜トナー20は、トナー母体粒子中に、離型剤とは接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂、結晶性樹脂と離型剤とが接触して形成されている構造体、および離型剤とは接触していないラメラ状構造を有する結晶性樹脂のいずれか1つが存在していない。このようなトナー18〜トナー20は、高温高湿環境保存後の低温定着性、光沢ムラ、および画像濃度安定性の少なくとも一つに問題があり、実用化可能なレベルにないことがわかった。
1 結晶性樹脂、
2 離型剤、
3 離型剤とは接触していない糸状構造を有する結晶性樹脂、
4 構造体、
5 離型剤とは接触していないラメラ状構造を有する結晶性樹脂、
6 ビニル樹脂、
10 ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂、
11 ビニル樹脂セグメント、
12 結晶性ポリエステル樹脂セグメント。

Claims (8)

  1. 少なくとも主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む樹脂成分と、離型剤と、を含有するトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記トナー母体粒子は、
    前記離型剤とは接触していない糸状結晶構造を有する前記結晶性樹脂と、
    前記結晶性樹脂と前記離型剤とが接触している構造体と
    前記離型剤とは接触していないラメラ状結晶構造を有する前記結晶性樹脂と、
    を含む、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記結晶性樹脂が結晶性ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記糸状結晶構造のドメインの平均長径が200nm以上2000nm以下である、請求項1または2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記構造体の平均ドメイン径が200nm以上2500nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記ラメラ状結晶構造の平均ドメイン径が100nm以上2000nm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂セグメントとビニル樹脂セグメントとが化学的に結合した、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
  7. 前記トナー母体粒子の断面積に対する前記糸状構造の断面積の比率をAとし、
    前記トナー母体粒子の断面積に対する前記構造体の断面積の比率をBとし、
    前記トナー母体粒子の断面積に対する前記ラメラ状構造の断面積の比率をCとし、
    前記トナー母体粒子の断面積に対する前記構造体を形成していない前記離型剤の断面積の比率をDとしたとき、
    B/(A+B+C+D)が0.35〜0.65である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
    結晶性樹脂粒子の水系分散液と、離型剤を含有するビニル樹脂粒子の水系分散液と、を混合し、
    前記結晶性樹脂粒子および前記ビニル樹脂粒子を凝集および融着させることを含む、静電潜像現像用トナーの製造方法。
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