[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る光波長変換シート、バックライト装置および画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。本明細書において、「シート」、「フィルム」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「フィルム」は、シートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられ、また「シート」はフィルムとも呼ばれ得るような部材も含む意味で用いられる。図1は本実施形態に係る光波長変換シートの概略構成図であり、図2は本実施形態に係る光波長変換シートの作用を示す図であり、図3および図8は本実施形態に係る他の光波長変換シートの概略構成図である。図4は本実施形態に係る他の光波長変換シートの斜視図であり、図5は図4の光波長変換シートのI−I線に沿った断面図であり、図6は本実施形態に係る他の光波長変換シートの斜視図であり、図7は図6の光波長変換シートのII−II線に沿った断面図であり、図9は本実施形態に係る光波長変換シートの模式的な製造工程図である。
<<<光波長変換シート>>>
図1に示される光波長変換シート10は、入射する光のうち一部の光の波長を他の波長に変換し、入射した光の他の一部および波長変換された光を出射させるシートである。光波長変換シート10は、単層構造となっている。すなわち、光波長変換シート10は、光波長変換層11のみからなり、光波長変換シート10はバリアフィルムを備えていない。
光波長変換シート10は、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率(WVTR:Water Vaper Transmission Rate)が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率(OTR: Oxygen Transmission Rate)が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっている。
水蒸気透過率はJIS K7129に準拠した手法で得られる数値である。水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(製品名「DELTAPERM」(Technolox社製)、製品名「PERMATRAN−W3/31」(MOCON社製))を用いて測定することができる。酸素透過率はJIS K7126に準拠した手法で得られる数値である。酸素透過率は、酸素ガス透過率測定装置(製品名「OX−TRAN 2/20」、「OX−TRAN 2/21」、いずれもMOCON社製)を用いて測定することができる。従来の光波長変換シートはバリアフィルムが形成されているので、光波長変換シート10は、従来の光波長変換シートに比べて水蒸気透過率および/または酸素透過率が高くなっている、すなわち、光波長変換シート10は、従来の光波長変換シートに比べて水分および/または酸素が透過しやすい。後述するように、光波長変換シートが、光波長変換層の他、光透過性基材や光学部材を備えている場合には、水蒸気透過率は光透過性基材や光学部材を含めた光波長変換シート全体での水蒸気透過率であり、酸素透過率は光透過性基材や光学部材を含めた光波長変換シート全体での酸素透過率である。ここで、本明細書における「バリアフィルム」とは、フィルム単体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)未満となり、かつ23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)未満となるフィルムを意味するものとする。バリアフィルムには、単層構造のフィルムのみならず、多層構造のフィルムも含まれる。
光波長変換シート10における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率は1g/(m2・24h)以上となっていてもよく、また光波長変換シート10における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が1cm3/(m2・24h・atm)以上となっていてもよい。
光波長変換シート10を60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験の前後において、光波長変換シート10の一方の表面10Aの全面に量子ドット15によって波長変換される所定の光量の光を照射して、光波長変換シート10の表面10Aとは反対側の面である他方の表面10Bの中央部から出射する光の輝度を測定したとき、耐久性試験前の光波長変換シート10の表面10Bの中央部から出射する光の輝度に対する耐久性試験後の光波長変換シート10の表面10Bの中央部から出射する光の輝度の変化率が±10%以内となっていることが好ましい。耐久性試験前の光波長変換シート10の表面10Bの中央部から出射する光の輝度に対する耐久性試験後の光波長変換シート10の表面10Bの中央部から出射する光の輝度の変化率は±5%以内であることが好ましい。
光波長変換シートの一方の表面の全面に照射される光としては、量子ドットによって波長変換される光を含んでいれば、量子ドットによって波長変換されない光を含んでいてもよい。光波長変換層が、例えば、青色光を緑色光に変換する量子ドットおよび青色光を赤色光に変換する量子ドットの両方を含む場合には、量子ドットによって波長変換される光としては、青色光を用いることができる。上記で耐久性試験の前後において光波長変換シートに所定の光量の光を照射するとしたのは、耐久性試験の前後において異なる光量の光を光波長変換シートに照射すると、正確な輝度変化率が測定できないので、正確な輝度変化率を測定するために、耐久性試験の前後においてある一定の光量の光を光波長変換シートに照射するとした。
耐久性試験の前後における輝度変化率は、輝度変化率をAとし、耐湿熱性試験前の光波長変換シート10の表面10Bの中央部から出射する光の輝度をBとし、耐湿熱性試験後の光波長変換シート10の表面10Bの中央部から出射する光の輝度をCとしたとき、下記式によって求めることができる。
A=(C−B)/B×100
耐湿熱性試験の前後における輝度は、光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光を、光波長変換シートの厚み方向から、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定される。
光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度は、光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度を直接的または間接的に測定することによって得ることが可能である。すなわち、光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度を直接測定することによって得てもよいが、光波長変換シートを光源およびレンズシート等を備えたバックライト装置に組み込み、光波長変換シートの他方の表面の中央部を介してバックライト装置の発光面の中央部から出射する光の輝度を測定することによって得てもよい。ただし、耐久性試験前の輝度の測定と耐久性試験後の輝度の測定は、同条件によって行うことは言うまでもない。
光波長変換シート10において、60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験を行ったとき、耐久性試験後の光波長変換シート10における周縁部の劣化幅が5mm以下となることが好ましく、3mm以下となることがより好ましい。ここで、光波長変換シートの周縁部の劣化幅は、以下のようにして求めるものとする。まず、耐久性試験後の光波長変換シートをバックライト装置に組み込み、バックライト装置の点灯時の発光面における輝度分布を、光波長変換シートの厚み方向から、2D色彩輝度計(製品名「UA−200」、トプコンテクノハウス社製)を用いて、測定する。そして、測定した発光面の輝度分布から、発光面の中央部の輝度に対して輝度が80%となる位置(以下、この位置を「輝度80%位置」と称する。)を求め、発光面における輝度80%位置に最も近い端から輝度80%位置までの最短距離を求める。そして、この最短距離をランダムに20箇所について求め、20箇所の最短距離の平均値を、光波長変換シートの周縁部の劣化幅とする。
光波長変換シート10の膜厚は、10μm以上150μm以下となっていることが好ましい。光波長変換シート10の膜厚がこの範囲であれば、バックライト装置の軽量化および薄膜化に適している。
光波長変換シート10の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて光波長変換シートの断面を撮影し、その断面の画像において光波長変換シートの膜厚を20箇所測定し、その20箇所の膜厚の平均値とする。これらの中でも、光波長変換シート10の膜厚がμmオーダーであることを考慮すると、SEMを用いることが好ましい。SEMの場合、加速電圧は30kV、倍率は1000〜7000倍とすることが好ましく、TEM又はSTEMの場合、加速電圧は30kV、倍率は5万〜30万倍とすることが好ましい。
光波長変換シート10の少なくとも一方の面は、光波長変換シート10と他の部材との貼り付きを防止するために、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上の凹凸面となっていることが好ましい。凹凸面は賦形処理によって形成することが可能であるが、アンチブロッキング剤を光波長変換シート10に含ませることによっても形成することが可能である。
光波長変換層11は、例えば、バインダ樹脂12と、バインダ樹脂12に分散された光波長変換粒子13とを含んでいる。なお、本実施形態では、光波長変換層は、バインダ樹脂12および光波長変換粒子13を含んでいるが、バインダ樹脂および量子ドットを含んでいればよく、光波長変換粒子を含んでいなくともよい。また、光波長変換シートまたは光波長変換層は、光散乱性粒子14やアンチブロッキング剤(図示せず)をさらに含んでいてもよい。本明細書においては、「光散乱」という用語は、光波長変換シートの内部における粒子に起因する光散乱を意味する。
光波長変換層11は、後述する量子ドット15の劣化抑制機能を有している。光波長変換層11に量子ドット15の劣化抑制機能を付与する手段としては、特に限定されないが、本実施形態のようにバリア粒子によって量子ドットを包むこと、または第2の実施形態のように蛍光X線分析により測定される光波長変換層中の硫黄、リン、および窒素からなる群から選択される1種以上の元素の含有量を0.5質量%以上にすることが挙げられる。
シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっている光波長変換シートにおいては、光波長変換層11が量子ドット15の劣化抑制機能を有しているか否かは、以下のように判断するものとする。まず、光波長変換シートを60℃、相対湿度90%の環境下に100時間放置する耐劣化性試験前の光波長変換シートの一方の表面の全面に量子ドットによって波長変換される所定の光量の光を照射して、光波長変換シートの表面とは反対側の面である他方の表面の中央部から出射する光の輝度を測定する。輝度は、光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光を、光波長変換シートの厚み方向から、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定される。次いで、光波長変換シートに、上記耐劣化性試験を行い、その後上記と同様の条件で、耐劣化性試験後の光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度を測定する。そして、耐劣化性試験前の光波長変換シートの中央部から出射する光の輝度に対する耐劣化性試験後の光波長変換シートの中央部から出射する光の輝度の変化率を求める。そして、この輝度変化率が±10%以内となっていれば、光波長変換層が量子ドットの劣化抑制機能を有していると判断する。
耐劣化性試験の前後における輝度変化率は、輝度変化率をDとし、耐劣化性試験前の光波長変換シートの中央部から出射する光の輝度をEとし、耐劣化性試験後の光波長変換シートの中央部から出射する光の輝度をFとしたとき、下記式によって求めるものとする。
D=(F−E)/E×100
上記においては、光波長変換層が量子ドットの劣化抑制機能を有しているか否かの判断を、光波長変換シート全体における耐劣化性試験前後の輝度変化率から行っている。すなわち、光波長変換層の少なくとも一方の面に何らかの基材やフィルム等が設けられた光波長変換シートであっても、光波長変換層からこの基材やフィルム等を剥離することなしに、光波長変換層の面にこの基材やフィルム等が設けられた光波長変換シート全体での輝度変化率から、光波長変換層が量子ドットの劣化抑制機能を有しているか否かの判断を行う。これは、以下の理由からである。まず、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっている光波長変換シートにおいては、水蒸気透過率および/または酸素透過率が高いので、何らかの対策を採らない限り、水分や酸素によって量子ドットが劣化してしまう。ここで、仮に光波長変換層の少なくとも一方の面に何らかの基材やフィルム等が設けられていたとしても、上記のような高い水蒸気透過率や酸素透過率を有する光波長変換シートにおいては、この基材やフィルム等も高い水蒸気透過率や酸素透過率を有するので、この基材やフィルム等によって、量子ドットの劣化を抑制することはできない。したがって、このような高い水蒸気透過率や酸素透過率を有する光波長変換シートにおいて、耐劣化性試験前後での輝度変化率が±10%以内であった場合、基材やフィルム等によって量子ドットの劣化が抑制されたのではなく、光波長変換層によって量子ドットの劣化が抑制されたので、輝度変化率を±10%以内となったと考えることができる。このため、光波長変換層単体から構成された光波長変換シートのみならず、光波長変換層の少なくとも一方の面に基材やフィルム等が設けられた光波長変換シートにおける耐劣化性試験前後の輝度変化率は、量子ドットの劣化抑制機能の有無を判断する指標として捉えることができる。したがって、たとえ、光波長変換層の少なくとも一方の面に基材やフィルム等が設けられた光波長変換シートであっても、光波長変換シートにおける耐劣化性試験前後の輝度変化率から、光波長変換層が量子ドットの劣化抑制機能を有しているか否かの判断をすることとした。
耐劣化性試験における光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度は、光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度を直接的または間接的に測定することによって得ることが可能である。すなわち、光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度を直接測定することによって得てもよいが、光波長変換シートを光源およびレンズシート等を備えたバックライト装置に組み込み、光波長変換シートの他方の表面の中央部を介してバックライト装置の発光面の中央部から出射する光の輝度を測定することによって得てもよい。
<<バインダ樹脂>>
バインダ樹脂12としては、特に限定されないが、硬化性バインダ樹脂前駆体の硬化物(重合物、架橋物)が挙げられる。本明細書における「硬化性バインダ樹脂前駆体」とは、硬化することによってバインダ樹脂の成分となる化合物を意味する。硬化性バインダ樹脂前駆体としては、重合性化合物(硬化性化合物)が挙げられる。重合性化合物は、重合可能な化合物であり、例えば、電離放射線重合性化合物(電離放射線硬化性化合物)および/または熱重合性化合物(熱硬化性化合物)が挙げられる。
<電離放射線重合性化合物>
電離放射線重合性化合物は、分子内に電離放射線重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における、「電離放射線重合性官能基」とは、電離放射線照射により重合反応し得る官能基である。電離放射線重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、光重合性化合物を重合する際に照射される電離放射線としては、可視光線、並びに紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマー、電離放射線重合性オリゴマー、または電離放射線重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマーと、電離放射線重合性オリゴマーまたは電離放射線重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
光重合性モノマーは、重量平均分子量が1000以下のものである。光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
光重合性オリゴマーは、重量平均分子量が1000を超え10000以下のものである。上記光重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、光重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光重合性プレポリマーは、重量平均分子量が1万を超えるものであり、重量平均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる光波長変換層の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
<熱重合性化合物>
熱重合性化合物は、分子内に熱重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。熱重合性官能基としては、例えば、エポキシ基やオキセタニル基等の環状エーテル基、ビニルエーテル基、イソシアネート基、グリシジル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
熱重合性化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノール化合物、尿素化合物、ジアリルフタレート化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、不飽和ポリエステル化合物、ウレタン化合物、エポキシ化合物、アミノアルキッド化合物、メラミン−尿素共縮合化合物、ケイ素化合物、ポリシロキサン化合物等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、硬化性や耐熱性の観点から、エポキシ化合物やウレタン化合物が好ましい。熱重合性化合物は、熱重合性モノマー、熱重合性オリゴマー、熱重合性樹脂(プレポリマー)、またはこれらの混合物であってもよい。
エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ハイドロキノン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルソクレゾールノボラック型エポキシ化合物、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、3官能型エポキシ化合物、テトラフェニロールエタン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ化合物、ポリプロピレングリコール型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物、複素環型エポキシ化合物などを使用できる。エポキシ化合物は、モノマーであってもよく、また樹脂であってもよい。
後述するバリア粒子16が無機酸化物粒子である場合には、バリア粒子16の表面には水酸基が存在し、またはシランカップリング剤による表面修飾によってメルカプト基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基からなる群から選択される1種以上の基が存在することもあるので、硬化性バインダ樹脂前駆体としては、水酸基やメルカプト基等と反応する官能基を有していることが好ましい。このような官能基としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、およびアリル基等が挙げられる。
<<光波長変換粒子>>
光波長変換粒子13は、光の波長変換を行う量子ドット15と、量子ドット15を包み、かつ水分および酸素の透過を抑制する光透過性のバリア粒子16とを含んでいる。量子ドット15とバリア粒子16との間には空気層は存在せず、量子ドット15の表面はバリア粒子16に密着している。
図2に示されるように、光波長変換シート10の入光面10Aから光を入射させた場合には、量子ドット15に入射した光L1は光L1とは異なる波長の光L2に変換されて、入光面10Aとは反対側の面である出光面10Bから出射する。一方、入光面10Aから光を入射させた場合であっても、量子ドット15間を通過する光L1は波長変換されずに、出光面10Bから出射する。
光波長変換粒子13は、1個あたり1個以上50個以下の量子ドット15を含んでいることが好ましく、1個あたり1個以上40個以下または1個以上35個以下の量子ドット15を含んでいることがより好ましい。光波長変換粒子1個に含まれる量子ドットの数が1個を下回ると、輝度が低くなるおそれがあり、また光波長変換粒子1個に含まれる量子ドットの数が50個を上回ると、量子ドット間のエネルギー移動に起因してクエンチングを起こす濃度消光により、発光効率が低下するおそれがある。1個の光波長変換粒子に含まれる量子ドットの個数は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いてランダムに20個の光波長変換粒子の断面を10万倍〜50万倍の倍率で撮影し、得られた断面の画像から1個の光波長変換粒子に含まれる量子ドットの個数を算出し、算出した量子ドットの個数の平均値を算出することで求めることができる。
光波長変換粒子13は、1個あたり2個以上の量子ドット15を含んでおり、かつ1個の光波長変換粒子13に含まれる量子ドット15における量子ドット15間の平均距離が1nm以上であることが好ましい。量子ドット間の平均距離が1nm未満であると、量子ドット間のエネルギー移動が起こり易く、発光効率が低下するおそれがある。量子ドット間の平均距離は、透過型電子顕微鏡または走査透過型電子顕微鏡を用いてランダムに20個の光波長変換粒子の断面を10万倍〜50万倍の倍率で撮影し、得られた断面の画像から量子ドット間の距離を算出し、算出した量子ドット間の距離の平均値を算出することで求めることができる。量子ドット15における量子ドット15間の平均距離の上限は100nm以下であることがより好ましい。
光波長変換粒子13の平均粒子径は、10nm以上500nm以下であることが好ましい。光波長変換粒子の平均粒子径が、10nm未満であると、量子ドットに対し充分にバリア性を付与することができず、量子ドットが酸化劣化等を起こすおそれがあり、また500nmを超えると、理由は定かではないがバリア粒子のバリア性が不安定になるおそれがある。光波長変換粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡または走査透過型電子顕微鏡による光波長変換シートの断面観察において光波長変換粒子20個の粒子径を測定し、その平均値を算出することで求めることができる。光波長変換粒子13の平均粒子径の下限は、20nm以上であることが好ましく、光波長変換粒子13の平均粒子径の上限は200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
<量子ドット>
量子ドット15は、量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)を有するナノサイズの半導体粒子である。量子ドット15の粒子径および平均粒子径は、例えば、1nm以上20nm以下となっている。量子ドット15は、励起源から光を吸収してエネルギー励起状態に達すると、量子ドット15のエネルギーバンドギャップに該当するエネルギーを放出する。よって、量子ドット15の粒子径又は物質の組成を調節すると、エネルギーバンドギャップを調節することができ、様々なレベルの波長帯のエネルギーを得ることができる。とりわけ、量子ドット15は、狭い波長帯で強い蛍光を発生することができる。
具体的には、量子ドット15は粒子径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットの粒子径を変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。例えば、量子ドットが後述するCdSe/ZnSから構成されている場合には、量子ドットの粒子径が2.0nm以上4.0nm以下の場合は青色光を発し、量子ドットの粒子径が3.0nm以上6.0nm以下の場合は緑色光を発し、量子ドットの粒子径が4.5nm以上10.0nm以下の場合は赤色光を発する。なお、上記においては、青色光を発する量子ドットの粒子径と緑色光を発する量子ドットの粒子径の範囲は一部において重複しており、また緑色光を発する量子ドットの粒子径と赤色光を発する量子ドットの粒子径の範囲は一部において重複しているが、同じ粒子径を有する量子ドットであっても、量子ドットのシェルの厚みによっても発光色が異なる場合があるので、何ら矛盾するものではない。
本明細書における「青色光」とは、380nm以上480nm未満の波長域を有する光であり、「緑色光」とは、480nm以上590nm未満の波長域を有する光であり、「赤色光」とは、590nm以上750nm以下の波長域を有する光である。
量子ドット15としては、1種類の量子ドットを用いてもよいが、粒子径または材料等が異なることにより、それぞれ単独の波長域の発光帯を有する2種類以上の量子ドットを用いることも可能である。光波長変換シート10は、図1に示されるように、量子ドット15として、第1の量子ドット15Aと、第1の量子ドット15Aとは異なる波長域の発光帯を有する第2の量子ドット15Bとを含んでいる。
量子ドットとして、それぞれ単独の波長域の発光帯を有する2種以上の量子ドットを用いる場合、光波長変換粒子1個あたり2種類以上の量子ドットを含んでいてもよく、また光波長変換粒子1個あたり1種類の量子ドットを含んでいてもよい。なお、青色光を緑色光に変換する量子ドットと、青色光を赤色光に変換する量子ドットとを1個の光波長変換粒子の中に含ませた場合には、青色光を緑色光に変換する量子ドットによって発生する緑色光が、青色光を赤色光に変換する量子ドットによって吸収されてしまう場合もあるので、この場合には、1個の光波長変換粒子の中に1種類の量子ドットのみを含ませることが好ましい。
上記したように光波長変換シート10から出射される光としては波長変換されない光も存在するので、光源として青色光を発する光源を用い、第1の量子ドット15Aとして青色光を緑色光に変換する量子ドットを用い、第2の量子ドット15Bとして青色光を赤色光に変換する量子ドットを用いた場合には、光波長変換シート10から、青色光、緑色光、赤色光が混合した光を出射させることができる。
量子ドット15は、所望の狭い波長域で強い蛍光を発生することができる。このため、光波長変換シート10を用いたバックライト装置は、色純度の優れた三原色の光で、表示パネルを照明することができる。この場合、表示パネルは、優れた色再現性を有することになる。
量子ドット15は、主に、約2nm以上10nm以下の半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。シェルはコアを保護する保護層としての機能を有する。
コアとなる材料としては、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶が挙げられる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。これらの中でも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒子径の制御性等の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
シェルは、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い半導体化合物を用いることで、量子ドットの発光効率を高めることができる。このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
量子ドット15の形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドット16の粒子径は、量子ドット15が球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
量子ドット15の粒子径、平均粒子径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡または走査透過型電子顕微鏡により得ることができる。量子ドットの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡または走査透過型電子顕微鏡による光波長変換層の断面観察により測定された20個の量子ドットの直径の平均値として求めることができる。また、量子ドットは粒子径によって発光色が変化するので、量子ドットの発光色の確認から量子ドットの粒子径を求めることも可能である。また、量子ドットの結晶構造、結晶子サイズについては、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒子径等に関する情報を得ることもできる。
<バリア粒子>
バリア粒子16は、量子ドット15を包み、光透過性を有し、かつ水分および酸素の透過を抑制するバリア性を有するものである。量子ドット15をバリア粒子16で包むことにより、量子ドット15が水分や酸素に接触することを抑制できるので、量子ドット15が水分や酸素によって劣化することを抑制できる。これにより、バリア層を設けなくとも量子ドット15の発光効率の低下を抑制できる。本明細書において、「光透過性」とは、光を透過させる性質を有することを意味し、「光透過性」には透明も含まれる。本発明においては量子ドットがバリア粒子で包まれているので、光波長変換シートから出射される量子ドットからの発光を確認することができれば、バリア粒子は光透過性を有すると言える。量子ドットの発光は蛍光光度計を用いて確認することができる。「バリア性」は、光波長変換シートにおいて、40℃、相対湿度90%環境下に300時間放置する耐久性試験を行い、耐久性試験前後における光波長変換シートの発光ピーク強度の低下率が10%以内であれば、バリア粒子はバリア性があると判断することができる。ただし、光波長変換シートを透過した光源からの光は、光波長変換シートの発光により生じた光ではないので、光波長変換シートを透過した光源からの光のピーク強度は光波長変換シートの発光ピーク強度には含めないものとする。また、光波長変換シートから出射される光の発光ピークが複数存在する場合において、「発光ピーク強度の低下率が10%以内である」とはそれぞれの発光ピークにおける強度の低下率が10%以内であることを意味する。耐久性試験前後における光波長変換シートの発光ピークの低下率をGとし、耐久試験前の光波長変換シートの発光ピーク強度をHとし、耐久試験後の光波長変換シートの発光ピーク強度をIとすると、耐久性試験前後における光波長変換シートの発光ピークの低下率(G)は、以下の式によって求められる。
G=(H−I)/H×100
バリア粒子16の形成材料としては、光透過性を有し、かつバリア性が得られるものであれば特に限定されないが、例えば、無機酸化物が挙げられる。具体的には、上記無機酸化物としては、例えば、シリカ等の酸化ケイ素(SiOx)、アルミナ等の酸化アルミニウム(AlnOm)、酸化チタン(TiO2)、酸化イットリウム、酸化ホウ素(B2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化窒化炭化ケイ素(SiOxNyCz)等が挙げられ、これらの中でも、酸素や水蒸気の透過性が低いという観点からガラス等のシリカまたはアルミナが好ましい。これらの材料は、単独で用いられてもよく2種以上を組み合わせて用いられてもよい。また、酸化物半導体を除く無機酸化物を用いることも可能である。
量子ドット15がCdを含んでいる場合、量子ドット15に含まれるCdの溶出を防ぐために、バリア粒子16の厚み(量子ドットの表面からバリア粒子の外表面までの距離)が2nm以上であることが好ましく、4nm以上であることがより好ましい。光波長変換粒子13の平均粒子径が50nm程度である場合には、バリア粒子16の厚みは10nm以上とすることも可能である。また、光波長変換粒子13の平均粒子径が100nm程度である場合には、バリア粒子16の厚みは20nm以上とすることも可能である。バリア粒子の厚みは、透過型電子顕微鏡観察において量子ドットを含まない外側の部分として容易に測定できる。バリア粒子の周縁の位置によって厚みが異なる場合には、バリア粒子周縁全体の平均によりバリア粒子の厚みとする。
バリア粒子16は、バインダ樹脂12との密着性を向上させる観点から、バインダ樹脂12と化学結合していることが好ましい。この化学結合は、シランカップリング剤で表面修飾されたバリア粒子16によって行うことが可能である。
シランカップリング剤としては、用いる硬化性バインダ樹脂前駆体の種類にもよるが、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基およびイソシアネート基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有するものを使用することが可能である。硬化性バインダ樹脂前駆体として(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いる場合には、カップリング剤は、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびスチリル基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有することが好ましい。また、硬化性バインダ樹脂前駆体としてエポキシ基、イソシアネート基、および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の基を有する化合物を用いる場合には、シランカップリング剤はエポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有することが好ましい。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ビニル基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。スチリル基含有シランカップリング剤としては、例えば、p−スチリルトリメトキシシランが挙げられる。
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメオキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩などが挙げられる。
バリア粒子16をシランカップリング剤で表面処理する方法としては、バリア粒子16にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、バリア粒子16を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
<光散乱性粒子>
光散乱性粒子14は、光波長変換シート10に進入した光を散乱させることによって光の進行方向を変化させる作用を有する粒子である。
光散乱性粒子14の平均粒子径は、量子ドット15の平均粒子径の20倍以上2000倍以下であることが好ましく、50〜1000倍であることがより好ましい。光散乱性粒子の平均粒子径が量子ドットの平均粒子径の20倍未満であると、光波長変換層において充分な光散乱性能が得られないことがあり、光散乱性粒子の平均粒子径が量子ドットの平均粒子径の2000倍を超えると、添加量が同じであっても光散乱性粒子の数が少なくなるため、散乱点の数が減り充分な光散乱効果が得られない。なお、光散乱性粒子の平均粒子径は、上述した量子ドットの平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
具体的には、光散乱性粒子14の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.3μm以上5μm以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、光波長変換シートの光波長変換効率が不充分となることがあり、充分な光散乱性を出すためには光散乱性粒子の添加量を多くする必要がある。一方、光散乱性粒子の平均粒子径が10μmを超えると、添加量(質量%)が同じであっても光散乱粒子の数が少なくなるため、散乱点の数が減り充分な光散乱効果が得られない。
光散乱性粒子14とバインダ樹脂12の屈折率差の絶対値は、充分な光散乱を得る観点から、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。なお、光散乱性粒子18の屈折率とバインダ樹脂12の屈折率とは、いずれの方が大きくてもよい。ここで、光波長変換層に含有させる前の光散乱性粒子の屈折率の測定方法としては、例えば、ベッケ法、最小偏角法、偏角解析、モード・ライン法、エリプソメトリ法等によって測定することができる。また、バインダ樹脂の屈折率は、光波長変換層を形成する塗液から量子ドットおよび光散乱性粒子を含まないものを塗布、乾燥、硬化させたホストマトリクスのみの硬化膜をアッベ屈折計で測定することにより得ることができる。また、光波長変換層中のバインダ樹脂(硬化物)、光散乱性粒子の屈折率の測定方法としては、例えば、硬化作製した光波長変換層中から光散乱性粒子のかけら、あるいはバインダ樹脂のかけらをなんらかの形で取り出したものについてベッケ法を用いることができる。このほか、位相シフトレーザー干渉顕微鏡(エフケー光学研究所製の位相シフトレーザー干渉顕微鏡や溝尻光学工業所製の二光束干渉顕微鏡等)を用いてバインダ樹脂と光散乱性粒子との屈折率差を測定することができる。なお、バインダ樹脂が、上述する(メタ)アクリレートとそれ以外の樹脂とを含有する場合、バインダ樹脂の屈折率とは、光波長変換粒子を除いた含有する全ての樹脂成分による硬化物の平均屈折率を意味する。
光散乱性粒子14の形状は特に限定されず、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状等)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状等)、平板状、りん片状、不定形状等が挙げられる。なお、光散乱性粒子14の粒子径は、光散乱性粒子の形状が球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
光散乱性粒子14は、光散乱性粒子14をバインダ樹脂12中に強固に固定する観点から、バインダ樹脂12と化学結合していることが好ましい。この化学結合は、シランカップリング剤で表面処理された光散乱性粒子を用いることによって実現できる。シランカップリング剤としては、バリア粒子16の欄で説明したシランカップリング剤と同様のものが挙げられる。
光散乱性粒子14は、無機粒子および/または有機粒子であることが好ましく、具体的には、上記バインダ樹脂との屈折率差の観点から、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)粒子、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、MgO粒子、Al2O3粒子、TiO2粒子、BaTiO3粒子、Sb2O5粒子、SiO2粒子、MgF2粒子、ZrO2粒子、ZnO粒子、アクリル樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、およびウレタン樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
光散乱性粒子14が無機粒子である場合、光波長変換シート10への入射光を好適に散乱させることが可能となり、該入射光に対する光波長変換効率の向上を好適に図ることが可能となる。特に、光散乱性粒子14はAl2O3粒子、TiO2粒子、BaTiO3粒子、Sb2O5粒子及びZrO2粒子からなる群より選択される少なくとも1種であること好ましい。光波長変換シート10による入射光に対する光波長変換効率の向上をより好適に図ることができることから、光散乱性粒子14は、2種以上の材料からなるものであってもよい。
光波長変換層11中の光散乱性粒子14の含有量は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の含有量が1質量%未満であると、光散乱効果が充分に得られないおそれがあり、また、光散乱性粒子の含有量が50質量%を超えると、ミー散乱が起こり難くなるので、光散乱効果を充分に得られないおそれがあり、さらに光散乱性粒子が多すぎるために加工性が低下するおそれがある。なお、硬化物である光波長変換層中の光散乱性粒子(無機の場合)の質量%は、光波長変換層中の光波長変換粒子の質量%を算出する方法と同様の方法によって概略算出することができる。すなわち、上記と同様に、光波長変換シートから光波長変換層の一部をサンプリングし、次いでサンプリングした部分に含まれるバインダ樹脂を溶剤に溶解または燃焼により灰化させて、バインダ樹脂の成分を除去する。その後、残った光波長変換粒子と光散乱性粒子の成分を分離し、分離した光散乱性粒子の成分の質量をそれぞれ測定する。そして、サンプリングした光波長変換層の一部の質量と光散乱性粒子の成分の質量に基づいてサンプリングした光波長変換層の一部に含まれる光散乱性粒子の質量の割合を算出する。
<アンチブロッキング剤>
アンチブロッキング剤は、光波長変換シート10の表面に凹凸を付けて、光波長変換シート10と他の部材との貼り付きを防止する成分である。アンチブロッキング剤としては、例えば、平均一次粒子径100〜1000nmの粒子であって、シリカ等の無機化合物の微粒子及び高密度ポリエチレンや、ポリスチレン、ポリスチレンアクリル等の有機化合物の微粒子を用いることができる。
<<光波長変換粒子の製造方法>>
光波長変換粒子13は、例えば、ゾルゲル法を用いて作製することができる(特許第5682069号参照)。具体的には、まず、量子ドットを用意し、量子ドットに、適量の例えばテトラエトキシシラン等の金属アルコキシド(1)を添加して、適度に加水分解させることで、量子ドットの表面を金属アルコキシド(1)の加水分解物で置換する。このような液体を有機溶剤Aとする。一方で、水溶液中に例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の金属アルコキシド(2)を分散させ、部分的に加水分解することで水溶液Bを得る。ここで、金属アルコキシド(2)は金属アルコキシド(1)よりも加水分解速度が遅いものを選択する。そして、有機溶液Aと水溶液Bを混合することで、金属アルコキシド(1)が覆われた量子ドットの表面にさらに金属アルコキシド(2)の層が形成される。水に触れた量子ドットは、その表面の金属アルコキシドの加水分解が進むので親水性となり、水相に移動する。このとき、量子ドット同士が集合体を作る。表面付近にある金属アルコキシド(2)は金属アルコキシド(1)よりも加水分解の速度が遅いので、水相に移動したときに量子ドットの表面のアルコキシドが一気に脱水縮合し、大きな塊となることを防ぐ。水相中の集合体にさらにシリカガラス層等の無機酸化物層を堆積させる。これは、通常のストーバー法により、アルカリ性領域でわずかな量の金属アルコキシド(3)を、大量の水とアルコールで加水分解し、核となる量子ドットの集合体に堆積させることで行える。これにより、光波長変換粒子13を得ることができる。
<<<他の光波長変換シート>>>
光波長変換シートは、図3に示されるように、光波長変換層11の他、光波長変換層11を支持する光透過性基材21をさらに備える光波長変換シート20であってもよい。光透過性基材21を備えることにより、光波長変換シート20の強度を高めることができる。光波長変換シート20は、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっている。光波長変換シート20における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率は1g/(m2・24h)以上となっていてもよく、また光波長変換シート20における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が1cm3/(m2・24h・atm)以上となっていてもよい。
<<光透過性基材>>
光透過性基材21としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、量子ドット15を水分や酸素からより一層保護するために、量子ドット15を水分や酸素から保護する機能を有するものであることが好ましい。
光透過性基材21の厚みは、特に限定されないが、10μm以上150μm以下であることが好ましい。光透過性基材の厚みが、10μm未満であると、光波長変換シートのアッセンブリ、取扱い時における皺や折れが発生するおそれがあり、また150μmを超えると、ディスプレイの軽量化および薄膜化に適さないおそれがある。光透過性基材21の厚みのより好ましい下限は50μm以上、より好ましい上限は125μm以下である。
光透過性基材21の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて光透過性基材の断面を撮影し、その断面の画像において光透過性基材の厚みを20箇所測定し、その20箇所の厚みの平均値とする。
光透過性基材21の構成材料としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン、またはシクロオレフィンポリマー(COP)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。光透過性基材21の構成材料としては、好ましくは、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)が挙げられる。
光透過性基材21は、単一の基材から構成されていてもよいが、複数の基材から構成される積層基材であってもよい。このような積層基材は、用途に応じて、同種の構成材料の層からなる複数の層から構成されていてもよく、異なる種類の構成材料の層からなる複数の層から構成されていてもよい。
光波長変換シートは、図4および図5に示されるように、レンズ部32を備える光波長変換層31のみからなる光波長変換シート30であってもよい。光波長変換層31がレンズ部32を備えることにより、光波長変換シート30が、光波長変換機能の他、レンズ機能を有するので、レンズシートを1枚省略することが可能であり、更なる薄型化および製造コストの低減を図ることができる。
光波長変換シート30は、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっている。光波長変換シート30における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率は1g/(m2・24h)以上となっていてもよく、また光波長変換シート30における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が1cm3/(m2・24h・atm)以上となっていてもよい。また、光波長変換シート30の光波長変換層31は、量子ドット15の劣化抑制機能を有している。
レンズ部32は光波長変換シート30の一部である。レンズ部32としては、集光性を有するレンズ部が挙げられる。光波長変換シート30の出光面30Aは、レンズ部32のレンズ面32Aとなっているが、光波長変換シートがレンズ部を備える場合、光波長変換シートの入光面および出光面のいずれかがレンズ面となっていればよい。本明細書において、「レンズ面」とは、レンズ部においてレンズ作用(屈折作用)を奏する面のことをいう。
レンズ部32は、複数の単位レンズ33を備えている。図3および図4に示されるように単位レンズ33は光波長変換シート30と同様の構成となっている本体部33上に隙間をあけることなく並べられている。図3に示されるように単位レンズ33は、単位レンズ33の配列方向ADと交差する方向に線状、とりわけ本実施の形態においては直線状に、延びている。また本実施の形態において、多数の単位レンズ33は、互いに平行に延びている。また、単位レンズ33の長手方向LDは、光波長変換シート30における単位レンズ33の配列方向ADと直交している。
単位レンズは、三角柱状であってもよいし、波状や例えば半球状のような椀状であってもよい。具体的には、単位レンズ部としては、単位プリズム部、単位シリンドリカルレンズ部、単位マイクロレンズ部等が挙げられる。本実施形態では、単位レンズとして、出光側に向けて幅が狭くなる三角柱状の単位プリズム部について説明する。図4に示される光波長変換シート30の本体部34のシート面の法線方向NDおよび単位レンズ33の配列方向ADの両方に平行な断面(光波長変換シートの主切断面とも呼ぶ)の形状は、出光側に突出する三角形形状となっている。とりわけ、正面方向輝度を集中的に向上させるという観点から、主切断面における単位レンズ33の断面形状は二等辺三角形形状であるとともに、等辺の間に位置する頂角が本体部34の出光側面34Aから出光側に突出するように、各単位レンズ33が構成されている。
単位レンズ33は、光の利用効率を向上させる観点から、80°以上100°以下の頂角を有することが好ましく、約90°の頂角を有することがより好ましい。ただし、光波長変換シートの巻き取りの際における単位レンズの先端の破損を考慮すると、単位レンズ33の先端は曲面であってもよい。
光波長変換シート30の寸法は、一例として、以下のように設定され得る。まず、単位レンズ33の具体例として、単位レンズ33の配列ピッチ(図示された例では、単位レンズ33の幅に相当)を10μm以上200μm以下とすることができる。ただし、昨今においては、単位レンズ33の配列の高精細化が急速に進んでおり、単位レンズ33の配列ピッチを10μm以上50μm以下とすることが好ましい。また、光波長変換シート30のシート面への法線方向NDに沿った本体部34からの単位レンズ33の突出高さを5μm以上100μm以下とすることができる。さらに、単位レンズ33の頂角を60°以上120°以下とすることができる。
光波長変換シートは、図6および図7に示されるように、光波長変換層11の他、光学部材41をさらに備える光波長変換シート40であってもよい。図6および図7に示されるように、光波長変換シート40は、光波長変換層11と、光波長変換層11の片面側に配置された光学部材41と、光波長変換層11と光学部材41を貼り合わせるための接着層42とを備えている。光波長変換層11と光学部材41は接着層42を解して接合されているので、光波長変換層11と光学部材41は空気層を介さずに一体化されている。本実施形態においては、光波長変換層11の片側のみに光学部材41が設けられているが、光波長変換層の両側に光学部材が設けられていてもよい。また、本実施形態においては、光波長変換層11と光学部材41が接着層42を介して貼り合わせられているが、光学部材に光波長変換層用組成物を直接塗布、硬化させることによって光波長変換層と光学部材とを直接接合してもよい。
本明細書において、「光学部材」とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性など)を有する部材を意味し、光学的特性を有するシート(フィルム)状ないし板状の部材であれば、特に限定されない。光学部材としては、レンズシート、導光板および光拡散板等の光学板、反射型偏光分離シート、偏光板等が挙げられる。なお、光学部材が、光波長変換シートの両面側に設けられている場合には、光学部材はそれぞれ別の光学的特性を有する光学部材であってもよい。本実施形態においては、光学部材41が、光透過性基材43と、光透過性基材43の一方の面に設けられ、かつ複数の単位レンズ45を有するレンズ層44とを備えるレンズシートである例について説明する。レンズシートの単位レンズの形状は、三角柱状であってもよく、また波状や、半球状のような椀状であってもよい。そのような単位レンズ形状を有するレンズシートとしては、プリズムシート、レンチキュラーレンズシート、マイクロレンズシート等が挙げられる。
光波長変換シート40は、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっている。光波長変換シート40における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率は1g/(m2・24h)以上となっていてもよく、また光波長変換シート40における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が1cm3/(m2・24h・atm)以上となっていてもよい。
<<光学部材>>
レンズシートとしての光学部材41は、入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させる機能を有する。本実施形態においては、図7に示されるように、入射した光L3の進行方向を変化させて出光側から出射させて、正面方向の輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)とともに、入射した光L4を反射させて、光波長変換層11側に戻す機能(再帰反射機能)を有している。光制御シート41は、上記したように、光透過性基材43と、光透過性基材43の一方の面に設けられ、かつ複数の単位レンズ45を有するレンズ層44とを備えている。
<光透過性基材>
光透過性基材43としては、光透過性基材21と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
<レンズ層>
レンズ層44は、複数の単位レンズ45を備えているが、その他、シート状の本体部46を備えている。複数の単位レンズ45は、本体部46の出光側に並べて配置されている。
本体部46は、単位レンズ45を支持するシート状部材として機能する。図7に示されるように、本体部46の出光側面46A上には、単位レンズ45が隙間をあけることなく並べられている。したがって、光学部材制御シート41の出光面は、レンズ面44Aによって形成されている。その一方で、図7に示すように、本実施の形態において、本体部46は、出光側面46Aに対向する入光側面46Bとして、レンズ層44の入光側面をなす平滑な面を有している。単位レンズ45は、単位レンズ33と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
光波長変換シートは、図8に示されるように、光波長変換層11と、光波長変換層11の両面を覆うオーバーコート層51、52とを備える光波長変換シート50であってもよい。本実施形態においては、光波長変換層11の両面にオーバーコート層51、52が形成されているが、オーバーコート層は光波長変換層の少なくとも一方の面に形成されていれば、光波長変換層11の両面に形成されていなくともよい。なお、光波長変換層の一方の面のみにオーバーコート層が設けられている場合、光波長変換層の他方の面には光透過性基材が設けられていてもよい。
光波長変換シート50は、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっている。光波長変換シート50における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率は1g/(m2・24h)以上となっていてもよく、また光波長変換シート50における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が1cm3/(m2・24h・atm)以上となっていてもよい。
<<オーバーコート層>>
オーバーコート層51、52は、光波長変換層11の表面を覆い、かつ塗工によって形成された樹脂からなる層である。オーバーコート層51、52上に光拡散層等の他の層が形成されていてもよい。
オーバーコート層51、52は、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐために設けられているものである。このようなオーバーコート層51、52を光波長変換層11の少なくとも一方の面に設けることにより、量子ドット15を水分や酸素から保護することができ、また光透過性基材を光波長変換層11の少なくとも一方の面に設けるよりも、光波長変換シートの厚みを薄くできる。
オーバーコート層51、52は、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐ機能以外に、何らかの機能を有していてもよい。具体的には、オーバーコート層51、52は、例えば、アンチブロッキング性、光拡散性、帯電防止性、および反射防止性等の少なくともいずれかの機能を有する層であってもよい。オーバーコート層51、52が、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐ機能およびその他何らかの機能を有する層である場合、オーバーコート層51、52には、何らかの機能を有するための材料が添加されていてもよい。
オーバーコート層51、52の膜厚は、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐとともに、光波長変換シートを薄型化する観点から、0.1μm以上100μm以下となっていることが好ましい。オーバーコート層の膜厚は、光透過性基材21の厚みと同様の手法によって測定することができる。オーバーコート層51、52の膜厚の下限は1μm以上であることがより好ましく、上限は50μm以下であることがより好ましい。
オーバーコート層51、52は、スクラッチ試験において垂直力10μN以上および/または水平力−5μN以下となる硬度を有することが好ましい。オーバーコート層51、52がこのような硬度を有している場合には、オーバーコート層51、52は緻密な膜となるので、光波長変換層11を大気暴露から防ぐ能力が高い。スクラッチ試験における垂直力および水平力は、ナノインデンテーション装置(製品名「TI950 TriboIndenter」、HYSITRON(ハイジトロン)社製)を用いて、オーバーコート層の断面からオーバーコート層の内部方向に圧子(Cube Corner:Ti037_110410(12))を50nm押し込み、その深さを一定として、30秒間この圧子を移動速度4μm/minで水平方向に移動させた際に測定される垂直力(荷重)および水平力の平均値をそれぞれ求め、さらにこのスクラッチ試験を5回繰り返すことによって求めた垂直力の5つの平均値の平均値(5回平均値)および水平力の5つの平均値の平均値(5回平均値)とする。垂直力は数値が大きいほど、水平力は数値が小さいほどオーバーコート層51、52の硬度が高い。光波長変換層11を大気暴露から防ぐ能力を高める観点から、オーバーコート層51、52のスクラッチ試験における垂直力は15μN以上であることがより好ましく、また水平力は−8μN以下であることがより好ましい。
オーバーコート層51、52は、上記硬度を有すれば、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ化合物、イソシアネートおよびポリオールの組み合わせ、金属アルコキシド、ケイ素含有樹脂、水溶性高分子、またはこれらの混合物を含むオーバーコート層用組成物を用いて形成することが可能である。これらの中でも、オーバーコート層51、52は、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐ観点から、アクリル酸亜鉛、アルコキシシランの加水分解生成物、ポリビニルアルコール、ポリシラザン、またはこれらの混合物を含むオーバーコート層用組成物を用いて形成されることが好ましい。
なお、光波長変換シート20、30、40、50においても、60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験の前後において、光波長変換シート20、30、40の一方の表面の中央部に量子ドットによって波長変換される所定の光量の光を照射して、光波長変換シート20、30、40、50の他方の表面の中央部から出射する光の輝度を測定したとき、耐久性試験前の光波長変換シート20、30、40、50の他方の表面の中央部から出射する光の輝度に対する耐久性試験後の光波長変換シート20、30、40、50の他方の表面の中央部から出射する光の輝度の変化率が±10%以内となっていることが好ましく、±5%以内であることがより好ましい。また、光波長変換シート20、30、40、50においても、60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験を行ったとき、耐久性試験後の光波長変換シート20、30、40、50における周縁部の劣化幅が5mm以下となることが好ましく、3mm以下となることがより好ましい。
<<<光波長変換シートの製造方法>>>
光波長変換シート10は、例えば、以下のようにして作製することができる。図9は本実施形態に係る光波長変換シートの模式的な製造工程図である。まず、図9(A)に示されるように、基材55の一方の面に、硬化性バインダ樹脂前駆体56および硬化性バインダ樹脂前駆体56中に分散した光変換波長粒子13を含む光波長変換層用組成物を塗布し、乾燥させて、光波長変換層用組成物の塗膜57を形成する。基材52としては、光透過性基材であってもよいが、光透過性基材でなくともよい。光波長変換層用組成物には重合開始剤を含ませることが好ましい。
重合開始剤は、光または熱により分解されて、ラジカルやイオン種を発生させて硬化性樹脂前駆体の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。光波長変換層用組成物に用いられる重合開始剤は、光重合開始剤(例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤)、熱重合開始剤(例えば、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤)、またはこれらの混合物が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASFジャパン社製)、NCI−930(ADEKA社製)、SPEEDCURE EMK(日本シーベルヘグナー社製)、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−170(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。これらの中でも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤が好ましい。高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記熱ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、パーブチルO、パーヘキシルO、パーブチルPV(いずれも日油社製)、V−30、V−501、V−601、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
上記熱カチオン重合開始剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等の各種オニウム塩類等が挙げられる。上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトンCP−66、アデカオプトンCP−77(いずれもADEKA社製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L(いずれも三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)等が挙げられる。
そして、図9(B)に示されるように、光波長変換層用組成物の塗膜57に電離放射線を照射して、または熱を加えて、塗膜57を硬化させて、光波長変換層を形成する。
最後に、図9(C)に示されるように、光波長変換層11から基材55を剥離する。これにより、光波長変換層11のみからなる光波長変換シート10が得られる。
図3に示される光波長変換シート20は、基材55として光透過性基材を用い、かつ光波長変換層11形成後に基材55を剥離せずにそのまま残存させることにより得ることができる。
図4に示される光波長変換シート30は、例えば、ドラムプリンティングシステム方式(DPS方式)によって形成することが可能である。すなわち、単位レンズ33の形状に対し逆形状の凹部を有し、かつ回転する成形用型に光波長変換層用組成物を塗工充填し、次いでこれに基材55を供給して型面の光波長変換層用組成物の上から成形用型に押圧する。そして、押圧した状態で、基材51を介して光波長変換層用組成物に紫外線等の電離放射線を照射し、または光波長変換層用組成物に熱を加えて、光波長変換層用組成物を硬化させる。そして、硬化させた光波長変換層用組成物を基材55と共に回転する成形用型から剥離する。これにより、基材55上にレンズ部32有する光波長変換層31が形成される。最後に、光波長変換層31から基材51を剥離する。これにより、レンズ部32を有する光波長変換層31のみからなる光波長変換シート30が得られる。
図6に示される光波長変換シート40は、光波長変換層11形成後に、光波長変換層11における基材55側の面とは反対側の面に、接着層42を介して光学部材41を貼り合わせて、その後光波長変換層11から基材55を剥離することによって得ることができる。なお、基材51が光透過性基材である場合には、基材55を剥離せずにそのまま残存させておいてもよい。また、接着層42を用いずに、光学部材41の光透過性基材43におけるレンズ層44側の面とは反対側の面に光波長変換層用組成物を直接塗布し、光波長変換層用組成物に電離放射線を照射し、または光波長変換層用組成物に熱を加えて、光波長変換層用組成物を硬化させてもよい。この場合、光学部材が基材となる。さらに、基材55の上に塗布した光波長変換層用組成物の塗膜53の塗布面に光学部材41を配置して、その後、塗膜57を硬化させてもよく、また塗膜57を硬化させた後に基材55を剥離してもよい。また、光波長変換層の両面に光学部材を貼り合わせる場合には、光波長変換層における基材側の面とは反対側の面(第1の面)に、接着層を介して光学部材を貼り合わせる前または貼り合わせた後に、光波長変換層から基材を剥離して、基材の剥離後に光波長変換層の第1の面とは反対側の第2の面に接着層を介して上記光学部材とは異なる光学部材を貼り合わせることによって、光波長変換層の両面に光学部材を貼り合わせてもよい。
図8に示される光波長変換シート50は、光波長変換シート10の少なくとも一方の面にオーバーコート層用組成物を塗布して、オーバーコート層用組成物の塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることによって形成することが可能である。
また、光波長変換シート50は、次のような方法によっても形成することが可能である。まず、2枚の基材の一方の面にオーバーコート層用組成物を塗布して、オーバーコート層用組成物の塗膜を形成する。塗膜を形成した後、それぞれのオーバーコート層用組成物の塗膜に電離放射線を照射して、または熱を加えて、オーバーコート層を形成する。オーバーコート層を形成した後、一方の基材に形成されたオーバーコート層上に光波長変換層用組成物を塗布して、光波長変換層用組成物の塗膜を形成する。次いで、光波長変換層用組成物の塗膜に他方の基材に形成されたオーバーコート層が接するように光波長変換層用組成物の塗膜上に他方の基材を配置する。次いで、この状態で、光波長変換層用組成物の塗膜に電離放射線を照射して、または熱を加えて、光波長変換層を形成するとともに、光波長変換層と、オーバーコート層とを一体化させる。最後に両方の基材を剥離すれば、光波長変換シート50が得られる。
本実施形態によれば、光波長変換シート10、20、30、40、50における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または光波長変換シート10、20、30、40、50における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっているので、光透過性基材およびバリア層からなるバリアフィルムを備えていない。したがって、バリアフィルムに起因するピンホールやクラックが発生することがなく、これにより、点状の輝度欠点を抑制することができる。また、光波長変換シート10、20、30、40、50においては、光波長変換層11、31が量子ドット15の劣化抑制機能を有しているので、バリアフィルムを備えていなくとも、量子ドット15の劣化を抑制できる。さらに、光波長変換シート10、20、30、40、50においては、バリアフィルムを備えていないので、薄型化および製造コストの低減を図ることができる。
通常、光波長変換シートは、光波長変換層の両面にバリアフィルムを設けた状態で所望の大きさに切断するので、切断された光波長変換シートの側面にはバリアフィルムが存在せず、露出している。このため、光波長変換シートの周縁部に存在する量子ドットが光波長変換シートの中央部に存在する量子ドットに比べて劣化しやすい。これに対し、本実施形態によれば、量子ドット15をバリア粒子16で包んだ光波長変換粒子13を用いているので、量子ドット15を水分や酸素から保護することができる。これにより、光波長変換シート10、20、30、40、50における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上であったとしても、光波長変換シート10、20、30、40、50の周縁部10C、20C、30C、40C、50C(図1、図3、図5、図7、図8参照)に存在する量子ドット15の劣化を抑制できる。また、本実施形態によれば、量子ドット15をバリア粒子16で包んでいるので、光波長変換層11、31に量子ドット15の劣化抑制機能を付与することができる。
また、本実施形態によれば、量子ドット15をバリア粒子16で包んだ光波長変換粒子13を用いて、量子ドット15の劣化を抑制しているので、光波長変換シート10、20、30、40、50における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上であったとしても、別途バリアフィルムを設ける必要がないので、光波長変換シート10、30のように単層でも使用することができる。
本実施形態によれば、光波長変換シート10、20、30、40、50における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上であったとしても、光波長変換シート10、20、30、40、50を60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験の前後において、耐久性試験前の光波長変換シート10、20、30、40、50の表面の中央部から出射する光の輝度に対する耐久性試験後の光波長変換シート10、20、30、40、50の表面の中央部から出射する光の輝度の変化率が±10%以内となっている場合には、光波長変換シート10、20、30、40、50の中心部の劣化を抑制できる。また、この場合には、60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験後の光波長変換シート10、20、30、40、50における周縁部の劣化幅を5mm以下とすることができる。これにより、バリアフィルムを設けなくとも、光波長変換シート10、20、30、40、50の中心部および周縁部の劣化を抑制することができる。
上述したように従来の光波長変換シートにおいては側面が露出しているので、光波長変換シートの周縁部の量子ドットが劣化してしまう。そして、光波長変換シートの周縁部の量子ドットが劣化してしまうと、波長変換効率が低下してしまう。このことが原因の一つとなって、光源からの光を光波長変換シートに入射させた場合に、光波長変換シートの周縁部から出射される光の色味が中央部から出射される光の色味に比べて際立ってしまうことがある。これに対し、本実施形態においては、量子ドット15をバリア粒子16で包んだ光波長変換粒子13を用いることにより、光波長変換シート10、20、30、40、50の周縁部に存在する量子ドット15の劣化を抑制できるので、光波長変換シート10、20、30、40、50の周縁部から出射される光の色味が中央部の色味に比べて際立つことを抑制することができる。
上述したように、バリアフィルムを備えていると、バリアフィルムにピンホールやクラックが発生し、そこから水分や酸素が光波長変換シートに浸入し、量子ドットが劣化してしまうおそれがある。バリアフィルムのクラックは、光波長変換シートを折り曲げた場合に特に発生しやすい。これに対し、本実施形態においては、バリアフィルムを設けていないので、フォールダブルにも対応することができる。
本実施形態によれば、別途バリアフィルムを設ける必要がないので、厚みに厳しい要件があるモバイル製品(いわゆるスマートフォンと称される機器を含む携帯用コンピュータ端末機器)にも対応することができる。
本実施形態によれば、光波長変換シート10、20、30、40、50が光散乱粒子14を含んでいるので、緑色の発光が赤色の発光よりも優先的に増強させることができる。この理由は明確ではないが、光散乱粒子は、青色光を緑色光に変換する第1の量子ドットから、青色光を赤色光に変換する第2の量子ドットへのエネルギー移動を阻害するような役割を果たしていると考えられ、本来上記エネルギー移動により失活していた緑色の発光が失活することなく発光過程に至り、結果として緑色の発光が増加するためであると考えられる。
従来、光波長変換層の両面にバリアフィルムを備える光波長変換シートの厚みは300μm程度であるので、光波長変換シートとレンズシート等の光学部材とを貼り合わせることは困難であり、別々に配置されていた。このため、バックライト装置の組み立て作業が煩雑になり、また光波長変換シートと光制御シートとの間に異物が入り込むことがあり、さらに光波長変換シートと光学部材との間に空気界面が存在するので光利用効率が低下するおそれがあった。これに対し、本実施形態に係る光波長変換シートはバリアフィルムを必要としないので、厚みを極めて薄くできる。このため、光波長変換シート40のように光波長変換層と光学部材とを貼り合わせることが可能となる。これにより、光波長変換シートと光学部材とを別個独立に配置する場合に比べて、バックライト装置の組み立て作業を容易になり、また光波長変換層と光制御シートとの間に異物が入り込むことを抑制でき、さらに省スペース化および部材の簡素化を図ることができる。
光波長変換シート10、20、30、40、50は、バックライト装置および画像表示装置に組み込んで使用することができる。以下、光波長変換シート10をバックライト装置および画像表示装置に組み込んだ例について説明する。図10は本実施形態に係るバックライト装置を含む画像表示装置の概略構成図であり、図11は図10に示されるレンズシートの斜視図であり、図12は本実施形態に係る他のバックライト装置の概略構成図である。
<<<画像表示装置>>>
図10に示される画像表示装置60は、バックライト装置70と、バックライト装置70の出光側に配置された表示パネル110とを備えている。画像表示装置60は、画像を表示する表示面60Aを有している。図10に示される画像表示装置60においては、表示パネル110の表面が表示面60Aとなっている。
バックライト装置60は、表示パネル110を背面側から面状に照らすものである。表示パネル110は、バックライト装置60からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、表示面60Aに像を表示するように構成されている。
<<表示パネル>>
図10に示される表示パネル110は、液晶表示パネルであり、入光側に配置された偏光板111と、出光側に配置された偏光板112と、偏光板111と偏光板112との間に配置された液晶セル113とを備えている。偏光板111、112は、入射した光を直交する二つの直線偏光成分(S偏光およびP偏光)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、P偏光)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、S偏光)を吸収する機能を有している。
液晶セル113には、一つの画素を形成する領域毎に、電圧の印加がなされ得るように構成されている。そして、電圧印加の有無によって液晶セル113中の液晶分子の配向方向が変化するようになる。一例として、入光側に配置された偏光板111を透過した特定方向の直線偏光成分は、電圧印加がなされた液晶セル113を通過する際にその偏光方向を90°回転させ、その一方で、電圧印加がなされていない液晶セル113を通過する際にその偏光方向を維持する。この場合、液晶セル113への電圧印加の有無によって、偏光板111を透過した特定方向に振動する直線偏光成分を偏光板112に対して透過させ、または偏光板112で吸収して遮断することができる。このようにして、表示パネル110では、バックライト装置70からの光の透過または遮断を画素毎に制御し得るように構成されている。なお、液晶表示パネルの詳細については、種々の公知文献(例えば、「フラットパネルディスプレイ大辞典(内田龍男、内池平樹監修)」2001年工業調査会発行)に記載されており、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
<<バックライト装置>>
図10に示されるバックライト装置70は、エッジライト型のバックライト装置として構成され、光源75と、光源75の側方に配置された導光板としての光学板80と、光学板80の出光側に配置された光波長変換シート10と、光波長変換シート10の出光側に配置されたレンズシート85と、レンズシート85の出光側に配置されたレンズシート90と、レンズシート90の出光側に配置された反射型偏光分離シート95と、光学板80の出光側とは反対側に配置された反射シート100とを備えている。バックライト装置70は、光学板80、レンズシート85、90、反射型偏光分離シート95、反射シート100を備えているが、これらのシート等は備えられていなくともよい。本明細書において、「出光側」とは、各部材においてバックライト装置から出射する方向に向かう光が出射される側を意味する。
バックライト装置70は、面状に光を発光する発光面70Aを有している。図10に示されるバックライト装置70においては、反射型偏光分離シート95の出光面がバックライト装置70の発光面70Aとなっている。
光波長変換シート10における光学板80側の面が入光面10Aとなっており、光波長変換シート10におけるレンズシート85側の面が出光面10Bとなっている。
<光源>
光源75は、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯や、点状の発光ダイオード(LED)や白熱電球等の種々の態様で構成され得る。本実施の形態において、光源75は、光学板60の後述する入光面80C側に、線状に並べて配置された多数の点状発光体、具体的には、多数の発光ダイオード(LED)によって、構成されている。
バックライト装置70においては光波長変換シート10が配置されていることに伴い、光源75は、単一の波長域の光を放出する発光体のみを用いることができる。例えば、光源は、色純度の高い青色光を発する青色発光ダイオードのみを用いることができる。
<光学板>
導光板としての光学板80は、平面視形状が四角形形状に形成されている。光学板80は、表示パネル110側の一方の主面によって構成された出光面80Aと、出光面80Aに対向するもう一方の主面からなる裏面80Bと、出光面80Aおよび裏面80Bの間を延びる側面と、を有している。側面のうちの光源75側の側面が、光源75からの光を受ける入光面80Cとなっている。入光面80Cから光学板80内に入射した光は、入光面80Cと、入光面80Cと対向する反対面とを結ぶ方向(導光方向)に光学板内を導光され、出光面80Aから出射される。
光波長変換シート10がアンチブロッキング剤等により入光面10Aが凹凸面となっている場合には、出光面80Aは、入光面10Aの一部(例えば、凸部)と光学的に密着し、また入光面10Aの他の部分(例えば、凹部)と離間していることが好ましい。この場合、出光面80Aと入光面10Aの他の部分との隙間は空気層となっている。この空気層を設けることにより、出光面80Aと入光面10Aが光学的に密着するように出光面60Aに対して光波長変換シート10を固定した場合であっても、出光面80Aに光波長変換シート10が貼り付くことを抑制できるので、光波長変換シート10と光学板80との間の界面にウエットアウトが形成されることを抑制できる。本明細書において、「光学的に密着」とは、光学板の出光面と光波長変換シートの入光面の一部がその間に空気層を形成することなく密着している状態をいう。また、光学板の出光面に光波長変換シートが貼り付いていない状態とは、光波長変換シートと光学板の固定を解除した場合に、光学板の出光面から該出光面の平面方向に光波長変換シートを動かせることを意味する。
光学板80を構成する材料としては、画像表示装置に組み込まれる光学シート用の材料として広く使用され、優れた機械的特性、光学特性、安定性および加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。なお、必要に応じて、光学板60中に光を拡散させる機能を有する光拡散材を添加することもできる。光拡散材としては、例えば、平均粒子径が0.5μm以上100μm以下のシリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の透明物質からなる粒子を用いることができる。
<レンズシート>
図11に示されるように、レンズシート85、90は、光学部材41と同様の構成となっている。すなわち、レンズシート85、90は、光透過性基材86と、光透過性基材86の一方の面に設けられ、かつ複数の単位レンズ88を有するレンズ層87とを備えており、レンズ層87は単位レンズ88の他、シート状の本体部89を備えている。光透過性基材86、レンズ層87、単位レンズ88、本体部89は、光学部材41における光透過性基材43、レンズ層44、単位レンズ45、本体部46と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
図10から理解され得るように、レンズシート85の単位レンズ88の配列方向とレンズシート90の単位レンズ88の配列方向とは交差、さらに限定的には直交している。
<反射型偏光分離シート>
反射型偏光分離シート95は、レンズシート85から出射される光のうち、第1の直線偏光成分(例えば、P偏光)のみを透過し、かつ第1の直線偏光成分と直交する第2の直線偏光成分(例えば、S偏光)を吸収せずに反射する機能を有する。反射型偏光分離シート95で反射された第2の直線偏光成分は再度反射され、偏光が解消された状態(第1の直線偏光成分と第2の直線偏光成分とを両方含んだ状態)で、再度、反射型偏光分離シート95に入射する。よって、反射型偏光分離シート95は再度入射する光のうち第1の直線偏光成分を透過し、第1の直線偏光成分と直交する第2の直線偏光成分は再度反射される。以下、同上の過程を繰り返す事により、レンズシート75から出光した光の70〜80%程度が第1の直線偏光成分となった光源光として出光される。したがって、反射型偏光分離シート95の第1の直線偏光成分(透過軸成分)の偏光方向と表示パネル110の偏光板111の透過軸方向とを一致させることにより、バックライト装置50からの出射光は全て表示パネル110で画像形成に利用可能となる。したがって、光源75から投入される光エネルギーが同じであっても、反射型偏光分離シート95を未配置の場合に比べて、より高輝度の画像形成が可能となり、又光源75のエネルギー利用効率も向上する。とりわけ、反射型偏光分離シート95で反射された光は、光波長変換シート10で波長変換が行われ得る。したがって、反射型偏光分離シート95を配置することによって、光波長変換シート10の波長変換効率がさらに上昇させることができる。したがって、更なる光の利用効率の改善を期待することができる。
反射型偏光分離シート95としては、3M社から入手可能な「DBEF」(登録商標)を用いることができる。また、「DBEF」以外にも、Shinwha Intertek社から入手可能な高輝度偏光シート「WRPS」やワイヤーグリッド偏光子等を、反射型偏光分離シート95として用いることができる。
<反射シート>
反射シート100は、光学板80の裏面80Bから漏れ出した光を反射して、再び光学板80内に入射させる機能を有する。反射シート100は、白色の散乱反射シート、金属等の高い反射率を有する材料からなるシート、高い反射率を有する材料からなる薄膜(例えば金属薄膜)を表面層として含んだシート等から、構成され得る。反射シート85での反射は、正反射(鏡面反射)でもよく、拡散反射でもよい。反射シート85での反射が拡散反射の場合には、当該拡散反射は、等方性拡散反射であってもよいし、異方性拡散反射であってもよい。
<<他のバックライト装置>>
光波長変換シート10を組み込むバックライト装置は、図12に示されるような直下型のバックライト装置であってもよい。図12に示されるバックライト装置120は、光源75と、光源75の光を受け、かつ光拡散板として機能する光学板121と、光学板121の出光側に配置された光波長変換シート10、光波長変換シート10の出光側に配置されたレンズシート85と、レンズシート85の出光側に配置された反射型偏光分離シート95とを備えている。本実施形態においては、光源75は、光学板121の側方ではなく、光学板121の直下に配置されている。図12において、図10と同じ符号が付されている部材は、図10で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。なお、バックライト装置120においては、反射シート100は備えられていない。
<光学板>
光拡散板としての光学板121は、平面視形状が四角形形状に形成されている。光学板121は、光源75側の一方の主面によって構成された入光面121Aと、光波長変換シート10側の他方の主面によって構成された出光面121Bとを有している。入光面121Aから光学板121内に入射した光は、光学板121内で散乱され、出光面101Bから出射される。
光学板121としては、光源75からの光を散乱させることができれば、特に限定されないが、例えば、透明材料中に光散乱性粒子を分散させた板が挙げられる。透明材料としては、特に限定されないが、例えば透明樹脂、無機ガラス等が挙げられる。前記透明樹脂としては、成形が容易である点で、透明熱可塑性樹脂が好適に用いられる。この透明熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)などが挙げられる。これらのうちの1種を用いても良いし、或いはこれらの2種以上を混合して用いても良い。
<光散乱性粒子>
光散乱性粒子の平均粒子径としては、例えば、0.5μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましい。0.5μm未満であると、光波長変換シートの光波長変換効率が不充分となることがあり、充分な光散乱性を出すためには光散乱性粒子の添加量を多くする必要がある。一方、30μmを超えると、光散乱性が悪くなり、また光波長変換層の膜厚に近くなるため製膜が安定しにくくなる。なお、光散乱性粒子の平均粒子径は、上述した量子ドットと同様の方法で測定することができる。
光散乱性粒子の平均粒子径は、上述した量子ドットの平均粒子径の10倍以上2万倍以下であることが好ましく、10〜5000倍であることがより好ましい。10倍未満であると、光散乱板に充分な光散乱性が得られないことがあり、2万倍を超えると、光散乱板の光散乱性能は優れたものとなるが、光散乱板の光の透過率が大幅にダウンしやすくなる。
光散乱性粒子は、有機材料からなる粒子または無機材料からなる粒子であってもよい。光散乱性粒子を構成する有機材料としては特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、メラミン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。なかでも、架橋アクリル樹脂が好適に用いられる。また、上記光散乱性粒子を構成する無機材料としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛微粒子等の無機酸化物等が挙げられる。なかでも、シリカ及び/又はアルミナが好適に用いられる。
本実施形態においては、光波長変換シート10をバックライト装置70、120に組み込んだ例について説明しているが、光波長変換シート10に代えて、光波長変換シート20、30、40をバックライト装置70、120に組み込んでもよい。光波長変換シート30、40をバックライト装置70、120に組み込む場合には、レンズ部32や光学部材41がレンズシート85の代わりとなるので、レンズシート85を省略することができる。光波長変換シート30、40は、レンズ部32や光学部材41側がレンズシート90側となるように配置される。
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態に係る光波長変換シート、バックライト装置および画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。図13は本実施形態に係る光波長変換シートの概略構成図であり、図14および図15は本実施形態に係る光波長変換シートの模式的な製造工程図である。
<<<光波長変換シート>>>
図13に示される光波長変換シート130は、光波長変換層131と、光波長変換層131の両面に設けられた光透過性基材132、133と、光透過性基材132、133における光波長変換層131側の面とは反対側に設けられた光拡散層134、135とを備えている。光波長変換シート130においては、光拡散層134、135の表面が光波長変換シート130の表面130A、130Bを構成している。光波長変換シート130は、光透過性基材132、133を備えているが、バリア層を備えていないので、光透過性基材およびバリア層からなるバリアフィルムを備えていない。なお、光波長変換シート130は、光拡散層134/光透過性基材132/光波長変換層131/光透過性基材133/光拡散層135の構造となっているが、光波長変換層を有していれば、光波長変換シートの構造は特に限定されない。
光波長変換シート130は、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっている。水蒸気透過率および酸素透過率は、第1の実施形態と同様の手法によって測定される。
光波長変換シート130における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率は1g/(m2・24h)以上となっていてもよく、また光波長変換シート130における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が1cm3/(m2・24h・atm)以上となっていてもよい。
光波長変換シート130を60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験の前後において、光波長変換シート130の一方の表面130Aの全面に量子ドット137によって波長変換される所定の光量の光を照射して、光波長変換シート130の表面130Aとは反対側の面である他方の表面130Bの中央部から出射する光の輝度を測定したとき、耐久性試験前の光波長変換シート130の表面130Bの中央部から出射する光の輝度に対する耐久性試験後の光波長変換シート130の表面130Bの中央部から出射する光の輝度の変化率が±10%以内となっていることが好ましく、±5%以内であることが好ましい。
光波長変換シート130において、60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験を行ったとき、耐久性試験後の光波長変換シート130における周縁部の劣化幅が5mm以下となることが好ましく、3mm以下となることがより好ましい。
<<<光波長変換層>>>
光波長変換層131は、例えば、バインダ樹脂136と、バインダ樹脂136に分散された量子ドット137とを含んでいる。光波長変換層131は、光散乱性粒子138をさらに含んでいることが好ましい。また、光波長変換シート131は、後述するように蛍光X線分析により測定される光波長変換層中の特定の元素の含有量を0.5質量%以上にしているので、量子ドット137の劣化抑制機能を有している。
光波長変換層131においては、蛍光X線分析(XRF)により測定される光波長変換層131中の硫黄、リン、および窒素からなる群から選択される1種以上の元素(以下、この元素を「特定の元素」と称する。)の含有量は、0.5質量%以上となっている。特定の元素の含有量が0.5質量%未満であると、量子ドットの劣化を抑制できないおそれがある。特定の元素が2種または3種の元素から構成されている場合には、本明細書における特定の元素の含有量とは、2種または3種の元素の合計の含有量を意味するものとする。特定の元素の含有量の測定は、蛍光X線分析装置(製品名「EDX−800HS」、島津製作所製)を用いることにより行うことができる。蛍光X線分析(XRF)により測定される光波長変換層11中の特定の元素の含有量の下限は、0.5質量%以上であることが好ましく、特定の元素の含有量の上限は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。特定の元素の含有量が20質量%を越えると、光波長変換層の形成時に充分な硬化が行われないおそれがある。
特定の元素は主にバインダ樹脂136に含まれているが、量子ドット137にも含まれている場合があり、この場合には、光波長変換層131の量子ドット非含有領域において電子顕微鏡付属のエネルギー分散型X線分光分析装置(EDX)による元素分析を行うことによって、バインダ樹脂136の特定の元素の有無を把握することができる。
光波長変換層131の膜厚は、10μm以上200μm以下となっていることが好ましい。この光波長変換層131の膜厚がこの範囲であれば、バックライト装置の軽量化および薄膜化に適している。光波長変換層131の膜厚は、光波長変換シートの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、光波長変換層の断面を撮影し、その断面の画像において光波長変換層の厚みを20箇所測定し、その20箇所の厚みの平均値とする。光波長変換層131の膜厚の上限は170μm未満であることがより好ましい。
<<バインダ樹脂>>
バインダ樹脂136は、硬化性バインダ樹脂前駆体の硬化物(重合物、架橋物)を含む。硬化性バインダ樹脂前駆体は、硫黄化合物、リン化合物、および窒素化合物からなる群から選択される1種以上の化合物(以下、この化合物を「特定の化合物」と称する。)と、重合性化合物とを含むことが好ましい。
<硫黄化合物>
硫黄化合物は、硫黄を含む化合物である。硫黄化合物としては、特に限定されないが、チオール化合物、チオエーテル化合物、ジスルフィド化合物、チオフェン化合物等が挙げられる。硫黄化合物として、チオール化合物を用いた場合には、バインダ樹脂136中においては、チオール化合物と重合性化合物は、チオール−エン反応により共重合体を形成していることが好ましい。チオールと重合性化合物が共重合することにより、チオール化合物をバインダ樹脂中に固定することができる。なお、本実施形態では、チオール化合物と重合性化合物は別々の化合物であるが、1分子中にチオール基とラジカル重合性官能基を有するチオール化合物を用いてもよい。チオール化合物を用いる場合には、塗工時のポットライフや臭気抑制の観点から、特に2級チオール化合物または3級チオール化合物を用いるのが好ましい。
2級チオール化合物とは、チオール基が結合している炭素に2つの炭化水素基が結合している化合物をいう。3級チオール化合物とは、チオール基が結合している炭素に3つの炭化水素基が結合している化合物をいう。2級チオール化合物および3級チオール化合物においては、1分子中にチオール基が1以上であればよいが、量子ドットの耐久性向上の観点から、2以上であることが好ましい。
2級チオール化合物または3級チオール化合物としては、特に限定されないが、光波長変換層の形成の際の硬化性や量子ドットの耐久性向上の観点から、下記一般式(1)で示される化合物が好ましい。
式中、R
1は置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R
2は置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、R
3は炭素原子以外の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜15のn価の脂肪族基であり、mは1〜20の整数であり、nは1〜30の整数である。
R1のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
R2のアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよい。R2のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。
R1のアルキル基やR2のアルキレン基が置換されている場合、置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、およびフェニル基等から選択される基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、および臭素原子が挙げられる。
R1のアルキル基中またはR2のアルキレン基中の1つのメチレン基または隣接しない2以上のメチレン基は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NR4−、−CONR4−、−NR4CO−、−N=CH−および−CH=CH−からなる群から選択された少なくとも1つの基で置換されていてもよい(式中、R4はそれぞれ独立して水素又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)
R3の脂肪族基に含まれても良い炭素原子以外の原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
これらのうち、光波長変換層の形成の際の硬化性や量子ドットの耐久性向上の観点から、R1が置換されていてもよい炭素原子数1〜5のアルキル基であり、R2が置換されていてもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、R3が炭素原子数1〜10の脂肪族基であり、mが1〜10であり、nが1〜15である2級チオール化合物が好ましい。ここでのR2のアルキレン基中の1つのメチレン基または隣接しない2以上のメチレン基も、上記と同様の基によって置換されていてもよい。
2級チオール化合物の具体例としては、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。3級チオール化合物の具体例としては、tert−ブチルメルカプタン等が挙げられる。
<リン化合物>
リン化合物は、リンを含む化合物である。リン化合物としては、特に限定されないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、およびホスフィン系化合物が挙げられる。これらの中でも、光波長変換層の形成の際の硬化性や量子ドットの耐久性向上の観点から、下記一般式(2)で示される化合物が好ましい。
式中、qは0または1の整数であり、R
5〜R
7は、それぞれ独立して、水素、水酸基、置換されていてもよい炭素原子数1〜30の直鎖または分岐のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいビフェニル基、置換されていてもよいナフチル基、置換されていてもよいフェノキシ基、または置換されていてもよい複素環基、または水酸基を表す。
R5〜R7のいずれかが置換基を有している場合、置換基としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br)、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、ニトロ基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、または複素環基等が挙げられる。
複素環基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジル基、ピラジル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピロール基、ピラゾリル基、またはテトラゾリル基が挙げられる。
リン化合物としては、具体的には、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、ジメチルビニルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルハイドロゼンホスファイト、ジオレイルハイドロゼンホスファイト等が挙げられる。
<窒素化合物>
窒素化合物は、窒素を含む化合物である。窒素化合物としては、特に限定されないが、光波長変換層の形成の際の硬化性や量子ドットの耐久性向上の観点から、アミン化合物が好ましい。アミン化合物としては、1級アミン化合物、2級アミン化合物および3級アミン化合物、ジアミン化合物のいずれであってもよい。
アミン化合物としては、具体的には、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン、オレイルプロピレンジアミン等が挙げられる。
<重合性化合物>
重合性化合物は、第1の実施形態で説明した重合性化合物と同様であるので、下記以外は説明を省略するものとする。
光重合性化合物の中でも、耐久性をより向上させる観点から、水酸基およびカルボキシル基の少なくともいずれかを有する光重合性化合物が好ましい。水酸基やカルボキシル基は1分子中に少なくとも1以上あればよい。
水酸基を有する光重合性化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体のモノ(メタ)アクリレート化物等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシル基を有する光重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ケイヒ酸及び無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル及びマレイン酸モノブチルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;ω−カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
<<量子ドット>>
量子ドット137は量子ドット15と同様であるので、下記以外は、説明を省略するものとする。本実施形態の量子ドットはバリア粒子によって包まれていてもよいが、バリア粒子によって包まれていなくともよい。なお、図13に示される量子ドット137は、バリア粒子によって包まれていない。また、量子ドット137は、量子ドット15と同様に、第1の量子ドット137Aと、第1の量子ドット137Aとは異なる波長域の発光帯を有する第2の量子ドット137Bとを含んでいる。
<光散乱性粒子>
光散乱性粒子134は光散乱性粒子18と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
<<光透過性基材>>
光透過性基材132、133の厚みは、特に限定されないが、10μm以上500μm以下であることが好ましい。光透過性基材132、133の厚みが、10μm未満であると、光波長変換シートのアッセンブリ、取扱い時における皺や折れが発生するおそれがあり、また150μmを超えると、ディスプレイの軽量化および薄膜化に適さないおそれがある。光透過性基材132、133の厚みのより好ましい下限は50μm以上、より好ましい上限は400μm以下である。
光透過性基材132、133の平均厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)で撮影した断面の画像を用いて算出できる。
光透過性基材132、133の構成材料としては、光透過性基材21の構成材料と同様のものが挙げられる。光透過性基材132、133は、単一の基材から構成されていてもよいが、複数の基材から構成される積層基材であってもよい。このような積層基材は、用途に応じて、同種の構成材料の層からなる複数の層から構成されていてもよく、異なる種類の構成材料の層からなる複数の層から構成されていてもよい。
<<<光拡散層>>>
光拡散層134、135は、表面に凹凸形状を有しており、この凹凸形状によって光波長変換シート130に入射する光および出射する光を拡散させることができる。光拡散層14、15を設けることにより、光波長変換シート130における光波長変換効率をより高めることができる。光拡散層134、135は、表面凹凸形成粒子とバインダ樹脂とを含んでいる。
<<表面凹凸形成粒子>>
表面凹凸形成粒子は、主に、光拡散層の表面に凹凸形状を形成するためのものである。ただし、表面凹凸形成粒子自体が光散乱性能を発揮することもある。
表面凹凸形成粒子の平均粒子径は、上述した量子ドット137の平均粒子径の10倍以上2万倍以下であることが好ましく、10〜5000倍であることがより好ましい。表面凹凸形成粒子の平均粒子径が量子ドットの平均粒子径の10倍未満であると、光拡散層に充分な光拡散性が得られないことがあり、また表面凹凸形成粒子の平均粒子径が量子ドットの平均粒子径の2万倍を超えると、光拡散層の光拡散性能は優れたものとなるが、光拡散層の光の透過率が大幅にダウンしやすくなる。なお、表面凹凸形成粒子の平均粒子径は、上述した量子ドットの平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
具体的には、表面凹凸形成粒子の平均粒子径は、例えば、1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましい。表面凹凸形成粒子の平均粒子径が1μm未満であると、光波長変換シートの光波長変換効率が不充分となることがあり、充分な光拡散性を出すためには表面凹凸形成粒子の添加量を多くする必要がある。一方、表面凹凸形成粒子の平均粒子径が30μmを超えると、光拡散性能は優れたものとなるが、光拡散層の光の透過率が大幅にダウンしやすくなる。
表面凹凸形成粒子とバインダ樹脂との屈折率差の絶対値は、0.02以上0.15以下であることが好ましい。0.02未満であると、光学的に表面凹凸形成粒子の持つ屈折率による光拡散性が得られず、光波長変換シートの光波長変換効率の向上が不充分となることがあり、0.15を超えると、光拡散層の透過率が低下してしまうことがある。表面凹凸形成粒子とバインダ樹脂との屈折率差のより好ましい下限は0.03以上、より好ましい上限は0.12以下である。なお、表面凹凸形成粒子の屈折率とバインダ樹脂の屈折率とは、いずれの方が大きくてもよい。表面凹凸形成粒子およびバインダ樹脂の屈折率は、光散乱性粒子18および第1のバインダ樹脂の屈折率と同様の手法によって測定することができる。
表面凹凸形成粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状等)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状等)、平板状、りん片状、不定形状等が挙げられる。なお、表面凹凸形成粒子の粒子径は、表面凹凸形成粒子の形状が球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
表面凹凸形成粒子は、表面凹凸形成粒子をバインダ樹脂中に強固に固定する観点から、バインダ樹脂と化学結合していることが好ましい。この化学結合は、シランカップリング剤で表面修飾された表面凹凸形成粒子を用いることによって実現できる。シランカップリング剤は、光散乱性粒子の欄で説明したシランカップリング剤と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
表面凹凸形成粒子は、有機材料からなる粒子または無機材料からなる粒子であってもよい。表面凹凸形成粒子を構成する有機材料としては特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、メラミン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。なかでも、架橋アクリル樹脂が好適に用いられる。また、上記光拡散粒子を構成する無機材料としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛微粒子等の無機酸化物等が挙げられる。なかでも、シリカ及び/又はアルミナが好適に用いられる。
<<バインダ樹脂>>
バインダ樹脂としては、特に限定されないが、バインダ樹脂12の欄で説明した重合性化合物の硬化物(重合物、架橋物)を用いることができるので、ここでは説明を省略するものとする。
<<<他の光波長変換シート>>>
本実施形態に係る光波長変換シートは、第1の実施形態に係る光波長変換シート10、20、40、50の光波長変換層11を光波長変換層131に代えた光波長変換シートであってもよい。なお、光波長変換シート40においては、光波長変換層11と光制御シート41が接着層42を介して貼り合わせられているが、光制御シートに光波長変換層用組成物を直接塗布、硬化させることによって光波長変換層131と光制御シートとを直接接合してもよい。また、光波長変換シート30の光波長変換層31のようにレンズ部を備えた光波長変換シートであってもよい。この場合、これらの光波長変換シートにおいては、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっていてもよい。また、これらの光波長変換シートにおいては、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率は1g/(m2・24h)以上となっていてもよく、また光波長変換シートにおける23℃、相対湿度90%での酸素透過率が1cm3/(m2・24h・atm)以上となっていてもよい。さらに、これらの光波長変換シートにおいても、60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験の前後において、光波長変換シートの一方の表面の全面に量子ドットによって波長変換される所定の光量の光を照射して、光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度を測定したとき、耐久性試験前の光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度に対する耐久性試験後の光波長変換シートの他方の表面の中央部から出射する光の輝度の変化率が±10%以内となっていることが好ましく、±5%以内であることがより好ましい。また、これらの光波長変換シートにおいても、60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験を行ったとき、耐久性試験後の光波長変換シートにおける周縁部の劣化幅が5mm以下となることが好ましく、3mm以下となることがより好ましい。
<<<光波長変換シートの製造方法>>>
光波長変換シート130は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、図示しないが、光透過性基材132の一方の面に、表面凹凸形成粒子および硬化性バインダ樹脂前駆体を含む光拡散層用組成物を塗布し、乾燥させて、光拡散層用組成物の塗膜を形成する。また、同様に、光透過性基材133の一方の面に、光拡散層用組成物の塗膜を形成する。
次いで、電離放射線照射等によって、光拡散層用組成物の塗膜を硬化させる。これにより、図14(A)に示されるように、光透過性基材132の一方の面に光拡散層134が形成されて、光拡散層134付き光透過性基材132が形成される。また、図示しないが、同様にして、光拡散層135付き光透過性基材133を形成する。
光拡散層135付き光透過性基材133を形成した後、図14(B)に示されるように、光拡散層135付き光透過性基材133における光拡散層135側の面とは反対側の面に、量子ドット137、上記特定の化合物ならびに重合性化合物を含む硬化性バインダ樹脂前駆体、ならびに光散乱性粒子138を含む光波長変換層用組成物を塗布し、乾燥させて、光波長変換層用組成物の塗膜139を形成する。
光波長変換層用組成物の全固形分質量に対する量子ドットの含有量は、0.01質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。量子ドットの含有量が0.01質量%未満であると、充分な発光強度が得られないおそれがあり、また、量子ドットの含有量が2質量%を超えると、充分な励起光の透過光強度が得られないおそれがある。
光波長変換層用組成物の全固形分質量に対する上記特定の化合物の含有量は、5質量%以上となっている。特定の化合物の含有量が5質量%未満であると、量子ドットの劣化を抑制できないおそれがある。光波長変換層用組成物の全固形分質量に対する特定の化合物の含有量の下限は10質量%以上であることがより好ましく、また特定の化合物の含有量の上限は70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。光波長変換層用組成物の全固形分質量に対する特定の化合物の含有量が70質量%を越えると、光波長変換層の形成の際に充分な硬化性が得られないおそれがある。なお、光波長変換層用組成物が2種以上の特定の化合物を含む場合には、上記含有量は特定の化合物の合計の含有量を意味するものとする。
光波長変換層用組成物の全固形分質量に対する重合性化合物の含有量は、30質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。重合性化合物の含有量が30質量%未満であると、光波長変換層の形成の際に充分な硬化性が得られないおそれがあり、また、重合性化合物の含有量が95質量%を超えると、上記特定の化合物による耐久性向上の効果が充分に得られないおそれがある。なお、光波長変換層用組成物が光重合性化合物および熱重合性化合物の両方を含む場合には、上記含有量は光重合性化合物および熱重合性化合物の合計の含有量を意味するものとする。
光波長変換層用組成物の全固形分質量に対する光散乱性粒子18の含有量は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の含有量が1質量%未満であると、光散乱効果が充分に得られないおそれがあり、また、光散乱性粒子の含有量が50質量%を超えると、ミー散乱が起こり難くなるので、光散乱効果を充分に得られないおそれがあり、さらに光散乱性粒子が多すぎるために加工性が低下するおそれがある。
光波長変換層用組成物は重合開始剤を含んでいることが好ましい。重合開始剤は、第1の実施形態と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
光波長変換層用組成物の塗膜139形成後、図15(A)に示されるように光拡散層14付き光透過性基材132における光拡散層134側の面とは反対側の面が光波長変換層用組成物の塗膜139と接するように、光波長変換層用組成物の塗膜139上に光拡散層134付き光透過性基材132を配置する。これにより、光波長変換層用組成物の塗膜139が、光透過性基材132、133間で挟まれる。
次いで、図15(B)に示されるように光透過性基材132を介して光波長変換層用組成物の塗膜139に電離放射線を照射して、または熱を加えて、硬化性バインダ樹脂前駆体を硬化させて、光波長変換層131を形成するとともに、光波長変換層131と、光拡散層134付き光透過性基材132および光拡散層145付き光透過性基材133とを一体化させる。これにより、図13に示される光波長変換シート130が得られる。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、光波長変換シート130における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または光波長変換シート130における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上となっているので、光透過性基材およびバリア層からなるバリアフィルムを備えていない。したがって、バリアフィルムに起因するピンホールやクラックが発生することがなく、これにより、点状の輝度欠点を抑制することができる。また、光波長変換層131が量子ドット137の劣化抑制機能を有しているので、バリアフィルムを備えていなくとも、量子ドット137の劣化を抑制できる。さらに、光波長変換シート130においては、バリアフィルムを備えていないので、薄型化および製造コストの低減を図ることができる。
量子ドットの劣化の原因は、チオールやホスフィン等からなる量子ドットの表面に配位するリガンドが量子ドットから光や熱で脱離してしまうことにより量子ドットが酸化され易くなることにあると考えられる。本実施形態によれば、蛍光X線分析により測定される光波長変換層131中の上記特定の元素の含有量は、0.5質量%以上となっているので、量子ドット137の劣化を抑制できる。これは、リガンドが量子ドット137から脱離した場合であっても、バインダ樹脂136に含まれ、かつ量子ドット137の周辺に存在する硫黄成分、リン成分、または窒素成分がリガンドの役割を補助するような機能(例えば、リガンドの代わりに量子ドット137に結合して、リガンドを代替する機能)を発揮するからであると考えられる。これにより、耐久性を向上させることができ、かつ周縁部130C(図13参照)に存在する量子ドット137の劣化を抑制できる。また、蛍光X線分析により測定される光波長変換層131中の上記特定の元素の含有量を0.5質量%以上とすることにより、光波長変換層131に量子ドット137の劣化抑制機能を付与することができる。
また、本実施形態によれば、蛍光X線分析により測定される光波長変換層131中の硫黄元素の含有量を0.5質量%以上として、量子ドット137の劣化を抑制しているので、光波長変換シート130における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または光波長変換シート130における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上であったとしても、別途バリアフィルムを設ける必要がない。これにより、光波長変換シートの工程を簡素化できることにより品質を良化させやすくなるとともに、光波長変換シートの薄型化および製造コストの低減を図ることができる。
また、光波長変換層用組成物が光波長変換層用組成物の全固形分質量に対して5質量%以上の上記特定の化合物を含んでいるので、量子ドットの劣化を抑制できる。これにより、本実施形態の光波長変換層用組成物を用いて、耐久性を向上させることができ、かつ周縁部130Cに存在する量子ドット137の劣化を抑制できる光波長変換層131を形成することができる。
本実施形態によれば、光波長変換シート130における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m2・24h)以上および/または23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm3/(m2・24h・atm)以上であったとしても、光波長変換シート130を60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験の前後において、耐久性試験前の光波長変換シート130の表面の中央部から出射する光の輝度に対する耐久性試験後の光波長変換シート130の表面の中央部から出射する光の輝度の変化率が±10%以内となっている場合には、光波長変換シート130の中心部の劣化を抑制できる。また、この場合には、60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐久性試験後の光波長変換シート130における周縁部の劣化幅を5mm以下とすることができる。これにより、バリアフィルムを設けなくとも、光波長変換シート130の中心部および周縁部の劣化を抑制することができる。
本実施形態における光波長変換シートも、第1の実施形態で説明したバックライト装置70、120や画像表示装置60と同様の構造のバックライト装置や画像表示装置に組み込むことが可能である。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
<光波長変換粒子の作製>
まず、下記に示す手順で、光波長変換粒子を得た。
(光波長変換粒子1)
まず、0.2質量部の緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm)および0.2質量部の赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm)を用意した。緑色発光量子ドットおよび赤色発光量子ドットを用意した後、緑色発光量子ドットおよび赤色発光量子ドットの表面をドデシルアミンで覆い、これらの量子ドットをトルエン溶液(0.4mL、1.5μM/L)に分散させた。次いで、この溶液にテトラエトキシシラン(TEOS、10μL)を添加し、3時間攪拌して、有機溶液1を作製した。
一方で、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS、1μL)をエタノール(25mL)とアンモニア水(4mL、アンモニア濃度10wt%)に混合して水溶液2を作製した。
そして、有機溶液1と水溶液2を混合し、3時間攪拌したところ、緑色発光量子ドットおよび赤色発光量子ドットは水相に移動し、さらに水相で緑色発光量子ドットおよび赤色発光量子ドットの集合体が形成された。この集合体を遠心分離によって取り出した。
最後に、上記の集合体が分散した水溶液0.5mLを取り出し、エタノール(8mL)とアンモニア水(0.1mL、25wt%)を加え、さらにTEOS(14μL)を添加した。これにより、緑色発光量子ドットおよび赤色発光量子ドットからなる集合体がシリカガラスで包まれ、平均粒子径50nmの光波長変換粒子1を得た。
(光波長変換粒子2)
まず、0.2質量部の緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm)を用意する。緑色発光量子ドットを用意した後、緑色発光量子ドットの表面をドデシルアミンで覆い、緑色発光量子ドットをトルエン溶液(0.4mL、1.5μM/L)に分散させた。次いで、この溶液にテトラエトキシシラン(TEOS、10μL)を添加し、3時間攪拌して、有機溶液3を得た。
そして、有機溶液3と実施例1で作製した水溶液2を混合し、3時間攪拌したところ、緑色発光量子ドットは水相に移動し、さらに水相で緑色発光量子ドットの集合体が形成された。この集合体を遠心分離によって取り出した。
最後に、上記の集合体が分散した水溶液0.5mLを取り出し、エタノール(8mL)とアンモニア水(0.1mL、25wt%)を加え、さらにTEOS(14μL)を添加した。これにより、緑色発光量子ドットからなる集合体がシリカガラスで包まれ、緑色発光量子ドットを含む平均粒子径50nmの光波長変換粒子2を得た。
(光波長変換粒子3)
まず、0.2質量部の赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm)を用意する。赤色発光量子ドットを用意した後、赤色発光量子ドットの表面をドデシルアミンで覆い、赤色光り発光量子ドットをトルエン溶液(0.4mL、1.5μM/L)に分散させた。次いで、この溶液にテトラエトキシシラン(TEOS、10μL)を添加し、3時間攪拌して、有機溶液4を得た。
そして、有機溶液4と実施例1で作製した水溶液2を混合し、3時間攪拌したところ、赤色発光量子ドットは水相に移動し、さらに水相で赤色発光量子ドットの集合体が形成された。この集合体を遠心分離によって取り出した。
最後に、上記の集合体が分散した水溶液0.5mLを取り出し、エタノール(8mL)とアンモニア水(0.1mL、25wt%)を加え、さらにTEOS(14μL)を添加した。これにより、赤色発光量子ドットからなる集合体をシリカガラスで包み、赤色発光量子ドットを含む平均粒子径50nmの光波長変換粒子3を得た。
<光波長変換シート用組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、光波長変換層用組成物を得た。
(光波長変換層用組成物1)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・光波長変換粒子1:5質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM−03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
(光波長変換層用組成物2)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・光波長変換粒子2:2.5質量部
・光波長変換粒子3:2.5質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM−03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
(光波長変換層用組成物3)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):89質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM−03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
(光波長変換層用組成物4)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):90質量部
・トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(製品名「TPMB」、昭和電工社製):10質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.20質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
(光波長変換層用組成物5)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):90質量部
・トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(製品名「TPMB」、昭和電工社製):10質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.20質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM−03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
(光波長変換層用組成物6)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):90質量部
・2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(製品名「ライトエステルP−2M」、共栄社化学社製):10質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.20質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM−03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
(光波長変換層用組成物7)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):90質量部
・ステアリルアミン(製品名「ファーミン80」、花王社製):10質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.20質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM−03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
(光波長変換層用組成物8)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):90質量部
・トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(製品名「TPMB」、昭和電工社製):5質量部
・2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(製品名「ライトエステルP−2M」、共栄社化学社製):5質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.20質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM−03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
(光波長変換層用組成物9)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):75質量部
・トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(製品名「TPMB」、昭和電工社製):25質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.20質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM−03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
(光波長変換層用組成物10)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):50質量部
・トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(製品名「TPMB」、昭和電工社製):50質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.20質量部
・アルミナ粒子(光散乱性粒子、製品名「DAM−03」、電気化学工業社製、平均粒子径4μm):10質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
(光波長変換層用組成物11)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):100質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.20質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
(光波長変換層用組成物12)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):97質量部
・トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(製品名「TPMB」、昭和電工社製):3質量部
・緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm):0.20質量部
・赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm):0.20質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.2質量部
<オーバーコート層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、オーバーコート層用組成物を得た。
(オーバーコート層用組成物1)
・アクリル酸亜鉛(製品名「ZN−DA」日本触媒社製):30質量部
・メタノール:70質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184、BASFジャパン社製):1質量部
(オーバーコート層用組成物2)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(製品名「アロニックス(登録商標)M−403」、東亞合成社製):30質量部
・メタノール:70質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184、BASFジャパン社製):1質量部
<光拡散層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光拡散層用組成物1を得た。
(光拡散層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:99質量部
・表面凹凸形成粒子(架橋ポリスチレン樹脂ビーズ、製品名「SBX−4」、積水化成品工業株式会社製、平均粒子径4μm):158質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184、BASFジャパン社製):1質量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン=1:1(質量比)):170質量部
<実施例1>
まず、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の一方の面に光波長変換層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させて、光波長変換層を得た。最後に、PET基材を剥離し、実施例1に係る厚さ100μmの光波長変換層のみからなる光波長変換シートを形成した。なお、光波長変換シートの厚みは、光波長変換シートの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、その断面の画像において光波長変換シートの厚みを20箇所測定し、その20箇所の厚みの平均値とした。
<実施例2>
実施例2においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例3>
実施例3においては、光波長変換層からPET基材を剥離しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。実施例3に係る光波長変換シートは、光波長変換シートとPET基材からなるものであった。実施例3に係る光波長変換シートの厚みは140μmであった。
<実施例4>
実施例4においては、光波長変換層からPET基材を剥離しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、光波長変換シートを作製した。実施例4に係る光波長変換シートは、光波長変換シートとPET基材からなるものであった。
<実施例5>
所望の単位プリズムの形状に対し逆形状の凹部を有し、かつ回転する成形用型に光波長変換層用組成物1を塗工充填し、次いでこれにポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)を走行速度10m/分で供給して型面の光波長変換層用組成物1の上から成形用型に押圧した。そして、押圧した状態で、PET基材を介して光波長変換層用組成物1に紫外線を照射して光波長変換層用組成物1を硬化させた。そして、硬化させた光波長変換層用組成物1をPET基材と共に回転する成形用型から剥離して、レンズ部を有する光波長変換層を得た。レンズ部は、シート状の本体部と、この本体部上に並べて配置され、かつ各々が配列方向と交差する方向に延びており、頂角が90°であり、幅が50μmであり、高さが25μmである複数の三角柱状の単位プリズムを有していた。最後に、光波長変換層からPET基材を剥離して、レンズ部を有し、かつ光波長変換層のみからなる光波長変換シートを得た。実施例5に係る光波長変換シートの厚みは125μmであった。
<実施例6>
実施例6においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物2を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例7>
まず、プリズムシートを用意した。プリズムシートは以下のようにして作製された。所望の単位プリズムの形状に対し逆形状の凹部を有し、かつ回転する成形用型にエポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製)99質量部に光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製)1質量部を含むプリズム層用組成物を塗工充填し、次いでこれに厚さ50μmの光透過性基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)を走行速度10m/分で供給して型面のプリズム層用組成物の上から成形用型に押圧した。そして、押圧した状態で、PET基材を介してプリズム層用組成物に紫外線を照射してプリズム層用組成物を硬化させた。そして、硬化させたプリズム層用組成物をPET基材と共に回転する成形用型から剥離して、プリズムシートを得た。プリズムシートは、シート状の本体部と、この本体部上に並べて配置され、かつ各々が配列方向と交差する方向に延びており、頂角が90°であり、幅が50μmであり、高さが25μmである複数の三角柱状の単位プリズムを有していた。
プリズムシートのレンズ面とは反対側の面に、紫外線硬化性接着剤を介して、実施例1に係る光波長変換シート(光波長変換層)を配置した。そして、プリズムシート側から、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して紫外線硬化性接着剤を硬化させて、光波長変換層、接着層、プリズムシートからなる光波長変換シートを得た。実施例7に係る光波長変換シートの厚みは180μmであった。
<実施例8>
実施例8においては、実施例1に係る光波長変換シートの代わりに実施例2に係る光波長変換シートを用いたこと以外は、実施例7と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例9>
実施例7と同様の手順に沿って作製され、かつ実施例7と同じ大きさのプリズムシートのレンズ面とは反対側の面に、光波長変換層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させて、光波長変換層を得た。これにより、光波長変換シートおよびプリズムシートからなる光波長変換シートを得た。実施例9に係る光波長変換シートの厚みは175μmであった。
<実施例10>
実施例10においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物2を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例11>
まず、PET基材の一方の面に光波長変換層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、実施例7と同様の手順に沿って作製され、かつ実施例7と同じ大きさのプリズムシートのレンズ面とは反対側の面に塗膜が接するように塗膜付きポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)を配置した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させて、光波長変換層を得た。最後に、PET基材を剥離し、光波長変換シートおよびプリズムシートからなる光波長変換シートを得た。実施例11に係る光波長変換シートの厚みは175μmであった。
<実施例12>
実施例12においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物2を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例13>
実施例1で作製した光波長変換層(光波長変換層)の一方の面に、オーバーコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させて、膜厚5μmのオーバーコート層を得た。次いで、同様に、光波長変換層の他方の面に、オーバーコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させて、膜厚5μmのオーバーコート層を得た。これにより、光波長変換層と、光波長変換層の両面に形成されたオーバーコート層とからなる光波長変換シートを得た。
<実施例14>
実施例14においては、オーバーコート層用組成物1の代わりにオーバーコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例1>
比較例1においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例2>
比較例2においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物3を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例3>
比較例3においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物3を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例4>
比較例4においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物3を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例5>
比較例5においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物3を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例6>
比較例6においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物3を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例7>
比較例7においは、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物3を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例8>
まず、2枚のバリアフィルムを次のような方法で作製した。高周波スパッタリング装置において、電極に周波数13.56MHz、電力5kWの高周波電力を印加することにより、チャンバー内で放電を生じさせて、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の片面にターゲット物質(シリカ)からなる、厚みが50nmであり、かつ屈折率が1.46であるシリカ蒸着層を形成し、これにより、PET基材およびシリカ蒸着層からなるバリアフィルムを2枚形成した。
次いで、一方のバリアフィルムのシリカ蒸着層側に光波長変換層用組成物3を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、80℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。その後、その塗膜面にシリカ蒸着層が接するように他方のバリアフィルムを配置し、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚が100μmの光波長変換層を形成し、これにより、バリアフィルムとバリアフィルム間に配置された光波長変換層とを備える厚みが200μmの光波長変換シートを得た。
<比較例9>
比較例9においては、実施例1に係る光波長変換シートの代わりに比較例8に係る光波長変換シートを用いたこと以外は、実施例7と同様にして、光波長変換シートを作製した。比較例9に係る光波長変換シートの厚みは280μmであった。
<実施例15>
大きさ7インチおよび厚みが50μmの光透過性基材としての2枚のポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の片面にそれぞれ上記光拡散層用組成物1を、塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、80℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。その後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより膜厚が10μmの光拡散層を形成し、光拡散層付きPET基材を形成した。
次いで、一方の光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面に光波長変換層用組成物4を塗布し、80℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、塗膜に光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面が接するように他方の光拡散層付きPET基材を積層した。この状態で、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させ、光波長変換層を形成するとともに、光波長変換層と、2枚の光拡散層付きPET基材とを一体化した。これにより、実施例15に係る光波長変換シートを得た。
<実施例16>
実施例16においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物5を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例17>
実施例17においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物6を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例18>
実施例18においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物7を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例19>
実施例19においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物8を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例20>
実施例20においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物9を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例21>
実施例21においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物10を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例22>
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の一方の面に光波長変換層用組成物9を塗布し、80℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させた。最後に、PET基材を剥離し、実施例22に係る膜厚が100μmの光波長変換層のみからなる光波長変換シートを得た。
<実施例23>
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の一方の面にウレタンアクリレートを含むプリズム層用組成物を均一に塗布して、プリズム層用組成物の塗膜を形成し、プリズムシート用積層体を形成した。そして、所望の単位プリズムの形状に対し逆形状の凹部を有し、かつ回転する成形用型にレンズ層用組成物の塗膜が成形用型側となるようにプリズムシート用積層体を走行速度20m/分で供給して成形用型によってプリズム層用組成物の塗膜に単位プリズムの形状を賦形するとともに、PET基材を介してプリズム層用組成物の塗膜に紫外線を照射して、プリズム層用組成物の塗膜を硬化させた。最後に、硬化させたプリズム層用組成物の塗膜をPET基材と共に成形用型から剥離して、PET基材の一方の面にプリズム層が形成されたプリズムシートを得た。プリズム層は、シート状の本体部と、この本体部上に並べて配置され、かつ各々が配列方向と交差する方向に延びており、頂角が90°であり、幅が47μmであり、高さが30μmである複数の三角柱状の単位プリズムを有していた。
次いで、プリズムシートにおけるPET基材の他方の面に光波長変換層用組成物9を塗布し、80℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、プリズムシートと一体化した膜厚が100μmの光波長変換層を形成した。これにより、実施例23に係る光波長変換シートを得た。
<実施例24>
実施例22で作製した光波長変換シート(光波長変換層)の一方の面に、オーバーコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させて、膜厚5μmのオーバーコート層を得た。次いで、同様に、光波長変換層の他方の面に、オーバーコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させて、膜厚5μmのオーバーコート層を得た。これにより、光波長変換層と、光波長変換層の両面に形成されたオーバーコート層とからなる光波長変換シートを得た。
<実施例25>
実施例25においては、オーバーコート層用組成物1の代わりにオーバーコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例24と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例10>
比較例10においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物11を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例11>
比較例11においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物12を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例12>
比較例12においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物11を用いたこと以外は、実施例22と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例13>
比較例13においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物12を用いたこと以外は、実施例22と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例14>
比較例14においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物11を用いたこと以外は、実施例23と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例15>
比較例15においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物12を用いたこと以外は、実施例23と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例16>
比較例16においては、光波長変換層用組成物9の代わりに光波長変換層用組成物11を用いたこと以外は、実施例24と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例17>
比較例17においては、光波長変換層用組成物9の代わりに光波長変換層用組成物12を用いたこと以外は、実施例24と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例18>
まず、2枚のバリアフィルムを次のような方法で作製した。高周波スパッタリング装置において、電極に周波数13.56MHz、電力5kWの高周波電力を印加することにより、チャンバー内で放電を生じさせて、大きさ7インチおよび厚みが50μmの光透過性基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の片面にターゲット物質(シリカ)からなる、厚みが50nmであり、かつ屈折率が1.46であるシリカ蒸着層を形成した。これにより、PET基材の一方の面にシリカ蒸着層が形成されたバリアフィルムを2枚形成した。
次いで、両方のバリアフィルムにおけるシリカ蒸着層側の面とは反対側の面に上記光拡散層用組成物1を、塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、80℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。その後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより膜厚が10μmの光拡散層を形成し、光拡散層付きバリアフィルムを形成した。
次いで、一方の光拡散層付きバリアフィルムのシリカ蒸着層側に光波長変換層用組成物11を塗布し、80℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、塗膜における光拡散層付きバリアフィルムのシリカ蒸着層の面に、シリカ蒸着層が接するように他方の光拡散層付きバリアフィルムを積層した。この状態で、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、両方の光拡散層付きバリアフィルムに密着した膜厚が100μmの光波長変換層を形成した。これにより、比較例18に係る光波長変換シートを得た。
<比較例19>
比較例19においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物12を用いたこと以外は、比較例18と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<水蒸気透過率および酸素透過率測定>
上記実施例および上記比較例に係る光波長変換シートにおいて、水蒸気透過率および酸素透過率をそれぞれ測定した。実施例1〜14および比較例1〜9に係る光波長変換シートの水蒸気透過率は、JIS K7129:2008に準拠して、水蒸気透過率測定装置(製品名「DELTAPERM」、Technolox社製)を用いて、40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。実施例15〜25および比較例10〜19に係る光波長変換シートの水蒸気透過率は、JIS K7129:2008に準拠して、水蒸気透過率測定装置(製品名「PERMATRAN−W3/31」、MOCON社製)を用いて、40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。また、実施例1〜14および比較例1〜9に係る光波長変換シートの酸素透過率は、JIS K7126:2006に準拠して、酸素ガス透過率測定装置(製品名「OX−TRAN 2/21」、MOCON社製)を用いて23℃、相対湿度90%の条件下で測定した。実施例15〜25および比較例10〜19に係る光波長変換シートの酸素透過率は、JIS K7126:2006に準拠して、酸素ガス透過率測定装置(製品名「OX−TRAN 2/20」、MOCON社製)を用いて23℃、相対湿度90%の条件下で測定した。
<量子ドットの個数および距離測定>
実施例1〜14に係る光波長変換シートにおいて、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いてランダムに20個の光波長変換粒子の断面を撮影し、得られた断面の画像から1個の光波長変換粒子に含まれる量子ドットの個数を算出し、算出した量子ドットの個数の平均値を算出した。また、同様に、実施例1〜14に係る光波長変換シートにおいて、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いてランダムに20個の光波長変換粒子の断面を撮影し、得られた断面の画像から量子ドット間の距離を算出し、算出した量子ドット間の距離の平均値を算出した。
<蛍光X線分析による特定の元素の含有量測定>
実施例15〜25および比較例10〜18に係る光波長変換シートにおいて、PET基材を剥がした状態で、光波長変換層に含まれる硫黄、リン、および窒素の含有量を、蛍光X線分析装置(製品名「RIX2000型」、理学社製)を用いて測定した。なお、光波長変換層から、硫黄、リン、および窒素のうち2種または3種の元素が検出されたときは、含有量はこれらの元素の合計の含有量とした。
<光波長変換層における量子ドットの劣化抑制機能判断試験>
上記実施例1〜25および上記比較例1〜7、10〜16に係る光波長変換シートにおいて、耐劣化性試験を行い、耐劣化性試験前後における光波長変換シートの中央部の輝度変化率から、光波長変換層が、量子ドットの劣化抑制機能を有するか否かを調べた。具体的には、まず、60℃、相対湿度90%の条件下で100時間放置する耐劣化性試験を行っていない状態で、光波長変換層シートをそれぞれバックライト装置に組み込んだ。なお、比較例8、9、17、18に係る光波長変換シートについては、光波長変換シートはバリアフィルムを備えているので、表1および表3に示されるように、0.1g/(m2・24h)未満の水蒸気透過率および0.1cm3/(m2・24h・atm)未満の酸素透過率を示す。このような低い水蒸気透過率および酸素透過率を示す光波長変換シートにおいては、光波長変換シートにおける耐劣化性試験前後の輝度変化から、光波長変換層が量子ドットの劣化抑制機能を有しているか否かの判断をすることはできないので、比較例8、9、17、18に係る光波長変換シートにおいては、ここでの試験の対象とはしなかった。
バックライト装置としては、Kindle Fire(登録商標)HDX7のバックライト装置(発光ピーク波長が450nmの青色発光ダイオード、導光板、2枚のプリズムシート(第1のプリズムシートおよび第2のプリズムシート))を用いた。2枚のプリズムシートは、シート状の本体部と、この本体部上に並べて配置され、かつ各々が配列方向と交差する方向に延びた三角柱状の複数の単位プリズムとを備え、単位プリズムの頂角が90°となっているものであった。
そして、青色発光ダイオード側が入光面となるように導光板を配置するとともに、導光板の出光面上に実施例1に係る光波長変換シート、第1のプリズムシート、第2のプリズムシートをこの順で配置して、実施例1に係る光波長変換シートが組み込まれたバックライト装置を得た。また、観察者側の第2のプリズムシートは、単位プリズムの配列方向が第1のプリズムシートの単位プリズムの配列方向と直交するように配置された。また、同様にして、実施例2〜25および比較例1〜7、10〜16に係る光波長変換シートが組み込まれたバックライト装置を得た。ただし、実施例5〜12、23および比較例3〜7、14、15においては、第1のプリズムシートは用いず、また光波長変換シートにおけるレンズ部またはプリズムシートが観察者側となるように、かつ単位プリズムの配列方向が第2のプリズムシートの単位プリズムの配列方向と直交するように配置した。バックライト装置の発光面は第2のプリズムシートのレンズ面であった。
光波長変換シートをバックライト装置に組み込んだ状態で、青色発光ダイオードを点灯させて、導光板を介して、光波長変換シートの一方の面の全面に光を照射した。この状態で、光波長変換シートの中央部に相当する発光面の中央部における輝度を測定した。輝度は、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
その後、上記実施例1〜25および上記比較例1〜7、10〜16に係る光波長変換シートをバックライト装置から取り出して、60℃、相対湿度90%の条件下で100時間放置する耐劣化性試験を行った。そして、耐劣化性試験後の光波長変換シートを上記と同様にバックライト装置に組み込み、その状態で、上記と同様の条件で、光波長変換シートの中央部に相当する発光面の中央部における輝度を測定した。
測定したこれらの輝度から、光波長変換シートの中央部における耐劣化性試験前の輝度に対する耐劣化性試験後の輝度の変化率をそれぞれ求めた。耐劣化性試験の前後における輝度変化率は、輝度変化率をD1とし、耐劣化性試験前のバックライト装置の発光面の中央部から出射する光の輝度をE1とし、耐劣化性試験後のバックライト装置の発光面の中央部から出射する光の輝度をC1とし、下記式によって求めた。そして、この輝度変化率が、±10%以内であれば、光波長変換層が量子ドットの劣化抑制機能を有すると判断した。
D1=(F1−E1)/E1×100
<光波長変換シートの中央部の耐久性試験前後の輝度変化>
上記実施例および上記比較例に係る光波長変換シートにおいて、耐久性試験を行い、耐久性試験前後における光波長変換シートの中央部の輝度変化を調べた。具体的には、まず、60℃、相対湿度90%の条件下で500時間放置する耐久性試験を行っていない状態で、光波長変換シートをそれぞれバックライト装置に組み込んだ。
バックライト装置は、上記光波長変換層における量子ドットの劣化抑制機能判断試験で用いたバックライト装置と同様のバックライト装置を用い、また、実施例および比較例に係る光波長変換シートを、上記光波長変換層における量子ドットの劣化抑制機能判断試験と同様にバックライト装置に組み込んだ。
光波長変換シートをバックライト装置に組み込んだ状態で、青色発光ダイオードを点灯させて、導光板を介して、光波長変換シートの一方の面の全面に光を照射した。この状態で、光波長変換シートの中央部に相当する発光面の中央部における輝度を測定した。輝度は、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
その後、上記実施例および上記比較例に係る光波長変換シートにおいて、60℃、相対湿度90%の条件下で500時間放置する耐久性試験を行った。そして、耐久性試験後の光波長変換シートを上記と同様にバックライト装置に組み込み、その状態で、上記と同様の条件で、光波長変換シートの中央部に相当する発光面の中央部における輝度を測定した。
測定したこれらの輝度から、光波長変換シートの中央部における耐久性試験前の輝度に対する耐久性試験後の輝度の変化率をそれぞれ求めた。耐久性試験の前後における輝度変化率は、輝度変化率をA1とし、耐久性試験前のバックライト装置の発光面の中央部から出射する光の輝度をB1とし、耐久性試験後のバックライト装置の発光面の中央部から出射する光の輝度をC1とし、下記式によって求めた。
A1=(C1−B1)/B1×100
<光波長変換シートの周縁部の劣化幅測定>
上記実施例および上記比較例に係る耐久性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、バックライト装置における発光時の発光面における輝度分布を、光波長変換シートの厚み方向から、2D色彩輝度計(製品名「UA−200」、トプコンテクノハウス社製)を用いて、測定した。そして、測定した発光面の輝度分布から、発光面の中央部の輝度に対して輝度が80%となる位置(輝度80%位置)を求め、発光面における輝度80%位置に最も近い端から輝度80%位置までの最短距離を求めた。そして、この最短距離をランダムに20箇所について求め、この20箇所の最短距離の平均値を、光波長変換シートの周縁部の劣化幅とした。
<点状の輝度欠点評価>
上記実施例および上記比較例に係る耐久性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、バックライト装置における発光時の発光面に点状の輝度欠点が存在するかを目視で観察し、評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:点状の輝度欠点が確認されなかった、または若干確認されたが実用上問題のないレベルであった。
×:点状の輝度欠点が多く確認された。
比較例1〜7に係る光波長変換シートにおいては、光波長変換シートにおける耐劣化性試験前後の輝度変化が±10%の範囲内には無かったので、光波長変換層は量子ドットの劣化抑制機能を有していなかった。一方で、比較例1〜7に係る光波長変換シートにおいては、水蒸気透過率および酸素透過率が高かった。このため、耐久性試験によって量子ドットが劣化してしまい、中央部における耐久性試験前後の輝度変化が大きかった。なお、比較例1〜7に係る光波長変換シートにおいて、周縁部の劣化幅が0mmとなっているのは、比較例1〜7に係る光波長変換シートにおいては、全体的に量子ドットが劣化していたため、発光面の中心部と周縁部において輝度の差がほぼなかったためである。
比較例8、9に係る光波長変換シートにおいては、バリアフィルムを備えているので、点状の輝度欠点が多く、また水蒸気透過率および酸素透過率が極めて低かったが、周縁部の劣化幅が大きかった。また、比較例8、9に係る光波長変換シートは、バリアフィルムを備えているので、光波長変換シートの厚みが大きかった。
これに対し、実施例1〜14に係る光波長変換シートにおいては、光波長変換シートにおける耐劣化性試験前後の輝度変化が±10%の範囲内であったので、光波長変換層は量子ドットの劣化抑制機能を有していた。これは、光波長変換粒子を用いていたためであると考えられる。このため、実施例1〜14に係る光波長変換シートにおいては、水蒸気透過率および酸素透過率の両方が高いが、実施例1、2と比較例1、実施例3、4と比較例2、実施例5、6と比較例3、実施例7、8と比較例4、実施例9、10と比較例5、実施例11、12と比較例6、実施例13、14と比較例7に係る光波長変換シートの中央部における耐久性試験前後の輝度変化をそれぞれ比べると、実施例1〜14に係る光波長変換シートの方が、比較例1〜7よりも中央部における耐久性試験前後の輝度変化が小さかった。また実施例1〜14に係る光波長変換シートにおける周縁部の劣化幅は、比較例8、9に係る光波長変換シートにおける周縁部の劣化幅より小さかった。したがって、実施例1〜14に係る光波長変換シートは、バリアフィルムを設けなくとも、量子ドットの劣化を抑制できることが確認された。また、実施例1〜14に係る光波長変換シートは、バリアフィルムを備えていないため、点状の輝度欠点は確認されなかった、または若干確認されたが実用上問題のないレベルであり、また比較例8、9に係る光波長変換シートよりも厚みが極めて薄かった。
比較例10〜17に係る光波長変換シートにおいては、光波長変換シートにおける耐劣化性試験前後の輝度変化が±10%の範囲内には無かったので、光波長変換層は量子ドットの劣化抑制機能を有していなかった。一方で、比較例10〜17に係る光波長変換シートにおいては、水蒸気透過率および酸素透過率が高かった。このため、耐久性試験によって量子ドットが劣化してしまい、中央部における耐久性試験前後の輝度変化や周縁部の劣化幅が大きかった。
比較例18、19に係る光波長変換シートにおいては、バリアフィルムを備えているので、点状の輝度欠点が多く、また水蒸気透過率および酸素透過率が極めて低かったが、周縁部の劣化幅が大きかった。
これに対し、実施例15〜25に係る光波長変換シートにおいては、光波長変換シートにおける耐劣化性試験前後の輝度変化が±10%の範囲内であったので、光波長変換層は量子ドットの劣化抑制機能を有していた。これは、蛍光X線分析により測定された光波長変換層中の上記特定の元素の含有量が0.5質量%以上であったためであると考えられる。このため、実施例15〜25に係る光波長変換シートにおいては、水蒸気透過率および酸素透過率の両方が高いが、実施例15〜21と比較例10および11、実施例22と比較例12および13、実施例23と比較例14および15、実施例24、25と比較例16および17に係る光波長変換シートの中央部における耐久性試験前後の輝度変化および周縁部の劣化幅をそれぞれ比べると、実施例15〜25に係る光波長変換シートの方が、比較例10〜17よりも中央部における耐久性試験前後の輝度変化が小さく、また周縁部の劣化幅も小さかった。また実施例15〜25に係る光波長変換シートにおける周縁部の劣化幅は、比較例18、19に係る光波長変換シートにおける周縁部の劣化幅より小さかった。したがって、実施例15〜25に係る光波長変換シートは、バリアフィルムを設けなくとも、量子ドットの劣化を抑制できることが確認された。また、実施例15〜25に係る光波長変換シートは、バリアフィルムを備えていないため、点状の輝度欠点は確認されなかった、または若干確認されたが実用上問題のないレベルであった。さらに、実施例15〜23に係る光波長変換シートは、比較例18、19に係る光波長変換シートよりも少なくともバリア層の厚み分、厚みを薄くすることができ、また実施例24、25に係る光波長変換シートは、比較例18、19に係る光波長変換シートよりも厚みが極めて薄かった。
また、実施例13、14、24、25に係る光波長変換シートにおいて、オーバーコート層に対してスクラッチ試験を行い、その際の垂直力および水平力を測定したところ、実施例13、24に係る光波長変換シートは、共に垂直力が21μNであり、水平力が−11μNであり、実施例14、25に係る光波長変換シートは、共に垂直力が11μNであり、水平力が−6μNであった。これらのオーバーコート層は緻密な膜となり、光波長変換層を大気暴露から防ぐ能力を有していたが、光波長変換層を大気暴露から防ぐ能力においては実施例13、24に係る光波長変換シートのオーバーコート層の方が実施例14、25に係る光波長変換シートのオーバーコート層よりも高いと言える。スクラッチ試験は、ナノインデンテーション装置(製品名「TI950 TriboIndenter」、HYSITRON(ハイジトロン)社製)を用いて、オーバーコート層の断面からオーバーコート層の内部方向に圧子(Cube Corner:Ti037_110410(12))を50nm押し込み、その深さを一定として、30秒間この圧子を移動速度4μm/minで水平方向に移動させることによって行い、その際の垂直力(荷重)および水平力を測定し、測定された垂直力および水平力の平均値を求め、さらにこのスクラッチ試験を5回繰り返すことによって求めた垂直力の5つの平均値の平均値(5回平均値)を垂直力とし、また水平力の5つの平均値の平均値(5回平均値)を水平力とした。
なお、上記実施例においては、緑色発光量子ドットや赤色発光量子ドットのコア材料としてCdSeを用いているが、コア材料としてInP、InAs等の非Cd系材料を用いても、上記実施例と同様の結果が得られた。