JP2017118787A - 直流モータのブラシ寿命を知らせる方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブラシを有する直流モータにおいて、運転条件が変化しながら使用される場合でも、より正確にブラシの摩耗度合いを推定する。
【解決手段】参照モータの回転速度と電流の積を第一因子とし、回転速度を第二因子として、実験計画法により求めたブラシの摩耗速度の二つの関数に照らして、使用モータの回転速度と電流を測定し、その測定した回転速度と電流の積である第一因子および回転速度である第二因子に対する摩耗速度を推定し、合計の摩耗速度を時間で積分して摩耗量を推定する。さらには、参照モータについての電流に対するモータの温度上昇の関係式に照らして、使用モータの周囲温度からモータの温度上昇を算出して、温度上昇分による電流の増分値で前記電流を補正して摩耗速度を推定する。
【選択図】図4
【解決手段】参照モータの回転速度と電流の積を第一因子とし、回転速度を第二因子として、実験計画法により求めたブラシの摩耗速度の二つの関数に照らして、使用モータの回転速度と電流を測定し、その測定した回転速度と電流の積である第一因子および回転速度である第二因子に対する摩耗速度を推定し、合計の摩耗速度を時間で積分して摩耗量を推定する。さらには、参照モータについての電流に対するモータの温度上昇の関係式に照らして、使用モータの周囲温度からモータの温度上昇を算出して、温度上昇分による電流の増分値で前記電流を補正して摩耗速度を推定する。
【選択図】図4
Description
この発明は、直流モータのブラシ寿命を知らせる方法および装置に関し、より具体的には、整流子電動機など、ブラシを有する直流モータにおいて、運転に伴って摩耗するブラシの摩耗程度を推定して摩耗限界に達したことを知らせる方法および装置に関し、運転条件に応じて正確な摩耗程度が推定できるように工夫したものである。
ブラシを有する直流モータは、安価でトルクが強いので産業機器には広く使用されているが、使用に伴ってブラシが摩耗していくので、寿命が短いという欠点がある。そのため、ブラシ寿命を予知して交換に備える必要がある。直流モータのブラシ寿命を予知して警告する装置の例として、特許文献1に開示されたものが挙げられる。その装置は、モータの運転時間の積算値からブラシの摩耗度合いを推定して寿命を警告するもので、別途同型のモータについて実験的に求めておいた運転時間とブラシの摩耗量との関係式に照らして、運転時間によってブラシが磨耗限界に近づいたと判断されたら警告を発し、さらにブラシの磨耗限界に達したと判断されたらモータを強制停止するというものである。この装置は、常に同じ運転条件で使用されるモータの場合には、それなりに実用的である。
しかし、運転条件が常に同じとは限らないモータの場合は、ブラシの摩耗具合が運転条件に応じて変化し得るので、単純に運転時間の積算値のみから摩耗度合いを推定したのでは、正確でない虞がある。そこで、使用者によっては運転条件が変化することを前提とし、そのような場合でもより的確な摩耗度合いが推定できるようにした装置として、特許文献2に開示されたものが挙げられる。その装置は、モータ運転時の回転数と電流値をそれぞれ計測してデータ取得していき、それら回転数と電流値の乗算値から摩耗評価値を取得し、その摩耗評価値の積算値からブラシの摩耗度合いを推定して寿命を管理するもので、別途同型のモータについて実験的に求めておいた回転数と電流値の乗算値と摩耗評価値との関係式に照らして、使用モータの回転数と電流値の乗算値からブラシの摩耗量を算出することにより、使用モータのブラシの摩耗限界を判定しようというものである。ブラシの摩耗は、モータの回転数や電流値に大きく左右されると考えられ、モータの回転数が増加するのに伴ってブラシの摩耗量が増加するであろうことおよびモータの電流が増加するのに伴ってブラシの摩耗量が増加するであろうことに着目して、この装置は、モータの回転数と電流値の積を捉えてブラシ寿命を管理するので、回転数や電流値が変化するような運転条件の場合でも、運転時間のみからブラシの摩耗量を推定する場合に比べて、ブラシの摩耗量をかなり正確に推定することができる。
しかしながら、例えば、電流=1A、回転速度=60rad/sの場合の摩耗速度と、電流=2A、回転速度=30rad/sの場合の摩耗速度を比較してみると、両者で電流と回転速度の積は同じであっても、摩耗速度が大きくことなることはあり得る。それ故、単純に電流と回転速度の積に基づいて摩耗速度を推定することは、精度が高くない心配があった。また、ブラシの摩耗のメカニズムは、種々の要因が絡んでいるため、現在でも完全には解明されていないし、ブラシの摩耗により生じるモータの動作不具合の要因も単純ではないため、モータの寿命を正確に予報することは難しい。難しいながらも、ブラシの摩耗量を推定する精度を少しでも高めることができれば、モータをその寿命いっぱいに使用することにつながり、早すぎる無駄な交換をしないですむので、資源の効率的な使用ができて有益である。
この発明は、ブラシを有する直流モータにおいて、運転条件が変化しながら使用される場合でも、より正確にブラシの摩耗度合いを推定できる方法および装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、この発明による直流モータのブラシ寿命を知らせる方法および装置は、モータ運転時の電流と回転速度の積を第一因子としておよびモータ運転時の回転速度または電流の何れかを第二因子として、ブラシの摩耗速度を決める2つの因子として捉えて、この2つの因子からブラシの摩耗程度を推定しようというものである。すなわち、モータ運転時の電流と回転速度の積である一つの因子からブラシの摩耗速度を判断するよりも、さらに精度を上げてブラシの摩耗度合いを推定しようというものである。
すなわち、この発明の方法は、ブラシを有する直流モータが使用される場合に当該使用モータのブラシ寿命を知らせる方法であって、使用モータと同型の参照モータについて、予め参照モータの複数の相異なる運転条件についてモータ運転時の電流、回転速度およびブラシ摩耗速度を測定して、電流と回転速度の積を第一因子として第一因子の複数水準に対しておよびモータ運転時の回転速度または電流の何れかを第二因子として第二因子の複数水準に対してそれぞれブラシの摩耗速度を表す第一のブラシ摩耗速度関数および第二のブラシ摩耗速度関数を得ておくとともに、参照モータのブラシの長さに対してブラシの摩耗量の限界値を設定しておき、使用モータが運転される場合に、使用モータの電流および回転速度を測定するステップと、使用モータの測定された電流と回転速度の積を使用モータ第一因子として算出し出力するステップと、使用モータの測定された回転速度または電流の何れかを使用モータ第二因子を出力するステップと、第一のブラシ摩耗速度関数を参照して使用モータ第一因子に対する使用モータの第一ブラシ摩耗速度を取得するステップと、第二のブラシ摩耗速度関数を参照して使用モータ第二因子に対する使用モータの第二ブラシ摩耗速度を取得するステップと、使用モータの第一ブラシ摩耗速度と第二ブラシ摩耗速度の和を時間的に積分して使用モータのブラシの摩耗量を推定するステップと、推定されたブラシの摩耗量をブラシの摩耗量の限界値と比較して使用モータのブラシ寿命を知らせるステップとを含んで構成してなることを特徴とする。
加えて、この発明の方法は、予め、前記参照モータについて周囲温度に対するモータの温度変化および電流の変化の関係式を求めておき、さらに、前記使用モータが運転される場合に、前記使用モータの周囲温度を測定するステップと、前記電流の変化の関係式を参照して前記使用モータの周囲温度に対する使用モータの補正電流値を取得するステップと、前記取得した使用モータの補正電流値を前記電流と回転速度の積を求めるための電流として使用するステップとを含んで構成してなることを特徴とする。
また、この発明の装置は、ブラシを有する直流モータが使用される場合に当該使用モータのブラシ寿命を知らせる装置であって、使用モータと同型の参照モータについて、予め参照モータの複数の相異なる運転条件についてモータ運転時の電流、回転速度およびブラシ摩耗速度を測定して得られた、参照モータの電流と回転速度の積を第一因子として第一因子の複数水準に対するブラシの摩耗速度を表す第一のブラシ摩耗速度関数を記憶する手段と、参照モータの回転速度または電流の何れかを第二因子として第二因子の複数水準に対するブラシの摩耗速度を表す第二のブラシ摩耗速度関数を記憶する手段と、参照モータのブラシの長さに対して設定したブラシの摩耗量の限界値を記憶する手段と、使用モータが運転される場合に、使用モータの電流および回転速度を測定して、使用モータの電流と回転速度の積を使用モータ第一因子として算出し出力する手段と、使用モータの回転速度または電流の何れかを使用モータ第二因子として出力する手段と、第一のブラシ摩耗速度関数を参照して使用モータ第一因子に対する使用モータの第一ブラシ摩耗速度を取得する手段と、第二のブラシ摩耗速度関数を参照して使用モータ第二因子に対する使用モータの第二ブラシ摩耗速度を取得する手段と、使用モータの第一ブラシ摩耗速度と第二のブラシ摩耗速度の和を時間的に積分して使用モータのブラシの摩耗量を推定する手段と、推定されたブラシの摩耗量をブラシの摩耗量の限界値と比較して使用モータのブラシ寿命を知らせる手段とを備えてなることを特徴とする。
加えて、この発明の装置は、さらに、前記使用モータと同型の参照モータについて、予め当該記参照モータの複数の相異なる周囲温度について、周囲温度に対するモータの温度変化および電流の変化の関係式を求めて当該関係式を記憶する手段と、前記使用モータが運転される場合に、前記使用モータの周囲温度を測定する手段と、前記電流の変化の関係式を参照して前記使用モータの周囲温度に対する使用モータの補正電流値を取得する手段と、前記取得した使用モータの補正電流値を前記電流と回転速度の積を求めるための電流として使用する手段とを備えてなることを特徴とする。
この発明によれば、モータのブラシの摩耗速度を、モータの運転時の電流と回転速度の積を第一因子とし、それに加えて回転速度または電流の何れかを第二因子として採用し、ブラシの摩耗速度が二種の因子に対する関係で定まるとして把握するので、ブラシの摩耗量を単に運転時間に基づいて推定する場合に比べて、また、さらには、電流と回転数の積という一つの因子についての関数に基づいて推定する場合に比べて、より精度を上げてブラシの摩耗量を推定することができる。また、「ブラシの摩耗量と、電流と回転数の積に強い相関がある」との予想の下に、電流と回転速度の積を第一因子とし、さらに第一因子の主効果だけでは不足な分を第二因子で補っており、このように因子を工夫することにより、電流と回転速度をそれぞれ独立に因子として取り上げるやり方に比べて交互作用が小さくなることが期待できるし、それ故に主効果のみによる摩耗量の正確な推定も期待できる。
さらに、この発明によれば、周囲温度に応じてモータの温度が変化する場合に、温度変化によるブラシ摩耗速度の変化を考慮すると、より精度を上げてブラシの摩耗量を推定することができる。
以下、この発明の第一の実施形態について説明する。まず、モータの運転条件に対してブラシの摩耗速度がどのように変化するかを参照モータについて実験してデータを取る。モータの運転条件として電流と回転速度をそれぞれ所望の値に設定するには、モータに供給する電圧とモータに掛ける負荷を調製することによって行う。実験は、モータの電流と回転速度の積を第一因子とし、回転速度または電流の何れかを第二因子として実験計画法従って行いデータ取得して因果関係の関数を求めるが、ここでは回転速度を第二因子とした場合について説明する。電流を第二因子とした場合でも、関数の形は多少異なるが、ブラシの摩耗量の推定には実用上有用である。なお、データ取得は、周囲温度条件を同じ(例えば、0℃)にして2元配置実験を行えば、取得データに周囲温度の違いによるばらつきが含まれないので、好都合である。
発明者による実験例では、第一因子Pおよび第二因子Qを図1の表に示すように設定した。すなわち、第一因子Pは、P1=150[Arad/s](アンペアラジアン毎秒)、P2=200[Arad/s]、P3=250[Arad/s]、P4=300[Arad/s]の4水準、第二因子は、Q1=300[rad/s](ラジアン毎秒)、Q2=325[rad/s]、Q3=350[rad/s]の3水準を設定した。そして、これらの4水準と3水準の各組合せについて実験計画法に従って各運転条件下でのブラシの摩耗速度xij[nm/s](ナノメートル毎秒)(ここに、iは第一因子の水準番号、jは第二因子の水準番号)を測定した。測定結果を図2に示す。
各摩耗速度xijは、次式[数1]で表される内容を含んで成り立っている。
[数1] xij=m+pi +qi +εij
ここに、mは図2の摩耗速度xijの全データの平均値であり、pi は第一因子の主効果としての摩耗速度(平均値との差異)、qj は第二因子の主効果としての摩耗速度(平均値との差異)、εijは誤差の項(平均=0、分散=δ2 の正規分布)である。すなわち、各項は、次式[数2]で表される。
ここに、mは図2の摩耗速度xijの全データの平均値であり、pi は第一因子の主効果としての摩耗速度(平均値との差異)、qj は第二因子の主効果としての摩耗速度(平均値との差異)、εijは誤差の項(平均=0、分散=δ2 の正規分布)である。すなわち、各項は、次式[数2]で表される。
図2の測定データからp1 〜p4 およびq1 〜q3 を求めると、以下のとおりである。
p1 = 2.1−6.5=−4.4、
p2 = 5.0−6.5=−1.5、
p3 = 7.8−6.5=+1.3、
p4 =11.1−6.5=+4.6、
q1 = 5.7−6.5=−0.8、
q2 = 6.5−6.5= 0、
q3 = 7.3−6.5=+0.8。
p1 = 2.1−6.5=−4.4、
p2 = 5.0−6.5=−1.5、
p3 = 7.8−6.5=+1.3、
p4 =11.1−6.5=+4.6、
q1 = 5.7−6.5=−0.8、
q2 = 6.5−6.5= 0、
q3 = 7.3−6.5=+0.8。
上記の第一因子の主効果としての摩耗速度および第二因子の主効果としての摩耗速度をグラフ上に測定点ごとにプロットし、各測定点の間を例えば区分線形補間により補間して第一関数および第二関数としてグラフに表すと、図3の(a)および(b)のようになる。(a)の第一関数は、第一因子の関数として第一関数記憶装置に記憶しておき、(b)の第二関数は、第二因子の関数として第二関数記憶装置に記憶しておく。また、この関係式では、平均値を別項として立てているので、平均値を平均値記憶装置に記憶しておく。なお、上記の説明では、摩耗速度xijの平均値を独立した項として立てて、第一因子の主効果と第二因子の主効果を平均値からの差異として把握したが、例えば、第一因子の主効果の値の中に平均値を取り込んだ関数として解析しても、理論的には等価である。さらに、モータのブラシの長さに対してその摩耗限界値を決めて、摩耗限界記憶装置に記憶しておく。
次に、実際に使用する同型のモータにおいて、ブラシの摩耗程度を推定する方法および装置について説明する。図4は、この発明の一実施形態におけるモータのブラシ寿命を知らせる装置のブロック線図である。使用するモータ2には、回転速度測定装置21および電流測定装置22が接続されていて、その回転速度ω(t)および電流i(t)をそれぞれ時々刻々測定する。測定された回転速度ω(t)と電流i(t)は、一方では、回転速度と電流の積23を算出して、当該積の値を第一関数記憶装置11の記憶内容である第一関数に照らして第一因子の主効果としての推定ブラシ摩耗速度p(t)を時々刻々求める。また、他方では、回転速度の値を第二関数記憶装置12の記憶内容である第二関数に照らして第二因子の主効果としての推定ブラシ摩耗速度q(t)を時々刻々求める。摩耗速度の平均値が別項で記憶されている場合には、平均値記憶装置10からブラシ摩耗速度の平均値mを取得する。これら摩耗速度p(t)、q(t)、mを合計して、総合摩耗速度の推定値のグラフを得る。
図5において、(a)は、回転速度ω(t)の時間的変化を示すグラフ、(b)は、電流i(t)の時間的変化を示すグラフ、(c)は、回転速度ω(t)と電流i(t)の積の時間的変化を示すグラフである。図6において、(a)は、図5の(c)のグラフに示す回転速度ω(t)と電流i(t)の積を図3の(a)に示す第一関数に照らして取得したブラシの推定摩耗速度p(t)の時間的変化を示すグラフであり、(b)は、図5の(a)のグラフに示す回転速度ω(t)を図3の(b)に示す第二関数に照らして取得したブラシの推定摩耗速度q(t)の時間的変化を示すグラフである。図6の(c)は、図6の(a)の推定摩耗速度p(t)と図6の(b)の推定摩耗速度q(t)の和にさらに平均値mを加算して得た推定摩耗速度の合計値のグラフである。図4に示すように、この推定摩耗速度の合計値を時間に対して積分(30)すると図7に示すような推定摩耗量d(t)のグラフが得られる。ブラシの推定摩耗量d(t)を別途決めてあるブラシの摩耗限界値dx と比較(31)して、ブラシの寿命を知らせ(32)る。
次に、モータの温度(ブラシの温度)に応じてブラシの摩耗速度が変化することについて考察する。ブラシの摩耗は、電流および回転速度に強く影響されるが、温度にも影響されると考えられる。しかし、電流、回転速度および温度の3つの因子による3元配置実験を行うのは、データ数が多くなりすぎて現実的でない。そこで、発明者は、温度上昇による摩耗速度の増加を等価的に電流増加による摩耗速度の増加に置換して、上記第一の実施形態における2元配置の実験データを利用して求める手法を案出した。これにより、上記第一の実施形態において参照モータについて2元配置の実験データを取得した場合の周囲温度と異なる周囲温度で実際のモータが使用された場合に、温度の差異による推定摩耗速度のずれを小さくすることができる。以下に、第二の実施形態として説明する。
まず、参照モータについて、モータの熱特性を考察する。図8に示すように、巻線抵抗がRL[Ω]であるモータをロックした状態で一定電流I[A]を流す。モータの熱容量をC[J/K]、モータと周囲間の熱抵抗をRth[℃/W]、周囲温度をTa[℃]、モータ温度をTm[℃]、微少時間Δt[s]内に上昇する微少温度上昇をΔTm[K]として、これらの関係を式で表すと、次式[数3]となる。
上式[数3]において、RL ・I2 はモータ巻線による発熱率[W]、(Tm(t)−Ta)/Rthは放熱率[W]、これら2項の差は純発熱率[W]、この差にΔtを掛けた量は微少時間内の純発熱量[J]、これを熱容量C[J/K]で割ると、モータ温度の変化分ΔTm[K]である。
式[数3]を微分方程式の形で表すと、次式[数4]となる。
上式[数4]をモータ温度Tmについて解くと、次式[数5]が得られる。
上式[数5]をグラフで表すと、図9の形を呈する。図9は、ロックした状態で一定電流を流したモータにおいて、周囲温度がTaの場合のモータ温度Tmの時間的変化を示している。
以上から、モータをロックした状態で一定の電流を流して、ブラシ温度の時系列データを採ると、モータのC・RthとRL・Rthの2つの値が得られることが分かる。
次いで、周囲温度Taとモータ電流I(t)の時系列データからマイコンでモータ温度Tmを算出するために、式[数4]を離散化した式を使って、次式[数6]のように解く。
すなわち、C・RthとRL・Rthが分かっていれば、ΔTmが求まる。
以上の原理を応用して、図10の(a)に示すように、使用モータMについて電流i(t)と周囲温度Ta(t)の時間的変化からモータ温度Tm(t)の時間的変化を算出する。すなわち、[数6]の最下段の式でI(t)=i(t)と置いた次式[数7]で、C・RthとRL・Rthとi(t)とTa(t)とからΔTmを求め、ΔTmを積分してTm(t)を得る。図10の(b)と(c)は、それぞれ電流i(t)とモータ温度Tm(t)の時間的変化を示す。
前述したように、2元配置実験データは、周囲温度条件を同じ(例えば、0℃。以後、この温度をTa'とする)で取得したが、それらデータを任意の周囲温度Taについて利用するために、温度の違いを等価の電流補正値に置き換えることについて考察する。そこで、図11の(a)を参照して、仮想モータM'について、一定の周囲温度Ta'[℃]で同じモータ温度を得るにはどれだけのモータ電流が必要かを求める。ただし、モータ温度Tm(t)を得ることができるモータ電流を直接計算しようとすると、計算されたモータ電流が極端に大きい値となる場合があるので、まず、Tm(t)を滑らかにするために1次ローパスフィルタ処理[=1/(1+s・τ)]を施してTm'(t)を計算する。式[数8]は、1次LPFの演算内容を示す。
1次ローパスフィルタ(LPF)であるから時定数τを指定する必要があるが、それは前出の時定数C・Rthと比べて十分に小さな値、例えば、C・Rth/10のような値にすればよい。図11の(b)は、モータ温度Tm(t)およびTm'(t)の時間的変化を示すグラフである。ここに、Tm'(t)の初期条件は、Tm'(0)=Ta'とする。
最後に、図12の(a)を参照して、仮想モータM'について、周囲温度が一定のTa'
である場合にモータ温度がTm'(t)となるようなモータ電流i'(t)を次式[数9]により求める。
である場合にモータ温度がTm'(t)となるようなモータ電流i'(t)を次式[数9]により求める。
図12の(b)および(c)は、それぞれ電流および温度の時間的変化を示すグラフである。このようにして得られた温度変化に等価的な補正電流値i'(t)を前記第一実施形態の図4に示したブロック図の流れにおける使用モータの電流値i(t)の代わりに使用してブラシの摩耗量を推定し、ブラシの寿命を知らせる。以上説明した第二の実施形態の流れで図4に対して変更になる部分、すなわち、使用モータ20についての周囲温度Ta(t)の測定41、参照モータについての巻線抵抗RL×熱抵抗Rthの記憶42、熱容量C×熱抵抗Rthの記憶43、周囲温度Taの場合のモータ温度Tm(t)の算出44、周囲温度Ta'の場合のモータ温度Tm'(t)の算出45、周囲温度Ta'の場合の等価電流i'(t)の算出46の部分を図13に図解する。
以上の説明から理解できるように、この発明によれば、モータの回転速度と電流の積である第一因子および回転速度である第二因子という二つの観点から測定したブラシの摩耗速度に基づいて実際の使用モータにおいて測定した回転速度と電流に対してブラシの摩耗量を推定するので、より正確なブラシの寿命を知らせることができる。
また、第二の実施形態のように温度の要因を加えてブラシの摩耗量を推定すると、より精度の高い推定ができる。
10…平均値記憶、11…第一関数記憶、12…第二関数記憶、13…ブラシの摩耗限界値記憶、20…使用モータ、21…回転数測定、22…電流測定、23…回転速度×電流、30…時間に対して積分、31…比較、32…寿命知らせ、41…周囲温度測定、42…巻線抵抗RL×熱抵抗Rthの記憶、43…熱容量C×熱抵抗Rthの記憶、44…モータ温度Tm(t)の算出、45…モータ温度Tm'(t)の算出、46…等価電流増分i'(t)の算出。
Claims (8)
- ブラシを有する直流モータが使用される場合に当該使用モータのブラシ寿命を知らせる方法であって、
前記使用モータと同型の参照モータについて、予め当該参照モータの複数の相異なる運転条件についてモータ運転時の電流、回転速度およびブラシ摩耗速度を測定して、当該電流と当該回転速度の積を第一因子として第一因子の複数水準に対しておよびモータ運転時の回転速度または電流の何れかを第二因子として第二の因子の複数水準に対してそれぞれブラシの摩耗速度を表す第一のブラシ摩耗速度関数および第二のブラシ摩耗速度関数を得ておくとともに、前記参照モータのブラシの長さに対してブラシの摩耗量の限界値を設定しておき、
前記使用モータが運転される場合に、前記使用モータの電流および回転速度を測定するステップと、
前記使用モータの測定された電流と回転速度の積を使用モータ第一因子として算出し出力するステップと、
前記使用モータの測定された回転速度または電流の何れかを使用モータ第二因子として出力するステップと、
前記第一のブラシ摩耗速度関数を参照して前記使用モータ第一因子に対する前記使用モータの第一ブラシ摩耗速度を取得するステップと、
前記第二のブラシ摩耗速度関数を参照して前記使用モータ第二因子に対する前記使用モータの第二ブラシ摩耗速度を取得するステップと、
前記使用モータの第一ブラシ摩耗速度と第二のブラシ摩耗速度の和を時間的に積分して前記使用モータのブラシの摩耗量を推定するステップと、
前記推定されたブラシの摩耗量をブラシの摩耗量の前記限界値と比較して前記使用モータのブラシ寿命を知らせるステップと
を含んで構成してなる使用モータのブラシ寿命を知らせる方法。 - 請求項1に記載の使用モータのブラシ寿命を知らせる方法において、
前記第二因子としてモータの回転速度を採用する
ことを特徴とする方法。 - 請求項1に記載の使用モータのブラシ寿命を知らせる方法において、
前記第二因子としてモータの電流を採用する
ことを特徴とする方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の使用モータのブラシ寿命を知らせる方法であって、
予め、前記参照モータについて周囲温度に対するモータの温度変化および電流の変化の関係式を求めておき、
さらに、前記使用モータが運転される場合に、前記使用モータの周囲温度を測定するステップと、
前記電流の変化の関係式を参照して前記使用モータの周囲温度に対する使用モータの補正電流値を取得するステップと、
前記取得した使用モータの補正電流値を前記電流と回転速度の積を求めるための電流として使用するステップと
を含んで構成してなることを特徴とする方法。 - ブラシを有する直流モータが使用される場合に当該使用モータのブラシ寿命を知らせる装置であって、
前記使用モータと同型の参照モータについて、予め当該参照モータの複数の相異なる運転条件についてモータ運転時の電流、回転速度およびブラシ摩耗速度を測定して得られた、前記参照モータの電流と回転速度の積を第一因子として第一因子の複数水準に対するブラシの摩耗速度を表す第一のブラシ摩耗速度関数を記憶する手段と、
前記参照モータの回転速度または電流の何れかを第二因子として第二因子の複数水準に対するブラシの摩耗速度を表す第二のブラシ摩耗速度関数を記憶する手段と、
前記参照モータのブラシの長さに対して設定したブラシの摩耗量の限界値を記憶する手段と、
前記使用モータが運転される場合に、前記使用モータの電流および回転速度を測定して、前記使用モータの電流と回転速度の積を使用モータ第一因子として算出し出力する手段と、
前記使用モータの回転速度または電流の何れかを使用モータ第二因子として出力する手段と、
前記第一のブラシ摩耗速度関数を参照して前記使用モータ第一因子に対する前記使用モータの第一ブラシ摩耗速度を取得する手段と、
前記第二のブラシ摩耗速度関数を参照して前記使用モータ第二因子に対する前記使用モータの第二ブラシ摩耗速度を取得する手段と、
前記使用モータの第一ブラシ摩耗速度と第二のブラシ摩耗速度の和を時間的に積分して前記使用モータのブラシの摩耗量を推定する手段と、
前記推定されたブラシの摩耗量をブラシの摩耗量の前記限界値と比較して前記使用モータのブラシ寿命を知らせる手段と
を備えてなる使用モータのブラシ寿命を知らせる装置。 - 請求項5に記載の使用モータのブラシ寿命を知らせる装置において、
前記第二因子としてモータの回転速度を採用する
ことを特徴とする装置。 - 請求項5に記載の使用モータのブラシ寿命を知らせる装置において、
前記第二因子としてモータの電流を採用する
ことを特徴とする装置。 - 請求項5〜7のいずれかに記載の使用モータのブラシ寿命を知らせる装置であって、さらに、
前記使用モータと同型の参照モータについて、予め当該記参照モータの複数の相異なる周囲温度について、周囲温度に対するモータの温度変化および電流の変化の関係式を求めて当該関係式を記憶する手段と、
前記使用モータが運転される場合に、前記使用モータの周囲温度を測定する手段と、
前記電流の変化の関係式を参照して前記使用モータの周囲温度に対する使用モータの補正電流値を取得する手段と、
前記取得した使用モータの補正電流値を前記電流と回転速度の積を求めるための電流として使用する手段と
を備えてなることを特徴とする装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015254776A JP2017118787A (ja) | 2015-12-25 | 2015-12-25 | 直流モータのブラシ寿命を知らせる方法および装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015254776A JP2017118787A (ja) | 2015-12-25 | 2015-12-25 | 直流モータのブラシ寿命を知らせる方法および装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2017118787A true JP2017118787A (ja) | 2017-06-29 |
Family
ID=59230971
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2015254776A Pending JP2017118787A (ja) | 2015-12-25 | 2015-12-25 | 直流モータのブラシ寿命を知らせる方法および装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2017118787A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113172308A (zh) * | 2020-01-24 | 2021-07-27 | 株式会社神户制钢所 | 焊丝的进给控制方法、焊丝的进给装置以及焊接系统 |
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2015
- 2015-12-25 JP JP2015254776A patent/JP2017118787A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN113172308A (zh) * | 2020-01-24 | 2021-07-27 | 株式会社神户制钢所 | 焊丝的进给控制方法、焊丝的进给装置以及焊接系统 |
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