以下に図面を参照しながら、本発明に係るマルチプロジェクタシステム、プロジェクタ装置、調整装置および調整方法、ならびに、調整プログラムの好適な実施形態を説明する。係る実施形態に示す具体的な数値および外観構成などは、本発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本発明に直接関係のない要素は詳細な説明および図示を省略している。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るマルチプロジェクタシステムを概略的に示す。図1に示されるマルチプロジェクタシステム1は、複数台のプロジェクタ装置(PJ)101および102と、画像出力装置11と、調整装置12と、カメラ13とを含む。
画像出力装置11は、プロジェクタ装置101および102それぞれに対して画像データを出力する。プロジェクタ装置101および102は、それぞれ、画像出力装置11から出力された画像データを入力画像データとして入力する。そして、プロジェクタ装置101および102は、それぞれ入力画像データに対して所定の画像処理を施して投射画像データを生成し、光源からの光を光変調器により投射画像データに基づき変調して投射画像201および202としてスクリーン14に投射する。なお、プロジェクタ装置101および102は、それぞれ水平に設置されているものとする。
ここで、2台のプロジェクタ装置101および102は、投射画像201および202を、互いに対峙する端部が所定の幅で重なるように、共通のスクリーン14に対して投射する。このとき、投射画像201および投射画像202が重なる部分を、重複領域21と呼ぶ。
このように、2の投射画像201および202を1のスクリーン14に並べて投射する場合に、2台のプロジェクタ装置101および102は、投射画像201および202の接合部分に重複領域21を持たせるようにスクリーン14に投射する。このとき、投射画像201および202それぞれは、重複領域21に対応する領域に、互いに同一の画像を、輝度を半分にして配置する。これにより、2の投射画像201および202が恰も連続した1つの大きな投射画像であるかのように、スクリーン14に投射される。
この場合、プロジェクタ装置101および102は、スクリーン14に対して投射画像201および202を正しい位置に投射する必要がある。より具体的には、プロジェクタ装置101および102は、投射画像201および202の、スクリーン14上での投射位置を、水平方向および垂直方向のそれぞれについて調整して、投射画像201における重複領域21に対応する領域が投射される位置と、投射画像202における重複領域21に対応する領域が投射される位置とを一致させる。
以下、投射画像201と投射画像202とで重複領域21に対応する領域が投射される位置が一致する場合の投射画像201および202の位置関係を、適宜、正しい位置関係と呼ぶ。
ここで、投射画像201および202の投射位置は、画素単位で調整すると好ましい。例えば、連続した1の画像を2の画像に分割して投射画像201および202として投射する場合、両者の位置が水平および垂直方向に1画素分でもずれていると、その部分で投射画像が不連続になり、見た目に違和感を与えてしまうおそれがある。
第1の実施形態に係るマルチプロジェクタシステム1では、プロジェクタ装置101および102が投射画像201および202をスクリーン14に投射させる際に、投射画像201および202が重複領域21を持つように、投射画像201および202の位置を決める。そして、マルチプロジェクタシステム1が有するカメラ13がスクリーン14上の重複領域21を含む画像を撮像し、撮像して得られた撮像画像データを調整装置12で解析した結果に基づき、投射画像201および202が正しい位置に投射されるように、プロジェクタ装置101および102による投射光の射出位置を調整する。投射光の射出位置を調整することで、投射画像の投射位置が調整される。
図2を用いて、第1の実施形態に係る投射光の射出位置の調整方法について、概略的に説明する。以下では、プロジェクタ装置101および102は、それぞれの投射画像をスクリーン14に対して水平方向に並べて投射するものとする。また、便宜上、プロジェクタ装置101がスクリーン14の左側に第1の投射画像を投射し、プロジェクタ装置102がスクリーン14の右側に第2の投射画像を投射するものとする。したがって、スクリーン14においてプロジェクタ装置101による第1の投射画像の右端の一部と、プロジェクタ装置102による第2の投射画像の左端の一部とが重ねられて、重複領域が構成されることになる。
第1の実施形態に係るマルチプロジェクタシステム1において、画像出力装置11は、プロジェクタ装置101および102のそれぞれについて、位置合わせ用の画像データを出力する。図2(a)および図2(b)は、この位置合わせ用の画像データによる投射画像の例を示す。図2(a)は、プロジェクタ装置101について出力された位置合わせ用の画像データによる投射画像301(調整用投射画像301とする)の例を示す。また、図2(b)は、プロジェクタ装置102について出力された位置合わせ用の画像データによる投射画像302(調整用投射画像302とする)の例を示す。
なお、図2(a)および図2(b)、ならびに、以降の同様な図において、縦方向を画像の垂直方向(V)、横方向を画像の水平方向(H)とする。
図2(a)に示される調整用投射画像301と、図2(b)に示される調整用投射画像302は、右端部分と左端部分とが重ねられて、スクリーン14に投射される。図2(c)は、調整用投射画像301と調整用投射画像302とが重ねられて投射された例を示す。図2(c)において、調整用投射画像301および302が重ねられた部分を、重複領域33’として示す。また、スクリーン14に投射される調整用投射画像301の左端から、調整用投射画像302の右端までを含む投射画像を、全体投射画像300と呼ぶ。
図2(a)に例示する調整用投射画像301において、重複領域33’に対応する領域331は、2の領域310および311を含む。領域310は、図中に矢印で示されるように、垂直方向に、上から下に向けて一定の傾斜で輝度が減少するグラデーションの画像となっている。また、領域311は、領域310のグラデーションの輝度の傾斜の方向に対して交差する方向に、図の左側から右側に向けて一定の傾斜で輝度が減少(図中の矢印参照)するグラデーションの画像となっている。
ここで、グラデーションによる最大の輝度および最小の輝度は、それぞれ画像データにおける最大輝度および最小輝度であるものとする。一例として、画像データを構成する各画素のビット深度が8ビットである場合、最大輝度の輝度値が255、最小輝度の輝度値が0となり、グラデーションにより輝度が輝度値255から輝度値0に減少する。また、グラデーションにおける輝度の傾斜は、一次関数的であるとする。以下、輝度によるグラデーションを含む領域310および領域311を、それぞれグラデーション領域310およびグラデーション領域311と呼ぶ。
調整用投射画像301において、グラデーション領域310および311以外の領域312は、輝度値が画像データの最大輝度とされる。詳細は後述するが、この領域312の輝度は、位置合わせ処理を行う際の基準になるので、以下、領域312を基準領域312と呼ぶ。
図2(b)に例示する調整用投射画像302において、重複領域33’に対応する領域332は、2の領域320および321を含む。これら領域320および321は、上述したグラデーション領域310および311とそれぞれ逆の方向の輝度の傾斜を持つグラデーション領域となっている。すなわち、グラデーション領域320は、図中に矢印で示されるように、下から上に向けて一定の傾斜で輝度が減少するグラデーションの画像となっている。また、グラデーション領域321は、領域320のグラデーションの輝度の傾斜の方向に対して交差する方向に、図の右から左に向けて一定の傾斜で輝度が減少するグラデーションの画像となっている。
さらに、グラデーション領域320および321以外の領域322は、輝度値が画像データの最大輝度とされる。領域322は、位置合わせ処理を行う際の基準になる基準領域322である。
なお、領域311における輝度の減少の方向と、領域310における輝度の減少の方向とは、互いに直交していることが望ましい。また、領域310における輝度の傾斜の方向は、必ずしも垂直方向でなくてもよい。以下では、領域311における輝度の減少の方向と、領域310における輝度の減少の方向とが直行し、領域310における輝度の傾斜の方向が垂直方向であるものとして説明する。
このように、プロジェクタ装置101および102は、構成された調整用投射画像301および302を、領域331および332を重ねてスクリーン14に投射する。すると、グラデーション領域310の画像とグラデーション領域320の画像とが合成されて、図2(c)に示す領域330の画像となる。同様に、グラデーション領域311の画像とグラデーション領域321の画像とが合成されて、図2(c)に示す領域331の画像となる。すなわち、領域330および331では、それぞれ互いに輝度が逆方向に傾斜するグラデーション画像が合成されることになる。
このとき、調整用投射画像301の投射位置と、調整用投射画像302の投射位置とが正しい位置関係にあると、各領域330および331の輝度が、重複領域33’周辺の領域312および322の輝度と同一となり、全体として輝度が均一な投射画像が得られる。一方、調整用投射画像301および302の投射位置が正しい位置関係に無い場合、各領域330および331の輝度が重複領域33’の周辺の領域312および322の輝度と異なってしまい、輝度が均一な投射画像とならない。
第1の実施形態では、この、各領域330および331の輝度と、基準領域312または322の輝度との差分に基づき、プロジェクタ装置101および102による投射画像の射出位置を調整して、プロジェクタ装置101による投射画像と、プロジェクタ装置102による投射画像との位置合わせを行う。
図3および図4を用いて、第1の実施形態に係る、グラデーション画像を用いた位置合わせについて、概略的に説明する。図3(a)は、図2(a)に示す調整用投射画像301の、グラデーション領域311を含む水平方向の輝度変化の例を示す。図3(a)において、位置aは、グラデーション領域311と領域312との境界を示し、位置bは、グラデーション領域311の右端すなわち調整用投射画像301の右端を示す。したがって、位置aおよび位置b間の距離Dは、重複領域33’の水平方向の幅を示す。領域312の輝度を、輝度L1とする。線341に示されるように、位置aから位置bまでの距離Dで、輝度L1から輝度L0まで、所定の傾斜で輝度が減少している。
図3(b)は、図2(b)に示す調整用投射画像302の、グラデーション領域321を含む水平方向の輝度変化の例を示す。図3(b)において、位置cは、グラデーション領域321の左端すなわち調整用投射画像302の左端を示し、位置dは、グラデーション領域321と領域322との境界を示す。領域322の輝度を、領域312と同様に輝度L1とする。この例では、線342に示されるように、位置cから位置dまでの距離Dで、輝度L0から輝度L1まで、所定の傾斜で輝度が増加している。
図4は、調整用投射画像301および302の領域331および332を合わせて重ねた場合の水平方向の輝度変化の例を示す。領域331と領域332とを、水平方向に位置を一致させて、正しい位置関係で重ねた場合の輝度変化の例を、図4(a)に線343Aとして示す。このように、輝度の傾斜が互いに逆方向の2のグラデーションにおいて輝度の最大値と最小値とがそれぞれ同一の場合、互いの傾斜の中央、すなわち、輝度が最大値の1/2の位置で輝度が一致するように各調整用投射画像301および302を重ねることで、全体として輝度が最大値(輝度L1)であって、輝度変化が無い投射画像を得ることができる。
図4(b)は、領域331と領域332とを、正しい位置関係に対して遠ざけて重ねた場合の輝度変化の例を示す。この場合、2のグラデーションの互いの傾斜における、輝度が最大値の1/2未満の位置で領域331と領域332とで輝度が一致する。そのため、線343Bに例示されるように、線341および342の傾斜部分が互いに重なる部分は、投射画像の輝度が輝度L1未満となり、周囲(領域312および322)と比べて輝度L1との差分の輝度ΔLの分だけ暗くなることになる。
図4(c)は、領域331と領域332とを、正しい位置関係に対して近付けて重ねた場合の輝度変化の例を示す。この場合、2のグラデーションの互いの傾斜における、輝度が最大値の1/2を超える位置で領域331と領域332とで輝度が一致する。そのため、線343Cに例示されるように、線341および342の傾斜部分が互いに重なる部分は、投射画像の輝度が輝度L1を超え、周囲(領域312および322)と比べて輝度L1との差分の輝度ΔLの分だけ明るくなることになる。
このように、第1の実施形態によれば、領域331と領域332とに互いに輝度の傾斜の方向が逆のグラデーション領域を設けているため、領域331と領域332とを重ねた際の位置のずれが、領域331と領域332とを重ねた重複領域33’の輝度となって現れる。第1の実施形態では、この重複領域33’の輝度を取得することで、プロジェクタ装置101および102により投射される投射光の射出位置を調整する。
図5は、第1の実施形態に係るマルチプロジェクタシステム1の一例の構成を、より詳細に示す。なお、図5において、上述した図1と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
画像出力装置11は、画像出力部110を有する。画像出力部110は、上述した調整用投射画像301および302を投射するための各調整用画像データを出力する。各調整用画像データは、プロジェクタ装置101および102に対して、入力画像データとしてそれぞれ供給される。
画像出力部110は、所定のプログラムなどにより各調整用画像データを生成して出力してもよいし、ROM(Read Only Memory)などに予め記憶された投射画像データを読み出して出力してもよい。また、図5では、画像出力装置11が各プロジェクタ装置101および102に共通の構成として示されているが、これはこの例に限定されず、各プロジェクタ装置101および102それぞれについて、画像出力装置11を設けてもよい。
プロジェクタ装置101は、画像処理部1001と、画像表示デバイス1011と、光源1021と、照明光学系1031と、投射光学系1041と、レンズシフト部1051とを有する。同様に、プロジェクタ装置102は、画像処理部1002と、画像表示デバイス1012と、光源1022と、照明光学系1032と、投射光学系1042と、レンズシフト部1052とを有する。このように、プロジェクタ装置101および102は、共通する構成で実現が可能であるので、以下では、プロジェクタ装置101を例にとって説明する。
プロジェクタ装置101において、光源1021から射出された光が照明光学系1031を介して画像表示デバイス1011に入射される。画像処理部1001は、プロジェクタ装置101に入力された入力画像データに対して所定の画像処理を施し、投射画像データとして画像表示デバイス1011に対して出力する。
画像表示デバイス1011は、例えばLCOS(Liquid crystal on silicon)であって、入射された光を画像データに従い変調して出射する。画像表示デバイス1011は、照明光学系1031から入射された光を、画像処理部1001から供給された投射画像データに従い変調して出射する。画像表示デバイス1011から出射された光は、投射光学系1041およびレンズシフト部1051を介してスクリーン14に対して投射画像として投射される。画像処理部1001に入力される入力画像データが画像出力装置11から出力された調整用投射画像301を投射するための画像データである場合、スクリーン14に対して、当該調整用投射画像301が投射される。
なお、レンズシフト部1051は、後述する制御部121からの制御信号に従い、投射光学系1041から射出される光の光軸を、水平方向および垂直方向にそれぞれ移動させることができる。レンズシフト部1051で投射光学系1041から射出される光の光軸を移動させることで、投射画像がスクリーン14に投射される位置を調整することができる。
スクリーン14には、プロジェクタ装置102からも同様にして、調整用投射画像302が投射される。このとき、調整用投射画像301および302は、重複領域33’が形成されるように、スクリーン14に投射される。
調整装置12は、解析部120および制御部121を有する。解析部120は、カメラ13により、スクリーン14上の例えば全体投射画像300を含むように撮像された撮像画像データを解析し、上述した領域330および331における輝度変化を求める。解析部120は、求めた輝度変化を示す情報を、制御部121に供給する。
制御部121は、解析部120から供給された輝度変化を示す情報に基づき、調整用投射画像301および302の投射位置、すなわち、プロジェクタ装置101および102による投射画像の射出位置を調整するための制御信号を生成する。プロジェクタ装置101の射出位置を調整するための制御信号は、プロジェクタ装置101のレンズシフト部1051に供給される。また、プロジェクタ装置102の射出位置を調整するための制御信号は、プロジェクタ装置102のレンズシフト1052に供給される。
次に、上述した構成によって実行される位置合わせ処理について説明する。図6は、第1の実施形態に係る位置合わせ処理の例を示すフローチャートである。なお、以下では、プロジェクタ装置101および102は、投射画像201および202を水平方向に並べてスクリーン14に投射し、投射画像201が左側に、投射画像202が右側にそれぞれ配置されるものとする。また、位置合わせ処理には、図2(a)および図2(b)で説明した調整用投射画像301および302を用いるものとする。
図6において、ステップS10で、2台のプロジェクタ装置101および102(図では、それぞれプロジェクタPJ#1、PJ#2と記載)により、それぞれ調整用投射画像301および302がスクリーン14に投射される。このとき、調整用投射画像301および302によるスクリーン14上の画像が重複領域33’を持つように、プロジェクタ装置101および102の位置などが、例えば目視によりスクリーン14上の投射画像を確認しながら調整される。したがって、調整用投射画像301および302は、正しい位置関係に対してズレを含んで投射されている可能性がある。
次のステップS11で、カメラ13がスクリーン14上の投射画像を撮像する。カメラ13は、少なくともスクリーン14上の調整用投射画像301および302の全体を撮像画像が含み、且つ、煽り角による被写体画像の歪みが発生しないように撮像する。撮像画像は、調整装置12に供給され、解析部120に入力される。
次のステップS12で、解析部120は、入力された撮像画像を解析して、図2(c)に示すような、グラデーション領域310および320が重ねられた領域330における輝度と、グラデーション領域311および321が重ねられた領域331における輝度とを求める。また、解析部120は、重複領域33’外の領域312および322のうち少なくとも一方の輝度を求める。解析部120は、求めた輝度を示す情報を、制御部121に供給する。
制御部121は、解析部120から供給された各輝度に基づき、領域330および331における各輝度が、重複領域33’外の輝度と等しくなるように、プロジェクタ装置101および102による投射画像の射出位置を調整するための制御信号を生成する。生成された制御信号は、例えばプロジェクタ装置101のレンズシフト部1051に供給される。
これに限らず、制御信号をプロジェクタ装置102のレンズシフト部1052に供給してもよいし、レンズシフト部1051および1052にそれぞれ供給してもよい。
レンズシフト部1051は、供給された制御信号に従い、射出する光の光軸を水平方向および垂直方向に移動させ、投射画像の射出位置を調整する。これにより、スクリーン14上に投射される調整用投射画像301および302の位置関係が、正しい位置関係に修正される。
図7は、図6のステップS12の処理をより詳細に示すフローチャートである。ステップS100で、解析部120は、領域331を含む水平方向の輝度変化を取得し、領域331の輝度を求める。一例として、解析部120は、図8に例示されるように、カメラ13から供給された撮像画像に含まれる全体投射画像300において、矢印Aで示されるように、領域331と、領域312および領域322のうち少なくとも一方とを含むように水平方向に画素をスキャンして、各画素の輝度値を求める。
このとき、解析部120は、1ライン分のみをスキャンしてもよいし、数ライン分をスキャンして、垂直方向に位置が対応する各画素の輝度値を平均して用いてもよい。解析部120は、スキャンして求めた各画素の輝度値を、制御部121に供給する。
次のステップS101で、制御部121は、解析部120から供給された各画素の輝度値に基づき、投射画像の射出位置に対する水平方向の位置調整量を算出する。そして、制御部121は、算出した位置調整量に基づき、レンズシフト部1051において光軸を水平方向に移動させる制御信号を生成する。制御部121は、生成した制御信号をレンズシフト部1051に供給する。これにより、レンズシフト部1051において光軸が水平方向に移動され、水平方向の投射位置が調整される。
なお、制御部121は、領域312または領域322から取得された輝度値を、レジスタなどに記憶する。
次のステップS102で、解析部120は、領域330を含む垂直方向の輝度変化を取得し、領域330の輝度を求める。より具体的には、解析部120は、図9に例示されるように、カメラ13から供給された撮像画像に含まれる全体投射画像300において、矢印Bで示されるように、領域330を含むように垂直方向に画素をスキャンして、各画素の輝度値を求める。
このとき、解析部120は、1ライン分のみをスキャンしてもよいし、数ライン分をスキャンして、水平方向に位置が対応する各画素の輝度値を平均して用いてもよい。解析部120は、スキャンして求めた各画素の輝度値を、制御部121に供給する。
次のステップS103で、制御部121は、解析部120から供給された各画素の輝度値と、ステップS101で記憶された、領域312または322の画素の輝度値とに基づき、投射画像の射出位置に対する垂直方向の位置調整量を算出する。そして、制御部121は、算出した位置調整量に基づき、レンズシフト部1051において光軸を垂直方向に移動させる制御信号を生成する。制御部121は、生成した制御信号をレンズシフト部1051に供給する。これにより、レンズシフト部1051において光軸が垂直方向に移動され、垂直方向の投射位置が調整される。
なお、上述では、ステップS101およびステップS103により、水平方向の射出位置の調整と、垂直位置の射出位置の調整とを分けて行うように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、制御部121は、ステップS100の処理により水平方向の輝度変化を取得した後にステップS102の処理により垂直方向の輝度変化を取得し、取得された水平および垂直方向の輝度変化に基づきレンズシフト部1051において光軸を水平および垂直方向それぞれに移動させる制御信号を生成してもよい。また、ステップS101の処理の後にカメラ13で投射画像を再び撮像し、再撮像された撮像画像に基づきステップS102以降の処理を行なってもよい。
図10および図11を用いて、ステップS101での制御部21の処理について、より詳細に説明する。なお、図11(a)、図11(b)および図11(c)は、それぞれ上述した図4(a)、図4(b)および図4(c)に対応する図であって、図4(a)、図4(b)および図4(c)に対応する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図10のフローチャートにおいて、ステップS110で、制御部121は、解析部120から供給された各画素の輝度値が水平方向で変化しているか否かを判定する。制御部121は、解析部120から供給された各画素の輝度値が全て所定の範囲内に収まっている場合、輝度値が変化していないと判定する。この場合、図11(a)に線343Aで示されるように、全体として輝度値が一定であって、調整用投射画像301および302が正しい位置関係で投射されていると判断できる。そのため、制御部121は、レンズシフト部1051に対する光軸移動の制御信号を生成せずに、図10のフローチャートによる一連の処理を終了する。
一方、制御部121は、ステップS110で解析部120から供給された各画素の輝度値が水平方向で変化していると判定した場合、処理をステップS111に移行させる。ステップS111で、制御部121は、解析部120から供給された各画素の輝度値から、基準の輝度値L1を取得する。例えば、制御部121は、水平方向の、基準領域312または322内に予め定められた位置の画素の画素値を、基準の輝度値L1として取得する。制御部121は、取得した輝度値L1をレジスタなどに記憶する。
次のステップS112で、制御部121は、輝度値の変化の中央部の輝度値L2を取得する。制御部121は、例えば水平方向の中央部分の画素の画素値を、輝度値の変化の中央部の輝度値L2として取得してもよいし、輝度値の画素毎の変化を検出して、変化の中央部の輝度値L2を取得してもよい。
次のステップS113で、制御部121は、輝度値L1から輝度値L2を減じて、輝度値L1および輝度値L2の差分輝度ΔLを求める。ここでは、制御部121は、輝度値L1から輝度値L2を減じて、差分輝度ΔLを求めるものとする。
次のステップS114で、制御部121は、差分輝度ΔLが0を超えるか否かを判定する。若し、差分輝度ΔLが0を超えると判定した場合、制御部121は、処理をステップS115に移行させる。
ステップS115で、制御部121は、ステップS113で求めた差分輝度ΔLから、調整用投射画像301および302の投射位置の、正しい位置関係に対するずれ量ΔDを算出する。そして、制御部121は、算出したずれ量ΔDに基づき、調整用投射画像301および302の投射位置をずれ量ΔDだけ遠ざけるための、レンズシフト部1051に対する制御信号を生成する。制御部121は、生成した制御信号をレンズシフト部1051に供給し、図10のフローチャートによる一連の処理を終了させる。
一方、上述のステップS114で、制御部121は、差分輝度ΔLが0未満であると判定した場合、処理をステップS116に移行させる。ステップS116で、制御部121は、ステップS113で求めた差分輝度ΔLから、調整用投射画像301および302の投射位置の、正しい位置関係に対するずれ量ΔDを算出する。そして、制御部121は、算出したずれ量ΔDに基づき、調整用投射画像301および302の投射位置をずれ量ΔDだけ近付けるための、レンズシフト部1051に対する制御信号を生成する。制御部121は、生成した制御信号をレンズシフト部1051に供給し、図10のフローチャートによる一連の処理を終了させる。
なお、上述のステップS110において、輝度変化が無いと判定された場合が、差分輝度ΔLが0である例に相当する。
上述のステップS115およびステップS116の処理について、図11を参照しながらより詳細に説明する。差分輝度ΔLが0を超えるケースは、図11(c)の例に対応し、調整用投射画像301および302の投射位置が正しい位置関係に対してさらに近付く方向に、ずれ量ΔDだけずれていることを示している。また、差分輝度ΔLが0未満のケースは、図11(b)の例に対応し、調整用投射画像301および302の投射位置が正しい位置関係に対して遠ざかる方向に、ずれ量ΔDだけずれていることを示している。
この、ずれ量ΔDは、下記のようにして求められる。
グラデーションにおいて輝度が最大の輝度L1から最小の輝度L0(=0)まで変化する距離を距離Dとして、輝度L1、輝度L0および距離Dが等しく、傾きが逆の2のグラデーションを、それぞれの輝度L1と輝度L0の位置を合わせて重ねる。このとき、重ねた2のグラデーションの位置がずれ量ΔDだけずれていたものとする。この場合において、一方のグラデーションの輝度L1の位置または輝度L0の位置が他方のグラデーションの傾きの範囲内に含まれる範囲における、2のグラデーションの輝度を合成した合成輝度を輝度L2とする。また、輝度L1と輝度L2との差分を、差分輝度ΔLとする。
この場合、グラデーションによる輝度の傾斜が1次関数的であれば、図11(b)および図11(c)から分かるように、ずれ量ΔDと距離Dとの比と、差分輝度ΔLと輝度L1との比が等しくなる。この比に基づく各値の関係を、下記の式(1)に示す。
ΔD/D=ΔL/L1 …(1)
この式(1)をずれ量ΔDについて解くと、下記の式(2)が得られ、距離Dおよび輝度L1が既知の場合、ずれ量ΔDが差分輝度ΔLに基づき算出できることが分かる。
ΔD=(ΔL/L1)×D …(2)
なお、距離Dは、上述したように、グラデーション領域311および321における輝度の傾斜の幅に相当する。また、この例では、距離Dは、調整用投射画像301および302の投射位置が正しい位置関係にある場合の、重複領域33’の幅に等しい。
ここで、上述の距離Dを画素数で表した場合に、カメラ13における輝度の分解能が1/D以上あれば、ずれ量ΔDを画素単位で求めることができる。この点について説明する。上述の式(1)を差分輝度ΔLについて解くと、下記の式(3)が得られる。
ΔL=(ΔD/D)×L1 …(3)
式(3)において、ずれ量ΔDを1画素とすると、下記の式(4)が得られ、1画素のずれに対する輝度の変化は、輝度L1を距離Dで除した値となる。したがって、輝度L1に対する分解能が1/D以上あれば、1画素のずれを認識できる。
ΔL=L1/D …(4)
カメラ13の輝度の分解能は、カメラ13で扱う画素のビット深度に対応し、画素のビット深度が8ビットの場合には、分解能は1/256となる。同様に、画素のビット深度が10ビット、12ビット、…であれば、分解能は、1/1024、1/4096などとなる。
例えば、重複領域33’の水平方向の幅が64画素すなわち距離D=64画素であれば、調整用投射画像301および302の投射位置が正しい位置関係から1画素分ずれた場合(ΔD=1)、上述の式(4)に従い、カメラ13の輝度の分解能が1/64以上あれば、このずれを認識できることになる。既に述べたように、扱う画素のビット深度が8ビットのカメラでも、輝度について1/256の分解能がある。そのため、一般的なカメラを用いた場合であっても、1画素のずれを十分認識可能である。
また、システムの制約などで重複領域33’を広くする必要がある場合は、カメラ13としてビット深度が10ビット、12ビットなど、さらに多ビットのものを選択すればよい。
なお、上述において、カメラ13のダイナミックレンジは、多くのカメラに一般的に備えられている自動露出機能により、適切に制御されているものとする。
次に、図7のフローチャートにおけるステップS103の、垂直方向の位置調整について説明する。上述の図2(c)の構成では、垂直方向に輝度が傾斜するグラデーション領域310および320が重ねられる領域330は、輝度の傾斜の一端が調整用投射画像301の上端に一致し、輝度の傾斜の他端が、グラデーション領域311および321が重ねられる領域331の上端に接している。そのため、垂直方向に画素をスキャンした際の輝度変化が、上述した領域331を水平方向に画素をスキャンした際の輝度変化と異なる。例えば、図2(c)の場合の垂直方向のスキャンでは、基準領域312または322の画素の情報を得られず、基準となる輝度L1が取得できない。
図12は、垂直方向に輝度が傾斜するグラデーション領域310および320を重ねた領域330を垂直方向にスキャンした場合の輝度変化の例を示す。なお、ここでは、上述の処理により水平方向の位置合わせが完了しており、重複領域33’の水平方向の中心を、垂直方向にスキャンするものとする。そのため、領域331内では、調整用投射画像301および302の輝度は、それぞれ基準の輝度L1の1/2となっている。
図2を参照し、領域331と332とを垂直方向に位置を一致させて、正しい位置関係で重ねた場合の重複領域33’における輝度変化の例を、図12(a)に線353Aとして示す。この場合、調整用投射画像302における輝度は、図中に線351として示されるように、グラデーション領域321内では輝度L1の1/2であり、グラデーション領域320に入ったところで輝度L1となって、以降、グラデーション領域320の端に向けて所定の傾斜で輝度が減少する。また、調整用投射画像301における輝度は、図中に線352として示されるように、グラデーション領域311内では輝度L1の1/2であり、グラデーション領域310に入ったところで輝度が0となって、以降、グラデーション領域310の端に向けて所定の傾斜で輝度が増加し、当該端の位置で輝度L1となる。
図12(b)は、領域331と領域332とを、正しい位置関係に対して遠ざけて重ねた場合の、重複領域33’における輝度変化の例を示す。この場合、例えば線352に示される、調整用投射画像301のグラデーション領域311内の輝度L1/2の部分が、調整用投射画像302のグラデーション領域320内に入り込む。そのため、線353Bに例示されるように、輝度が輝度L1を超える、輝度突出箇所が発生する。この場合であっても、スキャン位置が調整用投射画像301においてグラデーション領域311からグラデーション領域310に移行した後は、図11(b)の場合と同様に、差分輝度ΔL(<0)が得られる。
図12(c)は、領域331と領域332とを、正しい位置関係に対して近付けて重ねた場合の、重複領域33’における輝度変化の例を示す。この場合、例えば線352に示される、調整用投射画像301のグラデーション領域310内の輝度が0から増加を開始する部分が、調整用投射画像302のグラデーション領域321内に入り込む。そのため、線353Cに例示されるように、輝度が輝度L1/2まで下がる、輝度陥没箇所が発生する。この場合であっても、スキャン位置が調整用投射画像302においてグラデーション領域321からグラデーション領域320に移行した後は、図11(c)の場合と同様に、差分輝度ΔL(>0)が得られる。
このように、調整用投射画像301および302を水平方向に並べて位置合わせを行う場合において、水平方向に輝度が傾斜するグラデーション領域と、垂直方向に輝度が傾斜するグラデーション領域とを接して調整用投射画像301および302を構成する場合、輝度のスキャンの方向によっては、輝度突出箇所や輝度陥没箇所が検出されることになる。そのため、解析部120や制御部121において、スキャンにより得られた輝度に対して、閾値判定やエッジ判定などにより輝度突出箇所や輝度陥没箇所を検出し、検出された輝度突出箇所や輝度陥没箇所を考慮して、ずれ量ΔDを算出する処理を行うと、好ましい。
また、この例では、垂直方向の輝度スキャンでは基準の輝度L1を取得できない。そのため、制御部121は、例えば図7のフローチャートのステップS101で水平方向のスキャンの際に記憶した輝度L1を用いて、上述の式(2)に従いずれ量ΔDを算出する。このときの制御部121による処理は、ステップS10を用いて説明した処理と同様となる。
さらに、この例では、例えば調整用投射画像301において、水平方向に輝度が傾斜するグラデーション領域311と、垂直方向に輝度が傾斜するグラデーション領域310とが接するように構成しているが、これはこの例に限定されない。すなわち、グラデーション領域311とグラデーション領域310との間に輝度L1の部分を設けることで、上述した輝度突出箇所や輝度陥没箇所が発生せず、位置調整を、水平方向の位置調整と同様にして実行することができる。
さらにまた、上述では、例えば調整用投射画像301において、グラデーション領域310および311を、調整用投射画像301の右端部の全体に対して設けているが、これはこの例に限定されない。すなわち、グラデーション領域310および311は、調整用投射画像301の右端部の一部に設けてもよいし、右端に接することなく重複領域33’内に島状に設けてもよい。勿論、これらの場合であっても、調整用投射画像302におけるグラデーション領域320および321を、調整用投射画像301と調整用投射画像302とを重複領域33’を持って重ねたときに、調整用投射画像301におけるグラデーション領域310および311と位置が対応するように設ける。
なお、従来の、投射画像を撮像し、撮像画像に基づき投射画像を画素単位で位置認識して位置合わせを行う方法において、1つの投射画像が例えば1920画素×1080画素(略200万画素)の解像度を有している場合、32倍の6400万画素程度の画素解像度を有するカメラを用いる必要があった。
すなわち、解像度が略200万画素の投射画像を、カメラで撮像して正しくサンプリングするためには、サンプリング定理に従い水平および垂直方向共に2倍の解像度が必要となる。したがって、この時点で、200万画素×2×2=800万画素の解像度を持つカメラが必要となる。さらに、投射画像を移動させながら投射位置調整を行うため、カメラの撮像範囲に対して裕度が必要となる。仮に、投射画像の範囲に対してカメラの撮像範囲を水平および垂直方向にそれぞれ√2倍とした場合、解像度としては、800万画素×√2×√2=1600万画素が必要となる。
さらにまた、2の投射画像を並べて投射させるため、この2の投射画像を同時に撮像するため、水平方向にさらに2倍の解像度が必要となる。ここで、一般的には、カメラのアスペクト比は固定であるので、水平方向の解像度を2倍とすると、垂直方向の解像度も2倍となる。したがって、1600万画素×2×2=6400万画素程度の解像度が必要という結論に達する。これは、10,667画素×6000画素となり、現実的ではない。
一方、第1の実施形態によれば、調整用投射画像301および302を重ねる重複領域33’の輝度に基づき位置調整を行う。そのため、第1の実施形態によれば、例えばグラデーション領域310および311における輝度の傾斜の幅分(D画素分)の画素領域の輝度をみればよいため、1画素単位の認識を行う従来技術に対して、カメラの解像度が1/Dであればよい。したがって、カメラの解像度は、1の投射画像の解像度の32/D倍以上であればよく、従来の技術に対してカメラに必要とされる解像度が大幅に緩和される。
なお、上述では、レンズシフト部1051がプロジェクタ装置101の構成に含まれるように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、レンズシフト部1051をプロジェクタ装置101のオプションとして、投射光学系1041に対して取り付けて用いるようにしてもよい。また、2台のプロジェクタ装置101および102を用いる場合、何れか一方について射出位置調整を行えばよく、その場合、射出調整を行わない側のプロジェクタ装置では、レンズシフト部を省略できる。
(第1の実施形態の第1の変形例)
次に、第1の実施形態の第1の変形例について説明する。上述の第1の実施形態では、1の調整用投射画像に対して、輝度の傾斜の方向が互いに直交する2のグラデーション領域による組を一組のみ、設けていたが、これはこの例に限定されない。本第1の変形例は、1の調整用投射画像に対して、輝度の傾斜の方向が互いに直交する2のグラデーション領域による組を2以上、設けた例である。以下では、「輝度の傾斜の方向が互いに直交する2のグラデーション領域による組」を、「直交グラデーション領域の組」と呼ぶ。
図13は、第1の実施形態の第1の変形例による調整用投射画像の例を示す。図13において、各調整用投射画像3010、3011、3012および3013は、頂点を共有する2辺にそれぞれ直交グラデーションの組を有している。このように、調整用投射画像に2の直交グラデーションの組を設けることで、上述した第1の実施形態による射出位置調整方法を、4の投射画像を共通のスクリーンに投射した場合に適用することができる。
より具体的には、格子状に投射される4の調整用投射画像3010、3011、3012および3013のうち、左上に投射される調整用投射画像3010は、右端に、グラデーション領域3000および3001を含む直交グラデーションの組が配され、下端に、グラデーション領域3002および3003を含む直交グラデーションの組が配される。
また、右上に投射される調整用投射画像3011は、左端に、グラデーション領域3000および3001に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3010および3011を含む直交グラデーションの組が配され、下端に、グラデーション領域3012および3013を含む直交グラデーションの組が配される。
さらに、右下に投射される調整用投射画像3013は、上端に、グラデーション領域3012および3013に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3032および3033を含む直交グラデーションの組が配され、左端に、グラデーション領域3030および3031を含む直交グラデーションの組が配される。
さらにまた、左下に投射される調整用投射画像3012は、上端に、グラデーション領域3002および3003に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3022および3023を含む直交グラデーションの組が配され、右端に、グラデーション領域3030および3031に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3020および3021を含む直交グラデーションの組が配される。
4の調整用投射画像3010、3011、3012および3013は、対峙する辺に配された直交グラデーションの組が重なりそれぞれ重複領域を形成するように、スクリーン14に投射される。そして、例えば調整用投射画像3010の投射位置を基準として、調整用投射画像3010に隣接する調整用投射画像3011と、調整用投射画像3012とについて、射出位置調整を行う。調整用投射画像3011および3012の射出位置の調整が完了した後、調整用投射画像3011および3012のうち何れか一方を基準として、調整用投射画像3013の射出位置調整を行う。
調整用投射画像3010、3011、3012および3013の射出位置調整が完了した後、必要に応じて、最初に基準とした調整用投射画像3010以外の調整用投射画像を基準として再度、射出位置調整を実行してもよい。
(第1の実施形態の第2の変形例)
次に、第1の実施形態の第2の変形例について説明する。本第2の変形例では、それぞれ各辺に直交グラデーションの組が配され、各グラデーション領域の配置が互いに異なる2パターンの調整用投射画像を用意する。そして、この2パターンの調整用投射画像に配される各グラデーション領域は、各調整用投射画像間において位置が対応するグラデーション領域における輝度の傾斜の方向が互いに直交するように構成される。第2の変形例では、この2パターンの調整用投射画像を、異なるパターンの調整用投射画像が隣接するように投射することで、投射画像数の上限無く、実施形態による射出位置調整を適用できる。
図14は、第1の実施形態の第2の変形例に係る調整用投射画像の例を示す。図14(a)および図14(b)は、それぞれ2パターンの調整用投射画像のうち第1のパターン(パターンA)および第2のパターン(バターンB)の例を示す。
図14(a)に例示されるパターンAの調整用投射画像3020は、右端に、グラデーション領域3041および3042を含む直交グラデーションの組が配され、下端に、グラデーション領域3043および3044を含む直交グラデーションの組が配される。調整用投射画像3020は、さらに、左端に、グラデーション領域3045および3046を含む直交グラデーションの組が配され、上端に、グラデーション領域3047および3048を含む直交グラデーションの組が配される。
図14(b)に例示されるパターンBの調整用投射画像3021は、左端に、グラデーション領域3041および3042に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3056および3055を含む直交グラデーションの組が配される。また、上端に、グラデーション領域3044および3043に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3057および3058を含む直交グラデーションの組が配される。さらに、右端に、グラデーション領域3046および3045に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3051および3052を含む直交グラデーションの組が配される。さらにまた、下端に、グラデーション領域3047および3048に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3054および3053を含む直交グラデーションの組が配される。
この図14(a)および図14(b)のような組み合わせで各グラデーション領域3041〜3048と各グラデーション領域3051〜3058をそれぞれ配することで、例えば調整用投射画像3020と調整用投射画像3021とを何れの方向に並べて投射しても、第1の実施形態に係る射出位置調整方法を適用することが可能となる。
これらパターンAの調整用投射画像3020と、パターンBの調整用投射画像3021とを、図14(c)に例示されるように、同じパターンが隣接しないように並べて投射する。図14(c)の例では、パターンAの調整用投射画像3020と、パターンBの調整用投射画像3021とを、水平方向および垂直方向にそれぞれ交互に投射することで、同じパターンが隣接しない配置を実現している。
この図14(c)の配置の場合、例えば全ての調整用投射画像による全体の投射画像の中心点C0を求め、他の各調整用投射画像の中心点Cn(n=1,2,3…)と中心点C0との距離が小さい順に各調整用投射画像を投射していき、順次、射出位置を調整することが考えられる。
図14(c)の例では、中心点C0を含む中央の調整用投射画像が投射され、当該調整用投射画像の上下に隣接する2の調整用投射画像が順次投射され、投射された順に、中央の調整用投射画像を基準として射出位置が調整される。次に、中央の調整用投射画像の左右に隣接する2の調整用投射画像が順次投射され、投射された順に、中央の調整用投射画像を基準として射出位置が調整される。さらに、中央の調整用投射画像と頂点を接する4の調整用投射画像が順次投射され、投射された順に、既に射出位置が調整された、中央の調整用投射画像の上下左右に隣接する各調整用投射画像を基準として射出位置が調整される。
この方法によれば、複数の投射画像による全体の投射画像の中心をずらさずに、各プロジェクタ装置の射出位置を調整することができる。この方法は、特に、当該全体の投射画像をスクリーンの中心に投射したい場合などに用いて好適である。
また例えば、図14(c)の配置の場合、全ての調整用投射画像による全体の投射画像の4隅のうち1点を基準点Pとして定め、各調整用投射画像の中心点Cm(m=0,1,2,3…)と基準点Pとの距離が小さい順に各調整用投射画像を投射していき、順次、射出位置を調整することが考えられる。
図14(c)の例では、左上隅を基準点Pとし、基準点Pを含む第1の調整用投射画像と、中心点から基準点Pまでの距離が最も近い、第1の調整用投射画像の直下の第2の調整用投射画像とを投射し、第1の調整用投射画像を基準として、第2の調整用投射画像の射出位置を調整する。次に、中心点から基準点Pまでの距離が2番目に近い、第1の調整用投射画像の右に隣接する第3の調整用投射画像が投射され、第1の調整用投射画像を基準として第3の調整用投射画像の射出位置が調整される。さらに次に、中心点から基準点Pまでの距離が3番目に近い、第1の調整用投射画像に対して基準点Pと対向する頂点が接する第4の調整用投射画像の射出位置が、既に射出位置が調整され、第4の調整用投射画像と隣接する第2または第3の調整用投射画像を基準として調整される。以降、中心点から基準点Pまでの距離に応じて、距離の小さい順に順次、調整用投射画像が投射され、既に射出位置が調整された隣接する調整用投射画像を基準として、射出位置が調整される。
この方法によれば、基準とした点をずらさずに、各プロジェクタ装置の射出位置を調整することができる。この方法は、特に、複数の投射画像による全体の投射画像の端の位置を決めて投射を行うような場合に用いて好適である。
なお、多数のプロジェクタ装置により多数の投射画像を同時に投射する場合の、各投射画像の投射位置の調整順は、上述の例に限定されるものではない。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態では、プロジェクタ装置101および102による投射光の射出位置の調整を、レンズシフト部1051および1052のレンズシフト量を調整することで行なっていた。これに対して、本第2の実施形態では、各プロジェクタ装置の台座を動かすことで、投射光の射出位置を調整する。
図15は、第2の実施形態に係るマルチプロジェクタシステム1の一例の構成を示す。なお、図15において、上述した図5と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図15に示す構成は、上述の図5に示す構成に対して、各プロジェクタ装置101’および102’がレンズシフト部1051および1052の代わりに、台座駆動部1061および1062を有している点が異なっている。制御部121’から出力される制御信号が、台座駆動部1061および1062にそれぞれ供給される。
プロジェクタ装置101’および102’は、共通する構成で実現が可能であるので、以下では、プロジェクタ装置101’を例にとって説明する。プロジェクタ装置101’は、メカ機構により水平方向および垂直方向にプロジェクタ装置101’を移動可能な台座上に設置される。台座駆動部1061は、制御部121’から供給される制御信号に応じて、台座のメカ機構を制御して、プロジェクタ装置101’を水平方向および垂直方向に移動させる。これにより、プロジェクタ装置101’による投射光の射出位置を調整できる。第2の実施形態による投射光の射出位置の調整処理は、上述した第1の実施形態の処理をそのまま適用できる。
なお、上述では、台座駆動部1061がプロジェクタ装置101’に含まれる構成を説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、台座をプロジェクタ装置101’のオプションとし、台座駆動部1061を台座の構成に含めてもよい。また、2台のプロジェクタ装置101’および102’を用いる場合、何れか一方について射出位置調整を行えばよく、その場合、射出調整を行わない側のプロジェクタ装置では、台座駆動部を省略できる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態および第2の実施形態では、調整用投射画像301および302による位置合わせを、プロジェクタ装置101および102における投射光の射出位置を調整することで行なっていた。これに対して、第3の実施形態では、プロジェクタ装置101および102のうち一方、例えばプロジェクタ装置102において、投射光の射出位置は固定とし、画像表示デバイス1012上における調整用投射画像302の位置をシフトさせて、調整用投射画像301および302の位置合わせを行う。
これに限らず、第3の実施形態では、プロジェクタ装置101および102それぞれにおいて、各画像表示デバイス1011および1012上の調整用投射画像301および302の位置をそれぞれシフトさせてもよい。
図16は、第3の実施形態に係るマルチプロジェクタシステム1の一例の構成を示す。なお、図16において、上述の図5と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。図16に示す構成は、上述の図5および図15に示す構成と比較して、各プロジェクタ装置101および102がレンズシフト部1051および1052や、台座駆動部1061および1062といった、投射光の射出位置をメカ的に変更する手段を備えない。
図16に示す、例えばプロジェクタ装置102において、画像処理部1002’は、例えば、入力された画像データを一旦フレームメモリ1072に書き込む。画像処理部1002’は、フレームメモリ1072に書き込まれた画像データに対して所定の画像処理を施し、最終的に得られた投射画像データを再びフレームメモリ1072に書き込む。そして、画像処理部1002’は、フレームメモリ1072から投射画像データを読み出して、画像表示デバイス1012に対して転送する。
このとき、画像処理部1002’は、調整装置12の制御部121”から供給される制御信号に従い、フレームメモリ1072から投射画像データを読み出すタイミングを変更する。画像表示デバイス1012における画像データの更新タイミングが一定の場合、これにより、画像表示デバイス1012上の投射画像データの位置をシフトさせることができる。
なお、プロジェクタ装置101における画像処理部1001’およびフレームメモリ1071の制御は、プロジェクタ装置102における画像処理部1002’およびフレームメモリ1072の制御と同様である。そのため、以下では、プロジェクタ装置102における画像処理部1002’およびフレームメモリ1072を例にとって説明する。
図17は、第3の実施形態によるプロジェクタ装置101および102の投射画像の位置合わせ方法について説明する。なお、図17(a)〜図17(d)において、上述した図2と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。また、図17(a)〜図17(d)では、説明のため、重複領域33’に係る部分に矢印状の画像が表示されているが、実際には、図2(a)〜図2(c)に示したように、重複部分33’にはそれぞれ輝度が所定に傾斜するグラデーション画像の組が配置されている。
図17(a)は、調整用投射画像301および302が正しい位置関係で投射され、調整用投射画像301および302の投射位置に垂直および水平方向のずれが無い状態の例を示す。この場合、全体投射画像300の上辺および下辺がそれぞれ直線となり、全体投射画像300が長方形をなしていることが分かる。また、調整用投射画像301および302の重複部分に、輝度が均一とされた重複領域33’が形成される。
図17(b)は、調整用投射画像301および302の投射位置が垂直方向にずれている状態の例を示す。この場合、調整用投射画像301の投射位置の下方への移動と、調整用投射画像302の投射位置の上方への移動とのうち少なくとも一方を行うことで、調整用投射画像301および302の投射位置の位置合わせが行われる。ここでは、調整用投射画像302を基準として、調整用投射画像302の投射内容を上方に移動させて位置合わせを行うものとする。
すなわち、プロジェクタ装置101および102によりスクリーンに調整用投射画像301および302を投射し、カメラ13にて投射画像を撮像する。撮像画像は、調整装置12に供給され、解析部120に入力される。解析部120は、上述したようにして各箇所の輝度を求め、輝度を示す情報を制御部121”に入力する。制御部121”は、解析部120から供給された各輝度に基づきずれ量ΔDを算出し、ずれ量ΔDを補正するための、各プロジェクタ装置101および102に対する制御信号をそれぞれ生成する。
第3の実施形態では、図17(c)に示されるように、制御部121”は、調整用投射画像302の投射位置は変えずに、投射される画像を画素単位でシフトさせる。換言すれば、制御部121”は、プロジェクタ装置102による投射画像の射出位置は変えずに、射出する投射画像の内容を、画素単位でシフトさせる。
この例では、制御部121”は、フレームメモリ1072から投射画像データを読み出して画像表示デバイス1012に転送する際に、フレームメモリ1072から投射画像データを読み出すタイミングをずれ量ΔDに応じて制御する制御信号を生成して、画像処理部1002’に供給する。画像処理部1002’は、この制御信号に従いフレームメモリ1072から投射画像データを読み出すタイミングを、画像表示デバイス1012における画像データの更新タイミングに対してずらす。これにより、投射画像データによる投射画像の内容が図17(c)に矢印Aで示される方向にシフトされ、画像の位置合わせがなされる。
一例として、上述の位置合わせによる制御を行わない場合、画像表示デバイス1012における画像データの更新と、フレームメモリ1072からの投射画像データの読み出しとが、所定の垂直同期信号に同期して行われるものとする。また、フレームメモリ1072からの投射画像データの読み出しは、画像の上端のラインから下端のラインに向けて行われるものとする。例えば図17(c)に示されるように、投射画像データによる投射画像の内容を上方向にシフトさせる場合、調整装置12の制御部121”は、フレームメモリ1072からの読み出しタイミングを、画像表示デバイス1012の読み出しタイミングに対して、ずれ量ΔDに対応する分だけ遅らせる制御信号を出力する。
図17(d)は、シフト後の全体投射画像300’の例を示す。この方法によれば、投射画像の内容だけがシフトされるため、プロジェクタ装置102から射出された投射光による投射位置は、画像の位置合わせ前と同一である。すなわち、プロジェクタ装置101および102による各投射画像の投射位置は、図17(b)に示す画像の位置合わせ前と変わらず、垂直方向の位置合わせを行った直後の全体投射画像300’の範囲は、長方形にならない。この場合、長方形に対して飛び出した部分となる領域341および342の画像を黒画像などに置き換えることで、全体投射画像300’を長方形とすることができる。
例えば、画像処理部1002’は、制御信号に従い、フレームメモリ1072からの読み出しタイミングを画像表示デバイス1012の読み出しタイミングに対してずらした差分のライン、すなわち、ずれ量ΔDに対応するライン数のラインを、黒画像のラインに変換する。また、調整装置12の制御部121”は、プロジェクタ装置101の画像処理部1001’に対しても、ずれ量ΔDに応じた制御信号を供給する。画像処理部1001’は、この制御信号に従い、ずれ量ΔDに対応するライン数のラインを、黒画像のラインに変換する。
ここで、一方の調整用投射画像を基準として、他方の調整用投射画像のずれ量ΔDを算出した場合について考える。この場合、ずれ量ΔDが正の値(図12(b)の状態)では、画像処理部1002’は、制御部121”からの制御信号に従い、一方の調整用投射画像の下端と、他方の調整用投射画像の上端とに、それぞれずれ量ΔDに対応するライン数の黒画像のラインを配する。また、ずれ量ΔDが負の値(図12(c)および図17の状態)では、画像処理部1002’は、制御部121”からの制御信号に従い、一方の調整用投射画像の上端と、他方の調整用投射画像の下端とに、それぞれずれ量ΔDに対応するライン数の黒画像のラインを配する。
上述では、垂直方向の位置合わせについて説明したが、第3の実施形態は、水平方向の位置合わせについても、同様の方法を適用できる。水平方向の位置合わせは、ライン毎に、画像表示デバイス上の投射画像データの位置を、水平方向に画素単位でずれ量ΔDに従いシフトさせることで実現できる。
この水平方向の位置合わせの場合、ずれ量ΔDが負の値であって(図11(c)参照)、例えば調整用投射画像301を基準として調整用投射画像302を遠ざける方向に移動させたときに、移動方向に対して逆側の端の、互いに対峙する端のずれ量ΔDに応じた範囲の画像が重複領域33’外に残り、調整用投射画像301に影響を与えてしまう。この場合、当該範囲の画像は、各ラインが前ラインのずれ量ΔDに応じた後端部分を含むことになる。また、ずれ量ΔDが正の値であって(図11(b)参照)、調整用投射画像302を近付ける方向に移動させた場合には、移動させた調整用投射画像の移動方向の端のずれ量ΔDに応じた範囲において、各ラインが次のラインのずれ量ΔDに応じた先端部分を含むことになる。
したがって、水平方向の位置合わせの場合、ずれ量ΔDが負の値の場合には、画像処理部1002’は、制御部121”からの制御信号に従い、移動させた調整用投射画像の、移動方向に対して逆側の端のずれ量ΔDに応じた範囲に、黒画像の画素を配する。また、ずれ量ΔDが正の値の場合には、画像処理部1002’は、制御部121”からの制御信号に従い、移動させた調整用投射画像の、移動方向の端のずれ量ΔDに応じた範囲に、黒画像の画素を配する。
上述したように、第3の実施形態によれば、光学的あるいはメカ的な制御を行うこと無く、複数の投射画像の位置合わせを実行できる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。上述した第1〜第3の実施形態では、プロジェクタ装置101および102(第1の実施形態の場合)がそれぞれ水平に設置され、これらプロジェクタ装置101および102による投射画像201および202が平行に投射されることを前提としていた。
しかしながら、実際には、投射画像201および202のうち一方が他方に対してある角度θで回転されて投射される場合がある。上述した第1〜第3の実施形態では、投射画像201および202の位置合わせ処理を、投射画像201および202(調整用投射画像301および302)を水平および垂直方向に移動させることで行っている。そのため、第1〜第3の実施形態による位置合わせ処理は、投射画像201および202の回転によるずれには対処できない。
そこで、第4の実施形態では、例えば2のプロジェクタ装置から投射される各調整用投射画像に対して、輝度の傾斜が互いに逆方向のグラデーション領域をそれぞれ設ける。そして、各グラデーション領域を各調整用投射画像間で重複させた重複領域において、輝度の傾斜と直交する方向で輝度変化を検出し、検出結果を用いて各プロジェクタ装置による投射画像の回転方向のずれの有無を判定し、判定結果に基づき、投射画像の角度を調整し、回転方向の位置合わせを行う。
この第4の実施形態による回転方向の位置合わせ処理を行った後に、上述した第1〜第3の実施形態による水平および垂直方向の位置合わせ処理を行う。これにより、投射画像がある角度θで回転されている場合であっても、複数のプロジェクタ装置間の投射画像の位置合わせを高精度に行うことができる。
図18は、第4の実施形態に係るマルチプロジェクタシステムを概略的に示す。なお、図18において、上述した図1と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。図18に示されるマルチプロジェクタシステム1’は、上述した図1のマルチプロジェクタシステムと同様に、複数台のプロジェクタ装置10001および10002と、画像出力装置11と、調整装置1200と、カメラ13とを含む。
画像出力装置11は、プロジェクタ装置10001および10002それぞれに対して画像データを出力する。プロジェクタ装置10001および10002は、それぞれ、画像出力装置11から出力された画像データを入力画像データとして入力し、それぞれ入力画像データに対して所定の画像処理を施して投射画像データを生成し、光源からの光を光変調器により投射画像データに基づき変調して投射画像201および202としてスクリーン14に投射する。2台のプロジェクタ装置10001および10002は、投射画像201および202を、重複領域21が生じるように、共通のスクリーン14に対して投射する。
図19を用いて、第4の実施形態に係る投射画像の角度の調整方法について、概略的に説明する。図19(a)および図19(b)は、画像出力装置11が出力する画像データによる、第4の実施形態に係る投射画像の例を示す。図19(a)は、左側に配置されるプロジェクタ装置10001について出力された角度調整用の画像データによる調整用投射画像3030の例を示す。図19(b)は、右側に配置されるプロジェクタ装置10002について出力された角度調整用の画像データによる調整用投射画像3031の例を示す。
これら調整用投射画像3030および3031は、図19(c)に例示されるように、右端部分と左端部分とが重ねられて、スクリーン14に投射される。図19(c)において、調整用投射画像3030および3031とが重ねられた部分を、重複領域3330として示し、スクリーン14に投射される調整用投射画像3030の左端から調整用投射画像3031の右端までを含む投射画像を、全体投射画像300として示している。また、図19(a)〜図19(c)において、垂直方向が座標y、水平方向が座標xとしてそれぞれ示されている。この場合、座標(x,y)は、例えばスクリーン14上に調整用投射画像3030および3031が投射された場合の、一方の調整用投射画像(調整用投射画像3030とする)を基準とした座標を示す。
図19(a)に例示する調整用投射画像3030は、重複領域3330に対応する調整領域3060と、それ以外の領域3061とを含む。調整領域3060は、一方向に一定の傾斜で輝度が減少するグラデーションの画像となっている。図19(a)の例では、調整領域3060のグラデーション画像は、図中に矢印で示されるように、左端から右端に向けて輝度が減少している。
図19(b)に例示する調整用投射画像3031は、重複領域3330に対応する調整領域3070と、それ以外の領域3071とを含む。調整領域3070は、上述した調整領域3060と逆方向の輝度の傾斜を持つグラデーション画像となっている。すなわち、調整領域3070のグラデーション画像は、図中に矢印で示されるように、右端から左端に向けて輝度が減少している。
第4の実施形態では、調整領域3060および3070におけるグラデーションによる最大の輝度および最小の輝度は、例えば、それぞれ画像データにおける最大輝度および最小輝度とすることができる。第4の実施形態に適用可能な調整領域3060および3070におけるグラデーションは、これに限らず、調整領域3060および3070とで最大輝度と最小輝度とが互いに一致していればよい。また、第4の実施形態においては、領域3061および3071の輝度は、任意とすることができる。
なお、調整領域3060および3070において、輝度が傾斜する方向は、それぞれ調整用投射画像3030および3031の辺に平行であることが好ましい。また、図19(a)および図19(b)の例では、輝度が傾斜する方向がそれぞれ調整用投射画像3030および3031の水平方向としているが、これはこの例に限定されず、輝度が傾斜する方向は、垂直方向であってもよいし、斜めであってもよい。
プロジェクタ装置10001および10002は、このように構成された調整用投射画像3030および3031を、領域3060および3070を重ねてスクリーン14に投射する。すると、互いに傾斜が逆方向のグラデーション画像による領域3060の画像と領域3070の画像とが合成されて、図19(c)に示す重複領域3330の画像となる。すなわち、重複領域3330は、互いに輝度が逆方向に傾斜するグラデーション画像が合成されることになる。
このとき、調整用投射画像3030および3031が、調整領域3060および3070において、輝度の傾斜の方向が平行になるように投射されている場合、重複領域3330内の輝度が均一となる。一方、調整領域3060および3070のうち一方が他方に対してある角度θで回転している場合、重複領域3330内の輝度は、調整領域3060および3070における輝度の傾斜の方向に対して略直交する方向に傾斜する。
そこで、第4の実施形態では、調整装置1200が、カメラ13によりスクリーン14に投射された全体投射画像300を撮像し、撮像された全体投射画像300を解析して重複領域3330における輝度変化を取得する。そして、調整装置1200は、取得した輝度変化に基づき、調整用投射画像3030および3031のうち一方が他方に対して回転しているか否かを判定し、回転していると判定した場合に、投射画像の角度を調整するための制御信号を生成する。
より具体的には、調整装置1200は、図19(c)に矢印400で示されるように、調整用投射画像3030および3031のうち一方(調整用投射画像3030とする)を基準として、基準となる調整用投射画像3030内の調整領域3060を、調整領域3060における輝度の傾斜の方向と直交する方向に向けてスキャンして、輝度の変化を検出する。調整装置1200は、検出された輝度の変化が予め定められた範囲内である場合に、基準となる調整用投射画像3030に対して他の調整用投射画像3031が回転しておらず、プロジェクタ装置10001が投射する投射画像と、プロジェクタ装置10002が投射する投射画像とが平行であると判定する。
一方、調整装置1200は、検出された輝度の変化が上述の範囲を超える場合に、基準となる調整用投射画像3030に対して他の調整用投射画像3031が回転しており、プロジェクタ装置10001が投射する投射画像に対して、プロジェクタ装置10002が投射する投射画像が回転していると判定する。この場合、調整装置1200は、投射画像の角度を調整するための制御信号を生成し、例えば他の調整用投射画像3031を投射するプロジェクタ装置10002に供給する。
なお、以下では、一方のプロジェクタ装置が投射する投射画像と、他方のプロジェクタ装置が投射する投射画像とが平行である状態を、正しい角度関係と呼ぶ。
図20を用いて、第4の実施形態による投射画像の回転の有無の判定方法について、より詳細に説明する。図20(a)に例示されるように、調整用投射画像3031が、基準となる調整用投射画像3030に対して、調整用投射画像3031の中央410を中心として角度θで反時計回り(左回り)に回転している場合について考える。
調整装置1200は、図20(a)のようにスクリーン14上に投射された調整用投射画像3030および3031を撮像し、撮像画像を解析する。調整装置1200は、解析結果に基づき、調整用投射画像3030および3031からなる全体投射画像300から重複領域3330を抽出し、重複領域3330における、調整領域3060の輝度の傾斜の方向と直交する方向の輝度変化を抽出する。図20(a)の例では、調整装置1200は、矢印400に示されるような、重複領域3330を構成する調整領域3060および3070のうち基準となる調整領域3060の下端および上端の例えば中点を通る線に沿って画像をスキャンして輝度を取得する。なお、調整領域3060の下端側および上端側を、それぞれスキャンの始点および終点とする。
このように、基準となる調整用投射画像3030の調整領域3060における輝度の傾斜の方向と直交する方向に沿って輝度を取得した場合、調整領域3060では、グラデーションにおける同一階調の位置をスキャンすることになる。そのため、調整領域3060においては、輝度の変化は検出されない。
一方、調整用投射画像3030に対して角度θで回転している調整用投射画像3031の調整領域3070においては、図20(b)の下側の図に例示されるように、スキャンする方向(矢印400)が、調整領域3070に対して角度θだけ傾くことになる。なお、図20(b)において、上側の図は、調整領域3070内の輝度Lの変化を線401により示す。スキャン方向が調整領域3070に対して角度θだけ傾いているため、スキャンの始点および終点で調整領域3070における水平位置が異なる。したがって、スキャンの始点および終点の輝度LSおよびLEは、調整領域3070の水平方向のグラデーションにおける異なる階調の位置となり、スキャンの始点から終点にかけて輝度が変化する。
図21は、調整領域3070が回転している場合に検出される輝度変化の例を示す。図21(a)は、スキャンの始点の輝度LSが終点の輝度LEよりも低く、スキャン位置に対する輝度変化の傾きが正となった場合の例を示す。この場合、調整領域3070においてスキャンの終点が始点よりも右側にあり、上述した図20の例に対応して、調整領域3070が調整領域3060に対して反時計回り(左回り)に回転していることを示す。したがって、調整領域3070を含む調整用投射画像3031を投射するプロジェクタ装置10002において、投射画像を時計回りに回転させることで、プロジェクタ装置10001および10002による投射画像が正しい角度関係となる。
一方、図21(b)は、スキャンの始点の輝度LSが終点の輝度LEよりも高く、スキャン位置に対する輝度変化の傾きが負となった場合の例を示す。この場合、上述とは逆に、調整領域3070においてスキャンの終点が始点よりも左側にあり、調整領域3070が調整領域3060に対して時計回り(右回り)に回転していることを示す。したがって、プロジェクタ装置10002において、投射画像を反時計回りに回転させることで、プロジェクタ装置10001および10002による投射画像が正しい角度関係となる。
なお、図21(a)および図21(b)に例示する輝度は、調整領域3060で取得された輝度と、調整領域3070で取得された輝度とを合成した輝度となる。この場合、調整領域3060では、輝度の傾斜の方向に対して直交する方向にスキャンを行うため、輝度は固定値となる。したがって、図21(a)および図21(b)に例示する輝度は、調整領域3060における輝度をオフセットとした調整領域3070における輝度変化となる。
図22は、第4の実施形態に係るマルチプロジェクタシステム1’の一例の構成を、より詳細に示す。なお、図22において、上述した図5および図18と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
画像出力装置11は、上述した調整用投射画像3030および3031を投射するための各調整用画像データを出力する画像出力部110を有する。各調整用画像データは、プロジェクタ装置10001および10002に対して、入力画像データとしてそれぞれ供給される。
プロジェクタ装置10001は、画像処理部1001と、画像表示デバイス1011と、光源1021と、照明光学系1031と、投射光学系1041と、回転機構部10101とを有する。同様に、プロジェクタ装置10002は、画像処理部1002と、画像表示デバイス1012と、光源1022と、照明光学系1032と、投射光学系1042と、回転機構部10102とを有する。このように、プロジェクタ装置10001および10002は、共通する構成で実現が可能であるので、以下では、プロジェクタ装置10001を例にとって説明する。
プロジェクタ装置10001において、画像処理部1001、画像表示デバイス1011、光源1021、照明光学系1031および投射光学系1041は、図5を用いて説明した対応する構成と略同一であるので、ここでの説明を省略する。
プロジェクタ装置10001において、回転機構部10101は、調整装置1200からの制御信号に従い、画像表示デバイス1011を、例えば出射面の中央を回転の中心として出射面と同一平面上で回転させる。これにより、スクリーン14上の投射画像の角度を調整することができる。
画像表示デバイス1011から出射された光は、投射光学系1041を介してスクリーン14に対して投射画像として投射される。画像処理部1001に入力される入力画像データが画像出力装置11から出力された調整用投射画像3030を投射するための画像データである場合、スクリーン14に対して、当該調整用投射画像3030が投射される。スクリーン14には、プロジェクタ装置10002からも同様にして、調整用投射画像3031が投射される。このとき、調整用投射画像3030および3031は、重複領域3330が形成されるように、スクリーン14に投射される。
調整装置1200は、解析部1210および制御部1211を有する。解析部1210は、カメラ13により、スクリーン14上の例えば少なくとも重複領域3330を含むように撮像された撮像画像データを解析し、重複領域3330における輝度変化を求める。解析部1210は、求めた輝度変化を示す情報を、制御部1211に供給する。
制御部1211は、解析部1210から供給された輝度変化を示す情報に基づき、調整用投射画像3030および3031の投射角度を調整するための制御信号を生成する。プロジェクタ装置10001による投射角度を調整するための制御信号は、プロジェクタ装置10001の回転機構部10101に供給される。また、プロジェクタ装置10002による投射角度を調整するための制御信号は、プロジェクタ装置10002の回転機構部10102に供給される。
図23は、上述した構成によって実行される、第4の実施形態に係る位置合わせ処理の例を示すフローチャートである。図23において、ステップS200で、調整装置1200は、詳細を後述するように、スクリーン14上の投射画像をカメラ13で撮像した撮像画像に基づき、プロジェクタ装置10001および10002による投射画像の角度調整処理を行う。次のステップS201で、調整装置1200は、上述した図6のフローチャートによる処理に従い、スクリーン14上の投射画像をカメラ13で再び撮像した撮像画像に基づき、プロジェクタ装置10001および10002による投射画像の位置調整処理を行う。
図24は、上述のステップS200における角度調整処理の例を示すフローチャートである。ステップS1000で、2台のプロジェクタPJ#1およびPJ#2(プロジェクタ装置10001および10002)により、それぞれ調整用投射画像3030および3031が、重複領域3330を持つように例えば目視などにより調整されて、スクリーン14に投射される。
次のステップS1001で、カメラ13がスクリーン14上の投射画像を撮像する。第4の実施形態では、カメラ13は、少なくともスクリーン14上の全体投射画像300のうち、重複領域3330を撮像画像が含み、且つ、煽り角による被写体画像の歪みが発生しないように撮像する。撮像画像は、調整装置1200に供給され、解析部1210に入力される。
次のステップS1002で、解析部1210は、カメラ13から供給された撮像画像から重複領域3330を抽出する。そして、解析部1210は、重複領域3330を、重複領域3330の下端および上端をそれぞれ始点および終点としてスキャンし、始点の輝度LSと、終点の輝度LEとを取得する。
次のステップS1003で、解析部1210は、ステップS1002で取得した始点の輝度LSと終点の輝度LEとを比較する。
解析部1210は、ステップS1003での比較の結果、輝度LS>輝度LEである場合(図21(b)に相当)、処理をステップS1004に移行させ、調整用投射画像3031が調整用投射画像3030に対して時計回りの方向に回転していると判定する。制御部1211は、この判定結果に従い、投射画像を反時計回りに回転させる制御信号を生成し、プロジェクタ装置10002の回転機構部10102に供給する。そして、処理をステップS1001に戻す。
また、解析部1210は、ステップS1003での比較の結果、輝度LS<輝度LEである場合(図21(a)に相当)、処理をステップS1005に移行させ、調整用投射画像3031が調整用投射画像3030に対して反時計回りの方向に回転していると判定する。制御部1211は、この判定結果に従い、投射画像を時計回りに回転させる制御信号を生成し、プロジェクタ装置10002の回転機構部10102に供給する。そして、処理をステップS1001に戻す。
さらに、解析部1210は、ステップS1003での比較の結果、輝度LS=輝度LEである場合、調整用投射画像3030および3031が正しい角度関係になっていると判定し、処理を終了する。
なお、ステップS1003での比較結果の判定は、所定のマージンを持たせて行うと好ましい。例えば、輝度LSと輝度LEとの差分の絶対値が所定範囲内で、輝度LS=輝度LEと判定し、輝度LSと輝度LEとの差分が当該所定範囲を超えた場合に、輝度LS>輝度LEまたは輝度LS<輝度LEと判定する。
なお、上述のステップS201による投射画像の位置調整処理に際して、ステップS200による投射画像の角度調整処理が完了した時点で画像出力装置11から出力される画像データを、例えば図2(a)および図2(b)に示される調整用投射画像301および302を投射させる画像データに切り替えることが考えられる。画像出力装置11が投射画像データを切り替えた後、カメラ13でスクリーン14上の全体投射画像300を撮像し、図6のフローチャートに従い位置調整処理を行う。
これに限らず、ステップS200の時点で、調整用投射画像301および302を投射させるようにしてもよい。この場合、ステップS200の処理において、解析部1210は、水平方向に輝度が傾斜するグラデーション領域311および321が重ねられた領域331を、輝度の傾斜の方向と直交する方向にスキャンして輝度変化を取得することで、同様の角度調整処理が可能である。さらに、領域330を同様にスキャンして輝度変化を取得しても、同様の角度調整処理が可能である。
なお、調整用投射画像301および302を用いて角度調整を行う場合、図19(a)および図19(b)に例示される、調整用投射画像3030および3031の下端から上端までを調整領域3060および3070として用いた例と比べて、輝度変化を検出するためにスキャンする幅が狭くなる。そのため、調整用投射画像3030および3031を用いた場合に比べて精度の点で不利になるおそれがある。
上述では、図20(a)に示したように、調整用投射画像3031が、画像の中央410を中心として回転している場合について説明したが、実際には、調整用投射画像3031は、画像内や画像外の任意の点を中心として回転している場合が有り得る。この場合であっても、この第4の実施形態による角度調整方法を同様にして適用できる。
また、上述では、投射画像の角度調整を、回転機構部10102により画像表示デバイス1012を回転させることにより行っている(プロジェクタ装置10002の場合)が、これはこの例に限定されない。すなわち、投射画像の角度調整は、上述した第2の実施形態のように、台座駆動部1062によりプロジェクタ装置10002の台座を駆動することで行ってもよいし、上述した第3の実施形態のように、画像処理部1002’における画像処理により、投射画像を回転させてもよい。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、2台のプロジェクタ装置により投射される各調整用投射画像が重複する重複領域に対応する、各調整用投射画像の領域を、垂直方向に3の領域に分割し、上下端の領域を、第1の方向に輝度が傾斜するグラデーション画像とし、中間の領域を、第1の方向と直交する方向に輝度が傾斜するグラデーション画像とする。
図25を用いて、第5の実施形態に係る投射画像の角度調整方法について、概略的に説明する。なお、第5の実施形態では、上述した第4の実施形態に係るマルチプロジェクタシステム1’をそのまま適用できるので、システムの詳細な説明は省略する。
図25(a)および図25(b)は、第5の実施形態に係る調整用投射画像の例を示す。図25(a)は、左側に配置されるプロジェクタ装置10001から投射される調整用投射画像3040の例を示す。図25(b)は、右側に配置されるプロジェクタ装置10002から投射される調整用投射画像3041の例を示す。
図25(a)に示される調整用投射画像3040の右端部分の領域3340と、図25(b)に示される調整用投射画像3041の左端部分の領域3341とが重ねられて、スクリーン14に投射される。図25(c)は、調整用投射画像3040と調整用投射画像3041とが重ねられて投射され、領域3340および3341が重複された重複領域3342が形成された例を示す。
図25(a)に例示する調整用投射画像3040において、領域3340は、3の領域3080、3081および3082を含む。領域3081を挟んだ領域3080および3082は、右側に向けて一定の傾斜で輝度が減少するグラデーション画像となっている。また、領域3081は、領域3080および3082の傾斜の方向と直交する方向に、下側に向けて一定の傾斜で輝度が減少するグラデーション画像となっている。
一方、図25(b)に例示する調整用投射画像3041において、領域3341は、それぞれ調整用投射画像3040における領域3080、3081および8082に位置が対応する、3の領域3090、3091および3092を含む。各領域3090、3091および3092は、それぞれ位置が対応する領域3080、3081および8082とは逆方向に輝度が傾斜するグラデーション画像となっている。
このような構成において、調整用投射画像3040および3041を、領域3340および3341が重複するように重ねて投射して形成される重複領域3342において、領域3080および3090、領域3081および3091、ならびに、領域3082および3092にそれぞれ対応する領域を、図25(c)に例示されるように、領域#1、#2および#3とする。
第5の実施形態では、調整装置1200は、重複領域3342の画像を、図25(c)に矢印420で示されるように、垂直方向に各領域#1、#2および#3を跨いでスキャンし、各領域#1、#2および#3の輝度を検出する。各領域#1、#2および#3の輝度は、各領域#1、#2および#3内での輝度の平均値を用いることができる。調整装置1200は、検出された各領域#1、#2および#3の輝度のうち、領域#1および#3の輝度を比較し、比較結果に基づき投射画像の回転の有無を判定する。
以下では、調整用投射画像3040を基準とし、領域3340に垂直に各領域#1、#2および#3をスキャンして、当該調整用投射画像3040に対する調整用投射画像3041の回転の有無を判定するものとする。
図26を用いて、第5の実施形態による投射画像の回転の有無の判定方法について概略的に説明する。図26(a)は、調整用投射画像3040および3041のうち一方(調整用投射画像3041)が他方に対してある角度θで回転している場合の、各領域#1、#2および#3の輝度の例を示す。
図20を用いて説明したように、一方の調整用投射画像が角度θで回転している場合、スキャンの始点の輝度LSと終点の輝度LEとが異なる。したがって、図25(a)および図25(b)に示す調整用投射画像3040および3041の場合、下端の領域#3の輝度L3と、上端の領域#1の輝度L1とが異なることになる。図26(a)の例は、輝度L3>輝度L1となっており、図21(b)の例に対応して、調整用投射画像3040を基準として、調整用投射画像3041が時計回りの方向に回転している場合を示している。
調整用投射画像3040および3041が正しい角度関係となっている場合、図26(b)に例示されるように、輝度L1=輝度L3となる。
なお、第5の実施形態では、上述の図23と同様の手順で、投射画像の角度調整処理および位置調整処理を行う。このとき、図23のステップS200の角度調整処理は、ステップS200の詳細として図24に示すフローチャートにおいて、輝度LEを輝度L1と読み替え、輝度LSを輝度L3と読み替えることで、実行可能である。
図27を用いて、第5の実施形態に係る、重複領域3342をスキャンした場合の輝度の取得位置について説明する。図27(a)に示す調整用投射画像3040を基準として、図27(b)に示される、角度θで反時計回りの方向に回転している調整用投射画像3041を重ね合わせて、領域3340および3341が重複する重複領域3342を形成する(図27(c)参照)。
図27(c)を参照し、領域3080に対して領域3090が重複する領域3100を上述した領域#1とし、領域3081に対して領域3091が重複する領域3101を上述した領域#2とし、領域3082に対して領域3092が重複する領域3102を上述した領域#3とする。解析部1210は、重複領域3342を垂直方向にスキャンして得られた輝度のうち、これら領域#1、#2および#3に対応する部分から取得した輝度を用いて、回転の有無の判定を行う。これら各領域#1、#2および#3は、例えば、重複領域3342を垂直方向にスキャンして得られた輝度変化のエッジに基づき検出することができる。
この重複領域3342における輝度の検出方法は、上述した第4の実施形態に対しても適用することができる。
この第5の実施形態によれば、例えば領域3340において、領域3340に含まれる各領域3080、3081および3082のうち互いに隣接し且つ輝度の傾斜の方向が異なる2の領域(例えば領域3080および3081)を用いることで、第1〜第3の実施形態による位置調整処理を実行することができる。したがって、上述した図23のステップS200の角度調整処理の完了後、ステップS201の位置調整処理に移行する際に、画像出力装置11において、出力する投射画像データを切り替える必要がない。
(第5の実施形態の第1の変形例)
次に、第5の実施形態の第1の変形例について説明する。第5の実施形態の第1の変形例は、第5の実施形態による、輝度の傾斜が第1の方向であり一端側に形成される第1の領域と、輝度の傾斜が第1の方向に直交する第2の領域と、輝度の傾斜が第1の方向であり他端側に形成される第3の領域との組を、上述の第1の実施形態の第1の変形例と同様に、1の調整用画像に対して2以上、設けた例である。以下では、これら第1の領域、第2の領域および第3の領域による組を、「角度調整領域の組」と呼ぶ。
図28は、第5の実施形態の第1の変形例による調整用投射画像の例を示す。図28において、各調整用投射画像3050、3051、3052および3053は、頂点を共有する2辺にそれぞれ角度調整領域の組を有している。このように、調整用投射画像に2の角度調整領域の組を設けることで、上述した第5の実施形態による角度調整方法を、4の投射画像を共通のスクリーンに投射した場合に適用することができる。
より具体的には、格子状に投射される4の調整用投射画像3050、3051、3052および3053のうち、左上に投射される調整用投射画像3050は、右端に、グラデーション領域3501、3502および3503を含む角度調整領域の組が配され、下端に、グラデーション領域3504、3505および3506を含む角度調整領域の組が配される。
また、右上に投射される調整用投射画像3051は、左端に、グラデーション領域3501、3502および3503に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3511、3512および3513を含む角度調整領域の組が配され、下端に、グラデーション領域3514、3515および3516を含む角度調整領域の組が配される。
さらに、右下に投射される調整用投射画像3053は、上端に、グラデーション領域3514、3515および3516に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3534、3535および3536を含む角度調整領域の組が配され、左端に、グラデーション領域3531、3532および3533を含む角度調整領域の組が配される。
さらにまた、左下に投射される調整用投射画像3052は、上端に、グラデーション領域3504、3505および3506に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3524、3525および3526を含む角度調整領域の組が配され、右端に、グラデーション領域3531、3532および3533に対して輝度の傾斜の方向がそれぞれ逆とされたグラデーション領域3521、3522および3523を含む角度調整領域の組が配される。
4の調整用投射画像3050、3051、3052および3053は、対峙する辺に配された角度調整領域の組が重なりそれぞれ重複領域を形成するように、スクリーン14に投射される。そして、例えば調整用投射画像3050の投射位置を基準として、調整用投射画像3050に隣接する調整用投射画像3051と、調整用投射画像3052とについて、投射画像の角度調整を行う。調整用投射画像3051および3052の射出位置の調整が完了した後、調整用投射画像3051および3052のうち何れか一方を基準として、調整用投射画像3053の投射画像の角度調整を行う。
調整用投射画像3050、3051、3052および3053の射出位置調整が完了した後、必要に応じて、最初に基準とした調整用投射画像3050以外の調整用投射画像を基準として再度、投射画像の角度調整を実行してもよい。
(第5の実施形態の第2の変形例)
次に、第5の実施形態の第2の変形例について説明する。上述した第5の実施形態の第1の変形例では、スクリーン14に同時に投射可能な投射画像の数が4に制限される。本第5の実施形態の第2の変形例では、それぞれ各辺に角度調整領域の組が配することで、スクリーン14に同時に投射可能な投射画像の数の上限を無くした。
図29は、第5の実施形態の第2の変形例における調整用投射画像の第1の例を示す。図29(a)において、調整用投射画像3060は、各領域の傾斜の向きが互いに逆とされた2の角度調整領域の組を、調整用投射画像3060の対向する辺に設けている。
すなわち、図29(a)の例では、調整用投射画像3060は、上端に、それぞれ上端側、右端側および上端側に向けて輝度が減少するグラデーション領域3601、3602および3603を含む角度調整領域の組が配置され、対向する辺に、それぞれ下端側、左端側および下端側に向けて輝度が減少するグラデーション領域3604、3605および3606を含む角度調整領域の組が配置される。また、調整用投射画像3060は、左端に、それぞれ左端側、上端側および左端側に向けて輝度が減少するグラデーション領域3607、3608および3609を含む角度調整領域の組が配置され、対向する辺に、それぞれ右端側、下端側および右端側に向けて輝度が減少するグラデーション領域3610、3611および3612が配置される。この図29のパターンを、パターンCとする。
このパターンCの調整用投射画像3060は、図29(b)に例示されるように、隣接する調整用投射画像の角度調整領域の組を重複させて、マトリクス状に配置することができる。図29(b)の例では、9の調整用投射画像3060がマトリクス状に投射されているが、これはこの例に限定されず、さらに多くの調整用投射画像3060をマトリクス状に投射してもよいし、9より少ない調整用投射画像3060を投射してもよい。勿論、2の調整用投射画像3060のみを投射してもよい。
図30は、第5の実施形態の第2の変形例による調整用投射画像の第2の例を示す。第2の例では、各辺に配置する角度調整領域の組の構成が互いに異なる2パターンの調整用投射画像を用意する。そして、この2パターンの調整用投射画像を、同一パターンの調整用投射画像が隣接しないように、マトリクス状に投射する。すなわち、この第2の例では、2パターンの調整用投射画像が、市松模様状に投射される。
図30(a)は、第1のパターンであるパターンDの調整用投射画像の例、図30(b)は、第2のパターンであるパターンEの調整用投射画像の例を示す。図30(a)に示される調整用投射画像3070、および、図30(b)に示される調整用投射画像3080は、それぞれ、各領域の傾斜の向きが互いに同一とされた2の角度調整領域の組を、対向する辺に設けている。
図30(a)において、パターンDの調整用投射画像3070は、上端および下端に、それぞれ上端側、左端側および上端側に向けて輝度が減少するグラデーション領域3701、3702および3703を含む角度調整領域の組と、グラデーション領域3704、3705および3706を含む角度調整領域の組とが配置される。また、調整用投射画像3070は、左端および右端に、それぞれ右端側、下端側および右端側に向け輝度が減少するグラデーション領域3707、3708および3709を含む角度調整領域の組と、グラデーション領域3710、3711および3712を含む角度調整領域の組とが配置される。
一方、図30(b)において、パターンEの調整用投射画像3080は、上端および下端に、それぞれ下端側、右端側および下端側に向けて輝度が減少するグラデーション領域3801、3802および3803を含む角度調整領域の組と、グラデーション領域3804、3805および3806を含む角度調整領域の組とが配置される。また、調整用投射画像3080は、左端および右端に、それぞれ左端側、上端側および左端側に向け輝度が減少するグラデーション領域3807、3808および3809を含む角度調整領域の組と、グラデーション領域3810、3811および3812を含む角度調整領域の組とが配置される。
これらパターンDの調整用投射画像3070と、パターンEの調整用投射画像3080は、図30(c)に例示されるように、市松模様状に投射することができる。また、図30(c)の例では、5のパターンDの調整用投射画像3070と、4のパターンEの調整用投射画像3080とが市松模様状に投射されている。これはこの例に限定されず、さらに多くの調整用投射画像3070および3080を市松模様状に投射してもよいし、合計で9より少ない調整用投射画像3070および3080を投射してもよい。勿論、2の調整用投射画像3070および3080のみを投射してもよい。
なお、この第5の実施形態の第2の変形例における第1の例および第2の例では、上述した第1の実施形態の第2の変形例で説明した調整手順をそのまま適用できるので、ここでの詳細な説明を省略する。
(他の実施形態)
なお、各実施形態に係る調整装置12(調整装置1200)は、解析部120(解析部1210)および制御部121(制御部121’、制御部121”、制御部1211)を互いに独立したハードウェアで構成してもよいし、CPU(Central Processing Unit)上で動作する画像調整プログラムにより、これら解析部120(解析部1210)および制御部121(制御部121’、制御部121”、制御部1211)の機能を実現してもよい。
調整装置12(調整装置1200)の各機能部をCPU上で動作する画像調整プログラムで実現する場合、調整装置12(調整装置1200)は、CPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびデータI/F(インターフェイス)を少なくとも備え、CPUは、ROMに記憶されるプログラムに従い、RAMをワークメモリとして用いて、調整装置12(調整装置1200)の全体の動作を制御するように構成される。
データI/Fは、第1の実施形態においては、プロジェクタ装置101および102のレンズシフト部1051および1052に対して制御信号を供給する際のインターフェイスとして用いられる。また、第2の実施形態においては、プロジェクタ装置101および102の台座駆動部1061および1062に対して制御信号を供給する際のインターフェイスとして用いられる。さらに、データI/Fは、第4の実施形態および第5の実施形態においては、プロジェクタ装置10001および10002の回転機構部10101および10102に対して制御信号を供給する際のインターフェイスとして用いられる。さらにまた、データI/Fを介してカメラ13の動作を制御することも可能である。さらにまた、第1の実施形態の第1および第2の変形例のように、多数の調整用投射画像を投射する場合に、各調整用投射画像を投射する各プロジェクタ装置間での通信を行う際のインターフェイスとして、データI/Fを用いてもよい。調整装置12(調整装置1200)に対して、ネットワークを介して通信を行う通信I/Fをさらに設けてもよい。
各実施形態の画像調整プログラムは、ネットワークを介して接続されたコンピュータ上に格納し、当該ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成される。また、各実施形態の画像調整プログラムを、当該ネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。このプログラムを、ROMに予め記憶させて提供することもできる。
これに限らず、実施形態のプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。この場合、例えばデータI/Fに接続された外部のドライブ装置を介して、当該画像調整プログラムが調整装置12に供給される。
各実施形態の画像調整プログラムは、例えば、上述した各部(解析部120(解析部1210)、および、制御部121(または制御部121’、制御部121”、制御部1211))を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが例えばROMから当該画像調整プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置(例えばRAM)上にロードされ、各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
また、上述では、カメラ13、調整装置12(調整装置1200)、画像出力装置11およびプロジェクタ装置101(プロジェクタ装置102、プロジェクタ装置10001、プロジェクタ装置10002)がそれぞれ独立したハードウェアであるとして説明したが、これはこの例に限定されない。
例えば、調整装置12(調整装置1200)および画像出力装置11を一体的に構成してもよいし、この構成に、さらにカメラ13を含めてもよい。この場合、カメラ13、調整装置12(調整装置1200)および画像出力装置11が一体的とされた構成は、例えばスマートフォンといった多機能携帯電話装置や、タブレット型コンピュータを用いて実現可能である。
さらに、カメラ13、調整装置12(調整装置1200)および画像出力装置11を、プロジェクタ装置101(プロジェクタ装置102、プロジェクタ装置10001、プロジェクタ装置10002)に組み込むことも可能である。この場合、カメラ13、調整装置12(調整装置1200)および画像出力装置11が組み込まれた例えばプロジェクタ装置101と、制御部121による制御データ、または、制御部121’(制御部1211)による制御信号に対応する他のプロジェクタ装置とを用いて、上述と同様な位置調整処理を行うことができる。
また、これに限らず、カメラ13、調整装置12(調整装置1200)および画像出力装置11が組み込まれたプロジェクタ装置101(プロジェクタ装置102、プロジェクタ装置10001、プロジェクタ装置10002)と、制御部121による制御データ、または、制御部121’(制御部1211)による制御信号に対応しない他のプロジェクタ装置とを用いてもよい。この場合、例えばプロジェクタ装置101と他のプロジェクタ装置とにより、それぞれ調整用投射画像301および302を重複領域33’が生じるように投射し、プロジェクタ装置101が組み込まれたカメラ13を用いて全体投射画像300を撮像する。そして、調整装置12は、全体投射画像300を撮像した撮像画像に基づきプロジェクタ装置101のレンズシフト部1051を制御して、位置調整を行う。