JP2017116262A - 長尺板状体の防錆処理の評価方法及びその評価方法を用いた金属化樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

長尺板状体の防錆処理の評価方法及びその評価方法を用いた金属化樹脂フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 金属化樹脂フィルムの表面に設けられた有機防錆剤による防錆皮膜に生じた塗布斑を事前に把握可能な長尺板状体の防錆処理の評価方法、及びその評価方法を用いた金属化樹脂フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】 金属の表面を有し、その金属の表面に有機防錆剤膜を備えた長尺板状体における防錆処理の評価方法において、有機防錆剤膜の表面に乾式めっき膜の可視光不透過薄膜を備え、その乾式めっき膜の可視光不透過薄膜の表面に照射された可視光により生じた色調の違いによる表面斑を比較して防錆処理の良否を評価することを特徴とする長尺板状体の防錆処理の評価方法。【選択図】図2

Description

本発明は、少なくとも一部に金属表面を有する板状体において、その金属表面の防錆処理を評価する方法と、その防錆処理方法を用いた、電子機器内の配線部材に用いられる金属化樹脂フィルムの製造方法に関する。
金属化樹脂フィルムは、銅箔と樹脂フィルムとの間に介在させた接着剤を用いて両者を貼り合わせたものが主流であり、樹脂フィルムとしてはポリイミドフィルムが広く使われている。この金属化樹脂フィルムを基板としてパターニング処理して得られるフレキシブルプリント配線板は、液晶パネルや携帯電話等の電子機器内の配線部材として広く採用されている。
近年、電子部品の軽薄短小化に伴い、配線部材の配線には狭ピッチ化の要求が高まっている。そのため、基材としての金属化樹脂フィルムにも微細配線を描ける高品質のものが求められるようになってきている。かかる状況の中、樹脂フィルムにポリイミドフィルムを用い、接着剤層を介在させずに形成した金属化ポリイミドフィルムの基板が注目を集めている。
この基板は、接着剤層が無いので接着剤層の特性に左右されることがなく、ポリイミド本来の特性である安定性を利用した材料が得られるという利点を有している。なお、以降の説明では、このように樹脂フィルムにポリイミドを用いた場合を金属化ポリイミドフィルムと称し、ポリイミドに限定しない場合は単に金属化樹脂フィルムと記載する。
接着剤層の無い金属化ポリイミドフィルムを作製する方法には、(1)銅箔にポリイミドワニスを塗布し、加熱によりポリイミドフィルム層を形成するキャスティング法、(2)ポリイミドフィルムに熱可塑性のポリイミド系接着剤を塗布して銅箔と加熱圧着させるラミネート法、(3)ポリイミドフィルム表面にスパッタ法や蒸着法で直接金属層を積層させた後、電気めっき法や無電解めっき法を用いて金属層を厚付けするスパッタリング法がある。
上記スパッタリング法では、金属化樹脂フィルムを連続的に製造することができ、例えば長尺状の樹脂フィルムをロールツーロールで搬送しながら、少なくとも片面に先ずスパッタリングもしくは蒸着等の乾式めっき法により、ニッケル、クロム、またはニッケルクロム合金等からなる金属シード層を形成し、その上に良導電性を付与するために銅層からなる金属被膜を形成する。さらに、通常は回路形成のための導電層を厚膜化するため、電気めっき単独、または電気めっきと無電解めっきとの併用による湿式めっき法によって銅等の金属導電体層を形成することが行われる。
電気めっき法によって長尺樹脂フィルムの表面に連続的に金属導電体層を形成する場合は、例えば、内部にアノード(陽極)を備え、このアノードが浸漬するようにめっき液が張り込まれているめっき槽と、長尺樹脂フィルムを搬送して連続的にアノードに対向させるための搬送機構と、これらアノードと長尺樹脂フィルム上のめっき面とに電力を供給する給電部とで主に構成される連続めっき装置が用いられる。
なお、一般にめっき槽は2槽以上で構成されており、これらは樹脂フィルムの搬送方向に沿って並べられている。
例えば特許文献1には、電解液が張り込まれた複数のめっき槽を並置し、連続的に搬送される厚み0.5μm以下の金属化樹脂フィルムを、これらめっき槽に順次浸漬させて陽極に対向させることにより連続的にめっきする方法が示されている。
この特許文献1の方法では、各めっき槽毎に通電量を制御できるようになっており、めっき槽毎の通電量を金属化樹脂フィルムの搬送方向に関して後段になるにしたがって順次増加させることにより、均一で良好な電気めっき被膜を連続的に形成できることが示されている。
さらに、このようにして作製した金属化樹脂フィルムの金属導電体層の発錆を抑えるため、金属導電体層の表面を防錆剤で処理することが良く行われている。例えば特許文献2〜4には、ポリイミドフィルムと銅箔とを貼り合わせたり加熱圧着したりして作製した金属化ポリイミドフィルムの銅箔に対して防錆処理を施すことが開示されている。
特開2009−026990号公報 特開2005−322682号公報 特開2009−196098号公報 特開2007−152835号公報
ところで、金属化ポリイミドフィルムでは、金属導電体層の表面を有機防錆剤で防錆処理を施すが、この防錆処理時に塗布した有機防錆剤により形成された有機防錆剤膜には、塗布斑が生じ配線加工の不具合の原因となることが問題になっていた。
本発明は、このような従来問題に鑑み、なされたものであり、金属化ポリイミドフィルムのような金属化樹脂フィルムの表面に設けられた有機防錆剤による防錆皮膜に生じた塗布斑を事前に把握可能な長尺板状体の防錆処理の評価方法、及びその評価方法を用いた金属化樹脂フィルムの製造方法を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するため、長尺板状体としての金属化樹脂フィルムの表面に設けた有機防錆剤からなる皮膜に生じる塗布斑について鋭意研究を行った結果、有機防錆剤膜が形成された長尺の金属化樹脂フィルムの端部の表面を観察することで、有機防錆剤膜を備えた金属導電体層表面に有機防錆剤による塗布斑の有無が把握できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の発明は、金属の表面を有し、その金属の表面に有機防錆剤膜を備えた長尺板状体における防錆処理の評価方法において、その有機防錆剤膜の表面に乾式めっき膜の可視光不透過薄膜を備え、その可視光不透過薄膜の表面に照射された可視光により生じた色調の違いによる表面斑を比較して防錆処理の良否を評価することを特徴とする長尺板状体の防錆処理の評価方法である。
本発明の第2の発明は、第1の発明における可視光不透過薄膜の膜厚が、3nm〜40nmであることを特徴とする長尺板状体の防錆処理の評価方法である。
本発明の第3の発明は、第1の発明における可視光不透過薄膜が、金属薄膜又は黒色金属化合物薄膜のいずれかであることを特徴とする長尺板状体の防錆処理の評価方法である。
本発明の第4の発明は、第3の発明における黒色金属化合物薄膜が、銅またはニッケルを含む化合物膜であることを特徴とする長尺板状体の防錆処理の評価方法である。
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明における金属の表面を有する長尺板状体が、長尺の樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に金属層を備えた金属化樹脂フィルムであることを特徴とする長尺板状体の防錆処理の評価方法である。
本発明の第6の発明は、金属化樹脂フィルムの製造方法における金属面に有機防錆剤膜を備える金属化樹脂フィルムの防錆処理の良否を、第5の発明に記載の長尺板状体の防錆処理の評価方法を用いて判断することを特徴とする金属化樹脂フィルムの製造方法である。
本発明によれば、金属導電体層の表面の有機防錆剤膜の塗布斑を事前に把握できるので、有機防錆剤の塗布斑が確認でき、配線加工時の有機防錆剤の除去や金属化樹脂フィルムの防錆加工の再加工など、特にCOFなどの微細加工に好適な金属化樹脂フィルムを提供することができる。
本発明の表面処理方法が好適に適用される電気めっき装置の概略の側面図である。 図1の電気めっき装置のうち、後処理部分を示す概略の側面図である。
以下、本発明の防錆処理の評価方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
この本発明の一実施形態は、表面処理方法を電子機器内の配線部材に用いられる金属化樹脂フィルムの製造工程に適用したものであり、特にその一工程である電気めっき工程の後処理工程である防錆処理に適用している。なお、本発明の表面処理方法は、かかる電気めっき工程の後処理工程の防錆処理への適用に限定されるものではなく、金属化樹脂フィルムに代表される少なくとも一部に金属表面を有する長尺板状体をローラーにより連続的に搬送しながら有機防錆剤に代表される液状物を塗布または浸漬する金属表面の表面処理方法に対して広く適用可能である。
先ず、電気めっき工程について、図1に示す電気めっき装置の概略側面図、及び図2の後処理部分を示す概略の側面図を参照しながら説明する。この図1の電気めっき装置は、図示しない前段の乾式めっき装置において少なくとも片面に金属層が積層された金属化樹脂フィルムFに対して、ロールツーロール方式で搬送しながら湿式めっきである電気めっきを行って厚膜化された金属層を有する金属化樹脂フィルムFを作製するものである。
図1において、1は巻出しロール、2は電気めっき部、3はめっき液の除去部、4は後処理部、5は巻取りロール、Fは長尺板状体の金属化樹脂フィルムである。
具体的には、ロール状に巻回された金属化樹脂フィルムFが巻き出される巻出しロール1と、ローラーで搬送される金属化樹脂フィルムFの金属層を厚膜化して金属導電体層を形成する電気めっき部2と、電気めっき部2で付着しためっき液を除去する除去部3と、電気めっき部2によって厚膜化された金属層を有する金属化樹脂フィルムFに有機防錆処理及び乾燥処理を施す後処理部4と、該防錆処理等が施された金属化樹脂フィルムFをロール状に巻き取る巻取りロール5とで構成される。
各部分について説明すると、電気めっき部2は、めっき液が張り込まれためっき槽内に4枚の互いに平行なアノード(陽極)がめっき液に浸漬するように設けられており、このアノードに金属化樹脂フィルムFが連続的に対向できるように5つのローラーが液面下と液面上とに交互に配置されている。そして、これらアノードと液面上のローラーとに図示しない給電装置によって電力の供給が行われる。なお、めっき槽内は図示しない仕切り板によって2枚のアノードと1つのローラーとを各々有する2つの槽に区切られている。
めっき液の除去部3は、各々金属化樹脂フィルムFを上下から挟んで搬送する2つのローラー対と、それらの間に位置する洗浄水の吹き付け装置とから構成され、金属化樹脂フィルムFに付着しためっき液を洗浄して除去できるようになっている。
後処理部4は、金属化樹脂フィルムFの金属導電体層表面に有機防錆剤の皮膜を形成する部分であり、図2に示す通り、前段の電気めっき部2で電気めっき処理を終えて厚膜化した金属導電体層が積層された金属化樹脂フィルムFを複数のローラー対11a〜11dを用いて搬送しながら、塗布装置12、水洗装置13、水切り装置14、および乾燥装置15において順に処理するものである。
なお、図2は図1の電気めっき装置のうち、後処理部分を示す概略の側面図で、11aは塗布装置直後のローラー対、11bは水洗装置直後のローラー対、11cは水切り装置直後のローラー対、11dは乾燥装置直後のローラー対、12は塗布装置、13は水洗装置、14は水切り装置、15は乾燥装置である。
塗布装置12では、金属化樹脂フィルムFの金属導電体層側の表面に有機防錆剤が塗布される。これにより、金属導電体層の表面に皮膜が形成され、該表面の活性を抑えて酸化を防止することができる。なお、本実施形態では、塗布装置12、水洗装置13、水切り装置14、および乾燥装置15の各々の直ぐ後段に、水平方向に搬送される金属化樹脂フィルムFを上下から挟む一対のローラーが一つだけ設置されているが、各処理装置とその後段の処理装置との間に1つ以上のローラーがあればこれに限定されるものではない。例えば塗布装置12とその後段の水洗装置13の間に複数のローラー対が設置されていてもよい。
塗布装置12で使用する有機防錆剤には、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾール等の有機防錆剤を使用するのが好ましく、特にベンゾトリアゾールが好適である。これら有機防錆剤を水溶液にして金属化樹脂フィルムに対して塗布または浸漬を行うことにより防錆効果が得られるが、有機防錆剤は水への溶解度が小さいため、アルコールを添加した水溶液とするのが好ましい。添加するアルコールとしては、メタノールまたはエタノールを主成分とするものが好適である。有機防錆剤の濃度は、金属化樹脂フィルムの用途に応じて適宜設定すればよい。
また、有機防錆剤膜の塗布厚みは、重量換算厚みで0.5μg/m〜100mg/mであり、適宜選択できる。
有機防錆剤を塗布する方法としては、図2の塗布装置12で例示しているように、金属膜が形成されている面を下側にして水平方向に搬送されている金属化樹脂フィルムFの当該下側の面に向けて下方から有機防錆剤の水溶液を吹き付ける吹上法のほか、スプレーノズル法、シャワーリング法、ミスト法、電着法など公知の方法を利用することができる。あるいは、金属化樹脂フィルムF全体を容器に張り込まれた有機防錆剤水溶液に浸漬させてもよい。
図2では、塗布装置12で処理された金属化樹脂フィルムFは、水洗装置13、水切り装置14、乾燥装置15の順に処理されている。水洗装置13は塗布装置12で余剰に付着した有機防錆剤を除去するものであり、使用する水は純水が好ましいが、必要に応じて洗浄力を高めるために純水に添加剤を加えてもよい。この水を前述した塗布装置12と同様に金属化樹脂フィルムFに吹き付けたりシャワーリングしたりすることで良好に洗浄することができる。
水切り装置14は、後段の乾燥装置15に持ち込まれる水分量を低減することを目的とするものであり、図2に示すように表裏面を上下に向けて水平方向に搬送されている金属化樹脂フィルムFの当該表裏面に向けてそれぞれ上下から圧縮エアーを吹き付けることで金属化樹脂フィルムFに付着している水分を減らしている。乾燥装置15は、水平方向に搬送される金属化樹脂フィルムFのスリット状入口および出口を有するボックス内に、温風を導入すると共に蒸発した水分を含むガスを排気することで金属化樹脂フィルムFを乾燥するものである。
塗布装置12で処理された金属化樹脂フィルムFは、水洗装置13で過剰に付着した有機防錆剤が除去されている。しかし、金属化樹脂フィルムFの搬送状況によっては、金属化樹脂フィルムFの表面に、有機防錆剤の偏りが生じることがある。
この有機防錆剤の偏りが、有機防錆剤膜の塗布斑となる。なお、有機防錆剤の塗布斑は図2に示すように表裏面を上下に向けて水平方向に搬送されている金属化樹脂フィルムFに限らず、金属化樹脂フィルムFの幅方向を略鉛直方向に搬送して有機防錆剤処理する場合でも発生する。
水洗後に乾燥した金属化樹脂フィルムFから切り出したサンプル片の金属導電体層の表面、即ち、有機防錆剤膜の表面に、乾式めっき法で可視光を透過し難い薄膜(以下、乾式めっき膜の可視光不透過薄膜、若しくは単に薄膜と称す。)を成膜すると、この薄膜は、有機防錆剤膜の塗布斑による凹凸に追従した薄膜となる。
この薄膜は、その表面が有機防錆剤膜の塗布斑の凹凸に追従しているので、薄膜表面に可視光を照射すると、薄膜の表面に塗布斑に起因する模様が現れる。
本発明に係る長尺板状体の防錆処理の評価方法は、このような塗布斑に起因する凹凸を有する有機防錆剤膜の表面に光を透過しない薄膜を成膜し、その薄膜の表面に可視光を照射することで目視できる模様により、長尺板状体の防錆処理の良否を判断するものである。なお、有機防錆剤膜は、可視光を透過するので、有機防錆剤膜の表面に可視光を照射しても塗布斑を目視で確認することは難しい。
この可視光不透過薄膜には、ニッケル、クロムや銅または、これらの金属を含む合金からなる金属膜を用いることができる。この金属膜は、膜を構成する金属を含むスパッタリングターゲットを用いて、アルゴンガスなどの希ガス雰囲気下でスパッタリングにより成膜する。
また黒色金属化合物膜も利用でき、この化合物膜はニッケル、クロムや銅を含む化学的に不定比の酸化物膜や化学的に不定比の窒化物膜である。酸化物膜を得るために酸化物ターゲット、あるいは、窒化物を得るために窒化物ターゲットを使用すると成膜速度が遅く量産に適していないので、この解決方法として高速成膜が可能な金属ターゲットを採用し、成膜中に反応性ガスを制御しながら導入する。
そこで、黒色金属化合物膜は、化学的に不定比の酸化物や窒化物を構成する金属を含むスパッタリングターゲットを用いて反応性スパッタリングにより成膜される。
反応性スパッタリングでは、スパッタリングガスのアルゴンガスに、酸素ガスや窒素ガスを添加する。黒色金属化合物薄膜は、化学的に不定比の酸化物や窒化物として成膜される。なお、化学的に不定比の酸化物ならば、透過する可視光は少ない。
可視光不透過薄膜の膜厚は、3nm〜40nmが望ましい。
その薄膜が成膜された金属樹脂化フィルムは、薄膜に光を照射することで目視にて、薄膜の外観斑を観察する。薄膜は、膜厚が3nm〜40nmと薄い為、金属導電体層の表面の有機防錆剤膜の塗布斑に起因する凹凸より、薄膜での凹凸となって現れる。
薄膜の膜厚が3nm未満では、薄膜が薄すぎて、有機防錆剤膜の塗布斑を確認できない。一方、薄膜の膜厚が40nmを超えると、薄膜により有機防錆剤被膜の塗布斑を埋めてしまうので、塗布斑の判断ができない。
長尺の金属化樹脂フィルムの一部の有機防錆剤膜の塗布斑を見ることで、評価対象のバッチ全体の塗布斑を推定することができる。金属化樹脂フィルムは、全長500m以上で、その全長に渡って連続成膜と連続防錆処理が行われる。そのため、サンプリングされた試料の有機防錆剤膜の塗布斑を確認すれば、バッチ全体の塗布斑の状況を推定できる。
本発明の金属化樹脂フィルムの表面状態の評価方法は、表面処理が対象とする少なくとも一部に金属表面を有する板状体で可能で、上記した電子機器内の配線部材に用いられる金属化樹脂フィルムに限定されるものではなく、少なくとも一部に金属表面を有し、金属表面に有機防錆剤が塗布された対象物に広く適用することができる。少なくとも一部に金属表面を有する板状体には、上記した電子機器内の配線部材以外に用いられる金属化樹脂フィルム、金属が表面に積層された薄いガラスやプラスチック、厚さ0.3mm以下の金属製の薄板、箔等を挙げることができる。
上記した少なくとも一部に金属表面を有する板状体のうち、例えば接着剤層を使用せずに形成される金属化樹脂フィルムの場合は、長尺樹脂フィルムに蒸着法やスパッタ法を用いた乾式めっき法でニッケル、クロム等からなる金属シード層を形成し、この金属シード層の上に銅などを積層して金属層を形成することができる。その後、前述した電気めっき法もしくは無電解めっき法、またはこれら両者を組み合わせた方法を用いて、金属導電体層である銅層の厚付けが行われる。
上記長尺樹脂フィルムには、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンテレナフタレート(PEN)等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、または液晶ポリマー系フィルム等の中から、耐熱性、誘電体特性、電気絶縁性やプリント配線基板の製造工程やその後工程での耐薬品性、および用途等を考慮に入れて適宜選択される。また、その厚さも用途に応じて適宜選択されるが、主として10μm〜50μmのものが使われる。
金属シード層は、長尺樹脂フィルムと金属導電体層との密着性や、フレキシブルプリント配線板の絶縁信頼性の向上に寄与する。このような金属シード層として、ニッケル、またはニッケルにクロム、バナジウム、チタン、モリブデン、コバルト、およびタングステンの中から選択される1種以上の元素を添加したニッケル合金を使用することが好ましい。これらの中でも、ニッケル−クロム合金が好ましく、そのクロムの含有量が15質量%〜25質量%であることがより好ましい。このようなニッケル−クロム合金は、高い絶縁信頼性を有し、かつ、配線パターンを容易に形成することができる。
金属シード層の膜厚は、該金属シード層を形成する金属または合金の種類や組成、フレキシブルプリント配線板での配線の加工性、配線に要求される密着性や絶縁信頼性から適宜選択されるものであるが、3nm〜50nmとすることが好ましい。金属シード層の膜厚が3nm未満では、配線部以外の金属層(金属導電体層と金属シード層)をフラッシュエッチングなどで除去して配線パターンを形成する際、エッチング液が絶縁フィルムと金属層の間に染み込みやすくなり、配線が浮き上がってしまう問題が生じるおそれがある。一方、金属シード層の膜厚が50nmを超えると、フラッシュエッチングなどで最終的に配線パターンを形成する際、金属層が完全に除去されずに残存し、配線間の絶縁不良を発生させるおそれがある。
金属シード層に乾式めっき法で積層する銅層の膜厚は0.01〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmが特に好ましい。この銅層の厚さが0.01μm未満では、フレキシブルプリント配線板上の配線部の電気導電性に問題が発生しやすくなったり、強度上の問題が生じたりする場合がある。一方、乾式めっき法による成膜速度は電気めっき法による成膜速度に比べて遅いため、乾式めっき法により1μmを超えて成膜しようとすると、生産性が低下する。
電気めっき法もしくは無電解めっき法、またはこれら両者を組み合わせた方法で金属導電体層である銅層を厚膜化する場合の膜厚は、フレキシブルプリント配線板の配線パターニングにおいて、サブトラクティブ法またはセミアディティブ法のどちらを選択するかにより決まるものである。すなわち、銅層の膜厚は、サブトラクティブ法によって配線を形成する場合には5〜12μm、セミアディティブ法によって配線を形成する場合には0.
5〜4μmとするのが好ましい。なお、電気めっき法は特に限定されることはなく、たとえば、硫酸銅水溶液中で公知の電気めっき方法を使用することができる。
また、上記本発明の実施形態の防錆処理の評価方法で評価した金属化樹脂フィルムは、乾式めっき法にて長尺樹脂フィルムの少なくとも片面に金属層が積層された金属化樹脂フィルムに、電気めっき法にて金属導電体層を積層して得たものであったが、金属化樹脂フィルム(長尺樹脂フィルムにポリイミドフィルムを用いる場合は金属化ポリイミドフィルム)の製造方法はこれに限定されるものではない。
すなわち、銅箔とポリイミドフィルムを接着剤により貼り合せた金属化ポリイミドフィルムや、銅箔にポリイミドワニスを塗布して加熱によりポリイミドフィルム層を形成するキャスティング法や、ポリイミドフィルムに熱可塑性のポリイミド系接着剤を塗布して銅箔と加熱圧着させるラミネート法で得られる金属化ポリイミドフィルムにおいて、金属導電体層に有機防錆剤の表面皮膜を形成する場合にも、有機防錆剤を塗布する工程に本発明の表面処理方法を適用してもよい。さらに、上記金属化ポリイミドフィルムを製造するために用いられる銅箔に、有機防錆剤による表面皮膜を形成した場合にも、本発明の防錆処理の評価方法を適用することができる。
フレキシブルプリント配線板の配線パターンニングでは、サブトラクティブ法またはセミアディティブ法のいずれかを選択するが、パターン形成の為、金属導電体層の表面にレジスト膜を形成しなければならない。このレジスト膜形成に先立ち、金属化樹脂フィルムの有機防錆剤膜を除去する場合と除去しない場合がある。有機防錆剤膜を除去する場合も、除去しない場合でも、有機防錆剤膜の塗布斑はパターン形成の不具合となることがある。
そこで、有機防錆剤を除去する場合は、有機防錆剤に塗布斑があると、有機防錆剤の除去が不十分となり、残留する有機防錆剤膜によりレジスト膜の密着が確保できず適切に配線パターンが形成できない。
このような有機防錆剤の塗布斑の存在の恐れから、金属化樹脂フィルムを配線加工する前に、金属導体層の全表面を化学エッチング加工してする場合もある。このように金属導体層を化学エッチングすると金属導体層が無駄になるため、フレキシブルプリント配線板のコストアップや、エッチング廃液の環境問題が生じる。
また、有機防錆剤膜を除去せずにレジスト膜を形成する場合でも、有機防錆剤膜の塗布斑による有機防錆剤膜の膜厚の変動によりレジスト膜の密着性が確保できず、適切に配線パターンが形成できない。
なお、有機防錆剤膜を除去する場合や除去しない場合とも適宜レジストは選択される。
本発明は、有機防錆剤の塗布斑を事前に知ることで、有機防錆剤の再加工などを行うことで、有機防錆剤に生じた塗布斑を容易に解消可能であり、有機防錆剤の塗布斑問題に対応している。
さらに、塗布斑状態を解消する有機防錆剤膜の再加工では、界面活性剤と硫酸の混合液等で有機防錆剤膜を除去した後に、再度有機防錆剤処理を行えばよい。
以下に、本発明を実施例を用いて説明する。
図1に示すような連続電気めっき装置を用いて、ロール状に巻回された長尺の金属化樹脂フィルムFを巻出しロール1から巻出し、連続的に搬送しながら、電気めっき部2で電気銅めっき処理して銅層が厚膜化された金属化樹脂フィルムFを得た後、めっき液の除去部3で、その金属化樹脂フィルムFに付着しためっき液を除去し、さらに後処理部4で有機防錆剤の塗布と乾燥を行ってから巻取りロール5で巻取った。
なお、作製した金属化樹脂フィルムFは、有機防錆剤膜表面に塗布斑が発生する搬送条件で搬送した。
巻出しロール1から巻き出す金属化樹脂フィルムFには、厚み38μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、商品名カプトン(登録商標))の表面に、予めスパッタリング法で膜厚10nmのニッケル−20質量%クロム合金膜を成膜し、さらにこの合金膜の表面に膜厚100nmの銅層を積層したものを用いた。
電気めっき部2では、硫酸を100g/L、硫酸銅を180g/L含み、塩素含有量50質量ppmの硫酸銅溶液に、銅めっき皮膜の平滑性等を確保する添加剤を加えためっき液を用いた。さらに、金属化樹脂フィルムFを、3m/min.の搬送速度で、この電気めっき部に導入することにより、金属化樹脂フィルムFの銅層を8μmまで厚膜化した。
後処理部4で用いる有機防錆剤は、ベンゾトリアゾールを0.4質量%以下、アルコールを1.0容量%以下に調整した水溶液を用いた。めっき液の除去部3および水洗装置13の洗浄液には純水を用いた。
防錆処理は、後処理部4全体を略直方体形状のカバーで覆うと共にその内部に空調機を設置し、設定温度を28℃にした状態で、銅層の表面に、有機防錆剤を塗布、乾燥して行った。
次に、防錆処理が施された長尺の金属化樹脂フィルムFを、幅12cm×長さ12cmの大きさに切り出し、評価サンプルを用意した。
その評価サンプルの有機防錆剤膜をスパッタリング装置内に載置し、Cuターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を用いた直流スパッタリング法により、その防錆剤膜表面に表1に示す厚みに乾式めっき膜である可視光不透過薄膜の酸化銅膜を成膜して、実施例1〜3、及び比較例1,2の塗布斑確認サンプルを作製した。
なお、スパッタリング雰囲気は、スパッタリング装置内を1×10−4Paまで真空ポンプにより排気した後、スパッタリング装置内への気体供給手段によりアルゴンガスの流量が240sccmとなるようにしてアルゴンガスを導入し、表1の条件で酸素ガスを添加した。
その成膜を行った評価用の塗布斑確認サンプルの外観に、有機防錆剤膜の塗布斑が存在するかどうかを、可視光を照射して目視確認を行った。
評価結果を表1に示す。
Figure 2017116262
目視での評価の結果、実施例1〜3に係る塗布斑確認サンプルでは目視で塗布斑を確認できたが、比較例1、2に係るサンプルでは塗布斑を目視で確認できなかった。
F 金属化樹脂フィルム
1 巻出しロール
2 電気めっき部
3 めっき液の除去部
4 後処理部
5 巻取りロール
11a 塗布装置直後のローラー対
11b 水洗装置直後のローラー対
11c 水切り装置直後のローラー対
11d 乾燥装置直後のローラー対
12 塗布装置
13 水洗装置
14 水切り装置
15 乾燥装置

Claims (6)

  1. 金属の表面を有し、前記金属の表面に有機防錆剤膜を備えた長尺板状体における防錆処理の評価方法において、
    前記有機防錆剤膜の表面に、乾式めっき膜の可視光不透過薄膜を備え、前記乾式めっき膜の可視光不透過薄膜の表面に照射された可視光により生じた色調の違いによる表面斑を比較して前記防錆処理の良否を評価することを特徴とする長尺板状体の防錆処理の評価方法。
  2. 前記可視光不透過薄膜の膜厚が、3nm〜40nmであることを特徴とする請求項1に記載の長尺板状体の防錆処理の評価方法。
  3. 前記可視光不透過薄膜が、金属薄膜又は黒色金属化合物薄膜のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の防錆処理の評価方法。
  4. 前記黒色金属化合物薄膜が、銅またはニッケルを含む化合物膜であることを特徴とする請求項3に記載の長尺板状体の防錆処理の評価方法。
  5. 前記金属の表面を有する長尺板状体が、長尺の樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に金属層を備えた金属化樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の長尺板状体の防錆処理の評価方法。
  6. 金属化樹脂フィルムの製造方法における金属面に有機防錆剤膜を備える金属化樹脂フィルムの防錆処理の良否を、前記請求項5に記載の長尺板状体の防錆処理の評価方法を用いて判断することを特徴とする金属化樹脂フィルムの製造方法。
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