JP2017115651A - エンジン制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】吸気通路に脈動が生じている場合でも、精度の高い充填空気量を取得してエンジンを適正に制御することができるエンジン制御装置を提供する。【解決手段】エンジン制御装置10は、吸気通路において気筒よりも上流側に配置され吸気通路の物理量を検出する検出装置と、吸気弁の開閉時期を調整する吸気弁駆動装置と、を備えるエンジンを制御する。このエンジン制御装置10は、検出装置からの検出値に基づいて吸気通路の検出流量を取得する流量取得部11と、吸気通路における脈動の増幅度に基づいて、検出流量を補正する補正部14と、補正後の検出流量に基づいて、気筒の充填空気量を取得する充填空気量取得部25と、を有する。【選択図】 図2

Description

気筒への充填空気量に基づいてエンジンを制御するエンジン制御装置に関する。
エンジンの吸気弁を閉じるタイミングをピストンが下死点に達する時期からずらし、圧縮比を制御するバルブタイミング制御が知られている。バルブタイミング制御では、例えば、圧縮行程中も吸気弁が開かれているため、気筒内の空気がピストンにより吸気通路に押し出される現象が生じる。以下、吸気通路から気筒に向かう気体を順流、気筒から吸気通路に押し戻される気体を逆流とも記載する。
逆流が生じると、気筒内への空気の流入量が減少するため充填空気量が正しい値とならない。そこで、特許文献1には、吸気弁の開弁時期と、吸気圧と、逆流量との関係をマップ等により保持し、この関係をもとに逆流量を取得する発明が開示されている。
特開2010−116883号公報
吸気通路内での空気の流れが順流と逆流との間で一定の周期で変化すると、吸気通路内に脈動が生じる。脈動は、充填空気量を取得する際、逆流の発生以外にも様々な問題を生じさせる。そのため、特許文献1に記載された発明のように逆流量のみを考慮しているだけでは、適正な充填空気量を得ることが難しい場合がある。
本発明は上記課題に鑑みたものであり、吸気通路に脈動が生じている場合でも、精度の高い充填空気量を取得してエンジンを適正に制御することができるエンジン制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、吸気通路において気筒よりも上流側に配置され前記吸気通路の物理量を検出する検出装置と、吸気弁の開閉時期を調整する吸気弁駆動装置と、を備えるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、前記検出装置からの検出値に基づいて前記吸気通路の検出流量を取得する流量取得部と、前記吸気通路における脈動の増幅度に基づいて、前記検出流量を補正する補正部と、補正後の前記検出流量に基づいて、前記気筒の充填空気量を取得する充填空気量取得部と、を有する。
本発明者は、吸気通路において脈動が吸気通路の上流側で増幅され、脈動率が増加することを発見した。脈動の増幅は、エンジンの回転に伴い吸気通路に加えられる力が加振力と成ることで生じ、特に、脈動の周期と、エンジンの回転に伴い順方向と逆方向とに加えられる力の周期とが近い値となることで増加する。そこで、本発明では、流量取得部が検出装置を用いて取得した検出流量を、補正部が吸気通路の脈動に応じた増幅度に基づいて補正することで、検出流量の精度を高めている。そして、充填空気量取得部は、補正後の検出流量に基づいて、気筒の充填空気量を取得する。上記構成により、検出装置からの出力をもとに高い精度の充填空気量を得ることが可能となり、エンジンの制御を適正に行うことができる。
エンジン制御システムの概略構成を説明する図。 ECU10の機能ブロックを説明する図。 吸気通路31を流れる吸気流量の変化と、この吸気流量の増幅度との関係について説明する図。 吸気通路31で生じる脈動を説明する図。 ECU10がエアフロメータ24の検出値をもとに充填空気量を取得する処理を示すフローチャート。 逆流量取得部13の処理を説明する図。 一例としてのステップS13の共振判定を詳細に示すフローチャート。 ステップS15の処理を詳細に示すフローチャート。 補正部14による検出流量の補正を説明する図。 ECU10の機能ブロックを説明する図。 ECU10がエアフロメータ24の検出値をもとに充填空気量を取得する処理を示すフローチャート。 ECU10がエアフロメータ24の検出値をもとに充填空気量を取得する処理を説明するフローチャート。 吸気流量の干渉を説明する図。 第4実施形態におけるECU10の機能を示す機能ブロック図。 第4実施形態に係る噴射量の算出処理を示すフローチャート。
以下、エンジン制御装置が適用されるエンジン制御システムを例に、エンジン制御装置の実施形態について説明を行う。なお、以下の実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
(第1実施形態)
図1に示すエンジン制御システム100は、エンジン70と、吸気通路31と、排気通路36と、ECU10と、を備えている。エンジン制御システム100は、吸気流量に応じて、燃料の噴射量を変化させて、エンジン70の出力を制御する。また、エンジン制御システム100は、複数のセンサ群を備えており、各センサ群からの出力に基づいてエンジン70の駆動を制御する。図1において、ECU10がエンジン70を制御するエンジン制御装置として機能する。
エンジン70は、シリンダヘッド60と、シリンダブロック61と、ピストン62と、クランクシャフト63と、を主に備えている。また、シリンダヘッド60は、シリンダブロック61の上方に配置されており、その内部には、吸気弁駆動装置50と、燃料噴射弁55と、点火プラグ56と、が配置されている。シリンダブロック61は、気筒数に応じた数のシリンダ64を備え、各シリンダ64には吸気ポート65及び排気ポート66が連通している。以下では、エンジン70において、吸気通路31側を上流とし、排気通路35側を下流として記載する。
吸気弁駆動装置50は、吸気弁52を開弁状態と閉弁状態とに切り替え、吸気ポート65と吸気通路31との間の開閉を切り替える装置である。また、吸気弁駆動装置50は、先端側を吸気ポート65内に位置させて配置された吸気弁52の開閉時期(バルブタイミング)を可変することができる。吸気弁駆動装置50は、エンジン70のクランク軸と吸排気の各カム軸との相対回転位相を調整するものであり、所定の基準位置に対して進角側及び遅角側への位相調整が可能となっている。吸気弁駆動装置50としては油圧駆動式又は電動式の可変動弁機構が用いられる。
なお、吸気弁駆動装置50はカム軸により吸気弁52の位置を制御するものに限られず、モータ等のアクチュエータを用いて吸気弁52の開閉時期を変化させるものであってもよい。この場合、吸気弁駆動装置50はECU10と接続されており、ECU10による制御に基づいて、吸気弁52の位置を変化させる。
燃料噴射弁55は、不図示の燃料タンクから供給された燃料を噴射するための装置である。燃料噴射弁55は、例えば、ソレノイド又は圧電素子等の駆動部により弁の開閉を切り替える。図1では、エンジン70は筒内噴射型であり、燃料噴射弁55の燃料が噴射される先端側をシリンダ64に向けて配置している。なお、エンジン70がポート噴射型である場合、燃料噴射弁55の先端側を吸気ポート65に向けて配置することになる。
ピストン62は、シリンダ64内に摺動可能に配置されている。また、クランクシャフト63は、ピストン62とコンロットを介して回転可能に連結されており、ピストン62の摺動に応じて回転する。また、クランクシャフト63には、このクランクシャフト63の回転に応じて回転するタイミングロータ67が連結されている。このタイミングロータ67の外周には、検出ギアが形成されている。
シリンダブロック61の外側には、タイミングロータ67の検出ギアを検出するクランク角センサ28が取り付けられている。クランク角センサ28は、タイミングロータ67の検出ギアの検出に応じて、クランクシャフト63の回転角を示すクランク角信号NEを出力する。このクランク角信号NEは、エンジン70のクランク角[°CA]やエンジン回転速度[rad/s]の検出に使用される。
吸気通路31は、主として外界から吸気された空気が流れる通路であり、上流側通路32と、サージタンク33と、吸気マニホールド34と、を備えている。上流側通路32は、上流側でエアクリーナ23を介して外界と繋がり、下流側の端でサージタンク33に連通している。サージタンク33は、下流側で気筒数に応じた吸気マニホールド34と連通している。吸気マニホールド34の下流側は、吸気ポート65を介してシリンダ64と連通している。
上流側通路32には、吸入空気量を検出するエアフロメータ24が設けられている。エアフロメータ24は、吸気通路31を流れる吸気流量を物理量として検知し、吸気流量に応じた出力電圧Voutを出力する。エアフロメータ24としては、順流量と逆流量とを検出できることが望ましい。また、エアフロメータ24としては、例えば、熱線式を用いることができるが、これ以外にも、フラップ式やカルマン過流式を用いてもよい。
エアフロメータ24の下流側には、モータ25によって開度調節されるスロットルバルブ26と、このスロットルバルブ26の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ27とが設けられている。また、サージタンク33には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ29が設けられている。
排気通路35は、シリンダ64から排出される排気が流れる流路である。排気通路35は、一端が排気ポート66に連結され、他端が不図示のエキゾートマニホールドに連結されている。
ECU10は、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロコンピュータを主体として構成された電子制御ユニットであり、内蔵されたROM(Read Only Memory)に記憶されている制御プログラムを用い、各種センサの検出信号に基づいてエンジン制御システム100の各種制御を実施する。この実施形態では、ECU10は、エンジン70の負荷に応じて燃料の噴射量の設定や、点火プラグ56の点火時期を制御する。噴射量の設定では、ECU10は、エアフロメータ24からの検出値に基づいて、エンジンの運転状態に応じた燃料噴射量INJを算出する。
次に、図2を用いてECU10の機能ブロックを説明する。ECU10は、流量取得部11と、補正部14と、充填空気量取得部15と、噴射量設定部16と、を機能的に備えている。図2に示す各機能ブロックは、ECU10のCPUがROMに記憶されたプログラムを実行することで実現される。
流量取得部11は、エアフロメータ24からの検出値又は演算に基づいて、吸気通路31内における検出流量DEFを取得する。流量取得部11は、検出流量DEFの内、順流側検出量OFを取得する順流量取得部12と、逆流側検出量RFを取得する逆流量取得部13と、を備えている。
補正部14は、流量取得部11により取得された検出流量DEFを補正し、補正後の検出流量を取得する。この第1実施形態では、補正部14は、順流量取得部12が取得した順流側検出量OFを補正し、逆流量取得部13が取得した逆流側検出量RFを補正しない。
充填空気量取得部15は、補正後の検出流量又は、補正が行われなかった場合の検出流量に基づいて、充填空気量GAを取得する。充填空気量GAは、吸気行程の開始から圧縮行程の終了までに、シリンダ64に充填された空気量[g]である。
噴射量設定部16は、充填空気量取得部15により取得された充填空気量GAに基づいて、燃料噴射量INJを取得する。燃料噴射量INJは、燃料噴射弁55が噴射する燃料量[g]を設定する情報であり、燃料噴射弁55に出力される。
次に、図3を用いて、吸気通路31を流れる吸気流量の変化と、この吸気流量の増幅度との関係について説明する。図3(a)は、吸気弁52の開閉度を示している。また、図3(b)は、各行程に応じたピストン62の摺動位置を示している。また、図3(c)は、エアフロメータ24の出力電圧Voutを示している。
エンジン70の吸気行程では、吸気弁52の上昇が開始され(図3(a))、また、ピストン62の位置が上死点(TDC)から下死点(BDC)に向けて変化する(図3(b))。そのため、吸気通路31内の空気が吸気ポート65を介してシリンダ64に吸気される。また、空気が吸気通路31内を下流側に流れることで、エアフロメータ24が順流量を検出する(図3(c))。
圧縮行程では、ピストン62の位置が下死点(BDC)から上死点(TDC)へ向けて変化する(図3(b))。このとき、吸気弁駆動装置50によるバルブタイミング制御が行われると、圧縮行程においても吸気弁52は開弁状態を維持している。バルブタイミング制御は、圧縮行程での圧縮比を低減させることで、圧縮比と膨張行程での膨張比との比率を変化させる制御である。図3(b)では、圧縮比を低減するために、吸気弁52はピストン62の下死点(BDC)からθ1[°CA]となるタイミングまで閉弁位置をずらしている。
圧縮行程中も吸気弁52が開弁していると、シリンダ64内の空気はピストン62の上昇と共に吸気ポート65から押し出され、吸気通路31に逆流が発生する。そのため、エアフロメータ24は、吸気通路31内を逆流する空気を逆流量として検出する(図3(c))。上述した順流と逆流との変化は、各ピストン62の摺動毎に生じるが、各ピストンの摺動により生じた吸気量の変化が吸気通路31の上流側(上流側通路32、サージタンク33)において時系列で合わさり、一定の周期を備える脈動を形成する。
本発明者は、吸気ポート65で生じる脈動が上流側で増幅され、エアフロメータ24の検出値との差を生じさせていることを発見した。図4は、吸気通路31で生じる脈動を説明する図である。図4(a)の図中左は、エアフロメータ24の検出流量(脈動)を示し、図中左は、吸気ポート65における吸気流量(脈動)を示している。図4(a)に示すように、エアフロメータ24で検出される脈動(順流、逆流)が、吸気ポート65における脈動(順流、逆流)よりも増幅されている。脈動の増幅は、エンジン70の回転に伴い吸気通路31に加えられる力が加振力と成ることで生じ、特に、吸気通路31に生じる脈動の周期と、エンジン70の回転に伴い順方向と逆方向とに生じる力の周期とが近い値となることで増加する。
図4(b)は、脈動の増幅の仕組みをモデル化した振動系モデルである。この振動系モデルでは、1回の吸気行程において吸気通路31を流れる質量m[kg]の流量Fを仮定し、この流量Fの移動量uと、流量Fに加えられるピストン62による力(Psinωt)と粘性力(kC)とで運動方程式(図4(c))を規定している。ここで、ピストン62が吸気通路31に加える力の周期(角速度)をωにより示している。なお、移動量uoは順流側移動量を示し、移動量urは逆流側移動量を示している。また、upは、ピストン62の移動量を示している。
図4(b),(c)に示す振動系モデルにより、ピストン62が吸気通路31に伝える力の周期ωが流量Fの固有振動数に近づくと、流量Fの移動量uを顕著に増加させる共振現象が生じる。すなわち、流量Fの移動(脈動)が増幅され、吸気ポート65に生じる脈動との間に誤差を生じさせる。そこで、この実施形態では、流量取得部11がエアフロメータ24を用いて取得した検出流量を、補正部14が脈動率に応じた増幅度に基づいて補正することで、共振により生じる誤差を低減している。そして、充填空気量取得部15は、補正後の検出流量に基づいて充填空気量GAを取得することで、適正なエンジン70の制御を実現する。
次に、ECU10がエアフロメータ24の検出値をもとに充填空気量GAを取得する処理を図5のフローチャートを用いて説明する。図5のフローチャートで示す処理は、例えば、所定周期で繰り返し行われる処理である。
ステップS11では、検出流量DEFを取得する。検出流量DEFは、吸気行程において、エアフロメータ24により取得される流量であり、順流側検出量OFと逆流側検出量RFとを含んでいる。この第1実施形態では、順流量取得部12は、検出流量DEFから、順流側検出量OFを取得する。
ステップS12では、逆流側検出量RFを取得(推定)する。この第1実施形態では、逆流量取得部13は、シリンダ64の充填空気量GAに基づいて逆流側検出量RFの推定を行う。図6は、逆流量取得部13の処理を説明する図である。図6(a)は、クランク角度に応じたピストン62の位置の変化を示している。また、図6(b)は、各吸気弁52が開状態となるタイミングを示す開弁期間を示している。そして、図6(c)〜(e)は、各ピストン62の摺動により生じる脈動成分を示している。なお、図6では、一例として3気筒のエンジンを例に説明を行っており、各ピストンを第1ピストンP1、第2ピストンP2、第3ピストンP3として区別している。
図6(a)に示すように、吸気行程において、第1ピストンP1が上死点(TDC)から下死点(BDC)に達する間に、吸気弁52の閉弁タイミングIVC(図6(b))に応じて、吸気通路31に順流が流れる。そして、第1ピストンP1が下死点(BDC)から上死点(TDC)に達する間であり、且つ吸気弁52が開状態となる間、吸気通路31に逆流が流れる(図6(c))。この逆流が流れる期間において、第2ピストンP2も吸気行程と成るため、この第2ピストンP2の摺動に応じた順流が吸気通路31に流れる(図6(d))。そのため、クランク角度θ2において、吸気通路31内で第1ピストンP1の摺動により生じる逆流と、第2ピストンP2の摺動により生じる順流との干渉が起こる。この干渉により、流量の少ない逆流が順流に打ち消されてしまう。
逆流の打消しは、第2ピストンP2による逆流と第3ピストンP3による順流との間にも生じ(図6(d),(e))、エアフロメータ24の逆流に対応する吸気通路31に流れる脈動を変化させる。脈動が変形することで、エアフロメータ24により逆流量を精度よく検出することができなくなる。そこでこの第1実施形態では、逆流量取得部13は、ピストン62の移動により押し出される空気の量Δqvlから逆流量を推定している。一例として逆流量取得部13は、下記式(1)〜(4)により、逆流量(逆流側検出量RF)を算出する。
Figure 2017115651
式(1)において、Ahは面積補正係数、Tは吸気弁52が開弁してから閉弁するまでの周期である。また、Δqは、ピストン62の移動により押し出される流量[g]であり、上記式(2)により求められる値である。
また、式(2)において、ηcは、充填効率であり、ρは空気の密度である。そして、Δvはピストン62が下死点BDCに達してから吸気弁52が閉弁タイミングIVCに達するまでにピストン62が移動した体積であり、上記式(3)により求められる値である。
そして、式(3)において、Acylは、ピストン62の断面積である。また、Δxはピストン62の移動距離であり、上記式(4)で求められる値である。
また、式(4)において、Stは、ピストン62のストローク長さであり、neは、エンジン回転数であり、Δtはピストン62が下死点BDCに達してから吸気弁52が閉弁タイミングIVCに達するまでの時間である。なお、上記(1)〜(4)式を用いることで、逆流側検出量RFのみならず、順流側検出量OFを算出することも可能である。
図5に戻り、ステップS13では、共振判定を行う。共振判定は、エンジン70の状態が脈動に共振を生じさせる状態にあるか否かを判定する処理である。この共振判定により、補正部14が脈動に共振が生じていると判定する場合(ステップS13:YES)、ステップS14に進み、順流側検出量OFを補正する。一方、この共振判定により、補正部14が脈動に共振が生じないと判定すると(ステップS13:NO)、補正を行うことなくステップS15に進む。
図7は、一例としてのステップS13の共振判定を詳細に示すフローチャートである。図7で示す共振判定では、一例として、共振の有無を判定する条件として、エンジン70の回転速度と、スロットル開度と、吸気弁52の閉弁タイミングIVCとを用いている。無論、共振の有無を判定する条件は上記3つに限定されず、回転速度、スロットル開度と、吸気弁52の閉弁タイミングIVCのいずれか一つを用いるものや、いずれか2つを組み合わせるものであってもよい。
まず、ステップS131では、回転速度を閾値Tneと比較する。閾値Tneは、共振が生じやすいエンジン70の回転速度に基づいて規定されている。エンジンの回転速度が遅くなると、吸気弁52が閉弁タイミングIVCに達するまでの時間が長くなるため逆流量が増加し、脈動が大きくなる。また、ある気筒による吸気行程から次の吸気行程に達するまでの時間が長くなり逆流が伝わり易くなる。閾値Tneとしては、例えば、2000[rpm]とすることができる。そのため、回転速度が閾値Tne以下であれば、共振が生じ易くなると判定しステップS132に進み、回転速度が閾値Tneを超える場合、ステップS15に進む。
ステップS132では、負荷を閾値Ttaと比較する。閾値Ttaは、スロットル開度センサ27により検出されるスロットルバルブ26の開度(スロットル開度)を基準としている。スロットルバルブ26の開度が小さいと、このスロットルバルブ26が吸気通路における遮蔽板として作用し、逆流が伝わり難くなり、脈動の増幅を妨げる。閾値Ttaとしては、例えば、30[°]とすることができる。そのため、負荷が閾値Tta以上であれば、ステップS133に進み、回転速度が閾値Tta未満であれば、ステップS15に進む。
ステップS133では、バルブタイミングを閾値Tivcと比較する。閾値Tivcは、共振が生じ易い吸気弁52の閉弁タイミングIVCに基づいて定められている。圧縮行程における吸気弁52の閉弁タイミングIVCが増加すると、気筒から吸気通路31に押し戻される逆流量が増加し、脈動を増加させる。閾値Tivcとしては、例えば、ピストン62が下死点BDCに達してから吸気弁52が閉弁するまでの期間であるABDC90[°CA]とすることができる。そのため、吸気弁52の閉弁タイミングIVCが閾値Tivc以上であれば、ステップS14に進み、回転速度が閾値Tivc未満であれば、ステップS15に進む。
図5に戻り、ステップS14では、順流側検出量OFを補正する。図8は、ステップS14の処理を詳細に示すフローチャートである。図8に示す処理により、順流側検出量OFを補正するための補正量Aoが取得される。
図8のステップS141では、補正量Aoを取得するためのパラメータを取得する。一例として、補正部14は、補正量Aoを取得するためのパラメータとして、ピストン62の角速度ωと、振動体角速度ωfと、減衰係数hfとを下記式(5)〜(7)を用いて取得する。
Figure 2017115651
角速度ωは、ピストン62の回転速度[rad/s]であり、例えば、クランク角信号NEに基づいて上記式(5)により取得される。振動体角速度ωfは、吸気通路31を流れる空気の固有振動数であり、例えば、上記式(6)により求められる。ここで、mfは空気の振動体質量であり、上記式(7)により求められる。また、kは体積弾性係数である。そして、vcylは、シリンダ容積である。
ステップS142では、ステップS141で取得した各パラメータをもとに、補正量Aoを取得する。この補正量Aoは、図4に示した振動モデルに基づいて、吸気ポート65における順流量の変化に対する、エアフロメータ24の検出位置での順流側検出量OFの増幅度として取得される。例えば、補正部14は、補正量Aoを下記式(8)に基づいて取得する。
Figure 2017115651
ここで、uは、検出位置における空気の移動距離[m]を示し、順流側検出量OFに対応する。u0は、吸気ポート65における空気の移動距離[m]を示し、吸気ポート65における順流量に対応する。また、hfは、順流側減速係数を示す。即ち、式(8)において、補正量Aoは、順流側検出量OFに対する、吸気ポート65における順流量の比として取得される。
ステップS143では、ステップS142で取得した補正量Aoを用いて、順流側検出量OFを補正する。図9は、補正部14による検出流量の補正を説明する図である。補正部14は、順流側検出量OFを、ステップS142で取得した補正量Aoで割ることで、吸気ポート65における順流量を取得する。なお、この第1実施形態では、逆流側検出量RFは、図5のステップS12での推定値が用いられる。
図5のステップS15では、充填空気量GAを取得する。充填空気量取得部15は、例えば、補正後の順流側検出量AOFと、推定した逆流側検出量RFと、下記式(9)とを用いて1回の吸気行程における充填空気量GAを取得する。
GA=AOF−RF … (9)。
ステップS16では、充填空気量GAに基づいて燃料噴射量INJを設定する。例えば、噴射量設定部16は、ステップS15で取得した充填空気量GAと、スロットル開度センサ27からのスロットル開度とをもとに燃料噴射量INJを設定する。その後、ECU10は、設定した燃料噴射量INJに基づいて、燃料噴射弁55を制御し、エンジン70のシリンダ64に燃料を噴射する。
以上説明したように、この第1の実施形態に係るECU10(エンジン制御装置)では、流量取得部11がエアフロメータ24(検出装置)を用いて取得した検出流量を、補正部14が検出流量の脈動率に応じた増幅度に基づいて補正することで、検出流量の精度を高めている。そして、充填空気量取得部15は、補正後の検出流量に基づいて、充填空気量GAを取得する。上記構成により、脈動が生じている場合でもエアフロメータ24からの出力をもとに高い精度の充填空気量を得ることが可能となり、エンジン70の制御を適正に行うことができる。
流量取得部11は、検出流量における順流側検出量OFと逆流側検出量RFとを個別に取得し、補正部14は、順流側検出量OFと逆流側検出量RFとを個別に補正し、充填空気量取得部15は、各補正後の順流側検出量OFと逆流側検出量RFとに基づいて、充填空気量を取得する。上記構成とすることで、順流側検出量OFと逆流側検出量RFとが個別に補正されるため、充填空気量GAを精度よく取得することが可能となる。また、流量取得部11が、ピストン62の移動容積と吸気弁52の開弁期間とに基づいて逆流検出量を推定する構成とすることで、エアフロメータ24からの順流量に対する出力電圧Voutのみを使用して、充填空気量GAを取得することが可能となる。
補正部14は、エンジン70の圧縮行程における吸気弁52が開弁状態である期間が、所定値以上となる場合に、補正を行う。圧縮行程における吸気弁52の閉弁タイミングが増加すると、気筒から吸気通路31に押し戻される逆流量が増加し、脈動を増加させる。そのため、吸気通路において共振が生じ易い閉弁タイミング以上となる場合に、補正部14による補正を行うことで、補正の効果と処理負荷とのバランスを両立させることができる。
補正部14は、エンジン70の回転速度が所定値以下となる場合に、補正を行う。エンジン70の回転速度が速くなると、吸気弁が開弁している期間が短くなるため、逆流量が減少し、脈動が低くなる。脈動が低い状態で補正を行っても補正の効果に対して処理負荷を高めるだけとなる。そのため、回転速度で補正の有無を判断することで補正の効果が大きい条件でのみ補正を行うことができ、補正の効果と処理負荷とのバランスを両立させることができる。
補正部14は、エンジン70の負荷が所定値以上となる場合に、補正を行う。エンジン70の負荷が所定値以下であれば、吸気通路31におけるスロットルバルブ26の開閉量が小さくなる。そのため、このスロットルバルブ26が吸気通路における遮蔽板として作用し、脈動の増幅を妨げる。上記構成とすることで、補正が必要なエンジンの負荷の場合にのみ、補正部14による補正を行うことができ、補正の効果と処理負荷とのバランスを両立させることができる。
(第2実施形態)
吸気通路31の逆流量を推定することは一例に過ぎず、エアフロメータ24により逆流量を取得し、この逆流量を補正してもよい。
図10は、第2実施形態に係るECU10の機能ブロックを説明する図である。図10に示すECU10は、流量取得部11と、補正部14と、充填空気量取得部15と、噴射量設定部16と、を機能的に備えている。また、補正部14は、順流側補正部17と、逆流側補正部18と、を有している。順流側補正部17は、流量取得部11により取得された順流側検出量OFを補正する。また、逆流側補正部18、流量取得部11により取得された逆流側検出量RFを補正する。
次に、第2実施形態において、ECU10がエアフロメータ24の検出値をもとに充填空気量GAを取得する処理を、図11を用いて説明する。図11のフローチャートで示す処理は、例えば、所定周期で繰り返し行われる。
ステップS21では、検出流量DEFを取得する。このステップS21では、流量取得部11は、エアフロメータ24の出力電圧Voutから、順流側検出量OFと逆流側検出量RFとをそれぞれ取得する。
ステップS22では、共振判定を行う。この共振判定により、補正部14が脈動に共振が生じていると判定する場合(ステップS22:YES)、ステップS23に進む。一方、この共振判定により、補正部14が脈動に共振が生じないと判定すると(ステップS22:NO)、ステップS25に進む。
ステップS23では、順流側検出量OFを補正する。ステップS23で順流側補正部17が行う補正は、第1実施形態同様、上記式(5)〜(8)、をもとに行うことができる。
ステップS24では、逆流側検出量RFを補正する。例えば、逆流側補正部18は、補正量Arを、下記式(10)、(11)、(12)に基づいて取得する。
Figure 2017115651
上記式(10)において、振動体角速度ωrは、逆流における固有振動数であり、上記式(11)を用いて取得することができる。また、上記式(11)において、mrは、逆流における平均流量[kg]であり、ピストン62により押し戻される流量に基づいて、上記式(12)により取得することができる。
ステップS25では、充填空気量GAを取得する。充填空気量取得部15は、例えば、補正後の順流側検出量AOFと、補正後の逆流側検出量ARFと、下記式(13)とを用いて1回の吸気行程における充填空気量GAを取得する。
GA=AOF−ARF … (13)。
ステップS26では、ステップS25で取得した充填空気量GAに基づいて燃料噴射量INJを設定する。例えば、噴射量設定部16は、ステップS25で取得した充填空気量GAと、スロットル開度センサ27からのスロットル開度とをもとに燃料噴射量INJを設定する。その後、ECU10は、設定した燃料噴射量INJに基づいて、燃料噴射弁55を制御し、エンジン70のシリンダ64に燃料を噴射する。
以上説明したようにこの第2実施形態では、エアフロメータ24(検出装置)により順流量と逆流量とを別々に取得する構成においても上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第3実施形態)
補正部14による補正後の検出流量から吸気通路31の脈動率を取得し、取得した脈動率に基づいてエアフロメータ24の出力特性を変更(補正)するものであってもよい。この場合においても、補正部14は、吸気通路31における脈動の増幅度に基づいて、検出流量を補正している。また、出力特性の変更後のエアフロメータ24により充填空気量GAを取得することで、充填空気量取得部15は、補正後の検出流量に基づいて、気筒の充填空気量GAを取得している。
図12は、第3実施形態において、ECU10がエアフロメータ24の検出値に基づいて充填空気量GAを取得する処理を説明するフローチャートである。
ステップS31では、検出流量DEFを取得する。このステップS31では、流量取得部11は、エアフロメータ24の出力電圧Voutから、順流側検出量OFと逆流側検出量RFとを個別に取得する。
ステップS32では、共振判定を行う。この共振判定により、補正部14が吸気通路31の共振が生じると判定するとステップS33に進む。一方、この共振判定により、補正部14が吸気通路31の共振が生じないと判定するとステップS37に進む。
ステップS33では、エアフロメータ24からの検出流量(OF、RF)を補正する。ステップS33で行われる検出流量DEFの補正は、上述した第1実施形態又は第2実施形態と同様の手法により行われ、順流側検出量OFと逆流側検出量RFとがそれぞれ補正される。
ステップS34では、ステップS33で求めた補正後の検出流量から脈動率を取得する。脈動率の取得は、例えば、下記式(14)を用いて行われる。
Figure 2017115651
ここで、MAXとMINとは吸気通路31における最大値と最小値とを示す。即ち、MAXは順流側検出値の最大値であり、MINは逆流側検出量の最小値である。また、平均値は脈動が生じない場合の吸気通路31の平均の順流量を示す。
ステップS35では、ステップS34で取得した脈動率を判定する。脈動率を判定するための閾値Tpは、脈動の影響が大きい(即ち、共振が生じ易い)脈動率に基づいて設定されている。なお、脈動率が閾値Tp未満であれば、ステップS37に進む。
脈動率が閾値Tp以上であれば(ステップS35:YES)、ステップS36では、エアフロメータ24における入出力特性マップを切り替える。入出力特性マップは、エアフロメータ24が検知する検知流量と、出力電圧Voutとの関係を規定したマップである。例えば、エアフロメータ24は、入出力特性マップとして、脈動の影響を考慮しない第1マップと、脈動の影響を考慮した第2マップとを有している。第1マップは、検知流量と出力電圧Voutとの関係が精度よく規定されている。一方、第2マップは、脈動の影響を考慮して検知流量と出力電圧との関係が修正されている。そのため、ステップS36では、補正部14は、第1マップから第2マップに切り替えることで、エアフロメータ24からは脈動率を考慮した出力電圧Voutが出力される。
ステップS37では、エアフロメータ24からの出力電圧Voutに基づいて、充填空気量GAを取得する。具体的には、まず、上述した第1実施形態又は第2実施形態と同様の手法により、エアフロメータ24からの出力電圧Voutに基づいて、順流側検出量OF(又はAOF)及び逆流側検出量RF(又はARF)が取得される。そして、順流側検出量OA及び逆流側検出量RFから充填空気量GAが取得される。
ステップS38では、ステップS37で取得された充填空気量GAに基づいて燃料噴射量INJが設定される。例えば、噴射量設定部16は、ステップS37で取得した充填空気量GAと、スロットル開度センサ27からの検出値とをもとに燃料噴射量INJを設定する。その後、噴射量設定部16は、設定した燃料噴射量INJに基づいて、燃料噴射弁55を制御し、エンジン70のシリンダ64に燃料を噴射する。
以上説明したようにこの第3実施形態では、脈動率に応じて、エアフロメータ24による入出力特性を切り替えることで、適正な充填空気量GAを取得することができる。また、脈動率を判定条件とすることで、補正の切り替えの判断を効率良く実行することができる。
(第4実施形態)
流量取得部11は、逆流量に加えて順流量を予測により取得するものであってもよい。
図13は、吸気流量の干渉を説明する図である。図13(a)〜(c)は、エンジン70が3気筒である場合の、各気筒の摺動による脈動成分を示している。また、図13(d)は、エンジン70の吸気ポート65における吸気流量の変化を示している。
図13(a)に示すように、エンジン70の回転速度[rpm]が所定速度を超えると、吸気通路31を流れる空気に慣性が生じ、吸気流量の周期がピストンの摺動周期よりも遅くなる。慣性による吸気流量の周期変化により、所定の気筒における吸気流量と、他の気筒の吸気流量とがサージタンク33で干渉し、合成脈動波形(13(d))を生じさせる。この合成脈動波形は、順流と逆流との干渉による変化が大きく、エアフロメータ24の検出流量との間で大きさ誤差を生じさせる。そこで、この第4実施形態では、ECU10は、順流側と逆流側とをそれぞれ予測により取得し、この合成脈動波形を算出した後、補正を行う構成としている。
図14は、第4実施形態におけるECU10の機能を示す機能ブロック図である。ECU10は、流量取得部11と、集合部流量算出部117と、補正部14と、係数補正部118と、各シリンダ流量補正部119と、充填空気量取得部15と、噴射量設定部16と、を機能的に備えている。なお、補正部14と、充填空気量取得部15と、噴射量設定部16と、は他の実施形態と同様の機能であり、その説明を省略する。
流量取得部11は、合成脈動波形の元となる順流側検出量ORと逆流側検出量RRとを取得する。この第4実施形態において、流量取得部11は、上記式(1)〜(4)を用いて、順流側検出量ORと逆流側検出量RRとを予測により算出する。
集合部流量算出部117は、流量取得部11が取得した順流側検出量ORと逆流側検出量RRに基づいて、合成脈動波形を算出する。図13(d)に示すように、合成脈動波形は、第1〜第3ピストンの摺動により生じる脈動成分(順流,逆流)がそれぞれサージタンク33で干渉することで生じる。
係数補正部118は、合成脈動波形に対して補正係数を用いた補正を行う。補正係数は、エアフロメータ24により検出される脈動の傾向(周期,振幅等)を考慮し、集合部流量算出部117で算出した合成脈動波形を補正する値である。例えば、係数補正部118は、エアフロメータ24からの出力を所定周期で計測しており、計測した出力傾向から周知の学習制御を用いて補正係数を生成する。
各シリンダ流量補正部119は、気筒毎の吸気特性を考慮して、合成脈動波形を補正する。この第4実施形態では、演算により算出された合成脈動波形を各気筒に併用する。そのため、各シリンダ流量補正部119は、算出された合成脈動波形を気筒毎の吸気特性を考慮した値に補正する。
次に、第4実施形態に係る噴射量の算出処理について図15を用いて説明する。図15に示す処理は、ECU10により所定周期で実施される処理である。
ステップS41では、検出流量DEFを取得する。このステップS41では、流量取得部11は、各気筒におけるピストンの回転速度(クランク各信号NE)とスロットル弁のスロットル開度から慣性を考慮した順流側検出量OFと逆流側検出量RFとを算出する。流量取得部11は、慣性を考慮した検出流量DEFの周期Tを下記式(15),(16)を用いて算出する。また、算出された周期Tを上記式(1)に代入することで順流側検出量OFと逆流側検出量RFとを算出する。
Figure 2017115651
ここで、kは弾性定数である。また、V(ne)は、エンジン70の回転速度に応じて取得される空気の筒内容量で
あり、上記式(3),(4)を用いて算出することができる。また、Tは検出流量DEFの周期である。
ステップS42では、ステップS41で取得した慣性を考慮した検出流量を用いて合成脈動波形を取得する。集合部流量算出部117は、気筒毎に検出流量の位相をずらした後、各検出流量を足し合わせることで、合成脈動波形を算出する。図13に示す例では、エンジン70は3気筒であるため、ステップS41で算出された検出流量DEFを3つに複製し、各検出流量DEFを位相(例えば、240°)だけずらして合成する。その結果、13(d)に示すように、各気筒に対応する検出流量DEFの順流と逆流とが合成された合成脈動波形が算出される。
ステップS43では、共振判定を行う。この共振判定により、補正部14が脈動に共振が生じていると判定する場合(ステップS42:YES)、ステップS44に進む。一方、この共振判定により、補正部14が脈動に共振が生じないと判定すると(ステップS42:NO)、ステップS46に進む。
ステップS44では、合成脈動波形を補正する。ステップS44で補正部14が行う補正は、順流側及び逆流側のそれぞれに対して実施される。順流側に対する補正については、第1実施形態同様、上記式(5)〜(8)を用いて行うことができる。逆流側に対する補正については、第2実施形態同様、上記式(10)〜(12)を用いて行うことができる。
ステップS45では、補正後の合成脈動波形に対して補正係数を加える。係数補正部118は、学習制御により取得された補正係数を補正後の合成脈動波形に加えることで補正を行う。
ステップS46では、充填空気量GAを取得する。この充填空気量GAの取得の際、各シリンダ流量補正部119は、気筒毎の吸気特性に対応させて合成脈動波形を補正する。また、充填空気量取得部15は、補正後の順流側検出量AOFと、補正後の逆流側検出量ARFと、上記式(13)とを用いて1回の吸気行程における充填空気量GAを取得する。ステップS47では、ステップS46で取得した充填空気量GAに基づいて燃料噴射量INJを設定する。
以上説明したようにこの第4実施形態では、慣性により吸気流量の干渉が大きくなる場合でも、高い精度の充填空気量を得ることが可能となり、エンジン70の制御を適正に実施することができる。
(その他の実施形態)
検出装置としてエアフロメータを用いたことは一例であり、エアフロメータの代わりに圧力センサを用いてもよい。この場合、図1において、吸気通路31の上流側通路32にエアフロメータに代えて圧力センサを配置する。そして、流量取得部11は、圧力センサにより取得された吸気通路31内の圧力に基づいて吸気流量を取得する。
エアフロメータ24とは別の他の検出装置(エアフロメータ、圧力センサ)を設けておき、順流側検出量をエアフロメータ24により検出し、逆流側検出量を他の検出装置により検出するものであってもよい。
エンジン70の気筒数は、3気筒に限定されない。この場合、補正部14が補正の有無を切り替えるための条件を、1サイクル当たりのクランク回転角である720[°CA]に対して内燃運動を実施中の気筒数で割った値を用いて判定しても良い。具体的には、吸気弁52の閉弁タイミングがクランク回転角720[°CA]を気筒数で割った値よりも長ければ、吸気通路31において脈動の共振が生じ易いと判断する。その一例として、エンジン70が負荷に応じて内燃運動を行う気筒数を変更する気筒数変更装置を有しており、且つ変更後の気筒数がこの値に該当する場合に、補正部14は検出流量に対して補正を行う。上記構成とすることで、共振が生じ易い条件を、吸気弁の開弁期間を示す閉弁タイミングIVCに基づいて判定できるため、補正部14による補正の有無の判断をより効率的に行うことができる。
10…ECU、11…流量取得部、14…補正部、15…充填空気量取得部、31…吸気通路、50…吸気弁駆動装置、52…吸気弁、70…エンジン

Claims (6)

  1. 吸気通路(31)において気筒よりも上流側に配置され前記吸気通路の物理量を検出する検出装置(24)と、吸気弁(52)の開閉時期を調整する吸気弁駆動装置(50)と、を備えるエンジン(70)を制御するエンジン制御装置(10)であって、
    前記検出装置からの検出値に基づいて前記吸気通路の検出流量を取得する流量取得部(11)と、
    前記吸気通路における脈動の増幅度に基づいて、前記検出流量を補正する補正部(14)と、
    補正後の前記検出流量に基づいて、前記気筒の充填空気量を取得する充填空気量取得部(15)と、を有するエンジン制御装置。
  2. 前記流量取得部は、前記検出流量における順流量と逆流量とを個別に取得し、
    前記補正部は、前記順流量と前記逆流量とを個別に補正し、
    前記充填空気量取得部は、補正後の前記順流量と前記逆流量とに基づいて、前記充填空気量を取得する、請求項1に記載のエンジン制御装置。
  3. 前記補正部は、前記エンジンの圧縮行程における、前記吸気弁駆動装置が前記吸気弁を開弁状態とする期間が所定値以上となる場合に、前記補正を行う、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のエンジン制御装置。
  4. 前記補正部は、前記エンジンの回転速度が所定値以下となる場合に、前記補正を行う、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
  5. 前記補正部は、前記エンジンの負荷が所定値以上となる場合に、前記補正を行う、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
  6. 前記補正部は、前記吸気弁の閉弁タイミングが、720度に対して内燃運動を実施中の気筒数で割った値以上となる場合に、前記補正を行う、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
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