JP2017115592A - 内燃機関のインバランス診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】対象気筒においてリッチ異常が発生していると誤判定されることを抑制することができる内燃機関のインバランス診断装置を提供する。【解決手段】内燃機関のインバランス診断装置である制御装置は、判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh以上であり(ステップS61:YES)、判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh未満であり(ステップS63:YES)、対象気筒内への燃料供給量が減少される前の基準位相領域ABと対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させているときの基準位相領域A(N)とが相違しているとき(ステップS64:YES)、対象気筒においてリッチ異常が発生していると判定する(ステップS65)。【選択図】図13
Description
本発明は、内燃機関のインバランス診断装置に関する。
特許文献1には、気筒内への燃料供給量が気筒間でばらついているか否かを診断するインバランス診断を行う内燃機関のインバランス診断装置の一例が記載されている。この診断装置では、複数の気筒のうち1つの気筒を対象気筒とし、対象気筒内への燃料供給量を減少又は増大させ、この際に生じる機関出力軸の回転速度の変化態様に基づき、インバランス診断を行うようにしている。
ここで、対象気筒内への燃料供給量を減少させてインバランス診断を行う場合の一例を説明する。なお、ここでは、#1→#3→#4→#2の順に燃焼行程が実行される4気筒の内燃機関の場合の例を説明する。
診断装置では、機関出力軸が所定回転角(例えば、30CA)回転するのに要する時間を回転必要時間とした場合、図16に示すように、所定回転角を回転必要時間で除した商である角速度の推移を示す波形である角速度変化波形が生成される。各気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、燃料の燃焼によってピストンが受ける力が大きいときには角速度が大きくなり、当該力が小さいときには角速度が小さくなる。図16に示す角速度変化波形は、#1の気筒内への燃料供給量が他の気筒内への燃料供給量よりも少ない場合の波形である。そのため、#1の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、他の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域よりも角速度の増大度合いが小さくなる。
なお、#1の気筒内への燃料供給量が他の気筒内への燃料供給量よりも多いこともある。この場合に生成される角速度変化波形は、#1の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、他の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域よりも角速度の増大度合いが大きくなる態様で変化する。
続いて、このように生成した角速度変化波形に対してフィルタ処理を施すことで、図17に示すように、同角速度変化波形から内燃機関の1サイクルを1周期とする変動成分であるフィルタ後角速度変化波形が抽出される。フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値は、最小値(<0)と最大値(>0)との間で増減する。図17に示すフィルタ後角速度変化波形は、図16に示す角速度変化波形、すなわち#1の気筒内への燃料供給量が他の気筒内への燃料供給量よりも少ない場合の角速度変化波形に対してフィルタ処理を施すことで抽出された波形である。図17に示すように、この場合のフィルタ後角速度変化波形では、特性値が最小となる回転位相は#1の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域に含まれ、特性値が最大となる回転位相は#4の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域に含まれることとなる。また、フィルタ後角速度波形の振幅は、#1の気筒内への燃料供給量と他の気筒内への燃料供給量との差分が大きいほど広くなる。
ところで、インバランス診断装置としては、図18に破線で示すように、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させるようにすることもできる。図18には、#1の気筒を対象気筒とし、#1の気筒内への燃料供給量を段階的に減少させている例が図示されている。
対象気筒内への燃料供給量を減少させる前には、まず、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域での上記特性値に「−1」を乗算した積に応じた判定パラメータが算出される。そのため、対象気筒内への燃料供給量が他の気筒内への燃料供給量よりも少なく、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では上記特性値が負の値となる場合、判定パラメータは正の値となる。そして、対象気筒内への燃料供給量を1段階減少させると、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域での上記特性値に基づいた判定パラメータが再び算出される。判定パラメータは、上記特性値に「−1」を乗算した積が大きいほど大きくなる。こうして対象気筒内への燃料供給量を1段階減少させる毎に、判定パラメータを算出し、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させる。
対象気筒内への燃料供給量と他の気筒内への燃料供給量とのずれが小さかったり、ずれが生じていなかったりした場合、上記フィルタ後角速度変化波形の振幅は小さい、すなわち同波形によって示される特性値の最小値が大きい。そのため、判定ステップ数が未だ小さく、対象気筒内への燃料供給量の減少量が未だ少ない段階では、判定パラメータは小さい。しかし、判定ステップ数が大きくなり、対象気筒内への燃料供給量の減少量が多くなると、フィルタ後角速度変化波形の振幅が大きくなり、同波形によって示される特性値の最小値が小さくなるため、判定パラメータが大きくなる。そこで、この判定ステップ数の増加と判定パラメータの変化との関係を利用し、判定ステップ数がステップ数基準値に達するまで燃料供給量を減少させてはじめて判定パラメータがパラメータ基準値以上になるようにステップ数基準値やパラメータ基準値の大きさを設定する。こうした構成を採用すれば、以下のように、対象気筒内において、他の気筒よりも燃料供給量が多い異常であるリッチ異常が発生しているか否かを判定することができる。
例えば、対象気筒が#1の気筒であり、#1の気筒においてリッチ異常が発生している場合、図19に示すように、フィルタ後角速度変化波形は、#1の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域で最大(>0)となり、#4の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域で最小(<0)となる態様で変動する。すなわち、対象気筒である#1の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が正の値となる。そして、図20に示すようにこの状態で対象気筒(図20では、#1の気筒)内への燃料供給量を段階的に減少させる場合、判定ステップ数が未だ小さく、対象気筒内への燃料供給量の減少量が未だ少ない段階では、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域での上記特性値は正の値であるため、算出した判定パラメータは負の値となる。そのため、この時点では判定パラメータはパラメータ基準値未満である。そして、判定ステップ数が大きくなり、対象気筒内への燃料供給量の減少量が多くなるほど、対象気筒内への燃料供給量と他の気筒内への燃料供給量とのずれが徐々に小さくなるため、フィルタ後角速度変化波形の振幅が狭くなる。その結果、判定ステップ数が大きくなるにつれて判定パラメータが「0」に近づく。しかし、この場合、対象気筒内への燃料供給量の減少量がある程度多くなると、対象気筒内への燃料供給量と他の気筒内への燃料供給量との大小関係が逆転する。すると、それ以降で抽出されるフィルタ後角速度波形は、#1の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域で最小(<0)となり、#4の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域で最大(>0)となる態様で変動するようになる。その結果、対象気筒内への燃料供給量の減少量が多くなるにつれて、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では上記特性値がより小さな値となるため、算出される判定パラメータがより大きな正の値となる。このように判定パラメータが負の値から正の値に変わるため、この場合には、判定ステップ数がステップ数基準値に達した時点でも、判定パラメータは小さい。そのため、判定ステップ数がステップ数基準値に達しても判定パラメータがパラメータ基準値未満であるときには、対象気筒においてリッチ異常が発生していると判定することができる。
なお、#1→#3→#4→#2の順に燃焼行程が実行される4気筒の内燃機関では、1つの気筒内への燃料供給量が他の気筒内への燃料供給量よりも少ない場合、フィルタ後角速度変化波形は、図17に示すように変動する。そして、#1の気筒において他の気筒よりも燃料供給量が少ない異常であるリーン異常が発生している場合、図17に示すように、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となる回転位相は#1の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域に含まれ、特性値が最大となる回転位相は#4の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域に含まれることとなる。すなわち、#4の気筒においてリッチ異常が発生していなくても、#1の気筒内への燃料供給量が少ないことに起因し、同#4の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では特性値が正の値となる。
そのため、#1の気筒においてリーン異常が発生している場合又は#1の気筒で失火が生じている場合、#4の気筒を対象気筒として同#4の気筒内への燃料供給量を段階的に減少させると、#4の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が段階的に小さくなる。すなわち、判定ステップ数が大きくなるほど、判定パラメータは負の値ではあるものの、判定パラメータが「0」に近づく。そのため、判定ステップ数がステップ数基準値に達しても、判定パラメータがパラメータ基準値以上にならないことがある。この場合、対象気筒である#4の気筒ではリッチ異常が発生していないにも拘わらず、#4の気筒においてリッチ異常が発生していると誤判定されてしまう。
本発明の目的は、対象気筒においてリッチ異常が発生していると誤判定されることを抑制することができる内燃機関のインバランス診断装置を提供することにある。
上記課題を解決するための内燃機関のインバランス診断装置は、機関出力軸が所定回転角回転するのに要する時間を回転必要時間としたとき、同所定回転角を同回転必要時間で除した商である角速度の推移を示す波形である角速度変化波形に対してフィルタ処理を施すことにより、同角速度変化波形から内燃機関の1サイクルを1周期とする変動成分であるフィルタ後角速度変化波形を生成する出力軸情報処理部と、複数の気筒のうち1つの気筒を対象気筒とし、各気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域のうち、前記対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域での前記フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が小さいほど大きくなるように判定パラメータを算出するパラメータ算出部と、前記対象気筒内への燃料供給量の減少回数である判定ステップ数がステップ数基準値に達するか前記判定パラメータがパラメータ基準値以上になるまで同対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させる供給制御部と、前記対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が完了したときの前記判定ステップ数を記憶するステップ数記憶部と、前記対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が完了したときの前記判定パラメータを記憶するパラメータ記憶部と、前記各気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域のうち、前記フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となる回転位相を含んでいる領域を基準位相領域として記憶する領域記憶部と、前記ステップ数記憶部に記憶されている判定ステップ数がステップ数基準値以上であること、及び、前記パラメータ記憶部に記憶されている判定パラメータが前記パラメータ基準値未満であること、及び、前記対象気筒内への燃料供給量が減少される前に前記領域記憶部に記憶された前記基準位相領域と同対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させているときに前記領域記憶部に記憶された前記基準位相量域とが相違していること、の全てが成立しているときには、同対象気筒においてリッチ異常が発生していると判定するリッチ判定部と、を備える。
上記構成では、複数の気筒のうち1つの気筒を対象気筒とし、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させる。そして、対象気筒内への燃料供給量を1段階減少させる毎に、判定パラメータが算出される。判定パラメータは、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域でのフィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が小さいほど大きくなる。対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少は、対象気筒内への燃料供給量の減少回数である判定ステップ数がステップ数基準値に達したときに、又は、判定パラメータがパラメータ基準値以上になったときに完了する。そして、対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が完了したときの判定ステップ数がステップ数記憶部に記憶され、判定パラメータがパラメータ記憶部に記憶される。
対象気筒においてリッチ異常が発生している場合、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させる前では、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域での特性値が正の値であるため、判定パラメータは負の値となっている。そして、このような状況下で判定ステップ数が大きくなり、対象気筒内への燃料供給量の減少量が多くなるにつれ、算出される判定パラメータが大きくなる。そのため、対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が完了した状態では、ステップ数記憶部に記憶されている判定ステップ数がステップ数基準値以上であり、パラメータ記憶部に記憶されている判定パラメータがパラメータ基準値未満となっている。
また、このように対象気筒においてリッチ異常が発生している場合、対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少の開始前にあっては、対象気筒内への燃料供給量が他の気筒内への燃料供給量よりも多い。そのため、対象気筒の燃焼行程に対応する機関出力軸の回転位相の領域では、他の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域よりも、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が大きくなる。すなわち、対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少の開始前では、他の気筒の燃焼行程に対応する機関出力軸の回転位相の領域が基準位相領域として領域記憶部に記憶される。しかし、この場合、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させる過程で対象気筒内への燃料供給量が他の気筒内への燃料供給量よりも少なくなり、特性値が最小となる回転位相が、対象気筒の燃焼行程に対応する機関出力軸の回転位相の領域に含まれるようになり、当該領域が基準位相領域として領域記憶部に記憶される。すなわち、対象気筒内への燃料供給量が減少される前に領域記憶部に記憶された基準位相領域と同対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させているときに領域記憶部に記憶された基準位相領域とが相違することとなる。そのため、上記構成では、ステップ数記憶部に記憶されている判定ステップ数がステップ数基準値以上であり、パラメータ記憶部に記憶されている判定パラメータがパラメータ基準値未満であることに加え、対象気筒内への燃料供給量が減少される前に領域記憶部に記憶された基準位相領域と同対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させているときに領域記憶部に記憶された基準位相領域とが相違していることをリッチ異常の判定条件にしている。上記のように対象気筒においてリッチ異常が発生しているときには、対象気筒内への燃料供給量が減少される前に領域記憶部に記憶された基準位相領域と同対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させているときに領域記憶部に記憶された基準位相領域とが相違するため、こうした構成を採用した場合にもリッチ異常を判定することができる。
その一方で、対象気筒以外の他の気筒においてリーン異常が発生しており、対象気筒においてリーン異常及びリッチ異常の双方が発生していないことがある。この場合、対象気筒内への燃料供給量の減少の開始前では、リーン異常の発生している他の気筒内への燃料供給量が対象気筒内への燃料供給量よりも少なく、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となる回転位相は、当該他の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域に含まれている。そして、この状態で対象気筒内への燃料供給量を減少させた場合、判定ステップ数がステップ数基準値に達しても判定パラメータがパラメータ基準値以上にならないことがある。しかし、この場合、判定ステップ数がステップ数基準値に達し、対象気筒内への燃料供給量の減少が完了しても、リーン異常の発生している他の気筒内への燃料供給量が対象気筒内への燃料供給量よりも少ない状態が維持される。すなわち、この場合には、対象気筒内への燃料供給量が減少される前に領域記憶部に記憶された基準位相領域と同対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させているときに領域記憶部に記憶された基準位相領域とが相違しない。そのため、対象気筒においてリッチ異常が発生していると判定されない。
したがって、上記構成によれば、対象気筒においてリッチ異常が発生していると誤判定されることを抑制することができるようになる。
以下、内燃機関のインバランス診断装置の一実施形態を図1〜図15に従って説明する。
図1には、本実施形態の内燃機関のインバランス診断装置である制御装置100を備える内燃機関11が図示されている。図1に示す内燃機関11は複数(本実施形態では、4つ)の気筒12を有する多気筒内燃機関であり、各気筒12内にはピストン13が設けられている。ピストン13は機関出力軸であるクランク軸15にコネクティングロッド14を介して連結されており、コネクティングロッド14によりピストン13の往復運動がクランク軸15の回転運動に変換される。そして、クランク軸15の回転速度が、クランクポジションセンサ111によって検出される。
図1には、本実施形態の内燃機関のインバランス診断装置である制御装置100を備える内燃機関11が図示されている。図1に示す内燃機関11は複数(本実施形態では、4つ)の気筒12を有する多気筒内燃機関であり、各気筒12内にはピストン13が設けられている。ピストン13は機関出力軸であるクランク軸15にコネクティングロッド14を介して連結されており、コネクティングロッド14によりピストン13の往復運動がクランク軸15の回転運動に変換される。そして、クランク軸15の回転速度が、クランクポジションセンサ111によって検出される。
各気筒12内におけるピストン13よりも図中上方域は燃焼室16となっている。そして、燃焼室16には、燃料と空気とを含む混合気に対して点火を行う点火プラグ18が取り付けられている。この点火プラグ18による混合気への点火タイミングは、イグナイタ19によって調整される。
燃焼室16には、吸気通路20及び排気通路21が接続されている。そして、内燃機関11には、吸気通路20を構成する吸気ポート20aに燃料を噴射するポート噴射弁22が設けられている。ポート噴射弁22には、所定圧の燃料が供給されている。そして、ポート噴射弁22が駆動することにより、燃料が吸気ポート20aに供給され、同燃料と空気とが燃焼室16に供給される。
また、内燃機関11には、燃焼室16に燃料を直接噴射する筒内噴射弁17が設けられている。筒内噴射弁17には、ポート噴射弁22に供給されている燃料の圧力よりも高圧に加圧された高圧燃料が供給されている。そして、筒内噴射弁17が駆動することにより、燃料が燃焼室16に直接供給される。
なお、吸気通路20においてポート噴射弁22よりも上流には、燃焼室16に導入される空気量である吸入空気量を調量するスロットルバルブが設けられている。そして、吸気通路20におけるスロットルバルブよりも上流には、こうした吸入空気量を検出するエアフロメータ112が設けられている。
排気通路21には、混合気の空燃比が所定範囲内の値となっているときに浄化機能を発揮する排気浄化装置40が設けられている。また、排気通路21における排気浄化装置40よりも上流には、排気通路21を流れる排気の酸素濃度を検出する空燃比センサ113が設けられている。この空燃比センサ113によって検出された排気の酸素濃度に基づき、燃焼室16で燃焼された混合気の空燃比を推定することができる。
図1に示すように、制御装置100には、クランクポジションセンサ111、エアフロメータ112及び空燃比センサ113に加え、アクセル開度センサ115などが電気的に接続されている。アクセル開度センサ115は、車両の運転者によるアクセルペダルの操作量であるアクセル開度を検出する。そして、制御装置100は、こうした各種の検出系によって検出された情報に基づき、燃料噴射制御などの各種制御を実施するようになっている。
例えば、制御装置100は、内燃機関11の運転状態に応じて噴き分け率DIを決定している。この噴き分け率DIとは、ポート噴射弁22の燃料噴射量SPを、気筒12内に供給される燃料のトータル量SPDで除した値である。気筒12内に供給される燃料のトータル量SPDは、ポート噴射弁22の燃料噴射量SPと筒内噴射弁17の燃料噴射量SDとの和である。そして、制御装置100は、噴き分け率DIを「1」とした場合、筒内噴射弁17から燃料を噴射させず、ポート噴射弁22のみから燃料を噴射させる。また、制御装置100は、噴き分け率DIを「0」とした場合、ポート噴射弁22から燃料を噴射させず、筒内噴射弁17のみから燃料を噴射させる。また、制御装置100は、噴き分け率DIを「0」よりも大きく且つ「1」よりも小さい値とした場合、ポート噴射弁22及び筒内噴射弁17の双方から燃料を噴射させる。
また、制御装置100は、気筒12内への燃料供給量が気筒12間でばらついているか否かを診断するインバランス診断を実施するようになっている。インバランス診断では、各気筒12のうち1つの気筒12を対象気筒とし、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させることによるクランク軸15の回転態様の変化に基づき、対象気筒において、他の気筒12よりも燃料供給量が多い異常であるリッチ異常が発生しているか否かの判定であるリッチ異常判定が行われる。また、インバランス診断では、対象気筒内への燃料供給量を減少させる前でのクランク軸15の回転態様に基づき、対象気筒において、他の気筒12よりも燃料供給量が少ない異常であるリーン異常が発生しているか否かの判定であるリーン異常判定が行われる。
ちなみに、リッチ異常判定を行う場合には、対象気筒内への燃料供給量を所定割合αだけ減少させる。具体的には、対象気筒内への燃料供給量を減少させる回数である判定ステップ数Yが予め設定されたステップ数基準値YThに達すると対象気筒内への燃料供給量が所定割合αだけ減少された状態となるように、燃料供給量の段階的な減少が制御される。ただし、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させているときのクランク軸15の回転態様によっては、判定ステップ数Yがステップ数基準値YThに達していなくても、すなわち対象気筒内への燃料供給量が所定割合αだけ減少されていなくても、対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が完了されることもある。
次に、図2を参照し、インバランス診断を行う制御装置100の機能構成について説明する。
図2に示すように、制御装置100は、インバランス診断を行うために必要な機能部として、供給制御部200、出力軸情報処理部240、診断情報取得部210、リッチ判定部220及びリーン判定部230を有している。
図2に示すように、制御装置100は、インバランス診断を行うために必要な機能部として、供給制御部200、出力軸情報処理部240、診断情報取得部210、リッチ判定部220及びリーン判定部230を有している。
供給制御部200は、インバランス診断のために対象気筒内への燃料供給量を減少させるべく、対象気筒用の噴射弁17,22の駆動を制御する。対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させるために、供給制御部200では、診断情報取得部210から入力される情報である判定ステップ数Yに基づき、対象気筒用の噴射弁17,22の燃料噴射量SDA,SPAが1段階毎に算出される。そして、この算出した燃料噴射量SDA,SPAに基づいて対象気筒用の噴射弁17,22の駆動が制御される。
なお、このように対象気筒内への燃料供給量を減少させると、内燃機関の1サイクル内で空燃比が一時的に低くなり、同1サイクルでの空燃比の平均値がストイキよりも小さくなることがある。そのため、供給制御部200では、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させる場合、空燃比の平均値がストイキとなるように対象気筒以外の他の気筒12内への燃料供給量を段階的に増大させるようにしてもよい。
出力軸情報処理部240は、クランクポジションセンサ111から出力されるセンサ値の変動の中から、インバランス診断を行うために必要な情報を抽出し、抽出した情報を診断情報取得部210に出力する。すなわち、出力軸情報処理部240は、クランクポジションセンサ111から出力されるセンサ値を基に、クランク軸15の回転位相θの変化速度である角速度RSの推移を示す波形である角速度変化波形を生成する。ここでいう「角速度RS」とは、所定回転角(例えば、30CA)回転するのに要する時間を回転必要時間とした場合、所定回転角を回転必要時間で除算した商のことである。なお、所定回転角は、内燃機関の1サイクルの回転位相(720CA)を気筒数で除した値よりも小さい値に設定されている。
気筒12内への燃料供給量が気筒12間でばらついていない場合、出力軸情報処理部240では、図3に示す角速度変化波形が生成される。この図3において、縦軸は角速度RSであり、横軸はクランク軸15の回転位相θである。すなわち、燃料の燃焼が#1→#3→#4→#2の順に行われる場合、図3に示すように、内燃機関の1サイクルを、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域、#3の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域、#4の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域、及び#2の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域に区分けすることができる。そして、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、#1の気筒12内での燃料の燃焼によって角速度RSが変化し、#3の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、#3の気筒12内での燃料の燃焼によって角速度RSが変化する。続いて、#4の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、#4の気筒12内での燃料の燃焼によって角速度RSが変化し、#2の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、#2の気筒12内での燃料の燃焼によって角速度RSが変化する。具体的には、燃料の燃焼によってピストン13が受ける力が大きいときには角速度RSが大きくなり、当該力が小さいときには角速度RSが小さくなる。したがって、この場合、各気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、角速度RSが大きくなった後、角速度RSが小さくなる。なお、気筒12内への燃料供給量が気筒12間でばらついていない場合、各回転位相の領域毎での角速度RSの変化態様はほぼ同じであるため、当該角速度変化波形に、内燃機関の1サイクルを1周期とする変動成分が含まれていない。又は、たとえ、この場合の角速度変化波形に内燃機関の1サイクルを1周期とする変動成分が含まれていたとしても、当該変動成分の振幅は非常に狭い。
また、#1の気筒12が失火している場合、出力軸情報処理部240では、図4に示す角速度変化波形が生成される。すなわち、図4に示すように、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、燃料が燃焼されないため、#1の気筒12内のピストン13は、燃料の燃焼に起因する力を受けることができない。そのため、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、角速度RSが小さくなり続ける。その一方で、#1の気筒12以外の他の気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、燃料が燃焼されるため、角速度RSが大きくなり、その後、角速度RSが小さくなる。そのため、#1の気筒12が失火している場合、当該角速度変化波形には、内燃機関の1サイクルを1周期とする変動成分として図4に白抜きの矢印で示すような変動成分が含まれる。すなわち、当該変動成分は、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では小さくなり、その他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では大きくなる態様で変化する。ただし、#2の気筒12の次に燃焼行程を迎える#1の気筒12は失火しているため、#2の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域の後半では当該変動成分が減少傾向を示すようになる。
また、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合、出力軸情報処理部240では、図5に示す角速度変化波形が生成される。すなわち、図5に示すように、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域と同じように、角速度RSが大きくなり、その後、角速度RSが小さくなる。しかし、燃料の燃焼によってピストン13が受ける力が小さいため、角速度RSの増大度合いは、他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域よりも小さい。このように#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域と、他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域とで角速度RSの推移の態様が相異するため、この場合の角速度変化波形には、内燃機関の1サイクルを1周期とする変動成分として図5に白抜きの矢印で示すような変動成分が含まれる。すなわち、当該変動成分は、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では小さくなり、その他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では大きくなる態様で変化する。ただし、#2の気筒12の次に燃焼行程を迎える#1の気筒12内への燃料供給量が少ないため、#2の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域の後半では当該変動成分が減少傾向を示すようになる。
また、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも多い場合、出力軸情報処理部240では、図6に示す角速度変化波形が生成される。すなわち、図6に示すように、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域と同じように、角速度RSが大きくなり、その後、角速度RSが小さくなる。しかし、燃料の燃焼によってピストン13が受ける力が大きいため、角速度RSの増大度合いは、他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域よりも僅かに大きい。すなわち、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域と、他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域とで角速度RSの推移の態様が相異する。しかし、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも多い場合では、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合よりも、上記の相異が小さい。そのため、当該角速度変化波形には、内燃機関の1サイクルを1周期とする変動成分として図6に白抜きの矢印で示すような変動成分が含まれるものの、その振幅は非常に狭い。
そして、出力軸情報処理部240は、図3〜図6で示したような角速度変化波形を生成すると、生成した角速度変化波形に対してフィルタ処理を施すことにより、角速度変化波形に含まれる変動成分、すなわち内燃機関の1サイクルを1周期とする変動成分をフィルタ後角速度変化波形として抽出する。このフィルタ処理では、バンドパスフィルタが用いられており、角速度変化波形をバンドバスフィルタに入力することで、フィルタ後角速度変化波形が抽出される。なお、このフィルタ後角速度変化波形は、内燃機関の1サイクルでの角速度RSの大まかな推移を示している。
例えば、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合、出力軸情報処理部240では、図5で示した角速度変化波形に対してフィルタ処理を施すことにより、図7に示すフィルタ後角速度変化波形が抽出される。なお、図7に示すように、フィルタ後速度変化波形は、「0」を中心に変動する波形になるように正規化されている。この場合のフィルタ後角速度変化波形は、図7に示すように、同波形によって示される特性値が最小値まで小さくなると、それ以降では特性値が最大値に向けて大きくなり、特性値が最大値に達すると、それ以降では特性値が再び小さくなるように変動する。
このようなフィルタ後角速度変化波形の位相は、フィルタ処理を施すことで角速度変化波形よりも遅れが生じる。そのため、フィルタ処理に伴う時間的な遅れに対応し、各気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域は、図中右側にシフトすることとなる。したがって、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域は、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となるときの回転位相を含み、#4の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域は、特性値が最大となるときの回転位相を含むようになる。
なお、#1の気筒12が失火している場合の角速度変化波形(すなわち、図4に示す波形)から生成されたフィルタ後角速度変化波形は、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合と同じような形状となる。しかし、#1の気筒12で失火はしていないものの、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合よりも、#1の気筒12が失火している場合のフィルタ後角速度変化波形の振幅は広い。
また、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも多い場合、出力軸情報処理部240では、図6で示した角速度変化波形に対してフィルタ処理を施すことにより、図8に示すフィルタ後角速度変化波形が抽出される。この場合のフィルタ後角速度変化波形は、図8に示すように、同波形によって示される特性値が最大値まで大きくなると、それ以降では特性値が最小値に向けて小さくなり、特性値が最小値に達すると、それ以降では特性値が再び大きくなるように変動する。そして、この場合であっても、フィルタ処理に伴う時間的な遅れに対応し、各気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域は、図中右側にシフトすることとなる。したがって、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも多い場合、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域は、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最大となるときの回転位相を含み、#4の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域は、特性値が最小となるときの回転位相を含むようになる。
上記では#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合、及び、#1の気筒12で失火している場合、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも多い場合のフィルタ後角速度変化波形について説明した。しかし、例えば#3の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ないこともあるし、#3の気筒12で失火が発生することもある。この場合に抽出されるフィルタ後角速度変化波形は、#3の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域で最小となり、#2の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域で最大となる態様で変化する。また、#3の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも多い場合、この場合に抽出されるフィルタ後角速度変化波形は、#3の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域で最大となり、#2の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域で最小となる態様で変化する。
そして、こうしてフィルタ後角速度変化波形を抽出すると、出力軸情報処理部240は、同フィルタ後角速度変化波形を診断情報取得部210に出力する。
図2に示すように、診断情報取得部210は、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させたり、リッチ異常判定及びリーン異常判定を行わせたりするために必要な情報を取得する。取得される情報としては、上記の判定ステップ数Y、対象気筒内への燃料供給量を減少させることで変化する判定パラメータZ、及び、後述する基準位相領域Aを挙げることができる。
図2に示すように、診断情報取得部210は、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させたり、リッチ異常判定及びリーン異常判定を行わせたりするために必要な情報を取得する。取得される情報としては、上記の判定ステップ数Y、対象気筒内への燃料供給量を減少させることで変化する判定パラメータZ、及び、後述する基準位相領域Aを挙げることができる。
診断情報取得部210は、ステップ数計数部211、ステップ数記憶部212、パラメータ算出部213、パラメータ記憶部214、領域特定部215及び領域記憶部216を有している。ステップ数計数部211は、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させるに際し、判定ステップ数Yを計数する。また、ステップ数記憶部212には、対象気筒内への燃料供給量の減少が完了したときの判定ステップ数Yが対象気筒の番号(#N)と関連付けて記憶される。そして、ステップ数記憶部212に記憶されている判定ステップ数Yは、供給制御部200及びリッチ判定部220で用いられる。
パラメータ算出部213は、出力軸情報処理部240で生成されたフィルタ後角速度変化波形に基づき、判定パラメータZを算出する。そして、パラメータ記憶部214には、対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が完了したときにパラメータ算出部213によって算出された判定パラメータZが対象気筒の番号(#N)と関連付けて記憶される。また、パラメータ記憶部214には、対象気筒内への燃料供給量が減少される前にパラメータ算出部213によって算出された判定パラメータである減少前の判定パラメータZ0も対象気筒の番号(#N)と関連付けて記憶される。そして、パラメータ記憶部214に記憶されている判定パラメータZはリッチ判定部220で用いられ、減少前の判定パラメータZ0はリーン判定部230で用いられる。
領域特定部215は、出力軸情報処理部240で生成されたフィルタ後角速度変化波形に基づき、各気筒12の燃焼行程に対応するクランク軸15の回転位相の領域のうち後述する所定条件を満たす領域を特定し、この特定した領域を基準位相領域Aとして領域記憶部216に記憶させる。なお、この領域記憶部216には、対象気筒内への燃料供給量の減少を開始させる前の基準位相領域である減少前の基準位相領域ABと、対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少しているときの基準位相領域である減少中の基準位相領域Aとが記憶される。そして、領域記憶部216に記憶されている基準位相領域AB,Aは、リッチ判定部220で用いられる。
ここで、図7を参照し、基準位相領域について説明する。各気筒12のうち1つの気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合、フィルタ後角速度変化波形は、図7に示すように変動する。図7に示す例では、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ないため、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となる回転位相は、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域に含まれている。そして、本実施形態では、各気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域のうち、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となるときの回転位相を含む領域、すなわち図7に示す例では、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域が、基準位相領域に該当する。要するに、上記の所定条件とは、「各気筒12の燃焼行程に対応する4つの回転位相の領域のうち、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となる回転位相を含む領域であること」である。
次に、図9及び図10に示すフローチャートを参照し、インバランス診断を行うために必要な判定パラメータZ(N)、減少前の判定パラメータZ0(N)及び判定ステップ数Y(N)を算出する際の処理手順について説明する。なお、図9及び図10のフローチャートに示す一連の処理は機関運転中に、インバランス診断(後述する第1の診断及び第2の診断)を行うために必要な上記の各値の取得が未だ完了していないときに制御装置100によって繰り返し実行される。また、判定パラメータZ(N)及び減少前の判定パラメータZ0(N)は、#Nの気筒12を対象気筒としたときに算出される判定パラメータである。また、判定ステップ数Y(N)は、#Nの気筒12を対象気筒としたときに取得される判定ステップ数である。なお、「N」は、対象気筒とされている気筒12の番号を示す値である。すなわち、#1の気筒12が対象気筒であるときには、上記の各値は、判定パラメータZ(1),判定パラメータZ0(1),判定ステップ数Y(1)となり、これらが#1の気筒12における各値となる。
図9に示すように、最初のステップS11において、上記の各値を取得するための燃料の供給量の減少の実施許可条件が成立しているか否かが判定される。ここでは、機関運転状態が所定の状態であること、暖機運転中ではないこと、などの条件が全て成立しているときに実施許可条件が成立していると判定される。したがって、所定の状態よりも高負荷の状態で運転されている場合や、内燃機関11の暖機運転中である場合、すなわち内燃機関11内を流れる冷却水の温度が低い場合などには、実施許可条件が成立していないと判断することができる。そして、実施許可条件が成立していない場合(ステップS11:NO)、処理がステップS11に戻される。一方、実施許可条件が成立している場合(ステップS11:YES)、処理が次のステップS13に移行される。
なお、本内燃機関11では、1つの気筒12に対して2つの噴射弁17,22が設けられている。そのため、本実施形態では、対象気筒用の両噴射弁17,22のうち、ポート噴射弁22に対するインバランス診断である第1の診断と、筒内噴射弁17に対するインバランス診断である第2の診断とが実施される。なお、第1の診断及び第2の診断に必要な上記の各値の取得は、図9及び図10に示す一連の処理を通じて対象気筒を順番に切り替えて実施される。例えば、#1→#3→#4→#2の順で対象気筒を切り替えながら各値の取得が実施される場合、まず、#1の気筒12に供給する燃料を段階的に減少させて#1の気筒12における各値を取得する。そして、#1の気筒12に供給する燃料の段階的な減少が完了して#1の気筒12における各値を取得すると、次に、#3の気筒12に供給する燃料の段階的な減少が行われ、#3の気筒12における各値の取得が行われる。こうして順番に対象気筒を切り替えて、全ての気筒12に対して燃料の段階的な減少が行われ、全ての気筒12における各値が取得されると、インバランス診断に必要な各値の取得が完了したことになる。
この制御装置100では、まず、第1の診断に必要な各値の取得を、第2の診断に必要な各値の取得よりも優先して実施するようにしている。要するに、第1の診断に必要な各値の取得及び第2の診断に必要な各値の取得の双方が未だ完了していない場合には、まず第1の診断に必要な各値の取得が実施され、第1の診断に必要な各値の取得を完了させた後に第2の診断に必要な各値の取得が実施される。
これを実現するため、ステップS13においては、第1の診断に必要な各値の取得が完了しているか否かが判定される。
そして、第1の診断に必要な各値の取得が完了していないと判定した場合(ステップS13:NO)、処理がステップS14に移行され、第1の診断に必要な各値の取得が完了していると判定した場合(ステップS13:YES)には、処理がステップS15に移行される。
そして、第1の診断に必要な各値の取得が完了していないと判定した場合(ステップS13:NO)、処理がステップS14に移行され、第1の診断に必要な各値の取得が完了していると判定した場合(ステップS13:YES)には、処理がステップS15に移行される。
なお、この例とは反対に、第2の診断に必要な各値の取得を第1の診断に必要な各値の取得よりも優先させて実施するようにしてもよい。その場合には、ステップS13において第2の診断に必要な各値の取得が完了しているか否かを判定する。そして、第2の診断に必要な各値の取得が完了していないと判定した場合(ステップS13:NO)、処理をステップS15に移行させ、第2の診断に必要な各値の取得が完了していると判定した場合(ステップS13:YES)には、処理をステップS14に移行させるようにする。
ステップS14では、供給制御部200によって、対象気筒におけるポート噴射弁22の燃料噴射量SPAが算出される。この燃料噴射量SPAは、以下に示す関係式(式1)に用いて算出する。関係式(式1)において、「SP」は、対象気筒に対する燃料の供給量の段階的な減少の開始前におけるポート噴射弁22の燃料噴射量であり、「α」は上記の所定割合である。また、「Ymax」は、対象気筒におけるポート噴射弁22の燃料噴射量を段階的に減少させる際の段数であり、予め設定された値である。また、「Y(N)」は、対象気筒におけるポート噴射弁22の燃料噴射量を段階的に減少させる際の減少回数、すなわち判定ステップ数である。関係式(式1)で明らかなように、「Y(N)/Ymax」が大きくなるほど、すなわち判定ステップ数Y(N)が大きくなるほど、算出されるポート噴射弁22の燃料噴射量SPAが小さくなる。後述するが、判定ステップ数Y(N)は「0」からインクリメントされるようになっており、判定ステップ数Y(N)が「0」である場合のポート噴射弁22の燃料噴射量SPAは、燃料の供給量の段階的な減少の開始前におけるポート噴射弁22の燃料噴射量SPと等しい。そのため、判定ステップ数Y(N)が「0」である場合に算出される判定パラメータは、対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少前の判定パラメータZ0(N)となる。そして、ポート噴射弁22の燃料噴射量SPAが算出されると、供給制御部200が対象気筒におけるポート噴射弁22の燃料噴射量を算出された燃料噴射量SPAと等しくするようにポート噴射弁22を駆動する。こうして対象気筒における燃料噴射量SPAが変更されると、処理がステップS17に移行される。
モニタディレイ時間が未だ経過していない場合(ステップS17:NO)、このステップS17の判定処理が繰り返される。一方、モニタディレイ時間が既に経過している場合(ステップS17:YES)、処理がステップS18に移行される。そして、ステップS18において、パラメータ算出部213によって、判定パラメータZ(N)が算出される。
ここで、図7を参照し、判定パラメータZ(N)の算出方法について説明する。#1の気筒12を対象気筒とし、#1の気筒12内への燃料供給量が減少されると、すなわち#1の気筒12用の噴射弁17,22の燃料噴射量SDA,SPAが減少されると、#1の気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少なくなることがある。この場合、図7に示すように、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が小さくなる。ちなみに、この場合のフィルタ後角速度変化波形では、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域で特性値が負の値となる。そして、当該領域で絶対値が最も大きくなる時点の特性値(図7に示す例では、特性値の最小値)を後述する正規化目標値で除算し、その商である正規化特性値Fp(=特性値/正規化目標値)が求められる。このように算出した正規化特性値Fpを積算することで、判定パラメータZ(N)を算出することができる。したがって、この判定パラメータZ(N)は、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域でのフィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が小さいほど大きくなるように算出される値であるということができる。
なお、対象気筒においてリーン異常が発生している場合、又は対象気筒で失火が生じている場合、フィルタ後角速度波形の振幅が比較的広いため、対象気筒内への燃料供給量を減少させる前であっても、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域での正規化特性値Fpが比較的大きい。したがって、この場合には、判定ステップ数Y(N)が「0」であるときの判定パラメータZ(N)、すなわち減少前の判定パラメータZ(N)は大きくなりやすい。
正規化目標値は、クランク軸15の回転速度NE及び吸入空気量に基づき算出される機関負荷率NL、及び、そのときの回転速度NEの相異に起因する影響を、フィルタ後角速度変化波形で示される特性値から取り除くための値である。この正規化目標値は、「0」よりも小さい値(すなわち、負の値)であり、回転速度NE及び機関負荷率NLに基づいて算出される。
クランク軸15の回転速度NEが小さい場合ほど、気筒12内への燃料供給量の気筒間でのばらつきに起因する影響が大きく出やすいため、フィルタ後角速度変化波形の振幅が広くなる。そのため、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、クランク軸15の回転速度NEが小さい場合ほど、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値の絶対値がより大きくなる。したがって、正規化目標値は、回転速度NEが大きいときほど「0」に近い値とされる。
また、機関負荷率NLが大きいほど、1回の吸気行程での気筒12内への充填量が多くなる。そのため、気筒12内への燃料供給量が気筒間でばらついている場合、機関負荷率NLが大きいほど、フィルタ後角速度変化波形の振幅が広くなりやすい。その結果、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値の絶対値がより大きくなる。したがって、正規化目標値は、機関負荷率NLが小さいほど「0」に近い値とされる。
ちなみに、対象気筒内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が負の値となる。一方、対象気筒内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも多い場合、対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が正の値となる。また、上述したように正規化後目標値は、負の値である。したがって、対象気筒内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合に算出される正規化特性値Fpは正の値になる一方で、対象気筒内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも多い場合に算出される正規化特性値Fpは負の値になる。
図9に戻り、判定パラメータZ(N)が算出されると、処理が次のステップS19に移行される。そして、ステップS19において、パラメータ算出部213によって、判定サイクル数X(N)が「1」だけインクリメントされる。この判定サイクル数X(N)は、正規化特性値Fpの積算回数である。そして、次のステップS20において、判定サイクル数X(N)が予め設定されたサイクル数基準値XTh以上であるか否かが判定される。サイクル数基準値XThは、「1」よりも大きい値に設定されている。ここでは、判定サイクル数X(N)がサイクル数基準値XTh未満である場合には、上記正規化特性値Fpのサンプル数が未だ少なく、高精度な診断を未だ行うことができないと判断することができるように、サイクル数基準値XThの大きさが設定されている。
そのため、判定サイクル数X(N)がサイクル数基準値XTh未満である場合(ステップS20:NO)、処理が前述したステップS11に移行される。したがって、判定サイクル数X(N)がサイクル数基準値XTh未満である間は、対象気筒内への燃料供給量が保持された状態で、上記正規化特性値Fpの積算、すなわち判定パラメータZ(N)の算出が継続される。一方、判定サイクル数X(N)がサイクル数基準値XTh以上になった場合(ステップS20:YES)、処理が次のステップS21に移行される。
図10に示すように、ステップS21では、パラメータ算出部213によって、判定パラメータZ(N)が予め設定されているパラメータ基準値ZTh以上であるか否かが判定される。パラメータ基準値ZThは、判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh以上である場合に、リッチ異常判定やリーン異常判定を行うことができる程度に判定パラメータZ(N)が十分に大きくなっていると判断することができるように、その値の大きさが設定されている。なお、パラメータ基準値ZThは正の値である。そして、判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh以上である場合(ステップS21:YES)、処理が後述するステップS26に移行される。一方、判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh未満である場合(ステップS21:NO)、処理がステップS22に移行される。
ステップS22では、パラメータ算出部213によって、判定ステップ数Y(N)が予め設定されたステップ数基準値YTh以上であるか否かが判定される。ステップ数基準値YThは、上記の判定ステップ数最大値Ymaxと等しい値に設定されている。すなわち、判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YThと等しい場合、対象気筒用の噴射弁17,22の燃料噴射量SDA,SPAが既に所定割合αだけ減少されており、対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が完了したと判定することができる。そのため、判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh以上である場合(ステップS22:YES)、処理が後述するステップS28に移行される。一方、判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh未満である場合(ステップS22:NO)、処理がステップS23に移行される。
ステップS23では、判定ステップ数Y(N)が「0」と等しいか否かが判定される。判定ステップ数Y(N)が「0」と等しいときの判定パラメータZ(N)は、対象気筒内への燃料供給量が減少される前の判定パラメータである。そのため、判定ステップ数Y(N)が「0」と等しい場合(ステップS23:YES)、ステップS24において、現時点の判定パラメータZ(N)が、減少前の判定パラメータZ0(N)としてパラメータ記憶部214に記憶される。すなわち、本実施形態では、対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が開始される前に、減少前の判定パラメータZ0(N)が算出される。その後、処理が次のステップS25に移行される。
一方、判定ステップ数Y(N)が「0」とは異なる場合(ステップS23:NO)、処理がステップS25に移行される。ステップS25では、ステップ数計数部211によって判定ステップ数Y(N)が「1」だけインクリメントされ、パラメータ算出部213によって判定サイクル数X(N)及び判定パラメータZ(N)の双方が「0」にリセットされる。そして、処理が前述したステップS11に移行される。
上述したように、判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh以上である場合(ステップS21:YES)には、ステップS26の処理が実行される。そして、このステップS26において、判定ステップ数Y(N)が「0」と等しいか否かが判定される。そして、判定ステップ数Y(N)が「0」と等しい場合(ステップS26:YES)、ステップS27において、現時点の判定パラメータZ(N)が、減少前の判定パラメータZ0(N)としてパラメータ記憶部214に記憶される。そして、処理がステップS28に移行される。
一方、判定ステップ数Y(N)が「0」とは異なる場合(ステップS26:NO)、処理がステップS28に移行される。そして、ステップS28において、対象気筒内への燃料供給量の減少が完了したと判定し、判定パラメータZ(N)がパラメータ記憶部214に記憶され、判定ステップ数Y(N)がステップ数記憶部212に記憶される。なお、ここでは、第1の診断に必要な各値を取得するために、ポート噴射弁22の燃料噴射量を段階的に減少させてきた場合には、判定パラメータZ(N)の値を判定パラメータZ(N)1としてパラメータ記憶部214に記憶するとともに、判定ステップ数Y(N)を判定ステップ数Y(N)1としてステップ数記憶部212に記憶する。一方、第2の診断に必要な各値を取得するために、筒内噴射弁17の燃料噴射量を段階的に減少させてきた場合には、判定パラメータZ(N)の値を判定パラメータZ(N)2としてパラメータ記憶部214に記憶するとともに、判定ステップ数Y(N)を判定ステップ数Y(N)2としてステップ数記憶部212に記憶する。そして、次のステップS29において、供給制御部200によって、対象気筒内への燃料供給量が元に戻される。
次のステップS30では、ステップ数計数部211によって判定ステップ数Y(N)が「0」にリセットされ、パラメータ算出部213によって判定サイクル数X(N)及び判定パラメータZ(N)が「0」にリセットされる。そして、ステップS31において、全ての気筒12に対する燃料供給量の減少が完了しているか否かが判定される。すなわち、第1の診断に必要な各値を取得するために、ポート噴射弁22の燃料噴射量を段階的に減少させてきた場合、全てのポート噴射弁22の燃料噴射量SPAの段階的な減少が完了したか否かが判定される。また、第2の診断に必要な各値を取得するために、筒内噴射弁17の燃料噴射量を段階的に減少させてきた場合、全ての筒内噴射弁17の燃料噴射量SDAの段階的な減少が完了したか否かが判定される。
なお、各気筒12に対応する判定パラメータZ(1)1,Z(2)1,Z(3)1,Z(4)1が全て記憶されており、且つ各気筒12に対応する判定ステップ数Y(1)1,Y(2)1,Y(3)1,Y(4)1が全て記憶されていれば、第1の診断を行うために必要な燃料噴射量の段階的な減少が完了していると判定することができる。また、各気筒12に対応する判定パラメータZ(1)2,Z(2)2,Z(3)2,Z(4)2が全て記憶されており、且つ各気筒12に対応する判定ステップ数Y(1)2,Y(2)2,Y(3)2,Y(4)2が全て記憶されていれば、第2の診断を行うために必要な燃料噴射量の段階的な減少が完了していると判定することができる。
そして、気筒12内への燃料供給量を段階的に減少させる処理を未だ行っていない気筒12があり、全ての気筒12に対する燃料供給量の減少が完了していない場合(ステップS31:NO)、処理が前述したステップS11に移行される。すなわち、次の気筒12を対象気筒とし、上述した一連の処理が実行される。一方、全ての気筒12に対する燃料供給量の減少が完了している場合(ステップS31:YES)、一連の処理が終了される。
次に、図11に示すフローチャートを参照し、領域特定部215が、各気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域のうち、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となる回転位相θを含む領域を、基準位相領域A(N),ABとして領域記憶部216に記憶させる際の処理手順について説明する。この一連の処理は、制御装置100の領域特定部215によって実行されるが、図9及び図10を参照して説明した一連の処理と同様に、機関運転中に、第1の診断及び第2の診断を行うために必要な上記の各値の取得が未だ完了していないときに繰り返し実行される。なお、基準位相領域A(N)における「N」は、対象気筒とされている気筒12の番号を示す値である。すなわち、#1の気筒12が対象気筒であるときには、基準位相領域は基準位相領域A(1)となり、これが#1の気筒12に対する燃料供給量を段階的に減少させているときの基準位相領域であることを示す。
図11に示すように、最初のステップS41において、実施許可条件が成立しているか否かが判定される。ステップS41の判定処理の内容は、上記ステップS11の判定処理の内容と同じである。実施許可条件が成立していない場合(ステップS41:NO)、ステップS41の判定処理が繰り返される。一方、実施許可条件が成立している場合(ステップS41:YES)、処理が次のステップS42に移行される。
ステップS42において、対象気筒内への燃料供給量が減少される前であるか否かが判定される。減少される前である場合(ステップS42:YES)、ステップS43において、対象気筒内への燃料供給量を減少する前の基準位相領域である減少前の基準位相領域ABが特定される。具体的には、出力軸情報処理部240によって生成されたフィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となるときにおけるクランク軸15の回転位相θが取得される。続いて、取得した回転位相θが、各気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域のうち何れの領域に含まれるのかが特定される。そして、特定された領域が減少前の基準位相領域ABに該当することとなる。そして、次のステップS44において、減少前の基準位相領域ABが領域記憶部216に記憶され、処理が後述するステップS47に移行される。
その一方で、ステップS42において、対象気筒内への燃料供給量が減少される前ではないと判定された場合(ステップS42:NO)、すなわち対象気筒内への燃料供給量の減少が開始されている場合には、処理がステップS45に移行される。このステップS45において、対象気筒内への燃料供給量が減少されている状態での基準位相領域である減少中の基準位相領域A(N)が特定される。そして、次のステップS46において、取得した減少中の基準位相領域A(N)が、領域記憶部216に記憶される。ここでは、第1の診断に必要な各値を取得するために、ポート噴射弁22の燃料噴射量を段階的に減少させているときには、基準位相領域A(N)を基準位相領域A(N)1として領域記憶部216に記憶する。一方、第2の診断に必要な各値を取得するために、筒内噴射弁17の燃料噴射量を段階的に減少させているときには、基準位相領域A(N)を基準位相領域A(N)2として領域記憶部216に記憶する。そして、処理がステップS47に移行される。
ステップS47において、上記ステップS31の判定処理と同様に、全ての気筒12に対する燃料供給量の減少が完了しているか否かが判定される。そして、気筒12内への燃料供給量を段階的に減少させる処理を未だ行っていない気筒12があり、全ての気筒12に対する燃料供給量の減少が完了していない場合(ステップS47:NO)、処理が前述したステップS41に移行される。すなわち、次の気筒12を対象気筒とし、上述した一連の処理が実行される。一方、全ての気筒12に対する燃料供給量の減少が完了している場合(ステップS47:YES)、一連の処理が終了される。
次に、図12に示すフローチャートを参照し、リーン異常の発生している気筒12があるか否かをリーン判定部230が判定する際の処理手順について説明する。このリーン異常判定は、リーン異常判定を行っていない気筒12が残っており、且つ図9及び図10に示すフローチャートで説明した処理、及び、図11に示すフローチャートで説明した処理の双方が完了している状態で繰り返し行われる。すなわち、第1の診断に必要な各値の取得が完了しており、第2の診断に必要な各値の取得が完了していない状態のときには、第1の診断としてのリーン異常判定が行われる。また、リーン異常判定は、全ての気筒12に対して行われることとなるが、#1、#3、#4、#2の順に行われる。そして、全ての気筒12に対して第1の診断におけるリーン異常判定が行われると、次に第2の診断としてのリーン異常判定が実行される。なお、このときに第2の診断に必要な各値の取得が完了していない場合には、取得が完了するまで第2の診断におけるリーン異常判定は実行されない。
図12に示すように、まずステップS51において、#N(例えば、#1)の気筒12の減少前の判定パラメータZ0(N)が予め設定されているパラメータ基準値ZTh以上であるか否かが判定される。減少前の判定パラメータZ0(N)は、図9及び図10に示すフローチャートで説明した処理によってパラメータ記憶部214に記憶された値である。そして、パラメータ基準値ZThは、減少前の判定パラメータZ0(N)がパラメータ基準値ZTh以上である場合、#Nの気筒用の噴射弁17,22の燃料噴射量SD,SPが少ない、又は、#Nの気筒12が失火していると判断することができるようにその大きさが設定されている。
そのため、減少前の判定パラメータZ0(N)がパラメータ基準値ZTh以上である場合(ステップS51:YES)、処理をステップS52へと移行する。そして、ステップS52において、#Nの気筒12においてリーン異常が発生していると判定される。その後、処理は後述するステップS54に移行される。一方、減少前の判定パラメータZ0(N)がパラメータ基準値ZTh未満である場合(ステップS51:NO)、処理がステップS53へと移行する。そして、ステップS53において、#Nの気筒12においてリーン異常が発生していないと判定される。この場合にも、処理がステップS54に移行される。
ステップS54では、全ての気筒12に対するリーン異常判定が完了したか否かが判定される。リーン異常判定を未だ行っていない気筒12がある場合(ステップS54:NO)、処理が前述したステップS51に移行される。すると、次の気筒12に対するリーン異常判定が行われる。一方、全ての気筒12に対するリーン異常判定が完了した場合(ステップS54:YES)、本処理が終了される。
次に、図13に示すフローチャートを参照し、リッチ異常の発生している気筒12があるか否かをリッチ判定部220が判定する際の処理手順について説明する。このリッチ異常判定は、図12を参照して説明したリーン異常判定と同様に、リッチ異常判定を行っていない気筒12が残っており、且つ図9及び図10に示すフローチャートで説明した処理、及び、図11に示すフローチャートで説明した処理の双方が完了している状態で繰り返し行われる。また、リッチ異常判定も、全ての気筒12に対して行われることとなるが、#1、#3、#4、#2の順に行われる。
図13に示すように、まずステップS61において、ステップ数記憶部212に記憶されている#N(例えば、#1)の気筒12の判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh以上であるか否かが判定される。例えば、第1の診断におけるリッチ異常判定の場合には、判定ステップ数Y(N)1がステップ数基準値YTh以上であるか否かを判定する。
判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh未満である場合とは、#Nの気筒12を対象気筒とし、#Nの気筒12内への燃料供給量が所定割合α減少される前に、判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh以上になった場合である。例えば、#Nの気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない場合、判定ステップ数Y(N)を大きくし、#Nの気筒12内への燃料供給量の減少量が多くなるほど、算出される判定パラメータZ(N)が大きくなる。そして、判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh未満の段階で判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh以上となることがあり、この場合には、ステップ数基準値YThよりも小さい判定ステップ数Y(N)がステップ数記憶部212に記憶されている。したがって、判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh未満である場合(ステップS61:NO)、処理はステップS62へと移行し、ステップS62において、#Nの気筒12でリッチ異常が発生していないと判定される。その後、処理が後述するステップS66に移行される。
一方、判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh以上である場合(ステップS61:YES)、処理はステップS63へと移行し、ステップS63において、パラメータ記憶部214に記憶されている判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh未満であるか否かが判定される。例えば、第1の診断におけるリッチ異常判定の場合には、判定パラメータZ(N)1がパラメータ基準値ZTh未満であるか否かを判定する。
#Nの気筒12でリッチ異常が発生している場合、#Nの気筒12内の燃料供給量を段階的に減少させると、#Nの気筒12内への燃料供給量と他の気筒12内への燃料供給量とのずれが小さくなる。その結果、#Nの気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が小さくなる。
なお、図14には、#1の気筒12でリッチ異常が発生している場合が図示されている。この場合、図14に実線で示すように、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値は正の値である。この状態で#1の気筒12を対象気筒とし、#1の気筒12内への燃料供給量が段階的に減少されると、図14に破線で示すように、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が徐々に小さくなる。すなわち、判定ステップ数Y(1)が大きくなるにつれて判定パラメータZ(1)が「0」に近づく。このように燃料供給量を段階的に減少させていくと、#1の気筒12内への燃料供給量と他の気筒12内への燃料供給量との大小関係が逆転する。すると、それ以降では、#1の気筒12用の燃料供給量の減少量を段階的に減少させると、図14に一点鎖線で示すように、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が負の値となる。すなわち、判定ステップ数Y(1)が大きくなるにつれて、判定パラメータZ(1)は正の値となるとともに、判定パラメータZ(1)が大きくなる。
このように#1の気筒12でリッチ異常が発生している場合、#1の気筒12内の燃料供給量を段階的に減少させると、判定パラメータZ(1)は、負の値から正の値となる。そのため、判定ステップ数Y(1)がステップ数基準値YThに達しても、判定パラメータZ(1)はそれほど大きくならない。
つまり、この関係から、判定パラメータZ(1)がパラメータ基準値ZTh以上である場合には、判定パラメータZ(1)が大きくなっているため、#1の気筒12においてリッチ異常が発生している可能性は低く、#1の気筒12においてリッチ異常が発生していないと推定することができる。
図13に戻り、判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh以上である場合(ステップS63:NO)、次のステップS62において、#Nの気筒12においてリッチ異常が発生していないと判定される。その後、処理が後述するステップS66に移行される。一方、判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh未満である場合(ステップS63:YES)、処理が次のステップS64に移行される。
ステップS64では、領域記憶部216に記憶されている減少前の基準位相領域ABと減少中の基準位相領域A(N)とが異なっているか否かが判定される。例えば、第1の診断におけるリッチ異常判定の場合には、減少前の基準位相領域ABと基準位相領域A(N)1とが異なっているか否かを判定する。
#Nの気筒12においてリッチ異常が発生している場合、上述したように、#Nの気筒12内の燃料供給量の減少量がある程度大きくなると、#Nの気筒12内への燃料供給量が他の気筒12内への燃料供給量よりも少なくなる。すると、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となるクランク軸15の回転位相θが、#Nの気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域に含まれるようになる。すなわち、#Nの気筒12の燃焼に対応する回転位相の領域が減少中の基準位相領域A(N)となる。ちなみに、#Nの気筒12においてリッチ異常が発生している場合、#Nの気筒12以外の他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域が減少前の基準位相領域ABとなる。そのため、#Nの気筒12でリッチ異常が発生している場合、減少前の基準位相領域ABと減少中の基準位相領域A(N)とが相異することとなる。
そこで、減少前の基準位相領域ABと減少中の基準位相領域A(N)とが相異している場合(ステップS64:YES)、処理はステップS65へと移行し、ステップS65において、#Nの気筒12においてリッチ異常が発生していると判定される。すなわち、減少前の基準位相領域ABと減少が完了した後の最新の基準位相領域A(N)とが異なっている場合に、ステップS65において、#Nの気筒12においてリッチ異常が発生していると判定される。その後、処理が後述するステップS66に移行される。一方、減少前の基準位相領域ABと減少中の基準位相領域A(N)とが相異していない場合(ステップS64:NO)、ステップS62において、#Nの気筒12においてリッチ異常が発生していないと判定される。その後、処理が次のステップS66に移行される。
そして、ステップS66において、全ての気筒12に対するリッチ異常判定が完了したか否かが判定される。リッチ異常判定を未だ行っていない気筒12がある場合(ステップS66:NO)、処理が前述したステップS61に移行される。すると、次の気筒12に対するリッチ異常判定が行われる。一方、全ての気筒12に対するリッチ異常判定が完了した場合(ステップS66:YES)、本処理が終了される。
このように、図12の一連の処理を通じて全ての気筒12に対するリーン異常判定が完了し、図13の一連の処理を通じて全ての気筒12に対するリッチ異常判定が完了すると、インバランス診断が完了したことになる。すなわち、全ての気筒12に対する第1の診断におけるリーン異常判定が完了し、全ての気筒12に対する第1の診断におけるリッチ異常判定が完了したときに第1の診断が完了したことになる。同様に、全ての気筒12に対する第2の診断におけるリーン異常判定が完了し、全ての気筒12に対する第2の診断におけるリッチ異常判定が完了したときに第2の診断が完了したことになる。
次に、図15を参照し、対象気筒以外の気筒12のうち、1つの気筒12においてリーン異常が発生している場合の作用について説明する。ここでは、#4の気筒12が対象気筒であり、#1の気筒12においてリーン異常が発生しており、#1の気筒12を除く他の気筒12においてリーン異常及びリッチ異常の双方が発生していない場合を例に説明する。
対象気筒である#4の気筒12内への燃料供給量が減少される前では、図15に実線で示すようにフィルタ後角速度変化波形の振幅が比較的大きくなる。この場合、#1の気筒12内への燃料供給量が少ないことに起因し、#4の気筒12内への燃料供給量が減少される前でも、#4の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が正の値となる。この状態で#4の気筒12内への燃料供給量を段階的に減少させると、図15に破線で示すように、フィルタ後角速度変化波形の振幅が狭くなる。この場合、#4の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が「0」に近づく。その結果、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値を正規化目標値で除した商である正規化特性値Fpは負の値であるため、この正規化特性値Fpの積算値である判定パラメータZ(4)が「0」に近づく。
そして、判定ステップ数Y(4)を大きくし、#4の気筒12内への燃料供給量をさらに減少させると、判定パラメータZ(4)がさらに「0」に近づく。そして、この場合、判定ステップ数Y(4)がステップ数基準値YThに達した時点では、判定パラメータZ(4)は負の値であり、判定パラメータZ(4)がパラメータ基準値ZTh以上にならない。
しかし、リーン異常の発生している#1の気筒12内への燃料供給量は、他の気筒12内への燃料供給量よりも少ない。ここで、インバランス診断を行うために必要な燃料噴射量の減少量は少なく、所定割合αは小さいため、#4の気筒12内への燃料供給量を所定割合αだけ減少させても、#4の気筒12内への燃料供給量が#1の気筒12内への燃料供給量よりも少なくなることはない。そのため、#4の気筒12内への燃料供給量の減少を開始する前の基準位相領域である減少前の基準位相領域ABと、当該減少の終了後の基準位相領域である記憶されている基準位相領域A(N)とが同じである。したがって、#4の気筒12においてリッチ異常が発生していると判定されることはない。
なお、#1の気筒12用の噴射弁17,22の燃料噴射量が適量であったとしても、#1の気筒12において失火が生じていることもある。この場合、#1の気筒12においてリーン異常が発生している場合と同様に、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、他の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域よりも、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が小さくなる。すなわち、この場合であっても、減少前の基準位相領域ABは、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域となる。そして、上述したように、#4の気筒12内への燃料供給量の段階的な減少を完了させても、#4の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域では、#1の気筒12の燃焼行程に対応する回転位相の領域よりも、フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が小さくなることはない。すなわち、減少中の基準位相領域A(4)と減少前の基準位相領域ABとが相異しない。そのため、#1の気筒12が失火している場合であっても、#4の気筒12においてリッチ異常が発生していると判定されることはない。
以上、上記実施形態によれば以下に示す効果を得ることができる。
ステップ数記憶部212に記憶されている判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh以上であり、且つパラメータ記憶部214に記憶されている判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh未満であっても、減少中の基準位相領域A(N)と減少前の基準位相領域ABとが相異しない場合には、同対象気筒においてリッチ異常が発生していると判定されない。したがって、対象気筒以外の他の気筒12においてリーン異常が発生しているときに、対象気筒においてリッチ異常が発生していると誤判定されることを抑制することができる。
ステップ数記憶部212に記憶されている判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh以上であり、且つパラメータ記憶部214に記憶されている判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh未満であっても、減少中の基準位相領域A(N)と減少前の基準位相領域ABとが相異しない場合には、同対象気筒においてリッチ異常が発生していると判定されない。したがって、対象気筒以外の他の気筒12においてリーン異常が発生しているときに、対象気筒においてリッチ異常が発生していると誤判定されることを抑制することができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態では、対象気筒内への燃料供給量を減少させる前に算出した判定パラメータである減少前の判定パラメータZ0(N)に基づき、対象気筒においてリーン異常が発生しているか否かを判定している。しかし、これに限らず、他の方法で対象気筒においてリーン異常が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。例えば、対象気筒内への燃料供給量が段階的に減少されているものの、判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh未満であるときに算出した判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh以上であるときに、対象気筒においてリーン異常が発生していると判定するようにしてもよい。
・上記実施形態では、対象気筒内への燃料供給量を減少させる前に算出した判定パラメータである減少前の判定パラメータZ0(N)に基づき、対象気筒においてリーン異常が発生しているか否かを判定している。しかし、これに限らず、他の方法で対象気筒においてリーン異常が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。例えば、対象気筒内への燃料供給量が段階的に減少されているものの、判定ステップ数Y(N)がステップ数基準値YTh未満であるときに算出した判定パラメータZ(N)がパラメータ基準値ZTh以上であるときに、対象気筒においてリーン異常が発生していると判定するようにしてもよい。
・筒内噴射弁17を備えない一方でポート噴射弁22を備える内燃機関に対してこのインバランス診断装置を適用することもできる。また、ポート噴射弁22を備えない一方で筒内噴射弁17を備える内燃機関に対してこのインバランス診断装置を適用することもできる。なお、これらの場合には、インバランス診断を第1の診断と第2の診断に分けて行う必要がなくなる。
・内燃機関は、2つ以上の気筒を有する多気筒内燃機関であれば、4つ以外の任意数の気筒を備える内燃機関であってもよい。
11…内燃機関、12…気筒、15…クランク軸、100…制御装置、200…供給制御部、213…パラメータ算出部、212…ステップ数記憶部、214…パラメータ記憶部、216…領域記憶部、220…リッチ判定部、240…出力軸情報処理部。
Claims (1)
- 機関出力軸が所定回転角回転するのに要する時間を回転必要時間としたとき、同所定回転角を同回転必要時間で除した商である角速度の推移を示す波形である角速度変化波形に対してフィルタ処理を施すことにより、同角速度変化波形から内燃機関の1サイクルを1周期とする変動成分をフィルタ後角速度変化波形として抽出する出力軸情報処理部と、
複数の気筒のうち1つの気筒を対象気筒とし、各気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域のうち、前記対象気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域での前記フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が小さいほど大きくなるように判定パラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記対象気筒内への燃料供給量の減少回数である判定ステップ数がステップ数基準値に達するか前記判定パラメータがパラメータ基準値以上になるまで同対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させる供給制御部と、
前記対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が完了したときの前記判定ステップ数を記憶するステップ数記憶部と、
前記対象気筒内への燃料供給量の段階的な減少が完了したときの前記判定パラメータを記憶するパラメータ記憶部と、
前記各気筒の燃焼行程に対応する回転位相の領域のうち、前記フィルタ後角速度変化波形によって示される特性値が最小となる回転位相を含んでいる領域を基準位相領域として記憶する領域記憶部と、
前記ステップ数記憶部に記憶されている判定ステップ数がステップ数基準値以上であること、及び、前記パラメータ記憶部に記憶されている判定パラメータが前記パラメータ基準値未満であること、及び、前記対象気筒内への燃料供給量が減少される前に前記領域記憶部に記憶された前記基準位相領域と同対象気筒内への燃料供給量を段階的に減少させているときに前記領域記憶部に記憶された前記基準位相領域とが相違していること、の全てが成立しているときには、同対象気筒においてリッチ異常が発生していると判定するリッチ判定部と、を備える
内燃機関のインバランス診断装置。
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