JP2017115045A - 防曇組成物および防曇性フィルム - Google Patents

防曇組成物および防曇性フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】合成樹脂を含有しているにも関わらず、長期の防曇性を有する防曇組成物および防曇性フィルムを提供する。
【解決手段】合成樹脂(A)、無機化合物(B)及びポリエチレングリコール(C)を含有し、前記ポリエチレングリコール(C)の重量平均分子量は、5800以下である防曇組成物であり、ポリエチレングリコール(C)の含有量は、合成樹脂(A)と無機化合物(B)の合計100質量部に対して5質量部以下である防曇組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、長期間使用される環境においても優れた防曇性を備える防曇組成物、及び当該防曇組成物からなる層を備える防曇性フィルムに関する。
近年、様々な分野で種々の熱可塑性樹脂が使用されている。これらの熱可塑性樹脂より製造された成形品の多くは、その表面が疎水性であるため、成形品の使用温度等の使用条件によっては、成形品の表面に曇りを発生させるという問題がある。具体的には、食品包装用フィルムにおいては、曇りが発生すると、内容物が見えにくくる。また、温室に用いられる農業用フィルムでは、曇りが発生すると、太陽光線の透過が悪くなり、植物の生育が悪くなったり、曇りの微細水滴が集合して生じた大粒の水滴が温室内で栽培する植物に落下することにより、幼芽が害をうけたり、病害の発生の原因となったりする。
このような問題点を解決する方法として、熱可塑性樹脂成形品の表面に、防曇性を付与する方法が知られている。この防曇性を付与する方法としては、熱可塑性樹脂に界面活性剤のような親水性物質を練り込み成形品とする方法、または、熱可塑性樹脂成形品の表面に、例えば、シリカやアルミナと界面活性剤との混合物を塗布する方法が各種提案されている。
しかし、前者の方法は、熱可塑性樹脂に練り込んだ親水性物質が成形品の表面にふきだした状態で配位し、成形品に防曇性を付与することができるものの、練り込んだ界面活性剤のような親水性物質は、水によって流出し易く、短期間のうちに防曇性が消失する。一方、後者の方法においては、塗布によって設けられた塗膜は、熱可塑性樹脂との密着性に乏しいため、時間の経過とともに塗膜が脱落することがあるという問題点がある。
これに対し、特開平09−087615号公報(特許文献1)には、シリカやアルミナに疎水性アクリル樹脂等の合成樹脂を含有させることにより熱可塑性樹脂との密着性を向上させた水分散系の防曇剤が知られている。
しかし、この方法では、密着性向上のために用いた疎水性アクリル樹脂等が表面にも露出してしまうために、表面に存在するシリカやアルミナの割合が低くなってしまい、十分な防曇性を得ることができなかった。
一方、これらを改善する技術として、特開2007−282625号公報(特許文献2)には、合成樹脂を含む下層塗膜を形成し、更に無機微粒子を主成分として含む上層塗膜を形成する多層構造の防曇塗膜技術が開示されている。
しかしながら、このような多層コートは、加工工程に塗布及び乾燥工程を複数回含む為、プロセスが煩雑であり、コスト的にも不利になる傾向があった。
また、特開2009―202350号公報(特許文献3)には、粒径20nm以下の無機質コロイド状物質を含む防曇剤組成物を基材フィルムに塗布することにより、基材フィルムとの界面と塗膜の表面で組成分布が異なる様な傾斜構造を得る技術が開示されている。
しかしながら、得られる塗膜の防曇性能は塗工条件や乾燥条件といった工程過程によって影響を受けやすく十分な性能を発揮する防曇塗膜を安定して生産するのは困難であった。
従って、これら従来技術では、長期間の使用に対して防曇性能を確保することができず、未だ不十分であるのが現状である。
特開平09−087615号公報 特開2007−282625号公報 特開2009―202350号公報
本発明は、合成樹脂を含有しているにも関わらず、長期の防曇性を有する防曇組成物および防曇性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、合成樹脂(A)、無機化合物(B)及び特定のポリエチレングリコール(C)を含有する防曇組成物とすることで、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、
[1]合成樹脂(A)、無機化合物(B)及びポリエチレングリコール(C)を含有し、前記ポリエチレングリコール(C)の重量平均分子量は、5800以下であることを特徴とする防曇組成物。
[2]前記ポリエチレングリコール(C)の含有量は、合成樹脂(A)と無機化合物(B)の合計100質量部に対して5質量部以下であることを特徴とする[1]に記載の防曇組成物。
[3]基材フィルム、及び当該基材フィルムの少なくとも片面側に設けられた[1]または[2]に記載の防曇組成物からなる層を備えることを特徴とする防曇性フィルム。
[4]前記基材フィルムがポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする[3]に記載の防曇性フィルム。
[5]農業用途であることを特徴とする[3]または[4]に記載の防曇性フィルム。
を、提供するものである。
本発明の防曇組成物および防曇性フィルムは、長期間の使用に対しても優れた防曇性を有し、かつ結露による視界性不良や水滴落下を抑制することができる。
以下に、本発明の防曇組成物および防曇性フィルムを詳細に説明する。
本発明の防曇組成物は、合成樹脂(A)、無機化合物(B)及びポリエチレングリコール(C)を含有し、前記ポリエチレングリコール(C)の平均分子量は、5800以下であることが重要である。
<ポリエチレングリコール(C)>
本発明に使用するポリエチレングリコール(以下「PEG」とも言う。)は、ポリエチレングリコールの単独重合体からなっていてもよく、他の重合体とのジブロック共重合体、トリブロック共重合体および/または多ブロック共重合体であってもよいが、ポリエチレングリコールの単独重合体の方がより好ましい。
合成樹脂(A)と無機化合物(B)を含む防曇組成物に該ポリエチレングリコール(C)を含有させることで、合成樹脂(A)と無機化合物(B)が偏在することなく均一に分散した状態を形成しやすくすることができ、優れた防曇性能を付与することが可能となる。
本発明に使用するポリエチレングリコール(C)は、重量平均分子量が5800以下であることが重要であり、平均分子量は5500以下であることが好ましく、5300以下でることがより好ましく、5000以下であることが更に好ましく、4500以下であることが特に好ましい。ポリエチレングリコールの平均分子量を5800以下とすることで、合成樹脂(A)と無機化合物(B)が偏在することなく均一に分散した状態を形成しやすくすることができ、優れた防曇性能を付与することが可能となる。
また、本発明の防曇組成物におけるポリエチレングリコール(C)の含有量は、合成樹脂(A)と無機化合物(B)の合計100質量部に対して5質量部以下とすることが好ましく、4質量部以下とすることがより好ましく、3質量部以下とすることが更に好ましく、2質量部以下とすることが特に好ましく、1.5質量部以下とすることがとりわけ好ましい。また、ポリエチレングリコール(C)の含有量は0.01質量部以上とすることが好ましく、0.1質量部以上とすることがより好ましく、0.3質量部以上とすることが更に好ましく、0.7質量部以上とすることが特に好ましい。
ポリエチレングリコール(C)の含有量を上記とすることで、無機化合物(B)の親水性が阻害されることを抑制することができ好ましい。
<合成樹脂(A)>
本発明に使用する合成樹脂(A)としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、合成樹脂からなる基材フィルムとの相性から、特に、アクリル系樹脂、及び/又はウレタン系樹脂を用いることが好ましく、更に好ましくは後述する(i)親水性アクリル系重合体からなるもの、(ii)疎水性アクリル系樹脂からなるもの、(iii)疎水性アクリル系樹脂と、ポリウレタンエマルジョンからなるもの、が各々の特質を持ち、好ましい。また、(iv)前記樹脂に使用されるモノマーの共重合体樹脂についても、好ましく使用することが出来る。(iv)については、例えば、ウレタン変性ポリエステル系ウレタン等を挙げる事が出来る。
アクリル系樹脂としては、(a)親水性アクリル系重合体からなるもの、(b)一分子内に疎水性分子鎖ブロックと親水性分子鎖ブロックとを含むブロック共重合体からなるもの、(c)疎水性アクリル系樹脂からなるものが挙げられるが、特に(a)が、初期の防曇濡れが早い点で好ましいが、流失しやすい傾向にあるので、架橋反応等で塗膜にある程度の耐水性を付与することが必要となる。一方(c)については、耐水性に優れており、防曇持続性に関しては好ましいが、疎水性アクリルによる表面疎水化を抑制する為に、合成樹脂(A)と無機化合物(B)の比率を調整する必要がある。
(a)の親水性アクリル系重合体としては、水酸基含有ビニル単量体成分を主成分(好ましくは60重量%〜99.9重量%、更に好ましくは65重量%〜95重量%とし)、酸基含有ビニル単量体成分を0.1〜30重量%含有する共重合体、その部分中和物または完全中和物が挙げられる。水酸基含有ビニル単量体成分としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類があげられ、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等があげられる。これらは単独重合体であってもよく、これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を主成分とし、これらと共重合しうる他の単量体との共重合体であってもよい。
これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類と共重合しうる酸基含有単量体としては、カルボン酸類、スルホン酸類、ホスホン酸類が挙げられ、特に好ましくは、カルボン酸に属する(メタ)アクリル酸である。
その他の共重合体成分としては、たとえばスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酸化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン等があげられる。これらに加え架橋部位を含有するモノマーを共重合させておき、適切な架橋剤を適切な架橋温度で反応させることにより、架橋密度を向上させ、耐水性を向上させることが出来る。
(c)の疎水性アクリル系樹脂としては、少なくとも合計60重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0〜40重量%の共重合しうるα、β−エチレン性不飽和単量体とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重合体または共重合体を挙げることができる。
疎水性アクリル系樹脂の製造に用いられるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸デシルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸−n−プロピルエステル、メタクリル酸イソプロピルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸デシルエステル等が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1〜20個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜20個のメタクリル酸アルキルエステルが使用される。アルケニルベンゼン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
疎水性アクリル系樹脂を得るために用いるα、β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β−エチレン性不飽和スルホン酸類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸;α、β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよく、0〜40重量%の範囲で使用するのが好ましい。使用量を上記の範囲とすることで、防曇性能が低下することを抑制することができる。
アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によって得ることができる。乳化剤の存在下での重合方法の場合、これら乳化剤は、単量体の仕込み合計量に対し0.1〜10重量%の範囲で使用するのが、重合速度の調整、合成される樹脂の分散安定性の点から好ましい。
アクリル系樹脂の製造に好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アセチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%の範囲で使用することができる。
疎水性アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が低いものが好ましく、限定することはないが、たとえば−50〜110℃のものが好ましく、−30〜80℃のものを用いるのが好ましい。ガラス転移温度を上記の範囲とすることで無機化合物(B)が凝集して不均一な分散状態となることを抑制することができ、また透明性のある均一な塗膜を得やすくなる。
疎水性アクリル系樹脂は水系エマルジョンとして用いるのが好ましい。各単量体を水系媒質中での重合によって得られた水系エマルジョンをそのまま使用しても良く、更にこのものに液状分散媒を加えて希釈したものでもよく、また上記のような重合によって生じた重合体を分別採取し、これを液状分散媒に再分散させて水系エマルジョンとしたものでもよい。
一方、本発明に使用することができるウレタン系樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンの水性組成物、エマルジョンが挙げられるが、防曇組成物と基材フィルムとの密着性、耐水性及び耐傷付き性の点でポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンが好ましく、更なる防曇被膜の耐水性、耐傷付き性向上並びに防曇性を発現するまでの時間及び防曇持続性の点でシラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンがより好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
シラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンとは分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、硬化触媒として強塩基性第3級アミンとを含有してなり、具体的には水相中にシラノール基含有ポリウレタン樹脂及び前記強塩基性第3級アミンが溶解しているもの、又は微粒子状に分散しているコロイド分散系のもの(エマルジョン)をいう。
ポリウレタン水性組成物は、その配合量を固形分質量比で疎水性アクリル系樹脂に対して0.01以上、2以下、更に好ましくは0.01以上1以下にすることが好ましい。0.01以上とすることで耐傷付き性が向上し、また、防曇性を発現するまでの時間が長くなることを抑制することができる。また、2以下とすることで、耐傷付き性が配合量に比例して向上しやすくなり、塗布後に形成される塗膜が白濁化し光線透過率が低下することを抑制することができる。
<無機化合物(B)>
本発明に使用する無機化合物の平均粒子径は、0.1nm〜200nmが好ましく、1nm〜100nmがより好ましく、3nm〜80nmが更に好ましい。無機化合物の平均粒子径を0.1nm以上とすることで、分散性に優れ、また、200nm以下とすることで被膜の透明性に優れるため好ましい。
なお、本発明の平均粒子径とは、BET法と呼ばれる窒素ガス吸着法により測定される比表面積(m/g)から常法により平均粒子径として算出される比表面積径のことを言う。
また、防曇組成物における合成樹脂(A)と無機化合物(B)の質量比は、5:95〜75:25であることが好ましく、5:95〜70:30であることがより好ましく、5:95〜65:35であることが更に好ましい。合成樹脂(A)と無機化合物(B)の質量比を上記とすることで、十分な防曇性を得ることができる。
本発明の防曇組成物に使用する無機化合物は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することが出来る。無機化合物は、本発明の防曇組成物を防曇塗料として使用した場合に、良好な防曇性を付与することが出来る上、更に塗膜表面において合成樹脂等によるブロッキングを防止する機能を果たすものである。
上記無機化合物としては、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、硫酸バリウム、アンチモン酸亜鉛等が挙げられる。中でも好ましく用いられるのは、シリカとアルミナで、これらは、単独で用いても併用しても良い。
上記無機化合物は、乾燥時における無機化合物同士や無機化合物と合成樹脂間の接着性向上の為に、基材フィルム表面への親水性付与を阻害しない範囲で、表面処理を施すことが出来る。シリカやアルミナの表面への表面処理の方法としては、公知のものが使用できるが、中でもシランカップリング剤を始めとするシラン化合物を好適に用いることが出来る。
防曇組成物には、必要に応じて、溶媒、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、増粘剤、顔料、顔料分散剤、耐候性改良剤、熱安定剤等の慣用の添加剤を含有させることができる。
本発明の防曇組成物を調製する方法は特に限定されるものではないが、たとえば、合成樹脂(A)、無機化合物(B)、ポリエチレングリコール(C)、及び必要に応じて任意の添加剤を混合することにより調製することができる。
また、防曇組成物の層と基材フィルムの層からなるフィルムの場合は、防曇組成物を水、有機溶媒(2種以上の有機溶媒からなる混合溶媒を含む)又は水と1種以上の有機溶媒との混合溶媒に分散又は溶解し、防曇組成物を含む分散液又は溶液(以下「防曇剤組成物」とも言う。)を調製し、当該防曇剤組成物を基材フィルムの表面に塗布等することにより防曇組成物の層を形成することが好ましい。前記防曇剤組成物は合成樹脂(A)、無機化合物(B)及びポリエチレングリコール(C)含有するものであるが、この防曇剤組成物中での合成樹脂(A)の分散性をより良好にするため分散液中では溶解物、もしくはエマルジョンとすることが好ましい。また、無機化合物(B)の分散性をより良好にするために、無機化合物を無機質コロイド状物質とすることが好ましい。
本発明において、防曇組成物の層を基材の表面に形成する方法としては、特に限定するものではなく一般に用いられる方法を使用することができる。たとえば、防曇剤組成物の溶液または分散液をそれぞれドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を用いて基材の表面に塗布し、塗布後乾燥すればよい。
塗布後の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃の温度範囲で乾燥することができる。基材に合成樹脂を使用したフィルムにおいては、乾燥温度を200℃以下とすることにより、融解や熱収縮等変形の発生を抑制することができる。
また、加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法、及び紫外線硬化法等適宜の方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが好ましい。
本発明のもう一つの態様は、本発明の防曇組成物からなる層が基材フィルムの少なくとも片面側の表面に設けられた防曇性フィルムである。
本発明に使用できる基材フィルムを構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であれば、特に限定することはないが、たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等を使用することができる。
また、これらの樹脂を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
また、基材フィルムは単層でもよく、2層以上の層を有する多層であってもよく、たとえば内層、中間層及び外層を有する3層、またはそれ以上の多層とすることもできる。
また、基材フィルムは、必要に応じて、可塑剤、造膜助剤、増粘剤、顔料、顔料分散剤、耐候性改良剤、熱安定剤等の慣用の添加剤を混合することができる。
以下、本発明を実施例、比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。
(1)基材フィルムの作製
3層インフレーション成形装置として3層ダイに100mmφ((株)プラ工研製)を用い、押出機はチューブ外内層を30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を40mmφ((株)プラ技研製)として、外内層押出し機温度180℃、中間層押し出し機温度170℃、ダイス温度180〜190℃、ブロー比2.0〜3.0、引取り速度3〜7m/分、の加工条件で、外層/中間層/内層が30/90/30の厚み比となる、厚さ0.15mmの3層の積層フィルムを作製した。なお、これらのフィルムは、ハウス展張時にチューブの端部を切り開いて使用するため、展開した際に製膜時のチューブ外層が展張時にはハウスの内層(内面)となる。
<基材フィルムに使用した材料>
・低密度ポリエチレン(LDPE):宇部丸善ポリエチレン社製「F022NH」(MFR:0.8g/10分、密度0.922)
・メタロセンPE(Me−PE):日本ポリエチレン社製カーネル「KF270」(MFR:2g/10分、密度0.907)
・エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA1):(酢酸ビニル含有量5重量%、MFR2g/10分)
・エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA2):(酢酸ビニル含有量15重量%、MFR2g/10分)
・紫外線吸収剤A:サイテック社製「トリアリールトリアジン系紫外線吸収剤UV1164」
・合成ハイドロタルサイトA:協和化学社製「DHT4A」
・光安定剤A:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製光安定剤 「chimassorb944」
・エチレン・環状アミノビニル共重合体:日本ポリエチレン社製「ノバテックLD・XJ100H」(MFR=3g/10分、密度=0.931g/cm3、 融点=111℃)
<基材フィルムの各層の配合>
内層:LDPE(10質量部)、Me−PE(90質量部)、エチレン・環状アミノビニル共重合体(6質量部)
中間層:LDPE(2質量部)、EVA1(98質量部)、合成ハイドロタルサイトA(6質量部)、紫外線吸収剤A(0.06質量部)、光安定剤A(0.4質量部)
外層:LDPE(10質量部)、EVA2(90質量部)、エチレン・環状アミノビニル共重合体(6質量部)
(2)フィルムの表面処理
得られた基材フィルムのハウス内層側にあたる表面(外層)を、放電電圧120V、放電電流4.7A、ラインスピード10m/minでコロナ放電処理を行った。濡れ指数は、46dyn/cmとした(JIS−K6768)。
(3)防曇組成物の分散液(防曇剤組成物)の調製
分散媒として水とイソプロピルアルコールを用いて、合成樹脂(A)、無機化合物(B)、ポリエチレングリコール(C)を表1のように配合し、固形分濃度10質量%、水:イソプロピルアルコール=60:40(質量比)となるよう調整し、分散液を調製した。
<防曇組成物に使用した材料>
<合成樹脂(A)>
合成樹脂(A):日本NSC(株)製「A−612」(疎水性アクリル系樹脂)
<無機化合物(B)>
無機質コロイドゾル(B):日産化学工業(株)製「スノーテックス20L」(コロイダルシリカ)
<ポリエチレングリコール(C)>
ポリエチレングリコール(C−1):ナカライテスク(株)製「PEG#200」(PEG重量平均分子量:200)
ポリエチレングリコール(C−2):ナカライテスク(株)製「PEG#300」(PEG重量平均分子量:300)
ポリエチレングリコール(C−3):ナカライテスク(株)製「PEG#400」(PEG重量平均分子量:400)
ポリエチレングリコール(C−4):ナカライテスク(株)製「PEG#600」(PEG重量平均分子量:600)
ポリエチレングリコール(C−5):ナカライテスク(株)製「PEG#1000」(PEG重量平均分子量:1000)
ポリエチレングリコール(C−6):ナカライテスク(株)製「PEG#1540」(PEG重量平均分子量:1540)
ポリエチレングリコール(C−7):ナカライテスク(株)製「PEG#4000」(PEG重量平均分子量:4000)
ポリエチレングリコール(C−8):ナカライテスク(株)製「PEG#6000」(PEG重量平均分子量:6000)
ポリエチレングリコール(C−9):ナカライテスク(株)製「PEG#20000」(PEG重量平均分子量:20000)
(4)塗膜の形成
(1)の基材フィルムを(2)の方法で表面処理し、(3)の防曇剤組成物分散液をそれぞれ#8バーコーターを用いて塗布した。塗布したフィルムを80℃のオーブン中に1分間保持して、液状分散媒を揮発させ防曇組成物の層を形成した。
表1に示す配合で作製した各サンプルを使用し、以下の評価を行った。
<防曇性の評価>
水を入れた水槽の上部に、得られた各サンプルの防曇組成物の層を形成した表面を水槽内部側に配置し、外気温23℃、水槽内水温50℃に設定し、1ヶ月養生した後、防曇性の評価を行った。
<評価方法>
水を入れた水槽の上部に、防曇組成物の層側を水槽内部に向けて地表水平面に対して10度の角度で配置し、外気温を12℃、水槽内気温を22℃に保持し、水滴が流れ始める迄の時間を測定した結果を表1に示す。また、得られた結果の評価は以下の基準で実施した。
◎:水滴が流れ始める迄の時間が180分以下。
○:水滴が流れ始める迄の時間が180分より長く240分以下。
×:水滴が流れ始める迄の時間が240分より長いもの。
Figure 2017115045
(注)(C)の成分の数値は、(A)と(B)の合計100質量部に対する質量部を示す。
実施例1〜9の結果より、平均分子量が5800以下のポリエチレングリコール(C)を含有した組成物の防曇性能は優れる結果となった。
一方、本発明に規定する平均分子量を外れるポリエチレングリコールを含有した比較例1〜6は、防曇性能が劣る結果となった。
以上の結果から明らかなように、本発明に規定する防曇組成物は、防曇性が良好となり、かつ水滴が流れ落ちる時間が早い結果となった。

Claims (5)

  1. 合成樹脂(A)、無機化合物(B)及びポリエチレングリコール(C)を含有し、前記ポリエチレングリコール(C)の重量平均分子量は、5800以下であることを特徴とする防曇組成物。
  2. 前記ポリエチレングリコール(C)の含有量は、合成樹脂(A)と無機化合物(B)の合計100質量部に対して5質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の防曇組成物。
  3. 基材フィルム、及び当該基材フィルムの少なくとも片面側に設けられた請求項1または2に記載の防曇組成物からなる層を備えることを特徴とする防曇性フィルム。
  4. 前記基材フィルムがポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の防曇性フィルム。
  5. 農業用途であることを特徴とする請求項3または4に記載の防曇性フィルム。
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