JP2017114971A - 筆記具用水性インキ組成物および水性インキ製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明による水性インキ製品は、
上記インキ組成物をインキ保管容器に収容してなるものであって、
前記インキ保管容器が、インキを分取するための開閉口を有し、該インキ保管容器から分取された前記インキが、くし溝を利用したインキ供給機構を有する筆記具に充填して使用されることを特徴とするものである。
【選択図】なし
Description
しかしながら、インキ組成物に同一の抗菌性物質を使用し続けた場合、抗菌性物質に耐性を持つ微生物(以下、耐性菌という)が発生して繁殖する可能性があり、保存安定性の改良に余地があった。
しかしながら、特許文献4および5において開示されるインキ組成物は、耐性菌に対する抗菌性能や、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダアルビカンス、コウジカビ(黒カビ)への抗菌性能が十分ではなく、改良の余地があった。
例えば、インキ保管容器に収容されていた従来のインキ組成物を万年筆で利用した場合、抗菌性能が十分ではないため、インキ供給機構に、微生物の繁殖などに起因する析出物や凝集物などの異物が生じてしまい、インキ組成物を供給する流路が狭くなることがある。この結果、インキの供給量が少なくなり、筆跡がかすれるなど、筆記性が影響を受ける可能性がある。さらに、異物の量が増加したり凝集物などが大きくなると、インキを供給する流路が異物などにより塞がれ、インキを供給することができなくなり、筆記不能となる可能性がある。また、異物の発生量が少ないインキ組成物であっても、万年筆などのインキを繰返し充填して使用する筆記具に用いた場合、使用開始時は筆記性が良好であるが、充填と使用を繰り返すことにより、インキを供給する流路に異物が徐々に堆積し、筆記性への影響が大きくなっていく。さらに充填と使用を繰り返すと、該流路への異物の堆積がさらに進行し、流路が塞がれ、やはり筆記不能となる可能性がある。
前記水性インキ組成物が、前記抗菌性物質として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマートおよび1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを含んでなることを特徴とする。
上記インキ組成物をインキ保管容器に収容してなるものであって、
前記インキ保管容器が、インキを分取するための開閉口を有し、該インキ保管容器から分取された前記インキが、くし溝を利用したインキ供給機構を有する筆記具に充填して使用されることを特徴とするものである。
本発明による筆記具用水性インキ組成物は、水と、染料と、抗菌性物質と、を含んでなる。
本発明による水性インキ組成物は、必須の抗菌性物質として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、場合によりMITと表す。)、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマート(以下、場合によりIPBCと表す。)および1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(以下、場合によりBITと表す。)を含んでなる。
なお、本発明において、「抗菌性物質」とは、微生物を死滅させる能力または増殖を抑える能力を有する物質のことであり、抗菌剤、殺菌剤、防かび剤および防腐剤と同義である。また、抗菌性物質としては、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3オン、N−(n−ブチル)−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール及びフェノールなどが挙げられる。
また、IPBCの添加量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、1〜200ppmであることが好ましく、1〜120ppmであることがより好ましく、1〜70ppmであることがさらに好ましい。
さらに、BITの添加量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、1〜200ppmであることが好ましく、1〜100ppmであることがより好ましく、1〜50ppmであることがさらに好ましい。
なお、「ppm」とは「part per million」の略称であり、100万分の1の濃度を表す単位である。以下、本発明においては、単位「ppm」は水性インキ組成物の総質量を基準とする。
MITの配合比が上記範囲より小さい場合、IPBC耐性菌に対する効果が下がる傾向にあり、MITの配合比が上記範囲より大きい場合、MIT耐性菌に対する効果が下がる傾向にある。
本発明において用いることができる染料としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、直接染料、分散染料および食用色素など各種染料が挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。染料の添加量は、インキ組成物の総質量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
特に、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92などのフルオレセイン骨格を有する染料においては、従来の抗菌性物質との組み合わせにより、インキ組成物において析出物が発生する可能性が高かった。
本発明においては、インキ組成物が、特定の抗菌性物質を含んでなることにより、このような染料を使用した場合であっても、析出物の発生を抑制することができる。
このため、筆記性、経時安定性に優れたインキ組成物を実現することができ、筆記具用水性インキ組成物としての効果を十分に得ることができるようになる。このように、本発明においては、特定の抗菌性物質を用いることで、従来の抗菌性物質との組み合わせでは、析出物を抑制しにくく、実用が困難であった染料を使用することが可能となるため、インキ組成物の材料としての染料の選択範囲が広がることとなる。
水としては、特に制限はなく、例えば、イオン交換水、限外ろ過水または蒸留水などを用いることができる。
本発明による水性インキ組成物は、インキ物性や機能を向上させる目的で、水溶性有機溶剤、pH調整剤、保湿剤、防錆剤などの各種添加剤を含んでもよい。
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
本発明による水性インキ製品は、本発明のインキ組成物をインキ保管容器に収容してなり、インキ保管容器がインキを分取するための開閉口を有し、インキ保管容器から分取されたインキ組成物が、くし溝を利用したインキ供給機構を有する筆記具に充填され使用されることを特徴とする。
下記の配合組成および方法により、インキ組成物を得た。
(筆記具用水性インキ組成物)
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT) 0.01質量%
(100ppm相当量)
・3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマート(IPBC) 0.005質量%
(50ppm相当量)
・1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT) 0.005質量%
(50ppm相当量)
・C.I.アシッドブルー90(着色剤:青色染料) 0.5質量%
・C.I.ダイレクトブルー87(着色剤:青色染料) 0.5質量%
・エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 2.0質量%
・トリエタノールアミン(pH調整剤) 1.0質量%
・イオン交換水 残部
イオン交換水に水溶性有機溶剤、pH調整剤、抗菌性物質を添加し、プロペラ攪拌により混合してベース液を得た。その後、ベース液に染料を添加し、プロペラ攪拌により混合して、インキ組成物を得た。
比較例1〜3は、インキ組成物に含まれる抗菌性物質の種類、配合量、配合比を表1において表される組成に変更した以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。なお、比較例4として生理食塩水をインキ組成物の比較対象に用いた。
実施例1および比較例1〜4のインキ組成物中に、アスペルギルスsp.(BIT耐性菌)を1mlあたり約1.0×106個になるように接種し、接種直後、3日間放置後、14日間放置後の各インキ組成物を試験インキとした。この各試験インキをポテトデキストロース寒天培地による塗抹平板法にて28℃で7日間培養し、その時、残存した菌数から抗菌性能を評価した。評価結果を表1に表した。
実施例1および比較例1〜5のインキ組成物の安全性を以下の評価基準に従い、
評価した。評価結果を表1に表した。
A:抗菌性物質添加量が、250ppm以下である。
B:抗菌性物質添加量が、250〜400ppmである。
C:抗菌性物質添加量が、400ppm以上である。
実施例1のインキ組成物に含まれるC.I.アシッドブルー90(着色剤:青色染料)およびC.I.ダイレクトブルー87(着色剤:青色染料)をC.I.アシッドレッド87(着色剤:赤色染料)およびC.I.アシッドイエロー42(着色剤:黄色染料)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインキ組成物を得た。
実施例2のインキ組成物について、日本薬局方参考情報収載の「保存効力試験法」に基づいて、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダアルビカンス、黒カビを用いて試験を実施した。評価結果を表2に表した。また、比較対象として、生理食塩水を用いて、実施例2のインキ組成物と同様に保存効力を試験した。(比較例5)
実施例2と同様にして実施例3のインキ組成物を調製した。また、実施例2のIPBCに変えて、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、場合により「OIT」と表す。)を添加した比較例6のインキ組成物を調製した。これらのインキ組成物を50℃で14日間放置したところ、比較例6のインキ組成物には析出物が発生したが、実施例3のインキ組成物には析出物は確認されなかった。
Claims (7)
- 水と、染料と、抗菌性物質と、を含んでなる筆記具用水性インキ組成物であって、
前記水性インキ組成物が、前記抗菌性物質として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマートおよび1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを含んでなることを特徴とする、筆記具用水性インキ組成物。 - 前記インキ組成物の総質量に対する前記抗菌性物質の総添加量が、20〜250ppmである、請求項1に記載のインキ組成物。
- 2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマートとの配合比が、質量比で10:1〜1:10である、請求項1または2に記載のインキ組成物。
- 1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンと、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマートとの総量との配合比が、質量比で10:1〜1:10である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインキ組成物。
- 前記染料が、フルオレセイン骨格を有する染料である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインキ組成物。
- くし溝を利用したインキ供給機構を備える筆記具に充填されて用いられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインキ組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のインキ組成物をインキ保管容器に収容してなる水性インキ製品であって、
前記インキ保管容器が、前記インキ組成物を分取するための開閉口を有し、前記インキ保管容器から分取された前記インキ組成物が、くし溝を利用したインキ供給機構を有する筆記具に充填して使用されることを特徴とする、水性インキ製品。
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