<第一実施形態>
以下、本発明による移動体の第一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態における移動体として、図1に示す電動車椅子1を例に挙げて説明する。なお、本明細書においては説明の便宜上、図1における上側および下側をそれぞれ電動車椅子1の上方および下方とし、同じく左下側および右上側をそれぞれ電動車椅子1の前方および後方とし、同じく左上側および右下側を、それぞれ電動車椅子1の右方および左方として説明する。また、図1には、各方向を示す矢印を示している。
電動車椅子1は、図1および図2に示すように、車椅子本体10、駆動装置20、操作装置30、解除要求検出装置40、検知装置50および制御装置60を備えている。電動車椅子1は、乗員による操作装置30への入力に従って駆動される駆動装置20によって走行する移動体である。駆動装置20、操作装置30、解除要求検出装置40、検知装置50および制御装置60は、車椅子本体10に取り付けられている。
車椅子本体10は、フレーム11、乗員が着座する座席12および車輪13を備えている。座席12および車輪13は、フレーム11に取り付けられている。車輪13は、回転軸回りに回転可能に構成されている。車輪13は、車椅子本体10の左右両側に配設され、駆動装置20によって駆動される左駆動輪13aおよび右駆動輪13b、並びに、電動車椅子1の走行を補助する左補助輪13cおよび右補助輪13dを備えている。
駆動装置20は、各駆動輪13a,13bをそれぞれ回転駆動させて、電動車椅子1を走行させるものである。駆動装置20は、例えば、電動モータ(図示なし)と減速機(図示なし)とを組み合わせることにより構成されている。駆動装置20は、各駆動輪13a,13bにそれぞれ1つずつ(合計2つ)設けられている。
操作装置30は、電動車椅子1の直進速度vおよび旋回速度wを指示するために乗員によって操作されるものである。直進速度vは、電動車椅子1の前方向(正面方向)における電動車椅子1の速度である。旋回速度wは、電動車椅子1の位置する場所において、電動車椅子1が電動車椅子1の重心を中心に旋回する角速度である。本実施形態において、操作装置30は、ジョイスティックである。操作装置30は、図2に示すように、レバー部31およびレバー部31を傾斜可能に支持する台座部32を備えている。
操作装置30は、図2に破線にて示す操作されていない位置(以下、ニュートラル位置とする。)において、レバー部31が鉛直方向に起立した状態で位置決めされている。操作装置30は、レバー部31がニュートラル位置から乗員に傾けられることにより操作される。レバー部31が操作された状態は、図3に示すように、操作装置30を水平面と平行なXY平面に投影したときにおける操作装置30の先端の座標によって表すことができる。X軸は、電動車椅子1の前後方向と同じであり、X軸の正の方向は、電動車椅子1の前方向と同じ方向である。Y軸は、電動車椅子1の左右方向と同じであり、Y軸の正の方向は、電動車椅子1の右方向と同じ方向である。X座標の値は、乗員が所望する電動車椅子1の直進速度である所望直進速度xjsである。Y座標の値は、乗員が所望する電動車椅子1の旋回速度である所望旋回速度yjsである。所望直進速度xjsおよび所望旋回速度yjsは、操作装置30に入力された情報である入力情報として、制御装置60に第一所定時間毎に出力される。第一所定時間は、例えば、1/25秒である。
解除要求検出装置40は、乗員の操作により、解除要求の強さを検出するものである。解除要求は、後述する電動車椅子1の走行の抑制に対する解除の要求である。解除要求検出装置40は、解除要求の強さを、後述する押付荷重の大きさによって検出する。すなわち、押付荷重が大きくなるにしたがって、解除要求の強さが大きいと検出される。解除要求検出装置40は、突起部41および荷重検出部42を備えている。
突起部41は、図2に示すように、レバー部31の下端部に前方に向けて突出するように形成されている。
荷重検出部42は、台座部32において、レバー部31が前方に向けて傾けられたときに、突起部41が接触可能な位置に設けられている。荷重検出部42は、突起部41が接触した時、突起部41からの荷重を検出する。この荷重は、乗員がレバー部31を前方に傾斜させて、突起部41を荷重検出部42に押し付けるように操作した時の操作荷重(以下、押付荷重とする。)である。荷重検出部42は、例えばひずみゲージ式荷重センサである。荷重検出部42は、検出結果を制御装置60に送信する。
検知装置50は、電動車椅子1周辺の被検知物を検知するものである。検知装置50は、3次元測域センサ(レーザーレンジスキャナー(3Dスキャナー))である。検知装置50は、検知部51からレーザーを水平方向および上下方向に(三次元的に)発射して、被検知物からの反射波を検知部51にて受信することにより、被検知物の有無および検知部51から被検知物までの距離を被検知物情報として取得する。検知装置50は、レーザーを電動車椅子1の前方に放射状に発射する。検知装置50は、例えば、第一所定時間毎に被検知物情報を取得する。検知装置50が取得した被検知物情報は、制御装置60に出力される。
制御装置60は、入力情報に基づいて、駆動装置20の駆動量を制御して電動車椅子1を走行させるものである。制御装置60は、図4に示すように、駆動装置20、操作装置30、解除要求検出装置40および検知装置50が接続されている。制御装置60は、走行制御部61および衝突抑制制御部62を備えている。
走行制御部61は、電動車椅子1を走行させる走行制御を行うものである。走行制御部61は、直進速度導出部61a、旋回速度導出部61bおよび駆動量制御部61cを備えている。
直進速度導出部61aは、電動車椅子1の直進速度vを導出するものである。直進速度導出部61aには、操作装置30から入力情報である所望直進速度xjsを取得して、直進速度vに変換する。直進速度導出部61aは、具体的には、取得した所望直進速度xjsから、図5Aに示す第一マップM1に基づいて、直進速度vを導出する。第一マップM1は、所望直進速度xjsと直進速度vとの関係を示したものである。第一マップM1は、所望直進速度xjsと直進速度vとが、比例する比例部mv1と、所望直進速度xjsの大きさにかかわらず直進速度vが一定の値である不感部mv2備えている。直進速度vが正である場合、電動車椅子1が前進する。一方、直進速度vが負である場合、電動車椅子1が後退する。直進速度導出部61aは、導出した直進速度vを駆動量制御部61cに出力する。
旋回速度導出部61bは、電動車椅子1の旋回速度wを導出するものである。旋回速度導出部61bは、操作装置30から入力情報である所望旋回速度yjsを取得して、旋回速度wに変換する。旋回速度導出部61bは、具体的には、取得した所望旋回速度yjsから、図5Bに示す第二マップM2に基づいて、旋回速度wを導出する。第二マップM2は、所望旋回速度yjsと旋回速度wとの関係を示したものである。第二マップM2は、所望旋回速度yjsと旋回速度wとが比例する比例部mw1と、所望旋回速度yjsの大きさにかかわらず旋回速度wが一定の値である不感部mw2を備えている。旋回速度wが正である場合、電動車椅子1が右旋回する。一方、旋回速度wが負である場合、電動車椅子1が左旋回する。旋回速度導出部61bは、導出した旋回速度wを駆動量制御部61cに出力する。
駆動量制御部61cは、直進速度導出部61aから取得した直進速度vおよび旋回速度導出部61bから取得した旋回速度wに基づいて、駆動装置20の駆動量(回転数)を制御する。駆動量制御部61cは、取得した直進速度vおよび旋回速度wに基づいて、左駆動輪13aの回転速度および右駆動輪13bの回転速度を導出する。各駆動輪13a,13bの回転速度の大きさが、直進速度vの大きさに比例するように、かつ、左駆動輪13aの回転速度と右駆動輪13bとの回転速度の差の大きさが、旋回速度wの大きさに比例するように、各駆動輪13a,13bの回転速度が導出される。直進速度vおよび旋回速度wと各駆動輪13a,13bの回転速度との関係は、予め実験等により実測されて導出されている。なお、駆動装置20がPWM制御されているため、駆動装置20の制御指令値は、デューティ比にて算出される。また、駆動量制御部61cは、駆動量抑制部61c1を備えている。駆動量抑制部61c1は、衝突抑制制御部62からの制御指令によって、駆動装置20の駆動量を抑制する(後述する)。
衝突抑制制御部62は、電動車椅子1と被検知物との衝突を抑制する衝突抑制制御を行うものである。衝突抑制制御部62は、図4に示すように、進路予測部62a、基準抑制領域設定部62b、縮小抑制領域設定部62c、解除要求取得部62d、領域切替部62eおよび障害物有無判定部62fを備えている。
進路予測部62aは、操作装置30からの入力情報(所望直進速度xjsおよび所望旋回速度yjs)に基づいて、電動車椅子1の進路を予測するものである。進路予測部62aは、図6に示すように、極座標C上にて、電動車椅子1の進路を予測する。極座標Cは、水平面と平行に配設され、電動車椅子1の前端中央位置を原点C0とするとともに、図6の上側を電動車椅子1の前方とした極座標である。極座標Cの角度範囲は、検知装置50が被検知物を検知可能な角度範囲に相当する。極座標Cは、径方向および周方向に所定間隔(例えば、径方向に1m間隔および周方向に5°間隔)に区画された複数のグリッドGを有している。
進路予測部62aが予測する電動車椅子1の進路である予測進行領域Wyは、具体的には、制御装置60が入力情報を取得した時点から第二所定時間(例えば5秒)経過した時点までの電動車椅子1の移動軌跡にて示される。すなわち、予測進行領域Wyの幅は、電動車椅子1の幅に相当する。予測進行領域Wyは、直進速度vおよび旋回速度wから、予め実験等により実測されて導出された所定の関数に基づいて生成される。予測進行領域Wyは、制御装置60が操作装置30からの入力情報を取得する第一所定時間毎に生成(更新)される。
また、極座標Cの領域のうち、予測進行領域Wyの両側の領域は、周辺領域Rsとして生成される。
基準抑制領域設定部62bは、検知装置50によって検知された被検知物が領域内に位置する時に、電動車椅子1の走行が抑制される抑制領域であって、基準となる基準抑制領域Rbを設定するものである。基準抑制領域Rbは、図7に示すように、予測進行領域Wyに沿って延び、かつ、予測進行領域Wyの幅より大きくかつ、基準値となる基準幅Bbが設定された扇状に設定される。基準抑制領域Rbの形状は、入力情報の変化による予測進行領域Wyの変化に応じて変化する。図7に示す基準抑制領域Rbの形状は、予測進行領域Wyが前方に向けて真直ぐに延びているときの形状である。検知装置50によって検知された被検知物が基準抑制領域Rb内に位置した時に、電動車椅子1の走行が抑制される(後述する)。基準抑制領域設定部62bによって設定された基準抑制領域Rbは、領域切替部62eに出力される。
縮小抑制領域設定部62cは、基準抑制領域設定部62bによって設定された基準抑制領域Rbに対して、縮小された抑制領域である縮小抑制領域Rr1,Rr2を設定するものである。縮小抑制領域設定部62cは、第一縮小抑制領域Rr1および第二縮小抑制領域Rr2を設定する。第一縮小抑制領域Rr1は、図8に示すように、予測進行領域Wyに沿って延び、かつ、第一幅Brが設定された扇状に設定される。第一幅Brは、予測進行領域Wyの幅と基準幅Bbとの間の値に設定されている。すなわち、第一縮小抑制領域Rr1は、基準抑制領域Rb内に含まれる領域である。第一縮小抑制領域Rr1の形状は、入力情報の変化による予測進行領域Wyの変化に応じて変化する。図8に示す第一縮小抑制領域Rr1の形状は、予測進行領域Wyが前方に向けて真直ぐに延びているときの形状である。
また、第二縮小抑制領域Rr2は、予測進行領域Wyと同じ領域に設定される。すなわち、基準抑制領域Rb、第一縮小抑制領域Rr1、第二縮小抑制領域Rr2の順に、幅が段階的に狭くなるように設定されている。検知装置50によって検知された被検知物が各縮小抑制領域Rr1,Rr2内に位置した時に、電動車椅子1の走行が抑制される(後述する)。縮小抑制領域設定部62cによって設定された各縮小抑制領域Rr1,Rr2は、領域切替部62eに出力される。このように、本第一実施形態の抑制領域は、基準抑制領域Rb、第一縮小抑制領域Rr1および第二縮小抑制領域Rr2の三つの抑制領域が設定されている。
解除要求取得部62dは、解除要求の強さを取得するものである。解除要求取得部62dは、具体的には、荷重検出部42によって検出された乗員の押付荷重を取得する。解除要求取得部62dによって取得された押付荷重は、領域切替部62eに出力される。
領域切替部62eは、解除要求検出装置40(解除要求取得部62d)によって検出された解除要求の強さおよび障害物有無判定部62fの判定結果に基づいて、基準抑制領域設定部62bによって設定された基準抑制領域Rbから、縮小抑制領域設定部62cによって設定された縮小抑制領域Rr1,Rr2に切替えるものである。領域切替部62eは、具体的には、障害物の有無、および、解除要求取得部62dからの押付荷重の大きさに基づいて、基準抑制領域Rbから、各縮小抑制領域Rr1,Rr2に切替える。領域切替部62eは、本実施形態においては、後述する領域切替制御によって基準抑制領域Rbと各縮小抑制領域Rr1,Rr2とを切替える(選択する)。領域切替部62eによって切替えられた各縮小抑制領域Rr1,Rr2は、障害物有無判定部62fに出力される。また、領域切替部62eが基準抑制領域Rbを切替えない場合、基準抑制領域Rbが障害物有無判定部62fに出力される。
障害物有無判定部62fは、検知装置50によって検知された被検知物情報および領域切替部62eからの抑制領域に基づいて、障害物の有無を判定するものである。障害物は、抑制領域内に位置する被検知物である。すなわち、障害物有無判定部62fは、検知装置50によって検知された被検知物が、領域切替部62eからの抑制領域内に位置する場合、障害物が有ると判定する。一方、障害物有無判定部62fは、検知装置50によって検知された被検知物が、領域切替部62eからの抑制領域内に位置しない(すなわち、抑制領域外に位置する)場合、障害物が無いと判定する。
障害物有無判定部62fが行う障害物の有無を判定する障害物有無判定制御について説明する。はじめに、検知装置50からの被検知物情報が、極座標Cに投影される。被検知物情報は、被検知物の三次元位置情報を表す複数の点Pから構成された点群PGの座標データである。図7および図8に示すように、極座標Cに投影された点群PGの点Pの個数が所定個数以上であるグリッドGが、被検知物が存在するグリッドGである被検知物グリッドとされる。所定個数は、例えば3個である。被検知物グリッドと抑制領域とが重なる場合、障害物有無判定部62fは、障害物が有ると判定する。具体的には、図7に示すように、検知装置50からの被検知情報に基づいて三つの被検知物グリッドGk1,Gk2,Gk3があり、かつ、抑制領域が基準抑制領域設定部62bによって設定された基準抑制領域Rbである場合において、二つの被検知物グリッドGk2,Gk3が基準抑制領域Rbと重なっているとき、障害物有無判定部62fは、障害物が有ると判定する。
一方、被検知物グリッドと抑制領域とが重なっていない場合、障害物有無判定部62fは、障害物が無いと判定する。具体的には、図8に示すように、検知装置50からの被検知情報に基づいて三つの被検知物グリッドGk1,Gk2,Gk3があり、かつ、抑制領域が縮小抑制領域設定部62cによって設定された第一縮小抑制領域Rr1である場合において、三つの被検知物グリッドGk1,Gk2,Gk3が第一縮小抑制領域Rr1と重なっていないとき、障害物有無判定部62fは、障害物が無いと判定する。なお、被検知物情報が第一所定時間毎に取得されるため、障害物有無判定部62fによる障害物の有無の判定は、第一所定時間毎に行われる。障害物有無判定部62fの判定結果は、領域切替部62eおよび駆動量抑制部61c1に出力される。
駆動量抑制部61c1は、障害物有無判定部62fによって障害物が有ると判定されている間、電動車椅子1の走行を抑制するものである。駆動量抑制部61c1は、具体的には、駆動装置20の駆動量を抑制するものである。駆動量制御部61cは、本実施形態においては、駆動装置20の最大駆動量を抑制する。これにより、直進速度vの最高速度が抑制される。駆動量抑制部61c1は、障害物有無判定部62fによって障害物が有ると判定されている間、直進速度vの最高速度を最高直進速度vxに抑制する。最高直進速度vxは、電動車椅子1(電動車椅子1の前端中央(原点C0))から抑制領域内に位置する被検知物までの最短距離Dmin(図7参照)から、図9に示す第三マップM3に基づいて導出される。最短距離Dminは、被検知物情報から導出することができる。最短距離Dminは、障害物有無判定部62fにより障害物が有ると判定されている間、駆動量抑制部61c1によって導出される。第三マップM3は、最短距離Dminと最高直進速度vxとの関係を示したものである。最短距離Dminと最高直進速度vxとの関係は、最短距離Dminが短くなるに従って、最高直進速度vxが小さくなるように設定されている。一方、駆動量抑制部61c1は、障害物有無判定部62fによって障害物が無いと判定された場合において、電動車椅子1の走行が抑制されているときは、その抑制を解除する。
次に、制御装置60が電動車椅子1を走行させる走行制御について説明する。乗員が操作装置30を操作することにより、操作装置30からの入力情報を制御装置60が取得した時点から、制御装置60は、走行制御を開始する。上述したように、操作装置30からの入力情報に基づいて、直進速度導出部61aが直進速度vを導出するとともに、旋回速度導出部61bが旋回速度wを導出する。直進速度導出部61aおよび旋回速度導出部61bの導出結果に基づいて、駆動量制御部61cが駆動装置20の駆動量を制御して、電動車椅子1を走行させる。制御装置60が走行制御を行っている際に、乗員が操作装置30の位置をニュートラル位置にした場合、直進速度vおよび旋回速度wがゼロとなることで、電動車椅子1が停止する。この場合、制御装置60の走行制御が終了する。
次に、制御装置60が行う衝突抑制制御について、図10に示すフローチャートに沿って説明する。衝突抑制制御は、電動車椅子1の走行制御中において、抑制領域内に被検知物が有る場合、電動車椅子1の走行速度を抑制して、乗員が被検知物を回避するための操作時間に余裕を持たせることで、電動車椅子1と被検知物との衝突を抑制する制御である。なお、走行開始時において、抑制領域は、基準抑制領域Rbに設定されている。
走行制御が開始された場合、制御装置60は、ステップS102にて、電動車椅子1の進路を予測する(進路予測部62a)。制御装置60は、ステップS104にて、基準抑制領域Rbおよび各縮小抑制領域Rr1,Rr2を設定する(基準抑制領域設定部62b,縮小抑制領域設定部62c)。そして、制御装置60は、ステップS106にて、領域切替制御を実行する(領域切替部62e)。領域切替制御について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。
制御装置60は、ステップS202にて、障害物があるか否かを判定する(障害物有無判定部62f)。障害物が無いと判定されている場合、制御装置60は、ステップS202にて「NO」と判定する。そして、制御装置60は、ステップS204にて、抑制領域を基準抑制領域Rbにして、領域切替制御を終了する。障害物が無いと判定されている場合、電動車椅子1の走行の抑制が行われないため(駆動量抑制部61c1)、電動車椅子1の走行と、乗員が意図する走行との間のギャップ(以下、走行ギャップとする。)が生じていない。よって、抑制領域は、最も領域が大きい基準抑制領域Rbにされる。一方、障害物が有ると判定されている場合(障害物有無判定部62f)、制御装置60は、ステップS202にて「YES」と判定し、プログラムをステップS206に進める。
制御装置60は、ステップS206にて、解除要求の強さが第一解除要求判定値以下であるか否かを判定する。制御装置60は、具体的には、押付荷重が第一解除要求判定値以下であるか否かを判定する。第一解除要求判定値は、走行ギャップが非常に小さい場合の押付荷重に設定されている。第一解除要求判定値は、例えば、1Nである。走行ギャップが非常に小さいか、走行ギャップが無い場合、押付荷重が非常に小さい。この場合、押付荷重が第一解除要求判定値以下であるとき、制御装置60は、ステップS206にて「YES」と判定する。そして、制御装置60は、ステップS204にて抑制領域を基準抑制領域Rbにして、領域切替制御を終了する。
一方、走行ギャップが比較的大きい場合、押付荷重が比較的大きくなる。この場合、押付荷重が第一解除要求判定値より大きいとき、制御装置60は、ステップS206にて「NO」と判定し、プログラムをステップS208に進める。
制御装置60は、ステップS208にて、解除要求の強さ(押付荷重)が第二解除要求判定値以下であるか否かを判定する。第二解除要求判定値は、第一解除要求判定値より大きい値(例えば10N)に設定されている。走行ギャップが比較的大きい場合において、押付荷重が第二解除要求判定値以下であるとき、制御装置60は、ステップS208にて「YES」と判定する。そして、制御装置60は、ステップS210にて、抑制領域を第一縮小抑制領域Rr1にして、領域切替制御を終了する。一方、走行ギャップが比較的大きい場合において、押付荷重が第二解除要求判定値より大きいとき、制御装置60は、ステップS208にて「NO」と判定する。そして、制御装置60は、ステップS212にて、抑制領域を第二縮小抑制領域Rr2にして、領域切替制御を終了する。
図10のフローチャートに戻って説明を続ける。
制御装置60は、ステップS108にて障害物があるか否かを判定する。領域切替制御によって切替えられた抑制領域内に被検知物が位置する場合、障害物が有ると判定される(障害物有無判定部62f)。この場合、制御装置60は、ステップS108にて「YES」と判定し、ステップS110にて電動車椅子1の走行を抑制する(駆動量抑制部61c1)。そして、プログラムをステップS102に戻す。
一方、領域切替制御によって切替えられた抑制領域外に被検知物が位置する(抑制領域内に被検知物が位置していない)場合、障害物が無いと判定される(障害物有無判定部62f)。この場合、制御装置60は、ステップS108にて「NO」と判定し、ステップS112にて電動車椅子1の走行が抑制されているか否かを判定する。電動車椅子1の走行の抑制がされていない場合、制御装置60は、ステップS112にて「NO」と判定し、プログラムをステップS102に戻す。一方、電動車椅子1の走行の抑制が既にされている場合、制御装置60は、ステップS112にて「YES」と判定し、ステップS114にて電動車椅子1の走行の抑制を解除して(駆動量抑制部61c1)、プログラムをステップS102に戻す。
次に、上述したフローチャートに沿って電動車椅子1が動作した場合について説明する。乗員が操作装置30のレバー部31を前方に向けて傾斜させていることにより、電動車椅子1が、走行を抑制されていないときの最高速度(例えば時速10km)にて走行している場合について説明する。このとき、予測進行領域Wyが前方に向けて真直ぐに形成される(ステップS102;進路予測部62a)。そして、予測進行領域Wyに基づいて、基準抑制領域Rbおよび縮小抑制領域Rr1,Rr2が設定され(ステップS104、基準抑制領域設定部62b,縮小抑制領域設定部62c)、障害物が無いと判定されている時には、抑制領域が基準抑制領域Rbとされる(ステップS106;領域切替部62e)。
このとき、検知装置50によって被検知物が検知され、図7に示すように、被検知物が基準抑制領域Rbに位置した場合、電動車椅子1と被検知物との最短距離Dminに応じて、直進速度vの最高速度が抑制される(ステップS110;駆動量抑制部61c1)。抑制された直進速度vにて電動車椅子1が走行している場合において、被検知物が例えば静止物であり、乗員が、抑制された直進速度vより速く走りたいと感じたとき、走行ギャップが生じている。このとき、乗員が、電動車椅子1の走行の抑制に対して解除要求するため、レバー部31を前方にさらに傾斜させる。これによって、押圧荷重が、第一解除要求判定値と第二解除要求判定値との間の荷重となった場合、図8に示すように、基準抑制領域Rbが第一縮小抑制領域Rr1に切替わる(ステップS106;領域切替部62e)。
これにより、被検知物が第一縮小抑制領域Rr1外に位置するため、電動車椅子1の走行の抑制が解除される(ステップS114;駆動量抑制部61c1)。よって、乗員は、電動車椅子1を、抑制されていない速度にて走行させることができる。このように、走行ギャップを抑制することにより、乗員の意図を反映した電動車椅子1の走行の抑制が行われる。
なお、基準抑制領域Rbが第一縮小抑制領域Rr1に切替わった場合においても(ステップS106;領域切替部62e)、被検知物が第一縮小抑制領域Rr1内に位置するとき、電動車椅子1の走行が抑制される(ステップS110;駆動量抑制部61c1)。また、乗員の解除要求の強さが比較的大きくなり、抑制領域が第二縮小抑制領域Rr2となった場合においても、被検知物が第二縮小抑制領域Rr2内に位置するとき、電動車椅子1の走行が抑制される。このように、乗員による解除要求がある場合においても、被検知物が抑制領域内に位置するときには、電動車椅子1の走行が抑制される。よって、被検知物と電動車椅子1との衝突が抑制される。さらに、乗員の意図に反して押圧荷重が比較的大きくなった場合や、操作装置30、解除要求検出装置40および制御装置60が故障した際において、解除要求の強さが各解除要求判定値より大きくなった場合においても、被検知物が抑制領域内に位置するときには、電動車椅子1の走行が抑制される。したがって、これらのような場合においても、被検知物と電動車椅子1との衝突が抑制される。
本第一実施形態によれば、電動車椅子1は、乗員による操作装置30への入力に従って駆動される駆動装置20によって走行する電動車椅子1である。電動車椅子1は、電動車椅子1の周辺の被検知物を検知する検知装置50と、操作装置30に入力された情報である入力情報に基づいて、駆動装置20の駆動量を制御して電動車椅子1を走行させる制御装置60と、を備えている。制御装置60は、検知装置50によって検知された被検知物が領域内に位置する時に、電動車椅子1の走行が抑制をされる抑制領域であって、基準となる基準抑制領域Rbを設定する基準抑制領域設定部62bと、乗員の意思に基づいて、基準抑制領域設定部62bによって設定された基準抑制領域Rbに対して、縮小された抑制領域である縮小抑制領域Rr1,Rr2を設定する縮小抑制領域設定部62cと、を備えている。
これによれば、乗員の意思に基づいて、縮小抑制領域設定部62cが基準抑制領域Rbに対して縮小された縮小抑制領域Rr1,Rr2を設定する。すなわち、抑制領域は、縮小されることが可能となる。よって、基準抑制領域Rb内に被検知物が位置するために電動車椅子1の走行が抑制されている時に、基準抑制領域Rbが縮小抑制領域Rr1,Rr2に切替わる(縮小される)ことにより、基準抑制領域Rb内に位置する被検知物が縮小抑制領域Rr1,Rr2外に位置した場合、電動車椅子1の走行の抑制が解除される。この場合、基準抑制領域Rb内に被検知物が位置するために、乗員の意図する走行より電動車椅子1の走行が抑制されていたときには、電動車椅子1の走行の抑制が解除されることにより、電動車椅子1の抑制された走行と乗員の意図する走行との間のギャップが抑制される。よって、電動車椅子1は、乗員の意図を反映した電動車椅子1の走行の抑制を行うことができる。
また、乗員の意思は、電動車椅子1の走行の抑制に対する解除要求であり、電動車椅子1は、乗員の操作により、解除要求の強さを検出する解除要求検出装置40をさらに備えている。制御装置60は、解除要求検出装置40によって検出された解除要求の強さに基づいて、基準抑制領域設定部62bによって設定された基準抑制領域Rbから、縮小抑制領域設定部62cによって設定された縮小抑制領域Rr1,Rr2に切替える領域切替部62eと、をさらに備えている。
これによれば、乗員が解除要求検出装置40を操作することにより、電動車椅子1の走行の抑制に対する解除要求が、電動車椅子1に確実に伝達される。よって、領域切替部62eによる基準抑制領域Rbから縮小抑制領域Rr1,Rr2への切換えが確実に行われる。したがって、電動車椅子1の抑制された走行と、乗員の意図する走行との間のギャップが確実に抑制されるため、乗員の意図を反映した電動車椅子1の走行の抑制を、確実に行うことができる。
また、縮小抑制領域設定部62cは、解除要求検出装置40によって検出された解除要求の強さが大きくなるにしたがって、縮小抑制領域を縮小するように設定する。
これによれば、解除要求検出装置40によって検出される解除要求の強さが大きくなるにしたがって、縮小抑制領域が縮小するように設定されることにより、縮小抑制領域外に位置する被検知物が多くなる。よって、電動車椅子1の抑制された走行と、乗員の意図する走行との間のギャップがさらに抑制されるため、乗員の意図を反映した電動車椅子1の走行の抑制を、さらに行うことができる。
なお、本第一実施形態において、抑制領域は、乗員の解除要求(押付荷重)の大きさに基づいて、幅が段階的に狭くなるように形成されるが、本発明の要旨を逸脱しないように、抑制領域が、本第一実施形態の形状と異なる形状に設定されるようにしても良い。例えば、図12に示すように、原点C0から前方に向かうにしたがって幅が狭くなる四つの領域R1〜R4を設定した場合、基準抑制領域Rbが四つの領域R1〜R4を全て合わせた領域に設定される。また、第一縮小抑制領域Rr1が三つの領域R2〜R4を合わせた領域に設定される。そして、第二縮小抑制領域Rr2が二つの領域R3,R4を合わせた領域に設定される。さらに、縮小抑制領域設定部62cが、第二縮小抑制領域Rr2より領域を小さくする第三縮小抑制領域を設定する場合、第三縮小抑制領域が、一つの領域R4から設定される。このように、縮小抑制領域は、基準抑制領域Rbに対して、前後方向に沿った長さが段階的に短くなるように設定される。
また、縮小抑制領域設定部62cが縮小抑制領域を、基準抑制領域Rbと相似形状となるように段階的に縮小して設定する場合、縮小抑制領域は、基準抑制領域Rbに対して、前後方向に沿った長さが段階的に短くなるように、かつ、幅が段階的に狭くなるように設定される。
(第二実施形態)
次に、本発明による移動体の第二実施形態について、主として上述した第一実施形態と異なる部分について説明する。上述した第一実施形態と比べて、本第二実施形態は、解除要求検出装置40を備えておらず、さらに、衝突抑制制御部62の構成が異なっている。上述した第一実施形態の衝突抑制制御部62においては、乗員の解除要求に基づいて、抑制領域の切替を行っているが、本第二実施形態の衝突抑制制御部162は、周辺領域Rsに位置する被検知物の種類に基づいて、抑制領域の切替を行っている。また、本第二実施形態の衝突抑制制御部162においては、被検知物の種類等に基づいて、抑制領域を拡張するように変形させる領域拡張制御を行う。被検知物の種類は、静止物および運動物である。
本第二実施形態の衝突抑制制御部162は、図13に示すように、進路予測部162a、基準抑制領域設定部162b、縮小抑制領域設定部162c、周辺物有無判定部162g、周辺物種類判定部162h、占有率導出部162k、領域切替部162e、加速度導出部162m、領域拡張制御部162nおよび障害物有無判定部162fを備えている。周辺物種類判定部162hおよび加速度導出部162mには、直進速度導出部61aから直進速度v、および旋回速度導出部61bから旋回速度wが、第一所定時間毎に入力される。
進路予測部162aは、上述した第一実施形態と同様に、予測進行領域Wyおよび周辺領域Rsを生成する。予測進行領域Wyおよび周辺領域Rsは、基準抑制領域設定部162b、縮小抑制領域設定部162cおよび周辺物有無判定部162gに出力される。
基準抑制領域設定部162bは、基準抑制領域Rbを設定する。本第二実施形態の基準抑制領域Rbは、図14に示すように、予測進行領域Wyに対して平行になるように形成されている。本第二実施形態の基準幅Bbは、電動車椅子1の幅のおよそ4倍となるように形成されている。
縮小抑制領域設定部162cは、縮小抑制領域Rrを設定する。本第二実施形態における縮小抑制領域Rrは、一つの縮小抑制領域Rrのみとする。本第二実施形態の縮小抑制領域Rrは、予測進行領域Wyと同じ領域に設定されている。
周辺物有無判定部162gは、検知装置50によって検知された被検知物情報および進路予測部162aからの周辺領域Rsに基づいて、周辺物の有無を判定するものである。周辺物は、周辺領域Rsに位置する被検知物である。周辺物有無判定部162gは、具体的には、図14に示すように、周辺領域Rsと被検知物グリッドGkとが重なる場合、周辺領域Rs内に被検知物が位置するため、周辺物が有ると判定する。
一方、周辺物有無判定部162gは、周辺領域Rsと被検知物グリッドGkとが重ならない場合、周辺領域Rs内に被検知物が位置しないため、周辺物が無いと判定する。周辺領域Rsと被検知物グリッドGkとが重ならない場合とは、極座標C上に被検知物グリッドGkが存在しない場合、または、被検知物グリッドGkが抑制領域のみと重なっている場合である。周辺物有無判定部162gの判定結果は、周辺物種類判定部162h、領域切替部162eおよび領域拡張制御部162nに出力される。また、周辺物有無判定部162gは、周辺領域Rsおよび被検知物グリッドGkの情報(極座標C上の位置および個数)を占有率導出部162kに出力する。
周辺物種類判定部162hは、周辺物有無判定部162gによって周辺物が有ると判定された場合、周辺物の種類が静止物であるか、運動物であるかを判定するものである。被検知物は、上述したように、第一所定時間毎にその座標が取得されるため、極座標C上において被検知物の速度を算出することができる。この被検知物の速度は、電動車椅子1の速度に対する相対速度である。また、周辺物種類判定部162hは、直進速度導出部61aからの直進速度vおよび旋回速度導出部61bからの旋回速度wに基づいて、電動車椅子1の速度を算出する。そして、被検知物の速度が電動車椅子1の速度と同じである場合、被検知物の種類が静止物であると判定する。一方、被検知物の速度が電動車椅子1の速度と異なる場合、被検知物の種類が運動物であると判定する。周辺物種類判定部162hは、検知結果を領域切替部162eおよび領域拡張制御部162nに出力する。
占有率導出部162kは、周辺領域Rsに対する被検知物が占める領域の割合である占有率を導出するものである。占有率導出部162kは、周辺物有無判定部162gからの周辺領域Rsおよび被検知物グリッドGkの情報に基づいて、占有率を導出する。占有率は、具体的には、周辺領域Rsと重なるグリッドGの個数に対する周辺領域Rsと重なる被検知物グリッドGkの個数の割合である。例えば、電動車椅子1が、幅の比較的狭い真直ぐな路地を直進している場合において、路地の両側に沿って平行に並べられた植木等の静止物があるとき、図15Aに示すように、極座標C上に前後方向に沿って平行な点群PGが現れる。この場合、周辺領域Rsと重なるグリッドGの個数は、162個である。また、周辺領域Rsと重なる被検知物グリッドGkの個数は、18個である。よって、この場合の占有率は、11.1(=18/162)%である。また、例えば、周辺領域Rs内に被検知物が無い場合、周辺領域Rsと重なる被検知物グリッドGkの個数は、ゼロ個であるため、占有率がゼロ%となる。占有率導出部162kは、導出した占有率を領域切替部162eおよび領域拡張制御部162nに出力する。
なお、占有率導出部162kは、周辺物有無判定部162gからの周辺領域Rs、被検知物グリッドGkの情報、およびオクルジョーングリッドGo(図15B参照)の情報に基づいて、占有率を導出するようにしても良い。オクルジョーングリッドGoは、極座標C上において、オクルジョーン領域に相当するグリッドGである。検知装置50が被検知物を検知した場合、上述した検知装置50の特性により、その検知された被検知物の後方(電動車椅子1から離れる方向)に位置する他の被検知物を検知できない。この他の被検知物を検知できない領域がオクルジョーン領域である。極座標C上においては、図15Bに示すように、図15Aと同じ被検知物グリッドGkが有る場合、被検知物グリッドGkより前方に位置するグリッドGがオクルジョーングリッドGoとなる。占有率導出部162kは、周辺領域Rsと重なるグリッドGの個数から、周辺領域Rsと重なるオクルジョーングリッドGoの個数を差し引いた個数に対する、周辺領域Rsと重なる被検知物グリッドGkの個数の割合を、占有率として導出するようにしても良い。
領域切替部162eは、所定のマップに基づいて、周辺物有無判定部162gの判定結果、周辺物種類判定部162hの判定結果および占有率導出部162kによって導出された占有率から、抑制領域を切替えるものである。本第二実施形態においては、所定のマップは、図16に示す第四マップM4である。領域切替部162eは、具体的には、周辺物有無判定部162gによって、周辺物が無いと判定された場合、および、周辺物種類判定部162hによって周辺物の種類が運動物であると判定された場合、抑制領域を基準抑制領域Rbにする。なお、周辺物が複数有る場合、周辺物のうち一つでも周辺物の種類が運動物であると判定されたとき、抑制領域が基準抑制領域Rbにされる。
また、領域切替部162eは、周辺物種類判定部162hによって周辺物の種類が静止物であると判定された場合、抑制領域を縮小抑制領域Rrにする。なお、周辺物が複数有る場合、全ての周辺物の種類が静止物であると判定されたとき、抑制領域が縮小抑制領域Rrにされる。
加速度導出部162mは、電動車椅子1の加速度を導出するものである。加速度導出部162mには、直進速度導出部61aからの直進速度vおよび旋回速度導出部61bからの旋回速度wに基づいて、電動車椅子1の速度を第一所定時間毎に算出し、その速度を時系列データとして記憶する。これにより、この時系列データにおける現在の速度と、第一所定時間より長い第二所定時間前から現在までの各速度から電動車椅子1が加速しているか否かを導出する。加速度導出部162mは、導出結果を領域拡張制御部162nに出力する。
領域拡張制御部162nは、抑制領域を拡張する領域拡張制御を実行するものである。領域拡張制御は、領域切替部162eによって切替えられた抑制領域を拡張する制御である。本実施形態において、領域拡張制御は、図17に示すように、抑制領域の幅を左右方向に広げるように拡張(変形)させる。領域拡張制御においては、抑制領域を拡張させる拡張量が算出される。具体的には、抑制領域の左側を拡張させる拡張量であるΔRLは、式(1)のように示される。また、抑制領域の右側を拡張させる拡張量であるΔRRは、式(2)のように示される。ΔRL,ΔRRは、第一所定時間毎に算出されて、その拡張量だけ抑制領域が拡張される。
[数1]
ΔRL=HL×((A/B)+C) ・・・(1)
[数2]
ΔRR=HR×((A/B)+C) ・・・(2)
HLは、現在の抑制領域の左端から左側の周辺領域Rsの左端までの左右方向長さである。Aは、電動車椅子1の現在の加速度である。Bは、電動車椅子1の最大加速度である。
HRは、現在の抑制領域の右端から右側の周辺領域Rsの右端までの左右方向長さである。なお、電動車椅子1の速度が最高速度である場合、Cは、所定値に設定されている。所定値は、電動車椅子1の速度が最高速度である場合に、ΔRLが周辺領域Rsの左端まで拡張されていないとき、ΔRLを周辺領域Rsの左端まで拡張させ、かつ、ΔRRが周辺領域Rsの右端まで拡張されていないとき、ΔRRを周辺領域Rsの右端まで拡張させる値に設定されている。一方、電動車椅子1の速度が最高速度でない場合、Cはゼロに設定されている。
また、抑制領域が拡張されている場合、抑制領域内に被検知物が位置した時、領域拡張制御部162nは、抑制領域をその時の抑制領域の大きさを拡張せずに維持する。そして、抑制領域内に位置する被検知物が抑制領域内から外れた場合、領域拡張制御部162nは、上述したように抑制領域を拡張させる。抑制領域が拡張されて、抑制領域の左右端の両方が、周辺領域Rsの左右端の両方に到達した場合、領域拡張制御部162nは、抑制領域が設定された時の初期形状に戻すとともに、抑制領域の拡張を繰り返し継続する。
また、領域拡張制御部162nは、図18に示す第五マップM5に基づいて、加速度導出部162mの導出結果、周辺物有無判定部162gの判定結果、周辺物種類判定部162hの判定結果および占有率導出部162kの導出結果から、領域拡張制御を実行するか否かを決定する。領域拡張制御部162nは、具体的には、加速度導出部162mによって導出された加速度がゼロ以下である場合、周辺物の種類および占有率に関わらず、領域拡張制御を実行しない。また、領域拡張制御部162nは、加速度導出部162mによって導出された加速度がゼロより大きい場合において、周辺物の種類が静止物であり、かつ、占有率が占有率判定値以上であるとき、領域拡張制御を実行しない。電動車椅子1が比較的狭い場所を走行している場合、占有率が占有率判定値以上となるように、占有率判定値が設定されている。占有率判定値は、例えば8%である。
一方、領域拡張制御部162nは、加速度導出部162mによって導出された加速度がゼロより大きい場合において、周辺物が無いとき、周辺物の種類が運動物であるとき、および、周辺物の種類が静止物であり、かつ、占有率が占有率判定値より小さいとき、領域拡張制御を実行する。領域拡張制御部162nは、領域拡張制御を実行する場合、領域拡張制御によって拡張された抑制領域を障害物有無判定部162fに出力する。一方、領域拡張制御部162nは、領域拡張制御を実行しない場合、抑制領域を拡張せずに障害物有無判定部162fに出力する。
障害物有無判定部162fは、検知装置50によって検知された被検知物情報および領域拡張制御部162nからの抑制領域に基づいて、障害物の有無を判定する。
次に、本第二実施形態における制御装置60が行う衝突抑制制御について、図19に示すフローチャートに沿って説明する。図19に示すフローチャートは、ステップS102、および、ステップS320より後のステップS108以降は、図10に示すフローチャートと同じである。
制御装置60は、ステップS102にて、電動車椅子1の進路を予測し、予測進行領域Wyを生成する(進路予測部162a)。制御装置60は、ステップS304にて、周辺領域Rsを生成する(進路予測部162a)。そして、制御装置60は、ステップS306にて基準抑制領域Rbおよび縮小抑制領域Rrを設定する(基準抑制領域設定部162b,縮小抑制領域設定部162c)。
制御装置60は、ステップS308にて、周辺物が有るか否かを判定する(周辺物有無判定部162g)。周辺領域Rsに被検知物が存在しない場合、周辺物が無いため、制御装置60は、ステップS308にて「NO」と判定し、プログラムをステップS312に進める。一方、周辺領域Rsに被検知物が存在する場合、周辺物が有るため、制御装置60は、ステップS308にて「YES」と判定する。そして、制御装置60は、ステップS310にて、周辺物の種類を判定し(周辺物種類判定部162h)、プログラムをステップS312に進める。制御装置60は、ステップS312にて、占有率を導出する(占有率導出部162k)。
続けて、制御装置60は、ステップS314にて、電動車椅子1の加速度を導出する(加速度導出部162m)。さらに、制御装置60は、ステップS316にて、抑制領域を切替える(領域切替部162e)。そして、制御装置60は、領域拡張制御を実行するか否かを決定する(領域拡張制御部162n)。領域拡張制御を実行する場合、制御装置60は、ステップS318にて「YES」と判定し、ステップS320にて領域拡張制御を実行して、プログラムをステップS108に進める。一方、領域拡張制御が実行されない場合、制御装置60は、ステップS318にて「NO」と判定し、領域拡張制御を実行せずに、プログラムをステップS108に進める。制御装置60は、ステップS110の処理、ステップS112にて「NO」と判定した場合、および、ステップS114の処理をした後、プログラムをステップS102に戻す。
次に、上述した図19のフローチャートに沿って、電動車椅子1が動作した場合について説明する。はじめに、電動車椅子1が比較的広い場所を直進している場合について説明する。この場合において、検知装置50によって被検知物が検知されないとき、周辺物が無いため(ステップS308;周辺物有無判定部162g)、抑制領域が基準抑制領域Rbにされる(ステップS316;領域切替部162e)。さらに、このとき、電動車椅子1が加速していない時、加速度がゼロ以下であるため(ステップS314;加速度導出部162m)、領域拡張制御が実行されない(ステップS318;領域拡張制御部162n)。一方、電動車椅子1が加速している時、加速度がゼロより大きくなる(ステップS314;加速度導出部162m)。この時においては、被検知物が無いことにより、領域拡張制御が実行される(ステップS320;領域拡張制御部162n)。そして、被検知物が無いときにおいては、基準抑制領域Rb内に被検知物が位置しない。よって、障害部が無い(ステップS108;障害物有無検知部)ため、走行の抑制がされない(駆動量抑制部61c1)。
そして、電動車椅子1が比較的広い場所を直進している場合において、図14に示すように、周辺領域Rs内に被検知物が有り(ステップS308;周辺物有無判定部162g)、その被検知物の種類が運動物であるとき(ステップS310;周辺物種類判定部162h)、抑制領域が基準抑制領域Rbにされる(ステップS316;領域切替部162e)。このとき、電動車椅子1が加速している時(加速度>ゼロの時)には、領域拡張制御が行われる(ステップS320;領域拡張制御部162n)。そして、運動物が基準抑制領域Rb内に位置した場合、運動物が基準抑制領域Rb内に位置した時の基準抑制領域Rbの大きさが維持されるとともに、電動車椅子1の走行が抑制される(ステップS110;駆動量抑制部61c1)。
また、電動車椅子1が比較的広い場所を直進している場合において、図14に示す被検知物の種類が静止物であるとき(ステップS310;周辺物種類判定部162h)、抑制領域が縮小抑制領域Rrにされる(ステップS316;領域切替部162e)。また、その静止物によって生成される被検知物グリッドGkが二個である場合、占有率が占有率判定値より小さい。よって、電動車椅子1が加速している時(加速度>ゼロの時)には、領域拡張制御が実行される(ステップS320;領域拡張制御部162n)。そして、静止物が縮小抑制領域Rr内に位置した場合、静止物が縮小抑制領域Rr内に位置した時の縮小抑制領域Rrの大きさが維持されるとともに、電動車椅子1の走行が抑制される(ステップS110;駆動量抑制部61c1)。
次に、電動車椅子1が、幅の比較的狭い真直ぐな路地を直進している場合において、路地の両側に沿って並べられた植木等の静止物があるときについて説明する。この場合、図15Aに示すように、周辺領域Rs内に被検知物が有り(ステップS308;周辺物有無判定部162g)、その被検知物の種類が静止物であるため(ステップS310;周辺物種類判定部162h)、抑制領域が縮小抑制領域Rrにされる(ステップS316;領域切替部162e)。さらに、この場合、占有率が占有率判定率以上となる(ステップS312;占有率導出部162k)。よって、この場合において、電動車椅子1が加速している時(加速度>ゼロの時)においても、領域拡張制御が実行されない(ステップS318;領域拡張制御部162n)。
また、この場合において、電動車椅子1が加速していない時(加速度≦ゼロのとき)においても、領域拡張制御が実行されない(ステップS318;領域拡張制御部162n)。よって、この場合、電動車椅子1が直進している限りにおいては、この静止物が縮小抑制領域Rr内に位置しないため、電動車椅子1の走行が抑制されない(駆動量抑制部61c1)。
本第二実施形態によれば、乗員による操作装置30への入力に従って駆動される駆動装置20によって走行する電動車椅子1であって、電動車椅子1は、電動車椅子1の周辺の被検知物を検知する検知装置50と、操作装置30に入力された情報である入力情報に基づいて、駆動装置20の駆動量を制御して電動車椅子1を走行させる制御装置60と、を備えている。制御装置60は、検知装置50によって検知された被検知物が領域内に位置する時に、電動車椅子1の走行が抑制をされる抑制領域であって、基準となる基準抑制領域Rbを設定する基準抑制領域設定部162bと、電動車椅子1の予測進行領域Wyの両側の領域である周辺領域Rs内に位置する被検知物の種類に基づいて、基準抑制領域設定部162bによって設定された基準抑制領域Rbに対して、縮小された抑制領域である縮小抑制領域Rrを設定する縮小抑制領域設定部162cと、を備えている。
これによれば、周辺領域Rsに位置する被検知物の種類に基づいて、縮小抑制領域設定部162cが縮小抑制領域Rrを設定する。抑制領域が縮小抑制領域Rrに設定されている場合は、被検知物が抑制領域内に位置しにくい。これにより、被検知物が抑制領域内に位置しないとき、電動車椅子1の走行が抑制されないため、乗員の意図する走行が可能となる。よって、このとき、電動車椅子1の抑制された走行と、乗員の意図する走行との間のギャップが抑制される。したがって、電動車椅子1は、乗員の意図を反映した電動車椅子1の走行の抑制を行うことができる。
また、被検知物の種類は、静止物および運動物である。制御装置60は、周辺領域Rs内に位置する被検知物の種類が静止物であるか運動物であるかを判定する周辺物種類判定部162hと、周辺物種類判定部162hによって周辺領域Rs内の被検知物の種類が静止物であると判定された場合、基準抑制領域設定部162bによって設定された基準抑制領域Rbから、縮小抑制領域設定部162cによって設定された縮小抑制領域Rrに切替える領域切替部162eと、をさらに備えている。
これによれば、周辺領域Rs内に位置する被検知物が静止物のみである場合、乗員は、比較的速い速度で電動車椅子1を走行させたいと感じるときがある。このとき、周辺領域Rs内に位置する被検知物が運動物を含むときに比べて、電動車椅子1の抑制された走行と、乗員の意図する走行との間のギャップが生じやすい。これに対して、周辺領域Rs内の被検知物の種類が静止物であると判定された場合、領域切替部162eが基準抑制領域Rbを縮小抑制領域Rrに切替える。これにより、被検知物を抑制領域内に位置させにくくすることができる。被検知物が抑制領域内に位置しないとき、電動車椅子1の走行が抑制されないため、乗員の意図する走行が可能となる。よって、電動車椅子1の抑制された走行と、乗員の意図する走行との間のギャップが抑制される。したがって、電動車椅子1は、乗員の意図を反映した電動車椅子1の走行の抑制を行うことができる。
また、制御装置60は、周辺物種類判定部162hによって周辺領域Rs内の被検知物の種類が運動物であると判定された場合、抑制領域を拡張する領域拡張制御を実行する領域拡張制御部162nと、をさらに備えている。
周辺領域Rs内に位置する被検知物の種類が運動物である場合、被検知物の種類が静止物である場合に比べて、被検知物の動きの予測がつき難い。この場合、領域拡張制御部162nが抑制領域の大きさを拡張することにより、運動物を抑制領域内に位置させ易くすることができる。運動物が抑制領域内に位置した場合、電動車椅子1の走行が抑制される。よって、電動車椅子1と運動物との衝突をさらに抑制することができる。
また、電動車椅子1と被検知物との距離に応じて、電動車椅子1の走行の抑制量を調節しているため、拡張された抑制領域内に被検知物が位置した時においても、急な抑制が行われないようにすることができる。
制御装置60は、周辺領域Rsに対する被検知物が占める領域の割合である占有率を導出する占有率導出部162kをさらに備えている。領域拡張制御部162nは、周辺物種類判定部162hによって周辺領域Rs内の被検知物の種類が静止物であると判定された場合において、占有率導出部162kによって導出された占有率が占有率判定値より小さいとき、領域拡張制御を実行する。
周辺領域Rs内に位置する被検知物の種類が静止物である場合においても、占有率が占有率判定値より小さいとき、すなわち、電動車椅子1が走行している空間が比較的広いとき、運動物の急な出現等により、電動車椅子1と運動物とが衝突することが考えられる。このとき、領域拡張制御部162nが抑制領域の大きさを拡張することにより、被検知物を抑制領域内に位置させ易くすることができる。よって、電動車椅子1と運動物との衝突をさらに抑制することができる。
一方、周辺領域Rs内に位置する被検知物の種類が静止物である場合において、占有率が占有率判定値以上であるとき、すなわち、電動車椅子1が走行している空間が比較的狭い(例えば、細い路地等)とき、被検知物の急な出現等による被検知物と電動車椅子1との衝突の可能性が比較的低いと考えられる。よって、領域拡張制御部162nが抑制領域の大きさを拡張しない。したがって、電動車椅子1の抑制された走行と、乗員の意図する走行との間のギャップが抑制されるため、乗員の意図を反映した電動車椅子1の走行の抑制を行うことができる。
なお、上述した各実施形態において、移動体の一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、上述した各実施形態において、移動体は、電動車椅子1であるが、これに代えて、小型車両や移動ロボット等の搭乗型の移動体としても良い。
また、上述した第一実施形態において、解除要求検出装置40は、押圧荷重を検出する荷重検出部42を備えているが、これに代えて、複数のスイッチを備えるようにしても良い。この場合、領域切替部62eは、例えば、オンされたスイッチに応じて縮小抑制領域Rr1,Rr2を切替えるようにして良い。さらに、解除要求検出装置40が、乗員の音声を入力可能なマイクロフォン等を備えるようにしても良い。この場合、領域切替部62eは、例えば、乗員の声の大きさに応じて、縮小抑制領域Rr1,Rr2を切替えるようにして良い。
また、上述した第一実施形態において、領域切替部62eは、障害物有無判定部62fの判定結果を考慮して、抑制領域の切替を行っているが、これに代えて、障害物有無判定部62fの判定結果を考慮せずに、解除要求検出装置40の検出結果のみに基づいて、抑制領域の切替を行うようにしても良い。
また、上述した第二実施形態において、領域切替部162eは、図16に示す第四マップM4に基づいて抑制領域の切替を行っているが、これに代えて、図20に示す第十四マップM14に基づいて、抑制領域の切替を行うようにしても良い。この場合、領域切替部162eは、占有率が占有率判定値以上である場合、基準抑制領域Rbから、縮小抑制領域Rrに切替える。このように、制御装置60は、周辺領域Rsに対する被検知物が占める領域の割合である占有率を導出する占有率導出部162kと、占有率導出部162kによって導出された占有率が占有率判定値以上である場合、基準抑制領域設定部162bによって設定された基準抑制領域Rbから、縮小抑制領域設定部162cによって設定された縮小抑制領域Rrに切替える領域切替部162eと、をさらに備えている。
占有率が占有率判定値より大きい場合、すなわち、電動車椅子1が走行している空間が比較的狭い場合、電動車椅子1が走行している空間が広い場合に比べて被検知物が抑制領域に位置し易い。よって、占有率が占有率判定値より大きい場合、電動車椅子1の抑制された走行と、乗員の意図する走行との間のギャップが生じやすいため、領域切替部162eが基準抑制領域Rbを縮小抑制領域Rrに切替える。これにより、被検知物が抑制領域内に位置しないとき、電動車椅子1の走行が抑制されないため、乗員の意図する走行が可能となる。よって、電動車椅子1の抑制された走行と、乗員の意図する走行との間のギャップが抑制される。したがって、電動車椅子1は、乗員の意図を反映した電動車椅子1の走行の抑制を行うことができる。
また、上述した第二実施形態において、領域切替部162eは、図16に示す第四マップM4に基づいて抑制領域の切替を行っているが、これに代えて、図21に示す第二十四マップM24に基づいて、抑制領域の切替を行うようにしても良い。この場合、上述した第二実施形態と比べて、周辺物の種類が運動物である場合においても、占有率が占有率判定値以上であるとき、抑制領域が縮小抑制領域Rrとされる。
また、上述した第二実施形態において、領域拡張制御部162nは、図18に示す第五マップM5に基づいて領域拡張制御を実行するか否かを判定している。このとき、領域拡張制御部162nは、加速度から領域拡張制御を実行するか否かを判定しているが、これに代えて、電動車椅子1が最高速度である場合においては、電動車椅子1の加速度に関わらず、第五マップM5の「加速度>ゼロである場合」に示す内容に基づいて、周辺物および占有率から領域拡張制御を実行するようにしても良い。
また、領域拡張制御部162nは、図18に示す第五マップM5に代えて、図22に示す第十五マップM15に基づいて、領域拡張制御を実行するか否かを判定するようにしても良い。この場合、領域拡張制御部162nは、電動車椅子1が加速しているか否かに関わらず、占有率のみに基づいて、領域拡張制御を実行するか否かを判定する。
また、上述した第二実施形態において、領域拡張制御部162nは、拡張量を電動車椅子1の加速度に基づいて算出しているが、これに代えて、電動車椅子1の加速度に関わらず、一定の拡張量にて領域を拡張するようにしても良い。
また、上述した実施形態において、操作装置30はジョイスティックであるが、これに代えて、操作装置30を、電動車椅子1の直進速度vを指示するアクセルおよび電動車椅子1の旋回方向を指示するハンドルによって構成するようにしても良い。
また、上述した各実施形態において、縮小抑制領域Rr,Rr1,Rr2は、予め縮小抑制領域設定部62c,162cによって設定されているが、これに代えて、基準抑制領域Rbを変形させることにより、縮小抑制領域Rr,Rr1,Rr2を設定するようにしても良い。
また、上述した各実施形態において、検知装置50は、被検知物の三次元位置情報を検出する三次元測域センサであるが、これに代えて、被検知物の二次元位置情報を検出する二次元測域センサとしても良い。
また、上述した実施形態において、電動車椅子1は、検知装置50を一つ備えているが、これに代えて、検知装置50を複数備えるようにしても良い。これによれば、検知装置50が一つである場合に比べて、検知装置50の被検知物を検出可能な範囲を広げることができる。
また、上述した各実施形態において、抑制領域は、極座標C上に平面状に生成されているが、これ代えて、抑制領域を立体的に生成するようにしても良い。この場合、極座標Cに代えて、電動車椅子1を中心とする球座標上に抑制領域を設定するようにすると良い。これによれば、検知装置50が被検知物を検知可能な範囲内において、基準抑制領域Rbの高さと縮小抑制領域Rrの高さを異なるように設定することができる。
また、上述した各実施形態において、抑制領域内に被検知物が有る場合、駆動量抑制部61c1により制限される直進速度vの最高速度は、最短距離Dminに応じて変化するが、これに代えて、電動車椅子1と被検知物との相対速度やグリッドG内の被検知物の密度(点群PGの密度)に応じて変化するようにしても良い。また、抑制領域内に被検知物が有る場合、駆動量抑制部61c1は、最短距離Dminにかかわらず、直進速度vの最高速度を一定の速度に制限するようにしても良い。
また、上述した各実施形態において、駆動量抑制部61c1によって、駆動装置20の駆動量を制限駆動量にすることで、直進速度vの最高速度が制限されているが、これに代えて、直進速度vを所定の割合にて一律に低減するようにしても良い。また、直進速度vの時間変化率(加速度)を制限するようにしても良い。