JP2017111291A - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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【課題】本発明の課題は、低温定着性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れた静電潜像現像用トナーを提供することである。【解決手段】本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも非晶性ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、前記トナー粒子が、前記非晶性ビニル樹脂のマトリクス中に、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインと前記結晶性ポリエステル樹脂のドメインとが接触した構造体ドメインを含有し、前記トナー粒子の断面において、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、前記構造体ドメインを形成している前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、30%以上であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関する。より詳細には、本発明は、低温定着性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れた静電潜像現像用トナーに関する。
近年、電子写真方式の画像形成装置において、さらなる低コスト化及び省エネルギー化が求められており、より安価かつ低い温度で熱定着される静電潜像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)が必要とされている。このような低温定着性のトナーにおいては、より一層の優れた低温定着性とともに、定着されるまではトナー粒子同士が凝集しないこと(耐ブロッキング性)が求められる。
トナーの低コスト化及び省エネルギー化を達成するために、ビニル樹脂をメインバインダーとしたマトリクス中に、結晶性ポリエステル樹脂のドメインが内部に分散している非晶性ポリエステル樹脂のドメイン(又はシェル)を含有するトナーが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
これらのトナーでは、所望のトナー構造及びトナー性能を得るために、トナー製造時に結晶性ポリエステル樹脂の融点以上の熱をかけており、結晶性ポリエステル樹脂が非晶性ポリエステル樹脂に完全に被覆されたドメインを形成しやすい。また、このようなドメインは、結晶性ポリエステル樹脂のドメインの融解と同時に、非晶性ポリエステル樹脂との相溶が起こってしまう。また、相溶した状態から、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を相分離させ、かつ非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂を完全に結晶化させることは難しいため、トナー製造後のトナー粒子中に、結晶性ポリエステル樹脂の一部が非晶状態として存在すると考えられる。そして、結晶性ポリエステル樹脂の非晶状態の部分は、非晶性ポリエステル樹脂やビニル樹脂を可塑化し、トナー粒子同士を凝集しやすくするという問題がある。そのため、低温定着性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れたトナーが求められている。
特開2014−235361号公報 特開2015−045719号公報
本発明は、上記課題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温定着性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れた静電潜像現像用トナーを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく行った検討過程において、トナー粒子が、非晶性ビニル樹脂のマトリクス中に、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とが接触した構造体ドメインを含有し、当該構造体ドメインを形成している非晶性ポリエステル樹脂を所定割合以上とすることで、低温定着性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れた静電潜像現像用トナーを提供できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくとも非晶性ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー粒子が、前記非晶性ビニル樹脂のマトリクス中に、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインと前記結晶性ポリエステル樹脂のドメインとが接触した構造体ドメインを含有し、
前記トナー粒子の断面において、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、前記構造体ドメインを形成している前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、30%以上であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
2.前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、パラフェニレン骨格を有するモノマーと、メタフェニレン骨格を有するモノマーのモル比が、30:70〜100:0の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の静電潜像現像用トナー。
3.前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、テレフタル酸モノマーとイソフタル酸モノマーのモル比が、30:70〜100:0の範囲内であることを特徴とする第2項に記載の静電潜像現像用トナー。
4.前記トナー粒子の断面において、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、前記構造体ドメインを形成している前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、50%以上であることを特徴とする第1項に記載の静電潜像現像用トナー。
5.前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、パラフェニレン骨格を有するモノマーと、メタフェニレン骨格を有するモノマーのモル比が、50:50〜100:0の範囲内であることを特徴とする第4項に記載の静電潜像現像用トナー。
6.前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、テレフタル酸モノマーとイソフタル酸モノマーのモル比が、50:50〜100:0の範囲内であることを特徴とする第5項に記載の静電潜像現像用トナー。
7.前記トナー粒子の断面において、前記トナー粒子の外周から前記構造体ドメインまでの最短距離の平均値が、1μm以下であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
8.前記トナー粒子の断面において、前記構造体ドメインを形成する前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積のうち、前記トナー粒子の表面側に位置する前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、50%以上であることを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
本発明の上記手段により、低温定着性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れた静電潜像現像用トナーを提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明のトナーは、トナー粒子中に、結晶性ポリエステル樹脂のドメインと非晶性ポリエステル樹脂のドメインが接触した構造体ドメインを含有する。結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂が近接しているため、トナーの定着時に両者が速やかに相溶し、良好な低温定着性が得られると考えられる。
また、構造体ドメインを形成する結晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステルに完全には覆われておらず、一部が接触した状態である。そのため、トナーの定着までの間、構造体ドメインの結晶性ポリエステル樹脂は、完全な結晶状態で存在しやすく、非晶性ポリエステル樹脂とは相溶しにくくなっている。これによって、本発明のトナーは、定着されるまでは、非晶性ポリエステル樹脂やビニル樹脂が可塑化されにくくなり、その結果、トナー粒子同士が凝集しにくくなるため、優れた耐ブロッキング性を得られると考えられる。
トナー粒子の断面を示す模式図
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも非晶性ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、前記トナー粒子が、前記非晶性ビニル樹脂のマトリクス中に、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインと前記結晶性ポリエステル樹脂のドメインとが接触した構造体ドメインを含有し、前記トナー粒子の断面において、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、前記構造体ドメインを形成している前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、30%以上であることを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、構造体ドメインの形成確率を向上させる観点から、前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、パラフェニレン骨格を有するモノマーと、メタフェニレン骨格を有するモノマーのモル比が、30:70〜100:0の範囲内であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、構造体ドメインの形成確率を向上させる観点から、前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、テレフタル酸モノマーとイソフタル酸モノマーのモル比が、30:70〜100:0の範囲内であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、前記トナー粒子の断面において、前記非晶性ポリエステル樹脂全体の断面積のうち、前記構造体ドメインを形成している前記非晶性ポリエステル樹脂の断面積の割合が、50%以上であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、構造体ドメインの形成確率を向上させる観点から、前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、パラフェニレン骨格を有するモノマーと、メタフェニレン骨格を有するモノマーのモル比が、50:50〜100:0の範囲内であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、構造体ドメインの形成確率を向上させる観点から、前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、テレフタル酸モノマーとイソフタル酸モノマーのモル比が、50:50〜100:0の範囲内であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、前記トナー粒子の断面において、前記トナー粒子の外周から前記構造体ドメインまでの最短距離の平均が、1μm以下であることが好ましい。これにより、定着時に非晶性ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステル樹脂と相溶したとき、溶融した非晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子の表面近傍に存在することとなるため、トナー粒子同士が融け合いやすく、より優れた低温定着性が得られる。
本発明の実施態様としては、前記トナー粒子の断面において、前記構造体ドメインを形成する前記非晶性ポリエステル樹脂全体の断面積のうち、前記トナー粒子の表面側に位置する前記非晶性ポリエステル樹脂の断面積の割合が、50%以上であることが好ましい。これにより、定着時に非晶性ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステル樹脂と相溶したとき、溶融した非晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子の表面側に存在することとなるため、トナー粒子同士が融け合いやすく、より優れた低温定着性が得られる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[静電潜像現像用トナー]
静電潜像現像用トナー(トナー)は、トナー粒子の集合体である。
<トナー粒子>
本発明に係る静電荷像現像用トナーのトナー粒子は、結着樹脂として非晶性ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する。また、トナー粒子は、必要に応じて、離型剤、着色剤、荷電制御剤、外添剤等の他のトナー粒子の構成成分を含有してもよい。また、本発明のトナー粒子は、水系媒体中で作製される湿式の製造方法(例えば、乳化凝集法など)により得られるものであることが好ましい。
<トナー粒子中のドメインの存在状態>
図1にトナー粒子10の断面の模式図を示すように、非晶性ビニル樹脂を含有するマトリクス11中に、非晶性ポリエステル樹脂のドメイン12と結晶性ポリエステル樹脂のドメイン13が接触した構造体ドメイン14が存在している。また、図1に示すように、単独で存在する非晶性ポリエステル樹脂のドメイン12、単独で存在する結晶性ポリエステル樹脂のドメイン13、及びその他構成成分の各種ドメインを含有してもよい。
ここで、「ドメイン」とは、トナー粒子を構成する樹脂成分の連続層(マトリクス)中にあって、糸状、縞状又は粒子状に孤立分散して存在している領域をいう。
<構造体ドメイン>
本発明でいう「構造体ドメイン」とは、トナー粒子の断面において、非晶性ポリエステル樹脂のドメインと、結晶性ポリエステル樹脂のドメインが接触した状態のドメインである。ここで「接触した状態」とは、結晶性ポリエステル樹脂のドメイン部分の外周への、非晶性ポリエステル樹脂のドメインによる接触率(被覆率)が30〜70%の範囲内であるものと定義する。つまり、結晶性ポリエステル樹脂のドメインが、非晶性ポリエステル樹脂のドメインに完全に覆われたような形態のドメインは、「構造体ドメイン」には含まれない。
構造体ドメインは、結晶性ポリエステル樹脂のドメインと非晶性ポリエステル樹脂のドメインが近接した状態であるため、定着時に両者が速やかに相溶でき、トナーが良好な低温定着性を得られると考えられる。また、構造体ドメインを形成する結晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂に完全には覆われておらず、一部が接触した状態である。そのため、結晶性ポリエステル樹脂のドメイン部分は完全な結晶状態で存在しやすく、非晶性ポリエステル樹脂とは相溶しにくくなっている。これによって、本発明のトナーは、定着されるまで、非晶性ポリエステル樹脂やビニル樹脂が可塑化されにくくなり、その結果、トナー粒子同士の凝集しにくくなるため、優れた耐ブロッキング性を得られると考えられる。
また、上記のような低温定着性と耐ブロッキング性の効果発現の観点から、トナー粒子の断面において、非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、構造体ドメインを形成している非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、30%以上であり、より好ましくは50%以上である。
また、トナー粒子の断面において、トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離の平均が、1μm以下であることが好ましい。これにより、トナーの定着時に、結晶性ポリエステル樹脂と相溶して溶融した非晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子の近傍に存在することになるので、トナー粒子同士が融け合いやすく、より優れた低温定着性が得られる。
また、トナー粒子の断面において、構造体ドメインを形成する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積のうち、トナー粒子の表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、50%以上であることが好ましい。これにより、トナーの定着時に、結晶性ポリエステル樹脂と相溶して溶融した非晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子の近傍側に存在することになるので、トナー粒子同士が融け合いやすく、より優れた低温定着性が得られる。
また、本発明において、非晶性ポリエステル樹脂のドメインが「表面側に位置する」とは、トナー粒子の断面において、構造体ドメインを形成する結晶性ポリエステル樹脂のドメインと非晶性ポリエステル樹脂のドメインについて、トナー粒子の外周からドメインまでの最短距離を計算したとき、最短距離が小さかった方を表面側に位置すると定義する。なお、最短距離が同一であった場合は、両方ともに表面側には位置しないとする。
<トナー粒子の断面の観察方法>
トナー粒子の断面の観察は、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡(SPM)等などで観察できる。以下に、その一例をあげるが、同等の観察ができれば、これに限定されるわけではない。
(1.トナー粒子の切片の作製方法)
トナーを四酸化ルテニウム(RuO)蒸気雰囲気下で10分間曝露した後、光硬化性樹脂「D−800」(日本電子株式会社製)中に分散させた後、光硬化させてブロックを形成する。次いで、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、上記のブロックより厚さ60nmから100nm程度の薄片状のサンプルを切り出し、透過電子顕微鏡観察用の支持膜付きグリッドに載せる。直径5cm(5cmφ)のプラスチックシャーレに濾紙を敷き、その上に切片の載ったグリッドを切片の載った面を上にして載せる。
(2.四酸化ルテニウム染色条件)
染色条件(時間、温度、染色剤の濃度及び量)は、透過電子顕微鏡観察をする際に各樹脂(主に非晶性樹脂、結晶性樹脂及び離型剤)の区別ができる条件に調整する。例えば、0.5質量%のRuOの染色液2〜3滴を、シャーレ内の2点に滴下し、蓋をし、10分間後、シャーレの蓋を外し染色液の水分が無くなるまで放置する。
(3.トナー粒子の断面観察方法(条件))
・装置:走査型電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子株式会社製)
・試料:四酸化ルテニウム(RuO)によって染色したトナー粒子の切片(切片の厚さ100nm程度)
・観察条件:加速電圧30kV、透過像モード、明視野像、倍率10000倍
なお、トナー粒子の断面の直径が5.5〜6.5μmとなるトナー粒子の断面を選択して観察する。
<非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、構造体ドメインを形成する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの割合(%)の算出方法>
上述した走査型電子顕微鏡を用いた断面観察の際に視野を撮影し、写真画像(トナー粒子の断面画像)をスキャナーにより取り込む。そして、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて、トナーの断面に分散しているドメインの断面積を測定する。ここで、構造体ドメインを形成している非晶性ポリエステル樹脂のドメインと、構造体ドメインを形成していない非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積をそれぞれ測定し、非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、構造体ドメインを形成している非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合(%)を算出する。
また、本発明では、少なくともトナー粒子20個の断面についてそれぞれ割合(%)を計算し、その平均値によって割合(%)を算出する。
<トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離の算出方法>
上記と同様に、トナー粒子の断面画像を、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて解析することによって算出する。具体的には、構造体ドメインの外周の一点と、トナー粒子の外周の一点を結んだ線分の長さ測定し、それぞれの点の位置を外周上でずらして線分の長さを測定した際に、線分の長さが最も短くなるときの当該線分の長さを、「トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離」として算出する。
また、本発明では、少なくともトナー粒子20個の断面に存在する構造体ドメインについて最短距離を算出し、その平均値を「トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離の平均値」とする。
<表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの割合の算出方法>
本発明において、非晶性ポリエステル樹脂のドメインが「表面側に位置する」とは、トナー粒子の断面において、構造体ドメインを形成する結晶性ポリエステル樹脂のドメインと非晶性ポリエステル樹脂のドメインのそれぞれについて、トナー粒子の外周面からドメインまでの最短距離を計算したとき、当該最短距離が小さかった方を表面側に位置すると定義する。以下、表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの割合の算出方法を説明する。
上記と同様に、トナー粒子の断面画像を、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて解析することによって算出する。具体的には、上記「トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離の算出」と同様の方法で、構造体ドメイン形成する結晶性ポリエステル樹脂のドメイン部分及び非晶性ポリエステル樹脂のドメイン部分について、トナー粒子の外周からそれぞれのドメイン部分までの最短距離を算出する。次に、それらの最短距離を比較して、非晶性ポリエステル樹脂のドメイン部分の方が小さいものを、表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインとする。そして、構造体ドメインを形成する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積のうち、トナー粒子の表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合(%)を算出する。
また、本発明では、少なくともトナー粒子20個の断面についてそれぞれ割合(%)を計算し、その平均値によって割合(%)を算出する。
<トナー粒子の粒径>
本発明に係るトナー粒子の平均粒径は、例えば、体積基準のメジアン径で3〜8μmであることが好ましく、より好ましくは4〜7.5μmである。この平均粒径は、製造時において使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂(バインダー樹脂)の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することなどができる。
トナーの体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(外添剤粒子を含むトナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
<トナー粒子の平均円形度>
本発明に係るトナー粒子は、帯電特性の安定性、粉体の流動性、更には低温定着性などの観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、0.950〜0.995であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
トナー粒子の平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
トナー粒子の円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
<トナー粒子の形態>
トナー粒子は、コア・シェル構造(コア粒子の表面にシェル層を形成する樹脂を凝集、融着させた形態)を有してもよい。コア・シェル構造を有することで、耐熱保管性と低温定着性、更には粉体の流動性をより一層向上させることができる。
なお、コア・シェル構造は、シェル層がコア粒子を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、例えば、シェル層がコア粒子を完全に被覆せず、所々コア粒子が露出しているものも含む。
コア・シェル構造の断面構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することが可能である。
以下、本発明のトナーを構成する結着樹脂、離型剤、着色剤、荷電制御剤等の各構成成分について詳細に説明する。
<結着樹脂>
本発明に係るトナー粒子は、結着樹脂として、非晶性樹脂及び結晶性樹脂を含有する。また、非晶性樹脂として、非晶性ビニル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含有し、結晶性樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含有する。
(1)非晶性樹脂
(非晶性ビニル樹脂)
本発明でいう「非晶性ビニル樹脂」とは、少なくともビニル系単量体を用いた重合により得られる樹脂である。非晶性ビニル樹脂として、具体的には、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂などが挙げられる。なかでも、非晶性ビニル樹脂としては、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体を用いて形成されるスチレン−アクリル共重合体樹脂が好ましい。非晶性樹脂として、非晶性ビニル樹脂を用いることで、低コスト化でき、かつ低温定着が可能となるという利点がある。
非晶性ビニル樹脂を形成するビニル系単量体としては、下記のものから選択される1種又は2種以上が用いられうる。
(a)スチレン系単量体
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(b)(メタ)アクリル酸エステル系単量体
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体などが挙げられる。
(c)ビニルエステル類
ビニルエステル類(の単量体)としては、例えば、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどが挙げられる。
(d)ビニルエーテル類
ビニルエーテル類(の単量体)としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどが挙げられる。
(e)ビニルケトン類
ビニルケトン類(の単量体)としては、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどが挙げられる。
(f)N−ビニル化合物類
N−ビニル化合物類(の単量体)としては、例えば、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。
(g)その他
その他の単量体としては、例えば、ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体などが挙げられる。
また、ビニル系単量体としては、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものがある。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。また、スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。さらに、リン酸基を有する単量体としてはアシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
さらに、ビニル系単量体として、多官能性ビニル類を使用し、非晶性のビニル系樹脂を、架橋構造を有するものとすることもできる。多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
非晶性ビニル樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で10000〜100000であることが好ましい。
なお、本発明において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量は、以下のようにして測定される値である。
装置「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、測定試料(非晶性樹脂)を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得て、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
非晶性ビニル樹脂のガラス転移点(Tg)は、25〜60℃であることが好ましく、より好ましくは35〜55℃である。非晶性ビニル樹脂のガラス転移点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性及び耐熱保管性(更には粉体の流動性)が両立して得られる。
なお、非晶性ビニル樹脂のガラス転移点(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定される値である。測定手順としては、測定試料(非晶性樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点とする。
非晶性ビニル樹脂の含有量は、結着樹脂全量に対して、50〜90質量%の範囲内であることが好ましく、60〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。
(非晶性ポリエステル樹脂)
本発明でいう非晶性ポリエステル樹脂とは、示差走査熱量測定法(DSC)において、その吸熱量変化で明確な吸熱ピークを有さないポリエステル樹脂のことをいうものである。
本発明で用いられる非晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、多価カルボン酸と多価アルコールとを反応させる一般的なポリエステルの重合法で製造することができる。また、非晶性ポリエステル樹脂は、1種の非晶性ポリエステル樹脂でもよいが、2種以上の非晶性ポリエステル樹脂の混合であってもよい。
非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーの成分としては、構造体ドメインの形成確率の向上の観点から、パラフェニレン骨格を有するモノマーと、メタフェニレン骨格を有するモノマーのモル比が、30:70〜100:0の範囲内であることが好ましく、50:50〜100:0の範囲内であることがより好ましい。また、オルトフェニレン骨格を有するモノマーは、含有しないことが好ましい。
パラフェニレン骨格を有するモノマーを使用すると、非晶性ポリエステル樹脂は直線性を有するポリマーになりやすく、メタフェニレン骨格を有するモノマーを使用すると屈曲性を有するポリマーになりやすい(直線性が低くなる)。
トナー製造時に、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂が相溶して非晶状態となっているとき、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂を結晶化させるためには、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂が速やかに相分離する必要がある。パラフェニレン骨格を有する酸モノマー使用した非晶性ポリエステル樹脂は、屈曲性を有するポリマーになりやすく、結晶性ポリエステル樹脂と相溶している際の樹脂同士の絡まりあいが強くなると考えられる。そのため、相分離が起こりにくくなり、結果として非晶性ポリエステル樹脂のドメインと結晶性ポリエステル樹脂のドメインとが接触した構造体ドメインを形成しづらくなると考えられる。
メタフェニレン骨格を有する酸モノマーとしては、イソフタル酸、m−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジオキシ二酢酸、m−フェニレンジアクリル酸などを用いることができる。これらのなかでも、構造体ドメインの形成確率が向上するという観点から、イソフタル酸が好ましい。
パラフェニレン骨格を有する酸モノマーとしては、テレフタル酸、p−フェニレン二酢酸、p−フェニレンジオキシ二酢酸、p−フェニレンジアクリル酸などを用いることができる。これらのなかでも、構造体ドメインの形成確率が向上するという観点から、テレフタル酸が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールモノマーの成分としては、例えば、2価又は3価のアルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。これらの中ではビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂は、その可塑性を制御しやすいという観点から、数平均分子量(Mn)は、2000〜10000の範囲内にあることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂全量に対して、10〜30%の範囲内であることが好ましい。
上記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、20〜70℃の範囲内にあることが好ましい。ガラス転移点(Tg)は、非晶性ビニル樹脂の場合と同様にして測定することができる。
また、非晶性ポリエステル樹脂としては、非晶性のスチレン−アクリル変性した非晶性ポリエステル樹脂(以下、スチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂ともいう。)を用いることが好ましい。ここで、「スチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂」とは、非晶性のポリエステル分子鎖(以下、ポリエステル重合セグメントとも称する。)に、スチレン−アクリル共重合体分子鎖(以下、スチレン−アクリル共重合体セグメントとも称する。)を分子結合させた構造のポリエステル分子より構成される樹脂のことである。すなわち、スチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル重合セグメントにスチレン−アクリル共重合体セグメントを共有結合させた共重合体構造を有する樹脂である。スチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。
ポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分によって形成されるものであり、上述した非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマー成分及び多価アルコールモノマー成分と同様であるため、説明を省略する。
スチレン−アクリル共重合体セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH=CH−Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
スチレン−アクリル共重合体樹脂セグメントの形成が可能なスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、上記の非晶性ビニル樹脂で説明した、(a)スチレン系単量体、(b)(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
スチレン−アクリル共重合体樹脂セグメントの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
スチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂中のポリエステル重合セグメントの含有率は、スチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂の全量に対し、70〜95質量%の範囲内であると好ましい。また、スチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂中のスチレン−アクリル共重合体セグメントの含有率は、スチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂の全量に対し、5〜30質量%の範囲内であると好ましい。このような範囲内とすることにより、トナーの製造時に、トナー粒子中へのスチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂の取り込み性が良好となる。
(2)結晶性樹脂
トナー粒子には、結晶性樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂を含有する。ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
多価カルボン酸とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;これらカルボン酸化合物の無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価アルコールとは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、50〜95℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは55〜85℃の範囲内である。結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性及び優れた耐ホットオフセット性(更には粉体の流動性)が得られる。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、以下のようにして測定される値である。すなわち、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用い、昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、及び昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって測定されるものであり、この測定によって得られるDSC曲線に基づいて、第1昇温過程における結晶性ポリエステル樹脂に由来の吸熱ピークトップ温度を、融点(Tm)とするものである。測定手順としては、測定試料(結晶性ポリエステル樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ダイヤモンドDSCサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。
また、結晶性ポリエステル樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で5000〜50000、数平均分子量(Mn)で1500〜25000であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂のGPCによって測定される分子量は、測定試料として結晶性ポリエステル樹脂を用いたことの他は上記と同様にして測定されるものである。
結晶性樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対し、3〜30質量%の範囲が好ましい。結晶性樹脂の含有量がトナー粒子全体に対し、3〜30質量%の範囲内であれば、本発明に係る構造体ドメインをトナー粒子中に一定量存在させることができ、トナー加熱時に適当な弾性低下を起こすことができ、良好な低温定着性が得られる。詳しくは、結晶性樹脂の含有量がトナー粒子全体に対し3質量%以上であれば、トナー加熱時にメイン樹脂(結晶性樹脂以外の熱着樹脂;非晶性樹脂)と結晶性樹脂とが相溶しやすいため、弾性低下を起こすことができ、低温定着性がよくなる。一方、30質量%以下であれば、トナー加熱時の弾性低下が大きくなりすぎることもなく、定着器にトナーや紙が巻き付く、いわゆる高温オフセットが発生するのを効果的に防止することができる点で優れている。以上の点から、結晶性樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対し、3〜30質量%の範囲がより好ましい。
非晶性樹脂と結晶性樹脂との質量比(非晶性樹脂/結晶性樹脂)は97/3〜70/30であることが好ましく、より好ましくは95/5〜75/25である。質量比(非晶性樹脂/結晶性樹脂)が上記範囲にあることにより、形成されるべきトナー粒子の表面に結晶性樹脂が露出せず、又は、露出してもその量が極めて少なく、かつ、低温定着性を図ることができるだけの量の結晶性樹脂をトナー粒子に導入することができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂としては、非晶性のスチレン−アクリル変性した結晶性ポリエステル樹脂(以下、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂ともいう。)を用いることが好ましい。ここで、「スチレン−アクリル変結晶性ポリエステル樹脂」とは、結晶性のポリエステル分子鎖(以下、結晶性ポリエステル重合セグメントとも称する。)に、スチレン−アクリル共重合体分子鎖(以下、スチレン−アクリル共重合体セグメントとも称する。)を分子結合させた構造のポリエステル分子より構成される樹脂のことである。すなわち、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル重合セグメントにスチレン−アクリル共重合体セグメントを共有結合させた共重合体構造を有する樹脂である。スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。
スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂中のポリエステル重合セグメントの含有率は、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の全量に対し、70〜95質量%の範囲内であると好ましい。また、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂中のスチレン−アクリル共重合体セグメントの含有率は、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の全量に対し、5〜30質量%の範囲内であると好ましい。このような範囲内とすることにより、上記変性率が5質量%以上であれば、定着後の画像において、メイン樹脂(結晶性樹脂以外の熱着樹脂;非晶性樹脂)と結晶性樹脂との適度な相溶性が得られるため、メイン樹脂(結晶性樹脂以外の熱着樹脂;非晶性樹脂)と結晶性樹脂において相分離し難く、画像の折り曲げ強度が低下するのを効果的に防止することができる。また、上記変性率が30質量%以下であれば、相溶性が高くなりすぎることもなく、メイン樹脂(結晶性樹脂以外の熱着樹脂;非晶性樹脂)のガラス転移点が低くなるのを防止し、画像同士の融着による張り付き(いわゆるタッキング)が発生するのを効果的に防止することができる点で優れている。
さらにトナーの製造時にトナー粒子(ビニル樹脂マトリクス)中へのスチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の取り込み性が良好となる点で優れている。
結晶性樹脂が、上記スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル重合セグメントとスチレン−アクリル共重合体セグメント(以下、ビニル系重合セグメントともいう。)とは、両反応性単量体を介して結合された結晶性樹脂であることが好ましい。なお、上記ポリエステル重合セグメントは結晶性ポリエステル樹脂から構成される。結晶性樹脂がスチレン−アクリル樹脂を含むことで、結晶性樹脂のドメインを層状のラメラ結晶構造とし、当該ラメラ結晶構造の分子鎖折り畳みによる厚さをある程度長くすることができる。すなわち、結晶性を高くすることができる。
ここで、「層状のラメラ結晶構造」とは、結晶性樹脂の分子鎖の折り畳みによる結晶化で生じた層状構造を意味する。
また、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂とすることで、層状のラメラ結晶構造のアスペクト比及びラメラ結晶構造の厚さを所定の範囲に制御しやすくなる。これは、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂に導入されるビニル系重合セグメントは非晶性樹脂との親和性が高いため、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂が非晶性樹脂となじみやすく(固定化されやすく)なり、その結果、結晶性樹脂の分子鎖が配列しやすくなることによるものと考えられる。
(a)ビニル系重合セグメント
スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を構成するビニル系重合セグメントは、ビニル系単量体を重合して得られた樹脂から構成される。ここで、ビニル系単量体としては、ビニル系樹脂を構成する単量体として上述したものが同様に用いられうるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂中におけるビニル系重合セグメントの含有量は、5〜30質量%の範囲内であることが好ましく、5〜20質量%の範囲内であることがより好ましく、5〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であると、ビニル系非晶性樹脂との親和性(相溶性)及び結晶としての安定性がいう利点がある。
(b)ポリエステル重合セグメント
スチレン−アクリル変性樹脂を構成するポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒の存在下で、重縮合反応を行うことにより製造された結晶性ポリエステル樹脂から構成される。ここで、多価カルボン酸及び多価アルコールの具体的な種類については、上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
(c)両反応性単量体
両反応性単量体とは、ポリエステル重合セグメントとビニル系重合セグメントとを結合する単量体で、分子内に、ポリエステル重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基と、ビニル系重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基との双方を有する単量体である。両反応性単量体は、好ましくはヒドロキシ基又はカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。さらに好ましくは、カルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。すなわち、ビニル系カルボン酸であることが好ましい。
両反応性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素原子数1〜3個)のエステルであってもよいが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介してポリエステル重合セグメントとビニル系重合セグメントとが結合される。
両反応性単量体の使用量は、トナーの低温定着性、粉体の流動性、更には耐高温オフセット性や耐久性を向上させる観点から、ビニル系重合セグメントを構成するビニル系単量体(両反応性単量体を含む)の総量100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、4〜8質量部がより好ましい。
(d)スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の製造方法
スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
(i)ポリエステル重合セグメントを予め重合しておき、当該ポリエステル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ビニル系重合セグメントを形成するための芳香族系ビニル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体を反応させることにより、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を形成する方法である。
(ii)ビニル系重合セグメントを予め重合しておき、当該ビニル系重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸及び多価アルコールを反応させることにより、ポリエステル重合セグメントを形成する方法である。
(iii)ポリエステル重合セグメント及びビニル系重合セグメントをそれぞれ予め重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法である。
本発明においては、上記製造方法のうち、いずれも用いることができるが、好ましくは、上記(ii)項の方法が好ましい。具体的には、ポリエステル重合セグメントを形成する多価カルボン酸及び多価アルコール、並びにビニル系重合セグメントを形成するビニル系単量体及び両反応性単量体を混合し、重合開始剤を加えてビニル系単量体と両反応性単量体を付加重合させてビニル系重合セグメントを形成した後、エステル化触媒を加えて、重縮合反応を行うことが好ましい。
ここで、ポリエステル重合セグメントを合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。また、エステル化触媒としては、酸化ジブチルスズ、2−エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、テトラブトキシチタン等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。
(e)スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の形態
本発明に係るトナーにおいては、トナー粒子の断面に、結晶性樹脂、特にスチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂から構成されるラメラ結晶構造を有しているのが好ましい。スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖となるスチレン−アクリル樹脂ユニット(ビニル系重合セグメント)に、結晶性ポリエステル樹脂ユニット(ポリエステル重合セグメント)が、側鎖として化学的に結合した構造を有している。その結果、スチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂は櫛形状の分子構造を有している。このような櫛形状の分子構造は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットが、例えばポリエステル樹脂とは異なる樹脂中で、折りたたまれて結晶化することにより層状のラメラ結晶構造を構成することとなる。
また、本発明に係るトナーでは、トナー粒子の断面において、結晶性樹脂、特にスチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂から構成される層状のラメラ結晶構造を有している場合には、該ラメラ結晶構造の長径と短径とのアスペクト比(長径/短径)の平均値が1.0〜3.0であり、かつ、該ラメラ結晶構造の厚さの平均値が45〜300nmであるのが好ましい。ここで、アスペクト比を算出するための「長径」は、ラメラ結晶構造の長さ及び厚さのうち値が大きい方を指し、「短径」は値が小さい方を指す(長径=短径のとき、アスペクト比は1である)。なお、ラメラ結晶構造の長さ及び厚さ(並びにこれらそれぞれの平均値)の測定方法や、アスペクト比(及びその平均値)の算出方法は、上述したトナー粒子の断面の観察方法で観察したトナー粒子断面の写真画像により、以下に示すように算出することができる。
トナー粒子の断面の写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて、トナーの断面に分散している層状のラメラ結晶構造の長さ及び厚さを観察した20点のドメインについて測定し、それぞれの平均値を得る。また、各ドメインについて測定した長さ及び厚さのうち、大きい方の値を長径とし、小さい方の値を短径としたときの長径/短径の値をアスペクト比として算出し(長径=短径のとき、アスペクト比は1とする)、観察した20点のドメインの平均値を得る。また、20の視野における層状のラメラ結晶構造の個数を測定し、そのうち厚さ45〜300nmのものの個数割合[%]を算出する。
なお、上記の観察において、長径又は短径が40nm未満である層状のラメラ結晶構造については、観察対象外とする。本発明においては、上記の方法でトナー粒子100個の断面を観察した際、その断面において、層状のラメラ結晶構造のアスペクト比(長径/短径)と厚さは上記範囲を満足するトナー粒子が全体の60%(60個)以上存在しているのが好ましく、80%(80個)以上存在していることがより好ましい。層状のラメラ結晶構造のアスペクト比(長径/短径)と厚さが上記範囲を満足するトナー母体粒子が全体の60%以上であれば、低温定着性、粉体の流動性、更には定着分離性、耐熱保存性などといった各種性能の向上が達成される。
上記の規定を満足する限り、トナー母体粒子の断面における層状のラメラ結晶構造のその他の構成について特に制限はないが、層状のラメラ結晶構造のアスペクト比の値は、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1〜5である。また、層状のラメラ結晶構造の長さの平均値は、好ましくは45〜900nmであり、より好ましくは200〜700nmである。さらに層状のラメラ結晶構造の厚さの平均値は、45〜300nmであることが好ましく、300〜500nmであることがより好ましい。また、層状のラメラ結晶構造のうち、厚さが45〜300nmであるものの個数割合は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。層状のラメラ結晶構造の各種構成が上記範囲を満たすことで、低温定着性、粉体の流動性、更には定着分離性、耐熱保存性などといった各種性能が特に顕著に発現しうる。
<離型剤(オフセット防止剤ないしワックス)>
離型剤(ワックス)としては、特に低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、又は酸化型のポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックス、及びベヘン酸ベヘネートなどのエステル系ワックスを好適に用いることができる。
具体的には、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。これらのうちでも、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの、具体的には、融点が40〜90℃のものを用いることが好ましい。
離型剤の含有割合は、トナー粒子中に1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。
<着色剤>
本発明に係るトナー粒子には、着色剤を含んでも良い。着色剤としては、カーボンブラック、黒色酸化鉄、染料、顔料等が挙げられる。
カーボンブラック(ブラックトナーの着色剤)としては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。
黒色酸化鉄としては、例えばマグネタイト、ヘマタイト、三酸化チタン鉄などが挙げられる。
染料としては、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などが挙げられる。
顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同150、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60などが挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。着色剤の含有割合は、トナー粒子中に1〜10質量%とされることが好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。
<荷電制御剤>
本発明に係るトナー粒子には、荷電制御剤を含んでもよい。荷電制御剤の例としては、例えば、サリチル酸誘導体の亜鉛やアルミニウムによる金属錯体(サリチル酸金属錯体)、カリックスアレーン化合物、有機ホウ素化合物、及び含フッ素4級アンモニウム塩化合物などを挙げることができる。
荷電制御剤の含有割合は、最終的に得られる結着樹脂100質量部に対して通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.5〜5質量部である。
(外添剤粒子、滑剤)
本発明に係るトナー粒子には、外添剤粒子を含有してもよい。外添剤粒子としては特に制限されないが、数平均1次粒径が2〜800nm程度の無機微粒子が好ましい。外添剤粒子としては、従来公知の外添剤粒子が用いられうる。かような外添剤粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子などからなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、及びチタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、光沢処理が行われていることが好ましい。
また、本発明に係るトナー粒子には、クリーニング性や転写性をさらに向上させるために滑剤を含有してもよい。例えば、以下の様な高級脂肪酸の金属塩がある。すなわち、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩が挙げられる。
これらの外添剤粒子や滑剤の添加量は、いずれもトナー100質量部に対して0.1〜10.0質量部の範囲が好ましい。
(トナーのガラス転移点)
本発明のトナーのガラス転移点(Tg)は、25〜65℃であることが好ましく、より好ましくは35〜55℃である。本発明のトナーのガラス転移点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性及び耐熱保管性(更には粉体の流動性)が両立して得られる。トナーのガラス転移点は、測定試料としてトナーを用いたことの他は上記と同様にして測定されるものである。
[静電潜像現像用トナーの製造方法]
本発明のトナー粒子を製造する方法としては、例えば、粉砕法、懸濁重合法、ミニエマルション法、乳化凝集法、その他の公知の方法などを挙げることができるが、乳化凝集法で製造することが好ましい。
本発明に係るトナー粒子は、トナー粒子をコアとして、その表面にシェル層を設けることによって、コア・シェル構造のトナー粒子とすることもできる。コア・シェル構造とすることによって、耐熱保管性と低温定着性、更には粉体の流動性をより一層向上させることができる。
なお、本明細書において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
トナーの製造方法は、例えば、以下の各工程を含むものとして構成することができる。ここで、以下の一例は、トナー粒子が非晶性樹脂、結晶性樹脂、離型剤及び着色剤を含有するものである場合について記載したものであり、本発明の技術的範囲がこれらの形態に限定されるわけではない。
(1)非晶性ビニル樹脂微粒子と、離型剤微粒子を含む水系分散液(a)を調製する工程を行う。
(2)非晶性ポリエステル樹脂(好ましくはスチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂)を有機溶媒に溶解し、水系分散媒中に乳化分散させ、有機溶媒を除去することにより非晶性ポリエステル樹脂微粒子を含む水系分散液(b)を調製する工程を行う。
(3)結晶性ポリエステル樹脂(好ましくはスチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂)を有機溶媒に溶解し、水系分散媒中に乳化分散させ、有機溶媒を除去することにより結晶性ポリエステル樹脂微粒子を含む水系分散液(c)を調製する工程を行う。
(4)着色剤微粒子を含む水系分散液(d)を調製する工程を行う。
(5)上記の、非晶性ビニル樹脂微粒子と離型剤微粒子の分散液(a)、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(c)と、着色剤微粒子の分散液(d)を混合した分散液を調製し、当該混合液を昇温して、非晶性樹脂微粒子及び結晶性樹脂微粒子を凝集・会合させて、所定の体積基準のメジアン粒径の会合粒子を形成する工程を行う。
(6)(5)の会合粒子に、さらに、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(b)を添加して、凝集・会合させて、所定の体積基準のメジアン粒径の会合粒子を形成する工程を行う。
(7)会合粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御したトナー粒子を得る熟成工程を行う。
(8)トナー粒子の分散液を冷却する工程を行う。冷却する工程は、冷却速度が1℃/分以下であることが好ましい。さらに、冷却途中に、結晶性ポリエステル樹脂の融点より20℃低い温度(例えば、融点80℃の結晶性ポリエステル樹脂を使用した場合の温度は60℃)にて3時間以上保持する工程(保温工程)を入れてもよい。これにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が促進されやすくなる。
(9)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過・洗浄工程を行う。
(10)洗浄されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程を行う。
本発明に係るトナー粒子の形成では、(6)に示すように、非晶性ポリエステル樹脂分散液(b)を後から添加することが好ましい。これにより、構造体ドメインを形成することができるとともに、非晶性ポリエステル樹脂が、トナー粒子の表面近傍の位置に存在することとなる。このようなトナー粒子を含有するトナーは、定着時にトナー粒子同士が融け合いやすいため、より優れた低温定着性が得られる。
上述した各工程を実施するにあたっては、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、(1)〜(4)で調製した分散液(a)〜(d)については、機械的せん断力によって乳化させる方法などの種々の乳化方法を用いて調製することができるが、転相乳化法と称される手法を用いて調製することが好ましい。特に、(3)で調製した結晶性樹脂微粒子を含む分散液(b)については、転相乳化法により調製されたものを用いることで、単分散かつ小粒径でトナーへの導入に適した分散液を得られるという利点がある。「転相乳化法」では、有機溶媒に樹脂を溶解し、樹脂溶解液を得る溶解工程と、樹脂溶解液に中和剤を投入する中和工程と、中和後の樹脂溶解液を水系分散媒中に乳化分散させ、樹脂乳化液を得る乳化工程と、樹脂乳化液から有機溶媒を除去する脱溶媒工程と、を経ることで、樹脂微粒子の分散液が得られる。なお、分散液中の樹脂微粒子の粒径は、中和剤添加量を変更することによって制御可能である。
(外添剤添加工程)
上述した製造方法によって製造したトナー粒子に、外添剤の添加する方法としては、乾燥されたトナー粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー及びコーヒーミルなどの機械式の混合装置が挙げられる。
<静電荷像現像用現像剤>
本発明に係る静電荷像現像用トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。静電荷像現像用トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。
キャリアの体積基準のメジアン径としては20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは25〜80μmとされる。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
<電子写真画像形成方法>
本発明に係る静電荷像現像用現像剤は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの静電荷像担持体(「電子写真感光体」又は単に「感光体」とも称する。)とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及び静電荷像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
電子写真画像形成方法としては、具体的には、本発明に係る静電荷像現像用現像剤を使用して、例えば静電荷像担持体上に帯電装置にて帯電(帯電工程)し、像露光することにより静電的に形成された静電荷像(露光工程)を、現像装置において本発明に係る静電荷像現像用現像剤中のキャリアでトナーを帯電させて現像することにより顕像化させてトナー画像を得る(現像工程)。そして、このトナー画像を用紙に転写(転写工程)し、その後、用紙上に転写されたトナー画像を接触加熱方式の定着処理によって用紙に定着(定着工程)させることにより、可視画像が得られる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔結晶性ポリエステル樹脂〔1〕の合成〕
下記の付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
・スチレン 35質量部
・ブチルアクリレート 9質量部
・アクリル酸 4質量部
・重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部
また、下記の重縮合系樹脂の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
・セバシン酸 278質量部
・ドデカンジオール 280質量部
次いで、撹拌下で上記付加重合系樹脂の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に、200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることにより、スチレン−アクリル共重合体セグメントがポリエステル重合セグメントに結合してなるスチレン−アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂である結晶性ポリエステル樹脂〔1〕を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂〔1〕は、数平均分子量(Mn)が5000、融点が72℃であった。
〔結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔1〕の調製〕
結晶性ポリエステル樹脂〔1〕30質量部を溶融させて、溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂〔1〕の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が200nm、固形分量が30質量部の結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔1〕を調製した。
〔非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕の調製〕
下記の付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
・アクリル酸 10質量部
・スチレン 25質量部
・n−ブチルアクリレート 5質量部
・重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
また、下記の重縮合系樹脂の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
・p−フェニレン二酢酸 65質量部
・m−フェニレン二酢酸 195質量部
・エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
次いで、撹拌下で上記付加重合系樹脂の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、200℃まで昇温し、常圧下(101.3kPa)にて5時間反応を行った。
さらに減圧下(8kPa)にて2時間反応を行うことにより、スチレン−アクリル共重合体セグメントがポリエステル重体セグメントに結合してなる非晶性ポリエステル樹脂(スチレン−アクリル変性非晶性ポリエステル樹脂)〔a1〕を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕は、ガラス転移点(Tg)が60℃、重量平均分子量(Mw)が47000であった。
〔非晶性ポリエステル樹脂〔a2〕〜〔a9〕の合成〕
非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕の合成において、重縮合系樹脂の原料モノマーとして添加したp−フェニレン二酢酸65質量部、m−フェニレン二酢酸195質量部を、表1に記載の多価カルボン酸モノマーの種類と添加量に変更した以外は同様にして、非晶性ポリエステル樹脂〔a2〕〜〔a9〕を合成した。
Figure 2017111291
〔非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕の調製〕
非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕30質量部を溶融させて、溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。 そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が250nm、固形分量が30質量部の非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕を調製した。
〔非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A2〕〜〔A9〕の調製〕
非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕の調製において、非晶性ポリエステル樹脂の種類を、〔a1〕から、〔a2〕〜〔a9〕に変更した以外は同様にして、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A2〕〜〔A9〕を調製した。
〔非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液〔B〕の調製〕
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8g及びイオン交換水3Lを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させたものを添加し、再度液温80℃とし、
・スチレン 480g
・n−ブチルアクリレート 250g
・メタクリル酸 68.0g
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液〔B1〕を調製した。
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7gをイオン交換水3Lに溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、樹脂微粒子の分散液〔B1〕260gと、
・スチレン(St) 284g
・n−ブチルアクリレート 92g
・メタクリル酸(MAA) 13g
・n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.5g
・離型剤:ベヘン酸ベヘネート(融点73℃) 190g
からなる単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた溶液と、を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6gをイオン交換水200mLに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液〔B2〕を調製した。
(第3段重合)
さらに、樹脂微粒子の分散液〔B2〕にイオン交換水400mLを添加しよく混合したのち、過硫酸カリウム11gをイオン交換水400mLに溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、
・スチレン(St) 445g
・n−ブチルアクリレート 128g
・メタクリル酸(MAA) 28g
・n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8g
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液〔B〕を調製した。
得られた非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液〔B〕について、非晶性ビニル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径が180nm、ガラス転移点(Tg)が55℃、重量平均分子量(Mw)が32000であった。
〔着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕の調製〕
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕を調製した。
得られた着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕について、着色剤微粒子の平均粒径(体積基準のメジアン径)は110nmであった。
〔トナー1及び現像剤1の製造〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液〔B〕180質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔1〕30質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、25℃でpHを10に調整した。
その後、着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕40質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。昇温を開始し、この系を60分間かけて70℃まで昇温し、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積中位粒径(D50)が5.7μmとなるように、撹拌速度を制御した。その後、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕15質量部(固形分換算)を20分間かけて添加後、この状態で「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、80℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナー粒子の平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で1℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、ブラックのトナー粒子〔1X〕を得た。
得られたトナー粒子〔1X〕100質量部に、外添剤として、疎水性シリカ微粒子(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン微粒子(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業社製)により回転翼周速35mm/sec、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー〔1〕を製造した。
また、トナー〔1〕に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤〔1〕を製造した。
〔トナー2〜8、11、12、及び、現像剤2〜8、11、12の製造〕
トナー1の製造において、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕を表2に記載の種類に変更し、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液を投入前の会合粒子が表2に記載の粒径(体積中位粒径(D50))となるように撹拌速度の制御条件を変更した以外は同様にして、トナー2〜8、11、12を製造した。
また、トナー2〜8、11、12について、トナー1と同様の方法で、現像剤2〜8、11、12を製造した。
〔トナー9び現像剤9の製造〕
トナー1の製造において、以下に示す方法によって、非晶性ポリエステル樹脂(APEs)と結晶性ポリエステル樹脂(CPEs)の微粒子の水系分散液の投入順を逆にして、トナー8を製造した(表2参照)。以下、具体的な製造方法を示す。
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液〔B〕180質量部(固形分換算)、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A6〕15質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、25℃でpHを10に調整した。
その後、着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕40質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。昇温を開始し、この系を60分間かけて70℃まで昇温し、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積中位粒径(D50)が5.3μmとなるように、撹拌速度を制御した。その後、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A1〕15質量部(固形分換算)を20分間かけて添加後、この状態で「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、80℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナー粒子の平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で1℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、ブラックのトナー粒子〔9X〕を得た。
得られたトナー粒子〔9X〕100質量部に、外添剤として、疎水性シリカ微粒子(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン微粒子(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業社製)により回転翼周速35mm/sec、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー〔9〕を製造した。
また、トナー〔9〕に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤〔9〕を製造した。
〔トナー10及び現像剤10の製造〕
トナー1の製造において、以下に示す方法によって、非晶性ポリエステル樹脂(APEs)と結晶性ポリエステル樹脂(CPEs)の微粒子の水系分散液を同時に投入するように変更して、トナー10を製造した(表2参照)。以下、具体的な製造方法を示す。
〔結晶性ポリエステル樹脂微粒子及び非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A10〕の調製〕
結晶性ポリエステル樹脂〔1〕15質量部及び非晶性ポリエステル樹脂〔a7〕15質量部を溶融させて、溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の非晶性ポリエステル樹脂〔1〕の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が260nm、固形分量が30質量部の結晶性ポリエステル樹脂微粒子及び非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A10〕を調製した。
次に、上記水系分散液〔A10〕を用いて、トナー10を製造する方法を説明する。
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液〔B〕180質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、25℃でpHを10に調整した。
その後、着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕40質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。昇温を開始し、この系を60分間かけて70℃まで昇温し、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積中位粒径(D50)が2.0μmとなるように、撹拌速度を制御した。その後、結晶性ポリエステル樹脂微粒子及び非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A10〕30質量部(固形分換算)を20分間かけて添加後、この状態で「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、80℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナー粒子の平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で1℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、ブラックのトナー粒子〔10X〕を得た。
得られたトナー粒子〔10X〕100質量部に、外添剤として、疎水性シリカ微粒子(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン微粒子(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業社製)により回転翼周速35mm/sec、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー〔10〕を製造した。
また、トナー〔10〕に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤〔10〕を製造した。
Figure 2017111291
<分子量の測定方法>
装置「HLC−8120GPC」(東ソー社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、測定試料(ビニル樹脂)を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得て、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出した。検量線測定用のポリスチレンとしては、10点用いた。
<ガラス転移点(Tg)の測定方法>
装置「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定を行った。測定試料(ビニル樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットした。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点とした。
<融点(Tm)の測定方法>
装置「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定を行った。測定試料(ビニル樹脂)1.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットした。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行い、半値幅15℃以内の明瞭な吸熱ピークに対して、そのピークトップの温度を融点とした。
<トナー粒子の断面観察方法>
(1.トナー粒子の切片の作製方法)
トナーを四酸化ルテニウム(RuO)蒸気雰囲気下で10分間曝露した後、光硬化性樹脂「D−800」(日本電子社製)中に分散させた後、光硬化させてブロックを形成した。次いで、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、上記のブロックより厚さ60nmから100nm程度の薄片状のサンプルを切り出し、透過電子顕微鏡観察用の支持膜付きグリッドに載せた。直径5cm(5cmφ)のプラスチックシャーレに濾紙を敷き、その上に切片の載ったグリッドを切片の載った面を上にして載せた。
(2.四酸化ルテニウム染色条件)
染色条件(時間、温度、染色剤の濃度及び量)は、透過電子顕微鏡観察をする際に各樹脂の区別ができる条件に調整した。例えば、0.5%RuO染色液2〜3滴を、シャーレ内の2点に滴下し、蓋をし、10分間後、シャーレの蓋を外し染色液の水分が無くなるまで放置した。
(3.トナー粒子の断面観察方法(条件))
以下の装置、試料、観察条件によって、トナー粒子の断面を観察した。
装置:走査型電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子社製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO)によって染色したトナー粒子の切片(100nm程度)
観察条件:加速電圧30kV、透過像モード、明視野像、倍率10000倍
なお、トナー粒子20個について、断面の直径が5.5〜6.5μmのトナー粒子の断面を選択して観察した。
<非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、構造体ドメインを形成する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの割合(%)の算出方法>
上述した走査型電子顕微鏡を用いた断面観察の際に視野を撮影し、写真画像(トナー粒子の断面画像)をスキャナーにより取り込んだ。そして、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて、トナーの断面に分散しているドメインの断面積を測定した。ここで、構造体ドメインを形成している非晶性ポリエステル樹脂のドメインと、構造体ドメインを形成していない非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積をそれぞれ測定し、非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、構造体ドメインを形成している非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合(%)を算出した。また、トナー粒子20個の断面についてそれぞれ割合(%)を計算し、その平均値を「非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、構造体ドメインを形成する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの割合(%)」として算出した。
<トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離の算出方法>
上記と同様に、トナー粒子の断面画像を、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて解析することによって算出した。具体的には、構造体ドメインの外周面の一点と、トナー粒子の外周の一点を結んだ線分の長さ測定し、それぞれの点を外周上でずらして線分の長さを測定した際に、線分の長さが最も短くなるときの当該線分の長さを、「トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離」として算出した。また、トナー粒子20個の断面に存在する構造体ドメインについて最短距離を算出し、その平均値を「トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離の平均値」とした。
<表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの割合の算出>
上記と同様に、トナー粒子の断面画像を、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて解析することによって算出した。具体的には、上記「トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離の算出」と同様の方法で、構造体ドメイン形成する結晶性ポリエステル樹脂のドメイン部分と、非晶性ポリエステル樹脂のドメイン部分について、トナー粒子の外周からそれぞれのドメイン部分までの最短距離を算出した。次に、それらの最短距離を比較して、非晶性ポリエステル樹脂のドメイン部分の方が小さいものを、表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインとした。そして、構造体ドメインを形成する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積のうち、トナー粒子の表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合(%)を算出した。また、トナー粒子20個の断面に存在する構造体ドメインについてそれぞれ割合(%)を計算し、その平均値を「構造体ドメインを形成する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積のうち、トナー粒子の表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合(%)」とした。
<トナー粒子の断面の観察結果>
上記に示す観察方法に従って、作製したトナー1〜トナー12のトナー粒子の断面を観察した。トナー1〜9のトナーにおいては、観察したトナー粒子20個の断面全てにおいて、構造体ドメインが観察できた。
トナー10においては、観察したトナー粒子20個の断面全てにおいて、結晶性ポリエステル樹脂のドメインが、非晶性ポリエステル樹脂のドメインによって外周を80%以上被覆された状態となっており、構造体ドメインは観察できなかった。
トナー11においては、トナー粒子の断面において、構造体を形成しない非晶性ポリエステル樹脂のドメインが多く存在しており、構造体形成している非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合は9%であった。また、トナー12も、トナー粒子の断面において、構造体を形成しない非晶性ポリエステル樹脂のドメインが多く存在しており、構造体形成している非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合は11%であった。
また、トナー1〜9、11、12で観察できた構造体ドメインの、トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離の平均値(μm)、構造体ドメインを形成する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積のうち、トナー粒子の表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合(%)を算出した。これらの結果を表3に示す。
<評価>
(低温定着性)
複写機「bizhub PRESS C1070」(コニカミノルタ社製)において、定着装置を、加熱ローラの表面温度(定着温度)を120〜200℃の範囲で変更することができるように改造したものに現像剤を装填して用いた。
常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、A4サイズの上質紙「CFペーパー」(コニカミノルタ社製)上に、トナー付着量8mg/cmのベタ画像を定着させる定着実験を、設定される定着温度を120℃から2℃刻みで増加させるように変更しながら200℃まで繰り返し行った。
目視で低温オフセットによる画像剥がれが観察されない定着実験のうち、最低の定着温度に係る定着実験の当該定着温度を、最低定着温度として評価した。最低定着温度が150℃未満であるものを合格と判定した。結果は表3に示す。
(耐ブロッキング性)
トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めてタップデンサー「KYT−2000」(セイシン企業社製)で室温(25℃)にて600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを、48メッシュ(日開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないよう注意しながら載せて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定した。次いで、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存した残存トナー量を測定し、下記式(1)によりトナー凝集率を算出し、これにより評価した。
式(1):トナー凝集率(質量%)={残存トナー量(g)/0.5(g)}×100
なお、トナー凝集率が10質量%未満である場合が優良、10質量%以上20質量%以下である場合が良好として判断され、20質量%を超える場合は、実用上使用不可であり、不合格と判断される。
Figure 2017111291
表3に示した結果から明らかなように、実施例のトナーは、低温定着性と耐ブロッキング性が両方ともに優れた性能を示すものであった。これに対して、比較例のトナー10〜12は、いずれかの項目において、劣るものであった。
また、実施例のトナー7,8において、トナー粒子の外周から構造体ドメインまでの最短距離の平均値が1.0μm以下のトナー7の方が、トナー8よりも最低定着温度が低いことが分かった。これは、当該最短距離が小さい方が、着時に非晶性ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステル樹脂と相溶したとき、溶融した非晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子の表面近傍に存在することとなるため、トナー粒子同士が融け合いやすく、より優れた低温定着性が得られたものと考えられる。
また、実施例のトナー7〜9において、構造体ドメインを形成する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積のうち、トナー粒子の表面側に位置する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が50%以上のトナー7,8の方が、トナー9よりも最低定着温度が低いことが分かった。これは、定着時に非晶性ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステル樹脂と相溶したとき、溶融した非晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子の表面側に存在することになるため、トナー粒子同士が融け合いやすく、より優れた低温定着性が得られたものと考えられる。
10 トナー粒子
11 マトリクス
12 非晶性ポリエステル樹脂のドメイン
13 結晶性ポリエステル樹脂のドメイン
14 構造体ドメイン

Claims (8)

  1. 少なくとも非晶性ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記トナー粒子が、前記非晶性ビニル樹脂のマトリクス中に、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインと前記結晶性ポリエステル樹脂のドメインとが接触した構造体ドメインを含有し、
    前記トナー粒子の断面において、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、前記構造体ドメインを形成している前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、30%以上であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
  2. 前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、パラフェニレン骨格を有するモノマーと、メタフェニレン骨格を有するモノマーのモル比が、30:70〜100:0の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、テレフタル酸モノマーとイソフタル酸モノマーのモル比が、30:70〜100:0の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記トナー粒子の断面において、前記非晶性ポリエステル樹脂のドメイン全体の断面積のうち、前記構造体ドメインを形成している前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、パラフェニレン骨格を有するモノマーと、メタフェニレン骨格を有するモノマーのモル比が、50:50〜100:0の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸モノマーにおいて、テレフタル酸モノマーとイソフタル酸モノマーのモル比が、50:50〜100:0の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の静電潜像現像用トナー。
  7. 前記トナー粒子の断面において、前記トナー粒子の外周から前記構造体ドメインまでの最短距離の平均値が、1μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  8. 前記トナー粒子の断面において、前記構造体ドメインを形成する前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積のうち、前記トナー粒子の表面側に位置する前記非晶性ポリエステル樹脂のドメインの断面積の割合が、50%以上であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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