以下に、本発明に係る排水処理システムの好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る排水処理システムの概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、第1実施形態に係る排水処理システム1は、固液分離部2と、散水ろ床部3と、膜ろ過部4と、水質測定部5と、制御部6と、排水管11と、処理用排水管12と、処理水管13と、ろ過水管14と、膜濃縮水管16と、散水ろ床接続管17と、固液分離接続管18と、を有する。
固液分離部2は、処理対象となる排水W1に対する第1段階目の浄化処理を行う。固液分離部2は、処理対象の排水W1に対して固液分離処理を行って処理用排水W2を得る。具体的には、固液分離部2は、生活排水及び工場排水等の排水W1を受け入れ、この排水W1の固液分離処理を行って、処理用排水W2を得るものである。固液分離部2は、排水W1の固液分離処理を行うために必要なろ過手段を洗浄する逆洗浄機能を有し、所定のタイミングに、この逆洗浄機能を有効にする。
散水ろ床部3は、処理対象の排水W1に対する第2段階目の浄化処理を行う。散水ろ床部3は、処理用排水W2に対して生物処理を行って処理水W3を得る。散水ろ床部3は、固液分離部2の後段(すなわち処理用排水W2の下流側)に設置され、固液分離部2によって得られた処理用排水W2を受け入れる。ついで、散水ろ床部3は、この処理用排水W2を生物処理して、処理水W3を得る。その後、散水ろ床部3は、膜ろ過部4に処理水W3を送出する。また、散水ろ床部3は、この処理用排水W2の生物処理に必要なろ過手段の洗浄機能を有し、所定のタイミングに、この洗浄機能を有効にする。
膜ろ過部4は、処理対象の排水W1に対する第3段階目の浄化処理を行う。膜ろ過部4は、散水ろ床部3を通過した処理水W3に対して固液分離処理を行って、処理水W3をろ過水W4と膜濃縮水W5とに分離する。膜ろ過部4は、ろ過膜を有する。膜ろ過部4は、散水ろ床部3の後段(すなわち処理水W3の下流側)に設置されるろ過手段である。膜ろ過部4は、散水ろ床部3によって得られた処理水W3を受け入れて、処理水W3を、ろ過膜を透過したろ過水W4と、ろ過膜を透過していない膜濃縮水W5とに分離する。ろ過膜は、処理水W3中の微細な固形成分、及び処理水W3に含まれる微生物を捕集する。そのため、ろ過水W4には、このろ過膜を透過しなかった微生物等が含まれず、膜濃縮水W5には、このろ過膜を透過しなかった微生物等が含まれる。
排水管11と、処理用排水管12と、処理水管13と、ろ過水管14と、膜濃縮水管16と、散水ろ床接続管17と、固液分離接続管18と、は、いずれも水が流れる通路、本実施形態では配管である。各部の配置と流れる水について説明する。排水管11は、固液分離部2の上流側に接続され、固液分離部2に排水W1を流入させる。処理用排水管12は、一方の端部が固液分離部2の下流側に接続され、他方の端部が散水ろ床部3の上流側に接続される。処理用排水管12は、固液分離部2と散水ろ床部3とを接続し、固液分離部2からの処理用排水W2を散水ろ床部3に供給する。処理水管13は、一方の端部が散水ろ床部3の下流側に接続され、他方の端部が膜ろ過部4の上流側に接続される。処理水管13は、散水ろ床部3と膜ろ過部4とを接続して、散水ろ床部3からの処理水W3を膜ろ過部4に供給する。ろ過水管14は、膜ろ過部4の下流側に接続され、膜ろ過部4からろ過水W4を排出する。
膜濃縮水管16は、膜ろ過部4に接続され、膜ろ過部4から膜濃縮水W5を排出する。散水ろ床接続管17は、膜濃縮水管16と散水ろ床部3とを接続して、膜濃縮水管16からの膜濃縮水W5を、散水ろ床部3の上流(固液分離部2と散水ろ床部3との間)に供給する。散水ろ床接続管17には、膜濃縮水管16からの膜濃縮水W5の供給量を制御するための膜濃縮水供給弁17aが設けられている。固液分離接続管18は、膜濃縮水管16と固液分離部2とを接続して、膜濃縮水管16からの膜濃縮水W5を、固液分離部2の上流に供給する。固液分離接続管18には、膜濃縮水管16からの膜濃縮水W5の供給量を制御するための膜濃縮水供給弁18aが設けられている。水質測定部5は、処理用排水W2と処理水W3との水質を計測するセンサーである。制御部6は、水質測定部5の水質測定結果に基づいて、膜濃縮水供給弁17a、及び膜濃縮水供給弁18aの開閉を制御して、膜濃縮水W5の供給を制御する。
(固液分離部について)
次に、図1に示した固液分離部2について詳細に説明する。ここでは、まず、固液分離部2の構成について説明し、その後、固液分離部2による排水W1の固液分離処理について説明する。
図2は、第1実施形態に係る固液分離部の一構成例を示す模式図である。図2に示すように、この固液分離部2は、排水W1を貯留する分配槽20及びろ過水槽21を備える。また、固液分離部2は、この排水W1の固液分離処理を行うためのろ材充填層22と、この固液分離処理によって得られた処理用排水W2を貯留する共通ろ過水槽23とを備える。さらに、固液分離部2は、排水W1を流通するための複数の流入配管21a〜21d、分配管24、弁24a〜24d及びポンプ24eと、処理用排水管12を介して処理用排水W2を散水ろ床部3へ流通するための開水路25とを備える。
また、固液分離部2は、ろ材充填層22の逆洗浄機能を実行するための逆洗浄手段として、図2に示すように、排水槽26と、複数の排水管27a〜27d及び排水弁28a〜28dと、空気管29とを備える。
分配槽20は、排水管11から排水W1が供給され、固液分離接続管18から膜濃縮水W5が供給される水槽である。図2の例では、固液分離接続管18と排水管11とが合流しているため、膜濃縮水W5が分配槽20に返送されたときは、分配槽20には、膜濃縮水W5が混合された排水W1が供給される。ただし、固液分離接続管18と排水管11とを合流させずに、分配槽20内に排水W1と膜濃縮水W5とを別々に供給してもよい。
分配槽20は、ろ過水槽21側と壁によって隔てられている。ろ過水槽21は、固液分離処理(ろ過処理)を実行する前の(場合によっては、膜濃縮水W5が混合された)排水W1を貯留する水槽である。ろ過水槽21は、ろ材充填層22の下方に配置され、図2に示すように、流入配管21a〜21d別に複数の水槽に分けられている。
複数の流入配管21a〜21dは、上述したろ過水槽21における複数の水槽に各々排水W1を流入する管である。流入配管21a〜21dは、図2に示すように、ろ過水槽21の各水槽に各々配置される。
ろ材充填層22は、ろ過水槽21に貯留された排水W1の固液分離処理を行うためのものである。具体的には、ろ材充填層22は、ろ過水槽21の各水槽の上方に配置され、800mm以下、より好ましくは600mm以下の層厚に形成される。このろ材充填層22の内部には、複数の浮上ろ材(図示せず)が、排水W1中の固形成分を捕捉するに十分な細かさの空隙を形成する状態で充填されている。また、ろ材充填層22の上面にはスクリーン22aが設置される。スクリーン22aは、液体成分を通すとともに、ろ材充填層22内の浮上ろ材の流出を防止する。
ここで、ろ材充填層22内の浮上ろ材としては、見掛け比重が0.1〜0.8であり、50%圧縮硬さが0.1MPa以上であり、サイズが4〜10mmである材質のものが用いられる。見掛け比重が0.1未満であると望ましい圧縮強さを得ることができず、0.8を超えると水との比重差が小さくなって、ろ材充填層22から流出するおそれがある。また、50%圧縮硬さを0.1MPa以上としたのは、これよりも軟質であると、排水W1を高速な水流でろ過処理する際に圧密されてしまい、この結果、SS捕捉能力が低下するためである。さらに、サイズが4mm未満であると浮上ろ材相互間の間隙が小さくなって閉塞し易くなり、一方、サイズが10mmとなっても浮上ろ材によるSS捕捉能力が低下するためである。
このような特性の浮上ろ材は、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等を用いて、製造することができる。また、浮上ろ材の形状は、風車形状又は十字形状等の凹凸のある形状とする。これによって、ろ材充填層22に浮上ろ材を充填した時に、充填された各浮上ろ材の相互間に非直線的な間隙が形成され、この結果、各浮上ろ材によるSS捕捉効果を高めることができる。なお、このろ材充填層22のSS捕捉効果を高めるためには、ろ材充填層22の全容積に対する各浮上ろ材間の空隙容積の比率(すなわち、ろ材充填層22の空隙率)を50%程度に調整することが望ましい。ただし、浮上ろ材の形状及び材料は、以上説明したものに限られない。
共通ろ過水槽23は、排水W1を固液分離処理して得られる処理用排水W2を貯留するためのものである。具体的には、共通ろ過水槽23は、図2に示すように、ろ材充填層22の上方に配置され、ろ過水槽21の各水槽内の排水W1を各々固液分離処理して得られた各処理用排水W2を集める共通の水槽である。
分配管24、弁24a〜24d及びポンプ24eは、分配槽20内の排水W1をろ過水槽21の各水槽に分配するためのものである。具体的には、分配管24は、分配槽20と複数の流入配管21a〜21dとを連通する。弁24a〜24dは、分配管24の各流水口近傍に各々配置され、ポンプ24eは、この分配管24内に配置される。分配管24は、弁24a〜24dが開状態である際、ポンプ24eの作用によって、分配槽20から複数の流入配管21a〜21dに排水W1を分配流通させ、各流入配管21a〜21dを介して、ろ過水槽21の各水槽に排水W1を各々流通させる。弁24a〜24dは、各々個別に開閉することができる。このため、弁24a〜24dの開閉によって、ろ過水槽21の各水槽のうち、排水W1を流入したい水槽に排水W1を流入できる。なお、図2では、流入配管21b〜21dの上部側の図示を省略しているが、流入配管21b〜21dは、分配管24と各々連通している。なお、分配槽20内の排水W1を流入配管21a〜21dに自然流化させる構成とし、ポンプ24eを省略してもよい。
開水路25は、共通ろ過水槽23内の処理用排水W2を、処理用排水管12を介して、固液分離部2の後段に位置する散水ろ床部3(図1参照)に流通させるためのものである。具体的には、開水路25は、上部側が開口している水路である。また、開水路25には、処理用排水管12が接続されている。開水路25は、処理用排水管12を介して、共通ろ過水槽23と図1に示した散水ろ床部3とを連通する。開水路25は、共通ろ過水槽23から自然流下してきた処理用排水W2を受け入れ、処理用排水管12を介して、受け入れた処理用排水W2を散水ろ床部3へ自然流下させる。なお、ポンプを使用して、処理用排水W2を散水ろ床部3へ送水してもよい。
排水槽26、複数の排水管27a〜27d、排水弁28a〜28d及び空気管29は、上述したように、固液分離装置2におけるろ材充填層22の逆洗浄機能を実行するための逆洗浄手段を構成する。具体的には、排水槽26は、ろ材充填層22を逆洗浄した後の洗浄済み液体(以下、逆洗排水という)を貯留する。排水管27a〜27dは、ろ過水槽21の各水槽と排水槽26とを各々連通する。排水弁28a〜28dは、排水管27a〜27dに各々配置され、各排水管27a〜27dを開閉する。空気管29は、ろ材充填層22の逆洗浄に寄与する空気をろ材充填層22内に噴出する。固液分離部2は、以上説明したように材充填層22の逆洗浄機能を実行するが、ろ材充填層22を逆洗浄する構成は、これに限られず、任意の構成及び方法を採ることができる。
つぎに、図2の実線矢印に示される排水W1又は処理用排水W2の流れを参照しつつ、固液分離部2による排水W1の固液分離処理について説明する。排水W1は、まず、生活排水又は工場排水等の外部からの汚水として、分配槽20に流入される。この場合、排水W1は、ポンプ等の動力を用いて強制的に流入してもよいし、自然流によって流入してもよい。
分配槽20に貯留された排水W1は、分配管24内を流通して各流入配管21a〜21dに各々分配される。つぎに、流入配管21a〜21d内の各排水W1は、自然流下してろ過水槽21に流入し、その後、図2の実線矢印に示すように、ろ過水槽21の各水槽に各々流入する。
ろ過水槽21の各水槽内の排水W1は、上向きの流れでろ材充填層22を通過する。この場合、各水槽内の排水W1は、図2の実線矢印に示すように、ろ材充填層22の下部から上部に向かってろ材充填層22内を通過する間に、ろ材充填層22によってろ過処理される。すなわち、ろ材充填層22は、上述した内部の各浮上ろ材によって、これら各浮上ろ材間の空隙内を通過中の上向流の排水W1に含まれる夾雑物、SS及び固形性BOD等の各種固形成分を漏れなく捕捉して、この上向流の排水W1を固形成分と処理用排水W2とに分離する。このようにして、固液分離部2による排水W1の固液分離処理が達成される。なお、上述したろ材充填層22による排水W1のろ過速度は、分配槽20への排水W1の流入水量に対応して調整され、これによって、排水W1の高速ろ過処理が可能になる。この結果、固液分離部2は、排水W1に対して高効率の固液分離処理を行うことができる。
上述した固液分離処理によって得られた処理用排水W2は、スクリーン22aを通過して共通ろ過水槽23内に流入(合流)する。その後、処理用排水W2は、図2の実線矢印に示すように、開水路25内に流入して、共通ろ過水槽23から、処理用排水管12を介して、散水ろ床部3へ流れる。
(散水ろ床部について)
次に、図1に示した散水ろ床部3について詳細に説明する。ここでは、まず、散水ろ床部3の構成について説明し、その後、散水ろ床部3による処理用排水W2の生物処理(ろ過処理)について説明する。
図3は、第1実施形態に係る排水処理システムの散水ろ床部の一構成例を示す模式図である。図3に示すように、この散水ろ床部3は、微生物を付着したろ材が充填されたろ材充填層を内包するろ床本体30と、固液分離装置2によって得られた処理用排水W2をろ床本体30の内部に散布する回転式散水装置31とを有する。また、図3には特に図示しないが、散水ろ床部3は、ろ床本体30内のろ材充填層を洗浄する洗浄機能を実行するための洗浄手段を備える。また、ろ床本体30には、処理水管13が接続されている。
ろ床本体30は、表面に微生物を付着した複数のろ材が充填された槽であり、図3に示すように、6つの処理水槽30a〜30fを組み合わせて構成される。処理水槽30a〜30fの各々は、ろ材充填層内の微生物によって処理用排水W2を生物処理して浄化する水処理機能と、このろ材充填層を洗浄する洗浄機能とを備える。なお、これら処理水槽30a〜30fの構成の詳細については、後述する。
回転式散水装置31は、上述した固液分離装置2から流出された処理用排水W2をろ床本体30の処理水槽30a〜30fの各内部に散布するためのものである。具体的には、回転式散水装置31は、処理用排水管12及び散水ろ床接続管17と連通するように配管されている。回転式散水装置31は、処理用排水管12から処理用排水W2が供給され、散水ろ床接続管17から膜濃縮水W5が供給される。処理用排水管12と散水ろ床接続管17とは合流しているため、回転式散水装置31には、膜濃縮水W5が混合された処理用排水W2が供給されるということができる。ただし、処理用排水管12と散水ろ床接続管17とは合流していなくてもよく、回転式散水装置31に、処理用排水W2と膜濃縮水W5とが別々に供給されてもよい。
この回転式散水装置31の配管は、処理用排水管12及び散水ろ床接続管17から、図3に示すようにろ床本体30の内部を通り、ろ床本体30の中心部Cにおいて上向きに延伸してろ床本体30の上部に露出している。また、この配管の端部には、水流によってろ床本体30の円周方向に回転する回転機構が設けられる。ろ床本体30の上部には、この回転機構からろ床本体30の円周部Aに向けて放射状に、複数(例えば3つ)の散水ノズルが設けられる。これら複数の散水ノズルの各々は、この回転式散水装置31の配管と連通し、この回転機構の作用によって、ろ床本体30の円周方向に回転する。なお、回転式散水装置31の散水ノズルの数は、3つ(図3参照)に限定されず、1つでもよいし、複数でもよい。このような回転式散水装置31は、配管を介して固液分離部2から処理用排水W2を受け入れ、処理用排水W2の流れによって回転機構とともに各散水ノズルを回転させる。回転式散水装置31は、このように回転する各散水ノズルの散水口から、処理水槽30a〜30f内の各ろ材充填層上面に処理用排水W2を一様に散布する。
処理水管13は、ろ床本体30の処理水槽30a〜30fによって処理用排水W2を生物処理して得た処理水W3を、散水ろ床部3の後段に位置する膜ろ過部4(図1参照)に流通させるためのものである。具体的には、処理水管13は、ろ床本体30の下層、すなわち、処理水槽30a〜30fの各下層と膜ろ過部4とを連通する。処理水管13は、自然流下又はポンプ等の作用によって、処理水槽30a〜30fの各下層から膜ろ過部4へ処理水W3を流通させる。
つぎに、上述した処理水槽30a〜30fの構成について詳細に説明する。なお、処理水槽30a〜30fの各構成は互いに同様であるため、以下では、処理水槽30aの構成を代表して説明する。
図4は、第1実施形態に係る散水ろ床部の処理水槽の一構成例を示す模式図である。図4に示すように、処理水槽30aは、微生物を付着したろ材35が充填されたろ材充填層33bと、処理水管13(図3参照)と処理水槽30aの内部とを連通する流通管34aと、ろ材35の流出を防止するろ材流出防止網33dとを備える。また、処理水槽30aは、ろ材充填層33bの洗浄機能を実行するための洗浄手段として、弁34b,39bと、送風装置37aと、空気噴出管37bと、邪魔板38と、洗浄排水管39aとを備える。
処理水槽30aは、表面に微生物を付着したろ材35が充填された槽であり、ろ材充填層33bと、ろ材充填層33bの上層33aと下層33cとに区分けされる。処理水槽30aの上層33a側は開口しており、この開口によって外部と処理水槽30a内部との通気が可能となっている。また、処理水槽30aの上層33a側には回転式散水装置31の散水ノズルが位置し、処理水槽30aの下層33c側は、流通管34a及び洗浄排水管39aと連通している。
ろ材充填層33bは、固液分離部2によって得られた処理用排水W2の生物処理を行うためのものである。ろ材充填層33bには、上層33a側から下層33c側に向けて処理用排水W2が自然流下できる程度の空隙を形成するように、複数のろ材35が充填される。ろ材流出防止網33dは、ろ材充填層33bに配置され、ろ材充填層33b内の複数のろ材35を支持する。また、ろ材流出防止網33dは、液体成分を通すとともに、ろ材充填層33bから下層33cへのろ材35の流出を防止する。なお、ろ材充填層33bによって処理用排水W2を生物処理して得られた処理水W3は、このろ材流出防止網33dを通り、ろ材充填層33bの下面側から自然流下して、処理水槽30aの下層33cに流れる。
ここで、ろ材35は、ポリウレタン又はポリプロピレン等の物質の表面に微生物を付着させたものであり、その比重は、水の比重(=1.0)に近似する値、例えば0.9である。また、ろ材35は、例えば図4に示すように円筒形状に形成された円筒形ろ材である。ろ材35の円筒内外の各表面状態は、平滑であってもよいが、処理用排水W2に対する接触面積の増大に有効な表面状態、例えば、微細な凹凸状態、蛇腹状態、又は、これらを組み合わせた状態であることが望ましい。このような円筒形状のろ材35が充填されたろ材充填層33bにおいて、各ろ材35の相互間に非直線的な空隙が形成され、且つ、各ろ材35の円筒中空部分によって空隙が形成される。この場合、ろ材充填層33bの全容積に対する各ろ材35による空隙容積の比率、すなわち、ろ材充填層33bの空隙率は、例えば90%程度になる。ろ材35の外壁面及び内壁面は、これら空隙内を流下する処理用排水W2と接触することになり、これによって、ろ材35と処理用排水W2との接触面積が十分に大きくなる。この結果、ろ材充填層33b(各ろ材35)による処理用排水W2の生物処理能力は、処理水槽30aに対して要望される必要レベル以上に向上する。ただし、ろ材35の形状及び材料は、これに限られず、表面に微生物を付着できるものであればよい。また、ろ材35に付着する微生物は、処理用排水W2に含まれる有機物を分解するBOD(Biochemical oxygen demand)酸化菌や、アンモニア性窒素を分解する硝化菌などであるが、処理用排水W2に含まれる有機物などの汚濁物質を生物処理するものであれば、これに限られない。
弁34b,39b、送風装置37a、空気噴出管37b、邪魔板38、及び洗浄排水管39aは、処理水槽30aにおけるろ材充填層33bの洗浄機能を実行するための洗浄手段を構成する。弁34bは、処理水槽30a内に洗浄液を流入してろ材充填層33bの洗浄機能を発揮させる期間、流通管34aの開口を閉じて、膜ろ過部4への処理水W3の流通を遮断する。
送風装置37aは、ろ材充填層33b内の各ろ材35の洗浄に必要な空気を空気噴出管37bに送給する。空気噴出管37bは、処理水槽30a内の少なくともろ材充填層33bを冠水させた洗浄液に空気を噴出して、ろ材充填層33b内の各ろ材35を撹拌洗浄する旋回流を、この洗浄液に発生させる。具体的には、空気噴出管37bは、図4に示すように処理水槽30aの下層33cに配置される。空気噴出管37bは、処理水槽30aの中心壁36aの近傍且つ下層33cから、ろ材充填層33bに向けて、送風装置37aからの空気を噴出して、この洗浄液の上下方向の旋回流を発生させる。なお、ろ材充填層33bは、図3に示したろ床本体30を代表する処理水槽30a内の層であり、散水ろ床部3内のろ材充填層の一つに他ならない。
邪魔板38は、図4に示すように、処理水槽30aの中心壁36a側の領域と円周壁36b側の領域とに処理水槽30aの槽内領域を仕切る仕切板である。なお、中心壁36aは、処理水槽30aの側壁のうちの、図3に示したろ床本体30の中心部C側の側壁である。円周壁36bは、処理水槽30aの側壁のうちの、ろ床本体30の円周部A側の側壁である。邪魔板38は、図4に示すように、中心壁36aよりも円周壁36b(すなわちろ床本体30の外壁側)に近い位置に設けられ、上述したように処理水槽30aの槽内領域を仕切る。このようにして、邪魔板38は、空気噴出管37bから空気が噴出される領域(以下、中心側領域という)と、空気が噴出されない領域(以下、円周側領域という)とに、処理水槽30aの槽内領域を仕切る。このような邪魔板38は、処理水槽30a内に貯留した洗浄液へ空気噴出管37bから空気を噴出することによって発生した洗浄液流の一部を邪魔し、これによって、この洗浄液の旋回流(具体的には上下方向の旋回流)の発生を促進する。なお、処理水槽30a内の中心側領域は散水ろ床部3内における空気の噴出領域であり、処理水槽30a内の円周側領域は散水ろ床部3内における空気の非噴出領域である。すなわち、邪魔板38は、散水ろ床3内を噴出領域と非噴出領域とに仕切って、洗浄液の旋回流の発生を促進する仕切板の一つに他ならない。
洗浄排水管39aは、各ろ材35の撹拌洗浄後の洗浄液を排出する。弁39bは、この洗浄排水管39aを開閉するための弁である。洗浄排水管39aは、弁39bによって開放された期間、処理水槽30aの下層33cから、上述した洗浄液の旋回流によって各ろ材35を撹拌洗浄した後の洗浄液を外部に排出する。散水ろ床部3は、以上説明したようにろ材充填層33bの洗浄機能を実行する(逆洗浄を行う)が、ろ材充填層33bを洗浄する構成は、これに限られない。
つぎに、図4の矢印に示される処理用排水W2又は処理水W3の流れを参照しつつ、処理水槽30aによる処理用排水W2の生物処理について説明する。処理用排水W2は、上述した固液分離部2から回転式散水装置31の管内を流通して、処理水槽30a内に流入される。この場合、処理用排水W2は、回転式散水装置31の各散水ノズルから自然流下して、ろ材充填層33bの上面に散布される。
ろ材充填層33bの上面に散布された処理用排水W2は、ろ材充填層33bの通気とともに自然流下して、ろ材充填層33bを通過する。例えば、図4の波線矢印に示されるように、回転式散水装置31から散布された処理用排水W2は、各ろ材35の表面と順次接触しつつ自然流下する。このろ材35と処理用排水W2との接触時に、ろ材35表面の微生物が、処理用排水W2中の有機物などの汚濁物質を分解処理する。
このように、ろ材充填層33b内を流下中の処理用排水W2は、ろ材35と接触する毎に微生物によって生物処理され続け、この結果、有機物などの汚濁物質が分解除去された処理水W3として、ろ材流出防止網33dから処理水槽30aの下層33cに流下する。このようにして、処理水槽30aによる処理用排水W2の生物処理が達成される。
上述した生物処理によって得られた処理水W3は、弁34bを介して、処理水槽30aの下層33cから流通管34aに流出し、その後、流通管34aを通じて処理水管13(図3参照)に流通し、処理水管13から膜ろ過部4へ流れる。この場合、弁34bは開いた状態であるため、処理水W3は、下層33cに流下した後、直ちに流通管34a内に流れる。このため、上述した生物処理の実行時に、処理水W3がろ材充填層33bの上面の高さまで溜まることは、あり得ない。
なお、図3に示したろ床本体30の処理水槽30b〜30fによる処理用排水W2の水処理機能は、上述した処理水槽30aの場合と同様である。すなわち、処理水槽30b〜30fの各々は、回転式散水装置31の各散水ノズルからろ材充填層上面に散布された処理用排水W2を、処理水槽30aと同様に各ろ材35表面の微生物によって生物処理し、これによって得られた処理水W3を、処理水管13等を通じて膜ろ過部4へ送出する。
(膜ろ過部について)
次に、図1に示した膜ろ過部4について詳細に説明する。まず、膜ろ過部4の構成について説明し、その後、膜ろ過部4による処理水W3の固液分離処理について説明する。
図5は、第1実施形態に係る膜ろ過部の一構成例を示す模式図である。図5に示すように、膜ろ過部4は、ろ過水槽40と、複数のろ過膜42a、42b、42cとを有する。なお、本実施形態では、ろ過膜は、ろ過膜42a、42b、42cの3つであるが、数はこれに限られず、単数であっても複数であってもよい。以下、ろ過膜42a、42b、42cを区別しない場合は、ろ過膜42と記載する。
ろ過水槽40は、内部にろ過膜42を有する水槽である。ろ過水槽40には、上述のろ過水管14が接続されており、ろ過水管14により、ろ過膜42によってろ過されたろ過水W4を排出する。ろ過水槽40からろ過水管14を介して排出されたろ過水W4は、ろ過水槽40の外部環境に排出される。
ろ過膜42は、第1の端部44及び第2の端部45が開口して、かつ内部が中空の円筒状の膜である。本実施形態におけるろ過膜42は、MF(Micro Filtration)膜(精密ろ過膜)又はUF(Ultra Filtration)膜(限外ろ過膜)である。MF膜は、例えば0.5μmから0.1μmの径の孔が多数形成された膜である。UF膜は、0.1μm以下の径の孔が多数形成された膜である。ただし、ろ過膜42の形状は円筒に限られず、例えばシート状であってもよい。また、ろ過膜42は、ろ材35に付着していた微生物を捕集できる程度の孔径(微生物より小さい孔径)の膜であれば、MF膜又はUF膜に限られない。
ろ過膜42は、第1の端部44が処理水管13に接続されており、第2の端部45が膜濃縮水管16に接続されている。図5の例では、処理水管13が、処理水管13a、13b、13cに分岐しており、先端がろ過水槽40の内部に挿入されている。処理水管13aは、ろ過膜42aの第1の端部44に接続されており、処理水管13bは、ろ過膜42bの第1の端部44に接続されており、処理水管13cは、ろ過膜42cの第1の端部44に接続されている。図5の例では、膜濃縮水管16が、膜濃縮水管16a、16b、16cに分岐しており、先端がろ過水槽40の内部に挿入されている。膜濃縮水管16aは、ろ過膜42aの第2の端部45に接続されており、膜濃縮水管16bは、ろ過膜42bの第2の端部45に接続されており、膜濃縮水管16cは、ろ過膜42cの第2の端部45に接続されている。
次に、図5の矢印に示される処理水W3、ろ過水W4、及び膜濃縮水W5の流れを参照しつつ、膜ろ過部4によるろ過水W4と膜濃縮水W5とへの分離処理について説明する。
散水ろ床部3から処理水管13を介して流出した処理水W3は、処理水管13a、13b、13cに分岐して、ろ過膜42a、42b、42cの第1の端部44からろ過膜42a、42b、42c内に供給される。ろ過膜42a、42b、42c(ろ過膜42)内に供給された処理水W3は、第1の端部44から第2の端部45に向かって流れる。ろ過膜42内の処理水W3の一部は、ろ過膜42を透過して、ろ過水W4として、ろ過膜42の外部、すなわちろ過水槽40内に流出する。ろ過膜42の孔よりも大きな固形物は、ろ過膜42に捕集されて、ろ過膜42を透過しない。ろ過水W4は、ろ過膜42を透過した水であるため、ろ過膜42の孔よりも大きな、ろ材35表面から剥離した微生物などの固形物を含まない。ろ過膜42内の処理水W3の他の一部は、ろ過膜42に捕集された微生物等の固形物と共に、膜濃縮水W5として、膜濃縮水管16a、16b、16cから膜濃縮水管16に排出される。このように、膜ろ過部4は、クロスフロー形式の膜ろ過装置である。なお、ろ過膜の外周側から中心部に向けて処理水W4を通水させる構成としてもよい。
(膜濃縮水の返送について)
散水ろ床部3は、ろ材充填層33bの空隙を処理用排水W2が通るため、ろ材35の表面の微生物が、ろ材35から剥がれ落ちる場合がある。ろ材35から剥がれ落ちた微生物は、処理水W3に含まれて、散水ろ床部3の下流、すなわち膜ろ過部4に向けて排出される。ろ材35の表面の微生物が剥がれ落ちた場合、ろ床本体30内の微生物の数が減少して、散水ろ床部3の排水処理の性能が低下する。また、微生物を含んだ処理水がシステム系外に排出されてしまう問題もある。そこで、第1実施形態における排水処理システム1は、処理水W3をろ過膜42で分離処理することにより、散水ろ床部3から排出された微生物をろ過膜42で捕集する。そして、排水処理システム1は、捕集した微生物を、膜濃縮水W5として散水ろ床部3に返送する。これにより、剥がれ落ちた微生物をろ材充填層33bに戻すことが可能となるため、ろ材35表面の微生物の数の減少を抑制することができる。また、微生物のシステム系外への排出を防止することができる。
本実施形態では、図1及び図3に示すように、剥がれ落ちた微生物を含む膜濃縮水W5は、膜濃縮水管16及び散水ろ床接続管17を介して、散水ろ床部3の回転式散水装置31に返送される。膜濃縮水管16は、膜ろ過部4におけるろ過膜42の上流に接続されているため、ろ過膜42を透過していない膜濃縮水W5を導通させている。また、散水ろ床接続管17は、一方の端部が膜濃縮水管16に接続され、他方の端部が回転式散水装置31、すなわち、ろ床本体30(ろ材充填層33b)の上流側に接続されている。従って、膜濃縮水W5は、膜濃縮水管16及び散水ろ床接続管17を通って、ろ材充填層33bに供給される。ろ材充填層33b内に供給された膜濃縮水W5に含まれた微生物は、ろ材35表面に付着する。
また、図1及び図2に示すように、膜濃縮水W5は、膜濃縮水管16及び固液分離接続管18を介して、固液分離部2の分配槽20に返送される。固液分離接続管18は、一方の端部が、散水ろ床接続管17と並列に膜濃縮水管16に接続されている。固液分離接続管18は、他方の端部が、分配槽20、すなわち固液分離部2の上流側に開口している。従って、膜濃縮水W5は、膜濃縮水管16及び固液分離接続管18を通って、分配槽20内に供給される。膜濃縮水W5は、散水ろ床部3を経由した水であるため、溶存酸素量が比較的大きくなる。溶存酸素量が大きい膜濃縮水W5が固液分離部2に供給されることで、この酸素を用いた生物処理を、固液分離部2内でも適切に行うことができる。この固液分離部2における生物処理は、膜濃縮水W5に含まれる微生物以外の、排水W1に含まれた他の微生物による処理であるが、膜濃縮水W5に含まれる微生物による処理であってもよい。
このように、膜濃縮水W5は、一部が散水ろ床部3に返送され、他の一部が固液分離部2に返送される。この膜濃縮水W5の返送量は、制御部6による膜濃縮水供給弁17a、及び膜濃縮水供給弁18aの開閉操作によって、制御される。制御部6は、水質測定部5による処理水W3の水質の計測結果に基づき、固液分離部2及び散水ろ床部3への膜濃縮水W5の返送量を決定する。
以下、膜濃縮水の返送量の決定方法について詳細に説明する。水質測定部5は、散水ろ床部3の下流(散水ろ床部3と膜ろ過部4との間)の処理水管13を流れる処理水W3の水質を計測する。具体的には、水質測定部5は、処理水W3内に含まれるアンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量を検出する。水質測定部5は、例えば、イオン選択電極式のアンモニア性窒素濃度計、隔膜電極式の溶存酸素濃度計である。アンモニア性窒素とは、アンモニウムイオンをその窒素量で表したものである。処理水W3のアンモニア性窒素濃度は、処理水W3内に含まれるアンモニア性窒素の濃度のことをいう。水質測定部5は、アンモニア性窒素濃度を直接検出してもよいし、処理水W3中の全窒素量ならびに酸化態窒素濃度を検出し、そこからアンモニア性窒素濃度を算出してもよい。処理水W3の溶存酸素量とは、処理水W3内に溶存している酸素の量である。水質測定部5は、アンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量のいずれか一方を検出してもよいし、両方を検出してもよい。
制御部6は、水質測定部5が計測した処理水W3中のアンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量に基づき、膜濃縮水供給弁17aの開閉量を制御し、散水ろ床部3(ろ材充填層33b)に返送する膜濃縮水W5の量を制御する。制御部6は、処理水W3中のアンモニア性窒素濃度が所定濃度より大きくなった場合に、散水ろ床部3(ろ材充填層33b)に返送する膜濃縮水W5の量を増加させる。また、制御部6は、処理水W3中の溶存酸素量が所定量より小さくなった場合に、散水ろ床部3(ろ材充填層33b)に返送する膜濃縮水W5の量を増加させる。制御部6は、アンモニア性窒素濃度が所定濃度より大きくなった場合、微生物による生物処理が十分でないと判断して、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を増加させる。同様に、制御部6は、溶存酸素量が所定量より小さくなった場合、ろ材充填層33bにおける酸素量が減って、微生物が十分に生物処理を行うことができなくなっていると判断して、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を増加させる。制御部6は、アンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量のいずれかに基づき散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を制御してもよいし、アンモニア性窒素濃度及び溶存酸素量の両方に基づき散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を制御してもよい。
水質測定部5は、処理水W3の代わりに、散水ろ床部3の下流であって、膜ろ過部4(ろ過膜42)の下流のろ過水管14を流れるろ過水W4の水質を計測してもよい。この場合、制御部6は、ろ過水W4の水質測定結果に基づき、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を制御する。すなわち、水質測定部5は、散水ろ床部3の下流側の生物処理後の水質を計測すればよく、制御部6は、散水ろ床部3の下流側の生物処理後の水質に基づき散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を制御すればよい。以上をまとめると、水質測定部5は、処理水W3のアンモニア性窒素濃度、処理水W3の溶存酸素量、ろ過水W4のアンモニア性窒素濃度、及びろ過水W4の溶存酸素量のうち、少なくともいずれか1つを測定する。制御部6は、処理水W3のアンモニア性窒素濃度、処理水W3の溶存酸素量、ろ過水W4のアンモニア性窒素濃度、及びろ過水W4の溶存酸素量の測定結果のうち、少なくともいずれか1つに基づき、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を制御する。
また、水質測定部5は、散水ろ床部3の上流(固液分離部2と散水ろ床部3との間)の処理用排水管12を流れる処理用排水W2の水質も計測してよい。この場合、制御部6は、処理用排水W2と、処理水W3(又はろ過水W4)との水質の比較結果に基づき、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を制御する。例えば、制御部6は、処理用排水W2のアンモニア性窒素濃度と処理水W3のアンモニア性窒素濃度との差(処理用排水W2のアンモニア性窒素濃度から処理水W3のアンモニア性窒素濃度を引いた値)が、所定の値よりも小さくなった場合、微生物による生物処理が十分でないと判断して、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を増加させる。この場合、制御部6は、処理用排水W2のアンモニア性窒素濃度と処理水W3のアンモニア性窒素濃度との差が、所定の値よりも小さくなり、かつ、処理水W3のアンモニア性窒素濃度の値が所定濃度より大きくなった場合に、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を増加させてもよい。
また、制御部6は、処理用排水W2の溶存酸素量と処理水W3の溶存酸素量との差(処理用排水W2の溶存酸素量から処理水W3の溶存酸素量を引いた値)が、所定の値よりも大きくなった場合、ろ材充填層33bにおける酸素量が減って、微生物が十分に生物処理を行うことができなくなっていると判断して、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を増加させてもよい。この場合、制御部6は、処理用排水W2の溶存酸素量と処理水W3の溶存酸素量との差が所定の値よりも大きくなり、かつ、処理水W3中の溶存酸素量が所定量より小さくなった場合に、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を増加させてもよい。
次に、膜濃縮水W5の返送量を変更する方法について説明する。制御部6は、通常時制御Aにおいて、膜濃縮水供給弁17a及び膜濃縮水供給弁18aを所定の開度に保つことで、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量、及び固液分離部2に返送する膜濃縮水W5の量を、通常時制御Aにおいて定めた量である通常量に保っている。通常時制御Aとは、制御部6が、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を増加させなくてもよいと判断した通常時における流量制御を意味する。以下、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を、ろ床返送量Q1とし、固液分離部2に返送する膜濃縮水W5の量を、固液分離返送量Q2と記載する。
制御部6は、ろ床返送量増加制御Bにおいて、ろ床返送量Q1を、通常量よりも増加させる。ろ床返送量増加制御Bとは、制御部6が、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量を増加させると判断した場合における制御のことを指す。具体的には、制御部6は、ろ床返送量増加制御Bにおいて、固液分離返送量Q2を通常量に維持としつつ、ろ床返送量Q1を、通常量よりも増加させる。また、制御部6は、ろ床返送量増加制御Bにおいて、ろ床返送量Q1と固液分離返送量Q2との割合を変更して、ろ床返送量Q1を増加させ固液分離返送量Q2を減少させることにより、ろ床返送量Q1を、通常量よりも増加させてもよい。この場合、ろ床返送量Q1と固液分離返送量Q2との総量は、通常時と同量としてもよいし、ろ床返送量Q1と固液分離返送量Q2との総量を通常時から増加させてもよい。以下、この膜濃縮水の返送量の変更例について説明する。
図6は、膜濃縮水の返送量の変更例を説明する表である。図1に示すように、排水管11内であって、固液分離接続管18との合流部よりも上流側で排水W1が流れるポイントを、ポイントP1とする。処理用排水管12内であって、散水ろ床接続管17との合流部よりも上流側で処理用排水W2が流れるポイントを、ポイントP2とする。処理水管13内であって、処理水W3が流れるポイントを、ポイントP3とする。ろ過水管14内であって、ろ過水W4が流れるポイントを、ポイントP4とする。散水ろ床接続管17内であって、処理用排水管12との合流部よりも上流側で膜濃縮水W5が流れるポイントを、ポイントP5とする。固液分離接続管18内であって、排水管11との合流部よりも上流側で膜濃縮水W5が流れるポイントを、ポイントP6とする。
ポイントP1での流量は、排水処理システム1に供給される排水W1の総量となる。ポイントP5での流量は、ろ床返送量Q1となり、ポイントP6での流量は、固液分離返送量Q2となる。ポイントP2での流量は、処理用排水W2の流量、すなわち、ポイントP1での流量(排水W1)とポイントP6での流量(固液分離返送量Q2)とを合算した流量となる。ポイントP3での流量は、処理水W3の流量、すなわち、ポイントP2での流量(処理用排水W2)とポイントP5での流量(ろ床返送量Q1)とを合算した流量となる。ポイントP4での流量は、ろ過水W4の流量、すなわち、ポイントP3での流量(処理水W3)から、ポイントP5、P6での流量(ろ床返送量Q1と固液分離返送量Q2との総量)を差し引いた量となる。
図6の例では、ポイントP1での流量、すなわち流入してくる排水W1の量を1.0とし、ポイントP4での流量、すなわち排水処理後に外部に戻すろ過水W4の量を1.0としている。図6の例では、通常時制御Aにおいて、ポイントP5での流量と、ポイントP6での流量とを、0.5としている。すなわち、ろ床返送量Q1の通常量は、固液分離返送量Q2の通常量と同じになっている。通常時制御AにおけるポイントP2の流量(処理用排水W2の流量)は、1.5であり、ポイントP3の流量(処理水W3の流量)は、2.0である。
図6の例では、制御部6は、ろ床返送量増加制御B1において、ポイントP5での流量(ろ床返送量Q1)を、0.8に増加させる一方、ポイントP6での流量(固液分離返送量Q2)を変化させず0.5のままとしている。この場合、ポイントP2の流量(処理用排水W2の流量)は、1.5であり、ポイントP3の流量(処理水W3の流量)は、2.3である。すなわち、ろ床返送量増加制御B1は、固液分離返送量Q2を通常量のままとしつつ、ろ床返送量Q1を、通常量よりも増加させた場合の例を説明している。この場合、膜濃縮水W5の総量(ろ床返送量Q1と固液分離返送量Q2との合計)が通常時制御Aより増加しているが、膜濃縮水W5の増加分は、ポイントP3の流量(処理水W3の流量)、すなわち散水ろ床部3からの排水量を強制的に増加させることにより補填する。
図6の例では、制御部6は、ろ床返送量増加制御B2において、ポイントP5での流量(ろ床返送量Q1)を、0.8に増加させる一方、ポイントP6での流量(固液分離返送量Q2)を、0.2に減少させている。この場合、ポイントP2の流量(処理用排水W2の流量)は、1.2であり、ポイントP3の流量(処理水W3の流量)は、2.0である。すなわち、ろ床返送量増加制御B2は、膜濃縮水W5の総量(ろ床返送量Q1と固液分離返送量Q2との合計)を通常時と同じに保ちつつ、ろ床返送量Q1と固液分離返送量Q2との割合を変更して、ろ床返送量Q1を増加させ固液分離返送量Q2を減少させることにより、ろ床返送量Q1を、通常量よりも増加させた例である。ろ床返送量増加制御B2のような制御とした場合、膜濃縮水W5の総量を通常時制御Aと同じにすることができるため、散水ろ床部3からの排水量を変更する必要がない。
制御部6は、ろ床返送量Q1を増加させると判断した場合、ろ床返送量増加制御B1のように、膜濃縮水W5の総量を増加させつつ、ろ床返送量Q1のみを増加させてもよい。また、制御部6は、ろ床返送量Q1を増加させると判断した場合、ろ床返送量増加制御B2のように、膜濃縮水W5の総量をそのままに保ちつつ、ろ床返送量Q1と固液分離返送量Q2との割合を変更させてもよい。制御部6は、ろ床返送量増加制御B1、B2のいずれの制御とするかを、適宜判断してもよいし、予め定めたいずれかの制御のみを適用してもよい。
次に、以上説明した膜濃縮水W5の返送量の制御について、フローチャートに基づき説明する。図7は、第1実施形態に係る膜濃縮水の返送量の制御を説明するフローチャートである。図7に示すように、制御部6は、水質測定部5から、処理水W3の水質測定の計測データを取得し(ステップS10)、処理水W3のアンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量が、閾値の範囲外であるかを判断する(ステップS12)。例えば、制御部6は、処理水W3のアンモニア窒素濃度が、所定濃度より大きいか、又は処理水W3の溶存酸素量が、所定量より小さいかを判断する。処理水W3のアンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量が、閾値の範囲外でない場合(ステップS12:No)、制御部6は、ろ床返送量Q1を、通常量(通常量のまま)とする(ステップS14)。また、処理水W3のアンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量が、閾値の範囲外である場合(ステップS12:Yes)、制御部6は、ろ床返送量Q1を、通常量から増加させる(ステップS16)。ろ床返送量Q1を増加させた後は、ステップS10に戻り、ろ床返送量Q1増加後から所定時間経過後の処理水W3の水質測定データを取得し、同様の処理を繰り返す。例えば、この処理水W3のアンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量が、閾値内になった場合は、ステップS14において、ろ床返送量Q1を通常量に戻す。
ステップS14の後、制御部6は、この処理を終了するか判断し(ステップS18)、終了しない場合(ステップS18:No)は、ステップS10に戻り同様の処理を繰り返し、終了する場合(ステップS18:Yes)は、この処理を終了する。
以上説明したように、制御部6は、水質測定部5の水質測定結果に基づき、ろ床返送量Q1を制御するが、それに加え、他の条件によってもろ床返送量Q1を制御してもよい。図8は、ろ床返送量の制御の一例を説明するグラフである。図8の横軸は、1日における時刻を表しており、縦軸は、ろ床返送量Q1を表している。図8に示すように、制御部6は、昼の時間帯におけるろ床返送量Q1を夜の時間帯よりも大きくし、夜の時間帯におけるろ床返送量Q1を昼の時間帯よりも小さくしてもよい。図8で提示した例では、昼の時間帯には排水W1の総量が大きくなり、夜の時間帯には排水W1の総量が小さいことから、制御部6は、昼の時間帯におけるろ床返送量Q1を大きくして、処理能力を向上させている。言い換えれば、制御部6は、排水W1の総量が大きくなる時間帯ほどろ床返送量Q1を大きくし、排水W1の総量が小さくなる時間帯ほどろ床返送量Q1が小さくなるように、時間毎にろ床返送量Q1を決定する。制御部6は、1日における排水W1の総量変化の情報に基づき、予め定められた比率で、1日における時間毎のろ床返送量Q1を変化させるものであれば、その比率は、図8に示したもの(昼12時のろ床返送量Q1が最も高い)に限られない。また、制御部6は、予め比率を定めることに限られず、排水W1の流量を逐次測定し、その測定結果に基づき、ろ床返送量Q1を逐次変化させてもよい。
制御部6は、1年のスパンでろ床返送量Q1を制御してもよい。制御部6は、微生物の活動が抑制される冬にろ床返送量Q1を高くし、微生物の活動が活発な夏にろ床返送量Q1を低くしてもよい。すなわち、制御部6は、気温が低い場合は、ろ床返送量Q1を高くし、気温が高い場合は、ろ床返送量Q1を低くしてもよい。
制御部6は、ろ材充填層33bの洗浄機能を実行した、すなわち逆洗浄を行った直後に、所定の時間だけ、ろ床返送量Q1を高くしてもよい。この場合、所定の時間経過後には、ろ床返送量Q1を元に戻す。逆洗浄を行った直後とは、逆洗浄が終了したタイミングのことをいうが、逆洗浄が終了したタイミングよりも所定の遅れ時間(例えば10分)だけ遅れてもよい。また、所定の時間は、予め定められた時間であるが、例えば、1時間である。ろ材充填層33bの逆洗浄を行った場合、ろ材35表面の微生物も逆洗浄により剥がれ落ちる場合がある。制御部6は、逆洗浄の直後にろ床返送量Q1を高くすることで、逆洗浄により減少した微生物の数を補填することができる。
制御部6は、例えば、ろ材充填層33bにおける微生物量が十分であって、ろ材充填層33bに微生物を返送する量を多くする必要がない場合には、固液分離返送量Q2を増加させ、ろ床返送量Q1を減少させてもよい。また、制御部6は、例えば、膜濃縮水W5中の微生物や固形物の濃度が所定値よりも高くなった場合にも、固液分離返送量Q2を増加させ、ろ床返送量Q1を減少させてもよい。固液分離部2における逆洗浄の頻度は、散水ろ床部3における逆洗浄の頻度よりも多い。例えば、固液分離部2における逆洗浄の頻度は、1時間に1回程度であり、散水ろ床部3における逆洗浄の頻度は、1週間に1回程度である。従って、以上説明したような場合に固液分離返送量Q2を増やすことで、固液分離部2内に返送する膜濃縮水W5の量を増加させ、固液分離部2での逆洗浄により、膜濃縮水W5に含まれる不要な微生物や固形物等を、より早く外部に排出することが可能となる。また、この場合、膜ろ過部4にろ過膜42の逆洗浄手段や、膜濃縮水W5の排出手段を設ける必要がなくなり、設備規模を小さくすることも可能となる。ただし、膜ろ過部4にも逆洗浄手段や排出手段を設けていてもよい。
以上説明したように、第1実施形態に係る排水処理システム1は、散水ろ床部3と、膜ろ過部4と、散水ろ床接続管17とを有する。散水ろ床部3は、微生物を担持させた複数のろ材35を有するろ材充填層33bを有する。散水ろ床部3は、ろ材充填層33bの上部に処理用排水W2を散布してろ材充填層33b内に処理用排水W2を流下させ、微生物により処理用排水W2を生物処理して得た処理水W3を流出する。膜ろ過部4は、散水ろ床部の後段に設けられて、ろ過膜42を有する。膜ろ過部4は、処理水W3を、ろ過膜42を透過してない膜濃縮水W5と、ろ過膜42を透過したろ過水W4とに分離する。散水ろ床接続管17は、膜ろ過部4と散水ろ床部3とを接続し、膜濃縮水W5をろ材充填層33bに返送する。
排水処理システム1は、通気によって酸素を供給する散水ろ床部3を用いて生物処理を行っているため、曝気処理が必要ない。排水処理システム1は、曝気処理が必要ないので、消費電力を低減できる。そして、この排水処理システム1は、ろ材35から微生物が剥がれ落ちた場合であっても、剥がれ落ちた微生物を含む膜濃縮水W5を、ろ材充填層33bに返送する。従って、排水処理システム1は、剥がれ落ちた微生物をろ材充填層33bに戻すことが可能となるため、ろ材35表面の微生物の数の減少を抑制することができる。そのため、排水処理システム1は、微生物の減少による排水処理の性能低下を抑制することができる。
また、排水処理システム1は、水質測定部5と、制御部6とを有する。水質測定部5は、処理水W3又はろ過水W4の水質を測定する。制御部6は、水質測定部5の測定結果に基づき、ろ材充填層33bへの膜濃縮水W5の返送量を決定する。排水処理システム1は、生物処理の後の水質(処理水W3又はろ過水W4の水質)を測定するため、散水ろ床部3における生物処理の処理能力を検出することができ、その検出結果に基づき、膜濃縮水W5の返送量、すなわち返送する微生物の量を決定する。従って、排水処理システム1は、生物処理の処理能力に基づき適量の膜濃縮水W5を返送することができるため、微生物の減少による排水処理の性能低下をより適切に抑制することができる。
水質測定部5は、処理水W3のアンモニア性窒素濃度、処理水W3の溶存酸素量、ろ過水W4のアンモニア性窒素濃度、及びろ過水W4の溶存酸素量のうち、少なくともいずれか1つを検出する。制御部6は、検出された処理水W3のアンモニア性窒素濃度、処理水W3の溶存酸素量、ろ過水W4のアンモニア性窒素濃度、及びろ過水W4の溶存酸素量のうち、少なくともいずれか1つに基づき、ろ材充填層33bへの膜濃縮水W5の返送量を決定する。生物処理後におけるアンモニア性窒素濃度及び溶存酸素量は、生物処理の処理能力を示す指標となる。排水処理システム1は、生物処理の処理能力を示す指標となるアンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量に基づき膜濃縮水W5の返送量を決定するため、微生物の減少による排水処理の性能低下をより適切に抑制することができる。
制御部6は、処理水W3又はろ過水W4のアンモニア性窒素濃度が所定濃度より高くなった場合、又は溶存酸素量が所定量より減少した場合に、ろ材充填層33bへの膜濃縮水W5の返送量を増加させる。アンモニア性窒素濃度が高くなった場合、微生物が、アンモニア性窒素を十分に分解できていない可能性がある。また、溶存酸素量が減少した場合、ろ材充填層33bにおける酸素量が減って、微生物が十分に生物処理を行うことができなくなっている可能性がある。制御部6は、このような場合に、膜濃縮水W5の返送量を増加させることで、微生物の減少による排水処理の性能低下をより適切に抑制することができる。
水質測定部5は、処理用排水W2の水質も測定する。そして、制御部6は、処理用排水W2と、処理水W3又はろ過水W4との間の水質の比較結果に基づき、ろ材充填層33bへの膜濃縮水W5の返送量を決定する。排水処理システム1は、処理用排水W2と、処理水W3又はろ過水W4との間の水質の比較、すなわち、生物処理前後における水質を比較し、その比較結果に基づき、膜濃縮水W5の返送量を決定する。そのため、排水処理システム1は、生物処理の処理能力をより確実に検出することができ、微生物の減少による排水処理の性能低下をより適切に抑制することができる。
排水処理システム1は、固液分離部2と、固液分離接続管18とを有する。固液分離部2は、散水ろ床部3よりも前段(すなわち処理用排水W2の流れの上流側)に設けられ、排水W1を固形成分と処理用排水W2とに分離する。固液分離接続管18は、膜ろ過部4と固液分離部2とを接続し、膜濃縮水W5を固液分離部2に返送する。そして、制御部6は、水質測定部5の測定結果に基づき、ろ材充填層33bと固液分離部2とへの膜濃縮水W5の返送量の割合を決定する。排水処理システム1は、水質の測定結果に基づき、ろ材充填層33bと固液分離部2とへの膜濃縮水W5の返送量の割合を決定するため、ろ材充填層33bへの膜濃縮水W5の提供量、すなわち微生物の提供量をより適切に調整することができる。
水質測定部5は、処理水W3又はろ過水W4のアンモニア性窒素濃度、又は溶存酸素量を検出し、制御部6は、アンモニア性窒素濃度が所定濃度より高くなった場合、又は溶存酸素量が所定量より減少した場合に、ろ材充填層33bへの膜濃縮水W5の返送量の割合を高くし、固液分離部2への膜濃縮水W5の返送量の割合を低くする。排水処理システム1は、アンモニア性窒素濃度の増加、又は溶存酸素量の減少など、生物処理が十分でないと判断した場合に、ろ材充填層33bと固液分離部2とへの膜濃縮水W5の返送量の割合を決定するため、ろ材充填層33bへの膜濃縮水W5の提供量、すなわち微生物の提供量をより適切に調整することができる。
制御部6は、ろ材充填層33bを逆洗浄した直後に、ろ材充填層33bへの膜濃縮水W5の返送量を増加させる。ろ材充填層33bを逆洗浄した場合、ろ材35に付着した微生物が、逆洗浄により剥がれ落ちる場合がある。排水処理システム1は、そのような逆洗浄直後に膜濃縮水W5の返送量を増加することで、微生物の減少による排水処理の性能低下をより適切に抑制することができる。
膜ろ過部4のろ過膜42は、精密ろ過膜、又は限外ろ過膜である。ろ過膜42が、精密ろ過膜、又は限外ろ過膜であることにより、微生物を確実に捕集することが可能となり、膜濃縮水W5の返送により、微生物を確実にろ材充填層33bへ戻すことができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る排水処理システム1Aは、膜ろ過部がデッドエンド方式である点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
図9は、第2実施形態に係る排水処理システムの概略構成を示すブロック図である。図9に示すように、排水処理システム1Aは、膜ろ過部4Aa、4Ab、4Acと、バッファタンク部8と、を有する。また、散水ろ床部3と膜ろ過部4Aaとは、処理水管13aで接続されており、散水ろ床部3と膜ろ過部4Abとは、処理水管13bで接続されており、散水ろ床部3と膜ろ過部4Acとは、処理水管13cで接続されている。膜ろ過部4Aa、4Ab、4Acは、並列に散水ろ床部3と接続されており、それぞれ処理水管13a、13b、13cから、処理水W3が供給される。
膜ろ過部4Aaとバッファタンク部8とは、膜濃縮水管16aで接続されており、膜ろ過部4Abとバッファタンク部8とは、膜濃縮水管16bで接続されており、膜ろ過部4Acとバッファタンク部8とは、膜濃縮水管16cで接続されている。膜ろ過部4Aa、4Ab、4Acは、並列にバッファタンク部8と接続されており、それぞれ膜濃縮水管16a、16b、16cを介して、バッファタンク部8に膜濃縮水W5を供給する。
膜ろ過部4Aa、4Ab、4Acは、それぞれデッドエンド方式のろ過膜42Aを有している点で、第1実施形態に係る膜ろ過部4とは異なる。膜ろ過部4Aa、4Ab、4Acは、図5に示すろ過膜42の第2の端部45が閉口した形状となっている。通常状態において、膜ろ過部4Aaは、膜濃縮水管16aと接続されておらず、膜ろ過部4Abは、膜濃縮水管16bと接続されておらず、膜ろ過部4Acは、膜濃縮水管16cと接続されていない。通常状態とは、ろ過膜42Aに捕集された微生物を含む固形物を、膜ろ過部の外部に排出せず、ろ過処理、すなわちろ過水W4及び膜濃縮水W5の分離処理を行っている状態である。すなわち、通常状態においては、膜ろ過部4Aa、4Ab、4Acの内部には、ろ過膜42Aに捕集された微生物を含む固形物が、堆積される。膜ろ過部の数は3つに限られず、単数であってもよく、その数は任意である。以下、膜ろ過部4Aa、4Ab、4Acを区別しない場合は、膜ろ過部4Aと記載する。同様に、膜濃縮水管16a、16b、16cを区別しない場合は、膜濃縮水管16Aと記載する。
例えば、堆積された固形物が所定量以上になった場合などに、制御部6は、排出状態に切り替えて、制御部6が、膜ろ過部4Aと膜濃縮水管16Aとを接続する。このとき、堆積された固形物は、流入する処理水W3と共に、膜濃縮水W5として、膜濃縮水管16Aからバッファタンク部8に排出される。制御部6は、膜ろ過部4Aが複数ある場合は、複数のうちの一部のみを排出状態とし、他を通常状態とすることで、排出処理を円滑に実行させる。
バッファタンク部8は、膜ろ過部4Aからの膜濃縮水W5を一時貯留する水槽である。バッファタンク部8は、膜濃縮水W5を一時貯留することで、例えば散水ろ床部3に急に多量の膜濃縮水W5が流入することを抑制するなど、膜濃縮水W5の返送におけるバッファ機能を有している。バッファタンク部8は、例えば排水管を有しており、制御部6の制御でその排水管から膜濃縮水W5を外部に排出することにより、内部の流量を一定に保っている。ただし、排水処理システム1Aは、必ずしもバッファタンク部8を有していなくてもよい。
第2実施形態における散水ろ床接続管17と固液分離接続管18とは、バッファタンク部8に接続されている以外は、第1実施形態と同じである。第2実施形態においては、膜濃縮水W5は、バッファタンク部8から、散水ろ床接続管17と固液分離接続管18とに分配され、固液分離部2と散水ろ床部3とに返送される。固液分離部2と散水ろ床部3とに返送する膜濃縮水W5の量の制御は、第1実施形態と同様である。
以上、膜ろ過部4は、第1実施形態で説明したようにクロスフロー方式でもよく、第2実施形態で説明したようにデッドエンド方式であってもよい。いずれの場合においても、散水ろ床部3(ろ材充填層33b)に膜濃縮水W5を返送することができるため、微生物の減少による排水処理の性能低下を抑制することができる。
(変形例)
次に、変形例について説明する。変形例に係る排水処理システム1Bは、膜濃縮水W5を、散水ろ床部3にのみ返送する点で、第1実施形態とは異なる。変形例において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
図10は、変形例に係る排水処理システムの概略構成を示すブロック図である。図10に示すように、排水処理システム1Bは、固液分離接続管18を有さず、膜濃縮水W5を固液分離部2に返送しない。すなわち、排水処理システム1Bは、膜濃縮水W5を散水ろ床部3にのみ返送する。この場合、制御部6は、散水ろ床部3に返送する膜濃縮水W5の量(ろ床返送量Q1)のみを制御する。このような場合においても、排水処理システム1Bは、散水ろ床部3(ろ材充填層33b)に膜濃縮水W5を返送することができるため、微生物の減少による排水処理の性能低下を抑制することができる。すなわち、排水処理システム1は、第1実施形態のように、固液分離部2及び散水ろ床部3の両方に膜濃縮水W5を返送してもよいし、変形例のように、散水ろ床部3のみに膜濃縮水W5を返送してもよい。
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。