本発明は、被処理水中の濁質や有機物を除去する水処理装置に関する。特に、海水や汽水の淡水化、随伴水などの含油排水の再利用及び処理、気泡や泡沫によって分離しやすい油や藻類を含む湖沼水の浄化、工場排水の再利用などに適用される水処理装置であって、被処理水から濁質や有機物を除去する水処理装置及びその運転方法並びに水処理方法に関する。
例えば逆浸透膜(RO膜)を用いた海水淡水化方法において、RO膜に海水由来の濁度成分や有機物、藻類、油などが付着すると、RO膜の水の透過性能が低下するため、造水量が低下し、エネルギーコストが増大する。そのため、ROの前段に、砂ろ過装置、凝集砂ろ過装置、加圧浮上装置、精密ろ過膜(MF膜)や限界ろ過膜(UF膜)などの固液分離装置を設けて、RO膜の性能を低下させる物質を除去する前処理を行っている。しかしながら、海水に含まれる透明で粘着性の高いゼリー状の有機物など(Transparent Exopolymer Particles(TEP):生体外分泌高分子粒子)は、前記固液分離装置をすり抜けてRO膜に到達してしまうため、RO膜の性能低下や、前処理に用いるMF膜やUF膜などの性能低下の原因ともなっていた。例えば、下水処理や各種産業排水処理において、MBR(Membrane Bio Reactor:膜分離活性汚泥法メンブレンバイオリアクター)の透過水をRO膜で脱塩する場合においても、被処理水中に溶存している有機物がMBR膜を透過してRO膜に到達するため、RO膜のファウリングを起こし、エネルギーコストが増大し、造水量が低下する。例えばポリアミド系のRO膜の場合は、クエン酸などの酸洗浄剤や、水酸化ナトリウムなどのアルカリ洗浄剤を用いてRO膜を洗浄し、処理性能を回復させる操作を行うが、初期性能まで回復させることは困難である。また、RO膜の洗浄中は装置を稼働できないため、装置稼働時間が短縮され、造水量が低下し、また洗浄用の薬品との接触により膜が劣化する。TEPや溶解性有機物を除去するために、凝集砂ろ過装置とUF膜との組み合わせや、加圧浮上装置とUF膜との組み合わせなどを用いることがあるが、固液分離装置が2段となり、水回収率の低下は解消できず、また、建設コストの増加にもつながる。
また、被処理水の水質が悪化すると、砂ろ過や膜ろ過などの逆洗が頻繁になる。通常、逆洗水には、当該水処理装置により得られる処理水を用いるため、頻繁な逆洗は、水回収率の低下の原因となる。
また、随伴水やその他の油を含む排水を処理する場合も同様に、砂ろ過装置、凝集砂ろ過装置、加圧浮上装置の処理性能の低下や、MF膜やUF膜の目詰まりによって所望の水処理量が得られない場合も多い。
海水からTEPを除去する方法として、海水に磁性粒子を添加し、TEPに磁性粒子を付着させ、磁気分離によって磁性粒子に付着したTEPを海水から除去する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、特許文献1に開示されている方法では、磁性粒子の添加と磁気分離設備が必要であり、膜分離装置のみならず磁気分離設備のメンテナンスが必要となり、コストが増大する。
前処理用の濾過装置に、孔径1μm以上のポリテトラフルオロエチレン膜を用い、所定流束で原水を通過させる方法が提案されている(特許文献2)。しかし、特許文献2に開示されている方法では、特定の膜の使用及び流束の制御、並びに前処理膜表面に捕捉されたTEPの洗浄除去が必要となる。
前処理として、逆浸透膜装置に供給する膜供給水に、特殊なノボラック型フェノール系樹脂のアルカリ溶液を凝集剤として添加し、凝集させて除去する方法が提案されている(特許文献3)。しかし、特許文献3に開示されている方法では、特殊な凝集剤を使用することが必要で、生成する汚泥を処分しなければならないという問題がある。
また、直径50μm以下の気泡により被処理水を吸着処理する気泡塔と、該気泡塔からの吸着処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜装置とを備えた装置として、逆浸透膜装置の透過流速を低下させる要因となる界面活性剤をRO膜処理の前段で選択的かつ効率的に除去することで、長期に渡って安定的に造水可能となったことが開示されている(特許文献4)。しかしながら、気泡塔のみでは十分なRO供給水質にならず、気泡塔の後段に膜ろ過装置を設置する場合もあり、この場合水回収率の低下となっていた。
本出願人は、取水した海水中に気泡を発生させ、当該気泡にTEP成分が吸着してなるTEP含有気泡を水面に集めてTEP含有泡沫として除去する泡沫除去部を具備するTEP成分除去槽と、TEP成分が除去された海水を脱塩処理して淡水化する逆浸透膜処理装置と、を具備することを特徴とする海水淡水化装置、及び、泡沫除去装置の後段に、MF膜、UF膜、砂、アンスラサイト、ガラス、ガーネット、活性炭、繊維部材から選択される少なくとも1種をろ材として充填してなるろ過装置を備えた海水淡水化装置を提案している(特許文献5)。特許文献5には、泡沫分離装置でTEP成分を除去することの記載はあるが、藻類や油、赤潮などを対象とした記載はなく、また、前述のろ過装置から排出される洗浄水を前段の泡沫分離装置で処理することの記載はない。
1段の前処理装置ではRO膜装置のファウリングを抑制できない場合には、加圧浮上装置を用いて浮上しやすい物質を除去し、ろ過装置を用いて沈降しやすい物質を除去している。このため、CAPEX(Capital Expenditure、設備投資)、OPEX(Operating Expense、運用維持費)が増加し、水回収率も低下する。また、RO膜装置に導入する被処理液の前処理として加圧浮上装置とろ過装置との組合せを用いる場合には、前処理の処理水SDI(Silt Density Index:膜モジュールへの供給水中の懸濁物質を定量化する指標:シルト濃度指数)(ASTM D 4189−95))を5以下、好ましくは4以下まで低下させていたが、逆浸透膜の処理性能の低下を避けることはできなかった。
2種類の固液分離装置を用いる場合には、原水の負荷変動に対応することができるものの、水質が良好な季節においては処理性能が過大となり、OPEX(Operating Expense、運用維持費)が増加する。そのため、CAPEX,OPEXを低減しつつ、水回収率を向上させた水処理装置が要望されていた。
特開2010-58080号公報
特許第5019276号公報
国際公開2013/099857号公報
特開2005-230775号公報
国際公開WO2014/181583号公報
本発明の目的は、設備投資及び/又は運用維持費を低減しつつ、水回収率を向上させることができる水処理装置及び水処理方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、系全体からの濃縮水排出量を削減することができる水処理装置及び水処理方法を提供することにある。
本発明者らは、従来の前処理により得られる処理水のSDIによる評価では測定できない透明で粘着性の高いゼリー状の有機物、TEP、フミン質などの溶解性の有機物がRO膜に付着してRO膜の処理性能を低下させていることを突き止め、本発明を完成するに至った。本発明は、これら溶解性の有機物を除去する水処理装置及び水処理方法を提供する。
本発明の実施態様は以下のとおりである。
[1]被処理水の少なくとも濁質成分及び有機物を除去する固液分離装置と、
当該固液分離装置からの洗浄排水中に含まれる少なくとも粘着性の濁質成分及び有機物を濃縮分離する泡沫分離装置と、
当該固液分離装置からの洗浄排水を当該泡沫分離装置に導入する洗浄排水送水管と、
を具備することを特徴とする、水処理装置。
[2]被処理水の少なくとも濁質成分及び有機物を除去する固液分離装置と、
当該固液分離装置からの洗浄排水中に含まれる少なくとも粘着性の濁質成分及び有機物を濃縮分離する泡沫分離装置と、
当該固液分離装置からの洗浄排水を当該泡沫分離装置に導入する洗浄排水送水管と、
当該泡沫分離装置からの処理済み洗浄排水である分離水を当該固液分離装置に再導入する分離水送水管と、
を具備することを特徴とする、水処理装置。
[3]前記固液分離装置は、砂ろ過装置、凝集砂ろ過装置、精密ろ過膜(MF膜)モジュール、及び限界ろ過膜(UF膜)モジュールから選択される1種以上である、[1]又は[2]に記載の水処理装置。
[4]前記泡沫分離装置は、被処理水と気泡とを混合する反応塔、当該反応塔への被処理水の導入管、当該反応塔への気泡の導入手段、及び当該反応塔からの越流水を排出する越流水排出手段を具備し、当該反応塔は、濁質成分及び有機物を含有する泡状体を高密度化して濃縮する濃縮部及び/又は泡状体を水面上の所定領域に集める泡状体収集部、及び泡状体除去部を有する、[1]乃至[3]のいずれかに記載の水処理装置。
[5]被処理水の少なくとも濁質成分及び有機物を除去する固液分離装置及び泡沫分離装置を含む水処理装置の運転方法であって、
当該固液分離装置の逆洗時に、当該固液分離装置から排出される洗浄排水を当該泡沫分離装置に導入し、当該泡沫分離装置で洗浄排水中に含まれる少なくとも粘着性の濁質成分及び有機物を濃縮分離した濃縮水を少量の越流水として排出することを特徴とする、水処理装置の運転方法。
[6]被処理水の少なくとも濁質成分及び有機物を除去する固液分離装置及び泡沫分離装置を含む水処理装置の運転方法であって、
当該固液分離装置の逆洗時に、当該固液分離装置から排出される洗浄排水を当該泡沫分離装置に導入し、当該泡沫分離装置で洗浄排水中に含まれる少なくとも粘着性の濁質成分及び有機物を濃縮分離した濃縮水を少量の越流水として排出し、
当該泡沫分離装置からの処理済み洗浄排水である分離水を当該固液分離装置に再導入することを特徴とする、水処理装置の運転方法。
[7]固液分離装置と、泡沫分離装置と、逆浸透膜装置と、
当該固液分離装置からの透過水を当該泡沫分離装置に送液する透過水送水管と
当該泡沫分離装置からの分離水を当該逆浸透膜装置に送液する分離水送水管と、
を具備し、当該固液分離装置からの透過水を当該泡沫分離装置にて処理した後に当該逆浸透膜装置にて脱塩処理する水処理装置。
[8]前記固液分離装置は、砂ろ過装置、生物膜ろ過装置、膜ろ過装置、メンブレンバイオリアクター及びこれらの任意の組合せから選択される、[7]に記載の水処理装置。
[9]前記固液分離装置は、少なくともメンブレンバイオリアクターを含み、
前記泡沫分離装置からの泡沫含有濃縮水を前記メンブレンバイオリアクターに返送する泡沫含有濃縮水送水管を具備する、[7]又は[8]に記載の水処理装置。
[10]前記逆浸透膜からの濃縮水を前記泡沫分離装置に返送する濃縮水送水管を具備する、[7]〜[9]のいずれか1に記載の水処理装置。
[11]被処理水を固液分離して透過水を得る固液分離工程と、
当該透過水を泡沫分離して分離水を得る泡沫分離工程と、
当該分離水を逆浸透膜により脱塩する脱塩工程と、
を具備する水処理方法。
[12]前記透過水のSDIは5以下である、[11]に記載の水処理方法。
[13]前記泡沫分離工程における透過水の滞留時間は0.5分乃至10分である、[10]又は[11]に記載の水処理方法。
[14]被処理水から少なくとも濁質成分及び有機物を除去して透過水を得る固液分離装置と、
少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を濃縮分離して濃縮水及び分離水を得る泡沫分離装置と、
逆洗時に当該固液分離装置からの洗浄排水を当該泡沫分離装置に供給する洗浄排水送水管と、を具備することを特徴とする水処理装置。
[15]前記泡沫分離装置は、逆洗時に前記固液分離装置からの洗浄排水を濃縮分離して、少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物が除去された分離水を前記固液分離装置に返送する分離水送水管をさらに具備することを特徴とする[14]に記載の水処理装置。
[16]前記泡沫分離装置は、逆洗時に前記固液分離装置からの洗浄排水を濃縮分離して、少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を含む濃縮水を越流水として排出することを特徴とする[14]又は[15]に記載の水処理装置。
[17]前記固液分離装置からの透過水を脱塩処理する逆浸透膜装置をさらに具備することを特徴とする[14]〜[16]のいずれか1に記載の水処理装置。
[18]固液分離装置と、泡沫分離装置と、逆浸透膜装置と、
当該固液分離装置からの透過水を当該泡沫分離装置に送液する透過水送水管と
当該泡沫分離装置からの分離水を当該逆浸透膜装置に送液する分離水送水管と、
を具備し、当該固液分離装置からの透過水を当該泡沫分離装置にて処理した後に当該逆浸透膜装置にて脱塩処理する水処理装置。
[19]被処理水から少なくとも濁質成分及び有機物を除去して透過水を得る固液分離装置と、
被処理水から少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を濃縮分離して濃縮水及び分離水を得る泡沫分離装置と、
当該泡沫分離装置からの濃縮水を当該固液分離装置に返送する濃縮水送水管と、
を具備することを特徴とする水処理装置。
[20]当該泡沫分離装置からの分離水を脱塩処理する逆浸透膜装置と、
前記泡沫分離装置からの分離水を当該逆浸透膜装置に導入する分離水送水管と、
をさらに具備することを特徴とする[19]に記載の水処理装置。
[21]前記固液分離装置は、砂ろ過装置、凝集砂ろ過装置、精密ろ過膜(MF膜)モジュール、限界ろ過膜(UF膜)モジュール、生物膜ろ過装置、メンブレンバイオリアクター及びこれらの任意の組合せから選択される1種以上であることを特徴とする[14]〜[20]のいずれか1に記載の水処理装置。
[22]前記固液分離装置の水頭圧又は膜間差圧又は入口側圧を計測する圧力計と、
当該圧力計により計測された水頭圧又は膜間差圧又は入口側圧に基づいて、前記泡沫分離装置に供給する空気量又は凝集剤添加量、若しくは通常運転と逆洗運転との切り替えを制御する制御部と、
を具備することを特徴とする[14]〜[21]のいずれか1に記載の水処理装置。
[23]前記泡沫分離装置は、被処理水と気泡とを混合する反応塔、当該反応塔への被処理水の導入管、当該反応塔への気泡の導入手段、及び当該反応塔からの越流水を排出する越流水排出手段を具備し、
当該反応塔は、濁質成分及び有機物を含有する泡状体を高密度化して濃縮する濃縮部及び泡状体を水面上の所定領域に集める泡状体収集部の少なくとも一方を有することを特徴とする[14]〜[22]のいずれか1に記載の水処理装置。
[24]被処理水から少なくとも濁質成分及び有機物を除去して透過水を得る固液分離装置、及び被処理水から少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を濃縮分離して濃縮水及び分離水を得る泡沫分離装置を含む水処理装置の運転方法であって、
逆洗時に、当該固液分離装置から排出される洗浄排水を当該泡沫分離装置に導入し、当該泡沫分離装置で洗浄排水中に含まれる少なくとも粘着性の濁質成分及び有機物を濃縮分離した濃縮水を少量の越流水として排出することを特徴とする、水処理装置の運転方法。
[25]逆洗時に、前記泡沫分離装置からの分離水を前記固液分離装置に返送することを特徴とする[24]に記載の水処理装置の運転方法。
[26]前記固液分離装置の水頭圧又は膜間差圧を計測し、計測した圧力に基づいて、前記泡沫分離装置への空気又は凝集剤の供給量若しくは通常運転と逆洗運転との切り換えを制御することを特徴とする[24]又は[25]に記載の水処理装置の運転方法。
[27]被処理水から少なくとも濁質成分及び有機物を除去して透過水を得る固液分離装置、及び被処理水から少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を濃縮分離して濃縮水及び分離水を得る泡沫分離装置を含む水処理装置において、
当該泡沫分離装置からの濃縮水を当該固液分離装置に導入することを特徴とする水処理方法。
[28]被処理水から少なくとも濁質成分及び有機物を除去して透過水を得る固液分離装置、及び被処理水から少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を濃縮分離して濃縮水及び分離水を得る泡沫分離装置と、逆浸透膜装置と、を含む水処理装置において、
当該固液分離装置からの透過水を当該泡沫分離装置に供給し、当該泡沫分離装置にて当該透過水を濃縮分離して、分離水と濃縮水とを得て、
当該分離水を逆浸透膜装置にて脱塩処理し、
当該濃縮水を当該固液分離装置に返送することを特徴とする水処理方法。
[29]被処理水を固液分離して、SDI(シルト濃度指数)が5以下の透過水を得る固液分離工程と、
当該透過水を0.5分乃至10分の滞留時間で泡沫分離して、少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を含む濃縮水と、少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を除去された分離水を得る泡沫分離工程と、
当該分離水を逆浸透膜により脱塩する脱塩工程と、
を含むことを特徴とする水処理方法。
[30]被処理水を0.5分乃至10分の滞留時間で泡沫分離して、少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を含む濃縮水と、少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物が除去された分離水を得る泡沫分離工程と、
当該分離水を固液分離して、SDI(シルト濃度指数)が5以下の透過水を得る固液分離工程と、
当該透過水を逆浸透膜により脱塩する脱塩工程と、
を含むことを特徴とする水処理方法。
本発明によれば、固液分離装置からの洗浄排水を泡沫分離装置で濃縮分離し、その分離水を再度固液分離装置に導入することで、水回収率が増加し、系全体からの濃縮水排出量を削減することができる。
また、本発明によれば、固液分離装置からのSDIが低下した透過水を泡沫分離装置で処理し、その分離水を逆浸透膜装置に導入することで、逆浸透膜装置の性能低下を抑制すると共に水回収率が増加し、また、泡沫分離装置には空気を導入するだけでよいから、系全体からの濃縮水排出量を削減することができる。
さらに、本発明によれば、泡沫分離装置からの濃縮水を固液分離装置に返送し、固液分離装置からの透過水を再度、泡沫分離装置に導入することで、系全体からの濃縮水排出量を削減することができる。
本発明で用いる泡沫分離装置は、類似した技術である加圧浮上装置に比べ、原水の滞留時間が1/10と極めて短く、装置を極めて小型化することができる。また、固液分離装置と組み合わせることで、固液分離装置単独の場合よりも負荷変動に効率的に対応できる。さらに、固液分離装置を2段設置するよりも、設備投資及び/又は運用維持費並びに設置面積を大きく削減することができる。
泡沫分離装置の下流に固液分離装置(砂ろ過装置)を配置した本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
泡沫分離装置の下流に固液分離装置(膜ろ過装置)を配置し、膜ろ過装置への流入圧力を計測して、逆洗運転への切り換え及び泡沫分離装置への気体導入量を制御する本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
膜ろ過装置への流入圧力を計測して、逆洗運転への切り換え及び泡沫分離装置への凝集剤添加量を制御する本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
固液分離装置(砂ろ過装置)の下流に泡沫分離装置を具備する本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
固液分離装置(膜ろ過装置)の下流に泡沫分離装置を具備する本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
固液分離装置(砂ろ過装置)と泡沫分離装置と逆浸透膜装置を具備する本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
固液分離装置(砂ろ過装置)と泡沫分離装置と濃縮水送水管を具備する本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
固液分離装置(生物膜ろ過装置と砂ろ過装置)と泡沫分離装置と逆浸透膜装置を具備する本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
固液分離装置(膜ろ過装置)と泡沫分離装置と逆浸透膜装置を具備する本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
固液分離装置(メンブレンバイオリアクター)と泡沫分離装置と逆浸透膜装置を具備する本発明の水処理装置の一実施態様を示す概略説明図である。
実施形態
本発明の水処理装置は、被処理水から少なくとも濁質成分及び有機物を除去して透過水を得る固液分離装置と、被処理水から少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を濃縮分離して濃縮水及び分離水を得る泡沫分離装置と、を含み、(1)前記泡沫分離装置からの分離水を前記固液分離装置に供給する分離水送水管と、逆洗時に、前記固液分離装置からの洗浄排水を前記泡沫分離装置に供給する洗浄排水送水管と、を含み、前記泡沫分離装置からの濃縮水を少量の越流水として排出する構成、若しくは(2)前記固液分離装置からの透過水を前記泡沫分離装置に供給する透過水送水管と、前記泡沫分離装置からの濃縮水を前記固液分離装置に返送する濃縮水送水管と、を含む構成を有する。
本発明の水処理装置は、逆浸透膜処理の前処理に適用することができる。本発明の水処理装置は、(1)前記固液分離装置からの透過水、又は(2)前記泡沫分離装置からの分離水、が供給される逆浸透膜装置をさらに具備することが好ましい。
本発明の水処理方法は、例えば、海水淡水化処理の場合、被処理水を泡沫分離装置にて処理した後、泡沫分離装置からの分離水を固液分離装置にて固液分離して、固液分離装置からの透過水を逆浸透膜装置にて脱塩処理する通常運転と、固液分離装置を逆洗して、洗浄排水を泡沫分離装置に導入して濃縮分離する逆洗運転と、を切り換えて実施する。泡沫分離装置における洗浄排水からの分離水を被処理水として再び固液分離装置に導入して固液分離して、固液分離装置からの透過水を逆浸透膜にて脱塩処理してもよい。
また本発明の水処理方法は、例えば、海水淡水化処理の場合、被処理水を固液分離装置にて固液分離した後、固液分離装置からの透過水を泡沫分離装置にて濃縮分離して、泡沫分離装置からの濃縮水を固液分離装置に返送し、泡沫分離装置からの分離水を逆浸透膜装置にて脱塩処理する通常運転と、固液分離装置を逆洗する逆洗運転と、を切り換えて実施する。
[固液分離装置]
固液分離装置としては、砂ろ過装置、凝集砂ろ過装置、精密ろ過膜(MF膜)や限界ろ過膜(UF膜)、生物膜ろ過装置、メンブレンバイオリアクター(MBR)など、水処理分野において通常用いられる固液分離装置を好適に用いることができる。
砂ろ過装置には、ろ材が充填されている。ろ材としては、砂、アンスラサイト、ガラス、ガーネット、活性炭、繊維部材などの多孔性物質などを制限なく用いることができる。
精密ろ過膜あるいは限外ろ過膜の膜素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、酢酸セルロース(CA)などの有機性素材、セラミック、金属などの無機素材を挙げることができる。耐薬品性に優れていることが好ましく、PVDFが好適である。膜の孔径は、0.001μm〜1μmが好適である。ろ過膜の形態としては、中空糸、チューブラ、平膜などを採用することができるが、中空糸膜からなる加圧型円筒形のモジュールが好適である。
生物膜ろ過装置は、ろ材に生物を繁殖させてろ材表面に生物膜を形成してなるろ過装置である。ろ材としては通常の水処理用の生物膜ろ過装置に用いられるろ材を制限なく使用することができ、砂、アンスラサイト、ガラス、ガーネット、活性炭、繊維部材などの多孔性物質などを用いることができる。生物は、前記ろ材表面に生息し、被処理水由来の有機物を付着或いは、生物学的に除去する。
メンブレンバイオリアクター(MBR)は、活性汚泥処理槽に、中空糸あるいは平膜形状の精密ろ過膜や限外ろ過膜などの分離膜を設置し、処理水と活性汚泥とを分離する装置である。被処理水中の有機物が活性汚泥処理されることで、炭酸ガスと水に分解されると共に汚泥が増殖する。汚泥からは粘着性の生体外高分子物質などが排出され、汚泥がフロック化する。
[泡沫分離装置]
泡沫分離処理は、従来用いられている加圧浮上分離とは異なる。加圧浮上分離は、凝集剤を添加し、空気と水を共存させた状態で加圧して水中に空気を過飽和溶解させ、その後大気圧に戻すことにより、過飽和溶解した空気を大量の微細気泡として出現させ、微細気泡に浮遊物質を捕捉させて水面に浮上させ、水面にて微細気泡が消失して残る浮遊物質を集めて除去する方法であり、凝集剤を添加して形成した非溶解性の懸濁物質のフロックの周囲に、通常、泡径30μm〜50μmのマイクロバブルといわれる微細な気泡を付着させる。微細気泡の浮上速度は遅く、液の滞留時間が20分以上となり、浮上の途中に気泡が破泡して、非溶解性の懸濁物質が沈降することもある。
泡沫分離処理は、溶存している有機物や微細な濁質成分等を泡径50μm乃至2mmの微細な気泡表面に吸着させた泡状体として、0.5分乃至10分、好ましくは2分程度の短時間のうちに液面まで上昇させ、泡状体から吸着している有機物や微細な濁質成分等を泡沫として液体から分離する。泡沫分離処理において導入する気体の液体に対する比率(気液比)は0.1乃至2が好ましい。気液比0.1未満では除去性能が悪く、気液比2を越えても処理性能は向上せずに気体の供給量が過剰となる。泡沫分離装置における処理能力は、導入する空気量を調節することによって制御することができる。すなわち、水質が悪い場合は気液比を多くし、水質が良好な場合は気液比を少なくして、経済的な運転を行うことができる。
泡沫分離装置は、処理対象成分を含む被処理水と気泡とを混合する反応塔、反応塔への被処理水の導入管、反応塔への気泡の導入手段、及び反応塔からの越流水を排出する越流水排出手段を具備する。反応塔には、濁質成分及び透明で粘着性の高いゼリー状の有機物、TEP、フミン質などの溶解性有機物を含有する泡状体を高密度化して濃縮し、前記泡状体を水面上の所定領域に集めて泡状体を除去する濃縮除去部が設けられている。あるいは、反応塔の上部に、前記泡状体を高密度化して濃縮する濃縮部と、前記泡状体を水面上の所定領域に集める泡状体収集部と、泡状体除去部とが別個に設けられていてもよい。また、反応塔上部に設置された濃縮除去部、若しくは濃縮部、泡状体収集部或いは泡状体除去部には、消泡のためのスプレーノズルが設けられていてもよい。
泡沫分離装置における気泡の導入は、被処理水を反応塔に落下させること、又は被処理水を反応塔内部に設けられた衝突部材に衝突させることによりなされてもよく、反応塔内部に設けられた散気装置、曝気装置、撹拌式エアレータ、エジェクタ、極微細気泡発生装置を用いてなされてもよい。また、散気装置、曝気装置、撹拌式エアレータ、エジェクタ、極微細気泡発生装置を反応塔の底部に配置して、反応塔内に対流を発生させることによって、泡状体を所定領域に集めることもできる。
泡沫分離装置に導入する気泡のサイズは任意のサイズをとることができるが、気泡径10μm以上2mm以下が好ましい。気泡径が10μm未満であると、気泡の上昇速度が遅いために、反応塔の容積が大きくなり、気泡径が2mmを越えると比表面積が小さくなり、十分な気泡表面積を確保することが困難となる。
反応塔において、被処理水と気泡とを接触させて、被処理水に含まれる濁質成分や透明で粘着性の高いゼリー状の有機物、TEP、フミン質などの溶解性有機物を気泡に付着させる。気泡の表面にはOH−、Cl−、COO−が濃縮して負電荷に帯電しており、被処理水由来の濁質成分、有機物及び油などが電気的に中和あるいは反発し、若しくはイオン交換により気泡表面に吸着されやくなっている。濁質成分や有機物(特に透明で粘着性が高いゼリー状の有機物やTEP成分やフミン質などの溶解性有機物)が気泡に吸着された泡状体は、泡径が大きいために上昇速度が大きく、短時間のうちに水面に浮上する。
反応塔の濃縮除去部は、反応塔本体の底部から上方に向かって縮減する断面積を有する形状を有する。あるいは、水面に浮上した泡状体を所定領域に集める傾斜仕切を設けてもよいし、逆円錐形にして泡状体を分離濃縮してもよい。被処理水中に導入された気泡が、被処理水由来の濁質成分や、透明で粘着性の高いゼリー状の有機物、TEP、フミン質などの溶解性有機物、油などを吸着して泡状体として上昇する経路が上方に向かって縮減しているため、泡状体が狭い領域に集中し、濁度成分、透明で粘着性の高いゼリー状の有機物、TEP、フミン質などの溶解性有機物及び油と気泡との接触頻度が高まり、これら除去対象成分が濃縮された高密度の泡状体となる。
濃縮分離部は、被処理水由来の濁質成分、透明で粘着性の高いゼリー状の有機物、TEP、フミン質などの溶解性有機物及び油などを吸着した泡状体を泡沫と濃縮水とに分離して、濃縮水を越流水として流出させる。越流水量は、通常、被処理水に対して0.1%以上10%以下の範囲であるが、越流水量が少ないほど水回収率が高くなるため、0.1%以上5%以下が好ましく、0.1%以上1%以下がより好ましい。
あるいは、分離された濃縮水を固液分離装置に返送するための濃縮水送水管が濃縮分離部に接続されていてもよい。この場合には、濃縮水全量を再利用できるため、水回収率がさらに向上する。
[逆浸透膜装置]
逆浸透膜装置は、きわめて高い脱塩率が得られる半透性の膜であって、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどから構成される逆浸透膜を含む。
SDI(Slit Density Index)とは、逆浸透法において、膜モジュールへの供給水中の懸濁物質を定量化する指標であり(ASTM D 4189-95)、新しい0.45μmの精密ろ過膜(MF)を用いて試料水を206kPaの加圧下でろ過し、初めの500mlをろ過するのに要する時間(T1)を測定し、続けて15分間ろ過した後、さらに500mlをろ過するのに要する時間(T2)を測定し、
により算出する値である。MF膜が閉塞して15分後に500mlのろ過水が得られないときにはT2は無限大となり、SDIは約6.66が最大値となる。
以下、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施形態1]
本実施形態の水処理装置は、被処理水から少なくとも濁質成分及び有機物を除去して透過水を得る固液分離装置と、被処理水から少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を濃縮分離して濃縮水及び分離水を得る泡沫分離装置と、前記泡沫分離装置からの分離水を前記固液分離装置に供給する分離水配管と、逆洗時に前記固液分離装置から排出される洗浄排水を前記泡沫分離装置に導入する洗浄排水配管と、を具備し、前記泡沫分離装置からの濃縮水を少量の越流水として排出することを特徴とする。
前記分離水配管は、逆洗時に、前記泡沫分離装置からの処理済み洗浄排水を前記固液分離装置に再導入する配管としても機能する。
固液分離装置と泡沫分離装置との配置は、逆洗時に固液分離装置からの洗浄排水を泡沫分離装置に導入し、泡沫分離装置からの処理済み洗浄排水を装置外に排出するか若しくは固液分離装置に再導入できる配置であればよく、通常運転時の被処理水の流通方向は制限されない。例えば、固液分離装置が上流で泡沫分離装置が下流に設けられている配置でもよいし、泡沫分離装置が上流で固液分離装置が下流に設けられている配置であってもよい。
本発明の水処理装置は、逆浸透膜処理の前処理に適用することができる。たとえば、固液分離装置からの透過水を逆浸透膜などの後段の水処理に供する配置とすることができる。固液分離装置の下流側に逆浸透膜(RO)装置が設けられている場合に、泡沫分離装置により被処理水から粘着性の濁質成分、溶解性有機物及び油が除去され、次いで固液分離装置により被処理水から濁質成分、有機物及び油などが十分に除去された後に、被処理水が逆浸透膜装置に流入するため、逆浸透膜装置の閉塞を防止し、水回収率の向上ばかりでなく、逆洗のために水処理装置を停止させる時間も短くなり、脱塩効果が向上するなど、特に高い効果を発揮する。
あるいは、たとえば固液分離装置からの透過水のSDIが5以下であっても、透過水が粘着性の濁質成分や溶解性有機物を含む場合には、固液分離装置からの透過水を泡沫分離装置で処理した後に、逆浸透膜などの後段の水処理に供する配置とすることができる。
通常はSDIが5以下の透過水であれば、逆浸透膜の閉塞を生じさせる可能性は低いが、SDIでは評価できない粘着性の濁質成分や溶解性有機物を透過水が含むことがある。これらの粘着性の濁質成分や溶解性有機物は逆浸透膜を閉塞させるため、透過水を逆浸透膜に導入する前に、泡沫分離装置により処理することが好ましい。
泡沫分離装置の下流に固液分離装置が配置されている態様の水処理装置の場合、通常運転時には、濁質成分、有機物及び油などを含む被処理水を、まず泡沫分離装置にて泡沫分離し、次いで泡沫分離処理後の分離水を固液分離装置に導入して固液分離する。泡沫分離装置は、泡沫に濁質成分、有機物及び油などを吸着させて濃縮するため、他の濃縮装置に比べて濃縮倍率が高い。固液分離装置では、泡沫分離装置で除去しきれなかった濁質成分、有機物及び油などを精密にろ過する。固液分離装置からの透過水は、たとえば逆浸透膜装置など後段に設けられている装置にてさらに処理される。
泡沫分離装置の上流に固液分離装置が配置されている態様の水処理装置の場合、通常運転時には、濁質成分、有機物及び油などを含む被処理水を固液分離装置にて固液分離し、透過水は、たとえば逆浸透膜装置など後段に設けられている装置にてさらに処理される。固液分離した透過水には、被処理水由来の溶解性有機物などが含まれている。例えば疎水基を含む有機物、疎水基と親水基を含む有機物、親水基を含む有機物、糖タンパク質など溶存している有機物の一部は固液分離によっては除去できない。本発明の水処理方法においては、これらの溶存している有機物を凝集剤添加によりフロック化することなく、泡沫分離処理により分離除去することができる。
本発明の水処理装置及び方法において処理される被処理水としては、汽水や海水のほか、随伴水などの含油排水、藻類を含む湖沼水、工場排水などが挙げられる。海水又は汽水には、塩水であるだけでなく、取水地域によっては濁質や溶解性有機物を多く含むこともある。固液分離装置において、ほとんどの塩水は透過して排出されるが、濁質成分や一部の溶解性有機物は、ろ材、ろ過膜表面やろ過膜モジュール内に蓄積する。これら被処理水中に含まれ、ろ材やろ過膜に蓄積される濁質成分、有機物(特に透明で粘着性が高いゼリー状の有機物やTEP成分やフミン質などの溶解性有機物)及び油(以下「処理対象成分」ともいう。)などは、逆洗時には洗浄排水中に含まれ得る。
逆洗時には、固液分離装置の透過水出口側から洗浄水を導入して、通常運転時とは逆方向に洗浄水を流通させ、洗浄排水の全量又は一部を泡沫分離装置の分離水出口側に導入し、通常運転時とは逆方向に洗浄排水を流通させる。固液分離装置からの洗浄排水には、固液分離装置のろ材又はろ過膜から剥離された残留物質が含まれている。これらの残留物質は、被処理水中の粘着性を有する濁質成分、有機物及び油などに由来する物質であり、同様に粘着性を有する。泡沫分離装置に導入された洗浄排水は、通常運転と同様に反応塔底部から供給される気泡表面に吸着して大きな泡状体を形成し、水面に速やかに上昇して、濃縮除去部、若しくは濃縮部、泡状体収集部或いは泡状体除去部にて濃縮され、粘着性物質を含む泡沫を含む濃縮水と、分離水と、に分離される。濃縮水は越流水として泡沫分離装置の外に排出され、逆洗時に泡沫分離装置にて分離された分離水は、固液分離装置への洗浄水として循環利用してもよく、この場合には洗浄水量を著しく削減することができる。
また、固液分離装置の洗浄排水を泡沫分離装置に導入して濁質成分、有機物及び油などを分離除去した後、再び固液分離装置に戻して固液分離した後の透過水を後段の逆浸透膜装置による脱塩処理に供することもできる。
逆洗時には、固液分離装置から除去された濁質成分、有機物及び油などを含む洗浄排水が発生するが、従来はそのまま洗浄排水として装置外に排出していた。本実施形態では、固液分離装置からの洗浄排水の全量又は一部を泡沫分離装置に導入して処理し、洗浄排水中に含まれる濁質成分、有機物及び油などを泡沫として除去した後の処理水を固液分離装置に再び導入して固液分離した後、逆浸透膜による脱塩処理などの水処理本来の経路に戻して再利用することにより、洗浄排水として廃棄されていた水量を有効利用することで水回収率を著しく向上させることができる。
本実施形態の水処理方法は、例えば、海水淡水化処理の場合、被処理水を泡沫分離装置にて処理した後、泡沫分離装置からの分離水を固液分離装置にて固液分離して、固液分離装置からの透過水を逆浸透膜装置にて脱塩処理する通常運転、若しくは被処理水を固液分離装置にて固液分離した後、固液分離装置からの透過水を泡沫分離装置にて濃縮分離して、泡沫分離装置からの分離水を逆浸透膜装置にて脱塩処理する通常運転と、固液分離装置を逆洗して、洗浄排水を泡沫分離装置に導入して濃縮分離する逆洗運転と、を切り換えて実施する。泡沫分離装置における洗浄排水からの分離水を被処理水として再び固液分離装置に導入して固液分離して、固液分離装置からの透過水を逆浸透膜にて脱塩処理してもよい。
逆洗運転への切り替えは、固液分離装置への被処理水の流入圧力の上昇速度を測定し、所定値を越えた場合に切り換えてもよく、あるいは所定時間経過によって切り換えてもよい。また、固液分離装置への被処理水の流入圧力の上昇速度に応じて、泡沫分離装置への空気供給量を変化させて、被処理水の性状に適切な条件で泡沫分離処理を行うことができる。あるいは、泡沫分離装置には凝集剤を添加してもよく、固液分離装置への被処理水の流入圧力の上昇速度に応じて、泡沫分離装置への凝集剤の添加量を変化させて、被処理水の性状に適切な条件で泡沫分離処理を行うことができる。
固液分離装置がろ材を充填してなるろ過装置である場合、被処理水又は分離水の流入圧力の変動に基づく逆洗運転への切り換えは、水頭圧の増減速度を検出して閾値を超えた場合に行うことができる。
固液分離装置がろ過膜を用いる膜ろ過装置である場合、被処理水又は分離水の流入圧力の変動に基づく逆洗運転への切り換えは、ろ過膜の入口側圧と出口側圧の差圧(膜間差圧)又は入口側圧(出口側圧がゼロの場合)を検出して閾値を超えた場合に行うことができる。たとえば、ろ過膜として限外ろ過膜を使用する場合の設定膜間差圧は0kPa〜100kPa、好ましくは0kPa〜60kPa、特に好ましくは0kPa〜45kPaであり、一回の逆洗で、初期圧(汚れ成分による抵抗増加を差し引き、単純に膜ろ過抵抗、配管抵抗のみの抵抗による圧力をいう)まで十分に低下する設定圧が好ましい。たとえば、初期圧が20kPa、一回の逆洗で8kPaの洗浄効果があるとすれば、設定膜間差圧は25〜28kPaが好ましい。膜間差圧に応じて逆洗を実施することにより、ろ過膜に流入する被処理水又は分離水の水質変動が起こった場合においても、その変動に応じて逆洗間隔も変動するので、効果的に逆洗を実施できる。すなわち、被処理水又は分離水の水質が悪化した場合は、ろ過膜の閉塞の進行が早まるため、所定の膜間差圧に達する時間が短くなり、短時間で逆洗が実施される。逆に、被処理水又は分離水の水質が良好であれば、ろ過膜の閉塞の進行が緩やかになり、所定の膜間差圧に達する時間が長くなるため、逆洗回数が減る。このように膜の閉塞速度に応じて逆洗を実施することで、一般的に添加される次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤の添加量を最適化して、運転維持費を低減することが可能となる。
本実施形態において、逆洗の実施は、膜間差圧で逆洗する方法に加えて、所定時間で強制的に逆洗する方法も併用できる。被処理水又は分離水の水質が極めて清浄で、ほとんど膜間差圧の時間変化がない場合においても、ろ過膜全体の圧力変動には至らないまでも部分的に有機物などが蓄積して圧密化することもあるため、定期的な逆洗を実施することは、ろ過膜の長期運転を達成する上で効果的である。
逆洗は、ろ過膜の透過水側から供給側へ洗浄水を通水することで、ろ過膜表面に蓄積した濁質成分や一部の溶解性有機物を剥離させることで行う。なお、このとき、モジュール内に空気を吹き込みスクラビングすることでより効果的な洗浄効果を得ることができる。スクラビングは単独で実施しても効果があるが、逆洗と併用してもよい。スクラビングの時間は任意の時間を取ることが出来るが、概ね10秒から5分程度で実施する。また、被処理水に含まれる濁質成分や溶解性有機物が蓄積したろ過膜表面やろ過膜モジュールを洗浄する洗浄液には、通常、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤を添加する。塩素系酸化剤の添加量は、海水や汽水の水質にもよるが、通常は1mg/L〜100mg/Lの範囲が好ましい。
図1に、泡沫分離装置20の下流に固液分離装置としての砂ろ過装置10が配置されている態様の水処理装置の一態様を例として示す。図1に示す水処理装置においては、泡沫分離装置20の分離水を砂ろ過装置10の上部に供給して固液分離する通常運転と、砂ろ過装置10の洗浄排水を泡沫分離装置20に供給して濃縮分離する逆洗運転と、を切り換えて行うことができる。
通常運転時には、濁質成分、有機物及び油などを含む被処理水を泡沫分離装置20に供給して泡沫分離し、次いで泡沫分離処理後の分離水を分離水送水管26を介して砂ろ過装置10に導入して固液分離する。砂ろ過装置10は、泡沫分離装置20で除去しきれなかった濁質成分、有機物及び油などを精密にろ過する。前段の泡沫分離装置20で、被処理水由来の濁質成分、透明で粘着性の高いゼリー状の有機物、TEP、フミン質などの溶解性の有機物及び油が粗除去することができ、後段の砂ろ過装置10にかかる汚濁負荷が低減されているので、砂ろ過装置10の洗浄頻度を低減することができる。
泡沫分離装置20は、被処理水を導入するための被処理水送水管21、気泡を発生させるための空気を導入するための空気導入管22、被処理水と気泡とを接触させる反応塔23、泡状体を濃縮して除去する濃縮除去部(又は濃縮部、泡状体収集部及び泡状体除去部、以下まとめて「濃縮除去部」という)24、泡状体を含む濃縮水を排出する濃縮水送水管25、分離水を排出する分離水送水管26を含む。分離水送水管26は、下流に設けられている砂ろ過装置10に接続されている。
砂ろ過装置10には、ろ材16が充填されている。分離水送水管26を介して供給される泡沫分離装置20からの分離水を固液分離する。砂ろ過装置10には、ろ材16に空気を供給する空気導入管12、透過水を排出する透過水送水管13、逆洗時に洗浄水を送液するための洗浄水送水管14、逆洗時に洗浄排水を排出する洗浄排水送水管15、及び圧力計(水頭圧測定器)17が連結されている。
砂ろ過装置には、圧力計(水頭圧測定器)17が備えられており、ろ過の進行とともに、濁質成分等がろ材16の隙間に蓄積されることにより上昇する水頭圧を測定し、定期的或いは所定の水頭圧になった段階でろ材の洗浄を実施する。洗浄頻度は、水質に応じて任意の回数をとることができるが、0.1回/日以上5回/日以下程度が好ましい。
洗浄時には、砂ろ過装置10に洗浄水送水管14から洗浄水を導入し、通常運転時とは反対方向に洗浄水を通水してろ材16を洗浄して、ろ材の間隙に堆積している濁質成分等を剥離させる。剥離された濁質成分等を含む洗浄排水の全量又は一部は、洗浄排水送水管15を介して泡沫分離装置20の反応塔23に導入される。このとき、洗浄排水は通常の被処理水よりも濁質成分が多く含まれているので、洗浄排水を泡沫分離装置20に導入する前に一時的に貯留し、低流量で泡沫分離装置20に導入することが好ましい。泡沫分離装置20に導入された洗浄排水は、反応塔23の底部から供給される気泡と接触する。洗浄排水中の濁質成分等は、気泡表面に吸着され大きな泡状体として速やかに上昇する。反応塔23の水面に到達した泡状体は、濃縮除去部24にて濃縮され、粘着性物質を含む泡沫を含む濃縮水と、分離水とに分離される。濃縮水は越流水として反応塔23の外に排出される。泡沫分離処理後の分離水は、分離水送水管26を介して砂ろ過装置10に再び導入されて、固液分離に供される。あるいは、分離水を砂ろ過装置10の洗浄水として利用してもよい。
図1において、泡沫分離装置20における処理能力は、導入する空気量を調節することによって制御することができる。砂ろ過装置10における水頭圧の増加速度は水質によって異なるが、1kPa/day以上50kPa/day以下程度であり、水質がよい場合(すなわち凝集剤の添加量も少ない)は10kPa/day以下、好ましくは5kPa/day以下であり、水質が悪い場合(すなわち凝集剤の添加量も多い)は20kPa/day以上となる場合が多い。一方で、泡沫分離装置の気液比は0.1以上2以下程度が好ましく、0.4程度がより好ましい。本発明では、例えば、水頭圧の増加速度が5kPa/day以上20kPa/day以下の場合には気液比を0.4と設定し、水頭圧の増加速度が5kPa/day以下の場合には気液比を0.2と設定し、水頭圧の増加速度が20kPa/day以上では気液比を1と設定することが好ましい。
また、泡沫分離装置20への被処理水送水管21に、凝集剤の添加手段及び制御部(図示せず)を設けてもよく、水頭圧の変動に応じて凝集剤の添加量を制御することもできる。例えば海水淡水化処理で砂ろ過を用いる場合、凝集砂ろ過装置の水頭圧の増加速度が5kPa/day以上20kPa/day以下の場合には泡沫分離装置への凝集剤(塩化第二鉄)添加率を5mg−FeCl3/lと設定し、水頭圧の増加速度が5kPa/day以下の場合には添加率を0mg−FeCl3/Lと設定し、水頭圧の増加速度が20kPa/day以上の場合には添加率を10mg−FeCl3/Lと設定することが好ましい。更に、凝集剤の添加手段を分離水送水管26に設けてもよい。この場合、固液分離装置の分離水中にふくまれる濁質成分、有機物、油などは、被処理水よりも低減されているので、凝集剤の添加量を少なくできるばかりか、凝集剤由来の汚泥発生量を削減することができる。
図2に、図1と同様の構成であるが、固液分離装置として膜ろ過装置110を用いる態様を示す。図1と同じ構成部材には同じ符号を付して、説明は省略する。図2に示す水処理装置においては、泡沫分離装置20からの分離水を膜ろ過装置110の下部に供給して固液分離する通常運転と、膜ろ過装置110からの洗浄排水を泡沫分離装置20に供給して濃縮分離する逆洗運転とを切り換えて行う。
膜ろ過装置110は、ろ過膜116を有する。分離水送水管26を介して供給される泡沫分離装置20からの分離水を固液分離する。膜ろ過装置110には、ろ過膜116に空気を供給する空気導入管112、透過水を排出する透過水送水管113、逆洗時に洗浄水を送液するための洗浄水送水管114、逆洗時に洗浄排水を排出する洗浄排水送水管115が連結されている。膜ろ過装置110のろ過膜入口側圧力とろ過膜の出口側圧力とを測定し、両者の差である膜間差圧を検出する圧力計117、及び検出された膜間差圧に基づいて泡沫分離装置20へ供給する空気量を制御する制御部60が設けられている。制御部60は、例えば自動開閉弁などの空気供給量を自動的に制御する構成、又は作業員に対して空気供給量の調節の指示を表示する構成であってもよい。
泡沫分離装置20における処理能力は、導入する空気量を調節することによって制御することができる。膜ろ過装置110の膜間差圧の増加速度は、通常0.1kPa/hr乃至40kPa/hr程度であり、2kPa/hr程度が一般的である。一方で、泡沫分離装置の気液比は0.1以上2以下程度が好ましく、0.4程度がより好ましい。本発明では、例えば、膜間差圧の増加速度が0.5kPa/hr以上5kPa/hr以下の場合には気液比を0.4と設定し、膜間差圧の増加速度が0.5kPa/hr未満の場合には気液比を0.2と設定し、膜間差圧の増加速度が5kPa/hrを越える場合には気液比を1と設定することが好ましい。このように設定することで、水質が悪い場合は気液比を大きくして泡沫分離装置20で少なくとも粘着性の濁質成分や溶解性有機物を多く除去するように制御し、膜間差圧の上昇速度が低くなるように操作することにより、膜ろ過装置110における膜間差圧上昇速度を2kPa/hr以下程度に維持することができる。また水質が良い場合は、膜間差圧の上昇速度が低いので、気液比を大きくする必要はない。
また、圧力計117により検出されるろ過膜の入口側圧と出口側圧の差圧(膜間差圧)又は入口側圧(出口側圧がゼロの場合)が予め定めた閾値を超えた場合、分離水の流入圧力の変動に基づく逆洗運転への切換えを行うことができる。例えば、ろ過膜116として限外ろ過膜を使用する場合の設定膜間差圧は0kPa以上100kPa以下、好ましくは0kPa以上60kPa以下、特に、好ましくは0kPa以上45kPa以下である。一回の逆洗で、汚れ成分による抵抗増加を差し引き、膜ろ過抵抗、配管抵抗のみの抵抗による圧力である初期圧まで低下する設定圧が好ましい。例えば、初期圧が20kPa、一回の逆洗で8kPaの洗浄効果があるとすれば、逆洗実施の設定膜間差圧は25kPa以上28kPa以下が好ましい。膜間差圧に応じて逆洗を実施することにより、ろ過膜116に流入する分離水の水質変動が起こった場合においても、その変動に応じて逆洗間隔も変動するので、効果的に逆洗を実施できる。即ち、分離水の水質が悪化した場合は、ろ過膜116の閉塞の進行が早まるため、設定膜間差圧に達する時間が短くなり、逆洗間隔が狭まる。逆に、分離水の水質が良好であれば、ろ過膜116の閉塞の進行が緩やかになり、設定膜間差圧に達する時間が長くなるため、逆洗回数を減らすことができる。このように膜の閉塞速度に応じて逆洗を実施することで、洗浄剤の添加量を最適化して、運転維持費を低減することが可能となる。
洗浄時には、膜ろ過装置110に洗浄水送水管114から洗浄水を導入し、通常運転時とは反対方向に洗浄水を通水して、ろ過膜116に堆積している濁質成分等を剥離させる。剥離された濁質成分等を含む洗浄排水の全量又は一部は、洗浄排水送水管115を介して泡沫分離装置20の反応塔23に導入される。泡沫分離装置20に導入された洗浄排水は、反応塔23の底部から供給される気泡と接触する。洗浄排水中の濁質成分等は、気泡表面に吸着されて大きな泡状体として速やかに上昇する。反応塔23の水面に到達した泡状体は、濃縮除去部24にて濃縮され、粘着性物質を含む泡沫を含む濃縮水と、分離水と、に分離される。濃縮水は越流水として反応塔23の外に排出される。泡沫分離処理後の分離水は、分離水送水管26を介して膜ろ過装置110に再び導入されて、固液分離に供される。あるいは、分離水を膜ろ過装置110の洗浄水として利用してもよい。
洗浄水として、塩素系酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウムを添加することもできる。この場合には、泡沫分離装置20における洗浄排水の滞留時間を10分以内として、分離水を再度膜ろ過装置110に導入することが好ましい。洗浄排水中の塩素が分離水に残留したまま、再度膜ろ過装置110に導入されるので、ろ過膜のファウリングを抑制することができる。
図3に、膜ろ過装置の入口側圧を計測する圧力計117及び制御部60を設け、泡沫分離装置20の反応塔23に導入する前の被処理水に供給する凝集剤量を制御する態様を示す。図1及び2と同じ構成部材には同じ符号を付して、説明は省略する。
制御部60は、図2における泡沫分離装置20への空気供給量の制御の代わりに、又は空気供給量の制御に加えて、泡沫分離装置20に導入する前の被処理水への凝集剤の添加量を制御する。
例えば膜ろ過装置110からの透過水を後段の海水淡水化処理(逆浸透膜)に供する場合、膜ろ過装置110の膜間差圧の増加速度が0.5kPa/hr以上5kPa/hr以下の場合には泡沫分離装置への凝集剤(塩化第二鉄)の添加率を5mg−FeCl3/Lと設定し、入口側圧が0.5kPa/hr未満の場合には添加率を0mg−FeCl3/Lと設定し、入口側圧が5kPa/hrを越える場合には添加率を10mg−FeCl3/Lと設定することが好ましい。
図4に、泡沫分離装置20の上流に固液分離装置としての砂ろ過装置10が配置されている態様の水処理装置の一態様を例として示す。図1〜3に示す水処理装置の構成部材と同じ構成部材には同じ符号を付し、説明は省略する。図4に示す水処理装置においては、砂ろ過装置10からの透過水を逆浸透膜装置30に供給して脱塩処理する通常運転と、砂ろ過装置10からの洗浄排水を泡沫分離装置20に供給して濃縮分離し、泡沫分離装置20からの分離水を砂ろ過装置10に供給する逆洗運転とを切り換えて行う。
通常運転時には、被処理水導入管11を介して導入された被処理水をろ材16に通水して固液分離し、得られる透過水は、透過水送水管13を介して後段の水処理装置(例えば逆浸透膜装置30)に送られる。
本態様において泡沫分離装置20は、通常運転時にはバイパスされ、逆洗時にのみ用いられる。泡沫分離装置20には、砂ろ過装置10の洗浄排水送水管15を介して洗浄排水が導入される。泡沫分離装置20は、泡状体を含む濃縮水を排出する濃縮水送水管25、分離水を排出する分離水送水管26を含む。分離水送水管26は、上流に設けられている砂ろ過装置10への被処理水導入管11に連結されており、分離水を砂ろ過装置10に循環させることができる。
図5に、泡沫分離装置20の上流に固液分離装置としての膜ろ過装置110が配置されている態様の水処理装置の一態様を例として示す。図1〜4に示す水処理装置の構成部材と同じ構成部材には同じ符号を付し、説明は省略する。図5に示す水処理装置においては、膜ろ過装置110からの透過水を逆浸透膜装置30に供給して脱塩処理する通常運転と、膜ろ過装置110からの洗浄排水を泡沫分離装置20に供給して濃縮分離し、泡沫分離装置20からの分離水を膜ろ過装置110に供給する逆洗運転とを切り換えて行う。
膜ろ過装置110は、被処理水を導入する被処理水導入管111、空気を導入する空気導入管112、処理後の透過水を排出する透過水送水管113、洗浄水を導入する洗浄水送水管114、洗浄排液を排出する洗浄排水送水管115、ろ過膜116を含む。図5には示していないが、被処理水送水管111に設けられている入口側圧力計、透過水送水管113に設けられている出口側圧力計、入口側圧力計と出口側圧力計の差圧を計算する差圧測定装置を含む態様でもよい。
通常運転時には、被処理水導入管111を介して導入された被処理水をろ過膜116に通水して固液分離し、得られる透過水は、透過水送水管113を介して後段の水処理装置(例えば逆浸透膜装置30)に送られる。
本態様において泡沫分離装置20は、通常運転時にはバイパスされ、逆洗時にのみ用いられる。
図1〜5に示す態様において、砂ろ過装置10又は膜ろ過装置110の逆洗排水を一時的に貯留した後に、所望の流量で泡沫分離装置20に導入してもよい。
[実施形態2]
本実施形態の水処理装置は、固液分離装置と、泡沫分離装置と、逆浸透膜装置と、当該固液分離装置からの透過水を当該泡沫分離装置に送液する透過水送水管と当該泡沫分離装置からの分離水を当該逆浸透膜装置に送液する分離水送水管と、を具備する。本実施形態の水処理装置においては、被処理水を固液分離装置に送り、固液分離装置からの透過水を泡沫分離装置にて処理した後に逆浸透膜装置にて脱塩処理する。
図6に示す水処理装置は、砂ろ過装置10からの透過水を泡沫分離装置20に導入する透過水送水管21と、泡沫分離装置20からの分離水を逆浸透膜装置30に供給する分離水送水管26と、を含む。図1〜5に示す水処理装置の構成部材と同じ構成部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
砂ろ過装置10には、水頭圧を測定する圧力計17が備えられており、ろ過の進行とともに、濁質成分等がろ材の隙間に蓄積されることにより上昇する水頭圧を測定し、定期的或いは所定の水頭圧になった段階でろ材の洗浄を実施する。洗浄時には、透過水を、ろ過時とは反対にろ材の底部より上向流で通水して、ろ材の間隙に堆積している濁質成分等を上方に押し出し、洗浄排水として排出する。洗浄頻度は、水質に応じて任意の回数をとることができるが、0.1回/日以上5回/日以下程度が好ましい。
泡沫分離装置20における処理能力は、導入する空気量を調節することによって制御することができる。砂ろ過装置10における水頭圧の増加速度は水質によって異なるが、通常1kPa/day以上50kPa/day以下であり、水質が良好な場合は10kPa/day程度、好ましくは5kPa/day以下となる。砂ろ過に供給される水質が悪い場合は、水頭圧の増加速度が速く、また処理水質も悪化する場合があり、この場合は、泡沫分離装置20の空気量を調整して、空気量を多くするのが好ましい。
砂ろ過装置10の透過水に残留する有機物が少ない場合は、砂ろ過装置10からの透過水の一部を、泡沫分離装置20をバイパスして直接逆浸透膜装置30に送るバイパスライン(図示せず)を含んでいてもよい。
[実施形態3]
本実施形態の水処理装置は、被処理水から少なくとも濁質成分及び有機物を除去して透過水を得る固液分離装置と、被処理水から少なくとも粘着性の濁質成分及び溶解性有機物を濃縮分離して濃縮水及び分離水を得る泡沫分離装置と、を含み、前記固液分離装置からの透過水を前記泡沫分離装置に供給する透過水送水管と、前記泡沫分離装置からの濃縮水を前記固液分離装置に返送する濃縮水送水管と、を具備する。
本実施形態の水処理装置は、前記泡沫分離装置からの分離水が供給される逆浸透膜装置をさらに具備することが好ましい。
本実施形態の水処理方法は、例えば、海水淡水化処理の場合、被処理水を固液分離装置にて固液分離した後、固液分離装置からの透過水を泡沫分離装置にて濃縮分離して、泡沫分離装置からの濃縮水を固液分離装置に返送し、泡沫分離装置からの分離水を逆浸透膜装置にて脱塩処理する通常運転と、固液分離装置を逆洗する逆洗運転と、を切り換えて実施する。
本実施形態の水処理方法は、固液分離して得られる透過水を泡沫分離処理により濁質成分、透明で粘着性の高いゼリー状の有機物、TEP、フミン質などの溶解性の有機物及び油などを分離除去した後、逆浸透膜処理して脱塩処理する。固液分離した透過水には、被処理水(原水)由来の溶解性有機物などが含まれている。例えば疎水基を含む有機物、疎水基と親水基を含む有機物、親水基を含む有機物、糖タンパク質など溶存している有機物の一部は固液分離によっては除去できない。本実施形態の水処理方法においては、これらの溶存している有機物を凝集剤添加によりフロック化することなく、泡沫分離処理により分離除去する。泡沫分離処理は、溶存している有機物や微細な濁質成分等を泡径50μm乃至2mmの微細な気泡表面に吸着させた泡状体として、0.5分乃至10分、好ましくは2分程度の短時間のうちに液面まで上昇させ、泡状体から吸着している有機物や微細な濁質成分等を泡沫として液体から分離する。泡沫分離処理において導入する気体の液体に対する比率(気液比)は0.1乃至2が好ましい。気液比0.1未満では除去性能が悪く、気液比2を越えても処理性能は向上せずに気体の供給量が過剰となる。
泡沫分離装置における処理能力は、導入する空気量を調節することによって制御することができる。すなわち、水質が悪い場合は気液比を多くし、水質が良好な場合は気液比を少なくして、経済的な運転を行うことができる。
固液分離装置として膜処理を行う場合は、膜処理装置に供給する被処理水の水質に応じて、膜間差圧(膜の入口側の圧力から膜の透過水(出口側)の圧力を引いた値)の増加速度が異なり、膜間差圧の増加速度は、通常0.1kPa/hr以上40kPa/hr以下程度であり、2kPa/hr程度が一般的である。一方で、泡沫分離装置の気液比は0.1以上2以下程度が好ましく、0.4程度がより好ましい。膜処理の供給水質が悪い場合は膜間差圧の増加速度が速い上、透過水にリークする有機物も少なからず増加するので、本実施形態では、例えば、膜間差圧の増加速度が0.5kPa/hr以上5kPa/hr以下の場合には気液比を0.4と設定し、膜間差圧の増加速度が0.5kPa/hr未満の場合には気液比を0.2と設定し、膜間差圧の増加速度が5kPa/hrを越える場合には気液比を1と設定することが好ましい。このように設定することで、膜ろ過装置における膜間差圧上昇速度を0.1kPa/hr以上2kPa/hr以下程度に維持することができる。
図7に示す水処理装置は、砂ろ過装置10からの透過水を泡沫分離装置20に導入する透過水送水管21と、泡沫分離装置20からの濃縮水を砂ろ過装置10に返送する濃縮水送水管25と、泡沫分離装置20からの分離水を後段の処理装置、たとえば逆浸透膜装置30(図8)に供給する分離水送水管26と、を含む。図1〜6に示す水処理装置の構成部材と同じ構成部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
砂ろ過装置10には、水頭圧を測定する圧力計17が備えられており、ろ過の進行とともに、濁質成分等がろ材の隙間に蓄積されることにより上昇する水頭圧を測定し、定期的或いは所定の水頭圧になった段階でろ材の洗浄を実施する。洗浄時には、透過水を、ろ過時とは反対にろ材の底部より上向流で通水して、ろ材の間隙に堆積している濁質成分等を上方に押し出し、洗浄排水として排出する。洗浄頻度は、水質に応じて任意の回数をとることができるが、0.1回/日以上5回/日以下程度が好ましい。
泡沫分離装置20における処理能力は、導入する空気量を調節することによって制御することができる。砂ろ過装置10における水頭圧の増加速度は水質によって異なるが、通常1kPa/day以上50kPa/day以下であり、水質が良好な場合は10kPa/day程度、好ましくは5kPa/day以下となる。砂ろ過に供給される水質が悪い場合は、水頭圧の増加速度が速く、また処理水質も悪化する場合があり、この場合は、泡沫分離装置20の空気量を調整して、空気量を多くするのが好ましい。
砂ろ過装置10の透過水に残留する有機物が少ない場合は、砂ろ過装置10からの透過水の一部を、泡沫分離装置20をバイパスして直接逆浸透膜装置30に送るバイパスライン(図示せず)を含んでいてもよい。
次に、固液分離装置として生物膜ろ過装置及び砂ろ過装置を用いる態様を例にして図8を参照しながら説明する。図1〜7に示す水処理装置の構成部材と同じ構成部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
図8に示す水処理装置は、生物膜ろ過装置40と、砂ろ過装置10と、泡沫分離装置20と、逆浸透膜装置30とを含む。
生物膜ろ過装置40は、生物膜ろ材46と、被処理水をろ過装置に送水するための被処理水送水管41及び被処理水ポンプ(図示せず)、透過水を排出させる透過水送水管43、空気を導入する空気導入管42、洗浄水を導入する洗浄水送水管44、洗浄水を排出する洗浄水送水管45が連結されている。被処理水が海水である場合のように、溶存酸素(DO)が含まれている場合は、空気の供給をしなくてもよい。溶存酸素(DO)が不足する場合には、ろ材に付着している生物の活性が低下するか若しくは生物が死滅するおそれがあるため、生物膜ろ材46に空気導入管42を介して空気を供給する。また、被処理水に酸化剤が含まれている場合は、酸化剤により生物の活性が低下するか若しくは生物が死滅するおそれがあるため、還元剤などで中和しておく。
生物膜ろ過装置40からの透過水を砂ろ過装置10に対する被処理水として導入する。砂ろ過装置10からの透過水は、泡沫分離装置20に導入される。泡沫分離装置20は、気泡に濁質成分、有機物及び油などを吸着させてなる泡状体を含む濃縮水を生物膜ろ過装置40に返送する濃縮水送水管25、分離水を排出する分離水送水管26を含む。泡沫分離装置20において泡状体と分離された分離水を、逆浸透膜装置(RO)30に導入して脱塩処理する。
砂ろ過装置10からの透過水を、泡沫分離装置20をバイパスして直接逆浸透膜装置30に送るバイパスライン(図示せず)を含んでいてもよい。
次に、固液分離装置として膜ろ過装置を用いる態様を例にして図9を参照しながら説明する。図1〜8に示す水処理装置の構成部材と同じ構成部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
図9に示す水処理装置は、膜ろ過装置110と、泡沫分離装置20と、逆浸透膜装置30とを含む。膜ろ過装置110からの透過水は、泡沫分離装置20に導入される。泡沫分離装置20は、気泡に濁質成分、有機物及び油などを吸着させてなる泡状体を含む濃縮水を膜ろ過装置110に返送する濃縮水送水管25、分離水を排出する分離水送水管26を含む。泡沫分離装置20において泡状体と分離された分離水を、逆浸透膜装置(RO)30に導入して脱塩処理する。
膜ろ過装置110からの透過水を、泡沫分離装置20をバイパスして直接逆浸透膜装置30に送るバイパスライン(図示せず)を含んでいてもよい。
次に、固液分離装置としてメンブレンバイオリアクター(MBR)を用いる態様を例にして図10を参照しながら説明する。図1〜9に示す水処理装置の構成部材と同じ構成部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
図10に示す水処理装置は、MBR50と、泡沫分離装置20と、逆浸透膜装置30とを含む。MBR50は、活性汚泥処理槽に、中空糸あるいは平膜形状の精密ろ過膜や限外ろ過膜などの分離膜56を設置し、処理水と活性汚泥とを分離する装置である。MBR50には、被処理水を導入する被処理水導入管51と、空気を導入する空気導入管52と、透過水を泡沫分離装置20に送る透過水送水管53と、余剰汚泥を排出する余剰汚泥送液管58が連結されている。分離膜56のファウリングを防ぐため、空気導入管52からの空気を装置底部から導入して強く曝気することで、空気の泡とこれに伴う上昇流を発生させながら透過水をポンプなどで少しずつ吸引する。被処理水中の有機物が活性汚泥処理されることで、炭酸ガスと水に分解されると共に汚泥が増殖する。汚泥からは粘着性の生体外高分子物質などが排出され、汚泥がフロック化する。
MBR50からの透過水は、透過水送水管53を介して泡沫分離装置20に導入される。泡沫分離装置20は、気泡に濁質成分、有機物及び油などを吸着させてなる泡状体を含む濃縮水をMBR50に返送する濃縮水送水管25、分離水を排出する分離水送水管26を含む。泡沫分離装置20において泡状体と分離された分離水を、逆浸透膜装置(RO)30に導入して脱塩処理する。
泡沫分離装置20からの濃縮水(有機物を含む)は、濃縮水送水管25を介してMBR50に返送される。濃縮水中に含まれる有機物を再度MBR50にて生物処理することで、泡沫分離装置20で濃縮された難分解性の有機物を分解除去することができる。
MBR50からの透過水を、泡沫分離装置20をバイパスして直接逆浸透膜装置30に送るバイパスライン(図示せず)を含んでいてもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。以下の実施例及び比較例における測定項目の測定方法は以下のとおりである。
[SDI]
SDIは、SDI(FI)自動測定器を用いて測定した。
[TEP濃度]
アルシアンブルー染色液で染色された主にムコ多糖類の濃度で示す。サンプルをポリカーボネート紙にて20kPaで吸引ろ過し、そのろ紙(ろ紙上に残留した物質を含む状態)を80%の硫酸溶液に浸漬させ、溶出した物質の吸光度を測定することで定量した。
[透水性低下率]
以下の計算式で算出した。水の透過係数は、逆浸透膜のフラックス(m/s)を有効圧(操作圧(kPa)から浸透圧(kPa)を引いた値)で除した値である。
[実施例1]
図1に示す装置構成を含み、被処理水を泡沫分離装置20に供給して濃縮分離し、泡沫分離装置20からの分離水を凝集砂ろ過装置10にて固液分離した後、逆浸透膜装置で脱塩処理する海水淡水化装置において、逆洗を実施した。
泡沫分離装置20の気液比は0.4、被処理水の滞留時間を2分に設定した。凝集砂ろ過装置10の水頭圧が10kPaとなった時点で逆洗を実施した。凝集砂ろ過装置10からの洗浄排水は洗浄排水送水管15を介して泡沫分離装置20に導入して濃縮分離した後、泡沫分離装置20からの分離水(処理済み洗浄排水)を凝集砂ろ過装置10に再度導入して固液分離し、得られた透過水は透過水送水管13を介して逆浸透膜装置に導入した。泡沫分離装置20からの気泡に濁質成分及び有機物等を吸着させてなる泡状体を含む濃縮水は、濃縮水送水管25を介して装置外に排出した。泡沫分離装置20と凝集砂ろ過装置10から排出される排水の割合は、被処理水量に対して1%であり、水回収率は99%であった。
なお、水回収率は、(被処理水量−洗浄排水量)/被処理水量×100で算出した。以下の実施例及び比較例において同じである。
[比較例1]
図1に示す装置構成において、被処理水を泡沫分離装置20にて処理した後、凝集砂ろ過装置10に導入して固液分離して、得られた透過水は透過水送水管13を介して逆浸透膜装置に導入し、脱塩処理した。凝集砂ろ過装置10から得られる洗浄排水は未処理のまま洗浄排水送水管15を介して装置外に排出した。水回収率は94%であった。
[実施例2]
図2に示す装置構成を含み、泡沫分離装置20からの分離水をUF膜ろ過装置110にて固液分離した後、逆浸透膜装置30で脱塩処理する海水淡水化装置において、逆洗を実施した。
泡沫分離装置20の気液比は0.4、被処理水の滞留時間を2分に設定した。UF膜ろ過装置110の入口側圧が30kPaとなった時点で逆洗を実施し、洗浄水中の次亜塩素酸ナトリウム濃度が20mg/Lとなるように添加した。UF膜ろ過装置110からの洗浄排水を泡沫分離装置20に導入して濃縮分離した。泡沫分離装置20からの分離水は、分離水送水管26を介してUF膜ろ過装置110に再度導入した。UF膜ろ過装置110からの透過水は、透過水送水管113を介して逆浸透膜装置30に導入して脱塩処理した。泡沫分離装置20とUF膜ろ過装置110における水回収率は98.5%であった。逆浸透膜装置の性能低下(補正したフラックス)は6ヶ月間で5%であった。
[比較例2]
図2に示す装置構成において、被処理水を泡沫分離装置20にて処理した後、UF膜ろ過装置110に導入して固液分離して、得られた透過水は透過水送水管113を介して逆浸透膜装置30に導入して脱塩処理した。UF膜ろ過装置110から得られる洗浄排水は未処理のまま洗浄排水送水管15を介して装置外に排出した。水回収率は92%であった。
[実施例3]
図2に示す装置構成において、随伴水を処理する水処理を行った。処理条件は実施例2と同様とした。泡沫分離装置20とUF膜ろ過装置110における水回収率は98%であった。
[比較例3]
図2に示す装置構成において、随伴水を処理する水処理を行った。処理条件は比較例2と同様とした。泡沫分離装置20とUF膜ろ過装置110における水回収率は90%であった。
[比較例4]
実施例2において、泡沫分離装置の代わりに加圧浮上装置を用いる装置構成において、被処理水を加圧浮上装置にて処理した後、UF膜ろ過装置110に導入して固液分離して、得られた透過水は透過水送水管113を介して逆浸透膜装置30に導入して脱塩処理した。加圧浮上装置の気液比は0.2、滞留時間は20分とした。加圧浮上装置の水回収率は90%であった。逆浸透膜装置30の性能低下は約6ヶ月で5%であった。実施例2と対比すると、逆浸透膜装置の性能低下は同等であるが、加圧浮上装置における被処理液の滞留時間が20分と長いため、処理単位量当たりの逆浸透膜装置の性能低下は実施例2の10倍と算出される。
[実施例4]
図4に示す装置構成を含み、凝集砂ろ過装置10からの透過水を逆浸透膜装置30で脱塩処理する海水淡水化処理装置において、逆洗を実施した。
逆洗頻度は2回/日とし、泡沫分離装置20の気液比は0.4に設定し、洗浄排水の滞留時間を2分とした。凝集砂ろ過装置10からの洗浄排水を泡沫分離装置20に供給して濃縮分離し、泡沫分離装置20からの分離水は分離水送水管26を介して凝集砂ろ過装置10に再び導入して固液分離した。凝集砂ろ過装置10からの透過水は、透過水送水管13を介して逆浸透膜装置30に導入して脱塩した。泡沫分離装置20で濃縮分離した気泡に濁質成分及び有機物等が吸着されてなる泡状体を含む濃縮水は、濃縮水送水管25を介して装置外に排出した。泡沫分離装置20と凝集砂ろ過装置10から排出される排水の割合は、被処理水量に対して1%であり、水回収率は99%であった。
[比較例5]
図4に示す装置構成において、被処理水を凝集砂ろ過装置10にて固液分離した後、透過水送水管13を介して逆浸透膜装置30に導入して脱塩処理した。凝集砂ろ過装置10の洗浄排水は未処理のまま、装置外に排出した。凝集砂ろ過装置10における洗浄排水量は、被処理水量に対して10%であり、水回収率は90%であった。
[実施例5]
図5に示す装置構成を含み、UF膜ろ過装置110からの処理水を逆浸透膜装置30で脱塩処理する海水淡水化装置において、逆洗を実施した。
泡沫分離装置20の気液比は0.4に設定し、被処理水の滞留時間は2分とした。逆洗は、UF膜ろ過装置110の入口側圧が30kPaとなった段階で実施し、洗浄水中の次亜塩素酸ナトリウム濃度が20mg/Lとなるように添加した。UF膜ろ過装置110からの洗浄排水を泡沫分離装置20に導入して濃縮分離し、分離水は分離水送水管26を介してUF膜ろ過装置110に再度導入した。UF膜ろ過装置110からの透過水は、透過水送水管113を介して逆浸透膜装置30に導入して脱塩処理した。UF膜ろ過装置110と泡沫分離装置20における水回収率は、被処理水量に対して98.5%であった。泡沫分離装置20からの分離水中の残留塩素は減少せず、分離水中に残留したままUF膜ろ過装置110に再導入されたため、膜間差圧上昇速度は1.0kPa/hrと低い値に維持できた。
[比較例6]
図5に示す装置構成において、被処理水をUF膜ろ過装置110にて固液分離した後、透過水送水管113を介して逆浸透膜装置30に導入して脱塩処理した。UF膜ろ過装置110からの洗浄排水を未処理のまま、洗浄排水送水管115を介して装置外に排出した。水回収率は88%であり、膜間差圧上昇速度は1.5kPa/hrであった。
上記実施例及び比較例の対比により、逆浸透膜の性能低下を同程度に防止するために要する逆洗において、洗浄排水をそのまま装置外に排出していた従来の水処理方法においては、被処理水量の6%乃至12%は洗浄排水として排出することになるが、本発明の水処理装置及び方法によれば、排出される水量は被処理水量の1%乃至2%と大幅に削減できることがわかる。
[実施例6]
図6に示す装置において、砂ろ過装置10からの透過水を泡沫分離装置20に供給し、泡沫分離装置20にて濃縮分離して溶解性有機物等を除去した分離水を逆浸透膜装置30で脱塩処理した。
砂ろ過装置10の逆洗頻度は2回/日とし、泡沫分離装置20の気液比は0.4に設定し、被処理水の滞留時間を2分とした。砂ろ過装置10からの透過水のSDIは4、TEP濃度は200μg/Lであった。透過水を泡沫分離装置20で濃縮分離した後の分離水のTEP濃度は80μg/Lであった。泡沫分離処理後の分離水を逆浸透膜装置30に導入して脱塩する運転を3ヶ月間続けたところ、逆浸透膜の透水性低下率は10%程度であった。また、図7に示すように、泡沫分離装置20からの濃縮水を砂ろ過装置10に返送する濃縮水送水管25を設けることにより、泡沫分離装置20から系外に排出する濃縮水の量を1/3に低減できた。
[比較例7]
図6に示す装置において、泡沫分離装置を設置せず、砂ろ過装置10からの透過水を直接逆浸透膜装置30に導入して脱塩処理した。逆浸透膜の透水性低下率は3ヶ月で25%程度であった。
[実施例7]
図8に示す装置において、被処理水を生物膜ろ過装置40に供給し、生物膜ろ過装置40からの透過水を砂ろ過装置10に供給し、砂ろ過装置10からの透過水を泡沫分離装置20に供給し、泡沫分離装置20からの分離水を逆浸透膜装置30に供給して脱塩処理した。
生物膜ろ過装置40及び砂ろ過装置10の洗浄頻度は2回/日とした、泡沫分離装置20の気液比は0.4に設定し、被処理水の滞留時間は2分とした。砂ろ過装置10からの透過水のSDIは4、TEP濃度は150μg/Lであった。泡沫分離装置20で処理した後の分離水のTEP濃度は70μg/Lであった。泡沫分離装置20からの分離水を逆浸透膜装置30に導入して脱塩する運転を3ヶ月間続けたところ、逆浸透膜の透水性低下率は8%程度であった。
[実施例8]
図9に示す装置において、被処理水をUF膜ろ過装置110に供給し、UF膜ろ過装置110からの透過水を泡沫分離装置20に供給し、泡沫分離装置20からの溶解性有機物等を除去した分離水を逆浸透膜装置30で脱塩処理した。
泡沫分離装置20の気液比は0.4、被処理水の滞留時間を2分に設定した。UF膜ろ過装置110からの透過水のSDIは2、TEP濃度は80μg/Lであった。泡沫分離装置20からの分離水のTEP濃度は60μg/Lであった。泡沫分離雄値20からの分離水を逆浸透膜装置30に導入して脱塩する運転を3ヶ月間続けたところ、逆浸透膜の透水性低下率は7%程度であった。
[比較例8]
図9に示す装置において、泡沫分離装置を設置せず、UF膜ろ過装置110からの透過水を直接逆浸透膜装置30に導入して脱塩処理した。逆浸透膜の透水性低下率は3ヶ月で10%程度であった。
[実施例9]
図10に示す装置において、被処理水をMBR50に供給し、MBR50からの透過水を泡沫分離装置20に供給し、泡沫分離装置20からの溶解性有機物等を除去した分離水を逆浸透膜装置30で脱塩処理した。
泡沫分離装置20の気液比は0.4、被処理水の滞留時間を2分に設定した。MBR透過水のSDIは4、TEP濃度は300μg/Lであった。泡沫分離装置20からの分離水のTEP濃度は100μg/Lであった。泡沫分離装置20からの分離水を逆浸透膜装置30に導入して脱塩する運転を3ヶ月間続けたところ、逆浸透膜の透水性低下率は15%程度であった。
[比較例9]
図10に示す装置において、泡沫分離装置を設置せず、MBR50からの透過水を直接逆浸透膜装置30に導入して脱塩処理した。逆浸透膜の透水性低下率は3ヶ月で30%程度であった。
10:砂ろ過装置
11:被処理水導入管
12:空気導入管
13:透過水送水管
14:洗浄水送水管
15:洗浄排水送水管
16:ろ材
17:圧力計
20:泡沫分離装置
21:被処理水導入管
22:空気導入管(気泡発生手段)
23:反応塔
24:濃縮除去部
25:濃縮水送水管
26:分離水送水管
30:逆浸透膜装置
40:生物膜ろ過装置
41:被処理水導入管
42:空気導入管
44:洗浄水送水管
45:洗浄排水送水管
46:生物膜
47:透過水送水管
50:メンブランバイオリアクター
51:被処理水導入管
52:空気導入管
53:透過水送水管
56:分離膜
58:余剰汚泥送液管
60:制御部
110:膜ろ過装置
111:被処理水導入管
112:空気導入管
113:透過水送水管
114:洗浄水送水管
115:洗浄排水送水管
116:ろ過膜
117:圧力計
118:圧力計