JP2017108736A - 核酸増幅用組成物及び核酸増幅法 - Google Patents

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Abstract

【課題】夾雑物の存在下においても、操作が煩雑ではなく、反応を阻害することのない、かつ、全血等の生体由来試料からの直接核酸増幅が可能である核酸増幅用組成物の提供。【解決手段】テトラメチルアンモニウム塩、特に酢酸テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物およびL−カルニチンおよびテトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼを共存させた、血液等の生体試料を直接反応液に添加して反応させることが可能な組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、動物体液試料等の夾雑物の存在下においても、効果的な核酸増幅を行うことができる組成物に関する。
核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、遺伝子診断、臨床検査といった医療分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等においても、広く用いられている。代表的な核酸増幅法はPCR(Polymerase Chain Reaction)である。PCRは、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの解離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって、試料中の標的核酸を増幅する方法である。
検出対象核酸がRNAである場合、たとえば病原性微生物の検出において対象がRNAウイルスである場合、あるいは遺伝子の発現量をmRNAの定量によって測定する場合などは、逆転写酵素によりRNAをcDNAに変換する反応(逆転写反応)をPCRの前に行う。
この逆転写酵素による逆転写反応とDNAポリメラーゼによるPCRは、各々の酵素の至適条件の違いから、先に逆転写反応を行い、ついで別の反応液に移してPCRが行われることが多い。この煩雑さを解消するために2つの反応を同一反応液中で連続して行う方法、ワンステップRT−PCR法が近年に開発された。(特許文献1)
また、近年では、PCRの中でも、リアルタイムPCR法が広く実施されるようになってきた。リアルタイムPCR法は増幅された核酸を経時的に解析することができ、高い定量性を確保し、高感度の検出を行うことができる。
核酸増幅法は生体試料中に存在する糖やタンパク質等により強く阻害され、増幅効率や検出感度が低下することが知られている。したがって、前記の核酸増幅に先立ち、生体試料から核酸を抽出し、精製する操作が必要となる。
生体試料からの核酸抽出法としては、フェノールやクロロホルムなどの有機溶媒を用いる方法が知られている(特許文献2)。
しかしながら、これらの方法を用いて試料中の核酸の精製を行っても、夾雑物を完全に除去することは困難である。また、試料中の核酸の回収量が一定でない場合も多く、特に試料中の核酸の含量が少ないときは核酸増幅を行うことが難しい。さらにフェノール、クロロホルムなどの有機溶媒は取扱いに注意を要し、廃棄方法も煩雑である。
このように核酸抽出及び精製を行っても、夾雑物の完全な除去は困難であり、また、煩雑で時間を要する核酸抽出及び精製の操作を省略するという観点からも、核酸増幅試薬中に種々の添加剤を加えることにより、血液等の生体試料から直接核酸を増幅させる方法が検討されている(特許文献3、4、5)。
特許文献3は血液試料に含まれる塩濃度を考慮し、全反応液中の塩濃度を調整することにより、血液試料から直接核酸増幅を行う方法である。しかしながら、特許文献3は全反応液中の塩濃度を調整しなければならず、非常に煩雑である。
特許文献4はpHを通常よりも高くし(pH8.8程度)、さらに界面活性剤を添加することにより血液等の体液試料から直接核酸増幅を行う方法である。しかしながら、特許文献3の方法では、PCR反応液への血液持込量は50μL反応液あたり1.25〜5μLと限定的であり、最大でも反応液に対して10%の血液しか持ち込むことができない。
特許文献5はpHを通常よりも高く(pH8.2程度)し、さらにポリアミン、硫酸化多糖、ジチオスレイトールを添加することにより血液等の体液試料から直接核酸増幅を行う方法である。しかしながら、特許文献5についても、血漿、血液の持込量は50μL反応液あたり1〜2μLと限定的であり、最大でも反応液に対して4%の血液しか持ち込むことができない。
特許文献6には、トレハロース、L−カルニチン、非イオン性界面活性剤を添加することにより、ヘパリンを2から50units含む全血、血清、血漿中で核酸増幅を促進することが記載されている。しかしながら、トレハロースを0.1〜1.0M、L−カルニチンを0.1〜1.5Mと非常に高濃度で用いなければならず、反応液量の問題でこれらを添加するのは困難な場合がある。また、非イオン性界面活性剤の例として挙げられている、NP−40やTritonX−100はGHSにおける環境有害性物質に該当し、EUではREACH規制の認可候補物質(高懸念物質)に該当している。研究用途として使用する場合は、このような有害性の高い物質の使用はできるだけ避けることが望ましい。
また、特許文献7には、プロリン、L−カルニチン、ベタイン等の1つ以上の窒素含有有機化合物を添加することにより、核酸分子、特にGCリッチな核酸分子の合成を増強させることが記載されている。しかしながら、特許文献7はGCリッチな核酸分子の合成を増強させる効果のみ記載されており、血液等の体液試料から直接核酸増幅を行う方法については言及されていない。
特許2968585号公報 特開平9−19292号公報 特開平6−277062号公報 特開平10−80279号公報 特開2001−8680号公報 国際公開第2010−065924号パンフレット 国際公開第1999−046400号パンフレット
核酸増幅法において、夾雑物の存在下で核酸増幅を行う方法の検討が進められてきた。しかしながら、従来の検討は、操作が煩雑で時間を要するものや夾雑物の少ない試料を対象としているものであり、いずれも使用に際し短所を有するものであった。また、従来より血液を直接反応液に添加してPCRを行う試みはなされているが、その場合の主要な鋳型は宿主由来のDNAであり、鋳型量が比較的多量な場合に限定され、普遍性に乏しかった。このような方法では、核酸抽出の工程を経ずに、試料中の微量なウィルス、細菌、細胞等の外来生物の遺伝子を検出することは困難である。
そこで、本発明は、核酸増幅試薬として、(1)操作が煩雑でないこと、(2)多量の夾雑物の存在下であっても核酸増幅が可能であり、高感度な検出ができること、(3)血液中の細胞といった、従来の方法では核酸抽出の工程を経ずに直接検出することが困難であったターゲットを検出することが可能であること、かつ、(4)操作が簡便でコンタミネーションのリスクの低いワンステップRT−PCR法で実施することが可能であること、を満たす組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究の結果、テトラメチルアンモニウム塩、特に酢酸テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、L−カルニチンおよびテトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼを共存させて核酸増幅を行うと、多量の夾雑物存在下で効率良く核酸増幅を実施できることを見出した。そして、この知見をもとに、酵素に対する阻害作用がなく、操作性の低下も極めて少なく、長期保存が可能で、さらに混合液状態での安定性が高い核酸増幅用組成物が提供できることを見出した。また、この知見がPCR、リアルタイムPCR、RT−PCRおよびリアルタイムRT−PCR特にワンステップRT−PCRにも適用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の概要は以下の通りである。
項1.テトラメチルアンモニウム塩、L−カルニチン及びテトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼを含むことを特徴とする核酸増幅用組成物。
項2.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが、終濃度が50mM以上のテトラメチルアンモニウム塩存在下で阻害されないDNAポリメラーゼである項1に記載の核酸増幅用組成物。
項3.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号19と90%以上の同一性があるDNAポリメラーゼである項1または2に記載の核酸増幅用組成物。
項4.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼがTth DNAポリメラーゼである項1または2に記載の核酸増幅用組成物。
項5.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼがZ05 DNAポリメラーゼである項1または2に記載の核酸増幅用組成物。
項6.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号6の変異体である項1または2に記載の核酸増幅用組成物。
項7.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号6の少なくともE507位、またはE742位が改変されたDNAポリメラーゼである項6に記載の核酸増幅用組成物。
項8.前記テトラメチルアンモニウム塩が、酢酸テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である項1〜7のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項9.グリコール類を含むことを特徴とする項1〜8のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項10.グリコール類の炭素数が4以下である項1〜9のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項11.グリコール類がエチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である項1〜10のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項12.反応液中に生体試料を直接添加する項1〜11のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項13.前記生体試料が、血液、血漿または血清等の血液由来試料、唾液、髄液、尿、乳からなる群より選ばれた少なくとも1種の試料である項1〜12のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項14.前記生体試料中のウィルス、細菌、真菌、原虫及び細胞をターゲットとして検出する項1〜13のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項15.少なくとも抗体、反応緩衝剤および金属イオンを含む項1〜14のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項16.少なくとも逆転写酵素、抗体、反応緩衝剤および金属イオンを含む項1〜15のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項17.核酸増幅反応がPCRである項1〜16のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項18.核酸増幅反応がワンステップRT−PCRである項1〜17のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
項19.テトラメチルアンモニウム塩、L−カルニチン及びテトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼを含むことを特徴とする核酸増幅法。
項20.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが、終濃度が50mMのテトラメチルアンモニウム塩存在下で阻害されないDNAポリメラーゼである項19に記載の核酸増幅法。
項21.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号19と90%以上の同一性があるDNAポリメラーゼである項20または21に記載の核酸増幅法。
項22.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼがTth DNAポリメラーゼである項19〜21のいずれかに記載の核酸増幅法。
項23.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼがZ05 DNAポリメラーゼである項19〜22のいずれかに記載の核酸増幅法。
項24.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号6の変異体である項19〜23のいずれかに記載の核酸増幅法。
項25.前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号6の少なくともE507位、またはE742位が改変されたDNAポリメラーゼである項19〜24のいずれかに記載の核酸増幅法。
項26.前記テトラメチルアンモニウム塩が、酢酸テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である項19〜25のいずれかに記載の核酸増幅法。
項27.グリコール類を含むことを特徴とする項19〜26のいずれかに記載の核酸増幅法。
項28.グリコール類の炭素数が4以下である項19〜27のいずれかに記載の核酸増幅法。
項29.グリコール類が、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である項19〜28のいずれかに記載の核酸増幅法。
項30.反応液中に生体試料を直接添加する項19〜29のいずれかに記載の核酸増幅法。
項31.前記生体試料が、血液由来試料、唾液、髄液、尿、乳からなる群より選ばれた少なくとも1種の試料である項19〜30のいずれかに記載の核酸増幅法。
項32.前記生体試料中のウィルス、細菌、真菌、原虫及び細胞をターゲットとして検出する項19〜31のいずれかに記載の核酸増幅法。
項33.少なくとも抗体、反応緩衝剤および金属イオンを含む項19〜32のいずれかに記載の核酸増幅法。
項34.少なくとも逆転写酵素、抗体、反応緩衝剤および金属イオンを含む項19〜33のいずれかに記載の核酸増幅法。
項35.核酸増幅反応がPCRである項19〜34のいずれかに記載の核酸増幅法。
項36.核酸増幅反応がワンステップRT−PCRである項19〜35のいずれかに記載の核酸増幅法。
本発明により、夾雑物の存在下での核酸増幅を効果的に行うことができる。本発明によれば、特に取り扱いに注意が必要な試薬を用いることなく、また試料やターゲットの種類に依存することもなく、簡便に核酸を増幅させることができる。
BCR−ABL遺伝子のフォワードプライマー
配列番号:1
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:合成
配列:GAGTCTCCGGGGCTCTATGG
BCR−ABL遺伝子のプローブ
配列番号:2
配列の長さ:28
配列の型:核酸
配列の種類:合成
配列:TCTGAATGTCATCGTCCACTCAGCCACT
5’にFAM、3‘にTAMRAを標識したTaqMan(登録商標)プローブである。
BCR−ABL遺伝子のリバースプライマー
配列番号:3
配列の長さ:20
配列の型:核酸
配列の種類:合成
配列:GCCGCTGAAGGGCTTTTGAA
酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチンを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウムを含むバッファー、L−カルニチンを含むバッファー、3種類の試薬を含まないバッファーを調製した。各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施し、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値をとりグラフ化した図である。この時、反応液中に血液を添加した。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチンを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウムを含むバッファー、L−カルニチンを含むバッファー、3種類の試薬を含まないバッファーを調製した。各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施した時の増幅曲線である。この時、反応液中に血液を添加した。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチンを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウムを含むバッファー、L−カルニチンを含むバッファー、3種類の試薬を含まないバッファーを調製した。各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施し、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値をとりグラフ化した図である。この時、反応液中に血液は添加しなかった。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチンを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウムを含むバッファー、L−カルニチンを含むバッファー、3種類の試薬を含まないバッファーを調製した。各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施した時の増幅曲線である。この時、反応液中に血液は添加しなかった。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファーを調製した。調製したバッファーで、Tth DNAポリメラーゼ及びTaq DNAポリメラーゼでリアルタイムRT−PCRを実施し、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値をとりグラフ化した図である。この時、反応液中に血液を添加した。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファーを調製した。調製したバッファーで、Tth DNAポリメラーゼ及びTaq DNAポリメラーゼでリアルタイムRT−PCRを実施した時の増幅曲線である。AはTth DNAポリメラーゼを使用した時、BはTaq DNAポリメラーゼを使用した時の図である。この時、反応液中に血液を添加した。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールと1,3−プロパンジオールの代わりにエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセロールを添加したバッファーを調製した。調製した各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施し、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値を取りグラフ化した図である。この時、反応液中に血液を添加した。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールと1,3−プロパンジオールの代わりにエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセロールを添加したバッファーを調製した。調製した各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施した時の増幅曲線である。Aは1,3−プロパンジオール、Bはエチレングリコール、Cは1,2−プロパンジオール、Dはグリセロールを添加した時の図である。この時、反応液中に血液を添加した。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールと酢酸テトラメチルアンモニウムの代わりに塩化テトラメチルアンモニウムを添加したバッファーを調製した。調製した各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施し、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値をとりグラフ化した図である。この時、反応液中に血液を添加した。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールと酢酸テトラメチルアンモニウムの代わりに塩化テトラメチルアンモニウムを添加したバッファーを調製した。調製した各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施した時の増幅曲線である。Aは酢酸テトラメチルアンモニウム、Bは塩化テトラメチルアンモニウムを添加した時の図である。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを添加したバッファーを調製した。50μL反応系に1〜15μLの血液を添加し、各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施し、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値をとりグラフ化した図である。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを添加したバッファーを調製した。50μL反応系に1〜15μLの血液を添加し、各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施しの増幅曲線である。Aは血液1μL添加時、Bは血液2μL添加時、Cは血液3μL添加時、Dは血液5μL添加時、Eは血液10μL添加時、Fは血液15μL添加時の図である。 テトラメチルアンモニウム塩に耐性があるか否かを、PCRの反応系に酢酸テトラメチルアンモニウムを追添し確認した図である。 酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを添加したバッファーを調製した。20μL反応系に1μLの血液を添加し、リアルタイムPCRを実施した際の増幅曲線である。 Tth DNAポリメラーゼとZ05 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列同一性を確認した図である。
本発明の態様は、生体試料を核酸増幅反応液に直接添加し、生体試料中の標的核酸を増幅することのできる核酸増幅法である。この増幅法はテトラメチルアンモニウム塩及びL−カルニチン及びテトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼを含むことを特徴とする核酸増幅用組成物である。
本発明の核酸増幅用組成物は、生体試料内の核酸を抽出や精製することなく増幅させることができる。一般的に、核酸増幅に先立ち、被験物から細胞(悪性新生物を含む様々な細胞)、細菌、DNAウィルス、RNAウィルス、レトロウィルス等のウィルス等を分離し、核酸を抽出する必要がある。酵素、界面活性剤、カオトロピック剤等により細胞や細菌を分解し、フェノールあるいはフェノール・クロロホルム等を用いて、その分解物から核酸を抽出する方法が、従来より使用されている。本発明における核酸抽出法は臓器や細胞など、増幅対象となる核酸が試料の組織内に存在する場合、前記核酸を抽出するために組織を破壊する行為(物理的な処理による破壊、界面活性剤などを使用した破壊など)を指し、これらに限定されるものではない。また、本発明における核酸精製法とは生体試料の組織、細胞壁などの夾雑物質と生体試料中のDNAを分離する方法であり、フェノールあるいはフェノール・クロロホルム等を用いて、DNAを分離する方法や、イオン交換樹脂、ガラスフィルターあるいはタンパク凝集作用を有する試薬によってDNAを分離する方法を指し、これらに限定されるものではない。
本発明において「抽出や精製を実施していない生体試料」とは、生体試料そのもの、あるいは液体の生体試料を水などの溶媒を用いて希釈したもの、個体の生体試料を水などの溶媒に添加し熱をかけて破砕させたものなどが挙げられるが、抽出や精製を実施していなければ、これらに限定されるものではない。
本発明の核酸増幅用組成物に適用する生体試料は、生体から採取された試料であれば特に限定されない。例えば、動植物組織、体液、排泄物、細胞、細菌、ウイルス等をいう。体液には血液、血漿または血清等の血液由来試料や唾液が挙げられる。細胞には血液から分離した白血球なども含まれるが、これらに限定されるものではない。
なお、前記生体試料が血液由来試料の場合、全血、血漿または血清のいずれであっても良く、また、EDTA−Naやヘパリンナトリウム等の抗凝固剤で処理されていてもよい。
前記生体試料の量は特に限定されないが、反応液中の約1〜約20容量%であることが好ましい。
本発明の核酸増幅用組成物が適用される核酸増幅反応とは、鋳型の核酸に対し、相補的な配列を持つ核酸を配列依存的に合成する反応を指し、その様式は特に限定されないが、より具体的には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法のように特定の標的配列を指数関数的に増幅する方法が例示される。PCRはリアルタイムPCRであっても良い。その他の形態として、定量PCR(qPCR)、LA−PCR(Long and Accurate PCR)、競合的PCR、In situ PCR、RNA−primered PCR、multiplex PCR、シャトルPCR、PCR/GC−calmp法、ストレッチPCR、Alu PCR、メガプライマーPCR、Immuno PCR等、PCR法を応用した方法も、前記核酸増幅方法に含まれる。
本発明の核酸増幅法は、RT−PCRに適用することもできる。RT−PCRにおける逆転写の工程とPCRの工程とは、順次別々に行っても良いし、連続して行うワンステップ法を採用しても良い。また、リアルタイムRT−PCRであっても良い。
本発明におけるテトラメチルアンモニウム塩は、いかなる第4級アンモニウム塩を用いても良いが、好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウムが用いられる。より好ましくは、酢酸テトラメチルアンモニウムが用いられる。これらのテトラメチルアンモニウム塩は、構造により製法が異なるものの、いずれも工業的な製造方法が確立されており、安価で容易に入手が可能である。これらのテトラメチルアンモニウム塩は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を任意に組み合わせて用いたとしても本発明の効果を奏する。
本発明におけるテトラメチルアンモニウム塩は、核酸増幅反応用試薬に予め混合することが好ましい。また本発明における、核酸増幅反応溶液中のテトラメチルアンモニウム塩は終濃度として好ましくは10〜210mM、より好ましくは終濃度として20〜200mMとなるような濃度で混合しておくのがよい。
本発明のL−カルニチンは、核酸増幅反応用試薬に予め混合することが好ましい。また、本発明における、核酸増幅反応溶液中のL−カルニチン(CAS番号541−15−1)の濃度の下限は0.1Mが好ましい。一方、L−カルニチンの濃度の上限は1Mが好ましい。
本発明におけるグリコール類とは、アルコールの一種(ポリオール)で、鎖式または環式脂肪族炭化水素を形成する炭素原子のうち、2つの炭素原子にそれぞれ1つずつのヒドロキシ基が存在している化合物であり、ジオール化合物とも呼ばれる。狭義には、最も構造が単純なエチレングリコールを単にグリコールと呼び表すこともあるが、本発明においては前述の広義でのグリコール類を指す。
本発明におけるグリコール類は、いかなる構造のグリコール類を用いても良いが、好ましくは炭素数4以下の鎖式構造のグリコール類が用いられる。炭素数4以下のグリコール類として、1,2−エタンジオール(「エチレングリコール」ともいわれる)、1,2−プロパンジオール(「プロピレングリコール」ともいわれる)、1,3−プロパンジオール(「トリメチレングリコール」ともいわれる)、1,2−ブタンジオール(「α−ブチレングリコール」ともいわれる)、1,3−ブタンジオール(「β−ブチレングリコール」ともいわれる)、1,4−ブタンジオール(「テトラメチレングリコール」ともいわれる)、2,3−ブタンジオール(「ジメチレングリコール」ともいわれる)、2,2´−オキシジエタノール(「ジエチレングリコール」とも言われる)、が例示される。より好ましくは炭素数2または3のグリコール類、即ち、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールが用いられる。さらに好ましくは、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールである。これらのグリコール類は、構造により製法が異なるものの、いずれも工業的な製造方法が確立されており、安価で容易に入手が可能である。これらのグリコール類は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
本発明においてグリコール類は、核酸増幅反応用試薬に予め混合することが好ましい。核酸増幅反応用試薬は通常2〜10倍の濃縮状態で保存されることが多いがその場合、グリコール類は反応溶液中の終濃度が好ましくは1〜20容量%、より好ましくは3〜15容量%となるような濃度で混合しておくのがよい。
本発明における、核酸増幅反応溶液中のグリコール類とL−カルニチンとの濃度の組合せとして、好ましい態様としては、エチレングリコールとL−カルニチン、1,2−プロパンジオールとL−カルニチン、1,3−プロパンジオールとL−カルニチン、グリセロールとL−カルニチンである。好ましい濃度範囲はグリコール類がと1〜20容量%、L−カルニチンが0.1〜1Mである。さらに好ましい範囲はグリコール類3〜15容量%、L−カルニチンが0.1〜1Mである。
本発明の核酸増幅用組成物において使用するDNAポリメラーゼは、テトラメチルアンモニウム塩に耐性のあるDNAポリメラーゼが好ましい。テトラメチルアンモニウム塩に耐性のあるDNAポリメラーゼとは、PCRの反応系にテトラメチルアンモニウム塩が含まれていても阻害されないDNAポリメラーゼを言うものであり、好ましくは50mMのテトラメチルアンモニウム塩に耐性があることが望ましい。さらに望ましくは100mMのテトラメチルアンモニウム塩に耐性があることが望ましく、さらに望ましくは200mMのテトラメチルアンモニウム塩に耐性があることが望ましい。
テトラメチルアンモニウム塩に耐性があるかないかは、以下のようにして確認することができる。
DNAポリメラーゼのテトラメチルアンモニウム塩耐性評価
BlendTaq(Toyobo製)添付の10×PCR Bufferを用い、1×PCR Buffer、0.2mM dNTPs、50ngヒトゲノム、β―アクチン1.3kbを増幅する15pmolの配列番号4及び5に記載のプライマーを含む50μlの反応液中に、耐性の有無を判定したい酵素を2.5Uになるよう添加する。酢酸テトラメチルアンモニウムを終濃度0、50、100、150、200mMになるように添加し、94℃、30秒の前反応の後、94℃、30秒→60℃、30秒→72℃、90秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCRを行う。増幅産物を電気泳動で確認し、酢酸テトラメチルアンモニウムを添加したものと酢酸テトラメチルアンモニウムを添加していないものを比較し、増幅量が変わらなければ、その濃度までテトラメチルアンモニウム塩に耐性があるということができる。
テトラメチルアンモニウム塩に耐性のあるDNAポリメラーゼは、具体的にはTth DNAポリメラーゼ、Z05 DNAポリメラーゼが好ましい。前記のDNAポリメラーゼは野生型のものでも良いし、DNAポリメラーゼ活性を維持する範囲で改変されたものであっても良い。また、さらにそれらを適当な発現系で組換え生産したものでもよい。
また、テトラメチルアンモニウム塩に耐性を持たせるためにTaq DNAポリメラーゼに変異を加えたものであってもよい。より好ましくは配列番号6におけるE507位、E742位に変異を入れたものであってもよいが、それ以外にDNAポリメラーゼ活性を維持する範囲で改変されたものであっても良く特に限定されない。また、Tth DNAポリメラーゼの場合には、配列番号19と90%以上、好ましくは95%以上の同一性があるDNAポリメラーゼであってもよい。
本発明の核酸増幅用組成物において、核酸増幅反応用液中には、グリコール類、L−カルニチン及びDNAポリメラーゼのほかに、さらに鋳型となる核酸、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、プライマーとなるオリゴヌクレオチド、ジデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、反応バッファー、マグネシウムイオン等の金属イオンを、実施する核酸増幅方法により必要に応じて存在させる。
一例として、PCR法を用いた核酸増幅においては、鋳型核酸、DNAポリメラーゼ、オリゴヌクレオチド、dNTPs、反応バッファーが一般的に必要である。
リアルタイムPCRの場合は、核酸増幅を経時的に確認するため、さらにSYBR GreenI(登録商標)やEva Green(登録商標)などの蛍光色素や蛍光標識をしたプローブを必要に応じて存在させる。
RT−PCRの場合は、さらに、逆転写に必要なものとして逆転写酵素を必要に応じて存在させる。
リアルタイムRT−PCRの場合は、さらに、逆転写に必要なものとして逆転写酵素を必要に応じて存在させる。また、核酸増幅を経時的に確認するため、さらにSYBR GreenI(登録商標)やEva Green(登録商標)などの蛍光色素や蛍光標識をしたプローブを必要に応じて存在させる。
本発明の核酸増幅用組成物において、核酸増幅反応溶液中には、ホットスタートPCR法を実施するために、抗DNAポリメラーゼ抗体を含んでいても良い。従前、核酸の融解温度を調整する目的でDMSOやホルムアルデヒドを添加した場合、これらの物質は抗DNAポリメラーゼ抗体の作用を阻害するものとなっていた。本発明では抗DNAポリメラーゼ抗体の作用を阻害するような試薬は含まれていないため、ホットスタートPCR法は極めて有用である
ここでいう抗DNAポリメラーゼ抗体は、その形態は特に限定されないが、好ましくは耐熱性DNAポリメラーゼに結合し、50℃以下の低温において活性を80%以上阻害するもの、より好ましくは90%以上阻害するものを用いることができる。またここでいう抗耐熱性DNAポリメラーゼ抗体は単一種のモノクローナル抗体を用いるか、または複数のモノクローナル抗体を用いるか、あるいはポリクローナル抗体を用いることができる。このような抗体はマウス、ラット、ハムスター等を用いたハイブリドーマ作製等による公知のモノクローナル抗体作製法により得ることができる。
本発明の核酸増幅用組成物において、核酸増幅反応溶液中には、ホットスタートPCR法を実施するために、抗DNAポリメラーゼ抗体を含んでいても良い。従前、核酸の融解温度を調整する目的でDMSOやホルムアルデヒドを添加した場合、これらの物質は抗DNAポリメラーゼ抗体の作用を阻害するものとなっていた。本発明に用いるグリコール類やL−カルニチンは抗DNAポリメラーゼ抗体の作用を阻害することがないため、ホットスタートPCR法には極めて有用である。
本発明の核酸増幅用組成物において、核酸増幅のための温度・時間・反応サイクル等の条件は、増幅したい核酸の種類や塩基の配列、鎖長等によって変わるが、当業者であれば適宜設定できる。ただし、本発明の効果を享受するため、変性反応における設定温度や設定時間は、通常より温度を低く若しくは時間を短く設定することが好ましいが、この限りではない。
本発明の別の態様は、生体試料を核酸増幅反応液に添加し、生体試料中の標的核酸を増幅する方法に用いる試薬であって、テトラメチルアンモニウム塩、L−カルニチン及びテトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼを含む、核酸増幅用組成物である。ここで言う試薬とは、キットなどのように市販品として流通するものに限定されず、自家調製によるもの等を含み、形態を問わない。別の切り口では、PCR用試薬、RT−PCR用試薬、ワンステップRT−PCR用試薬などの態様が挙げられる。本発明の核酸増幅用組成物に含まれる組成物の構成や各構成成分の詳細は、上述の核酸増幅法の説明に準ずる。
本発明の核酸増幅用組成物において、テトラメチルアンモニウム塩及びL−カルニチン及びテトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼは、同一の容器に含まれていてもよいし、別々の容器に保持されていたものを使用するより前に混合しても良い。特にワンステップRT−PCRの場合は、逆転写酵素を存在させる必要があるが、この逆転写酵素についても前記の試薬類と同一の容器に含まれていてもよいし、別々の容器に保持されていたものを使用するより前に混合しても良い。
以下、本発明を実施例に基づき、より詳細に説明する。なお、本発明は実施例に特に限定されるものではない。
実施例1
100mM 酢酸テトラメチルアンモニウム及び0.3M L−カルニチン及び4% 1,3−プロパンジオールを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチンを含むバッファー、酢酸テトラメチルアンモニウムを含むバッファー、L−カルニチンを含むバッファー、3種類の試薬を含まないバッファーを調製した。各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施した。この時、50μL反応系に10μLの血液を添加した時(血液(+)と記載)と、血液の代わりに滅菌水を添加した時(血液(−)と記載)を比較した。
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、K562由来Total RNAを使用した。K562由来Total RNAは、K562細胞を培養し、セパゾールRNAを使用してRNA抽出を行い、取得した。K562由来Total RNAを2ng/μLから2pg/μLコピーまで、1/10ずつ段階希釈し、鋳型として使用した。
(2)RT−PCR反応
ReverTra Ace(東洋紡) 1unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 1unit、
rTth DNA Polymerase(東洋紡) 1unit、
抗Tth抗体 0.4μg、
10×Buffer(東洋紡 rTth DNA PolymeraseのBuffer)
10mM dNTPs(東洋紡) 1.0μL、
50μM BCR−ABLフォアードプライマー(配列番号1) 0.3μL、
100μM BCR−ABLプローブ(配列番号2) 0.1μL、
50μM BCR−ABLリバースプライマー(配列番号3) 0.3μL、
RNA 5μL、
血液 10μL、
を含む反応液50μLを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 10分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 45サイクル
(3)結果
その結果を図1、図2、図3、図4に示す。図1及び図2は、50μL反応系に10μLの血液を添加した時(血液(+)と記載)のデータである。図1は、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値を取りグラフ化した図である。図2は、リアルタイムRT−PCRを実施したときの増幅曲線を示した図である。図2Aは、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファーで実施した結果であり、図2Bは、3種類の試薬を含まないバッファーで実施した結果である。
さらに、図3及び図4は、50μL反応系に血液の代わりに10μLの滅菌水を添加した時(血液(+)と記載)のデータである。図3は縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値をとりグラフ化した図である。図4は、リアルタイムRT−PCRを実施したときの増幅曲線を示した図である。図4Aは、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファーで実施した結果であり、図4Bは、3種類の試薬を含まないバッファーで実施した結果である。驚くべきことに、血液添加時は、3種類の試薬を含まないバッファーで検出した場合は、検出できなかったのに対し、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチンを添加したバッファー、または、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファーで検出した場合は、血液中の核酸を検出できた。
実施例2
100mM 酢酸テトラメチルアンモニウム及び0.3M L−カルニチン及び4% 1,3−プロパンジオールを含むバッファーを調製した。調製したバッファーで、Tth DNAポリメラーゼ及びTaq DNAポリメラーゼでリアルタイムRT−PCRを実施した。
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、K562由来Total RNAを使用した。K562由来Total RNAは、K562細胞を培養し、セパゾールRNAを使用してRNA抽出を行い、取得した。K562由来Total RNAを2ng/μLから2pg/μLコピーまで、1/10ずつ段階希釈し、鋳型として使用した。
(2)RT−PCR反応
ReverTra Ace(東洋紡) 1unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 1unit、
rTth DNA Polymerase(東洋紡) 1unit、
抗Tth抗体 0.4μg、
10×Buffer(東洋紡 rTth DNA PolymeraseのBuffer)
10mM dNTPs(東洋紡) 1.0μL、
50μM BCR−ABLフォアードプライマー(配列番号1) 0.3μL、
100μM BCR−ABLプローブ(配列番号2) 0.1μL、
50μM BCR−ABLリバースプライマー(配列番号3) 0.3μL、
RNA 5μL、
血液 10μL、
を含む反応液50μLを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 10分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 45サイクル
(3)結果
その結果を図5、図6に示す。図5は、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値を取りグラフ化した図である。図6Aは、Tth DNAポリメラーゼ、図4Bは、Taq DNAポリメラーゼでリアルタイムRT−PCRを実施した時の増幅曲線である。驚くべきことに、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファーはTth DNAポリメラーゼとの組み合わせにより、血液中の核酸を検出できた。一方、Taq DNAポリメラーゼとの組み合わせでは検出不可能であった。
実施例3
100mM 酢酸テトラメチルアンモニウム及び0.3M L−カルニチン及び4% 1,3−プロパンジオールの代わりに4% エチレングリコール、4% 1,2−プロパンジオール、4% グリセロールを添加したバッファーをそれぞれ調製した。調製した各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施した。
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、K562由来Total RNAを使用した。K562由来Total RNAは、K562細胞を培養し、セパゾールRNAを使用してRNA抽出を行い、取得した。K562由来Total RNAを2ng/μLから2pg/μLコピーまで、1/10ずつ段階希釈し、鋳型として使用した。
(2)RT−PCR反応
ReverTra Ace(東洋紡) 1unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 1unit、
rTth DNA Polymerase(東洋紡) 1unit、
抗Tth抗体 0.4μg、
10×Buffer(東洋紡 rTth DNA PolymeraseのBuffer)
10mM dNTPs(東洋紡) 1.0μL、
50μM BCR−ABLフォアードプライマー(配列番号1) 0.3μL、
100μM BCR−ABLプローブ(配列番号2) 0.1μL、
50μM BCR−ABLリバースプライマー(配列番号3) 0.3μL、
RNA 5μL、
血液 10μL、
を含む反応液50μLを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 10分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 45サイクル
(3)結果
その結果を図7、図8に示す。図7は縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値を取りグラフ化した図である。図8のAは1,3−プロパンジオール、Bはエチレングリコール、Cは1,2−プロパンジオール、DはグリセロールでリアルタイムRT−PCRを実施した時の増幅曲線である。驚くべきことに、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセロールなどの様々なグリコール類を使用した場合も、1,3−プロパンジオールと同様に血液中の核酸を検出できた。
実施例4
100mM 酢酸テトラメチルアンモニウム及び0.3M L−カルニチン及び4% 1,3−プロパンジオール、100mM 酢酸テトラメチルアンモニウムの代わりに100mM 塩化テトラメチルアンモニウムを添加したバッファーをそれぞれ調製した。調製した各々のバッファーでリアルタイムRT−PCRを実施した。
(1)RNAサンプル
RNAサンプルとして、K562由来Total RNAを使用した。K562由来Total RNAは、K562細胞を培養し、セパゾールRNAを使用してRNA抽出を行い、取得した。K562由来Total RNAを2ng/μLから2pg/μLコピーまで、1/10ずつ段階希釈し、鋳型として使用した。
(2)RT−PCR反応
ReverTra Ace(東洋紡) 1unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 1unit、
rTth DNA Polymerase(東洋紡) 1unit、
抗Tth抗体 0.4μg、
10×Buffer(東洋紡 rTth DNA PolymeraseのBuffer)
10mM dNTPs(東洋紡) 1.0μL、
50μM BCR−ABLフォアードプライマー(配列番号1) 0.3μL、
100μM BCR−ABLプローブ(配列番号2) 0.1μL、
50μM BCR−ABLリバースプライマー(配列番号3) 0.3μL、
RNA 5μL、
血液 10μL、
を含む反応液50μLを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 10分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 45サイクル
(3)結果
その結果を図9、図10に示す。図9は、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値をとりグラフ化した図である。図10Aは、酢酸テトラメチルアンモニウム、Bは塩化テトラメチルアンモニウムでリアルタイムRT−PCRを実施した時の増幅曲線である。驚くべきことに、塩化テトラメチルアンモニウムを使用した場合も酢酸テトラメチルアンモニウムと同様に検出感度が向上した。
実施例5
100mM 酢酸テトラメチルアンモニウム及び0.3M L−カルニチン及び4% 1,3−プロパンジオールを含むバッファーを調製した。50μL反応系に1μL、2μL、3μL、5μL、10μLおよび15μLの血液を添加してリアルタイムRT−PCRを実施した。
(1)サンプル(培養細胞)
サンプルとして、RNAを使用せずに、K562細胞を使用した。培養したK562細胞の細胞数を計測し、回収、遠心分離した。その後、計測した細胞数より、2000cells/μLになるように、PBS(−)に懸濁させた。これを1/10ずつ段階希釈し、200cells/μLから0.2cells/μLまで、1/10ずつ段階希釈し、鋳型として使用した。
(2)RT−PCR反応
ReverTra Ace(東洋紡) 1unit、
RNase inhibitor(東洋紡) 1unit、
rTth DNA Polymerase(東洋紡) 1unit、
抗Tth抗体 0.4μg、
10×Buffer(東洋紡 rTth DNA PolymeraseのBuffer)
10mM dNTPs(東洋紡) 1.0μL、
50μM BCR−ABLフォアードプライマー(配列番号1) 0.3μL、
100μM BCR−ABLプローブ(配列番号2) 0.1μL、
50μM BCR−ABLリバースプライマー(配列番号3) 0.3μL、
RNA 5μL、
血液 10μL、
を含む反応液50μLを、以下の温度サイクルで反応した。
50℃ 10分
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 45秒 45サイクル
(3)結果
その結果を図11、図12に示す。図11は、縦軸にCt値、横軸にRNAの対数値を取りグラフ化した図である。図12Aは血液1μL添加時、図12Bは血液2μL添加時、図12Cは血液3μL添加時、図12Dは血液5μL添加時、図12Eは血液10μL添加時、図12Fは血液15μL添加時の増幅曲線の図である。驚くべきことに、酢酸テトラメチルアンモニウム及びL−カルニチン及び1,3−プロパンジオールを含むバッファーは、血液中の細胞から直接RNAを検出することが可能であった。
実施例6
Taq変異体の作製
Thermus aquaticus由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号7)を含有するプラスミド、pTaq E507K、pTaq E507R、pTaq E742K、pTaq E742Rを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたThermusaquaticus由来の耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号14)(pTaq)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(東洋紡)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。変異作製用プライマーとしては、pTaq E507Kについては配列番号8および9に記載されるプライマーを、pTaq E507Rについては配列番号10および11に記載されるプライマーを、pTaq E742Kについては配列番号12および13に記載されるプライマーを、pTaq E742Rについては配列番号14および15に記載されるプライマーを使用した。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドはエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
実施例7
Tth変異体の作製
Thermus thermophilus由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号20)を含有するプラスミド、pTth Q509K、pTth Q509R、pTth E744K、pTth E744Rを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたThermusthermophilus由来の耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号26)(pTth)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(東洋紡)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。変異作製用プライマーとしては、pTth Q509Kについては配列番号21および22に記載されるプライマーを、pTth Q509Rについては配列番号23および24に記載されるプライマーを、pTth E744Kについては配列番号25および26に記載されるプライマーを、pTth E744Rについては配列番号27および28に記載されるプライマーを使用した。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドはエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
実施例8
耐熱性DNAポリメラーゼの作製
実施例6、7で得られた菌体の培養は、以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mlのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを、500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mlのアンピシリンを含有する3mlのLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリJM109(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mlの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1%ノニデットP40、50%グリセリン)に置換し、耐熱性DNAポリメラーゼを得た。
上記精製工程のDNAポリメラーゼ活性測定は以下の操作で行った。また、酵素活性が高い場合はサンプルを希釈して測定を行った。
(試薬)
A液: 40mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)、16mM 塩化マグネシウム、15mM ジチオスレイトール、100μg/ml BSA
B液: 1.5μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C液: 1.5mM dNTP(250cpm/pmol [3H]dTTP)
D液: 20% トリクロロ酢酸(2mM ピロリン酸ナトリウム)
E液: 1mg/ml 仔牛胸腺DNA
(方法)
A液25μl、B液5μl、C液5μl及び滅菌水10μlをマイクロチューブに加えて攪拌混合後、上記精製酵素希釈液5μlを加えて75℃で10分間反応する。その後冷却し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後更に10分間氷冷する。この液をガラスフィルター(ワットマン製GF/Cフィルター)で濾過し、0.1N塩酸及びエタノールで十分洗浄し、フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード製Tri−Carb2810 TR)を用いて計測し、鋳型DNAへのヌクレオチドの取り込みを測定した。酵素活性の1単位はこの条件下で30分当り10nmolのヌクレオチドを酸不溶性画分に取り込む酵素量とした。
実施例9
DNAポリメラーゼのテトラメチルアンモニウム塩耐性評価
上記のテトラメチルアンモニウム塩耐性評価方法で、実施例7で得られた改変型Taq DNAポリメラーゼ、及び野生型Taq DNAポリメラーゼ(東洋紡)、Tth DNAポリメラーゼ(東洋紡)、Z05 DNAポリメラーゼ(Roche)を評価した。
結果を図11に示す。野生型Taq DNAポリメラーゼでは、50mMの酢酸テトラメチルアンモニウム添加で阻害が生じ増幅が見られなくなった。一方、改変型Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Z05 DNAポリメラーゼは200mMの酢酸テトラメチルアンモニウムを添加しても増幅の阻害は見られなかった。改変によって、テトラメチルアンモニウム塩に耐性ができることがわかる。また、TthポリメラーゼやZ05ポリメラーゼはテトラメチルアンモニウム塩に耐性があることがわかる。図15にTth DNAポリメラーゼとZ05 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の同一性を示す。Tth DNAポリメラーゼとZ05 DNAポリメラーゼは95%以上の同一性があり、この同一性の高さからも同様の性能が出たことが考えられる。
また、改変型Tth DNAポリメラーゼでも同様のテトラアンモニウム塩耐性の評価を行った。結果、Tth DNAポリメラーゼのQ509K、Q509R、E744K、E744R変異体でも野生型と同様、200mMの酢酸テトラメチルアンモニウムを添加しても増幅の阻害は見られなかった。
実施例10
120mM(終濃度)酢酸テトラメチルアンモニウム、0.3M カルニチン、4% トリメチレングリコールを含むバッファーで、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Z05 DNAポリメラーゼ、及び改変型Taq DNAポリメラーゼ(Taq E507K、Taq E507R)で血液を鋳型にリアルタイムPCRを実施した。
(1)鋳型
鋳型として、血液1μlを使用した。
(2)PCR反応
酢酸テトラメチルアンモニウム、カルニチン、トリメチレングリコール以外の組成を下記に示す。
Taq DNA Polymerase(東洋紡)または改変型Taq DNA Polymerase、Tth DNA Polymerase、Z05 DNA Polymerase 1unit、
抗ポリメラーゼ抗体 0.4μg、
10×Buffer(東洋紡 rTth DNA PolymeraseのBuffer) 2μL、
10mM dNTPs(東洋紡) 0.4μL、
10μM プライマー(配列番号16) 0.6μL、
10μM プローブ(配列番号17) 0.6μL、
10μM プライマー(配列番号18) 0.4μL、
血液 1μL、
を含む反応液20μLを、以下の温度サイクルで反応した。
95℃ 1分
95℃ 15秒−60℃ 60秒 40サイクル
(3)結果
その結果を図12に示す。図12はそれぞれの酵素で行った増幅曲線を示す。Taq DNAポリメラーゼでは増幅が見られないものの、改変型Taq DNAポリメラーゼ(E507K、E742K)では立ち上がりが見られ、血液から直接、精製を経ることなく増幅できることが示された。改変型Taq DNAポリメラーゼ(E507R、E742R)、Tth DNAポリメラーゼ、Z05 DNAポリメラーゼでも同様の結果が得られた。テトラメチルアンモニウム塩の効果でPCRの効率が向上し、血液の阻害を受けることなくPCRが成功したと考えられる。
同様の評価を、Taq DNAポリメラーゼの代わりに野生型Tth DNAポリメラーゼ、及び改変型Tth DNAポリメラーゼ(Q509K、Q509R、E744K、E744R)でも実施した。結果、Tth DNAポリメラーゼでは野生型、改変型共に立ち上がりが見られ、血液から直接、精製を経ることなく増幅できることが示された。テトラメチルアンモニウム塩に耐性があれば野生型だけでなく改変型DNAポリメラーゼでも、血液からの増幅が可能になる。今まで汎用的に使用していたTaq DNAポリメラーゼではテトラメチルアンモニウム塩の阻害効果の方が大きく、PCRを促進する効果を十分見ることができなかった。テトラメチルアンモニウム塩耐性のDNAポリメラーゼを用いることで、テトラメチルアンモニウム塩のPCR促進効果を十分に発揮させ、通常は実施することができないと考えられていた血液からの直接PCRをも可能にできることがわかった。
本発明により、分子生物学の分野において有用な組成物、殊に鋳型核酸からDNAの生成及び更なるDNA増幅を行う際に有用な組成物を提供する。本発明により、核酸増幅において反応阻害がなく、操作性の低下が顕著でなく、低コストで反応を実施でき、特に、核酸増幅反応用のプレミックス試薬への混合という用途において、より利便性の高い試薬形態を供給可能である。本発明は、遺伝子発現解析に際して特に有用であり、研究用途のみならず臨床診断や環境検査等にも利用できる。

Claims (36)

  1. テトラメチルアンモニウム塩、L−カルニチン及びテトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼを含むことを特徴とする核酸増幅用組成物。
  2. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが、終濃度が50mM以上のテトラメチルアンモニウム塩存在下で阻害されないDNAポリメラーゼである請求項1に記載の核酸増幅用組成物。
  3. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号19と90%以上の同一性があるDNAポリメラーゼである請求項1または2に記載の核酸増幅用組成物。
  4. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼがTth DNAポリメラーゼである請求項1または2に記載の核酸増幅用組成物。
  5. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼがZ05 DNAポリメラーゼである請求項1または2に記載の核酸増幅用組成物。
  6. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号6の変異体である請求項1または2に記載の核酸増幅用組成物。
  7. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号6の少なくともE507位、またはE742位が改変されたDNAポリメラーゼである請求項6に記載の核酸増幅用組成物。
  8. 前記テトラメチルアンモニウム塩が、酢酸テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  9. グリコール類を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  10. グリコール類の炭素数が4以下である請求項1〜9のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  11. グリコール類がエチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1〜10のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  12. 反応液中に生体試料を直接添加する請求項1〜11のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  13. 前記生体試料が、血液、血漿または血清等の血液由来試料、唾液、髄液、尿、乳からなる群より選ばれた少なくとも1種の試料である請求項1〜12のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  14. 前記生体試料中のウィルス、細菌、真菌、原虫及び細胞をターゲットとして検出する請求項1〜13のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  15. 少なくとも抗体、反応緩衝剤および金属イオンを含む請求項1〜14のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  16. 少なくとも逆転写酵素、抗体、反応緩衝剤および金属イオンを含む請求項1〜15のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  17. 核酸増幅反応がPCRである請求項1〜16のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  18. 核酸増幅反応がワンステップRT−PCRである請求項1〜17のいずれかに記載の核酸増幅用組成物。
  19. テトラメチルアンモニウム塩、L−カルニチン及びテトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼを含むことを特徴とする核酸増幅法。
  20. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが、終濃度が50mMのテトラメチルアンモニウム塩存在下で阻害されないDNAポリメラーゼである請求項19に記載の核酸増幅法。
  21. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号19と90%以上の同一性があるDNAポリメラーゼである請求項20または21に記載の核酸増幅法。
  22. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼがTth DNAポリメラーゼである請求項19〜21のいずれかに記載の核酸増幅法。
  23. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼがZ05 DNAポリメラーゼである請求項19〜22のいずれかに記載の核酸増幅法。
  24. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号6の変異体である請求項19〜23のいずれかに記載の核酸増幅法。
  25. 前記テトラメチルアンモニウム耐性DNAポリメラーゼが配列番号6の少なくともE507位、またはE742位が改変されたDNAポリメラーゼである請求項19〜24のいずれかに記載の核酸増幅法。
  26. 前記テトラメチルアンモニウム塩が、酢酸テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項19〜25のいずれかに記載の核酸増幅法。
  27. グリコール類を含むことを特徴とする請求項19〜26のいずれかに記載の核酸増幅法。
  28. グリコール類の炭素数が4以下である請求項19〜27のいずれかに記載の核酸増幅法。
  29. グリコール類が、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項19〜28のいずれかに記載の核酸増幅法。
  30. 反応液中に生体試料を直接添加する請求項19〜29のいずれかに記載の核酸増幅法。
  31. 前記生体試料が、血液由来試料、唾液、髄液、尿、乳からなる群より選ばれた少なくとも1種の試料である請求項19〜30のいずれかに記載の核酸増幅法。
  32. 前記生体試料中のウィルス、細菌、真菌、原虫及び細胞をターゲットとして検出する請求項19〜31のいずれかに記載の核酸増幅法。
  33. 少なくとも抗体、反応緩衝剤および金属イオンを含む請求項19〜32のいずれかに記載の核酸増幅法。
  34. 少なくとも逆転写酵素、抗体、反応緩衝剤および金属イオンを含む請求項19〜33のいずれかに記載の核酸増幅法。
  35. 核酸増幅反応がPCRである請求項19〜34のいずれかに記載の核酸増幅法。
  36. 核酸増幅反応がワンステップRT−PCRである請求項19〜35のいずれかに記載の核酸増幅法。
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