JP2017105693A - 金属塩化物製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 身近な原料を用いて、より簡素な方法によって、低コストで高品質な金属塩化物を製造できる金属塩化物製造方法を提供する。【解決手段】 アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含む金属塩化物を製造する金属塩化物製造方法は、海水から得られる苦汁を冷凍して冷凍液を得る冷凍工程と、 前記冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物を得る濃縮工程とを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含む金属塩化物の製造方法に関し、特に、高品質な金属塩化物が効率的に得られる金属塩化物の製造方法に関する。
近年、稀少金属(レアメタル)の確保が国際的にも重要な課題となっている。このような価値の高い金属のうち、近年特に注目されているものとして、金属マグネシウムや金属カリウム等をはじめとするアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素がある。金属マグネシウムや金属カリウム等のアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素は、一般的な製法として、当該金属元素の塩化物(金属塩化物)を原料として、電気分解(溶融塩電解)によって製造されている。従って、良質な金属マグネシウムや金属カリウム等を効率よく製造するためには、原料である塩化マグネシウムや塩化カリウム等の金属塩化物が高品質であること及び多量にあることが重要な要素となっている。
さらに、塩化マグネシウムは、上記の用途に限定されず、触媒、防塵剤、凍結防止剤、防火剤や、薬液や肥料などの原料としても欠かせない材料として使われている。また、塩化カリウムも、上記の用途に限定されず、薬剤、食品添加物、食塩代替物、電解液などの原料としても欠かせない材料として使われている。即ち、現在では、塩化マグネシウム及び塩化カリウム等の金属塩化物は、工業用品、農業用品、化学用品、医薬品等の広範な産業分野において極めて重要な原料として位置付けられている。
従来の金属塩化物の製造方法は、塩化マグネシウムの製造方法としては、例えば、塩化マグネシウム水和物を原料として、乾燥処理を行い、不純物除去処理を行い、アンモニア飽和溶液を添加し、分離処理を行い、加熱処理を行う工程を含む無水塩化マグネシウムの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、従来の金属塩化物の製造方法は、塩化マグネシウムの製造方法としては、例えば、還元炉内で四塩化チタンと金属マグネシウムを還元反応させ金属チタン及び塩化マグネシウムを生成させた後、該還元炉から溶融状態の該塩化マグネシウムを容器内に直接抜出し、該容器内で固化させることを特徴とする無水塩化マグネシウムの製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
この他、海水由来の苦汁(にがり)を原料とするものもある。このような従来の金属塩化物の製造方法は、塩化マグネシウムの製造方法としては、例えば、主食添加物を製造する方法ではあるが、塩田式製塩法により得られた苦汁から、硫酸マグネシウム、苦汁カリ塩、塩化カリウムを分離採取した後、固型又はフレーク状塩化マグネシウムと微量元素塩類混合物を採取粉砕し、炭酸カルシウム粉末を混合し、粉状・粒状・板状に加工して主食(米用又は小麦用)添加物を製造する方法が提案されている(特許文献3参照)。
また、海水由来の苦汁を原料とする従来の金属塩化物の製造方法は、塩化カリウムの製造方法としては、例えば、製塩工程から生成する70℃以上の苦汁に水を0.5〜5重量%添加した苦汁を、20℃〜50℃の内から設定される一定温度に保持するよう調整された苦汁中に流入分散させて急冷却することにより、多成分で構成される苦汁中から選択的に塩化カリウムを析出させ、回収することを特徴とする苦汁を用いた塩化カリウムの製造方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかし、従来の金属塩化物の製造方法では、塩化マグネシウム水和物や、四塩化チタンと金属マグネシウム等の原料が別途必要とされているように(例えば、特許文献1及び特許文献2)、原料の調達コスト及び管理コストが嵩張るものである。また、海水由来の苦汁(にがり)を原料とするものもあるが、苦汁から、硫酸マグネシウム、苦汁カリ塩、塩化カリウムを分離採取する手間を要することや(例えば、特許文献3)、70℃以上という高温条件の苦汁を前提として、この苦汁に対して、析出し難い塩化カリウムを析出し易くするために水を0.5〜5重量%添加した苦汁を、20℃〜50℃の内から設定される一定温度に保持するというシビアな温度や濃度条件が要求されるという手間を要するもの(例えば、特許文献4)であり、いずれも高い精度の分離制御や温度制御が要求され、煩雑な製造方法となっている。さらに、高温の還元炉から溶融状態の塩化マグネシウムを直接抜出すという高い技術を要する操作や、乾燥処理や不純物除去処理等の複数の煩雑な処理工程が要求されることから、操作コストや装置コストも嵩張る。
このようなことから、より簡素な手法で低コストに高品質な塩化マグネシウムや塩化カリウム等の金属塩化物を得る製造方法が期待されているものの、現在のところ、そのような金属塩化物の製造方法は見当たらない。
特表平8−508231号公報 特開2004−83298号公報 特表平11−32726号公報 特開2011−57537号公報
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、身近な原料を用いて、より簡素な方法によって、低コストで高品質な塩化マグネシウムや塩化カリウム等のアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含む金属塩化物を製造できる金属塩化物製造方法の提供を目的とする。
本発明者は、鋭意研究の結果、海水から得られる苦汁(通称「灌水」と呼ばれるものも含む)を冷凍させることによって、塩化マグネシウム(塩マグともいう)や塩化カリウム等のアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含む金属塩化物の生成が著しく促進されることを見出し、この冷凍液を濃縮することで、極めて良質な粒子状の金属塩化物が得られることを見出した。
即ち、本願に開示する金属塩化物製造方法は、海水から得られる苦汁を冷凍して冷凍液を得る冷凍工程と、前記冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物を得る濃縮工程と、を含むものが提供される。
このように、冷凍工程で海水から得られる苦汁を冷凍して冷凍液を得た後、濃縮工程で、前記冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム、塩化カリウム)を得ることから、一旦冷凍されることによって金属塩化物が形成され易くなった状態となり、この状況下で、前記冷凍液に対して加熱と冷却を繰り返すことによって、効率よく金属塩化物が生成されることとなり、より簡素な方法によって、低コストで高品質な金属塩化物を製造することができる。
また、本願に開示する金属塩化物製造方法は、必要に応じて、 前記冷凍工程で得られた冷凍液にカルシウム化合物の飽和溶液を添加し、当該添加により得られた溶液にエタノールを添加し、当該添加により得られた溶液を冷凍して、濃縮された金属塩化物である塩化カリウム及び当該残液としての第二の冷凍液を得る第二冷凍工程と、前記第二冷凍工程により得られた第二の冷凍液からエタノールを除去して、加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物であるカーナライト及び当該残液としての冷凍液を得る第二濃縮工程とを含み、前記濃縮工程が、前記第二濃縮工程で得られた前記冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物である塩化マグネシウムを得るものである。このように、第二冷凍工程で濃縮された金属塩化物である塩化カリウムが得られると共に、前記濃縮工程により濃縮された金属塩化物である塩化マグネシウムが得られることから、多段階に亘って、複数の金属塩化物が得られることとなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物を製造することができる。
また、本願に開示する金属塩化物製造方法は、必要に応じて、前記第二濃縮工程により得られたカーナライトを、前記冷凍工程で得られた冷凍液に還流する還流工程とを含むものである。このように、還流工程により、前記第二濃縮工程により得られたカーナライトを、前記冷凍工程で得られた冷凍液に還流することから、金属元素及び塩化物元素を含有するカーナライトが前記冷凍液中に豊富に含まれることによって、前記濃縮工程によって得られる金属塩化物がさらに濃縮されることとなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物を製造することができる。
また、本願に開示する金属塩化物製造方法は、必要に応じて、前記冷凍工程の冷凍温度が、0℃〜−25℃であるものである。このように、前記冷凍工程の冷凍温度が、0℃〜−25℃であることから、当該温度範囲内でより金属塩化物が形成され易い状態が得られることとなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物を製造することができる。
また、本願に開示する金属塩化物製造方法は、必要に応じて、前記冷凍工程の冷凍時間が、2時間〜12時間であるものである。このように、前記冷凍工程の冷凍時間が、2時間〜12時間であることから、当該冷凍時間によって、塩化マグネシウムが高純度で形成され易い状態が得られることとなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物を製造することができる。
また、本願に開示する金属塩化物製造方法は、必要に応じて、前記冷凍工程で冷凍される前の前記苦汁にエタノールを添加する添加工程と、前記冷凍工程で得られた前記冷凍液からエタノールを除去する除去工程とを含むものである。このように、前記冷凍工程で冷凍される前の前記苦汁にエタノールを添加する添加工程と、前記冷凍工程で得られた前記冷凍液からエタノールを除去する除去工程とを含むことから、エタノールの添加によって、貧溶媒添加効果により塩化ナトリウム(NaCl)が選択的に除去された状態が得られることとなり、さらに高純度な金属塩化物が形成され、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物を製造することができる。
また、本願に開示する金属塩化物製造方法は、必要に応じて、前記冷凍工程が、冷凍温度の時間に対する微分値が変曲点となる時点に基づいて、前記冷凍液を得るものである。このように、前記冷凍工程が、冷凍温度の時間に対する微分値が変曲点となる時点に基づいて、前記冷凍液を得ることから、当該冷凍液によって、高純度な金属塩化物が最適に形成され易い状態が得られることとなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物を製造することができる。
また、本願に開示する金属塩化物製造方法は、必要に応じて、前記冷凍工程が、前記冷凍液の外観が透明状態から白濁状態に遷移した時点に基づいて、前記冷凍液を得るものである。このように、前記冷凍工程が、前記冷凍液の外観が透明状態から白濁状態に遷移した時点に基づいて、前記冷凍液を得ることから、高純度な金属塩化物が形成され易い状態となった前記冷凍液が、視認によって容易に得られることとなり、より効率よく、より低コストで高品質な金属塩化物を製造することができる。
本願の第1の実施形態に係る金属塩化物製造方法のフローチャートを示す。 本願の第1の実施形態に係る原料の苦汁のXRD解析した結果(a),及び冷凍温度を温度計測しながら冷凍液を得ることの説明図(b)を示す。 本願の第2の実施形態に係る金属塩化物製造方法のフローチャート(a)及び減圧化沸点換算図表(b)を示す。 本願の第2の実施形態に係る金属塩化物製造方法の段階的に結晶が得られることを示すフローチャートを示す。 本願の第5の実施形態に係る金属塩化物製造方法のフローチャートを示す。 本願の第5の実施形態に係る金属塩化物製造方法のフローチャートを示す。 本願の第5の実施形態に係る金属塩化物製造方法の段階的に結晶が得られることを示すフローチャートを示す。 本願の第5の実施形態に係る金属塩化物製造方法の手順の一例を示す説明図を示す。 本願の実施例1に係る金属塩化物のXRD回折パターンの結果(a)及びSEM像(b)を示す。 本願の実施例2に係る金属塩化物のXRD回折パターンの結果(a)及びSEM像(b)を示す。 本願の実施例1及び2に係る金属塩化物の回収した晶析物質の収量を示す。 本願の実施例3に係る金属塩化物の冷凍温度の時間に対する変動を測定した結果を示す。 本願の実施例3に係る金属塩化物の苦汁(d=1.26)を原料とする冷凍温度の時間に対する変動を測定した結果を示す。 本願の実施例4に係る金属塩化物の冷凍温度の時間に対する変動を測定した結果((b)は(a)の一部拡大図)を示す。 本願の実施例4に係る金属塩化物の潅水(d=1.23)を原料とする冷凍温度の時間に対する変動を測定した結果を示す。 本願の実施例5に係る金属塩化物について、溶液(A)〜(H)に関するXRD回折パターンの結果を示す。 本願の実施例5に係る金属塩化物について、エタノールを添加(50vol%)して得られた溶液を冷凍・冷却して晶析した析出物(溶液(D))のXRD回折パターンの結果(a)、及び、各溶液(A)〜(H)について、各金属塩化物の収量を測定した結果(b)を示す。 本願の実施例6に係る金属塩化物について、各溶液(A)〜(H)におけるXRD回折パターンの結果を示す。 本願の実施例6に係る金属塩化物について、溶液(E)及び溶液(G、H)におけるXRD回折パターンの結果を示す。 本願の実施例6に係る金属塩化物について、各溶液(A)〜(H)における各金属塩化物の収量を測定した結果を示す。
(第1の実施形態)
本願の第1の実施形態に係る金属塩化物製造方法を、図1のフローチャートに従い説明する。
(冷凍工程)
先ず、原料として、海水を濃縮することによって、食用塩を取り除いた後に得られた苦汁を用いる。この苦汁としては、海水を濃縮し、さらに硫酸イオンを含む不純物(CaSO・2HO等)を除去して得られる潅水を用いることも可能である。また、このような原料となる海水は、通常の海水の他に、例えば、海水から逆浸透膜処理することにより排水として得られた濃縮海水を利用することも可能である。
この原料となる海水は、一般的な海水であれば特に限定されるものではなく、例えば、比重dが1.03を示す溶液を用いることができる。この海水を濃縮することによって得られる苦汁については、その比重は、特に限定されるものではないが、より好ましくは、比重d=1.22〜1.32である。なお、上記比重とは、市販の比重計(例えば、標準比重計No.4(アズワン(株)製))を用いて測定することができる無次元数である。
原料の苦汁を調製する一例として、比重がd=1.03の海水を出発原料に用いて、調製して得られた苦汁(比重d=1.23〜)について、水平型X線構造解析装置XRD7000、島津製作所製)で解析した結果を、図2(a)に示す。同図に示されるように、この苦汁は、Na、Cl、Mg を主要成分とする溶液である。
この海水から得られる苦汁を、冷凍し、図2(b)に示すように、CA熱電対を用いて冷凍温度を温度計測しながら冷凍液を得る(S1:冷凍工程)。この冷凍とは、0℃以下に冷却することを意味するものであり、必ずしも凍結状態を示すものでは無いという点から、広義には冷却を意味する。この冷凍温度は、特に限定されないが、0℃〜−25℃であることが好ましく、例えば、ー18℃とすることができる。また、この冷凍時間は、特に限定されないが、好ましくは、1時間〜48時間であり、より好ましくは、2時間〜12時間である。
(添加工程)
次に、この得られた冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)を得る(S2:濃縮工程)。この加熱と冷却を繰り返すことによって、高純度な金属塩化物を容易に得ることができる。
この加熱と冷却の条件は特には限定されないが、25℃〜60℃という低温で行うこと(即ち、低温濃縮)が好ましく、例えば、50℃で行うことができる。この温度が60℃以上では、金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)を形成するのに必要な金属元素(例えば、マグネシウム元素)が、金属硫化物(例えば、MgSO)の水和物として結晶化しやすくなり、結果として目的とする金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)の濃度低下を引き起こす虞がある。また、温度の下限が25℃であるのは、常温でも十分に反応が進行するためである。
このようにして得られる金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)は、従来よりも高純度であり且つ大量に且つ短時間で簡易に得られることが確認されている。
このように本願に係る金属塩化物の製造方法が優れた効果を奏するメカニズムは、詳細には解明されていないが、金属塩化物が塩化マグネシウムの場合には、晶析と共に以下の反応が進行することによって(即ち、反応晶析)、金属塩化物の構成元素とならないナトリウムイオンと硫酸イオンが、溶液中で硫酸ナトリウムの水和物結晶が形成されることにより、溶液中から排除されてそれらの濃度が減少すると共に、金属硫化物(例えば、硫酸マグネシウム)由来のマグネシウムイオンと、塩化ナトリウム由来のナトリウムイオンとが、共に溶液中に存在するという初期の溶解状態から、金属塩化物の水和物結晶が形成されやすい状態に遷移しているものと推察される。
(化1)
NaCl → Na+ + Cl-
MgSO4 → Mg2+ + SO4 2-
2Na+ + SO4 2- → Na2SO4・10H2O
Mg2+ + 2Cl- → MgCl2・6H2O
(第2の実施形態)
本願の第2の実施形態に係る金属塩化物製造方法を、図3(a)のフローチャートに従い説明する。
第2の実施形態は、図3(a)のフローチャートに示すように、上述した第1の実施形態と同じく、前記冷凍工程と、前記濃縮工程とを含み、さらに、前記冷凍工程で冷凍される前の苦汁にエタノールを添加する添加工程と、前記冷凍工程で得られた前記冷凍液からこのエタノールを除去する除去工程とを含むものである。
即ち、本実施形態では、図3(a)のフローチャートに示すように、原料となる苦汁にエタノールを添加する(S1−1:添加工程)。添加するエタノールの濃度は特に限定されないが、エタノール添加により塩化ナトリウムが形成されやすいという点から、好ましくは10vol%〜30vol%であり、例えば、20vol%とすることができる。
このようにして得られた原料に対して、前記冷凍工程に従って、冷凍して冷凍液を得る(S1:冷凍工程)。次に、この冷凍液に含まれるエタノールを除去(例えば、アスピレーターを用いた一般的な減圧蒸留装置でエタノールの除去を実施することができる。例えば、この減圧蒸留ではエタノールを含む冷凍液を暖め(例えば、50℃まで)、その後、減圧(例えば、225mmHgまで)することができる(その際には、図3(b)に示す減圧化沸点換算図表を参照することができる(出典:Science of Petroleum, Vol.II. p.1281 (1938)))。添加したエタノール量に相当するエタノールが蒸留できた時点において温度を室温まで戻し、アスピレーターによる減圧を止めて大気圧に戻す)する(S1−2:除去工程)。次に、前記冷凍工程に従って、この得られた冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された塩化マグネシウムを得る(S2:濃縮工程)。
また、図4のフローチャートに示すように、苦汁にエタノールを加えた沈殿物から塩化ナトリウムを取り出し、反応晶析後の沈殿物から硫酸ナトリウムを取り出すことが可能である。このように金属塩化物として例えば塩化マグネシウムを得る一連の流れの過程で、段階的に、塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムという他の有益な化合物も同時に得ることができるという副次的な効果も得られる。特に、硫酸ナトリウムは、別名で芒硝とも呼ばれている化合物であり、その無水和物はガラスや硫化ナトリウムの製造原料や乾燥剤として用いられており、有毒物質を全く含まないために、入浴剤、合成洗剤などへの用途がある。さらに、その十水和物は冷却剤や医薬品(下剤)としての用途もある。
このようにして得られる塩化マグネシウムは、さらに高純度であり且つ大量に且つ短時間で簡易に得られることが確認されている。
このように本願に係る金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)の製造方法が優れた効果を奏するメカニズムは、詳細には解明されていないが、エタノールが苦汁に添加されることによって、エタノールが、溶質の溶解度を減少させるような新たな溶媒として作用し、NaCl⇔Na++Cl-の電離平衡から、塩化ナトリウムの結晶化を促進する反応が進行されるものと推察される。
これによって、塩化ナトリウム結晶の形成が促進され、後続の冷凍工程によって、金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)の構成成分に該当しないナトリウムイオンが有意に除去された冷凍液が得られ、この冷凍液から高品質な塩化マグネシウムが得られやすい状況が形成されているものと推察される。
以上のように、前記冷凍工程で冷凍される前の苦汁にエタノールを添加する添加工程と、前記冷凍工程で得られた冷凍液からエタノールを除去する除去工程とを含むことから、エタノールの添加によって、貧溶媒添加効果により塩化ナトリウム(NaCl)が選択的に除去された状態が得られることとなり、さらに高純度な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)が形成され易くなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)を製造することができる。
(第3の実施形態)
本願の第3の実施形態に係る金属塩化物製造方法を、以下説明する。
第3の実施形態は、上述した第1の実施形態と同じく、前記冷凍工程と、前記濃縮工程とを含み、さらに、前記冷凍工程が、冷凍温度の時間に対する微分値が変曲点となる時点に基づいて、前記冷凍液を得るものである。
このように、前記冷凍工程が、冷凍温度の時間に対する微分値が変曲点となる時点に基づいて、前記冷凍液を得ることから、この冷凍液によって、高純度な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)が最適に形成され易い状態が得られることとなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)を製造することができる。
なお、本実施形態では、上述した第2の実施形態に対しても適用可能である。即ち、この冷凍工程で冷凍される前の苦汁にエタノールを添加する添加工程と、この冷凍工程で得られた冷凍液からこのエタノールを除去する除去工程とを含む場合においても、冷凍工程が、冷凍温度の時間に対する微分値が変曲点となる時点に基づいて、冷凍液を得ることによって、高純度な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)が最適に形成され易い状態が得られることとなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)を製造することができる。
(第4の実施形態)
本願の第4の実施形態に係る金属塩化物製造方法を以下説明する。
第4の実施形態は、上述した第1の実施形態と同じく、前記冷凍工程と、前記濃縮工程とを含み、さらに、前記冷凍工程が、前記冷凍液の外観が透明状態から白濁状態に遷移した時点に基づいて、前記冷凍液を得るものである。
このように、前記冷凍工程が、前記冷凍液の外観が透明状態から白濁状態に遷移した時点に基づいて、冷凍液を得ることから、冷凍液が、高純度な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)が形成され易い状態となったことが、視認によって容易に判断できることとなり、より効率よく、より低コストで高品質な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)を製造することができる。
なお、本実施形態では、上述した第2の実施形態に対しても適用可能である。即ち、この冷凍工程で冷凍される前の苦汁にエタノールを添加する添加工程と、この冷凍工程で得られた冷凍液からこのエタノールを除去する除去工程とを含む場合においても、この冷凍工程が、冷凍液の外観が透明状態から白濁状態に遷移した時点に基づいて、冷凍液を得ることから、冷凍液が、高純度な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)が形成され易い状態となったことが、視認によって容易に判断できることとなり、より効率よく、より低コストで高品質な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)を製造することができる。
また、本実施形態では、上述した第3の実施形態に対しても適用可能である。即ち、前記冷凍工程が、冷凍温度の時間に対する微分値が変曲点となる時点に基づいて、前記冷凍液を得る場合においても、この冷凍工程が、冷凍液の外観が透明状態から白濁状態に遷移した時点に基づいて、冷凍液を得ることから、冷凍液が、高純度な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)が形成され易い状態となったことが、微分値が変曲点となる時点且つ外観が透明状態から白濁状態に遷移した時点という二つの判断基準の組み合わせに基づいて、正確且つ容易に判断できることとなり、より効率よく、より低コストで高品質な金属塩化物(例えば、塩化マグネシウム)を製造することができる。
(第5の実施形態)
本願の第5の実施形態に係る金属塩化物製造方法を、図5〜図8と共に以下説明する。
第5の実施形態は、上述した第1の実施形態と同じく、前記冷凍工程と、前記濃縮工程とを含み、さらに、図5に示すように、前記冷凍工程で得られた冷凍液にカルシウム化合物の飽和溶液を添加し、当該添加により得られた溶液にエタノールを添加し、当該添加により得られた溶液を冷凍して、濃縮された金属塩化物である塩化カリウム及び当該残液としての第二の冷凍液を得る第二冷凍工程(S1−1)と、前記第二冷凍工程により得られた第二の冷凍液からエタノールを除去して、加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物であるカーナライト及び当該残液としての冷凍液を得る第二濃縮工程(S1−2)とを含み、 前記濃縮工程(S2)が、この第二濃縮工程(S1−2)で得られた前記冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物である塩化マグネシウムを得るものである。
(第二冷凍工程)
第二冷凍工程(S1−1)では、先ず、前記冷凍工程で得られた冷凍液にカルシウム化合物の飽和溶液を添加する。このカルシウム化合物としては、特に限定されないが、ハロゲン化カルシウム化合物を用いることが好ましく、より好ましくは、塩化カルシウムである。
次に、このカルシウム化合物の飽和溶液を添加することにより得られた溶液にエタノールを添加する。添加するエタノールの濃度は特に限定されないが、エタノール添加により塩化カリウムが形成されやすいという点から、好ましくは20vol%〜50vol%であり、例えば、20vol%とすることができる。このようにして得られた溶液を、前記冷凍工程と同様に冷凍して、濃縮された金属塩化物である塩化カリウム及び当該残液としての第二の冷凍液を得る。塩化カリウム及び第二の冷凍液は、時間効率性の観点から、濾過分離した後に、真空乾燥(例えば60℃)して分離回収して得ることも可能である。
(第二濃縮工程)
第二濃縮工程(S1−2)では、先ずは、この第二の冷凍液からエタノールを除去する。このエタノールの除去方法については、特に限定されないが、例えば、アスピレーターを用いた一般的な減圧蒸留装置(真空蒸留)で実施することができる。添加したエタノール量に相当するエタノールが蒸留できた時点において温度を室温まで戻し、アスピレーターによる減圧を止めて大気圧に戻し、加熱する。加熱温度は、特に限定されないが、50℃〜90℃が好ましく、例えば、85℃で加熱することができる。この後、冷却する。この冷却は、例えば、30℃とすることができ、放冷によって実施してもよい。この冷却によって、濃縮された金属塩化物であるカーナライト及び当該残液としての冷凍液を得る。カーナライト及び当該残液としての冷凍液は、時間効率性の観点から、濾過分離した後に、真空乾燥(例えば60℃)して分離回収して得ることも可能である。
なお、このカーナライトとは、塩化カリウム及びマグネシウムの水和物 (KCl・MgCl26H2O)から成るものであるが、この他の成分として、この水和物中の塩化カリウム(KCl)を構成する塩素元素(Cl)が臭素元素(Br)に置換された水和物(KBr・MgCl26H2O)が含まれたカーナライト複塩として存在していてもよい。純度を高める精製の観点からは、このカーナライト複塩を電解してHClを添加することによって、Br2が除去されて、塩化カリウム及びマグネシウムの水和物 (KCl・MgCl26H2O)の純度を高めることができる。
次に、第1の実施形態と同じ前記濃縮工程(S2)において、この第二濃縮工程(S1−2)で得られた前記冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物である塩化マグネシウムを得る。加熱温度は、特に限定されないが、50℃〜90℃が好ましく、例えば、85℃で加熱することができる。この後、冷却する。この冷却は、例えば、10℃とすることができ、放冷によって実施してもよい。この冷却によって、濃縮された金属塩化物である塩化マグネシウムが得られる。時間効率性の観点から、この冷却後に、濾過分離して塩化マグネシウムを得ることも可能である。
このように、第二冷凍工程(S1−2)において、濃縮された金属塩化物である塩化カリウムが得られる。このようにして得られる塩化カリウムは、高純度であり且つ大量に且つ短時間で簡易に得られることが確認されている。このように本願に係る金属塩化物(例えば、塩化カリウム)の製造方法が優れた効果を奏するメカニズムは、未だ詳細には解明されていないが、カルシウム化合物の飽和溶液の添加からエタノールの添加の一連の操作によって溶液中の硫酸イオンが効率よく除去され、カリウムイオンが塩化物イオンに結合しやすい状況が形成され、塩化カリウムの結晶化を促進する反応が進行されているものと推察される。
さらに、この第二冷凍工程(S1−2)において濃縮された金属塩化物である塩化カリウムが得られると共に、前記濃縮工程(S2)により濃縮された金属塩化物である塩化マグネシウムが得られることから、多段階に亘って、複数の金属塩化物が得られることとなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物を製造することができる。
なお、この第二濃縮工程(S1−2)により得られたカーナライトは、カリウム成分及び塩化物成分を含むことから、再利用の観点から、図6に示すように、この第二濃縮工程(S1−2)により得られたカーナライトを、前記冷凍工程(S1)で得られた冷凍液に還流することも可能である(還流工程:S1−3)。
このように、この還流工程(S1−3)により、前記第二濃縮工程により得られたカーナライトを、前記冷凍工程(S1)で得られた冷凍液に還流することから、カリウム成分及び塩化物成分を含有するカーナライトが前記冷凍液中に豊富に含まれることによって、前記濃縮工程(S2)によって得られる金属塩化物である塩化カリウムがさらに濃縮されることとなり、より効率よく、低コストで高品質な金属塩化物を製造することが可能となる。
さらに、上記手順に沿った操作の具体例を、図7及び図8に従って、説明する。先ず、原料としてRO処理された濃縮海水(d=1.07程度)から得た潅水(d=1.20程度)を、加熱・天日濃縮し、得られた溶液(A)から食塩を得る。得られた苦汁を冷凍(冷却)し、得られた溶液(B)について、乾燥させて硫酸ナトリウムを析出した後の残液を得る。さらに、飽和塩化カルシウム溶液を添加し、得られた溶液(C)について、乾燥させて硫酸ナトリウムを析出する。
得られた溶液に、エタノール溶液を添加し、得られた溶液(D)について、乾燥させてパウダー状(平均μmオーダー)の塩化ナトリウムを得る。得られた溶液を冷凍(冷却)し、得られた溶液(E)について、乾燥させて塩化カリウムを得る。得られた溶液から真空蒸留によってエタノールを除去し、得られた溶液(F)について、乾燥させて塩化ナトリウム及びカーナライトを得る。
なお、得られたカーナライトは、そのまま取り出して利用することも可能であるが、上記の溶液(D)に還流することによって、再利用され、より効率的に塩化カリウムを得ることも可能である。また、エタノール除去によって得られたエタノールは、上記のエタノール溶液に再利用することによって、エタノールの循環ルートが形成され、よりコストを抑制して効率的に溶液(D)を得ることが可能となる。
得られた溶液を85℃まで加熱濃縮して、得られた溶液(G)について、30℃まで冷却して塩化マグネシウムを得る。得られた溶液を85℃まで加熱濃縮して、得られた溶液(H)について、10℃まで冷却して塩化マグネシウムを得る。なお、残液に含まれる金属元素から得られるLiCOの製造も可能となる。このようにして、多段階で複数の金属塩化物が得られ、金属塩化物である塩化マグネシウム及び塩化カリウムは食品添加物や蓄電材等の幅広い用途がある。この他にも、上記製造工程によって副次的に生成される硫化ナトリウムは、蓄熱材や入浴剤としての用途があり、LiCOは、リチウム二次電池の原料としての用途もあり、幅広い用途の物質が同時に獲得できるという優れた効果を奏するものである。
本発明の特徴を更に明らかにするため、以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
海水から得られた苦汁100ml(比重d=1.22〜1.27)を用意した。この苦汁を冷蔵庫(三菱ノンフロン冷凍冷蔵庫(MR−A41N−W型、冷凍室:80リットル(2008年製)、冷蔵:強=−2℃、冷凍:弱=−15℃、冷凍:中=−18℃、冷凍:強=−22℃(外気温度26.5℃下))を用いて、冷凍して−18℃で4.5時間維持して冷凍液を得た(冷凍工程)。CA熱電対を用いて温度計測を行い、この冷凍液を50℃まで加熱した後、常温まで冷却し、この加熱と冷却を2時間繰り返し、濃縮された金属塩化物である塩化マグネシウムを得た(濃縮工程)。
得られた塩化マグネシウムについて、水平型X線構造解析装置(XRD7000、島津製作所製)で解析したXRD回折パターンの結果を図9(a)に示す。また、電子顕微鏡写真によるSEM像を図9(b)に示す。このXRD回折パターン及びSEM像により、確かに塩化マグネシウムが生成されたことが確認された。また、反応晶析及び低温濃縮の工程によって、得られたMgCl2の収率(残液からの収量は含まず)を計算したところ、27.5g/106.8g×100 = 25.7%という収率が得られたことが確認された。これは、海水:20000mlを原料にした濃縮海水:10000mlから得られる苦汁d=1.26):500mlからのMgCl2の理論収量が、3.264g/1000ml (65.3g/20000ml)であることに比べると、非常に高い収率が得られたことが確認された。
(実施例2)
また、もう1つのサンプルとして、上記と同様の手順に従い、さらに、冷凍液を得る前に20vol%エタノール溶液を添加し、その後、冷凍液を加熱する前に、冷凍液からこのエタノールを除去したサンプルを得た。このエタノールの除去には、アスピレーターを用いた一般的な減圧蒸留装置で実施した。減圧蒸留ではエタノールを含む冷凍液を50℃に暖め、225mmHgに減圧した(上記図3(b)に示す減圧化沸点換算図表を参照した)。添加したエタノール量に相当するエタノールが蒸留できた時点において温度を室温まで戻し、アスピレーターによる減圧を止めて大気圧に戻した。
得られた塩化マグネシウムについて、水平型X線構造解析装置(XRD7000、島津製作所製)で解析したXRD回折パターンの結果を図10(a)に示す。また、電子顕微鏡写真によるSEM像を図10(b)に示す。このXRD回折パターン及びSEM像により、確かに塩化マグネシウムが生成されたことが確認された。また、エタノール溶液添加、反応晶析及び低温濃縮の工程によって、得られたMgCl2の収率(残液からの収量は含まず)を計算したところ、30.08/106.8×100 = 28.2%という収率が得られたことが確認された。これは、海水:20000mlを原料にした濃縮海水:10000mlから得られる苦汁(d=1.26):500mlからのMgCl2の理論収量が、3.264g/1000ml (65.3g/20000ml)であることに比べると、非常に高い収率が得られたことが確認された。
また、上記の実施例1及び実施例2において回収した晶析物質の収量を図11に示す。ここで、比較例である従来の低温濃縮による晶析とは、原料の苦汁に対して、本実施例における反応晶析やエタノール溶液の添加を行わずに低温濃縮のみによって晶析したものを指す。
得られた結果から、本実施例により得られたMgCl2は、比較例よりも2倍を超す収量で得られたことが確認された。また、Na2SO4が、従来では殆ど晶析されなかったのに対して、本実施例では25gもの収量で得られたことからも、溶液中で、MgCl2を構成しない元素が、本実施例では積極的に晶析されて溶液から排出されたことも確認されえた。さらに、MgSO4が、従来よりも本実施例では約半分しか析出されなかったことから、溶液中で、MgCl2を構成する必須元素であるマグネシウム元素が、比較例では積極的に晶析されて溶液から排出されたのに対して、本実施例では積極的に晶析が抑制されたことも確認されえた。このように、本実施例は、比較例よりも、MgCl2を構成する必須元素であるマグネシウムイオン及び塩化物イオンの溶液中の濃度が高まる方向に作用していることから、MgCl2が析出されやすい状況が、種々の化合物との兼ね合いにおいて重畳的に形成されていることが確認された。
(実施例3)
上記の実施例1及び2の冷凍工程において、苦汁(d=1.25〜1.26)を原料として、冷凍温度の時間に対する変動を測定した。その時間のうち、MgCl2が生成され始めた時間(即ち、Na2SO4が生成され始めた時間)との相関関係を確認した結果を図12に示す。
図12に示すように、MgCl2が生成され始めた時間は、実施例1の晶析では258分、実施例2の晶析では210分であり、実施例2の晶析のほうが、実施例1の晶析よりも早く晶析が起きることが確認された。また、各々、冷凍温度の時間に対する変曲点となる時点であることが確認された。さらに、晶析が開始した時点では溶液は無色透明から白濁化したことが確認された。この白濁化が生じる一因は、詳細には解明されていないが、硫酸ナトリウム(芒硝)の水和物が溶解されることに伴って生じる現象と推察される。
さらに、図13に示すように、苦汁(d=1.26)を原料として、同様に、冷凍温度の時間に対する変動を測定した。MgCl2が生成され始めた時間は、実施例1の晶析では246分、実施例2の晶析では168分であり、実施例2の晶析のほうが、実施例1の晶析よりも早く晶析が起きることが確認された。また、各々、冷凍温度の時間に対する変曲点となる時点であることが確認された。さらに、晶析が開始した時点では溶液は無色透明から白濁化したことが確認された。
(実施例4)
上記の実施例1及び2の冷凍工程において、潅水(d=1.21〜1.22)を原料として、冷凍温度の時間に対する変動を測定した。その時間のうち、MgCl2が生成され始めた時間(即ち、Na2SO4が生成され始めた時間)との相関関係を確認した。
図14(a)に示すように、MgCl2が生成され始めた時間は、実施例1の晶析では406分、実施例2の晶析では152分であり、実施例2の晶析のほうが、実施例1の晶析よりも早く晶析が起きることが確認された。図14(b)では、晶析開始時間付近の時間帯をより拡大したものである。また、各々、冷凍温度の時間に対する変曲点となる時点であることが確認された。さらに、晶析が開始した時点では溶液は無色透明から白濁化したことが確認された。
さらに、図15に示すように、潅水(d=1.23)を原料として、同様に、冷凍温度の時間に対する変動を測定した。MgCl2が生成され始めた時間は、実施例1の晶析では225分、実施例2の晶析では195分であり、実施例2の晶析のほうが、実施例1の晶析よりも早く晶析が起きることが確認された。また、各々、冷凍温度の時間に対する変曲点となる時点であることが確認された。さらに、晶析が開始した時点では溶液は無色透明から白濁化したことが確認された。
(実施例5)
また、もう1つのサンプルとして、原料に加熱した苦汁(200ml:d=1.26)を用いて、図7及び図8に示した上記第5の実施形態と同様の手順に従い、上述の溶液(A)〜(H)について、水平型X線構造解析装置(XRD7000、島津製作所製)で解析したXRD回折パターンの結果を図16に示す。また、原料に天日で乾燥した苦汁を用いた場合について、飽和塩化カルシウム溶液を添加( 無水CaCl2 75g / 水100ml:20℃)後に、エタノール添加(50vol%)して得られた溶液を冷凍(冷却)して晶析した析出物(溶液(D))について、水平型X線構造解析装置(XRD7000、島津製作所製)で解析したXRD回折パターンの結果を図17(a)に示す。得られた結果から、塩化カリウムの生成が確認された。
さらに、原料に、天日で乾燥した苦汁(200ml:d=1.28)、天日で乾燥した苦汁(200ml:d=1.26)、加熱した苦汁(200ml:d=1.26)を用いて、上述の各溶液(A)〜(H)について、各金属塩化物の収量を測定した結果を図17(b)に示す。得られた結果から、溶液(E)において高い収量で塩化カリウムが得られ、さらに、溶液(H)において高い収量で塩化マグネシウムが得られたことが確認された。
(実施例6)
また、上記実施例5と同じ手順で、原料に加熱した苦汁を1000ml(d=1.25)にスケールアップして実施した。図7及び図8に示した上記第5の実施形態と同様の手順に従い、塩化カルシウム飽和溶液の添加では、200mlの塩化カルシウム飽和溶液を5分間添加し、エタノール添加では、500mlのエタノール溶液を30秒間添加し、上述の溶液(A)〜(H)について、水平型X線構造解析装置(XRD7000、島津製作所製)で解析したXRD回折パターンの結果を図18に示す。特に、溶液(E)及び溶液(G、H)のXRD回折パターンの結果を図19に示す。この結果から、溶液(E)から塩化カリウムが、溶液(G、H)から塩化マグネシウムが確認された。
また、各溶液(A)〜(H)について、各金属塩化物の収量を測定した結果を図20に示す。得られた結果から、スケールアップした場合でも、溶液(E)において15.29gという高い収量で塩化カリウムが得られ、さらに、溶液(H)において93.3gという高い収量で塩化マグネシウムが得られたことから、高い再現性を有する信頼性の高い製造方法であることが確認された。

Claims (8)

  1. アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含む金属塩化物を製造する金属塩化物製造方法であって、
    海水から得られる苦汁を冷凍して冷凍液を得る冷凍工程と、
    前記冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物を得る濃縮工程と、
    を含むことを特徴とする
    金属塩化物製造方法。
  2. 請求項1に記載の金属塩化物製造方法において、
    前記冷凍工程で得られた冷凍液にカルシウム化合物の飽和溶液を添加し、当該添加により得られた溶液にエタノールを添加し、当該添加により得られた溶液を冷凍して、濃縮された金属塩化物である塩化カリウム及び当該残液としての第二の冷凍液を得る第二冷凍工程と、
    前記第二冷凍工程により得られた第二の冷凍液からエタノールを除去して、加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物であるカーナライト及び当該残液としての冷凍液を得る第二濃縮工程とを含み、
    前記濃縮工程が、前記第二濃縮工程で得られた前記冷凍液を加熱して冷却し、濃縮された金属塩化物である塩化マグネシウムを得ることを特徴とする
    金属塩化物製造方法。
  3. 請求項2に記載の金属塩化物製造方法において、
    前記第二濃縮工程により得られたカーナライトを、前記冷凍工程で得られた冷凍液に還流する還流工程と
    を含むことを特徴とする
    金属塩化物製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の金属塩化物製造方法において、
    前記冷凍工程の冷凍温度が、0℃〜−25℃であることを特徴とする
    金属塩化物製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の金属塩化物製造方法において、
    前記冷凍工程の冷凍時間が、2時間〜12時間であることを特徴とする
    金属塩化物製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の金属塩化物製造方法において、
    前記冷凍工程で冷凍される前の前記苦汁にエタノールを添加する添加工程と、
    前記冷凍工程で得られた前記冷凍液からエタノールを除去する除去工程と
    を含むことを特徴とする
    金属塩化物製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の金属塩化物製造方法において、
    前記冷凍工程が、冷凍温度の時間に対する微分値が変曲点となる時点に基づいて、前記冷凍液を得ることを特徴とする
    金属塩化物製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の金属塩化物製造方法において、
    前記冷凍工程が、前記冷凍液の外観が透明状態から白濁状態に遷移した時点に基づいて、前記冷凍液を得ることを特徴とする
    金属塩化物製造方法。
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