JP2017105075A - 窒化粉体製造方法、及び窒化粉体製造装置 - Google Patents

窒化粉体製造方法、及び窒化粉体製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】窒素の含有率を十分に高めた窒化紛体を得ることができる窒化粉体製造方法を提供する。【解決手段】形成工程で原料粉体の薄層104を形成し、窒化工程において、酸素を減少させた窒素を含む雰囲気中で、形成工程により形成された薄層104に交流電圧を印加してプラズマを発生させることにより薄層104の原料粉体を窒化する。これにより、窒素の含有率を高めた窒化紛体を得ることが可能となり、例えばこの窒化紛体を用いて粉末床溶融結合技術で造形した造形物の硬度を高めることが可能となる。【選択図】図1

Description

本発明は、原料紛体を窒化して窒化粉体を製造する窒化粉体製造方法、及び窒化粉体製造装置に関する。
近年、原料粉体の薄層を形成し、形成された薄層の固形化領域にエネルギービームを照射して固形化した層を積層することにより造形物を造形する粉末床溶融結合技術の開発が進められている。粉末床溶融結合技術によって製造する造形物の硬度を高めるため、セラミックス粉末を分散させた光硬化性樹脂を三次元造形し、高温雰囲気で焼結させる方法も提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の方法では、樹脂をバインダー剤として用いており、バインダー剤を焼き飛ばすため、造形物の密度が85%程度になり、所望の硬度を得られないという問題がある。
また、造形物の硬度を高めるため、金属粉末を窒化処理しつつ三次元造形するものも提案されている(特許文献2参照)。特許文献2のものは、減圧された容器内に窒素ガスを供給しつつ電子ビームを用いて粉末床溶融結合を実行することにより、原料粉体の窒化処理を伴って薄層を固形化させている。
特開2005−67998号公報 特開2011−506761号公報
上記特許文献2の粉末床溶融結合技術では、電子ビームに照射される一瞬で窒化処理を行っているため、造形物における窒素の含有率を十分に高めることができていない。したがって、特許文献2の技術でも、窒化セラミックスのような高い硬度の造形物を得られないという問題がある。
そこで、本発明は、窒素の含有率を高めた窒化紛体を得ることが可能な窒化粉体製造方法、及び窒化粉体製造装置を提供することを目的としている。
本発明の窒化粉体製造方法は、原料粉体の薄層を形成する形成工程と、酸素を減少させた窒素を含む雰囲気中で、前記形成工程により形成された前記薄層に交流電圧を印加してプラズマを発生させることにより前記薄層の原料粉体を窒化する窒化工程と、を有する。
本発明の窒化粉体製造装置は、容器と、前記容器内に原料粉体の薄層を形成する形成手段と、窒素を含む物質を前記容器内に供給する供給手段と、前記形成手段により形成された前記薄層に交流電圧を印加する電源手段と、前記供給手段により前記容器内に生成された酸素を減少させた窒素を含む雰囲気中で前記電源手段により前記薄層に交流電圧を印加してプラズマを発生させるように、前記電源手段を制御する制御部と、を有する。
本発明によると、薄層に交流電圧を印加してプラズマを発生させ、プラズマ雰囲気によって原料粉体の窒化を進行させることができる。したがって、窒素の含有率を高めた窒化紛体を得ることができ、例えばこの窒化紛体を用いて粉末床溶融結合技術で造形した造形物の硬度を高めることができる。
実施の形態1の造形物製造装置の構成の説明図である。 造形容器の構成の説明図である。 造形物の製造プロセスのフローチャートである。 造形物製造装置における積層プロセスの説明図である。 プラズマ窒化処理のフローチャートである。 レーザービーム加熱成形処理のフローチャートである。 実施の形態3の造形物製造装置の構成の説明図である。
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<実施の形態1>
実施の形態1では、原料粉体の薄層をプラズマ窒化し、窒化された窒化紛体の薄層をレーザービームを用いて直ちに加熱溶融して固形化し、それを積層することで造形物301を製造する。
(造形物製造装置)
図1は実施の形態1の造形物製造装置の構成の説明図である。図2は造形容器の構成の説明図である。図1に示すように、造形物製造装置100は、粉末床溶融結合方式のいわゆる3Dプリンタである。容器101は、ステンレスで形成され、密閉可能である。容器101には、真空計208が接続されている。検知手段の一例である真空計208は、容器101内の圧力を検知する。
減圧手段の一例である排気機構103は、容器101内を減圧可能である。排気機構103は、主に酸素を減少させるため、容器101内を排気する。排気機構103は、ドライポンプとターボ分子ポンプを直列に接続して構成されたものであり、容器101の真空度を例えば1×10−4Paまで到達可能である。
また、排気機構103は、容器101との接続部に開口量を調整可能な開口調整弁を有する。制御部200は、後述のガス供給機構102によって容器101に気体を供給しつつ真空計208の出力に応じて開口調整弁を調整することで、容器101内を所望の雰囲気と真空度に制御することができる。
一方、供給手段の一例であるガス供給機構102は、窒素及び水素を含む物質である窒素ガスと水素ガスの混合ガスを容器101内に供給する。ガス供給機構102は、窒素ガスと水素ガスを任意の混合割合で容器101内に供給可能である。なお、ガス供給機構を2箇所に設け、窒素ガスと水素ガスとを別々に供給するようにしてもよい。
図2に示すように、粉体容器の一例である造形容器107は、造形室109の内側に積層基材112が昇降可能に配置されている。下降機構111は、薄層の厚みに対応させた任意のピッチで積層基材112を段階的に下降させることができる。造形室109には、薄層104を窒化させた窒化薄層104’が積層される。
また、造形室109の壁には、ヒータの一例である抵抗加熱ヒータ137が埋め込まれて設けられており、薄層104を加熱可能となっている。さらに、積層基材112の上面には、温度センサ209が設けられている。制御部200は、温度センサ209の出力に基づいて抵抗加熱ヒータ137に通電する電流をON/OFF制御することで、薄層104を加熱して一定温度に保持する。
一方、形成手段の一例である薄層形成機構105は、容器101内に配置された造形容器107に原料粉体の薄層104を形成する。薄層形成機構105は、移動部133がガイド132に案内されて造形容器107の上面に沿って矢印R105方向に移動して造形室109に薄層104を形成する。原料粉体135は、原料室130に蓄積され、上昇機構114を作動させて底板134を上昇させることで、造形容器107の上面よりも高い位置へ盛り上げられる。薄層形成機構105は、金属ローラ131を造形容器107の上面に対してカウンタ方向に回転させつつ造形容器107の上面の原料粉体をすり切って、造形室109の上面に一定厚さで組織の締まった原料粉体135の薄層104を形成する。また、薄層形成機構105は、造形室109に形成した薄層104を窒化させた窒化薄層104’上に、新たな原料粉体の薄層104を形成して積層する。造形室109内に積層された窒化薄層104’及び薄層104は、接地電位に接続された容器101から電気的に分離されている。
(造形容器)
図1に示すように、造形容器107は、容器101から電気的に絶縁されている。造形容器107及び積層基材112は、表面でのプラズマ発生を回避するために、絶縁材料で形成されている。このため、造形容器107の薄層104に接触する面は絶縁材料である。原料粉体の薄層104に電源113からの電圧を供給する電極108(電源手段)は、表面でのプラズマ発生を回避するために、絶縁材料のカバー108aで覆われている。
実施の形態1では、絶縁材料の造形容器107と電極108とを用いて原料粉体の薄層104に交流電圧を印加する。このような構成は、薄層104のプラズマ窒化に関して効率的である。即ち、原料粉体は、金属であっても表面が不導体膜で覆われて導電性に乏しい。このため、従来は、原料粉体に近接してコイルや平板電極等の部材を配置することがプラズマ発生には不可欠と考えられていた。しかし、造形物製造装置100では、レーザービームを照射するための光路を確保するため、薄層104の上方に平板電極等の部材を配置することが難しい。加えて、水平方向に移動する薄層形成機構105との干渉を回避するため、薄層104の上方に平板電極等の部材を設けると、薄層104を1層形成する毎に物理的に退避させる必要がある。そして、1個の造形物301の造形において、薄層形成は数百回から数千回ほども繰り返す必要があるため、部材の物理的な退避は、非効率的である。そこで、実施の形態1では、薄層104を保持する造形容器107を容器101から電気的に絶縁した状態で、薄層104に接触する電極108に交流電圧を印加している。このような構成によって、平板電極等の部材を必要とすることなく、薄層104の表面全体に窒素を含む均一なプラズマを形成して、原料粉体の窒化を均一かつ速やかに進行させることができる。
(プラズマ窒化処理)
図1及び図2に示すように、造形物製造装置100は、造形容器107に形成された原料粉体の薄層104に交流電圧を印加して薄層104の隣接空間にプラズマを発生させる。造形物製造装置100は、最初の層として積層基材112上に形成された薄層104、又は2層目以降の薄層として窒化薄層104’上に積層された薄層104を、窒素イオンを含むプラズマ中に保持して窒化処理する。
電源手段の一例である電源113は、薄層104に交流電圧を印加する。電極108は、造形容器107内で薄層104又は窒化薄層104’に接触する。電源113は、電極108を通じて原料粉体の薄層104に交流電圧を印加する。電源113は、直流電圧を重畳した交流電圧を出力する。直流電圧は、−500V〜+500Vの範囲の中で複数段階に設定可能である。交流電圧は、0〜2000Vの振幅範囲、及び10kHz〜500kHzの周波数範囲の中でそれぞれ複数段階に設定可能である。
制御部200は、容器101内に窒素ガスを供給しつつ真空度を1Pa以上20kPa未満に維持した状態で、電源113を作動させる。これにより、薄層104の隣接空間に集中してプラズマが発生して、薄層104の原料粉体が効率的にプラズマに晒される。このとき、制御部200は、図2に示すように抵抗加熱ヒータ137に通電して、積層基材112上の原料粉体の薄層104を加熱することで、窒化処理の効率を高めている。なお、この際、抵抗加熱ヒータ137の加熱の代わりに、或いは抵抗加熱ヒータ137の加熱と同時に、詳しくは後述するレーザービームの出力を弱めて薄層104を加熱するようにしてもよい。或いはレーザービームのビームスポットの面積を広範囲に広げて照射することにより、薄層104を加熱するようにしてもよい。
(レーザービーム加熱成形処理)
図1に示すように、ビーム照射手段の一例である走査加熱機構106は、薄層104を窒化させた窒化薄層104’にエネルギービームの一例であるレーザービームを照射する。走査加熱機構106は、光源110で発生させたレーザービームをガルバノミラー106mで走査することにより、窒化薄層104’における入力データに応じた固形化領域をレーザービームのスポットで加熱する。光源110は、YAGレーザー発振器であって、出力500Wである。
走査加熱機構106は、造形容器107の造形室109の上面の窒化薄層104’を、レーザービームによって加熱し、ほぼ瞬時に溶融して下層の固体組織と一体に固形化させる。これにより、造形室109の上面の窒化薄層104’の所望の領域を溶融して固形化することができる。このとき、レーザービーム加熱成形処理中も上述したプラズマ窒化処理を継続させて窒化薄層104’の温度を高く保つことが望ましく、即ち、抵抗加熱ヒータ137に通電して、窒化薄層104’の温度を高く保つことが望ましい。窒化薄層104’の温度を高く保つことで、レーザービーム加熱成形処理の効率が高まって、低いレーザービーム出力でも高速度の成形が可能となる。これにより、窒化薄層104’の溶融状態のばらつきを減らして、均一な組織の造形物301を製造することが可能となる。
なお、このレーザービーム加熱形成処理にあっても、レーザービームの加熱によって窒化薄層104’の窒化紛体における窒化処理が進ませることができる。そのため、上述のプラズマ窒化処理で原料紛体を窒化処理する際に、必ずしも原料紛体の窒化を完了しておく必要はない。即ち、プラズマ窒化処理で概ね窒化処理が進んだ段階で、レーザービーム加熱形成処理に移行し、最終的に紛体を溶融することで窒化が完了するようにしてもよい。これにより、窒化処理の時間を短縮することができ、造形物301の製造時間を短縮することができる。
(造形物の製造プロセス)
図3は造形物の製造プロセスのフローチャートで、図4は造形物製造装置における積層プロセスの説明図である。図1に示すように、制御部200は、CPU205、RAM206、及びROM207を有する。ROM207から呼び出したプロセスの制御プログラムをRAM206に保持することで、CPU205は、造形物製造のプロセスコントローラとして機能する。ユーザーは、操作部201を通じてプロセス開始を指令する。
図3に示すように、制御部200は、プロセス開始を指令されると、排気機構103を作動させて容器101内を排気する(S11)。そして、容器101内の圧力が1×10−2Paに達すると、ガス供給機構102による気体供給を開始して容器101内の圧力を大気圧未満のプロセス圧力に調整する(S12)。図1に示すように、このステップS11及びS12で構成される雰囲気生成工程は、容器101内を第1の圧力に減圧した後に、容器101内に窒素を含む物質を供給して、容器101内に第1の圧力よりも高い大気圧未満の第2の圧力の雰囲気を生成する。
図3に示すように、制御部200は、容器101内の圧力が第2の圧力(例えば10kPa)に達すると、薄層形成機構105を作動させて原料粉体の薄層104を形成する(S13)。図4の(a)に示すように、下降工程では、下降機構111を作動させて積層基材112を下降させることにより、造形容器107の内側に薄層104の形成余地を形成する。図4の(b)に示すように、このステップS13で構成される形成工程では、薄層形成機構105を作動させて、積層基材112に原料粉体の薄層104を形成する。
図3に示すように、制御部200は、電源113を作動させてプラズマ発生を開始し(S14)薄層104のプラズマ窒化処理PNを設定時間が経過するまで実行する(S15のNo)。図4の(c)に示すように、このステップS14及びS15で構成される窒化工程では、ガス供給機構102及び電源113を作動させて、積層基材112上の原料粉体の薄層104をプラズマ窒化する。窒化工程は、酸素を減少させた窒素及び水素を含む雰囲気中で、薄層104に電源113により交流電圧を印加してプラズマを発生させることにより、薄層104の原料粉体を窒化する。窒化工程は、容器101内に生成された大気圧未満(好ましくは1Pa以上20kPa未満)の圧力の雰囲気中で実行される。窒化工程は、容器101から電気的に絶縁して容器101内に配置された造形容器107に形成工程により薄層104を形成して実行される。窒化工程は、薄層104を抵抗加熱ヒータ137で加熱して薄層104の温度を一定に保った状態で実行される。
図3に示すように、制御部200は、薄層104のプラズマ窒化処理PNが終了すると(S15のYes)、走査加熱機構106及び光源110を作動させて、窒化薄層104’のレーザービーム加熱成形処理を実行する(S16)。図4の(d)に示すように、このステップS16で構成されるビーム成形工程では、走査加熱機構106及び光源110を作動させて、積層基材112上の窒化薄層104’を溶融して、固形化する。ビーム成形工程は、窒化薄層104’の固形化領域にエネルギービームを照射して固形化する。ビーム成形工程は、酸素を減少させた窒素及び水素を含む雰囲気中で、窒化薄層104’に交流電圧を印加してプラズマを発生させつつ実行される。
図3に示すように、制御部200は、窒化薄層104’の1層分のレーザービーム加熱成形処理が終了すると(S16)、電源113を停止させて窒化薄層104’におけるプラズマ発生も停止する(S17)。制御部200は、造形物301の成形に必要な積層回数に達するまで(S18のNo)、薄層形成(S13)、プラズマ窒化処理(S14、S15)、レーザービーム加熱成形処理(S16)、プラズマ発生停止(S17)を繰り返す。図4の(e)に示すように、2回目の下降工程では、下降機構111を作動させて積層基材112を下降させることにより、固形化された窒化薄層104’及び固形化されていない窒化薄層104’上に新たな原料粉体の薄層104の形成余地を形成する。図4の(f)に示すように、2回目の形成工程では、薄層形成機構105を作動させて原料粉体の薄層104を形成する。造形容器107の底面上に形成工程により形成した薄層104を窒化工程により窒化させた窒化薄層104’上に薄層104を形成する。
図3に示すように、制御部200は、造形物301の成形に必要な積層回数に達すると(S18のYes)、気体供給を停止し(S19)、容器101内に外気を供給する(S20)。そして、表示部202を通じて成型品の取り出しを許可する。
以上説明したように、造形物製造装置100は、薄層形成とプラズマ窒化処理とレーザービーム加熱成形処理とを繰り返すことにより、窒化薄層104’の薄膜層が積層された三次元の造形物301を造形する。
(各種材料の造形物)
以上説明した造形物製造装置100を使用して、以下の実施例1〜3のように原料粉体の材料とプラズマ窒化処理条件とを異ならせて造形物301を製造し、成形された造形物301の物性等を試験した。
(実施例1)
実施例1では、以下の条件で、ステンレス粒子のプラズマ窒化処理/レーザービーム加熱成形処理を行った。
[プラズマ窒化処理の条件]
容器101内の圧力:13.3kPa
供給気体:ガス混合比1:1の窒素ガスと水素ガスの混合気体
原料粉体:水アトマイズ法による粒径7μmのステンレス粒子(SUS613)
薄層104の層厚:20μm
電圧条件:交流電圧1kV、周波数100kHz
処理時間:3分
[レーザービーム加熱成形処理の条件]
溶融領域:薄層104上の幅及び奥行25mmの正方形領域
積層回数:2000回
造形物301の高さ:40mm
実施例1において得られた造形物301の窒素濃度をXPSを用いて分析した結果、12%(原子数比率)であった。また、造形物301の密度をアルキメデス法を用いて計測した結果、99.9%であった。さらに、造形物301の硬度をビッカース硬度計を用いて計測した結果、HV2200であった。これにより、通常SUS613材料の硬度がHV200〜400であるのに対して、実施例1では非常に高い剛性が得られることが確認された。
(実施例2)
実施例2では、以下の条件で、チタン粒子のプラズマ窒化処理/レーザービーム加熱成形処理を行った。
[プラズマ窒化処理の条件]
容器101内の圧力:13.3kPa
供給気体:ガス混合比1:1の窒素ガスと水素ガスの混合気体
原料粉体:水アトマイズ法による粒径20μmのチタン粒子(Ti)
薄層104の層厚:40μm
電圧条件:交流電圧20kV、周波数100kHz
処理時間:10分
[レーザービーム加熱成形処理の条件]
溶融領域:薄層104上の幅及び奥行25mmの正方形領域
積層回数:100回
積層高さ:4mm
実施例2では、原料粉体の粒子径が大きいため、実施例1に比較して表面を通じたプラズマ窒化処理に時間がかかる。このため、抵抗加熱ヒータ137を用いて加熱を行い、プラズマ窒化処理/レーザービーム加熱成形処理を通じて薄層104および造形物301の温度を500℃に維持した。薄層104および造形物301を高温に保つことで、窒素との反応速度を向上させ、プラズマ窒化処理速度を高めることができる。また、実施例2では、レーザービーム加熱成形の間も窒化薄層104’に交流電圧を印加し続けて、プラズマ発生を継続した。これにより、薄層104だけでなく造形物301に対しても窒素イオンをドープし続けることが可能となる。
実施例2において得られた造形物301の窒素濃度をXPSを用いて分析した結果、42%(原子数比率)であった。また、三次元の造形物301の密度をアルキメデス法を用いて計測した結果、99.5%であった。さらに、造形物301の硬度をビッカース硬度計を用いて計測した結果、HV2700であった。これにより、通常の粉体焼結によって得られたセラミック材料であるTiNと同等以上の高剛性が得られることが確認された。
(実施例3)
実施例3では、以下の条件で、タングステンカーバイド粉体とコバルト粉体の混合体のプラズマ窒化処理/レーザービーム加熱成形を行った。
[プラズマ窒化処理の条件]
容器101内の圧力:13.3kPa
供給気体:ガス混合比1:5の窒素ガスと水素ガスの混合気体
原料粉体:ガスアトマイズ法による粒径5μmのタングステンカーバイド粉体に、水アトマイズ法による粒径20μmのコバルト粉体を5%混合した混合粉体
薄層104の層厚:40μm
電圧条件:交流電圧20kV、周波数100kHz
処理時間:10分
[レーザービーム加熱成形処理の条件]
溶融領域:薄層104上の幅及び奥行25mmの正方形領域
積層回数:100回
積層高さ:4mm
実施例3では、原料粉体が高融点材料であるため、実施例1に比較して表面を通じたプラズマ窒化処理に時間がかかる。このため、抵抗加熱ヒータ137を用いて加熱を行い、プラズマ窒化処理/レーザービーム加熱成形処理を通じて薄層104および造形物301の温度を600℃に維持した。補助加熱は、薄層104および造形物301を高温に保つことで、窒素との反応速度をさらに向上させ、プラズマ窒化処理速度を高めることができる。また、実施例3では、レーザービーム加熱成形処理の間も窒化薄層104’に交流電圧を印加し続けて、プラズマ発生を継続した。これにより、薄層104だけでなく造形物301に対しても窒素イオンをドープし続けることが可能となる。
実施例3において得られた造形物301の窒素濃度をXPSを用いて分析した結果、11%(原子数比率)であった。また、造形物301の密度をアルキメデス法を用いて計測した結果、99.2%であった。さらに、造形物301の硬度をビッカース硬度計を用いて計測した結果、HV3500であった。これにより、通常の粉体焼結によって得られる、コバルトをバインダーとしたタングステンカーバイドに対して、同等以上の高剛性が得られることが確認された。
(実施の形態1の効果)
実施の形態1では、原料粉体の薄層104を形成して薄層104のままプラズマ窒化処理する。このため、プラズマ発生時間を引き延ばすことで窒化薄層104’の窒素濃度を所望のレベルに高めることができる。プラズマ発生時間を調整することで窒化薄層104’の窒素濃度を精密に制御することができる。
実施の形態1では、酸素を減少させた窒素を含む雰囲気中で、形成工程により形成された薄層104に交流電圧を印加してプラズマを発生させることにより薄層104の原料粉体を窒化する。このため、酸素によって原料粉体が酸化して不動態膜を形成する反応を回避して、原料粉体に対する窒素の浸透速度を高めることができる。
実施の形態1では、酸素を減少させた窒素及び水素を含む雰囲気中で、形成工程により形成された薄層104に交流電圧を印加してプラズマを発生させることにより薄層104の原料粉体を窒化する。このため、水素によって原料粉体の酸化膜を還元して不動態膜を解消する反応を促進して、原料粉体に対する窒素の浸透速度を高めることができる。
実施の形態1では、容器101内に生成された大気圧未満の雰囲気中で実行される。このため、大気圧以上の雰囲気でプラズマを発生させる場合に比較して、プラズマ状態を安定に保つことができる。
実施の形態1では、容器101内に生成された1Pa以上20kPa未満の圧力の雰囲気中で実行される。このため、これよりも低い真空度でプラズマを発生させた場合に比較して、原料粉体に高濃度に窒素を含有させることができる。
実施の形態1では、容器101内を第1の圧力に減圧した後に、容器101内に窒素を含む物質を供給して第1の圧力よりも高い大気圧未満の第2の圧力の雰囲気を生成する。このため、プラズマを発生させる雰囲気から酸素を高度に減少させることができる。原料粉体に含有される酸素や水分による雰囲気の汚染を回避できる。
実施の形態1では、容器101から電気的に絶縁された造形容器107に薄層104を形成してプラズマを発生させる。このため、原料粉体に交流電圧を印加した際の電流漏れが少なく、薄層104の表面にプラズマを集中させて効率的に窒化を進行させることができる。
実施の形態1では、薄層104をヒータで加熱して薄層104の温度を一定に保った状態で実行される。このため、加熱により原料粉体の窒化速度が高まることに加えて、積層される第1層から最終層まで原料粉体の窒化状態を均一に保つことができる。
実施の形態1では、原料粉体が、水アトマイズ法により形成された金属粒子である。このため、ガスアトマイズ法により形成された金属粒子を使用する場合よりも原料コストが削減される。一般的に水アトマイズ法により形成された金属粒子は表面が厚く不動態膜に覆われている。実施の形態1では、不動態膜を除いて窒素を効率的に含有させることができる。
実施の形態1では、造形容器107の底面上に形成した薄層104を窒化させた窒化薄層104’上に次の薄層104を積層する。このため、狭い床面積の容器101でも、小さな平面積の造形容器107でも、大量の窒化された原料粉体を製造することができる。
実施の形態1では、窒化薄層104’の固形化領域にレーザービームLBを照射して固形化する。そして、レーザービームであれば、高真空度ではなくても減衰や散乱は生じない。このため、1Pa以上20kPa未満の低い真空度でも電子ビームのように散乱されることなく窒化薄層104’を効率的に加熱できる。また、窒化薄層104’を形成して、外気に晒すことなく、直ちにレーザービーム加熱成形処理を開始することができる。
実施の形態1では、レーザービームLBの照射中も、1Pa以上20kPa未満の雰囲気が保たれる。このため、容器101内の気体分子の自由工程が短くなって、レーザービームLBの照射窓(106e:図1)への原料粉体成分の蒸着が抑制される。
実施の形態1では、レーザービームLBの照射中も、酸素を減少させた窒素及び水素を含む雰囲気中で、窒化薄層104’に交流電圧を印加してプラズマを発生させている。このため、レーザービームLBの加熱によって失われる窒化薄層104’の窒素が補われる。
実施の形態1では、絶縁材料の造形容器107に保持された薄層104に交流電圧を印加する。このため、造形容器107にプラズマを発生させることなく、薄層104の上面にプラズマを集中させることができる。
実施の形態1では、電極108が造形容器107内で薄層104又は窒化薄層104’に接触して交流電圧を印加する。このとき、薄層104自体が放電電極として振舞うため、他に平板電極等の部材が不要である。
実施の形態1では、薄層104のみに交流電圧を印加して薄層104のみにプラズマを発生させることができる。このため、薄層104の全面に対してプラズマ中の窒素イオンを効率良くドープして、高速かつ高濃度なプラズマ窒化処理が可能となる。
(造形物の窒素濃度)
実施の形態1では、いわゆるゾーンメルト法によって単結晶を成長させた場合と同様に、下層の結晶核に連続して上層の結晶がそれぞれ成長することを繰り返して造形物301が製造される。このため、造形物301は、原料粉体の薄層104が窒化された窒化薄層104’をレーザービームLBにより溶融して固形化させた第1層側の面から最終層側の面に向かって積層方向に結晶が並列に成長した結晶組織を有する。そして、造形物301は、原子数比で10%以上の窒素を含み、また、造形物301の表面だけでなく内部まで均一に窒化されている。
ところで、実施の形態1では、造形物301の窒素濃度が10%(原子数比率)以上となる。このような高濃度まで金属の原料粉体に窒素を含有させる技術は従来存在しなかった。窒素濃度が高い理由としては、プラズマ窒化処理により、原料粉体に対し、窒素イオンを高能率にドープできることが挙げられる。また、窒素濃度が高い理由としては、容器101内が高真空度ではないため、窒化反応に十分な窒素元素を確保できることが挙げられる。また、例えば造形物301を製造してから窒化処理した場合は、造形物の内部まで窒素が浸透しないため、造形物301の表面だけが窒化処理され、内部まで均一に窒化されない。さらに、薄層を窒化したとしても、薄層の窒化が不十分であると、薄層の表面だけが窒化され、薄層の内部まで窒化されないため、造形物301の積層方向に不均一な窒素濃度の分布が形成される。これに対して、実施の形態1では、プラズマ雰囲気で薄層104を窒化することで、薄層の表面だけでなく薄層内部まで窒化でき、造形物301の内部まで均一に窒素濃度を高めることができる。
(造形物の密度)
上述したように、粉末床積層技術において樹脂をバインダー剤として三次元の造形物を造形した後、バインダー剤を加熱燃焼させつつ原料粉体を焼結させてセラミックスのような硬い材料の三次元形状を造形する積層後焼結結合技術が存在する。しかし、積層後焼結結合技術では、焼結結合のため、組織に多くの空隙を含み、得られる三次元の造形物の密度は高くても85%程度である。
これに対して、酸素を含む大気中の雰囲気で行われる粉末床溶融結合技術では、鉄合金やチタン合金などの金属材料の原料粉体の薄層をレーザービーム加熱成形処理して積層することにより、密度が99%以上の三次元の造形物の緻密な部品が得られる。
特に、実施の形態1の各実施例では、組織に空隙がほとんど存在しない密度が99.5%以上の緻密な部品を得られる。実施の形態1では、三次元の造形物301の密度が、従来の金属に対する粉末床溶融結合法と同様に99%以上となるとともに、従来の製法である粉体焼結によって製造された窒化セラミック部品と同等の高剛性が得られる。
<実施の形態2>
実施の形態2では、窒化紛体製造装置においてプラズマ窒化処理された原料粉体を使用して、窒化紛体製造装置とは別の造形物製造装置においてレーザービーム加熱成形処理を行うことにより造形物301を造形する。
(窒化紛体製造装置)
図5はプラズマ窒化処理のフローチャートである。実施の形態2では、図1の造形物製造装置100を窒化紛体製造装置として用い、光源110及び走査加熱機構106をプラズマ窒化処理における加熱手段として用いる。図5に示すように、ユーザーが操作部201を通じてプラズマ窒化処理の開始を指令すると、制御部200は、排気機構103を作動させて容器101内を排気する(S31)。制御部200は、容器101内が所定の真空度(1×10−2Pa)に達するとガス供給機構102を作動させて気体供給を開始する(S32)。制御部200は、容器101内の圧力がプロセス開始圧力に達すると、薄層形成機構105を作動させて原料粉体の薄層104を形成する(S33)。そして、制御部200は、電源113を作動させてプラズマ発生を開始し(S34)、薄層104のプラズマ窒化処理PNを設定時間が経過するまで実行する(S35のNo)。このとき、光源110から実施の形態1よりも出力を弱めて発生させたレーザービームLBを、走査加熱機構106により薄層104の表面全体に均一に走査してプラズマ窒化処理における薄層104の加熱に寄与させている。
制御部200は、薄層104のプラズマ窒化処理PNが終了すると(S35のYes)、電源113を停止させて窒化薄層104’におけるプラズマ発生を停止する(S36)。そして、制御部200は、積層基材112の下降回数が限界値に達して造形容器107が満杯になるまで(S37のNo)、薄層形成(S33)、プラズマ窒化(S34、S35)、プラズマ発生停止(S36)を繰り返す。その後、制御部200は、積層基材112の下降回数が限界値に達すると(S37のYes)、気体供給を停止し(S38)、容器101内に外気を供給する(S39)。そして、表示部202を通じて窒化された原料粉体の取り出しを許可する。
以上説明したように、造形物製造装置100は、薄層形成とプラズマ窒化処理とを繰り返すことにより、造形容器107内に窒化薄層104’を積層して、レーザービーム加熱成形処理がされていない窒化された原料粉体を製造する。そして、レーザービームLBを用いてプラズマ窒化処理における薄層104の加熱を行うことで、原料粉体の窒化速度を高めている。
(レーザービーム加熱成形装置)
図6はレーザービーム加熱成形処理のフローチャートである。実施の形態2では、図1の造形物製造装置100をレーザービーム加熱成形装置として用いる。ユーザーは、薄層形成機構105に実施の形態1のような未窒化の原料粉体の代わりに、図5のプラズマ窒化処理により製造された窒化された原料粉末を充填した状態で、操作部201を通じてレーザービーム加熱成形処理の開始を指令する。
図6に示すように、制御部200は、レーザービーム加熱成形処理の開始が指令されると、排気機構103を作動させて容器101内を排気する(S41)。制御部200は、容器101内が所定の真空度(1×10−2Pa)に達するとガス供給機構102を作動させて気体供給を開始する(S42)。制御部200は、容器101内の圧力がプロセス開始圧力に達すると、薄層形成機構105を作動させて造形容器107に窒化薄層104’を直接形成する(S43)。そして、制御部200は、電源113を作動させてプラズマ発生を開始し(S44)、薄層104のプラズマエッチング処理PEを設定時間が経過するまで実行する(S45のNo)。
制御部200は、薄層104のプラズマエッチング処理PEが終了すると(S45のYes)、走査加熱機構106及び光源110を作動させて、窒化薄層104’のレーザービーム加熱成形処理を実行する(S46)。制御部200は、窒化薄層104’の1層分のレーザービーム加熱成形処理が終了すると(S46)、電源113を停止させて窒化薄層104’におけるプラズマ発生も停止する(S47)。
制御部200は、造形物301の成形に必要な積層回数に達するまで(S48のNo)、薄層形成(S43)、プラズマエッチング(S44、S45)、レーザービーム加熱成形(S46)、プラズマ発生停止(S47)を繰り返す。制御部200は、造形物301の成形に必要な積層回数に達すると(S48のYes)、気体供給を停止し(S49)、容器101内に外気を供給する(S50)。そして、表示部202を通じて成型品の取り出しを許可する。
以上説明したように、造形物製造装置100は、薄層形成とプラズマエッチング処理とレーザービーム加熱成形処理とを繰り返すことにより、窒化薄層104’の薄膜層が積層された三次元の造形物301を造形する。
<実施の形態3>
実施の形態1ではレーザービーム加熱成形処理により窒化薄層を溶融して固形化した。これに対して実施の形態3では電子ビーム加熱成形処理により窒化薄層を溶融して固形化する。
(造形物製造装置)
図7は実施の形態3の造形物製造装置の構成の説明図である。図7に示すように、実施の形態2の造形物製造装置は、窒化薄層の加熱成形処理においてレーザービームに替えて電子ビームを使用する以外は実施の形態1の造形物製造装置と同様に構成され、同様にプラズマ窒化処理/加熱成形処理のプロセスを実行する。したがって、図7中、実施の形態1と共通する構成には図1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
造形物製造装置300は、粉末床溶融結合方式のいわゆる3Dプリンタである。排気機構103は、容器101内を排気する。ガス供給機構102は、容器101内に気体を供給する。なお、実施の形態1と同様に、造形物製造装置300を、原料紛体を窒化して窒化紛体を製造するだけの窒化紛体製造装置として用いることもできる。
(レーザービーム加熱溶融機構)
電子ビーム加熱装置306は、電子ビームを発生して走査することにより、薄層104における入力データに応じた固形化領域を電子ビームのスポットで加熱する。電子ビーム制御部310は、電子ビーム加熱装置306における電子ビームの発生と走査とを制御する制御装置である。
電子ビーム加熱装置306は、造形容器107の上面の薄層104を、電子ビームによって加熱し、ほぼ瞬時に溶融して下層の固体組織と一体に固形化させる。これにより、造形容器107の上面の原料粉体の窒化薄層104’の所望の固形化領域を溶融して固形化することができる。このとき、図2に示すように、抵抗加熱ヒータ137に通電して、窒化薄層104’の温度を高く保つことが望ましい。窒化薄層104’を加熱することで、電子ビーム加熱溶融の効率が高まって、低い電子ビーム出力でも高速度の成形が可能となる。窒化薄層104’の溶融のばらつきを減らして均一な組織の造形物301を製造することが可能となる。
(電子ビーム加熱成形処理における真空度)
実施の形態3の造形物製造装置300は、容器101内の気体分子によって電子ビームが散乱されるため、電子ビーム加熱成形処理中は、容器101内の真空度を10−1Pa以下にする必要がある。そこで、実施の形態3の造形物製造装置300では、窒素ガスと水素ガスの混合気体を供給して真空度を100Paに保ってプラズマエッチング処理を行う。その後、混合気体の供給を停止し、真空度を10−1Paに回復させた状態で電子ビーム加熱成形処理を実行する。
<比較例>
比較例の造形物製造装置は、実施の形態3の造形物製造装置を用いて、プラズマ窒化処理を行うことなく、原料粉体の電子ビーム溶融積層を実行する。したがって、図7を参照して説明する。図7に示すように、比較例3では、金属材料の粉末床溶融結合を行っている最中に、電子ビームを照射した材料と窒素を含む反応ガスとを接触させることで、金属の窒化を行いつつ積層する。容器101の内部は、ガス供給機構102と排気機構103とによって所望の真空度およびガス混合比に制御される。薄層形成機構105は、容器101の内部で原料粉体の薄層104を形成する。電子ビーム加熱装置306は、薄層104を電子ビーム溶融積層させる。
比較例では、電子ビームを薄層104に照射することで原料粉体の溶融積層を行うが、その際に電子ビームが照射されて加熱又は溶融された原料の金属材料と容器101内の窒素を含む反応ガスとを反応させることで、造形物の窒化処理が行われる。
比較例では、金属の一部を窒化して硬化させることは可能であるが、TNやAN、SNなどの窒化セラミックスと同等の高剛性を有する三次元の造形物は得られていない。比較例において高剛性を有する造形物が得られない原因として、以下の2点が考えられる。原因の一つ目として、比較例3では、溶融積層処理中における電子ビームの照射径は数10μm〜数100μmと非常に小さく、溶融のための照射時間も一ヵ所に数10msec〜数秒だけである。このような局所的かつ短時間において、金属粒子を十分に窒化することは現実的ではない。
原因の二つ目として、比較例では、電子ビームの平均自由工程を担保するために容器101内を高真空度に維持する必要がある。このため、窒化処理を行うために容器101内を高濃度のガス分子の環境にすることができない。例えば、電子ビームを積層基材112上の数cmの二次元領域に走査させるための飛程は少なくとも数10cmとなる。そして、電子ビームが数10cmの飛程を確保するために必要な真空度は1.0×10−5Pa〜1.0×10−2Paである。このような希薄なガス雰囲気中では、原料粉体の薄層の窒化処理に必要な窒素濃度が足りないため、得られる三次元の造形物の窒素濃度は最大でも3%(原子数比率)程度である。このように低い窒素濃度の雰囲気で窒化された窒化金属材料は、金属よりは硬いものの、窒化セラミックスには遠く及ばない。
これに対して、実施の形態1では、ほぼ0.1気圧という高濃度の窒素ガス雰囲気中で数分間以上もプラズマ窒化を行うことができるため、比較例が有する技術的な問題点を解消し、高い剛性を有する造形物301を得ることができる。
<その他の実施の形態>
本発明の窒化粉体製造方法、造形物製造方法、窒化粉体製造装置、及び造形物製造装置は、実施の形態1乃至3で説明した具体的な各部構成、部品形態、数値条件、及び制御には限定されない。実施の形態1乃至3の構成の一部又は全部を等価な部材に置き換えた別の実施の形態でも実施可能である。
実施例1、2、3における具体的な電圧条件、圧力条件は、造形容器107の大きさ、原料粉体の大きさ、薄層104の層厚等のパラメータに応じて調整することが好ましい。例えば、実施例1、2、3においては、薄層104に交流電圧のみを印加したが、負極性の直流電圧を交流電圧に重畳して、正極性イオンの衝突速度を高めることにより、薄層104に対する加熱性能を高めてもよい。
実施の形態1では、薄層104に電圧を印加してプラズマを発生させている間、水素ガスと窒素ガスの混合ガスを一定の混合比率で供給し続けた。しかし、プラズマを発生させている初期段階では、水素ガスのみ、あるいは水素ガスとアルゴンガス等の不活性ガスを供給して原料粉体のいわゆるスパッタクリーニングを行ってもよい。
実施の形態1では、抵抗加熱ヒータ137によりプラズマ窒化処理中の加熱を実行した。しかし、プラズマ窒化処理中の加熱は、ヒータには限らない。窒素ガスと水素ガスとアルゴンガスの混合気体を供給し、薄層104に印加する交流電圧に重畳するマイナスのバイアス電圧を高めることにより、いわゆるスパッタ加熱を行ってもよい。
実施の形態2では、1回のプラズマ窒化処理ごとに容器101を大気圧に戻すいわゆるバッチ式の窒化粉体製造装置を説明した。しかし、窒化粉体製造装置は、プラズマ窒化処理を行う処理室に、大気中の原料粉体を処理室へ移動させるための減圧室と、窒化した原料粉体を処理室から大気中へ移動させるためのベント室と、を接続したインライン式の実施の形態で実施してもよい。
実施の形態2では、1個の容器101内に1個の造形容器107を配置する造形物製造装置を説明した。しかし、造形物製造装置は、1個の容器101内にプラズマ窒化処理用の複数の造形容器107とレーザービーム加熱成形処理用の1個の造形容器107とを配置した実施の形態を採用してもよい。
100…窒化粉体製造装置、造形物製造装置:101…容器:102…供給手段(ガス供給機構):103…減圧手段(排気機構):105…形成手段(薄層形成機構):106…ビーム照射手段(走査加熱機構):107…造形容器:108…電源手段(電極):109…粉体容器(造形室):113…電源手段(電源):137…ヒータ(抵抗加熱ヒータ):200…制御部:208…検知手段(真空計):300…窒化粉体製造装置、造形物製造装置:301…造形物

Claims (24)

  1. 原料粉体の薄層を形成する形成工程と、
    酸素を減少させた窒素を含む雰囲気中で、前記形成工程により形成された前記薄層に交流電圧を印加してプラズマを発生させることにより前記薄層の原料粉体を窒化する窒化工程と、を有することを特徴とする窒化粉体製造方法。
  2. 前記雰囲気は水素を含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化粉体製造方法。
  3. 前記薄層は、減圧可能な容器内に形成され、
    前記窒化工程は、前記容器内に生成された大気圧未満の前記雰囲気中で実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化粉体製造方法。
  4. 前記窒化工程は、1Pa以上20kPa未満の圧力の前記雰囲気中で実行されることを特徴とする請求項3に記載の窒化粉体製造方法。
  5. 前記容器内を第1の圧力に減圧した後に、前記容器内に窒素を含む物質を供給して前記第1の圧力よりも高い大気圧未満の第2の圧力の前記雰囲気を生成する雰囲気生成工程と、を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の窒化粉体製造方法。
  6. 前記窒化工程は、前記容器から電気的に絶縁して前記容器内に配置された粉体容器に前記形成工程により前記薄層を形成して実行されることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の窒化粉体製造方法。
  7. 前記形成工程は、前記粉体容器の底面上に前記形成工程により形成した前記薄層を前記窒化工程により窒化させた窒化薄層上に前記薄層を形成することを特徴とする請求項6に記載の窒化粉体製造方法。
  8. 前記窒化工程は、ヒータ、エネルギービーム、不活性ガスのプラズマのうち少なくとも1つにより前記薄層を加熱している状態で実行されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の窒化粉体製造方法。
  9. 原料粉体は、水アトマイズ法により形成された金属粒子であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の窒化粉体製造方法。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の窒化粉体製造方法と、
    前記窒化粉体製造方法により窒化された前記薄層である窒化薄層の固形化領域にエネルギービームを照射して固形化するビーム成形工程と、を有することを特徴とする造形物製造方法。
  11. 前記ビーム成形工程は、酸素を減少させた窒素を含む雰囲気中で、前記窒化薄層に交流電圧を印加してプラズマを発生させつつ実行されることを特徴とする請求項10に記載の造形物製造方法。
  12. 前記雰囲気は水素を含むことを特徴とする請求項11に記載の造形物製造方法。
  13. 前記エネルギービームはレーザービームであることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の造形物製造方法。
  14. 容器と、
    前記容器内に原料粉体の薄層を形成する形成手段と、
    窒素を含む物質を前記容器内に供給する供給手段と、
    前記形成手段により形成された前記薄層に交流電圧を印加する電源手段と、
    前記供給手段により前記容器内に生成された酸素を減少させた窒素を含む雰囲気中で前記電源手段により前記薄層に交流電圧を印加してプラズマを発生させるように、前記電源手段を制御する制御部と、を有することを特徴とする窒化粉体製造装置。
  15. 前記供給手段は、水素を含む物質を前記容器内に供給することを特徴とする請求項14に記載の窒化粉体製造装置。
  16. 前記容器内を減圧する減圧手段を有し、
    前記制御部は、大気圧未満の前記雰囲気中でプラズマを発生させるように、前記減圧手段を制御することを特徴とする請求項14又は15に記載の窒化粉体製造装置。
  17. 前記容器内の圧力を検知する検知手段を有し、
    前記制御部は、前記減圧手段により第1の圧力まで減圧した前記容器内に、前記供給手段により窒素を含む物質を供給して、前記容器内を前記第1の圧力よりも高い第2の圧力とするように、前記検知手段の出力に基づいて前記減圧手段及び前記供給手段を制御することを特徴とする請求項16に記載の窒化粉体製造装置。
  18. 前記容器内に配置されて前記形成手段により前記薄層を形成され、前記薄層を窒化した窒化薄層が積層される粉体容器を有し、
    前記粉体容器は、前記容器から電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項に記載の窒化粉体製造装置。
  19. 前記粉体容器の前記薄層に接触する面は絶縁材料であることを特徴とする請求項18に記載の窒化粉体製造装置。
  20. 前記電源手段は、前記粉体容器内で前記薄層又は前記窒化薄層に接触して交流電圧を印加する電極を有することを特徴とする請求項18又は19に記載の窒化粉体製造装置。
  21. 前記粉体容器に設けられて前記薄層を加熱するヒータを有し、
    前記制御部は、前記薄層を加熱して一定温度に保つように前記ヒータを制御することを特徴とする請求項18乃至20のいずれか1項に記載の窒化粉体製造装置。
  22. 請求項14乃至21のいずれか1項に記載の窒化粉体製造装置と、
    前記窒化粉体製造装置により前記薄層を窒化させた窒化薄層にエネルギービームを照射するビーム照射手段と、を有し、
    前記制御部は、前記窒化薄層の固形化領域にエネルギービームを照射して固形化するように前記ビーム照射手段を制御することを特徴とする造形物製造装置。
  23. 請求項22に記載の造形物製造装置により造形され、前記薄層の積層方向に向かって結晶が成長した結晶組織を有し、原子数比で10%以上の窒素を含むことを特徴とする造形物。
  24. 請求項23に記載の造形物にあって、内部が均一に窒化されていることを特徴とする造形物。
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