JP2017103142A - 膜電極接合体及びその製造方法並びに固体高分子形燃料電池 - Google Patents

膜電極接合体及びその製造方法並びに固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】反応ガスの拡散性を高めると共に、電極反応で生成した水の除去等を阻害せずに保水性を高め、低加湿条件下でも高い発電特性を示す膜電極接合体及びその製造方法並びに膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池を提供する。【解決手段】本発明に係る膜電極接合体11の製造方法は、高分子電解質膜1を一対の電極触媒層である電極触媒層2及び電極触媒層3で挟持した膜電極接合体の製造方法であって、高分子電解質膜1から離れて位置し、第1の触媒インクを乾燥させて形成した第1の電極触媒部2a(3a)と、第1の電極触媒部2a(3a)と高分子電解質膜1との間に位置し、第2の触媒インクを乾燥させて形成した第2の電極触媒部2b(3b)と、を備えた電極触媒層2(3)を、高分子電解質膜1の少なくとも一方の面に形成する工程を有し、第1の触媒インクの含水率は第2の触媒インクの含水率より高い。【選択図】図1

Description

本発明は、膜電極接合体及び膜電極接合体の製造方法並びにその膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池に関する。
燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとを、触媒を含む電極で水の電気分解の逆反応を起こさせ、熱と同時に電気を生み出す発電システムである。この発電システムは、従来の発電方式と比較して高効率で低環境負荷、低騒音等の特徴を有し、将来のクリーンなエネルギー源として注目されている。燃料電池は、用いるイオン伝導体の種類によってタイプがいくつかあり、プロトン伝導性高分子膜を用いたものは、固体高分子形燃料電池と呼ばれる。
燃料電池の中でも固体高分子形燃料電池は、室温付近で使用可能なことから、車載用電源や家庭据置用電源等への使用が有望視されており、近年、様々な研究開発が行われている。固体高分子形燃料電池は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;以下、「MEA」とも称す)と呼ばれる高分子電解質膜の両面に一対の電極触媒層を配置させた接合体を、電極の一方に水素を含有する燃料ガスを供給するためのガス流路を形成したセパレーター板と、電極の他方に酸素を含む酸化剤ガスを供給するためのガス流路を形成したセパレーター板とで挟持した電池である。ここで、燃料ガスを供給する電極を燃料極、酸化剤ガスを供給する電極を空気極とそれぞれ呼んでいる。これらの電極は、白金系の貴金属等の触媒物質を担持したカーボン粒子と高分子電解質を積層してなる電極触媒層と、ガス通気性と電子伝導性を兼ね備えたガス拡散層とからなる。
ここで、電極触媒層に対しては、燃料電池の出力密度を向上させるため、ガス拡散性を高める取り組みがなされてきた。電極触媒層中の細孔は、セパレーター板からガス拡散層を通じた先に位置し、複数の物質を輸送する通路の役割を果たす。また、燃料極は、酸化還元の反応場である三相界面に、燃料ガスを円滑に供給するだけでなく、生成したプロトンを高分子電解質膜内で円滑に伝導させるための水を供給する機能を備える。また、空気極は、酸化剤ガスの供給と共に、電極反応で生成した水を円滑に除去する機能を備える。物質輸送の妨げで発電反応が停止する、いわゆる「フラッディング」と呼ばれる現象を防止するため、これまで排水性を高める手法が用いられてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
固体高分子形燃料電池の実用化に向けての課題は、出力密度や耐久性の向上等が挙げられるが、最大の課題は低コスト化(コスト削減)である。
この低コスト化の手段の一つに、加湿器の削減が挙げられる。膜電極接合体の中心に位置する高分子電解質膜には、パーフルオロスルホン酸膜や炭化水素系膜が広く用いられているが、優れたプロトン伝導性を得るためには飽和水蒸気圧雰囲気に近い水分管理が必要とされており、現在、加湿器によって外部から水分供給を行っている。そこで、低消費電力やシステムの簡略化のために、加湿器を必要としないような、低加湿条件下であっても、十分なプロトン伝導性を示す高分子電解質膜の開発が進められている。
しかし、排水性を高めた電極触媒層は、低加湿条件下では高分子電解質がドライアップするため、電極触媒層構造の最適化を行い、保水性を向上させる必要がある。これまで、低加湿条件下における燃料電池の保水性を向上させるため、例えば、電極触媒層とガス拡散層の間に、湿度調整フィルムを挟み込む方法が提案されている。
また、例えば、特許文献5には、導電性炭素質粉末とポリテトラフルオロエチレンとから構成された湿度調整フィルムが、湿度調節機能を示して高分子電解質のドライアップを防止する方法が開示されている。
また、特許文献6には、高分子電解質膜と接する電極触媒層の表面に溝を設ける方法が開示されている。より詳しくは、当該文献には、0.1〜0.3mmの幅を有する溝を形成することで、低加湿条件下における発電性能の低下を抑制する方法が開示されている。
特開2006−120506号公報 特開2006−332041号公報 特開2007−87651号公報 特開2007−80726号公報 特開2006−252948号公報 特開2007−141588号公報
しかしながら、これらの特許文献に記載された膜電極接合体は、満足できる発電性能を備えていないという課題があった。また、上記特許文献に記載された膜電極接合体の製造方法は、煩雑であり、コストが高いという課題があった。
そこで、本発明にあっては、反応ガスの拡散性を高めると共に、電極反応で生成した水の除去等を阻害せずに保水性を高め、低加湿条件下でも高い発電特性を示す電極触媒層を備える膜電極接合体及びその膜電極接合体の製造方法並びにその膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決するために以下のような手段を用いた。
本発明の一態様は、高分子電解質膜を一対の電極触媒層で挟持した膜電極接合体の製造方法であって、前記高分子電解質膜から離れて位置し、第1の触媒インクを乾燥させて形成した第1の電極触媒部と、前記第1の電極触媒部と前記高分子電解質膜との間に位置し、第2の触媒インクを乾燥させて形成した第2の電極触媒部と、を備えた前記電極触媒層を、前記高分子電解質膜の少なくとも一方の面に形成する工程を有し、前記第1の触媒インクの含水率は、前記第2の触媒インクの含水率より高いことを特徴とする膜電極接合体の製造方法である。
本発明の一態様によれば、ガス拡散層側に位置する第1の電極触媒部を形成する第1の触媒インクの含水率を、高分子電解質膜側に位置する第2の電極触媒部を形成する第2の触媒インクの含水率よりも高くしている。こうすることで、撥水性のあるガス拡散層への触媒インクの浸透を抑制することができる。このため、本発明の一態様によれば、反応ガスの拡散性を高めると共に、電極反応で生成した水の除去等を阻害せずに保水性を高め、低加湿条件下でも高い発電特性を示す電極触媒層を備える膜電極接合体及びその膜電極接合体の製造方法並びにその膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池を提供することができる。
本発明の第1及び第2実施形態に係る膜電極接合体の断面模式図である。 本発明の第1及び第2実施形態に係る固体高分子形燃料電池の分解断面図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る膜電極接合体及び膜電極接合体の製造方法並びに膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池について、図1及び図2を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下に記載の膜電極接合体に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。また、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
〔膜電極接合体11〕
まず、第1実施形態に係る膜電極接合体11の構造について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る膜電極接合体11の構造を示す断面模式図である。図1に示すように、膜電極接合体11は、高分子電解質膜1と、高分子電解質膜1を狭持する電極触媒層2及び電極触媒層3とを備える。また、膜電極接合体11において、電極触媒層2及び電極触媒層3は、触媒物質担持粒子と高分子電解質とを備える。さらに、膜電極接合体11の電極触媒層2及び電極触媒層3のうち少なくとも一方は、高分子電解質膜1から離れて位置する第1の電極触媒部2a(3a)と、第1の電極触媒部2a(3a)と高分子電解質膜1とで挟まれた第2の電極触媒部2b(3b)と、を備えた多層構造をしている。換言すると、一対の電極触媒層である電極触媒層2及び電極触媒層3のうち少なくとも一方は、高分子電解質膜1から離れた外側の第1の電極触媒部2a(3a)と、高分子電解質膜1に隣接した内側の第2の電極触媒部2b(3b)と、の少なくとも2つに分割されている。
膜電極接合体11に備わる電極触媒層2(3)において、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積(以下、単に「細孔容積」とも称す)の値は、電極触媒層2(3)の内側に位置する第2の電極触媒部2b(3b)の方がその外側に位置する第1の電極触媒部2a(3a)よりも大きい。言い換えると、電極触媒層2(3)の外側に位置する第1の電極触媒部2a(3a)の細孔容積は、その内側に位置する第2の電極触媒部2b(3b)の細孔容積と比較して小さい。
膜電極接合体11では、電極触媒層2(3)の厚さ方向における細孔容積の分布を、従来とは異なり、第1の電極触媒部2a(3a)を第2の電極触媒部2b(3b)と比較して密な構造にしている。こうすることによって、第1の電極触媒部2a(3a)で保水性を高め、第2の電極触媒部2b(3b)で水の除去を促進している。このように、膜電極接合体11は、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立している。
また、膜電極接合体11では、従来の湿度調整フィルムの適用や、電極触媒層表面への溝の形成によって低加湿化を図る場合と異なり、界面抵抗の増大による発電特性の低下が見られない。このことより、従来の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池に比べ、膜電極接合体11を備える固体高分子形燃料電池は、低加湿条件下でも高い発電特性を示すという顕著な効果を奏する。
また、電極触媒層2(3)を、厚みが均等になるように2つの領域に分けた場合に、その2つの領域のうち高分子電解質膜1から離れて位置する第1の領域(第1の電極触媒部2a(3a))の細孔容積と、高分子電解質膜1の近くに位置する第2の領域(第2の電極触媒部2b(3b))の細孔容積との差は、0.1mL/g以上1.0mL/g以下の範囲内であることが好ましい。上記2つの領域における細孔容積の差が0.1mL/gに満たない場合にあっては、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立することが困難となる場合がある。また、上記2つの領域における細孔容積の差が1.0mL/gを超える場合にあっても、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立することが困難となる場合がある。
また、細孔容積の異なる2層構成の電極触媒層2(3)にあっては、細孔容積の大きい第2の電極触媒部2b(3b)の層厚は、細孔容積の小さい第1の電極触媒部2a(3a)の層厚よりも厚い方が好ましい。細孔容積の大きい第2の電極触媒部2b(3b)の層厚を、細孔容積の小さい第1の電極触媒部2a(3a)の層厚よりも厚くすることにより、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とをより好適に両立することができる場合がある。
なお、膜電極接合体11において、電極触媒層2(3)の分割数は上述のように2つに限定されるものではない。電極触媒層2(3)の分割数が3つ以上であっても良い。電極触媒層2(3)の分割数を3つ以上にする場合、電極触媒層2(3)の水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積は、段階的に変化させる。言い換えると、電極触媒層2(3)の分割数が3つ以上の膜電極接合体11であっても、外側に位置する電極触媒部(高分子電解質膜1から最も離れて位置する第1の領域)の細孔容積の値よりも、内側に位置する電極触媒部(高分子電解質膜1の最も近くに位置する第2の領域)の細孔容積の値が大きくなるように変化させる。要は、電極触媒層2(3)の分割数にかかわらず、電極触媒部の細孔容積は、外側に位置する電極触媒部から内側に位置する電極触媒部に向かって増加していればよい。
なお、電極触媒層2(3)の直径1.0μm以下の細孔容積を求める場合、電極触媒層2(3)の分割数又はその電極触媒部の層厚によっては、電極触媒層2(3)を厚さ方向に均等に分割してなる複数の領域のうち、1つの領域に複数の電極触媒部が含まれることがある。この場合、分割した電極触媒層で単位層厚あたりの直径1.0μm以下の細孔容積の値を求め、電極触媒層2(3)を厚さ方向に均等に分割した層厚になるように換算することで直径1.0μm以下の細孔容積を求める。
また、膜電極接合体11において、高分子電解質膜1の両面に形成される電極触媒層2及び電極触媒層3のうち、一方の電極触媒層2(3)のみが、異なる細孔容積を有する部分に分割されていても良い。一方の電極触媒層2(3)のみを、異なる細孔容積に分割する場合、異なる細孔容積に分割した電極触媒層は、電極反応により水が発生する空気極(カソード)側に配置することが好ましい。ただし、低加湿条件下における高分子電解質の水分保持の点から、異なる細孔容積に分割した電極触媒層は高分子電解質膜1の両面に形成されることが、より好ましい。
〔固体高分子形燃料電池12〕
次に、本発明の第1実施形態に係る固体高分子形燃料電池12の構造について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る固体高分子形燃料電池12の分解断面図である。固体高分子形燃料電池12は、膜電極接合体11の電極触媒層2と対向するように配置される空気極側のガス拡散層4と、電極触媒層3と対向するように配置される燃料極側のガス拡散層5とを備える。電極触媒層2とガス拡散層4とで空気極(カソード)6が構成され、電極触媒層3とガス拡散層5とで燃料極(アノード)7が構成される。また、ガス流通用のガス流路8と、冷却水流通用の冷却水流路9とを備えた、導電性でかつ不透過性の材料よりなる一組のセパレーター10が、ガス拡散層4及びガス拡散層5の外側にそれぞれ配置される。燃料極7側に位置するセパレーター10のガス流路8からは燃料ガスとして、例えば水素ガスが供給される。一方、空気極6側に位置するセパレーター10のガス流路8からは、酸化剤ガスとして、例えば酸素を含むガスが供給される。燃料ガスの水素と酸化剤ガスの酸素とを触媒の存在下で電極反応させることにより、燃料極7と空気極6との間に起電力を生じることができる。
固体高分子形燃料電池12は、一組のセパレーター10に、高分子電解質膜1と、電極触媒層2及び電極触媒層3と、ガス拡散層4及びガス拡散層5とが狭持されている。固体高分子形燃料電池12は単セル構造の燃料電池であるが、セパレーター10を介して複数のセルを積層して固体高分子形燃料電池としても良い。
〔膜電極接合体11の製造方法〕
次に、本発明の第1実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法について説明する。
本発明の第1実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法にあっては、以下の第1工程〜第3工程を含む。
(第1工程)
触媒を担持した粒子と、高分子電解質とを溶媒に分散させた第1の触媒インクを、ガス拡散層4(5)上に塗布して、その第1の触媒インクを乾燥させることにより、第1の電極触媒部2a(3a)を形成する工程。
(第2工程)
触媒を担持した粒子と、高分子電解質とを溶媒に分散させた第2の触媒インクを、第1の電極触媒部2a(3a)上に塗布して、第2の触媒インクを乾燥させることにより、第2の電極触媒部2b(3b)を形成する工程。
(第3工程)
高分子電解質膜1の少なくとも一方の面に、第1の電極触媒部2a(3a)及び第2の電極触媒部2b(3b)を形成する工程。
第1の電極触媒部2a(3a)、第2の電極触媒部2b(3b)をそれぞれ形成する工程において、第1の触媒インクにおける水の比率(以下、「第1の触媒インクの含水率」とも称す)と、第2の触媒インクにおける水の比率(以下、「第2の触媒インクの含水率」とも称す)とを変化させることにより、撥水性のあるガス拡散層4(5)への各触媒インクの浸透を抑制することができる。このとき、各触媒インクの含水率を高くすることで、撥水性のあるガス拡散層4(5)への各触媒インクの浸透を抑制し、触媒の利用率を高くすることができる。一方、各触媒インクの含水率が低い場合、各触媒インクはガス拡散層4(5)に浸透し、ガス拡散層4(5)内に形成した各電極触媒部はガスや生成水の輸送を阻害し、触媒の利用率を低くする要因となる。
また、第1の電極触媒部2a(3a)、第2の電極触媒部2b(3b)をそれぞれ形成する工程において、第1の触媒インクの含水率と、第2の触媒インクの含水率とを変化させることにより、細孔容積の異なる電極触媒部、即ち第1の電極触媒部2a(3a)と第2の電極触媒部2b(3b)とを形成することができる。言い換えると、第1及び第2の触媒インクの含水率をそれぞれ変化させることにより、第1の電極触媒部2a(3a)及び第2の電極触媒部2b(3b)の細孔容積を変化させることができる。以下、この点について説明する。
触媒を担持した粒子と高分子電解質とを溶媒に分散させた触媒インクを基材上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜中の溶媒を除去することにより、電極触媒部を形成する。このとき、触媒インクの含水率を高くした場合、含水率を低くした場合と比較して、形成される電極触媒部の細孔容積を小さくすることができる。また、触媒インクの含水率を低くした場合には、含水率を高くした場合と比較して、形成される電極触媒部の細孔容積を大きくすることができる。
つまり、膜電極接合体11の製造方法では、第1の電極触媒部2a(3a)を形成する工程(第1工程)で用いる触媒インク(第1の触媒インク)の含水率を、第2の電極触媒部2b(3b)を形成する工程(第2工程)で用いる触媒インク(第2の触媒インク)の含水率よりも高くする。触媒インクの含水率を高くすることで、形成される電極触媒部の細孔容積を小さくすることができる。また、触媒インクの塗工速度を小さくすることで、形成される電極触媒部の細孔容積を大きくすることができる。
また、第1の電極触媒部2a(3a)を形成する第1の触媒インクの含水率と、第2の電極触媒部2b(3b)を形成する第2の触媒インクの含水率との比が、1.2:1以上5:1以下の範囲内であることが好ましい。すなわち、第2の触媒インクの含水率を1とした場合、第1の触媒インクの含水率は、第2の触媒インクの含水率の1.2倍以上5倍以下の範囲内であることが好ましい。
第1の電極触媒部2a(3a)を形成する第1の触媒インクの含水率と、第2の電極触媒部2b(3b)を形成する第2の触媒インクの含水率との比が1.2:1に満たない場合は、形成する第1の電極触媒部2a(3a)と第2の電極触媒部2b(3b)との細孔容積の差が少なくなり、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立することが困難となる場合がある。また、第1の電極触媒部2a(3a)を形成する第1の触媒インクの含水率と、第2の電極触媒部2b(3b)を形成する第2の触媒インクの含水率との比が5:1を超える場合は、形成する第1の電極触媒部2a(3a)と第2の電極触媒部2b(3b)との細孔容積の差が大きくなり、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立することが困難となる場合がある。
また、第1の電極触媒部2a(3a)における直径1.0μm以下の細孔容積の値と、第2の電極触媒部2b(3b)における直径1.0μm以下の細孔容積の値との差が、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算値で、0.1mL/g以上1.0mL/g以下の範囲内であることが好ましい。第2の電極触媒部2b(3b)の細孔容積の値と、第1の電極触媒部2a(3a)の細孔容積の値との差が0.1mL/gに満たない場合は、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立することが困難となる場合がある。また、上記細孔容積の差が1.0mL/gを超える場合であっても、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立することが困難となる場合がある。
〔詳細〕
以下、第1実施形態に係る膜電極接合体11及び固体高分子形燃料電池12について更に詳細に説明する。
高分子電解質膜1としては、プロトン伝導性を有するものであれば良く、例えば、フッ素系高分子電解質膜、炭化水素系高分子電解質膜を用いることができる。フッ素系高分子電解質膜の例として、デュポン社製Nafion(登録商標)、旭硝子(株)製Flemion(登録商標)、旭化成(株)製Aciplex(登録商標)、ゴア社製Gore Select(登録商標)等を用いることができる。また、炭化水素系高分子電解質膜の例としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質膜を用いることができる。特に、高分子電解質膜1として、デュポン社製Nafion(登録商標)系材料を好適に用いることができる。
また、電極触媒層2及び電極触媒層3は、触媒インク、即ち第1及び第2の触媒インクを用いて高分子電解質膜1の両面に形成される。そして、その触媒インクは、少なくとも高分子電解質及び溶媒を含む。
上述の触媒インクに含まれる高分子電解質としては、プロトン伝導性を有するものであれば良く、高分子電解質膜1と同様の材料を用いることができ、例えば、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質を用いることができる。フッ素系高分子電解質の例として、デュポン社製Nafion(登録商標)系材料等を用いることができる。また、炭化水素系高分子電解質の例としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質を用いることができる。特に、フッ素系高分子電解質として、デュポン社製Nafion(登録商標)系材料を好適に用いることができる。なお、電極触媒層2及び電極触媒層3と、高分子電解質膜1との密着性を考慮すると、高分子電解質膜1と同一の材料を用いることが好ましい。
本実施形態で用いる触媒物質(以下、「触媒粒子」あるいは、単に「触媒」とも称す)としては、白金やパラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、例えば、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属又はこれらの合金、又は酸化物、複酸化物等を用いることができる。また、上記の触媒の粒径は、大きすぎると触媒の活性が低下し、小さすぎると触媒の安定性が低下する。このため、触媒の粒径は、0.5nm以上20nm以下の範囲内であることが好ましい。更に好ましくは、触媒の粒径は、1nm以上5nm以下の範囲内である。また、触媒粒子が、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び、イリジウムから選ばれた1種又は2種以上の金属である場合、電極反応性に優れ、電極反応を効率良く安定して行うことができる。また、触媒粒子が、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び、イリジウムから選ばれた1種又は2種以上の金属である場合、電極触媒層2及び電極触媒層3を備えた固体高分子形燃料電池12は高い発電特性を示すので好ましい。
上記の触媒物質を担持する電子伝導性の粉末としては、一般的にカーボン粒子が使用される。カーボン粒子の種類は、微粒子状で導電性を有し、触媒に侵されないものであれば限定されるものではなく、例えば、カーボンブラックやグラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンを用いることができる。カーボン粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなる。また、カーボン粒子の粒径は、大きすぎると電極触媒層2及び電極触媒層3のガス拡散性が低下したり、触媒の利用率が低下したりする。このため、カーボン粒子の粒径は、10nm以上1000nm以下の範囲内であることが好ましい。更に好ましくは、カーボン粒子の粒径は、10nm以上100nm以下の範囲内である。
本実施形態に係る触媒インクの分散媒として使用される溶媒は、触媒物質担持粒子や高分子電解質を浸食することがなく、高分子電解質を流動性の高い状態で溶解又は微細ゲルとして分散できるものあれば特に限定されるものではない。しかしながら、触媒インクには、揮発性の有機溶媒が少なくとも含まれていることが望ましい。触媒インクの分散媒として使用される溶媒の例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、メチルイソブチルケトン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等の極性溶剤等を用いることができる。また、上述の溶剤のうち二種以上を混合させたものを用いても良い。
また、触媒インクの分散媒として使用される溶媒として、低級アルコールを用いたものは発火の危険性が高いため、低級アルコールを用いる場合は、水との混合溶媒にするのが好ましい。更に、高分子電解質となじみが良い水(親和性が高い水)が含まれていても良い。水の添加量は、高分子電解質が分離して白濁を生じたり、ゲル化したりしない程度であれば特に制限されるものではない。
電極触媒層2及び電極触媒層3の細孔容積は、触媒インクの組成、分散条件に依存し、高分子電解質の量、分散媒の種類、分散手法、分散時間等によって変化するので、これらの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を組み合わせて用いて電極触媒層2及び電極触媒層3の細孔容積が、ガス拡散層4及びガス拡散層5に近い側から高分子電解質膜1に向かって、増加するように制御して形成することが好ましい。
触媒物質担持粒子を分散させるために、触媒インクに分散剤が含まれていても良い。分散剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等を挙げることができる。
上記アニオン界面活性剤の例として、アルキルエーテルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、アルカノイルザルコシン、アルカノイルグルタミン酸塩、アシルグルタメート、オレイン酸・N−メチルタウリン、オレイン酸カリウム・ジエタノールアミン塩、アルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、特殊変成ポリエーテルエステル酸のアミン塩、高級脂肪酸誘導体のアミン塩、特殊変成ポリエステル酸のアミン塩、高分子量ポリエーテルエステル酸のアミン塩、特殊変成リン酸エステルのアミン塩、高分子量ポリエステル酸アミドアミン塩、特殊脂肪酸誘導体のアミドアミン塩、高級脂肪酸のアルキルアミン塩、高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のカルボン酸型界面活性剤、ジアルキルスルホサクシネート、スルホコハク酸ジアルキル塩、1,2−ビス(アルコキシカルボニル)−1−エタンスルホン酸塩、アルキルスルホネート、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホネート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ポリナフチルメタンスルホネート、ポリナフチルメタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネート−ホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホネート、アルカノイルメチルタウリド、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリウム塩、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩、オレイル硫酸エステルナトリウム塩、ラウリルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸型界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、アルキルポリエトキシ硫酸塩、ポリグリコールエーテルサルフェート、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、硫酸化油、高度硫酸化油等の硫酸エステル型界面活性剤、リン酸(モノ又はジ)アルキル塩、(モノ又はジ)アルキルホスフェート、(モノ又はジ)アルキルリン酸エステル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、アルキルエーテルホスフェート、アルキルポリエトキシ・リン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、リン酸アルキルフェニル・ポリオキシエチレン塩、アルキルフェニルエーテル・ホスフェート、アルキルフェニル・ポリエトキシ・リン酸塩、ポリオキシエチレン・アルキルフェニル・エーテルホスフェート、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、高級アルコールリン酸ジエステルジナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等のリン酸エステル型界面活性剤等が挙げられる。
上記カチオン界面活性剤の例として、ベンジルジメチル{2−[2−(P−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェノオキシ)エトキシ]エチル}アンモニウムクロライド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂トリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、1−ヒドロキシエチル−2−牛脂イミダゾリン4級塩、2−ヘプタデセニルーヒドロキシエチルイミダゾリン、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩、アルキルピリジウム塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリアクリルアミドアミン塩、変成ポリアクリルアミドアミン塩、パーフルオロアルキル第4級アンモニウムヨウ化物等が挙げられる。
上記両性界面活性剤の例として、ジメチルヤシベタイン、ジメチルラウリルベタイン、ラウリルアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、アミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、3−[ω−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤の例として、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1型)、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングリコールラウリルアミン、ポリエチレングリコールヤシアミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン、ポリエチレングリコール牛脂アミン、ポリエチレングリコール牛脂プロピレンジアミン、ポリエチレングリコールジオレイルアミン、ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、ポリビニルピロリドン、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、砂糖の脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記の界面活性剤の中でもアルキルベンゼンスルホン酸、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸型の界面活性剤は、カーボンの分散効果、分散剤の残存による触媒性能の変化等を考慮すると、分散剤として、好適に用いることができる。
触媒インク中の高分子電解質の量を多くすると、細孔容積は一般に小さくなる。一方、触媒インク中のカーボン粒子の量を多くすると、細孔容積は一般に大きくなる。また、分散剤を使用すると、細孔容積は一般に小さくなる。
また、触媒インクは必要に応じて分散処理が行われる。触媒インクの粘度と、粒子のサイズとを、触媒インクの分散処理の条件によって制御することができる。分散処理は、様々な装置を採用して行うことができる。特に、分散処理の方法は限定されるものではない。例えば、分散処理としては、ボールミルやロールミルによる処理、せん断ミルによる処理、湿式ミルによる処理、超音波分散処理等が挙げられる。また、遠心力で攪拌を行うホモジナイザー等を採用しても良い。また、分散時間は長くなるのに伴い、触媒物質担持粒子の凝集体が破壊され、細孔容積は小さくなる。
触媒インク中の固形分含有量は、多すぎると触媒インクの粘度が高くなるため、電極触媒層2及び電極触媒層3の表面にクラックが入りやすくなる。一方、触媒インク中の固形分含有量が、少なすぎると成膜レートが非常に遅く、生産性が低下してしまう。したがって、触媒インク中の固形分含有量は、1質量%(wt%)以上50質量%(wt%)以下の範囲内であることが好ましい。また、固形分は、触媒物質担持粒子と高分子電解質とからなるが、固形分のうち、触媒物質担持粒子の含有量を多くすると、同じ固形分含有量でも粘度は高くなる。一方、固形分のうち、触媒物質担持粒子の含有量を少なくすると、同じ固形分含有量でも粘度は低くなる。したがって、固形分に占める触媒物質担持粒子の割合は、10質量%以上80質量%以下の範囲内であることが好ましい。また、触媒インクの粘度は、0.1cP以上500cP以下(つまり、0.0001Pa・s以上0.5Pa・s以下)の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは5cP以上100cP以下(つまり、0.005Pa・s以上0.1Pa・s以下)の範囲内である。また、触媒インクの分散時に分散剤を添加することで、粘度の制御をすることもできる。
また、触媒インクに造孔剤が含まれていても良い。造孔剤は、電極触媒層2及び電極触媒層3の形成後に除去することで、細孔を形成することができる。造孔剤の例としては、酸やアルカリ、水に溶ける物質や、ショウノウ等の昇華する物質、熱分解する物質等を挙げることができる。また、造孔剤が、温水で溶ける物質であれば、発電時に発生する水で取り除いても良い。
酸やアルカリ、水に溶ける造孔剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の酸可溶性無機塩類、アルミナ、シリカゲル、シリカゾル等のアルカリ水溶液に可溶性の無機塩類、アルミニウム、亜鉛、スズ、ニッケル、鉄等の酸又はアルカリに可溶性の金属類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム等の水溶性無機塩類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の水溶性有機化合物類等が挙げられる。また、上記造孔剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
上述した触媒インクを、ガス拡散層4及びガス拡散層5に塗布し、乾燥させて、電極触媒層2及び電極触媒層3を形成する。ガス拡散層4及びガス拡散層5としては、ガス拡散性と導電性とを有する材質を用いることができる。ガス拡散層4及びガス拡散層5には、例えば、カーボンクロス、カーボンペーパー、不織布等のポーラスカーボン材を用いることができる。
上述のように、第1実施形態では、上述の各触媒インクを、基材上に塗布し、乾燥させて、電極触媒層2及び電極触媒層3を形成する。基材として、ガス拡散層4及びガス拡散層5もしくは転写シートを用いた場合は、電極触媒層2及び電極触媒層3は、高分子電解質膜1の両面に接合される。また、膜電極接合体11は、基材として高分子電解質膜1を用い、高分子電解質膜1の両面に直接触媒インクを塗布し、高分子電解質膜1の両面に直接電極触媒層2及び電極触媒層3を形成しても良い。
また、基材としてガス拡散層4及びガス拡散層5又は転写シートを用い、そこに第1の触媒インクを塗布し乾燥させて第1の電極触媒部2a(3a)を形成し、基材として高分子電解質膜1を用い、そこに第2の触媒インクを塗布し乾燥させて第2の電極触媒部2b(3b)を形成し、その後に第1の電極触媒部2a(3a)と第2の電極触媒部2b(3b)とを接合してもよい。
つまり、電極触媒層2及び電極触媒層3の製造における基材としては、ガス拡散層4及びガス拡散層5、転写シートもしくは高分子電解質膜1を用いることができる。
ガス拡散層4及びガス拡散層5は、触媒インク(例えば、第1の触媒インク)を塗布する前に、予め、ガス拡散層4及びガス拡散層5上に目処め層を形成しても良い。目処め層は、触媒インクがガス拡散層4及びガス拡散層5の中に染み込むことを防止する層であり、触媒インクの塗布量が少ない場合でも目処め層上に堆積して三相界面を形成する。目処め層は、例えば、フッ素系樹脂溶液にカーボン粒子を分散させ、フッ素系樹脂の融点以上の温度で焼結させることにより形成することができる。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を用いることができる。
触媒インクの塗布方法としては、例えば、ドクターブレード法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法等を採用することができる。
セパレーター10としては、例えば、カーボンタイプあるいは金属タイプのもの等を用いることができる。なお、ガス拡散層4及びガス拡散層5と、セパレーター10とは、一体構造となっていても良い。また、セパレーター10もしくは電極触媒層2及び電極触媒層3が、ガス拡散層4及びガス拡散層5の機能を果たす場合は、ガス拡散層4及びガス拡散層5は省略しても良い。固体高分子形燃料電池12は、例えば、ガス供給装置、冷却装置等、その他付随する装置を組み立てることにより製造することができる。
本発明の第1実施形態に係る固体高分子形燃料電池用の電極触媒層2及び固体高分子形燃料電池用の電極触媒層3の製造方法について、以下に具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例によって制限されるものではない。
<実施例1>
〔第1の触媒インクの調整〕
白金担持量が50質量%である白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液(商品名:Nafion(登録商標)、デュポン社製)とを溶媒中で混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行った。このとき、分散時間を30分間とし、実施例1に係る第1の触媒インクを調整した。調整した第1の触媒インクの出発原料の組成比は、カーボン担体と高分子電解質とは質量比で1:1とした。第1の触媒インクの溶媒は、超純水、1−プロパノールの混合溶媒とし、水の比率は90質量%とした。また、固形分含有量は12質量%とした。
〔第2の触媒インクの調整〕
白金担持量が50質量%である白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液(商品名:Nafion(登録商標)、デュポン社製)とを溶媒中で混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行った。このとき、分散時間を30分間とし、実施例1に係る第2の触媒インクを調整した。調整した第2の触媒インクの出発原料の組成比は、カーボン担体と高分子電解質とは質量比で1:1とした。第2の触媒インクの溶媒は、超純水、1−プロパノールの混合溶媒とし、水の比率は50質量%とした。また、固形分含有量は12質量%とした。すなわち、実施例1では、第1の触媒インクの含水率と、第2の触媒インクの含水率とを、90:50(1.8:1)に設定した。
〔ガス拡散層〕
ガス拡散層4及びガス拡散層5は、目処め層を形成したカーボンペーパーを用いた。
〔ガス拡散層上への電極触媒層の形成方法〕
ドクターブレード法により、上記で調整した第1の触媒インクをガス拡散層4(5)上に塗布し、大気雰囲気中80℃で乾燥させ、実施例1に係る第1の電極触媒部2a(3a)を得た。同様に、上記で調整した第2の触媒インクを重ねて塗布し、大気雰囲気中80℃で乾燥させ、実施例1に係る第2の電極触媒部2b(3b)を得た。このとき、各触媒インクの塗布量は、白金担持量が0.3mg/cmになるようにそれぞれ調節し、第1の電極触媒部2a(3a)及び第2の電極触媒部2b(3b)の層厚は同じとした。こうして得られた第1の電極触媒部2a(3a)及び第2の電極触媒部2b(3b)の水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積は、膜電極接合体11を構成した際にガス拡散層4(5)に接する側の第1の電極触媒部2a(3a)と比べ、膜電極接合体11を構成した際に高分子電解質膜1に接する側の第2の電極触媒部2b(3b)は大きく、その差は0.16mL/gであった。
〔膜電極接合体の作製〕
ガス拡散層4(5)上に形成した電極触媒層2(3)を25cm(5cm×5cm)の正方形に打ち抜いた。次に、高分子電解質膜1(商品名:Nafion(登録商標)、デュポン社製)の両面に第2の電極触媒部2b(3b)を接するよう配置し、130℃、6.0×10Paの条件でホットプレスを行った。こうして、実施例1に係る膜電極接合体を得た。
<比較例1−1>
〔第1の触媒インクの調整〕
実施例1と同様に、比較例1−1に係る第1の触媒インクを調整した。
〔ガス拡散層〕
実施例1と同様のガス拡散層4及びガス拡散層5を用いた。
〔ガス拡散層上への電極触媒層の形成方法〕
実施例1と同様に、ガス拡散層4(5)上に、比較例1−1に係る第1の電極触媒部2a(3a)を形成した。そして、この第1の電極触媒部2a(3a)を、比較例1−1に係る電極触媒層とした。なお、白金担持量は0.3mg/cmになるように第1の触媒インクの塗布量を調整した。
〔膜電極接合体の作製〕
ガス拡散層4(5)上に形成した電極触媒層を25cm(5cm×5cm)の正方形に打ち抜き、高分子電解質膜1の両面に第1の電極触媒部2a(3a)を接するように配置し、130℃、6.0×10Paの条件でホットプレスを行った。こうして、比較例1−1に係る膜電極接合体を得た。
<比較例1−2>
〔第2の触媒インクの調整〕
実施例1と同様に、比較例1−2に係る第2の触媒インクを調整した。
〔ガス拡散層〕
実施例1と同様のガス拡散層4及びガス拡散層5を用いた。
〔ガス拡散層上への電極触媒層の形成方法〕
実施例1と同様に、ガス拡散層4(5)上に、比較例1−2に係る第2の電極触媒部2b(3b)を形成した。そして、この第2の電極触媒部2b(3b)を、比較例1−2に係る電極触媒層とした。なお、白金担持量は0.3mg/cmになるように第2の触媒インクの塗布量を調整した。
〔膜電極接合体の作製〕
ガス拡散層4(5)上に形成した電極触媒層を25cm(5cm×5cm)の正方形に打ち抜き、高分子電解質膜1の両面に第2の電極触媒部2b(3b)を接するように配置し、130℃、6.0×10Paの条件でホットプレスを行った。こうして、比較例1−2に係る膜電極接合体を得た。
<評価>
〔発電特性〕
実施例1、比較例1−1及び比較例1−2で作製した膜電極接合体を発電評価セル内に設置した。燃料電池測定装置を用いて、セル温度80℃とし、以下に示す2つの運転条件で電流電圧測定を行った。燃料ガスとして水素、酸化剤ガスとして空気を用い、利用率一定による流量制御を行った。なお、背圧は100kPaとした。
〔運転条件〕
1.フル加湿:アノード100%RH、カソード100%RH
2.低加湿:アノード40%RH、カソード40%RH
〔測定結果〕
実施例1で作製した膜電極接合体は、比較例1−1及び比較例1−2で作製した膜電極接合体よりも、低加湿の運転条件下で優れた発電性能を示し、実施例1で作製した膜電極接合体は、低加湿の運転条件下においても、フル加湿の運転条件下と同等レベルの発電性能であった。特に0.7V付近の発電性能が向上し、実施例1で作製した膜電極接合体は、比較例1−1で作製した膜電極接合体と比べて1.3倍の発電特性を示し、比較例1−2で作製した膜電極接合体と比べて1.8倍の発電特性を示した。
実施例1で作製した膜電極接合体と、比較例1−1及び比較例1−2で作製した膜電極接合体との発電特性の結果から、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積が、外側である電極触媒層2(3)の表面から内側である高分子電解質膜1に向かってその厚さ方向で増加している膜電極接合体は保水性が高まり、低加湿の運転条件下における発電特性が、フル加湿の運転条件下と同等の発電特性を示すことが確認された。また、フル加湿の運転条件下では、実施例1で作製した膜電極接合体は、比較例1−1及び比較例1−2で作製した膜電極接合体と比べて1.2倍の発電特性を示した。また、膜電極接合体の断面観察の結果では、実施例1で作製した膜電極接合体は、比較例1−2で作製した膜電極接合体よりも、ガス拡散層4(5)への触媒インクの浸透が抑制され、触媒の利用率を高めたことが確認された。
以上の結果から、実施例1で作製した膜電極接合体と、比較例1−1及び比較例1−2で作製した膜電極接合体との発電特性の結果から、反応ガスの拡散性、電極反応で生成した水の除去等を阻害していないことが確認された。
<第1実施形態についてのまとめ>
第1実施形態は、低加湿条件下で高い発電特性を示す膜電極接合体とその製造方法及びその膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池に関するものである。
<第2実施形態>
図1は、本発明の第2実施形態に係る膜電極接合体11の構造を示す断面模式図である。また、図2は、本発明の第2実施形態に係る固体高分子形燃料電池12の分解断面図である。図1及び図2に示すように、第2実施形態に係る膜電極接合体11及び固体高分子形燃料電池12の構造は、第1実施形態で説明した膜電極接合体11及び固体高分子形燃料電池12の構造と略同じである。よって、第2実施形態に係る膜電極接合体11及び固体高分子形燃料電池12の構造についての記載は、第1実施形態で説明した膜電極接合体11及び固体高分子形燃料電池12の構造についての記載と重複するため、ここではその記載を省略する。
なお、第1実施形態と同様に、第2実施形態に係る第1の電極触媒部2a(3a)における直径1.0μm以下の細孔容積の値と、第2の電極触媒部2b(3b)における直径1.0μm以下の細孔容積の値との差は、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算値で、0.1mL/g以上1.0mL/g以下の範囲内であることが好ましい。第2の電極触媒部2b(3b)の細孔容積の値と、第1の電極触媒部2a(3a)の細孔容積の値との差が0.1mL/gに満たない場合は、電極反応で生成した水の排水性と低加湿条件下における保水性とを両立することが困難となる場合がある。また、その細孔容積の差が1.0mL/gを超える場合であっても、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立することが困難となる場合がある。
また、第2実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法は、第1実施形態で説明した膜電極接合体11の製造方法と略同じであるが、第2実施形態で使用する第1及び第2の触媒インクは第1実施形態で説明した第1及び第2の触媒インクと異なる。そこで、この異なる部分である、第2実施形態に係る第1及び第2の触媒インクについて、以下説明する。なお、第2実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法についての記載において、第1実施形態と重複する部分については、その記載を省略する。
〔膜電極接合体11の製造方法〕
本発明の第2実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法にあっては、以下の第1工程〜第3工程を含む。
(第1工程)
触媒を担持した粒子と、高分子電解質とを溶媒に分散させた第1の触媒インクを、基材上に塗布して、第1の触媒インクを乾燥させることにより、第1の電極触媒部2a(3a)を形成する工程。
(第2工程)
触媒を担持した粒子と、高分子電解質とを溶媒に分散させた第2の触媒インクを、第1の電極触媒部2a(3a)上に塗布して、第2の触媒インクを乾燥させることにより、第2の電極触媒部2b(3b)を形成する工程。
(第3工程)
高分子電解質膜1の少なくとも一方の面に、第1の電極触媒部2a(3a)及び第2の電極触媒部2b(3b)を形成する工程。
第1の電極触媒部2a(3a)、第2の電極触媒部2b(3b)をそれぞれ形成する工程において、第1の触媒インクに含まれる溶媒と、第2の触媒インクに含まれる溶媒との20℃における比誘電率を変化させることにより、細孔容積の異なる電極触媒部、即ち第1の電極触媒部2a(3a)と第2の電極触媒部2b(3b)とを形成することができる。言い換えると、第1及び第2の触媒インクに含まれる溶媒の20℃における比誘電率をそれぞれ変化させることにより、第1の電極触媒部2a(3a)及び第2の電極触媒部2b(3b)の細孔容積を変化させることができる。以下、この点について説明する。
触媒を担持した粒子と高分子電解質とを溶媒に分散させた触媒インクを基材上に塗布し塗膜を形成し、該塗膜中の溶媒を除去することにより、電極触媒部を形成する。このとき、触媒インクの溶媒の20℃における比誘電率を高くした場合、比誘電率を低くした場合と比較して、形成される電極触媒部の細孔容積を小さくすることができる。また、触媒インクの溶媒の20℃における比誘電率を低くした場合には、比誘電率を高くした場合と比較して、形成される電極触媒部の細孔容積を大きくすることができる。
また、第1の触媒インクに含まれる溶媒と、第2の触媒インクに含まれる溶媒とは、20℃における比誘電率の比が3:1以上25:1以下の範囲内であることが好ましい。すなわち、20℃における第2の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εを1とした場合、20℃における第1の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εは、第2の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εの3倍以上25倍以下の範囲内であることが好ましい。さらに、20℃における第1の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εが9≦εとなるように、2つの比誘電率ε、εを設定することが好ましい。また、20℃における第2の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εが3≦ε≦9となるように、2つの比誘電率ε、εを設定することが好ましい。
第1の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εが、9未満であると、第1の電極触媒部2a(3a)の直径1.0μm以下の細孔容積が大きくなり、低加湿条件下における保水性が低下し、出力性能が向上しない場合がある。これに対し、第1の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εが、9≦εであるように設定することで、低加湿条件下における保水性が向上し、出力性能が向上する。
第2の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εが、3未満であると、第2の電極触媒部2b(3b)の直径1.0μm以下の細孔容積が小さくなり、電極反応で生成した水の排水性が低下し、出力性能が向上しない場合がある。また、第2の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εが、9より高いと、第2の電極触媒部2b(3b)の直径1.0μm以下の細孔容積が大きくなり、電極反応で生成した水の排水性が過大になり、出力性能が向上しない場合がある。このため、第2の触媒インクに含まれる溶媒の比誘電率εが、3≦ε≦9であるように設定することで、電極反応で生成した水の排水性が適切になり、出力性能が向上する。
比誘電率が9≦εを満たす溶媒としては、例えば、イソブチルアルコール、アセトン、エタノール、水等が挙げられる。また、比誘電率εが3≦ε≦9を満たす溶媒としては、例えば、エチルエーテル、酢酸ブチル等が挙げられる。
上記の溶媒から、第1の触媒インクに含まれる溶媒と、第2の触媒インクに含まれる溶媒とを適切に選択をすれば、20℃における比誘電率の比を3:1以上25:1以下の範囲内にすることができる。また、比誘電率の異なる数種の溶媒を混合することも、比誘電率の比を調整する上で有用である。
なお、溶媒の比誘電率は、例えば、誘電率計により測定することができる。
第2実施形態では、上述の各触媒インクを、基材上に塗布し、乾燥させて、電極触媒層2及び電極触媒層3を形成する。基材として、ガス拡散層4及びガス拡散層5もしくは転写シートを用いた場合は、電極触媒層2及び電極触媒層3は、高分子電解質膜1の両面に接合される。また、膜電極接合体11は、基材として高分子電解質膜1を用い、高分子電解質膜1の両面に直接触媒インクを塗布し、高分子電解質膜1の両面に直接電極触媒層2及び電極触媒層3を形成しても良い。
また、基材としてガス拡散層4(5)を用い、そこに第1の触媒インクを塗布し乾燥させて第1の電極触媒部2a(3a)を形成し、基材として高分子電解質膜1を用い、そこに第2の触媒インクを塗布し乾燥させて第2の電極触媒部2b(3b)を形成し、その後に第1の電極触媒部2a(3a)と第2の電極触媒部2b(3b)とを接合してもよい。
つまり、電極触媒層2及び電極触媒層3の製造における基材としては、ガス拡散層4及びガス拡散層5、転写シートもしくは高分子電解質膜1を用いることができる。
上記基材として用いられる転写シートとしては、転写性が良い材質であれば良く、例えば、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂を用いることができる。また、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子シート、高分子フィルムを転写シートとして用いることができる。また、基材として転写シートを用いた場合には、高分子電解質膜1に電極触媒層2及び電極触媒層3を接合した後に転写シートを剥離し、高分子電解質膜1の両面に電極触媒層2及び電極触媒層3を備える膜電極接合体11を形成することができる。
なお、触媒インクを塗布する基材としてガス拡散層4及びガス拡散層5を用いた場合には、電極触媒層2及び電極触媒層3を高分子電解質膜1に接合した後に、ガス拡散層4及びガス拡散層5である基材を剥離する必要は無い。
本発明の第2実施形態に係る固体高分子形燃料電池用の電極触媒層2及び固体高分子形燃料電池用の電極触媒層3の製造方法について、以下に具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例によって制限されるものではない。
<実施例2>
〔第1の触媒インクの調整〕
白金担持量が50質量%である白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液(商品名:Nafion(登録商標)、デュポン社製)とを溶媒中で混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行った。このとき、分散時間を30分間とし、実施例2に係る第1の触媒インクを調整した。調整した第1の触媒インクの出発原料の組成比は、カーボン担体と高分子電解質とは質量比で1:1とした。第1の触媒インクの溶媒は、超純水、1−プロパノールの混合溶媒とし、20℃における比誘電率を約55になるように混合比率を調整した。また、固形分含有量は14質量%とした。
〔第2の触媒インクの調整〕
白金担持量が50質量%である白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液(商品名:Nafion(登録商標)、デュポン社製)とを溶媒中で混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行った。このとき、分散時間を30分間とし、実施例2に係る第2の触媒インクを調整した。調整した第2の触媒インクの出発原料の組成比は、カーボン担体と高分子電解質とは質量比で1:1とした。第2の触媒インクの溶媒は、酢酸ブチルとし、20℃における比誘電率は約5であった。また、固形分含有量は14質量%とした。すなわち、実施例2では、20℃における第1の触媒インクの比誘電率と、第2の触媒インクの比誘電率とを、55:5(11:1)に設定した。
〔基材〕
転写シートである、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを基材として用いた。
〔基材上への電極触媒層の形成方法〕
ドクターブレード法により、上記で調整した第1の触媒インクを基材上に塗布し、大気雰囲気中80℃で乾燥させ、実施例2に係る第1の電極触媒部2a(3a)を得た。同様に、上記で調整した第2の触媒インクを基材上に塗布し、大気雰囲気中80℃で乾燥させ、実施例2に係る第2の電極触媒部2b(3b)を得た。このとき、各触媒インクの塗布量は、白金担持量が0.25mg/cmになるようにそれぞれ調節し、第1の電極触媒部2a(3a)及び第2の電極触媒部2b(3b)の層厚は同じとした。こうして得られた第1の電極触媒部2a(3a)及び第2の電極触媒部2b(3b)の水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積は、膜電極接合体11を構成した際にガス拡散層4(5)に接する側の第1の電極触媒部2a(3a)と比べ、膜電極接合体11を構成した際に高分子電解質膜1に接する側の第2の電極触媒部2b(3b)は大きく、その差は0.14mL/gであった。
〔膜電極接合体の作製〕
電極触媒層2(3)を形成した基材を25cm(5cm×5cm)の正方形に打ち抜いた。次に、高分子電解質膜1(商品名:Nafion(登録商標)、デュポン社製)上に、第2の電極触媒部2b(3b)を高分子電解質膜1側に、第1の電極触媒部2a(3a)をガス拡散層4(5)側に配置し、5cm×5cmの電極触媒層2(3)とした。この電極触媒層2(3)を高分子電解質膜1の両面に配置し、130℃、6.0×10Paの条件でホットプレスを行った。こうして、実施例2に係る膜電極接合体を得た。
<比較例2−1>
〔第1の触媒インクの調整〕
実施例2と同様に、比較例2−1に係る第1の触媒インクを調整した。
〔基材〕
実施例2と同様の基材を用いた。
〔基材上への電極触媒層の形成方法〕
実施例2と同様に、基材上に、比較例2−1に係る第1の電極触媒部2a(3a)を形成した。そして、この第1の電極触媒部2a(3a)を、比較例2−1に係る電極触媒層とした。なお、白金担持量は0.25mg/cmになるように第1の触媒インクの塗布量を調整した。
〔膜電極接合体の作製〕
第1の電極触媒部2a(3a)を形成した基材を25cm(5cm×5cm)の正方形に打ち抜き、高分子電解質膜1の両面に対面するように第1の電極触媒部2a(3a)を配置させ、130℃、6.0×10Paの条件でホットプレスを行った。こうして、比較例2−1に係る膜電極接合体を得た。
<比較例2−2>
〔第2の触媒インクの調整〕
実施例2と同様に、比較例2−2に係る第2の触媒インクを調整した。
〔基材〕
実施例2と同様の基材を用いた。
〔基材上への電極触媒層の形成方法〕
実施例2と同様に、基材上に第2の電極触媒部2b(3b)を形成した。そして、この第2の電極触媒部2b(3b)を、比較例2−2に係る電極触媒層とした。なお、白金担持量は0.25mg/cmになるように第2の触媒インクの塗布量を調整した。
〔膜電極接合体の作製〕
第2の電極触媒部2b(3b)を形成した基材を25cm(5cm×5cm)の正方形に打ち抜き、高分子電解質膜1の両面に対面するように第2の電極触媒部2b(3b)を配置させ、130℃、6.0×10Paの条件でホットプレスを行った。こうして、比較例2−2に係る膜電極接合体を得た。
<評価>
〔発電特性〕
実施例2、比較例2−1及び比較例2−2で作製した膜電極接合体を挟持するように、ガス拡散層4(5)として用いるカーボンペーパーを貼りあわせ、発電評価セル内に設置した。燃料電池測定装置を用いて、セル温度80℃とし、以下に示す2つの運転条件で電流電圧測定を行った。燃料ガスとして水素、酸化剤ガスとして空気を用い、利用率一定による流量制御を行った。なお、背圧は100kPaとした。
〔運転条件〕
1.フル加湿:アノード100%RH、カソード100%RH
2.低加湿:アノード40%RH、カソード40%RH
〔測定結果〕
実施例2で作製した膜電極接合体は、比較例2−1及び比較例2−2で作製した膜電極接合体よりも、低加湿の運転条件下で優れた発電性能を示し、実施例2で作製した膜電極接合体は、低加湿の運転条件下においても、フル加湿の運転条件下と同等レベルの発電性能であった。特に0.7V付近の発電性能が向上し、実施例2で作製した膜電極接合体は、比較例2−1で作製した膜電極接合体と比べて1.6倍の発電特性を示し、比較例2−2で作製した膜電極接合体と比べて2.3倍の発電特性を示した。実施例2で作製した膜電極接合体と、比較例2−1及び比較例2−2で作製した膜電極接合体との発電特性の結果から、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積が外側である電極触媒層2(3)の表面から内側である高分子電解質膜1に向かってその厚さ方向で増加している膜電極接合体は保水性が高まり、低加湿の運転条件下における発電特性が、フル加湿の運転条件下と同等の発電特性を示すことが確認された。また、フル加湿の運転条件下では、実施例2で作製した膜電極接合体は、比較例2−1及び比較例2−2で作製した膜電極接合体と比べて1.4倍の発電特性を示した。実施例2で作製した膜電極接合体と、比較例2−1で作製した膜電極接合体との発電特性の結果から、反応ガスの拡散性、電極反応で生成した水の除去等を阻害していないことが確認された。
<第2実施形態についてのまとめ>
第2実施形態は、低加湿条件下で高い発電特性を示す膜電極接合体とその製造方法及びその膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池に関するものである。
(本実施形態の効果)
(A)本実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法は、高分子電解質膜1を一対の電極触媒層である電極触媒層2及び電極触媒層3で挟持した膜電極接合体の製造方法であって、高分子電解質膜1から離れて位置し、第1の触媒インクを乾燥させて形成した第1の電極触媒部2a(3a)と、第1の電極触媒部2a(3a)と高分子電解質膜1との間に位置し、第2の触媒インクを乾燥させて形成した第2の電極触媒部2b(3b)と、を備えた電極触媒層2(3)を、高分子電解質膜1の少なくとも一方の面に形成する工程を有している。そして、第1の触媒インクの含水率は、第2の触媒インクの含水率より高い。
このような構成によれば、ガス拡散層4(5)側に位置する第1の電極触媒部2a(3a)を形成する第1の触媒インクの含水率を、高分子電解質膜1側に位置する第2の電極触媒部2b(3b)を形成する第2の触媒インクの含水率よりも高くしているので、撥水性のあるガス拡散層4(5)への触媒インクの浸透を抑制することができる。また、電極触媒層2(3)の、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積を、外側である電極触媒層2(3)の表面側から内側である高分子電解質膜1側に向かって増加させることができる。
このため、本発明の一態様によれば、反応ガスの拡散性を高めると共に、電極反応で生成した水の除去等を阻害せずに保水性を高め、低加湿条件下でも高い発電特性を示す電極触媒層2(3)を備える膜電極接合体11を提供することができる。
(B)また、本実施形態に係る膜電極接合体11の別の製造方法は、高分子電解質膜1を一対の電極触媒層である電極触媒層2及び電極触媒層3で挟持した膜電極接合体の製造方法であって、高分子電解質膜1から離れて位置し、第1の触媒インクを乾燥させて形成した第1の電極触媒部2a(3a)と、第1の電極触媒部2a(3a)と高分子電解質膜1との間に位置し、第2の触媒インクを乾燥させて形成した第2の電極触媒部2b(3b)と、を備えた電極触媒層2(3)を、高分子電解質膜1の少なくとも一方の面に形成する工程を有している。そして、第1の触媒インクに含まれる溶媒の20℃における比誘電率は、第2の触媒インクに含まれる溶媒の20℃における比誘電率より高い。
このような構成によれば、ガス拡散層4(5)側に位置する第1の電極触媒部2a(3a)を形成する第1の触媒インクに含まれる溶媒の20℃における比誘電率を、高分子電解質膜1側に位置する第2の電極触媒部2b(3b)を形成する第2の触媒インクに含まれる溶媒の20℃における比誘電率よりも高くしているので、電極触媒層2(3)の、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積を、外側である電極触媒層2(3)の表面側から内側である高分子電解質膜1側に向かって増加させることができる。
このため、本発明の一態様によれば、反応ガスの拡散性を高めると共に、電極反応で生成した水の除去等を阻害せずに保水性を高め、低加湿条件下でも高い発電特性を示す電極触媒層2(3)を備える膜電極接合体11を提供することができる。
(C)また、本実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法において、第1の触媒インクの含水率と、第2の触媒インクの含水率との比を、1.2:1以上5:1以下の範囲内としてもよい。
このような構成によれば、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立することが容易となる。
(D)また、本実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法において、第1の触媒インクに含まれる溶媒と、第2の触媒インクに含まれる溶媒との20℃における比誘電率の比を、3:1以上25:1以下の範囲内としてもよい。
このような構成によれば、電極反応で生成した水の排水性と、低加湿条件下における保水性とを両立することが容易となる。
(E)また、本実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法において、第1の触媒インク及び第2の触媒インクのそれぞれに含まれる複数の溶媒のうち、少なくとも1種類をアルコールとしてもよい。
このような構成によれば、上述した比誘電率の比を容易に調整することができる。
(F)また、本実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法において、電極触媒層2(3)を形成する工程を、高分子電解質膜1とは異なる基材上に第1の触媒インクを塗布し乾燥させて、第1の電極触媒部2a(3a)を形成する工程と、第1の電極触媒部2a(3a)上に第2の触媒インクを塗布し乾燥させて、第2の電極触媒部2b(3b)を形成する工程と、を含むものとしてもよい。
このような構成によれば、電極触媒層2(3)の、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積を、外側である電極触媒層2(3)の表面側から内側である高分子電解質膜1側に向かって容易に増加させることができる。
(G)また、本実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法において、電極触媒層2(3)を形成する工程は、高分子電解質膜1上に第2の触媒インクを塗布し乾燥させて、第2の電極触媒部2b(3b)を形成する工程と、第2の電極触媒部2b(3b)上に第1の触媒インクを塗布し乾燥させて、第1の電極触媒部2a(3a)を形成する工程と、を含むものとしてもよい。
このような構成によれば、電極触媒層2(3)の、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積を、外側である電極触媒層2(3)の表面側から内側である高分子電解質膜1側に向かって容易に増加させることができる。
(H)また、本実施形態に係る膜電極接合体11の製造方法において、電極触媒層2(3)を形成する工程は、高分子電解質膜1とは異なる基材上に第1の触媒インクを塗布し乾燥させて、第1の電極触媒部2a(3a)を形成する工程と、高分子電解質膜1上に第2の触媒インクを塗布し乾燥させて、第2の電極触媒部2b(3b)を形成する工程と、第2の電極触媒部2b(3b)上に第1の電極触媒部2a(3a)を接合させる工程と、を含むものとしてもよい。
このような構成によれば、電極触媒層2(3)の、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積を、外側である電極触媒層2(3)の表面側から内側である高分子電解質膜1側に向かって容易に増加させることができる。
(I)本実施形態に係る膜電極接合体11は、高分子電解質膜1を一対の電極触媒層である電極触媒層2及び電極触媒層3で挟持した膜電極接合体であって、その一対の電極触媒層のうち少なくとも一方は、高分子電解質膜1から離れて位置する第1の電極触媒部2a(3a)と、第1の電極触媒部2a(3a)と高分子電解質膜1との間に位置する第2の電極触媒部2b(3b)と、を備え、第1の電極触媒部2a(3a)と第2の電極触媒部2b(3b)とを備えた電極触媒層2(3)の、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積は、第1の電極触媒部2a(3a)側から高分子電解質膜1側に向かって増加している。
このような構成によれば、電極触媒層2(3)の、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積が、外側である電極触媒層2(3)の表面側から内側である高分子電解質膜1側に向かって増加しているので、反応ガスの拡散性を高めると共に、電極反応で生成した水の除去等を阻害せずに保水性を高め、低加湿条件下でも高い発電特性を示す電極触媒層2(3)を備える膜電極接合体11を提供することができる。
(J)本実施形態に係る膜電極接合体11は、電極触媒層2(3)を厚みが均等になるように複数の領域に分けた場合に、その複数の領域のうち高分子電解質膜1から最も離れて位置する第1の領域における細孔容積と、高分子電解質膜1に隣接する第2の領域における細孔容積との差を、0.1mL/g以上1.0mL/g以下の範囲内としてもよい。
このような構成によれば、反応ガスの拡散性をより高めると共に、電極反応で生成した水の除去等を阻害せずに保水性をより高め、低加湿条件下でもより高い発電特性を示す電極触媒層2(3)を備える膜電極接合体11を提供することができる。
(K)本実施形態に係る固体高分子形燃料電池12は、本実施形態に係る膜電極接合体11を備えている。
このような構成によれば、反応ガスの拡散性を高めると共に、電極反応で生成した水の除去等を阻害せずに保水性を高め、低加湿条件下でも高い発電特性を示す電極触媒層2(3)を備える膜電極接合体11を含んだ固体高分子形燃料電池12を提供することができる。
本発明の各実施形態に係る膜電極接合体11は、高分子電解質膜1を一対の電極触媒層である電極触媒層2及び電極触媒層3で挟持した膜電極接合体であって、その電極触媒層は高分子電解質及び触媒物質を担持した粒子を備えると共に、その電極触媒層において、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積は、外側に位置する電極触媒層2(3)の表面から内側に位置する高分子電解質膜1に向かって増加していることを特徴とするものである。電極触媒層2(3)の厚さ方向における細孔容積の分布を、ガス拡散層4(5)に近い側から高分子電解質膜1に向かって増加させることによって、反応ガスの拡散性、電極反応で生成した水の除去等を阻害せずに、電極触媒層2(3)の保水性を高めることができる。さらに、上述した細孔容積の分布とすることで、従来の湿度調整フィルムの適用や、電極触媒層表面への溝の形成による低加湿化への対応と異なり、界面抵抗の増大による発電特性の低下が見られなくなる。このように、従来の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池に比べ、本発明の各実施形態に係る膜電極接合体11を備えてなる固体高分子形燃料電池12は、低加湿条件下でも高い発電特性を示すという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
以上、本発明の各実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
1 高分子電解質膜
2 電極触媒層
2a 第1の電極触媒部(細孔容積の小さい電極触媒部)
2b 第2の電極触媒部(細孔容積の大きい電極触媒部)
3 電極触媒層
3a 第1の電極触媒部(細孔容積の小さい電極触媒部)
3b 第2の電極触媒部(細孔容積の大きい電極触媒部)
4 ガス拡散層
5 ガス拡散層
6 空気極(カソード)
7 燃料極(アノード)
8 ガス流路
9 冷却水流路
10 セパレーター
11 膜電極接合体
12 固体高分子形燃料電池

Claims (11)

  1. 高分子電解質膜を一対の電極触媒層で挟持した膜電極接合体の製造方法であって、
    前記高分子電解質膜から離れて位置し、第1の触媒インクを乾燥させて形成した第1の電極触媒部と、前記第1の電極触媒部と前記高分子電解質膜との間に位置し、第2の触媒インクを乾燥させて形成した第2の電極触媒部と、を備えた前記電極触媒層を、前記高分子電解質膜の少なくとも一方の面に形成する工程を有し、
    前記第1の触媒インクの含水率は、前記第2の触媒インクの含水率より高いことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
  2. 高分子電解質膜を一対の電極触媒層で挟持した膜電極接合体の製造方法であって、
    前記高分子電解質膜から離れて位置し、第1の触媒インクを乾燥させて形成した第1の電極触媒部と、前記第1の電極触媒部と前記高分子電解質膜との間に位置し、第2の触媒インクを乾燥させて形成した第2の電極触媒部と、を備えた前記電極触媒層を、前記高分子電解質膜の少なくとも一方の面に形成する工程を有し、
    前記第1の触媒インクに含まれる溶媒の20℃における比誘電率は、前記第2の触媒インクに含まれる溶媒の20℃における比誘電率より高いことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
  3. 前記第1の触媒インクの含水率と、前記第2の触媒インクの含水率との比は、1.2:1以上5:1以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体の製造方法。
  4. 前記第1の触媒インクに含まれる溶媒と、前記第2の触媒インクに含まれる溶媒との20℃における比誘電率の比は、3:1以上25:1以下の範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の膜電極接合体の製造方法。
  5. 前記第1の触媒インク及び前記第2の触媒インクのそれぞれに含まれる複数の溶媒のうち、少なくとも1種類はアルコールであることを特徴とする請求項3に記載の膜電極接合体の製造方法。
  6. 前記電極触媒層を形成する工程は、前記高分子電解質膜とは異なる基材上に前記第1の触媒インクを塗布し乾燥させて、前記第1の電極触媒部を形成する工程と、前記第1の電極触媒部上に前記第2の触媒インクを塗布し乾燥させて、前記第2の電極触媒部を形成する工程と、を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の膜電極接合体の製造方法。
  7. 前記電極触媒層を形成する工程は、前記高分子電解質膜上に前記第2の触媒インクを塗布し乾燥させて、前記第2の電極触媒部を形成する工程と、前記第2の電極触媒部上に前記第1の触媒インクを塗布し乾燥させて、前記第1の電極触媒部を形成する工程と、を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の膜電極接合体の製造方法。
  8. 前記電極触媒層を形成する工程は、前記高分子電解質膜とは異なる基材上に前記第1の触媒インクを塗布し乾燥させて、前記第1の電極触媒部を形成する工程と、前記高分子電解質膜上に前記第2の触媒インクを塗布し乾燥させて、前記第2の電極触媒部を形成する工程と、前記第2の電極触媒部上に前記第1の電極触媒部を接合させる工程と、を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の膜電極接合体の製造方法。
  9. 高分子電解質膜を一対の電極触媒層で挟持した膜電極接合体であって、
    前記一対の電極触媒層のうち少なくとも一方は、前記高分子電解質膜から離れて位置する第1の電極触媒部と、前記第1の電極触媒部と前記高分子電解質膜との間に位置する第2の電極触媒部と、を備え、
    前記第1の電極触媒部と前記第2の電極触媒部とを備えた前記電極触媒層の、水銀圧入法で求められる細孔の円筒近似による換算での直径1.0μm以下の細孔容積は、前記第1の電極触媒部側から前記高分子電解質膜側に向かって増加していることを特徴とする膜電極接合体。
  10. 前記第1の電極触媒部及び前記第2の電極触媒部を備えた前記電極触媒層を、厚みが均等になるように複数の領域に分けた場合に、前記複数の領域のうち前記高分子電解質膜から最も離れて位置する第1の領域の前記細孔容積と、前記高分子電解質膜に隣接する第2の領域の前記細孔容積との差は、0.1mL/g以上1.0mL/g以下の範囲内であることを特徴とする請求項9に記載の膜電極接合体。
  11. 請求項9又は請求項10に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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