JP2017101745A - 動力伝達装置の制御装置 - Google Patents

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Kyohei Suzumura
京平 鈴村
光博 深尾
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光博 深尾
和也 義澤
Kazuya Yoshizawa
和也 義澤
潤 天野
Jun Amano
潤 天野
将之 辻田
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Abstract

【課題】ギヤの噛み合いにより動力伝達を行う第1の動力伝達経路と、ベルト式無段変速機により動力伝達を行う第2の動力伝達経路とが並列に設けられた動力伝達装置に対し、ギヤ走行用クラッチが解放されてしまう故障が生じた場合であっても、動力伝達状態が維持でき且つベルトの滑りを抑制できる動力伝達装置の制御装置を提供する。【解決手段】第1の動力伝達経路によるギヤ走行が不能と判定された場合に、セカンダリ油圧の指示油圧を所定値α以上に設定する。このセカンダリ油圧が指示油圧α以上となった場合には、ギヤ走行から第2の動力伝達経路によるベルト走行に切り替える。セカンダリ油圧が指示油圧αに達しない場合には、プライマリ油圧の指示油圧を、前進用クラッチの係合を可能にするライン圧が確保される所定値β以上に設定し、ギヤ走行を実施する。【選択図】図4

Description

本発明は、車両等に搭載される動力伝達装置の制御装置に係る。特に、本発明は、ギヤの噛み合いにより動力伝達を行う第1の動力伝達経路と、ベルト式無段変速機により動力伝達を行う第2の動力伝達経路とが並列に設けられた動力伝達装置に適用される制御装置に関する。
従来、特許文献1に開示されているように、車両に搭載される動力伝達装置として、ギヤの噛み合いにより動力伝達を行う第1の動力伝達経路と、ベルト式無段変速機により動力伝達を行う第2の動力伝達経路とが並列に設けられたものが知られている。
この種の動力伝達装置は、前記第1の動力伝達経路によって動力伝達を行う際に係合するギヤ走行用クラッチと、前記第2の動力伝達経路によって動力伝達を行う際に係合するベルト走行用クラッチとを備えている。
また、前記ベルト式無段変速機は、周知の如くプライマリプーリとセカンダリプーリとを備えている。このベルト式無段変速機の油圧制御回路には、プライマリプーリの可動シーブ(より具体的にはプライマリ側油圧アクチュエータ)に供給する変速比調整用の油圧(以下、プライマリ油圧という)を調整するためのSLPソレノイドバルブと、セカンダリプーリの可動シーブ(より具体的にはセカンダリ側油圧アクチュエータ)に供給するベルト挟圧調整用の油圧(以下、セカンダリ油圧という)を調整するためのSLSソレノイドバルブとが備えられている。また、前記ギヤ走行用クラッチの係合と解放とを切り替えるための油圧の調整はSL1ソレノイドバルブによって行われる。
また、一般に、第1の動力伝達経路による動力伝達が行われている場合には、ベルト式無段変速機の変速比は最大(γmax)となっており、ベルトの滑りを防止するべく、プライマリ油圧に比べてセカンダリ油圧が高くなっている。そして、ライン圧は、プライマリ油圧およびセカンダリ油圧のうちの高い側、つまり、セカンダリ油圧によって決定されることになる。なお、この第1の動力伝達経路による動力伝達が行われている状態では、ベルト式無段変速機に入力されるトルクは小さいため、プライマリ油圧およびセカンダリ油圧は、共に低い値に設定されている。これにより、オイルポンプの作動に要する動力を小さくして燃料消費率の改善を図っている。このようにセカンダリ油圧が低く設定されていることから、ライン圧も低く設定された状態で、前記第1の動力伝達経路による動力伝達が行われる。
特開2015−105708号公報
ところで、ギヤ走行用クラッチに供給する油圧が不足してこのギヤ走行用クラッチが解放されてしまう故障が生じる場合、その故障原因としては、前記SL1ソレノイドバルブの故障だけでなく、SLSソレノイドバルブの故障の可能性もある。何故なら、前述したように、第1の動力伝達経路による動力伝達が行われている場合にSLSソレノイドバルブによって調整されるセカンダリ油圧は、ライン圧を決定するものであり、このSLSソレノイドバルブに故障が生じた場合には、ライン圧が十分に得られなくなって、ギヤ走行用クラッチに供給する油圧が不足し、このギヤ走行用クラッチが解放されてしまうからである。
このため、ギヤ走行用クラッチが解放されてしまう故障が生じた場合、その原因がSL1ソレノイドバルブの故障であれば(SLSソレノイドバルブの故障でなければ)、ベルト挟圧が十分に得られる状況であるので、ベルト式無段変速機による動力伝達が可能である。つまり、第2の動力伝達経路による動力伝達に切り替えることで車両の走行が可能である。
しかし、ギヤ走行用クラッチが解放されてしまう故障の原因がSLSソレノイドバルブの故障であった場合には、ライン圧を十分に確保することができないため、第2の動力伝達経路による動力伝達(ベルト式無段変速機による動力伝達)に切り替えたとしても、ベルト挟圧が十分に得られない状況となっているので、ベルトに滑りが生じてしまうことになる。このような状況では、車両の走行が不能となるばかりでなく、ベルト寿命に悪影響を与えてしまうことになる。
このため、ギヤ走行用クラッチが解放されてしまう故障が生じた場合には、その故障原因に応じて、車両走行状態の維持およびベルト滑り防止のための制御を異なるものとする必要があるが、この故障原因に応じて異なる制御を実施することについては未だ提案されていない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ギヤの噛み合いにより動力伝達を行う第1の動力伝達経路と、ベルト式無段変速機により動力伝達を行う第2の動力伝達経路とが並列に設けられた動力伝達装置に対し、ギヤ走行用クラッチが解放されてしまう故障が生じた場合であっても、動力伝達状態が維持でき且つベルトの滑りを抑制できる動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、駆動力源からの動力を伝達する動力伝達経路として、ギヤの噛み合いにより動力伝達を行う第1の動力伝達経路と、ベルトが巻き掛けられたプライマリプーリおよびセカンダリプーリを備えたベルト式無段変速機により動力伝達を行う第2の動力伝達経路とが並列に設けられ、前記第1の動力伝達経路によって動力を伝達する際に係合する第1クラッチと、前記第2の動力伝達経路によって動力を伝達する際に係合する第2クラッチとを備えた動力伝達装置に適用される制御装置を前提とする。この動力伝達装置の制御装置に対し、前記第1の動力伝達経路による動力伝達の実行条件が成立している際に、前記第1クラッチが解放して前記第1の動力伝達経路による動力伝達が不能となった場合、前記無段変速機の前記セカンダリプーリに供給するセカンダリ油圧の指示油圧を、ベルトの滑りを生じさせないベルト挟圧を生じさせる所定値以上に設定するセカンダリ油圧指示部と、前記セカンダリ油圧の実油圧が前記指示油圧以上となった場合に、前記第2クラッチを係合させて前記第2の動力伝達経路による動力伝達を実施させる第2動力伝達実施部と、前記セカンダリ油圧の実油圧が前記指示油圧に達しない場合に、前記無段変速機の前記プライマリプーリに供給するプライマリ油圧の指示油圧を、前記第1クラッチの係合を可能にするライン圧が確保される所定値以上に設定し、前記第1クラッチを係合させて前記第1の動力伝達経路による動力伝達を実施させる第1動力伝達実施部とを備えさせている。
この特定事項により、前記第1クラッチが解放して第1の動力伝達経路による動力伝達が不能となった場合には、セカンダリ油圧指示部によって、セカンダリ油圧の指示油圧を、ベルトの滑りを生じさせないベルト挟圧を生じさせる所定値以上に設定する。そして、セカンダリ油圧の実油圧が指示油圧以上となった場合には、十分なセカンダリ油圧が確保される状況であり、ベルトの滑りを生じさせることなくベルト式無段変速機による動力伝達が可能であると判断できる。そして、この場合、第2動力伝達実施部によって、第2クラッチが係合され、第2の動力伝達経路による動力伝達が実施される。これにより、ベルトの滑りを生じさせることなく動力伝達が良好に行われる。一方、セカンダリ油圧の実油圧が指示油圧に達しない場合には、故障(第1クラッチが解放する故障)の原因はセカンダリ油圧を調整するソレノイドバルブの故障である可能性があると判断できる。この場合、第2の動力伝達経路による動力伝達は不能となる。このため、第1動力伝達実施部によって、プライマリ油圧の指示油圧を、第1クラッチの係合を可能にするライン圧が確保される所定値以上に設定する。そして、第1クラッチが係合され、第1の動力伝達経路による動力伝達が実施される。これにより、動力伝達が良好に行われる。
本発明では、第1クラッチが解放して第1の動力伝達経路による動力伝達が不能となった場合には、セカンダリ油圧の指示油圧を所定値以上に設定し、このセカンダリ油圧の実油圧が指示油圧以上となった場合には、第2の動力伝達経路による動力伝達を実施させる。また、セカンダリ油圧の実油圧が指示油圧に達しない場合には、プライマリ油圧の指示油圧を所定値以上に設定することによって所定圧以上のライン圧を確保し、第1の動力伝達経路による動力伝達を実施させるようにしている。これにより、第1の動力伝達経路による動力伝達が不能となる原因が、第1クラッチの係合と解放とを切り替えるソレノイドバルブの故障であるのか、セカンダリ油圧を調整するソレノイドバルブの故障であるのかに応じて異なる制御を実施することが可能となり、第1の動力伝達経路による動力伝達が不能となった原因に応じて、動力伝達状態の維持およびベルト滑り防止のための制御を異なるものとすることができる。
実施形態に係る動力伝達装置の概略構成を説明するための骨子図である。 動力伝達装置による走行パターン毎の係合要素の係合表を示す図である。 動力伝達装置およびエンジンの制御系を示すブロック図である。 走行状態切り替えのための油圧制御の手順を示すフローチャート図である。 実施形態におけるタービン回転速度、前進用クラッチ回転速度、ギヤ走行不能フラグ、プライマリ油圧、セカンダリ油圧、ベルト走行不能フラグの変化の一例を示すタイミングチャート図である。 比較例におけるタービン回転速度、前進用クラッチ回転速度、ギヤ走行不能フラグ、プライマリ油圧、セカンダリ油圧、ベルト走行不能フラグの変化の一例を示すタイミングチャート図である。 変形例における走行状態切り替えのための油圧制御の手順を示すフローチャート図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、車両に搭載された動力伝達装置に本発明を適用した場合について説明する。
−動力伝達装置の概略構成−
図1は、本実施形態に係る動力伝達装置1の概略構成を説明するための骨子図である。動力伝達装置1は、走行用の駆動力源であるエンジン2からのトルク(動力)を駆動輪7L,7Rに向けて伝達するものである。この動力伝達装置1は、トルクコンバータ3、前後進切換装置4、ベルト式無段変速機5(以下、単に無段変速機5という)、ギヤ機構6、出力ギヤ81が設けられた出力軸8、デファレンシャル装置9等を備えている。
この動力伝達装置1は、ギヤの噛み合いにより動力伝達を行う第1の動力伝達経路と、無段変速機5により動力伝達を行う第2の動力伝達経路とが並列に設けられている。具体的に、第1の動力伝達経路では、エンジン2から出力されたトルクがトルクコンバータ3を経由してタービン軸31に入力され、このトルクがタービン軸31から前後進切換装置4およびギヤ機構6を経由して出力軸8に伝達される。一方、第2の動力伝達経路では、前記タービン軸31に入力されたトルクが無段変速機5を経由して出力軸8に伝達される。そして、車両の走行状態に応じて、動力伝達経路を第1の動力伝達経路と第2の動力伝達経路との間で切り替えるようになっている(この動力伝達経路切り替えのための構成については後述する)。
エンジン2は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成されている。トルクコンバータ3は、エンジン2のクランク軸に連結されたポンプ翼車32、および、タービン軸31を介して前後進切換装置4に連結されたタービン翼車33を備えている。また、ポンプ翼車32およびタービン翼車33の間にはロックアップクラッチ34が設けられている。このロックアップクラッチ34が完全係合することによってポンプ翼車32とタービン翼車33とが一体回転する。
前後進切換装置4は、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、ダブルピニオン型の遊星歯車装置41を備えている。遊星歯車装置41のキャリヤ42がタービン軸31および無段変速機5の入力軸51に一体的に連結され、リングギヤ43が後進用ブレーキB1を介してハウジング11に選択的に連結され、サンギヤ44が小径ギヤ61に連結されている。また、サンギヤ44とキャリヤ42とは、前進用クラッチC1を介して選択的に連結される。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合要素である。
ギヤ機構6は、前記小径ギヤ61と、この小径ギヤ61に噛み合い且つ第1カウンタ軸62に相対回転不能に設けられた大径ギヤ63とを備えている。第1カウンタ軸62と同じ回転軸心まわりには、アイドラギヤ64が第1カウンタ軸62に対して相対回転可能に設けられている。また、第1カウンタ軸62とアイドラギヤ64との間には、これらを選択的に断接する噛合クラッチD1が設けられている。この噛合クラッチD1は、第1カウンタ軸62に形成されている第1ギヤ65と、アイドラギヤ64に形成されている第2ギヤ66と、これら第1ギヤ65および第2ギヤ66と噛合可能なスプライン歯が形成されたハブスリーブ67とを備えている。ハブスリーブ67がこれら第1ギヤ65および第2ギヤ66と嵌合することで、第1カウンタ軸62とアイドラギヤ64とが接続される。また、噛合クラッチD1は、ハブスリーブ67が両ギヤ65,66と嵌合する際に回転を同期させる図示しないシンクロメッシュ機構を備えている。
アイドラギヤ64は、そのアイドラギヤ64よりも大径の入力ギヤ68と噛み合わされている。この入力ギヤ68は、無段変速機5のセカンダリプーリ53の回転軸心と共通の回転軸心上に配置されている前記出力軸8に対して相対回転不能に設けられている。出力軸8は、前記回転軸心まわりに回転可能に配置されており、前記入力ギヤ68および出力ギヤ81が相対回転不能に設けられている。前記前進用クラッチC1および噛合クラッチD1が共に係合され、且つ後述するベルト走行用クラッチC2が解放されることで、エンジン2のトルクが、タービン軸31、前後進切換装置4およびギヤ機構6を経由して出力軸8に伝達される前記第1の動力伝達経路が形成される。このため、前記前進用クラッチC1が本発明でいう「第1の動力伝達経路によって動力を伝達する際に係合する第1クラッチ」に相当する。
無段変速機5は、タービン軸31に連結された入力軸51と出力軸8との間の動力伝達経路上に設けられ、入力軸51に設けられた入力側部材であるプライマリプーリ52と、出力側部材であるセカンダリプーリ53と、その一対のプーリ52,53の間に巻き掛けられた伝動ベルト54とを備えており、一対のプーリ52,53と伝動ベルト54との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
プライマリプーリ52は、入力軸51に固定された固定シーブ52aと、入力軸51に対して軸まわりの相対回転が不能かつ軸方向の移動が可能に設けられた可動シーブ52bと、それらの間のV溝幅を変更するために可動シーブ52bを移動させる推力を発生させるプライマリ側油圧アクチュエータ52cとを備えている。また、セカンダリプーリ53は、固定シーブ53aと、この固定シーブ53aに対して軸まわりの相対回転が不能かつ軸方向の移動が可能に設けられた可動シーブ53bと、それらの間のV溝幅を変更するために可動シーブ53bを移動させる推力を発生させるセカンダリ側油圧アクチュエータ53cとを備えて構成されている。
前記一対のプーリ52,53のV溝幅が変化して伝動ベルト54の掛かり径(有効径)が変更されることで、実変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変更可能となっている。
また、無段変速機5と出力軸8との間には、これらの間を選択的に断接するベルト走行用クラッチC2が設けられている。このベルト走行用クラッチC2は油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合要素である。このベルト走行用クラッチC2が係合され、且つ前進用クラッチC1が解放されることで、エンジン2のトルクが、入力軸51および無段変速機5を経由して出力軸8に伝達される前記第2の動力伝達経路が形成される。このため、前記ベルト走行用クラッチC2が本発明でいう「第2の動力伝達経路によって動力を伝達する際に係合する第2クラッチ」に相当する。
出力ギヤ81は、第2カウンタ軸91に固定されている大径ギヤ92と噛み合わされている。第2カウンタ軸91には、デファレンシャル装置9のデフリングギヤ93と噛み合う小径ギヤ94が設けられている。デファレンシャル装置9は、周知の差動機構によって構成されている。
−動力伝達装置の作動−
次に、前記のように構成された動力伝達装置1の作動について、図2に示す各走行パターン毎の係合要素の係合表を用いて説明する。図2において、C1が前進用クラッチC1の作動状態に対応し、C2がベルト走行用クラッチC2の作動状態に対応し、B1が後進用ブレーキB1の作動状態に対応し、D1が噛合クラッチD1の作動状態に対応している。また、「○」が係合(接続)を示し、「×」が解放(遮断)を示している。
先ず、ギヤ機構6を経由してエンジン2のトルクが出力軸8に伝達される走行パターン、すなわち第1の動力伝達経路によってトルクが伝達される走行パターンについて説明する。この走行パターンが図2のギヤ走行に対応し、図2に示すように、前進用クラッチC1および噛合クラッチD1が係合される一方、ベルト走行用クラッチC2および後進用ブレーキB1が解放される。
前進用クラッチC1が係合されることで、前後進切換装置4を構成する遊星歯車装置41が一体回転するので、小径ギヤ61がタービン軸31と同回転速度で回転する。また、噛合クラッチD1が係合されることで、第1カウンタ軸62とアイドラギヤ64とが接続されて一体的に回転する。従って、前進用クラッチC1および噛合クラッチD1が係合されることで、第1の動力伝達経路が成立し、エンジン2のトルクが、トルクコンバータ3、タービン軸31、前後進切換装置4、ギヤ機構6、アイドラギヤ64および入力ギヤ68を経由して出力軸8および出力ギヤ81に伝達される。さらに、出力ギヤ81に伝達されたトルクは、大径ギヤ92、小径ギヤ94、およびデファレンシャル装置9を経由して左右の駆動輪7L,7Rに伝達される。
次いで、無段変速機5を経由してエンジン2のトルクが出力軸8に伝達される走行パターン、すなわち第2の動力伝達経路によってトルクが伝達される走行パターンについて説明する。この走行パターンが図2のベルト走行(高車速)に対応し、図2のベルト走行に示すように、ベルト走行用クラッチC2が係合される一方、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1および噛合クラッチD1が解放される。
ベルト走行用クラッチC2が係合されることで、セカンダリプーリ53と出力軸8とが接続するので、セカンダリプーリ53と出力軸8および出力ギヤ81とが一体回転する。従って、ベルト走行用クラッチC2が接続されると、前記第2の動力伝達経路が成立し、エンジン2のトルクが、トルクコンバータ3、タービン軸31、入力軸51および無段変速機5を経由して出力軸8および出力ギヤ81に伝達される。さらに、出力ギヤ81に伝達されたトルクは、大径ギヤ92、小径ギヤ94、およびデファレンシャル装置9を経由して左右の駆動輪7L,7Rに伝達される。ここで、このベルト走行中に噛合クラッチD1が解放されるのは、ベルト走行中におけるギヤ機構6等の引き摺りをなくすとともに、高車速時においてギヤ機構6等が高回転化するのを防止するためである。
前記ギヤ走行は、低車速領域において選択される。第1の動力伝達経路によって動力伝達が行われている際のギヤ比(タービン軸31の回転速度Nin/出力軸8の回転速度Nout)は、無段変速機5の最大変速比γmaxよりも大きな値に設定されている。すなわち、この第1の動力伝達経路でのギヤ比は、無段変速機5では成立しない値に設定されている。そして、例えば車速Vが上昇するなどしてベルト走行の実行条件が成立すると、前記ベルト走行に切り替えられる。ここで、ギヤ走行からベルト走行(高車速)へ切り替える際、および、ベルト走行(高車速)からギヤ走行へ切り替える際には、図2のベルト走行(中車速)を過渡的に経由して切り替えられる。
例えばギヤ走行からベルト走行(高車速)に切り替えられる場合、ギヤ走行に対応する前進用クラッチC1および噛合クラッチD1が係合した状態から、ベルト走行用クラッチC2および噛合クラッチD1が係合した状態に過渡的に切り替えられる。すなわち、前進用クラッチC1およびベルト走行用クラッチC2の掛け換え(有段変速)が開始される。このとき、動力伝達経路が第1の動力伝達経路から第2の動力伝達経路に切り替えられ、動力伝達装置1においては実質的にアップシフトされる。そして、動力伝達経路が切り替えられた後、不要な引き摺りやギヤ機構6等の高回転化を防止するために噛合クラッチD1が解放される。
また、ベルト走行(高車速)からギヤ走行に切り替えられる場合、ベルト走行用クラッチC2が係合された状態から、ギヤ走行への切り替え準備として噛合クラッチD1が係合される状態に過渡的に切り替えられる(ダウンシフト準備)。このとき、ギヤ機構6を経由して遊星歯車装置41のサンギヤ44にも回転が伝達された状態となり、この状態から前進用クラッチC1およびベルト走行用クラッチC2の掛け換え(前進用クラッチC1の係合、ベルト走行用クラッチC2の解放)が実行されることで、動力伝達経路が第2の動力伝達経路から第1の動力伝達経路に切り替えられる。このとき、動力伝達装置1にあっては実質的にダウンシフトされる。
−制御系−
図3は、動力伝達装置1およびエンジン2の制御系を示すブロック図である。ECU100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。このECU100は、エンジン2の出力制御、無段変速機5の変速制御やベルト挟圧力制御、動力伝達装置1の動力伝達経路を切り替える制御等を実行するようになっている。
ECU100には、エンジン回転速度センサ110により検出されたクランク軸の回転角度(位置)Acrおよびエンジン2の回転速度(エンジン回転速度)Neを表す信号、タービン回転速度センサ111により検出されたタービン軸31の回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、入力軸回転速度センサ112により検出された無段変速機5の入力軸51の回転速度である入力軸回転速度Ninを表す信号、出力軸回転速度センサ113により検出された車速Vに対応する出力軸8の回転速度である出力軸回転速度Noutを表す信号、スロットルセンサ114により検出された電子スロットル弁のスロットル開度θthを表す信号、アクセル開度センサ115により検出された運転者の加速要求量としてのアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、フットブレーキスイッチ116により検出された常用ブレーキであるフットブレーキが操作された状態を示すブレーキオンBonを表す信号、レバーポジションセンサ117により検出されたシフトレバーのレバーポジション(操作位置)Pshを表す信号、油圧センサ118により検出されたSLS実油圧(後述するSLSソレノイドバルブにより調整されるセカンダリ油圧)等が、それぞれ供給される。また、ECU100は、例えば出力軸回転速度Noutと入力軸回転速度Ninとに基づいて動力伝達装置1で成立している実変速比γ(=Nin/Nout)を逐次算出する。
また、ECU100からは、エンジン2の出力制御のためのエンジン出力制御指令信号Se、無段変速機5の変速に関する油圧制御のための油圧制御指令信号Scvt、動力伝達装置1の動力伝達経路の切り替えに関連する前後進切換装置4(前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1)、ベルト走行用クラッチC2および噛合クラッチD1への油圧制御指令信号Sswt等が、それぞれ出力される。
具体的には、前記エンジン出力制御指令信号Seとして、エンジン2のスロットルバルブの開閉を制御するためのスロットル信号や、インジェクタから噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や、点火プラグの点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。
また、前記油圧制御指令信号Scvtとして、プライマリ側油圧アクチュエータ52cに供給されるプライマリ油圧を調圧する図示しないSLPソレノイドバルブを駆動するための指令信号、セカンダリ側油圧アクチュエータ53cに供給されるセカンダリ油圧を調圧する図示しないSLSソレノイドバルブを駆動するための指令信号などが油圧制御回路12へ出力される。プライマリ油圧は、無段変速機5の変速比を調整するための油圧である。また、セカンダリ油圧は、ベルト挟圧を調整するための油圧である。つまり、無段変速機5の変速比制御は、アクセル開度Acc、車速V、ブレーキ信号Bonなどに基づいて算出される目標変速比となるように無段変速機5の変速比γが制御される。この際、無段変速機5のベルト滑りが発生しないようにしつつエンジン2の動作点が最適燃費線上となる無段変速機5の目標変速比を達成するように、プライマリ油圧およびセカンダリ油圧が調圧される。ECU100からは、目標プライマリ油圧を達成するためのプライマリ指示油圧の指令信号、および、目標セカンダリ油圧を達成するためのセカンダリ指示油圧の指令信号が油圧制御回路12へ出力される。そして、プライマリ指示油圧の指令信号に従ってSLPソレノイドバルブが作動し、セカンダリ指示油圧の指令信号に従ってSLSソレノイドバルブが作動する。
また、前記油圧制御指令信号Sswtとして、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、ベルト走行用クラッチC2、噛合クラッチD1およびシンクロ機構それぞれの油圧アクチュエータに供給される油圧を制御する各リニアソレノイドバルブを駆動するための指令信号などが油圧制御回路12へ出力される。なお、このリニアソレノイドバルブの一つとして、前記前進用クラッチC1の係合と解放とを切り替えるための油圧調整を行う図示しないSL1ソレノイドバルブが備えられている。
なお、ギヤ走行(第1の動力伝達経路による動力伝達)が行われている場合には、無段変速機5の変速比は最大(γmax)となっており、伝動ベルト54の滑りを防止するべく、プライマリ油圧に比べてセカンダリ油圧が高くなっている。そして、ライン圧は、プライマリ油圧およびセカンダリ油圧のうちの高い側、つまり、セカンダリ油圧によって決定されることになる。なお、このギヤ走行状態では、無段変速機5に入力されるトルクは小さいため、プライマリ油圧およびセカンダリ油圧は、共に低い値に設定されている。これにより、図示しないオイルポンプの作動に要する動力を小さくして燃料消費率の改善を図っている。このようにセカンダリ油圧が低く設定されていることから、ライン圧も低く設定された状態で、前記ギヤ走行が行われる。
−故障発生時の油圧制御−
次に、本実施形態の特徴である故障発生時の油圧制御について説明する。
前進用クラッチC1に供給する油圧が不足してこの前進用クラッチC1が解放されてしまう故障が生じる場合、その故障原因としては、前進用クラッチC1の係合と解放とを切り替えるための油圧調整を行う前記SL1ソレノイドバルブの故障だけでなく、前記SLSソレノイドバルブの故障の可能性もある。何故なら、前述したように、ギヤ走行中にあっては、SLSソレノイドバルブによって調整されるセカンダリ油圧はライン圧を決定するものであり、このSLSソレノイドバルブに故障が生じた場合には、ライン圧が十分に得られなくなって、前進用クラッチC1に供給する油圧が不足し、この前進用クラッチC1が解放されてしまうからである。
このため、前進用クラッチC1が解放されてしまう故障が生じた場合、その原因がSL1ソレノイドバルブの故障であれば(SLSソレノイドバルブの故障でなければ)、ベルト挟圧が十分に得られる状況であるので、無段変速機5による動力伝達が可能である。つまり、第2の動力伝達経路による動力伝達(ベルト走行)に切り替えることで車両の走行が可能である。
しかし、前進用クラッチC1が解放されてしまう故障の原因がSLSソレノイドバルブの故障であった場合には、ライン圧を十分に確保することができないため、第2の動力伝達経路による動力伝達(無段変速機5による動力伝達)に切り替えたとしても、ベルト挟圧が十分に得られない状況となっているので、ベルトに滑りが生じてしまうことになる。このような状況では、車両の走行が不能となるばかりでなく、ベルト寿命に悪影響を与えてしまうことになる。
このため、前進用クラッチC1が解放されてしまう故障が生じた場合には、その故障原因に応じて、車両走行状態の維持およびベルト滑り防止のための制御を異なるものとする必要があるが、従来の技術にあっては、未だこれを実現できていなかった。
本実施形態はこの点に鑑み、前進用クラッチC1が解放されてしまう故障が生じた場合に、その故障原因が、SL1ソレノイドバルブの故障であるのか、SLSソレノイドバルブの故障であるのかを判別し、その故障原因に応じて、車両走行状態の維持およびベルト滑り防止のための制御を行うようにしている。
具体的には、第1の動力伝達経路による動力伝達(ギヤ走行)の実行条件が成立している際(低車速時)に、前進用クラッチC1が解放して第1の動力伝達経路による動力伝達(ギヤ走行)が不能となった場合には、無段変速機5のセカンダリプーリ53に供給するセカンダリ油圧(セカンダリ側油圧アクチュエータ53cに供給するセカンダリ油圧)の指示油圧を所定値以上に設定する。この所定値としては、伝動ベルト54の滑りを生じさせない前記ベルト挟圧を生じさせる値である。そして、このセカンダリ油圧の実油圧が前記指示油圧以上となった場合には、ベルト走行用クラッチC2を係合させて第2の動力伝達経路による動力伝達(ベルト走行)を実施させる。つまり、SLSソレノイドバルブは故障しておらず、伝動ベルト54の滑りを生じさせないベルト挟圧を生じさせることが可能であるとして、第1の動力伝達経路による動力伝達(ギヤ走行)から第2の動力伝達経路による動力伝達(ベルト走行)に切り替える。
一方、セカンダリ油圧の実油圧が前記指示油圧に達しない場合には、無段変速機5のプライマリプーリ52に供給するプライマリ油圧(プライマリ側油圧アクチュエータ52cに供給するプライマリ油圧)の指示油圧を所定値以上に設定する。この所定値としては、前進用クラッチC1の係合を可能にするライン圧が確保される値である。そして、前進用クラッチC1を係合させて第1の動力伝達経路による動力伝達(ギヤ走行)を実施させる。つまり、セカンダリ油圧の実油圧が指示油圧に達しないということは、SLSソレノイドバルブが故障しており、第2の動力伝達経路による動力伝達(ベルト走行)に切り替えた場合には、伝動ベルト54に滑りが生じてしまうとして、ライン圧を上昇させて前進用クラッチC1の係合を可能にし、この前進用クラッチC1を係合させることによって第1の動力伝達経路による動力伝達(ギヤ走行)を実施する。
これらの動作は、前記ECU100によって実行される。
このため、ECU100において、前記セカンダリ油圧の指示油圧を所定値以上(伝動ベルト54の滑りを生じさせないベルト挟圧を生じさせる値以上)に設定する動作を実行する機能部分が本発明でいうセカンダリ油圧指示部として構成されている。また、ECU100において、セカンダリ油圧の実油圧が指示油圧以上となった場合に、ベルト走行用クラッチC2を係合させて第2の動力伝達経路による動力伝達を実施させる動作を実行する機能部分が本発明でいう第2動力伝達実施部として構成されている。また、セカンダリ油圧の実油圧が前記指示油圧に達しない場合に、プライマリ油圧の指示油圧を所定値以上(前進用クラッチC1の係合を可能にするライン圧が確保される値以上)に設定し、前進用クラッチC1を係合させて第1の動力伝達経路による動力伝達を実施させる動作を実行する機能部分が本発明でいう第1動力伝達実施部として構成されている。
以下、前述した故障発生時の油圧制御を含む走行状態切り替えのための油圧制御の具体的な手順について図4のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートは、エンジン2の始動後、所定時間毎に繰り返して実行される。
先ず、ステップST1において、ギヤ走行の実行条件が成立しているか否かを判定する。前述したようにギヤ走行は低車速領域において選択される。このため、このステップST1の判定では、レバーポジションセンサ117により検出されているシフトレバーのレバーポジションがD(ドライブ)位置にあり、且つ出力軸回転速度センサ113により検出されている出力軸8の回転速度に対応する車速Vが所定値以下(例えば15km/h以下)である場合に、低車速領域にあるとしてYES判定されることになる。前記の値はこれに限定されるものではなく、適宜設定される。
ギヤ走行の実行条件が成立しており、ステップST1でYES判定された場合には、ステップST2に移り、ギヤ走行が不能となっているか否かを判定する。この判定として具体的には、例えば、前進用クラッチC1および噛合クラッチD1を係合させる油圧制御を行った状態で、タービン回転速度センサ111により検出されているタービン軸31の回転速度と、出力軸回転速度センサ113により検出されている出力軸8の回転速度との速度比が、ギヤ機構6における変速比に対応したものになっているか否かを判定する。つまり、油圧不足や故障によって前進用クラッチC1が解放してギヤ走行が不能となっている場合には、ギヤ機構6による動力伝達が行われないため、タービン軸31の回転速度と出力軸8の回転速度との速度比が、ギヤ機構6における変速比に対応したものとはならないので、そのことを検知することで、ギヤ走行が不能となっているか否かが判定可能である。
ギヤ走行が可能な状態であってステップST2でNO判定された場合には、ステップST3に移り、ギヤ走行を実施し、そのままリターンされる。つまり、前進用クラッチC1および噛合クラッチD1の係合状態を維持し、第1の動力伝達経路を成立させてギヤ走行を実施する。
一方、ギヤ走行が不能となっており、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST4に移り、ECU100のRAMに記憶されるギヤ走行不能フラグを1にセットする。その後、ステップST5に移り、セカンダリ油圧の指示油圧(SLSソレノイドバルブにより調整されるセカンダリ油圧の指示油圧)を所定値αに設定する。この所定値αは、前述したように、伝動ベルト54の滑りを生じさせないベルト挟圧を生じさせる値として実験またはシミュレーションによって設定されている。なお、ここでは、セカンダリ油圧の指示油圧を、所定値αを超える値に設定してもよい。
このステップST1,ST2,ST5の動作が、本発明でいう「セカンダリ油圧指示部による動作であって、第1の動力伝達経路による動力伝達の実行条件が成立している際に、第1クラッチが解放して第1の動力伝達経路による動力伝達が不能となった場合、無段変速機のセカンダリプーリに供給するセカンダリ油圧の指示油圧を、ベルトの滑りを生じさせないベルト挟圧を生じさせる所定値以上に設定する動作」に相当する。
このようにしてセカンダリ油圧の指示油圧を設定した後、ステップST6に移り、セカンダリ実油圧(SLSソレノイドバルブにより調整されて実際に発生しているセカンダリ油圧)が前記所定値(セカンダリ指示油圧)α未満であるか、つまり、セカンダリ実油圧がセカンダリ指示油圧αに達しない状態となっているか否かを判定する。このセカンダリ実油圧は、前記油圧センサ118によって検出される。
セカンダリ実油圧がセカンダリ指示油圧α以上であり、ステップST6でNO判定された場合には、ステップST7に移り、ECU100のRAMに記憶されるベルト走行不能フラグを0にリセットする。その後、ステップST8に移り、ベルト走行を実施する。つまり、セカンダリ実油圧がセカンダリ指示油圧α以上であるということは、SLSソレノイドバルブが正常であり、十分なセカンダリ油圧が確保される状況であるため、伝動ベルト54の滑りを生じさせることなく無段変速機5による動力伝達が可能であると判断できる。このため、ベルト走行用クラッチC2を係合させて(前進用クラッチC1を解放して)ベルト走行を実施する。これにより、ベルトの滑りを生じさせることなく動力伝達が良好に行われることになる。
このステップST6,ST8の動作が、本発明でいう「第2動力伝達実施部による動作であって、セカンダリ油圧の実油圧が指示油圧以上となった場合に、第2クラッチを係合させて第2の動力伝達経路による動力伝達を実施させる動作」に相当する。
一方、セカンダリ実油圧がセカンダリ指示油圧α未満であり、ステップST6でYES判定された場合には、ステップST9に移り、前記ベルト走行不能フラグを1にセットする。その後、ステップST10に移り、プライマリ油圧の指示油圧(SLPソレノイドバルブにより調整されるプライマリ油圧の指示油圧)を所定値βに設定する。この所定値βは、前述したように、前進用クラッチC1の係合を可能にするライン圧が確保される値として実験またはシミュレーションによって設定されている。なお、ここでは、プライマリ油圧の指示油圧を、所定値βを超える値に設定してもよい。
その後、ステップST11に移り、ギヤ走行が可能となったか否かを判定する。この判定は、前記ステップST2の判定と同様にして行われる。
ギヤ走行が可能となり、ステップST11でYES判定された場合には、ステップST12に移り、ギヤ走行を実施する。つまり、セカンダリ実油圧がセカンダリ指示油圧α未満であるということは、前進用クラッチC1が解放する故障の原因はSLSソレノイドバルブの故障である可能性があると判断できる。この場合、第2の動力伝達経路による動力伝達は不能となる。このため、プライマリ油圧の指示油圧を高く設定してライン圧を高め、前進用クラッチC1を係合させ、ギヤ走行を実施する。その後、ステップST13において、ギヤ走行不能フラグを0にリセットしてリターンされる。
このステップST6,ST10,ST11,ST12の動作が、本発明でいう「第1動力伝達実施部による動作であって、セカンダリ油圧の実油圧が指示油圧に達しない場合に、無段変速機のプライマリプーリに供給するプライマリ油圧の指示油圧を、第1クラッチの係合を可能にするライン圧が確保される所定値以上に設定し、第1クラッチを係合させて第1の動力伝達経路による動力伝達を実施させる動作」に相当する。
一方、依然としてギヤ走行が不能であり、ステップST11でNO判定された場合には、ギヤ走行もベルト走行も不能な状態になっているとして本制御を終了する。例えばSLSソレノイドバルブおよびSLPソレノイドバルブが共に故障している場合が想定される。
一方、車両の低車速走行中に車速が所定値以上に達してギヤ走行の実行条件が解除され、ステップST1でNO判定された場合には、ステップST14に移り、前記ベルト走行不能フラグが1にセットされているか否かを判定する。例えば、ステップST9においてベルト走行不能フラグが1にセットされたままギヤ走行が実施され、車速の上昇に伴ってギヤ走行の実行条件が解除されたか否かを判定する。
ベルト走行不能フラグが1にセットされており、ステップST14でYES判定された場合には、ステップST15に移り、前記ギヤ走行不能フラグが1にセットされているか否かを判定する。
ギヤ走行不能フラグが0にリセットされており、ステップST15でNO判定された場合には、ステップST16に移り、ギヤ走行を実施(ギヤ走行を継続)してリターンされる。一方、ギヤ走行不能フラグが1にセットされており、ステップST15でYES判定された場合には、車両の走行が不能になっているとして本制御を終了する。例えば、ベルト走行不能フラグが1にセットされた状態でギヤ走行を実施している状況で(ステップST12)、ギヤ走行が不能となった場合が想定される。
また、ベルト走行不能フラグが0にリセットされており、ステップST14でNO判定された場合には、ステップST8に移り、ベルト走行を実施(ベルト走行を継続)する。
以上の動作が繰り返され、車速の変化、および、SL1ソレノイドバルブやSLSソレノイドバルブの故障発生の有無に応じて動力伝達装置1における動力伝達状態が切り替えられる。つまり、ギヤ走行とベルト走行とが切り替えられる。
このような油圧制御が行われるため、前記ECU100によって(より具体的には、前述したECU100における各機能部分によって)本発明に係る動力伝達装置の制御装置が構成される。この制御装置は、タービン回転速度センサ111、出力軸回転速度センサ113、レバーポジションセンサ117、油圧センサ118等からの各信号を入力信号として受信する構成となっている。また、この制御装置は、前進用クラッチC1、ベルト走行用クラッチC2、SLSソレノイドバルブ、SLPソレノイドバルブ、SL1ソレノイドバルブ等への指令信号を出力信号として出力する構成となっている。
図5は、本実施形態におけるタービン回転速度Nt、前進用クラッチ回転速度NC1、ギヤ走行不能フラグ、プライマリ油圧、セカンダリ油圧、ベルト走行不能フラグの変化の一例を示すタイミングチャート図である。また、図6は、比較例における同様のタイミングチャート図である。
図6に示す比較例は、ギヤ走行が不能であることが判定された場合には、一旦ベルト走行に切り替え、このベルト走行が不能であることが判定された際には、プライマリ油圧の指示油圧を高く設定して、ギヤ走行に戻すものとなっている。
図6に示すように、この比較例では、タービン回転速度Ntと前進用クラッチ回転速度NC1との偏差が大きくなって、タイミングt1でギヤ走行が不能であることが判定された場合に、ベルト走行に切り替えられる。このタイミングt1で、ギヤ走行不能フラグは0から1にセットされ、ベルト走行に切り替えるべくセカンダリ指示油圧が上昇している。
その後、セカンダリ油圧の指示油圧と実油圧との偏差が大きくなったことにより、タイミングt2でベルト走行が不能であることが判定されると、プライマリ油圧の指示油圧が高く設定されて、ギヤ走行に戻されることになる。
この比較例の場合、ベルト走行期間(タイミングt1からタイミングt2の期間)では、ベルト挟圧が十分に得られず、ベルト走行が不能であるにも拘わらず、ベルト走行を実施する制御が行われる。このため、伝動ベルトに滑りが生じている可能性がある。
これに対し、本実施形態における油圧制御では、図5に示すように、タービン回転速度Ntと前進用クラッチ回転速度NC1との偏差が大きくなって、タイミングT1でギヤ走行が不能であることが判定された場合に、セカンダリ油圧の指示油圧が高く(前記所定値α)に設定される。そして、このセカンダリ油圧の指示油圧と実油圧との偏差が大きくなって、タイミングT2でベルト走行が不能であることが判定されると、プライマリ油圧の指示油圧が高く(前記所定値β)に設定され、ギヤ走行が行われることになる。つまり、ギヤ走行が不能である場合には、ベルト走行を行わせることなく、ライン圧の上昇制御によるギヤ走行を可能にしている。このため、伝動ベルト54に滑りを生じさせることがない。また、比較例のものに比べて早期にベルト走行による車両の走行が実現できる。
以上説明したように本実施形態では、前進用クラッチC1が解放してギヤ走行(第1の動力伝達経路の動力伝達による走行)が不能となった場合には、セカンダリ油圧の指示油圧を、伝動ベルト54の滑りを生じさせないベルト挟圧を生じさせる所定値α以上に設定する。そして、セカンダリ油圧の実油圧が指示油圧α以上となった場合には、十分なセカンダリ油圧が確保される状況であり、伝動ベルト54の滑りを生じさせることなく無段変速機5による動力伝達が可能であると判断できる。そして、この場合、ベルト走行用クラッチC2が係合され、ベルト走行(第2の動力伝達経路の動力伝達による走行)が実施される。これにより、伝動ベルト54の滑りを生じさせることなく動力伝達を良好に行うことができる。一方、セカンダリ油圧の実油圧が指示油圧αに達しない場合には、故障(前進用クラッチC1が解放する故障)の原因はセカンダリ油圧を調整するSLSソレノイドバルブの故障である可能性があると判断できる。この場合、第2の動力伝達経路による動力伝達は不能となる。このため、プライマリ油圧の指示油圧を、前進用クラッチC1の係合を可能にするライン圧が確保される所定値β以上に設定する。そして、前進用クラッチC1が係合され、ギヤ走行(第1の動力伝達経路の動力伝達による走行)が実施される。これにより、動力伝達を良好に行うことができる。このように、本実施形態では、ギヤ走行が不能となる原因が、SL1ソレノイドバルブであるのか、SLSソレノイドバルブであるのかに応じて異なる制御を実施することが可能となり、ギヤ走行が不能となった原因に応じて、動力伝達状態の維持およびベルト滑り防止のための制御を異なるものとすることができる。
(変形例)
次に変形例について説明する。この変形例は、ギヤ走行が不能であると判定された場合の動作が前記実施形態のものと異なっている。その他の構成および動作は前記実施形態のものと同様である。このため、ここでは、前記実施形態との相違点について主に説明する。
図7は、本変形例における故障発生時の油圧制御を含む走行状態切り替えのための油圧制御の手順を示すフローチャート図である。このフローチャートにおけるステップST1〜ステップST16の動作は、前記実施形態において図4で示したフローチャートにおけるステップST1〜ステップST16の動作と同様である。
本変形例では、予め、無段変速機5による動力伝達が正常に行える状態にあるか否かを判定するようになっている。例えば、過去の走行状態において、ベルト走行の実行条件が成立して(車速が所定以上となってベルト走行の実行条件が成立して)ベルト走行を実施した際に、プライマリ油圧およびセカンダリ油圧が指示油圧に一致しているか否かを判定しておく。この判定は、各油圧を検出可能な油圧センサからの検出信号によって行われる。
そして、ステップST2でギヤ走行が不能となっていることが判定されると、ステップST4でギヤ走行不能フラグが1にセットされた後、ステップST20に移り、無段変速機5の動力伝達が正常である判定が完了している(判定済みである)か否かを判定する。
そして、無段変速機5の動力伝達が正常である判定が完了しており、ステップST20でYES判定された場合には、ステップST8に移って、第2の動力伝達経路によるベルト走行を実施する。つまり、ベルト走行用クラッチC2を係合させることによってベルト走行を実施する。
一方、無段変速機5の動力伝達が正常である判定が完了しておらず、ステップST20でNO判定された場合には、ステップST5に移って、セカンダリ油圧の指示油圧を所定値αに設定する。このセカンダリ油圧の指示油圧を所定値αに設定した以降の動作は、前記実施形態の場合と同様である。
本変形例によれば、予め、無段変速機5による動力伝達が正常に行える状態にあるか否かを判定しているため、この無段変速機5による動力伝達が正常に行える状態にあれば、セカンダリ油圧の指示油圧を所定値αに設定することなく、ベルト走行に移ることが可能である。このため、無段変速機5による動力伝達が正常に行える状態にあっては、オイルポンプの作動に要する動力を小さくすることができ、燃料消費率の改善を図ることができる。
−他の実施形態−
前記実施形態および前記変形例において、ギヤ走行が不能と判断された場合およびギヤ走行が不能と判断された場合には、車室内のメータパネル上のMIL(警告灯)を点灯させて運転者に警告を促すと共に、ECU100に備えられたダイアグノーシスに異常情報を書き込むようにしてもよい。この場合、図4および図7で示したフローチャートにおけるステップST4、ST9の動作の後(フラグを1にセットした後)に、前記MILの点灯およびダイアグノーシスへの異常情報(ギヤ走行不能情報やベルト走行不能情報)の書き込みを行うことになる。
また、前記実施形態および前記変形例では、駆動力源としてエンジンのみを搭載した車両に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、駆動力源としてエンジンおよび電動モータを搭載したハイブリッド車両や、駆動力源として電動モータのみを搭載した電気自動車に対しても適用が可能である。
本発明は、ギヤの噛み合いにより動力伝達を行う第1の動力伝達経路と、ベルト式無段変速機により動力伝達を行う第2の動力伝達経路とが並列に設けられた動力伝達装置に適用可能である。
1 動力伝達装置
2 エンジン(駆動力源)
5 ベルト式無段変速機
52 プライマリプーリ
53 セカンダリプーリ
54 伝動ベルト
6 ギヤ機構
100 ECU
C1 前進用クラッチ(第1クラッチ)
C2 ベルト走行用クラッチ(第2クラッチ)

Claims (1)

  1. 駆動力源からの動力を伝達する動力伝達経路として、ギヤの噛み合いにより動力伝達を行う第1の動力伝達経路と、ベルトが巻き掛けられたプライマリプーリおよびセカンダリプーリを備えたベルト式無段変速機により動力伝達を行う第2の動力伝達経路とが並列に設けられ、前記第1の動力伝達経路によって動力を伝達する際に係合する第1クラッチと、前記第2の動力伝達経路によって動力を伝達する際に係合する第2クラッチとを備えた動力伝達装置に適用される制御装置において、
    前記第1の動力伝達経路による動力伝達の実行条件が成立している際に、前記第1クラッチが解放して前記第1の動力伝達経路による動力伝達が不能となった場合、前記無段変速機の前記セカンダリプーリに供給するセカンダリ油圧の指示油圧を、ベルトの滑りを生じさせないベルト挟圧を生じさせる所定値以上に設定するセカンダリ油圧指示部と、
    前記セカンダリ油圧の実油圧が前記指示油圧以上となった場合に、前記第2クラッチを係合させて前記第2の動力伝達経路による動力伝達を実施させる第2動力伝達実施部と、
    前記セカンダリ油圧の実油圧が前記指示油圧に達しない場合に、前記無段変速機の前記プライマリプーリに供給するプライマリ油圧の指示油圧を、前記第1クラッチの係合を可能にするライン圧が確保される所定値以上に設定し、前記第1クラッチを係合させて前記第1の動力伝達経路による動力伝達を実施させる第1動力伝達実施部とを備えていることを特徴とする動力伝達装置の制御装置。
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