以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰り返さないものとする。
図1を参照して、本実施の形態に係るハイブリッド車両1(以下、単に車両1と記載する)の全体ブロック図を説明する。車両1は、トランスミッション8と、エンジン10と、ドライブシャフト17と、ディファレンシャルギヤ18と、PCU(Power Control Unit)60と、バッテリ70と、駆動輪72と、シフトレバー76と、コンビネーションメータ90と、アクセルペダル160と、ブレーキペダル164と、ECU(Electronic Control Unit)200とを含む。
エンジン10は、複数の気筒112を含む。また、エンジン10には、排気通路80の一方端が連結される。排気通路80の他方端は、マフラー(図示せず)に連結される。排気通路80の途中には、触媒84が設けられる。
エンジン10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であって、ECU200からの制御信号S1に基づいて制御される。エンジン10には、エンジン10内の冷却水通路を流通する冷却水の温度(以下、冷却水温とも記載する)Twを検出する水温センサ170が設けられる。水温センサ170は、検出した冷却水温Twを示す信号をECU200に送信する。
エンジン10のクランク軸に対向した位置には、エンジン回転速度センサ11が設けられる。エンジン回転速度センサ11は、エンジン10の回転速度(以下、エンジン回転速度と記載する)Neを検出する。エンジン回転速度センサ11は、検出したエンジン回転速度Neを示す信号をECU200に送信する。
本実施の形態においては、エンジン10は、1番気筒から4番気筒までの4つの気筒112を含む。複数の気筒112内の頂部の各々には、点火プラグ(図示せず)が設けられる。
エンジン10には、複数の気筒112の各々に対応した燃料噴射装置(図示せず)が設けられる。なお、燃料噴射装置は、複数の気筒112の各々の気筒内に設けられてもよいし、各気筒の吸気ポート内に設けられてもよい。
このような構成を有するエンジン10に対して、ECU200は、複数の気筒112の各々に対して適切な時期に適切な量の燃料を噴射したり、複数の気筒112への燃料の噴射を停止したりすることによって、複数の気筒112の各々の燃料噴射量を制御する。
排気通路80に設けられる触媒84は、燃料燃焼中のエンジン10から排出される排気ガスに含まれる未燃成分を酸化したり、酸化成分を還元したりすることによって排気ガスを浄化する触媒コンバータである。触媒84は、排気ガスの排熱によって所定温度以上に暖機されることによって適切な浄化機能が発生する。
トランスミッション8は、入力軸15と、出力軸16と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)20と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)30と、動力分割装置40とを含む。トランスミッション8の入力軸15は、エンジン10のクランク軸に接続される。トランスミッション8の出力軸16は、ディファレンシャルギヤ18およびドライブシャフト17を経由して駆動輪72に接続される。
第1MG20および第2MG30は、たとえば、三相交流回転電機である。第1MG20および第2MG30は、PCU60によって駆動される。
第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電してPCU60を経由してバッテリ70を充電するジェネレータ(発電装置)としての機能を有する。また、第1MG20は、バッテリ70からの電力を受けてエンジン10の出力軸であるクランク軸を回転させる。これによって、第1MG20は、エンジン10を始動するスタータとしての機能を有する。
第1MG20には、MG1回転速度センサ22が設けられる。MG1回転速度センサ22は、第1MG20の回転軸の回転速度Nm1を検出する。MG1回転速度センサ22は、検出したMG1の回転速度Nm1を示す信号をECU200に送信する。
第2MG30は、バッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくともいずれか一方を用いて駆動輪72に駆動力を与える駆動用モータとしての機能を有する。また、第2MG30は、制動時の回生発電によって発生した電力を用いてPCU60を経由してバッテリ70を充電するためのジェネレータとしての機能を有する。
第2MG30には、MG2回転速度センサ32が設けられる。MG2回転速度センサ32は、第2MG30の回転軸の回転速度Nm2を検出する。MG2回転速度センサ32は、検出したMG2の回転速度Nm2を示す信号をECU200に送信する。
動力分割装置40は、エンジン10の発生する動力を、出力軸16を経由したドライブシャフト17への経路と、第1MG20への経路とに分割可能に構成される。動力分割装置40は、たとえば、サンギヤSと、キャリアCと、リングギヤRと、ピニオンギヤPとを含む遊星歯車機構である。サンギヤSは、第1MG20のロータに連結される。リングギヤRは、第2MG30のロータに連結される。ピニオンギヤPは、サンギヤSとリングギヤRとに噛合する。キャリアCは、ピニオンギヤPが自転かつ公転できるようにピニオンギヤPを保持するとともに、入力軸15に連結される。このようにして、エンジン10と、第1MG20と、第2MG30とは、動力分割装置40によって機械的に接続される。
このような構成を有する車両1は、エンジン10および第2MG30のうちの少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。
PCU60は、バッテリ70から供給される直流電力を交流電力に変換し、第1MG20および第2MG30を駆動する。また、PCU60は、第1MG20および第2MG30が発電した交流電力を直流電力に変換し、バッテリ70を充電する。たとえば、PCU60は、直流/交流電力変換のためのインバータ(図示せず)と、インバータの直流リンク側とバッテリ70との間で直流電圧変換を実行するためのコンバータ(図示せず)とを含むように構成される。
バッテリ70は、蓄電装置であり、再充電可能な直流電源である。バッテリ70としては、たとえば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。バッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される他、外部電源(図示せず)から供給される電力を用いて充電されてもよい。なお、バッテリ70は、二次電池に限らず、直流電圧を生成でき、かつ、充電が可能なもの、たとえば、キャパシタ等であってもよい。
バッテリ70には、電流センサ152と、電圧センサ154と、電池温度センサ156とが設けられる。電流センサ152は、バッテリ70の電流IBを検出する。電流センサ152は、電流IBを示す信号をECU200に送信する。電圧センサ154は、バッテリ70の電圧VBを検出する。電圧センサ154は、電圧VBを示す信号をECU200に送信する。電池温度センサ156は、バッテリ70の電池温度TBを検出する。電池温度センサ156は、電池温度TBを示す信号をECU200に送信する。
ECU200は、バッテリ70の電流IBと、電圧VBと、電池温度TBとに基づいてバッテリ70の残存容量(以下、SOC(State Of Charge)と記載する)を推定する。ECU200は、たとえば、電流と、電圧と、電池温度とに基づいてOCV(Open Circuit Voltage)を推定し、推定されたOCVと所定のマップとに基づいてバッテリ70のSOCを推定してもよい。あるいは、ECU200は、たとえば、バッテリ70の充電電流と放電電流とを積算することによってバッテリ70のSOCを推定してもよい。
出力軸回転速度センサ14は、出力軸16の回転速度Npを検出する。出力軸回転速度センサ14は、検出された回転速度Npを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した回転速度Npに基づいて車速Vを算出する。なお、ECU200は、回転速度Npに代えて第2MG30の回転速度Nm2に基づいて車速Vを算出するようにしてもよい。
アクセルペダル160およびブレーキペダル164は、運転席に着席したユーザが足で操作可能な位置に設けられる。アクセルペダル160には、ストロークセンサ162が設けられる。ストロークセンサ162は、アクセルペダル160のストローク量(踏み込み量)APを検出する。ストロークセンサ162は、ストローク量APを示す信号をECU200に送信する。なお、ストロークセンサ162に代えてアクセルペダル160に対する車両1の乗員の踏力を検出するための踏力センサを用いてもよい。
ブレーキペダル164には、ストロークセンサ166が設けられる。ストロークセンサ166は、ブレーキペダル164のストローク量(踏み込み量)BPを検出する。ストロークセンサ166は、ストローク量BPを示す信号をECU200に送信する。なお、ストロークセンサ166に代えてブレーキペダル164に対する車両1の乗員の踏力を検出するための踏力センサやストップランプスイッチを用いてもよい。
シフトレバー76は、ユーザがシフトポジションを選択するためのレバーであり、運転席近傍に設けられる。シフトレバー76は、図2に示すように、シフトゲート78に沿って移動可能に構成される。シフトゲート78には、シフトレバー76が移動可能な予め定められた形状の経路が形成され、経路上の複数の位置に複数のシフトポジションがそれぞれ対応づけられている。
複数のシフトポジションは、たとえば、パーキングポジション(以下、Pポジションと記載する)と、リバースポジション(以下、Rポジションと記載する)と、ニュートラルポジション(以下、Nポジションと記載する)と、ドライブポジション(以下、Dポジションと記載する)と、手動変速ポジション(以下、Mポジションと記載する)と、「+」ポジションと、「−」ポジションとを含む。
Pポジションは、駐車時に車両1の移動を制限するためのシフトポジションである。Rポジションは、車両1の後進走行を行なうためのシフトポジションである。Nポジションは、トランスミッション8を動力遮断状態にするためのシフトポジションである。Dポジションは、車両1の前進走行を行なうためのシフトポジションである。Mポジションは、手動変速モードを選択するためのシフトポジションである。「+」ポジションは、手動変速モードの選択時にユーザがシフトアップを指示するためのシフトポジションである。「−」ポジションは、手動変速モードの選択時にユーザがシフトダウンを指示するためのシフトポジションである。
シフトポジションセンサ168は、シフトレバー76がシフトゲート78においてPポジションと、Rポジションと、Nポジションと、Mポジションと、「+」ポジションと、「−」ポジションとのうちのいずれの位置にあるかを検出する。シフトポジションセンサ168は、シフトレバー76の位置SHTを示す信号をECU200に送信する。
手動変速モードは、ユーザが複数の変速段のうちのいずれかの変速段を手動で選択することを可能とするとともに、選択された変速段に応じて有段式の自動変速機の変速を模擬する変速制御を実行するための制御モードである。本実施の形態において変速段は、1速段と、2速段と、3速段と、4速段とを含む。
各変速段には、車速Vに応じたエンジン回転速度Neの下限値が設定される。各変速段に対して設定されるエンジン回転速度の下限値は、同一の車速Vに対して変速段数が小さくなるほど(1速段に近づくほど)大きい値が設定され、変速段数が大きくなるほど(4速段に近づくほど)小さい値が設定される。
ECU200は、手動変速モードが選択されている場合には、選択されている変速段に対応するエンジン回転速度の下限値を下回らないようにエンジン10、第1MG20および第2MG30を制御する。このようにして、アクセルオフ時にエンジン10のフリクションを利用して変速段に応じた減速トルクを速やかに発生させることができる。
アクセルオフかつブレーキオフ時において、各変速段には、車速Vに応じた駆動輪72における減速トルクが設定される。減速トルクは、車両の進行方向に対応する駆動輪72の回転方向のトルクが正方向とした場合に、負値となる。各変速段に対して設定される減速トルクの大きさは、同一の車速Vに対して変速段数が小さくなるほど(1速段に近づくほど)大きい値が設定され、変速段数が大きくなるほど(4速段に近づくほど)小さい値が設定される。すなわち、本実施の形態において、手動変速モードにおいて選択可能な各「変速段」に応じた減速制御が、ブレーキペダル164が非操作中であって、かつ、アクセルペダル160が操作中である第1操作状態からブレーキペダル164およびアクセルペダル160がいずれも非操作中である第2操作状態になると開始される惰性走行における車両1の減速度の設定が異なる「複数の減速制御モード」に対応する。
シフトレバー76がMポジションに移動された場合には、手動変速モードが選択され、Mポジションから他のシフトポジションに移動されたときに、手動変速モードの選択が解除される。
シフトレバー76がMポジションに移動された後においては、シフトレバー76が「+」ポジションに移動される毎に、変速段が1段ずつアップシフトされる。また、シフトレバー76が「−」ポジションに移動される毎に、変速段が1段ずつダウンシフトされる。
コンビネーションメータ90は、運転席に着席したユーザによって視認可能な位置(たとえば、インストルメントパネル)に設けられ、車両1に関する各種情報を表示する。図3に示すように、コンビネーションメータ90は、第1メータ部92と、第2メータ部94と、表示領域96とを含む。
第1メータ部92は、出力メータと、水温メータとを含む。出力メータは、車両1の出力を表示することでバッテリ70が充電されているか放電されているかを表示する。水温メータは、エンジン10の冷却温度Twを表示する。
第2メータ部94は、スピードメータと、燃料メータとを含む。スピードメータは、車両1の速度を表示する。燃料メータは、燃料タンク内の燃料の残量を表示する。
表示領域96は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)等の液晶パネルによって構成される。表示領域96には、手動変速モードの選択中に、ユーザに変速操作を促す情報を通知するための変速表示領域98が設けられる。なお、表示領域96には、変速表示領域98以外に、表示灯、警告、あるいは走行距離等を表示する領域が設けられる。
変速表示領域98においては、たとえば、ユーザに対してダウンシフトの変速操作を促すための表示(以下、ダウンシフト表示という)が行なわれたり、アップシフトの変速操作を促すための表示(以下、アップシフト表示という)が行なわれたり、アップシフト表示およびダウンシフト表示のいずれも行なわれなかったりする。
変速表示領域98は、アップシフト表示が行なわれるアップシフト表示領域98aと、ダウンシフト表示が行なわれるダウンシフト表示領域98bとを含む。
アップシフト表示が行なわれる場合には、アップシフト表示領域98aに、上方向に頂角の一つが向けられる三角形状のアップシフトマークが表示される。ダウンシフト表示が行なわれる場合には、ダウンシフト表示領域98bに、下方向に頂角の一つが向けられる三角形状のダウンシフトマークが表示される。
コンビネーションメータ90は、ECU200から制御信号S3を受けて、変速表示領域98においてアップシフト表示を行なったり、ダウンシフト表示を行なったり、アップシフト表示あるいはダウンシフト表示を非表示とする非表示処理を行なったりする。
ECU200は、エンジン10を制御するための制御信号S1を生成し、その生成した制御信号S1をエンジン10へ出力する。また、ECU200は、PCU60を制御するための制御信号S2を生成し、その生成した制御信号S2をPCU60へ出力する。さらに、ECU200は、コンビネーションメータ90を制御するための制御信号S3を生成し、その生成した制御信号S3をコンビネーションメータ90へ出力する。
ECU200は、エンジン10およびPCU60等を制御することによって車両1が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体、すなわち、バッテリ70の充放電状態、エンジン10、第1MG20および第2MG30の動作状態を制御する制御装置である。
ECU200は、シフトポジション、アクセルペダル160のストローク量APおよび車速Vに対応する車両要求パワーを算出する。さらに、ECU200は、バッテリ70の現在SOCに基づいて充放電要求パワーを算出する。ECU200は、算出された要求パワーと充放電要求パワーとに応じて、第1MG20および第2MG30のトルクと、エンジン10の出力とを制御する。
以下、ECU200の構成について詳細に説明する。図4は、図1に示したECU200に対して入出力される主な信号及び指令を示した図である。ECU200は、車両1の全体的な制御を実行するためのHV−ECU250と、第1MG20および第2MGを制御するためのMG−ECU300と、エンジン10を制御するためのエンジンECU400と、バッテリ70の状態を監視するための電池ECU500とを含む。
図4を参照して、HV−ECU250は、エンジン回転速度センサ11からの信号と、出力軸回転速度センサ14からの信号と、MG1回転速度センサ22からの信号と、MG2回転速度センサ32からの信号と、ストロークセンサ162からの信号と、ストロークセンサ166からの信号と、シフトポジションセンサ168からの信号と、水温センサ170からの信号と、電池ECU500からバッテリ70のSOC、充電上限電力Winおよび放電上限電力Woutを示す信号とを受信する。
HV−ECU250は、上記の信号に基づいて、エンジン10の出力トルクの目標値を示すエンジントルク指令Terを生成してエンジンECU400に送信する。さらに、HV−ECU250は、上記の信号に基づいて第1MG20のトルク指令Tgrと、第2MG30のトルク指令Tmrを生成してMG−ECU300に送信する。さらに、HV−ECU250は、上記の信号に基づいて車両1に関する各種情報を表示するための表示指令を含む制御信号S3を生成してコンビネーションメータ90に送信する。
HV−ECU250からエンジントルク指令Terを受信したエンジンECU400は、エンジン10の動作を制御するためのスロットル指令や点火指令、燃料噴射指令等を含む制御信号S1を生成してエンジン10へ送信する。
MG−ECU300は、HV−ECU250から受けるトルク指令Tgr,Tmrに基づいて、PCU60の動作を制御するための制御信号S2を生成して、PCU60に送信する。
電池ECU500は、電流センサ152からの信号と、電圧センサ154からの信号と、電池温度センサ156からの信号とを受信する。電池ECU500は、電流センサ152、電圧センサ154および電池温度センサ156の検出結果に基づいてSOCを算出する。SOCの算出方法については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。電池ECU500は、算出されたSOCと電池温度TBとからマップ等を用いて充電上限電力Winと放電上限電力Woutとを算出する。
なお、マップは、たとえば、SOCが満充電状態に近づくほど、あるいは、電池温度TBが上限温度あるいは下限温度に近づくほど、充電上限電力Winが小さくなるように設定される。あるいは、マップは、たとえば、SOCが下限値に近づくほど、あるいは、電池温度が上限温度あるいは下限温度に近づくほど、放電上限電力Woutが小さくなるように設定される。
以上のような構成を有する車両1において、ECU200は、エンジン10の作動中において、触媒84の暖機が完了していない場合には、触媒84の暖機制御を実行する。ECU200は、たとえば、冷却水温Tw等から触媒84の温度の推定値Tcを算出し、算出された推定値Tcが暖機の完了の有無を判定するためのしきい値Tc(0)よりも大きいか否かを判定する。ECU200は、推定値Tcがしきい値Tc(0)以下である場合には、暖機が完了していないと判定して、触媒84の暖機制御を実行する。
ECU200は、たとえば、エンジン回転速度Neが目標回転速度Ne(0)以上になるようにエンジン10を制御する。目標回転速度Ne(0)は、エンジン10の触媒84を暖機するために設定された値であって、たとえば、アイドル回転速度よりも高い回転速度である。ECU200は、暖機制御を開始してから予め定められた時間が経過した後に暖機制御を終了する。予め定められた時間としては、エンジン回転速度Neが目標回転速度Ne(0)以上となるエンジン10の動作を継続させた場合に少なくとも触媒84の温度がしきい値Tc(0)以上となる時間が設定される。
このようなエンジン10の暖機制御中に、燃料噴射の停止制御が実行されることによって、触媒84の暖機が中断される場合がある。燃料噴射の停止制御は、たとえば、ブレーキペダル164が非操作中であって、アクセルペダル160が操作中である第1操作状態からブレーキペダル164およびアクセルペダル160のいずれもが非操作中である第2操作状態になる場合の減速制御時に行なわれる場合がある。以下、惰性走行が開始される場合の減速制御について説明する。
ECU200は、第1操作状態から第2操作状態になる場合には、車速および変速段に応じた車両1に作用する減速トルクTdを設定する。
ECU200は、たとえば、図5に示す、各変速段に設定された車速Vと減速トルクTdとの関係から車両1に作用する減速トルクTdを設定する。図5に示すマップは、各変速段に対応した車速Vと減速トルクTdとの関係の一例を示す。図5の横軸は、車速Vを示し、図5の縦軸は、減速トルクTdを示す。
図5に示すように、減速トルクTdの大きさは、同一の車速である場合には、変速段数が小さくなるほど(1速段に近づくほど)大きくなり、変速段数が大きくなるほど(4速段に近づくほど)小さくなる。なお、ECU200は、たとえば、4速段が選択されており、かつ、車速VがV(0)である場合には、減速トルクTdとしてTd(0)を設定する。
ECU200は、設定された減速トルクTdを、第2MG30における回生発電による制動トルク(以下、回生トルクと記載する)と、エンジン10の摩擦回転抵抗を利用した制動トルク(以下、フリクショントルクと記載する)とによって実現する。変速段に応じた減速トルクTsを実現することによって車両1を変速段に応じた減速度で減速させることができる。
ECU200は、たとえば、減速トルクTdと車速Vとから算出される減速パワーPdの大きさと、充電上限電力Winとを比較し、減速パワーの大きさが充電上限電力Winよりも小さい場合には、第2MG30の回生トルクによって減速トルクTdを実現する。一方、ECU200は、減速パワーの大きさが充電上限電力Winよりも大きい場合には、第2MG30の回生トルクに代えてまたは加えてエンジン10のフリクショントルクによって減速トルクTdを実現する。
ECU200は、第2MG30の回生トルクによって減速トルクTdを実現する場合には、第1MG20のトルク指令値を実質的にゼロにするとともに、車両1の駆動輪に減速トルクTdが発生するように第2MG30の回生トルクを制御する。
一方、ECU200は、エンジン10のフリクショントルクによって減速トルクTdを実現する場合には、エンジン10における燃料噴射を停止しつつ、車速Vに応じて設定されるエンジン回転速度Neの下限値を目標エンジン回転速度として、第1MG20において力行制御あるいは回生制御を実行する。ECU200は、第1MG20の力行制御による消費電力が生じる場合には、生じた消費電力を補うように第2MG30における回生制御を行なう。また、ECU200は、第1MG20の回生制御による発電電力が生じる場合には、生じた発電電力を第2MG30における力行制御によって消費する。第1MG20の回転速度を上昇させることによってエンジン10のフリクショントルクがリングギヤRの車両1の進行方向と逆方向に対応する回転方向に作用することによって減速度トルクTdが実現される。
しかしながら、車両1の減速時にユーザが選択した変速段に応じた減速トルクを目標値として車両1を制御するようにすると、回生発電により発生する電力がバッテリ70での受け入れ可能電力を超える場合がある。このような場合には、エンジンブレーキを発生させる必要があり、エンジン10の燃料噴射を停止せざるを得ない。そのため、燃焼動作による触媒84の暖機が中断され、暖機の完了までに時間を要する場合がある。
そこで、本実施の形態においては、ECU200が、第1操作状態である場合に第2操作状態になったときの回生電力を推定し、推定された回生電力をバッテリ70で受け入れることができない場合に、ユーザに変速段をアップシフトすることを促す情報をユーザに通知するものである。
このようにすると、通知された情報によって、車両が現在の変速段よりも減速度の低い変速段への切り替えを要求していることをユーザが認識することができる。ユーザが通知された情報に従って現在の変速段よりも減速度の低い変速段に切り替える場合には、惰性走行が開始されたときの減速度の大きさを低下することができる。その結果、回生発電により発生する電力を充電上限電力よりも低くすることができるため、エンジン10の燃料噴射を継続して、触媒84の暖機を継続することができる。
図6は、手動変速モード時に変速を促すアップシフト表示およびダウンシフト表示を行なう制御処理を示すフローチャートである。このフローチャートは所定周期で繰り返し実行される。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、手動変速モードが選択されているか否かを判定する。ECU200は、たとえば、シフトレバー76の位置が手動変速モードに対応する位置である場合には、手動変速モードが選択されていると判定して、処理をS102に移す。
S102にて、ECU200は、推奨変速段を設定する。ECU200は、車速Vとアクセルペダル160のストローク量APとに基づいて1速段から4速段とのうちのいずれか一つを推奨変速段として設定する。ECU200は、たとえば、車速Vとアクセルペダル160のストローク量APと、推奨変速段との関係を示すマップを用いて推奨変速段を設定する。マップは、たとえば、車速Vとアクセルペダル160のストローク量APとをパラメータとし、それらの車速およびアクセルペダル160のストローク量APに応じて、燃費の向上を図る上で最適な変速段が設定されたマップである。マップは、実験的あるいは設計的に適合され、ECU200に内蔵されるメモリ等に記憶される。
S102にて推奨変速段が設定されると、S104にて、ECU200は、現在の変速段が推奨変速段よりも小さいか否かを判定する。現在の変速段が推奨変速段よりも小さいと、アップシフトが必要であると判定され、S106に処理が移される。
S106にて、ECU200は、アップシフト表示を禁止する条件が成立するか否かを判定する。アップシフト表示を禁止する条件とは、たとえば、車両1に故障個所があるという条件や、ノイズや騒音、補機類の動作によりエンジン回転速度を維持する必要があるという条件等を含む。アップシフト表示を禁止する条件が成立しない場合に(S106にてNO)、アップシフト表示が可能であると判定され、S108に処理が移される。S108にて、ECU200は、アップシフト表示を行なう。
一方、S104にて現在変速段が推奨変速段以上であると判定される場合には(S104にてNO)、S110にて、ECU200は、アクセルオン中であるか否かを判定する。ECU200は、たとえば、アクセルペダル160のストローク量APがしきい値AP(0)よりも大きい場合には、アクセルオン中であると判定する。
アクセルオン中であると判定される場合(S110にてYES)、S112にて、ECU200は、触媒暖機中であるか否かを判定する。ECU200は、たとえば、触媒84の温度の推定値Tcがしきい値Tc(0)よりも低い場合や、あるいは、暖機制御が開始されてから予め定められた時間が経過していない場合には、触媒暖機中であると判定し、処理をS114に移す。
S114にて、ECU200は、アクセルオフがされる前に、アクセルオフされたことを想定した場合に減速トルクTdが回生トルクにより実現される場合の回生電力の推定値を算出する。ECU200は、たとえば、現在の車速Vと図5に示すマップとから減速トルクTdを算出し、現在の車速Vと減速トルクTdとに基づいて減速パワーPdを算出する。ECU200は、算出される減速パワーPdを回生電力の推定値として算出する。
S116にて、ECU200は、回生電力の推定値の大きさが充電上限電力Winよりも大きいか否かを判定する。回生電力の推定値の大きさが充電上限電力Winよりも大きいと判定される場合には(S116にてYES)、減速パワーPd相当の回生電力がバッテリ70に受け入れられないと判定されて、処理がS118に移される。
S118にて、ECU200は、触媒84の暖機を継続することを目的としたアップシフト表示が行なわれることを示すフラグをオン状態に設定して、処理はS106に移す。
また、S110にて、アクセルオン中でないと判定される場合(S110にてNO)、S120にて、ECU200は、現在変速段が推奨変速段よりも大きいか否かを判定する。現在変速段が推奨変速段よりも大きいと、ダウンシフトが必要であると判定され、S122に処理が移される。
S122にて、ECU200は、ダウンシフト表示を禁止する条件が成立するか否かを判定する。ダウンシフト表示を禁止する条件とは、たとえば、車両1に故障個所があるという条件や、ノイズや騒音、補機類の動作によりエンジン回転速度を維持する必要があるという条件等を含む。ダウンシフト表示を禁止する条件が成立しない場合(S122にてNO)、ダウンシフト表示が可能であると判定され、S124に移される。S124にて、ECU200は、ダウンシフト表示を行なう。
なお、現在変速段と推奨変速段とが同じである場合や(S120にてNO)、アップシフト表示を禁止する条件が成立する場合(S106にてYES)や、ダウンシフト表示を禁止する条件が成立する場合には(S122にてYES)、S126にて、ECU200は、非表示処理を実行する。ECU200は、非表示処理においては、ダウンシフト表示が行なわれている場合は、ダウンシフト表示を非表示とし、アップシフト表示が行なわれている場合には、アップシフト表示を非表示とする。また、ECU200は、S100にて、手動変速モードでないと判定される場合(S100にてNO)、処理を終了する。
次に、図7は、触媒84の暖機を継続することを目的としたアップシフト表示が行なわれた場合に実行される制御処理のフローチャートを示す。
S200にて、ECU200は、触媒暖機によるアップシフト表示中であるか否かを判定する。ECU200は、図6のフローチャートのS118にてフラグがオン状態に設定されている場合には、触媒暖機によるアップシフト表示中であると判定して、処理をS202に移す。
S202にて、ECU200は、ユーザによるアップシフト操作が行なわれたか否かを判定する。ECU200は、たとえば、シフトレバー76が「+」ポジションに移動した場合に、ユーザによるアップシフト操作が行なわれたと判定して(S202にてYES)、処理はをS204に移す。
ECU200は、S204にて暖機制御を継続し、S206にて非表示処理を実行し、S208にて、フラグをオフ状態にセットする。一方、ユーザによるアップシフト操作が行なわれない場合には(S202にてNO)、S210にて、ECU200は、アクセルオフかつブレーキオフであるか否かを判定する。ECU200は、たとえば、アクセルペダル160のストローク量APがしきい値AP(0)以下である場合には、アクセルオフであると判定する。同様に、ECU200は、たとえば、ブレーキペダル164のストローク量BPがしきい値BP(0)以下である場合には、ブレーキオフであると判定する。
アクセルオフかつブレーキオフであると判定される場合(S210にてYES)、S212にて、ECU200は、暖機制御を中止して、燃料噴射の停止を許可して、処理をS206に移す。なお、アクセルオンのままの場合には(S210にてNO)、S214にて、ECU200は、触媒暖機によるアップシフト表示が開始されてから予め定められた時間が経過するか否かを判定する。予め定められた時間が経過するまでは(S214にてNO)、S202にて、ECU200は、再度アップシフト操作があるか否かを判定する。予め定められた時間が経過する場合には(S214にてNO)、S206に処理が移される。なお、S200にて触媒暖機によるアップシフト表示中でないと判定される場合(S200にてNO)、ECU200は、処理を終了する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作について図8を参照しつつ説明する。図8の横軸は時間を示す。図8の縦軸は、アクセルペダルの操作状態と、触媒暖機制御の実行状態と、触媒暖機によるアップシフト表示中であることを示すフラグの状態と、アップシフト表示の実行状態と、現在変速段と、推奨変速段と、充電上限電力Winと、回生電力の推定値と、車速とを示す。
初期状態として、運転者が手動変速モードを選択して3速段で固定した状態でアクセルペダル160を一定量踏み込んで、車両1が緩やかに加速していく場合を想定する。このとき、エンジン10が始動直後であり、触媒84の暖機が完了していないものとする。
そのため、図8の実線LN1に示すようにアクセルオン中である。図8の実線LN2に示すように、触媒84の暖機制御が実行中である。図8の実線LN4に示すように、触媒暖機によるアップシフト表示中であることを示すフラグがオフ状態である。図8の実線LN6に示すように、アップシフト表示は行なわれていない。図8の実線LN8に示すように現在の変速段が3速段である。また、現在の走行状態に基づいて、図8の実線LN10に示すように推奨変速段として3速段が設定されているものとする。また、この時点において、図8の一点鎖線LN11に示す充電上限電力Winが、図8の実線LN12に示す回生電力の推定値よりも高い状態であるものとする。図8の実線LN14に示すように車速Vは、車両1の走行中であることを示す値となる。
なお、充電上限電力Winは、説明の便宜上一定であるものとする。また、実線LN14に示すように、車速Vは、時間が経過するにしたがって増加していく場合を一例として説明する。さらに、車速Vの増加にともなって減速トルクTdも増加する場合を想定する。
たとえば、実線LN14に示すにように時間の経過とともに車速Vが増加していくにしたがって、アクセルオフ時に設定される減速トルクTdが増加していくと実線LN12に示すように回生電力の推定値も増加していく。
手動変速モードが選択されており(S100にてYES)、推奨変速段として3速段が設定されているため(S102)、現在の変速段が推奨変速段以上であると判定される(S104にてNO)。そのため、アクセルオン中であるか否かが判定される(S110)。
実線LN1に示すように、アクセルオン中であり(S110にてYES)、実線LN2に示すように触媒84の暖機制御中であるため(S112)、アクセルオフ時の回生電力の推定値が算出される(S114)。
時間T(0)にて、一点鎖線LN11および実線LN12に示すように、算出された回生電力の推定値の大きさが充電上限電力Winよりも大きいと判定される場合には(S116にてYES)、実線LN4に示すように、フラグがオン状態にセットされた後に(S118)、アップシフト表示の禁止条件が成立しない場合(S106にてNO)、実線LN6に示すように、アップシフト表示が行なわれる(S108)。
時間T(1)にて、ユーザがアップシフト表示にしたがってシフトレバー76を「+」ポジションに移動させることによって実線LN8に示すように、現在変速段が3速段から4速段にアップシフトされる。
触媒暖機によるアップシフト表示が行なわれ(S200にてYES)、ユーザによるアップシフトが行なわれたため(S202)、実線LN2に示すように触媒84の暖機制御が継続される(S204)。そして、実線LN6に示すように、アップシフト表示に対して非表示処理が実行され(S206)、実線LN4に示すように、フラグがオフ状態にセットされる(S208)。
時間T(2)にて、実線LN8,LN10に示すように、現在変速段が推奨変速段以上の場合であって(S104にてNO)、実線LN1に示すように、ユーザがアクセルオフ操作を行なった場合でも(S110にてNO)、一点鎖線LN11および実線12に示すように、回生電力の推定値の大きさが充電上限電力Winよりも小さくなるため、暖機制御が継続して実行可能となる。
一方、時間T(1)にて、図8の破線LN9に示すように、ユーザが3速段から4速段へのアップシフト操作を行なわない場合には、図8の破線LN7に示すように、時間T(1)以降においても、アップシフト表示が継続される。現在変速段が3速段のままであるため、破線LN13に示すように、回生電力の推定値は増加を継続する。
触媒暖機によるアップシフト表示中に(S200にてYES)、アップシフト操作がないまま(S202にてNO)、実線LN1に示すように、アクセルオフされる場合(S210にてYES)、図8の破線LN3に示すように、触媒暖機が中止される(S212)。そして、破線LN7に示すように、アップシフト表示に対して非表示処理が実行され(S206)、破線LN5に示すように、フラグがオフ状態にセットされる。このとき、少なくともエンジン10の燃料噴射が停止され、エンジン10のフリクショントルクによる制動を伴う減速制御が実行されることとなる。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、ユーザに通知された情報(アップシフト表示)によって、車両1が現在の変速段よりも減速度の低い変速段への切り替えを要求していることをユーザが認識することができる。ユーザが通知された情報に従って現在の変速段よりも減速度の低い変速段に切り替える場合には、惰性走行が開始されたときの減速度の大きさを低下することができる。その結果、回生発電により発生する電力を充電上限電力よりも低くすることができるため、エンジン10の燃料噴射を継続して、触媒84の暖機を継続することができる。また、ユーザの意思で減速度の低い減速制御モードに切り替えられるため、惰性走行が開始されたときにユーザが違和感を覚えることが抑制される。したがって、エンジンの触媒の暖機を中断することなく車両の減速時の制動制御を実行するハイブリッド車両を提供することができる。
また、アップシフト表示後に、現在の変速段よりも減速トルクが低い変速段への切り替えが行なわれない場合には、惰性走行が開始されたときの減速トルクとして現在の変速段に対応した減速トルクをユーザが所望していると考えられる。そのため、触媒84の暖機を中止して、回生発電による制動トルクおよびフリクショントルクによって惰性走行中の減速度を制御することによって、ユーザが意図する減速トルクを発生させることができる。
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態においては、手動変速モード時のアクセルオン中に、回生電力の推定値が充電上限電力Winよりも大きい場合にアップシフト表示を行なうものとして説明したが、たとえば、Dポジションよりも減速時の減速トルクが大きく設定されるシフトポジション(たとえば、ブレーキポジション(以下、Bポジションと記載する))が選択されている場合のアクセルオン中に、アクセルオフ時の回生電力の推定値が充電上限電力Winよりも大きい場合に、Dポジションへの変更を促す表示を行なうものとしてもよい。すなわち、すなわち、この場合、Dポジションが選択されている場合のアクセルオフかつブレーキオフ時の減速制御とBポジションが選択されている場合のアクセルオフかつブレーキオフ時減速制御とが、「複数の減速制御モード」に対応する。
このようにしても、エンジンの触媒の暖機を中断することなく車両の減速時の制動制御を実行することができる。
上述の実施の形態において、回生電力の推定値が充電上限電力Winよりも大きい場合に、回生トルクに代えてまたは加えてエンジン10のフリクショントルクで減速トルクを実現する場合を一例として説明したが、たとえば、エンジン10のフリクショントルクのみで減速トルクを実現してもよい。
上述の実施の形態において、冷却水温Twに基づいて触媒温度の推定値Tcを算出し、算出された推定値Tcがしきい値Tc(0)以下であるときに触媒84の暖機制御を実行するものとして説明したが、たとえば、冷却水温Twが、しきい値Tc(0)に対応するしきい値Tw(0)以下であるときに触媒84の暖機制御を実行してもよい。
上述の実施の形態においては、アップシフト表示あるいはダウンシフト表示は、図3に示すように、三角形状のマークを用いたものとして説明したが、たとえば、矢印等のマークが用いられてもよいし、変速先の変速段を表示するものであってもよいし、あるいは、音声案内によって変速先の変速段を通知するものであってもよい。
上述の実施の形態においては、手動変速モードにおいては、シフトレバー76を用いてアップシフト操作あるいはダウンシフト操作を行なうものとして説明したが、たとえば、ハンドルに設けられるアップシフト用のパドルスイッチと、ダウンシフト用のパドルスイッチとを用いてアップシフト操作とダウンシフト操作を行なうものとしてもよい。
上述の実施の形態においては、ECU200は、HV−ECU250と、MG−ECU300と、エンジンECU400と、電池ECU500とを含むものとして説明したが、1つに統合されたECUであってもよい。
上述の実施の形態においては、手動変速モード時のアクセルオン中に、回生電力の推定値の大きさが充電上限電力Winよりも大きい場合にアップシフト表示を行なうものとして説明したが、たとえば、手動変速モード時に代えてシーケンシャルシフトモード(以下、Sモードと記載する)時のアクセルオン中に、回生電力の推定値が充電上限電力Winよりも大きい場合であって、かつ、現在変速段が上限変速段である場合にアップシフト表示を行なうものとしてもよい。
Sモードは、ユーザによって上限変速段を選択可能とする制御モードである。Sモードは、手動変速モードと比較して、選択された変速段を上限として変速が自動的に行なわれる点が異なる。たとえば、Sモードの選択時にユーザによって4速段が選択される場合には、ECU200は、1速段から4速段までのうちで最適な変速段を選択することができる。同様に、Sモードの選択時にユーザによって3速段が選択される場合には、ECU200は、1速段から3速段までのうちで最適な変速段を選択することができる。さらに、Sモードの選択時にユーザによって2速段が選択される場合には、ECU200は、1速段と2速段とのうちの最適な変速段を選択することができる。さらに、Sモードの選択時にユーザによって1速段が選択される場合には、ECU100は、1速段のみ選択可能となる。すなわち、この場合において、Sモードにおいて選択可能な各「変速段」に応じたアクセルオフかつブレーキオフ時の減速制御が、「複数の減速制御モード」に対応する。
図9は、Sモード時に変速を促すアップシフト表示およびダウンシフト表示を行なう制御処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、所定周期で繰り返し実行される。
なお、図9のフローチャートのうちの図6のフローチャートと同様の処理については、同じステップ番号が付与される。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
S300にて、ECU200は、Sモードであるか否かを判定する。ECU200は、たとえば、シフトレバー76の位置がSモードに対応する位置である場合には、Sモードが選択されていると判定して、処理をS102に移す。なお、Sモードに対応する位置は、たとえば、図2で説明したシフトゲート78における手動変速モードに対応する位置(Mポジション)と同じ位置である。
S104にて、現在変速段が推奨変速段よりも小さい場合(S104にてYES)、S302にて、ECU200は、現在変速段が上限変速段であるか否かを判定する。ECU200は、現在変速段が上限変速段である場合には(S302にてYES)、ユーザによるアップシフト操作が必要となるため、処理をS304に移す。S304にて、ECU200は、アップシフト表示の禁止条件が成立するか否かを判定する。アップシフト表示の禁止条件については、手動変速モード時のアップシフト表示の禁止条件と同じであるため、その詳細な説明は繰り返さない。アップシフト表示の禁止条件が成立していない場合(S304にてNO)、ECU200は、アップシフト表示を行なう。
一方、現在の変速段が上限変速段でない場合には(S302にてNO)、アップシフトが可能であるため、S306にて、ECU200は、アップシフトを行なう。
なお、現在変速段が推奨変速段よりも大きい場合には(S102にてYES)、ECU200は、ダウンシフトの禁止条件が成立するか否かを判定する。ダウンシフトの禁止条件は、たとえば、車両1に故障個所があるという条件を含む。ダウンシフトの禁止条件が成立していないと判定される場合(S308にてNO),ECU200は、Sモードにおいて上限変速段以下のダウンシフトは許可されているため、ダウンシフトを行なう。
以上のようにしても、エンジンの触媒の暖機を中断することなく車両の減速時の減速制御を実行することができる。
さらに、上述の実施の形態においては、トランスミッション8は、図1に示したように、第1MG20と、第2MG30と、第1MG20、第2MG30およびエンジン10を機械的に接続する動力分割装置40とを含むものとして説明したが、少なくとも駆動輪72に接続された回転電機を含み、エンジン10と駆動輪72との間で動力伝達が可能であれば、特に図1に示す構成に限定されるものではない。
たとえば、トランスミッション8は、図10に示すように、第2MG30と、ディファレンシャルギヤ18との間にの駆動軸に変速機50が設けられる構成であってもよい。変速機50は、たとえば、変速比の異なる複数の変速段を有する自動変速機である。変速機50においては、ECU200からの制御信号S4に基づいて変速制御が行なわれる。なお、変速機50は、有段式の自動変速機であってもよいし、離散的に設定された複数の変速比を変速段として設定された手動変速モードを有する無段式自動変速機であってもよい。この場合、変速段毎に減速トルクが設定される。変速段毎に設定された減速トルクは、エンジン10のフリクショントルクと第2MG30の回生発電による制動トルクのうちの少なくとも一つを用いて実現される。なお、図10に示す変速機50以外の構成については、図1の構成と同じであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
あるいは、トランスミッション8は、図11に示すように、図10に示す車両1の構成のうちの第1MG20および動力分割装置40に代えてクラッチ52が設けられる構成であってもよい。クラッチ52は、たとえば、乾式のクラッチであって、図示しないクラッチアクチュエータを用いた係合制御によって係合状態および非係合状態のうちのいずれかに切り替え可能である。クラッチ52は、ECU200からの制御信号S5に基づいて係合制御が行なわれる。このような車両1においては、変速段毎に設定された減速トルクは、クラッチ52が係合状態である場合には、エンジン10のフリクショントルクと第2MG30の回生発電による制動トルクのうちの少なくとも一つを利用して実現され、クラッチ52が非係合状態である場合には、第2MG30の回生発電による制動トルクを利用して実現される。なお、図11に示すクラッチ52および変速機50以外の構成については、図1の構成と同じであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。