JP2017099156A - 電流モード制御スイッチング電源装置 - Google Patents

電流モード制御スイッチング電源装置 Download PDF

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Abstract

【課題】スロープ補償を行う場合に、簡単な構成で、入力電圧やインダクタのばらつきや特性変動などに拘わらず、スロープ補償を適切に行うことができる電流モード制御スイッチング電源装置を提供することにある。【解決手段】スイッチング素子2によりコイル3に通断電してコンデンサ5に所定の出力電圧Voutを生成する。制御回路9において、コイル3に流れる電流を電流検出回路10により検出し、スロープ補償演算部11により、入力電圧Vinに反比例し電流値に比例するスロープ補償を演算する。これによりスロープ補償は入力電圧Vinやインダクタの特性変動などの変動要素にも対応した条件で設定できる。制御回路9は駆動回路6に対して、スロープ補償によりPWM信号を生成してスイッチング素子2を駆動制御する。【選択図】図1

Description

本発明は、電流モード制御スイッチング電源装置に関する。
例えば高速応答が可能である電流モード制御のスイッチング電源装置では、デューティが「0.5」以上になるとインダクタ電流が飽和することで、サブハーモニック発振を起こすことが知られている。そこで、「0.5」以上の高いデューティでもサブハーモニック発振の発生を防止して使用可能とするために、安定条件を満たしたスロープ補償を追加することが行われている。
スロープ補償で設定する傾きmcの値は、インダクタ電流の立ち下がり傾きm2がばらつく場合にスロープ補償の安定条件が変化するため、このようなばらつきを考慮して設定する必要があった。この場合、インダクタ電流の立ち下がり傾きm2は、入力電圧、外付部品であるコイルのインダクタンスLや、電流検出回路のシャント抵抗値Rsや、電流検出回路のゲインGsに依存している。
インダクタ電流の立ち下がり傾きm2のばらつきによる要因を低減するために、例えば、コイルのインダクタンスLについては予め測定しておくことで個別に対応したものがある。しかし、インダクタンスLの特性変動や、直流重畳特性、電流検出回路のばらつきなど経時的に変化する要因については考慮されておらず、これらの影響でスロープ補償の傾きが安定条件を外れる可能性があるため、これらのばらつきを考慮して余裕のあるスロープ補償の傾きを設定する必要があり、応答性を悪化させる要因となっていた。
特開2006−33958号公報
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、スロープ補償を行う場合に、入力電圧やコイルのインダクタンスのばらつき、直流重畳特性変動、電流検出回路のばらつき等にかかわらず、簡易な構成でスロープ補償を適切に行うことができる電流モード制御スイッチング電源装置を提供することにある。
請求項1に記載の電流モード制御スイッチング電源装置は、出力電圧を検出する誤差増幅回路の誤差増幅信号およびコイルへの電流を検出する電流検出回路の電流検出信号に基づいて、スイッチング素子をオンオフ制御して電源から前記コイルに通断電することにより前記出力電圧を所定電圧で生成する電流モード制御スイッチング電源装置であって、前記電源の入力電圧に反比例する条件でスロープ補償電圧信号を設定するスロープ補償回路と、前記電流検出信号と前記スロープ補償信号との和の値が前記誤差増幅信号の値と一致するときにPWM信号をオフレベルにするPWM信号生成回路と、前記PWM信号により前記スイッチング素子の駆動信号を生成する駆動回路とを備える。
上記構成を採用することにより、簡易な構成としながら、入力電圧やインダクタのばらつき、直流重畳特性変動あるいは電流検出回路のばらつきなどの経時的変化をする要因にも対応して、適切なスロープ補償の傾きを決定して安定な動作を行わせることができる。
第1実施形態を示す電気的構成図 スロープ補償演算部の演算処理内容の説明図 スロープ補償演算部の特性のシミュレーション結果 スロープ補償演算回路の電気的構成図(その1) スロープ補償演算回路の電気的構成図(その2) スロープ補償の作用説明図 比較のための作用説明図 第2実施形態を示す電気的構成図 第3実施形態を示す電気的構成図 第4実施形態を示す電気的構成図 スロープ補償の作用説明図 比較のための作用説明図 第5実施形態を示す電気的構成図 第6実施形態を示す電気的構成図
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
全体構成を示す図1において、電流モード制御スイッチング電源装置1は、直流電源VDからスイッチング素子2を介してコイル3に通電する構成である。スイッチング素子2はダイオード4を逆方向に介してグランドに接続される。コイル3の他端子は出力端子OUTに接続されるとともに、コンデンサ5を介してグランドに接続される。スイッチング素子2は、MOSFETなどの半導体スイッチング素子が使用され、ゲートなどの制御端子に駆動回路6から駆動信号が与えられる。出力端子OUTには、2個の抵抗7a、7bの直列回路からなる電圧モニタ回路7が設けられ、出力電圧Voutがモニタされる。スイッチング素子2の電流は電流検出器8により検出される。
制御回路9は、駆動回路6にPWM信号を与えてスイッチング素子2を駆動させるもので、半導体集積回路により構成されている。制御回路9において、電流検出回路10は電流検出器8から検出信号が入力され、これを電圧の検出信号Vsenseに変換してスロープ補償演算部11および演算器12に出力する。
スロープ補償演算部11は、コイル3に流れる電流と入力電圧Vinとからスロープ補償の傾きVslopeを設定する機能を有するものである。スロープ補償演算部11は、電源VDの電圧を入力電圧Vinとして入力すると共に、電流検出回路10からの検出信号Vsenseを入力する。スロープ補償演算部11は、これらの入力電圧Vinおよび検出信号Vsenseから、後述するように演算処理をすることでVslopeを求めて演算器12に出力する。
演算器12は、検出信号Vsenseとスロープ補償の傾きVslopeを加算して比較器13の非反転入力端子に入力する。比較器13は、誤差増幅器14から入力される誤差信号Vcと演算器12から入力される信号とを比較してその比較結果を出力する。誤差増幅器14は、反転入力端子に電圧モニタ回路7から出力電圧Voutの分圧電圧が入力され、非反転入力端子に基準電圧Vrefが入力される。誤差増幅器14は、基準電圧Vrefと出力電圧Voutの分圧電圧との差分の電圧を誤差電圧Vcとして比較器13の反転入力端子に入力する。
PWM信号生成回路として機能するSRラッチ16は、入力端子Sにクロック回路17からクロック信号が与えられ、入力端子Rにコンパレータ13の出力信号が与えられる。SRラッチ16は、クロック信号に同期してPWM信号をオンレベルにして駆動回路6を介してスイッチング素子2を駆動制御する。このとき、SRラッチ16は、誤差電圧Vcが演算器12からの信号よりも小さくなって比較器13がハイレベルの信号を出力すると駆動回路6へのPWM信号をオフにする。
スロープ補償演算部11は、PWM制御に対するスロープ補償として、一定の傾きではなく、演算結果のスロープ補償Vslopeを設定する。スロープ補償演算部11は、電流検出回路10により検出されたコイル3の電流の検出信号Vsenseと入力電圧Vinとに基づいて、適正なスロープ補償Vslopeを後述する演算処理により求める。演算器12はスロープ補償演算部11で設定したVslopeと電流検出回路10により検出されたコイル3の電流の検出信号Vsenseを加算する。スロープ補償Vslopeを常に適切にVsenseに加算することで、安定したPWM信号を生成することができる。
次に、スロープ補償演算部11による演算処理内容について図2〜図7を参照して説明する。図2は演算処理の原理を説明するもので、入力される検出信号Vsenseおよび入力電圧Vinに基づいて次のような演算処理を行う。検出信号Vsenseは、コイル3に流れるインダクタ電流を電流検出回路10のゲイン倍した値に対応する。まず、コイル3に流れるインダクタ電流の立ち上がり傾きをm1、インダクタ電流信号の立ち下がり傾きをm2とすると、入力電圧Vinおよび出力電圧Voutを用いて、それぞれ、次式(1)、(2)のように与えられる。
m1=(Vin−Vout)/L×(Rs×Gs) …(1)
m2=Vout/L×(Rs×Gs) …(2)
上式中、Lはコイル3のインダクタンス、Rsは電流検出回路10のシャント抵抗値、Gsを電流検出回路10のゲインとしている。
上式(2)で示すm2の値は、式(1)を用いて次式(3)のように表すことができる。
m2=(m2/m1)×m1
=Vout/(Vin−Vout)×m1 …(3)
上式(3)で、出力電圧Voutは固定値であり、インダクタ電流の立ち上がり傾きm1は、ハイサイド電流検出を行う場合の検出電流値に相当する検出電圧Vsenseの傾きである。後述するように、この傾きm2に対して1/2以上の値となるようにスロープ補償の電圧Vslopeを設定することで安定した条件を得ることができる。したがって、このときの条件は、次式(4)のように表すことができる。
Vslope≧m2/2
=Vout/[2(Vin−Vout)]×Vsense…(4)
上式(4)で示されるスロープ電圧Vslopeの演算は、図2に示すように、検出電圧Vsenseを入力電圧Vinを変数とした反比例演算することで得られる。なお、式(4)は、式(A)に相当する式である。
実際の使用においては、式(4)を満たすスロープ電圧Vslopeとしては、変動要素を考慮してその少し斜線で示す領域の値を選ぶことができる。実際には入力電圧Vinの動作範囲内で式(4)を満たす範囲であれば動作上においては問題はない。
例えば、図3は、上記の条件式を満たすように、入力電圧Vinの範囲を8.0〜20.0Vとし、出力電圧Voutを6.0Vに設定している場合について、Vout/2(Vin−Vout)の値をシミュレーションにより求めた結果を示している。図中、算出点を黒四角のマークで示し、これらを連結した実線で示す曲線を境界となるラインとして示し、その曲線の上側の斜線で示す領域をVout/2(Vin−Vout)の条件を満たす領域として示しており、この領域内であれば安定動作範囲を外れることはない。
図4は、スロープ補償演算部11を、式(4)を満たすスロープ電圧Vslopeを、例えば可変抵抗器および抵抗器を用いて分圧回路で得るようにしたスロープ補償演算回路11aの構成例である。スロープ補償演算回路11aは、可変インピーダンスZ1およびインピーダンスZ2を直列に接続し、電源Vsenseとグランドとの間に接続したものである。可変インピーダンスZ1は、入力電圧Vinの大きさに応じて変化する第1インピーダンスに相当するもので、次式(5)に示す電圧に比例するインピーダンスZ1である。また、インピーダンスZ2は、第2インピーダンスに相当するもので、式(6)に示すように、出力電圧Voutに比例するインピーダンスZ2である。式中のAは比例係数で、共通の値である。
Z1=A×(2Vin−3Vout) …(5)
Z2=A×Vout …(6)
電源電圧Vsenseを分圧してインピーダンスZ2が分担する電圧が、式(7)で示すようにスロープ電圧Vslopeとなる。ここで、式(7)では、式(5)、(6)中の比例係数Aは相殺する。
Vslope=Z2/(Z1+Z2)×Vsense
=Vout/2(Vin−Vout)×Vsense …(7)
この結果、式(7)は、式(4)で示したVslopeの等号の値となる。したがって、このVslopeの値に若干の余裕度を持たせた値に設定することでスロープ補償の傾きを適切に設定することができる。
上記構成では、スロープ補償演算回路11aとして、具体的には、可変インピーダンスZ1およびインピーダンスZ2を直列に接続した構成として、可変抵抗器Z1、抵抗器Z2を直列に接続した回路として設けている。これに代えてあるいはこれに加えて、同じ機能を達成する回路をトランジスタなどの能動素子を用いて構成することもできる。
なお、上記の説明では、出力電圧Voutを固定的な値として設定した場合としているが、出力電圧Voutを変更設定可能な構成の場合には、図5に示すように、スロープ補償演算回路11bのように構成することもできる。スロープ補償演算回路11bは、インピーダンスZ1aおよびZ2aにより構成される。出力電圧Voutは、使用状態では一定であり、初期設定の値として変更設定可能となる値である。
可変インピーダンスZ1aは、第3インピーダンスに相当するもので、例えば式(5)におけるVinが動的に変化するのに対して、Voutの値を設定された出力電圧Voutに応じて変更設定することで対応することができる。可変インピーダンスZ2aは、第4インピーダンスに相当するもので、これについても同様にVoutの値を設定された出力電圧Voutに応じて変更設定することで対応することができる。したがって、図5に示しているように、予め変更設定されるVoutに対応して可変インピーダンスZ1a、Z2aのVoutの成分について変更設定しておくことで、入力電圧Vinの変動に対応することができる。
このように、インピーダンスの比でスロープ補償演算部11に相当するスロープ演算回路11aあるいは11bを構成することで、製造上のばらつきを抑えることができ、結果として応答性を損なうことがない。
上記構成を採用することで、スロープ補償Vslopeを適切に設定することができ、これによって、図6に示すように、デューティDが「0.5」以上となる場合でも、サブハーモニック発振が発生するのを適切に抑制することができる。
次に、スロープ補償Vslopeの値を前述した式(4)で示す条件としている理由について説明する。図7はスロープ補償を行わない場合の波形を示している。ここで、PWM制御におけるデューティDが「0.5」を超える場合には、インダクタ電流の立ち下がりの傾きm2が大きくなると、電流差ΔI0に対して電流差ΔI1が増大することがある。これが繰り返されると、サブハーモニック発振が発生する。
電流差ΔI0とΔI1との間には、インダクタ電流の傾きm1、m2に対して式(8)の関係にあり、デューティDに対して式(9)の関係にある。
ΔI1=m2/m1×ΔI0 …(8)
ΔI1=D/(1−D)×ΔI0 …(9)
つまり、デューティDが「0.5」を超えると、式(9)から、D/(1−D)の値が「1」を超えることになり、ΔI1はΔI0よりも増大していくことがわかる。
これに対して、デューティDが「0.5」を超えても、インダクタ電流の傾きm1、m2が実質的に傾きが補償されて、式(8)の傾きの比が「1」を超えないようにすれば良い。そこで、スロープ補償として、インダクタ電流の立ち上がりの傾きm1が増大し、立ち下がりの傾きm2が減少するように傾きmcを設定する。これによって、図6に示したように、電流差ΔI0に対して電流差ΔI1を減少させることができる。
次式(10)は、式(8)の係数であるm2/m1の値において、スロープ補償の傾きmcを、インダクタ電流の立ち上がりの傾きm1に加算し、立ち下がりの傾きm2から減算した値が1以下となる条件式である。この式(10)を満たすようにスロープ補償の傾きmcつまりVslopeの値を設定すればよい。
(m2−mc)/(m1+mc)≦1 …(10)
上記条件式(10)を、m2について解くと、次式(11)の関係が得られる。そして、式(11)がm1の値にかかわらず成立するのは、mcの値が次式(12)に示す条件を満たすときである。
m2≦m1+2mc …(11)
mc≧m2/2 …(12)
式(12)は、前述した式(4)を条件として設定する根拠となる条件式である。
このようにスロープ補償の傾きmcの条件を設定することで、デューティDが「0.5」を超える場合でも、安定した電流モード制御を行うことができる。この場合、スロープ補償の傾きmcを大きく設定することは、応答性を悪化させるので、できるだけ小さい値に設定することが好ましい。したがって、スロープ補償の傾きmcは、インダクタ電流の立ち下がりの傾きm2の半分となる値つまり式(12)における等号の成り立つ条件が最も電流モード制御において適した条件となる。実際には、この条件は余裕度が無いので、前述のように若干の余裕度を持った条件に設定しても問題はない。
このような本実施形態によれば、スロープ補償演算部11として、電流モード制御における検出電流および入力電圧Vinとに基づいて、スロープ補償の傾きを動的に変更する構成としたので、初期設定だけでは対応できない、コイル3のインダクタンスの特性変動や、直流重畳特性、あるいは電流検出回路8のゲインばらつきなどにも対応することが可能となる。これによって、スロープ補償の傾きとしてVslopeの値を過剰な余裕度を持たせた設定とする必要がなくなり、常に適切なスロープ補償の傾き設定を行うことができる。
また、上記のようにスロープ補償演算部11の構成として、反比例回路の原理を用いた抵抗やトランジスタによりスロープ補償演算回路11aあるいは11bによるスロープ補償部11を設ける構成としたことで、簡単かつコンパクトな構成としながら、製造上のばらつきが小さいことから電圧モード制御を制御性の低下を来たすことなく実施できる。
一般的には、スロープ補償回部11の構成として、スロープ補償演算回路11aあるいは11bと異なり、電流変換やコンデンサへの充電を行うことでVslopeを決定する構成が多く、このような構成ではコンデンサの製造ばらつきを考慮して余裕度を大きく設定する必要があり、且つ、コンデンサの形成面積による全体のチップ面積が増大する。
(第2実施形態)
図8は第2実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、電流モード制御スイッチング電源1aは、制御回路9に代えて制御回路20を備える。制御回路20は、演算器12に代えて演算器21を備える。演算器21は、比較器13の反転入力端子側に設けられる。演算器21には、誤差増幅器14の出力であるVcが入力され、スロープ補償演算部11からスロープ補償の傾きを示すVslopeが減算するように入力される構成である。
つまり、この実施形態では、誤差増幅信号Vcからスロープ補償の傾きVslopeの値を演算器21で予め減算したものを比較器13で電流検出信号Vsenseと比較して一致する時点、すなわち次式(a)で示す条件となる時点でPWM信号をオフレベルにする構成としている。
Vsense=Vc−Vslope …(a)
これに対して、第1実施形態で演算器12で電流検出信号Vsenseとスロープ補償の傾きVslopeとを加算したものを比較器13で誤差増幅信号Vcと比較して一致する時点、すなわち次式(b)で示す条件となる時点でPWM信号をオフレベルにする構成としている。
Vsense+Vslope=Vc …(b)
したがって、式(a)、(b)を比較すればわかるように、スロープ補償の傾きVslopeを右辺に置くか左辺に置くかの違いがあるだけで、第2実施形態によっても、第1実施形態と同じ結果をもたらす比較を比較器13において行うこととなり、これによって、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第3実施形態)
図9は第3実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、電流モード制御スイッチング電源1bは、ハイサイドに設けたスイッチング素子2に対して、ローサイドにもスイッチング素子30を設ける構成としている。第1実施形態でも受けているダイオード4に代えて、スイッチング素子30により同期整流を行う構成である。また、スイッチング素子2および30を駆動する駆動回路31を設けている。
スイッチング素子30は、スイッチング素子2がオンのときにはオフ状態に保持され、スイッチング素子2がオフになってグランド側からコイル3に電流を流すときにオンするように制御される。これにより、ダイオード4に順方向電流が流れるときに順方向電圧Vfがかかっていたのが、スイッチング素子30を用いることでオン抵抗分の電圧で通電することができるものである。
したがって、このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
図10から図12は第4実施形態を示すもので、以下、第3実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、上記各実施形態においてインダクタ電流の検出をハイサイド電流検出つまりピーク電流検出により行う構成であったのに対して、ローサイド電流検出つまりバレー電流検出を行う構成としたものである。
図10において、電流検出器8はローサイドのスイッチング素子30に流れるインダクタ電流を検出するように設けられる。制御回路9の構成は同様であり、電流検出器8の検出信号は、電流検出回路10により検出信号Vsenseとしてスロープ補償演算部11および演算器12に入力される。
上記構成においては、第1実施形態と同様にしてスロープ補償演算部11によりスロープ補償の出力Vslopeを出力することで、サブハーモニック発振が発生するのを抑制することができる。なお、この実施形態においては、デューティDは、ハイサイドのスイッチング素子2をオンする期間を示している。また、バレー電流検出を行う構成においては、図11に示すように、サイクルの前半のオフ期間である(1−D)の間では、インダクタ電流の立ち下がりの傾きm2、オン期間であるデューティDの期間ではインダクタ電流が立ち上がる傾きm1としている。
次に、スロープ補償演算部11による演算処理内容について図11および図12を参照して説明する。演算処理の原理については、第1実施形態と同様にして次のように導くことができる。コイル3に流れるインダクタ電流の立ち下がりの傾きm1、立ち上がりの傾きm2については、次式(13)、(14)のように与えられる。これは前述の式(1)、(2)と同じである。
m1=(Vin−Vout)/L×(Rs×Gs) …(13)
m2=Vout/L×(Rs×Gs) …(14)
上式(13)で示すm1の値は、式(14)を用いて次式(15)のように表すことができる。
m1=(m1/m2)×m2
=(Vin−Vout)/Vout×m2 …(15)
上式(15)で、出力電圧Voutは固定値であり、インダクタ電流の立ち下がりの傾きm2は、ローサイド電流検出を行う場合の検出電流値に相当する検出電圧Vsenseである。後述するように、この傾きm2に対して1/2以上の値となるようにスロープ補償の電圧Vslopeを設定することで安定した条件を得ることができる。したがって、このときの条件は、次式(16)のように表すことができる。
Vslope≧m1/2
=2(Vin−Vout)/Vout×Vsense…(16)
上式(16)で示されるスロープ電圧Vslopeの演算は、第1実施形態と同様の原理を用いることで実施できる。
上記構成を採用することで、スロープ補償を適切に設定することができ、これによって、図11に示すように、デューティDが「0.5」以下となる場合でも、サブハーモニック発振が発生するのを抑制することができる。
次に、スロープ補償Vslopeの値を前述した式(16)で示す条件としている理由について説明する。図12はスロープ補償を行わない場合の波形を示している。ここで、PWM制御におけるデューティDが「0.5」を下回る場合には、インダクタ電流の立ち下がりの傾きm1が大きくなると、電流差ΔI0に対して電流差ΔI1が増大することがある。これが繰り返されると、サブハーモニック発振が発生する。
電流差ΔI0とΔI1との間には、インダクタ電流の傾きm1、m2に対して式(17)の関係にあり、デューティDに対して式(18)の関係にある。
ΔI1=m1/m2×ΔI0 …(17)
ΔI1=(1−D)/D×ΔI0 …(18)
つまり、デューティDが「0.5」を下回ると、式(18)から、(1−D)/Dの値が1を超えることになり、ΔI1はΔI0よりも増大していくことがわかる。
これに対して、デューティDが「0.5」を下回っても、インダクタ電流の傾きm1、m2が実質的に傾きが補償されて、式(17)の傾きの比が1を超えないようにすれば良い。そこで、スロープ補償として、インダクタ電流の立ち下がりの傾きm1が減少し、立ち上がりの傾きm2が増大するように傾きmcを設定する。これによって、図11に示したように、電流差ΔI0に対して電流差ΔI1を減少させることができる。
次式(19)は、式(17)の係数であるm1/m2の値において、スロープ補償の傾きmcを、インダクタ電流の立ち下がりの傾きm1から減算し、立ち上がりの傾きm2に加算した値が1以下となる条件式である。この式(19)を満たすようにスロープ補償の傾きmcつまりVslopeの値を設定すればよい。
(−mc+m1)/(mc+m2)≦1 …(19)
上記条件式(19)を、m1について解くと、次式(20)の関係が得られる。そして、式(20)がm2の値にかかわらず成立するのは、mcの値が次式(21)に示す条件を満たすときである。
m1≦m2+2mc …(20)
mc≧m1/2 …(21)
式(22)は、前述した式(16)を条件として設定する根拠となる条件式である。
このようにスロープ補償の傾きmcの条件を設定することで、デューティDが「0.5」を下回る場合でも、安定した電流モード制御を行うことができる。この場合、スロープ補償の傾きmcを大きく設定することは、応答性を悪化させるのでできるだけ小さい値に設定することが好ましい。したがって、スロープ補償の傾きmcは、インダクタ電流の立ち下がりの傾きm1の半分となる値つまり式(21)における等号の成り立つ条件が最も電流モード制御において適した条件となる。実際には、この条件は余裕度が無いので、前述のように若干の余裕度を持った条件に設定しても問題はない。
したがって、このような第4実施形態によっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第5実施形態)
図13は第5実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。上記各実施形態では、降圧型の電流モード制御スイッチング電源回路についての実施例を示したが、この実施形態では、適用するスイッチング電源回路を昇圧型の電流モード制御スイッチング電源回路としたものを示している。
図13において、電流モード制御スイッチング電源回路1dは、スイッチング素子50により通断電されるコイル51が電源VDに接続されている。スイッチング素子50とコイル51との共通接続点はダイオード52を介してコンデンサ5に接続されている。スイッチング素子50は駆動回路53によりオンオフ制御され、これによってコイル51に生じた高電圧による電流をダイオード52を介してコンデンサ5に充電し、昇圧した所定の出力電圧Voutを出力させる。
このような第5実施形態によっても、制御回路9により前述同様にして電流モード制御により昇圧動作が行われ、デューティDが「0.5」を超える場合でも適切にスロープ補償を行うことができるようになる。
(第6実施形態)
図14は第2実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、適用するスイッチング電源回路を降圧動作および昇圧動作のいずれも実施可能な電流モード制御スイッチング電源回路としたものを示している。
図14において、電流モード制御スイッチング電源回路1eは、コイル3の出力端子側がスイッチング素子50によりグランドと短絡可能に接続される。また、コイル3の出力端子側はダイオード52を順方向に介してコンデンサ5に接続されている。スイッチング素子2および50は駆動回路31によりオンオフの制御が行われる。
この構成では、降圧動作をする場合には、スイッチング素子2のオンオフ制御を行い、スイッチング素子50はオフ状態を保持される。これにより、第1実施形態と同様の動作によりコンデンサ5に降圧された所定の出力電圧Voutが出力される。また、上記構成で、昇圧動作をする場合には、スイッチング素子2および50のオンオフ制御を行うことで、第5実施形態と同様の動作によりコンデンサ5に昇圧された所定の出力電圧Voutが出力される。
そして、上記の降圧動作あるいは昇圧動作を行う際に、制御回路9においては、スロープ補償演算部11によりスロープ補償を行うことで、デューティDが「0.5」を超える場合でも、安定な動作を行わせることができるようになる。
したがって、このような第6実施形態によっても、第1実施形態および第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
(他の実施形態)
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
上記各実施形態では、アナログ制御によるスイッチング電源回路を例に説明を行っているが、デジタル制御のスイッチング電源回路に適用した場合もスロープ補償演算部により同様の原理に基づいて演算を行うことで、安定に動作させるためのスロープ補償値を容易に決定することが可能である。
図面中、1、1a〜1eは電流モード制御スイッチング電源装置、2、30、50はスイッチング素子、3、51はコイル、4、52はダイオード、5はコンデンサ、6、31、53は駆動回路、7は電圧モニタ回路、8は電流検出器、9、20は制御回路、10は電流検出回路、11はスロープ補償演算部、11a、11bはスロープ補償演算回路(スロープ補償演算部)、13は比較器、14は誤差増幅器、16はSRラッチ(PWM信号生成回路)である。

Claims (4)

  1. 出力電圧を検出する誤差増幅回路(14)の誤差増幅信号およびコイル(3、51)への電流を検出する電流検出回路(10)の電流検出信号に基づいて、スイッチング素子(2、30、50)をオンオフ制御して電源から前記コイルに通断電することにより前記出力電圧を所定電圧で生成する電流モード制御スイッチング電源装置であって、
    前記電源の入力電圧に反比例する条件でスロープ補償電圧信号を設定するスロープ補償演算部(11)と、
    前記電流検出信号と前記スロープ補償信号との和の値が、前記誤差増幅信号の値と一致するときPWM信号をオフレベルにするPWM信号生成回路(16)と、
    前記PWM信号により前記スイッチング素子の駆動信号を生成する駆動回路(6、31、53)と
    を備えた電流モード制御スイッチング電源装置。
  2. 請求項1に記載の電流モード制御スイッチング電源装置において、
    前記スロープ補償演算部(11)は、前記所定電圧の出力電圧(Vout)を生成するために、次式(A)の関係を満たすように、前記電流検出信号(Vsense)に比例し且つ前記入力電圧(Vin)に反比例する演算を行って前記スロープ補償信号(Vslope)を生成する電流モード制御スイッチング電源装置。
    Vslope≧Vout/[2×(Vin−Vout)]×Vsense …(A)
  3. 請求項2に記載の電流モード制御スイッチング電源装置において、
    前記スロープ補償演算部(11)は、前記電流検出信号(Vsense)に相当する電圧を、前記入力電圧(Vin)に応じて可変の第1インピーダンス(Z1)と前記出力電圧(Vout)に応じた第2インピーダンス(Z2)とを直列にした回路(11a)で分圧した電圧として前記スロープ補償電圧信号を生成する電流モード制御スイッチング電源装置。
  4. 請求項2に記載の電流モード制御スイッチング電源装置において、
    前記出力電圧(Vout)が変更設定可能な構成では、
    前記スロープ補償演算部(11)は、前記電流検出信号(Vsense)に相当する電圧を、前記入力電圧(Vin)および出力電圧(Vout)に応じて可変の第3インピーダンス(Z1a)と前記出力電圧(Vout)に応じて可変の第4インピーダンス(Z2a)とを直列にした回路(11b)で分圧した電圧として前記スロープ補償信号を生成する電流モード制御スイッチング電源装置。
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