JP2017096397A - 摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】潤滑油を保持する性能と低摩擦係数とを両立させる。
【解決手段】摺動部材である斜板3は、表面を有する基材31と、基材31の表面上に形成され、バインダー樹脂および固体潤滑材を含むコーティング層32と、その上に形成され、バインダー樹脂および固体潤滑材を含むコーティング層33とを有する。コーティング層32は、コーティング層33より親油性が高い材料で形成され、コーティング層33は、コーティング層32より摩擦係数が低い材料で形成されている。コーティング層33は、複数の分離した部分が周期的に配置された構造を有している。
【選択図】図3

Description

本発明は摺動部材に関する。
斜板式コンプレッサに用いられる斜板等の摺動部材が知られている。この摺動部材としては、基材にコーティング層を形成したものが用いられる。例えば特許文献1には、コーティング層の摩耗を抑制しつつ、潤滑油を保持する機能を向上させるため、コーティング層をハニカム構造とした摺動部材が記載されている(特に図4参照)。
特開2013−130172号公報
特許文献1に記載の技術においては親油性と低摩擦係数とを両立させることが難しいという問題があった。例えばコーティング層の材料として潤滑油の保持性を向上させるため親油性の高い材料を用いると、摩擦係数に関しては妥協しなければならないことがあった。
これに対し本発明は、潤滑油を保持する性能と低摩擦係数とを両立させる技術を提供する。
本発明は、表面を有する基材と、前記基材の前記表面上に形成され、バインダー樹脂および固体潤滑材を含む第1層と、前記第1層の上に形成され、バインダー樹脂および固体潤滑材を含む第2層とを有し、前記第1層は、前記第2層より親油性が高い材料で形成され、前記第2層は、前記第1層より摩擦係数が低い材料で形成され、前記第2層は、前記表面に垂直な方向から見て、複数の分離した部分が周期的に配置された構造を有している摺動部材を提供する。
前記表面に垂直な方向から見て、前記表面に対する前記第2層の面積率が50%未満であってもよい。
前記表面に垂直な方向から見て、前記表面に対する前記第2層の面積率が35%未満であってもよい。
前記表面に垂直な方向から見て、前記第2層の前記複数の分離した部分の各々は、円形を有していてもよい。
前記摺動部材の摺動面における潤滑油の接触角が12°以下であってもよい。
前記第2層の厚さが20μm以下であってもよい。
前記基材が、斜板式コンプレッサで用いられる斜板の形状を有してもよい。
本発明によれば、潤滑油を保持する性能と低摩擦係数とを両立させることができる。
一実施形態に係るコンプレッサ1の構造を示す断面模式図。 斜板3の断面構造を示す模式図。 摺動面を上から見た模式図。 斜板3の製造方法を例示するフローチャート。
1.構造
図1は、一実施形態に係るコンプレッサ1の構造を示す断面模式図である。コンプレッサ1は、いわゆる斜板式コンプレッサである。コンプレッサ1は、シャフト2、斜板3、ピストン4、およびシュー5を有する。シャフト2は、ハウジング(図示略)に対して回転可能に支持されている。斜板3は、シャフト2の回転軸に対して斜めに固定されている。斜板3は、本発明に係る摺動部材の一例である。ピストン4は、ハウジングに設けられたシリンダボア(図示略)内を往復運動する。シュー5は、斜板3とピストン4との間に設けられており、斜板3およびピストン4とそれぞれ摺動する。シュー5において、斜板3と摺動する面はほぼ平坦であり、ピストン4と摺動する面はドーム状(半球状)の形状を有している。シャフト2の回転は、斜板3によりピストン4の往復運動に変換される。
図2は、斜板3の断面構造を示す模式図である。斜板3は、基材31、コーティング層32、およびコーティング層33を有する。基材31は、摺動面を形成するための平面である表面を含む円板形状を有しており、要求される特性を満たす金属、例えば、鉄系、銅系、またはアルミニウム系の合金により形成される。シュー5との凝着を防ぐ観点から、斜板3はシュー5とは異なる材料で形成されることが好ましい。
コーティング層32(第1層の一例)は、斜板3の摺動面の特性を改善するために設けられている。コーティング層32は、少なくともバインダー樹脂を含み、固体潤滑剤をさらに含むことが好ましい(いずれも図示略)。また、コーティング層32は、硬質粒子や軟質物などの添加物をさらに含んでいてもよい。コーティング層32は、例えば、20〜70vol%の固体潤滑材を含む。残部はバインダー樹脂である。バインダー樹脂は、例えば熱硬化性樹脂により形成される。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の少なくとも1種が用いられる。固体潤滑剤は、潤滑特性を改善するために添加される。固体潤滑剤としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、MoS2、グラファイト(Gr)、カーボン、WS2、フッ素系樹脂、軟質金属(Sn、Biなど)およびh−BNの少なくとも1種が用いられる。なお、コーティング層32は、固体潤滑剤に加え、硬質粒子を含んでいてもよい。硬質粒子としては、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、および硫化物の少なくとも1種が用いられる。この例で、コーティング層32は、基材31の上に直接、一様に(すなわちほぼ均一な厚みで)形成されている。
コーティング層33(第2層の一例)は、斜板3の手動面の特性を改善するために設けられている。コーティング層33は、少なくともバインダー樹脂を含み、固体潤滑材をさらに含むことが好ましい。また、コーティング層33は、硬質粒子や軟質物などの添加物をさらに含んでいてもよい。コーティング層33は、例えば、20〜70vol%の固体潤滑材を含む。残部はバインダー樹脂である。バインダー樹脂および固体潤滑材については既に説明したとおりである。この例で、コーティング層33は、コーティング層32の上に直接、形成されている。ただし、コーティング層33は一様に形成されているわけではなく、複数の部分(基本単位または基本構造)に分離している。
この例で、コーティング層32とコーティング層33とは、バインダー樹脂および固体潤滑材の少なくとも一方が異なっており、結果として摺動特性が異なっている。具体的には、コーティング層32はコーティング層33よりも親油性が高い材料で形成され、コーティング層33はコーティング層32よりも摩擦係数が低い材料で形成されている。
図3は、摺動面を上から(垂直な方向から)見た模式図を示す。なお斜板3は円板形状を有しているので摺動面を上から見ると円形であるが、ここではその一部のみを拡大して図示している。また、コーティング層32およびコーティング層33を区別しやすいように、コーティング層32をハッチングで表わしているが、図3は断面を示しているわけではない。摺動面において、コーティング層33の基本単位以外の部分は、コーティング層32が露出している。すなわち、摺動面の一部はコーティング層33が露出しており、他の一部ではコーティング層32が露出している。このように、摺動面に異なる層が露出していることにより、異なる2つの特性、この例では親油性と低摩擦係数とを両立することができる。
コーティング層33の基本単位は周期的に配置されている。周期的に配置されているとは、これら複数の基本単位が一定の間隔で規則正しく配置されていることをいう。コーティング層33の基本単位は、円柱形状である。すなわち図3のように摺動面を上から見ると、コーティング層33は円形を有している。摺動面において、仮想的に区切られた格子の中心に円柱が配置されていると考えることができる。格子の大きさは例えば50〜200μmであり、円柱の直径は例えば30〜150μm、好ましくは50〜100μmである。格子の大きさおよび円柱の直径は、要求される特性が得られるようにコーティング層33の面積率を調整するという観点で設計される。例えば、摺動面における親油性を向上させる観点から、摺動面を上から見たときに、コーティング層33の面積率は50%未満であることが好ましく、35%未満であることがより好ましい。なおここで親油性が高いとは、潤滑油の接触角が例えば15°以下、好ましくは12°以下となることをいう。
コーティング層32は薄すぎると摩滅して基材31が露出してしまい摺動特性が著しく低下するおそれがあるので、厚さが10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。さらに、コーティング層32の厚さは50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましい。
コーティング層33は表面の摺動特性を改善するために設けられているので、コーティング層33の厚さはコーティング層32よりも薄いことが好ましい。より具体的には、コーティング層33は厚すぎると基本単位が壊れやすくなり信頼性が低下するので、厚さが20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。なお図2および図3においては、構造を分かりやすくするため、実際とは寸法比を異ならせて図示している。
2.製造方法
図4は、斜板3の製造方法を例示するフローチャートである。ステップS1において、基材31が準備される。ステップS2において、基材31が所定の形状に成型される。この例では、基材31が円板状に成型される。基材31とコーティング層32との密着性を高めるため、基材の表面が粗面化されてもよい。
ステップS3において、コーティング層32を形成するための塗料が準備される。まず、バインダー樹脂および固体潤滑剤が公知の方法で混合される。これらの混合体は、希釈剤で希釈される。希釈剤としてはどのようなものが用いられてもよいが、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)が用いられる。希釈剤の配合比率は、固形分に対して例えば30〜70体積%である。
ステップS4において、基材31の表面に塗料が塗布される。塗料は、例えば、パッド印刷、ロールコーティング、またはスプレーコーティングにより塗布される。1回で塗布できる塗料の厚さが制限される場合、2回以上の重ね塗りが行われてもよい。ステップS5において、塗布層は乾燥および焼成される。コーティング層32の表面粗さは、例えば5μmRz以下であることが好ましい。
ステップS6において、コーティング層33を形成するための塗料が準備される。塗料を準備する方法はコーティング層32と同様である。ステップS7において、コーティング層32の表面に塗料が塗布される。ここでは基本単位のパターンを形成するために、例えば、パッド印刷が用いられる。ステップS8において、塗布層は乾燥および焼成される。
3.実験例
種々の条件で摺動部材の試験片を作製し、これらの特性を評価した。より詳細には、以下の実験例1〜4の4つの区分において、それぞれ複数の試験片を作製した。各実験例において、基材の材料としては鋳鉄が用いられた。コーティング層のバインダー樹脂としてはPAIが、固体潤滑材としてはGrまたはPTFEが用いられた。
実験例1は、本発明に係る摺動部材の例である。第1層に相当するコーティング層においては、固体潤滑材としてGrが用いられた。第1層の厚みは20μmであった。第2層に相当するコーティング層においては、固体潤滑材としてPTFEが用いられた。第2層の厚みは5μmであった。コーティング層33の基本単位に係る格子の大きさは150μm×150μmであり、基本単位の形状は直径が100μmの円柱である。
実験例2は、第1層に相当するコーティング層のみを有し、第2層に相当するコーティング層を有さない。実験例3は、第2層に相当するコーティング層のみを有し、第2層に相当するコーティング層を有さない。ただしコーティング層の表面は平坦である。実験例3は、第2層に相当するコーティング層のみを有し、第2層に相当するコーティング層を有さない。コーティング層の表面には、複数の穴(凹部)が設けられている。
実験例1〜4について、潤滑油の接触角すなわち濡れ性を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2017096397
実験例2においては、固体潤滑材としてGrを用いたコーティング層が最表面に出ているので潤滑油の接触角がほぼ0°であり、極めて親油性が高い。しかし、固体潤滑材としてPTFEを用いたコーティング層と比較すると摩擦係数が高く(データは省略)、この点で劣っている。実験例3においては、固体潤滑材としてPTFEを用いたコーティング層が最表面に出ているので摩擦係数は低いが、潤滑油の接触角が約40°であり、親油性が低い。実験例4のようにコーティング層の表面に穴を設けることによって親油性は25°まで改善するが、それでもまだ改善の余地がある。
本発明に係る実験例1によれば、実験例3および4と比較して親油性を改善することができる。また、最表面には摩擦係数の低いコーティング層も露出しているので、高親油性と低摩擦係数とを両立することができる。
4.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
本発明が適用される摺動部材は斜板式コンプレッサの斜板に限定されない。例えばエンジンのクランクシャフトを支持する半割軸受等、斜板以外の摺動部材に本発明が適用されてもよい。例えば半割軸受に適用される場合、第1層および第2層のコーティング層の膜厚はいずれも、例えば3μmである。
コーティング層33における基本単位の形状は円柱形状に限定されない。楕円柱、四角柱、六角柱等、基本単位は円柱以外の形状を有していてもよい。また、基本単位は、中心点を結ぶ線が正方形を形成するように配置されるものに限定されず、中心点を結ぶ線が、長方形、平行四辺形、または六角形等、正方形以外の形状を形成するように配置されてもよい。
実験例において用いられた材料および寸法はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
1…コンプレッサ
2…シャフト
3…斜板
31…基材
32…コーティング層
33…コーティング層
4…ピストン
5…シュー

Claims (7)

  1. 表面を有する基材と、
    前記基材の前記表面上に形成され、バインダー樹脂および固体潤滑材を含む第1層と、
    前記第1層の上に形成され、バインダー樹脂および固体潤滑材を含む第2層と
    を有し、
    前記第1層は、前記第2層より親油性が高い材料で形成され、
    前記第2層は、前記第1層より摩擦係数が低い材料で形成され、
    前記第2層は、前記表面に垂直な方向から見て、複数の分離した部分が周期的に配置された構造を有している
    摺動部材。
  2. 前記表面に垂直な方向から見て、前記表面に対する前記第2層の面積率が50%未満である
    ことを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記表面に垂直な方向から見て、前記表面に対する前記第2層の面積率が35%未満である
    ことを特徴とする請求項2に記載の摺動部材。
  4. 前記表面に垂直な方向から見て、前記第2層の前記複数の分離した部分の各々は、円形を有している
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の摺動部材。
  5. 前記摺動部材の摺動面における潤滑油の接触角が12°以下である
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の摺動部材。
  6. 前記第2層の厚さが20μm以下である
    ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の摺動部材。
  7. 前記基材が、斜板式コンプレッサで用いられる斜板の形状を有する
    請求項1ないし6のいずれか一項に記載の摺動部材。
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