JP2017096175A - 車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジン再始動時に、係合装置の滑りを抑制し、エンジン再始動の応答性を向上する。【解決手段】エンジン再始動時にクラッチCが滑らなかった場合には、エンジン再始動時の所定待機時間Tdelayを所定時間D短くするので、クラッチCの実パッククリアランスに応じた所定待機時間Tdelayとなるように速やかに短くされる。又、エンジン再始動時にクラッチCが滑った場合には、所定待機時間Tdelayを所定時間D長くするので、実パッククリアランスに応じた所定待機時間Tdelayとなるように長くされる。又、所定待機時間Tdelayの学習では、クラッチCが滑った判定履歴がある場合には、今回学習時の所定時間Dが前回学習時よりも短くされるので、実パッククリアランスに応じた所定待機時間Tdelayに収束させられる。よって、エンジン再始動時に、クラッチCの滑りを抑制し、エンジン再始動の応答性を向上することができる。【選択図】図4

Description

本発明は、エンジンと、エンジンにより回転駆動されることで作動油を吐出する機械式のオイルポンプと、作動油の供給によって係合される係合装置と、作動油が流通する油路に蓄圧した油圧の供給が可能なアキュムレータとを備えた車両の制御装置に関するものである。
エンジンと、前記エンジンにより回転駆動されることで作動油を吐出する機械式のオイルポンプと、前記作動油の供給によって係合されることで前記エンジンの動力を駆動輪へ伝達する動力伝達経路を形成することが可能な係合装置と、前記作動油が流通する油路に接続されて油圧の蓄圧と蓄圧した油圧の供給とが可能なアキュムレータとを備えた車両が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された車両がそれである。この特許文献1には、所定のエンジン自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止すると共に、所定のエンジン再始動条件が成立したときにその自動停止したエンジンを再始動するアイドリングストップ制御を行うこと、又、所定のエンジン再始動条件が成立したときにアキュムレータに蓄圧された油圧によって係合装置の油圧を急速に増圧させる急速増圧制御を行うことで、係合装置をパック詰めしてから又は係合装置を係合してから、エンジンを再始動することが開示されている。
特開2000−310132号公報
ところで、係合装置のパッククリアランスは、固体毎(ユニット毎)のばらつきがあったり、又は、クラッチ摩耗によって増大する。エンジン再始動時にエンジン回転速度が吹き上がった状態で係合装置を係合することによる係合ショックを防止又は抑制することを考えると、上述したばらつきやクラッチ摩耗を考慮した、係合装置が最も遅く係合する場合を想定して、エンジン再始動の開始タイミング(すなわち所定のエンジン再始動条件の成立からエンジン再始動を開始するまでの待機時間)を予め定めることになる。そうすると、係合装置のパッククリアランスが元々小さな固体や摩耗していない新品状態でも、係合装置が最も遅く係合する場合を想定した待機時間を待った上でエンジン再始動を開始することになる。その為、実際には係合装置が係合していたとしてもエンジン再始動の開始を不要に待機する場合があり、エンジン再始動の応答性が悪化する可能性がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンの再始動時に、係合装置の滑りを抑制すると共に、エンジン再始動の応答性を向上することができる車両の制御装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a) エンジンと、前記エンジンにより回転駆動されることで作動油を吐出する機械式のオイルポンプと、前記作動油の供給によって係合されることで前記エンジンの動力を駆動輪へ伝達する動力伝達経路を形成することが可能な係合装置と、前記作動油が流通する油路に接続されて油圧の蓄圧と蓄圧した油圧の供給とが可能なアキュムレータとを備えた車両において、所定のエンジン自動停止条件が成立したときに前記エンジンを自動停止すると共に、所定のエンジン再始動条件が成立したときから所定待機時間経過後に前記エンジンの再始動を開始して前記自動停止したエンジンを再始動するアイドルストップ制御部と、前記所定のエンジン再始動条件が成立したときに前記アキュムレータに蓄圧された油圧を前記油路に供給する再始動時油圧供給制御部とを備えた、車両の制御装置であって、(b) 前記エンジンの再始動が開始されてエンジン回転速度が上昇したときに、前記係合装置が滑らなかったか否かを判定するスリップ判定部と、(c) 前記係合装置が滑らなかったと判定された場合には、前記エンジンの次回の再始動時に用いる前記所定待機時間を所定時間短くするように学習する一方で、前記係合装置が滑ったと判定された場合には、前記エンジンの次回の再始動時に用いる前記所定待機時間を前記所定時間長くするように学習するものであり、前記係合装置が滑ったと判定された履歴がある場合には、今回の学習時に用いる前記所定時間を、前回の学習時に用いた前記所定時間よりも短くする学習制御部とを、更に備えることにある。
前記第1の発明によれば、エンジンの再始動時に係合装置が滑らなかった場合には、エンジンの次回の再始動時に用いる所定待機時間を所定時間短くするように学習されるので、係合装置が最も遅く係合する場合を想定した初期(例えば工場出荷時等の学習前の当初)の所定待機時間を、係合装置の実際のパッククリアランスに応じた所定待機時間となるように速やかに短くすることができる。又、エンジンの再始動時に係合装置が滑った場合には、エンジンの次回の再始動時に用いる所定待機時間を所定時間長くするように学習されるので、短くされ過ぎた所定待機時間を、係合装置の実際のパッククリアランスに応じた所定待機時間となるように長くすることができる。又、上述した所定待機時間の学習では、係合装置が滑ったと判定された履歴がある場合には、今回の学習時に用いる所定時間が、前回の学習時に用いた所定時間よりも短くされるので、所定待機時間を、係合装置の実際のパッククリアランスに応じた所定待機時間となるように収束させることができる。又、一旦収束させられた所定待機時間を用いてエンジンの再始動を実行したときに係合装置が滑った場合には、エンジンの次回の再始動時に用いる所定待機時間を所定時間長くするように学習されるので、係合装置の摩耗にも対処できる。よって、エンジンの再始動時に、係合装置の滑りを抑制すると共に、エンジン再始動の応答性を向上することができる。
本発明が適用される車両の概略構成を説明する図であると共に、車両における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。 クラッチの係合作動に関わる油圧システムの概略構成を説明する図である。 アイドリングストップ制御を解除するときの一例を説明するタイムチャートである。 電子制御装置の制御作動の要部すなわちエンジンの再始動時にクラッチの滑りを抑制すると共にエンジン再始動の応答性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートである。 工場出荷後に、図4のフローチャートに示す制御作動を最初に実行した場合の初期学習時の各数値を示す図表である。 一旦学習が完了した後、図4のフローチャートに示す制御作動を実行したときに、クラッチの摩擦材の摩耗によってクラッチが滑り始めた場合の学習時の各数値を示す図表である。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16とを備えている。動力伝達装置16は、エンジン12に連結された流体式伝動装置としての公知のトルクコンバータ18、トルクコンバータ18に連結された自動変速機20、自動変速機20の出力回転部材である変速機出力軸22に連結されたプロペラシャフト24、そのプロペラシャフト24に連結されたディファレンシャルギヤ26、そのディファレンシャルギヤ26に連結された1対のドライブシャフト28等を備えている。動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義)は、トルクコンバータ18、自動変速機20、プロペラシャフト24、ディファレンシャルギヤ26、及びドライブシャフト28等を順次介して駆動輪14へ伝達される。
エンジン12は、車両10の駆動力源であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。このエンジン12は、後述する電子制御装置60によって吸入空気量、燃料供給量、点火時期等の運転状態が制御されることによりエンジントルクTeが制御される。
自動変速機20は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース30内に、トルクコンバータ18と共に備えられており、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路の一部を構成する。自動変速機20は、1組又は複数組の遊星歯車装置と複数の係合装置とを有し、その係合装置が選択的に係合されることによって変速比(ギヤ比)γ(=入力回転速度Ni/出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段)が選択的に形成される公知の遊星歯車式の自動変速機である。自動変速機20は、複数の係合装置の何れかの掴み替えにより(すなわち係合装置の係合と解放との切替えにより)変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速を行う有段変速機である。複数の係合装置はそれぞれ、公知の車両用自動変速機においてよく用いられる油圧式の摩擦係合装置であって、油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される。この係合装置は、車両10に備えられた油圧システム32から供給される油圧によりそれぞれのトルク容量(すなわち係合力)が変化させられて、係合と解放とが切り替えられる。本実施例では、便宜上、この係合装置をクラッチCと称すが、クラッチCはクラッチ以外にもブレーキ等を含むものとする。油圧システム32は、油圧制御回路34とオイルポンプ36とを備えている。尚、上記入力回転速度Niは自動変速機20の変速機入力軸38の回転速度であり、出力回転速度Noは変速機出力軸22の回転速度である。この変速機入力軸38は、自動変速機20の入力回転部材であるが、トルクコンバータ18のタービン翼車によって回転駆動されるタービン軸と一体的に形成されたトルクコンバータ18の出力回転部材でもある。
車両10は、自動変速機20における動力伝達の状態を切り替える為に運転者により操作されるシフトレバー40を備えている。シフトレバー40は、「P」,「R」,「N」,「D」等のシフトポジションPshの何れかへ選択的に手動操作される。シフトポジションPshの「P」は、自動変速機20を動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態(中立状態)とし且つ機械的に変速機出力軸22の回転を阻止する為のパーキングポジション(Pポジション)である。又、シフトポジションPshの「R」は、自動変速機20を動力伝達経路が接続(形成)された状態とし且つ自動変速機20の後進ギヤ段を用いて後進走行を可能とする為の後進走行ポジション(Rポジション)である。又、シフトポジションPshの「N」は、自動変速機20をニュートラル状態とする為のニュートラルポジション(Nポジション)である。又、シフトポジションPshの「D」は、自動変速機20を動力伝達経路が形成された状態とし且つ自動変速機20の変速を許容する変速範囲で総ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御を実行して前進走行を可能とする為の前進走行ポジション(Dポジション)である。Pポジション及びNポジションは、各々、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路における動力伝達を不能な状態とする為の非走行ポジションであり、車両10を走行させないときに選択される。Dポジション及びRポジションは、各々、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路における動力伝達を可能な状態とする為の走行ポジションであり、車両10を走行させるときに選択される。
図2は、クラッチCの係合作動に関わる油圧システム32の概略構成を説明する図である。図2において、前述したように、油圧システム32は、油圧制御回路34とオイルポンプ36とを備えている。オイルポンプ36は、エンジン12に機械的に連結されており、エンジン12により回転駆動されることで、自動変速機20を変速制御したり、クラッチCを係合したり、動力伝達装置16の動力伝達経路の各部に潤滑油を供給したりする為の作動油を発生する(吐出する)機械式のオイルポンプ(MOP)である。オイルポンプ36は、オイルパン42に貯留されている作動油をストレーナ44を介して吸い上げ、油圧制御回路34の油路46に圧送する。尚、オイルポンプ36は、エンジン12によって回転駆動させられることから、例えば後述するアイドリングストップ制御においてエンジン12が自動停止させられてエンジン12の回転が停止すると、オイルポンプ36が回転駆動されず、作動油は吐出されない。
油圧制御回路34は、オイルポンプ36から吐出された作動油をライン圧PLに調圧するレギュレータバルブ48と、エンジン負荷(例えば変速機入力トルクTin等)に応じてライン圧PLが調圧される為にレギュレータバルブ48へ制御圧Psltを供給するリニアソレノイドバルブSLTと、アキュムレータ50と、アキュムレータ50の油圧の蓄圧と供給(吐出)とを切り替える為のアキュムレータ切替用ソレノイドバルブ52(以下、Acc切替バルブ52という)とを備えている。レギュレータバルブ48によって調圧されたライン圧PLは、ライン圧油路54に供給され、このライン圧油路54を介して自動変速機20のクラッチC等の元圧として供給され、リニアソレノイドバルブによってクラッチ圧に調圧されてクラッチCへ供給される。従って、クラッチCは、自動変速機20の所定のギヤ段を形成する為の係合装置がオイルポンプ36から吐出された作動油の供給によって係合されることで、エンジン12の動力を駆動輪14へ伝達する動力伝達経路を形成することが可能な係合装置である。又、ライン圧油路54は、その作動油が流通する油路である。尚、油路46とライン圧油路54との間には、ライン圧油路54側から油路46側へ向かう作動油の流れを阻止する為の逆止弁56が設けられている。
アキュムレータ50は、ライン圧油路54に接続されている。アキュムレータ50は、スプリング50aや作動油の漏れを抑制するシール部材50bなどを備え、油圧の蓄圧と蓄圧した油圧の供給とが可能な公知の蓄圧器である。Acc切替バルブ52は、ライン圧油路54とアキュムレータ50とを接続する油路57の間に設けられており、油路57を、アキュムレータ50への油圧の蓄圧を可能とする油路(図中A参照)と、アキュムレータ50内の油圧をライン圧油路54へ供給する油路(図中B参照)とに、切り替えることができる。
アキュムレータ50は、Acc切替バルブ52のソレノイド(以下、Accソレノイドという)を駆動する為の電圧がAccソレノイドに印加されない(すなわちAccソレノイドに通電されない)、Acc切替バルブ52のソレノイドオフ状態では、アキュムレータ50からライン圧油路54への作動油の流れが遮断される状態となる。Acc切替バルブ52のソレノイドオフ状態では、Acc切替バルブ52を構成するスプリングの付勢力によって図示しないスプール弁子が移動させられる。このとき、Acc切替バルブ52では、油路57が、ライン圧油路54とアキュムレータ50とを逆止弁58を介して連結する油路へ切り替えられる(図中A参照)。逆止弁58は、ライン圧油路54からアキュムレータ50への作動油の流れ(蓄圧側)を許容する一方、アキュムレータ50からライン圧油路54への作動油の流れ(吐出側)を遮断する。従って、エンジン駆動中にオイルポンプ36が駆動されるのに伴い、ライン圧油路54の油圧が、アキュムレータ50に蓄圧された油圧よりも高い場合には、逆止弁58が開弁させられてライン圧油路54からアキュムレータ50に向かって作動油が流れ、アキュムレータ50に油圧が蓄圧される。一方、アキュムレータ50内の油圧がライン圧油路54の油圧よりも高くなると、逆止弁58が閉弁させられ、アキュムレータ50内の油圧が保持される。よって、Acc切替バルブ52のソレノイドオフ状態において、ライン圧油路54の油圧がアキュムレータ50内の油圧よりも高い場合には、アキュムレータ50に油圧が蓄圧される。例えば、エンジン駆動中(通常走行中)は、オイルポンプ36が駆動されるのに伴い、一般にライン圧油路54の油圧がアキュムレータ50の油圧よりも高い為、Acc切替バルブ52のソレノイドオフ状態では、ライン圧油路54からアキュムレータ50側に向かって作動油が流れる。また、後述するエンジン自動停止中は、オイルポンプ36が停止するのに伴い、一般にアキュムレータ50内の油圧がライン圧油路54の油圧よりも高くなるが、Acc切替バルブ52のソレノイドオフ状態では、逆止弁58が閉弁させられることによって作動油の流れが遮断される為、アキュムレータ50内の油圧が保持される。
アキュムレータ50は、Accソレノイドを駆動する為の電圧がAccソレノイドに印加される(すなわちAccソレノイドに通電される)、Acc切替バルブ52のソレノイドオン状態では、アキュムレータ50からライン圧油路54への作動油の流れが許容される状態(すなわちアキュムレータ50からライン圧油路54に作動油を吐出(油圧を供給)することが可能な状態)となる。Acc切替バルブ52がソレノイドオン状態とされると、ソレノイドの磁力によってスプール弁子がスプリングの付勢力に抗う側に移動させられ、Acc切替バルブ52内の油路の連通状態が切り替えられる。このとき、Acc切替バルブ52では、油路57が、ライン圧油路54とアキュムレータ50とを連通する油路へ切り替えられる(図中B参照)。従って、Acc切替バルブ52のソレノイドオン状態では、アキュムレータ50からライン圧油路54への作動油の流れが許容され、アキュムレータ50内の油圧よりもライン圧油路54の油圧が高い場合には、ライン圧油路54からアキュムレータ50に油圧が供給され、アキュムレータ50内の油圧がライン圧油路54の油圧よりも高い場合には、アキュムレータ50からライン圧油路54に油圧が供給される。
このように、Acc切替バルブ52は、油路57を、ライン圧油路54からアキュムレータ50への作動油の流れを許容しアキュムレータ50からライン圧油路54への作動油の流れを遮断する逆止弁58を介した油路と、アキュムレータ50からライン圧油路54への作動油の流れを許容する油路とに、切り替えることができる。すなわち、アキュムレータ50は、Acc切替バルブ52によって、そのアキュムレータ50からライン圧油路54への作動油の流れの遮断と許容とを切り替え可能に構成されている。
図1に戻り、車両10は、クラッチCの油圧制御やアイドリングストップ制御などに関連する車両10の制御装置を含む電子制御装置60を備えている。よって、図1は、電子制御装置60の入出力系統を示す図であり、又、電子制御装置60による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。電子制御装置60は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置60は、エンジン12の出力制御、自動変速機20の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン出力制御用や油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置60には、車両10が備える各種センサ(例えば各種回転速度センサ70,72,74、アクセル開度センサ76、スロットルセンサ78、ブレーキスイッチ80、シフトセンサ82など)による検出信号に基づく各種実際値(例えばエンジン回転速度Ne、タービン回転速度Ntである入力回転速度Ni、車速Vに対応する出力回転速度No、アクセル開度θacc、スロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為の運転者によるブレーキペダル操作が為されたブレーキ操作状態を示す信号であるブレーキオンBon、シフトポジションPshなど)が、それぞれ供給される。又、電子制御装置60からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、車両10に備えられた公知のスタータモータ84を駆動するエンジン始動制御の為のスタータ制御指令信号Ss、自動変速機20のギヤ段の形成に関する油圧制御の為の油圧制御指令信号Sp、Acc切替バルブ52のAccソレノイドを通電する油圧供給制御の為のAcc制御指令信号Sa等が、スロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置やスタータ駆動装置等のエンジン制御装置、油圧制御回路34などへそれぞれ出力される。油圧制御指令信号Spは、例えばクラッチCを係合又は解放させる為の指令信号であって、油圧制御回路34内の各リニアソレノイドバルブをそれぞれ独立に電流制御する為の指令信号である。
電子制御装置60は、車両10における各種制御の為の制御機能を実現する為に、エンジン制御手段すなわちエンジン制御部62、及び油圧制御手段すなわち油圧制御部64を備えている。
エンジン制御部62は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された(すなわち予め定められた)関係(例えば駆動力マップ)にアクセル開度θacc及び車速V(出力回転速度No等も同意)を適用することで要求駆動力Fdemを算出する。エンジン制御部62は、伝達損失、補機負荷、自動変速機20のギヤ比γ等を考慮して、その要求駆動力Fdemが得られるように、エンジン12の出力制御を行うエンジン出力制御指令信号Seをエンジン制御装置へ出力する。
エンジン制御部62は、イグニッションキーやイグニッションスイッチ等のユーザ操作によるエンジン12の始動/停止とは別に、車両10が赤信号や交通渋滞等で停止し、エンジン12がアイドリング状態となると、燃費の向上、排気ガスの低減、騒音の低減等を図る為に、ユーザ操作に因らず、エンジン12を自動的に一時停止し、その後にエンジン12を自動的に再始動するエンジン12の自動停止再始動制御(アイドリングストップ制御)を実行する。
その為、エンジン制御部62は、アイドリングストップ制御を実行するアイドルストップ制御手段すなわちアイドルストップ制御部63を有している。アイドルストップ制御部63は、所定のエンジン自動停止条件が成立したときには、フューエルカット制御等を実行してエンジン12を一時的に自動停止する為のエンジン一時停止指令をエンジン出力制御指令信号Seとしてエンジン制御装置へ出力して、エンジン12を自動停止する。アイドルストップ制御部63は、所定のエンジン再始動条件が成立したときには、スタータモータ84によりエンジン12をクランキングしてエンジン12を始動する為のスタータ制御指令信号Ssをエンジン制御装置へ出力する。加えて、アイドルストップ制御部63は、スタータモータ84によるエンジン12のクランキングに連動して、電子スロットル弁の開閉制御や燃料供給制御や点火時期制御を実行してエンジン12を自動的に再始動する為のエンジン再始動指令をエンジン出力制御指令信号Seとしてエンジン制御装置へ出力して、自動停止したエンジン12を再始動する。
上記所定のエンジン自動停止条件は、例えばシフトポジションPshがP,N,Dポジションの何れかであり、且つアクセル開度θaccが零と判定されるアクセルオフであり、且つ車速Vが零と判定される車両停止中であり、且つエンジン12の冷却水温が予め定められた所定水温範囲内と判定されるエンジン暖機完了後であるなどの条件である。更に、シフトポジションPshがDポジションであるときには、ブレーキペダル操作が為されたブレーキオンの状態であるという条件が、所定のエンジン自動停止条件として加えられる。一方で、上記所定のエンジン再始動条件は、例えば上記所定のエンジン停止条件の成立後に、その所定のエンジン停止条件が成立しなくなったことで成立する。例えば、Dポジションでの車両停止時にブレーキペダル操作が為されないブレーキオフの状態とされるか或いはアクセルオンとされたときなどに、所定のエンジン再始動条件が成立する。又、P,NポジションからR,Dポジションへ切り替えるシフト操作を、「走行意思あり」とみて、P,NポジションからR,Dポジションへ切り替えられたときに、所定のエンジン再始動条件が成立する。
油圧制御部64は、シフトポジションPshに応じてクラッチCの係合と解放とを切り替える為の油圧制御指令信号Spを油圧制御回路34へ出力する。具体的には、油圧制御部64は、シフトポジションPshがP,Nポジションである場合には、何れのクラッチCも解放する為のニュートラル指令を油圧制御指令信号Spとして油圧制御回路34へ出力する。又、油圧制御部64は、シフトポジションPshがR,Dポジションにある場合には、走行用のギヤ段を形成するようにクラッチCを係合する為のギヤ段形成指令を油圧制御指令信号Spとして油圧制御回路34へ出力する。油圧制御部64は、シフトポジションPshがDポジションにある場合には、車速V及びアクセル開度θaccを変数として予め定められた関係(変速マップ、変速線図)に車速V及びスロットル弁開度θth(アクセル開度θaccや要求駆動力Fdem等も同意)を適用することで自動変速機20の変速を判断する(すなわち自動変速機20にて形成するギヤ段を判断する)。油圧制御部64は、その判断したギヤ段を形成するように、自動変速機20の変速に関与するクラッチCを係合及び/又は解放させる為の変速指令を油圧制御指令信号Spとして油圧制御回路34へ出力して、自動変速機20の変速を実行する。このように、油圧制御部64は、自動変速機20の変速を実行する、変速制御手段すなわち変速制御部として機能する。
ここで、アイドリングストップ制御が実行されているときには、オイルポンプ36がエンジン12にて回転駆動されず、クラッチCへ供給される作動油がオイルポンプ36から発生させられない為、クラッチC(例えば第1速ギヤ段の形成に関与する係合装置)は解放されている。エンジン12が自動停止した状態にて所定のエンジン再始動条件が成立すると、エンジン12が再始動され、これに伴って、オイルポンプ36がエンジン12によって駆動されてオイルポンプ36から作動油が吐出される。この作動油がクラッチCへ供給されることでクラッチCは係合される。しかしながら、エンジン回転速度Neが上昇後にクラッチCを係合することになる為(すなわちクラッチCがスリップした状態で係合することになる為)、係合ショックが発生し易い。これに対して、本実施例では、エンジン12の再始動に先立って(すなわちオイルポンプ36から作動油が吐出されることに先立って)、アキュムレータ50に蓄圧された油圧をライン圧油路54に供給し、この油圧によりクラッチCを係合する。
その為、油圧制御部64は、エンジン12の再始動時に、アキュムレータ50に蓄圧された油圧をライン圧油路54に供給する再始動時油圧供給制御手段すなわち再始動時油圧供給制御部65を有している。再始動時油圧供給制御部65は、所定のエンジン再始動条件が成立したときには、Acc切替バルブ52のAccソレノイドを通電してAcc切替バルブ52をソレノイドオン状態とする為のAcc制御指令信号Saを油圧制御回路34へ出力し、アキュムレータ50に蓄圧された油圧をライン圧油路54に供給する。油圧制御部64は、ライン圧油路54に供給された油圧によってクラッチCが係合されるように(又はクラッチCのクラッチパックが詰められる(クラッチCがパック詰めされる)ように)、所定のエンジン再始動条件が成立したときには速やかに、クラッチCを係合する油圧制御指令信号Spを油圧制御回路34へ出力する。
アイドルストップ制御部63は、所定のエンジン再始動条件が成立したときには、そのエンジン再始動条件が成立したときから所定待機時間Tdelay経過後に、スタータモータ84によりエンジン12をクランキングしてエンジン12を始動する為のスタータ制御指令信号Ssをエンジン制御装置へ出力することでエンジン12の再始動を開始する。加えて、アイドルストップ制御部63は、そのスタータモータ84によるエンジン12のクランキングに連動して、電子スロットル弁の開閉制御や燃料供給制御や点火時期制御を実行してエンジン12を自動的に再始動する為のエンジン出力制御指令信号Seをエンジン制御装置へ出力して、自動停止したエンジン12を再始動する。上記所定待機時間Tdelayは、例えばクラッチCがパック詰めされるまで時間(又はクラッチCが解放から係合した状態となるまでの時間)である。
再始動時油圧供給制御部65は、エンジン12が再始動させられた後には、Acc切替バルブ52をソレノイドオン状態とする為のAcc制御指令信号Saの出力を停止して、Acc切替バルブ52をソレノイドオフ状態とする。Acc切替バルブ52がソレノイドオフ状態とされることにより、ライン圧油路54からアキュムレータ50への作動油の流れが許容され、オイルポンプ36が駆動されることによってアキュムレータ50内の油圧よりも高くされたライン圧油路54の油圧がアキュムレータ50内に供給されて、再び、アキュムレータ50に油圧が蓄圧される。
図3は、アイドリングストップ制御を解除するときの一例を説明するタイムチャートである。図3において、t1時点は、Dポジションにおいてエンジン12を一時的に自動停止しているときに、ブレーキオフの状態とされて所定のエンジン再始動条件が成立した時点を示している。このt1時点では、エンジンの再始動を開始することに先立って、Acc切替バルブ52をソレノイドオン状態とするAcc制御指令信号Saの出力が開始され、クラッチCの係合が開始される(すなわちクラッチCのパック詰めが開始される)。t1時点から所定待機時間Tdelay経過後のt2時点にて、スタータモータ84を駆動するスタータ制御指令信号Ss(スタータオン指令)の出力が開始され、エンジン12の再始動が開始される。エンジン回転速度Neが例えば自立運転可能な所定回転以上となったt3時点にて、スタータ制御指令信号Ssの出力が停止される(スタータオフ指令参照)。t4時点は、アクセルオンとされて車両10が発進したことを示している。尚、図3は、Dポジションにおいてアイドリングストップ制御を解除するときの一例であるので、所定のエンジン再始動条件がブレーキオフにて成立させられる実施態様を示した。図3の実施態様がP,Nポジションにおいてアイドリングストップ制御を解除するときの一例であれば、t1時点はR,Dポジションへシフト操作されて所定のエンジン再始動条件が成立した時点となる。
ところで、エンジン12の再始動時にクラッチCの係合ショックを防止又は抑制することを考えると、クラッチCのパッククリアランスの固体毎(ユニット毎)のばらつき、及びクラッチCの摩擦材の摩耗によるパッククリアランスの増大を考慮した、クラッチCが最も遅く係合する場合(パック詰めされる場合)を想定して、エンジン再始動を開始するときの所定待機時間Tdelayを予め定めることが考えられる。その為、実際にはクラッチCが係合していたとしてもエンジン再始動の開始を不要に待機する場合があり、エンジン再始動の応答性が悪化する可能性がある。これに対して、アキュムレータ50のスプリング50aのバネ力を高くして応答性を向上しようとすると、アキュムレータ50に蓄圧する際の必要油圧が高くなる為に燃費が悪化する可能性があったり、スプリング50aの応力を成立させる為にアキュムレータ50を大きくする(縮み量を減らす)必要があり、搭載性が低下する可能性があった。本実施例では、エンジン再始動の応答性が悪化する可能性があるという課題に対して、クラッチCが最も遅く係合する場合を想定して予め定められた所定待機時間Tdelay(初期値)を、クラッチCの実際のパッククリアランスに応じた所定待機時間Tdelay(学習値)とするように、所定待機時間Tdelayを更新する学習制御を実行する。
そこで、電子制御装置60は、エンジン12の再始動が開始されてエンジン回転速度Neが上昇したときにクラッチCが滑らなかった場合には、所定待機時間Tdelayを所定時間D短くするように学習する。一方で、電子制御装置60は、エンジン12の再始動が開始されてエンジン回転速度Neが上昇したときにクラッチCが滑った場合には、所定待機時間Tdelayを所定時間D長くするように学習する。
以上説明した所定待機時間Tdelayの学習制御を実現する為に、電子制御装置60は、スリップ判定手段すなわちスリップ判定部66、及び学習制御手段すなわち学習制御部68を更に備えている。
スリップ判定部66は、アイドルストップ制御部63によりエンジン12の再始動が開始されてエンジン回転速度Neが上昇したときに(すなわちエンジン12の再始動の過渡中に)、クラッチCが滑らなかったか否かを判定する。スリップ判定部66は、タービン回転速度Nt(入力回転速度Ni)が、発進時(又は再加速時)に形成される自動変速機20の第1速ギヤ段での推定タービン回転速度Nte(=第1速ギヤ段での1stギヤ比γ1×出力回転速度No)と同じであると判定できるか否かに基づいて、クラッチCが滑らなかったか否かを判定する。
学習制御部68は、スリップ判定部66によりクラッチCが滑らなかったと判定された場合には、エンジン12の次回の再始動時に用いる所定待機時間Tdelayを、今回用いた値よりも所定時間Dだけ短くするように学習する。一方で、学習制御部68は、スリップ判定部66によりクラッチCが滑ったと判定された場合には、エンジン12の次回の再始動時に用いる所定待機時間Tdelayを、今回用いた値よりも所定時間Dだけ長くするように学習する。又、学習制御部68は、クラッチCが滑ったと判定された履歴がある場合には、今回の学習時に用いる所定時間Dを、前回の学習時に用いた所定時間Dよりも短くする。所定時間Dは、例えば学習制御によって所定待機時間Tdelayを更新するときに用いる予め定められた増減時間である。又、今回の学習時に用いる所定時間Dは、所定待機時間Tdelayが実際のパッククリアランスに応じた所定待機時間Tdelay(学習値)に適切に収束するように、前回の学習時に用いた所定時間Dよりも短くされれば良く、例えば前回の学習時に用いた所定時間Dの半分の時間とされる。
学習制御部68による所定待機時間Tdelayの学習制御の具体的な実施態様を、図4のフローチャートを用いて説明する。
図4は、電子制御装置60の制御作動の要部すなわちエンジン12の再始動時にクラッチCの滑りを抑制すると共にエンジン再始動の応答性を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えばエンジン12を一時的に自動停止しているときに、所定のエンジン再始動条件が成立した場合に繰り返し実行される。図4において、Xは所定待機時間Tdelayを示している。又、flagはクラッチCが滑らなかったか否かの判定結果を表すフラグであり、「0」はクラッチCが滑ったという判定結果を表し、「1」はクラッチCが滑らなかったという判定結果を表している。又、Dは所定時間Dを示している。又、Rirekiは、車両10のイグニッションオンからイグニッションオフまでの1トリップ中に、クラッチCが滑ったという判定履歴があるか否かを表すフラグであり、「0」はその判定履歴がないことを表し、「1」はその判定履歴があることを表している。X0,X1は、各々、学習制御過程のXを表す値であり、X0は所定時間Dを反映する前の値であり、X1は所定時間Dを反映した後の値である。又、X0,X1,Rirekiは、各々、車両10のイグニッションオフ時に値が消去され、車両10のイグニッションオン時に「0」に初期化される。又、X,flag,Dは、各々、車両10のイグニッションオフ時に不揮発性メモリに格納される。又、Dは、不揮発性メモリへの格納時に「1」未満の値であれば、「1」に切り上げられる(すなわち「1」が格納される)。又、Xの工場出荷時は、クラッチCが最も遅く係合する場合を想定して予め定められた所定待機時間Tdelay(初期値)である。又、flagの工場出荷時は、「1」である。又、Dの工場出荷時は、学習制御によって所定待機時間Tdelayを更新する為の予め定められた所定時間D(初期値)である。
図4では、先ず、アイドルストップ制御部63の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、エンジン12を一時的に自動停止しているときに、所定のエンジン再始動条件が成立した時点からX[ms]経過した後、スタータモータ84によるエンジン12のクランキングが行われてエンジン12が再始動される。次いで、スリップ判定部66の機能に対応するS20において、エンジン12の再始動の過渡中に、タービン回転速度Ntが、推定タービン回転速度Nte(=1stギヤ比γ1×No)と同じであると判定されるか否かに基づいて、クラッチCが滑らなかったか否かが判定される。このS20の判断が肯定される場合は学習制御部68の機能に対応するS30において、X0とX1との差分の絶対値(=|X1-X0|)が1以下であり、且つ、flagが「0」であるか否かが判定される。flagの工場出荷時は「1」であるので、工場出荷後の最初の学習時(初期学習時)は必ずこのS30の判断が否定される。上記S30の判断が否定される場合は学習制御部68の機能に対応するS40において、flagが「1」とされる。上記S20の判断が否定される場合は学習制御部68の機能に対応するS50において、flagが「0」とされる。次いで、学習制御部68の機能に対応するS60において、Rirekiが「1」とされる。上記S40に次いで、又は、上記S60に次いで、学習制御部68の機能に対応するS70において、Rirekiが「1」であるか否かが判定される。上記S70の判断が肯定される場合は学習制御部68の機能に対応するS80において、Dの値が「0.5×D」とされる。上記S70の判断が否定される場合は学習制御部68の機能に対応するS90において、Dの値が「D」とされる。上記S80に次いで、又は、上記S90に次いで、学習制御部68の機能に対応するS100において、X0の値が「X」とされる。次いで、学習制御部68の機能に対応するS110において、flagが「1」であるか否かが判定される。上記S110の判断が肯定される場合は学習制御部68の機能に対応するS120において、Xの値が「X−D」とされる。上記S110の判断が否定される場合は学習制御部68の機能に対応するS130において、Xの値が「X+D」とされる。上記S120に次いで、又は、上記S130に次いで、学習制御部68の機能に対応するS140において、X1の値が「X」とされる。上記S30の判断が肯定される場合は学習制御部68の機能に対応するS150において、学習制御が終了させられて、本ルーチンが終了させられる。
図5は、工場出荷後に、図4のフローチャートに示す制御作動を最初に実行した場合の初期学習時の各数値を示す図表である。図5において、工場出荷時のX(初期値)は「50」[ms]であり、工場出荷時のD(初期値)は「10」である。又、前述した通り、工場出荷時のflag(初期値)は「1」であり、X0,X1,Rirekiは、各々、車両10のイグニッションオン時に「0」に初期化されている。この実施態様では、クラッチCのクリアランスが0.3[mm]につき、所定待機時間Tdelayが10[ms]とされており、工場出荷時のX(初期値)は、クラッチCのクリアランスを1.5(=0.3×5)[mm]と想定した、50(=10×5)[ms]とされている。又、この実施態様は、クラッチCの実際のクリアランスが0.8[mm]の場合の学習例である。図5では、初回学習時において、アイドリングストップ制御の1回目から学習が行われ、1トリップ中におけるアイドリングストップ制御の7回目で学習が完了させられている。図5に示されるように、学習制御の初め方の学習ではXの値が大きな変化で減少させられ、その後、回数を経た学習ではXの値が徐々に小さな変化で増減させられて、クラッチCの実際のクリアランスに対応した所定待機時間Tdelayの値である26.6…[ms]の近傍に、Xの値が適切に収束させられている。学習後、車両10のイグニッションオフ時に、X(学習値),flag,Dは、各々、不揮発性メモリに記憶され、次回のイグニッションオン時に、それらの値が用いられる(但し、D<1の場合はD=1とされる)。
図6は、一旦学習が完了した後、図4のフローチャートに示す制御作動を実行したときに、クラッチCの摩擦材の摩耗によってクラッチCが滑り始めた場合の学習時の各数値を示す図表である。図6において、初期学習が完了した後、クラッチCが初めて滑り始めた実施態様であり、X(学習値),flag,Dは、各々、初期学習が完了したときの車両10のイグニッションオフ時に不揮発性メモリに記憶された値とされている。X0,X1,Rirekiは、各々、車両10のイグニッションオン時に「0」に初期化されている。図6では、アイドリングストップ制御の1回目で学習が完了させられている。
上述のように、本実施例によれば、エンジン12の再始動時にクラッチCが滑らなかった場合には、エンジン12の次回の再始動時に用いる所定待機時間Tdelayを所定時間D短くするように学習されるので、所定待機時間Tdelay(初期値)を、クラッチCの実際のパッククリアランスに応じた所定待機時間Tdelayとなるように速やかに短くすることができる。又、エンジン12の再始動時にクラッチCが滑った場合には、エンジン12の次回の再始動時に用いる所定待機時間Tdelayを所定時間D長くするように学習されるので、短くされ過ぎた所定待機時間Tdelayを、クラッチCの実際のパッククリアランスに応じた所定待機時間Tdelayとなるように長くすることができる。又、所定待機時間Tdelayの学習では、クラッチCが滑ったと判定された履歴がある場合には、今回の学習時に用いる所定時間Dが、前回の学習時に用いた所定時間Dよりも短くされるので、所定待機時間Tdelayを、クラッチCの実際のパッククリアランスに応じた所定待機時間Tdelayとなるように収束させることができる。又、一旦収束させられた所定待機時間Tdelayを用いてエンジン12の再始動を実行したときにクラッチCが滑った場合には、エンジン12の次回の再始動時に用いる所定待機時間Tdelayを所定時間D長くするように学習されるので、クラッチCの摩擦材の摩耗にも対処できる。よって、エンジン12の再始動時に、クラッチCの滑りを抑制すると共に、エンジン再始動の応答性を向上することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、エンジン12のアイドリングストップ制御は車両10の停止時に実行する態様であったが、これに限らない。例えば、車両10の減速走行中のエンジン12のアイドリングストップ制御であっても本発明を適用することができる。但し、車両10の走行中には、駆動輪14の回転でエンジン12が連れ回される為、アイドリングストップ制御におけるエンジン12の自動停止時には自動変速機20がニュートラル状態とされて、エンジン12が回転停止させられる。
また、前述の実施例では、車両10の駆動力源としてエンジン12を例示したが、この態様に限らない。例えば、前記駆動力源は、電動機等の他の原動機をエンジン12と組み合わせて採用することもできる。又、エンジン12の動力は、トルクコンバータ20を介して自動変速機20へ伝達されたが、この態様に限らない。例えば、トルクコンバータ20に替えて、トルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などの他の流体式伝動装置が用いられても良い。又、車両10の自動変速機として遊星歯車式の自動変速機20を例示したが、この態様に限らない。例えば、自動変速機は、常時噛み合う複数対の変速ギヤを2軸間に備える公知の同期噛合型平行2軸式変速機であってアクチュエータによりギヤ段が自動的に切換られる同期噛合型平行2軸式自動変速機、その同期噛合型平行2軸式自動変速機であって入力軸を2系統備える公知のDCT(Dual Clutch Transmission)、又は公知のベルト式等の無段変速機などであっても良い。自動変速機がベルト式等の無段変速機である場合、アイドリングストップ制御においてエンジン12の自動停止時に解放されると共にエンジン12の再始動時に係合される係合装置としては、公知の前後進切替装置に備えられたクラッチなどである。要は、エンジン12と、機械式のオイルポンプ36と、作動油の供給によって係合されることでエンジン12の動力を駆動輪14へ伝達する動力伝達経路を形成することが可能な係合装置(すなわち動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態と、動力伝達経路が形成された状態とに切り替えることができる係合装置)と、アキュムレータ50とを備えた車両であれば、本発明を適用することができる。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
12:エンジン
14:駆動輪
36:オイルポンプ(機械式のオイルポンプ)
50:アキュムレータ
54:ライン圧油路(作動油が流通する油路)
60:電子制御装置(制御装置)
63:アイドルストップ制御部
65:再始動時油圧供給制御部
66:スリップ判定部
68:学習制御部
C:クラッチ(係合装置)

Claims (1)

  1. エンジンと、前記エンジンにより回転駆動されることで作動油を吐出する機械式のオイルポンプと、前記作動油の供給によって係合されることで前記エンジンの動力を駆動輪へ伝達する動力伝達経路を形成することが可能な係合装置と、前記作動油が流通する油路に接続されて油圧の蓄圧と蓄圧した油圧の供給とが可能なアキュムレータとを備えた車両において、所定のエンジン自動停止条件が成立したときに前記エンジンを自動停止すると共に、所定のエンジン再始動条件が成立したときから所定待機時間経過後に前記エンジンの再始動を開始して前記自動停止したエンジンを再始動するアイドルストップ制御部と、前記所定のエンジン再始動条件が成立したときに前記アキュムレータに蓄圧された油圧を前記油路に供給する再始動時油圧供給制御部とを備えた、車両の制御装置であって、
    前記エンジンの再始動が開始されてエンジン回転速度が上昇したときに、前記係合装置が滑らなかったか否かを判定するスリップ判定部と、
    前記係合装置が滑らなかったと判定された場合には、前記エンジンの次回の再始動時に用いる前記所定待機時間を所定時間短くするように学習する一方で、前記係合装置が滑ったと判定された場合には、前記エンジンの次回の再始動時に用いる前記所定待機時間を前記所定時間長くするように学習するものであり、前記係合装置が滑ったと判定された履歴がある場合には、今回の学習時に用いる前記所定時間を、前回の学習時に用いた前記所定時間よりも短くする学習制御部と
    を、更に備えることを特徴とする車両の制御装置。
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