JP2017095775A - 金属多孔質体 - Google Patents

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Abstract

【課題】欠けが生じにくい金属多孔質体を提供する。【解決手段】金属多孔質体1は、複数の金属繊維4が、長軸がランダムな方向を向くように積み重なった三次元網目構造の骨格2と、金属繊維4同士の間の空間に存在する細孔3と、骨格2の少なくとも最表面を覆う樹脂組成物5とを備え、細孔3同士が、流体が流通できるように内部空間が互いに連通しているので、骨格2を覆う樹脂組成物5によって骨格2が補強され、金属多孔質体としての特性を保持しつつ、金属多孔質体1の強度を向上でき、欠けの発生を抑制できる。【選択図】図1

Description

本発明は、金属多孔質体に関する。
金属多孔質体は、無数の細孔を有しており、通気性が良く、比表面積が大きい。さらに金属多孔質体は、金属で形成されているため導電性や熱伝導性が高いという特徴を有している。そのため金属多孔質体は、燃料電池や二次電池、キャパシタの電極、触媒担体、摺動部材などとして、様々な用途に用いられている(特許文献1〜7参照)。
特許文献1には、めっき法により形成され、空隙率が0.6以上0.98以下である金属多孔質体が開示されている。特許文献1に開示されている金属多孔質体は、導電性の担体を介して又は直接触媒を担持してガス分解素子の触媒電極として用いられている。
特許文献2には、鋼板で形成された裏金に一体成型され、空隙率がおおむね10%以上である金属多孔質体が開示されている。特許文献2に開示されている金属多孔質体は、細孔に樹脂組成物が充填され、表面に当該樹脂組成物からなる摺動層が形成されている。特許文献2に開示されている金属多孔質体は、ラックピニオン式舵取装置において、ラックバーの外周面に摺動部材に当接してラックバーを摺動自在に支持するラックガイドの摺動部に用いられている。
特許文献3には、ラネー型金属又は合金からなり、空隙率が70〜98%である金属多孔質体が開示されている。特許文献3に開示されている金属多孔質体は、表面に0.3〜1mmの電極活物質含有被覆層が形成され、ニッケル水素電池の負極として用いられている。
特許文献4には、積層型圧電素子の圧電体層の間に形成され、島状に分布した部分金属層と空隙とからなる金属多孔質体が開示されている。
特許文献5には、空隙率が10%以上70%以下の多孔質の金属薄板からなる金属多孔質体が開示されている。特許文献5に開示されている金属多孔質体は触媒となる金属がめっきにより直接担持されて燃料電池の燃料極として用いられている。
特許文献6には、焼結により形成された金属多孔質体が開示されている。当該金属多孔質体は、特許文献6の図11に示されているように、金属多孔質体の細孔を塞ぐようにポリエチレン樹脂の被膜で覆われている。特許文献6に開示されている金属多孔質体は、活物質層が形成された芯体の露出部に接合され、活物質の脱落を防止する部材としてアルカリ蓄電池の正極に用いられている。
特許文献7には、裏金上に形成され、樹脂組成物を含浸し、表面に樹脂層を備える金属多孔質体が開示されている。特許文献7に開示されている金属多孔質体は、樹脂層が内面となるように円筒形に成型されて車両用のショックアブソーバに用いられている。
特開2009−269021号公報(請求項1、請求項2、請求項3) 特開2014−95089号公報(請求項1、段落0025、段落0034) 特開平11−111304号公報(段落0014、段落0018、段落0021) 国際公開第2007/049697号(段落0083) 国際公開第2004/075322号(12ページの7、8、27行目、13ページの15、16行目、21ページの8、9行目) 特開2004−342591号公報(段落0055、段落0056、段落0058、図11) 特開2012−177439号公報(請求項1)
金属多孔質体は、目的に応じて空隙率を変えて使用される。金属多孔質体は、空隙率を98vol%以上にすることも可能であるが、この場合、金属量が少ないため、手で触ったり、機械装置に入れて搬送したりすると、欠けを生じやすい。加えて、このような高空隙率の金属多孔質体を薄くすると、更に脆くなる傾向があった。そのため、高空隙率の金属多孔質体を作製するためには、金属多孔質体を、縦、横、厚さのアスペクト比が同程度のブロック形状にする必要があった。また、金属多孔質体をシート状の薄膜に成形する場合は、空隙率を低く設定する必要があった。特にフェルトのような繊維質の場合には、繊維がほつれて、金属多孔質体に欠けが生じやすく、空隙率が高くなる程、この傾向が顕著になった。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、欠けが生じにくい金属多孔質体を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点は、複数の金属繊維が、長軸がランダムな方向を向くように積み重なった三次元網目構造の骨格と、前記金属繊維同士の間の空間に存在する細孔と、前記骨格の少なくとも最表面を覆う樹脂組成物とを備え、前記細孔同士は、流体が流通できるように内部空間が互いに連通していることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記樹脂組成物が前記金属繊維同士の交差部を覆っていることを特徴とする。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記樹脂組成物が、前記骨格の質量の0.1〜200wt%含まれていることを特徴とする。
本発明の第4の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記骨格を覆う前記樹脂組成物の厚さが0.05〜100μmであることを特徴とする。
本発明の第5の観点は、第1〜第4の観点のいずれかに基づく発明であって、前記樹脂組成物が、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニリンオキシド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリルから選ばれる1つ以上を含むことを特徴する。
本発明の第6の観点は、第1〜第5の観点のいずれかに基づく発明であって、前記樹脂組成物が導電性樹脂を含むことを特徴とする。
本発明の第1の観点の金属多孔質体は、骨格の少なくとも最表面が樹脂組成物で覆われ、細孔同士が、流体が流通できるように内部空間が互いに連通しているので、樹脂組成物によって骨格を補強でき、金属多孔質体としての特性を有したまま、金属多孔質体の強度を向上でき、欠けの発生を抑制できる。よって、これまで実際に使用することが不可能と考えられていた高空隙率の金属多孔質体を提供することができる。
本発明の第2の観点の金属多孔質体は、金属繊維同士を樹脂組成物によって固定でき、さらに強度を向上できる。
本発明の第3の観点の金属多孔質体は、確実に金属多孔質体の特性を保持でき、強度を向上できる。
本発明の第4の観点の金属多孔質体は、確実に金属多孔質体の特性を保持でき、強度を向上できる。
本発明の第5の観点の金属多孔質体は、金属表面への濡れ性に優れ、かつ強度に優れた皮膜を形成する所定の樹脂組成物で被覆されることにより、確実に金属多孔質体の強度を向上できる。
本発明の第6の観点の金属多孔質体は、金属表面が導電性の樹脂組成物で被覆されることにより、強度を向上できると共に、樹脂組成物の被覆による金属多孔質体の導電性低下を抑制できる。
本発明の実施形態に係る金属多孔質体の上面を示す模式図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
1.実施形態
(1)本発明の実施形態に係る金属多孔質体の構成
図1に示すように、金属多孔質体1は、骨格2と、細孔3と、樹脂組成物5とを備えている。骨格2は、複数の金属繊維4が、長軸がランダムな方向を向くように積み重なった三次元網目構造をしており、本実施形態の場合、金属不織布である。図1では、骨格2の上面の一部を拡大して示しており、説明の便宜上、骨格2を二次元の網目として示している。骨格2を形成する金属としては、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、銀、金、白金、ステンレス鋼などを用いることができる。
細孔3は、金属繊維4と金属繊維4の間の空間に形成されている。図1に示すように、骨格2の最表面において、金属繊維4は樹脂組成物5で覆われている。本明細書でいう骨格2の最表面とは、骨格2の外部に露出している金属繊維4が存在する最表面の領域に加え、最表面から金属繊維4数本分の領域も含んでいる。なお、本実施形態の場合、骨格2の最表面の金属繊維4に加えて、骨格2の内部の金属繊維4も樹脂組成物5で覆われている。このように、骨格2は少なくとも最表面が樹脂組成物5で覆われている。
また、金属繊維4は、交差部6で他の金属繊維4と交差している。本実施形態の場合、樹脂組成物5は、金属繊維4同士を一体に覆い、金属繊維4同士の交差部6を包んでいる。そのため金属繊維4同士は、交差部6において樹脂組成物5によって固定されている。一部の交差部6では、金属繊維4同士が直接接触した状態で固定されている。その他の交差部6では、金属繊維4同士の間に樹脂組成物5が介在しており、金属繊維4同士が樹脂組成物5を介して固定されている。このように、骨格2は交差部6も樹脂組成物5で覆われていてもよい。
細孔3は、金属多孔質体1中に無数に存在する。細孔3同士は内部空間が繋がっており、液体や気体などの流体が細孔3を介して金属多孔質体1中を流通できる。図1では金属多孔質体1を模式的に表しているため、便宜的に細孔3が他の細孔3と独立しているように描かれている。
樹脂組成物5としては、金属表面への濡れ性に優れ、かつ強度に優れた皮膜を形成できる樹脂、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニリンオキシド(PPO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン(PSU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、エポキシ樹脂(EP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)などを用いることができる。また樹脂組成物5はポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンスルフィドなどの導電性樹脂であってもよい。これらの樹脂は樹脂組成物5を形成するために用いることができる樹脂の一例である。上記以外の他の樹脂を用いて樹脂組成物5を形成してもよい。また、樹脂組成物5は、1種類の樹脂を用いて形成してもよいし、複数種類の樹脂を混合して形成してもよい。
このような金属多孔質体1は、樹脂組成物5を骨格2の質量の0.1〜200wt%含んでいるのが望ましい。樹脂組成物5の含有量が骨格2の質量の0.1〜200wt%であると、細孔3が樹脂組成物5によって塞がれずに、金属多孔質体1の空気や気体の流通性を確保できる。そして、樹脂組成物5の厚さも厚くなりすぎないので、導電性や熱伝導性を保持できる。よって金属多孔質体1は、通気性や金属としての特性を確実に有したまま、強度が向上する。
さらに樹脂組成物5の含有量が骨格2の質量の1〜30wt%であることが特に望ましい。樹脂組成物5の含有量がこの範囲にあると、金属多孔質体1は、通気性や金属としての特性をより確実に有したまま、強度を向上できる。
また、骨格2を覆う樹脂組成物5の厚さは0.05〜100μmであることが望ましい。樹脂組成物5の厚さが0.05〜100μmであると、細孔3が樹脂組成物5によって塞がれずに金属多孔質体1の空気や気体の流通性を確保でき、導電性や熱伝導性を保持できる。100μmよりも厚い樹脂組成物5が付着した場合には、金属多孔質体1の細孔3の一部を塞いでしまう不具合が生じてしまう。よって金属多孔質体1は、樹脂組成物5の厚さが0.05〜100μmであると、通気性や金属としての特性を確実に有したまま、強度が向上する。
さらに樹脂組成物5の厚さが0.1〜50μmであることが特に望ましい。樹脂組成物5の厚さがこの範囲にあると、金属多孔質体1は、通気性や金属としての特性をより確実に有したまま、強度を向上できる。
樹脂組成物5の厚さは、金属繊維4の表面から、当該表面を覆う樹脂組成物5の最表面までの距離を、金属多孔質体1を撮影した顕微鏡写真を用いて30カ所測定し、その平均値を算出して求めた。
(2)本発明の実施形態に係る金属多孔質体の製造方法
金属多孔質体1の製造方法は、(i)骨格2を作製する工程と、(ii)骨格2に樹脂組成物5を被覆する工程とからなる。
(i)骨格2を作製する工程
まず、金属繊維4を所定の長さにカットし、カットした複数の金属繊維4を、長軸方向がランダムとなるように配置し、積み重ねる。その後、プレスにより圧縮し、フェルト状に成型する。最後に、成形したフェルトを、還元雰囲気中で、金属繊維4を形成する金属の融点程度まで加熱する。加熱により金属繊維4同士の接点を接合して、骨格2を得る。
骨格2の作製方法は、上記の方法に限定されるものではなく、公知の金属不織布の製造方法を用いることができる。また、骨格2は、市販の金属不織布を用いることができる。
(ii)骨格2に樹脂組成物5を被覆する工程
次に、骨格2に樹脂組成物5を被覆する工程を説明する。まず、ミキサーを用いて樹脂をN−メチルー2−ピロリドン(NMP)やエーテルなどの溶媒に所定の濃度になるように溶解させ、樹脂溶液を作製する。その後、骨格2を所定の時間、樹脂溶液に浸漬する。樹脂溶液に浸漬した骨格2を、所定の温度で所定の時間、乾燥し、骨格2が樹脂組成物5で覆われた金属多孔質体1を得る。
なお、金属多孔質体1の樹脂組成物5の含有量は、樹脂を溶かす溶媒中における樹脂の質量を変えることで調整できる。溶媒中の樹脂の質量を変えると樹脂溶液の粘度が変化し、骨格2への樹脂組成物5の付着の仕方が変わる。樹脂溶液の粘度が低いと、骨格2の内部にある細孔3にも樹脂溶液が浸み込み易く、内部の細孔3を形成する金属繊維4にも樹脂組成物5が付着し易くなる傾向がある。この場合、樹脂溶液の濃度が低いので、金属繊維4を覆う乾燥後の樹脂組成物5の厚さが薄くなる傾向があり、金属多孔質体1の骨格2の質量に対する樹脂組成物5の含有量が少ない傾向がある。
樹脂溶液の粘度が高くなると、金属繊維4を覆う乾燥後の樹脂組成物5の厚さが厚くなる傾向があり、金属多孔質体1の骨格2の質量に対する樹脂組成物5の含有量が増える。樹脂溶液の粘度がさらに高くなると、骨格2の細孔3に樹脂溶液が入り込みにくくなり、骨格2の内部の細孔3を形成する金属繊維4に樹脂組成物5が付着し難くなる傾向がある。そして、骨格2の最表面に樹脂組成物5が厚く付着する傾向がある。この場合、金属多孔質体1の骨格2の質量に対する樹脂組成物5の含有量が高い傾向にある。
(3)作用及び効果
以上の構成において、金属多孔質体1は、複数の金属繊維4が、長軸がランダムな方向を向くように積み重なった三次元網目構造の骨格2と、金属繊維4同士の間の空間に存在する細孔3と、骨格2の少なくとも最表面を覆う樹脂組成物5を備え、細孔3同士が、流体が流通できるように内部空間が互いに連通しているように構成した。
よって金属多孔質体1は、金属多孔質体1に力が加えられたとき、樹脂組成物5が伸縮することにより骨格2にかかる力の一部を吸収するので、金属多孔質体1を破断させるのに必要な力が増加し、強度が増す。このように金属多孔質体1は、骨格2を樹脂組成物5で覆うことで補強でき、通気性や金属としての特性を有したまま、金属多孔質体1の強度を向上でき、欠けの発生を抑制できる。よって金属多孔質体1は、高空隙率に形成しても欠けが発生し難く、これまで実際に使用することが不可能と考えられていた高空隙率の金属多孔質体を提供することができる。特に、金属繊維4からなる骨格2を樹脂組成物5で被覆した本実施形態の場合には、金属繊維4の脱落が起きにくくなる。
さらに、金属多孔質体1は、骨格2の最表面の金属繊維4に加えて、骨格2の内部の金属繊維4も樹脂組成物5で覆われているようにすることで、骨格2をより強く補強でき、より確実に欠けの発生を抑制できる。
このような金属多孔質体1を熱交換器やフィルタ用途として使用した場合に、ガスや液体などの流体により金属繊維4が吹き飛ばされることが少なくなり、流体中へ脱落した金属繊維4が混入し難くなるという効果がある。
電気化学セルの集電体用途に使用する場合に、金属繊維4が脱落して電極中の異物となり、この異物が電池のセパレータを突き破って短絡を起こすことが少なくなるという効果がある。また、電極の化学的な安定性を向上でき、電極の電気化学的な分解を抑制することができる。
また金属多孔質体1は、樹脂組成物5が金属繊維4同士の交差部6を覆うことで、金属繊維4同士を樹脂組成物5によって固定でき、金属多孔質体1の強度をさらに向上できる。
さらに、金属多孔質体1は、金属繊維4同士が樹脂組成物5を介して固定されることで、さらに強度を向上できる。金属多孔質体1は、骨格2の表面を樹脂組成物5で覆うことで、金属繊維4同士の間の隙間が樹脂組成物5で埋まり、金属繊維4同士が樹脂組成物5を介して固定されるようになる。
2.変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
上記の実施形態では、骨格2の内部の金属繊維4も樹脂組成物5で覆われている場合について説明したが、本発明はこれに限られない。金属多孔質体1は、骨格2の最表面の金属繊維4が樹脂組成物5で覆われていれば、骨格2の内部の金属繊維4が樹脂組成物5で覆われていなくてもよい。このような骨格2の最表面の金属繊維4のみ樹脂組成物5で覆われた金属多孔質体1は、上記の実施形態よりもさらに粘度の高い樹脂溶液を用いることで作製できる。当該金属多孔質体1は、電気化学セルの集電体に用いると、骨格2の内部にある樹脂組成物5の量が少ない分だけ、より多くの活物質を担持することができる。
上記実施形態では、樹脂溶液を作製するときの溶媒への樹脂の添加量を調整し、樹脂溶液の粘度を変えることで、樹脂組成物5の含有量を変化させたが、本発明はこれに限られない。金属多孔質体1の樹脂組成物5の含有量は、樹脂の分子量を変えることにより、変化させることができる。平均分子量の高い樹脂を用いることで、樹脂溶液の粘度を高くでき、樹脂組成物5の含有量を増加できる。さらにこの場合は、樹脂組成物5の弾性強度が高くなり、金属多孔質体1の強度がさらに向上する。例えば、平均分子量28万g/モルのPVDF(例えば、株式会社クレハ社製PVDF#1100)を、平均分子量100万g/モルのPVDF(例えば、株式会社クレハ社製PVDF#7300)に変えることで、同じ質量の樹脂量で、強度アップを図ることができる。
上記実施形態では、骨格2を樹脂溶液に浸漬して樹脂組成物5で被覆したが、本発明はこれに限られない。例えば、樹脂組成物5を被覆する工程において、骨格2を真空容器に投入し、真空にした状態で樹脂溶液を容器に流しこみ、骨格2を樹脂溶液に浸漬し、その後大気圧に戻すことで、骨格2を樹脂組成物5で被覆してもよい。この場合は、より多くの樹脂組成物5を骨格2に含有させることができる。骨格2を真空下に置いたことで、大気下では抜けにくかった細孔3に含まれていた気体も抜けて、当該細孔3にも樹脂組成物5が入り込むようになる。また、真空から大気圧に戻すときに、加圧されることから骨格2の内部の細孔3に樹脂組成物5がより入り込みやすくなる。そのため樹脂組成物5の含有量が増加する。
さらに、樹脂溶液をコンマロールコータやダイコータなどにより骨格2の最表面に塗工して、最表面から骨格2内部に樹脂溶液を浸み込ませ、骨格2を樹脂組成物5で被覆してもよい。ダイコータを用いる場合、樹脂溶液の吐出量を調整することで、樹脂組成物5の含有量を調整することができる。
加えて、樹脂溶液をスプレー装置などにより骨格2の最表面に塗工して、最表面から骨格2内部に樹脂溶液を浸み込ませ、骨格2を樹脂組成物5で被覆してもよい。スプレー装置を用いる場合、樹脂溶液の噴射量を調整することで、樹脂組成物5の含有量を調整することができる。
3.金属多孔質体の用途
金属多孔質体1は、高い通気性、導電性、及び熱伝導性を有したまま、強度が増しているので、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ、及びニッケル水素電池などの電気化学セルの電極、フィルタ、熱交換器に用いることができる。
金属多孔質体1を電気化学セルの電極に用いる場合、金属多孔質体1は電極の集電体として用いられる。金属多孔質体1は、リチウムイオン二次電池の正極に用いる場合、例えば、正極活物質としてのLiCoOと、導電助剤としてのアセチレンブラックと、バインダーとしてのPVDFとを混合して作製した合材が細孔3に充填されて正極となる。金属多孔質体1はこのような正極の集電体として機能する。金属多孔質体1は、正極活物質を負極活物質に変えることで、負極にも用いることができる。
金属多孔質体1を電極に用いた電気化学セルは、製造過程における電極の欠けを防ぐことができ、電極の破片により電気化学セルが内部短絡することを抑制できる。また、金属多孔質体1を電極に用いた電気化学セルは、樹脂組成物5により、金属多孔質体1の金属の充填率を上げずに従来の物よりも強度を高くすることが可能であり、空隙率を従来よりも高めることができ、電極がより多くの活物質を有することができ、容量を向上できる。
金属多孔質体1をフィルタとして用いる場合は、金属多孔質体1に気体や液体を流通させてフィルタとして使用する。このようなフィルタは、気体や液体から分離した物質が金属多孔質体1の細孔3を通ることができないため、気体や液体から所定の物質を分離できる。
金属多孔質体1を用いたフィルタは、金属多孔質体1を通過する気体や液体によって金属多孔質体1が破損し、劣化することを抑制でき、耐久性を向上できる。
金属多孔質体1を熱交換器として用いる場合は、金属多孔質体1に気体や液体を流通させて使用する。金属多孔質体1は熱伝導率が高いため、気体や液体が金属多孔質体1と接したとき、気体や液体の熱が金属多孔質体1に移動する。そのため、金属多孔質体1は、熱交換器として機能する。
金属多孔質体1を用いた熱交換器は、金属多孔質体1を通過する気体や液体によって金属多孔質体1が破損し、劣化することを抑制でき、耐久性を向上できる。
(実施例1)
実施例1では、本発明の金属多孔質体を作製し、その特性を評価した。具体的には、作製した金属多孔質体の引張強度を測定し、強度を評価した。
(1)金属多孔質体の作製
実施例1として、金属繊維としての直径50μmからなるアルミニウム繊維を用いて形成したアルミフェルト(金属不織布)を骨格とし、アルミフェルトの質量に対して0.1、1、5、10、50、100、200wt%のPVDFを含む金属多孔質体をそれぞれ作製した。作製方法は、溶媒への樹脂の添加量を変化させた点以外は同じであるので、アルミフェルトの質量に対して5wt%のPVDFを含む金属多孔質体を例に説明する。
直径50μmのアルミニウム繊維を、長さ15mmに切断し、容器の中にいれて容器を回転させ、アルミニウム繊維がランダムな方向を向くように不規則に配置した。不規則に配置したアルミニウム繊維の一部を取り出し、50cmx50cmの正方形状の金型に移し、0.3kgf/cmの加重でプレスし、フェルト状に加工した。フェルト状に加工したアルミニウム繊維をアルミナ製の板の上に載せ、600℃のアルゴン雰囲気下で焼結してアルミニウム繊維間を接合し、空隙率98vol%、厚さ0.4mmのアルミフェルトを得た。作製したアルミフェルトを10mm、長さ30mmの大きさに切断し、アルミフェルトでなる骨格を用意した。
N−メチルー2−ピロリドン(NMP)に粒子状のPVDF粉末(株式会社クレハ社製PVDF#1100)を5wt%の質量濃度になるようにミキサーで溶解させPVDFの樹脂溶液を作製した。その後、切断した骨格を樹脂溶液に3分浸漬した。その後、浸漬した骨格を180℃で30分間乾燥させて金属多孔質体を作製した。当該金属多孔質体はアルミフェルトの質量に対して5wt%の割合でPVDFを含んでいた。
(2)金属多孔質体の強度の評価
テンシロン万能試験機(エーアンドデー社製)を用いて、実施例1の金属多孔質体の引張強度を測定した。金属多孔質体を2つのチャックでチャック間距離が10mmとなるように保持し、試験機に金属多孔質体を設置した。2つのチャックを0.2mm/minの速度で離していき、金属多孔質体が破断したときに金属多孔質体にかかっていた力と、そのときのチャック間距離を測定した。本明細書では、破断時の引張力を引張強度とし、破断時のチャック間距離からチャック間距離の初期値である10mmを引いた値を金属多孔質体の伸びと定義した。
比較のために、比較例1として実施例1の金属多孔質体を作製するのに用いたアルミフェルトの引張強度も測定した。アルミフェルトの引張強度の値を1として算出した実施例1の金属多孔質体の相対強度から1を引いた値を百分率で表したものを樹脂被覆による「強化率」とし、強化率により金属多孔質体の強度を評価した。
Figure 2017095775
表1に示すように、実施例1の金属多孔質体は、いずれも強化率が正の値となっており強度が向上していることがわかる。実施例1の金属多孔質体では、骨格が樹脂組成物で覆われているので、金属多孔質体が引っ張られたとき、樹脂組成物が伸縮することにより骨格にかかる力の一部を吸収するので、金属多孔質体にかかる力が減少する。さらに、実施例1の金属多孔質体では、金属繊維同士の交差部が樹脂組成物で覆われているので、金属繊維同士が樹脂組成物によって固定され、金属繊維間の結合が強くなる。その結果、実施例1の金属多孔質体は強度が増加したと考えられる。
また、実施例1の金属多孔質体は比較例1の金属多孔質体より破断時の伸びが大きい。実施例1の金属多孔質体では、上記の様に金属繊維間の結合が伸縮性の樹脂組成物により強化されており、樹脂組成物で覆われていない場合だと金属繊維間の結合が切れる程度の力でも金属繊維間の結合が切れなかったものと考えられる。
実施例1の金属多孔質体は、樹脂組成物の含有量が増えるほど強化率が高く、破断時の伸びが大きい。樹脂組成物の量が増えると、樹脂組成物が吸収する力も増え、金属繊維間の結合も強くなるためであると考えられる。
(実施例2)
実施例2では、樹脂組成物を変えて金属多孔質体を作製し、その引張強度を評価した。作製した実施例2の金属多孔質体は、実施例1と同様である幅10mm、長さ30mm、厚さ0.4mm、空隙率98vol%のアルミフェルトを骨格として用い、アルミフェルトの質量の5wt%の樹脂組成物を含有している。金属多孔質体の作製方法は、溶媒に添加した樹脂が異なる点以外、実施例1と同様である。実施例2の金属多孔質体に用いた樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニリンオキシド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリルと、導電性樹脂のポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンスルフィドとである。
比較例2として、実施例2の金属多孔質体を作製するのに用いたアルミフェルトの破断時の引張強度も測定した。
金属多孔質体の強度は、測定した実施例2の破断時の引張強度を比較例2の破断時の引張強度で割った値から1を引いた値を百分率で表した値、すなわち、実施例1と同様に強化率を用いて評価した。表2には、引張強度の向上度合を、強化率が30%以上である場合を◎、10%以上30%未満である場合を○、1%以上10%未満の場合を△、1%未満の場合を×として示してある。破断時の引張強度は実施例1と同じ方法で測定した。
Figure 2017095775
表2に示すように、実施例2の金属多孔質体は引張強度が向上していることがわかる。金属多孔質体は、上記の樹脂を用いて作製した樹脂組成物で骨格を覆うことで、強度を向上できることがわかる。
(実施例3)
実施例3では、直径30μm、平均長さ10mmのアルミニウム繊維を用いて形成したアルミフェルトを骨格とし、アルミフェルトの質量に対して3wt%のPVDFを含む金属多孔質体を作製した。そして、当該金属多孔質体を電極の集電体に用いて電気二重層キャパシタ(EDLC)を作製し、EDLCの特性を評価した。
(1)金属多孔質体の作製
直径30μmのアルミニウム繊維を、長さ10mmに切断し、容器の中にいれて容器を回転させ、アルミニウム繊維がランダムな方向を向くように不規則に配置した。不規則に配置したアルミニウム繊維の一部を取り出し、50cm×50cmの正方形状の金型に移し、0.3kgf/cmの加重でプレスし、フェルト状に加工した。フェルト状に加工したアルミニウム繊維をアルミナ製の板の上に載せ、600℃のアルゴン雰囲気下で焼結してアルミニウム繊維間を接合し、空隙率85vol%、厚さ1.0mmのアルミフェルトでなる骨格を用意した。
NMPに粒子状のPVDF粉末(株式会社クレハ社製PVDF#7200)を10wt%の質量濃度になるようにミキサーで溶解させ、PVDFの樹脂溶液を作製した。その後、骨格を樹脂溶液に3分浸漬した。浸漬した骨格を180℃で30分間乾燥させて金属多孔質体を作製した。当該金属多孔質体はアルミフェルトの質量に対して3wt%の割合でPVDFを含んでいた。
(2)EDLCの作製
まず、活物質としての水蒸気不括化した活性炭(クラレケミカル社製YP50F)と、バインダーとしてのPVDF(株式会社クレハ社製PVDF#7200)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とをYP50F:PVDF:ABが質量比で80:10:10となるように計量した。次に、NMPにPVDFを投入し、シンキー社製泡取り錬太郎で10分程度撹拌し、NMPにPVDFを十分に溶解させた。続いて、PVDFを溶解させたNMPに、YP50FとABとを加えて、更に10分程度撹拌して電極スラリーを作製した。当該電極スラリーの粘度は、7Pa・sであった。
次いで、10cm×50cmの大きさに切断した金属多孔質体に、スロットダイコータを用いて電極スラリーを塗工し、YP50Fを含む電極材料を金属多孔質体の骨格に含浸させた。電極スラリーを塗工した金属多孔質体を乾燥器内に移して100℃の大気雰囲気下で1時間乾燥した。その後、乾燥機内を真空状態にし、さらに1時間、金属多孔質体を乾燥させた。なお、金属多孔質体の一部に電極スラリーを塗工しないことで、金属多孔質体に、リード線を接続するための領域を設けた。
乾燥後、直径250mmのロールプレスを用いて線圧50kg/cmで当該金属多孔質体を圧延した。圧延した金属多孔質体を、電極スラリーが塗工されていない領域(0.5cm×2.5cm)を含むように、3.0cm×2.5cmの大きさにカットした。カットした金属多孔質体の電極スラリーが塗工されていない領域を、アルミニウムで形成されたリード線で両面から挟み、リード線と金属多孔質体とをスポット溶接機で抵抗溶接してEDLC用電極を作製した。当該電極を2枚作製した。
続いて、大きさ3cm×3cm、厚さ30μmのセルロース製不織布でなるセパレータを、2枚のEDLC用電極で挟み、アルミラミネートパック内に挿入した。当該ラミネートパックをアルゴン雰囲気下のグローブボックス内に移し、グローブボックス内を2kPaまで減圧した。その後、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に1Mのテトラエチルアンモニウム・テトラフルオボレート(EtNBF)を添加した電解液をアルミラミネートパック内に注入し、アルミラミネートパックを熱シールして実施例3のEDLCを作製した。
比較のために、実施例3で作製したアルミフェルトを集電体に用いて実施例3と同じ条件で比較例3のEDLCを作製した。実施例3のEDLCと比較例3のEDLCの違いは、集電体の骨格がPVDFで補強されているか否かという点のみである。実施例3のEDLCと比較例3のEDLCとをそれぞれ100セルずつ作製した。
(3)EDLCの評価
実施例3と比較例3のEDLCに対して下記で説明する耐久試験を実施し、実施例3と比較例3のEDLCの電気特性を評価した。
まず充放電試験装置を用いて、25℃において10Cの充放電試験を20サイクル繰り返した後に、ソーラートロン社製の交流インピーダンス装置を用いて周波数10mHzにおけるEDLCの直流抵抗を測定し、当該測定値をEDLCの初期の抵抗値とした。
その後、耐久試験として、25℃において3.2Vの電圧をEDLCに印加し、EDLCの完全な充電状態を維持し続けるフロート充電を240時間実施した。耐久試験後、再度同様の方法で直流抵抗を測定し、当該測定値を耐久試験後の抵抗値とした。耐久試験後の抵抗値を初期の抵抗値で割ることで抵抗増加率を算出した。
このような試験を、実施例3のEDLC100セルと比較例3のEDLC100セルとについて行い、抵抗増加率が10%以上のセルの個数と10%未満のセルの個数とをそれぞれカウントした。その結果を表3に示す。
Figure 2017095775
実施例3のEDLCは、抵抗増加率が10%未満のセルの個数が比較例3のEDLCよりも多く、3.2Vフロート充電でもEDLCの内部抵抗の増加が抑制され、金属多孔質体の骨格を樹脂組成物で補強することで、耐久性が向上していることがわかる。
これは、第1に、骨格が樹脂組成物で補強されることで、金属多孔質体の欠けの発生が抑制されたからであると考えられる。第2に、常に充電状態が継続されるフロート充電による耐久試験において、内部抵抗が増加したEDLCが少ないことから、骨格を樹脂組成物で補強することで、EDLCの正極の電気化学的な酸化分解、或いは負極の電気化学的な還元分解が抑制されたからであると考えられる。
すなわち、骨格を樹脂組成物で補強することによって、金属多孔質体の機械的な強度が向上することに加えて、金属多孔質体をEDLCの電極の集電体として使用した場合に、活物質である活性炭や、導電助剤であるABと、金属多孔質体との結合が強くなり、さらに耐久性が向上したと考えられる。
骨格の補強に用いた樹脂がPVDFであり、活物質を固定させるバインダーとして用いた樹脂もPVDFであるために、活性炭、PVDF、ABを含む電極スラリーを金属多孔質体に含浸させる際に金属繊維上のPVDFが電極スラリーのNMPによって多少溶け、金属多孔質体と活性炭及びABとの固着度合いが強まったものと考えられる。その結果、さらに高電圧下での耐久性が向上したと考えられる。
(実施例4)
実施例4では、直径50μm、平均長さ10mmのアルミニウム繊維を用いて形成したアルミフェルトを骨格とし、アルミフェルトの質量に対して1.8wt%のPVDFを含む金属多孔質体を作製した。そして、当該金属多孔質体を電極の集電体に用いてリチウムイオン二次電池(LiB)を作製し、LiBの特性を評価した。
(1)金属多孔質体の作製
直径50μmのアルミニウム繊維を、長さ10mmに切断し、容器の中にいれて容器を回転させ、アルミニウム繊維がランダムな方向を向くように不規則に配置した。不規則に配置したアルミニウム繊維の一部を取り出し、50cm×50cmの正方形状の金型に移し、0.5kgf/cmの加重でプレスし、フェルト状に加工した。フェルト状に加工したアルミニウム繊維をアルミナ製の板の上に載せ、600℃のアルゴン雰囲気下で焼結してアルミニウム繊維間を接合し、空隙率70vol%、厚さ0.5mmのアルミフェルトでなる骨格を用意した。
NMPに粒子状のPVDF粉末(株式会社クレハ社製PVDF#1100)を5wt%の質量濃度になるようにミキサーで溶解させ、PVDFの樹脂溶液を作製した。その後、骨格を樹脂溶液に3分浸漬した。浸漬した骨格を180℃で30分間乾燥させて金属多孔質体を作製した。当該金属多孔質体はアルミフェルトの質量に対して1.8wt%の割合でPVDFを含んでいた。
(2)リチウムイオン二次電池(以下、LiBという。)の作製
まず、LiB用正極を作製した。具体的には、活物質としての平均粒径10μmのコバルト酸リチウム(LiCoO、以下LCOという。)と、バインダーとしてのPVDF(株式会社クレハ社製PVDF#1100)と、導電助剤としてのABとをLCO:PVDF:ABが質量比で96:2:2となるように計量した。次に、NMPにPVDFを投入し、シンキー社製泡取り錬太郎で10分程度撹拌し、NMPにPVDFを十分に溶解させた。続いて、PVDFを溶解させたNMPに、LCOとABとを加えて、更に10分程度撹拌して電極スラリーを作製した。当該電極スラリーの粘度は、4Pa・sであった。
次いで、10cm×50cmの大きさに切断した金属多孔質体に、スロットダイコータを用いて電極スラリーを塗工し、LCOを含む電極材料を金属多孔質体の骨格に含浸させた。電極スラリーを塗工した金属多孔質体を乾燥器内に移して100℃の大気雰囲気下で1時間乾燥した。その後、乾燥機内を真空状態にし、さらに1時間、金属多孔質体を乾燥させた。なお、金属多孔質体の一部に電極スラリーを塗工しないことで、金属多孔質体に、リード線を接続するための領域を設けた。
乾燥後、直径250mmのロールプレスを用いて線圧80kg/cmで当該金属多孔質体を圧延した。圧延した金属多孔質体を、電極スラリーが塗工されていない領域(0.5cm×2.5cm)を外縁部に含むように、3.0cm×2.5cmの大きさカットした。カットした金属多孔質体の電極スラリーが塗工されていない領域を、アルミニウムで形成されたリード線で両面から挟み、リード線と金属多孔質体とをスポット溶接機で抵抗溶接してLiB用正極を作製した。
続いて、LiB用負極を作製した。具体的には、活物質としての天然黒鉛と、バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)とを天然黒鉛:SBR:CMCが質量比で98:1:1となるように計量した。計量後、水にCMCを溶解させ濃度1%の水溶液を作製し、当該水溶液と天然黒鉛とを自転公転ハイブリッドミキサー(株式会社シンキー製、モデル:ARE−310)に投入して10分撹拌した。さらに、SBRを分散させた溶液を投入して10分撹拌した。その後、適宜水を加えさらに攪拌し、粘度を0.5Pa・sに調整した負極スラリーを得た
次いで、200cm×20cmの大きさに切断した厚さ10μmの銅箔を用意し、銅箔の一表面に負極スラリーをコンマロールコータによって塗工し、120℃で1時間乾燥させた。なお、金属多孔質体の一部に電極スラリーを塗工しないことで、金属多孔質体に、リード線を接続するための領域を設けた。
乾燥後、直径250mmのロールプレスを用いて線圧50kg/cmで当該金属多孔質体を圧延した。圧延した金属多孔質体を、電極スラリーが塗工されていない領域(0.5cm×2.5cm)を外縁部に含むように、3.0cm×2.5cmの大きさに切り出し、電極スラリーが塗工されていない領域を、ニッケルで形成されたリード線で両面から挟み、リード線と金属多孔質体とをスポット溶接機で抵抗溶接してLiB用負電極を作製した。
続いて、大きさ3cm×3cm、厚さ20μmのポリエチレン製微多孔膜でなるセパレータを、LiB用正極とLiB用負極とで挟み、アルミラミネートパック内に挿入した。当該ラミネートパックをアルゴン雰囲気下のグローブボックス内に移し、グローブボックス内を2kPaまで減圧した。その後、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを1:1の体積比で混合した溶媒に1MのLiPFが電解質として溶解された電解液をアルミラミネートパック内に注入含浸させ、アルミラミネートパックを熱シールして実施例4のLiBを作製した。
比較のために、実施例4で作製したアルミフェルトを正極の集電体に用いて実施例4と同じ条件で比較例4のLiBを作製した。実施例4のLiBと比較例4のLiBの違いは、骨格がPVDFで補強されているか否かという点のみである。実施例4のLiBと比較例4のLiBとをそれぞれ30セルずつ作製した。
(3)LiBの評価
実施例4と比較例4のLiBに対して下記で説明する耐久試験を実施し、実施例4と比較例4のLiBの電気特性を評価した。
まず充放電試験装置を用いて、25℃において0.2C−4.2VのCC−CV充電と0.2CのCC放電−3.0Vカットオフ電圧で、充放電試験を3サイクル繰り返した後に、ソーラートロン社製の交流インピーダンス装置を用いて周波数10mHzにおけるLiBの直流抵抗を測定し、当該測定値をLiBの初期の抵抗値とした。ここでCCとは、コンスタントカーレント(一定電流)の意味で、CVとは、コンスタントボルテージ(一定電圧)の意味である。
その後、耐久試験として、25℃において4.4Vの電圧をLiBに印加し、LiBの完全な充電状態を維持し続けるフロート充電を100時間実施した。耐久試験後、再度同様の方法で直流抵抗を測定し、当該測定値を耐久試験後の抵抗値とした。耐久試験後の抵抗値を初期の抵抗値で割ることで抵抗増加率を算出した。
このような試験を、実施例4のLiB30セルと比較例4のLiB30セルとについて行い、抵抗増加率が30%以上のセルの個数と30%未満のセルの個数とをそれぞれカウントした。その結果を表4に示す。
Figure 2017095775
実施例4のLiBは、抵抗増加率が30%未満のセルの個数が比較例3のLiBよりも多く、4.4Vフロート充電でもLiBの内部抵抗の増加が抑制され、金属多孔質体の骨格を樹脂組成物で補強することによって耐久性が向上していることがわかる。なお、実施例4及び比較例4のLiBは、負極が同じであるので、フロート充電による耐久試験おいて劣化したLiBの数の差は、正極の集電体の差に起因すると考えられる。
これは、第1に、骨格が樹脂組成物で補強されることで、金属多孔質体の欠けの発生が抑制されたからであると考えられる。第2に、常に充電状態が継続されるフロート充電による耐久試験において、内部抵抗が増加したLiBが少ないことから、骨格を樹脂組成物で補強することで、LiBの正極の電気化学的な酸化分解が抑制されたからであると考えられる。
すなわち、骨格を樹脂組成物で補強することによって、金属多孔質体の機械的な強度が向上することに加えて、金属多孔質体をLiBの正極の集電体として使用した場合に、活物質であるLCOや、導電助剤であるABと、金属多孔質体との結合が強くなり、さらに耐久性が向上したと考えられる。
骨格の補強に用いた樹脂がPVDFであり、活物質を固定させるバインダーである樹脂もPVDFであるために、LCO、PVDF、ABを含む電極スラリーを金属多孔質体に含浸させる際に金属繊維上のPVDFが電極スラリーのNMPによって多少溶け、金属多孔質体とLCO及びABとの固着度合いが強まったものと考えられる。その結果、さらに高電圧下での耐久性が向上したと考えられる。
このように金属多孔質体は、樹脂組成物で覆われた骨格にバインダーを介して活物質を結着させて電気化学セル用電極の集電体として用い、樹脂組成物がバインダーと同じ樹脂で形成されているように構成することで、電気化学セル用電極の集電体として用いたとき、電気化学セルの耐久性を向上できる。
1 金属多孔質体
2 骨格
3 細孔
4 金属繊維
5 樹脂組成物
6 交差部

Claims (6)

  1. 複数の金属繊維が、長軸がランダムな方向を向くように積み重なった三次元網目構造の骨格と、
    前記金属繊維同士の間の空間に存在する細孔と、
    前記骨格の少なくとも最表面を覆う樹脂組成物と
    を備え、
    前記細孔同士は、流体が流通できるように内部空間が互いに連通している
    ことを特徴とする金属多孔質体。
  2. 前記樹脂組成物が前記金属繊維同士の交差部を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の金属多孔質体。
  3. 前記樹脂組成物が、前記骨格の質量の0.1〜200wt%含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属多孔質体。
  4. 前記骨格を覆う前記樹脂組成物の厚さが0.05〜100μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属多孔質体。
  5. 前記樹脂組成物が、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニリンオキシド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリルから選ばれる1つ以上を含むことを特徴する請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属多孔質体。
  6. 前記樹脂組成物が導電性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属多孔質体。
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