JP2017095766A - 半導体パッケージ、及び半導体装置 - Google Patents

半導体パッケージ、及び半導体装置 Download PDF

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Abstract

【課題】放熱性に優れる半導体パッケージ、及び半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体素子が搭載される基板と、前記基板に設けられるパッケージ部品とを備え、前記基板は、ダイヤモンド粒子と、前記ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、前記被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀又は銀合金とを備え、酸素含有量が0.1質量%以下であるダイヤモンド複合材料から構成される半導体パッケージ。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体素子を収納する半導体パッケージ、半導体素子を備える半導体装置に関するものである。特に、放熱性に優れる半導体パッケージ、及び半導体装置に関するものである。
半導体素子の高集積化、高出力化、高速化などが進んでいる。そのため、半導体素子が作動上限温度に達しないように、半導体素子を十分に放熱する必要がある。従来、自然対流や強制送風によって半導体素子を冷却する他、放熱面積を拡大するための放熱部材としての基板に半導体素子を搭載することがなされている。
特に高い放熱性が要求される放熱部材(基板)の素材として、高い熱伝導率を有するダイヤモンドと、金属との複合材料が検討されている。特許文献1は、ダイヤモンドとAg−Cu合金との複合材料を開示している。特許文献2は、ダイヤモンドと銅との複合材料を開示している。
特開2004−197153号公報 国際公開第2003/040420号パンフレット
半導体素子を基板に搭載した半導体装置や、基板とシールリングや電極などのパッケージ部品とを備えて、半導体素子を収納する半導体パッケージに対して、放熱性の更なる向上が望まれる。上記基板として、上述のダイヤモンドと金属とを主体とする複合材料から構成されるものを利用すれば、放熱性に優れる半導体装置や半導体パッケージが得られる。しかし、ダイヤモンドは、一般に、金属との濡れ性に劣る。その結果、ダイヤモンドと金属とを複合すると、ダイヤモンドと金属との界面近傍に気孔が生じ、気孔に起因して、複合材料の密度の低下及び熱伝導性の低下を招く。上述の高集積化、高出力化、高速化などに対応するためには、上記基板の構成材料となるダイヤモンドと金属との複合材料に対して、気孔がより少なく緻密で、熱伝導性により優れるものの開発が望まれる。
特許文献1は、原料にTi粉末を用いて、ダイヤモンド自体とTiとを反応させてダイヤモンド粒子の表面にTiの炭化物を形成し、このTiの炭化物とAg−Cu合金とが濡れることで、Tiの炭化物を介してダイヤモンド粒子とAg−Cu合金とを密着させる構成を開示している。しかし、Tiなどの周期表4族の元素は、一般に酸素と結合し易く、Tiの粉末粒子の表面に酸化膜が存在し得る。この酸化膜がダイヤモンドとTiとの反応を阻害して、濡れ性を十分に高められず、複合材料の密度の低下、気孔に起因する熱伝導性の低下を招き得る。複合材料中に酸化物が残存し得ることからも、熱伝導性の低下を招き得る。
また、特許文献1では、原料に銀粉末や銀板などを用いている。銀はそれ自体が酸素を含み得ることから、銀から放出された酸素とTiなどの周期表4族の元素とが結合して酸化物を形成し、ダイヤモンドとTiとの反応を阻害する恐れがある。
更に、工業用ダイヤモンドでは、ダイヤモンドの製造に用いた試薬などに起因する酸化物(例えば、CrやFeなどの酸化物)がダイヤモンドの粉末粒子の表面に残存していることがある。この酸化物も、ダイヤモンドとTiなどの周期表4族元素との反応を阻害する要因となり得る。
引用文献2は、ダイヤモンド粉末と銅粉末との圧粉体をMo製カプセルに充填して、超高圧力下で焼結した後、カプセルを研削除去する製造方法を開示している。この製造方法によって緻密な複合材料が得られ、銅中には酸化物が形成されないとしている。しかし、この複合材料は、ダイヤモンドと銅とが接しているだけで両者が結合しておらず、半導体素子の放熱部材としての基板に用いると冷熱サイクルの繰り返しによって、ダイヤモンドと銅との界面に隙間が生じて、熱特性を劣化させる恐れがある。また、この製造方法は、超高圧を発生及び制御可能な設備が必要であるため、複合材料の製造性に劣る。従って、より簡便な製造方法でありながら、熱伝導性の低下を招き得る酸化物を低減・除去でき、半導体素子の放熱部材としての基板に適したダイヤモンド複合材料の製造方法の開発も望まれる。
そこで、本発明の目的の一つは、放熱性に優れる半導体パッケージ、及び半導体装置を提供することにある。
本発明の一態様に係る半導体パッケージは、半導体素子が搭載される基板と、前記基板に設けられるパッケージ部品とを備える。
前記基板は、ダイヤモンド粒子と、前記ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、前記被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀又は銀合金とを備え、酸素含有量が0.1質量%以下であるダイヤモンド複合材料から構成される。
本発明の一態様に係る半導体装置は、上記の本発明の一態様に係る半導体パッケージと、前記基板に搭載された半導体素子とを備える。
本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子が搭載される基板とを備える。
前記基板は、ダイヤモンド粒子と、前記ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、前記被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀又は銀合金とを備え、酸素含有量が0.1質量%以下であるダイヤモンド複合材料から構成される。
上記の半導体パッケージ、及び半導体装置は、放熱性に優れる。
(A)は、実施形態1の半導体パッケージの概略を示す上面図、(a)は、図1(A)に示す(a)−(a)切断線で切断した実施形態1の半導体パッケージの断面図、(B)は、この半導体パッケージに半導体素子を搭載した状態を示す上面図、(C)は、この半導体パッケージを備える実施形態1の半導体装置を示す上面図、(c)は、図1(C)に示す(c)−(c)切断線で切断した実施形態1の半導体装置の断面図である。 (A)は、実施形態2の半導体パッケージの概略を示す上面図、(a)は、図2(A)に示す(a)−(a)切断線で切断した実施形態2の半導体パッケージの断面図、(B)は、この半導体パッケージに半導体素子を搭載した状態を示す上面図、(C)は、この半導体パッケージを備える実施形態2の半導体装置を示す上面図、(c)は、図2(C)に示す(c)−(c)切断線で切断した実施形態2の半導体装置の断面図である。 (A)は、ダイヤモンド複合材料から構成される基板に半導体素子を搭載した状態を示す上面図、(a)は、図3(A)に示す(a)−(a)切断線で切断した断面図、(B)は、この半導体素子と電極とを接続した状態を示す上面図、(b)は、図3(B)に示す(b)−(b)切断線で切断した断面図、(C)は、実施形態3の半導体装置を示す上面図、(c)は、図3(C)に示す(c)−(c)切断線で切断した実施形態3の半導体装置の断面図である。 実施形態4の半導体装置の概略を示す断面図である。 実施形態に係る半導体パッケージ、又は半導体装置に備える基板に利用されるダイヤモンド複合材料を模式的に示す部分断面図である。 試験例1で作製した試料No.1−3のダイヤモンド複合材料の断面を電子線マイクロアナライザー(EPMA)で観察した像であり、左上は反射電子像、左下は酸素(O)マッピング像、右上は炭素(C)マッピング像、右下はTiマッピング像を示す。 試験例1で作製した試料No.1−102のダイヤモンド複合材料の断面について、ダイヤモンド粒子の近傍をEPMAで観察した像であり、左上は反射電子像、左下はOマッピング像、右上はCマッピング像、右下はTiマッピング像を示す。 実施形態に係る半導体パッケージ、又は半導体装置に備える基板に利用されるダイヤモンド複合材料を製造可能な製造方法の手順の一例を示す工程説明図である。 実施形態に係る半導体パッケージ、又は半導体装置に備える基板に利用されるダイヤモンド複合材料を製造可能な製造方法における溶浸工程に生じる現象を説明する模式説明図である。 実施形態に係る半導体パッケージ、又は半導体装置に備える基板に利用されるダイヤモンド複合材料を製造可能な製造方法の手順の一例(両側に金属層を形成する方法)を示す工程説明図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係る半導体パッケージは、半導体素子が搭載される基板と、上記基板に設けられるパッケージ部品とを備える。
上記基板は、ダイヤモンド粒子と、前記ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、前記被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀又は銀合金とを備え、酸素含有量が0.1質量%以下であるダイヤモンド複合材料から構成される。ここでの周期表とは、新IUPAC式で表された長周期表をいう。上記のパッケージ部品は、半導体素子を囲むように基板に取り付けられるシールリング等の枠体、半導体素子と外部とを電気的に接続する電極などが挙げられる。
上記の半導体パッケージは、基板を構成するダイヤモンド複合材料が以下の点から、緻密で、熱伝導性に優れることから、放熱性に優れる。
(緻密)
・上記のダイヤモンド複合材料は、酸素含有量が0.1質量%以下であり、酸素が少ない。そのため、ダイヤモンド粒子と周期表4族の元素を含む炭化物層との界面及びその近傍を含めた複合材料全体に亘って酸素が少ない、好ましくは存在せず、ダイヤモンド粒子の表面や上記炭化物層中にも酸化物がほとんど存在しないといえる。このような上記のダイヤモンド複合材料は、製造過程で、密度の低下の原因となる気孔の発生が十分に抑制され、ダイヤモンドの表面に炭化物層が健全に形成され易くなったと考えられる。その結果、ダイヤモンドと、周期表4族の元素を含む炭化物層とが密着している。
・上記炭化物層中に酸化物がほとんど存在しないことから、ダイヤモンド粒子の周囲に存在する周期表4族の元素が主として炭化物として存在するといえる。また、銀又は銀合金(以下、金属マトリクスと呼ぶことがある)中にも酸化物がほとんど存在しないといえる。このような上記のダイヤモンド複合材料は、製造過程で、周期表4族の元素を含む炭化物層と金属マトリクスを形成する溶融金属との濡れ性が十分に高められ、密度の低下の原因となる気孔の発生が十分に抑制されたと考えられる。その結果、周期表4族の元素を含む炭化物層と、金属マトリクスとが密着している。
・金属マトリクス中の気孔も十分に低減されている。
(熱伝導性)
・熱伝導率が1000W/m・K以上であるダイヤモンド粒子と、銅や銅合金よりも高い熱伝導率を有する傾向にある銀又は銀合金とを主成分とする。
・上述のようにダイヤモンド粒子の近傍を含めた複合材料全体に亘って酸素が少ない、好ましくは存在しない、即ち、熱伝導性に劣る酸化物が少ない、好ましくは存在しない。
・金属マトリクスによってダイヤモンド粒子同士が結合されると共に緻密であるため、ダイヤモンド粒子、炭化物、金属マトリクス間を繋ぐ熱伝導経路や、ダイヤモンド粒子の表面に形成される炭化物同士が連続的に繋がってなる熱伝導経路などを良好に構築できる。
また、上記のダイヤモンド複合材料は、熱膨張係数が2.3×10−6/K以下程度であるダイヤモンド粒子と、熱膨張係数がダイヤモンドよりも大きい金属マトリクスとの双方を含む。そのため、上記のダイヤモンド複合材料の熱膨張係数が、半導体素子や、パッケージ部品を含む半導体素子の周辺部品などの熱膨張係数に近い(差が小さく、整合性に優れる)。このようなダイヤモンド複合材料から構成される基板を備える上記の半導体パッケージは、半導体装置の構成部品に好適に利用できる。
(2)上記の半導体パッケージの一例として、上記基板の相対密度が96.5%以上である形態が挙げられる。
上記形態は、緻密であり、気孔が少なく、気孔に起因する熱伝導性の低下を低減でき、高い熱伝導性を有する基板を備えており、放熱性により優れる。
(3)上記の半導体パッケージの一例として、上記基板が−60℃〜+250℃における冷熱サイクル耐性が95%以上である形態が挙げられる。冷熱サイクル耐性は、(冷熱サイクル後の熱伝導率/冷熱サイクル前の熱伝導率)×100とする(以下、同様)。
上記基板は、上述のような酸素含有量が少なく、緻密で、熱伝導率が高いダイヤモンド複合材料から構成されるため、−60℃〜+250℃の冷熱サイクルを受けた場合でも熱伝導率の低下が少なく、高い熱伝導率を維持できる。このような基板を備える上記形態は、使用時に冷熱サイクルを受ける半導体装置の構成部品に好適に利用できる。
(4)上記の半導体パッケージの一例として、上記基板が800℃に加熱した後における熱伝導率の劣化率が5%未満である形態が挙げられる。劣化率は、{[(加熱前の熱伝導率)−(加熱後の熱伝導率)]/(加熱前の熱伝導率)}×100とする(以下、同様)。
上述のような酸素含有量が少なく、緻密で、熱伝導率が高いダイヤモンド複合材料から構成される上記基板を備える上記形態は、800℃といった高温に加熱された場合であっても、高い熱伝導率を維持できて、耐熱性に優れる。このような上記形態は、例えば、製造過程で銀ロウ材(融点780℃程度)といった高融点の接合材を用いて、セラミックスなどからなる枠体や後述の絶縁材などが接合されても、この接合による熱劣化を低減でき、放熱性に優れる。
(5)本発明の一態様に係る半導体装置は、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体パッケージと、上記基板に搭載された半導体素子とを備える。
上記の半導体装置は、上述のように放熱性に優れる半導体パッケージを備えるため、放熱性に優れる。
(6)本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体素子と、上記半導体素子が搭載される基板とを備える。
上記基板は、ダイヤモンド粒子と、前記ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、前記被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀又は銀合金とを備え、酸素含有量が0.1質量%以下であるダイヤモンド複合材料から構成される。
上記の半導体装置は、上述の(1)の半導体パッケージに備える基板と同様に、緻密で、熱伝導性に優れる基板を備えるため、放熱性に優れる。効果の詳細は、上述の(1)の半導体パッケージを参照するとよい。この半導体装置は、半導体素子及び基板の他、枠体(特に樹脂製)及び蓋部を備える形態、ヒートシンクを備える形態などが挙げられる。
(7)上記の半導体装置の一例として、上記基板の相対密度が96.5%以上である形態が挙げられる。
上記形態は、上述の(2)の半導体パッケージに備える基板と同様に、緻密であり、気孔が少なく、気孔に起因する熱伝導性の低下を低減でき、高い熱伝導性を有する基板を備えており、放熱性により優れる。
(8)上記の半導体装置の一例として、上記基板が−60℃〜+250℃における冷熱サイクル耐性が95%以上である形態が挙げられる。
上記基板は、上述の(3)の半導体パッケージに備える基板と同様に、酸素含有量が少なく、緻密で、熱伝導率が高いダイヤモンド複合材料から構成される。そのため、−60℃〜+250℃の冷熱サイクルを受けた場合でも熱伝導率の低下が少なく、高い熱伝導率を維持できる。このような基板を備える上記形態は、使用時に冷熱サイクルを受けても、放熱性に優れる。
(9)上記の半導体装置の一例として、上記基板が800℃に加熱した後における熱伝導率の劣化率が5%未満である形態が挙げられる。
上記形態は、上述の(4)の半導体パッケージに備える基板と同様に、上述のような酸素含有量が少なく、緻密で、熱伝導率が高いダイヤモンド複合材料から構成される上記基板を備える。そのため、800℃といった高温に加熱された場合であっても、高い熱伝導率を維持できて、耐熱性に優れる。このような上記形態は、例えば、製造過程で銀ロウ材(融点780℃程度)といった高融点の接合材を用いて、セラミックスなどからなる後述の絶縁材などが接合されても、この接合による熱劣化を低減でき、放熱性に優れる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る半導体パッケージ、半導体装置を説明する。次に、図5を参照して、本発明の実施形態に係る半導体パッケージ、半導体装置に備える基板に用いられるダイヤモンド複合材料を詳細に説明し、図6〜図10を参照して、このダイヤモンド複合材料を製造できるダイヤモンド複合材料の製造方法を詳細に説明する。図において、同一符号は同一名称物を示す。
[実施形態1]
図1を参照して、実施形態1の半導体パッケージ10α、及びこの半導体パッケージ10αを備える実施形態1の半導体装置10Aを説明する。
(半導体パッケージ)
実施形態1の半導体パッケージ10αは、図1(A),図1(a)に示すように、半導体素子15(図1(B))が搭載される基板10と、基板10に設けられるパッケージ部品(枠体12、電極14など)とを備える。半導体パッケージ10αは、半導体素子15を収納する空間(基板10と枠体12とでつくられる空間、図1(a)参照)を有しており、オープンキャビティ型などと呼ばれる。図1(B)に示すように、この空間に半導体素子15を収納して基板10に搭載後、図1(C)に示すように蓋部16が取り付けられて、半導体装置10Aを形成する。この例の半導体パッケージ10αは、基板10にボルトなどの締結部材が取り付けられる貫通孔や切欠といった凹部10rが少なくとも一つ設けられて(本例では二つの切欠)、締結部材によって回路基板などに固定される。
実施形態1の半導体パッケージ10αは、基板10が、ダイヤモンドと銀又は銀合金とを含む特定のダイヤモンド複合材料1(図5、詳細は後述)から構成されることを特徴の一つとする。ダイヤモンド複合材料1の詳細は後述し、以下、その他の構成を説明する(以降の実施形態2〜4についても同様)。
<基板>
基板10は、代表的には、図1(A),図1(a)に示すように矩形状の平板であり、その両端側の領域を凹部10rが形成された締結領域とし、その中間領域を半導体素子15が載置される載置領域とする。載置領域の大きさは半導体素子15を載置可能なように、半導体素子15の大きさ、形状によって設定される。
・金属層
基板10は、後述のダイヤモンド複合材料1から構成される本体の表面の少なくとも一部を覆う金属層(図示せず)を備えることができる(後述する図10の被覆複合材料1Bの金属層6も参照)。金属層を備えることで、平滑になり易く、表面性状に優れる。金属層は、半田やロウ材などの下地に利用すると、半田やロウ材などの金属と十分に濡れて、基板10と半導体素子15や枠体12といったパッケージ部品などとを強固に接合できる。上述の接合用下地などの目的からは、基板10における半田やロウ材などの配置箇所に金属層を備えることが好ましい。
金属層の構成金属は、半田やロウ材の使用温度に耐え得る金属であればよく、特に限定されない。金属層は、例えば、上述のダイヤモンド複合材料の金属マトリクスと同じ成分の層を含む形態、金属マトリクスと主成分が同じ層を含む形態(例えば、この層と金属マトリクスとの双方が銀合金で構成され、添加元素が異なる形態、金属マトリクスが銀で、この層が銀合金である形態など)、金属マトリクスである銀又は銀合金以外の成分から構成される層を含む形態のいずれもとり得る。銀又は銀合金以外の具体的な金属は、ニッケル、金、パラジウム、プラチナ、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、各元素の合金などが挙げられる。金属層は、単層構造の他、多層構造とすることができる。金属層の形成方法は、特に限定されない(後述の製造方法参照)。
金属層は、基板10全体の熱伝導性の低下、ひいては半導体パッケージ10αや半導体装置10Aの熱伝導性の低下を抑制する目的からは、薄い方が好ましい。具体的な金属層の厚さ(多層構造の場合には合計厚さ)は、300μm以下、200μm以下、100μm以下が挙げられる。一方、上述の接合用下地などの目的からは、金属層の厚さは、0.5μm以上、1μm以上、5μm以上、20μm以上が挙げられる。半導体パッケージ10αに搭載される半導体素子15の用途などによっては、金属層を備えていなくてもよく、厚さが0.5μm未満であってもよい。
金属層を備える半導体パッケージ10αの具体例として、金属層が多層構造であり、上述の本体側から順に、ニッケル層、金層を備える形態、ニッケル層、パラジウム層、金層を備える形態などが挙げられる。また、各層がめっき層である形態が挙げられる。
<パッケージ部品>
パッケージ部品は、基板10の載置領域に取り付けられて、基板10と共に半導体素子15の収納空間を形成する枠体12、ボンディングワイヤなどの配線15bを介して上記半導体素子15と電気的に接続される電極14などが挙げられる。
・枠体
枠体12は、半導体素子15に対応した大きさを有し、表裏に貫通する窓部12wを備える矩形枠状の部材であり、図1(A)で示すように基板10に取り付けられて、基板10を底面とし、枠体12を側壁とする収納空間を形成する。図1(B)に示すように窓部12w内の収納空間に基板10が載置された状態において、枠体12は半導体素子15を囲み、基板10と後述する蓋部16と共に半導体素子15を封止する。枠体12の構成材料は、アルミナなどのセラミックス(非金属無機材料)、樹脂などの有機材料といった絶縁材料が挙げられる。枠体12は、シールリングとして利用されている公知のものを利用できる。セラミックス製の枠体12は、代表的には、ロウ材などの接合材を介して基板10に接合される。
・電極
電極14は、コバールなどの導電性に優れる材料から構成される導電部材である。電極14は、上述のように絶縁材料から構成される枠体12を介して基板10に取り付けられる(図1(a)参照)。セラミックス製の枠体12と電極14とは、代表的には、ロウ材などの接合材によって接合される。電極14の一部を図1(A)〜図1(C)に示すように基板10の外側縁から突出させることで、半導体素子15と外部との電気的接続を可能にする。配線15bは、金線、銅−パラジウム合金線(Cu−Pd線)などの導電性に優れる材料から構成される線材である。
<半導体素子>
半導体パッケージ10αに収納する半導体素子15は、各種のものが挙げられる。一例として、珪素(Si)、窒化ガリウム(GaN)、炭化珪素(SiC)などから構成されるものが挙げられる。
(半導体装置)
実施形態1の半導体装置10Aは、図1(C),図1(c)に示すように、上述の半導体パッケージ10αと、基板10に搭載された半導体素子15とを備える。また、半導体装置10Aは、代表的には、半導体パッケージ10αにおける枠体12の開口部を覆って、基板10及び枠体12と共に半導体素子15を封止する蓋部16を備える。蓋部16は、枠体12と同様に上述のセラミックスや樹脂などで構成される平面視矩形状の部材である。
半導体装置10Aは、例えば以下のようにして製造される。
図1(B)に示すように基板10の載置領域と、枠体12とでつくる収納空間に半導体素子15を収納して載置領域に載置する。基板10と半導体素子15とは、代表的には接合材によって接合する。接合材の構成材料は、Au−Si合金、Au−Ge合金、Au−Sn合金といった金合金などの金属が挙げられる。半導体素子15を載置したら、ワイヤボンディングなどを行って半導体素子15と電極14とを配線15bによって電気的に接続する。その後、図1(C)に示すように、半導体素子15を覆うように蓋部16を取り付けて、上記収納空間内に半導体素子15を封止する(図1(c)も参照)。
(用途)
実施形態1の半導体パッケージ10α及び実施形態1の半導体装置10A、後述する実施形態2の半導体パッケージ10β及び実施形態2の半導体装置10B、実施形態3の半導体装置10Cは、例えば、LDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor)などといった高周波パワーデバイスに用いられる。その他、スーパーコンピュータ、パーソナルコンピュータやモバイル電子機器などに具備されるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)、チップセット、メモリーチップなどに用いられる。
[実施形態2]
図2を参照して、実施形態2の半導体パッケージ10β、及びこの半導体パッケージ10βを備える実施形態2の半導体装置10Bを説明する。
(半導体パッケージ及び半導体装置)
実施形態2の半導体パッケージ10βは、実施形態1と同様にオープンキャビティ型などと呼ばれるものである。この半導体パッケージ10βは、図2(A)に示すように半導体素子15(図2(B))が搭載される基板10(ダイヤモンド複合材料1)と、基板10に設けられるパッケージ部品とを備え、図2(B)に示すように半導体素子15を搭載後、図2(C)に示すように蓋部16が取り付けられて、半導体装置10Bを形成する。実施形態2の半導体装置10Bは、実施形態2の半導体パッケージ10βと、基板10に載置された半導体素子15とを備え、更に、実施形態1と同様に蓋部16を備える。
この例の半導体パッケージ10βは、基板10に凹部10r(図1)を備えておらず、代表的には半田によって回路基板などに固定される。回路基板などへの固定方法に関する相違点を除いて、実施形態2の半導体パッケージ10β及び半導体装置10Bの構成は実施形態1と同様であり、詳細な説明を省略する。
[変形例1]
変形例1の半導体装置として、樹脂製の枠体12を備えるものであって、基板10に半導体素子15を搭載してから枠体12、電極14、配線15b及び蓋部16を取り付けて製造されるものが挙げられる。即ち、この変形例の半導体装置は、半導体素子15と、基板10(ダイヤモンド複合材料1)と、枠体12と、電極14と、蓋部16とを備える点で実施形態1,2の半導体装置10A,10Bと同様であるものの、図1(B),図2(B)に示す半導体素子15が載置された状態に至る製造過程が異なるものである。
[実施形態3]
図3を参照して、実施形態3の半導体装置10Cを説明する。
実施形態3の半導体装置10Cは、図3(c)に示すように半導体素子15と、半導体素子15が搭載される基板10とを備える。また、半導体装置10Cは、代表的には、配線15bを介して半導体素子15と電気的に接続される電極14、基板10と電極14との間に介在される絶縁材13、基板10に搭載された半導体素子15を覆う封止樹脂16Cなどを備え、モールド型などと呼ばれる。実施形態3の半導体装置10Cは、基板10が、ダイヤモンドと銀又は銀合金とを含む特定のダイヤモンド複合材料1(図5、詳細は後述)から構成されることを特徴の一つとする。
<基板>
基板10は、代表的には、図3(A),図3(a)に示すように矩形状の平板であり、その中央領域を半導体素子15が載置される載置領域とする。載置領域の大きさは半導体素子15を載置可能なように、半導体素子15の大きさ、形状によって設定される。基板10における封止樹脂16Cとの接触領域に、溝などの凹部(図示せず)を備えることができる。この場合、凹部に封止樹脂16Cの構成樹脂が充填されて、アンカー効果によって、基板10と封止樹脂16Cとの密着性を向上できる。その他、基板10は、実施形態1で説明した金属層を備えることができる。金属層の詳細は、実施形態1を参照するとよい。
<電極、絶縁材>
電極14の詳細は、実施形態1を参照するとよい。絶縁材13を構成する絶縁材料は、アルミナなどのセラミックス(非金属無機材料)、樹脂(有機材料)などが挙げられる。セラミックス製の絶縁材13は、半田、接着剤などの接合材を介して基板10や電極14に接合される。
<封止樹脂>
封止樹脂16Cは、図3(C)に示すように基板10に載置された半導体素子15を含めて、基板10の全体を覆うように設けられる。
[実施形態4]
図4を参照して、実施形態4の半導体装置10Dを説明する。
実施形態4の半導体装置10Dは、半導体素子15と、半導体素子15が搭載される基板10とを備える。また、半導体装置10Dは、代表的には、基板10(サブマウント)が載置されるヒートシンク18を備える。この半導体装置10Dに備える半導体素子15は、レーザダイオードや発光ダイオードなどに代表される半導体発光素子であり、半導体装置10Dは、半導体レーザ装置や発光ダイオード装置である。実施形態4の半導体装置10Dは、基板10が、ダイヤモンドと銀又は銀合金とを含む特定のダイヤモンド複合材料1(図5、詳細は後述)から構成されることを特徴の一つとする。
<半導体素子>
半導体装置10Dに備えられる半導体素子15は、各種の半導体発光素子が挙げられる。一例として、窒化ガリウム(GaN)、炭化珪素(SiC)、GaAs(ヒ化ガリウム)、リン化インジウム(InP)、珪素(Si)などから構成されるものが挙げられる。図4は端面発光型の半導体発光素子を例示するが、上面発光型、下面発光型など種々のものがある。
<基板>
基板10は、代表的には、矩形状の平板であり、半導体素子15の発光形態、大きさ、形状などに応じた載置領域を適宜な位置に備える。例えば、図4に示す端面発光型の半導体素子15を備える半導体装置10Dは、半導体素子15の出射端面(図4では右側面)と、基板10の端面(同)と、ヒートシンク18の端面(同)とを面一とする。こうすることで、基板10やヒートシンク18によって、上記出射端面から出射されるレーザ光などの光束が遮られることを防止できる。上述の出射端面と基板10の端面とが面一であれば、基板10の大きさは、半導体素子15と同等以上とすることができる。基板10が半導体素子15よりも大きい場合には放熱性をより高められる。半導体素子15の発光形態や用途などによっては、半導体素子15の端面と基板10の端面とが面一でない形態でもよいし、半導体素子15の端面と基板10の端面とについて複数の端面が面一である形態、又は全ての端面が面一である形態でもよい。
実施形態4の半導体装置10Dに備える基板10は、実施形態1で説明した金属層を備えることができる。
基板10に金属層を備える半導体装置10Dの具体例として、金属層が多層構造であり、上述の本体側から順に、ニッケル層、金層を備える形態、ニッケル層、プラチナ層を備える形態、ニッケル層、プラチナ層、金層を備える形態などが挙げられる。また、各層がめっき層である形態が挙げられる。その他の金属層の詳細は、実施形態1を参照するとよい。
<ヒートシンク>
ヒートシンク18は、代表的には、熱伝導性に優れる材料によって構成される矩形状の平板である。具体的な構成材料には、銅や銅合金などの金属、複合材料などが挙げられる。複合材料は、異なる金属を含むもの(例えばCu−W、Cu−Moなど)や、金属元素や非金属元素とセラミックスとを含むもの(例えばAl−SiC、Si−SiCなど)が挙げられる。
半導体素子15と基板10は、例えば、In,Sn,Ag,Au,Ge,Si,Cu,及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を含む接合材、より具体的にはAu−Sn系、Au−Ge系などの半田17aによって接合される。基板10とヒートシンク18とは、例えば、In,Sn,Ag,Au,Ge,Si,Cu,Al,Bi,S及びZnからなる群から選択される1種以上の元素を含む接合材、より具体的にはSn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、Sn−Ge系、Sn−Bi系、Sn−Sb系、Sn−Zn系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Bi系、Sn−Zn−Bi系などの半田17bによって接合される。半導体素子15と基板10との半田付け、基板10とヒートシンク18との半田付けは別々に行ってもよいし、半導体素子15と基板10とヒートシンク18との三者を同時に半田付けしてもよい。同時に半田付けする場合には、同種の半田を利用することができる(例えば、Au−Sn系など)。
[ダイヤモンド複合材料]
実施形態1〜4の半導体装置10A〜10Dなどに備える基板10を構成するダイヤモンド複合材料1(以下、複合材料1と呼ぶことがある)は、図5に示すようにダイヤモンド粒子2と、ダイヤモンド粒子2の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層3とを備える複数の被覆ダイヤモンド粒子4と、被覆ダイヤモンド粒子4同士を結合する金属マトリクス5とを備える。複数の被覆ダイヤモンド粒子4がつくる隙間に金属マトリクス5が充填されて、ダイヤモンド粒子2の集合状態が金属マトリクス5によって維持される。複合材料1は、気孔が非常に少なく、隙間なく金属マトリクス5が充填された緻密な成形体である(図6のEPMAの反射電子像参照)。複合材料1はその全体に亘って酸素含有量が低いことを特徴の一つとする。以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
(被覆ダイヤモンド粒子)
<ダイヤモンド>
ダイヤモンド複合材料1は、複数のダイヤモンド粒子2を主要構成要素の一つとする。複合材料1中のダイヤモンド粒子2の含有量が多いほど、熱伝導性に優れる基板10を構成できて好ましい。例えば、熱伝導率が500W/m・K以上を満たす複合材料1とすることができる。一方、上記含有量が多過ぎず、金属マトリクス5をある程度含むことで、複合材料1の熱膨張係数が小さくなり過ぎることを防止できる。例えば、熱膨張係数が4×10−6/K以上9.5×10−6/K以下程度の複合材料1とすることができる。この複合材料1から構成される基板10は、半導体素子15やその周辺部品(例えば、セラミックスなどから構成される枠体12、絶縁材13など)の熱膨張係数に近い。また、上記含有量が多過ぎなければ、製造時、溶浸性の劣化(未溶浸部分の発生)を抑制でき、ダイヤモンド粒子間につくられる隙間に溶融金属が十分に溶浸できる。その結果、炭化物層3の介在による緻密化、複合化を良好に行えて、より緻密な複合材料1とすることができ、製造性にも優れる。熱伝導性や半導体素子などとの熱膨張係数の整合性、緻密化などを考慮すると、複合材料1中のダイヤモンド粒子2の含有量は、30体積%以上90体積%が好ましく、45体積%以上85体積%以下、50体積%以上80体積%以下がより好ましい。複合材料1中のダイヤモンド粒子2の含有量の測定方法は、後述する。
ダイヤモンド複合材料1中のダイヤモンド粒子2の粒径が大きいほど、複合材料1中のダイヤモンドの粉末粒界が少なく、熱伝導性に優れる複合材料1となって好ましい。例えば、熱伝導率が500W/m・K以上を満たす複合材料1とすることができる。上記粒径が小さ過ぎると、上記粉末粒界の過多による熱伝導性の低下を招く。一方、上記粒径が大き過ぎなければ、研削などの加工性に優れ、複合材料1を所定の基板形状や寸法公差を満たすように調整し易い。また、上記粒径が大き過ぎなければ、薄型の複合材料1とすることができ、ひいては薄型の基板10が得られる。熱伝導性、加工性、薄型化などを考慮すると、複合材料1中のダイヤモンド粒子2の平均粒径は1μm以上300μm以下が好ましく、1μm以上100μm以下、20μm以上60μm以下がより好ましい。ダイヤモンド粉末を微粗混合とすることもできる。微粗混合のダイヤモンド粉末を含む複合材料1は、より緻密で、相対密度がより高い。複合材料1中のダイヤモンド粒子2の平均粒径の測定方法は、後述する。
<炭化物層>
ダイヤモンド複合材料1中の各ダイヤモンド粒子2の表面は、周期表4族の元素を含む炭化物で覆われており、各被覆ダイヤモンド粒子4は、上記炭化物から形成される炭化物層3を備える。この炭化物層3は、ダイヤモンド粒子2及び金属マトリクス5の双方に密着している(図6のEPMAの反射電子像参照)。上述のように複合材料1は、酸素含有量が極めて少なく、酸化物がほとんど存在しないため、製造過程で、炭化物層3がダイヤモンド表面で健全に形成され易かったこと、及び炭化物層3が溶融金属(複合材料1中では主として金属マトリクス5になる)との濡れ性に優れたことで密着できたと考えられる。このような炭化物層3を備える複合材料1は、ダイヤモンド粒子2と、炭化物層3と、金属マトリクス5との三者が隙間なく密着して緻密である。
炭化物層3の形成方法は、上述の熱伝導性に優れて、緻密であるという趣旨を損なわない限りにおいて、種々の方法を利用できる。ダイヤモンド粒子2との密着性をより高めるという観点からは、炭化物層3は、ダイヤモンド粒子2の表面側領域の構成元素(炭素)と周期表4族の元素とが結合して形成された炭化物で構成されていることが好ましい。この場合、炭化物層3は、ダイヤモンド粒子2自体の成分を構成要素とすることから、ダイヤモンド粒子2との密着性により優れて、より緻密な複合材料1、ひいてはより緻密な基板10とすることができる。
炭化物層3の主要構成成分は、炭素、好ましくはダイヤモンド粒子2由来の炭素、及び周期表4族の元素である。炭化物層3に含む周期表4族の元素は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)から選択される少なくとも一種が挙げられる。炭化物層3は、列挙した元素を1種のみ含む形態の他、複数種の元素を含む形態とすることができる。
炭化物層3は、厚過ぎると炭化物の過多による熱伝導性の低下を招き易くなるため、熱伝導性を考慮すると、ある程度薄い方が好ましい。具体的には、炭化物層3の平均厚さは、5μm以下、3μm以下、3μm未満が好ましく、1μm以下がより好ましく、ナノオーダーもとり得る。炭化物層3がダイヤモンド複合材料1の製造時の反応生成物である場合には、代表的には原料の添加量や大きさなどを調整することで、炭化物層3の厚さを調整できる。
ダイヤモンド複合材料1中のダイヤモンド粒子2はいずれも、被覆ダイヤモンド粒子4であることが好ましい。各被覆ダイヤモンド粒子4は、ダイヤモンド粒子2の表面積の90面積%以上、更にダイヤモンドの表面全体が上述の炭化物で覆われていると、緻密な複合材料1となって好ましい。ダイヤモンド粒子2の表面側領域の実質的に全てが炭化物として存在していると、更に緻密な複合材料1、ひいては更に緻密な基板10となって好ましい。なお、ダイヤモンドの表面に、周期表4族の元素を含む炭化物が存在しない部分を含むことを許容するが、この部分は少ないほど好ましい。
ダイヤモンド複合材料1は、隣り合う被覆ダイヤモンド粒子4に備える炭化物層3の少なくとも一部が結合して一体化された部分(以下、この部分を連結部と呼ぶことがある)を有することができる。炭化物から構成される連結部を有する形態、連結部を有しない形態(いわば被覆ダイヤモンド粒子がバラバラに分散した形態)のいずれも、緻密で、熱特性に優れる。
<金属マトリクス>
ダイヤモンド複合材料1は、金属マトリクス5を主要構成要素の一つとする。金属マトリクス5の構成成分は、銀(いわゆる純銀)又は銀合金とする。金属マトリクス5が銀であれば、熱伝導率が427W/m・Kと高く、熱伝導性に優れる複合材料1、ひいては熱伝導性に優れる基板10とすることができる。銀合金は、Agを50質量%超と、添加元素とを含み、残部が不可避不純物からなる合金である。特に、Agを70質量%以上と、添加元素とを含み、残部が不可避不純物である銀合金は、高い熱伝導性を維持しつつ、液相点温度が低い傾向にあり、製造時、溶浸温度を低くしても良好に複合化できるため、製造性に優れる。銀合金の添加元素は、Cuなどが挙げられる。添加元素の合計含有量は、30質量%以下程度が挙げられる。
<酸素濃度>
ダイヤモンド複合材料1は、その全体において酸素が少ないことを特徴の一つとする。具体的には、複合材料1の酸素含有量は、0.1質量%以下である。複合材料1全体の酸素含有量が0.1質量%以下であれば、ダイヤモンド粒子2の表面側近傍に酸化物、気孔などが十分に少なく、好ましくは実質的に存在しない。そのため、複合材料1は、酸化物などの介在に起因するダイヤモンド粒子2と金属マトリクス5との間の熱伝導性の低下を抑制でき、熱伝導性に優れる。また、酸化物が少なければ、周期表4族の元素が酸化物ではなく炭化物として存在しているといえ、炭化物層3の介在によって緻密な複合材料1とすることができる。上記酸素含有量は、少ないほど好ましく、0.095質量%以下、0.090質量%以下、0.080質量%以下がより好ましい。
ダイヤモンド複合材料1中のダイヤモンド粒子2の表面には、金属マトリクス5を除いて、炭化物層3のみが存在することが好ましい。即ち、ダイヤモンド粒子2の表面側近傍を元素分析した場合、炭素及び周期表4族の元素が主として存在し、それ以外の元素、特に酸素が少ないことが好ましい。ダイヤモンド粒子2の表面側近傍に酸素が存在する場合、この酸素は、例えば、周期表4族の元素の酸化物などで存在すると考えられる。この酸化物は熱伝導率が低く、溶融金属との濡れ性も悪いため、ダイヤモンド粒子2の表面側近傍に存在すると、熱伝導性、緻密性に劣る複合材料となり得る。複合材料1は、その全体の酸素濃度が低いため、ダイヤモンド粒子2の表面側近傍の酸素濃度も十分に低い。複合材料1の一例として、ダイヤモンド粒子2と炭化物層3との境界をとり、この境界から外周側(金属マトリクス5側)に向かって、厚さが5μmまでの環状の領域をとり、この環状の領域を外周領域とするとき、この外周領域における酸素含有量が0.1質量%以下を満たすものが挙げられる。上記境界は、後述するEPMAの元素マッピングを利用すれば容易に可視化できる。また、EPMAの元素マッピングを利用すれば、複合材料1は、ダイヤモンド粒子2と炭化物層3との境界近傍に酸素が非常に少ないこと、好ましくは実質的に存在しないことを容易に確認できる。
ダイヤモンド複合材料1に含まれ得る酸素の混入源は、原料のダイヤモンドの粉末20(図8)、銀や銀合金の金属材(図8では金属粉末50)、製造過程での雰囲気などが考えられる。そのため、複合材料1中の任意の箇所に酸素が含まれ得る。複合材料1では、その全体における酸素濃度を特定の範囲とし、全体の酸素が少ないことを以って、ダイヤモンドとダイヤモンドに隣接する物質との境界近傍という熱伝導性の劣化を招き易い箇所にも、酸素が非常に少ないとする。後述するダイヤモンド複合材料の製造方法を利用することで、製造過程で酸素を良好に低減、除去でき、ダイヤモンド粒子2の近傍を含む全体に亘って酸素濃度が低い複合材料1を製造できる。
ダイヤモンド複合材料1の一例として、図10に示すように複合材料1の表面の少なくとも一部を覆う金属層6を備える形態とすることができる(図10の被覆複合材料1Bは一例)。金属層6の詳細は、上述の基板10の金属層の項を参照するとよい。
(特性)
<熱特性>
ダイヤモンド複合材料1や被覆複合材料1Bなどは、熱伝導性に優れる。例えば、上記の複合材料1などは、室温における熱伝導率が500W/m・K以上を満たす(被覆複合材料の場合には金属層6を含めた状態での熱伝導率)。室温とは、大気圧下で20℃以上27℃以下程度が挙げられる。熱伝導率が高いほど、熱伝導性に優れる複合材料1などになり、半導体素子15の放熱部材として機能する基板10に好ましいことから、520W/m・K以上、550W/m・K以上、600W/m・K以上がより好ましい。
ダイヤモンド複合材料1や被覆複合材料1Bなどは、熱膨張係数が小さいダイヤモンド粒子2と、ダイヤモンドよりも熱膨張係数が十分に大きい金属マトリクス5とを主体とすることで、熱膨張係数が両者の中間値をとり得る。例えば、上記の複合材料1などは、30℃〜150℃における平均の熱膨張係数が3×10−6/K以上13×10−6/K以下を満たす(被覆複合材料の場合には金属層6を含めた状態での熱膨張係数)。ダイヤモンド粒子2の含有量や金属マトリクス5の成分にもよるものの、上記熱膨張係数が4×10−6/K以上12×10−6/K以下、4.5×10−6/K以上10×10−6/K以下を満たすものとすることができる。
室温での熱伝導率が500W/m・K以上を満たし、かつ30℃〜150℃における平均の熱膨張係数が3×10−6/K以上13×10−6/K以下を満たすダイヤモンド複合材料1や被覆複合材料1Bなどは、熱伝導性に優れる上に、半導体素子15の熱膨張係数(例えば、GaN:5.5×10−6/K程度など)やパッケージ部品などの周辺部品の熱膨張係数との整合性に優れるため、半導体素子15の放熱部材としての基板10に適する。
ダイヤモンド複合材料1や被覆複合材料1Bなどは、熱伝導性に優れる上に、冷熱サイクルを受けた場合や高温に加熱された場合にも、熱伝導率の低下が少なく、高い熱伝導率を維持することができる(被覆複合材料の場合には金属層6を含めた状態での熱伝導率)。
一例として、−60℃〜+250℃における冷熱サイクル耐性が95%以上である複合材料1などが挙げられる。このような複合材料1などから構成される基板10は、冷熱サイクルを受けた場合にも熱伝導率の低下が5%以下と低いため、使用時に冷熱サイクルを受ける半導体装置10A〜10Dに備えられる放熱部材として良好に機能する。
又は、一例として、800℃に加熱した後における熱伝導率の劣化率が5%未満である複合材料1などが挙げられる。このような複合材料1などから構成される基板10は、例えば、セラミックスなどからなる枠体12や絶縁材13などが銀ロウ材といった高融点の接合材によって接合される際に接合材によって加熱されるものの、この加熱によって熱伝導率の低下が少ない。即ち、上記熱伝導率の劣化率が5%未満である複合材料1などから構成される基板10は、高温に曝された場合にも熱伝導率の低下が少なく、耐熱性に優れるといえる。
<相対密度>
ダイヤモンド複合材料1や、被覆複合材料1Bなどにおける複合材料1の領域は、気孔が少なく緻密で相対密度が高い。被覆複合材料1Bの金属層6は気孔が実質的に存在せず緻密であることから、被覆複合材料1Bは、金属層6を含めた状態でも相対密度が高い。例えば、複合材料1などの相対密度が96.5%以上を満たす。相対密度が高いほど、緻密であり、気孔に起因する熱伝導性の低下が生じ難く、高い熱伝導性を有することから、96.7%以上、97.0%以上、97.5%以上がより好ましい。
<形状と大きさ>
ダイヤモンド複合材料1や被覆複合材料1Bなどの代表的な形状は、平板状が挙げられる。製造時に用いる成形型の形状や、切削加工などによって所望の平面形状、三次元形状の複合材料1などにすることができ、基板10の形状に応じて適宜選択するとよい。複合材料1などの大きさ(厚さ、幅、長さなど)は基板10の大きさに応じて適宜選択できる。厚さが薄いと(例えば5mm以下、3mm以下、更に2.5mm以下)、軽量で薄型の複合材料1などとすることができる。
上述のダイヤモンド複合材料1や被覆複合材料1Bなどから構成される基板10は、複合材料1などの組成、組織、特性などを実質的に維持する。従って、基板10は、酸素含有量が少なく(上述の酸素濃度の項参照)、緻密で(上述の相対密度の項参照)、熱伝導性に優れ(上述の熱特性の項参照)、半導体素子15の放熱部材、半導体装置10A〜10Dに備えられる放熱部材として良好に機能する。
[ダイヤモンド複合材料の製造方法]
ダイヤモンド複合材料1や被覆複合材料1Bなどは、例えば、以下の準備工程、充填工程、溶浸工程を備えるダイヤモンド複合材料の製造方法によって製造することができる。概略を述べると、図8,図10に示すようにダイヤモンドの粉末20と、最終的に金属マトリクス5(図5)を形成する金属材(図8,図10では金属粉末50)とを含む原料を準備して(準備工程)、成形型100の容器110に充填し(充填工程)、充填物を加熱して金属材を溶融して、ダイヤモンドの粉末20に溶融金属52を溶浸する(溶浸工程)。この製造方法は、更に、原料に、周期表4族の元素と特定の元素とを含む4族化合物の粉末30を用いて、周期表4族の元素が炭化物を形成するまでの間の酸化を効果的に抑制し、溶浸工程では、昇温過程で4族化合物を化学分解させ、この化学分解で生じた周期表4族以外の特定の元素に還元作用などを発揮させて、ダイヤモンドの周囲に存在し得る酸素を低減、除去させながら、上記化学分解によって生じた周期表4族の元素とダイヤモンドとを反応させて炭化物(図5では主として炭化物層3)を形成する。
上記のダイヤモンド複合材料の製造方法は、特許文献1のように周期表4族の元素をそのまま原料に用いるのではなく、周期表4族の元素と、特定の元素、具体的には硫黄、窒素、水素、硼素の少なくとも1種の元素とを含む4族化合物の粉末を原料に用いる。4族化合物の粉末を用いることで、原料段階や準備工程、充填工程などでの周期表4族の元素の酸化を抑制できる。この酸化抑制によって周期表4族の元素の周囲は酸素が少ない状態になり易く、溶浸工程では、上記4族化合物の化学分解で生じた周期表4族の元素が、周囲の酸素によって酸化されることを抑制できる。
更に上記の特定の元素は、還元作用を有するものがある。
ここでの還元作用とは、溶浸工程の昇温過程などにおいて、工業用ダイヤモンドや銀又は銀合金などの原料に含み得る酸素や酸化物、化学分解で生じた周期表4族の元素の周囲に存在し得る酸素や酸化物を還元して、気体(例えば水蒸気など)として除去可能な作用である。
上記の特定の元素が有する酸化抑制作用や還元作用によって、上記周期表4族の元素は勿論、ダイヤモンドや銀などが製造過程で酸化されることを効果的に抑制できる。
以上のことから、周期表4族の元素とダイヤモンドとが良好に反応でき、ダイヤモンドと溶融金属との濡れ性を高められる炭化物を健全に、かつ過不足なく十分に形成できる。特に、上記4族化合物の粉末を炭化物形成元素(周期表4族の元素)の供給源とすることで、周期表4族の元素の供給量の変動が少なく、又は実質的に生じず、安定して供給でき、炭化物層の厚さ変動が生じ難い。即ち、ダイヤモンド粒子の表面に、ダイヤモンド粒子の構成成分(炭素)と周期表4族の元素とが結合した炭化物層を均一的な厚さに一様に形成し易い。従って、上記のダイヤモンド複合材料の製造方法によれば、酸素含有量が少なく、緻密で、熱伝導性に優れるダイヤモンド複合材料1などを製造できる。
以下、工程ごとに説明する。
(準備工程)
この工程では、原料として、ダイヤモンドの粉末20と、周期表4族の元素を含む硫化物、窒化物、水素化物、硼化物から選択される1種以上の4族化合物の粉末30と、銀又は銀合金を含む金属材とを準備する(図8)。
<ダイヤモンドの粉末>
ダイヤモンドの粉末20の大きさ(平均粒径)、含有量(原料に占める体積割合)は、最終的に製造するダイヤモンド複合材料1A中のダイヤモンド粒子の大きさ(平均粒径)、含有量(複合材料1Aに占める体積割合)が所望の値(上述のダイヤモンドの項参照)となるように選択する。このダイヤモンド複合材料の製造方法では、ダイヤモンドの粉末20を構成する各粉末粒子の表面側領域が炭化物層3(図5)の形成に利用されるため、厳密に言うと、原料段階におけるダイヤモンドの大きさや含有量と、複合材料1A中のダイヤモンドの大きさや含有量とは異なる。しかし、炭化物層3は上述のように非常に薄いため、複合材料1A中のダイヤモンドの大きさ、含有量、形状などは、原料段階の大きさ、含有量、形状などを実質的に維持するといえる。原料のダイヤモンド粉末の平均粒径は、上述のように1μm以上300μm以下、更に1μm以上100μm以下、20μm以上60μm以下が好ましい。微粗混合とする場合には、粗粒の平均粒径は、微粒の平均粒径の2倍以上、更に3倍以上、4倍以上が好ましく、熱伝導性や加工性などを考慮すると、300μm以下、更に100μm以下、60μm以下が好ましい。微粒の平均粒径は、粗粒の平均粒径よりも小さければよいが、緻密化などを考慮すると、1μm以上、更に5μm以上、10μm以上が好ましい。
原料のダイヤモンドの粉末20は、純度が高いほど(例えば天然ダイヤモンド)、熱伝導性に優れて好ましい。一方、工業用ダイヤモンドは、純度が低いものの比較的安価であり利用し易い。このダイヤモンド複合材料の製造方法では、工業用ダイヤモンドであっても、原料に利用できる。原料に用いる4族化合物の粉末30を製造過程で還元剤として機能させた場合には、ダイヤモンドの粉末粒子の表面に不純物として付着し得る酸化物を低減、除去できるからである。
<金属材>
金属材の構成成分は、最終的に製造するダイヤモンド複合材料1A中の金属マトリクス5が所望の組成(上述の金属マトリクスの項参照)となるように選択する。
金属材は、種々の形態のものが利用でき、例えば、金属粉末50が挙げられる。金属粉末50は、溶浸工程の加熱時に個々の粉末粒子が容易に溶融して溶融金属52を形成し易い。また、金属粉末50であれば、ダイヤモンドの粉末20や、4族化合物の粉末30、後述する周期表4族の元素の粉末などと混合し易く、混合した粉末を成形型100に充填できる。金属粉末50の大きさ(平均粒径)は、適宜選択でき、例えば、1μm以上150μm以下程度が挙げられる。この範囲であれば、金属粉末50が小さ過ぎず取り扱い易く、大き過ぎないため溶融し易いと考えられる。
その他の金属材として、板材やブロック体などを利用できる。この場合、成形型100に充填可能なように適宜な大きさ、形状にするとよい。板材やブロック体は、大きさによっては、成形型100に収納が容易で作業性に優れる。
金属材の含有量(体積割合)は、最終的に製造するダイヤモンド複合材料1A中の金属マトリクス5の含有量(体積割合)が所望の値となるように選択する。
<4族化合物の粉末>
周期表4族の元素を含む4族化合物の粉末30の構成成分は、最終的に製造するダイヤモンド複合材料1A中の炭化物層3が所望の周期表4族の元素(上述の炭化物層の項参照)を含むように選択する。具体的には、4族化合物の粉末30は、Ti,Zr及びHfから選択される1種以上の元素を含む硫化物、窒化物、水素化物、硼化物から選択される1種以上の化合物を含む。粉末30は、列挙した化合物を1種のみ含む形態の他、複数種の化合物を含むことができる。後者の場合、例えば、TiCを備える被覆ダイヤモンド粒子と、ZrCを備える被覆ダイヤモンド粒子とを含む複合材料、TiとZrとを含む複合炭化物層で覆われた被覆ダイヤモンド粒子を含む複合材料などを製造できる。水素化物のうちTiHは、比較的容易に入手でき、保存などもし易く、取り扱い性に優れるため、利用し易い。
4族化合物のうち、最終製品であるダイヤモンド複合材料1A中に存在する成分は、実質的に周期表4族の元素のみであり、この元素は主として炭化物を形成し、炭化物層3(図5)として存在する。そのため、4族化合物の粉末30の添加量によって、炭化物層3の厚さが異なる。上述のように炭化物層3が厚過ぎると炭化物の過多による熱伝導性の低下を生じることから、熱伝導性を考慮すると炭化物層3は厚過ぎない方が好ましい。炭化物層3の厚さが所望の値となるように、4族化合物の粉末30の含有量(体積割合)を調整するとよい。
4族化合物の粉末30は、比較的酸化し易い周期表4族の元素を含むものの、周期表4族の元素単体である場合と異なり、後述の溶浸工程で加熱されるまで、周期表4族の元素は、硫黄(S)、窒素(N)、水素(H)、又は硼素(B)と結合している。そのため、このダイヤモンド複合材料の製造方法では、複合材料の製造過程で、周期表4族の元素の酸化が生じ難く、周期表4族の元素と炭素(ここでは特にダイヤモンドの表層側領域)との反応を良好に行える。また、周期表4族の元素に結合している上記の各元素は、気体(例えば、水、一酸化窒素、二酸化硫黄など)として除去できる。上記の各元素がダイヤモンドの周囲に存在し得る酸素や、酸化物の酸素原子と結合する場合(還元する場合)には、酸素の低減、除去をより効果的に行える。
(充填工程)
この工程では、ダイヤモンドの粉末20と4族化合物の粉末30と金属材とを成形型100の容器110内に充填する。充填形態は、例えば、三者を層状に充填して充填物を三層構造の積層体とする形態、三者が全て粉末の場合に全ての粉末を混合して充填した全混合粉末の充填物とする形態、三者のうち二者の粉末を混合した粉末と残り一者(粉末でなくてもよい)とを層状に充填して充填物を二層構造の積層体とする形態などが挙げられる。
二層構造の積層体とする場合、例えば、ダイヤモンドの粉末20と4族化合物の粉末30とを含む混合粉末23と、金属材とを層状に成形型100の容器110内に配置して、上記充填物として積層体235を形成することができる。この場合、(i)容器110内の充填物を混合粉末23のまとまり(層)と、金属材のまとまり(層)とするため、ダイヤモンドの周囲に4族化合物をより確実に存在させられて、両者がより確実に反応できることで未反応の周期表4族の元素が残存したり、酸化物となったりすることを防止し易い、(ii)金属材の層からまとまった量の溶融金属を生成でき、自重が比較的大きい溶融金属を混合粉末23の層側に自動的にかつ容易に溶浸できる、(iii)溶融金属を均一的に溶浸し易い、などの理由から、緻密で高い熱伝導性を有するダイヤモンド複合材料1Aを製造し易く、製造性にも優れると期待される。その他、ダイヤモンドの粉末20と、ダイヤモンドとの比重差が比較的小さい4族化合物の粉末30とは混合し易く、混合粉末23を良好に形成できる。
混合粉末23の作製には、非金属無機材料の粉末(ここではダイヤモンドの粉末20及び4族化合物の粉末30)の混合に利用可能な混合装置を適宜利用できる。例えば、ヘンシェルミキサー、真空撹拌装置などの公知の装置が利用できる。ポリビニルアルコールなどの有機物、水やアルコールなどに代表される液体バインダを用いた湿式混合、バインダを用いない乾式混合のいずれも利用できる。湿式混合では、混合後又は成形型100に混合粉末23を充填後、バインダを除去する乾燥工程を別途設けてもよいが、溶浸工程の加熱によってバインダを除去してもよい。その他、湿式混合に水やアルコールなどを用いる場合、混合時に加熱や真空乾燥などを適宜行って、水やアルコールなどを徐々に除去すると、比重差などに起因するダイヤモンドと4族化合物などとの分離を抑制して、均一的に混合し易い。
用意した混合粉末23を容器110に充填し、その上に金属粉末50といった金属材を充填することで、二層構造の積層体235を形成できる。比重が大きい金属材を混合粉末23の層の上に配置すると、次の工程で金属材が溶融すると、金属の自重によって、下層の混合粉末23側に容易に溶融金属52が移動して溶浸できる。後述するように溶融金属52に含まれた周期表4族の元素とダイヤモンドとの化合反応によって溶浸を進行できる。積層体235を形成する際、例えば、粉末23,50の充填ごとにプレスしたり(ハンドプレス程度の小さな圧力でもよい)、振動を付与してタッピングしたりすることで所望の充填密度にする。積層体235を形成したら、容器110の蓋120を閉じる。
その他、金属材を金属粉末50とする場合、金属粉末50の層に4族化合物の粉末30及び周期表4族の元素の粉末(図示せず)の少なくとも一方の粉末を含むことができる。
金属材の層を、金属粉末50に加えて4族化合物の粉末30や周期表4族の元素の粉末を含む層とすると、金属粉末50の層に含む4族化合物が化学分解して生じた周期表4族の元素や、金属粉末の層に含んでいた周期表4族の元素は、溶浸工程の昇温過程で金属粉末50が溶融してできた溶融金属にまず取り込まれ、その後にダイヤモンドと反応し、炭化物を形成する(後述の図9も参照)。ダイヤモンドの反応が始まれば、以降、このような反応が連続的に生じ易い。このようにダイヤモンドに溶浸する溶融金属に、周期表4族の元素が取り込まれ易い状態を設けることで、ダイヤモンドと周期表4族の元素との反応を生じ易くしているといえ、炭化物をより良好に形成できる。従って、この場合、より緻密で、より高い熱伝導性を有するダイヤモンド複合材料1Aを製造できる。
成形型100は、箱状や有底筒状の容器110と、容器110の開口部を塞ぐ蓋120とを備えるものが利用できる。所望の形状のダイヤモンド複合材料1Aを成形できるように、容器110の形状を選択するとよい。成形型100は、カーボン製などの耐熱性、強度などに優れるものが好適に利用できる。成形型100が蓋120を有する場合、容器110内に雰囲気ガスが過度に入り込むことを防止できる。
(溶浸工程)
この工程は、成形型100に充填した充填物(一例として積層体235)を加熱して、ダイヤモンドと、金属材を溶融した溶融金属52(銀又は銀合金)とを複合する。
加熱温度は、金属材が溶融する温度、即ち、銀の融点(961℃)以上、又は銀合金の液相線温度以上にする。例えば、加熱温度は、980℃以上1300℃以下が挙げられる。保持時間は、10分以上3時間以下程度が挙げられる。
雰囲気は、酸素の混入・増大を防止するために、非酸化性雰囲気(例えば、アルゴン雰囲気など)、低酸化性雰囲気(例えば、真空雰囲気。真空度は10kPa以下)とすることが好ましい。雰囲気圧力が低いほど、溶浸し易くなるため、大気圧未満の減圧雰囲気とすることが好ましい(例えば、10kPa以下)。
溶浸工程で生じると考えられる現象について、積層体235を利用した場合を例にし、図9を参照して説明する。図9では、4族化合物300として、水素化物のうち、TiHを例示する。昇温し始めて200℃〜300℃程度に達すると、金属粉末が含有し得る酸素600を放出し、混合粉末の層中に含まれ得る(図9の上段)。更に、昇温して500℃〜600℃程度に達すると、4族化合物300が、周期表4族の元素301(図9ではTi)と、周期表4族の元素以外の元素302(図9では水素(H)、以下特定の元素と呼ぶ)とに化学分解する(図9の中上段)。化学分解により生じた特定の元素302は、上述の酸素600や、原料表面に酸化物が存在する場合にはこの酸化物中の酸素原子などと結合して、ガス状の化合物640(図9では水蒸気(水))を形成し、混合粉末から放出される。このように特定の元素302によって、原料などに含まれ得る酸素を効果的に低減又は除去できる。
更に昇温すると金属材が溶融した溶融金属52が混合粉末の層側に侵入してきて、上述の化学分解によって生じた周期表4族の元素301を取り込む。周期表4族の元素301を取り込んだ複合溶融金属54が混合粉末の層中のダイヤモンド粒子21に接触すると(図9の中下段)、ダイヤモンド粒子21の表面側領域の炭素と、周期表4族の元素301とが反応して(結合して)、炭化物を形成する。この炭化物の形成によって、複合溶融金属54がダイヤモンド粒子21と濡れ易くなって、ダイヤモンド粒子21の表面側領域全域に亘って連続的に周期表4族の元素301との炭化物の形成反応が進む。複合溶融金属54中の周期表4族の元素301は、ダイヤモンド粒子21との反応に伴って消費されて、銀又は銀合金の溶融金属52になっていく。炭化物の形成に伴って、溶融金属52などの溶浸が進行する。この結果、ダイヤモンド粒子2の表面に、周期表4族の元素を含む炭化物層3を備える被覆ダイヤモンド粒子4を形成でき、これら被覆ダイヤモンド粒子4間がつくる隙間に溶融金属52が充填された溶浸材を形成できる。隣り合うダイヤモンド粒子21,21がそれぞれ炭化物を形成することで、炭化物同士が連結した部分を形成し得る。この場合、炭化物から構成される連結部を有する複合材料が製造できる。
上述の現象では、ダイヤモンド粒子21と周期表4族の元素301とが反応する前に、4族化合物300の化学分解によって生じた上述の特定の元素302が、ダイヤモンド粒子21の周囲に存在し得る酸素600と結合したり、酸化物を還元する場合には、酸素600などを十分に低減、除去したりでき、最終的に得られるダイヤモンド複合材料中の酸素量を効果的に低減できる。ダイヤモンド粒子21の表面近傍でこのような酸素の除去を行うことで、ダイヤモンド粒子21(2)の近傍の酸素濃度が低いダイヤモンド複合材料1A(1)とすることができる。かつ、4族化合物300の化学分解によって生じた周期表4族の元素301は、上述のように酸素が除去されたため、ダイヤモンド粒子21と反応して炭化物を形成し易い。原料に用いた4族化合物の粉末30中に含む周期表4族の元素の多くを、好ましくは全量を炭化物にできる。その結果、ダイヤモンド粒子21の表面の少なくとも一部、好ましくは全部が炭化物に覆われて、溶融金属52(54)との濡れ性を高められる。このような現象は、上述した任意の充填形態について同様に生じ得ると考えられる。
上述のように酸素の除去及び炭化物の形成を行うための時間が確保できるように、昇温速度を調整することが好ましい。例えば、昇温速度は、2℃/min以上20℃/min以下程度が挙げられる。
上述の溶浸後、冷却することで、酸素濃度が低く、緻密で、熱伝導性に優れるダイヤモンド複合材料1Aが得られる。このダイヤモンド複合材料の製造方法は、このように周期表4族の元素を含む4族化合物の粉末30を利用して、周期表4族の元素の酸化防止、酸素や酸化物の還元などによる酸素の低減、除去及び炭化物の良好な形成、ダイヤモンドと溶融金属との濡れ性の改善を効果的に行える。また、この製造方法は、ダイヤモンドと銀又は銀合金との複合にあたり複数回の熱処理を行ったり、特許文献2に記載される高圧プレスを行ったりすることなく、複合材料1Aを容易に製造でき、生産性に優れる。
(その他)
<金属層の形成>
金属層6を備える被覆複合材料1Bなどを製造する場合、金属材を利用して、溶浸工程で複合化と同時に金属層6を形成する同時形成方法と、溶浸工程を経て作製した溶浸材の表面に金属層6を別途形成する別形成方法という二つの方法が利用できる。
同時形成方法では、例えば、上述の二層構造の積層体235の形成にあたり、金属材の量を調整する(多くする)ことで、複合材料の一面に、金属マトリクス5と同じ成分で、かつ連続した組織を有する金属層6を備える被覆複合材料(片側溶浸材)を形成できる。又は、例えば、充填工程において、図10に示すように、容器110に金属粉末50といった金属材を充填し、次に混合粉末23を充填し、最後に金属粉末50といった金属材を順に充填して積層した、三層構造の積層体(両側金属積層体2355)を形成することができる。この場合も金属材の量を調整することで、両側金属積層体2355を加熱すると、下側の溶融金属52が混合粉末23の層に溶浸することで混合粉末23の層が下方に下がりながら、上側の溶融金属52も溶浸していき、上下に金属が多く存在したまま、中間部が複合化される。この結果、図10に示すように複合材料1の表裏面の双方に、金属マトリクス5(図5)と同じ成分の金属でかつ連続した組織を有する金属層6,6を備える被覆複合材料1B(両側溶浸材)を製造できる。以下、この方法を両側溶浸法と呼ぶことがある。金属層6の少なくとも一層を同時形成方法で形成すると、この層を溶浸と同時に形成できて工程数が少なく、製造性に優れる。更にこの層は、金属マトリクス5に連続する組織であるため、接合強度が高く、剥離し難い上に、熱伝導性にも優れる。
別形成方法は、めっき、スパッタリングなどの蒸着、金属湯への浸漬、金属板や金属箔、金属粉末の加熱接合(ホットプレス)など種々の方法を利用できる。金属層6の形成前には、ダイヤモンド複合材料1の表面を洗浄にすることが好ましい。
ホットプレスを行う場合、加圧圧力は0.2ton/cm以上4.5ton/cm以下(19.6MPa以上441MPa以下)程度、加熱温度は300℃以上900℃以下程度が好ましい。ホットプレスは、ダイヤモンド複合材料1の一面に金属板などを配置した後、押圧することで、片側のみの被覆複合材料を製造できる。複合材料1の両面を挟むように一対の金属板などを配置した後、押圧することで、複合材料1の両面に金属層6,6を備える被覆複合材料1Bを製造できる。
別形成方法は、ダイヤモンド複合材料1の金属マトリクス5と同じ組成の金属層6は勿論、異なる組成の金属層6を容易に形成できる。
<研磨>
その他、このダイヤモンド複合材料の製造方法は、金属層6を備えていない複合材料1Aの表面、又は金属層6を備える被覆複合材料1Bなどの表面に研磨を施す研削工程を備えることができる。
[試験例1]
ダイヤモンドの粉末と、金属材と、適宜、周期表4族の元素を含む粉末とを用いて、ダイヤモンド複合材料を作製し、熱特性、相対密度、酸素量を調べた。
原料として、平均粒径50μmのダイヤモンドの粉末、金属材として平均粒径150μmの銀(Ag)粉末、平均粒径45μmであり、表1に示す材質の周期表4族の元素を含む粉末αを用意した。粉末αとして、試料No.1−1〜1−12では4族化合物の粉末、試料No.1−102〜1−104では、周期表4族の元素の粉末を用意した。各粉末の平均粒径はいずれも、メジアン粒径である。
直径10mmφ、厚さ2mmの体積に対して、ダイヤモンドの粉末が60体積%、銀粉末が38体積%、粉末αが2体積%となるように、各粉末の量を調整した。試料No.1−101は、粉末αを用いておらず、ダイヤモンドの粉末を60体積%、銀粉末を40体積%とした。
粉末αを用いた各試料では、ダイヤモンドの粉末と粉末αとを湿式混合した。ここでは、溶媒が水及びエタノールであり、溶質がポリビニルアルコール(PVA)であるPVA溶液(濃度0.2質量%)を用意して、このPVA溶液に粉末を浸漬して、真空撹拌装置(マゼルスター、倉敷紡績株式会社製)を用いて10min混合した。その後、混合物を真空引きしながら5min混合して、水及びエタノールを乾燥除去した。この工程によって、PVAを含む混合粉末を得た。PVAは、溶浸時の加熱によって除去する。
上述の混合粉末をカーボン製の成形型の容器に充填した。充填後、混合粉末の表面を均すために、40kPaでプレスした後、混合粉末の層の上に銀粉末を充填して、二層構造の粉末成形体(積層体を含む)を上記容器内で作製し、容器に蓋をした。この試験では、溶浸が進行し易いように粉末成形体の上にカーボン製のパンチ、このパンチの上に錘を配置して荷重(300g)を負荷するようにしたが、錘を省略し、自然溶浸することもできる。上記パンチ及び錘を配置した粉末成形体を内蔵する成形型をアルゴン(Ar)雰囲気(5kPa)中、300gの負荷を印加した状態で、昇温速度10℃/minで1200℃まで昇温し、1200℃に到達してから2時間保持して、ダイヤモンドに溶融金属(ここでは銀湯)を溶浸させた後、冷却して溶浸材(直径10mmφ、厚さ2mmの円板)を作製した。得られた各試料の溶浸材の熱伝導率(W/m・K)、熱膨張係数(×10−6/K=ppm/K)、相対密度(%)、冷熱サイクル耐性(%)、酸素含有量(酸素量、質量%)を測定した。その結果を表1に示す。
熱伝導率及び熱膨張係数は、市販の測定器を用いて測定した。熱伝導率は、室温(23℃)で測定した。熱膨張係数は、30℃〜150℃の範囲で測定した平均値とした。
相対密度は、(実密度/理論密度)×100によって求めた。実密度は、アルキメデス法(水中比重法)によって求めた。理論密度は、100/{(ダイヤモンドの質量%/ダイヤモンドの密度)+(金属マトリクスの質量%/金属マトリクスの密度)+(周期表4族元素の質量%/周期表4族元素の密度)}によって求めた。ダイヤモンド、金属マトリクス(この試験では銀)、及び周期表4族の質量割合は、この試験では、原料組成の体積割合を用いて算出した。例えば、4族化合物の粉末としてTiHを用いた試料では、Tiの質量%は、TiとHに分解してできたTi量から計算した。その他、上記質量割合は、複合材料に対して各種の成分分析を利用することで求められる。
冷熱サイクル耐性は、その物質における温度変化に伴う熱伝導率の低下のし難さを表す指標であり、(冷熱サイクル後の熱伝導率/冷熱サイクル前の熱伝導率)×100によって求めた。冷熱サイクル後の熱伝導率は、各試料の溶浸材について、−60℃に保持した試験液に10分浸した後、250℃に保持した試験液に10分浸す、という操作を1サイクルとし、この冷熱サイクルを1000サイクル行った後に測定した。冷熱サイクル後の熱伝導率の測定は、上述の市販の測定器を用いて、室温(23℃)で測定した。試験液には、フッ素系不活性液体(「ガルデン(登録商標)」や「フロリナート(商品名)」などを使用できる。
酸素含有量の測定は、この試験では、別途、試験片を作製して行った。具体的には、試料ごとに、3mm×3mm×5mmの測定試験片が5個以上採取可能な測定用素材を各試料と同様にして作製した。そして、測定用素材をワイヤー放電加工して、3mm×3mm×5mmの測定試験片を複数切り出した後、酸洗浄してワイヤー成分を除去した。酸洗浄後、各試料の測定試験片について酸素・窒素分析装置(LECOジャパン合同会社製TC−600型)を用いて、酸素濃度を測定した。各試料について、5個の測定試験片の平均値を表1に示す。酸素含有量の測定に関する点は、後述する試験例についても同様である。なお、測定試験片の大きさは例示であり、測定装置の仕様に応じて、測定可能な大きさに適宜変更できる。複合材料自体から測定試験片を採取してもよい。
得られた各試料の溶浸材について市販のクロスセクションポリッシャ(CP)加工装置を用いてCP断面をとり、この断面についてEPMAによる組織観察と元素分析とを行った。図6,図7に観察像と、元素マッピング像(元素イメージ)とを示す。図6,図7のEPMAによる元素マッピング像は、抽出した元素の濃度の高低を色別で示す。元素濃度が高い順に白、赤、橙、黄、緑、薄青、青、黒で示す。各元素のマッピング像の下にカラースケールを示す。
図6の左上は、試料No.1−3の溶浸材のEPMAの反射電子像、図6の左下、右上、右下は順にEPMAの酸素マッピング像、炭素マッピング像、チタンマッピング像を示す。
図7の左上は、試料No.1−102の溶浸材について、ダイヤモンド粒子の近傍を拡大したEPMAの反射電子像、図7の左下、右上、右下は順にEPMAの酸素マッピング像、炭素マッピング像、チタンマッピング像を示す。
図6,図7の反射電子像において、多角形状で濃い灰色の領域がダイヤモンド、薄い灰色の領域が金属マトリクス(ここでは銀)を示す。図7の反射電子像において、多角形状で濃い灰色の領域と、薄い灰色の領域との間には多角形状の領域の周縁に沿って膜状の領域が存在する。
図6の反射電子像に示すように、試料No.1−3の溶浸材は、ダイヤモンド粒子間がつくる隙間に金属マトリクス(ここでは銀)が実質的に隙間なく充填されていることが分かる。また、図6の左下の酸素マッピング像が黒一色であることから明らかなように、試料No.1−3の溶浸材は、その全体に亘って酸素が実質的に検出されないほどに少ないことが分かる。
図6の右上の炭素マッピング像をみると、多角形状の粒子は概ね白〜赤〜黄であり、炭素濃度が高く、ダイヤモンドであると判別できる。この多角形状の粒子の輪郭に沿って、炭素濃度が低い領域(緑の領域)が薄く環状に存在していることが分かる。即ち、ダイヤモンド粒子の表面側領域では、炭素濃度が低くなっていると判別できる。図6の右下のチタンマッピング像をみると、多角形状の粒子の輪郭に沿ってチタン濃度が高い領域(概ね緑〜青の領域)が薄く環状に存在していることが分かる。上述の炭素マッピング像と合せて考えれば、ダイヤモンド粒子の輪郭に沿って環状にチタンが存在することが分かる。
更に、図6に示す三つの元素マッピング像を重ね合せると、炭素濃度が相対的に低い環状の領域と、チタン濃度が高い環状の領域とが実質的に重なり、この環状の領域に重なる酸素が実質的に無いことが分かる。このことから、ダイヤモンド粒子の輪郭に沿った薄い環状の領域は、炭素とチタンとが結合して炭化物として存在し、酸素が実質的に存在しない領域であると判別できる。この炭化物の炭素成分は、ダイヤモンド粒子の周縁に沿って存在することから、ダイヤモンドに起因すると判別できる。なお、炭化物からなる環状の領域(炭化物層)の平均厚さは、3μm以下程度である。また、図6の酸素マッピング像から上述の環状の領域だけでなく、複合材料の全体に亘って酸素が実質的に存在しないことが分かる。
一方、図7の左下の酸素マッピング像から明らかなように、青色から黄色の部分が存在し、試料No.1−102の溶浸材は、局所的に酸素が存在することが分かる。図7に示す三つの元素マッピング像を重ね合せると、ダイヤモンド粒子の輪郭に沿った膜状の領域について、炭素濃度が相対的に低い膜状の領域の一部とチタン濃度が高い領域の一部とが重なり、チタン濃度が高い領域の他部と酸素濃度が高い領域とが重なることが分かる。ダイヤモンド粒子の輪郭に沿った膜状の領域は、炭素とチタンとが結合して炭化物として存在する部分があるものの、酸素とチタンとが結合して酸化物として存在する部分をも有すると判別できる。このことから、製造条件が異なることで、ダイヤモンド粒子の近傍に酸素が実質的に存在しない溶浸材と、酸素が存在し得る溶浸材とが得られることが確認できた。
試料No.1−1,1−2,1−4〜1−12の溶浸材についても、試料No.1−3と同様に観察・分析したところ、ダイヤモンド粒子間がつくる隙間に金属マトリクス(ここでは銀)が実質的に隙間なく充填されていること、ダイヤモンド粒子の表面側領域に周期表4族の炭化物層が薄く存在すること、ダイヤモンド粒子の表面近傍を含む溶浸材の全体に亘って、酸素濃度が低いことを確認している。これら試料No.1−1〜1−12の溶浸材は、ダイヤモンド粒子と、ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層(ここでは特にダイヤモンド粒子と周期表4族の元素とが結合した炭化物層)とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀とを備える複合材料である。
そして、試料No.1−1〜1−12の複合材料はいずれも、表1に示すように、酸素含有量が低く、緻密で、熱特性に優れることが分かる。具体的には、試料No.1−1〜1−12の複合材料はいずれも、酸素含有量が0.1質量%以下(ここでは0.06質量%以下)であり、相対密度が高く(ここでは96.8%以上)、熱伝導率が高い(ここでは580W/m・K以上)。試料No.1−1〜1−12の複合材料はいずれも、冷熱サイクル耐性にも優れており(ここでは95%以上)、冷熱サイクルを受けても500W/m・K以上(ここでは550W/m・K以上)の熱伝導率を維持できる。
上記の結果が得られた理由として、原料に周期表4族の元素を含む4族化合物の粉末を用いたことで、製造過程で、周期表4族の元素の酸化を抑制できたと共に、原料の周囲に存在し得る酸素を、上記4族化合物の化学分解によって生じた特定の元素の作用によって低減、除去でき、更には上記化学分解によって生じた周期表4族の元素とダイヤモンドとが反応して炭化物を効率よく生成できて、溶融金属との濡れ性を高められたため、と考えられる。特に、ダイヤモンド粒子の表面近傍で酸素を低減、除去できたことで、周期表4族の元素の炭化物を良好に形成でき、ダイヤモンド粒子と溶融金属とが良好に濡れたことで、緻密化できた、と考えられる。
この試験から、試料No.1−1〜1−12の複合材料のような、酸素含有量が低く、緻密で、熱特性に優れるダイヤモンド複合材料は、原料に上述の4族化合物の粉末を用いた溶浸法によって容易に製造できることが分かる。
なお、試料No.1−1〜1−12の複合材料について、酸などで銀を除去して被覆ダイヤモンド粒子を抽出し、平均粒径(メジアン粒径)を測定したところ、原料に用いたダイヤモンドの粉末の平均粒径を実質的に維持していた(45μm程度)。また、複合材料に対する、抽出した被覆ダイヤモンド粒子の体積割合は、原料に用いたダイヤモンドの粉末の配合比を実質的に維持していた(60体積%程度)。炭化物層が極薄いことを考慮すれば、複合材料中のダイヤモンド粒子の粒径及び体積割合は、原料段階の状態を実質的に維持しているといえる。後述する試験例で作製したダイヤモンド複合材料(酸素含有量が低く、緻密で、熱特性に優れるもの)についても、金属マトリクスを酸などで除去して、被覆ダイヤモンド粒子を抽出して、平均粒径や体積割合を上述のように測定して、同様の結果(原料段階の維持)を得ている。
一方、原料に周期表4族の元素を含む粉末を用いなかった試料No.1−101では、実質的に溶浸材が得られなかったため、熱特性、相対密度、酸素量を調べていない。
他方、原料に周期表4族の元素単体を用いた試料No.1−102〜1−104では、溶浸材が得られたものの、試料No.1−1〜1−12に比較して、酸素含有量が高く(0.15質量%超)、相対密度が低く(96.5%未満)、熱特性も劣る(熱伝導率が500W未満、更に450W未満、冷熱サイクル特性が94%以下)。上記の結果が得られた理由として、原料に周期表4族の元素単体を用いたことで、原料段階で周期表4族の元素が酸化して、又は溶浸材の製造過程で存在し得る酸素などによって周期表4族の元素が酸化して、周期表4族の元素の炭化物を十分に形成できず(図7も参照)、溶融金属との濡れが不十分な箇所が生じたため、と考えられる。なお、例えば、試料No.1−3の酸素量と、試料No.1−102の酸素量との差は、図6,図7に示す酸素マッピング像を参照すれば、ダイヤモンド粒子とその近傍に存在する酸化物に含まれる酸素量の差によって生じると考えられる。
[試験例2]
ダイヤモンドの粉末の粒径を異ならせて、種々のダイヤモンド複合材料を製造し、熱特性、相対密度、酸素量を調べた。
この試験では、ダイヤモンドの粉末の粒径を除いて、試験例1の試料No.1−1〜1−12と同様にして、ダイヤモンド複合材料を作製した。概略は以下の通りである。平均粒径の0.1μm、1μm、20μm、50μm、100μm、300μm、400μmのダイヤモンドの粉末、平均粒径150μmの銀(Ag)粉末、平均粒径45μmであって、表2〜表4に示す材質の4族化合物の粉末を用意した。直径10mmφ、厚さ2mmの体積に対して、ダイヤモンドの粉末が60体積%、銀粉末が38体積%、4族化合物の粉末が2体積%となるように調整した。そして、ダイヤモンド粉末と4族化合物の粉末との湿式混合⇒乾燥⇒混合粉末をカーボン製成形型に充填⇒プレス⇒銀粉末の充填⇒Ar雰囲気、10℃/min、1200℃×2時間、という工程を経て、溶浸材(直径10mmφ、厚さ2mmの円板)を作製した(試料No.2−1〜2−88,2−101〜2−124)。
表2〜表4に「混合比(粗:微)」が「7:3」と記載された各試料では、ダイヤモンド粉末として、微粗混合粉末を用いた。この試験では、平均粒径が50μmの粉末を粗粒粉末とし、平均粒径が10μmの粉末を微粒粉末とする試料(No.2−3,2−33,2−63など)と、平均粒径が300μmの粉末を粗粒粉末とし、平均粒径が1μmの粉末を微粒粉末とする試料(No.2−6,2−36,2−66など)とを用意した(いずれもメジアン粒径)。いずれの試料も、粗粒粉末と微粒粉末との配合比が体積割合で7:3となるように、粗粒粉末を多めにして配合した。
得られた試料No.2−1〜2−88,2−101〜2−124の溶浸材の熱伝導率(W/m・K)、熱膨張係数(×10−6/K=ppm/K)、相対密度(%)、冷熱サイクル耐性(%)、酸素含有量(酸素量、質量%)を試験例1と同様にして測定した。その結果を表2〜表4に示す。表2は、4族化合物に含む周期表4族の元素がTiである試料No.2−1〜2−28及び試料No.2−101〜2−104、表3はZrである試料No.2−31〜2−58及び試料No.2−111〜2−114、表4はHfである試料No.2−61〜2−88及び試料No.2−121〜2−124を示す。
得られた試料No.2−1〜2−88の溶浸材はいずれも、ダイヤモンド粒子と、ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層(ここでは特にダイヤモンド粒子と周期表4族の元素とが結合したTiC層又はZrC層又はHfC層)とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀とを備える複合材料であった。そして、試料No.2−1〜2−88の複合材料はいずれも、表2〜表4に示すように、酸素含有量が低く、緻密で、熱特性に優れることが分かる。具体的には、試料No.2−1〜2−88の複合材料は、酸素含有量が0.1質量%以下であり(ここでは多くの試料が0.06質量%以下)、相対密度が高く(ここでは多くの試料が97.0%以上)、熱伝導率が高い(ここでは多くの試料が600W/m・K以上)。更に、試料No.2−1〜2−88の複合材料は、冷熱サイクル耐性にも優れており(ここでは多くの試料が96%以上)、多くの試料は冷熱サイクルを受けても、500W/m・K以上を満たす。そして、表2〜表4に示すように、ダイヤモンド粒子が大きいほど、熱伝導性に優れることが分かる。この試験では、熱伝導率が700W/m・K以上の複合材料(例えば、試料No.2−11,2−34,2−71など)、更に800W/m・K以上の複合材料(例えば、試料No.2−5,2−42,2−79など)が得られている。但し、ダイヤモンド粒子が大き過ぎる試料(ここでは平均粒径400μmのダイヤモンド粉末を用いた試料)は、研磨や切断などの加工性に劣ると考えられ、複合材料中のダイヤモンド粒子の平均粒径は400μm未満、更に300μm以下が好ましいと考えられる。
特に、ダイヤモンド粉末として、微粗混合粉末を用いた試料の複合材料は、微粗混合粉末を用いていない試料と比較して、相対密度が非常に高くなり易く、より緻密になり易いといえる。また、微粗混合粉末を用いた試料と用いていない試料とを比較して、例えば、粗粒粉末に平均粒径50μmのダイヤモンド粉末を用いた試料と、平均粒径50μmのダイヤモンド粉末のみを用いた試料とを比較すると、微粗混合粉末を用いると、熱伝導率が高くなる傾向にあり、熱伝導性をより向上し易いといえる。
一方、試料No.2−101〜2−124の複合材料は、原料に4族化合物の粉末を用いたものの、その他の試料と比較して酸素含有量が0.1質量%超と高く、熱特性も低くなっている。この理由として、ダイヤモンド粒子が小さ過ぎることで、ダイヤモンド粒子に存在し得る酸化物が相対的に多くなって十分に低減、除去できず、酸化物が残存したこと、ダイヤモンドの粉末粒界が多くなって熱経路が長くなったこと、ダイヤモンド粒子の表面積が大きくなってダイヤモンドとAgとの界面での熱損失が大きくなったこと、が挙げられる。
この試験から、試料No.2−1〜2−88の複合材料のような、酸素含有量が低く、緻密で、熱特性に優れるダイヤモンド複合材料は、複合材料中のダイヤモンドの平均粒径が0.1μm超400μm以下、更に1μm以上300μm以下を満たすことが好ましいことが分かる。
[試験例3]
ダイヤモンドの粉末及び金属粉末の配合比を異ならせて、種々のダイヤモンド複合材料を作製し、熱特性、相対密度、酸素量を調べた。
この試験では、主として、ダイヤモンド粉末及び金属粉末の配合比を試験例1から変更した点を除いて、試験例1の試料No.1−1〜1−12と同様にして、ダイヤモンド複合材料を作製した。試料によっては、ダイヤモンド粉末の粒径や金属粉末の材質も試験例1から変更した。概略は以下の通りである。平均粒径の1μm、50μm、300μmのダイヤモンドの粉末、平均粒径150μmの銀(Ag)粉末、又は28質量%のCuを含む銀合金(Ag−28質量%Cu)粉末、平均粒径45μmであって、表5〜表7に示す材質の4族化合物の粉末を用意した。直径10mmφ、厚さ2mmの体積に対して、ダイヤモンドの粉末が25体積%、29体積%、30体積%、45体積%、60体積%、75体積%、90体積%、95体積%、銀粉末又は銀合金粉末が表5〜表7に示す値、4族化合物の粉末が2体積%となるように調整した。そして、ダイヤモンド粉末と4族化合物の粉末との湿式混合⇒乾燥⇒混合粉末をカーボン製成形型に充填⇒プレス⇒銀粉末又銀合金粉末の充填⇒Ar雰囲気、10℃/min、1200℃×2時間、という工程を経て、溶浸材(直径10mmφ、厚さ2mmの円板)を作製した(試料No.3−1〜3−80,3−101〜3−104,3−111〜3−114,3−121〜3−124)。
試料No.3−125〜3−127はいずれも、上記4族化合物の粉末を用いていない試料である。具体的には、平均粒径1μmのダイヤモンドの粉末、平均粒径150μmの銀合金(Ag−28質量%Cu)粉末、平均粒径45μmであって、周期表4族の元素の粉末(チタン(Ti)粉末、ジルコニウム(Zr)粉末、ハフニウム(Hf)粉末)を用意した。直径10mmφ、厚さ2mmの体積に対して、ダイヤモンドの粉末が30体積%、銀合金粉末が68体積%、周期表4族の元素の粉末が2体積%となるように調整した。そして、試料No.3−1〜3−80と同様にして、溶浸材(直径10mmφ、厚さ2mmの円板)を作製した。
試料No.3−128は、上記4族化合物の粉末を用いていない試料である。具体的には、平均粒径50μmのダイヤモンドの粉末、平均粒径150μmの銀合金(Ag−28質量%Cu)粉末、平均粒径45μmのチタン(Ti)粉末を用意した。直径10mmφ、厚さ2mmの体積に対して、ダイヤモンドの粉末が60体積%、銀合金粉末が38体積%、Ti粉末が2体積%となるように調整した。そして、Ti粉末と銀合金粉末とを混合した。この混合は、ミキサーミルを用いた乾式混合とした。そして、ダイヤモンド粉末をカーボン製成形型に充填⇒プレス⇒銀合金粉末とTi粉末との混合粉末を充填⇒Ar雰囲気(5kPa)、10℃/min、1200℃×2時間、という工程を経て、溶浸材(直径10mmφ、厚さ2mmの円板)を作製した。
得られた試料No.3−1〜3−80,3−101〜3−104,3−111〜3−114,3−121〜3−128の溶浸材の熱伝導率(W/m・K)、熱膨張係数(×10−6/K=ppm/K)、相対密度(%)、冷熱サイクル耐性(%)、酸素含有量(酸素量、質量%)を試験例1と同様にして測定した。その結果を表5〜表7に示す。表5は、4族化合物に含む周期表4族の元素がTiである試料No.3−1〜3−23及び試料No.3−101〜3−108、表6はZrである試料No.3−31〜3−50及び試料No.3−111〜3−118、表7はHfである試料No.3−61〜3−80及び試料No.3−121〜3−132を示す。
得られた試料No.3−1〜3−80の溶浸材はいずれも、ダイヤモンド粒子と、ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層(ここでは特にダイヤモンド粒子と周期表4族の元素とが結合したTiC層又はZrC層又はHfC層)とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀又は銀合金(試料No.3−5,3−33,3−63など)とを備える複合材料であった。そして、試料No.3−1〜3−80の複合材料はいずれも、表5〜表7に示すように、酸素含有量が低く、緻密で、熱特性に優れることが分かる。具体的には、試料No.3−1〜3−80の複合材料は、酸素含有量が0.1質量%以下であり、相対密度が高く(ここでは96.5%以上)、熱伝導率が高い(ここでは500W/m・K以上)。更に、試料No.3−1〜3−80の複合材料はいずれも、冷熱サイクル耐性にも優れている(ここでは95%以上)。試料No.3−5,3−33,3−63などの複合材料のように金属マトリクスが銀合金である場合でも、酸素含有量が低く、緻密で、熱特性に優れることが分かる。そして、表5〜表7に示すように、ダイヤモンド粒子の含有量が多いほど、熱伝導性に優れることが分かる。
ダイヤモンド粒子の含有量が少なく、金属マトリクスである銀が多い試料No.3−101〜3−104,3−111〜3−114,3−121〜3−124の溶浸材は、酸素濃度が0.1質量%超と高めで、熱特性も低い。この理由は、熱伝導性に優れるダイヤモンドの含有量が少ない上に、酸素を含有し得る銀が多過ぎることで、結果として酸素が多過ぎて、原料に上述の4族化合物の粉末を用いても、還元作用などを十分に発揮できずに酸化物が存在したため、と考えられる。
ダイヤモンド粒子の含有量が多く、金属マトリクスである銀が少ない試料No.3−105〜3−108,3−115〜3−118,3−129〜3−132は、積層体の一部にのみ溶浸したものの、所定の大きさの溶浸材(ここでは直径10mmφ、厚さ2mmの円板、上述の酸素含有量の測定用素材)が得られなかったため、熱特性、相対密度、酸素量を調べていない。溶浸が不十分となった理由は、原料に用いた金属粉末の量が不足しており、金属マトリクスの形成、更には炭化物層の形成が十分に行えなかったため、と考えられる。
一方、原料に周期表4族の元素単体を用いた試料No.3−125〜3−127では、溶浸材が得られたものの、試験例1で作製した試料No.1−102〜1−104と同様に酸素含有量が多く、相対密度も低く、熱特性も劣っている。他方、原料として、周期表4族の元素を銀合金粉末に添加したものを用いた試料No.3−128では、溶浸材が得られたものの、試料No.3−125よりも、酸素含有量が多く、相対密度も低く、熱特性も劣っている。このことから、緻密で、熱特性に優れると共に、酸素濃度が低いダイヤモンド複合材料を製造するには、原料に周期表4族の元素単体ではなく、周期表4族の元素を含む硫化物、窒化物、水素化物、硼化物といった4族化合物を用いること、4族化合物の粉末の少なくとも一部をダイヤモンドの粉末に混合して用いることが好ましいことが分かる。
この試験から、試料No.3−1〜3−80の複合材料のような、酸素含有量が低く、緻密で、熱特性に優れるダイヤモンド複合材料は、複合材料中のダイヤモンドの含有量が25体積%超95体積%未満、更に30体積%以上90体積%以下が好ましいことが分かる。
[試験例4]
種々の方法で金属層を有する被覆複合材料を作製し、熱特性、相対密度、酸素量、表面粗さを調べた。相対密度は、金属層を含めて求めた。
ここでは、試験例1で作製した試料No.1−1〜1−12の溶浸材、試験例2で作製した試料No.2−1,2−3,2−6の溶浸材、試験例3で作製した試料No.3−2の溶浸材を用意し、金属めっき、又は金属箔の圧着、又は金属粉末の圧着によって、各溶浸材の表面に金属層を形成した。ここでの圧着は、加熱温度を400℃、圧力を4ton/cm≒392MPaとしたホットプレスを行って、金属箔や金属粉末を接合した。金属めっきは公知の条件を利用した。各試料の被覆複合材料に用いた、溶浸材の試料番号、金属層の材質、金属層の形成方法を表8に示す。各試料の被覆複合材料のサイズは、金属層を備える状態で直径10mmφ、厚さ2.2mmの円板であり、かつ、金属層の厚さが表8に示す値となるように、溶浸材の厚さや金属層の厚さなどを調整した。得られた試料No.4−1〜4−23の被覆複合材料の熱伝導率(W/m・K)、熱膨張係数(×10−6/K=ppm/K)、相対密度(%)、冷熱サイクル耐性(%)、酸素含有量(酸素量、質量%)を試験例1と同様にして測定した。その結果を表8に示す。
表8に示すように、金属層を備える被覆複合材料であっても、酸素含有量が低く、緻密であり、金属層の厚さが300μm以下であれば、熱伝導性にも優れることが分かる。特に、ホットプレスで金属層を形成した場合には、複合材料の相対密度がより高い傾向にあり、より緻密になっている。この理由は、ホットプレスによって気孔が低減されたためと考えられる。
その他、この試験では、金属箔や金属粉といった金属層の原料の差異による熱特性への影響、金属層の組成の差異による熱特性への影響、ホットプレスやめっきといった金属層の形成方法の差異による熱特性への影響はいずれも小さいといえる。また、この試験から、酸素含有量については、金属層が酸素を含有し易い組成であったり(例えば、Cuを含む)、金属層が厚くなったりすると、若干増加する場合があるといえる。この試験では単層の金属層としたが、異種の金属からなる多層の金属層とすることができる。この場合、最下層をめっきの下地層などに利用できる。
[試験例5]
試験例1〜試験例3で作製した試料について、高温に加熱した後の熱特性の劣化状態を調べた。
ここでは、試験例1で作製した試料No.1−1,1−102の溶浸材、試験例2で作製した試料No.2−1,2−3,2−6の溶浸材、試験例3で作製した試料No.3−2の溶浸材を用意した。用意した各試料の溶浸材を水素雰囲気中で加熱し、800℃で1時間保持した後、室温まで冷却して、試験例1と同様にして熱伝導率を測定した。そして、この加熱前の熱伝導率が加熱後にどの程度低下するかを評価した。
評価は、劣化率={[(加熱前の熱伝導率)−(加熱後の熱伝導率)]/(加熱前の熱伝導率)}×100を求めることで行った。ここでは、上述の条件で加熱を1回行った場合(熱処理1回目)と、上述の条件で加熱を2回行った場合(熱処理2回目)について、加熱後の熱伝導率(W/m・K)と劣化率(%)とを測定した。その結果を表9に示す。
表9に示すように800℃の加熱前において熱特性に優れるダイヤモンド複合材料である試料No.5−1〜5−5はいずれも、800℃で加熱された場合でも熱伝導率の低下が少なく、耐熱性に優れることが分かる。具体的には、いずれの試料も、800℃に加熱された場合でも、熱伝導率の劣化率が5%未満である。この試験では、2回の加熱を受けても、上記劣化率が5%未満である。他方、800℃の加熱前において試料No.5−1よりも熱特性に劣る試料No.5−6は、800℃に加熱された場合にも熱伝導率の低下が大きく、劣化率が5%以上であり、2回の加熱を受けると10%以上である。
試料No.5−1〜5−5の複合材料のような、酸素含有量が低く、緻密で熱伝導率が高いダイヤモンド複合材料は、銀ロウ材の接合を模擬したような高温に加熱された場合でも、熱伝導率の低下が少ない。このような複合材料は、半導体素子を搭載する基板に利用されて、銀ロウ材といった高融点の接合材が接合された後にも、高い熱伝導率を維持できることが分かる。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能であり、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の半導体装置は、高周波パワーデバイス、半導体レーザ装置、発光ダイオード装置、その他、各種のコンピュータのCPU、GPU、HEMT、チップセット、メモリーチップなどに利用できる。本発明の半導体パッケージは、上記の半導体装置の構成部品に利用できる。
10α、10β 半導体パッケージ
10A,10B,10C,10D 半導体装置
10 基板 10r 凹部 12 枠体 12w 窓部 13 絶縁材
14 電極 15 半導体素子 15b 配線 16 蓋部 16C 封止樹脂
17a,17b 半田 18 ヒートシンク
1,1A ダイヤモンド複合材料 1B 被覆複合材料
2,21 ダイヤモンド粒子 3 炭化物層
4 被覆ダイヤモンド粒子 5 金属マトリクス 6 金属層
20 ダイヤモンドの粉末 30 4族化合物の粉末 23 混合粉末
50 金属粉末
235 積層体 2355 両側金属積層体
52 溶融金属 54 複合溶融金属
100 成形型 110 容器 120 蓋
300 4族化合物 301 周期表4族の元素
302 4族化合物の構成元素のうち、周期表4族の元素以外の元素
600 酸素 640 ガス状の化合物

Claims (9)

  1. 半導体素子が搭載される基板と、
    前記基板に設けられるパッケージ部品とを備え、
    前記基板は、
    ダイヤモンド粒子と、前記ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、
    前記被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀又は銀合金とを備え、
    酸素含有量が0.1質量%以下であるダイヤモンド複合材料から構成される半導体パッケージ。
  2. 前記基板の相対密度が96.5%以上である請求項1に記載の半導体パッケージ。
  3. 前記基板は、−60℃〜+250℃における冷熱サイクル耐性が95%以上である請求項1又は請求項2に記載の半導体パッケージ。
  4. 前記基板は、800℃に加熱した後における熱伝導率の劣化率が5%未満である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体パッケージ。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体パッケージと、
    前記基板に搭載された半導体素子とを備える半導体装置。
  6. 半導体素子と、
    前記半導体素子が搭載される基板とを備え、
    前記基板は、
    ダイヤモンド粒子と、前記ダイヤモンド粒子の表面を覆い、周期表4族の元素を含む炭化物層とを備える被覆ダイヤモンド粒子と、
    前記被覆ダイヤモンド粒子同士を結合する銀又は銀合金とを備え、
    酸素含有量が0.1質量%以下であるダイヤモンド複合材料から構成される半導体装置。
  7. 前記基板の相対密度が96.5%以上である請求項6に記載の半導体装置。
  8. 前記基板は、−60℃〜+250℃における冷熱サイクル耐性が95%以上である請求項6又は請求項7に記載の半導体装置。
  9. 前記基板は、800℃に加熱した後における熱伝導率の劣化率が5%未満である請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置。
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