JP2017089755A - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】中間ギヤ段を定量的に求めて選択することにより、加速感の良好なダウンシフトを可能にする。
【解決手段】現ギヤ段から中継ギヤ段にダウンシフトする際に現ギヤ段で生じる刺激強度と停滞時間とが応答限界値以内となり、かつ中継ギヤ段から目標ギヤ段にダウンシフトする際の停滞時間および目標ギヤ段で生じる刺激強度が加速限界値を超え、さらに中継ギヤ段での刺激強度GJ2 と現ギヤ段での刺激強度GJ1 との差を、目標ギヤ段での刺激強度GJ3 と現ギヤ段での刺激強度GJ1 との差で除した商である配分指標Idが、目標ギヤ段への変速による加速感が最良と感じられる最大官能値となるように、中継ギヤ段が選択される。
【選択図】図6
【解決手段】現ギヤ段から中継ギヤ段にダウンシフトする際に現ギヤ段で生じる刺激強度と停滞時間とが応答限界値以内となり、かつ中継ギヤ段から目標ギヤ段にダウンシフトする際の停滞時間および目標ギヤ段で生じる刺激強度が加速限界値を超え、さらに中継ギヤ段での刺激強度GJ2 と現ギヤ段での刺激強度GJ1 との差を、目標ギヤ段での刺激強度GJ3 と現ギヤ段での刺激強度GJ1 との差で除した商である配分指標Idが、目標ギヤ段への変速による加速感が最良と感じられる最大官能値となるように、中継ギヤ段が選択される。
【選択図】図6
Description
この発明は、変速比を段階的に変化させることのできる自動変速機を対象とする変速制御装置に関するものである。
特許文献1には、有段式の車両用自動変速機を対象とする変速制御装置であって、二段以上のスキップシフトを制御するように構成された装置が記載されている。その自動変速機は、クラッチ−ツウ−クラッチ変速機構からなる第1変速機構とクラッチ−ワン・ウェイ・クラッチ変速機構からなる第2変速機構とを備えており、変速制御装置は、これら第1変速機構と第2変速機構とにまたがるスキップシフトの場合に、前記第2変速機構の回転同期を前記第1変速機構の回転同期よりも優先させるように構成されている。
また、特許文献2には、車両の搭乗者が感じる加速感を、感性工学的な概念を利用して定量化し、車両の変速感を評価する方法が記載されている。特許文献2に記載されている方法では、初期加速反応時間と、最終加速度到達時間と、最大加速度到達後の一定時間の間の平均加速度維持時間と、速度上昇勾配と、初期最大ジャークと、末期最大ジャークとの六つの測定因子を求める。それらの測定因子に基づいて、反応速度と、反応強度と、柔らかさと、滑らかさとの四つの核心感性因子を算出し、それらの核心感性因子を使用して総合感性評点を求めるように構成されている。
さらに、特許文献3には、二段のダウンシフトを実行可能なデュアルクラッチ式自動変速機を対象とする変速制御方法であって、二段のダウンシフトの際に、中継ギヤ段を経由するか否かを、予測車両加速度に基づいて判断するように構成された方法が記載されている。
特許文献1に記載されている装置では、第2変速機構での回転同期を第1変速機構での回転同期に先行させることにより、実質的に二段階の変速を行うことになる。また、特許文献3に記載された制御方法では、予測車両加速度が大きい場合には、二段のダウンシフトを行うことになる。このような二段の変速を行う場合、搭乗者がそれぞれ変速を体感するとすれば、変速の滑らかさが欠ける、あるいは変速に遅れが生じるなどの違和感を抱くことになる。特許文献2に記載された方法では、前記四つの核心感性因子によって変速を総合評価することができる。しかしながら、中継ギヤ段を経由するなどの二段の変速を行う場合、各段の変速の評価を行うことができるとしても、それぞれの変速の好ましい態様、すなわち中継ギヤ段の変速比や各段の変速の過程における加速度の変化率などをどのように設定するべきか、などの制御内容を定めることはできない。結局、従来では二段以上離れた目標ギヤ段へ変速する際に中継ギヤ段を経由する場合、変速の遅れや加速度の体感が不十分になるなど、加速感が必ずしも良好にはならないの可能性があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、中継ギヤ段を経由する変速の際の加速感を向上させることのできる変速制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、要求駆動力の増大に基づいて所定のギヤ段から他のギヤ段にダウンシフトする際の加速度の増大量と前記加速度の時間増大率との積である刺激強度と、ダウンシフト指示から加速度が増大し始めるまでの停滞時間とを変数としたマップを備え、前記マップには、前記刺激強度の下限値および前記停滞時間の上限値として、変速制御の開始を感知できる応答限界値と、加速を感知できる下限値である加速限界値とが定められ、現ギヤ段から中継ギヤ段を経由して目標ギヤ段への変速を行う場合に前記中継ギヤ段を前記マップに基づいて求める自動変速機の変速制御装置であって、前記中継ギヤ段を、下記の条件を満たすギヤ段に設定するように構成されていることを特徴とするものである。その条件は、現ギヤ段から前記中継ギヤ段にダウンシフトする際に前記現ギヤ段で生じる前記刺激強度と前記停滞時間とが前記応答限界値以内となり、かつ前記中継ギヤ段から前記目標ギヤ段にダウンシフトする際の前記停滞時間および前記目標ギヤ段で生じる前記刺激強度が前記加速限界値を超え、さらに前記中継ギヤ段での前記刺激強度と前記現ギヤ段での前記刺激強度との差を、前記目標ギヤ段での前記刺激強度と前記現ギヤ段での前記刺激強度との差で除した商である配分指標が、前記目標ギヤ段への変速による加速感が最良と感じられる最大官能値となることである。
この発明によれば、要求駆動力の増大に基づいて現ギヤ段から目標ギヤ段にダウンシフトする際に中継ギヤ段を経由してギヤ段を切り替える場合、現ギヤ段からの変速の開始に遅れ感が生じることが抑制され、また中継ギヤ段への変速と目標ギヤ段への変速との二段階の変速を体感したり、それに伴って変速の遅れ感が生じたりすることを抑制することができる。すなわち、中継ギヤ段を経由した変速であっても、現ギヤ段から目標ギヤ段への一括した変速が生じるように体感され、しかも最終の刺激強度が加速要求に応じたものとなるので、十分な加速感を運転者に与えることができる。
この発明の実施形態での車両は、一例として図1に示すように、エンジン1の出力側に自動変速機2が連結され、その自動変速機2から出力された駆動トルクをデファレンシャルギヤ3を介して左右の駆動輪4に伝達するように構成されている。その自動変速機2は、複数の変速比を段階的に設定することのできる変速機である。例えば、クラッチやブレーキなどの係合機構を係合もしくは解放させることにより駆動トルクの伝達経路を変えて変速を実行するように構成されている。あるいはプーリに対するベルトの巻き掛け半径を変化させて変速比を連続的に変化させることのできるベルト式無段変速機や、エンジンと発電機能のあるモータと出力部材とを差動機構からなる動力分割機構に連結し、そのモータによってエンジンの回転数を連続的に変化させるいわゆるハイブリッド機構によって構成された無段変速機であってもよい。これら無段変速機を搭載した車両では、設定するべき複数の変速比もしくはギヤ段(以下、これらをまとめて単にギヤ段と記す場合がある。)を予め決めておき、それらのギヤ段の間で変速を実行することにより、有段的に変速を行うように構成してよい。
自動変速機2における変速は、電子制御装置(ECU)5により制御される。ECU5は、この実施形態におけるコントローラに相当し、例えばマイクロコンピュータを主体にして構成され、入力されたデータや、予め記憶しているデータを使用して演算を行い、演算の結果を制御指令信号として出力するように構成されている。入力されるデータは、図示しない各種のセンサによって得られたデータであって、車速Vやアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度ACCがその例である。アクセル開度ACCはこの実施形態における駆動要求量に相当している。また、予め記憶しているデータは、変速比を段階的に変化させる変速マップや後述する中継ギヤ段を選択するための制御マップなどである。
変速マップは、従来の有段変速機の変速制御装置で採用されているものであってよく、車速Vとアクセル開度ACC(駆動要求量)とによってギヤ段が決められている。図2にはその一例を模式的に示してあり、横軸に車速Vを採り、縦軸にアクセル開度ACCを採ってある。屈曲している実線はアップシフト線であり、車速Vとアクセル開度ACCとによって決まる走行状態がそのアップシフト線を図2の左側から右側に、もしくは上側から下側に横切るように変化することによりアップシフトの判断が成立し、設定するべきギヤ段が決まるように構成されている。なお、ダウンシフト線はアップシフト線に対して所定のヒステリシスがあるように設定されているが、図2では省略してある。車速Vがダウンシフト線を高車速側から低車速側に横切るように変化した場合、およびアクセル開度ACCがダウンシフト線を低開度側から高開度側に横切るように変化した場合に、ダウンシフトの判断が成立し、設定するべきギヤ段が決まるようになっている。なお、車速Vおよびアクセル開度ACCによって決まる走行状態が、複数本のアップシフト線もしくはダウンシフト線を横切るように変化した場合には、二段階以上の変速を実行することになる。また、この実施形態において、変速やギヤ段を判断するための走行状態は、車速Vに替えてこれに相当する他の所定の回転部材の回転数や、アクセル開度ACCに替えてこれに相当する検出データによって求めてもよい。
この実施形態における制御マップは、運転者の加速意図に適するギヤ段を選択するためのものであり、その一例を図3に模式的に示してある。ここに示す制御マップは、停滞時間Tと刺激強度Miとによって領域を定義し、その領域として応答領域Arと加速領域Aaとを設定したマップである。
停滞時間Tは、車両の加速度(特に前後加速度)Gを変化させる要因が生じた時点から加速度Gが変化し始めたことを運転者(搭乗者)が体感するまでの時間である。この停滞時間Tには、制御上の遅延時間や車種あるいは車格ごとの加速特性による応答時間などが含まれる。また、刺激強度Miは、停滞時間Tの直後に生じる加速度の変化量ΔGとその時間変化率(ジャーク)Jとによって決まる物理量であり、図3に示す例では、加速度Gの変化量ΔGとジャークJとの積(ΔG×J)としてある。なお、以下の説明では、刺激強度を、「Δ」を付さずに、単に「GJ」と記すことがある。
より具体的に説明すると、図4は所定のギヤ段Aで走行している際にアクセルペダルが踏み込まれるなどの加速操作が行われて要求駆動力が増大し、それに伴って加速度Gが増大し、さらに加速要求を満たすべく二段の変速が実行された場合の停滞時間T、加速度G、ジャークJの変化の一例を模式的に示している。横軸が時間を示し、縦軸が加速度Gを示している。なお、図4には、変速指示されるギヤ段の変化を併記してある。t0 時点にアクセルペダルが踏み込まれて要求駆動力が増大する(アクセルON)とエンジントルクが増大して加速度Gが増大し、t1 時点に運転者が加速度Gの増大を感じる。したがって、t1 時点は実際の車両を使用した官能試験によって決まる。加速操作(要求駆動力の増大のための要因)の発生した上記のt0 時点から加速度Gの増大を体感し始めるt1 時点までの間は、駆動力の変化が小さいことにより駆動力の変化(加速度Gの増大)を体感できない期間であり、これが停滞時間T1 である。この停滞時間T1 は、本発明者等による試験によれば、車速に応じて異なっており、高車速ほど長くなる。
エンジントルクの増大によって加速度Gが増大する。その場合に到達する加速度は、アクセル開度ACCやその時点のギヤ段Aなどに応じた値になる。また、アクセル開度ACCや車速Vの増大によって中継ギヤ段Bに向けた変速(ダウンシフト)が行われ、その変速の間の加速度Gはほぼ一定になり、その平均値が「G1」で示されている。このように加速度Gの変化の仕方もしくは変化量あるいは変化率が変わって加速度Gがほぼ一定になることにより、運転者には定位反応が生じる。ここで定位反応とは、運転者が加速度Gの増大を予想しているときに、予想しなかった事態(新奇刺激)が生じ、その新奇刺激を改めて注目する生物的な防衛反応である。図4に示す例では、運転者が加速度Gの変化(増大)を予想していたにも拘わらず、加速度Gが「G1 」に留まって変化(増大)しないことが新奇刺激となり、定位反応が発生することになる。以下に説明する加速度G2 に変化して一時的に留まる場合も同様の定位反応が発生することになる。
そのような定位反応(体感)が発生した時点を図4では「t2 時点」として示してある。そして、上記のt1 時点からt2 時点までの間の加速度Gの時間変化率がジャークJ1 である。このジャークJ1 は、t1 時点から加速度Gが上記の平均値G1 になるまで、最小二乗法により求めた近似線の傾きとして算出できる。上記の平均値G1 (すなわち加速度Gの変化量ΔG)とジャークJ1 とは、加速操作によって生じ、これらの積が刺激強度Miである。
ギヤ段Aでは加速要求に応じた駆動力を得られないのであるから、要求駆動力の増大のために、低速側の中継ギヤ段Bに向けたダウンシフトの制御指令が出力される。そのダウンシフト指令に基づく変速が開始され、かつ加速度Gが増大し始めるまでには所定の時間を要し、その間は、加速度Gは従前の値G1 に停滞する。中継ギヤ段Bへのダウンシフトによる加速度Gの増大が体感される時点t3 までの経過時間、すなわち上記のt2 時点からt3 時点までの間の時間が停滞時間T2 である。この停滞時間T2 は、前述した最初の停滞時間T1 と同様に、車速に応じて異なっており、高車速ほど長くなる。
中継ギヤ段Bにおいても加速操作が行われているので、その中継ギヤ段Bの変速比に応じて加速度Gが増大し、その時点のエンジントルクや変速比に応じた加速度G2 になる。この加速度G2 は、前述した加速度G1 と同様に、停滞時間T3 の間での加速度Gの平均値である。この加速度G2 に達したことは、加速度Gの増大が一時的に低下することによる定位反応として体感される。そのような定位反応(体感)が発生した時点を図4では「t4 時点」として示してある。そして、上記のt3 時点からt4 時点までの間の加速度Gの時間変化率がジャークJ2 である。このジャークJ2 は、t3 時点から加速度Gが上記の平均値G2 になるまで、最小二乗法により求めた近似線の傾きとして算出できる。上記の各平均値G1 ,G2 の差(すなわち加速度Gの変化量ΔG)とジャークJ2 とは、加速操作に基づくダウンシフトによって生じ、これらの積が刺激強度Miである。
中継ギヤ段Bでの加速度Gが上記の所定の加速度G2 に達した際に、要求駆動力の増大のために、低速側の目標ギヤ段Cに向けたダウンシフトの制御指令が出力される。前回のダウンシフトと同様に、そのダウンシフト指令に基づく変速が開始され、かつ加速度Gが増大し始めるまでには所定の時間を要し、その間は、加速度Gは従前の値G2 に停滞する。目標ギヤ段Cへのダウンシフトによる加速度Gの増大が体感される時点t5 までの経過時間、すなわち上記のt4 時点からt5 時点までの間の時間が停滞時間T3 である。この停滞時間T3 は、前述した各停滞時間T1 ,T2 と同様に、車速に応じて異なっており、高車速ほど長くなる。
目標ギヤ段Cへの変速が実行されて変速比が大きくなることにより加速度Gが増大し、ついには加速操作に応じた最大加速度G3 になる。この加速度G3 に達したことは、加速度Gの増大が一時的に低下することによる定位反応として体感される。そのような定位反応(体感)が発生した時点を図4では「t6 時点」として示してある。そして、上記のt5 時点からt6 時点までの間の加速度Gの時間変化率がジャークJ3 である。このジャークJ3 は、t5 時点から加速度Gが最大値G3 になるまで、最小二乗法により求めた近似線の傾きとして算出できる。上記の各加速度G2 ,G3 の差(すなわち加速度Gの変化量ΔG)とジャークJ3 とは、加速操作に基づくダウンシフトによって生じ、これらの積が刺激強度Miである。
上記の停滞時間Tおよび刺激強度Miは、運転者の加速操作およびそれに伴う変速によって生じる車両の挙動あるいは運転者が体感される車両の挙動を表している。本発明者等による試験によれば、運転者もしくは搭乗者はそれらの値の大小や組み合わせに応じて、加速の良否や加速応答性の良否などの印象を抱くことが認められた。例えば、停滞時間Tが長くかつ刺激強度Miが大きい場合には、目標加速度(目標駆動力)を得ることができるものの、加速応答性が劣る印象を抱く。停滞時間Tを短くするために、二段階もしくは複数段階に変速を行うことが考えられ、その場合、第一段階目の変速による加速度の変化量と最終段階の加速度の変化量とが近似し、もしくは等しいと、一回の加速操作で、前記定位反応を挟んだ二回の変速感が生じ、違和感を抱く。
加速応答性は、加速操作に基づく何らかの変化を体感するまでの時間が長いことにより悪化し、また二段階の変速感は、加速度の変化を二回体感することにより生じると考えられる。そこでこの実施形態においては、加速操作に起因する変化を早期に体感させることにより加速感の遅れを抑制し、かつ目標ギヤ段に向けた加速度の変化すなわち刺激強度を十分に大きくして十分な加速感を生じさせるように構成した。具体的には、上記の停滞時間Tと刺激強度Miとによって定義される領域として、加速操作に基づく加速に向けた挙動の変化を迅速に生じさせ、かつその刺激強度は加速の開始を体感しない程度に抑制する応答領域Arと、停滞時間Tが短くかつ刺激強度Miが加速感を十分に生じさせ得る程度に大きい加速領域Aaとを制御マップに設定する。そして、その制御マップに基づいて中継ギヤ段を選択して、変速制御を行う。なお、応答領域Arは、刺激強度Miについての下限値および停滞時間Tについての上限値を限界値として設定される領域であり、図3に破線で示してある。また、加速領域Aaは、官能試験で等しい評価(もしくは近似した評価)となった点(刺激強度Miの線と停滞時間Tの線との交点)を結んだ線のうち、加速を体感できる下限値の点を結んだ線を加速限界値とする領域であり、図3に太い実線で示してある。
これらの領域Ar,Aaは、実車を使用した官能試験によって決められる。その試験に使用する車両は、加速度および加速応答時間などを多様に変化させて試験を行うために、駆動力源としてモータを搭載した車両であることが望ましい。停滞時間Tおよび刺激強度Miを様々に変えて加速走行を行い、それぞれの加速の良否を評価し、評価点数を付ける。評価点数が同じ、もしくは近似している点を結ぶことにより、図3に破線の曲線で示してある評価点数ラインが得られる。図3で上側の評価点数ラインが高い(良い)評価のラインである。なお、評価を行う運転者あるいは搭乗者は、テストドライバーや運転を職業とする者であることが好ましく、また人数は多いほど、好ましい。図3に示す結果から明らかなように、停滞時間Tが長いほど、また刺激強度Miが小さいほど、加速性に関する評価が悪い。すなわち、加速応答性が悪く、また意図した加速感を得られない。このような結果から、所定の評価点数以上の領域を、良好な加速感を得られる加速領域Aaとして設定する。
この発明の実施形態におけるコントローラは、上述した制御マップに基づいて以下に述べる中継ギヤ段Bを選択して変速制御を実行するように構成されている。図5はその制御例を説明するためのフローチャートである。図5において、車両の走行中にアクセルペダルが踏み込まれたことが検出されると(ステップS1)、現ギヤ段Aで前述した加速領域Aaの加速度変化を達成できるか否かが判断される(ステップS2)。このステップS2で肯定的に判断された場合には、変速(ダウンシフト)を行う必要がないので、特に制御を行うことなく、図5に示すルーチンを一旦終了する。
これとは反対にステップS2で否定的に判断された場合には、変速マップから目標ギヤ段Cが算出される(ステップS3)。現ギヤ段AにおいてもアクセルONとなることにより、所定の停滞時間Tの後に加速度Gが増大する。そのときの停滞時間TとジャークJと加速度Gの変化量とは、図4に符号「P1」を付して示したようになる。この符号「P1」で示される変速状態での刺激強度が、前述した図3に示す応答限界値を下回り、あるいは停滞時間が応答限界値を超えていれば、ステップS2で否定的に判断される。また、有段式の自動変速機では、現在の車速Vとアクセル開度ACCとを引数として変速マップ上のギヤ段が求められる。なお、変速マップに基づいて常時変速制御を行う有段自動変速機を対象とするコントローラにあっては、ステップS2の判断を行うことなく、直ちにステップS3で目標ギヤ段Cを求めることとしてもよい。
つぎに、目標ギヤ段Cへの変速で前述した加速領域Aaの加速度変化を達成できるか否かが判断される(ステップS4)。変速に要する時間(変速時間や遅れ時間)、発生可能なジャーク、所定時間内に達成できる加速度変化量などは、車両ごとに、また変化させるべき変速比の幅、さらにはアクセル開度などによってほぼ決まっており、これらのデータを予め用意してコントローラに記憶させておくことができるので、その記憶させてあるデータに基づいてステップS4の判断を行うことができる。このステップS4で肯定的に判断された場合には、特に制御を行うことなく、図5に示すルーチンを一旦終了する。その場合、目標ギヤ段Cが既に求められているので、従来の自動変速機で実行されている変速制御と同様の制御で目標ギヤ段Cへの変速が実行される。
これに対してステップS4で否定的に判断された場合には、中継ギヤ段Bが選択される(ステップS5)。アクセルペダルが大きく踏み込まれるなど駆動要求量が急速に増大し、それに伴って現ギヤ段Aに対して二段階以上離れた目標ギヤ段Cが算出された場合、現ギヤ段Aから目標ギヤ段Cに直ちに変速するとすれば、自動変速機2の機構上の制約や制御上の不可避的な遅れによって停滞時間Tが長くなる。その場合の停滞時間や刺激強度Miは、停滞時間Tについての上限値である応答限界値を超えて応答領域Arを外れたものとなる場合がある。このような場合にステップS4で否定的に判断される。
一方、中継ギヤ段Bは、現ギヤ段Aでの刺激強度と目標ギヤ段Cでの刺激強度との差に対する、現ギヤ段Aでの刺激強度と中継ギヤ段Bでの刺激強度との差の割合に基づいて選択される(ステップS5)。図4に示す例では、現ギヤ段Aでの刺激強度GJ1 は、加速度G1 とジャークJ1 との積で表される。中継ギヤ段Bでの刺激強度GJ2 は、中継ギヤ段Bで生じさせる加速度G2 から現ギヤ段Aで生じさせた加速度G1 を引き算した加速度偏差(G2 −G1 )にジャークJ2 を掛けたものとなる。目標ギヤ段Cでの刺激強度GJ3 は、目標ギヤ段Cで生じさせる加速度G3 から中継ギヤ段Bで生じさせた加速度G2 を引き算した加速度偏差(G3 −G2 )にジャークJ3 を掛けたものとなる。したがって、上記の現ギヤ段Aでの刺激強度と目標ギヤ段Cでの刺激強度との差に対する、現ギヤ段Aでの刺激強度と中継ギヤ段Bでの刺激強度との差の割合は、下記の式で表される。
Id=(GJ2 −GJ1 )/(GJ3 −GJ1 )
すなわち、中継ギヤ段Bでの刺激強度と現ギヤ段Aでの刺激強度との差を、目標ギヤ段Cでの刺激強度と現ギヤ段Aでの刺激強度との差で除した商が、上記の刺激強度の差の割合となる。この値を以下、仮に配分指標Idと言う。
Id=(GJ2 −GJ1 )/(GJ3 −GJ1 )
すなわち、中継ギヤ段Bでの刺激強度と現ギヤ段Aでの刺激強度との差を、目標ギヤ段Cでの刺激強度と現ギヤ段Aでの刺激強度との差で除した商が、上記の刺激強度の差の割合となる。この値を以下、仮に配分指標Idと言う。
本発明者等の研究によれば、上記の配分指標Idの値には、中継ギヤ段Bを経由したダウンシフトの際の加速感(加速応答性ならび変速ショックなどの加速時の総合的な官能評価)が最良になる極値(もしくは上限値、すなわち最大官能値)があることが判明した。図6は、横軸に上記の配分指標Idを採り、縦軸に各配分指標Idごとの官能評点Peを採った官能評価結果の一例を示している。ここで官能評点Peは、テストドライバーが加速感の良否を点数で表したものであり、複数のテストドライバーによる各配分指標Idごとの評価点の平均値を結んだ線で表している。図6に示すように、前記配分指標Idには官能評点Peが最大となる値がある。その最大値を与える配分指標Idの値は、車両の種類や変速前後のギヤ段あるいは車速などによって異なっているが、予め実車での試験あるいはシミュレーションなどによって求めておくことができる。すなわち、上記の配分指標Idの値は、現ギヤ段Aおよび目標ギヤ段Cが決まれば、予め記憶させてあるデータ(もしくはマップ)から求めることができる。
一方、各ギヤ段での加速度Gは、それぞれのギヤ段の変速比やアクセル開度ACC(もしくはエンジン1の吸入空気量)ならびに車速Vなどに基づいて求めることができ、さらに前述したジャークJは設計上、予め決めておくことができる。なお、変速ごとに加速度Gの変化の仕方が異なることによる違和感を避けるために、ジャークJは一定値としておくことが好ましい。そして、現ギヤ段Aおよび目標ギヤ段Cは、車両の現在のギヤ段の状態およびアクセル開度ACCや車速Vなどから知ることができる。そうすると、上記の配分指標Idの式のうち現ギヤ段Aでの刺激強度GJ1 および目標ギヤ段Cでの刺激強度GJ3 は、車両の走行状態や変速の内容などに基づいて求めることができる。したがって、配分指標Idの値、および現ギヤ段Aでの刺激強度GJ1 の値、ならびに目標ギヤ段Cでの刺激強度GJ3 の値が判るから、前述した配分指標Idの式から、中継ギヤ段Bでの刺激強度GJ2 を求めることができる。そして、その刺激強度GJ2 から中継ギヤ段Bで出力するべき加速度G2 が求まるから、その加速度G2 から、アクセル開度ACCや車速Vを加味して、中間ギヤ段Bの変速比を求めることができる。すなわち、その変速比に最も近い変速比のギヤ段が中継ギヤB段として選択される。
こうして選択された中継ギヤ段Bを経由して目標ギヤ段Cへの変速が実行される。その場合、現ギヤ段Aから中継ギヤ段Bへの変速は、刺激強度Miおよび停滞時間Tが前述した応答限界値以内となるように、すなわち前述した応答領域Arに入るように制御される。また、中継ギヤ段Bから目標ギヤ段Cへの変速は、刺激強度Miおよび停滞時間Tが前述した加速限界値を超えるように、すなわち前述した加速領域Aaに入るように制御される。
上述したように、この発明の実施形態である上記の制御を実施する変速制御装置によれば、現ギヤ段Aと目標ギヤ段Cとの間に中継ギヤ段Bを設定してダウンシフトを行う場合、現ギヤ段Aから中継ギヤ段Bに到る過程での変速制御の開始の応答遅れ感を解消もしくは低減できるとともに、中継ギヤ段Bから目標ギヤ段Cに到る過程での刺激強度か十分大きくなって加速感の豊かなダウンシフトを行うことができる。また、中継ギヤ段Bを設定するとしても、現ギヤ段Aから中継ギヤ段Bに到る過程での加速度もしくは刺激強度の変化と、中継ギヤ段Bから目標ギヤ段Cに到る過程での加速度もしくは刺激強度の変化とが大きく異なることになるので、変速が二回生じたように感じるいわゆる二段変速を防止もしくは抑制することができ、その点での違和感を防止できる。そして、中継ギヤ段Bを定量的に求めて選択することができるので、加速感が不足したり、いわゆる二段変速になったりすることを回避もしくは抑制して、良好なダウンシフトを行うことができる。
1…エンジン、 2…自動変速機、 5…電子制御装置(ECU)、 V…車速、 ACC…アクセル開度、 T,T1 ,T2 ,T3 …停滞時間、 Mi…刺激強度、 Ar…応答領域、 Aa…加速領域、 G,G1 ,G2 ,G3 …加速度、 J,J1 ,J2 ,J3 …加速度の時間変化率(ジャーク)、 A…現ギヤ段、 B…中継ギヤ段、 C…目標ギヤ段。
Claims (1)
- 要求駆動力の増大に基づいて所定のギヤ段から他のギヤ段にダウンシフトする際の加速度の増大量と前記加速度の時間増大率との積である刺激強度と、ダウンシフト指示から加速度が増大し始めるまでの停滞時間とを変数としたマップを備え、前記マップには、前記刺激強度の下限値および前記停滞時間の上限値として、変速制御の開始を感知できる応答限界値と、加速を感知できる下限値である加速限界値とが定められ、現ギヤ段から中継ギヤ段を経由して目標ギヤ段への変速を行う場合に前記中継ギヤ段を前記マップに基づいて求める自動変速機の変速制御装置において、
前記中継ギヤ段を、下記の条件を満たすギヤ段に設定するように構成されていることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
(条件)
現ギヤ段から前記中継ギヤ段にダウンシフトする際に前記現ギヤ段で生じる前記刺激強度と前記停滞時間とが前記応答限界値以内となり、かつ
前記中継ギヤ段から前記目標ギヤ段にダウンシフトする際の前記停滞時間および前記目標ギヤ段で生じる前記刺激強度が前記加速限界値を超え、さらに
前記中継ギヤ段での前記刺激強度と前記現ギヤ段での前記刺激強度との差を、前記目標ギヤ段での前記刺激強度と前記現ギヤ段での前記刺激強度との差で除した商である配分指標が、前記目標ギヤ段への変速による加速感が最良と感じられる最大官能値となる。
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JP2015220613A JP2017089755A (ja) | 2015-11-10 | 2015-11-10 | 自動変速機の変速制御装置 |
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JP2020118221A (ja) * | 2019-01-23 | 2020-08-06 | マツダ株式会社 | 車両の変速制御装置および方法 |
-
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- 2015-11-10 JP JP2015220613A patent/JP2017089755A/ja active Pending
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