JP2017089670A - ブレーキディスクロータ - Google Patents
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Abstract
【課題】高温時のディスクロータとブレーキパッドとの間の摩擦係数の低下を抑えるとともに低温時の摩擦係数の低下を抑えることが可能なブレーキディスクロータを提供する。【解決手段】ディスクロータは、一対の円板状摺動板間に放射状且つ直線状に延在し周方向等分に配設されるとともに円板状摺動板の対向面間を接続する複数の隔壁30及び複数の隔壁の端部であって円板状摺動板の内周側の端部から円板状摺動板の内周側に延出する延出部40を備える。この延出部は、円板状摺動板の回転方向A3側に配設され且つ第1熱膨張率を有する第1部材41と、回転方向とは反対側に配設され且つ第2熱膨張率を有する第2部材42と、により構成される。加えて、延出部は、延出部の温度が第1温度であるときは円板状摺動板の回転方向側に傾斜し、第1温度よりも大きい第2温度であるときは回転方向と反対側に傾斜する。【選択図】図7
Description
本発明は、車両用ディスクブレーキ装置のブレーキディスクロータに関する。
ブレーキディスクロータ(以下、単に「ディスクロータ」と称呼する。)が用いられるディスクブレーキ装置において、ブレーキ作動中に発生する摩擦熱によりディスクロータが高温になると、ディスクロータとブレーキパッドとの間の摩擦係数が低下して制動力が低下する。そこで、従来から、ディスクロータの放熱性を高める構造の提案が多くなされている。
従来のディスクロータの一つ(以下、「従来ディスクロータ」と称呼する。)は、放熱性を高めるため、一対の円板状摺動板と複数の隔壁とにより形成される通路の出口近傍である円板状摺動板の外周部に突起部を設けている。この突起部により通路の出口における空気流の流れを変化させることによってディスクロータの冷却性能を向上させている(例えば、特許文献1を参照。)。
ところで、ディスクロータとブレーキパッドとの間の摩擦係数はディスクロータが高温になると低下するが、実際には、図5に示したように温度T2においてピークμ2を有する。換言すると、前記摩擦係数は、ディスクロータの温度が温度T2に対して低くなるほど低下し、更に、温度T2に対して高くなるほど低下する。
そのため、例えば、長い下り坂走行時等において連続して或いは頻繁にブレーキが使用される場合、ディスクロータ及びブレーキパッドの温度は温度T2以上となる。よって、このときの摩擦係数はそのピークμ2よりも低くなる。これに対し、通常の市街地走行においてはディスクロータ及びブレーキパッドの温度は温度T2よりも低い。よって、このときの摩擦係数はそのピークμ2よりも低くなる。更に、電動機による走行が可能な電動車両(ハイブリッド車両を含む。)においては、回生ブレーキによる減速も行われるためディスクブレーキ装置の使用機会が減少する。よって、電動車両のディスクロータの温度は内燃機関のみを駆動源として有する車両のディスクロータの温度よりも低くなり、通常の市街地走行等において摩擦係数は更に低くなる傾向がある。
つまり、従来ディスクロータは、ディスクロータの温度が高い場合(温度T2より高い場合)には摩擦係数を増加させるのに効果的であるが、ディスクロータの温度が低い場合(温度T2より低い場合)には、むしろ摩擦係数を低下させてしまうという問題があった。換言すれば、従来ディスクロータは、ディスクロータが低温であるときの摩擦係数の温度依存性を考慮していなかった。
本発明は上記問題に対処するために為されたものである。即ち、本発明の目的の一つは、高温時のディスクロータとブレーキパッドとの間の摩擦係数の低下を抑えるとともに低温時の摩擦係数の低下を抑えることが可能なブレーキディスクロータを提供することにある。
本発明のブレーキディスクロータは、車両用ディスクブレーキ装置に用いられ、一対の円板状摺動板(インナ側摺動板21及びアウタ側摺動板22)、及び複数の隔壁(30)を備える。
前記一対の円板状摺動板は、それぞれの摺動面と反対側の面同士が対向するように回転軸(C)方向に離間配置される。
前記複数の隔壁は、前記円板状摺動板に対して放射状且つ直線状に延在し周方向等分に配設されるとともに前記円板状摺動板の対向面間を接続する。
前記複数の隔壁は、前記円板状摺動板に対して放射状且つ直線状に延在し周方向等分に配設されるとともに前記円板状摺動板の対向面間を接続する。
更に、前記ブレーキディスクロータは延出部(40)を備える。
前記延出部は、前記複数の隔壁のそれぞれの端部であって前記円板状摺動板の内周側の端部(30a)に基部(40a)が接合されるとともに同端部から同円板状摺動板の内周側に延出し且つ前記円板状摺動板との間に所定の隙間(D)を有するように配設される。
前記延出部は、前記複数の隔壁のそれぞれの端部であって前記円板状摺動板の内周側の端部(30a)に基部(40a)が接合されるとともに同端部から同円板状摺動板の内周側に延出し且つ前記円板状摺動板との間に所定の隙間(D)を有するように配設される。
このブレーキディスクロータには、前記一対の円板状摺動板と前記複数の隔壁と前記延出部とにより複数の空気通路(50)が形成される。
更に、前記延出部は、前記回転軸と平行であり且つ前記基部を通る面(43)により前記円板状摺動板の周方向において第1部材(41)と第2部材(42)とに2分割される。
前記第1部材は、前記2分割された一方の部材であって前記車両が前進している場合の前記円板状摺動板の回転方向(A3)側に配設されるとともに第1熱膨張率を有している。
前記第2部材は、前記2分割された他方の部材であって前記回転方向とは反対側に配設され且つ前記第1部材と接合されるとともに前記第1熱膨張率よりも小さい第2熱膨張率を有している。
加えて、前記延出部は、前記延出部の温度が第1温度であるとき前記延出部の先端部(40c)が前記基部よりも前記回転方向側に位置するように前記延出部が前記隔壁に対し傾斜し、且つ、前記延出部の温度が前記第1温度よりも高い第2温度であるとき前記先端部が前記基部よりも前記回転方向と反対側に位置するように前記延出部が前記隔壁に対し傾斜するように構成される。
これによれば、延出部の温度が第1温度(「摩擦係数がピークとなる温度T2」より低い温度)であるときは、延出部が隔壁に対し円板状摺動板の回転方向側に傾斜することにより空気通路内の広い範囲に「よどみ」を発生させて放熱性を低下させる。その結果、ディスクロータの温度が低下しにくくなるので摩擦係数の低下を抑えることができる。一方、延出部の温度が第2温度(「摩擦係数がピークとなる温度T2」より高い温度)であるときは、延出部が隔壁に対し円板状摺動板の回転方向とは反対側に傾斜することにより空気通路内の広い範囲に層流を発生させて放熱性を向上させる。その結果、本発明のディスクロータは温度が上昇しにくくなるので摩擦係数の低下を抑えることができる。このように、本発明のディスクロータは、高温時の摩擦係数の低下を抑えるとともに低温時の摩擦係数の低下を抑えることができる。
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係るディスクロータについて説明する。
本発明の実施形態に係るディスクロータ(以下、「ディスクロータ1」とも称呼する。)は、図1に示したように、車軸ASに固定され、車輪DWとともに車軸ASと一体回転するようになっている。車輪DWの内側にはナックルNHに固定されたダストシールドDSが配設され、ディスクロータ1を備える車両が矢印A1の方向(前進方向)に向かって走行すると、矢印A2により示したように空気取入口ILからディスクロータ1の内周部IRへと空気が流れ込むようになっている。
図2は、ディスクロータ1の車軸ASの中心(回転軸C)に沿った断面図であり、図3は、図2に示したディスクロータ1のA−A断面図である。ディスクロータ1は、円板状摺動板20、隔壁30及び延出部40を備える。
一対の円板状摺動板20は、回転軸C方向において離間配置される。円板状摺動板20は、車体側(内側)の摺動板(以下、「インナ側摺動板」とも称呼する。)21及び外側の摺動板(以下、「アウタ側摺動板22」とも称呼する。)22により構成され、それぞれの対向面(21a及び22a)と反対側の面が摺動面(21b及び22b)となっている。円板状摺動板20は鋳鉄でできている。
インナ側摺動板21及びアウタ側摺動板22の摺動面21b及び22bは図1に示したブレーキパッドBPと離間して対向している。車両の運転者が図示しないブレーキペダルを踏み込むと、摺動面21b及び22bとブレーキパッドBPとが当接し、摩擦により制動力が発生するようになっている。
アウタ側摺動板22は、ハット部23を介して固着用の穴を有するボス部24と一体に成形されている。インナ側摺動板21及びアウタ側摺動板22の厚さは一定であり、インナ側摺動板21の厚さとアウタ側摺動板22の厚さは同一である。
図3に示したように、隔壁30は、円板状摺動板20(インナ側摺動板21とアウタ側摺動板22)に対して放射状且つ直線状に延在し周方向等分に配設される。図2に示したように、隔壁30は、円板状摺動板20の対向面間(21a−22a間)を接続する。隔壁30は鋳鉄でできており、円板状摺動板20と一体に成型される。
図4に示したように、隔壁30の端部であって円板状摺動板20の内周側の端部(以下、「内周側端面」とも称呼する。)30aは平面形状であり、その平面は円板状摺動板20の厚さ方向に対して平行であり、且つその平面の法線は円板状摺動板20の半径方向に対して平行である。隔壁30の外周側端30bは、円筒側面形状となっている。
延出部40は、図4(A)及び図4(B)に示したように、隔壁30の内周側端面30aに基部40aが接合される。延出部40は、内周側端面30aから円板状摺動板20の内周側に延出する。
後に詳述するように、延出部40は、延出部40の温度によってその先端部40cが基部40aに対する位置を変えるように構成される。具体的には、延出部40は、円板状摺動板20との間に所定の隙間Dをあけて配設される(図2を参照。)。即ち、延出部40の基部40aは隔壁30に固定されているが、延出部40は円板状摺動板20には固定されない。延出部40は、円板状摺動板20の内周側から流入する空気流を空気通路50へガイドする役割を有しているから、隙間Dは延出部40の温度による変形を妨げない程度に小さく設定される。
延出部40は、ディスクロータ1の冷間時(常温時)において、先端部40cが基部40aよりも車両前進時の円板状摺動板20の回転方向側(矢印A3にて示される方向)に位置するように隔壁30に対し傾斜している。以下、「回転方向A3」とは車両前進時の円板状摺動板20の回転方向を表す。
延出部40は、車軸AS(即ち、ディスクロータ1の回転軸C)と平行であり且つ基部40aを通る面43により円板状摺動板20の周方向において第1部材41と第2部材42とに2分割される。第1部材41は、2分割された一方の部材であって、回転方向A3側に配設される。第1部材41は第1熱膨張率を有している。
第2部材42は、2分割された他方の部材であって、回転方向A3とは反対側に配設される。第2部材42は第1熱膨張率よりも小さい第2熱膨張率を有している。第1部材41と第2部材42とは面43にて互いに接合している。以下、面43は「接合面43」と称呼される。
延出部40の回転方向A3の厚さは隔壁30の回転方向A3の厚さと同一である。第1部材41と第2部材42の回転方向の厚さは等しく、それぞれ隔壁30の厚さの半分である。
延出部40は、基部40aにおける「第1部材41と第2部材42との接合境界点40bを通り且つ円板状摺動板20の半径方向と平行な線分L1」と「接合境界点40bと、先端部40cにおける第1部材41と第2部材42との接合境界点40dと、を通る線分L2」とのなす角がφとなるように構成されている。
線分L2は線分L1に対して回転方向A3側に傾斜している。即ち、延出部40は、隔壁30の内周側端面30aから回転方向A3側に傾斜して延出している。なお、基部40aの接合境界点40bを通り円板状摺動板20の厚さ方向に平行な線分L3と線分L1とは垂直である。以下、線分L1と線分L2とがなす角度φは「傾斜角φ」と称呼される。
第1部材41はアルミニウムでできており、第2部材42は鋳鉄でできている。アルミニウムの熱膨張率は20℃において23.9(×10−6/℃)であり、鋳鉄の熱膨張率は20℃において10.5(×10−6/℃)である。第1部材41と第2部材42との接合方法は、材料を加熱及び加圧することにより貼り合わせる拡散接合、ろう材により接合するろう付け及び溶接等の周知の方法が用いられる。接合された第1部材41及び第2部材42(延出部40)は基部40aにおいて、隔壁30の内周側端面30aとろう付け及び溶接等の周知の方法により接合される。
再び図3を参照すると、インナ側摺動板21、アウタ側摺動板22、隔壁30及び延出部40により、空気通路50が形成されている。以下、空気通路50は単に「通路50」とも称呼される。通路50の一端部であって円板状摺動板20の内周側の端部には、通路50の入口開口51が形成されている。通路50の他の端部であって円板状摺動板20の外周側の端部には出口開口52が形成されている。
隔壁30及び延出部40は空気流を入口開口51から通路50に導入し、出口開口52から流出させるためのフィン60を構成している。
次に、ディスクロータ1の作用について説明する。図5に示したように、ディスクロータ1とブレーキパッドBPとの間の摩擦係数は温度依存性を有する。即ち、その摩擦係数は、ディスクロータ1及び/又はブレーキパッドBPの温度に応じて変化する。この摩擦係数は、以下において、「ディスクロータ1の摩擦係数μ」又は単に「摩擦係数μ」と称呼される。
より具体的に述べると、冷間時の温度(常温)T1におけるディスクロータ1の摩擦係数μはμ1である。本ディスクロータ1が適用された「ディスクブレーキ装置」が作動すると、ディスクロータ1のブレーキパッドBPに対する摺動により摩擦熱が発生し、ディスクロータ1の温度が上昇する。冷間時の温度T1からディスクロータ1の温度が上昇するにつれて摩擦係数μは上昇するが、温度がT2のときにピークに達し(μ2)、更にディスクロータ1の温度が上昇すると摩擦係数μはピーク値μ2から低下していく。
摩擦係数μがピーク値μ2となる温度T2は、200〜250℃である。この温度は、通常のブレーキの作動によって到達し得る温度(即ち、常用温度域)である。つまり、摩擦係数μは、常用温度域において高くなるように設定されている。高温時に摩擦係数μが低下するのは所謂「フェード現象」が主たる原因である。
ところで、前述したように、第1部材41の熱膨張率(第1熱膨張率)は第2部材42の熱膨張率(第2熱膨張率)よりも大きい。従って、ディスクブレーキ装置の作動により発生する摩擦熱によりディスクロータ1の温度が上昇したとき、第1部材41の伸び量は第2部材42の伸び量よりも大きい。延出部40は円板状摺動板20に当接していないので、延出部40はディスクロータ1の温度が上昇すると、円板状摺動板20には拘束されることなく第2部材42側(即ち、回転方向A3と反対側)に反る(変形する)。延出部40は、冷間時(常温時)には、回転方向A3側に傾斜して円板状摺動板20の内周側に延出しているから、ディスクロータ1の温度が上昇するにつれて、延出部40の傾斜角φの値は小さくなる。即ち、延出部40の傾斜角φは低温時には正の値を示すが、高温時には負の値を示す。
図6に示したように、延出部40は、ディスクロータ1の温度が「低温時と高温時の中間の温度T2」であるときに直線状になり、従って、隔壁30及び延出部40からなるフィン60の形状が直線状となるように、第1部材41の大きさ及び第1熱膨張率と、第2部材42の大きさ及び第2熱膨張率と、が調整されている。図6において、説明の便宜上、図中上方の隔壁30及び延出部40を第1フィン61と称呼し、図中下方の隔壁30及び延出部40を第2フィン62と称呼する。
このとき、ディスクロータ1の回転により入口開口51に右斜め上方より流入した空気流AFは、第1フィン61の負圧面61a側において第1フィン61の厚さ方向に剥離を起こす。その結果、通路50内においては、第1フィン61の負圧面61a側に広い範囲にわたって「よどみ」STが発生し、空気流AFの層流域LFが比較的狭くなる。
この場合、層流域LFが狭くなるため、空気流AFの「圧力損失」が大きくなる。よって、ディスクロータ1の送風能力及び冷却効率が低下するとともに、冷却面積が小さくなるため総放熱量が減少する。即ち、フィン60(第1フィン61及び第2フィン62)の回転方向A3側の面は空気流AFにより冷却されるが、回転方向A3と反対側の面(負圧面)は「よどみ」STにより殆ど冷却されない。
これに対し、図7(A)に示したように、ディスクロータ1の温度が低温であるとき(温度T2よりも低いとき)、延出部40の先端部40cが回転方向A3側に傾斜するように、第1部材41の大きさ及び第1熱膨張率と、第2部材42の大きさ及び第2熱膨張率と、が調整されている。従って、入口開口51から流入する空気流AFの一部は、第2フィン62の屈曲部(隔壁30と延出部40との接合部分)の近傍である領域Aにおいて乱れを生じて渦流となり、「よどみ」STが発生する。一方、第1フィン61の負圧面61aの下部には、前述の説明と同様に大きな剥離が発生して広い範囲にわたり「よどみ」STが発生する。その結果、通路50を通過する空気流AFは、層流域LFが極めて狭くなるので、放熱効果が極めて低い状態となる。従って、低温時にはディスクロータ1の冷却性能が極度に低下する。
即ち、低温時には、フィン60による冷却効果が小さくなり、ディスクブレーキ装置の作動により発生した摩擦熱によってディスクロータ1の温度が低下しにくくなる。従って、ディスクロータ1の摩擦係数μが低下しにくくなる。
一方、図7(B)に示したように、ディスクロータ1の温度が高温であるとき(温度T2以上のとき)、延出部40の先端部40cが回転方向A3と反対側に傾斜するように、第1部材41の大きさ及び第1熱膨張率と、第2部材42の大きさ及び第2熱膨張率と、が調整されている。従って、延出部40の側面部40eが空気流AFの流入方向に対面する。空気流AFの一部は延出部40の側面部40eから延出部40の先端部40cに沿って流れ、更に先端部40cを回り込んで流れる。このように延出部40の形状に沿って曲げられた空気流AFは第1フィン61の屈曲部近傍の領域Bにおいて一旦剥離するが、第1フィン61の負圧面61aにある領域Cにて第1フィン61に再付着する。
その結果、通路50を通過する空気流AFは、領域Bにおいて僅かに「よどみ」STが発生するものの、層流域LFが広く、放熱効果が高い空気流となる。即ち、高温時にはフィン60による冷却効果が増大してディスクロータ1の温度が低下し、ディスクロータ1の摩擦係数μが高まることが期待される。
以上、説明したように、ディスクロータ1は低温時(摩擦係数μがピークとなる温度T2より低いとき)には、延出部40が回転方向A3側に傾斜することにより通路50内に「よどみ」を広い範囲に発生させる。これにより放熱性が低下して、ディスクロータ1の温度が低下しにくくなるので摩擦係数μの低下が抑えられる。一方、高温時(摩擦係数μがピークとなる温度T2以上より高いとき)には、延出部40が回転方向A3と反対側に傾斜することにより通路50内の空気の流れを良好にして「層流域」LFを広い範囲に発生させる。これにより放熱性が高くなり、ディスクロータ1の温度が低下するので摩擦係数μの低下が抑えられる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
第1部材41と第2部材42の組合せはアルミニウムと鋳鉄に限らない。例えば、第1部材を鋳鉄とし、第2部材をインバー(20℃における熱膨張率は2×10−6/℃程度)又はカーボン(20℃における熱膨張率は0.6〜4.3×10−6/℃)としてもよい。
更に、第1部材又は第2部材のうちのどちらかが鋳鉄である場合には、隔壁30と一体に成形し、残りの部材(第1部材又は第2部材)をろう付け及び溶接等により接合してもよい。
1…ディスクロータ、20…円板状摺動板、21…インナ側摺動板、22…アウタ側摺動板、30…隔壁、40…延出部、41…第1部材、42…第2部材、50…空気通路、60…フィン、AF…空気流、DS…ダストシールド、DW…車輪、LF…層流域、ST…よどみ。
Claims (1)
- それぞれの摺動面と反対側の面同士が対向するように回転軸方向において離間配置された一対の円板状摺動板、及び
前記円板状摺動板に対して放射状且つ直線状に延在し周方向等分に配設されるとともに前記円板状摺動板の対向面間を接続する複数の隔壁、
を備えた車両用ディスクブレーキ装置のブレーキディスクロータであって、
前記複数の隔壁のそれぞれの端部であって前記円板状摺動板の内周側の端部に基部が接合されるとともに同端部から同円板状摺動板の内周側に延出し且つ前記円板状摺動板との間に所定の隙間を有するように配設された延出部を備え、
前記一対の円板状摺動板と前記複数の隔壁と前記延出部とにより複数の空気通路が形成され、
前記延出部は、
前記回転軸と平行であり且つ前記基部を通る面により前記円板状摺動板の周方向において2分割され、前記2分割された一方の部材であって前記車両が前進している場合の前記円板状摺動板の回転方向側に配設された第1部材が第1熱膨張率を有し、前記2分割された他方の部材であって前記回転方向側とは反対側に配設され且つ前記第1部材と接合された第2部材が前記第1熱膨張率よりも小さい第2熱膨張率を有してなり、
前記延出部の温度が第1温度であるとき前記延出部の先端部が前記基部よりも前記回転方向側に位置するように前記延出部が前記隔壁に対し傾斜し、且つ、前記延出部の温度が前記第1温度よりも高い第2温度であるとき前記先端部が前記基部よりも前記回転方向と反対側に位置するように前記延出部が前記隔壁に対し傾斜するように構成された、
ブレーキディスクロータ。
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