JP2017088567A - 抗rnaウイルス剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ダイゼイン、ダイゼイン配糖体、グリシテイン、グリシテイン配糖体、大豆加工品、裸麦加工品、及びはと麦加工品から選ばれる少なくとも一種を含有する抗RNAウイルス剤。
【選択図】図1
Description
これらのウイルスによる疾患の治療又は予防のために、抗ウイルス剤及びワクチン等が開発されている。抗ウイルス剤のメカニズムとしては、ウイルス複製の様々な段階を抑えるものがあり、例えばウイルス粒子の宿主細胞膜への付着を防止するもの、ウイルス核酸の脱殻に干渉するもの、細胞受容体又はウイルス複製に必要な因子を阻害するもの、ウイルスに特異的な酵素又はタンパク質を阻害するもの、ウイルスの細胞外への放出を抑えるもの等がある。しかし、現在知られている抗ウイルス剤及びワクチン等には、薬剤耐性株が出現すること、予防効果が低いこと、副作用があること等の問題がある。
ロタウイルスは、小児下痢症ウイルスの最も主要なものである。ロタウイルス感染症の制御のために、弱毒化生ワクチン(ロタテック(登録商標),ロタリックス(登録商標)等)が開発されているが、ワクチン株が有効な血清型の遺伝子型が限定的である。このように、ロタウイルス治療に広く有効な抗ウイルス剤及びワクチンがない。
そこで、RNAウイルスに広く有効であり、既存の抗RNAウイルス剤とは異なる作用機序による抗RNAウイルス剤が求められている。
はと麦に関しては、非特許文献1に、はと麦の子実である漢方薬のヨクイニンが浮腫、リウマチ、神経痛、疣取りなどに用いられ、また細胞傷害性T細胞を活性化して抗ウイルス作用がもたらされると記載されている。特許文献2の請求項4には、はと麦の殻、薄皮及び渋皮を発酵処理又は酵素処理したものがヒト乳頭腫ウイルス性疾患の治療剤として有用であることが記載されている。しかし、ヒト乳頭腫ウイルスはDNAウイルスであり、はと麦の加工品がインフルエンザウイルス、ロタウイルス等のRNAウイルスに対して抗RNAウイルス作用を示すかは知られていない。
[1] ダイゼイン、ダイゼイン配糖体、グリシテイン、グリシテイン配糖体、大豆加工品、裸麦加工品、及びはと麦加工品から選ばれる少なくとも一種を含有する抗RNAウイルス剤。
[2] インフルエンザウイルス又はロタウイルスに対する抗RNAウイルス剤である、[1]に記載の抗RNAウイルス剤。
本発明の抗RNAウイルス剤には、ダイゼイン、ダイゼイン配糖体、グリシテイン、グリシテイン配糖体、大豆加工品、裸麦加工品、及びはと麦加工品から選ばれる少なくとも一種が含まれる。ダイゼイン、ダイゼイン配糖体、グリシテイン及びグリシテイン配糖体は市販されているものを用いることができる。ダイゼイン配糖体としては、ダイゼインの配糖体が挙げられ、例えばダイジン等が挙げられる。グリシテイン配糖体としては、グリシテインの配糖体が挙げられ、例えばグリシチン等が挙げられる。ダイゼイン配糖体及びグリシテイン配糖体は、体内で加水分解されて、それぞれダイゼイン及びグリシテインが容易に生成される。
大豆加工品、裸麦加工品及びはと麦加工品としては、大豆、裸麦もしくははと麦の熱水抽出物、発酵物又は酵素処理物等が挙げられる。
また、熱水抽出する前に焙煎を行ってもよい。焙煎条件としては、例えば100〜250℃で30分間〜1日間が挙げられ、好ましくは140〜220℃で1〜12時間が挙げられ、より好ましくは160〜200℃で2〜6時間が挙げられる。
以上のようにして得た熱水抽出物は、そのまま水溶液として用いることができるが、溶媒を留去してエキス又は粉末としてもよい。大豆、裸麦又ははと麦の熱水抽出物として、例えばはと麦茶が挙げられる。
発酵物は、常法に従って調製することができるが、例えば、大豆、裸麦又ははと麦を水に加えて、一定時間浸した後、一定時間煮沸して、水分を留去する。前記の発酵に用いる菌を、水分を留去した組成物に添加し、発酵させて、その後、滅菌処理を施すことで、発酵物を調製することができる。
酵素処理物は、常法に従って調製することができるが、例えば、大豆、裸麦又ははと麦を粉砕し、水に加えて、前記の酵素を添加し、処理して、その後、遠心分離を施すことで、酵素処理物を調製することができる。
本発明の抗RNAウイルス剤は、RNAウイルスを原因とする症状を緩和するために用いることができる。RNAウイルスとしては、例えば、オルトミクソウイルス科RNAウイルス(インフルエンザウイルス等)、レオウイルス科(ロタウイルス等)、カリシウイルス科RNAウイルス(ノロウイルス、サポウイルス等)、アレナウイルス科RNAウイルス(ラッサウイルス等)、コロナウイルス科RNAウイルス(SARSウイルス等)、トガウイルス科RNAウイルス(風疹ウイルス等)、ノダウイルス科RNAウイルス(ウイルス性神経壊死症ウイルス等)、パラミクソウイルス科RNAウイルス(ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス等)、ピコルナウイルス科RNAウイルス(ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス等)、フィロウイルス科RNAウイルス(マールブルグウイルス、エボラウイルス等)、ブニヤウイルス科RNAウイルス(クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、重症熱性血小板減少症候群ウイルス等)、フラビウイルス科RNAウイルス(黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス等)、ラブドウイルス科RNAウイルス(狂犬病ウイルス等)等が挙げられる。好ましいRNAウイルスとしては、オルトミクソウイルス科RNAウイルス、レオウイルス科、カリシウイルス科RNAウイルス等が挙げられ、より好ましくは、インフルエンザウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス等が挙げられる。
本発明の抗RNAウイルス剤は、組成物として、例えば、経口的、全身的(例えば、経皮的、鼻腔内、坐剤等)、又は非経口的(例えば、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、点眼等)で投与することができる。組成物の剤型としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、ドライシロップ剤、トローチ剤、ドロップ剤、チュアブル剤、口腔内崩壊剤、発泡剤、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、エアゾール剤、液剤、軟膏、クリーム、点眼剤等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、結晶セルロース、粉末セルロース、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、二酸化ケイ素、硫酸カルシウム等が挙げられる。結合剤としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、部分アルファー化デンプン、プルラン、アラビアゴム、グアーゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、ポビドン、ポリビニルアルコール、ペクチン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプピルセルロース、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム、カルナウバろう、水素化植物油、鉱油等が挙げられる。流動化剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、酸化チタン等が挙げられる。
はと麦茶は、はと麦茶顆粒(三養)、市販されている3種類のはと麦茶(ゼンヤクノー、お茶の丸幸、伊藤園)を用いた。はと麦茶顆粒(三養)は規定量の蒸留水に溶解させ、0.45μmのフィルター(ザルトリウス・ステディム・ジャパン)で滅菌ろ過を行うことではと麦茶を調製した。3種類のはと麦茶(ゼンヤクノー、お茶の丸幸、伊藤園)は表記されている抽出方法に従って、熱水抽出をし、不要物をろ別し、0.45μmのフィルター(ザルトリウス・ステディム・ジャパン)で滅菌ろ過を行うことで3種類のはと麦茶を調製した。
<大豆> 黒千石(兵庫県産:こやま園)、丹波黒(兵庫県産:こやま園)、さやひかり(兵庫県産:こやま園)、とよまさり(北海道産:マルサンアイ)、きぬさやか(宮城県産:マルサンアイ)、ふくゆたか(九州産:マルサンアイ)、みやぎしろめ(宮城県産:マルサンアイ)、えんれい(北陸産:マルサンアイ)。
<裸麦> 品種不明(裸麦:滋賀県産:マルサンアイ)、みのりむぎ(六条大麦:岐阜県産:マルサンアイ)、みのりむぎ(六条大麦:滋賀県産:マルサンアイ)、ファイバースノウ(六条大麦:カナダ産:マルサンアイ)、品種不明(六条大麦:福井県産:マルサンアイ)。
<はと麦> あきしずく(島根県産:三養)、はとひかり(島根県産:三養)、品種不明(山形県産:三養)、はとじろう(宮城県産)、ハトユタカ(岩手県産)。
大豆、裸麦又ははと麦を粉砕し、180℃で4時間、焙煎した。得られたもの2gに50mlの蒸留水を加えて、80℃で50分間、熱水抽出した。不溶物をろ別して、0.45μmのフィルター(ザルトリウス・ステディム・ジャパン)で滅菌ろ過を行うことで、熱水抽出物を得た。なお、実験に使用するまで−20℃の冷凍庫で保管した。
また、はと麦については、発芽させずに焙煎して熱水抽出したもの、発芽させずにそのまま生で熱水抽出したもの、発芽させて焙煎して熱水抽出したもの、発芽させてそのまま生で熱水抽出したものの4種類の熱水抽出物も、調製した。
発酵豆乳は、以下のようにして調製した。無調整豆乳に植物性乳酸菌(ラクトバチルス・デルブリッキー TUA4408L)を添加し、43℃で16時間発酵後、凍結乾燥し、200mg/mlの量で蒸留水に溶解した。
ダイゼイン及びグリシテインは、和光純薬工業より購入した。
インフルエンザウイルスは、A(H1N1)型であるPR/8/34株、Beijing/262/95株、Suita/6/2007株、Suita/1/2009株、Suita/114/2011株、Osaka/2024/2009株、Osaka/71/2011株、及びA(H3N2)型であるSuita/120/2011株、Sydney/5/97株、及びB型であるNagasaki/1/87株、Shanghai/261/2002株を用いた。このうち、Osaka/2024/2009及びOsaka/71/2011はオセタミビル耐性株である。
また、マウスインフルエンザとして、A(H1N1)型NewCaledonia/20/29株を用いた。
24well平底プレート(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)にMDCK(Madin-Darby Canine Kidney)細胞を単層培養し、無血清の最小必須培地(MEM:シグマ・アルドリッチ)で2回洗浄した。0.04%ウシ血清アルブミン(BSA:和光純薬工業)含有MEM培地を用いて希釈したインフルエンザウイルス溶液0.001MOIを37℃で1時間吸着させた。無血清MEM培地で2回洗浄した後、2μg/mlのアセチルトリプシン及び0.4%BSAを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM:シグマ・アルドリッチ)に試験サンプルを500μl/wellの量で添加した。その後、CO2インキュベーター内でH1N1株では24時間、H3N2株及びB株では48時間、培養し、上清のみを回収して、インフルエンザウイルスを評価するサンプルとした。
PAP染色法は以下のようにして行った。乾燥させたエタノール固定済みのプレートにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて1000倍希釈した1次抗体(マウスモノクローナル抗HA抗体のH1N1:C179,H3N2:F49,B:7B11(阪大微生物研究所))を50μl/wellの量で添加し、37℃で30分間反応させた。PBSで2回洗浄し、PBSを用いて1000倍希釈した2次抗体(ホースラディッシュパーオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体(ミリポア社))を50μl/wellの量で添加し、室温にて10〜20分間反応させた。水道水で洗浄し、十分乾燥させた上で鏡検にてウイルス量のカウントを行った。
ロタウイルスは、Wa株(G1P[8])を用いた。試験サンプルを15ml遠心チューブ(Violamo:アズワン社)で段階希釈した。12穴プレートに単層培養したアカゲザル腎細胞(MA-104)に、2.0×104FFU/mlのロタウイルス(200μl)を接種し、1時間、37℃でインキュベートした。ウイルス溶液を除去し、1回洗浄し、試験サンプルと終濃度1μg/mlのアセチルトリプシン含有無血清MEM培地の混合液を添加した。3日間培養し、上清を回収して、ロタウイルスを評価するサンプルとした。
ウイルスの希釈には、0.2%アルブミン(fraction V:シグマ・アルドリッチ)を含むMEMを用いた。MA-104細胞懸濁液100μl/well(約104個/well)を96穴平底プレート(Iwaki 3860-096:旭硝子)に撒き、単層を形成するまで37℃のCO2インキュベーター(CO2濃度0.5%)でインキュベートした。数日後、MA-104細胞を単層培養した96穴平底プレートに10倍段階希釈したウイルス溶液を20μl/well添加し、1000×gで1時間、室温にて遠心し、吸着させた。ウイルス溶液を除去後、無血清MEMで1回洗浄した。細胞に終濃度1μg/mlアセチルトリプシン含有アビセル(登録商標:FMC Biopolymer)溶液(1.2%アビセル:2×MEM=1:1)100μl/wellを添加し、37℃で24時間インキュベートした。インキュベート後、培地を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄後、無水エタノールで10分間室温にて固定した。その後、細胞をヘアドライヤーで乾燥した。フォーカス染色はマウスモノクローナル抗ロタウイルスA VP6抗体(1:5000)(YO-156)を37℃で30分間反応後、PBSで2回洗浄し、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンG血清(1:500)(Millipore)を室温で40分間反応後、PBSで2回洗浄した。ペルオキシダーゼ反応は、0.02%H2O2と0.03mg/mlの3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩(和光純薬工業)を添加したPBSで10分間反応させた。細胞は水道水で洗浄後、乾燥させた。フォーカスは顕微鏡を用いてカウントし、ウイルス力価を算出した。
はと麦茶の抗インフルエンザウイルス作用
A(H1N1)型PR/8/34株を用いて、調製した4種類のはと麦茶をそれぞれ5%、2.5%、1.25%、0.625%、0.3125%に希釈して、無添加のコントロールと共に、抗インフルエンザウイルス作用を試験した。
はと麦茶顆粒(三養)から調製したはと麦茶についての試験結果を、図1に示す。また、4種類のはと麦茶のIC50を以下に示す。
はと麦茶(三養) :0.67%
はと麦茶(ゼンヤクノー):0.22%
はと麦茶(お茶の丸幸) :0.30%
はと麦茶(伊藤園) :0.94%
以上の試験結果から、はと麦茶には、抗インフルエンザウイルス作用があることが分かる。
はと麦茶の抗ロタウイルス作用
Wa株を用いて、調製した4種類のはと麦茶をそれぞれ2%、1%、0.5%、0.25%、0.125%に希釈して、無添加のコントロールと共に、抗ロタウイルス作用を試験した。
はと麦茶顆粒(三養)から調製したはと麦茶についての試験結果を、図2に示す。また、4種類のはと麦茶のIC50を以下に示す。
はと麦茶(三養) :0.38%
はと麦茶(ゼンヤクノー):0.09%
はと麦茶(お茶の丸幸) :0.07%
はと麦茶(伊藤園) :0.21%
以上の試験結果から、はと麦茶には、抗ロタウイルス作用があることが分かる。
複数のインフルエンザウイルス株に対する抗ウイルス作用
表1に示す複数のインフルエンザウイルス株に対する、はと麦茶顆粒(三養)から調製したはと麦茶の抗ウイルス作用を試験例1と同様に試験した。その結果を表1に記す。
A型のオセタミビル耐性株である、Osaka/2024/2009及びOsaka/71/2011に対する抗ウイルス作用の試験結果を、図3及び図4に示す。図3及び図4の試験結果から、またオセンタミビル耐性株にも有効であることが分かる。従って、はと麦茶はオセルタミビルとは異なる作用機序で抗ウイルス作用を発揮していると思われる。
大豆、裸麦及びはと麦の熱水抽出物の抗インフルエンザウイルス作用
はと麦茶には、通常、はと麦に加えて、大豆、裸麦等も原料に含まれている。そこで、表2に示す大豆、裸麦及びはと麦の熱水抽出物の抗ウイルス作用を試験例1と同様に試験した。その結果を表2に記す。
はと麦の熱水抽出物の抗ロタウイルス作用
4種類のはと麦の品種である、はとじろう(宮城県産)、ハトユタカ(岩手県産)、はとひかり(島根県産)及びあきしずく(島根県産)を、焙煎せずに熱水抽出した。得られた熱水抽出物を、試験例2と同様にして抗ロタウイルス作用を試験した。4品種のIC50を以下に示す。
はとじろう(宮城県産):0.36%
ハトユタカ(岩手県産):0.55%
はとひかり(島根県産):0.47%
あきしずく(島根県産):0.29%
以上の試験結果から、はと麦の熱水抽出物には、抗ロタウイルス作用があることが分かる。
また、あきしずく(島根県産)について、発芽させずに焙煎して熱水抽出したもの、発芽させずにそのまま生で熱水抽出したもの、発芽させて焙煎して熱水抽出したもの、発芽させてそのまま生で熱水抽出したものの4種類の熱水抽出物を調製して、抗ロタウイルス作用を試験した。これらの熱水抽出物のIC50を以下に示す。
発芽させずに焙煎した熱水抽出物 :0.41%
発芽させずに焙煎しない熱水抽出物:0.29%
発芽させて焙煎した熱水抽出物 :0.17%
発芽させて焙煎しない熱水抽出物 :0.17%
以上の試験結果から、発芽させたほうが、抗ロタウイルス作用が増強されることが分かる。
ウイルス増殖阻害段階の検討
ウイルスの感染を阻害するためには、ウイルスの細胞への吸着・侵入、細胞内での複製、細胞外への放出のいずれかを阻害することが有効である。はと麦茶がウイルス増殖のどの段階を阻害しているかについて検討した。試験例1において、ウイルスの接触の12時間前に、1時間前〜接触まで、接触〜4時間後まで、接触の4時間後〜8時間後まで、接触〜8時間後まで、接触の1時間前〜8時間後まで、はと麦茶(三養)から調製したはと麦茶を5%濃度で培地に添加して、インフルエンザウイルスA(H1N1)型PR/8/34に対する抗インフルエンザウイルス作用を試験した。その結果を図5に示す。図5において、□はコントロール群を表し、■ははと麦茶添加群を表す。
この試験結果から、はと麦茶はウイルスの吸着時及び培養時の双方を阻害していることが判明した。特に、吸着時に高い阻害作用を示し、暴露時間を延長したほうが、より高い阻害作用を示すことが確認された。はと麦茶は、ウイルス自体に作用しているのではなく、細胞側に何らかの作用をして抗ウイルス作用を発揮していると思われる。このことから、従来の抗ウイルス剤と異なる作用機序で抗ウイルス作用を発揮していると思われる。
ダイゼインを用いてこの試験を行ったところ、同様の結果が得られた。さらに、はと麦(あきしずく)の熱水抽出物を用いてロタウイルスに対して、この試験を行ったところ、同様の結果が得られた。
ダイゼイン及びグリシテインの抗インフルエンザウイルス作用
大豆熱抽出物に含まれる抗インフルエンザウイルス作用を示す成分を調べたところ、ダイゼイン及びグリシテインが見出された。そこで、ダイゼイン及びグリシテインについて、試験例1と同様にして、抗インフルエンザウイルス作用を試験した。IC50を以下に示す。
ダイゼイン :30μg/ml
グリシテイン :0.54ng/ml
ダイゼイン及びグリシテインは、強い抗インフルエンザウイルス作用を有しており、特にグリシテインの作用は極めて高い。
発酵豆乳のマウスインフルエンザに対する抗ウイルス作用
豆乳には、ダイゼインが1.4mg/100g含まれ、グリシテインは検出されていないが、発酵豆乳には、ダイゼインおよびグリシテインがそれぞれ48.45mg/100gと1.3mg/100gと大量に含まれている。
そこで、7週齢の雌マウス(日本エスエルシー)20匹を2群に分けて、一方はコントロールとして発酵豆乳を与えず、他方の群には、感染前5日間、発酵豆乳100μl/マウス/日を経口投与した。全身麻酔下、マウスインフルエンザウイルスA(H1N1)型NewCaledonia/20/29株を25μl/マウス(100FFU)を経鼻投与して感染させた。感染後、14日間、生存率と体重減少率を観察した。
生存率については、コントロール群では、10日目に2匹が死亡したが、発酵豆乳投与群は生存率が100%であった。体重減少率の結果を図6に示す。コントロール群は体重の回復が遅れたのに対して、発酵豆乳投与群は14日後には体重がほぼ初期値まで戻った。この結果から、発酵豆乳はインフルエンザウイルスの増殖を阻害したと思われる。
Claims (2)
- ダイゼイン、ダイゼイン配糖体、グリシテイン、グリシテイン配糖体、大豆加工品、裸麦加工品、及びはと麦加工品から選ばれる少なくとも一種を含有する抗RNAウイルス剤。
- インフルエンザウイルス又はロタウイルスに対する抗RNAウイルス剤である、請求項1に記載の抗RNAウイルス剤。
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