JP6061424B2 - レクチンを含むインフルエンザの治療剤 - Google Patents

レクチンを含むインフルエンザの治療剤 Download PDF

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Description

本発明は,レクチンを含む抗ウイルス剤に関する。より詳しく説明すると,本発明は,例えば植物や菌類から抽出及び精製されたレクチンを有効成分として含むインフルエンザの治療剤に関する。
インフルエンザウイルスは,オルソミクソウイルス科に属するRNAウイルスで,A,B及びC型の3種の型に分類される(非特許文献1)。インフルエンザウイルスは,忠実度の低いRNAポリメラーゼによりゲノム複製される。これにより,インフルエンザウイルスのウイルスゲノム中に高頻度で変異が導入される。そのような変異が蓄積した結果として,抗原性の連続的変化を生じる。この現象は,抗原ドリフトとよばれる。インフルエンザウイルスは,抗体や薬剤等の外圧下においても抗原ドリフトによって抗原性の変化を起こすことで外圧を回避し,耐性を獲得する。このため,毎年冬季に主にA及びB型インフルエンザウイルスが流行する(非特許文献2及び3)。
例えば,特許4744533号公報(下記特許文献1)には,マンノース結合型レクチンを含むコレクチン属タンパク質を有する微生物感染性疾患治療及び予防用噴霧乾燥粉末組成物が開示されている。そして,この組成物は,インフルエンザの治療に有効であるとされている。すなわち,特許文献1にはインフルエンザの治療に有効なレクチンが開示されている。特許文献1の実施例では,大韓民国ドビール(Dobeel)社製の組換えマンノース結合型レクチン(MBL)が用いられている。マンノース結合型レクチン(MBL)を得る方法は公知である。例えば,特許4051030号公報(下記特許文献2)には,マンノース結合型レクチンを,ヒト血漿から精製する方法が開示されている。
上記のようにレクチン類は公知である。たとえば,特許第4514163号公報(特許文献3)には,担子菌から抽出されたフコースα1→6特異的レクチンが開示されている。特開2009−13138号公報(特許文献4)には,ヌメリガサ属(Hygrophorus)担子菌に由来するレクチンが開示されている。特開2009−209070号公報(特許文献5)には,カヤタケ属担子菌に由来するレクチンが開示されている。特開2012−219064号公報(特許文献6)には,羅漢果より抽出されたレクチンが開示されている。
特許第5072159号公報(特許文献7)には,粘膜アジュバンドとして用いられる植物レクチンが開示されている。植物レクチンの例として,ヘアリーベッチ(Vicia villosa)が開示されている(段落[0012])。
再表03/084569号公報(特許文献8)には,レクチンの例として,WGA(T.vulgaris由来の
wheat−germ agglutinin),ConA(C.ensiformis由来のconcanavalin A),RIC(R.communis由来の毒素),L−PHA(P.vulgaris由来のleukoagglutinin),LCA(L.culinaris由来のlentil
agglutinin),PSA(P.sativum由来のPea lectin),AAL(Aleuria aurantia Lectin),ACL(Amaranthus
caudatus Lectin),BPL(Bauhinia purpurea Lectin),DSL(Datura stramonium Lectin),DBA(Dolichos
biflorus Agglutinin),EBL(Elderberry Balk Lectin),ECL(Erythrina cristagalli Lectin),EEL(Euonymus
europaeus Lectin),GNL(Galanthus nivalis Lectin),GSL(Griffonia simplicifolia Lectin),HPA(Helix
pomatia Agglutinin),HHL(Hippeastrum Hybrid Lectin),Jacalin,LTL(Lotus tetragonolobus
Lectin),LEL(Lycopersicon esculentum Lectin),MAL(Maackia amurensis Lectin),MPL(Maclura
pomifera Lectin),NPL(Narcissus pseudonarcissus Lectin),PNA(Peanut Agglutinin),E−PHA(Phaseolus
vulgaris Erythroagglutinin),PTL(Psophocarpus tetragonolobus Lectin),RCA(Ricinus
communis Agglutinin),STL(Solanum tuberosum Lectin),SJA(Sophora japonica Agglutinin),SBA(Soybean
Agglutinin),UEA(Ulex europaeus Agglutinin),VVL(Vicia villosa Lectin),WFA(Wisteria
floribunda Agglutinin)が開示されている。
特公平8−25890号公報には,Abrus precatorius,Calpuria aeggptiana,Fomes formentarius(ツリガネタケ),Maackia amurensis(イヌエンジュ),Phaseolus lunatas(リママメ),Phaseolus vulgaris(インゲンマメ),及び, Canavalia ensiformis(タチナタマメ),Jack bean(ナタマメ),Cerastrium fomentosusから得られるレクチン類を有効成分として含有する抗ウイルス剤が開示されている。
インフルエンザに感染した後,1日程度経過した後でなければインフルエンザを診断及び治療することができない。このため,インフルエンザは,患者が高熱となるといった重篤な症状を経験した後に,治療剤を用いて治癒される。このため,患者がインフルエンザに感染した初期の段階で投与でき,患者が重篤となることを防止できる治療剤の開発が望まれる。
後述するとおり,本発明の有効成分はレクチンである。レクチンには様々な種類が存在する。例えば,レクチンのひとつにヘアリーベッチ(Vicia villosa)由来のレクチンがある。このレクチンの製造方法は,例えば,S.E.Tollefsen,et.al.,J Biol Chem.1983 258 5165−5171(非特許文献4)に開示されている。
また,レクチンの上記とは別の例は,フジ(Wisteria floribunda)由来のレクチンである。このレクチンの製造方法は,例えば,Kurokawa T,et.al.,J Biol Chem.1976 251 5686−5693(非特許文献5)に開示されている。
また,レクチンの上記とは別の例は,ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)由来のレクチンである。このレクチンの製造方法は,例えば,Kochibe N,et.al.,Biochemistry 1980 19 2841−2846(非特許文献6)に開示されている。
また,レクチンの上記とは別の例は,麹菌(Aspergillus oryzae)由来のレクチンである。このレクチンの製造方法は,例えば,Murakawa T,et.al.,Biosci Biotechnol Biochem.2002 66 1002−1008(非特許文献7)に開示されている。
特許4744533号公報 特許4051030号公報 特許第4514163号公報 特開2009−13138号公報 特開2009−209070号公報 特開2012−219064号公報 特許第5072159号公報 再表03/084569号公報 特公平8−25890号公報
清水一史,「インフルエンザウイルスの抗原性変異機序」,日本臨床,日本臨牀社,55,p.2610-2616 (1997) 飛田清毅,「インフルエンザウイルスの分類の基準と命名法」,日本臨床,日本臨牀社,55,p.2512-2514 (1997) 西村秀一,「最近のA型,B型インフルエンザウイルスの抗原変異」,日本臨床,日本臨牀社,55,p.2617-2626 (1997) S.E.Tollefsen,et.al.,J Biol Chem.1983 258 5165−5171 Kurokawa T,et.al.,J Biol Chem.1976 251 5686−5693 Kochibe N,et.al.,Biochemistry 1980 19 2841−2846 Murakawa T,et.al.,Biosci Biotechnol Biochem.2002 66 1002−1008
本発明は,抗ウイルス剤を提供することを目的とする。
本発明は,インフルエンザの治療剤を提供することを目的とする。特に本発明は,インフルエンザ感染の初期の段階で患者が重篤となる現象を防止できるインフルエンザの治療剤を提供することを目的とする。
本発明は,インフルエンザに罹患していない患者に対しても投与できる抗ウイルス剤を提供することを目的とする。
本発明の第1の側面は,抗ウイルス剤に関する。この抗ウイルス剤は,ヘアリーベッチ(Vicia villosa)レクチン,フジ(Wisteria floribunda)レクチン,ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)レクチン,又は麹菌(Aspergillus
oryzae)レクチンを有効成分として含む。これらのレクチンを本明細書では本発明のレクチンとよぶ。これらは,抗ウイルス剤に1種又は2種含まれても良い。抗ウイルス剤には,本発明のレクチン以外のレクチンや,そのほかの成分が含まれても良い。本発明の抗ウイルス剤は,上記した本発明のレクチンがその機能を発揮するよう,本発明のレクチンを有効成分として有効量含む。
本発明の抗ウイルス剤の好ましい態様は,インフルエンザの治療剤である。インフルエンザの治療剤は,インフルエンザに感染することを予防する予防剤や,インフルエンザに罹患した患者が重篤となる事態を防止する重篤化を防ぐための剤のほか,インフルエンザからの治癒を促進する剤のいずれであっても良い。
本発明の抗ウイルス剤の好ましい態様は,鼻腔又は経口投与用のインフルエンザの治療剤である。
本発明の抗ウイルス剤の好ましい態様は,先に説明した抗ウイルス剤を含む,飲食品である。
本発明によれば,実施例により実証されたとおり,特定の種類のレクチンを含む抗ウイルス剤を提供できる。
本発明によれば,実施例により実証されたとおり,特定の種類のレクチンを含む,インフルエンザの治療剤を提供できる。特に本発明は,インフルエンザ感染の初期の段階で患者が重篤となる現象を防止できるインフルエンザの治療剤を提供できる。
本発明によれば,例えば,植物や菌類から抽出及び精製されたレクチンを有効成分として含むため,副作用が少ない。このため,本発明は,インフルエンザに罹患していない患者に対しても問題がない。よって,本発明によれば,患者がインフルエンザに罹患しているか検出できない時期においても,患者に対して投与できるインフルエンザの治療剤を提供できる。
図1は,実施例1に関する各レクチンの抗インフルエンザウイルス活性について培養細胞を用いた感染系にて評価した結果をグラフ化した図面に替わるグラフである。 図2は,実施例2に関するマウス感染モデル系を用いた抗インフルエンザウイルス活性評価系の試験概要を示す図である。 図3は,実施例2に関するマウス感染モデル系を用いた抗インフルエンザウイルス活性評価系において,各レクチン接種時の感染後マウス体重推移をグラフ化した図面に替わるグラフである。 図4は,実施例3に関するマウス体重減少の程度を定量化し「感染阻害率(%)」として算定する方法を概説した図である。図4Aは,マウス感染モデル系による薬剤の抗ウイルス活性評価試験結果例を示す。 図4は,実施例3に関するマウス体重減少の程度を定量化し「感染阻害率(%)」として算定する方法を概説した図である。図4Bは,現象面積相対値グラフを示す。 図4は,実施例3に関するマウス体重減少の程度を定量化し「感染阻害率(%)」として算定する方法を概説した図である。図4Cは,感染阻害率グラフを示す。 図5は,実施例3に関するマウス感染モデル系での各レクチンの抗インフルエンザウイルス活性評価試験の結果を感染阻害率(%)としてグラフ化した図面に替わるグラフである。 図6は,実施例4に関するレクチン2種(AAL,AOL)接種時のマウス生存率推移をグラフ化した図面に替わるグラフである。 図7は,実施例5に関するプラーク形成試験法にもとづくレクチンの作用点解析方法について概説した図である。 図8は,実施例5に関するレクチン前処理時のプラーク形成試験結果をグラフ化した図面に替わるグラフである。 図9は,実施例5に関するレクチン後処理時のプラーク形成試験結果について出現プラーク像を写真撮影しレクチンごとに示した図面に替わる写真である。 図10は,実施例5に関するレクチン後処理時のプラーク形成試験結果をグラフ化した図面に替わるグラフである。 図11は,実施例6に関する有効レクチンのインフルエンザウイルス亜型間での抗ウイルス活性比較試験の結果を亜型ごとにグラフ化した図面に替わるグラフである。
本発明の第1の側面は,レクチンを有効成分として含む抗ウイルス剤に関する。抗ウイルス剤の例は,インフルエンザの治療剤である。本発明の抗ウイルス剤の好ましい例は,インフルエンザに感染してから24時間以内(好ましくは1時間以上12時間以下)に投与されるインフルエンザの治療剤である。本発明の抗ウイルス剤は,インフルエンザの潜伏期において投与することで,インフルエンザの発症を抑えるために用いることもできる。また,本発明の抗ウイルス剤は,例えば,患者の体温が平熱より2℃以上高くなった状態において投与することでインフルエンザの感染が進行する事態を効果的に防止することができる。本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるレクチンは,後述する通り,例えば,植物由来のレクチンが含まれ,これらは副作用が少ない。このため,インフルエンザに罹患したか否か診断することができる状態となる前に,本発明の抗ウイルス剤を患者に投与することができる。その結果,患者がインフルエンザに罹患していた場合は,患者が重篤となる事態を効果的に防止できる。
本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるレクチンは,ヘアリーベッチ(Vicia villosa)レクチン,フジ(Wisteria floribunda)レクチン,ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)レクチン,又は麹菌(Aspergillus
oryzae)レクチンである。これらは,アリーベッチ,フジ,ヒイロチャワンタケ,又は麹菌を用いて得られるこれら由来のレクチンでも良いし,これら天然物由来のレクチンと同一又は類似した配列を有し,天然物由来のレクチンと同様の機能を有する遺伝子組み換え技術など公知の方法を用いて製造されたレクチンであっても良い。本発明の抗ウイルス剤は,これらを1種又は2種以上含んでもよい。本発明の抗ウイルス剤は,細胞毒性濃度を感染阻害濃度で除した選択指数の結果から,好ましくはフジレクチン,ヘアリーベッチレクチン又はヒイロチャワンタケレクチンを1種又は2種以上含む抗ウイルス剤であり,さらに好ましくはフジレクチンを含む抗ウイルス剤である。また,上記したレクチンは,公知のレクチンであり市販されている。このため本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるレクチンとして市販されているものを適宜用いてもよい。
以下に,本発明の有効成分であるレクチンについて説明する。なお本発明におけるレクチンの製造方法等は特に限定されず,遺伝子組み換え技術等により植物等から抽出等したレクチンと実質的に相同のポリペプチドや,人工物であってもよい。
ヘアリーベッチ(Vicia villosa)レクチンは、S.E.Tollefsen,et.al.,J Biol Chem.1983 258 5165−5171(非特許文献4)に記載の精製方法に従って得ることができる。ヘアリーベッチ(Vicia villosa)レクチンの分子量の例は、沈降平衡法でおよそ109,500であり,サブユニットの分子量の例は,SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法でおよそ33,600である。ヘアリーベッチ(Vicia villosa)レクチンは,N−アセチルガラクトサミンに親和性を有する。本発明におけるヘアリーベッチ(Vicia villosa)レクチンの分子量は,例えば,沈降平衡法を用いて測定した場合,5万以上20万以下のものであり,9万以上12万以下でもよく,10万以上12万以下でもよい。
フジ(Wisteria floribunda)レクチンは、Kurokawa T,et.al.,J Biol Chem.1976 251 5686−5693(非特許文献5)に記載の精製方法に従って得ることができる。その分子量は、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法でおよそ68,000であり,N−アセチルガラクトサミンに親和性を有する。本発明におけるフジレクチンの分子量は,例えば,SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法を用いて測定した場合,4万以上12万以下のものであり,5万以上8万以下でもよく,6万以上7万5000以下でもよい。
ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)レクチンは、Kochibe N,et.al.,Biochemistry 1980 19 2841−2846(非特許文献6)に記載の精製方法に従って得ることができる。その分子量は、沈降平衡法でおよそ72,000であり,フコースに親和性を有する。本発明におけるフジ由来のレクチンの分子量は,例えば,沈降平衡法を用いて測定した場合,4万以上12万以下のものであり,6万以上9万以下でもよく,7万以上8万以下でもよい。
麹菌(Aspergillus oryzae)レクチンは、Murakawa T,et.al.,Biosci Biotechnol Biochem.2002 66 1002−1008(非特許文献7)に記載の精製方法に従って得ることができる。その分子量は、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法でおよそ35,000であり,フコースに親和性を有する。本発明における麹菌由来のレクチンの分子量は,例えば,SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法を用いて測定した場合,2万以上6万以下のものであり,3万以上4万以下でもよい。
先に説明したとおり,本発明の有効成分であるレクチンは,市販されている。一方,本発明の有効成分であるレクチンは,植物から抽出し,精製したものを用いることができる。また,植物から抽出し,精製したレクチンの誘導体を用いても構わない。レクチンを抽出する際に,水系溶媒又は有機溶媒を用いることが好ましい。そのような溶媒の例は,水又は水に可溶な有機溶媒,酸,塩基又は塩のいずれかを少量(例えば10%程度以下)含む水溶液から選択される1種又は2種以上の組合せよりなるものである。有機溶媒の例は,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコールである。酸の例は,塩酸,硫酸,酢酸などである。塩基の例は,アンモニア,苛性ソーダ,苛性カリ,および炭酸である。
抽出の例は,原料(乾燥基準)に対して5倍から200倍量の抽出液を使用し,通常は4℃〜150℃で20分〜20時間処理するものである。精製の例は,塩析,アフィニティクロマトグラフィー,透析,限外濾過,逆滲透処理,ゲル濾過,有機溶媒による沈澱処理などの1種又は2種以上の方法の適用により低分子物を除去するものである。精製が終った後は,噴霧乾燥又は凍結乾燥といった乾燥工程を経てレクチンを粉末化した後に,製品化することが好ましい。
レクチンは,抗ウイルス剤として用いる場合,任意の剤型にすることができる。抗ウイルス剤の投与も各経路で行なわれる。本発明の抗ウイルス剤は人間及び動物に経口的または非経口的に投与される。経口的投与は舌下投与を包含する。非経口的投与は注射例えば皮下,筋肉,静脈注射,点滴などを含む。本発明の抗ウイルス剤の投与量は動物か人間により,また年齢,個人差,病状などに影響されるので,場合によっては下記範囲外の量を投与する場合も生ずるが,一般に人間を対象とする場合,本発明のレクチンの投与量の例は,体重1kg,1日当り0.1〜1000mg,好ましくは1〜100mgを1回から3回に分けて投与するものである。
抗ウイルス剤が経口投与される場合は,それに適用される錠剤,顆粒剤,散剤,カプセル剤などは,それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤,包含剤,賦形剤,潤滑剤,崩壊剤,湿潤剤のような添加物を含有していてもよく,又経口用液体製剤として用いる場合は,内用水剤,振盪合剤,懸濁液剤,乳剤,シロップ剤の形態であってもよく,又使用する前に再溶解させる乾燥生成物の形態であってもよい。さらに,このような液体製剤は普通用いられる添加剤,保存剤のいずれを含有してもよい。注射用の場合には,その組成物は安定剤,緩衝剤,保存剤,等張化剤などの添加剤を含んでいてもよく,単位投与量アンプル,又は多投与量容器中で提供される。なお,上記組成物は水溶液,懸濁液,溶液,油性または水性ベヒクル中の乳液のような形態であってもよく,一方活性成分は使用する前に適当なベヒクル例えば発熱物質不含の滅菌した水で再溶解させる粉末であってもよい。
本発明の抗ウイルス剤は,鼻腔投与又は経口投与されることが好ましい。鼻腔投与の場合,レクチンを粉末化して,キャリアとなる粉体とともに粉末投与されるものが好ましい。
上記したとおり,本発明のレクチンは,例えばウイルスの感染予防に有効である。特に本発明のレクチンは,インフルエンザの感染予防や,インフルエンザが重篤となる事態を効果的に防止できる。本発明は,上記した本発明のレクチンを用い,公知の製剤化工程を適用した抗ウイルス剤(例えば,インフルエンザの治療剤)や,抗ウイルス剤(例えば,インフルエンザの治療剤)を製造するための本発明のレクチンの使用をも提供する。さらに,本発明のレクチンは,対象となる患者に対して投与することで,ウイルスの感染予防(例えば,インフルエンザの感染予防やインフルエンザが重篤化することを防止すること)に有効である。よって,本発明は,本発明のレクチンを対象となる患者に投与する工程を含む,ウイルスの感染予防方法や,ウイルス系疾患の治療方法をも提供する。
本発明の好ましい態様は,抗ウイルス剤を含む,飲食品である。先に説明したとおり,本発明の抗ウイルス剤の有効成分であるレクチンは,植物由来であるため副作用が少ない。このため本発明の抗ウイルス剤を飲食品に添加しても副作用が少ない。このため,本発明の飲食品は,インフルエンザといったウイルス性疾患の予防に有効である。
本発明における飲食品の例は,サプリメント,菓子,清涼飲料,果汁飲料,乳酸飲料,及び乳製品である。
次に本発明を実施例により詳細に説明する。以下に,記載された発明の実施の形態及び実施例は本発明の好ましい実施形態を示すものであり,本発明はそれらに限定されるものではない。
本明細書における実施例に使用した試薬・材料を示す。培地として,和光純薬工業製品のEagle’s Minimum Essential Medium (MEM)を使用した。ウシ胎児血清(FBS)として,アウスジーンエックス(AusGeneX)社製品のLot:30108-7006を使用した。オセルタミビル(Oseltamivir)としてホフマンラロッシュ(F. Hoffmann-La
Roche Ltd. (Basel, Switzerland))社の製剤品を使用した。イヌ腎臓細胞(Madin-Darby
canine kidney(MDCK))として,長崎大学薬学部感染分子薬学研究室で維持培養されている細胞を使用し,Eagle’s Minimum Essential Medium
(MEM)+5%ウシ胎児血清で培養した。A型ヒトインフルエンザウイルス:A/WSN/33(H1N1),A/Puerto Rico/8/34 (H1N1),A/Hong Kong/8/68 (H3N2)は国立感染症研究所より分与された株を使用した。A型トリインフルエンザウイルス株:A/Duck/Pennsylvania/84 (H5N2)は国立大学法人筑波大学大学院人間総合科学研究科感染生物学分子ウイルス学分野永田研究室より分与頂いた株を使用した。いずれのウイルス株もMDCK細胞又は発育鶏卵に増幅し使用した。新型インフルエンザウイルス流行株(2009年):A/Nagasaki/HA-4/2009 (H1N1)並びにタミフル耐性A/Nagasaki/HA-58/2009 (H1N1)は長崎県下で採取された患者検体よりMDCK細胞にて分離・増幅した。B型インフルエンザウイルス:B/Lee/40はATCC(American Type Culture Collection)より購入した。A/Hong Kong/8/68 (H3N2)においては,maintenance medium(M.M.)の組成であるvitaminはGibco社製品を,グルタミンは和光純薬工業製品を,ウシ血清アルブミン(bovine
serum albumin (BSA))はナカライテスク社製品をそれぞれ使用した。細胞染色剤のクリスタルバイオレットはナカライテスク社製品を使用した。
ヒイロチャワンタケレクチン(AAL),コンカナバリンA(ConA),麹菌レクチン(AOL),フジレクチン(WFL),ヘアリーベッチレクチン(VVA-G)及びアマリリスレクチン(HHA)は株式会社J-オイルミルズ社製のものを使用した。
粉末状のレクチンを溶解する際に使用したジメチルスルフォキシド(DMSO)は和光純薬工業製品を使用した。
培養細胞を用いたレクチンの抗インフルエンザウイルス活性評価試験
計6種のレクチンについて培養細胞を用いた感染系にて抗インフルエンザウイルス活性を評価した。以降に示す全ての操作は全てクリーンベンチ内で無菌的に行った。10%FBS含有のMEM培地でMDCK細胞を2.5×105
cells/mLに調製し,96-well
plateに100μL/wellで播種後,37℃,5% CO2インキュベーターで24時間培養した。培地をアスピレーターで除去し,無血清MEM培地で細胞を1回洗浄した。その後,vitamin含有無血清MEM培地(MEM+vitamin)にて調製した各レクチンの200μg/mLを最高濃度とする4倍段階希釈系列を100μL/wellで添加した。更に,非感染細胞のwellには100μL/wellでMEM+vitaminを加え,感染細胞のwellにはvitamin含有の無血清MEM培地で 1000 TCID50/mLに調製したインフルエンザウイルス液(A/WSN/33株)を100μL/wellで加えた。プレートは37℃,5% CO2インキュベーター内に入れ72時間培養した。培地をアスピレーターで除き,200μL/wellの70% エタノール(EtOH)を加えて5分間室温に置き細胞を固定した。固定後,エタノールをデカンテーションで除き,200μL/wellで0.5%クリスタルバイオレット染色液を加えて5分間室温に置き,染色を行った。染色後,染色液をデカンテーションで除き,水道水で軽く洗浄した。室温下にてプレートを乾燥させた後,マイクロプレートリーダーで560
nmの波長の吸光度を測定した。測定は各well内に均等に分散させた計37カ所の測定ポイントについて行い,各測定ポイントにおける吸光度の平均値を各wellの測定値とした(Sara W.
Rothman, et. Al., J Clin Pathol., 1986 39 672-676)。各測定値は非感染群の測定値を100%としたCV相対値(%)に換算し,レクチン濃度を横軸としてグラフ化した。その結果を図1に示す。
図1は,実施例1に関する各レクチンの抗インフルエンザウイルス活性について培養細胞を用いた感染系にて評価した結果をグラフ化した図面に変わるグラフである。横軸はレクチン濃度,縦軸はクリスタルバイオレット液により染色された残存細胞の染色値(吸光度)を非感染群に対する相対値として算出したCV相対値(%)示す。図中の白色バーはウイルス非添加群;
(-) virusを,黒色バーはウイルス感染群;
(+) virusを示す。
測定値に基づき被験物質のIC50値(Half maximal
(50%) inhibitory concentration,50%
感染阻害濃度)を統計解析ソフト(GrapPad
Prism 5.0, GraphPad社製)を用いて算出した。細胞毒性が見られた場合は,同ソフトを用いてCC50値(Half maximal
(50%) cytotoxicity concentration,50% 細胞毒性濃度)を求め,CC50/IC50からSI(Selectivity index,選択指数)を算出して抗ウイルス活性を評価した。その結果,フジレクチン(WFL),ヘアリーベッチレクチン(VVA-G),ヒイロチャワンタケレクチン(AAL),麹菌レクチン(AOL)の計4種に抗インフルエンザウイルス活性が認められた。WFL及びVVA-Gは試験濃度域で細胞毒性は認められなかった。AAL及びAOLは高濃度域で毒性が認められたもののSI値は高値(各々193.9,32.8)を示した。アマリリスレクチン(HHA)並びにコンカナバリンA(タチナタマメ由来レクチン)(ConA)に顕著な抗ウイルス活性は認められなかった(表1)。
Figure 0006061424
マウス感染モデル系におけるレクチンの抗インフルエンザウイルス活性評価試験
培養細胞系で抗インフルエンザウイルス活性の確認されたレクチン4種(WFL,VVA-G,AAL,AOL)についてマウスを用いたインフルエンザウイルス感染モデル系で抗ウイルス活性を評価した。これらのレクチンとインフルエンザウイルス(A/Puerto
Rico/8/34株)を等量で混合し,4℃下で1時間反応させた後,マウスへ50μL/匹で経鼻接種した。接種後3週間,マウス体重変化を観察した。その結果を図3に示す。
図2は,実施例2に関するマウス感染モデル系を用いた抗インフルエンザウイルス活性評価系の試験概要を示す図である。レクチン投与量はWFL:250μg/匹,VVA-G:250μg/匹,AAL:25μg/匹,AOL:62.5μg/匹とした。ウイルス接種量はいずれの試験群も250
pfu(plaque forming units)/匹とした。インフルエンザウイルス接種後のマウス体重の経時変化を接種時の体重を100%とした相対値(%)に換算しグラフ化した。その結果を図3に示す。
図3は,実施例2に関するマウス感染モデル系を用いた抗インフルエンザウイルス活性評価系において,各レクチン接種時の感染後マウス体重推移をグラフ化した図面に替わるグラフである。横軸は感染後の経過時間(日),縦軸は感染時の体重を100%とした相対値(%)を示す。図中の「mock」はウイルス非感染群,「Virus alone」はウイルス感染のみのレクチン未接種群を示す。ウイルス非感染群(mock)では時間経過に伴い緩やかな体重増加が認められるが,インフルエンザウイルス接種群(Virus
alone)では接種後7-8日経過時点で最大約70%まで体重減少が認められた。この感染に伴うマウスの体重減少がVVA-G, WFL,AOL接種群では顕著に抑制された。一方,AAL接種群では顕著な抑制効果は認められなかった。
マウス体重減少の定量化
インフルエンザウイルス感染に伴うマウス体重減少をより定量的に評価する為,体重減少の程度について数値化を行った。具体的には,マウス体重推移のグラフにおいて接種時のマウス体重(100%)を上限とし,その値を下回った領域について画像解析ソフトにより面積値を算出した。その概説を図4に示す。更に,減少域の面積値を感染阻害率(%)に換算しグラフ化した。その結果を図5に示す。
図4は,実施例3に関するマウス体重減少の程度を定量化し「感染阻害率(%)」として算定する方法を概説した図である。図5は,実施例3に関するマウス感染モデル系での各レクチンの抗インフルエンザウイルス活性評価試験の結果を感染阻害率(%)としてグラフ化した図面に替わるグラフである。図4及び図5から,VVA-G,WFL,AOLでは60%を超える感染阻害率が認められ,特にWFLについて99.5%と極めて高い感染阻害効果が確認された。
マウス生存率での抗ウイルス活性評価
ヒイロチャワンタケレクチン(AAL),麹菌レクチン(AOL)についてウイルス感染に伴うマウス生存率低下に与える影響を検討した。その結果を図6に示す。図6は,実施例4に関するレクチン2種(AAL,AOL)接種時のマウス生存率推移をグラフ化した図面に替わるグラフである。横軸はウイルス感染後の経過日数(日),縦軸はマウス生存率(%)を示している。グラフ中の「Virus alone」はウイルス感染のみのレクチン未接種群を示す。インフルエンザウイルスのみ接種群(Virus
alone)で生存率が約30%となる感染条件下において,AAL(25μg/匹)は生存率の低下を遅延させる効果が確認された。また,AOL(62.5μg/匹)では一例の死亡例も確認されなかった。体重減少に関して抑制効果の認められなかったAALについてもマウス生存率低下に対しては一定の効果が確認された。
レクチンの作用点解析
図7は,実施例5に関するプラーク形成試験法にもとづくレクチンの作用点解析方法について概説した図である。抗インフルエンザウイルス活性の確認されたレクチンの作用点について解析を行った。一般に感染性ウイルス1粒子が細胞に感染すると,感染細胞から多数の子孫ウイルス粒子が培養液中に放出され自由拡散する。この自由拡散をアガロース等を細胞に重層することで制限すると産生された子孫粒子は,隣接している細胞へと同心円状に感染拡大する。その結果,細菌のコロニー(集落)のように感染細胞のコロニーが形成され,アミドブラックなどの染色剤で非感染細胞を染め分けることによりプラークを可視化できる。各出現プラークは感染性粒子1つに由来する為,形成されたプラークの数を数えることでプラーク形成単位(plaque
forming unit;PFU)という単位でウイルスの力価を表すことができる。このプラーク形成試験に抗ウイルス剤を共存させると,プラークの数が減少するか,またはプラークのサイズが減少する事が期待される。更に,抗ウイルス剤を入れるタイミングを変えることで,抗ウイルス剤の作用機序を推定することができる。
レクチンをウイルス粒子と予め混合し前処理した後MDCK細胞へ感染させる場合と,ウイルス感染後に各レクチンを含有するアガロースをMDCK細胞に重層する後処理の場合とでプラーク形成に生じる影響(数・サイズの減少)について検討した。試験の概要を図7に示した。レクチンの前処理によってプラーク形成に抑制効果が認められた場合には,インフルエンザウイルスの宿主細胞への吸着過程以前にレクチンが作用していることが示唆され,予防的効果を有することが期待される。一方,レクチン後処理の場合に抑制効果が認められた場合には,ウイルス吸着以降の過程,すなわち細胞内におけるウイルス複製過程や新生粒子の出芽・放出過程に作用していることが示唆され,治療的効果を有することが期待される(図7)。
以降に示す全ての操作は全てクリーンベンチ内で無菌的に行った。6-well
plateに10%含有MEM培地で調製したMDCK細胞を1.0 × 106 cells/well(2mL/well)で播種し,37℃,5% CO2インキュベーターで1日間培養した。無血清MEM培地2 mL/wellで細胞単層を1回洗浄した。レクチンによる前処理の場合には,レクチン(40μg/mL)とインフルエンザウイルス(A/WSN/33株,2.0×106 TCID50/mL)を等量で混合し,4℃下で1時間反応させた後,残存レクチンの影響を排除するため,反応液を無血清MEM培地で1000倍に希釈した後,MDCK細胞へ500μL/wellで添加した。37℃,5% CO2下で1時間静置させた後,反応液を除去し無血清MEM培地で細胞を1回洗浄後,0.8%アガロース含有の維持培地(M.M.)を3 mL/wellで重層した。アガロース固化後,37℃,5% CO2インキュベーターに倒置しプラークが出現するまで3日間培養した。培養後,酢酸-エタノール溶液(1:1)を3 mL/wellで添加し室温下で1時間静置し細胞を固定した。アガロース含有M.M.をwellから剥離させ,0.5%(w/v)アミドブラック溶液を3 mL/wellで添加し室温下で1時間静置し,残存細胞を染色した。プレートを水道水で軽く洗浄後,室温下で風乾させ,出現プラーク数の算定を行った。レクチン後処理の場合には,インフルエンザウイルスイルス(A/WSN/33株)を無血清MEM培地で400 pfu/mLに調製し,洗浄済みのMDCK細胞へ500μL/wellで添加した。37℃,5% CO2下で1時間静置させた後,反応液を除去し無血清MEM培地で細胞を1回洗浄後,レクチンを0.2μg/mLになるよう添加した0.8%アガロース含有M.M.を3 mL/wellで重層した。また,陽性対照としてOseltamivirを10μMで添加した群も調製した。以降の処理は上述のレクチン前処理時と同様に行った。尚,培養細胞系において抗インフルエンザウイルス活性の低かったアマリリス由来レクチン(HHA)を陰性対照として設定し同様の試験に供した。レクチン前処理の結果を図8に示した。
図8は,レクチン前処理時のプラーク形成試験結果をグラフ化した図面に替わるグラフである。各レクチンについてレクチン未処理群の出現プラーク数を100%とした場合の相対値(%)を算出し縦軸に示した。図8から前処理によりAAL並びにAOLに顕著なプラーク数減少効果が確認された。レクチン未処理群の出現プラーク数に対する相対値(%)に換算しグラフ化した結果,AAL,AOLは各々21.1%,15.8%まで出現プラーク数を減少させた。その他のレクチン種にAALやAOLに比して高い減少効果を示すものは認められなかった。これにより,AAL並びにAOLにはインフルエンザウイルスに対して直接作用し吸着過程以前で感染抑制効果を示すことが示唆され,予防的用途への適応性が示された。
レクチン後処理の結果を図9及び図10に示す。図9は,レクチン後処理時のプラーク形成試験結果について出現プラーク像を写真撮影しレクチンごとに示した図面に替わる写真である。図10は,レクチン後処理時のプラーク形成試験結果をグラフ化した図面に替わるグラフである。各レクチンについてレクチン未処理群の出現プラーク数を100%とした場合の相対値(%)を算出し縦軸に示した。陽性対照として使用したオセルタミビル(Oseltamivir)はノイラミニターゼ(NA)阻害剤として知られ,その作用点はウイルス由来NA活性を抑制することによる出芽後の新生ウイルス粒子放出過程の阻害にある。図9から同薬剤をアガロースゲルに含有させた結果,プラーク数の激減とサイズの減少が確認された。図10から同条件にて試験に供した5種のレクチン中で,VVA-G並びにWFL添加群においてオセルタミビルと同様の顕著なプラーク数並びにサイズの減少が確認された。その他のレクチン添加群ではウイルスのみ添加群(Virus
alone)と比してプラーク数・サイズ共に大差なかった。各試験群の出現プラーク数をウイルスのみ添加群の出現プラーク数に対する相対値(%)に換算しグラフ化した結果,VVA-G及びWFLは各々9.6%,16.9%まで出現プラーク数が減少した。これにより,VVA-G並びにWFLはインフルエンザウイルス吸着以降の過程において感染抑制効果を示すことが示唆され,治療的用途への適応可能性が示された。
他型インフルエンザウイルス株に対するレクチンの抗ウイルス活性評価
培養細胞系,マウス感染モデル系のいずれの評価系においても特に高い抗インフルエンザウイルス活性を示したフジレクチン(WFL)を対象に,種々のインフルエンザウイルス亜型に対する感染抑制効果について検討した。10%FBS含有MEM培地にてMDCK細胞を3.0×104 cells/mLに調製し,96-well plateに100μL/wellで播種した。37℃,5% CO2インキュベーターで24時間培養した後,培地をアスピレーターで除去し,無血清MEM培地で細胞を1回洗浄した。洗浄後のMDCK細胞に対して,ビタミン(vitamin)含有無血清MEM培地(MEM+vitamin)にて調製した各レクチンの40μg/mLを最高濃度とする4倍段階希釈系列を100μL/wellで添加した。更に,非感染細胞のwellには100μL/wellでMEM+vitaminを加え,感染細胞のwellにはトリプシン(5.0μg/mL)及びvitamin含有の無血清MEM培地で 1000 TCID50/mLに調製した各インフルエンザウイルス液(A/Puerto
Rcio/8/34株,A/Hong
Kong/8/68株,A/Duck/Pennsylvania/84株,A/Nagasaki/HA-4/2009株,A/Nagasaki/HA-58/2009株,B/Lee/40株)を100μL/wellで加えた。プレートは37℃,5% CO2インキュベーター内に入れ72時間培養した。以降は実施例1に示した方法と同様にして実施した。各測定値を非感染群の測定値を100%としたCV相対値(%)に換算し,レクチン濃度を横軸としてグラフ化した。その結果を図11に示す。
図11は,有効レクチンのインフルエンザウイルス亜型間での抗ウイルス活性比較試験の結果を亜型ごとにグラフ化した図面に替わるグラフである。横軸はレクチン(WFL)濃度,縦軸は非感染群及び感染のみのレクチン非添加群の測定値から算出した感染阻害率(%)を示す。測定値に基づき被験物質のIC50値(Half maximal
(50%) inhibitory concentration,50%
感染阻害濃度)を統計解析ソフト(GrapPad
Prism 5.0, GraphPad社製)を用いて算出し表2に示した。この結果から,WFLは亜型に依らず広範なインフルエンザウイルス株に対して抗ウイルス活性を示すことが明らかとなった。また,Tamiflu耐性株であるA/Nagasaki/HA-58/2009株に対しても,同系のTamiflu感受性株:A/Nagasaki/HA-4/2009と同等の効果を示したことから,現在市中に広く流行しているTamiflu耐性株に有効である可能性が示唆された。
Figure 0006061424
本発明は抗ウイルス剤に関するため,医薬産業において利用されうる。

Claims (3)

  1. ヘアリーベッチ(Vicia villosa)レクチン,フジ(Wisteria floribunda)レクチン,ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)レクチン,又は麹菌(Aspergillus oryzae)レクチンを有効成分として含む抗ウイルス剤であって,
    前記抗ウイルス剤がインフルエンザの治療剤である抗ウイルス剤
  2. 請求項1に記載の抗ウイルス剤を含む,
    鼻腔又は経口投与用のインフルエンザの治療剤。
  3. 請求項1に記載の抗ウイルス剤を含む,インフルエンザウイルス治療用飲食品。
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