JP2017084608A - 端子、ワイヤーハーネス及び端子の製造方法 - Google Patents

端子、ワイヤーハーネス及び端子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザ溶接にて作製される筒状圧着部を有する構成において、封止部における割れの発生を防止して止水の信頼性を向上することができる端子、ワイヤーハーネス及び端子の製造方法を提供する。【解決手段】端子は、外部端子と電気的に接続されるコネクタ部と、該コネクタ部とトランジション部を介して一体的に設けられ、電線(不図示)と圧着される筒状圧着部とを備える。筒状圧着部は、コネクタ部側端部に設けられ、トランジション部と連結された封止部36を有する。封止部36は、幅方向断面弧状であり、且つ、幅方向中央部に設けられた底部36aと、幅方向両端部に設けられた頂部36b,36bとを有している。そして封止部36は、該封止部の頂部36b,36bにそれぞれ設けられた未溶接部43,43と、これら未溶接部間に連続して設けられた溶接部42とを有する。【選択図】図2

Description

本発明は、外部との電気的な接続を可能とする端子、ワイヤーハーネス及び端子の製造方法に関し、特に、電線に取り付けられる端子、該端子を有するワイヤーハーネス及び端子の製造方法に関する。
従来、車両分野において、燃費向上の観点から、自動車を構成する各種部品の軽量化が求められている。特に、自動車にて使用されるワイヤーハーネス(組み電線)は、自動車内でエンジンに次ぐ重量を有する部品とされることから、軽量化を図るべく、一部の電線では当該ワイヤーハーネスに用いられる電線の導体(芯線)材料を、銅からアルミニウム、あるいはアルミニウム合金に変更することが進められている。アルミニウムまたはアルミニウム合金電線の先端部に接続される端子としては、通常、銅あるいは銅合金製のものが使用される。よって、上記材料で形成される導体と端子の接続部分では、露出したアルミニウムが異種金属間腐食を起こし、導体が欠損してしまう恐れがあるため、アルミニウム導体を外界から遮断するといった対策を講じる必要がある。
自動車用ワイヤーハーネスにおける電線と端子との接続は、オープンバレル型と呼ばれる圧着端子で電線を加締めて圧着する圧着接合が一般的である。しかし、このようなワイヤーハーネスでは、電線と端子の接続部分に水分等が付着してしまうと、電線に用いられる金属表面の酸化が進み、接合部における抵抗が増加してしまう。
そこで、図9(a)に示すように、電線120の芯線121が挿入される側の長手方向端部130aが開口し、反対側の端部130bが閉塞した筒状圧着部130を有する圧着端子100が開示されている。この筒状圧着部130は、上記反対側の端部130bに断面略U字型の凹状封止部131を有しており(図9(b))、この凹状封止部131により、端面略扁平状の封止部131’(図9(c))と比較して強度が確保され、且つ圧着部130の先端側の止水性が確保されることが開示されている(特許文献1)。
また、圧着部の先端側の止水性を向上するために、図10(a)に示すように、筒状圧着部230の長手方向溶接箇所W1及び幅方向溶接箇所W2の溶接を、ファイバレーザ溶接装置Fwを利用して溶接する方法が開示されている。具体的には、図10(b)に示すように、バレル構成片232の対向端部232a同士を突き合わせた長手方向溶接箇所W1を溶接した後、端部領域R1,R2の少なくとも一方を残して幅方向溶接箇所W2を図中の矢印の範囲Xで溶接することによって、気泡の発生を抑制できることが開示されている(特許文献2)。
特許第5465817号公報 特開2014−164894号公報
しかしながら、上記のような従来の端子において、断面略U字型の凹状封止部に幅方向溶接箇所を形成した場合、電線との圧着時やその後のワイヤーハーネス使用時に、上記凹状封止部の断面視における両端頂部に溶接部の割れが生じることがあり、製造過程や製品の使用環境によっては止水の信頼性が十分ではない。
本発明の目的は、溶接にて作製される筒状圧着部を有する構成において、封止部における割れの発生を防止して止水の信頼性を向上することができる端子、ワイヤーハーネス及び端子の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る端子は、外部端子と電気的に接続されるコネクタ部と、前記コネクタ部と一体的に設けられるか又は別体で連結され、電線と圧着される筒状圧着部とを備える端子であって、前記筒状圧着部は、前記コネクタ部側端部に設けられた幅方向断面弧状の封止部を有し、前記封止部は、該封止部の幅方向両端頂部にそれぞれ設けられた未溶接部と、前記未溶接部間に連続して設けられた溶接部とを有することを特徴とする。
前記封止部は、前記未溶接部と前記溶接部との間に境界面を有し、前記封止部の幅方向断面において、前記境界面によって規定される外周側ビード部の幅方向端部が、内周側ビード部の幅方向端部よりも内側に位置している。
また、前記封止部は、幅方向断面において湾曲した長丸形状を有し、前記未溶接部は、前記封止部の厚み方向中心線よりも前記曲率中心側に設けられた内周側未溶接部分と、前記中心線よりも外周側に設けられた外周側未溶接部とからなる。
前記封止部の幅方向断面において、前記外周側未溶接部の外周長さが、前記内周側未溶接部の内周長さよりも大きい。
また、上記記載の端子と、該端子に圧着された電線とを備えるワイヤーハーネスが提供される。
上記目的を達成するために、本発明に係る端子の製造方法は、外部端子と電気的に接続されるコネクタ部と、前記コネクタ部と一体的に設けられるか又は別体で連結され、電線と圧着される筒状圧着部とを備える端子の製造方法であって、端子原板に曲げ加工を施して、突き合わせ部及び/又は重ね合わせ部を有する筒状体を成形するプレス工程と、前記突き合わせ部及び/又は重ね合わせ部をレーザ光で溶接して、筒状圧着部を形成する溶接工程とを有し、前記プレス工程は、前記筒状体のコネクタ部側端部に、前記突き合わせ部及び重ね合わせ部を有する封止部用成形体を成形すると共に、前記封止部用成形体を幅方向断面弧状に成形し、前記溶接工程は、前記封止部用成形体の側端から幅方向内側に所定距離だけ離間した位置から、前記封止部用成形体の幅方向中心部に向かって前記重ね合わせ部を溶接することを特徴とする。
前記溶接工程は、逆円錐形状を有するレーザ光を用いて前記封止部用成形体を溶接する。
また、前記溶接工程は、前記筒状体をその幅方向がX軸に沿うように配置し、前記重ね合わせ部の幅方向端部から当該重ね合わせ部に沿って幅方向外方に延長した延長線L1’とX軸との角度をθ(θ<90°)とし、前記延長線L1’と前記封止部用成形体の外周面との接点P1を通ってZ軸に平行な直線L2と、前記封止部用成形体の幅方向最端点P2を通ってZ軸に平行な直線L3との距離をαとしたとき、前記封止部用成形体の前記幅方向最端点P2から幅方向内側に、(t×cosθ+α)よりも小さい距離X1(X1<(t×cosθ+α))だけ離間した位置から、レーザ照射を開始することを特徴とする。
本発明によれば、封止部が、幅方向断面弧状であり、且つ、該封止部の幅方向両端頂部に設けられた未溶接部と、未溶接部間に連続して設けられた溶接部とを有している。よって、溶接部によって水分の侵入が防止されると共に、封止部の両端頂部に、溶接熱による母材膨張・収縮時の引張応力が発生せず、両端頂部での応力割れの発生が抑制される。また、両端頂部の未溶接部が、封止部の外縁に設けられたフレーム構造を構成するため、封止部の機械的強度を向上することが可能となる。したがって、水分が多い環境下や負荷が加えられる環境下であっても、封止部における割れの発生を防止して止水の信頼性を向上することができる。
また本発明によれば、筒状体のコネクタ部側端部に、突き合わせ部及び重ね合わせ部を有する封止部用成形体を成形すると共に、該封止部用成形体を幅方向断面弧状に成形し、次いで、封止部用成形体の側端から幅方向内側に所定距離だけ離間した位置から、上記封止部用成形体の幅方向中心部に向かって重ね合わせ部を溶接する。これにより、両端頂部に未溶接部分を形成すると共に、未溶接部間に連続して設けられた溶接部を形成することができ、上記同様の効果を奏することができる。
(a)は、本発明の実施形態に係る端子の構成を概略的に示す斜視図であり、(b)は側面図である。 (a)は、図1における封止部の断面図であり、(b)は、(a)における未溶接部と溶接部との境界部を説明するための断面図、(c)は封止部のX軸方向矢視図である。 (a)は、図2における未溶接部の詳細構成を説明する図であり、(b)は、部分拡大図である。 従来の溶接部で生じる割れを説明する図であり、(a)は従来の端子の斜視図、(b)は従来の溶接部の平面図である。 従来の溶接部で生じる割れの発生メカニズムを説明するための側面図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施形態に係る端子の製造方法におけるプレス工程及び溶接工程を説明する図である。 図6の溶接工程におけるレーザ照射の開始位置を説明する断面図である。 図6の製造方法によって製造された端子の強度試験結果と、従来の端子の強度試験結果を示すグラフである。 従来の端子の構成を示す図であり、(a)は全体斜視図、(b)は封止部の拡大図、(c)は他の従来の封止部の拡大図である。 従来の端子の製造方法を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は封止部の拡大図である。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)は、本実施形態に係る端子の構成を概略的に示す斜視図であり、(b)は側面図である。なお、図1の端子はその一例を示すものであり、本発明に係る端子の構成は、図1のものに限られないものとする。
本発明の端子1は、外部端子(不図示)と電気的に接続されるコネクタ部10と、該コネクタ部とトランジション部20を介して一体的に設けられ、電線(不図示)と圧着される筒状圧着部30とを備えている。端子1は、例えば銅又は銅合金からなる基材で一体成形され、アルミニウム又はアルミニウム合金製の導体(芯線)を有する電線に取り付けられる。銅合金としては、例えば黄銅やコルソン系合金などが用いられる。本実施形態では、コネクタ部10と筒状圧着部30とが一体成形されるが、コネクタ部と筒状圧着部を別体で成形し、これらを連結することで端子を作製してもよい。
コネクタ部10は、雌型端子であり、雄型端子である外部端子(不図示)が挿入口11に挿入されてコネクタ部内で係止されることで、コネクタ部10が外部端子と導通する。なお、本実施形態ではコネクタ部10が雌型端子であるが、コネクタ部が雄型端子で、外部端子が雌型端子であってもよい。また、コネクタ部は、外部端子と係止あるいは嵌合して電気的に接続し得るものであれば、他の形状を有していてもよい。
トランジション部20は、コネクタ部10と筒状圧着部30の橋渡しとなる部分である。本実施形態ではトランジション部20は立体的に形成されるが、平面的に形成されていても良い。端子長手方向の折り曲げに対する機械的強度の観点からは、長手方向の断面2次モーメントが大きくなるようにトランジション部20を設計するのが好ましい。
筒状圧着部30は、コネクタ部側端部とは反対側の端部に設けられ且つ電線が挿入される挿入口31と、大径部32及び小径部33と、該大径部及び小径部を連結する段差部34と、小径部33からコネクタ部側に向かって閉塞した閉塞部35と、コネクタ部側端部に設けられ、トランジション部20と連結された封止部36とを有している。この筒状圧着部30では、導体が露出した電線端部を挿入口31に挿入した状態で筒状圧着部30を加締めることで、筒状圧着部30が塑性変形して電線と圧着される。また、大径部32が被覆圧着部を構成すると共に、小径部33が導体圧着部を構成しており、筒状圧着部30を加締めたとき、大径部32が電線の被覆と圧着し、小径部33及び閉塞部35が導体と圧着する。封止部36は、筒状圧着部30とトランジション部20との境界部に形成された首部とも称されるが、本実施形態では、説明の便宜上、封止部36が筒状圧着部30の一部を構成するものとする。
筒状圧着部30は、大径部32から封止部36に亘って長手方向(図中のY方向)に沿って連続的に設けられた溶接部41を有している。筒状圧着部30は、後述するように端子原板を曲げ加工して得られる部材であり、溶接部41を形成することにより、筒状圧着部30内への水分の侵入が防止される。溶接部41は、好ましくは貫通溶接されてなる部位である。
なお、本願では図示しないが、筒状圧着部30内に、電線接続のための溝や突起(セレーション)が設けられていてもよい。これにより、アルミニウムなどの金属導体の酸化皮膜が破壊され、接触抵抗を低減することができる。また、筒状圧着部30内に、該筒状圧着部を構成する基材上にめっき層が設けられてもよい。めっき層の材料として、例えばすず、銀、金めっきなどを用いることができる。これにより、導電性及び強度を確保することができる。
図2(a)は、図1の線A−Aに沿う断面図であり、図1における封止部36の幅方向(図中のX方向)断面図である。同図に示すように、封止部36は、幅方向断面弧状であり、且つ、幅方向中央部に設けられた底部36aと、幅方向両端部に設けられた頂部36b,36bとを有している。そして封止部36は、該封止部の頂部36b,36bにそれぞれ設けられた未溶接部43,43と、これら未溶接部間に連続して設けられた溶接部42とを有する。すなわち本実施形態では、底部36aに溶接部42が配置され、頂部36b,36bに未溶接部43,43がそれぞれ配置されている。
封止部36は、幅方向断面において一定の曲率半径を有する円弧状であるのが好ましい。但し、封止部36の曲率半径は一定でなくてもよく、異なる複数の曲率半径を有していてもよい。また、封止部36は幅方向断面視において湾曲した長丸形状を有していてもよい。頂部36bは、底部36aと一体成形されており、底部36aからX軸方向及びY軸方向に延出している。頂部36bの端面36b−1は、上方向(図中の+X方向)に膨らんだ曲面である。
未溶接部43は、頂部36bの幅方向外側に位置しており、封止部36の幅方向断面において外側に膨らんだ翼形状である。溶接部42は、一方の頂部36bの幅方向内側から他方の頂部3bの幅方向内側に亘って連続的に形成されており、好ましくは貫通溶接されてなる部位である。溶接部42の表側ビード幅は、50μm〜500μmである。溶接部42を形成することにより、筒状圧着部30内への水分の侵入が防止される。
また、封止部36は、未溶接部43と溶接部42との間に境界面44を有している。境界面44は、封止部36の幅方向断面においてほぼ直線状に形成されている。この境界面44は、溶接部42の形成時に、母材の溶融・再凝固部と、未溶融部との間に形成される。また、レーザ光の照射部分からの熱伝達により、境界面44に対して封止部36の幅方向外側に熱影響部(不図示)が形成されている。本発明では熱影響部は未溶接部43に含まれる。
本実施形態では、封止部36の幅方向断面において(図2(b))、図2(b)中の+Z方向を上方向、−Z方向を下方向としたとき、溶接部42は、封止部36の上面に内周側ビード部45(表側ビード部)、封止部36の下面に外周側ビード部46(裏側ビード部)を有している(図2(c))。そして、境界面44の上端によって内周側ビード部45の幅方向端部45aが規定され、境界面44の下端によって外周側ビード部46の幅方向端部46aが規定される。また、封止部36の幅方向断面において、外周側ビード部46の幅方向端部46aは、内周側ビード部45の幅方向端部45aよりも内側に位置している。これにより、未溶接部と溶接部との間の境界面がZ軸と略平行に形成された場合と比較して、未溶接部43の断面積が大きくなる。
また、封止部36の幅方向断面において、境界面44は、封止部36の未溶接時における重ね合わせ部64の幅方向端部64aよりも外側に位置している(図2(b))。これにより、重ね合わせ部64が幅方向の全体に亘って溶接され、幅方向端部64aからの水分の侵入を防止することができ、止水性が向上する。
図3(a)及び(b)は、図2における未溶接部43の詳細構成を説明する図である。未溶接部43は、封止部36の厚み方向中心線L1よりも曲率中心C側に設けられた内周側未溶接部43aと、厚み方向中心線L1よりも外周側に設けられた外周側未溶接部43bとからなる。外周側未溶接部43bの断面積Saは、内周側未溶接部43bの断面積Sbよりも大きい。
封止部36の幅方向断面において、外周側未溶接部43bの外周長さLbは、内周側未溶接部43aの内周長さLaよりも大きい。また、図3(b)の拡大図に示すように、未溶接部と溶接部との間の境界面がZ軸と平行に形成された場合(境界面44’)における外周側未溶接部の外周長さをLb’としたとき、本実施形態における外周長さLbは、外周長さLb’よりも大きい(Lb>Lb’)。
ここで、従来の溶接方法及び割れの発生メカニズムを次のように説明することができる。図4は、従来の溶接部で生じる割れを説明する図であり、(a)は従来の端子の斜視図、(b)は従来の溶接部の平面図である。
従来の端子300では、図4(a)に示すように、封止部301の幅方向全体に亘って溶接部302が形成される。すなわち、溶接部302は、封止部301の底部301aのみならず、頂部301bにも形成され、また、封止部301の幅方向最端まで形成されている。このような溶接部302を形成する場合、図4(b)に示すように、一方の頂部301bから底部301aを通って他方の頂部(不図示)に至るまでレーザ光LL’を照射する。
図5は、従来の溶接部で生じる割れの発生メカニズムを説明する側面図である。同図に示すように、端子300と電線400との圧着工程において、筒状圧着部330に電線400を挿入した状態で大径部332及び小径部333を加締める。このとき、第1ステップとして、圧着時の押圧力による大径部332や小径部333の塑性変形、或いは該押圧力に伴うコネクタ部310のベンドアップにより、溶接部302に予期せぬ負荷が加えられることがある。また、第2ステップとして、ベンドアップ後のコネクタ部がストッパ(不図示)等の器具に衝突した際にも、溶接部302に予期せぬ負荷が加えられることがある。上記第1,第2ステップにおける負荷により、溶接部302の中央(図4(b)に示す位置と同様の位置)に割れが生じる場合がある。また、第2ステップの負荷によって生じる割れは、コネクタ部310のベンドアップが生じているとき、すなわち封止部301が曲げられて負荷がピークに達する前にも生じる可能性があり、封止部301の強度以外の他の要因が考えられる。本明細書では上記メカニズムによって生じる割れを、説明の便宜上「圧着割れ」と称する。
一方、本実施形態では、封止部36に溶接部42を形成する際、未溶接部43を封止部36の幅方向両端の頂部36b,36bに設けるので、頂部36b,36bに母材膨張・圧縮時の引張応力が発生せず、また発生したとしても母材の引張強度を超えることはなく、封止部36の応力割れを防止することができる。また、封止部36が幅方向断面弧状であり、且つ、頂部36b,36bの未溶接部43,43が、封止部36の両端外縁上部に対向配置された3次元フレーム構造をなすため、封止部36に未溶接部43を設けない場合と比較して、溶接後の機械的強度が向上する。したがって、圧着時に大径部32或いは小径部33が変形した場合や、圧着時や圧着後に封止部36に予期せぬ負荷が加えられた場合であっても、封止部36の圧着割れを抑制することができる。このように、本構成によれば応力割れの発生と圧着割れの発生の双方を同時に抑制することができる。
次に、本実施形態に係る端子の製造方法を説明する。
先ず、銅又は銅合金など金属からなる板材を圧延して、所定厚さ、例えば厚さ0.2mm〜0.8mmの金属基体を作製する。また、必要に応じて、金属基体の任意の部分にめっき層を設ける。そして、金属基体をプレス加工(1次プレス)にて、複数の端子が平面展開した状態となるように、繰り返し形状で打ち抜く。これにより、繰り返し形状の構成単位となる板状部位(端子原板)が所定ピッチで櫛歯状に列設した片持ち型(又は両持ち型)の被処理体が作製される。
次に、繰り返し形状の構成単位となる各板状部位に曲げ加工を施して(2次プレス)、コネクタ部、トランジション部及び圧着部用筒状体を形成する(プレス工程)。このとき、圧着部用筒状体として、コネクタ部側に向かって、筒状圧着部用成形体、閉塞部用成形体及び封止部用成形体がこの順に形成される。
上記プレス工程において、筒状圧着部用成形体は、その断面が隙間の開いていない略C型となっており、上部に突き合わせ部が形成される。閉塞部用成形体は、筒状圧着部用成形体からコネクタ部側に向かって徐々に縮径した筒状体であり、上部に突き合わせ部が形成される。
封止部用成形体60は、図6(a)に示すように、端子原板61の幅方向両端部62,62を内側に折り返すことにより形成され、これと同時に、突き合わせ部63及び重ね合わせ部64がそれぞれ形成される。更に、上記プレス工程では、クリンパ治具等の型部材(不図示)を用いて、封止部用成形体60を幅方向断面弧状に成形する。これにより、封止部の底部36a(図2参照)に対応する部位36a’と、頂部36b,36b(図2参照)に対応する部位36b’,36b’とが、それぞれ成形される。
次いで、封止部用成形体60の上方からファイバレーザ光LL1を照射し、突き合わせ部63に沿ってファイバレーザ光を掃引し(図6(a)中のY軸方向)、当該突き合わせ部63の突き合わせ面を溶接する(図6(b))。本実施形態では、筒状圧着部用成形体及び閉塞部用成形体の突き合わせ部(不図示)と共に、封止部用成形体60の突き合わせ部63が1サイクルにて溶接される。なお、筒状圧着部用成形体、閉塞部用成形体及び封止部用成形体60の突き合わせ部は、1サイクル、すなわち一回の掃引で連続的に形成されなくてもよく、2回以上(2サイクル以上)の掃引で溶接されてもよい。
ファイバレーザ光による溶接は、ビード幅に対する溶け込み深さの比(アスペクト比)が高い深溶け込み溶接が可能であるため、封止部用成形体60の強度低下や変形を抑制しつつ、突き合わせ部63を適切に封止することができる。ファイバレーザ光は、連続発振、パルス発振、QCW発振、又はパルス制御された連続発振によって照射されてもよい。また、ファイバレーザ光は、シングルモードまたはマルチモードファイバレーザ光でも構わない。
更に、圧着部用筒状体のコネクタ部側端部において、図6中のX軸方向にファイバレーザ光LL2を掃引し、封止部用成形体60の重ね合わせ部64を溶接する(溶接工程)。具体的には、図6(c)に示すように、封止部用成形体60の一方の側端から幅方向内側に距離X1(X1>0)だけ離間した位置から、封止部用成形体60の幅方向中心部まで、当該封止部用成形体60の重ね合わせ部64を溶接する。これにより、封止部36の頂部36bに未溶接部43が形成されると共に、幅方向内側に溶接部42が形成され、未溶接部43と溶接部42との間に境界面44が形成される。このとき、図7に示すように、封止部用成形体60の幅方向断面において、封止部用成形体60の幅方向端部には180°折り曲げ加工が施されているため、厳密には封止部用成形体60の部位36b’における幅方向板厚は端子原板の板厚tとは異なるものの、部位36b’における幅方向板厚を端子原板の板厚tに近似することができる。また、重ね合わせ部64の幅方向端部64aから当該重ね合わせ部に沿って幅方向外方に延長した延長線L1’とX軸との角度をθ(θ<90°)とし、延長線L1’と封止部用成形体60における部位36b’の外周面との接点P1を通ってZ軸に平行な直線L2と、封止部用成形体60における部位36b’の幅方向最端点P2を通ってZ軸に平行な直線L3との距離をαとしたとき、幅方向端部64aと幅方向最端点P2とのX軸方向距離は(t×cosθ+α)と近似することができる。したがって、前記封止部用成形体の幅方向最端点P2から幅方向内側に、(t×cosθ+α)よりも小さい距離X1(X1<(t×cosθ+α))だけ離間した位置から、レーザ照射を開始するのが好ましい。これにより、重ね合わせ部64の幅方向端部64aを確実に封止することができ、止水性を更に向上することができる。
本溶接工程で使用されるファイバレーザ光LL2は、逆円錐形状を有しており、このファイバレーザ光LL2を用いて封止部用成形体60を溶接する。具体的には、ファイバレーザ光LL2の焦点位置Fを封止部用成形体60の下方に位置し、ファイバレーザ光LL2をX軸方向に掃引して、重ね合わせ部64を溶接する。なおファイバレーザ光LL2の掃引時における焦点位置FのZ軸方向位置は、封止部用成形体60の断面形状に沿ってX軸方向への移動と共にシフトさせてもよいし、一定であってもよい。また、ファイバレーザ光LL2の焦点位置Fは、必ずしも封止部用成形体60の下方に位置させなくてもよく、封止部用成形体60の下面、内部、上面あるいは上方に位置させてもよい。焦点位置Fを封止用成形体60の上面あるいは上方に位置させる場合には、キーホール溶接を行う。これにより、封止部36の幅方向断面において、表側ビード部46の端部46aが、重ね合わせ部64の幅方向端部64aよりも外側に形成される。
次いで、上記と同様にして、封止部用成形体60の他方の側端から幅方向内側に距離X1だけ移動した位置から、封止部用成形体60の幅方向中心まで、当該封止部用成形体60の重ね合わせ部64を溶接する(図6(d))。これにより、封止部36の頂部36b,36bに未溶接部43,43が形成されると共に、これら未溶接部間に、封止部36の厚さ方向に貫通した溶接部42が形成される(図2参照)。
図8は、図6の製造方法によって製造された端子1の強度試験結果と、従来端子の強度試験結果を示すグラフである。強度試験には、板厚0.25mm、電線サイズ1.25sq 用のめす端子を用いた。また、試験方法として、コネクタ部を固定すると共に筒状圧着部を自由端とし、筒状圧着部の端部の上面又は下面に荷重を経時的に加え、筒状圧着部の端部の変位及び荷重を測定した。
図8中、T1は本実施形態に係る端子の曲線、T2は溶接部が封止部の幅方向端面から形成されている従来端子(図4(b)参照)の曲線、T3はオープンバレル型である従来端子の曲線である。本実施形態の端子では、筒状圧着部に下方向荷重を加えた場合(曲線T1−a)及び上方向荷重を加えた場合(曲線T1−b)の双方で、最大強度が高いことが分かる。一方、図4(b)に示すような端子の場合、下方向荷重(曲線T2−a)及び上方向荷重(曲線T2−b)の最大強度が、それぞれ本実施形態に係る端子の最大強度よりも低下した。また、オープンバレル型である従来端子の場合も、下方向荷重(曲線T3−a)及び上方向荷重(曲線T3−b)最大強度が、それぞれ本実施形態に係る端子の最大強度よりも低下した。この試験結果から、本実施形態に係る端子によれば、従来端子と比較して強度が向上することが分かった。
上述したように、本実施形態によれば、封止部36が、幅方向断面弧状であり、且つ、該封止部の幅方向両端の頂部36b,36bに設けられた未溶接部43,43と、未溶接部間に連続して設けられた溶接部42とを有している。よって、溶接部42によって水分の侵入が防止されると共に、封止部36の頂部36b,36bに溶接熱による母材膨張・収縮時の引張応力が発生せず、両端頂部36b,36bでの応力割れの発生が抑制される。また、頂部36b,36bの未溶接部43,43が、封止部36の外縁に設けられたフレーム構造を構成するため、封止部36の機械的強度を向上することが可能となる。したがって、水分が多い環境下や負荷が加えられる環境下であっても、封止部36における割れの発生を防止して止水の信頼性を向上することができる。
以上、上記実施形態に係る端子及び端子の製造方法について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、コネクタ部は、挿入口を有するボックス部であるが、これに限らず、雄型端子の長尺状の接続部(挿入タブ)であってもよい。
また、トランジション部は、端子の側面視において底面から上方に(例えば、筒状圧着部の軸位置まで)シフトして設けられてもよい。また、筒状圧着部は、段差部を有さず、一定の径を有していてもよい。これらの構成によっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
上記実施形態では、銅又は銅合金からなる端子の筒状圧着部を、アルミニウムやアルミニウム合金等の卑な金属からなる電線導体に圧着するが、その卑な金属以外に、例えば、銅や銅合金等の貴な金属からなる電線導体に圧着接続してもよい。本構成によっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
本発明の端子は、線材を絶縁被覆してなる電線と圧着されることにより、端子と該端子に圧着された電線とで構成される接続構造体、及び接続構造体を有するワイヤーハーネスを提供することが可能となり、自動車などの移動体に搭載されるワイヤーハーネス、あるいはモータ用導線、産業用ロボットの配線体として有用である。さらに、本発明の端子は強度が高いことから、従来の端子の封止部(首部)より細くすることも可能であり、また、高い曲げ強度が求められる配策部分などにも好適に用いることができる。
1 端子
10 コネクタ部
11 挿入口
20 トランジション部
30 筒状圧着部
31 挿入口
32 大径部
33 小径部
34 段差部
35 閉塞部
36 封止部
36a 底部
36b,36b 頂部
36a’ 部位
36b’,36b’ 部位
41 溶接部
42 溶接部
43,43 未溶接部
43a 内周側未溶接部
43b 外周側未溶接部
44 境界部
44a 下部
44b 上部
45 内周側ビード部
45a 幅方向端部
46 外周側ビード部
46a 幅方向端部
60 封止部用成形体
60a 側端
61 端子原板
62,62 幅方向両端部
63 突き合わせ部
64 重ね合わせ部
64a 幅方向端部
300 端子
301 封止部
302 溶接部
303 熱影響部
301a 底部
301b 頂部
310 コネクタ部
330 筒状圧着部
332 大径部
333 小径部
400 電線
C 曲率中心
CL 割れ
F 焦点位置
θ 角度
L1 厚み方向中心線
L1’ 延長線
L2 直線
L3 直線
La 外周長さ
Lb 内周長さ
La’ 外周長さ
LL’ レーザ光
LL1 ファイバレーザ光
LL2 ファイバレーザ光
P1 接点
P2 幅方向最端点
T1,T2,T3 曲線
t 厚み
X1 距離

Claims (8)

  1. 外部端子と電気的に接続されるコネクタ部と、前記コネクタ部と一体的に設けられるか又は別体で連結され、電線と圧着される筒状圧着部とを備える端子であって、
    前記筒状圧着部は、前記コネクタ部側端部に設けられた幅方向断面弧状の封止部を有し、
    前記封止部は、該封止部の幅方向両端頂部にそれぞれ設けられた未溶接部と、
    前記未溶接部間に連続して設けられた溶接部と、を有することを特徴とする端子。
  2. 前記封止部は、前記未溶接部と前記溶接部との間に境界面を有し、
    前記封止部の幅方向断面において、前記境界面によって規定される外周側ビード部の幅方向端部が、内周側ビード部の幅方向端部よりも内側に位置していることを特徴とする、請求項1記載の端子。
  3. 前記封止部は、幅方向断面において湾曲した長丸形状を有し、
    前記未溶接部は、前記封止部の厚み方向中心線よりも前記曲率中心側に設けられた内周側未溶接部と、前記中心線よりも外周側に設けられた外周側未溶接部とからなることを特徴とする、請求項2記載の端子。
  4. 前記封止部の幅方向断面において、前記外周側未溶接部の外周長さが、前記内周側未溶接部の内周長さよりも大きいことを特徴とする、請求項3記載の端子。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の端子と、該端子に圧着された電線とを備えるワイヤーハーネス。
  6. 外部端子と電気的に接続されるコネクタ部と、前記コネクタ部と一体的に設けられるか又は別体で連結され、電線と圧着される筒状圧着部とを備える端子の製造方法であって、
    端子原板に曲げ加工を施して、突き合わせ部及び/又は重ね合わせ部を有する筒状体を成形するプレス工程と、
    前記突き合わせ部及び/又は重ね合わせ部をレーザ光で溶接して、筒状圧着部を形成する溶接工程と、を有し、
    前記プレス工程は、前記筒状体のコネクタ部側端部に、前記突き合わせ部及び重ね合わせ部を有する封止部用成形体を成形すると共に、前記封止部用成形体を幅方向断面弧状に成形し、
    前記溶接工程は、前記封止部用成形体の側端から幅方向内側に所定距離だけ離間した位置から、前記封止部用成形体の幅方向中心部に向かって前記重ね合わせ部を溶接することを特徴とする端子の製造方法。
  7. 前記溶接工程は、逆円錐形状を有するレーザ光を用いて前記封止部用成形体を溶接することを特徴とする、請求項6記載の端子の製造方法。
  8. 前記溶接工程は、
    前記筒状体をその幅方向がX軸に沿うように配置し、
    前記重ね合わせ部の幅方向端部から当該重ね合わせ部に沿って幅方向外方に延長した延長線L1’とX軸との角度をθ(θ<90°)とし、前記延長線L1’と前記封止部用成形体の外周面との接点P1を通ってZ軸に平行な直線L2と、前記封止部用成形体の幅方向最端点P2を通ってZ軸に平行な直線L3との距離をαとしたとき、前記封止部用成形体の前記幅方向最端点P2から幅方向内側に、(t×cosθ+α)よりも小さい距離X1(X1<(t×cosθ+α))だけ離間した位置から、レーザ照射を開始することを特徴とする、請求項6又は7記載の端子の製造方法。
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