以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、自動車用の排気タービン過給機(ターボチャージャ)に用いられるタービンハウジングに具体化したものである。
[第1実施形態]
図1は、タービンハウジングの斜視図である。この図1に示すように、タービンハウジング10は、ハウジング本体11と、バルブ体12と、バルブ回動機構13とをそれぞれ備えている。
はじめに、ハウジング本体11について説明する。図2は、タービンハウジング10の分解斜視図である。なお、図2の斜視図は、図1に図示されている状態と向きが反対となっている。この図2に示すように、ハウジング本体11は、内側ハウジング21と、外側シェル22とを備えている。内側ハウジング21は、その外形が全体として概ね渦巻き形状をなしている。内側ハウジング21は、高耐熱性を有する鋳鉄又は鋳鋼からなり、鋳造によって継目なく一体に形成されている。
図3は、ハウジング本体11を構成する内側ハウジング21の平面図であり、図4は図3におけるA−A断面図である。図2に加え、これら図3及び図4も参照しつつ説明すると、内側ハウジング21は、排気導入部31と、スクロール部32と、タービン室33(図4参照)と、出口管部34と、バイパス管部35とを有している。
排気導入部31は、自動車の内燃機関(エンジン)から流出した排気ガスがタービンハウジング10に導入される入口部分であり、排気導入口311(図1及び図4参照)を有している。図2に示すように、排気導入部31には入口フランジ312が設けられている。入口フランジ312には取付開口部313が設けられており、この取付開口部313に排気導入部31が取り付けられる。入口フランジ312を用いて、タービンハウジング10が排気マニホールド等の上流側部材と連結される。
図2〜図4の各図に示すように、スクロール部32は、排気導入部31から渦巻き状をなすように形成されている。その渦巻きの形状は、スクロール中心線方向が、排気導入口311に排気ガスが導入される排気導入方向に対して略直交する形状となっている。
図4に示すように、スクロール部32にはその内部にスクロール流路321が形成されている。スクロール流路321は、スクロール部32の形状に沿って渦巻き状をなす流路となっており、その一端は排気導入口311に連通している。スクロール流路321の流路断面積は、その排気導入口311の側から他端側へ向かって徐々に小さくなるように形成されている。排気導入口311に導入された排気ガスは、スクロール部32のスクロール流路321に流入し、図3に一点鎖線の矢印で示すように、そのスクロール流路321に沿って円環状に流通する。
タービン室33は、排気タービン過給機のタービンインペラTが収容される空間である。図4に示すように、タービン室33は、スクロール部32のスクロール中央部に設けられている。このため、タービン室33の外周側にスクロール部32が円環状をなすように設けられている。タービン室33は、スクロール中心線方向の一方の側に向けて開口しており、開口部分からタービン室33にタービンインペラTが収容される。スクロール中心線方向とタービン室33の中心線方向とは平行をなしている。
このタービン室33は、スクロール流路321の他端側(排気導入口311とは反対側)と連通している。このため、スクロール流路321を流通した排気ガスは、タービン室33に導入される。また、スクロール部32の内周側には環状連通部322が設けられており、その環状連通部322により、スクロール流路321の内周側はその周方向全域にわたってタービン室33と連通した状態となっている。このため、スクロール流路321を流通する排気ガスは、円環状に流通しつつも、その一部が環状連通部322を通じてタービン室33に導入される。
出口管部34は、スクロール部32のスクロール中央部において、タービン室33とは反対側(以下、反タービン側という。)に立設されている。出口管部34は管状をなすように形成され、その管の延びる方向がスクロール中心線方向と平行をなしている。また、出口管部34は、その中心流線(中心軸線)C1(後述の図5参照)が、タービンインペラTの中心軸線と一致すように設けられている。そして、出口管部34の管内は排気流路341とされている。排気流路341の一方の側はタービン室33に連通してその一部を構成し、他方の側はハウジング外に向けて開口している。この開口部分は、流路出口342となる。このため、タービン室33に導入された排気ガスは、出口管部34に至ってその管内の排気流路341をスクロール中心線方向に沿って流通した後、流路出口342から内側ハウジング21の外に導出される。
ここで、図1〜図4の各図に示すように、出口管部34の開口側には、傾斜端面343と非傾斜端面344とが形成されている。傾斜端面343は、出口管部34の延びる方向(流路出口342からの排気導出方向D1)に対し、内側から外周側に向かって傾斜している。出口管部34の開口側の端面のほとんどの部分、例えば平面視において4分の3程度(図3参照)がこの傾斜端面343となっている。これに対し、非傾斜端面344は、スクロール中心線方向に対して略直交しており、出口管部34の開口側の端面のうち、傾斜端面343が形成された部分を除く一部となっている。
出口管部34がこのように構成されているため、排気導入口311から内側ハウジング21に導入された排気ガスは、スクロール流路321、タービン室33及び排気流路341を流通し、流路出口342から内側ハウジング21の外に導出される。この流れの途中において、排気ガスがタービン室33に収容されたタービンインペラTに衝突し、それによってタービンインペラTが回転する。
内側ハウジング21は、出口管部34の他に、前述したとおり、バイパス管部35を有している。図2〜図4の各図に示すように、バイパス管部35は出口管部34が設けられた側と同じく反タービン側に設けられている。バイパス管部35は管状をなすように形成され、排気導入部31の側から出口管部34の側に向かい、さらにスクロール中心線方向に対して傾斜するように設けられている。図4に示すように、このバイパス管部35の管内はバイパス流路351とされている。バイパス流路351の一方の側は、スクロール流路321の流路始点部分に連通し、他方の側はハウジング外に向けて開口している。この開口部分は、バイパス出口352となる。
図2〜図4の各図に示すように、バイパス管部35の開口端面353は、バイパス管部35が延びる方向(バイパス出口352からの排気導出方向D2)に対し、内側から外周側に向かって傾斜するように形成されている。前述したように、出口管部34もその開口側が傾斜端面343となっており、この傾斜端面343とバイパス管部35の開口端面353とで所定角度が形成されている。この実施形態では、80度程度の角度が設定されている。
バイパス管部35がこのように構成されているため、排気導入口311に導入された排気ガスがこのバイパス流路351を流通すると、スクロール流路321やタービン室33を避け、それらを流通するよりも短い流通距離で、内側ハウジング21の外に導出される。この場合、バイパス流路351がスクロール中心線方向に対して傾斜する方向に向いているため、排気ガスの導出方向は、流路出口342からの導出方向とは異なり、スクロール中心線方向に対して傾いた方向に向けて導出される。
次に、外側シェル22について説明する。図1及び図2に示すように、外側シェル22は、内側ハウジング21の反タービン側を全体的に覆うように設けられている。外側シェル22は、高耐熱性を有するステンレス鋼等の金属材料を素材とし、曲げ等の加工を施すことによって継目なく一体に形成されている。
図2に示すように、この外側シェル22は、スクロール覆い部41と、出口筒部42とを有している。スクロール覆い部41は、排気導入部31と、内側ハウジング21の外周側に設けられているスクロール部32とを、その反タービン側から覆うように設けられている。スクロール覆い部41のうち、内側ハウジング21側となる端縁は、排気導入部31の反タービン側表面やスクロール部32の側部と当接しており、その当接部分で溶接されている。これにより、外側シェル22が内側ハウジング21に取り付けられ、両者が一体化されている。
出口筒部42は、円筒状をなすように形成されており、その中心軸線は、内側ハウジング21のスクロール中心線方向と平行をなしている。出口筒部42はその内側に、出口管部34及びバイパス管部35が収容されている。出口管部34の流路出口342やバイパス管部35のバイパス出口352から導出された排気ガスは、出口筒部42の内部の出口流路421を流通し、その後、出口筒部42の反タービン側の開口端部422の側に至り、開口部分から導出される。そのため、出口筒部42の開口端部422における開口部分は、排気導出口423となっている。
また、流路出口342及びバイパス出口352の両方から排気ガスが導出される場合は、その両方から排出された排気ガスは、出口流路421において合流した後に、排気導出口423から導出される。出口筒部42の開口端部422には、出口フランジ424が設けられている。出口フランジ424を用いて、タービンハウジング10が下流側部材と連結される。
タービンハウジング10の下流側部材は、排気ガスを浄化する触媒装置81である。図5は、そのタービンハウジング10とその触媒装置81との連結状態を示す断面図である。なお、図5では、バルブ体12の図示が省略されている。この図5に示すように、タービンハウジング10は、連結管82を介して、触媒装置81と連結されている。出口フランジ424は、この連結管82との連結に用いられている。連結管82と触媒装置81とは、それぞれの接続端縁部に設けられた連結フランジ83a,83bを用いて連結されている。
触媒装置81の内部には、ガス浄化触媒811が設けられている。ガス浄化触媒811の導入側端面812は、流路出口342の中心流線C1に対して略直交する状態から傾斜した状態で設けられている。また、ガス浄化触媒811の導入側端面812は、流路出口342の中心流線C1の延長上に、その中央部が配置されるように設けられている。このため、排気ガスが流路出口342から導出された後、さらに排気導出口423から導出されると、その排気ガスは、連結管82内の接続流路821を流通し、その主流は導入側端面812の中央部に至る。
一方、バイパス管部35は、前述したとおり傾斜して設けられているところ、その傾斜は、バイパス管部35の中心流線C2の延長上に、ガス浄化触媒811における導入側端面812の内側領域が配置されるような傾斜となっている。このため、排気ガスがバイパス出口352から導出された後、さらに排気導出口423から導出されると、排気ガスは、接続流路821を流通し、その主流は導入側端面812の外縁側領域ではなく内側領域に至る。
以上がハウジング本体11の構成であり、次に、バルブ体12及びバルブ回動機構13の構成について説明する。バルブ体12は、出口管部34の流路出口342及びバイパス管部35のバイパス出口352を開閉するために設けられている。バルブ体12はその配置位置が切り替えられることにより、流路出口342を閉じてバイパス出口352を開状態とする第1位置と、バイパス出口352を閉じて流路出口342を開状態とする第2位置とに切替配置される。バルブ回動機構13は、このバルブ体12を回動させて、第1位置と第2位置とに配置させるためのものである。
図6は、バルブ体12が第1位置に配置された状態を示しており、図7はバルブ体12が第2位置に配置された状態を示している。いずれの図においても、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるC−C断面図である。
図2、図6及び図7に示すように、バルブ体12は、第1弁部61と、第2弁部62とを有している。また、バルブ回動機構13は、回動軸部71と、軸支部72と、ブッシュ73と、リンクプレート74とを有している。バルブ体12の第1弁部61とバルブ回動機構13の回動軸部71とは、内側ハウジング21と同じ素材を用いて、鋳造により一体に形成されている。
まず、バルブ回動機構13の構成から説明する。図2に示すように、回動軸部71は、スクロール中心線方向に対して略直交し、かつ排気導入口311への排気導入方向とも略直交する方向を軸方向とし、その軸方向に延びるように設けられている。この回動軸部71は、軸基部711と、その軸基部711から軸方向に延びるシャフト部712とを有しており、このシャフト部712が前記内側ハウジング21に設けられた軸支部72に挿通される。
軸支部72は、内側ハウジング21の反タービン側に設けられている。軸支部72は、スクロール部32におけるスクロール流路321の下流側であって、出口管部34とバイパス管部35とに挟まれた空間部Kの側方に配置されている。軸支部72には、回動軸部71が延びる方向と同じ方向に沿って、軸挿通孔721が形成されている。この軸挿通孔721に、ブッシュ73を介して回動軸部71のシャフト部712が挿通されている。回動軸部71の軸基部711は空間部Kに配置されている。このような構成により、回動軸部71が軸支部72によって回動可能に支持されている。
リンクプレート74は、軸支部72及び外側シェル22のリンク用開口部425を挿通して、ハウジング外に配置された回動軸部71の先端部に設けられている。リンクプレート74は、シリンダ等のアクチュエータが有するロッドと連結されており、アクチュエータを駆動してそのロッドを軸方向に移動させることにより、リンクプレート74を介して回動軸部71を回動させることが可能となる。
図2、図6及び図7に示すように、バルブ体12の第1弁部61は平板状をなし、回動軸部71の軸基部711から、その側方へ延びるように設けられている。第1弁部61の一面は、流路出口342の傾斜端面343と当接する第1当接面611となっている。このため、傾斜端面343は第1当接面611と当接する第1座面となる。
そして、図6に示すようにバルブ体12が第1位置に配置された状態では、第1当接面611が傾斜端面343に当接し、流路出口342が第1弁部61によって閉じられる。もっとも、出口管部34の開口端には非傾斜端面344も形成されている。このため、第1弁部61によって流路出口342のすべては閉じられず、非傾斜端面344の内側には流路出口342が一部開口した流通口345が形成されている。その一方、バイパス出口352はその全域が開状態となっている。
図2、図6及び図7に示すように、バルブ体12の第2弁部62は、第1弁部61における第1当接面611の裏面側に設けられている。第2弁部62は、外側シェル22と同様の高耐熱性を有する金属材料を素材とする平板であり、バイパス管部35の開口端面353の外形形状に合わせた長円形状をなすように形成されている。第2弁部62のうち、第1弁部61とは反対側の面は、バイパス出口352の開口端面353と当接する第2当接面621となっている。このため、開口端面353は第2当接面621と当接する第2座面となる。
図7に示すようにバルブ体12が第2位置に配置された状態では、第2当接面621が開口端面353に当接し、バイパス出口352が第2弁部62によって閉じられる。この場合、第2弁部62は、前述したように開口端面353の外形形状に合わせて長円形状に形成されているため、閉状態でも流通口345が設けられる第1弁部61とは異なり、第2弁部62によってバイパス出口352の全域が閉じられる。その一方で、流路出口342はその全域が開状態となっている。
ここで、前述したように、第2弁部62の第2当接面621は、第1弁部61の第1当接面611の反対側に設けられている。また、出口管部34の流路出口342とバイパス管部35のバイパス出口352とが向かい合い、その間にバルブ体12や回動軸部71の軸基部711が配置されている。そして、回動軸部71の軸基部711は、排気流路341とバイパス流路351との間に配置されている。このため、アクチュエータのロッドを駆動して回動軸部71を回動させることにより、図6に示す第1位置に配置された状態のバルブ体12は、図7に示す第2位置に配置された状態に切替配置される。なお、回動軸部71をこれとは逆方向に回動させることにより、バルブ体12は第2位置から第1位置に切替配置される。
図6及び図7に示すように、第2当接面621は、第1当接面611に対して傾斜しており、両面の間に所定角度が形成されている。この傾斜は、排気導出口423から遠い側が互いに近づくような傾斜となっている。この実施形態では、第1当接面611と第2当接面621との間の角度は、10度〜20度に設定されている。
図6(b)に示すように、バルブ体12が第1位置に配置された状態で、第2当接面621は、バイパス管部35の傾斜方向と平行をなし、バイパス出口352からの延長上の領域R1外に配置されている。そのため、バルブ体12が第1位置に配置された場合に、第2弁部62の存在によって、開状態にあるバイパス出口352から導出される排気ガスの流れが阻害されることが抑制されている。
同様に、図7(b)に示すように、バルブ体12が第2位置に配置された状態で、第1当接面611は、流路出口342からの延長上の領域R2外に配置されている。そのため、バルブ体12が第2位置に配置された場合に、第1弁部61の存在によって、開状態にある流路出口342から導出される排気ガスの流れが阻害されることが抑制されている。
また、図6及び図7に示すように、第2弁部62は、次のような構成で、第1弁部61に取り付けられている。まず、第1弁部61の裏面には、その裏面から凸となる取付突部612が設けられている。第2弁部62の中心部には、連結軸部622が設けられている。この連結軸部622を介して、第2弁部62が取付突部612に取り付けられている。連結軸部622と第2弁部62とは、第2当接面621が連結軸部622に対して傾斜可能となる遊びを持って連結されている。このため、バルブ体12が第2位置に配置されて、第2弁部62の第2当接面621がバイパス管部35の開口端面353に当接すると、その遊びによって、両面間の精度誤差等が吸収され、両者が密接した状態となる。
以上のように、バルブ体12は、回動軸部71の回動によって第1位置と第2位置とに切替配置されるが、この両位置の間の中間位置にバルブ体12を配置することも可能である。図8は、バルブ体12がその中間位置に配置された状態を示しており、図6及び図7と同様、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるD−D断面図である。
図8に示すようにバルブ体12が中間位置に配置された状態では、第1弁部61及び第2弁部62のいずれもが、流路出口342やバイパス出口352を開状態としている。ただ、第1弁部61は、流路出口342からの延長上の領域R2内に配置されている(領域R2については図7を参照)。また、第2弁部62は、バイパス出口352からの延長上の領域R1内に配置されている(領域R1については図6を参照)。
この第1弁部61や第2弁部62の存在により、流路出口342及びバイパス出口352から導出される排気ガスの流量はそれぞれ制限されている。流路出口342及びバイパス出口352のそれぞれから導出される排気ガスの流量割合は任意であるが、例えば、過給圧が所定数値に達してその状態を維持する場合には、流路出口342からの流量とバイパス出口352からの流量とが、概ね6対4の割合となる中間位置とすることが好ましい。図8は、この流量状態となる中間位置を示している。
なお、バルブ体12が中間位置に配置されると、バイパス出口352から導出される高温の排気ガスの流れは、第2弁部62に衝突することによって乱される。つまり、図8(b)に矢印で示すように、バイパス出口352から導出される排気ガスは、第2弁部62に衝突してその流れの方向が変えられる。そのため、バイパス出口352から導出される高温の排気ガスが出口筒部42の出口流路421内で拡散され、バイパス流路351を流通して高温状態が維持された状態の排気ガスが、その流れを維持しながらガス浄化触媒811の導入側端面812に供給されることが抑制される。
以上のように構成されたタービンハウジング10を排気タービン過給機に用いることで、次のような排気ガスの流れを形成することが可能となる。
自動車のエンジンを始動させた直後のファーストアイドル時において、アクチュエータのロッドを駆動して回動軸部71を回動させ、図6に示すように、バルブ体12を第1位置に切替配置させる。この第1位置への配置により、第1弁部61の第1当接面611が出口管部34の傾斜端面343に当接し、流路出口342が閉じられる。その一方で、バイパス出口352から第2弁部62が離れ、そのバイパス出口352が開状態となる。
これにより、エンジンから排出されて排気導入口311から内側ハウジング21に導入された排気ガスは、そのほとんどがバイパス流路351を流通する。そして、排気ガスは、スクロール流路321やタービン室33を避け、それらを流通するよりも短い流通距離でバイパス出口352から導出される。このとき、第2弁部62はバイパス出口352からの延長上の領域R2外に配置されているため、バイパス出口352から導出される排気ガスの流れが第2弁部62によって阻害されることが抑制されている。
そして、バイパス出口352から導出された排気ガスは、出口筒部42の出口流路421を経て排気導出口423から導出され、温度低下が抑制されて高温状態の排気ガスは、その流れの方向が維持されながら、ガス浄化触媒811の導入側端面812に至る。これにより、高温状態が維持された排気ガスがガス浄化触媒811に導入され、ガス浄化触媒811を早期に活性化させることができる。
なお、この場合でも、流路出口342は第1弁部61によってすべて閉じられるわけではなく、流通口345が形成された状態となっている。そのため、排気導入口311から導入された排気ガスの一部は、スクロール流路321やタービン室33を流通して排気流路341に至り、流通口345から導出される。この流れによる過給性能はほとんど得られないものの、タービン室33の内圧が低下して、タービンインペラTの回転軸に供給される潤滑油がタービン室33に漏れ出すおそれを低減できる。
ファーストアイドルの所定時間を経過すると、アクチュエータのロッドを駆動して回動軸部71を回動させ、図7に示すように、バルブ体12を第1位置から第2位置に切替配置させる。この第2位置への配置により、第2弁部62の第2当接面621がバイパス管部35の開口端面353に当接し、バイパス出口352の全域が密閉される。その一方で、流路出口342から第1弁部61が離れ、その流路出口342が開状態となる。
これにより、エンジンから排出されて排気導入口311から内側ハウジング21に導入された排気ガスは、スクロール流路321、タービン室33及び排気流路341を流通し、流路出口342から導出される。そして、流路出口342から導出された排気ガスは、出口筒部42の出口流路421を経て排気導出口423から導出され、その流れが維持されながら触媒装置81の導入側端面812に至る。この流れの途中において、排気ガスがタービン室33に収容されたタービンインペラTに衝突し、それによってタービンインペラTを回転させる。このタービンインペラTの回転により排気タービン過給機による過給性能が高められ、エンジンの回転数を上昇させることができる。
次いで、排気タービン過給機による過給圧が所定数値となった時点で、アクチュエータのロッドを駆動して回動軸部71を回動させ、図8に示すように、バルブ体12を第1位置と第2位置との間の中間位置に切替配置させる。この中間位置への配置により、流路出口342及びバイパス出口352は、いずれも開状態となる。もっとも、第1弁部61は、流路出口342からの延長上の領域R2内に配置され、第2弁部62は、バイパス出口352からの延長上の領域R1内に配置され、各出口から導出される排気ガスの流量比は約6対4の割合となっている。
これにより、エンジンから排出されて排気導入口311から内側ハウジング21に導入された排気ガスは、そのうちの6割程度が、スクロール流路321、タービン室33及び排気流路341を流通し、流路出口342から導出される。その一方で、排気導入口311から導入された排気ガスのうちの4割程度は、スクロール流路321やタービン室33を避け、バイパス出口352から導出される。そして、流路出口342から導出された排気ガスと、バイパス出口352から導出された排気ガスとは、出口筒部42の出口流路421を経て排気導出口423から導出され、下流側の触媒装置81に供給される。この場合、所定の過給圧に達した状態を好適に維持することができる。
この時、図8(b)に矢印で示すように、バイパス出口352から導出される排気ガスは、第2弁部62に衝突してその流れの方向が変えられる。そのため、バイパス出口352から導出される高温の排気ガスが出口筒部42の出口流路421内で拡散され、高温状態が維持された状態の排気ガスが、そのままガス浄化触媒811の導入側端面812に供給されることが抑制される。流路出口342から導出される排気ガスも、その一部の流れが第1弁部61に衝突して拡散されるため、バイパス出口352から導出される高温の排気ガスの拡散効果が高められる。
本実施形態のタービンハウジング10が有する構成とその作用は以上に説明したとおりであり、得られる効果をまとめると以下に示すとおりである。
(1)バルブ体12は、流路出口342を開閉する第1弁部61と、バイパス出口352を開閉する第2弁部62とを有している。第2弁部62は、第1弁部61の裏側に当該第1弁部61と一体的に設けられている。そして、回動軸部71を回動させることにより、バルブ体12は、第1弁部61が流路出口342を閉じてバイパス出口352を開状態とする第1位置と、第2弁部62がバイパス出口352を閉じて流路出口342を開状態とする第2位置とに切替配置される。この場合、バルブ回動機構13としては、第1弁部61と第2弁部62とが一体化された一個のバルブ体12を回動させるための構成で足りる。そのため、弁を開閉させるための機構が複数の弁ごとに設けられた従来構成とは異なり、バイパス流路351を備えた構成でありながら、排気タービン過給機の小型化を実現することができる。
(2)バルブ体12が第2位置に配置され、第2弁部62によってバイパス出口352を閉じて流路出口342が開状態となっている状態で、第1弁部61は、流路出口342からの延長上の領域R2外に配置されている。これにより、排気流路341の流路出口342から導出される排気ガスの流れの途中に第1弁部61が存在しないため、第1弁部61によってその排気ガスの流れが阻害されて、タービンの回転数低下、ひいては過給性能が悪化することを抑制できる。
(3)第1弁部61が当接する出口管部34の傾斜端面343と、第2弁部62が当接するバイパス管部35の開口端面353とは、その一方が他方に対して排気導出方向D1,D2に向かって傾斜するように設けられている。そして、排気流路341とバイパス流路351との間に回動軸部71が設けられている。そのため、バルブ回動機構13によってバルブ体12を回動させる回動範囲がより小さくなる。これにより、バルブ回動機構13において、バルブ体12を回動させるアクチュエータとしてシリンダを用いた場合に、ロッドの可動範囲がより小さい小型のシリンダを用いたり、従前の可動範囲をそのまま維持したりするなど、アクチュエータの小型化を実現できる。
(4)出口管部34の傾斜端面343は、出口管部34の延びる方向に対し、内側から外周側に向かって傾斜している。また、バイパス管部35の開口端面353も、バイパス管部35が延びる方向に対し、内側から外周側に向かって傾斜している。つまり、傾斜端面343及び開口端面353は、互いに近い側が排気導出口423から遠ざかる側へ傾斜している。これにより、バルブ回動機構13の回動軸部71は、よりスクロール部32の側に近づけた位置に配置されるため、その分、スクロール中心線方向におけるタービンハウジング10の幅を縮小させることができる。
(5)第2弁部62の第2当接面621は、第1弁部61の第1当接面611に対して傾斜しており、両面の間に所定角度が形成されている。この傾斜は、排気導出口423から遠い側が互いに近づくような傾斜となっている。このように第1当接面611及び第2当接面621は、それぞれが他方に対して傾斜しており、バルブ体12の側でも、両当接面611,621が平行をなす場合に比べてバルブ体12の回動範囲をより小さくすることが可能となる。このため、バルブ回動機構13において、アクチュエータの小型化をより一層実現することができる。
(6)第2弁部62は、連結軸部622を介して第1弁部61に取り付けられ、連結軸部622と第2弁部62とは、第2当接面621が連結軸部622に対して傾斜可能となる遊びを持って連結されている。そのため、この遊びによって、バイパス出口352の開口端面353と第2当接面621との精度誤差等が吸収され、それらを密接させることが可能となる。これにより、バルブ体12が第2位置に切替配置されて、第2弁部62によりバイパス出口352が閉じられた場合に、そのバイパス出口352からの排気ガスの漏れを抑制することができる。
(7)出口管部34とバイパス管部35との間には、両者によって挟まれた空間部Kが設けられている。この空間部Kが設けられた分だけ、タービンハウジング10の軽量化を実現することができる。また、バルブ回動機構13の回動軸部71は、この空間部Kを利用し、その軸基部711が空間部Kに配置されている。そのため、軽量化によって生じたスペースを無駄にせず、有効に活用することができる。
(8)バルブ体12が第1位置に配置され、流路出口342が第1弁部61によって閉じられた状態でも、流路出口342には流通口345が設けられている。そのため、この流通口345を通じて流路出口342から排気ガスが導出される。第1弁部61によって流路出口342のすべてを閉じず、このように積極的に排気ガスの導出を許容することで、排気流路341とつながるタービン室33の内圧が低下することを抑制できる。これにより、タービンインペラTの回転軸に供給される潤滑油がタービン室33に漏れ出すおそれを低減することができる。
(9)バルブ体12は、第1位置と第2位置との間を切替配置される場合に、中間位置を経る。そして、その中間位置では、第1弁部61及び第2弁部62のいずれもが、流路出口342やバイパス出口352を開状態とする。また、バイパス出口352からの延長上の領域R1内に、第2弁部62が存在する。そのため、バルブ体12をこの中間位置に配置すると、スクロール流路321を避けてバイパス出口352から導出される高温の排気ガスが、この第2弁部62に衝突することにより、その流れが乱される。これにより、バイパス出口352から導出される高温の排気ガスが拡散されるため、排気導出口423の下流側に設けられる触媒装置81において、高温の排気ガス流入に伴って生じる触媒の劣化を抑制できる。この場合、流路出口342から導出される排気ガスも、その一部の流れが第1弁部61に衝突して拡散されるため、バイパス出口352から導出される高温の排気ガスの拡散効果を高めることができる。
[第2実施形態]
次に、図9〜図12を参照しつつ、本発明におけるバルブ体の第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態のバルブ体12及びバルブ回動機構13と重複する構成は同じ名称と符号を用い、以下では、第1実施形態のバルブ体12及びバルブ回動機構13と異なる構成を中心に説明する。
図9及び図10に示すように、第2実施形態では、バルブ回動機構13の回動軸部71が有する軸基部711には、弁取付部としての弁取付片713が設けられている。弁取付片713は、高耐熱性を有する金属材料によって軸基部711と一体に形成され、軸基部711から側方へ延びている。バルブ体14を構成する第1弁部63及び第2弁部64は、弁取付片713に組み付けられている。
第1弁部63は、図10に示すように、平板状をなし、角をとった略四角形をなす平面形状を有している。第1弁部63の一面は、流路出口342の傾斜端面343に当接する第1当接面631となっている。第1当接面631の裏面側には、図9に示すように、その裏面側へ凸となる取付突部632が設けられている。取付突部632は有底筒状をなし、第2弁部64に対して溶接等によって取り付けられている。第1弁部63も取付突部632も、外側シェル22と同様の高耐熱性を有する金属材料を素材としている。取付突部632が設けられていることにより、第1当接面631の側には凹状部633が形成され、取付突部632の凸側には突出平板部634が設けられている(図11参照)。
第2弁部64は、図9に示すように平板状をなし、長円形をなす平面形状を有している。第2弁部64の一面は、バイパス出口352の開口端面353に当接する第2当接面641となっている。第2当接面641の裏面側には、図11に示すように、その裏面側へ凸となる隆起部642が設けられている。隆起部642において、第2当接面641とは反対側の平面643には、連結軸部644が設けられている。第2弁部64、隆起部642及び連結軸部644は、内側ハウジング21と同様の素材を用いて、鋳造等によって一体に形成されている。
第1弁部63及び第2弁部64は、次のような組付構造により、回動軸部71の軸基部711に設けられた弁取付片713に対して組み付けられている。まず、連結軸部644は、弁取付片713に設けられた挿通孔714に挿通されている。また、第1弁部63から盛り上がった部分の突出平板部634にも挿通孔635が設けられ、連結軸部644はこの挿通孔635にも挿通されている。連結軸部644の先端部は、突出平板部634の挿通孔635から突出し、その突出部分が押圧変形させられることによりかしめられている。このかしめにより、突出平板部634及び弁取付片713が抜け止めされた状態となっている。
ここで、連結軸部644を挿通する各挿通孔714,635は、連結軸部644の太さよりも若干大きく形成されている。もっとも、連結軸部644の先端部をかしめる際、図11に示すように、連結軸部644の先端部が変形し、その一部が突出平板部634の挿通孔635と連結軸部644との間に入り込む。この入り込んだ充填部644aにより、挿通孔635と連結軸部644の間の隙間の少なくとも一部が埋められ、取付突部632の突出平板部634は、連結軸部644に対し固着された状態となる。これにより、第1弁部63及び第2弁部64は、両者の間に弁取付片713を介在させた状態で、連結軸部644により一体的に連結されている。なお、図11における充填部644aの図示は一例を示すに過ぎない。
また、第1弁部63及び第2弁部64は、図11に示すように、取付突部632の突出平板部634と弁取付片713との間、第2弁部64と弁取付片713との間に、それぞれ隙間S1、つまり遊びが設けられるようにして弁取付片713に組み付けられている。このように遊びをもっているため、一体的に連結された第1弁部63及び第2弁部64は、弁取付片713に対して傾斜可能で、ガタ付いた状態となっている。
第2実施形態では、バルブ体14及びバルブ回動機構13が以上のような構成を有している。回動軸部71を回動させると、弁取付片713が回動する。それに伴って、図12に示すように、バルブ体14が回動し、バルブ体14は、第1弁部63によって流路出口342を閉じる第1位置(図12(a))又はバイパス出口352を閉じる第2位置(図12(b))に配置される。
第2実施形態のバルブ体14を用いることにより、次のような作用効果を得ることができる。
(1)第1弁部63及び第2弁部64は、前述したように、弁取付片713に対して遊びをもって組み付けられている。この遊びにより、第2実施形態でも、バイパス出口352の開口端面353と第2当接面641との精度誤差等が吸収され、それらを密接させることが可能となる。これにより、図12(b)に示すように、バルブ体14が第2位置に切替配置されて、第2弁部64によりバイパス出口352が閉じられた場合に、そのバイパス出口352からの排気ガスの漏れを抑制することができる。
また、図12(a)に示すように、バルブ体14が第1位置に切替配置されて、第1弁部63が流路出口342を閉じる場合にも、流路出口342の傾斜端面343と第1当接面631との精度誤差等が吸収され、それらを密接させることが可能となる。この両者の密接により、第1当接面631と傾斜端面343との当接部分から排気ガスが漏れ、その漏れた排気ガスにより、流通口345から流出する排気ガスの主流が乱されることを抑制できる。
(2)バルブ体14が第1位置に配置された状態では、図12(a)の拡大図に示すように、弁取付片713は突出平板部634に当接し、回動軸部71の回動力によって弁取付片713が第1弁部63に設けられた突出平板部634を押圧する。これにより、遊びをもって弁取付片713に連結されている第1弁部63は、その遊びによるガタ付きが抑制される。すると、連結軸部644によって第1弁部63と一体的に連結されている第2弁部64も、遊びによるガタ付きが抑制される。
バルブ体14が第2位置に配置された状態でも同様に、図12(b)の拡大図に示すように、弁取付片713は第2弁部64に設けられた隆起部642に当接し、回動軸部71の回動力によって弁取付片713が隆起部642を押圧する。これにより、遊びをもって弁取付片713に連結されている第2弁部64は、その遊びによるガタ付きが抑制される。すると、連結軸部644によって第2弁部64と一体的に連結されている第1弁部63も、遊びによるガタ付きが抑制される。
上記第1実施形態のバルブ体12の場合、第2弁部62は遊びをもって連結軸部622に組み付けられている。図6(b)に示すように、バルブ体12が第1位置に配置された状態では、バイパス出口352から導出された排気ガスの脈動により、第2弁部62のガタ付きによる叩かれ音が発生する可能性がある。この点、第2実施形態のバルブ体14の場合、バルブ体14が第1位置及び第2位置のいずれか配置されると、前述したように、他方も遊びによるガタ付きが抑制される。これにより、開口状態にあるバイパス出口352又は流路出口342から導出された排気ガスの脈動により、第1位置では第2弁部64が、第2位置では第1弁部63がガタ付いて叩かれ音が発生することを抑制できる。
(3)第1弁部63及び第2弁部64を弁取付片713に組み付ける場合、第2弁部64の連結軸部644に、弁取付片713と第1弁部63に設けられた取付突部632の突出平板部634を順次挿通させる。その後、連結軸部644の先端部をかしめて突出平板部634を連結軸部644に固着させることにより、第1弁部63及び第2弁部64が弁取付片713に組み付けられる。このため、組み付け作業を容易に行うことができる。
[第3実施形態]
次に、図13〜図16を参照しつつ、本発明におけるバルブ体の第3実施形態について説明する。第3実施形態のバルブ体15は、上記第2実施形態におけるバルブ体14のさらなる変形例である。このため、上記各実施形態のバルブ体12,14及びバルブ回動機構13と重複する構成は同じ名称と符号を用い、以下では、異なる構成を中心に説明する。
図13及び図14に示すように、第3実施形態では、バルブ体15を構成する第1弁部65及び第2弁部66のうち、第1弁部65は、金属製の板状部材が略U字状をなすように折り曲げられて形成されている。つまり、板状部材が略U字状をなすようにプレス成形等によって折り曲げられ、それにより、相対する一対の板部が形成される。そのうち一方の板部が第1弁部65とされ、図14に示すように、略U字状の外縁を有する平面形状をなしている。第1弁部65において、もう一方の板部と非対向の面は、流路出口342の傾斜端面343に当接する第1当接面651となっている。相対する一対の板部のうち、もう一方の板部は連結板部652となっている。第1弁部65及び連結板部652は、両者をつなぐつなぎ部653から軸基部711の側へ向けられた状態となっている。なお、折り曲げ形成される板状部材は、外側シェル22と同様の高耐熱性を有する金属材料を素材としている。
第2弁部66は、平板状をなし、長円形をなす平面形状を有している。第2弁部66の一面は、バイパス出口352の開口端面353に当接する第2当接面661となっている。第2当接面661の裏面側には、図15に示すように、その裏面側へ凸となる隆起部662が設けられている。隆起部662は、第2弁部66を形成する板材が成形されてなる。その板材は、外側シェル22と同様の高耐熱性を有する金属材料を素材としている。隆起部662が設けられていることにより、第2当接面661の側には凹状部663が形成され、隆起部662の凸側には平板部664が設けられている(図15参照)。
第1弁部65及び第2弁部66は、次のような組付構造により、回動軸部71の軸基部711に設けられた弁取付片713に対して組み付けられている。まず、図15に示すように、第1弁部65に設けられた連結板部652及び第2弁部66に設けられた隆起部662の平板部664は、連結ピン67を用いて弁取付片713に組み付けられている。この組付状態では、第2弁部66の側から、平板部664、連結板部652及び弁取付片713の順に重ねられている。そして、弁取付片713に設けられた挿通孔714に、連結ピン67の軸部671が挿通されている。また、連結板部652及び隆起部662の平板部664にも、それぞれ挿通孔654,665が設けられ、連結ピン67の軸部671はこれら各挿通孔654,665にも挿通されている。
連結ピン67の一端側(第1弁部65の側)には係止部672が設けられ、弁取付片713が有する挿通孔714の周縁部に当接可能となっている。この両者が当接することにより、前記一端側において、弁取付片713、連結板部652及び平板部664が抜け止めされた状態となる。連結ピン67の他端側(第2弁部66の側)は、平板部664の挿通孔665から突出し、その突出部分が押圧変形させられることによりかしめられている。このかしめにより、前記他端側において、平板部664、連結板部652及び弁取付片713が抜け止めされた状態となっている。
ここで、連結ピン67の軸部671を挿通する各挿通孔714,654,665は、軸部671の太さよりも若干大きく形成されている。もっとも、軸部671の先端部をかしめる際、図15に示すように、軸部671の先端部が変形し、その一部が平板部664の挿通孔665と軸部671との間に入り込む。この入り込んだ充填部671aにより、挿通孔665と軸部671の間の隙間の少なくとも一部が埋められ、平板部664は、軸部671に対し固着された状態となる。これにより、第2弁部66は連結ピン67と一対化された状態で連結されている。なお、図15における充填部671aの図示は一例を示すに過ぎない。
また、第1弁部65及び第2弁部66は、図15に示すように、遊びをもって弁取付片713に組み付けられている。そのため、平板部664と連結板部652との間、連結板部652と弁取付片713との間、弁取付片713と連結ピン67の係止部672との間に、それぞれ隙間S2が存在している。このように遊びをもっているため、一体的に連結された第1弁部65及び第2弁部66は、弁取付片713に対して傾斜可能で、ガタ付いた状態となっている。
第3実施形態では、バルブ体15及びバルブ回動機構13が以上のような構成を有している。回動軸部71を回動させると、弁取付片713が回動する。それに伴って、図16に示すように、バルブ体15が回動し、バルブ体15は、第1弁部65によって流路出口342を閉じる第1位置(図16(a))又はバイパス出口352を閉じる第2位置(図16(b))に配置される。
第3実施形態のバルブ体15を用いることにより、次のような作用効果を得ることができる。
(1)第1弁部65及び第2弁部66は、前述したように、弁取付片713に対して遊びをもって組み付けられている。この遊びにより、第3実施形態でも、バイパス出口352の開口端面353と第2当接面661との精度誤差等が吸収され、それらを密接させることが可能となる。これにより、図16(b)に示すように、バルブ体15が第2位置に切替配置されて、第2弁部66によりバイパス出口352が閉じられた場合に、そのバイパス出口352からの排気ガスの漏れを抑制することができる。
また、図16(a)に示すように、バルブ体15が第1位置に切替配置されて、第1弁部65が流路出口342を閉じる場合にも、流路出口342の傾斜端面343と第1当接面651との精度誤差等が吸収され、それらを密接させることが可能となる。その上、第1弁部65は板状部材が折り曲げられた板部よりなるため、第1弁部65にたわみを生じさせることが可能となる。このたわみを利用し、第1当接面651をさらに密接させることができる。これにより、第1当接面651と傾斜端面343との当接部分から排気ガスが漏れるのを一層抑制し、その漏れた排気ガスにより、流通口345から流出する排気ガスの主流が乱されることを抑制できる。
(2)バルブ体15が第1位置に配置された状態では、図16(a)の拡大図に示すように、弁取付片713は連結ピン67の係止部672に当接し、回動軸部71の回動力によって弁取付片713が係止部672を押圧する。これにより、連結ピン67のガタ付きが抑制されるため、連結ピン67と一体的に連結されている第2弁部66もそのガタ付きが抑制される。また、回動軸部71の回動力によって、第1弁部65の第1当接面651は傾斜端面343を押圧する。そのため、遊びをもって弁取付片713に連結されている第1弁部65も、その遊びによるガタ付きが抑制される。
バルブ体15が第2位置に配置された状態では、図16(b)の拡大図に示すように、弁取付片713は連結板部652に当接し、連結板部652を介在させつつ第2弁部66に設けられた平板部664を押圧する。これにより、遊びをもって弁取付片713に連結された第2弁部66は、その遊びによるガタ付きが抑制される。また、連結板部652と一体の第1弁部65も、連結板部652に設けられた遊びによってガタ付くことが抑制される。したがって、第3実施形態のバルブ体15によっても、第1弁部65又は第2弁部66がガタ付いて叩かれ音が発生することを抑制できる。
(3)第1弁部65及び連結板部652は、板状部材が折り曲げられることにより形成されている。このため、プレス成形を利用して簡単に形成することができ、バルブ体15を製造するコストを低減させることができる。
なお、本発明を具体化した実施形態は、上記実施形態に限られるものではなく、例えば次のように実施されてもよい。
(a)本実施の形態では、内側ハウジング21は出口管部34及びバイパス管部35を有して、出口管部34の内部に排気流路341を形成し、バイパス管部35の内部にバイパス流路351を形成した。このため、出口管部34とバイパス管部35との間に空間部Kが形成された構成となっている。このような構成に代えて、鋳造によってこの空間部Kも鋳鉄や鋳鋼を充填し、空間部Kをなくした構成を採用してもよい。この場合、流路出口342とバイパス出口352との間に、回動軸部71を回動可能に軸支する構成が必要となる。
(b)本実施の形態では、バイパス管部35がスクロール中心線に対して傾斜する方向に延びるように設けられているが、これに代えて、スクロール中心線方向と同一方向に延びるように設けられた構成を採用してもよい。
(c)本実施の形態では、出口管部34の出口側端部には傾斜端面343が形成され、バイパス管部35の出口側端部には開口端面353が形成され、いずれも、管の延びる方向に対し、内側から外周側に向かって傾斜している。これに代えて、出口管部34及びバイパス管部35の双方又は一方について、その出口側端部に、管の延びる方向に対して略直交する端面が形成された構成を採用してもよい。例えば、出口管部34の出口側端部を非傾斜端面344のみとしたり、バイパス管部35の開口端面353を、管の延びる方向に対して略直交するように形成したりすることが考えられる。
(d)本実施の形態では、第1弁部61,63,65の第1当接面611が当接する出口管部34の傾斜端面343に対し、第2弁部62,64,66の第2当接面621が当接するバイパス管部35の開口端面353が、その排気導出方向D2に向かって近づくように傾斜している。この角度は80度程度に設定されているが、これよりも小さい角度や大きい角度が両面によって形成されるように構成してもよい。
例えば、出口管部34の出口側端部を非傾斜端面344のみとし、バイパス管部35をスクロール中心線方向と同一方向に延びるように設け、かつその開口端面353を管の延びる方向に対して略直交するように形成した構成も採用できる。この場合、第1当接面611が当接する出口管部34の非傾斜端面344と、第2当接面621が当接するバイパス管部35の開口端面353とによって形成される角度は、180度となる。
(e)本実施の形態では、第2弁部62,64,66の第2当接面621は、第1弁部61の第1当接面611に対して傾斜するように設けられているが、これに代えて、第1当接面611と平行をなすように設けられた構成を採用してもよい。
(f)本実施の形態では、第2弁部62,64,66は、第2当接面621が連結軸部622に対して傾斜可能となる遊びを持つように、その連結軸部622と連結されているが、その遊びを設けることなく連結するようにしてもよい。
(g)本実施の形態では、バルブ体12,14,15が第1位置に配置されて、流路出口342が第1弁部61,63,65によって閉じられた状態でも、流路出口342に流通口345が設けられる構成を採用した。これに代えて、第1弁部61,63,65によって流路出口342の全域が閉じられる構成を採用してもよい。
(h)本実施の形態では、ハウジング本体11を構成する内側ハウジング21を鋳造により形成し、他方の外側シェル22を板金加工等によって形成し、それぞれの素材や製造方法を別にした。この構成を採用したのは、その方が製造しやすいからであるが、これに代えて、内側ハウジング21及び外側シェル22の両者を鋳造により一体に形成したり、板金によって一体に形成したりしてもよい。
(i)本実施の形態では、バルブ回動機構13として、回動軸部71のシャフト部712に設けられたリンクプレート74を、シリンダ等のアクチュエータのロッドに連結することにより、そのロッドの移動によって、回動軸部71を回動させる構成とした。これに代えて、例えば、モータ等のアクチュエータによって回動軸部71を回動させる構成を採用してもよい。
(j)本実施の形態では、自動車用の排気タービン過給機に用いられるタービンハウジング10を例としたが、船舶や航空機等、自動車以外の内燃機関に設けられる排気タービン過給機に用いてもよい。
(k)第2実施形態では、連結軸部644の先端部をかしめることにより、当該先端部を取付突部632の突出平板部634に固着させたが、これに代えて、溶接によって連結軸部644の先端部を突出平板部634に固着させるようにしてもよい。同様に、第3実施形態では、連結ピン67の先端部をかしめることにより隆起部662の平板部664に固着させたが、これに代えて、溶接によって連結ピン67の先端部を平板部664に固着させるようにしてもよい。
(l)第2実施形態では、バルブ体14を構成する第1弁部63を、角をとった略四角形をなす平面形状としたが、図17に示したバルブ体16のように、円形状に形成してもよい。この場合、第1弁部63の周縁部636は、第2弁部64の側に斜めに折り曲げられた構成を採用するとなおよい。この場合、周縁部636が有するテーパ面636aが第1当接面631となる。この構成によれば、折り曲げられた周縁部636により、第1弁部63の剛性を向上させることができる。また、周縁部636が折り曲げられることで第1弁部63が縮径するため、第1弁部63及び流路出口342をコンパクト化させることができる。
(m)第2実施形態では、第2弁部64に連結軸部644が設けられているが、これに代えて、第1弁部63に設けられた取付突部632の突出平板部634に、連結軸部644が設けられた構成を採用してもよい。この場合、第2弁部64では、例えば、第2当接面641の中央部に凹状部を形成し、その底面部において連結軸部644の先端部をかしめ、連結軸部644に第2弁部64を固着させる構成が採用される。
(n)第2実施形態では、第1弁部63に取付突部632を設けた構成としたが、これに代えて、第3実施形態の第1弁部65と同様の構成を採用してもよい。この場合、板状部材を略U字状に折り曲げて相対する一対の板部を形成し、その一方を第1弁部63、他方を連結板部とし、連結板部に弁取付片713が連結される構成となる。
(o)第3実施形態では、第1弁部65及び連結板部652は、つなぎ部653から軸基部711の側へ向けられた状態としたが、これとは異なる側へ両者が向けられた構成を採用してもよい。例えば、図18に示すバルブ体17のように、第1弁部65及び連結板部652が、つなぎ部653から回動軸部71の軸方向に向いた状態に設けられた構成としてもよい。
(p)第3実施形態では、第1弁部65の側について板状部材を折り曲げ形成し、一方を第1弁部65、他方を連結板部652とする構成を採用したが、これに代えて、第2弁部66の側についてこれと同様の構成としてもよい。この場合の第1弁部65は、例として、第1実施形態の第1弁部61又は第2実施形態の第1弁部63と同様の構成を採用できる。また、第1弁部65及び第2弁部66の両者について、板状部材を折り曲げ形成し、一方を弁部、他方を連結板部とする構成としてもよい。