JP2017082157A - 光カチオン硬化性樹脂組成物及び摺動部材 - Google Patents

光カチオン硬化性樹脂組成物及び摺動部材 Download PDF

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【課題】摺動部材のマシナブルライナーのための樹脂組成物を提供する。
【解決手段】光カチオン硬化性樹脂組成物は、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物と、オキセタン化合物と、固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンとを含み、前記エポキシ化合物が、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン及びトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエートのいずれか、又は、これらの混合物であり、前記オキセタン化合物が、XDO及びDOXのいずれか、又はこれらの混合物であり、前記エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の合計重量に対する前記オキセタン化合物の重量の割合が15〜85重量%である。
【選択図】図1

Description

本発明は、摺動部材の自己潤滑性ライナーを形成するための光カチオン硬化性樹脂組成物及び自己潤滑性ライナーを備えた摺動部材に関する。
回転運動や並進運動の軸を摺動面にて保持する滑り軸受は広範な用途に使用されており、特に、摺動面に潤滑油を使用しない無潤滑滑り軸受は、低摩擦係数、高耐久性、高耐荷重性、高耐熱性、高耐油性などが要求される船舶や航空機等の用途に使用されている。
このような無潤滑滑り軸受として、特許文献1には、凹状の第1の軸受面を有する外輪部材と、第1の軸受面に対して摺動可能である凸状の第2の軸受面とを有する内輪部材とを備える、高荷重用途のための球面滑り軸受けが開示されている。この球面滑り軸受は、外輪部材及び内輪部材の一方の部材がチタン合金製であり、その表面に物理的気相成長法(PVD)により形成された窒化チタンの軸受面を有している。他方の部材の軸受面は潤滑ライナーを有している。潤滑ライナーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とポリアラミドの繊維からなり且つフェノール樹脂組成で飽和しているファブリックで構成されている。
特許文献2には、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート20重量%以上及びポリテトラフルオロエチレン等の固体潤滑剤10重量%以上を含む熱硬化性アクリル系組成物からなる自己潤滑コーティングが開示されている。この自己潤滑コーティングには、トリエチレングリコールジメタクリレート20重量%以上及びアラミドパルプ1重量%以下を添加してもよいとされている。この文献には、さらに、自己潤滑コーティングをライナーとして外輪の内周面に施したスリーブ軸受も開示されている。
特許文献1及び2に開示された無潤滑滑り軸受は、航空機等に組み込まれて使用されるため、前述のように低摩擦係数、高耐荷重性、耐熱性、耐油性などが要求されるが、さらに、機体メーカー側からは、スリーブ軸受のような滑り軸受を組み込む工程において、滑り軸受の摺動面を研削または切削によって寸法調整を行うことにより、軸側の寸法調整を行わずに嵌め合い調整を行いたいという要望がある。
しかしながら、特許文献1の繊維状の潤滑ライナーは、後加工を行うと繊維が切断されてライナーとして機能しなくなってしまうので、研削または切削によって寸法調整を行うことができない。
また、特許文献2の自己潤滑コーティングは熱硬化性アクリル樹脂をベースとするために、硬化に時間が掛かるという理由から生産性が低いという問題がある。また、時間を節約するために未硬化状態でハンドリングしようとすると、未硬化樹脂が流動して形状を維持できなくなるのでハンドリングが困難であった。
上記のような状況の下、研削または切削によって寸法調整を行うことができ、生産性が高く、且つ、耐摩耗性及び耐熱性を同時に充足する自己潤滑性ライナー用の樹脂組成物が要望されていた。
特開2007−255712号公報 米国特許第6180574号公報
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明は、高耐摩耗性、高耐荷重性、高耐熱性を有する自己潤滑性ライナーを形成するための樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような樹脂組成物よりなる自己潤滑性ライナーを有する摺動部材を提供することをも目的とする。
本発明の第1の態様に従えば、光カチオン硬化性樹脂組成物であって、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物と、オキセタン化合物と、固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンとを含み、前記エポキシ化合物が、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン及びトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエートのいずれか、又は、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン及びトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエートの混合物であり、前記オキセタン化合物が、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼンを主成分とする(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノールと1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンとの反応生成物、及び3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンのいずれか、又は、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼンを主成分とする(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノールと1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンとの反応生成物及び3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンの混合物であり、前記エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の合計重量に対する、前記オキセタン化合物の重量が15〜85重量%である光カチオン硬化性樹脂組成物が提供される。
本態様の光カチオン硬化性樹脂組成物において、前記エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の合計重量に対する、前記オキセタン化合物の重量が20〜80重量%であってよい。
本態様の光カチオン硬化性樹脂組成物は、さらに、ガラス繊維を含んでよい。
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様の光カチオン硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物が提供される。
本発明の第3の態様に従えば、第1の態様の光カチオン硬化性樹脂組成物による自己潤滑性ライナーが摺動面に形成されている摺動部材が提供される。前記摺動部材は滑り軸受又は球面滑り軸受になり得る。前記摺動部材は、頭部と軸部とネジ部を有し、前記自己潤滑性ライナーが前記摺動面である前記軸部の外周面に形成されたボルトであってよい。
本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物はイソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物を適切な比率で含有しており、この光カチオン硬化性樹脂組成物を用いることにより、耐摩耗性、耐荷重性及び耐熱性を同時に充足する自己潤滑性ライナーを製造することができる。
図1(a)は本発明に従うスリーブ軸受の軸方向に沿って切断した縦断面図であり、図1(b)は、軸と直交する方向に切断した横断面図である。 イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合に対する、ガラス転移点の値を示すグラフである。 イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合に対する、デュロメータタイプD硬度(本明細書ではデュロメータD硬度、或いはデュロD硬度とも言う)の値を示すグラフである。 イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合に対する、揺動試験による摩耗量の値を示すグラフである。 本発明の樹脂組成物で形成した自己潤滑性ライナーを有する球面滑り軸受の構造を示す断面図である。 図6(a)及び(b)は、本発明に従う球面滑り軸受を組み込んだロッドエンド球面滑り軸受の縦断面図及び横断面図である。 本発明の樹脂組成物で形成した自己潤滑性ライナーを軸表面に有するリーマボルトの外観を示す図である。
本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物及びそれにより形成された自己潤滑性ライナーを有する摺動部材について以下に説明する。
<摺動部材>
最初に、本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物により形成された自己潤滑性ライナーを有する摺動部材の例を図1(a)及び(b)を参照しながら説明する。図1(a)及び(b)に示すスリーブ軸受10は、軸受鋼、ステンレス鋼、ジュラルミン材、チタン合金などの金属から形成された円筒状の外輪部材12と、外輪部材12の内周面に形成された自己潤滑性ライナー層14とを有する。自己潤滑性ライナー層14は、自己潤滑性を有する樹脂層であり、以下に記載する本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物を外輪部材12の内周面に塗布し、硬化させることで形成される。自己潤滑性ライナーは、切削及び/又は研削により寸法調整が容易であり、この意味で適宜「マシナブルライナー」(加工可能なライナー)と呼ぶことがある。なお、摺動部材は、少なくともその一部に摺動面を有する部材であれば特に限定されない。したがって、回転運動や並進(直動)運動に使用されるスリーブ軸受のみならず、後述するような球面すべり軸受、リーマボルトなどの種々の摺動部材が包含され、これらの摺動部材もまたは本発明の対象である。
<光カチオン硬化性組成物>
光カチオン硬化性樹脂組成物(以下、適宜、単に「樹脂組成物」と記載する)は、主に樹脂を構成する成分として、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物を含む。
本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物に含まれるイソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物は、下記式(1)で表される1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン及び下記式(2)で表されるトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエートのいずれか、又は、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン及びトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエートの混合物である。
Figure 2017082157
Figure 2017082157
式(1)又は式(2)で表されるイソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物において、イソシアヌル酸環の各窒素原子に同一のエポキシ基が結合している。該イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物は、光カチオン硬化性を有することに加えて耐熱性が非常に優れているため、摺動部材の自己潤滑性ライナーなどに好適となる。特に、航空機に組み込まれる摺動部材として使われるためには163℃以上の耐熱性が要求されるが、式(1)又は式(2)で表されるイソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物はこのような用途にも好適である。
オキセタン化合物は、下記式(3)で表される1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼンを主成分とする(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノールと1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンとの反応生成物(以下適宜「XDO」と略する)、並びに下記式(4)で表される3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(以下適宜「DOX」と略する)のいずれか、又は、XDO及びDOXの混合物である。なお、下記式(3)において、n=1〜3である。
Figure 2017082157
Figure 2017082157
なお、XDOは、上記式(4)で表される1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼンのほか、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンを含有する。
光カチオン硬化性樹脂組成物中において、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物は、合計で20重量%〜90重量%含有されることが好ましい。20重量%未満であると、樹脂の流動性が不足し、塗布することが困難となり、ライナー強度も不足する傾向がある。90重量%を超えると後述する固体潤滑剤の含有量が少なくなるために潤滑性が低下する傾向がある。
また、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合は、15重量%〜85重量%であることが好ましい。すなわち、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するイソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物の重量の割合は、15重量%〜85重量%であることが好ましい。オキセタン化合物の重量割合が15重量%未満又は85重量%を超えると、後述する実施例及び比較例で示すように、耐荷重性、耐摩耗性及び/又は耐熱性が不十分になる。さらに、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量割合は、20重量%〜80重量%であることがより好ましい。オキセタン化合物の含有量の割合が20重量%未満であると、樹脂の流動性が低いため、塗布する時間が長くなる。オキセタン化合物の含有量の割合が80重量%を超えると、樹脂の流動性が高いため、塗布時に液だれしやすくなり自己潤滑性ライナーの膜厚が薄くなる。
本発明の樹脂組成物は固体潤滑剤を含む。固体潤滑剤は、樹脂組成物の硬化用または重合用に紫外線が照射されるときにも紫外線の透過性を損ねないものがよい。このような点から、有機白色固体潤滑剤のポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、適宜「PTFE」と略する)を用いる。
PTFEは、樹脂組成物全量に対して10〜50重量%、特には、30〜50重量%含有させることができる。PTFEは、粉末状や繊維状など任意の形態のものを単独または組み合わせて使ってもよい。PTFE粉末の粒子または繊維は、その表面をナトリウムナフタレンでエッチング後にエポキシ変性アクリレートで被覆する表面処理を施してもよい。このような表面処理を施すことで、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物から生成するポリマーとの親和性が高まり、該ポリマーとの結合がより強固となる。そのため、本発明の樹脂組成物を用いて自己潤滑性ライナーを製造した場合、摺動時にPTFE粒子及び繊維が自己潤滑性ライナーから脱落するのを抑制することができ、自己潤滑性ライナーの摩耗量を少なくすることができる。
本発明ではPTFE以外の固体潤滑剤を用いることもできる。たとえば、メラミンシアヌレートや六方晶窒化ホウ素を含んでもよい。PTFEと共にメラミンシアヌレートを用いることにより、PTFEを単独で用いたときよりも、樹脂組成物硬化後の摩擦係数を低減することができる。この場合、メラミンシアヌレートは樹脂組成物全量に対して30重量%以下で含有させることが望ましい。メラミンシアヌレートの含有量が30重量%を超えると、自己潤滑性ライナーの摩擦係数は下がるが、摩耗量は増える傾向がある。メラミンシアヌレートの構造は6員環構造のメラミン分子とシアヌル酸分子が水素結合で結合して平面状に配列し、その平面が互いに弱い結合で層状に重なり合い、へき開性を有する構造となっている。このような構造が固体潤滑性に貢献していると考えられる。
紫外線によるイソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の重合反応を促進させるために、本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物は、光カチオン硬化促進剤を含んでよい。光カチオン硬化促進剤として、例えば、ヨードニウム塩、多芳香環ヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、多芳香環スルホニウム塩、又はこれらの混合物を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の樹脂組成物には、自己潤滑性ライナーの強度を向上させる目的で、ガラス繊維を添加してもよい。ガラス繊維としては、断面形状が円形の円形断面ガラス繊維を用いてもよいし、断面形状が円形ではない異形断面ガラス繊維を用いてもよい。尚、本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維の以外にも、強化繊維として、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカーのような無機系繊維を含有してもよい。
本発明の樹脂組成物は、室温において液状であることが望ましい。これにより、摺動部材の摺動面に容易に塗布することができ、塗布後、紫外線を照射することで硬化させることができる。航空機用途の場合は、後述するAS81934規格の耐熱性要求を満足する必要があるということと、十分な耐熱性を確保したいという理由から本発明の樹脂組成物のガラス転位点Tgは150℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物には、その他、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、保存安定剤などの各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
本発明の樹脂組成物は、液状の光カチオン硬化性樹脂を樹脂のベースとして用いているので、PTFEを含む固体潤滑剤を混合することが容易であり且つ、熱可塑性樹脂をベースとして用いたときよりも多くPTFEを添加することができるので、より低摩擦で摩耗の少ない自己潤滑性ライナーを製造することができる。
本発明の樹脂組成物は、短時間で硬化する。これは、以下のような理由によるものと考えられる。本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物は、上記式(1)で表されるエポキシ化合物及び/又は上記式(2)で表されるエポキシ化合物、並びにXDO及び/又はDOXを含んでいる。XDO及びDOXは、各分子内に二つのオキセタン環を有するため、分子内の二箇所でエポキシ環と反応することができる。そのため、XDO及びDOXは、上記式(1)で表されるエポキシ化合物及び/又は式(2)で表されるエポキシ化合物と繰り返し反応してポリマーを生成することが可能である。ゆえに、XDO及び/又はDOXを含む本発明の樹脂組成物は、後述する実施例で示すように、紫外線等の照射により硬化する速度が高いと考えられる。
また、本発明の樹脂組成物は、式(1)で表されるエポキシ化合物及び/又は式(2)で表されるエポキシ化合物を含み且つXDO及び/又はDOXを含まない樹脂組成物と比べて、硬化後の架橋密度がより高いと考えられる。そのため、後述する実施例で示すように、本発明の樹脂組成物を用いて形成された自己潤滑性ライナーは、式(1)及び/又は式(2)で表されるエポキシ化合物を含むがXDO及び/又はDOXを含まない樹脂組成物を用いて形成された自己潤滑性ライナーと比べて、耐摩耗性が高い。そのため、本発明の樹脂組成物は、摺動部材の自己潤滑性ライナーなどの製造に好適に用いることができる。
また、本発明において、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物と、オキセタン化合物と、固体潤滑剤であるPTFEとを含む光カチオン硬化性樹脂組成物を摺動部材の摺動面に塗布し、紫外線を照射して光カチオン硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、自己潤滑性ライナーが形成された摺動部材が提供される。この自己潤滑性ライナーは、所望の寸法に切削または研削により後加工することができるマシナブルライナーとなる。
本発明の樹脂組成物及びそれより形成した自己潤滑性ライナーを備える摺動部材を実施例により説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
<光カチオン硬化樹脂組成物の製造>
[実施例1〜5]
実施例1〜5において、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物として1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(TEPIC−VL、日産化学工業製。「TEPIC」は登録商標)を、オキセタン化合物としてXDO(OXT−121、東亜合成製)を、固形潤滑剤としてPTFE(KT−60、喜多村社製)を用い、これらとガラス繊維(平均繊維長80μm×平均径φ11μm、PT80E−401、日東紡社製)をそれぞれ表1に記載の組成となるように混合して液状の樹脂組成物を調合した。
[実施例6〜8]
実施例6〜8において、オキセタン化合物として、XDOの代わりに、DOX(OXT−221、東亜合成製)を用い、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
[実施例9]
オキセタン化合物として、XDO及びDOXを表1に記載の重量%で用い、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例6と同様にして樹脂組成物を調合した。
[実施例10]
イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物として、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンの代わりにトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエート(TEPIC−UC、日産化学工業製)を用い、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例6と同様にして樹脂組成物を調合した。
[比較例1]
オキセタン化合物を用いず、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
[比較例2及び3]
比較例2及び3において、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
[比較例4]
イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物を用いず、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
[比較例5及び6]
比較例5及び6において、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例6と同様にして樹脂組成物を調合した。
[比較例7]
イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物を用いず、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例6と同様にして樹脂組成物を調合した。
[比較例8]
オキセタン化合物として、XDOの代わりに、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101、東亜合成製、以下適宜「OXA」と略する)を用い、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
[比較例9]
オキセタン化合物として、XDOの代わりに、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212、東亜合成製、以下適宜「EHOX」と略する)を用い、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
[比較例10]
イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物として、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンの代わりに、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H、5H)−トリオン(TEPIC−PAS B22、日産化学工業製)を用い、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
[比較例11]
イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物として、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンの代わりに、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H、5H)−トリオン、及び1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H、5H)−トリオンTEPICとプロピオン酸無水物との付加反応生成物の混合物(TEPIC−PAS B26、日産化学工業製)を用い、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物、オキセタン化合物、PTFE及びガラス繊維を表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
Figure 2017082157
TEPIC−VL:1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン
TEPIC−UC:トリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエート
TEPIC−PAS B22:1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H、5H)−トリオン
TEPIC−PAS B26:1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H、5H)−トリオン、及び1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H、5H)−トリオンTEPICとプロピオン酸無水物との付加反応生成物の混合物
XDO:1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼンを主成分とする(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノールと1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンとの反応生成物
DOX:3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン
OXA:3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン
EHOX:3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン樹脂
GF:ガラス繊維
以上説明した実施例1〜10及び比較例1〜11の各樹脂組成物中における、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するイソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物の重量の割合、及びイソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合を表2に示す。
Figure 2017082157
<ガラス転移点の測定>
実施例1〜5、比較例1〜4で調製した樹脂組成物のそれぞれについて、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製、EXSTAR6000)を用いてガラス転移点(Tg)を測定した。
図2に、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合に対する、Tgの値を示したグラフを示す。オキセタン化合物が含まれていない場合、すなわち、オキセタン化合物の割合が0wt%の場合はTgが低かったが、オキセタン化合物を加えることでTgが上昇した。特に、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合が15〜100重量%の範囲内である樹脂組成物のTgは170℃以上という高い値であったため、このような樹脂組成物は耐熱性が高いと考えられる。
<硬度の測定>
実施例1〜5、比較例1〜4で調製した樹脂組成物を平板試験片に塗布し、紫外線を1分間照射して、樹脂組成物を硬化させた。次いで、樹脂層の厚さが0.25mmになるように表面を平坦に仕上げ、JIS K−7215に準拠して、硬化した樹脂組成物のデュロメータD硬度をデュロメータ(株式会社テクロック製、GS−702)を用いて測定した。
表2に、デュロメータD硬度の測定結果を示す。また、図3に、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合に対する、デュロメータD硬度の値を示したグラフを示す。イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合が15〜80%の範囲内である実施例1〜5の樹脂組成物のデュロD硬度はいずれも71以上であり、比較的高い値であった。一方、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合が0〜10%又は90〜100%の範囲内である比較例1〜4について、比較例3の樹脂組成物のデュロD硬度は71であったが、それ以外の樹脂組成物のデュロ硬度は71未満で、比較的低い値であった。
<自己潤滑性ライナーの製造>
SUS630ステンレス鋼をH1150条件で熱処理した材料を用いて図1(a)及び(b)に示すような円筒状のスリーブ軸受(幅(軸方向長さ)12.7mm、外径30.2mm、内径24.9mm)を作製した。このスリーブ軸受の内周面に実施例1〜10及び比較例1〜11で調製した樹脂組成物を、それぞれ、ディスペンサーを用いて均一に塗布した。次いで、塗布した樹脂組成物に紫外線を1分間照射して、樹脂組成物を硬化させ、内周面にマシナブルライナーを形成した。次いで、このマシナブルライナーをライナーの厚さが0.25mmになるように切削及び研削し、内径25.4mmに仕上げた。
表2に、樹脂組成物が完全に硬化したかどうかの結果を示す。樹脂組成物が完全に硬化した場合を〇とし、樹脂組成物が完全に硬化しなかった場合を×として示す。比較例8〜11では、樹脂組成物が完全には硬化せず、マシナブルライナーを形成することができなかった。したがって、比較例8〜11を除く、実施例1〜10及び比較例1〜7で調製した樹脂組成物よりなる17種類のマシナブルライナーについて、以下のような試験により性能評価を行った。
<マシナブルライナーの性能評価>
1.ラジアル静的限界荷重(静荷重試験)
この試験ではAS81934規格に従って最大試験荷重を140kN(31,400lb)として、永久ひずみ量を評価した。
永久ひずみ量が0.051mm以下であった場合を〇、永久ひずみ量が0.051mmを超えた場合を×として、静荷重試験の結果を表2に示す。実施例1〜10で調製した樹脂組成物から得られた自己潤滑性ライナーは、140kNの負荷後の永久ひずみ量が0.051mm以下であり、AS81934規格要求を満たしていた。比較例1〜7で調製した樹脂組成物から得られた自己潤滑性ライナーは、140kNの負荷後の永久ひずみ量が0.051mmを超えていた。
2.ラジアル荷重下での揺動試験
AS81934規格と同様の条件で行った。本揺動試験は常温で行い、AS81934規格と同様に、25,000サイクル後の磨耗量が0.114mm(0.0045in)以下であれば十分な耐摩耗性を有すると判断した。
実施例1〜10、比較例1〜7で調製した樹脂組成物から得られた自己潤滑性ライナーの25,000サイクル後の磨耗量を表2に示す。また、エポキシ化合物として1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンを用い、オキセタン化合物としてXDO及びDOXのいずれかを用いた実施例1〜8及び比較例1〜3、5、6について、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合に対して、自己潤滑性ライナーの摩耗量を示したグラフを図4に示す。実施例1〜10で調製した樹脂組成物から得られた自己潤滑性ライナーの25000サイクル後の摩耗量は、0.114mm以下であり、十分な耐摩耗性を有していたが、比較例1〜3、5、6で調製した樹脂組成物から得られた自己潤滑性ライナーの摩耗量は0.114mmを超えた。図4のグラフから、オキセタン化合物の重量の割合が15〜85重量%の範囲内であれば、摩耗量が0.114mm以下となる十分な耐摩耗性を有する自己潤滑性ライナーが得られると考えられる。また、比較例4、7で調製した樹脂組成物から得られた自己潤滑性ライナーはラジアル荷重下での揺動試験時に塑性変形してしまったため、摩耗量は測定できなかった。
3.総合評価
実施例1〜10では、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物として1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン及びトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエートのいずれか、又は、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン及びトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエートの混合物を用い、オキセタン化合物としてXDO及びDOXのいずれか、またはXDO及びDOXの混合物を用い、エポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対する、オキセタン化合物の重量が15〜80重量%(エポキシ化合物の重量が20〜85%)である樹脂組成物を調製した。表2に示すように、実施例1〜10で調製した樹脂組成物から得られた自己潤滑性ライナーは、上述した静荷重試験結果及び揺動試験結果の両方が良好であった。すなわち、実施例1〜10で調製した樹脂組成物により、耐荷重性及び耐摩耗性を同時に充足する自己潤滑性ライナーを製造することができた。なお、上述のデュロD硬度の測定結果より、エポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量が15〜80重量%の範囲内である実施例1〜10の樹脂組成物は、比較例1〜7と比べて高硬度であると考えられ、そのために、実施例1〜10の樹脂組成物は耐荷重性及び耐摩耗性が高かったと考えられる。また、上述のTgの測定結果より、エポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合が15〜100重量%の範囲内である樹脂組成物は耐熱性が高かったことから、エポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対するオキセタン化合物の重量の割合が15〜80重量%の範囲内である実施例1〜10の樹脂組成物は高耐熱性を有すると考えられる。
一方、比較例1〜7では、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物及びオキセタン化合物として、実施例1〜10と同様の材料を用い、エポキシ化合物及びオキセタン化合物の合計重量に対する、オキセタン化合物の重量が0〜10%又は90〜100%である樹脂組成物を調製した。表2に示すように、比較例1〜7では、上述した静荷重試験結果及び揺動試験結果が不良であり、耐荷重性及び耐摩耗性が不十分であった。
また、比較例8、9では、オキセタン化合物として、OXA又はEHOXを用い樹脂組成物を調製し、比較例10、11では、イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物として1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H、5H)−トリオン、又は、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H、5H)−トリオン、及び1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H、5H)−トリオンとプロピオン酸無水物との付加反応生成物の混合物を用いて樹脂組成物を調製した。表2に示すように、比較例8〜11の樹脂組成物は紫外線照射により完全に硬化せず、ライナーを形成することができなかった。
上記実施例では、本発明の樹脂組成物を図1に示すような形状のスリーブ軸受に適用したが、それに限らず種々の形状及び構造の摺動部材に適用することができる。
<球面滑り軸受>
球面滑り軸受20は、図5に示すように、凹球面状の内周面22aを有する外輪22と凸球面状の外周面26aを有する内輪26と、内周面22aと外周面26aとの間に形成されたマシナブルライナー24を有する。ライナー厚さは、例えば、0.25mm程度とすることができる。
<ロッドエンド球面滑り軸受>
上記球面滑り軸受20をロッドエンドボディ50に組み込んだロッドエンド球面滑り軸受60の例を図6(a)、(b)に示す。ロッドエンドボディ50は、球面滑り軸受20を組み込む貫通穴52aを有する頭部52と、メネジまたはオネジ56を設けた軸部54からなる。軸部54は頭部52から貫通穴52aの半径方向に延在する略円筒体である。球面滑り軸受20は貫通穴52aに挿入された後、貫通穴52aの縁に形成されているV溝(不図示)をカシメることによってロッドエンドボディ50に固定される。
<リーマボルト>
図7に示すようなリーマボルト70は、頭部72と、大径の軸部74と、小径のオネジ部76からなる本体部と、軸部74の外周に設けられたマシナブルライナー74aとを備える。マシナブルライナー74aは、上記のいずれかの実施例の樹脂組成物を実施例に記載したような方法で均一に塗布し、硬化させることで形成される。リーマボルト70の本体部は、例えば、SUS630から形成されている。ライナー74a厚さは0.25〜0.5mm程度とすることができる。
リーマボルト70は、たとえば船舶のプロペラ軸、航空機の可動翼、自動車エンジンのコンロッドなどの高トルクを伝達する重要連結部に用いられる。このような重要連結部に用いられるリーマボルト70はボルト穴との嵌め合いをガタがないような高精度の嵌め合いにする必要がある。従って、リーマボルト70の軸部74は高精度に仕上げられるが、それでも組立時にボルト側で寸法調整ができた方が有利である。本発明に従うリーマボルトはマシナブライナー74aを有するため、樹脂を硬化させた後でもユーザ側で容易に胴部の外径寸法を調整することができる。また、組立時や分解時にボルトを挿入したり、抜いたりしても自己潤滑性であるマシナブルライナー74aを軸部74に有するのでカジリなどが発生せず、長寿命のリーマボルト70がもたらされる。
本発明を実施形態及び実施例により説明してきたが、本発明はそれらに限定されることなく、特許請求の範囲内において種々の形態または態様で具現化することができる。例えば、上記具体例においては、球面滑り軸受及びロッドエンド球面滑り軸受の外輪の内周面に自己潤滑性ライナーを形成したが、内輪の外周面に自己潤滑性ライナーを形成してもよい。また、摺動部材として、球面滑り軸受、ロッドエンド球面滑り軸受及びリーマボルトを例に挙げて説明したが、本発明はそれらに限らず自己潤滑性ライナーを有する摺動部材であれば任意の摺動部材に適用することができる。特に、上記実施形態及び実施例では、部材やパーツの回転運動に使用される摺動部材を例に挙げて説明したが、本発明の摺動部材は、回転運動に限らず、部材やパーツの並進(直動)運動、振動運動、それらの組み合わせ運動など任意の方向の摺動運動に使用される摺動部材も包含している。
以上説明してきたように、本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物を用いて、耐摩耗性、耐荷重性及び耐熱性を同時に充足する自己潤滑性ライナーを製造することができる。また、本発明の樹脂組成物は、摺動面に塗布し、その後紫外線を照射することによって、短時間で硬化させることできる。更に、硬化した樹脂組成物は、被塗布面(下地面)に極めて強固に接着するので、予め被塗布面を粗面化する処理は省略することが可能である。もちろん、より高い接着硬度が求められる場合は、被塗布面を粗面化してから本発明の光カチオン硬化性樹脂組成物を塗布して硬化させてもよい。これらのことより、自己潤滑性ライナーを製造過程における作業の安全性を向上し、消費電力を減少させ、設備コストを低減することができる。さらに、このように形成した自己潤滑性ライナーは、スリーブ軸受及び球面滑り軸受などの滑り軸受を含む各種の摺動部材に形成することができる。また、本発明の樹脂組成物により形成された自己潤滑性ライナーは、切削や研削などが可能であるため、エンドユーザが軸を組み付ける際に軸受の内径寸法の微調整等の後加工を行うことができる。それゆえ、本発明の樹脂組成物及びそれより形成される自己潤滑性ライナーを備える摺動部材は、船舶、航空機、自動車、電子製品、家電などの広範な分野で極めて有用となる。
10 スリーブ軸受
20 球面滑り軸受、22 外輪、24 マシナブルライナー
26 内輪
50 ロッドエンドボディ
60 ロッドエンド球面滑り軸受
70 リーマボルト、72 頭部、74 大径軸部、76 小径オネジ部
74a マシナブルライナー

Claims (8)

  1. 光カチオン硬化性樹脂組成物であって、
    イソシアヌル酸環を有するエポキシ化合物と、
    オキセタン化合物と、
    固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンとを含み、
    前記エポキシ化合物が、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン及びトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエートのいずれか、又は、1,3,5−トリス(4,5−エポキシペンチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン及びトリス{2,2−ビス[(オキシラン−2−イルメトキシ)メチル]ブチル}−3,3’,3’’−[1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−1,3,5−トリイル]トリプロパノエートの混合物であり、
    前記オキセタン化合物が、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼンを主成分とする(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノールと1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンとの反応生成物、及び3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンのいずれか、又は、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼンを主成分とする(3−エチルオキセタン−3−イル)メタノールと1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンとの反応生成物及び3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンの混合物であり、
    前記エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の合計重量に対する、前記オキセタン化合物の重量の割合が15〜85重量%である光カチオン硬化性樹脂組成物。
  2. 前記エポキシ化合物及び前記オキセタン化合物の合計重量に対する、前記オキセタン化合物の重量の割合が20〜80重量%である請求項1に記載の光カチオン硬化性樹脂組成物。
  3. さらに、ガラス繊維を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光カチオン硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光カチオン硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光カチオン硬化性樹脂組成物による自己潤滑性ライナーが摺動面に形成されている摺動部材。
  6. 前記摺動部材が、滑り軸受であることを特徴とする請求項5に記載の摺動部材。
  7. 前記滑り軸受が、球面滑り軸受であることを特徴とする請求項6に記載の摺動部材。
  8. 前記摺動部材が、頭部と軸部とネジ部を有し、前記自己潤滑性ライナーが前記摺動面である前記軸部の外周面に形成されたボルトであることを特徴とする請求項5に記載の摺動部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108373582A (zh) * 2018-02-24 2018-08-07 张洁琦 一种导电滑环体浇注用胶和一种导电滑环体及其浇注方法

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