JP2017079730A - 関節リウマチに対する生物学的製剤の治療効果を予測する方法、およびそれを用いて最適な薬剤を選択する方法 - Google Patents

関節リウマチに対する生物学的製剤の治療効果を予測する方法、およびそれを用いて最適な薬剤を選択する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 関節リウマチ患者に対して生物学的製剤の効果を評価し、それを通じて最適な薬剤を選択する際に利用できる再現性の高いバイオマーカーを見出し、効果的な評価方法を提供すること。
【解決手段】 TNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの中から、関節リウマチ患者に対して有効な薬剤を選択するための方法であって、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、インフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子、B細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子、およびNK細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定し、当該患者に対する各薬剤の治療効果予測スコアを算出し、各薬剤の治療効果を比較する方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、関節リウマチに対する生物学的製剤の治療効果を予測する方法、およびそれを用いて最適薬剤を選択する方法に関する。具体的には、本発明は、関節リウマチ患者から採血した血液を用いて、生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(Biological Disease−Modifying AntiRheumatic Drug:以下、「bDMARD」)の治療効果を予測するためのバイオマーカー遺伝子の発現量を測定・標準化し、その発現量から当該bDMARDの治療効果を予測し、当該関節リウマチ患者において最適な薬剤を選択する方法に関する。
リウマチ性疾患の代表である関節リウマチは、慢性多発性関節炎を主症状とする全身性結合組織疾患であり、自己免疫疾患の一種である。関節リウマチは、30〜60歳の女性に好発し、有病者数は日本国内においては約70万人と推測されている。関節リウマチ病態の特徴として、関節滑膜における血管新生、炎症性細胞浸潤、滑膜細胞増殖、軟骨・骨破壊などが挙げられる。また、関節リウマチにおける関節炎は改善と増悪を繰り返しながら進行し、徐々に軟骨・骨破壊を引き起こし、関節リウマチ患者の日常労作の阻害や生活の質の低下を招く。
関節リウマチの治療薬としては、メトトレキサート(以下、「MTX」)をはじめとする合成疾患修飾性抗リウマチ薬(Synthetic Disease−Modifying AntiRheumatic Drug:以下、「sDMARD」)や、腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor:以下、「TNF」)阻害剤、トシリズマブ(以下、「TCZ」)、アバタセプト(以下、「ABT」)をはじめとするbDMARDなどがある。しかし、これら関節リウマチ治療薬の効果は個人差が大きいため、個々の患者毎に最適な薬剤を選択するオーダーメイド医療の開発が望まれている。
とりわけbDMARDのオーダーメイド医療に関しては、効果の個人差が大きいことに加え、bDMARDが従来薬と比べて薬剤費が著しく高価であること、また、副作用リスクが高いことなどから、個々の患者に応じてbDMARD投与前に最も高い効果が見込まれるbDMARDを予測する方法の確立が求められている。
bDMARDは各々の標的分子が明らかであるため、それによる効果的な治療は、1つまたは複数の特定の生物学的プロセスとリンクしているはずである。ところが、多くの生物学的な理解やそれを示唆する証拠が存在するにも関わらず、現在のbDMARDの処方はこのような方法論に基いて行われているわけではない。2013年に発表された欧州リウマチ学会関節リウマチ治療ガイドラインにおいても、従来型sDMARDで十分な効果が得られなかった患者へのbDMARD使用に関して、代表的なbDMARDであるTNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトが並列的に考えられている(非特許文献1)。このような状況は、患者毎に有効なbDMARDが何かを決定するための指標・方法が存在しないために生じている。
Ann Rheum Dis. 2014;73:492-509
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、関節リウマチ患者に対してbDMARDの効果を評価し、それを通じて最適なbDMARDを選択する際に利用できる再現性の高いバイオマーカーを見出し、効果的な評価方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、このような課題を解決するために、関節リウマチ患者について、個々の遺伝子ではなく、関節リウマチ疾患に関連する機能を群として捉え、その群に属する遺伝子全体の遺伝子発現量に着目した結果、特定の遺伝子の発現量とbDMARDの効果とが関連することを観察した。そこで、その遺伝子群の遺伝子発現量について鋭意研究を重ねた結果、被験者から採取した血液中の特定の遺伝子群がbDMARDの治療効果を予測するためのマーカーとなり得ることを見出し、その遺伝子群の遺伝子発現量を測定することにより、個人毎におけるbDMARDの治療効果を予測し、さらに、それを用いることにより、個人毎に最適な薬剤を選択することができることを見出した。
具体的には、本発明の第一の主要な観点によれば、TNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの中から、関節リウマチ患者に対して有効な薬剤を選択するための方法であって、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、インフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、測定されたインフラマソーム関連遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するTNF阻害剤の治療効果予測スコアを算出し、TNF阻害剤の治療効果を予測する工程と、前記末梢血サンプルにおいて、B細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、測定されたB細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するトシリズマブの治療効果予測スコアを算出し、トシリズマブの治療効果を予測する工程と、前記末梢血サンプルにおいて、Natural Killer細胞(以下、「NK細胞」)特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、測定されたNK細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するアバタセプトの治療効果予測スコアを算出し、アバタセプトの治療効果を予測する工程と、予測されたTNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトの治療効果を比較する工程とを有する方法が提供される。
このような構成によれば、関節リウマチ患者に特別な負荷を与えることなく、採血するだけで、当該患者に対するTNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの治療効果を予測することが可能となる。また、このような構成によれば、低侵襲的かつ簡便に関節リウマチ患者に対するTNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの治療効果を予測し、最適な薬剤を選択することができる。
血液中のインフラマソーム関連遺伝子群、B細胞特異的発現遺伝子群、NK細胞特異的発現遺伝子群のそれぞれから選択される1または複数の遺伝子の発現量を測定することにより、関節リウマチ患者に対するTNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの治療効果を薬剤投与前に予測することができるため、効果が見込める患者に絞った薬剤投与を行うことができ、医療費抑制につながる。また、患者毎の効果予測を行うことができるため、個人差に左右されることなく薬剤を投与することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、このような方法において、前記治療効果予測スコアは、測定された各遺伝子の発現量と、関節リウマチ患者から得られた末梢血における当該測定された各遺伝子の発現量の平均値および標準偏差とに基いて算出されることが好ましい。
また、本発明の他の一実施形態によれば、このような方法において、前記治療効果を予測する工程は、前記算出された治療効果予測スコアを、薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が寛解を示す確率を表す寛解達成率、及び/又は薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が低疾患活動性を示す確率を表す低疾患活動性達成率と治療効果予測スコアとの相関関係を示す相関プロファイルと比較することによって行われることが好ましい。この場合、前記指標はClinical Disease Activity Index(以下、「CDAI」)であることが好ましい。
さらに、本発明の別の一実施形態によれば、このような方法において、前記TNF阻害剤は、インフリキシマブ(以下、「IFX」)、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、またはセルトリズマブペゴルであることが好ましく、インフリキシマブであることが特に好ましい。
また、本発明の第二の主要な観点によれば、TNF阻害剤の関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する方法であって、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、インフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、前記測定された各遺伝子の発現量から、治療効果予測スコアを算出する工程と、前記算出された治療効果予測スコアを元に、前記患者に対するTNF阻害剤の治療効果を予測する工程とを有する方法が提供される。
また、本発明の第三の主要な観点によれば、トシリズマブの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する方法であって、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、B細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、前記測定された各遺伝子の発現量から、治療効果予測スコアを算出する工程と、前記算出された治療効果予測スコアを元に、前記患者に対するトシリズマブの治療効果を予測する工程とを有する方法が提供される。
また、本発明の第四の主要な観点によれば、アバタセプトの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する方法であって、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、NK細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、前記測定された各遺伝子の発現量から、治療効果予測スコアを算出する工程と、前記算出された治療効果予測スコアを元に、前記患者に対するアバタセプトの治療効果を予測する工程とを有する方法が提供される。
また、第二の主要な観点に係る発明において、前記TNF阻害剤は、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、またはセルトリズマブペゴルであることが好ましく、特にインフリキシマブあることが好ましい。
また、第二〜第四の主要な観点に係る発明の一実施形態によれば、このような方法において、前記治療効果予測スコアを算出する工程は、測定された各遺伝子の発現量と、関節リウマチ患者から得られた末梢血における当該測定された各遺伝子の発現量の平均値および標準偏差とに基いて行われることが好ましい。
さらに、第二〜第四の主要な観点に係る発明の他の一実施形態によれば、このような方法において、前記治療効果を予測する工程は、前記算出した治療効果予測スコアを、薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が寛解を示す確率を表す寛解達成率、及び/又は薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が低疾患活動性を示す確率を表す低疾患活動性達成率と治療効果予測スコアとの相関関係を示す相関プロファイルと比較することによって行われることが好ましく、この場合、前記指標はCDAIであることが好ましい。
なお、上記した以外の本発明の特徴および顕著な作用・効果は、次の発明の実施形態の項および図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
図1は、各bDMARD投与前後における疾患活動性の変化を示すグラフである(ALL:全bDMARD、IFX:インフリキシマブ、TCZ:トシリズマブ、ABT:アバタセプト)。いずれもbDMARDの投与前と投与6ヶ月後のCDAIの変化を比較している。 図2は、寛解群および非寛解群における本願発明に係る治療効果予測スコア(特徴スコア)の比較結果を示すグラフである。図2aがインフリキシマブ(IFX)の、図2bおよび図2cがトシリズマブ(TCZ)の、図2d〜図2hがアバタセプト(ABT)の結果である。ボックスは上から95%信頼区間の上限、平均値、および95%信頼区間の下限を示す。p値はスチューデントのT検定で算出した。各グラフにおいて、「REM」とは治療6ヶ月後にCDAI≦2.8(寛解)を満たした患者群、「NON−REM」とは治療6ヶ月後にCDAI寛解を示さなかった(CDAI>2.8)患者群を示す。 図3は、本願発明に係る治療効果予測スコア(特徴スコア)による予測の精度を示すReceiver Operating Characteristic(以下、ROC)曲線解析結果である。いずれもbDMARDの投与6ヶ月後のCDAI非寛解を予測している。図3aがインフリキシマブの、図3bがトシリズマブの、図3cがアバタセプトの予測結果である。「非寛解」を「Positive:陽性」と定義している。AUCは曲線下面積(Area Under the Curve)、PPVは陽性的中率(Positive Predictive Value)、NPVは陰性的中率(Negative Predictive Value)を意味する。 図4は、各bDMARDの特徴スコア算出のための遺伝子のうち、それぞれ主要な5つの遺伝子発現量をリアルタイム定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(以下、qRT−PCRと略記する)によって測定し、寛解群と非寛解群との差を検証した結果を示すグラフである。サンプル間のデータ補正のための内部標準遺伝子にはGUSBを用いた。p値はスチューデントのT検定で算出している。各グラフにおいて、「REM」とは治療6ヶ月後にCDAI≦2.8(寛解)を満たした患者群、「NON−REM」とは治療6ヶ月後にCDAI寛解を示さなかった(CDAI>2.8)患者群を示す。 図5は、本願発明の一実施形態におけるスコアリング手法を説明する模式図である。 図6は、特徴スコア算出のための各遺伝子群から選択された1遺伝子の発現量のみを用いた場合と、各遺伝子群の全遺伝子の発現量を用いた場合とで、特徴スコアの相関が見られることを示すグラフである。Rはピアソン相関係数を、pは無相関検定のp値を示す。 図7は、本願発明の一実施形態における、CDAI低疾患活動性達成群と非達成群との特徴スコアの比較結果を示すグラフである(IFX:インフリキシマブ、TCZ:トシリズマブ、ABT:アバタセプト)。ボックスは上から95%信頼区間の上限、平均値、および95%信頼区間の下限を示す。p値はスチューデントのT検定で算出した。各グラフにおいて、「LDA」とは治療6ヶ月後にCDAI≦10(低疾患活動性)を満たした患者群、「NON−LDA」とは治療6ヶ月後にCDAI低疾患活動性を示さなかった(CDAI>10)患者群を示す。 図8は、本願発明の一実施形態における、特徴スコアを用いたCDAI低疾患活動性達成の予測の精度を示すROC曲線解析結果である。いずれもbDMARDの投与6ヶ月後のCDAI低疾患活動性達成を予測している(IFX:インフリキシマブ、TCZ:トシリズマブ、ABT:アバタセプト)。「低疾患活動性非達成」を「Positive:陽性」と定義している。AUCは曲線下面積(Area Under the Curve)、PPVは陽性的中率(Positive Predictive Value)、NPVは陰性的中率(Negative Predictive Value)を意味する。
以下に、本願発明に係る一実施形態および実施例を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る、TNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの中から、関節リウマチ患者に対して有効な薬剤を選択するための方法は、上述したように、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、インフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、測定されたインフラマソーム関連遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するTNF阻害剤の治療効果予測スコアを算出し、TNF阻害剤の治療効果を予測する工程と、前記末梢血サンプルにおいて、B細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、測定されたB細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するトシリズマブの治療効果予測スコアを算出し、トシリズマブの治療効果を予測する工程と、前記末梢血サンプルにおいて、NK細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、測定されたNK細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するアバタセプトの治療効果予測スコアを算出し、アバタセプトの治療効果を予測する工程と、予測されたTNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトの治療効果を比較する工程とを有するものである。
ある薬剤を投与した場合に寛解に達する患者と達しない患者との間の生物学的特徴の差を遺伝子発現情報から見出したい場合には、Gene Set Enrichment Analysis法(以下、GSEA法)を用いることができる(Proc Natl Acad Sci U S A. 2005;102:15545-50.)。GSEA法は、機能的に関連する遺伝子群が、わずかではあっても協調的に発現変動しているかどうかを調べるのに適した分析法である。個々の遺伝子レベルでの分析に比べ、より統合的で機能的な分析法である。このような特定の差に寄与する遺伝子群を見出すための方法は、遺伝子を個々ではなく群として捉え、その遺伝子群の総合的な発現量から協調的に変動する遺伝子群を解析できる手法であれば、GSEA法に限られるものではない。
従来の関節リウマチの遺伝子発現バイオマーカーに関連する研究は、多くが個々の遺伝子レベルの分析に留まり、治療薬剤の作用機序との関連を説明するに至らないものが多かった。遺伝子発現解析をより強力なものとするためには、遺伝子を個々ではなく、関連する遺伝子群として、総合的なネットワークの効果として結果を捉えることが不可欠である。そして、このような解析を可能にする一例がGSEA法である。
本願発明の一実施形態においては、このGSEA法を用いて解析する遺伝子群として、リアクトームパスウェイ遺伝子セット(674セット)や血液細胞特異的発現遺伝子セット(16セット)を挙げることができるが、GSEA法を用いて解析し得る遺伝子群はこれらに限られるものではない。すなわち、GSEA法とは、ある現象(例えば、特定の薬剤を投与した場合の寛解)が生じる個体と生じない個体との間で遺伝子発現に差が認められる場合に、その差に寄与する遺伝子群を協調的に捉えるための手法であるため、その解析対象となる遺伝子群はどのような遺伝子の集団であっても良い。
本願発明の一実施形態においては、上記のようにして得た、特定のbDMARDを投与した場合の寛解または非寛解に関連する遺伝子群について、関節リウマチ患者毎にその遺伝子群の発現量を測定し、その発現量から1つの治療効果予測スコアを算出して、当該特定のbDMARDの治療効果を予測することができる。このスコアリング手法としては、例えば、あるbDMARDを投与した場合の寛解または非寛解に関連する遺伝子群が10遺伝子だった場合、その10の遺伝子について、サンプル毎に標準化した発現量を、遺伝子毎にZスコアなどでサンプル全体に渡って標準化し、この標準化した10の遺伝子の発現量について、サンプル毎に平均値を算出して、治療効果予測スコアとすることができる。
また、治療効果予測スコアは、特定のbDMARDを投与した場合の寛解または非寛解に関連する遺伝子群について患者毎に測定された各遺伝子の発現量と、関節リウマチ患者から得られた末梢血における既に測定された各遺伝子の発現量情報(既定値であっても良い。)とを元に算出することができる。すなわち、治療効果予測スコアとは、上述のとおり、Zスコアなどの、サンプル全体に渡って標準化した遺伝子毎の特定のスコアの平均値をとったものであるため、既に算出されている母集団の標準偏差と平均値に加えて、患者毎に測定した各遺伝子の発現量がわかれば、新たな患者における治療効果予測スコアを算出することが可能である。
なお、上述のとおり、「治療効果予測スコア」とは、Zスコア化した各遺伝子の発現量についてサンプル毎に平均値を算出したものであり、本願明細書においては、この「治療効果予測スコア」を、「特徴スコア」や「signature score」と表現することがあるが、いずれも同じ意味である。
本願発明の一実施形態においては、上述のようにして算出した治療効果予測スコアを用いて、各bDMARDの治療効果の予測を行うことができる。また、各bDMARDの治療効果の予測結果を組み合わせることにより、患者毎に最適な薬剤を選択することができる。具体的には、治療効果予測スコアが、ROC解析で得たスレッシュホールド(閾値、カットオフ値)より大きいか小さいかで2群判別を行ない、各bDMARDについて、効果「あり」または「なし」の予測を行うことができる。この結果、治療効果の予測を行ったbDMARDのうち、1つのbDMARDのみで効果ありと予測された場合には、当該bDMARDを最適な薬剤とすることができる。一方で、複数のbDMARDで効果ありと予測された場合、または治療効果の予測を行った複数のbDMARDのすべてで効果なしと予測された場合には、各bDMARDでロジスティック回帰予測式により算出される寛解達成または低疾患活動性達成の確率を比較することにより、最適な薬剤を選択することができる。
本願発明の一実施形態においては、上述のようにして算出した治療効果予測スコアを、寛解達成率、及び/又は低疾患活動性達成率と治療効果予測スコアとの相関関係を示す相関プロファイルと比較することによって、治療効果を予測することができる。ここで、寛解達成率は、bDMARD投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が寛解を示す確率を表すことができ、低疾患活動性達成率は、薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が低疾患活動性を示す確率を表すことができる。このような相関プロファイルは、「治療効果予測スコア」が上記のとおり、ある薬剤を投与した場合の寛解または非寛解に関連する遺伝子群に属する1または複数の遺伝子の発現量を元にして算出されるものであるため、その遺伝子発現プロファイルと、その遺伝子発現プロファイルを有する関節リウマチ患者が、当該薬剤を投与された場合に寛解や低疾患活動性を示す確率とから得ることができる。
また、「関節リウマチに関連する指標」とは、例えば、DAS(Disease Activity score)、欧州リウマチ学会改善基準、アメリカリウマチ学会改善基準、CDAI(Clinical Disease Activity Index)、SDAI(Simplified Disease Activity Index)、および血清CRP(C反応性タンパク質)濃度等が含まれるが、関節リウマチの病勢や病態の程度や活動性を数値化・スコア化して表すことのできるものであれば、これらに限られるものではない。本願発明の一実施形態においては、「関節リウマチに関連する指標」としては、CDAIが好ましい。
CDAI(Clinical disease activity index)とは、所定の28関節における圧痛関節数、腫脹関節数の評価、および患者による全般的評価、医師による全般的評価を行い、得られた数値を加算して算出する最も汎用的な関節リウマチ活動性指標である。CDAI>22である場合に高疾患活動性、10<CDAI≦22である場合には中等度疾患活動性、2.8<CDAI≦10である場合には低疾患活動性、そして2.8以下の場合には寛解と分類評価される。
また、本願発明に係る一実施形態において、インフラマソーム関連遺伝子群は、以下の表1記載の遺伝子を有することができる。
Figure 2017079730
また、本願発明に係る一実施形態において、B細胞特異的発現遺伝子群は、以下の表2記載の遺伝子を有することができる。
Figure 2017079730
Figure 2017079730
Figure 2017079730
また、本願発明に係る一実施形態において、NK細胞特異的発現遺伝子群は、以下の表3記載の遺伝子を有することができる。
Figure 2017079730
Figure 2017079730
本願発明に係る一実施形態において、TNF阻害剤、トシリズマブ、またはアバタセプトの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する場合には、その予測のために測定すべき遺伝子としては、対象となるそれぞれの遺伝子群(すなわち、インフラマソーム関連遺伝子群、B細胞特異的発現遺伝子群、またはNK細胞特異的発現遺伝子群。)から選択される少なくとも1の遺伝子であっても良く、測定すべき遺伝子数は任意の数である。つまり、これらの遺伝子群は、上述のとおり、あるbDMARDを投与した場合の寛解または非寛解に関連し、かつそれぞれの遺伝子が機能的に関連する遺伝子群としてピックアップされたものであるため、その遺伝子群を構成する各遺伝子も当然に、当該bDMARDを投与した場合の寛解または非寛解に関連する。そのため、各遺伝子群から選択された1つの遺伝子の発現量を測定して、治療効果予測スコアを測定しても、その遺伝子に対応するbDMARDの治療効果を予測することが可能である。
なお、本願明細書において「バイオマーカー」とは、ある対象物の状態又は作用の評価の指標となるものであって、例えばある遺伝子の発現量と相関するときの遺伝子関連物質をいう。例えば、遺伝子それ自体、転写物であるmRNA(Messenger Ribonucleic Acid)、翻訳物であるペプチド、遺伝子発現の最終産物であるタンパク質などが含まれる。
また、本願明細書において「発現量」とは、遺伝子の発現量を直接的に測定した値だけでなく、所定の計算や統計学的手法によって変換された値も含む概念である。また、「遺伝子発現量」や「発現シグナル」、「遺伝子発現シグナル」、「発現シグナル値」、「遺伝子発現シグナル値」、「遺伝子発現データ」、「発現データ」等も個々の遺伝子の発現を反映する値を指すものとして同義である。
また、本願明細書において「遺伝子発現」とは遺伝子の発現量により表現される生体の遺伝子発現の態様を指し、1個の遺伝子の発現量により表される場合、および複数の遺伝子の発現量により表される場合のいずれもが含まれる。また、「発現」も生体の遺伝子発現の態様を指すものとして同義である。
関節リウマチ治療薬としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の治療薬および今後開発されるあらゆる治療薬が含まれる。例えば、従来から公知の関節リウマチ治療薬としては、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド薬、免疫抑制剤、合成疾患修飾性抗リウマチ薬(Synthetic Disease−Modifying AntiRheumatic Drug:sDMARD)、生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(Biological Disease−Modifying AntiRheumatic Drug:bDMARD)などが挙げられる。より具体的には、sDMARDとしては、メトトレキサート、トファシチニブ等が含まれ、bDMARDとしては、TNF阻害剤、トシリズマブ、アバタセプト等が含まれ、TNF阻害剤としては、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、およびセルトリズマブペゴルを含むことができるが、これらに限られるものではない。
本願発明に係る一実施形態においては、上述のとおり、TNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの中から、関節リウマチ患者に対して有効な薬剤を選択することが可能であるため、その前提として、TNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測することが可能である。例えば、TNF阻害剤の関節リウマチ患者に対する治療効果を予測するためには、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、インフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定し、上記と同様にして治療効果予測スコアを算出し、この治療効果予測スコアと、寛解達成率、及び/又は低疾患活動性達成率と治療効果予測スコアとの相関関係を示す相関プロファイルと比較することによって、治療効果を予測することができる。ここで、寛解達成率および低疾患活動性達成率とは、上述したとおりである。
同様に、トシリズマブの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測するためには、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、B細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定することによって、またアバタセプトの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測するためには、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、NK細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定することによって、治療効果予測スコアを算出し、治療効果を予測することができる。
以下に、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(対象被験者)
被験者の関節リウマチの診断は、米国リウマチ学会の1987年改正基準、または2010年米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会分類基準に基づいて行った。慶應義塾大学病院および埼玉医科大学総合医療センターにおいて、2007年5月から2011年11月の間に、メトトレキサート(≧6mg/週)に十分な感受性を示さず、かつインフリキシマブ(2007年〜)、トシリズマブ(2008年〜)、またはアバタセプト(2010年〜)のいずれかのbDMARD投与を開始した関節リウマチ患者209名(インフリキシマブ140例、トシリズマブ38例、アバタセプト31例)を被検対象とした。インフォームドコンセントはヘルシンキ宣言に準じ、すべての患者から書面で取得した。また、研究は慶應義塾大学および埼玉医科大学の学内倫理審査委員会での承認のもと進めた。
(治療効果判定方法)
bDMARDは、日本リウマチ学会(http://www.ryumachi-jp.com/guideline.html)のガイドラインに従って投与した。治療効果の判定にあたり、炎症因子(例えば、C反応性タンパク質(CRP)または赤血球沈降速度(ESR)など)が組み込まれるDAS28等の疾患活動性指標は、トシリズマブの有効性を過大評価してしまうことが報告されており(Mod Rheumatol. 2011;21:365-9.)、本願発明における指標としては好ましくない。そこで、炎症因子が計算に含まれない疾患活動性指標であるCDAIを用いた。治療の効果は、bDMARD投与半年後のCDAIに基づき、CDAI≦2.8であれば寛解(Remission:REM)となったか、CDAI>2.8であれば非寛解(Non−Remission:NON−REM)と判定した。効果が不十分または有害事象のためbDMARDによる治療を6カ月継続できなかった患者については、Last Observation Carried Forward(以下、LOCF)法を適用し、CDAIを取得した。これら計6サンプルのLOCF CDAIはいずれも>2.8であったため、非寛解群に分類した。
(被験者の臨床背景)
被験者の臨床背景を表4に示した。全209サンプルの患者年齢の中央値は59歳であり、その罹病期間の中央値は3.3年であった。メトトレキサートの併用投与は中央値8mgであり、CDAIの中央値は21.7であった。bDMARDの中で、アバタセプトを投与された患者は他剤より高齢であり、メトトレキサートの併用投与量はインフリキシマブ群が他に比べわずかに多かった。
Figure 2017079730
(被験者の治療成績)
全209症例のうち、6ヵ月のbDMARDによる治療で寛解を達成した症例は27.3%であった(図1)。薬剤別の寛解率は、インフリキシマブ、トシリズマブ、アバタセプトでそれぞれ、30.0%、21.1%、および22.6%であった。
(寛解群と非寛解群の臨床背景の違い)
寛解群と非寛解群の間の臨床背景の違いを表5に示した。インフリキシマブ寛解群と非寛解群との間には、女性の割合(p=0.034)、およびメトトレキサート以外の従来型sDMARD(Conventional sDMARD:csDMARD)の併用(p=0.016)において有意差が認められた。また、SJC(Swollen Joint Count)28、PtGA(Patient Global Assessment)、PhGA(Physician Global Assessment)、DAS28−ESR、SDAI、およびCDAIについても、インフリキシマブ寛解群と非寛解群の間で有意差が認められ、非寛解群で値が高かった。トシリズマブについては、寛解群に比べ非寛解群のDAS28−ESRが高かった(p=0.045)。アバタセプトでは、寛解群に比べ非寛解群で疾患期間が長かった(p=0.003)。
Figure 2017079730
(RNA抽出)
bDMARDの投与前に、PAXgene Blood RNAチューブ(PreAnalytiX社製)を用いて血液サンプルを採取した。採取した検体は、インフリキシマブ、トシリズマブ、およびアバタセプトでそれぞれ、140症例、38症例、31症例(計209症例)であった。
Total RNAは、取扱説明書に従って、PAXgene Blood RNAキット(PreAnalytiX社製)を用いて抽出した。Total RNAの量および質は、NanoDrop1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific社製)およびAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies社製)を使用して測定した。RIN値(Agilent社が推奨するRNA分解指標)>6.5 かつ 260/280nm 吸光度比>1.6のクオリティ条件を満たしたTotal RNAを、続くマイクロアレイ遺伝子実験に使用した。
(遺伝子発現測定:マイクロアレイ実験・データ前処理)
シアニン3標識の相補的RNA(Complementary RNA:cRNA)は、QuickAmpラベリングキット(Agilent Technologies社製)を用いて合成した。cRNAはWhole Human Genome 44 K Microarrays(Agilent Technologies社製)に17時間65℃でハイブリダイズした。洗浄後、そのマイクロアレイを、DNAマイクロアレイスキャナ(Agilent Technologies社製)を用いてスキャンした。スキャン画像からのシグナルの数値化は、Agilent Feature Extractionソフトウェア(Agilent Technologies社製)を使用して行った。生数値化データに対して、統計解析ソフトウェアRを用いて、順位ベースのデータ正規化(クオンタイルノーマリゼーション)を適用した。
(解析対象プローブのフィルタリング)
測定したマイクロアレイデータの中には、有効なシグナルが検出されないプローブが存在する。これらは遺伝子発現量が極めて低い遺伝子に対するプローブであり、解析を行う上でノイズとなる可能性が高い。そのためこれらプローブを除く目的で、GeneSpringソフトウェア(Agilent Technologies社製)を用いて、全209症例中、50症例以上で「有効シグナル」と判定されたプローブを抽出した。また、同じ遺伝子に対して複数のプローブが設計されている場合、最もシグナル強度が高いプローブを採用した。さらに公式な遺伝子シンボルが割り当てられているプローブを採用し、最終的に14,718プローブを解析対象プローブとして選別した。
(GSEA法)
各bDMARDによる治療を施した場合の寛解群および非寛解群の分子生物学的特徴の差を調べるため、GSEA(Gene Set Enrichment Analysis)法を用いて解析した。GSEA法は、特定の決められた遺伝子セットが、2つの生物学的状態間で統計学的に有意な違いを示すかどうかを決定する計算方法である(Proc Natl Acad Sci U S A. 2005;102:15545-50.)。遺伝子セットとしては、リアクトームパスウェイデータベースの674個の遺伝子セットおよび2つの文献(Blood. 2009;113:e1-9, PLoS One. 2012;7:e29979)から得られた16個の血液細胞特異的発現遺伝子セットの統合リストを用いた。GSEAの解析パラメーターは、並べ替え回数「1000」、並べ替えタイプ「表現系」、遺伝子ランキング法「シグナルノイズ比」、最小遺伝子セット遺伝子数「15」、最大遺伝子セット遺伝子数「500」に設定した。解析の結果、Nominal p−value<0.05かつFalse discovery rate<0.1となった遺伝子セットを有意と判定した。GSEA法の結果を表6に示した。
Figure 2017079730
(寛解および非寛解における遺伝子発現の特徴)
リアクトーム遺伝子セットを対象とした分析では、インフリキシマブの非寛解群において「Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群)」が、アバタセプトの非寛解群において「Elongation arrest and recovery(伸長と修復に関連する遺伝子群)」、「Regulation of apoptosis(アポトーシス調節関連遺伝子群)」、および「Formation of RNA pol II elongation complex(RNAポリメラーゼII伸長複合体の形成関連遺伝子群)」が発現上昇していた。血液細胞特異的発現遺伝子セットを対象とした分析では、トシリズマブの寛解群において、「Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」および「B cells-induced(B細胞で発現誘導される遺伝子群)」などのB細胞に関連する遺伝子群が発現上昇していた。また、アバタセプトの非寛解群において、「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」および「NK cells-induced(NK細胞で発現誘導される遺伝子群)」などのNK細胞に関連する遺伝子群が発現上昇していた。
(リアルタイム定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)による検証)
GSEA法で抽出された主要な遺伝子セットの個々の遺伝子についてqRT−PCRを行い、結果の検証を行った。測定した遺伝子は、インフリキシマブ効果予測因子としてインフラマソーム関連遺伝子群であるAPP、AIM2、NLRC4、MEFV、およびBCL2L1、トシリズマブ効果予測因子としてB細胞特異的発現遺伝子群であるPLEKHG1、AFF3、FCER2、UGT8、およびCD22、アバタセプト効果予測因子としてNK細胞特異的発現遺伝子群である、BNC2、CD160、PDGFRB、LIM2、およびKIR3DL2である。Total RNA 500ngから、RTHT First Strand Kit(QIAGEN社製)を用いて相補的DNA(Complementary DNA:cDNA)を合成した。合成したcDNAを鋳型とし、カスタムRT Profiler PCRアレイ(QIAGEN社製),およびアプライドバイオシステム7500 Fast Dx Real Time PCRシステム(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてqPCRを実行した。内部標準遺伝子としてはGUSB遺伝子を採用した。ターゲット遺伝子のサイクルスレッシュホールド(Ct)値を内部標準遺伝子のCt値で補正することにより、相対遺伝子発現量を計算した。測定の結果、いずれの遺伝子もマイクロアレイ同様に寛解群と非寛解群で差が認められ(図4)、マイクロアレイ結果の妥当性が証明された。
(特徴スコアの算出方法)
GSEAで同定された薬剤効果予測遺伝子セットの発現プロファイルを個々の患者で評価できるようにすべく、スコアリング方法を考案した。その方法を図5に示す。具体的には、患者ごとに標的遺伝子セットに属するコア遺伝子群(GSEAエンリッチメントスコアに寄与する遺伝子のサブセット)を、全209人の患者のデータに基づくZスコア変換を用いて標準化し、その後、すべてのコア遺伝子のZスコアの平均を算出する。算出された平均をその患者の、その遺伝子セットの「特徴スコア」と定義した。
(特徴スコアと治療効果)
各薬剤の効果予測遺伝子セットについて、寛解群と非寛解群の間の特徴スコアの差を比較した(図2a〜h)。いずれの特徴スコアについても、寛解群と非寛解群との間で有意な差が認められたことから、これらスコアを用いることで各薬剤の治療結果の予測が可能と考えられた。
(特徴スコア間の情報量の類似性の確認)
トシリズマブおよびアバタセプトの効果予測を行うための遺伝子セットに関しては、GSEA法により複数同定されていることから、それら効果予測遺伝子セット間の情報量の類似性を確認した。情報量の類似性は、効果予測遺伝子セットの特徴スコアの相関分析により確認した。トシリズマブ効果予測遺伝子セットについては、「「Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」と「B cells-induced(B細胞で発現誘導される遺伝子群)」の特徴スコアの間に高い相関が認められた(ピアソン相関係数0.99)。また、アバタセプト効果予測遺伝子セットについては、「Elongation arrest and recovery(伸長と修復に関連する遺伝子群)」、「Regulation of apoptosis(アポトーシス調節関連遺伝子群)」、「Formation of RNA pol II elongation complex(RNAポリメラーゼII伸長複合体の形成関連遺伝子群)」の3つの特徴スコアの間に高い相関が認められた(2遺伝子セットの組み合わせにより生じる3つの相関係数:0.77、0.91、および0.84)。また、「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」と「NK cells-induced(NK細胞で発現誘導される遺伝子群)」の特徴スコアの間にも高い相関が認められた(相関係数0.96)。これら同じ情報量を有する(特徴スコアの相関の高い)遺伝子セットに関しては、それぞれ「Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」、「Elongation arrest and recovery(伸長と修復に関連する遺伝子群)」、「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」を代表として以降の解析を進めた。
(臨床背景と特徴スコアの関連)
寛解群と非寛解群では、上記遺伝子セットの発現プロファイル(特徴スコア)以外にも、いくつかの臨床背景に有意な差が認められている(表4)。寛解群と非寛解群の特徴スコアの差が、臨床背景の差に依存するものでないことを確認するため、多重ロジスティック回帰分析を行い、特徴スコアの独立性を調べた。この結果、いずれの特徴スコアも、臨床的背景を調整した上でも寛解および非寛解の予測に寄与する有意な因子であることが示された(表7)。また、ロジスティック回帰分析において、アバタセプトでは、「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」の特徴スコアが「Elongation arrest and recovery(伸長と修復に関連する遺伝子群)」よりも有意であったため、その後のアバタセプト効果予測に関しては「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」に重点をおいて解析を進めた。
Figure 2017079730
(ROC分析)
ROC(Receiver Operating Characteristic:受信者動作特性)分析は、2値データ(たとえば寛解/非寛解)と連続量データ(たとえば特徴スコア)との関連の強さを解析したり、2群を分離するための連続量データの最適カットオフ値を決定するために使用される分析法である。2値データと連続量データの関連の強さはROC曲線のAUC(Area Under the Curve)で評価できる。
(ROC分析による、特徴スコアを用いた予測パフォーマンスの評価)
各薬剤の効果予測遺伝子セットの特徴スコアを用いて、ROC解析を行った(図3)。非寛解を予測する特徴スコアのAUCは0.637(インフリキシマブ、特徴:Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群))、0.796(トシリズマブ、特徴:Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群))、0.768(アバタセプト、特徴:Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群))であった。また、ROC曲線から求められた最適カットオフ値はインフリキシマブ−Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群)特徴スコアで0.157、トシリズマブ−Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアで0.524、アバタセプト−Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアで−0.203であった。最適カットオフ値による陽性的中率(特徴スコアで「非寛解」と判定された患者が実際に「非寛解」であった割合:PPV)はインフリキシマブで83.6%、トシリズマブで92.3%、アバタセプトで94.7%であった。また、陰性的中率(特徴スコアで「寛解」と判定された患者が実際に「寛解」であった割合:NPV)はインフリキシマブで38.8%、トシリズマブで50.0%、アバタセプトで50.0%であった。
(最適薬剤の選択方法)
上記の方法で得られる3つのbDMARDの効果予測結果を組み合わせることにより、有効性の面から患者にとって最も適切な薬剤を選ぶことができる。その1例を次に示す。インフリキシマブ効果予測に関しては、Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群)特徴スコアを計算し、0.157より高ければ「効果なし(投与半年後に寛解達成が見込めない)」、低ければ「効果あり(投与半年後に寛解達成が見込める)」と判定する。トシリズマブ効果予測に関しては、Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアを計算し、0.524より高ければ「効果あり(投与半年後に寛解達成が見込める)」、低ければ「効果なし(投与半年後に寛解達成が見込めない)」と判定する。アバタセプト効果予測に関しては、Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアを計算し、−0.203より高ければ「効果なし(投与半年後に寛解達成が見込めない)」、低ければ「効果あり(投与半年後に寛解達成が見込める)」と判定する。これら3剤の効果予測の結果、1剤のみで効果ありと判定された場合、その薬剤を最適薬剤と判定できる。また、2剤以上で効果ありと判定された場合、あるいは3剤いずれも効果なしと判定された場合は、それぞれの特徴スコアを用いたロジスティック回帰予測式により算出される寛解達成の確率を比較し、より確率の高い薬剤を選択することができる。
(最適薬剤の選択方法の検証)
本願発明の薬剤を選択するため方法によって患者毎に有効な薬剤が選択され、その選択された薬剤が投与された場合、本願発明に係る方法を適用しなかった場合と比べて投与後の寛解達成率が改善されるか、または改善されるのであればどの程度改善されるかについて検証する必要がある。このような検証については、正確を期す場合には前向き検体を収集して検証しなければならない。しかし、前述の実施例の209名の関節リウマチ患者においても、偶然にも本願発明に係る方法によれば最適であると判断される薬剤が投与された症例群が存在するため、そのような症例を選択し、それ以外(または全体)の症例群との間の寛解達成率の違いを比較することで近似的な検証が可能である。その検証した結果を表8に示す。
Figure 2017079730
この検証結果によれば、全体の寛解達成率27.3%と比較し、判定どおりに投薬された集団の寛解達成率は37.4%に向上しており、このことは、本願発明に係る効果予測を適用することにより、集団として、寛解達成率を約10%向上することができることを示している。
(各遺伝子群から1遺伝子を選択した場合の効果予測)
続いて、インフラマソーム関連遺伝子群(9遺伝子,TNF阻害剤効果予測)、B細胞特異的発現遺伝子群(92遺伝子,トシリズマブ効果予測)、NK細胞特異的発現遺伝子群(41遺伝子,アバタセプト効果予測)からそれぞれ1遺伝子を選択し、その1遺伝子の発現量からでもそれぞれの薬剤の効果予測が可能であることを示した。
本実施例においては、インフラマソーム関連遺伝子群に属する遺伝子として、MEFV、NLRC4、APPを、B細胞特異的発現遺伝子群に属する遺伝子として、CD19、FAM129C、TCL1Aを、NK細胞特異的発現遺伝子群に属する遺伝子として、NMUR1、GPR56、FGFBP2を、それぞれ選択し、その1遺伝子の発現量から特徴スコアを算出した。その後、1遺伝子から得たそれぞれの特徴スコア(以下、「特徴スコア(1遺伝子)」という。)と、各遺伝子群に属する全遺伝子から得た特徴スコア(以下、「特徴スコア(全遺伝子)」という。)とを比較し、相関関係を見出した。その結果を図6に示す。図6は、1段目にインフラマソーム関連遺伝子群の特徴スコア(全遺伝子)と、インフラマソーム関連遺伝子群から選択された1遺伝子の特徴スコア(1遺伝子)とを比較した結果を、2段目にB細胞特異的発現遺伝子群の特徴スコア(全遺伝子)と、B細胞特異的発現遺伝子群から選択された1遺伝子の特徴スコア(1遺伝子)とを比較した結果を、3段目にNK細胞特異的発現遺伝子群の特徴スコア(全遺伝子)と、NK細胞特異的発現遺伝子群から選択された1遺伝子の特徴スコア(1遺伝子)とを比較した結果を、それぞれ示している。いずれの結果も、高い正の相関を示しており、これは、各遺伝子群から1遺伝子を選択して薬剤の効果予測を行った場合と、各遺伝子群に属する全遺伝子を用いて行った場合とで、その結果に相違がほぼないことを示すものである。
(低疾患活動性達成の予測)
関節リウマチの治療は、寛解達成を目指すことが第一の目標であるが、長期罹患患者や関節破壊が進行した患者では寛解達成が困難な場合もある。このような場合、低疾患活動性の達成を治療目標とすることもある。そこで、特徴スコアを用いることにより、治療半年後のCDAI寛解達成のみならず、低疾患活動性の達成も予測できるかを、前述の209名の関節リウマチ患者マイクロアレイデータ(インフリキシマブ140例、トシリズマブ38例、アバタセプト31例)を用いて検証した。低疾患活動性達成群/非達成群の間で、インフラマソーム関連遺伝子群の特徴スコア(インフリキシマブ効果予測)、B細胞特異的発現遺伝子群の特徴スコア(トシリズマブ効果予測)、NK細胞特異的発現遺伝子群の特徴スコア(アバタセプト効果予測)を比較した結果を図7に示す。いずれの特徴スコアも低疾患活動性達成群と非達成群の間で有意差、または有意傾向(p<0.1)が認められた。また、特徴スコアを用いたROC分析結果を図8に示す。低疾患活動性の非達成を予測するAUCは0.611(インフリキシマブ、特徴:Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群))、0.731(トシリズマブ、特徴:Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群))、0.679(アバタセプト、特徴:Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群))であった。また、ROC曲線から求められた最適カットオフ値はインフリキシマブ−Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群)特徴スコアで−0.024、トシリズマブ−Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアで−0.380、アバタセプト−Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアで0.611であった。最適カットオフ値による陽性的中率(特徴スコアで「低疾患活動性非達成」と判定された患者が実際に「低疾患活動性非達成」であった割合:PPV)はインフリキシマブで39.5%、トシリズマブで85.7%、アバタセプトで62.5%であった。また、陰性的中率(特徴スコアで「低疾患活動性達成」と判定された患者が実際に「低疾患活動性達成」であった割合:NPV)はインフリキシマブで79.7%、トシリズマブで83.9%、アバタセプトで87.0%であった。また、これら低疾患活動性達成に対する予測結果を寛解達成予測の結果と組み合わせることにより、患者にとって最適な薬剤を選ぶこともできる。たとえば、まず寛解達成の予測を行い、「いずれの薬剤も寛解達成しない」と判定された場合、次に低疾患活動性が達成できるかどうかを判定し、低疾患活動性が達成できる薬剤が選択できれば、それを最適薬剤として選択することができる。
その他、本発明は、さまざまに変形可能であることは言うまでもなく、上述した一実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。

Claims (13)

  1. TNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの中から、関節リウマチ患者に対して有効な薬剤を選択するための方法であって、
    関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、インフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
    測定されたインフラマソーム関連遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するTNF阻害剤の治療効果予測スコアを算出し、TNF阻害剤の治療効果を予測する工程と、
    前記末梢血サンプルにおいて、B細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
    測定されたB細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するトシリズマブの治療効果予測スコアを算出し、トシリズマブの治療効果を予測する工程と、
    前記末梢血サンプルにおいて、NK細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
    測定されたNK細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するアバタセプトの治療効果予測スコアを算出し、アバタセプトの治療効果を予測する工程と、
    予測されたTNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトの治療効果を比較する工程と
    を有する、方法。
  2. 請求項1記載の方法において、前記治療効果予測スコアは、測定された各遺伝子の発現量と、関節リウマチ患者から得られた末梢血における当該測定された各遺伝子の発現量の平均値および標準偏差とに基いて算出される、方法。
  3. 請求項1記載の方法において、前記治療効果を予測する工程は、前記算出された治療効果予測スコアを、薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が寛解を示す確率を表す寛解達成率、及び/又は薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が低疾患活動性を示す確率を表す低疾患活動性達成率と治療効果予測スコアとの相関関係を示す相関プロファイルと比較することによって行われる、方法。
  4. 請求項3記載の方法において、前記指標はCDAIである、方法。
  5. 請求項1記載の方法において、前記インフラマソーム関連遺伝子群は、以下の表1記載の遺伝子を有する、方法。
    Figure 2017079730
  6. 請求項1記載の方法において、前記B細胞特異的発現遺伝子群は、以下の表2記載の遺伝子を有する、方法。
    Figure 2017079730
    Figure 2017079730
    Figure 2017079730
  7. 請求項1記載の方法において、前記NK細胞特異的発現遺伝子群は、以下の表3記載の遺伝子を有する、方法。
    Figure 2017079730
    Figure 2017079730
  8. TNF阻害剤の関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する方法であって、
    関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、インフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
    前記測定された各遺伝子の発現量から、治療効果予測スコアを算出する工程と、
    前記算出された治療効果予測スコアを元に、前記患者に対するTNF阻害剤の治療効果を予測する工程と
    を有する、方法。
  9. トシリズマブの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する方法であって、
    関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、B細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
    前記測定された各遺伝子の発現量から、治療効果予測スコアを算出する工程と、
    前記算出された治療効果予測スコアを元に、前記患者に対するトシリズマブの治療効果を予測する工程と
    を有する、方法。
  10. アバタセプトの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する方法であって、
    関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、NK細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
    前記測定された各遺伝子の発現量から、治療効果予測スコアを算出する工程と、
    前記算出された治療効果予測スコアを元に、前記患者に対するアバタセプトの治療効果を予測する工程と
    を有する、方法。
  11. 請求項8〜10のいずれか1つに記載の方法において、前記治療効果予測スコアを算出する工程は、測定された各遺伝子の発現量と、関節リウマチ患者から得られた末梢血における当該測定された各遺伝子の発現量の平均値および標準偏差とに基いて行われる、方法。
  12. 請求項8〜10のいずれか1つに記載の方法において、前記治療効果を予測する工程は、前記算出された治療効果予測スコアを、薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が寛解を示す確率を表す寛解達成率、及び/又は薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が低疾患活動性を示す確率を表す低疾患活動性達成率と治療効果予測スコアとの相関関係を示す相関プロファイルと比較することによって行われる、方法。
  13. 請求項12記載の方法において、前記指標はCDAIである、方法。
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