JP6985691B2 - 関節リウマチに対する生物学的製剤の治療効果を予測する方法、およびそれを用いて最適な薬剤を選択する方法 - Google Patents
関節リウマチに対する生物学的製剤の治療効果を予測する方法、およびそれを用いて最適な薬剤を選択する方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6985691B2 JP6985691B2 JP2016207898A JP2016207898A JP6985691B2 JP 6985691 B2 JP6985691 B2 JP 6985691B2 JP 2016207898 A JP2016207898 A JP 2016207898A JP 2016207898 A JP2016207898 A JP 2016207898A JP 6985691 B2 JP6985691 B2 JP 6985691B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- therapeutic effect
- gene
- rheumatoid arthritis
- expression level
- predicting
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
Description
本実施形態に係る、TNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの中から、関節リウマチ患者に対して有効な薬剤を選択するための方法は、上述したように、関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、インフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、測定されたインフラマソーム関連遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するTNF阻害剤の治療効果予測スコアを算出し、TNF阻害剤の治療効果を予測する工程と、前記末梢血サンプルにおいて、B細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、測定されたB細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するトシリズマブの治療効果予測スコアを算出し、トシリズマブの治療効果を予測する工程と、前記末梢血サンプルにおいて、NK細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、測定されたNK細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するアバタセプトの治療効果予測スコアを算出し、アバタセプトの治療効果を予測する工程と、予測されたTNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトの治療効果を比較する工程とを有するものである。
被験者の関節リウマチの診断は、米国リウマチ学会の1987年改正基準、または2010年米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会分類基準に基づいて行った。慶應義塾大学病院および埼玉医科大学総合医療センターにおいて、2007年5月から2011年11月の間に、メトトレキサート(≧6mg/週)に十分な感受性を示さず、かつインフリキシマブ(2007年〜)、トシリズマブ(2008年〜)、またはアバタセプト(2010年〜)のいずれかのbDMARD投与を開始した関節リウマチ患者209名(インフリキシマブ140例、トシリズマブ38例、アバタセプト31例)を被検対象とした。インフォームドコンセントはヘルシンキ宣言に準じ、すべての患者から書面で取得した。また、研究は慶應義塾大学および埼玉医科大学の学内倫理審査委員会での承認のもと進めた。
bDMARDは、日本リウマチ学会(http://www.ryumachi-jp.com/guideline.html)のガイドラインに従って投与した。治療効果の判定にあたり、炎症因子(例えば、C反応性タンパク質(CRP)または赤血球沈降速度(ESR)など)が組み込まれるDAS28等の疾患活動性指標は、トシリズマブの有効性を過大評価してしまうことが報告されており(Mod Rheumatol. 2011;21:365-9.)、本願発明における指標としては好ましくない。そこで、炎症因子が計算に含まれない疾患活動性指標であるCDAIを用いた。治療の効果は、bDMARD投与半年後のCDAIに基づき、CDAI≦2.8であれば寛解(Remission:REM)となったか、CDAI>2.8であれば非寛解(Non−Remission:NON−REM)と判定した。効果が不十分または有害事象のためbDMARDによる治療を6カ月継続できなかった患者については、Last Observation Carried Forward(以下、LOCF)法を適用し、CDAIを取得した。これら計6サンプルのLOCF CDAIはいずれも>2.8であったため、非寛解群に分類した。
被験者の臨床背景を表4に示した。全209サンプルの患者年齢の中央値は59歳であり、その罹病期間の中央値は3.3年であった。メトトレキサートの併用投与は中央値8mgであり、CDAIの中央値は21.7であった。bDMARDの中で、アバタセプトを投与された患者は他剤より高齢であり、メトトレキサートの併用投与量はインフリキシマブ群が他に比べわずかに多かった。
全209症例のうち、6ヵ月のbDMARDによる治療で寛解を達成した症例は27.3%であった(図1)。薬剤別の寛解率は、インフリキシマブ、トシリズマブ、アバタセプトでそれぞれ、30.0%、21.1%、および22.6%であった。
寛解群と非寛解群の間の臨床背景の違いを表5に示した。インフリキシマブ寛解群と非寛解群との間には、女性の割合(p=0.034)、およびメトトレキサート以外の従来型sDMARD(Conventional sDMARD:csDMARD)の併用(p=0.016)において有意差が認められた。また、SJC(Swollen Joint Count)28、PtGA(Patient Global Assessment)、PhGA(Physician Global Assessment)、DAS28−ESR、SDAI、およびCDAIについても、インフリキシマブ寛解群と非寛解群の間で有意差が認められ、非寛解群で値が高かった。トシリズマブについては、寛解群に比べ非寛解群のDAS28−ESRが高かった(p=0.045)。アバタセプトでは、寛解群に比べ非寛解群で疾患期間が長かった(p=0.003)。
bDMARDの投与前に、PAXgene Blood RNAチューブ(PreAnalytiX社製)を用いて血液サンプルを採取した。採取した検体は、インフリキシマブ、トシリズマブ、およびアバタセプトでそれぞれ、140症例、38症例、31症例(計209症例)であった。
Total RNAは、取扱説明書に従って、PAXgene Blood RNAキット(PreAnalytiX社製)を用いて抽出した。Total RNAの量および質は、NanoDrop1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific社製)およびAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies社製)を使用して測定した。RIN値(Agilent社が推奨するRNA分解指標)>6.5 かつ 260/280nm 吸光度比>1.6のクオリティ条件を満たしたTotal RNAを、続くマイクロアレイ遺伝子実験に使用した。
シアニン3標識の相補的RNA(Complementary RNA:cRNA)は、QuickAmpラベリングキット(Agilent Technologies社製)を用いて合成した。cRNAはWhole Human Genome 44 K Microarrays(Agilent Technologies社製)に17時間65℃でハイブリダイズした。洗浄後、そのマイクロアレイを、DNAマイクロアレイスキャナ(Agilent Technologies社製)を用いてスキャンした。スキャン画像からのシグナルの数値化は、Agilent Feature Extractionソフトウェア(Agilent Technologies社製)を使用して行った。生数値化データに対して、統計解析ソフトウェアRを用いて、順位ベースのデータ正規化(クオンタイルノーマリゼーション)を適用した。
測定したマイクロアレイデータの中には、有効なシグナルが検出されないプローブが存在する。これらは遺伝子発現量が極めて低い遺伝子に対するプローブであり、解析を行う上でノイズとなる可能性が高い。そのためこれらプローブを除く目的で、GeneSpringソフトウェア(Agilent Technologies社製)を用いて、全209症例中、50症例以上で「有効シグナル」と判定されたプローブを抽出した。また、同じ遺伝子に対して複数のプローブが設計されている場合、最もシグナル強度が高いプローブを採用した。さらに公式な遺伝子シンボルが割り当てられているプローブを採用し、最終的に14,718プローブを解析対象プローブとして選別した。
各bDMARDによる治療を施した場合の寛解群および非寛解群の分子生物学的特徴の差を調べるため、GSEA(Gene Set Enrichment Analysis)法を用いて解析した。GSEA法は、特定の決められた遺伝子セットが、2つの生物学的状態間で統計学的に有意な違いを示すかどうかを決定する計算方法である(Proc Natl Acad Sci U S A. 2005;102:15545-50.)。遺伝子セットとしては、リアクトームパスウェイデータベースの674個の遺伝子セットおよび2つの文献(Blood. 2009;113:e1-9, PLoS One. 2012;7:e29979)から得られた16個の血液細胞特異的発現遺伝子セットの統合リストを用いた。GSEAの解析パラメーターは、並べ替え回数「1000」、並べ替えタイプ「表現系」、遺伝子ランキング法「シグナルノイズ比」、最小遺伝子セット遺伝子数「15」、最大遺伝子セット遺伝子数「500」に設定した。解析の結果、Nominal p−value<0.05かつFalse discovery rate<0.1となった遺伝子セットを有意と判定した。GSEA法の結果を表6に示した。
リアクトーム遺伝子セットを対象とした分析では、インフリキシマブの非寛解群において「Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群)」が、アバタセプトの非寛解群において「Elongation arrest and recovery(伸長と修復に関連する遺伝子群)」、「Regulation of apoptosis(アポトーシス調節関連遺伝子群)」、および「Formation of RNA pol II elongation complex(RNAポリメラーゼII伸長複合体の形成関連遺伝子群)」が発現上昇していた。血液細胞特異的発現遺伝子セットを対象とした分析では、トシリズマブの寛解群において、「Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」および「B cells-induced(B細胞で発現誘導される遺伝子群)」などのB細胞に関連する遺伝子群が発現上昇していた。また、アバタセプトの非寛解群において、「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」および「NK cells-induced(NK細胞で発現誘導される遺伝子群)」などのNK細胞に関連する遺伝子群が発現上昇していた。
GSEA法で抽出された主要な遺伝子セットの個々の遺伝子についてqRT−PCRを行い、結果の検証を行った。測定した遺伝子は、インフリキシマブ効果予測因子としてインフラマソーム関連遺伝子群であるAPP、AIM2、NLRC4、MEFV、およびBCL2L1、トシリズマブ効果予測因子としてB細胞特異的発現遺伝子群であるPLEKHG1、AFF3、FCER2、UGT8、およびCD22、アバタセプト効果予測因子としてNK細胞特異的発現遺伝子群である、BNC2、CD160、PDGFRB、LIM2、およびKIR3DL2である。Total RNA 500ngから、RT2 HT First Strand Kit(QIAGEN社製)を用いて相補的DNA(Complementary DNA:cDNA)を合成した。合成したcDNAを鋳型とし、カスタムRT2 Profiler PCRアレイ(QIAGEN社製),およびアプライドバイオシステム7500 Fast Dx Real Time PCRシステム(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてqPCRを実行した。内部標準遺伝子としてはGUSB遺伝子を採用した。ターゲット遺伝子のサイクルスレッシュホールド(Ct)値を内部標準遺伝子のCt値で補正することにより、相対遺伝子発現量を計算した。測定の結果、いずれの遺伝子もマイクロアレイ同様に寛解群と非寛解群で差が認められ(図4)、マイクロアレイ結果の妥当性が証明された。
GSEAで同定された薬剤効果予測遺伝子セットの発現プロファイルを個々の患者で評価できるようにすべく、スコアリング方法を考案した。その方法を図5に示す。具体的には、患者ごとに標的遺伝子セットに属するコア遺伝子群(GSEAエンリッチメントスコアに寄与する遺伝子のサブセット)を、全209人の患者のデータに基づくZスコア変換を用いて標準化し、その後、すべてのコア遺伝子のZスコアの平均を算出する。算出された平均をその患者の、その遺伝子セットの「特徴スコア」と定義した。
各薬剤の効果予測遺伝子セットについて、寛解群と非寛解群の間の特徴スコアの差を比較した(図2a〜h)。いずれの特徴スコアについても、寛解群と非寛解群との間で有意な差が認められたことから、これらスコアを用いることで各薬剤の治療結果の予測が可能と考えられた。
トシリズマブおよびアバタセプトの効果予測を行うための遺伝子セットに関しては、GSEA法により複数同定されていることから、それら効果予測遺伝子セット間の情報量の類似性を確認した。情報量の類似性は、効果予測遺伝子セットの特徴スコアの相関分析により確認した。トシリズマブ効果予測遺伝子セットについては、「「Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」と「B cells-induced(B細胞で発現誘導される遺伝子群)」の特徴スコアの間に高い相関が認められた(ピアソン相関係数0.99)。また、アバタセプト効果予測遺伝子セットについては、「Elongation arrest and recovery(伸長と修復に関連する遺伝子群)」、「Regulation of apoptosis(アポトーシス調節関連遺伝子群)」、「Formation of RNA pol II elongation complex(RNAポリメラーゼII伸長複合体の形成関連遺伝子群)」の3つの特徴スコアの間に高い相関が認められた(2遺伝子セットの組み合わせにより生じる3つの相関係数:0.77、0.91、および0.84)。また、「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」と「NK cells-induced(NK細胞で発現誘導される遺伝子群)」の特徴スコアの間にも高い相関が認められた(相関係数0.96)。これら同じ情報量を有する(特徴スコアの相関の高い)遺伝子セットに関しては、それぞれ「Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」、「Elongation arrest and recovery(伸長と修復に関連する遺伝子群)」、「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」を代表として以降の解析を進めた。
寛解群と非寛解群では、上記遺伝子セットの発現プロファイル(特徴スコア)以外にも、いくつかの臨床背景に有意な差が認められている(表4)。寛解群と非寛解群の特徴スコアの差が、臨床背景の差に依存するものでないことを確認するため、多重ロジスティック回帰分析を行い、特徴スコアの独立性を調べた。この結果、いずれの特徴スコアも、臨床的背景を調整した上でも寛解および非寛解の予測に寄与する有意な因子であることが示された(表7)。また、ロジスティック回帰分析において、アバタセプトでは、「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」の特徴スコアが「Elongation arrest and recovery(伸長と修復に関連する遺伝子群)」よりも有意であったため、その後のアバタセプト効果予測に関しては「Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)」に重点をおいて解析を進めた。
ROC(Receiver Operating Characteristic:受信者動作特性)分析は、2値データ(たとえば寛解/非寛解)と連続量データ(たとえば特徴スコア)との関連の強さを解析したり、2群を分離するための連続量データの最適カットオフ値を決定するために使用される分析法である。2値データと連続量データの関連の強さはROC曲線のAUC(Area Under the Curve)で評価できる。
各薬剤の効果予測遺伝子セットの特徴スコアを用いて、ROC解析を行った(図3)。非寛解を予測する特徴スコアのAUCは0.637(インフリキシマブ、特徴:Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群))、0.796(トシリズマブ、特徴:Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群))、0.768(アバタセプト、特徴:Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群))であった。また、ROC曲線から求められた最適カットオフ値はインフリキシマブ−Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群)特徴スコアで0.157、トシリズマブ−Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアで0.524、アバタセプト−Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアで−0.203であった。最適カットオフ値による陽性的中率(特徴スコアで「非寛解」と判定された患者が実際に「非寛解」であった割合:PPV)はインフリキシマブで83.6%、トシリズマブで92.3%、アバタセプトで94.7%であった。また、陰性的中率(特徴スコアで「寛解」と判定された患者が実際に「寛解」であった割合:NPV)はインフリキシマブで38.8%、トシリズマブで50.0%、アバタセプトで50.0%であった。
上記の方法で得られる3つのbDMARDの効果予測結果を組み合わせることにより、有効性の面から患者にとって最も適切な薬剤を選ぶことができる。その1例を次に示す。インフリキシマブ効果予測に関しては、Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群)特徴スコアを計算し、0.157より高ければ「効果なし(投与半年後に寛解達成が見込めない)」、低ければ「効果あり(投与半年後に寛解達成が見込める)」と判定する。トシリズマブ効果予測に関しては、Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアを計算し、0.524より高ければ「効果あり(投与半年後に寛解達成が見込める)」、低ければ「効果なし(投与半年後に寛解達成が見込めない)」と判定する。アバタセプト効果予測に関しては、Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアを計算し、−0.203より高ければ「効果なし(投与半年後に寛解達成が見込めない)」、低ければ「効果あり(投与半年後に寛解達成が見込める)」と判定する。これら3剤の効果予測の結果、1剤のみで効果ありと判定された場合、その薬剤を最適薬剤と判定できる。また、2剤以上で効果ありと判定された場合、あるいは3剤いずれも効果なしと判定された場合は、それぞれの特徴スコアを用いたロジスティック回帰予測式により算出される寛解達成の確率を比較し、より確率の高い薬剤を選択することができる。
本願発明の薬剤を選択するため方法によって患者毎に有効な薬剤が選択され、その選択された薬剤が投与された場合、本願発明に係る方法を適用しなかった場合と比べて投与後の寛解達成率が改善されるか、または改善されるのであればどの程度改善されるかについて検証する必要がある。このような検証については、正確を期す場合には前向き検体を収集して検証しなければならない。しかし、前述の実施例の209名の関節リウマチ患者においても、偶然にも本願発明に係る方法によれば最適であると判断される薬剤が投与された症例群が存在するため、そのような症例を選択し、それ以外(または全体)の症例群との間の寛解達成率の違いを比較することで近似的な検証が可能である。その検証した結果を表8に示す。
続いて、インフラマソーム関連遺伝子群(9遺伝子,TNF阻害剤効果予測)、B細胞特異的発現遺伝子群(92遺伝子,トシリズマブ効果予測)、NK細胞特異的発現遺伝子群(41遺伝子,アバタセプト効果予測)からそれぞれ1遺伝子を選択し、その1遺伝子の発現量からでもそれぞれの薬剤の効果予測が可能であることを示した。
関節リウマチの治療は、寛解達成を目指すことが第一の目標であるが、長期罹患患者や関節破壊が進行した患者では寛解達成が困難な場合もある。このような場合、低疾患活動性の達成を治療目標とすることもある。そこで、特徴スコアを用いることにより、治療半年後のCDAI寛解達成のみならず、低疾患活動性の達成も予測できるかを、前述の209名の関節リウマチ患者マイクロアレイデータ(インフリキシマブ140例、トシリズマブ38例、アバタセプト31例)を用いて検証した。低疾患活動性達成群/非達成群の間で、インフラマソーム関連遺伝子群の特徴スコア(インフリキシマブ効果予測)、B細胞特異的発現遺伝子群の特徴スコア(トシリズマブ効果予測)、NK細胞特異的発現遺伝子群の特徴スコア(アバタセプト効果予測)を比較した結果を図7に示す。いずれの特徴スコアも低疾患活動性達成群と非達成群の間で有意差、または有意傾向(p<0.1)が認められた。また、特徴スコアを用いたROC分析結果を図8に示す。低疾患活動性の非達成を予測するAUCは0.611(インフリキシマブ、特徴:Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群))、0.731(トシリズマブ、特徴:Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群))、0.679(アバタセプト、特徴:Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群))であった。また、ROC曲線から求められた最適カットオフ値はインフリキシマブ−Inflammasomes(インフラマソーム関連遺伝子群)特徴スコアで−0.024、トシリズマブ−Specific-CD19(B(CD19陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアで−0.380、アバタセプト−Specific-CD56(NK(CD56陽性)細胞特異的発現遺伝子群)特徴スコアで0.611であった。最適カットオフ値による陽性的中率(特徴スコアで「低疾患活動性非達成」と判定された患者が実際に「低疾患活動性非達成」であった割合:PPV)はインフリキシマブで39.5%、トシリズマブで85.7%、アバタセプトで62.5%であった。また、陰性的中率(特徴スコアで「低疾患活動性達成」と判定された患者が実際に「低疾患活動性達成」であった割合:NPV)はインフリキシマブで79.7%、トシリズマブで83.9%、アバタセプトで87.0%であった。また、これら低疾患活動性達成に対する予測結果を寛解達成予測の結果と組み合わせることにより、患者にとって最適な薬剤を選ぶこともできる。たとえば、まず寛解達成の予測を行い、「いずれの薬剤も寛解達成しない」と判定された場合、次に低疾患活動性が達成できるかどうかを判定し、低疾患活動性が達成できる薬剤が選択できれば、それを最適薬剤として選択することができる。
Claims (11)
- TNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトを有するbDMARDの中から、関節リウマチ患者に対して有効な薬剤を選択するための方法であって、
関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、以下の表1記載の遺伝子からなるインフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
測定されたインフラマソーム関連遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するTNF阻害剤の治療効果予測スコアを算出し、TNF阻害剤の治療効果を予測する工程と、
前記末梢血サンプルにおいて、以下の表2記載の遺伝子からなるB細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
測定されたB細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するトシリズマブの治療効果予測スコアを算出し、トシリズマブの治療効果を予測する工程と、
前記末梢血サンプルにおいて、以下の表3記載の遺伝子からなるNK細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
測定されたNK細胞特異的発現遺伝子群の各遺伝子の発現量から、前記患者に対するアバタセプトの治療効果予測スコアを算出し、アバタセプトの治療効果を予測する工程と、
予測されたTNF阻害剤、トシリズマブ、およびアバタセプトの治療効果を比較して最適な薬剤を選択する比較選択工程と、を備え、
前記治療効果予測スコアは、各遺伝子の発現量を、Zスコアに変換して標準化し、すべての遺伝子の前記Zスコアの平均値であり、
前記治療効果を予測する工程は、前記治療効果予測スコアが、2群を分離するための連続量データの最適カットオフ値を決定するために使用される分析法で決定された閾値より大きいか小さいかで2群判別を行なって各bDMARDについて効果あり又は効果なしの予測を行い、
前記比較選択工程は、
(a)治療効果の予測を行ったbDMARDのうち、1つのbDMARDのみで効果ありと予測された場合には、当該bDMARDを最適な薬剤とし、
(b)複数のbDMARDで効果ありと予測された場合、または治療効果の予測を行った複数のbDMARDのすべてで効果なしと予測された場合には、薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が寛解を示す確率を表す寛解達成率、及び/又は薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が低疾患活動性を示す確率を表す低疾患活動性達成率を比較し、より確率の高い薬剤を最適な薬剤とし、
前記関節リウマチに関連する指標が、関節リウマチの病勢、病態の程度又は活動性を数値化又はスコア化して表したものであり、Disease Activity score(DAS)、Clinical Disease Activity Index(CDAI)及びSimplified Disease Activity Index(SDAI)からなる群より選択される、方法。
- 請求項1記載の方法において、前記治療効果予測スコアは、測定された各遺伝子の発現量と、関節リウマチ患者から得られた末梢血における当該測定された各遺伝子の発現量の平均値および標準偏差とに基いて算出される、方法。
- 請求項1記載の方法において、前記治療効果を予測する工程は、前記算出された治療効果予測スコアを、薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が寛解を示す確率を表す寛解達成率、及び/又は薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が低疾患活動性を示す確率を表す低疾患活動性達成率と治療効果予測スコアとの相関関係を示す相関プロファイルと比較することによって行われる、方法。
- 請求項3記載の方法において、前記関節リウマチに関連する指標はClinical Disease Activity Index(CDAI)である、方法。
- 請求項1記載の方法において、
前記インフラマソーム関連遺伝子群は、APP、AIM2、NLRC4、MEFV、およびBCL2L1を有し、
前記B細胞特異的発現遺伝子群は、PLEKHG1、AFF3、FCER2、UGT8、CD22、CD19、FAM129CおよびTCL1Aを有し、
前記NK細胞特異的発現遺伝子群は、前記末梢血サンプルにおいて、BNC2、CD160、PDGFRB、LIM2、KIR3DL2、NMUR1、GPR56およびFGFBP2を有する、方法。 - TNF阻害剤の関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する方法であって、
関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、以下の表4記載の遺伝子からなるインフラマソーム関連遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
前記測定された各遺伝子の発現量から、治療効果予測スコアを算出する工程と、
前記算出された治療効果予測スコアを元に、前記患者に対するTNF阻害剤の治療効果を予測する工程と、を備え、
前記治療効果予測スコアは、各遺伝子の発現量を、Zスコアに変換して標準化し、すべての遺伝子の前記Zスコアの平均値であり、
前記治療効果を予測する工程は、前記治療効果予測スコアが、2群を分離するための連続量データの最適カットオフ値を決定するために使用される分析法で決定された閾値より大きいか小さいかで2群判別を行なってTNF阻害剤について効果あり又は効果なしの予測を行う、方法。
- トシリズマブの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する方法であって、
関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、以下の表5記載の遺伝子からなるB細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
前記測定された各遺伝子の発現量から、治療効果予測スコアを算出する工程と、
前記算出された治療効果予測スコアを元に、前記患者に対するトシリズマブの治療効果を予測する工程と、を備え、
前記治療効果予測スコアは、各遺伝子の発現量を、Zスコアに変換して標準化し、すべての遺伝子の前記Zスコアの平均値であり、
前記治療効果を予測する工程は、前記治療効果予測スコアが、2群を分離するための連続量データの最適カットオフ値を決定するために使用される分析法で決定された閾値より大きいか小さいかで2群判別を行なってトシリズマブについて効果あり又は効果なしの予測を行う、方法。
- アバタセプトの関節リウマチ患者に対する治療効果を予測する方法であって、
関節リウマチ患者由来の末梢血サンプルにおいて、以下の表6記載の遺伝子からなるNK細胞特異的発現遺伝子群から選択される1またはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
前記測定された各遺伝子の発現量から、治療効果予測スコアを算出する工程と、
前記算出された治療効果予測スコアを元に、前記患者に対するアバタセプトの治療効果を予測する工程と、を備え、
前記治療効果予測スコアは、各遺伝子の発現量を、Zスコアに変換して標準化し、すべての遺伝子の前記Zスコアの平均値であり、
前記治療効果を予測する工程は、前記治療効果予測スコアが、2群を分離するための連続量データの最適カットオフ値を決定するために使用される分析法で決定された閾値より大きいか小さいかで2群判別を行なってアバタセプトについて効果あり又は効果なしの予測を行う、方法。
- 請求項6〜8のいずれか1つに記載の方法において、前記治療効果予測スコアを算出する工程は、測定された各遺伝子の発現量と、関節リウマチ患者から得られた末梢血における当該測定された各遺伝子の発現量の平均値および標準偏差とに基いて行われる、方法。
- 請求項6〜8のいずれか1つに記載の方法において、前記治療効果を予測する工程は、前記算出された治療効果予測スコアを、薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が寛解を示す確率を表す寛解達成率、及び/又は薬剤投与半年後における関節リウマチに関連する指標の値が低疾患活動性を示す確率を表す低疾患活動性達成率と治療効果予測スコアとの相関関係を示す相関プロファイルと比較することによって行われ、
前記関節リウマチに関連する指標が、関節リウマチの病勢、病態の程度又は活動性を数値化又はスコア化して表したものであり、Disease Activity score(DAS)、Clinical Disease Activity Index(CDAI)及びSimplified Disease Activity Index(SDAI)からなる群より選択される、方法。 - 請求項10記載の方法において、前記関節リウマチに関連する指標はClinical Disease Activity Index(CDAI)である、方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US201562245713P | 2015-10-23 | 2015-10-23 | |
US62/245713 | 2015-10-23 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017079730A JP2017079730A (ja) | 2017-05-18 |
JP6985691B2 true JP6985691B2 (ja) | 2021-12-22 |
Family
ID=58712516
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016207898A Active JP6985691B2 (ja) | 2015-10-23 | 2016-10-24 | 関節リウマチに対する生物学的製剤の治療効果を予測する方法、およびそれを用いて最適な薬剤を選択する方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6985691B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108872438B (zh) * | 2018-08-06 | 2021-01-15 | 杭州迪相实业有限公司 | 一种外泌体中肺癌标志物gk5快速检测试剂盒 |
CN112466477B (zh) * | 2019-09-06 | 2024-08-23 | 广州市妇女儿童医疗中心 | 给药前mtx治疗jia的疗效预测系统及其建立方法 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009092508A (ja) * | 2007-10-09 | 2009-04-30 | Norihiro Nishimoto | リウマチ治療剤の効果の予測方法 |
JP2010088432A (ja) * | 2008-09-09 | 2010-04-22 | Kansetsu Saisei Kenkyusho:Kk | Tnf阻害薬治療による有効性・副作用発現に関する多型、およびその利用 |
JP2011182780A (ja) * | 2010-02-12 | 2011-09-22 | Hubit Genomix Inc | Il−6阻害薬治療による有効性・副作用発現に関する多型、およびその利用 |
WO2011154139A2 (en) * | 2010-06-07 | 2011-12-15 | Roche Diagnostics Gmbh | Gene expression markers for predicting response to interleukin-6 receptor-inhibiting monoclonal antibody drug treatment |
JP6347477B2 (ja) * | 2013-12-27 | 2018-06-27 | 国立大学法人千葉大学 | 関節リウマチ患者に対する抗il−6受容体抗体治療の有効性予測方法 |
-
2016
- 2016-10-24 JP JP2016207898A patent/JP6985691B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2017079730A (ja) | 2017-05-18 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP7297015B2 (ja) | エピジェネティックな染色体相互作用 | |
Planell et al. | Usefulness of transcriptional blood biomarkers as a non-invasive surrogate marker of mucosal healing and endoscopic response in ulcerative colitis | |
EP3692172B1 (en) | Assessment of jak-stat3 cellular signaling pathway activity using mathematical modelling of target gene expression | |
CA2889087C (en) | Diagnostic method for predicting response to tnf.alpha. inhibitor | |
AU2015334840A1 (en) | Assessment of TGF-beta cellular signaling pathway activity using mathematical modelling of target gene expression | |
EP3461915A1 (en) | Assessment of jak-stat1/2 cellular signaling pathway activity using mathematical modelling of target gene expression | |
US9441274B2 (en) | In vitro method and kit for prognosis or prediction of response by patients with rheumatoid arthritis to treatment with TNF-αfactor blocking agents | |
US20230348980A1 (en) | Systems and methods of detecting a risk of alzheimer's disease using a circulating-free mrna profiling assay | |
Grammatikos et al. | AT cell gene expression panel for the diagnosis and monitoring of disease activity in patients with systemic lupus erythematosus | |
JP6985691B2 (ja) | 関節リウマチに対する生物学的製剤の治療効果を予測する方法、およびそれを用いて最適な薬剤を選択する方法 | |
EP2756103A2 (en) | Characterizing multiple sclerosis | |
Reynolds et al. | Gene expression patterns in peripheral blood cells associated with radiographic severity in African Americans with early rheumatoid arthritis | |
CN104428426A (zh) | 多发性硬化的诊断miRNA概况 | |
JP7161442B2 (ja) | リウマチのリスクを判定する方法 | |
EP4203921A2 (en) | Mrna biomarkers for diagnosis of liver disease | |
JP2011004743A (ja) | 関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別する方法 | |
Mohebi et al. | Comparison of Plasma Levels of MicroRNA-155-5p, MicroRNA-210-3p, and MicroRNA-16-5p in Rheumatoid Arthritis Patients with Healthy Controls in a Case-control Study | |
JP7514458B2 (ja) | 関節リウマチ治療薬の奏効を予測する方法及びそれに用いるバイオマーカー | |
JP5676777B2 (ja) | 関節リウマチ活動性指標を同定する方法及びそれに用いるバイオマーカー | |
US20170356032A1 (en) | Differential diagnosis and therapy selection for rheumatoid arthritis and psoriatic arthritis | |
JP2018502570A (ja) | 持続陽圧呼吸療法に対する応答を予測する方法 | |
US20210071250A1 (en) | Diagnostic and prognostic liquid biopsy biomarkers for asthma | |
UA113819U (xx) | Спосіб прогнозування ризику виникнення бронхіальної астми у дітей в залежності від обтяженого генетичного анамнезу |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20191018 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20200902 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200915 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20201106 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20210511 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20210706 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20211102 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20211116 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6985691 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |